形兆「『死ぬ』ことよりも辛い事って分かるか? 両儀式ッ!」 (44)

唐突だが俺にはクソッタレな親父が一人いる

金に汚く俺と弟に暴力を振るっては自分が上なんだと思い込み満足する最低なヤロウだ

お袋も俺たちを置いてとっくの昔に逃げて行ったよ

ケッ、全然珍しくも何ともね~話だ

だがよ、この話には全く笑えねぇオチが一つついちまった


俺の親父は、『人間』じゃあなくなった

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1399201859


こいつはよ、何をしても死なねーんだ。

頭を潰そうがクサレ脳みそを壁にブチまけようが心臓のド真ん中を銃で撃ち抜こうがな。

ケッ、醜いツラしやがって。
てめーのその焦点の定まってねー目を見てるとイラついて仕方がねーぜ。
そしてそんな風に思っちまうこのオレ自身にもイラつくんだ。

もしこの世に『神様』っつーのがいるんなら聞きたい。

教えてくれよ。

なんでコイツは。

このまともに喋ることも出来ねー、ただ生きてるだけの肉の塊が。


俺の『親父』なんだ?

「おいッ! 億泰ゥゥッ今更躊躇ってんじゃあねーぞッッ。
お前の『スタンド』なら親父を殺せるかもしれね~~早くやりやがれ!!」

「で、でもよ兄貴…」

「……『でも』? でも…なんだ?」

「うぅっ…で、でもお、親父を」

「実の親父は殺せねーってか? お前はそう言いたいのか億泰」

「……」

「良いか億泰。 今のこいつはどう見ても人間以下のただの肉の塊だ。
生きてる価値なんてちっともねぇ」

「じゃあな、そのただの肉の塊に人生を縛られてる俺たちは一体何なんだ?
俺たちはこいつを殺さねえと人生が始まらねぇんだよ。
前にも言ったはずだぜ億泰」

「それに、オレ達が今の親父にしてやれることなんてーーー」

そいつは気に食わねーヤロウだが『能力』はこれ以上ないってくらい信用出来る物だ

「……」

親父を、[ピーーー]
今更迷ったりなんて…いや、始めから迷いなんざなかった

「この人を殺さなくちゃいけない」

親父がああなって真っ先に浮かんだ言葉がこれだった
親父の人としての『生』は終わった
なら、せめてーーー

「…チッ」

オレらしくもない
とっくのとうに出た結末を今になってごちゃごちゃ考えてやがる

今になってこんなことを考えるのも、『ヤツ』と会わなければならないからだろうか

プシュー、バタン

「…着いたか」

バスが目的地の駅に着いたようだ
オレはバスを降り、待ち合わせの喫茶店に向かった

そいつは気に食わねーヤロウだが『能力』はこれ以上ないってくらい信用出来る物だ

「……」

親父を、殺す
今更迷ったりなんて…いや、始めから迷いなんざなかった

「この人を殺さなくちゃいけない」

親父がああなって真っ先に浮かんだ言葉がこれだった
親父の人としての『生』は終わった
なら、せめてーーー

「…チッ」

オレらしくもない
とっくのとうに出た結末を今になってごちゃごちゃ考えてやがる

今になってこんなことを考えるのも、『ヤツ』と会わなければならないからだろうか

プシュー、バタン

「…着いたか」

バスが目的地の駅に着いたようだ
オレはバスを降り、待ち合わせの喫茶店に向かった

「ここか」

指定された店の前にきた

店の名前は……アーネンエルベとでも読むのか

「中々シャレてる店だな」

店内は西洋風の造りだ。(これが「モダン」ってやつなのか)暗めの照明が、それにまた合っている

店内に客は居らず、待ち人は直ぐ見つかった

「やぁ、形兆君。 久しぶりだね会えて嬉しいよ。
君の弟君は元気かい?」

「……フンっ、オレはてめーと会って嬉しいなんざケーキに砂糖菓子がついてきたって程も感じねーし、
オレの出来損ないの弟の事をてめーに教える必要もない」

ヤツの対面の席に座りながらそう毒づく

「やれやれ、何故か僕は君に嫌われているようだね。
僕は君たちを好ましく思っているんだが」

「…気持ちワリイ」

久しぶりに会ってやっと実感した

オレはこいつが『苦手』なのだ

こいつの優しげな眼差しも、紳士的な態度も、普通の良い人って感じも、

オレは全て気に食わないのだ

「とりあえず何か頼まないかい? ここのブルーベリーパイは絶品なんだ」

