洋榎「宮永 照の便所飯を阻止する」(179)

<東京 白糸台高校付近>

洋榎「…………」

洋榎「ここが白糸台か……」

洋榎「よし…」ピッ..プルルルル....ガチャ

洋榎「あ、もしもし絹?ありがとう。ちゃんと着いたわ。ホンマ助かった」

洋榎「……え?ただ白糸台の強さの秘密を探れるかもしれんていうだけの事や」

洋榎「学校の近くをぐるっと回ったら帰るから…………ん?せやけど調べてみな分からんやんか」

洋榎「なんか見つけたらちゃんと絹にも教えるわ。期待しとき。ほなな」ピッ

洋榎「ふー……」

洋榎(絹も案外頭固いなぁ。環境っちゅうのはめっちゃ大事やないか)

洋榎(普段歩いてる通学路とか地元に住んでる人の感じとか、部活帰りに商店街で買い食いするお惣菜とかがあいつらの強さの秘密を握っとるかもしれんのに)

洋榎(こうして実際歩いてみる事で感じられるものもあるっちゅうもんや!)スタスタ

洋榎「お」

洋榎(本屋がある……確か宮永 照は本好きやったな。次の瞬間店から出てきてバッタリ、なんてなったらオモロイけどなー)

洋榎「ま、そうはイカの塩辛…」

照「…………」スッ..

洋榎「おお!?」

洋榎(ホンマに出てきた!なんちゅうタイミングや!)

洋榎(……あっ!イカの塩辛と言うてすぐのタイミング……鯛、ミング!)

洋榎(その鯛ミングで個人戦1位の宮永に会う……個人戦……人戦……新鮮!)

洋榎(しかも宮永は白糸台高校。白糸台はこないだのインハイでシード。つまり1回戦免除……1回戦……回戦……海鮮!!)オォオ..

照「…………」テクテクテク

洋榎「…………あ」ハッ!

洋榎(あかん!余計な事考えとる場合やなかった!追いかけな!)タタッ!

照「…………」テクテク..

洋榎「っ!ちょい待ち!」タタタッ!

照「?」

洋榎「よっ!」

照「…………愛宕さん?」

洋榎「そや!愛宕 洋榎や!」

照「どうしてここに?」

洋榎「親戚の家に泊まりに行っとってな。その帰りや」

照「そう……」

洋榎「おう」

照「………それじゃまた」クルッ

洋榎「はいはーい、車に気を付けるんやでぇ?あ、そや!お母ちゃん豆腐切らしてたわぁ……てる~!帰りに絹ごし豆腐買うてきてー!」

照「…………」テクテク

洋榎「………あれ?のってけぇへんちゅう事は……ボケちゃうんか?」

照「…………」テクテク

洋榎「お、おーい!!待ち待ち!」ダダダ!

照「……?」クルッ

洋榎「なんでもうお別れやねん!」

照「え?」

洋榎「薄情すぎやろ。知らん仲やないやろが」

照「それは……そうだけど」

洋榎「ボケたんや思ってのったのに手応え無いし、気付いたら背中しか見えへん。一瞬、客引きの気持ちとシンクロしたわ」

照「…………」

洋榎「……冷たい目ぇしおってからに……ちょうどええ。前々から宮永に言いたい事があったんや。ええ機会やし言うたるわ」

照「私に言いたい事?」

洋榎「そや。それを………って立ち話やなくて座ってゆっくり話したいんやけど……お、あそこに喫茶店あるやん。寄るで」

照「え?」

洋榎「ほれ、行こ行こ」テクテク

照「…………」

洋榎「……どないしたん?用事あるんか?」

照「ううん」

洋榎「ほなええやん。行くで」

照「分かった」

<喫茶店>

洋榎「なかなかええ店やな~」

照「うん。静かだから結構来る」

洋榎「そうなん?なんかオススメある?」

照「ホットケーキが美味しい」

洋榎「おっ、ほな頼んでみよ!昼前にガッツリ食うのもなんやし、2人で分け分けしようや。飲みもんは何にする?」

照「メロ………アイスコーヒー」

洋榎「よっしゃ、注文しよか。すんませーん!お姉さーん!」

店員「はい」

洋榎「ホットケーキとアイスコーヒー、あとメロンソーダください」

照「!」ピク

店員「かしこまりました。少々お待ちください」テクテク

照「…………」

洋榎「……なんや、やっぱメロンソーダ飲みたかったんか?」

照「…………」フルフル

洋榎「嘘つけ。インハイチャンプは強がりチャンプやなぁ」

照「そんな事ない」

洋榎「高校生がメロンソーダ飲んでも別にええやん。うちは全然気にせえへんけど」

照「…………」

洋榎「………注文変えるか?」

照「……………うん」

洋榎「よっしゃ。あのー、すいませーん!!アイスコーヒーキャンセルでメロンソーダに変更お願いしますー!!」

店員「あ、はい。かしこまりました」

照「………ごめん。ありがとう」

洋榎「別にええって。インハイチャンプ兼ドンマイチャンプや」

照「あの……インハイチャンプって言うのやめて」

洋榎「え?」

照「その呼ばれ方、恥ずかしいから」

洋榎「そう?分かった。ほなチャンプインハイって呼ぶわ」

照「……………………」

洋榎「おお、ムッとしとる……冗談やんけ」

照「……………」フゥ

洋榎「あっははは」

照「………それで、私に言いたい事って何?」

洋榎「そんなん注文したんがきてからでええやん。話途中の大事なところで『お待たせしましたー』ってこられたら『むぅ……』ってなるし」

照「……そう?」

洋榎「そうやで?分かりやすく説明するとな?家で推理もののドラマ観てて、主役の刑事が犯人を暴こうとす…」

店員「メロンソーダお待たせしましたー」コト..

洋榎「むぅ……」

店員「ごゆっくりどうぞ」テクテク

洋榎「……めっちゃ適切な例え話やったのに……いいところで……」

照「………なるほど。確かに運ばれてきてからの方がいいね」

洋榎「いや、今ので納得すな。ちゃんとビシッと説明したるから」

照「でも、もう……」

洋榎「ええから!家で推理もののドラマ観てて、主役の刑事が犯人を暴こうとするその時!い」

店員「ホットケーキお待たせしましたー」コトーン

洋榎「むぅぅん……」ギリリリ..

照「……大体予測つくでしょ……」

洋榎「おかしい……やけに早いやんけ……ちゃんと焼いてるんかこれ……」ブー

照「焼いてるよ」

洋榎「どれどれ………もぐ……もぐ」

照「…………」

洋榎「!!な、なんやこれ!めっちゃ美味いやん!!東京やるなぁ!!」ウッマァァ!

照「……食べながら喋るから唾が……」フキフキ..

洋榎「すまん!これ半分ずつやと損や!もいっこ注文するで!お姉さーん!!」

照「………」クス

10分後―――

洋榎「ふぅ~……もう食えへん」ウェプ

照「…………」

洋榎「しっかし、こんな美味いホットケーキ出す店教えてもうてホンマラッキーや!ありがとな!」

照「え?うん」

洋榎「はぁ~……幸せやぁ……」ダラー

照「…………ねえ」

洋榎「なんやぁ?」

照「私に言いたい事って?」

洋榎「あ……」

洋榎(完全に忘れてた!あかんあかん!)

洋榎「よ、ようやく気付いたか!まったく、忘れてるんちゃうやろか思ってドキドキしたで」

照「…………………」

洋榎「う……すまん、うちが忘れてた」

照「うん」

洋榎「………えとな、話っちゅうのは割とマジな内容やねん」

照「………」

洋榎「宮永は……来年プロに行くんやろ?」

照「………うん」

洋榎「その事でちょっと気になってな」

照「?」

洋榎「正直…………苦労すると思うで」

照「………それは分かってる。プロになってすぐ通用するとは思ってない」

洋榎「いや、そういう意味やないんや」

照「え?」

洋榎「うちが言うてんのは、プロチームに入団した後の人間関係で苦労するって言うてんねん」

照「…………」

洋榎「うちは前々から思っとったんや。宮永はマスコミの前やと明るく元気で礼儀正しいっちゅうキャラやけど、ホンマは全然ちゃうやん」

照「それは……」

洋榎「いや、悪いとは言わんで?ただ宮永本人があまりにもそのキャラとかけ離れてるやん?暗いっちゅうたら言いすぎかもしれんけど、なんかなぁ……」

照「……白糸台では上手くいってる」

洋榎「それは分かんねん。せやけど高校の部活とプロは違う」

照「………」

洋榎「プロはみんな年上やから若いやつに対するなんとも言えん感情があるらしいし」

洋榎「あとプロ雀士ってグッズ売り上げとか人気商売の側面もあるやろ?それを考えると宮永みたいにめっちゃ可愛い子は特に嫉妬されるやろな」

照「えっ」

洋榎「ん?どないしたん?」

照「あ、いや……今、かわ…………なんでもない」

洋榎「?まぁええわ。それでな、チーム内できちんと人間関係を築けへんかったら辛いでぇ……ちゅうてな」

照「う………」

洋榎「……ちなみに、宮永って友達おるん?」

照「………い、いるよ」

洋榎「誰?」

照「………菫」

洋榎「すみれ?……ああ、弘世な。他は?」

照「……淡」

洋榎「大星 淡か。でもあの子は友達やなくて後輩ちゃうん?」

照「こ、後輩で友達」

洋榎「…………」

照「…………」

洋榎「普段大星と遊んだりするん?」

照「す、する」

洋榎「へぇ、どこ行くん?」

照「外……」

洋榎「外のどこや?」

照「…た、楽しいところ」

洋榎「楽しいところって?」

照「…………ディズニーランドとか」

洋榎「へぇー……よう行くん?」

照「う、うん……」

洋榎「………チケット料金は?」

照「えっ?」

洋榎「ディズニーランドの1日分のチケット料金。よう行くんなら知っとるやろ」

照「……………」

洋榎「…………」

照「……………」

洋榎「…………」

照「…………ホットケーキ食べる?」

洋榎「いらん」

照「……………」

洋榎「…………」

照「……………」

洋榎「ホンマは行かへんねやろ?」

照「……………うん。部活以外では全然会わない」

洋榎「…………」

照「……………」ズーン

洋榎「そない落ち込まんでも……うちは友達がおらん事を責めてるわけやないで?」

照「おらんわけじゃない。菫がいる」

洋榎「……そこは譲れないんやな」

照「菫は友達……うん」

洋榎「……あのな?友達が少ないのは別に構へん。多ければそれでええって事もないし」

照「?」

洋榎「ただ……今の宮永は圧倒的な強さで周りを引っ張っていっとるけども」

洋榎「プロに入ったらそう上手い事いかんやろ。高校とはレベルがちゃうし、実力だけではなかなかやっていけへん」

照「…………」

洋榎「今のままの宮永やと………鳴り物入りでプロになって活躍するものの、チームメイトと上手くいかず、次第に孤立していく」

照「………う」

洋榎「試合終わりにチームメイトたちは仲良く飲み会。宮永は1人、昔のミステリー小説を読み続ける」

照「…………」ズーン..

洋榎「所属チームなのに肩身が狭く居場所が無い。お昼休みはいつも便所飯や」

照「便所飯?」

洋榎「…一緒に食べる相手がおらん。そんで1人で食べてるのを見られたないからトイレの個室でご飯を食べる。それが便所飯や」

照「寂しい……」ズズーン

洋榎「そやろ?うちの予想やと宮永はホンマにこうなる可能性が高いと思うわ」

照「絶対嫌……」ズズズーン

洋榎「けどな、絶望するんは早いで!」

照「?」

洋榎「宮永が便所飯生活にならへんように、うちが協力したる!」

照「え……?」

洋榎「せやから大船に乗ったつもりでいてええでー!」

照「…………」

洋榎「ん?どないしたん?」

照「どうして」

洋榎「?」

照「……どうして協力なんて…」

洋榎「……宮永は……うちが認めてるやつやからや。その宮永が人間関係でボロボロになるなんて気分悪いやろ」

照「…………」

洋榎「そんなん………絶対嫌やねん」

照「愛宕さん……」

洋榎「あ……ちゃ、ちゃうで!?いつかけちょんけちょんにしたろ思てんのに自滅されたら困るやん!?そんな感じのノリや!」

照「それでも協力してくれるのは嬉しい」

洋榎「うぅ……とにかく!うちの言う通りやれば上手くいくから、試してみぃや!」

照「……一体どうするの?」

洋榎「うちが思うに、人間関係を上手く回すには………ツッコミが大切や!」

照「つっこみ?」

洋榎「そや!漫才のツッコミやな!」

照「?……今いち見えてこないけど……どういう理屈なの?」

洋榎「……ちょっと待ってな」

洋榎(なんて言うてたっけ?えーと……)

~~~~~~~~~~~~~~~

<姫松高校 教室>

洋榎「ツッコミ?」

恭子「ええ。ちゃらんぽらんな主将が好かれる理由を考えているうちにその考えに辿り着きまして」

洋榎「んんー……ツッコミが人間関係にええ、か……」

恭子「主将、いつもガンガンつっこむやないですか?あれが案外大きいんやないかなーと」

洋榎「ほお」

恭子「なんでもかんでもつっこまれるのも結構めんどくさいですけど、コミュニケーションに違いありません」

洋榎「めんどくさいんかい」

恭子「実際、親近感って言うか……つっこまんと眺めてる人より話し掛けやすくはありますし」

洋榎「ほう」

恭子「ツッコミによっては細かいところ見てるなぁと思う事もあって……たまに嬉しかったりします」

洋榎「へえ」

恭子「あと褒める事もありますよね?その時も素直に受け止められるんですよ」

恭子「あまり話し掛けてこない人に急に褒められるとゴマスリっぽく感じますけど、普段つっこまれてると違和感ないんです」

洋榎「ほうほう」

恭子「別にお笑い的なツッコミやなくても相手から会話を引き出す手段になりますし。そうすれば自分に話題が無くても会話が成立します」

恭子「ツッコミの度合いによっては嫌われますが、そこを上手く調節すれば人間関係を円滑にする方法として使えるんじゃないかと」

洋榎「なるほど」

恭子「主将みたいなリーダータイプ以外にも応用出来ますし、人付き合いが苦手な子に役立つかもしれへんと思いまして」

洋榎「む!」

恭子「後輩に何人か人間関係で悩んでる子がいてますのでこれを…」

洋榎「恭子!」

恭子「なんですか?」

洋榎「人付き合いが苦手なやつにはツッコミが必要なんか?」

恭子「んー……必要というのは大げさですし、適性とか環境を考慮しないとあきませんけど……応用が利くので取っ掛かりとしてはいいかと」

洋榎「分かった……恭子を信じる」

恭子「はぁ……誰か悩んでる子がいてるんですか?」

洋榎「ま、まあアレや……心配なやつがな」

恭子「へえ……誰です?」

洋榎「そ、そんなんどうでもええやんけ!」

恭子「珍しい反応……気になりますわ」ジィー

洋榎「うう……」

~~~~~~~~~~~~~~~

洋榎(そやったそやった)

洋榎「あのな?つまり―――」

(説明中)

洋榎「―――という感じやな」

照「なるほど……なんとなく分かったけど、具体的にはどうすれば?」

洋榎「例えば……先輩と2人でお茶してるとするやん?そんで先輩がストローを吸おうとした時、よそ見してて空振ったとする」

洋榎「ここで『ストロー扱えてませんやん』とかつっこめば『うっさいなぁ』って返ってくるやろ。その繰り返しで仲良うなってく」

照「……その先輩怒るんじゃない?」

洋榎「それは言い方とか態度によるやろな。言葉だけ聞いたら馬鹿にしてるように感じるやろうけど、根っこに相手への好意があればそない怒られへん」

照「好意……」

洋榎「そや。ホンマに馬鹿にして言うてるか、相手はなんとなく分かんねん」

洋榎「同じ様な事言われても相手によって感じ方がちゃうやろ?あれって自分の機嫌も関係しとるけど、相手がこっちに好意を持ってるかがデカいんや」

照「なるほど……」

洋榎「もちろん全員に当てはまるわけちゃうから怒る人もおるやろうけど、その場合はツッコミを休んで肯定しながら会話を…」

1時間後―――

洋榎「で、ノリツッコミするもよし!あるいは一発ギャグで落とせば大爆笑の人気者や!」

照「すごい……」

洋榎「せやろ?一緒におって楽しい人とは遊びたなるから誘われるようになるし、周りが楽しんでくれてると自分も嬉しなる。めっちゃ連鎖や!」

照「理想的…………でも」

洋榎「うん?」

照「今から………間に合うかな?」

洋榎「間に合う!心配すな!」

照「……ほんと?」

洋榎「当然や!うちがついてるからな!」

照「愛宕さん……」

洋榎「愛宕さんなんて呼び方はもうやめようや!今日こんだけ話したんや、うちらはもう友達やんけ!」

照「!!」

洋榎「せやから………?どないした?」

照「………しい」

洋榎「?」

照「嬉しい……同学年の子にそんな事言われたの初めて……」

洋榎「……ふ、ふーん……そうなんか………うちが初めてか……」フフッ

照「うん」

洋榎「っと!それはともかく!愛宕さんなんて他人行儀な呼び方はやめや」

照「あ……うん……」

洋榎「これからは………愛宕さん家の娘さんって呼んでや」

照「え?それだと今より……」

洋榎「もぉぉ……そこは『なんでだよ!』みたいなオーソドックスなツッコミやんけ~」

照「ああ……しまった……」

洋榎「分かりやすくベッタベタなボケやんかぁ……油断しとったらあかんよ?」

照「うん、気を付ける」

洋榎「んじゃ、うちの事は愛宕さんなんて他人行儀な呼び方やなくて、大阪で生まれた女って呼んでな?」

照「………友達を名曲のタイトルで呼びたくない……あと他人行儀度合いが増してるから」

洋榎「おっ、ええやんか!飲み込み早いなぁ」

照「やった……」ホッ

洋榎「そんな感じでやってけば問題なしや!」

照「うん。頑張る………最初はチームメイトで試してみるよ」

洋榎「そやな、初対面でいきなりは辛いやろからな。身内を相手にして徐々に慣れていくんや!」

プルルルル..

照「あ……電話……ちょっとごめん」

洋榎「ん?おお」

照「………もしもし………うん………うん…………分かった………それじゃ」ピッ

洋榎「?」

照「母親からで……ちょっと用事が出来ちゃった」

洋榎「そっかー……残念やなぁ……」

照「うん……ごめん」

洋榎「いや、謝らんでええって。しゃあないやん。それより」

照「?」

洋榎「……け、携帯の番号とアドレス……交換せえへん?と、友達……やし……」

照「あ、うん。交換しよう」

洋榎「おう!ほなら……―――」

(登録中)

照「―――出来た」

洋榎「うちもや」

洋榎(うちの携帯に宮永 照の番号が……)フフ..

店員「ありがとうございましたー」

照「……それじゃあ私は……」

洋榎「あ、おう。用事やもんな」

照「うん…………」

洋榎「…………?どしたん?」

照「今日は……色々とありがとう」

洋榎「う、うちは思ってた事を言っただけやから」

照「本当に嬉しかった……私のためにこんなに親身になってくれた人、初めてだったから……」

洋榎「ふ、ふーん……」

照「早速明日から頑張ってみる………愛宕さんのためにも」

洋榎「うぇっ!?う、うちのため!?それってどういう…」

洋榎(ま、まさか……宮永もうちの事を好きに…)

照「あっ!その……協力してもらったからには頑張らないと、愛宕さんをガッカリさせちゃうだろうからって意味で…」

洋榎「お、おお……そういう事か……ま、まぁ、なんか困った事あったらいつでも連絡しぃや」

照「うん………それじゃ」

洋榎「ん……」

照「ま、またね…………………洋榎」

洋榎「!!」

照「…………」カァァア..

洋榎「……い、今……」

照「じゃ、じゃあ…本当に行くね」テクテクテクテク!

洋榎「……………」

洋榎(…………ひろえ……って)

洋榎「ふふ……ふふふふふ…………おおおおおお!!!!」

プルルルル...

洋榎「なんやねんホンマ!」ピッ!

洋榎「照れるやんけぇええ!!!」モシモーシ!

恭子『っ!?ビックリした……どんな第一声ですかもう……』

洋榎「恭子か!ちょうどええわ!」

恭子『?ちょうどええって何がです?』

洋榎「うちの名を言ってみろぉ!!」

恭子『………はい?』

洋榎「うちの名を言ってみろぉ!!」

恭子『はぁ………めんどくさいなぁ、こいつ……』ボソ

洋榎「言ってみろぉ!!」

恭子『愛宕 洋榎主将です』

洋榎「そや!うちは洋榎や!!あはははは!!」

恭子『……落ち着いてから掛け直してください。それじゃ』ブツッ

ツーッ..ツーッ..

洋榎「宮永が………いや!……て……照がうちを下の名前で呼びよったーーーー!!」ガオォオ!

翌日―――

<白糸台高校 麻雀部部室(A室) 前>

照「…………よし」

照(今日のA室はチーム虎姫専用……他の部員はいない)

照(チャンスだ。菫たちを相手につっこんで練習しよう)

照(プロでご飯を食べていくつもりだったけど、トイレで食べるつもりはない。今が正念場……ちゃんとコミュニケーションをとれるようになるんだ)ヨシ..

ガチャ

照「………おはよう」

尭深・誠子「!」

照(亦野と渋谷だけ……これならいけそう)

誠子「あ、お疲れ様サマです」

照「っ!」

照(ここだ!)

照「お疲れ様サマって……野菜マシマシじゃないんだから!」

誠子・尭深「えっ」

照「すごい疲れたがってるみたいだよ!」

誠子・尭深「…………」

照「…………え、えっと……その……今のはラーメン二郎の野菜が…」

誠子「あ、いえ!意味は分かります。ただ……ビックリしたと言いますか……な?」

尭深「………」コクコク

照「う……」

照(ここで引いたらダメ!)

照「そ、そうなんだ?お………驚きロキなんだ?」

誠子・尭深「……………」

照「…………」

照(うう……この空気……)ズーン

誠子「あっ……そうです!驚きロキです!な!?」

尭深「えっ?あ、うん」

照「亦野……」

誠子「そ、そうだ!宮永先輩、お茶飲みましょう!いいお茶葉ッパが手に入ったらしいので!」

照「あ……うん……ま、亦野もお茶飲むノム?」

誠子「い、いえ、私は大丈夫ウブです」

照「そう……」

尭深「えと……私が……じゅンビンビします……」

照「…………」

誠子「…………」

尭深「…………」コポ--..カチャ

照(なんか……先輩のノリに無理矢理付き合わせている感じが部室中に漂ってる……言い出したのは亦野なのに……)ズーン

照(……いや、最初だから戸惑ってるだけ……そう思おう。ここでくじけたら何も変わらない)グッ

尭深「お茶です……どうぞ……」コト..スッ..コト..(一旦置いて再度持ち上げ、置く)

照「置く時まで繰り返さなくていいから!」ビシッ!

尭深「ひっ!す、すみません……2回繰り返すルールなのかと……」

照「あ……うん……渋谷は悪くないよ……ごめんね怖がらせて」

尭深「い、いえ……あの、すいません…私ちょっとトイレに行ってきます」スクッ..スタスタ

照「あ……」

ガチャ パタン

照「…………」

照(後輩にひっ!って言わせちゃった……急に大声でつっこんだからだよね……)

照(相手によってトーンを変える必要があるって洋榎は言ってた。あとノリによってはツッコミを控えるとも…)

照(……その場合はどうするか。まずは相手の気になるところや興味ある事を聞く、だったっけ)

照(そのやり方は渋谷が戻ってきたら試すとして、その前に亦野と仲良くなろう)

照「……ねえ亦野」

誠子「は、はい」

照(楽しい空気を作るように意識しながら……)

照「前から気になってたんだけど、どうしてお疲れ様サマって言い始めたの?」

誠子「え?」

照「今年のインハイの準決勝で私が先鋒戦を終えて帰ってきた時からだよね?」

誠子「そうですね。あの時から気に入って使ってます」

照「どういうきっかけで生まれたの?」

誠子「えーと、宮永先輩が大量に点棒を稼いできてくれたので、お疲れ様だけだと感謝が足りないなと思い、もう1つ様を追加してみました」

照「なるほど……『お腹ペコ』より『お腹ペコペコ』の方が空腹度が高いのと同じだね」

誠子「……お腹ペコって言います?」

照「……そこに気付いちゃダメ。言った本人が一番分かってる」

誠子「ごめんなさい」アハハ

照(!?笑ってる……私がつっこまれた形だけど、いい感じ)オォ..

照「あ、じゃあさ、もし私が15万点稼いでたらなんて迎えてくれた?」

誠子「え?えーと……お疲れ様サマサマです……だと思います」

照「じゃあじゃあ20万点なら?」

誠子「お疲れ様サマサマサマです」

照「なるほど!!それじゃあ50万点ならっ!?どう!?」

誠子「50万稼ぐ前に誰か飛んでます」

照「急に真面目っ!!」

誠子「あ、すいません」

照「ビックリした……舞台版ピーターパンが浮遊してる時みたいな高揚感だったのに……糸切られた……」

誠子「そんなつもりはなかったんですけど」クスス

照「……じゃあ改めて。私が……40万点稼いだとしたらどう迎えてくれる?」

誠子「え?やっぱり…」

照「待って!40万点なら今までとはガラッと違う切り口のはず!さあ、どうする?」

誠子「ええっ?違う切り口……?うーん……」

照「……ふぅー、先鋒戦を40万点差で終えたよ……亦野はどう迎えてくれるんだろう?スタスタテクテク…」

誠子「うーんうーん……」

照「さて、控室のドアを開けよう……………………ガチャ」

誠子「えと………たたおたつたたたかれたたたさたまたたたたさたたたたまでたたたたたすた…」

照「………えっ?何その言葉の波…」

誠子「あっ……その………あらかじめタヌキのぬいぐるみか何かを用意しておいて、それを抱えながら今のセリフで出迎えます……」

照「?……あ!『た』を抜くって意味?」

誠子「そうです」

照「……激闘後に控室に帰ってきて最初にする事が後輩のメッセージ解読って……」

誠子「どっと疲れますね……」

照「……………」

誠子「…………」

照・誠子「ぷっ……あははは」

誠子「なんなんですかこの会話。あははは」

照「本当だね。ふふふふっ」

照(やった……スムーズに会話が出来た!ツッコミってすごい!)

照(それと亦野って思ってたより話しやすい。もっと前から喋ってればよかった……いや、今から過去の分を取り返せばいい。そのためには……)

照(…………よし!)

照「あ、あの……さ」

誠子「はい」

照「…………ま、亦野って呼ぶのもさ、他人行儀だよね。チームメイトなのに」

誠子「あ………えーと……そう、ですね」

照「だから…………せ、誠子って呼んでも……いい?」

誠子「!もちろんですよ!」

照「よかった……あ、私の事も下の名前で呼んでね………誠子」

誠子「は、はい………それじゃ……………照先輩」

照「あ……」

誠子「あはは……なんか……照れます……」

照「うん……」

照(これでさらに親密になれた!やった!)

ガチャ

尭深「…………」パタン

照(あ、いいタイミングで戻ってきた。今の流れのまま一気にいこう)

尭深「…………」スタスタ..スワリ

照(渋谷は積極的に話すタイプじゃないから、こっちから会話を膨らませる必要がある)

照(そんな時に使える手段は……なんだっけ?あ、そうだ。会話の入りで和ませて相手の緊張を解いて相手を饒舌にせよ!だった。よし……)

照「渋谷」

尭深「あ、はい……」

照「渋谷はお茶飲むのと断食、どっちが好き?」

尭深「え?」

照(これならどう答えられても対応出来る。この偏った質問自体につっこんできても会話を続けられる)

尭深「それはお茶ですけど……断食も体にいいって聞きますし、興味あります」

照「どっちも?欲しがり屋さんだね。タッちゃんカッちゃんまとめてポン、という感じ?」

尭深「…………」

照「う……」

照(反応が無い……しまった……タッチを知らないのかな?それとも……)

誠子「ポンと言ったら私ですね!」スッ

照「え」

照(誠子?……もしかして、私をフォローしに……)

照「あ、うん。そうだね!誠子はポンが得意」

誠子「はい!」フムン

照「人呼んで!白糸台の!シャープ?」

誠子「フィッ……それ弘世先輩です」

照「あ……」

照(間違えちゃった……ここはちゃんとしないといけなかったのに……)アア..

尭深「ふふ……」

照「?」

尭深「ふふふふ……2人とも………おかしい……」クスス

誠子「はははっ」

照「……はは……」

照(渋谷が……笑ってくれた……これはナイスコミュニケーション……だよね?)ヤッタ

尭深「ふふふ」

照(このチャンスは逃さない!)

照「あ、あのさ……今まで渋谷って呼んでたけど、なんだかんだで私たちの付き合いも結構長いよね?」

尭深「え?はい……レギュラーになる前からお世話になってますから」

照「だからその…………これからは尭深って呼んで……いいかな?」

尭深「はい」

照「………い、いいの?」

尭深「はい」

照「た、尭深?」

尭深「はい」

照「……渋谷?」

尭深「はい」

照「………………」

尭深「?」

照「……誠子?」

尭深「………」

誠子「はい」

照「だよね。よかった……相槌に徹してるのかと思った」ホッ

尭深・誠子「?」

照「……本当にいい…んだよね?嫌なら言って」

尭深「嫌なんて……そんな事ありません」

照「本当?」

尭深「はい」

照「じゃあ尭深って呼ぶね。それと私の事は照って呼んでくれる?」

尭深「えっ!でも呼び捨ては……」

誠子「照先輩って呼べばいいんじゃない?」

尭深「あっ!私ったら……」

照「照でもいいけど」

尭深「い、いえっ!て、照先輩で……」

照「分かった。じゃあそういう事でよろしくね、尭深」

尭深「はい。こちらこそよろしくお願いします。照先輩」

照(やっぱり名前で呼び合うのって仲良しな感じですごくいい……)オォ..

ガチャ

淡「ただいまーっ!!あー、疲れたぁー!」

誠子「ん、お疲れ」

尭深「お疲れ様」

照「淡……おつか…!」ハッ!

照(そういえば……淡みたいに元気な子は話し掛けられるのを待ってるばかりだと寂しがるって洋榎が言ってたっけ)

照(効果的な方法は、こちらからも適度にいじったり褒めたりを繰り返してコミュニケーションをとるといい、だったかな)

照(このままだと淡が私に話し掛けてきて淡のペースになる。それを避けつついじる方法は……)

照「……誠子、協力して。まず………」ヒソヒソ

誠子「?……………はい、分かりました」

照「ありがとう。こほん!………淡」

淡「?」

照「…………」ガシッ(誠子の肩に腕を回す)

淡「どうしたのー?」

照「たたたたおたたたつかたたたれたたさたたまたたたた」(お疲れ様)

淡「え?え?」

誠子「…………」ムン!(タヌキの顔真似)

照(タヌキのぬいぐるみは無いけど、誠子がタヌキの顔真似をしてくれてるから分かるはず……)チラ..

誠子「…………」ムン!

照「っ!?たたにたたてたたたなたたたさたたたすたたぎ!」(似てなさすぎ!)

誠子「え?えーと…………に………て……な………さ…………って!そもそも無茶なんですよっ!真似した事ないですもん!!都会ではタヌキなんか見ませんし!」

照「たたどたたうたたたぶたたつずたたたかたたんたたとたたかたた」(動物図鑑とか)

誠子「ど……う…………ぶ…つず……か……………まぁ、それはそうですけど……あともうそれやめてくださいよ。神経使いますから」

照「分かったたた」

誠子「名残出てます」

淡「て、テルが変になっちゃった!?た、たかみ先輩!」タタタ

尭深「あ……別にそういう訳じゃない………と思う」

照(本気で心配されてしまったが……まだまだこれからだ)

照「………淡」

淡「テル………もう治ったの?」

照「うん」

淡「よかったー」ホッ

照「……ねえ、淡は実力的には高校100年生なんだよね?」

淡「へ?うん、そうだよー♪」

照「100年生と99年生との違いって何?」

淡「えっ」

照「…………」

淡「それは……99年生より強いんだよ」

照「じゃあ例えば……高校99年生が半荘で毎回17000点プラスになるとする。そして1日半荘27回打つとして、79日分を合わせたらすごいプラスだよね」

淡「う、うん」

照「高校100年生はもっと点を稼ぐの?」

淡「そ…そりゃあもう!」

照「具体的には何点?」

淡「えっ」

照「99年生と同じように1日半荘27回で79日打ったら、高校100年生は何点プラスなの?」

淡「えーと……ひゃ、ひゃくまんてんプラスだよ!」

照「………99年生はもっとプラスだけど」

淡「えっ!」

照「……淡は高校嘘年生だったの?」

淡「ち、違うよっ!今のは……」

照「落ち着いて?冷静に計算してから答えればいいよ」

淡「う、うん……えと……17000かける27は……7かける7、7かける1…」

照「1、4、2、4、5、6、7、3、5、0、7、8、3、5、7……」

淡「あ、あ……やめて……計算が」

照「A、D、K、E、L、A、I、U、D、M、E、G……」

誠子「それ妨害になってます?」

淡「あああ……分かんなくなっちゃった……」

照「淡……」

淡「ち、違うのっ!本当に100年生なんだよっ?ただちょっと計算が…」

照「うん、私はちゃんと分かってるよ」

淡「テル……」

照「意地悪してごめんね?」

淡「うぅ……ほんとだよー」

照「淡って可愛いから、今みたいにからかいたくなっちゃう」

淡「え!?」ドキン

照「慌ててる顔、可愛いねー」プニー(淡のほっぺたを撫でる)

淡「わわわっ!」

照「それそれ」プニープニー

淡「もー、やめてよぉテルー♪」

照(いじった後は褒める。普段触れ合ってくる相手には触れ合いを返すと喜ぶ……洋榎の言う通りだ)プニー

淡「えへへー」

照「ふふっ」

照(ぐっと距離が近付いた気がする……うん、大成功)

照(これで後は菫を残すのみだけど……手強そう。戻ってくる気配も無いし、先に成功報告しておこう)

照(連絡先……)ピッピッ..

『愛宕 洋榎』

照「………ふふ」

淡「なになにー?テル楽しそう」

照「普通だよ」ピッピッ

淡「んー?そうかなー?」

照(あ、ついでに菫の対処法も聞いてみよう)ピッピッ

<姫松高校 麻雀部部室>

洋榎「……………」

洋榎「はぁあ……」

洋榎「……………」ピッピッ..

洋榎「………やっぱ来てへん……はぁあ………」




恭子・由子・絹恵・漫「………………」

由子「今日はずっとため息ばっかりなのよー。なんでか知ってる?」

恭子「宮永 照からメールも電話も来ないのが寂しいらしいで」

由子「え?宮永 照とメールしてたん?初耳なのよー」

恭子「いや、昨日交換したらしいねんけど、全然メールけえへんて落ち込んでんねん」

由子「?せやけど用事も無しにそないメールするタイプには見えないのよー」

恭子「私もそう思うんやけどな。えらいへこんでんねん」

漫「朝会うた時もめっちゃ背中丸まってましたもん。つい励ましてまいましたよ」

絹恵「上重さんから励ますて珍しいなぁ」

漫「うん。いつも主将からやからね」

恭子「メールをそこまで心待ちにするぐらい宮永 照が気になってるんかな?」

絹恵「……直接お姉ちゃんから聞いた訳やないですけど、そうやと思います」

漫「へぇー、なんでそう思うん?」

絹恵「お姉ちゃん……宮永 照の話になると、悪口っぽく言いながらも絶対『可愛い』って言うんです」

由子「?」

絹恵「インハイ前も『可愛いからって調子乗るんやないでー』とか『負かして涙目にしたったらもっと可愛いやろな!いい気味や』言うて」

由子「……それに加えて1日メールけえへんだけであの落ち込みよう…」

恭子「完全にやられてもうてるやん」

絹恵「はい。お姉ちゃんが自分より強いって認める人ですし」

漫「なるほど……」

洋榎「はぁあ……」

♪~

洋榎「メールや!!もしかして…」ピピッ..

『宮永 照』

洋榎「きたぁ!照やんけ!!遅いわボケェ!あははは!」



恭子「メッチャ嬉しそうやな」クス

絹恵「あのリアクション……正月のお雑煮に餅が3つ入ってた時と同じくらい喜んでる…」

由子「それはかなりの喜びなのよー」

漫「…逆に餅以外の具材ケチってる感じしません?」

洋榎「どんな内容や~?」

『幸福の味』

洋榎「おおっ!目を引くタイトルやんけ!」ピッ

照『ツッコミを意識して頑張ったらチームメイトと前より仲良くなれた。洋榎のおかげ。本当にありがとう』

洋榎「あ……アホゥ!照れるやないか!直球チャンプめ!」デヘヘ

照『ちょっと聞きたいんだけど、菫相手だとつっこんでもさらっと流されそうな気がする。どうしたらいいかな?』

洋榎「………ふむ……確かに弘世やと話が盛り上がって仲良うなるっちゅうイメージが湧きにくいな……」

洋榎「ツッコミどころも少なそうやし……となると軽くボケてつっこませる方がいいか……うん、そやな。弘世はツッコミっぽいし」

洋榎「ええっと……弘世の場合は会話中に小ボケを織り交ぜれば会話が続いて仲良くなれると思うで……」ピッピッピッ..

洋榎「……送信っと」ピッ

洋榎「ふぅ……結果が楽しみやな」ヘヘヘ

恭子「ふむ……宮永 照が弘世 菫と仲良うなれるよう協力してるんかな?」

由子「いつもメールの内容を口に出しながら打つから分かりやすいのよー」

絹恵「そうなんです!『元気やで……びっくりまーく』とか言うて!そんなお姉ちゃん可愛いないですか!?」ズズィ!

由子「か、可愛い可愛い」ノヨー

恭子「どちらにせよ、親身になって相談に乗る主将は……」キュキュキュ

漫「へ?」

恭子「………こうやな」キュッ

漫のおでこ『優』

絹恵「ですよね!お姉ちゃん優しい!」ワー!

漫「ああーっ!!また!ちょっと末原先輩!」

恭子「水性で書いたんやから水に流してや」

漫「うぅ……少し上手いのがまた……くっ」

<白糸台高校 麻雀部部室(A室)>

照(………なるほど、小ボケか……)

ガチャ

菫「すまない、遅くなった」

照(来た!)

誠子・尭深「お疲れ様です」

淡「お疲れ様ー!」

菫「ん?まだ打ってなかったのか?」

照「…………」スクッ

菫「?どうした?」

照「うわ……菫のスカート、長すぎ…?」

菫「いや、今さらだろ」

照「…………」

菫「………?」

照「……菫って全然笑わないよね」

菫「は?そんな事はない……今のは笑わそうとしたのか?」

照「ま、まさか」

菫「………第一、私よりもお前の方が笑わないではないか」

照「え、私は笑うよ」

菫「そうか?」

照「うん。クローズの九能 龍信より少し笑わないくらいだけど」

菫「それだとほとんど笑わないじゃないか」

照「…………」

菫「………?」

照(真顔で返される……)

菫「そうだ。お菓子を買ったんだが食べるか?」

淡「あー!テルだけずるいー!」

菫「心配するな。ちゃんとみんなの分はある」

淡「やったー!」

尭深「お茶用意します」

誠子「お皿お皿……」

照「……私はいい」

菫「え?お前が大好きなお菓子だぞ?」

照「今日お菓子食べたし。あまり食べすぎるとニキビ出来ちゃうから」

菫「そうか」

照「……私みたいな今時の女子高生にとって新しいニキビは死兆星だからね」

菫「今時の女子高生は死兆星を知らないんじゃないか?」

照「…………」

菫「…………」

淡「??」シチョーセー?

照「………こほん」

照「どうもこんにちは。永水女子の3年生、宮永 照です」

菫「白糸台だろう」

照「…………」

菫「…………」

照「…………」スッ(携帯を取り出す)

菫「?」

照「…………」ピッピッ...

<姫松高校 麻雀部部室>

洋榎「おっ、また来た!!タイトルは…」ピッ..

『絶望の味』

洋榎「どないしてん!なになに……」

照『私の全てをぶつけたけど玉砕した。鉄の味がする。絶望ってこんな味なんだね』

洋榎「口ん中血ぃ出てるやん……よほど悔しかったんやろなぁ………照……」

洋榎(……なんて返したったらええんやろ?)

洋榎(………弘世は真面目プラス面倒見がいい感じやから、ボケに本音を混ぜて言うてみるのもあり……これやな)

洋榎「よし……弘世は真面目プラス…ああ……ピラスって打ってもうた」ピピッピ

絹恵「打ち間違えるお姉ちゃん可愛い!」

<白糸台高校 麻雀部部室(A室)>

尭深・誠子「…………」ハラハラ..

淡「お菓子まだー?」ウネウネ

照「…………」(菫のスカートを握っている)

菫「何故動いてはいけないんだ?」

照「いいから待ってて」

菫「まったく……何がなんだか」フゥ

♪~

照「!」ピピピ

照「………ふむふむ………なるほど」

菫「…………」

照「………菫」

菫「なんだ」

照「菫は冷たい」

菫「は?」

照「私が冗談を言っても冷たく流す」

菫「ああ……」

照「もっと仲良しになろうとする気持ちが生んだ冗談なのに」

菫「何…?」

照「…………」

菫「照……お前……」

照「……菫と仲良くなりたい気持ちを込めながら……おててのシワとシワを合わせてしあわせ。シャ~プ~♪」

菫「やかましい。お前いくつだ?」

照「分かる時点でマイフレンド」

菫「…………」

照「…………」

菫「……ふっ」

照「!」

菫「馬鹿真面目な顔して何を言ってるんだか」

照(菫が笑った!面白くてっていうよりちょっと呆れてる感じだけど……)

菫「……あー、その、なんだ。私ともっと……仲良くなりたいのか?」

照「……うん」

菫「…だったら最初からそう言え。大体、お前がいつも本ばかり読んでるから私は…」

照「……申し訳ない気持ちを込めながら……おててのシワとシワを」

菫「それは腹立つからやめてくれ」

照「う~ん~♪」

菫「な~む~のリズムで言うな。まったく、いきなり明るくなって……調子が狂うな」

照「………明るい私は………嫌?」

菫「…そんな事はない。前よりはよっぽどいいさ」

照「良かった」ホッ

菫「ふふ……」

誠子「それじゃあ、照先輩と菫先輩のベストフレンド記念にパーッとやりましょう!ね!?」

菫「亦野…」

尭深「美味しいお茶……淹れました」

淡「お菓子早く食べたーいっ!!」ウネウネ

菫「……そうだな。食べるとしよう」

照「……やっぱり私も食べたい」

菫「死兆星はいいのか?」

照「今は世紀末じゃないから」

菫「そうか」クス

翌朝―――

<白糸台高校 廊下>

照「~♪」

照(昨日だけで一気にチーム虎姫のみんなと仲良くなれた。少し前の私には考えられない)

照(人と話すってこんなに楽しい事なんだと今さらになって気付いた…)

照(それはメールにも言える。洋榎とメールするのが楽しくて仕方ない……ところどころに見え隠れする女の子らしさがたまらなく可愛い)

照(私の成長を喜んでくれてるし……本当、励みになる。今の調子で頑張ろう)

照(このペースで友達の輪を広げていけば色々な友達が出来て、プロに行く頃にはコミュニケーション能力抜群になってるだろう……)ヨシ

照(次の狙いは……麻雀部全体……いや…夢はもっと大きく、白糸台全体だ)ムン!

照(でもいきなり大人数と仲良くなるのは難しい……どうすればいいんだろう?)

照(……あ、持ちギャグがあると多くの人に好かれやすいって洋榎が言ってた……)

照「うん……いいかも」

照(これから全体集会の挨拶がある……そこでギャグを披露すれば……よし!集会の時間までに考えておこう)

<体育館>

教師A「では最後に、麻雀部の宮永さんから国民麻雀大会に向けた抱負を語っていただきます。宮永さんお願いします」

照「はい」スクッ

教師B「授業まで時間が無いから短めで頼む」ヒソヒソ

照「分かりました」テクテク

照「……………」

シーーーーーン...

照「私たち白糸台高校麻雀部は、国民麻雀大会に向け―――」

――――

照「―――戦うつもりです」

全校生徒「…………」オオオ..

照(うん。みんな真剣に話を聞いてくれている。これなら……)

照「……以上!お菓子大好きパクパク食べたら私自身がベーキングパウ永 照ですっ!!」ビシッ!(決めポーズ)

全校生徒「……………………………………………………………………………………………………」

照「……………………………………………………………………………………………………………」

教師たち「……………………………………………………………………………………………………」

全校生徒「……………………………………………………………………………………………………」

照「……………………………………………………………………………………………………………」

教師たち「……………………………………………………………………………………………………」

キーン コーン カーン コーン..

全校生徒「……………………………………………………………………………………………………」

照「……………………………………………………………………………………………………………」

教師たち「……………………………………………………………………………………………………」

全校生徒「……………………………………………………………………………………………………」

照「……………………………………………………………………………………………………………」

教師たち「……………………………………………………………………………………………………」

キーン コーン カーン コーン..

<姫松高校 教室>

♪~

洋榎「っ!照からや!」ピッ

『意外と悪くないね』

洋榎「おお!前向きな感じのタイトルやな!ええ事あったんか~!?」ピッ

照『洋榎が言うほどトイレで食べるご飯もまずくはないよ』

洋榎「おおい!それを避けるためにやっとんねん!!不幸を先取りすな!」

洋榎「何があったんや?」ピピピ..

照『全体集会でギャグをやったら体育館が完全に無音になったよ。一瞬神様がミュート押したのかと思った』

洋榎「メルヘンチックで可愛い表現やな……そうか……スベってもうたか……」

洋榎(なんて声掛けたったらええか……)

洋榎「……あ、恭子」

恭子「はい?なんです?」

洋榎「その……例えば友達がギャグやってスベってもうた時、恭子やったらなんて声掛ける?」

恭子「……そんなん、主将が一番良く分かってるんやないですか?」

洋榎「なんでうちがスベり王やねん。誰がクール&クールや!ほっともっとじゃ!」

恭子「…………」

洋榎「………今のは恭子が悪いで?」

恭子「いやいや、主将発主将行きやったでしょ。ブラックジャックや」

洋榎「誰が1話完結やねん!………ブラックジャックは分かりにくないか?」

恭子「ええ……ニュアンスだけやし、私もしもた!って思ったんですけど……」

洋榎「こういうの繋がると気持ちええよなー」

恭子「ですね~」

洋榎「…………」

恭子「…………」

洋榎「って、ちゃうわ。スベった時のフォローや!」

恭子「うーん……ギャグの種類によって向き不向きがあると思うんで、そこをフォローする感じですかね?」

洋榎「なるほど………そやな。参考になったわ、ありがとう」

恭子「いえ」

洋榎「えーと……ドンマイや。誰にでも失敗はある。それをどう次に活かすかが大事や」

洋榎「ただ、自分のキャラクターに合うギャグが出来るまではギャグ自体を封印しておいた方がええで……と」ピッピッ

<白糸台高校 女子トイレ>

照「封印……やっぱりそうだよね……」ハァ

照「…………みんなビックリしてたな……」パク..モグモグ

??「照先輩?」

照「!?」ピク!

??「私です。亦野です」

照「あ……誠子?」

誠子「はい。照先輩がトイレに逃げ込むのを見たって聞いて……」

照「………」パク..

誠子「その……さっきの事で落ち込むのは分かりますけど……」

照「………」

誠子「私は、あのギャグ結構好きですから」

照「!」ピクン

誠子「ベーキングパウダーはお菓子をパクパク食べた人で出来てるんだって考えると無駄使いしないようにしようと思えましたし」

照「誠子……」

誠子「それにみんなが無反応だったのも、今までの照先輩のイメージと違いすぎたからビックリしてただけだと思います」

照「…………」

誠子「だから……そんなところに閉じこもるのはやめましょうよ。ね?」

照「…………」

カチャ ギィ...

照「………ありがとう……誠子」

誠子「照せんぱ………な、何を食べてるんです?」

照「カレー弁当……」

誠子「よりにもよって………もう、高校生1万人の頂点が何してるんですか…」

照「……自暴自棄が高じてつい……」

誠子「さ、行きましょう?」

照「うん」ゴチソウサマデシタ

<廊下>

照「…………」ビクビク オドオド

誠子「そんなに脅えないでも平気ですよ」

照「でも………体育館を真空状態にした張本人だから……」

誠子「……それなんですけど、あれは照先輩の疲れがピークに達したんだという事になってます」

照「え?」

誠子「練習や大会……あとは取材とかによって溜まりに溜まった疲労が爆発した結果の行動なんだろう、と」

照「………」

誠子「ですので照先輩を心配する声が大半です。少なくとも照先輩に悪い感情を向ける人はいませんよ」

照「ほ、本当?」

誠子「はい」

照「良かった……」ホッ

誠子「…………あの」

照「?」

誠子「今日の事があったからって……やめないですよね?」

照「やめる?」

誠子「……冗談を言ったりする事をです」

照「あ……」

誠子「せっかく照先輩とたくさん話せるようになったんで、前みたいに静かな照先輩になるのは寂しいかなー、なんて思ったりしまして」

照「誠子……」

誠子「もちろん前の照先輩も嫌じゃないですけど……」

照「……大丈夫。今日のは間違いなくトラウマになるけど、前の私には戻らない」

誠子「良かった………やっぱりあれはトラウマですか?」

照「当然だよ……トイレに入ってすぐ白髪になってないかを確認したもん」

誠子「そこまでですか……」

照「ストレスフリーに腰かけた感じ?座っちゃうとある意味一番遠いからね。視界から消えちゃう」

誠子「なるほど……」

照「……そんなトラウマ体験をしたけど……これからも明るい私でいくよ」

誠子「照先輩……」ホッ

照「迎えに来てくれてありがとね」

誠子「あ、いえ……」

照(……洋榎の言う通り、今日の事は次回に活かせばいい。失敗は誰にでもあるんだし)

誠子「……ちなみに、ストレスで白髪が増える事はあっても一瞬で白髪になるっていうのはフィクションですよ」

照「失敗セカンドシーズン……」ハァァ..

誠子「か、勘違いは誰にでもありますからっ!」

1週間後―――

<白糸台高校 麻雀部部室>

照「…………」

照(悪夢の全体集会から1週間……心配され続ける日々からようやく抜け出した)

照(最初の内は騙しているみたいで申し訳ない気持ちでいっぱいだったけど、話し掛けてくれた子と軽い雑談をしているうちに仲良くなったり…)

照(私の雰囲気が柔らかくなったのか、地獄の全体集会とは関係なく声を掛けられる事も増えた)

照(結果的に大勢の人と会話をした事で経験も多く積めたし、死の全体集会がもたらしたのは絶望だけではなかったのかもしれない)

菫「みんな聞いてくれ。来週行われる練習試合の相手が決まった」

照「!」

菫「知っていると思うが念のためにもう一度言っておく。今回の練習試合は国民麻雀大会に出場する部員のみが参加だ。それ以外の部員は通常通りの部活動になる」

菫「試合の相手は岩手の宮守女子。先方のご厚意で宿舎を貸していただける事になった。参加者は前日までに泊まりの荷物を用意しておくように」

部員たち「はい!」

照「…………宮守女子……か」

照(これは……おそらく私をレベルアップさせる狙いも含まれてるんだろうな)

照(姉帯さんが相手だとリーチは封じられたも同然。その状態でどれだけ連続和了が出来るか……)

照「……………」

照(コクマに向けた調整も必要だし、姉帯さんと打ったらどうなるか楽しみ……だけどそれ以上に………)

照(白糸台以外の子と仲良くなれるチャンス!ワクワクしてきた……)オォ..

照(プライベートな会話なんて全然無かった相手と2日間でどれだけ仲良くなれるか……勝負だ!)

1週間後―――

<宮守女子高校 麻雀部部室>

照「こんにちは」

豊音「わわ、本物の宮永 照さんだよー!」アワワ

塞「オーラあるね……」

胡桃「うん」

白望「んー?でもなんか雰囲気が……」??

豊音「あ、あのあのっ!さ、サイン貰ってもいいですかー!?」

照「サイン?いいですよ」

豊音「わぁあ!やったー!色紙持ってきますね!」ワーイ

照「………っ」ササッ!

豊音「え?」

照「………ディレードスチール……するな!」サササッ!

豊音「?」ポカーン

胡桃「それサイン違い!」ビシッ!

豊音「えっ」

照「…………」

豊音「サイン?サイン………ああ!野球のサインの事なんだー!?」

白望「豊音……粒立てちゃ…」

豊音「あはははははは!!」

照「え……」

豊音「サインくださいって言ったら野球のサインって……あははは!」

照「わわ」

照(すごいウケてる……)ゾクゾク

豊音「ちょーーーーーーおもしろいよー!!お腹痛いよーー!!ひぃひぃ……」

エイスリン「ドシタノ?」

塞「なんていうか……」

エイスリン「トヨネ?」

豊音「あははは………あ!エイスリンさん!」

エイスリン「ナンデワラッテル?」

豊音「んとね、宮永さんにサインお願いしたら、野球のサイン出してくれたんだよー!」

エイスリン「ヤキウ!アハハハハハハ!ヤキーウ!!アハハハハ!!」

豊音「ちょーおもしろいよー!!あはははははは!!!」

照「おぉ……」

照(外国の方にまで……なんてグローバル……嬉しい……)ゾクゾクゾク

トシ「それではそろそろ試合を始めたいと思います」

照「!」ハッ

白望「ダル……けど白糸台と戦えるチャンス……」

胡桃「勝つ!」タタタ

塞「ほら2人とも、始まるよー」

豊音「ひぃーっ……ひぃーっ……でぃれーど……ぷぷ」

エイスリン「ヤキウ!ヤヤヤキウ!アハハハハ!」

対局終了―――

照「………よし」

白望「やっぱ強い……」

胡桃「うん…」

豊音「うー……止められなかったよー」

エイスリン「ダメデシタ……」

塞「結局1回も止められなかったなー……残念」

照「でも臼沢さんの能力にはかなり戸惑ったよ」

塞「え!?あ、そ、そう?」

照「うん。正直ギリギリだった局もあったから」

塞「…………」

照「……どうしたの?」

塞「あ、ううん………ただちょっとビックリしちゃって」

照「ビックリ?」

塞「インハイで見た時の宮永さんって……なんていうか………近寄りがたい雰囲気だったから」

照「ああ……」

塞「話してみると全然そんな事ないのに。私の勝手なイメージだったね。ごめんなさい」

照「……ううん。確かに前の私は……そういう雰囲気出してたと思う」

塞「宮永さん……」

照「ちょっと見てて」

塞「え?」

照「……………」フン! ホン サエ アレバ イイ..

塞「?」

照「今のがビフォー照」

塞「は?」

照「次いくよ?」

塞「……うん」

照「…………♪」ミンナ ト ナカヨク ナリターイ..

塞「……………」

照「アフター照…」

塞「……………」

照「ね?」

塞「あ、うん……なんとなく分かる気がする……かな?」

照「それなら良かった」

胡桃「今の宮永さんは元気!シロと大違い!」

白望「ええー……そんな事無いよ~……」ダラー

胡桃「だらけながら言っても説得力無い!」

白望「はぁあ……」

塞「ね。すごいだらけ方だもん。口からエクトプラズムが出てる感じ?」

照「そのエクトプラズムもだらけてそう」

塞「あはは、それ言えてる」

豊音「宮永さーん!お疲れ様でしたー!」タタタ

照「っ」サッ!

豊音「!」

照「……飲み物……お前のグローブに…こぼした……ごめん」サササッ!ササッ!

豊音「あはははは!!こぼしちゃダメだよー!」

胡桃「ベンチに戻ってきてからでいいじゃん。走塁に影響出るよ」フフ

白望「……さっきも思ったけど、豊音がこんなに笑うの珍しい」

塞「ほんとほんと。ギャップってやつなのかな?」

照「……甘い方の飲み物……こぼした……」ササッ!サササッ!

豊音「あははは!お腹痛いよー!」

白望「ん?………ぷっ!」

照「お」

白望「ぷぷ……くっ………はは………あははははっ!!」

胡桃「シロ……?」

塞「シロが声出して笑うなんて……豊音以上に珍しいよ」

照「そうなの?」

塞「うん」

照(なんと……それはすごく嬉しい事だ……)ゾクゾク

白望「はぁ……はぁ……」

胡桃「何がそんなにツボにハマったの?」

白望「……だって宮永さんがサイン出してふざけた時、足元に置いてあったペットボトルを気付かないまま蹴って…」

照「ん?」

白望「倒れたペットボトルの中身が宮永さんのバッグに思いっきりこぼれたから……」

照「ええっ!!?」

白望「それに気付かずにずっとサイン出して……ぷっ……くく……こっちから『こぼれてる』ってサイン出したいぐらい……くく…」

照「本当だ……全部こぼれてる……470mlくらい残ってたのに…」

胡桃「ぷっ!もっと飲んでおきなよっ」

照「ああ……せっかく持ってきた美味しんぼが濡れて……」

塞「っ!お、お美味しんぼ持ってきてたの?」

照「うん……岩手絡みの巻は全部……はぁぁ…」ズーン

エイスリン「ミヤナガサーン!!」タタタッ!

照「あ……」

照「……………」サッ!

照「美味しんぼ……全部………濡れて……悲しい」ササッ!ササササッ!

エイスリン「アハハハハ!ヤキウ!アハハハ!!」

照「……さっきの思い出だけで笑ってるね」ズーン

塞「ぷっ!くく……ダメ……笑っちゃ……」

白望「く……クッキングパパの95巻ならあるけど……くくっ……いる?」

胡桃「表紙が忍者のやつ!?あはは!」

照「………もう……ふふっ……あははは……」

エイスリン「アハハハハ!ヤキウ!!」

豊音「ひぃ……ひぃー……お腹痛い…」

翌日―――

<姫松高校 麻雀部部室>

洋榎「…………」ドヨーン..

漫「……主将、元気ないですねぇ」

由子「きっと何かあったのよー」

恭子「せやなぁ。絹ちゃん、心当たりある?」

絹恵「具体的な理由は分からないですけど、メール見てからあの調子なんで……おそらく…」

恭子「あー……宮永さんやろなぁ……」

絹恵「はい……」

恭子「返信が無いとかケンカしたとか……その辺りかなぁ?」

絹恵「どうなんでしょうね……」

恭子「んー……考えても埒があかん。直接聞くわ」

絹恵「お願いします……お姉ちゃん、朝からあの調子で……ご飯の時も食欲無いわー言うて…」

恭子「全然食べてへんの?」

絹恵「いえ、ちゃんと食べてました。口だけやったみたいで…」

恭子「……ほなら言わんとこな?ちっちゃいマイナスやから」

絹恵「でも……やっぱりご飯美味いわーって食べるお姉ちゃん可愛かった…」

恭子「分かった分かった……ほな行ってくる」テクテク

絹恵「お願いします」

由子「頼んだのよー」

洋榎「………はぁ……」

恭子「……主将」

洋榎「へ?ああ……恭子か。どないしたん?」

恭子「こっちのセリフです。ため息ついてばっかりやないですか」

洋榎「あー……せやなー……ため息聞かされる方も気が滅入るわなー。ほならニャーってため息つくわ…………にゃー………」

恭子「………宮永 照と何かあったんですか?」

洋榎「にゃ……っ!」ビク

恭子「……やっぱり」

洋榎「…………」

恭子「…………」

洋榎「その……な?」

恭子「はい」

洋榎「………このメール見てみ」ピッ

恭子「え?……『最近、ボケて人を笑わせるのが楽しくなってきた。だからツッコミも練習しつつ、ボケを頑張っていきたいなって思うんだけど、どうかな?』」

恭子「……これが落ち込む原因ですか?別にええ事やと思いますけど」

洋榎「あれ?あっ、間違うた。ボケをやりたいっちゅうのは全然構へんねん。問題はこっちのメールや……ほれ」ピッ

恭子「?ああ……写メですか……これは……宮守女子の面々と宮永さんが写ってますね」

洋榎「そや」

恭子「みんなえらい楽しそうな顔して………宮永さんもこんな表情するんですねぇ」

洋榎「それや」

恭子「え?」

洋榎「照、めっちゃ楽しそうやん……知らん間に宮守どもとも仲良なっとる……」

恭子「どもって……仲良なったって別にええやないですか」

洋榎「……それはええけど……本文見てみぃ」

恭子「?」

照『宮守女子のみんなは優しかった。バッグを乾かすのを手伝ってくれたし、私をみんなの部屋に泊めてくれた。同学年の子とお泊りなんて久しぶりで嬉しかったよ』

洋榎「目ん玉飛び出るやろ?」

恭子「は?いや別に……」

洋榎「なんでや!お泊りしとんねん!」

恭子「したってええやないですか……そんなんで飛び出してたら目ん玉いくつあっても足りませんよ」

洋榎「飛び出す言うても戻ってくる飛び出し方や。ちぎれるほど飛ばへんから2個で足りる」

恭子「そのこだわりはどうでもいいですわ。で、お泊りした事に落ち込んでるんですか?」

洋榎「それは………その……」

恭子「?」フゥ

洋榎「めっちゃ……嫌やねん」

恭子「はい?」

洋榎「他の子と仲良すぎんの!嫌やねん!!」

恭子「あぁ……」

洋榎「そら友達が増えるのは照にとってめでたいのは分かる!分かんねんけど……うぅー……」

恭子「…………」

洋榎「…………」

恭子「…………」

洋榎「あかん………ちょっと気分転換に外行ってくる」

恭子「え?あ、分かりました…」

洋榎「………にゃー…」トボトボ..

ガチャ バタン..

恭子「…………」

絹恵「どうでした?」

恭子「んー、ヤキモチやな」

漫「ヤキモチ?」

由子「珍しいのよー」

絹恵「それってやっぱり宮永さんに……」

恭子「せやな」

絹恵「……どうすればいいんでしょうか?お姉ちゃんが落ち込んでるの見たないです…」

恭子「安心しいな。近いうちに解決するはずやで」

絹恵「え?」

恭子「来週、練習試合があるの知ってるやろ?」

絹恵「はい…」

恭子「その相手……白糸台のチーム虎姫含む3チームやねん」

絹恵「おお……」

漫「ほなら……その時に……」

恭子「宮永さんも来る」

漫「わぁ!ならそこで宮永さんと会うて話をしたら解決ですね!?」

恭子「………漫ちゃん。ヤキモチを甘く見たらあかんで?」

漫「…どういう事です?」

恭子「世の中にはな、ヤキモチがどんどんエスカレートして、相手に……これをしてまう人もおるんやで?」キュキュキュ..

漫のおでこ『呪』

漫「わっ!もうー!末原せんぱぁい……」

恭子「ま、主将に限ってそんな事はありえへんけどな」

絹恵「はい。お姉ちゃんは誰かを恨んだりしません!すぐ忘れますから!」グッ

由子「いい子なのよー」

漫「ほならなんでこれ書いたんですかっ!めっちゃ呪われてる気分なんですけど!!」

1週間後―――

<姫松高校 廊下>

洋榎「…………」ソワソワ..

漫「あれ?主将……部室に行かないんですか?もう白糸台の人たち集まってますよ?試合まで時間ありますし、お喋り出来ますけど」

洋榎「あ、うん……まぁ、もうしばらく経ったら行くわ」

漫「?……私は先に行きますね」

洋榎「おう」

洋榎「…………」

洋榎「…………」

洋榎(照……全然出て来えへんな……うちが部室におらんのに気付いて探しに来る思ったんやけど……)

洋榎(……メールも毎日しとる。昨日も今日会って話すのが楽しみや言うてた。せやのに……)

洋榎「…………」

洋榎「照れとんねやろな。うんうん」

洋榎「しゃあないなー。うちから会いに行くかぁ!」テクテク..

<麻雀部部室>

洋榎「…………」ガチャ

ワイワイガヤガヤ

洋榎(照は………おった!恭子と話しとる!)テクテク..

洋榎「…………」ピタ..

洋榎(……やっぱり照から話し掛けてくるの待ってよ。ここに立ってたらそのうち気付くやろし)フフ

照「宝塚とかは知ってるよ」

洋榎(……相変わらず可愛いなー……いや、明るなったからか、前よりも…)

恭子「やっぱ有名やもんなー。でもあれは兵庫県やで」

照「そうなんだ?末原さんは行った事ある?」

恭子「親戚に宝塚好きがおってな。何回か観に行ったわ」

照「やっぱり道端に羽とか落ちてるの?」

恭子「落ちてへん落ちてへん。あんなド派手な舞台衣装のまま歩いてたら目立ってしゃあないやん」

照「そう……じゃあ宝塚歌劇団の人も普段着は普通なのかな」

恭子「そらそうやろ。急にオスカル来たらおばちゃん腰抜かすもん」

照「肩ビラビラでキラキラだもんね……あ、ねえ、末原さんは普段どんな服着るの?」

恭子「え?私?そやなぁ……」

洋榎(……恭子と話した事はほとんど無いはずやのに自然に会話しとる……成長したなぁ……)

恭子「動きやすい服が多いかな?あとは、五分袖とか七分袖のシャツが好きやわ」

照「そうなんだ?じゃあ末原さんも格闘技するの?」

恭子「は?なんで?」

照「だって五分袖って日常的にトンファー使う人用でしょ?」

恭子「なんでやねん。それがホンマならトンファーってめっちゃポピュラーやんか。それこそトンファー日本選手権大会とか出来るくらい」

洋榎(おお……ちゃんとボケを挟んどる……)

照「大会名に武道具の名前付けるのおかしくない?それってひざサポーター選手権大会、みたいな意味だよ?」

恭子「そんなんニュアンスやんか。せやけどトンファーは武器やしやる事は見当つくわ。ほなひざサポーター選手権て何すんねん」

照「……誰が一番ひざサポーターそっくりの器を焼けるか競う…」

恭子「焼き物かい……アホな事言いな。ひざサポーターから伸縮性奪ったらあかん」

照「形的にも絶対使えないよね。自立出来ないVの字具合で」フフフ

恭子「ホンマやな」フフ

洋榎(…………照……楽しそうやな……恭子と相性ええんやろか……)

照「せいぜい真ん中に鏡を入れて」

恭子「曲がり角の手前から覗いて遊ぶぐらいか?」

照「するとド派手な服着た宝塚歌劇団が…」

恭子「来えへん来えへん」

洋榎(今日、うちと会うの楽しみやとか言うてたくせに……探そうともしてくれへん)

照「その焼き物をください、って」

恭子「ほお、なんで?」

照「私、大地のめ組なんです」

恭子「…………大地の恵み……土……で焼き物?……ちょっとそれはないわぁ……強引ちゃう?」

照「うん……私もそう思ったけど…宝塚の人が来て一言、っていう道に出ちゃったから……止まれなかったんだよね」

恭子「そこを止まらな」

照「……ひざサポーターの焼き物が手元にあったら曲がる前に覗いてたけど……末原さんがトンファー使いじゃない時点でもう歴史がぐちゃぐちゃ…」

恭子「いやいや……勝手に話を難しくせんといてぇや」

洋榎「…………」

洋榎(うちの事なんてどうでもええんやろか……うちと話すより恭子とおる方がええんか?)

照「じゃあこうしよう。末原さんはもう五分袖着ない」

恭子「なんでやねん!」

洋榎(あ、あかん……涙出そうや……表出よ)スタスタ

恭子「洗い物の味方で……って………あれ?主将、どこ行くんです?」

照「え?洋榎?」

洋榎「……あ」

照「良かった。来てないのかと思っ…」ニコッ

洋榎「………っ!」ダッ!

照「えっ!洋榎……?」

恭子「主将?」

洋榎「………」ダダダッ! ガチャ! バタン!

照「ちょっと……待って!」タタタッ..

恭子「…………」

恭子「………まったく」クス

菫「騒がしくてすまないな」テクテク

恭子「……弘世さん……」

菫「今まで物静かだった反動か分からないが、最近特に元気でな」クス

恭子「……前より活き活きしててええんちゃいますか?話してても楽しいですし」

菫「そうだな……それも全て、愛宕さんのおかげらしいな」

恭子「あー……そうなんですかねぇ」

菫「照本人が言っていたよ。『洋榎のおかげでみんなと話せるようになって会話の楽しさを知る事が出来たし、モテモテになって身長も伸びた』とな」

恭子「またベタな……」クス

菫「冗談交じりに言っていたが愛宕さんに感謝しているのは間違いないだろう」

菫「部室でもよく愛宕さんの話題が出てくるんだ。また話してる時の照が嬉しそうでな……」フフッ

恭子「なぁんや。やっぱり心配いらんかったか」

菫「ん?どうした?」

恭子「いいえ。なんでもありませんよ」クス

菫「?」

淡「菫先輩~!」

菫「淡……すまない、ちょっと行ってくる」

恭子「あ、はい。ではまた」

菫「ああ」テクテク

淡「菫先ぱ~~い!」

菫「大声を出さなくても聞こえている」クス

恭子「……………」

恭子(感謝……なぁ……ホンマにそれだけなんやろか?主将を見つけた時の宮永さんのあの笑顔……感謝以外のものが含まれてそうやけど……)

漫「…………」テクテク..

恭子「あ……漫ちゃん」オイデオイデ

漫「?はい」テクテク

恭子「………」キュポン!

漫「わっ!?」

恭子「……………………」ンー..

漫「…………あれ?今日は書かないでくれるんですか?」

恭子「…………」キュキュキュ..

漫のおでこ『書くで』

恭子「よし」

漫「……こ、これなんなんですか!?書く事無いならやめてくださいよっ!単体で見たら意味不明すぎますっ!」

<裏庭>

洋榎「はぁ……はぁ……っ……しんど……」

洋榎(おもっきり走ってもうた……別に……逃げる事あらへんのに……)ハァハァ..

照「洋榎っ!」ダッ!

洋榎「っ!」ピクン

照「…………」

洋榎「…………」フィッ..

照「…………」

洋榎「…………」

洋榎(うぅ……どないせえっちゅうねん……逃げたのを謝るのもちゃうし……そもそもなんで逃げたんや……)シュン

照「………もう……観念したらどうだ」

洋榎「え?」

照「後ろは断崖絶壁。下は海。逃げ場はない」

洋榎(照……)

照「犯行を認めるんだ」

洋榎(アホ……直接聞いてもはぐらかされるって思ったんか知らんけど……こんなやり方……)クスッ

洋榎(いや………気を遣ってくれたんやろな。ほなら、のらん手は無いか)

洋榎「刑事さん……何度も言うてるやないですか。うちはやってないって」

照「私は刑事じゃない。グルメな探偵だ」

洋榎「そういう設定はホンマにどうでもええ。刑事でええやん」

照「………警部だ」

洋榎「へそ曲がりか……まぁええわ。警部さん、うちはやってませんよ」

照「嘘をつけ。やましい事がなければ逃げる必要はないはずだ」

洋榎「それは……」

照「せっかく久しぶりに直接会えたのに……顔を見た途端に逃げられた探偵の気持ちが分かるか?」

洋榎「………いや警部って…」

照「やっぱりグルメな探偵だ!」

洋榎「グルメな設定が生きるんは中盤までやろ……はぁ……分かったわ」

照「で、どうなんだ?」

洋榎「………しゃあないやろ」

照「何がだ」

洋榎「探偵さんが……他の依頼人と楽しげに喋っとったのが……なんか気に食わんかったんや」

照「え……」

洋榎「うちの言うてる事がおかしいのは分かる。もともと人付き合いが上手くなる事を目指してたんやからな」

照「…………」

洋榎「せやけど……気に食わんのはホンマやからしゃあない……もううちのアドバイスなんて無くても平気っぽいし……うちがおらんでもええっちゅうか…」

照「店長!!」

洋榎「っ!」ビク

洋榎(うち店長なんか……)

照「それは絶対ない。店長は……私にとって大事な人なんだから……」

洋榎「ぅ……」

照「もちろん、宮永探偵グルメ事務所のみんなも大事だけど……でも……」

洋榎(グルメの場所…)

照「……店長がいなかったら私は……難事件を解決出来ないよ……お蔵入りだよ……」

洋榎「迷宮入りな」

照「あっ……迷宮入りだよ」

洋榎「天然やん…」

照「こほん!……そもそも店長が……自分がいなくてもいいなんて考えになるのは……頭にくる」

洋榎「……」

照「私がどれだけ店長からのメールを楽しみに聞き込みしてるか分かる?」

洋榎「……それは」

照「写メだって全部保存してるんだよ?」

洋榎「そ、そうなん?」

照「そうだよ。大体、白糸台で会った時から人の事を平然と……か、可愛いとか言って……しかも私のためを思って優しくしてくれるし」

洋榎「……」

照「……そんな店長が応援してくれたから頑張れたんだよ……」

洋榎「照……」

照「店長の言葉があったから、絶対零度の全体集会のダメージも耐えられたんだよ!」

洋榎「…………」

照「……もうこの際はっきり言って!店長は私をどう思ってるのか!」

洋榎「……それは………探偵が解き明かすんちゃうんか」

照「グルメ探偵は探偵としてはヘタッピなんだ」

洋榎「探偵やめてまえ」

照「いいから、ほら!」

洋榎「う………うちは……その……」

照「…………」

洋榎「………寂しかってん……探偵さんは色んなやつとドンドン仲良なっていく……最初はええ事やと素直に祝福出来たけど……」

洋榎「……探偵さん、もともと可愛いかったけど最近さらに可愛さが増しとるし、明るなって話しやすいってなったら好きになるやつもきっと増える」

洋榎「前の探偵さんなら相手にせえへんかったかもしれんけど……今の探偵さんは……もし告白でもされようもんなら……付き合ってまうかもしれん……」

照「…………」

洋榎「うちは大阪。探偵さんは東京。東京支店の無いうちには気軽に合う手段も無い……そう考えたら辛なってきて……」

照「バカ」

洋榎「な!?」

照「おバカだよ店長は……」

洋榎「何がやねん…」

照「自分で言うのもなんだけど……最近特に可愛くなったって言うなら……一番の原因はなんだと思う?」

洋榎「それは………楽しい事が増えたからちゃうん?」

照「……確かにそれもあるけど、違う」

洋榎「…………コラーゲンとかそういうの?」

照「違うよ」

洋榎「…………あとは……」ウーン..

照「………好きな人が出来たんだよ」

洋榎「!!」

照「…………」

洋榎「そ、それって……」

照「…………」カァァア..

洋榎(このタイミングで言うっちゅう事はもしかして……)ドクン!

照「…………」

洋榎「あ、あ、あああのー………これは試しに聞くっちゅうか……うっ、うぬぼれゼロの質問なんやけど」

照「う、うん」

洋榎「その好きな人って………あの………う、うちやったり……とか?」

照「………そ、そうだよ」

洋榎「っ!!!」

照「……………」カァァ..

洋榎「……ホンマに!?嘘とか無しやで?」

照「この状況で嘘なんかつかない…」

洋榎「~~~~っ」

洋榎「……ぅわ……めっちゃ嬉しい………やっば………泣きそうや」

照「…………」

照「………それで……その………さ……」

洋榎「あ、うちも好きやで!照がめっちゃ好きや!」

照「っ!あ……ぁりがと」

洋榎「お、おう……へへ……」

照「…………」

洋榎「…………」

洋榎「こ、これでうちらは恋人同士やんな?………好きやけど付き合わへんなんて言わんよな?」

照「ま……そ、そうだね」

洋榎「おおお………あかん……幸せすぎて顔がにやけてまうでー」ニヘー

照「………………」

洋榎「えへへへ………ん?どしたん?急に黙って」

照「えっ!?それは………いや、その………」

洋榎「?」

照「…………こういうのは勢いが大事……今しかない」ブツブツ..

洋榎「ん?なんて?」

照「……これで事件は解決だ。店長の不安をペロリと平らげたぞ」

洋榎「あ……まだ続いてたんか……ちゅうかそれ言いたいがためのグルメ探偵やったんやな」

照「……そ、それだけじゃないよ?」

洋榎「え?ほな何?」

照「…………」テクテク..

洋榎「?」

照「S級グルメ……い、いただきます……」ス..

洋榎「へ……?」

チュ..―――

4年後―――

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照「やっとここまで来たね」

洋榎「せやなぁ……お互いプロとしてやっていけとるし、今んとこは万々歳やな」

照「うん。洋榎のおかげでトイレでご飯食べずにすんでるよ」

洋榎「ははは……そうやったそうやった。今聞けばアホらしい感じやけど当時の照はなー」

照「その未来は現実的にありえたからね……」

洋榎「それが今や……こないだ出たスターカード見た?照の称号」

照「え?見てないけど……何?」

洋榎「Cool Comedian(クールコメディアン)やで」

照「それは……私じゃなくてマネージャーの事じゃないの?」

洋榎「違うわ。なんでプロ雀士のスターカードにマネージャーの称号が載るねん、お前やお前」

照「でも私、コメディアンじゃないのに……」

洋榎「雰囲気やろ雰囲気」

照「そうかなぁ……そういう洋榎の称号は何?ハッピーデイズ?」

洋榎「人の称号ちゃうやんそれ。えーと……なんやったけか……あ、そやそやTrash Talker(トラッシュトーカー)や」

照「褒められてないよね……」

洋榎「ホンマやで……うちがトラッシュトーカーや!……とは名乗りにくいわぁ……クレーマー宣言っぽく聞こえるわ。なぁ?」

照「ううん、私はカードにして頂けるだけで感謝してるから」

洋榎「あっ!汚ねっ!」

照「美味しい美味しいプロ麻雀せんべい、発売中(ハツバイチュン)」

洋榎「あああ!そういやお前CMやってた!ずるいで!」

照「洋榎もやってたじゃん。なんのCMだったっけあれ……」

洋榎「美味(ウマ)唐揚げのCMや……」

照「あ、そうそう!高カロリー星人と戦う、ヘルシー唐揚げ美ー味ん(ウーマン)役だった!似合ってたよ~!」

照「高カロリー星人をバッサバッサとやっつけるところとか輝いてたよね」

洋榎「……照、今はええけど……それあんまり言うたらあかんて」

照「え?なんで?」

洋榎「高カロリー星人やってるの瑞原さんやんけ」

照「……そうだった……危ない危ない」

洋榎「ったく……」フフッ

照「あ、そろそろ時間だね」

洋榎「おっ、そうか……ほんなら行こか」

照「うん……」

洋榎「よいしょ……っと」スクッ

照「…………洋榎」

洋榎「ん?」

照「……ありがとね」

洋榎「え?」

照「今の私があるのは洋榎のおかげだから………このセリフ、何度も言ったけどさ…本当に感謝してるんだ」

洋榎「………そんなんお互い様や。うちが頑張れるのは照が傍におってくれるからなんやから」

照「っ……」カァァ..

洋榎「あ、あほ!照れるなや!変な感じになるやんけ」

照「わ、分かってるよ………あ、ほら!もう行かないと」

洋榎「お、おお……」テクテク

照「………洋榎」

洋榎「ん?まだ何か…」

照「……大好き」ボソ

洋榎「っ……」

照「…………」フフッ

洋榎「……うちも……大好きやで」ボソ

照「ん……」

洋榎「……へへっ」

照「ふふ……」

洋榎「よしっ!行こか」

照「うん!」

<愛宕家 絹恵の部屋>

恭子「そろそろやな」

絹恵「はい」

由子「楽しみなのよー」

漫「なんかワクワクしますね」

絹恵「きっと今頃白糸台の人たちも同じ気持ちでしょうね」

由子「間違いないのよー」

絹恵「関係者全員で集まれたら良かったんですけどね。時間も時間やし、しゃあないかぁ…」

恭子「そやなぁ」

漫「…………」ワクワク..

恭子「……あ」

絹恵「?」

恭子「…………」キュポン

漫「へ?ちょ、ちょっと……末原先輩?」

恭子「なんかよう分からんけど……ある漢字が頭の中に浮かんだんや」

漫「いやいやいや!もう私もいい歳と言いますか…」

恭子「…………」

漫「さすがに…」

恭子「…………」キュキュキュ

漫「ああっ!もぉー!!」

由子「相変わらずなのよー」クス

絹恵「あ、始まりますよ!」

恭子「お」

漫「はぁ………懐かしい気持ちもあるけど……うぅ……」

絹恵「漫ちゃん!」シィーッ!

漫「はい……静かにします……念のためにウェットティッシュ持ってきといてよかった…」

♪~~

恭子・由子・絹恵・漫「!!」

♪~~

恭子「…………………」

由子「…………………」

絹恵「…………………」

漫「……………………」

♪~~

照『照と!』

洋榎『洋榎の!』

照・洋榎『オールナイトニッポン!!』

恭子・由子・絹恵・漫「…っ!!!」ワァアッ!

漫のおでこ『完』

以上です

読んでくれた人、支援してくれた人、こんな時間までどうもありがとうございました

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