「いらん。 おいそこの店員、コーヒーに角砂糖を一個入れて持ってきてくれ」

ウェイトレスが一瞬肩をすくわせ、厨房に向かっていく

「この喫茶店は中々気に入ったがオレは静かな朝のティータイムってやつをする気なんざない」

「全く、君のその几帳面と言うか融通が効かないというか
正直言って疲れないかい?」

「もう一つ付け加えるお前とダラダラお喋りをするつもりもない」

「やれやれ、こっちとしては久しぶりに会った君と語り合いたいくらいなんだが、仕方ないね、
本題に入ろう」

「まず、君はこの世界に『虫』という生き物が全部で何種類いると思う?」

本題に入ると言いながらこいつは何故か虫の事を話し始めた
まさかオレの親父を殺せるっていう奴は虫なのか?

「……」

「あぁ、ごめんごめん。 今のは単なる前フリだよ。
教授なんてやっていると、つい前フリなんてものを普通の会話で入れてしまう。
適当に考えてくれ」

「…200万種類ぐらいか?」

いちいち本題に入れと促すのも面倒なので、ヤツの前フリってやつに付き合うことにした

「違う。 未だ発見されていない種も含めれば、6000万種類はいると言われている」

「…っ」

少し驚いた。
6000万? そんな数、想像もできねーな

「まぁこの数も諸説ある中の一説に過ぎないけどね。
だが、少なくとも一人の昆虫学者が覚えていられる数ではないね」

確かにその通りだ
一人の人間が覚えていられる虫の数なんざ、せいぜいが200、出来て500程度だろう

「それで、てめーは何が言いてーんだ?」

「虫だけで6000万。 この地球上に栄える他の生物やプランクトンといった微小生物も数に含めれば本当に途方もない数になる。
いいかい? 僕たちが今生きていると認識しているこの世界には、僕たちが知らない世界が山ほどある」

何が言いたい?
この男は、一体何が言いたいんだ

「僕や君が持っている『スタンド』もそうだ。
今そこの大通りを歩いている一般人達には想像もつかない『世界』だろうね」

「いわばスタンド能力とは舞台の裏側だ。
舞台の表側の彼らには知る事は一生ない事柄だ。 それ故か、スタンド能力者は無意識的に『世界』を知ったつもりになるんだ」

「だがね、舞台が一つなんて誰が決めたんだい?
スタンド能力者は舞台裏を知っているが故に知らないんだ。
自分達はこの『世界』の事なんて全く知らないという当たり前の事実をね…。
君には、それを知る覚悟があるかい?」

舞台が一つだけじゃない

オレの知らない『世界』

「……まさか、その親父を殺せるヤツってのはスタンド能力者じゃあ『ないのか?』」

「Exactly(その通りだよ)」

今日はとりあえずここまで

スタンド能力者じゃあない。

ならばーーー

「そいつは一体、『何なんだ』?」

「ふむ、この世界にはまだ誰も知らない力がある。
「彼女」の力もそうだ」

「彼女? そいつは女なのか?」

「そうだよ。 君と同い年くらいだね。
… 彼女の力は『直死の魔眼』と呼ばれている」

…直死の魔眼

「能力は、万物の『死』が見え、その『死』に触れる事が出来る」

「っ!」

スタンド能力者じゃあない。

ならばーーー

「そいつは一体、『何なんだ』?」

「ふむ、この世界にはまだ誰も知らない力がある。
「彼女」の力もそうだ」

「彼女? そいつは女なのか?」

「そうだよ。 君と同い年くらいだね。
… 彼女の力は『直死の魔眼』と呼ばれている」

…直死の魔眼

「能力は、万物の『死』が見え、その『死』に触れる事が出来る」

「っ!」

なんだ、その、俺が探してたものそのままのような能力は。

まるでガキの頃に空想した秘密道具を目の前で実際に見たような気分だ。

「この世にはスタンド以外にも世界の理から外れた『異能』がある。
彼女の『ソレ』もその類だ」

「…まちなっ。 その両儀式って女がスタンド使いかどうかなんてどうでもいいことだ。 重要なのはそいつが本当に俺の親父を殺せるのかどうかってことだけだ」

「ふむ。 彼女の能力を理解するには、聞くよりも『視た』方が早いだろうね」

その瞬間、奴の背後から像(ビジョン)が浮かび上がる。

「『The who』、彼に両儀式のこれまでの『運命』を視せなさい」

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom