アルミンくんは女の子じゃないもん!(551)

医師「いえ、遺伝子学上は女性ということが判明しました」

アルミン「え゛」

医師「性染色体は46,xx。疾患名は先天性副腎皮質過形成ということに~」ウンヌンカンヌン

アルミン「……」

医師「極めて稀なケースですが、あり得ないことではなくて~」ウンヌンカンヌン

アルミン「……」

医師「今後は女性ホルモン投与による女性化が最適な治療と思われますが~」ウンヌンカンヌン

アルミン「……」



アルミン「僕が……女?!」

時間は少し遡って847年 第104期訓練兵団入団から数ヶ月

風呂場

ジャン「うう……今日も演習がハードで疲れた……」

マルコ「やっぱり演習後のお風呂が一番リラックスできるね……」

ライナー「ふぅー、熱い湯につかると体の芯から疲れが取れるぜ」チャプン

ジャン「ライナー、てめぇオヤジくせえぞ。本当に同い年かよ」

ガラッ

コニー「キャッホーッイ!風呂だ風呂!」ジャッボーン

ジャン「プハッ!!おい、コニー!何しやがる!湯船に入る前はちゃんと掛け湯しろ!!」

コニー「堅い事言うな。ほらよ、ちんちんぶ~らぶら♪ちん毛わさわさジャングルわっさっさ~♪」

ジャン「ちょおま!こっちに汚ねぇ湯がかかるだろ!」

コニー「お、ライナーのは太いな!しかも、ちん毛でもっさりガードされてんな!よし、俺が鎧のチンポって命名してやるぜ!」

ライナー「……お前は小学生か」

コニー「ベルトルトのは……うげぇ!デカい!!デカすぎる!!通常時でそれとか、どんだけだよwwwこの超大型チンポめ!!」

マルコ「コニー、はしゃぎすぎだよ……」

ウキャキャキャキャ

エレン「やれやれ遅くなっちゃったな。俺たちも早く入らないと」

アルミン「うん、そうだね……」

ガラッ

ライナー「お、エレンたちもようやく来たか。さっさと済ませないと入浴時間終わっちまうぜ」

コニー「おい、アルミン!なにタオルで隠してんだよ!男らしく見せろ!」

アルミン「あっ!やめ……」バッ

コニー「うはwwwちっちぇーwwwしかもチン毛生えてないとかwwwつるつるwww」

アルミン「タ、タオル返せよ!」グイッ

コニー「おーい、みんな!アルミンはちっちぇーぞwwwアルミンじゃなくてピクミンだwww」

アルミン「くっ……」ウルッ

エレン「いい加減にしろ!」ゴチン

コニー「いてぇ!」

ライナー「そうだぞ、コニー。言っていい事と悪い事がある。今のは明らかにやり過ぎだ」

コニー「いたた……何も殴らなくたっていいじゃねぇか……ってアルミン、泣いてんのか?」

アルミン「な、泣いてなんかない!!」フイッ

コニー「あわわ、わ、悪かったよ……。ちょっと調子乗り過ぎたわ……」オロオロ

ジャン「ちっ。コニーもガキ過ぎてウザいが、そんぐらいで泣くとかアルミンも気持ち悪い野郎だぜ……」

マルコ「ジャン!君はまたそんな事を……」

ジャン「事実じゃねぇか。エレンとベタベタつるんでばっかで……女かっつーの」

アルミン「!」カーッ

ジャン「だいたい、今だってやり返したのはエレンで自分は泣き寝入りとか……」

アルミン「ジャン……」

ジャン「あ?なんだよ……」

アルミン「訂正しろ」

ジャン「は?」

アルミン「僕が女みたいだって言った事……訂正しろ!!」

ジャン「なに興奮してんだよ、逆ギレか?」

エレン「おい、挑発すんなよ」

ジャン「はっ、面白ぇ。女みたいだって言われたのがそんなに悔しかったのか!」

マルコ「ジャン、やめなよ」

コニー「お、おい、アルミン。俺が悪かったんだ。だから、そんなに怒んないでくれ……ホント、ゴメン!」

アルミン「……ジャン、訂正する気はないのかい……」

ジャン「ああ、ないね。前からそう思ってたんだ、このオカマ野郎!」ドンッ

アルミン「あっ……」ヨロッ

エレン「何しやがる!」ガツン

ジャン「いってぇ……なんでお前が殴るんだよ!!」

エレン「うるせぇ!アルミンをバカにすんじゃねぇ!!」

ジャン「この野郎!今日こそ勝負つけてやろーじゃねぇか!!」

ライナー「よせ、二人とも!」

ワーワーウギャーウギャーヤメローヤメロードシーンバターン

ガラッ

キース「大きな音が聞こえるが、誰か説明してもらおうか……」

一同「ーー」

シーン

キース「……」

ライナー「俺の放屁した音です……」

キース「……中身は出てないだろうな。……風呂場の換気をしておけ」

ギィバタンッ

一同「ホッ

エレン「ライナー、わりぃ……」

ライナー「まったくだぜ……サシャのせいにするわけにもいかんし……なんで俺が……」

マルコ「とにかくケンカはここまでだ。これ以上騒いだら営倉行きだよ」

コニー「いやぁ~本当悪かった。元はと言えば俺のせいだし……アルミン、ゴメンな」

アルミン「コニー……もういいんだ。別に気にしてないよ」

コニー「そ、そうか。ならいいんだ。俺も気にしねーからwww」

ライナー「お前は少し気にしろよ」

ジャン「……」

アルミン「ジャン、君は僕に謝るつもりはないのかい?」

ジャン「ないね、お前こそ殴り返さないのかよ。へっ、臆病なヤツ。やっぱりカマ野郎だぜ」

アルミン「ああ、僕は殴り返さない。そんなことすれば、君と同レベルになってしまうからね」

ジャン「な!……上等だ、次の対人格闘の時にでも刈ってやるからな」

エレン「おい、ジャン!俺のことも忘れんなよ……」

ジャン「ああ、死に急ぎ野郎もまとめてやってやるよ……このままじゃ収まりがつかねぇ」

マルコ「まったく、ジャンはすぐそうやって好戦的になるんだから……」

ライナー「取っ組み合うのは訓練の時だけにしとけよ……」

エレン「アルミン、怪我とかしてないか?」

アルミン「う、うん。大丈夫だよ……」

アルミン(僕は……いつも守られてばかりだ……)

兵舎廊下

エレン「お、ミカサたちだ。おーい、お前たちも風呂上がりか」

ミカサ「エレン……」タッタッタッタッ

ミカサ「お風呂からあがる前、ちゃんと100まで数えてよく温まった?髪の毛はちゃんと拭いた?」

サシャ「いつもながら、二人は本当に仲良しですね~」

エレン「俺はもう突っ込むのも飽きてんだけどな……ミカサ、お前は俺の母親か?」

離れた所

ジャン「あいつ、またイチャイチャして!!グググ……羨まし過ぎんだよぉ……」

マルコ「ジャン、泣かないで……」

ミーナ「ねぇ、エレンとアルミンは知ってる?年末に一般開放日っていう催しがあるらしいの」

エレン「一般開放?なんだそれ」

アニ「普段は関係者以外立ち入り禁止の兵団基地を、市街地の住民に開放して立ち入らせるらしいよ」

エレン「はぁ?なんだってそんなこと」

アルミン「恐らく、住民との相互理解を深めようという趣旨じゃないかな」

アルミン「二年前のウォール・マリア陥落以来、多少は兵士たちに向けられる目も変わったけど、それでも未だに平時は無駄飯を喰らってると反感を持っている人がいる」

アルミン「こういった催しを開く事で、少しでも兵団のイメージアップを図ろうという事なんだろう」

サシャ「さすがアルミン!まさに、一を聞いて獣肉を知る、というヤツですね」

エレン「で、その一般開放日がどうしたって?」

アルミン(うわ、素でスルーした。女子も突っ込む気配ないし……何気にみんなヒドイな)

クリスタ「うん、その一般開放なんだけど、その日は演習場や兵団装備の見学を許可したり、戦闘糧食の試食をさせたり、色々企画があるそうなんだけど……」

サシャ「レーションを出すだけじゃなくって、普通の出店もあるそうなんですよ!お肉が食べられるかも!!」

クリスタ「あはは……それで、企画の中には、訓練兵による出し物もあるんだって」

ユミル「まったく、なんだってそんな事やらされるんだか……」

アニ「同感だよ、実に下らないね……」

アルミン「出し物って具体的には何をやるのかな」

ミカサ「それはまだ決まっていないらしい。今後、何かしらの連絡があると思うけど」

エレン「なんか面白そうじゃん。せっかくだからみんなで楽しもうぜ」

ミーナ「だよね!やるからには楽しまないとね。ほらほら、アニも楽しもうよ」

アニ「まったく……」

アルミン「ははは……………!っ」フラッ

エレン「!おい、アルミン、どうした?!」

アルミン「大丈夫……ちょっと湯あたりしちゃったかな……」

ミカサ「アルミン、顔色が悪い……」

サシャ「貧血ですか?真っ青ですよ」

クリスタ「医務室行く?私、付いて行くけど……」

アルミン「本当に大丈夫だから……みんな、心配かけてゴメン……」

ユミル「……クリスタ、私も貧血だ。医務室連れてって!」

アニ「あんたは一人で行けよ……」

アルミン(最近、頻繁に貧血が起こる……しっかり体調管理しないと……)

兵站訓練中

バシャバシャ

キース「どうした、アルレルト!貴様だけ遅れているぞ!」

アルミン「ハァハァ

キース「貴様には重いか!?貴様だけ装備を外すか!?」

アルミン「ハァハァ……く……くそっ…

ライナー「貸せ、アルミン!」ヒョイッ

アルミン「ライナー……」

ライナー「このままじゃ不合格だぞ」

アルミン「そ、そんなことしたらライナーまで不合格に……」

ライナー「バレねぇように尽くせ!俺の気が変わらねぇうちにな!」

ザアアアア

キース(ライナー・ブラウン、屈強な体格と精神力を持つ。何より仲間から高い信頼を得ている)

アルミン「……お荷物なんか死んでもごめんだ」ガッ

ライナー「な!?オイ!?」

タッタッタッタッ

キース(アルミン・アルレルト、体力面において兵士の基準に達しないものの、座学の受け応えにおいて非凡な発想を見せると聞く)

キース(本人が自分の方向性を獲得すればあるいは……)

アルミン「ハァハァハァハァ……

フラッ…バタッ

キース「!」

ライナー「アルミン!」

キース「止まるな!演習を続行しろ!アルレルト訓練兵はこちらで回収する」

ライナー(くっ……あいつ、だから無理するなってのに……)

演習終了後 兵舎

エレン「ライナー!演習中にアルミンが倒れたって?!」

ライナー「ああ、教官が運んでった。多分一足先に医務室にいるんじゃないかな」

エレン「そうか……アルミンのやつ、ここんとこ調子悪そうだったんだよな……」

ジャン「ハッ、体調管理も優秀な兵士の条件だ。それが出来ないようじゃ、この先が思いやられるぜ」

エレン「てめぇ、いい加減に……」

ライナー「おいおい、お前ら、こんな時にまで頼むぞ……」

エレン「……わ、悪い」

ジャン「……」

ライナー「俺はな、ヤツが体調良くなさそうなのに気付いてたんでな、装備の一部を代わりに持ってやろうとしたんだ」

ライナー「そしたら、アイツ、どうしたと思う?俺から奪い返していきやがったんだぜ」

エレン「なっ!」

ジャン「……」

ライナー「アルミンは、なんだかんだで根性あるヤツなんだよ。それはジャンも分かってるんじゃないか?」

ライナー「お前が体術で挑んでやると凄んできた時だって、自分に勝ち目が無いのに、あいつは意見を曲げなかった。最後までな」

ジャン「……」

ライナー「ま、何も友人になれとまでは言わないけどよ、少しは認めてやったらどうだ?」

エレン「ライナー、お前……」

ライナー「なんだ、惚れたか?」ニカッ

エレン「オヤジ臭いな……本当に同い年か?」

ライナー「ほっとけ!」

医務室

キース「――では、かりに――の場合には――」

衛生官「――それは――ということも――」

アルミン「……ん、んん……ここは……?」

キース「アルレルト訓練兵、気が付いたか。貴様は訓練中に意識を失い、医務室に運びこまれた」

アルミン「そう、でしたか……申し訳ございません」

衛生官「アルレルト訓練兵、現在、意識はしっかりしてるかい?質問に答えられるかな?」

アルミン「ハイ、問題ありません……」

衛生官「え~っと……きみ、エストロゲンとか、なにかホルモン剤の類は服用してる?」

アルミン「は?いえ、とくには……」

衛生官「これまで染色体検査を受けた事はある?」

アルミン「いえ……」

衛生官「もう精通は迎えた?」

アルミン「!!し、質問の意図が分かりません!!」

キース「アルレルト訓練兵!質問に答えろ!!」

アルミン「!…………いえ、まだです」

衛生官「そうか……。いや、答えにくい質問ですまなかったね」

衛生官「キース教官、申し訳ないが、この症例は私では扱いかねます。本部から軍医を派遣してもらうか、それでもダメなら専門の民間医師を手配しないと……」

キース「ふむ……」

アルミン(……教官たちはいったい何の話をしているんだ?)

お休みなさい
また来ます

土曜日夜、多分11時前後にきます。

今更かも知れないけど、ライナーってエレン達の二歳年上じゃなかったか?

>>50
そう言えばそんな設定だったような……
でも、単行本をめくってみたんだけど、それに言及する話が見つからなかった
どこに載ってるか、誰か教えて!

トボトボ

アルミン(悪性貧血のため、再検査を受けるまでの間は、体に過度の負担がかかる訓練への参加を禁ず……か)

ガチャッ

コニー「そんなこと言って、隠したってムダだぜ!こいつ、ぜってームッツリだよwww」

ワハハハハ ワイワイガヤガヤ

エレン「あ!アルミンが帰って来た!!」

ライナー「お、どうだった。具合は大丈夫か?」

アルミン「う、うん……」カクカクシカジカ

エレン「そうなのか……ここ最近はずっと調子悪そうだったもんな。治るまでしっかり休んどけよ」

アルミン「うん、そうするよ。ところで、だいぶ騒がしかったけど、何かあったの?」

>>51
原作にはない設定。
アニメで追加された。アニメ公式でしか明かされてない。

>>53
なるほど。情報サンクスです。
ss内ではそのうち帳尻合わせる……かも。

ライナー「あ~、廊下まで声が響いてたか。そいつはマズいな。実はな……」

マルコ「僕らも相部屋生活はじめて数ヶ月経つじゃない?そろそろキチンとしたルールを作ってもいい頃だという話になって……」

アルミン「ああ、それはいいアイディアなんじゃないかな。僕もルール作りに協力するよ」

エレン「ん……、それ自体は俺も文句無いんだけどな……」

アルミン「?どういうこと?」

コニー「最初に決めるルールつったら、コレしかないだろ!!抜くための、一人で部屋を使用できる時間の確保!!」

アルミン「ブフッ!

ジャン「お前は声がでけえんだよ!!……まぁ、言ってる事自体は賛成だけどな」

ライナー「風呂の時間は限られてるから風呂場で抜くわけにもいかんし、そのせいで最近は便所一択になっちまってる……」

マルコ「しかし、それは想像派の人なら問題ないだろうけど……」

コニー「オカズ派にはちょっとツラいんだよな……」

ジャン「とにかく、想像派にもオカズ派にも、一人で部屋を使用できる時間の確保は悪い話じゃない。早急にルールを作るべきだな」

ライナー「どうする?一週間でローテーションを組むか?」

コニー「それだと週一でしか部屋で抜けねーじゃねーか。そんなんで足りるか?」

マルコ「僕はそれでも大丈夫だけど……」

ジャン「嘘つけ!!健全な13、4歳の男がそんなんで足りるわけないだろ!このムッツリめ!!」

ライナー「……そうだな、よくよく考えてみれば、俺も週一はちょっと厳しい」

コニー「じゃあ、どうすんだよ?エレンとアルミンは何かアイディアないのか?」

アルミン「そ、そうだね……」

アルミン(どうしよう……話で得た知識ならあるけど実体験した事が無いから、なんて答えていいか分からない……)

ジャン「まさか、お子様だから抜いた事ないとか?www」

アルミン「ギクッ

エレン「まぁ、さすがに、そんなことは無いけどよ……」

アルミン(やっぱりエレンも経験あるんだ……)

ライナー「ベルトルトはどうなんだ?さっきから一言も喋ってないけど」

ベルトルト「僕には自分の意志がないから、みんなに任せるよ」

ジャン「ちっ……どいつもこいつもムッツリばっかりだぜ」

アルミン(この話題をあまり引っ張りたくない……したこと無いのを知られたくない……)

アルミン「え、えっと、部屋の前に何かサインを出しておくというのはどうかな……」

コニー「サイン?」

アルミン「そう、サインって言うか、目印みたいなもの」

ライナー「あー、なるほど。使用中みたいな感じか。いいんじゃねぇのか」

マルコ「部屋の前にサインが出てれば入ってはいけない、か。僕もそれでいいと思う」

エレン「じゃあ、使用中って看板でも作るか?」

アルミン「さり気無いものでいいと思うんだ。例えばドアノブのところに傘を引っかけておくとか」

ジャン「グチグチ考えるのも面倒くさいし、それでいいんじゃね?決まりだ、決まり!」

コニー「ついでに、全員でオカズの共用化しないか?!みんなで使いまわして快適ハッピーライフ!!どーよ、良いアイディアだろ?」

アルミン「ブフッ!

ジャン「だからお前は声がでけえって……。だが、珍しく頭を使ったな、コニー」

コニー「だろ?ちなみに俺のコレクションの傾向は~」ペチャクチャ

アルミン(まだこういう話題が続くのかな……ものすごく居づらい……)

コニー「~というわけで、俺が兵舎に持ち込んだのはこんなところだな」

ライナー「なんつーか……結構マニアックだな、お前の趣味……」

ジャン「共有化したって、俺はお前のコレクションで抜ける気がしねぇ」

マルコ「僕も……」

エレン「俺も……」

コニー「なにぃ!お前らスキンヘッド女子に萌えないのか?!」

アルミン「……あの、僕ちょっと気分悪いんで席外していいかな……」

エレン「どうした、また貧血か?」

アルミン「ん……そうみたい……少し外の空気を吸ってくるよ」

コニー「おい、アルミン!じゃあ、俺の提案には賛成って事でいいか?」

アルミン「うん……だけど、ゴメン。僕はそういう類の本、一冊も持ってないんだ……」

ギィバタンッ

エレン「……アルミンって実は想像派だったのか。幼馴染だけど知らなかったなぁ」

兵舎屋外 中庭

アルミン(はぁ、なんとか抜けだすことができた……)

アルミン(腕力が弱い事、体力が無い事は、小さい頃からのコンプレックスだったけど……)

アルミン(ここ最近感じる劣等感はそれだけじゃない……)

アルミン(なんだか、僕だけが置いてけぼりにされてる気分だよ……)

ガサッ

アルミン「ビクッ

アルミン(草むらの影から物音が?!)

アルミン「だ、誰かいるの?」

ガサゴソッ

フランツ「……ア、アルミンかい?」コソッ

アルミン「なんだ、フランツか。こんな所で何を……」

ゴソゴソッ

アルミン「ん、他にも誰かいるの?」

ハンナ「……」コソコソッ

アルミン「ハンナ?どうしたの、こんな時間に二人で……って」ピーンッ

ハンナ「あ、あの……」///

アルミン「ゴ、ゴメン!!何でもないんだ、あのぼ、僕はもう行くから!本当に邪魔しちゃってゴメン!!」アタフタ

フランツ「い、いや、その……」///

アルミン「あ、あの、この事は誰にも言わないから!!じゃあね!!」パタパタパタッ

アルミン(ビックリしたビックリしたビックリした~)///

兵舎屋内 図書室

アルミン(結局ここに行き着くのか……)

アルミン(ここにいるとお爺ちゃんの蔵書を思い出す……子供の頃から、本に囲まれているのが一番落ち着くんだ……)

アルミン(……なんか読もう)

アルミン(……)ペラペラ

アルミン(……そうだよな、フランツとハンナって付き合ってるんだよな)

アルミン(兵舎の中じゃみんなの目があって色々出来ないだろうし……)

アルミン(……って、色々って何だよ!!)///

アルミン(……)ペラペラ

アルミン(『恋とはちょっぴりの愚かさとたくさんの好奇心のこと』か……)

アルミン(……)ペラペラ

ガラッ

アニ「……ん、先客がいたか……」

アルミン「アニ、どうしたの?何か調べ物かい?」

アニ「別に……用事があって来たわけじゃないよ」

アルミン「そう……」

アルミン(アニも女子部屋には居づらかったりするのかな?)ジーッ

アニ「……私に何か用でもあるの?」

アルミン「え?!」

アニ「私の方、ずっと見てるから」

アルミン「い、いや、ゴメン。別に用があるわけじゃないんだけど……いや、ここって普段は滅多に人が来ないから……」アハハハ

アニ「……」

アルミン「あの……僕の祖父は蔵書家でね、家には珍しい本がたくさんあったんだ」

アルミン「子供の頃からそれらの本に親しんでいたせいかな、ここの雰囲気がすごく馴染むんだよね」

アルミン「勿論、兵団基地の図書室だから、ほとんどが軍事学関連の本で占められているけど、少ないながらも普通の読み物だって置いてあるし」

アルミン「アニはどんな本を探しに来たの?」

アニ「……」

アルミン「あ、ゴメン。一人で喋り過ぎちゃったね……」

アニ「……」

アルミン(うるさくして怒らせちゃったかな……アニっていつも怒ったような顔してるから分かりにくいけど……)

アニ「お父さんが……」

アルミン「えっ……」

アニ「……私の父は、幼い頃から私に体術の習得を強いていた。暇さえあれば、私は型の反復練習をして過ごした。下らないと思いながらも逆らえなかった……」

アルミン「……」

アニ「今となっては、その繰り返しも無意味だ。続ける必要なんてどこにもない」

アニ「だけど、いざとなると代わりに何をしていいのか分からなくて……」

アニ「ここへ来たのは単なる気まぐれ。……私は時間がつぶせれば何でもいいんだよ」

アルミン「そう……」

アルミン(アニって普段はわりと無口だけど、話し出すと止まらないタイプなんだね

アニ「あんたの邪魔になるっていうのなら出ていくけど?」

アルミン「そ、そんなことないよ!第一、僕にそんな権限なんかないんだし」

アニ「そう……じゃ、適当に過ごさせてもらうよ……」

アルミン「うん……」

アニ「……」

アルミン「……」ペラペラ

アニ「……」ペラペラ

アルミン(静かだな……)ペラ

アニ「……」ペラ

アルミン(でも、この静謐な時間……悪くないかも……)ペラ

30分ほど席外します

_________
____
_

数日後 再検査日(日付は冒頭に戻る)

医師「~というわけで、遺伝子学上は女性ということが判明しました」

アルミン「え゛」

医師「性染色体は46,xx。疾患名は先天性副腎皮質過形成ということに~」ウンヌンカンヌン

医師「極めて稀なケースですが、あり得ないことではなくて~」ウンヌンカンヌン

医師「今後は女性ホルモン投与による女性化が最適な治療と思われますが~」ウンヌンカンヌン

アルミン「僕が……女?!ちょ、ちょっと待って下さい!!なんでいきなり女になんか……」

医師「突然こんな話を聞かされて混乱しているかもしれません。けれど、急に女に変化したわけではなく、生まれつき、あなたは女性だったのです」

アルミン「どういう……意味ですか?」

医師「簡単に言うと、陰茎に相当しているのは肥大した陰核であり、膣口の一部欠損により外部から膣が視認できないようになっています」

医師「けれど、体内に精巣はなく、卵巣や卵管、子宮が存在しています。これらの症状は出生直後に発覚する事が多いのですが、年齢を重ねてから判明するケースも無いわけではありません」

アルミン「なんで今になって……」

医師「……そこで問題があるのですが……最近、あなたは頻繁に貧血を起こしていますね?」

アルミン「はぁ……」

医師「今、あなたの身体には第二次性徴が起こっています。そのため、身体の中では月経が始まっています。それが貧血の原因の一つです」

医師「ところが、膣口が閉じているため、月経血が体の中に溜まってしまっているのです。早急に処置しなければ、血腫となる危険があります」

アルミン「処置って……」

医師「具体的に言えば、造膣手術です。恐らく今後も定期的に起こるであろう生理に備え、外子宮口と膣口を繋げる必要があります」

アルミン「ちょ、ちょっと待って下さい!そんな急に色々言われても……」

医師「申し訳ない。ただ、本来ならもう少しゆっくりと理解していってもらうべきなのですが、残念ながら時間が無いのです」

アルミン「……」

医師「造膣手術の事だけではなく、その先の事も含めて時間があまりありません。あなたには、今後、男性として生きるか、女性として生きるかを決断してもらわなくてはいけません」

アルミン「え、選べる……んですか?……」

医師「選べるというと語弊があるかもしれません。遺伝子学上、女性であるという事は最早変えようがありませんから」

医師「ただ、今後どのような治療をしていくかの方針として、あなたの意思が必要になります」

医師「私としては女性ホルモン投与による女性化をお薦めしますが、あなたがそれに強い違和感を覚えるようでしたら、カウンセリングを通して話し合うべきでしょう」

医師「ところでご両親は?」

アルミン「え……あ、えっと、昨年のウォール・マリア奪還作戦で亡くなりました……家族はいません……」

医師「そうでしたか。それでは保護者の方は?」

アルミン「トロスト区駐屯部隊長のハンネスさんが……」

医師「では、次回、保護者の方への説明も兼ねて話し合いながら、方針を定めましょう。今は思考がまとまらないでしょうが、どうか落ち着いて考えてみてください」

アルミン「はい……」

アルミン(……落ち着いて考えろって……そんなの無理に決まってるだろ……)

男子部屋

ワイワイガヤガヤ

エレン「どうしたんだ、アルミン?元気無いな。再検査の結果、よくなかったのか?」

アルミン「う、うん……じゃなくて、だ大丈夫だよ。引き続き検査は必要らしいけど……」

エレン「そうなのか……なんかあったら相談しろよな。俺じゃあんまり役に立つ事、言えないかもしれないど」

アルミン「ありがとう……」

アルミン(幼い頃から僕はエレンとミカサに何度も助けられてきた。それを負い目に感じるほどに守られてきた)

アルミン(でも、今度ばかりは誰も僕を助けることは出来ない……誰にも相談できない……)

アルミン(僕が女になってしまったら……この部屋にはもういられないだろうな……)

アルミン(エレンやミカサ、みんなとの関係も変わってしまうのだろうか……)

ライナー「~でよ、その後のクリスタなんだが、ありゃどう見ても俺に気があるよな?」

コニー「おいおい、また始まったぞ、ライナーの妄想が」

ジャン「クリスタは天使だから誰にでも優しいんだよ。ベルトルトも黙ってないで何か言ってやれ」

ベルトルト「ライナー、君は……」

ライナー「おいおい、みんな僻むなよ。クリスタがいつも俺に対して特別優しいのは、誰の目にも明らか……」

ジャン「ったく、これだから童貞は困るぜ」

ライナー「なにぃ?!そいつは聞き捨てならねぇな。ジャンは違うのか?」

コニー「ええ?!嘘だろ?!俺と一緒にヤラハタ目指そうって約束したじゃねーか!!」

ジャン「いつそんな約束したんだよ!気持ちわりーこと言うな!!」

コニー「そう言えば……童貞かどうかは、チ○コ見れば分かるって村で教えられたんだ」

コニー「男には童貞線ってものがあるって……」

ライナー/ジャン「!!」

コニー「二人とも、童貞かどうか確かめさせろ!チ○コ見せろ!!」

ライナー「ちょ、ちょっと待て!落ち着け、コニー!!」

ジャン「お前は騙されてんだよ!んなもん、男にはねぇ!!」

コニー「いいや、嘘のハズがねぇ!何しろ童貞の俺にはまだあるんだから、そうに決まってる!!」

ジャン「だから、それはどんな男にだってあるんだって……ワプッ!!」バターン

ドシンバタン

コニー「見せろ!パンツ脱げ!!」

ジャン「だーっ!やめろ!!」

ライナー「おい、二人とも騒ぐな!!」

ゴロゴロゴロドシンバタン

エレン「いて!!」

アルミン「きゃっ!」

ライナー「!」
ジャン「!」
コニー「!」

シーン

ジャン(な、なんだ?今の『きゃっ!』っていう可愛い悲鳴は……)

ライナー(アルミンが可愛いだと……いかんいかん!俺にはクリスタが……)

ジャン(女みてーな野郎だとは思っていたが、これじゃまるで女そのもの……)ゴクリ

ライナー(いや、クリスタ云々以前に、そもそも俺はホモじゃねぇ!煩悩退散煩悩退散!!)

コニー「なんだよ、アルミンwwwお前の悲鳴、超可愛いなwww」

ライナー/ジャン(コニー!空気読め!!)

エレン「いたた……アルミン、大丈夫か?」

アルミン「う、うん……ちょっとビックリしただけだから……」ヨッコイショ

ジャン(!!乱れた襟から見えるアルミンの生肌が……)

ライナー(お、俺はホモじゃね!ホモじゃねぇ、が……)ゴクリ

ジャン(くそっ!なんだって今日はアルミンがやたら艶めかしく見えたりするんだ!!)

ライナー(クリスタ……すまない……浮気な俺を許してくれ……)

コニー「アルミンってさぁ、なんか妙に色っぽいよな。変質者に気をつけろよwww」

ライナー/ジャン(コニー!消えろ!!)

コンコン

マルコ「入るよー」

マルコ「みんないる?……って、うわっ!なんでコニーがジャンのズボン下ろそうとしてるの?」

ジャン「いい加減に放せ!」ゲシッ

コニー「ウギャッ!!」

ライナー(アルミンと違って汚ねぇ悲鳴だ……)

コニー「ううっ、俺はただ童貞線が見たかっただけなのに……」

マルコ「童貞線?いったい何の話だい?」

ライナー「こいつの言う事はほっとけ。ところで、何かあったのか?」

マルコ「うん、今から一般開放日についての説明をするから、大講義室に集合してくれるかい」

お疲れ様でした
また明日夜に続き書きます

ここまで書いて気付いたけど、きっと最後まで地味な話になります
ゴメンなさい

前回までのまとめ

女の子じゃないもん!と強がってたけど、性染色体は女性だったことが判明したアルミンくん
そんなアルミンくんの戸惑いを余所に、兵団基地では一般開放日という催しが計画される
えっ、この話ってまとまるの?……大丈夫、たぶん、きっと、なんとなく大丈夫な気がしなくもない

大講義室

ワイワイガヤガヤ

エレン「何やかんやあって説明は終了したわけだが……」

アルミン「話をまとめると、訓練兵全員があらかじめ班分けされていて、何を担当するかも決められている、と」

ジャン「なんつーか、班員は成績上位者+αのお馴染メンバーだな。ご都合主義に乾杯したいぜ」

ミーナ「私、成績上位じゃないけど、混ざってていいの?」

ライナー「女子が多い方が華やいでいいからな、何ら問題ない」

クリスタ「それで、私たちが担当する事になったのは、余興の一つとして用意される演劇ね」

サシャ「出店班から外れるなんて~……うう、私の食べ放題計画がぁ~」ヨヨヨ

マルコ「他には吹奏楽班、模擬訓練班、警備班なんかがあったわけだから、やりがいのある部類だよ」

ユミル「私たちに選ばせるって気はハナからねーのな。民主主義はどこいった」

ジャン「訓練兵団に民主主義を求めるなんざ、寿司屋でカレー食わせろって言うようなもんだぞ」

コニー「何だそれwwwジャン、馬鹿すぎwww」

ジャン「……誰かこいつの口に銃口突っ込んでくれ」

アニ「で、どうするの?演目は私たちで決めなきゃいけないそうだけど」

マルコ「取り敢えず、皆どんなのがやりたい?」

エレン「俺は、正義の調査兵団が悪の巨人を駆逐する勧善懲悪ストーリーがいいな」

ミカサ「私はエレンにやりたいものをやらせてあげたい」

サシャ「私はとにかく食べるお話がいいです!美味しいものがたくさん食べられるお話!!」

コニー「エレンのアイディアもいいけど、俺はさすらいのヒーローものに憧れるな。人知れず悪を滅し、背中で語り去っていく旅の武闘家みたいな」

ジャン(コニーは厨二、エレンに至っては小二の発想だろ……)

クリスタ「やるなら誰もが知ってるお芝居がいいと思う。フラリと立ち寄ったお客さんにも観てもらえるし」

マルコ「ふむ、一理あるね」

クリスタ「『ロミオとジュリエット』はどうかしら。ストーリーは誰でも知ってるし、台詞がとってもキレイなお芝居よ」

ライナー(さすが俺の天使!言う事も神々しいな)

ライナー「俺もクリスタの意見に賛成するぞ。あれは良い芝居だ。(……詳しく知らないけど)」

クリスタ「ありがとう」ニコッ

ライナー「あ、ああ」ドキッ

ライナー(見たか!今の微笑み!!やっぱりクリスタは俺に特別優しい!さっきはアルミンに心揺らいじまって、すまない……もう二度と浮気はしない!)キリッ

ミーナ「でも確か『ロミオとジュリエット』って最後は二人とも死んじゃうんだよね。私、悲劇はイヤだなぁ。ハッピーエンドにしてほしい」

アニ「そこを変えちゃ、もう『ロミジュリ』じゃない気がするけど……。ま、私は何でもいいよ。こんな事くだらないね……」

ユミル「ロミオが私でジュリエットがクリスタなら、やってもいい。もしくは、私とクリスタがスール関係になるやつ。何とか様が見てる、みたいな」

ユミル「どっちにしろ、クリスタと男どもをイチャイチャさせるのは納得できないからな」

ジャン「けっ、レズめ……」ボソッ

ユミル「お前もどうせミカサとイチャイチャすんの狙ってんだろ?同じ穴の狢なんだよ」

ジャン「ば!おま!!そんな大声で言うなよ!!」

マルコ「ジャンは何をやりたい?」

ジャン「あ、ああ、そうだな。俺は……」

ジャン(ここでエレンとは一味違う俺のインテリジェンスをミカサに見せつけるんだ!!)

ジャン(まだ考えはまとまっていない……が、やってやる!喋りながらでも考えろ!)

ジャン「えっと……その……なんだ……あれとか……」

ユミル「あれって?」ニヤニヤ

ジャン(で、考えてみた結果、俺は物語なんか全然知らないことに気付いた……)

ジャン(知ってるのっていったら『赤ずきん』とか?子供向け過ぎんだろ!あとは『猿カニ合戦』?って俺は幼稚園児かよ!!)

ジャン「あれだ……ほら……『眠れる森の美女』?」

マルコ「……」

ユミル「ブハッwwwなんだそりゃwww」

サシャ「ジャンって意外と女の子みたいな趣味なんですね……」プププッ

クリスタ「ちょっとユミル!なんで笑うの?いいじゃない」クスッ

ジャン(く、屈辱だ……ミカサの反応は?)チラッ

ミカサ「エレン、ボタンが取れかかってる……」

エレン「あ、本当だ」

ジャン(そもそも俺の話を聞いてねー……)ズーン

アルミン「しかし、見事に意見がバラバラだね」

マルコ「う~ん、困ったな。どうしようか……そうだな、一つ提案があるんだけど」

マルコ「アルミン、きみが君がみんなの意見を取り入れてオリジナルの脚本を書くというのはどうだろう」

アルミン「えっ?!」

マルコ「アルミンは僕らの中で一番の読書家だし、物語の引き出しも多いと思うんだ」

エレン「そうだな、アルミンになら任せられるな」

ミカサ「うん、きっと適役」

オレモ、ワタシモ、サンセーイ

アルミン「そ、そうかな……なら、やってみようかな……」

アルミン(最近はみんなのお荷物になってばかりだし、せめて、こう時くらいは貢献しないと……)

コニー「おー、頼んだぜ、アルミン!」

アニ「……」

マルコ「あ、そう言えば、ベルトルトの意見を聞くの忘れてた」

ベルトルト「僕には自分の意志がないから(ry」

図書室

アルミン(……と安請け合いはしたものの、なかなか難しいな)

アルミン(皆の希望をまとめてみると、エレンが巨人駆逐もの、コニーが流浪のヒーロー、ジャンは『眠れる森の美女』)

アルミン(サシャは食べる話、クリスタは『ロミオとジュリエット』、ユミルが百合でミーナがハッピーエンドか)

アルミン(取り敢えず参考になりそうな脚本をいくつか読んでみよう)

アルミン(……)ペラペラ

アルミン(『世界は一つの舞台、全ての人は男女を問わずその役者、一人の人間が一度の登場で多くの役を演じる』……)

アルミン(……)ペラ

ガラッ

アニ「……ん、またあんたか……」

アルミン「やぁ、アニ。最近ここでよく会うね」

アニ「……あんたがいつも入り浸ってるからだろ」

アルミン「ハハ、そうかもね。早めに脚本を仕上げちゃおうと思ってさ」

アニ「……あんたも物好きだね。あんな面倒くさい役割を引き受けるだなんて」

アルミン「うん、面倒くさいし大変なのは確かだけど……でも、面白いよ、書くのって」

アニ「……」

アルミン「アニもここで色々と本を読んでるみたいだし、もしよかったら協力してくれないかな」

アニ「くだらないね……」

アルミン「ん、そうか……残念」

アニ「あんたさぁ、『生きることは悪であり、業苦である。なかでも書くことは最も罪深い』って言葉、知ってるかい?」

アルミン「え?」

アニ「この部屋だけで何冊の本があると思う?この世界にどれだけの言葉が溢れてると思う?今さら新しいものを書いて何になるの?」

アルミン「……」

アニ「表現するってことは、ゴミを生み出すことと同義なんだよ。苦労に見合った価値なんか無い」

アルミン「ハハハハ……手厳しいね……」

アニ「……私はそう思ってるから、手伝う気になれないよ」

アルミン「うん、分かった……」

アルミン(……)ペラ

アニ(……)ペラ

アルミン「アニってさ……実はけっこう優しいよね」

アニ「……は?」

アルミン「だって僕に苦労してほしくないみたいな言い方だし、書かないのも何か理由があるからじゃないの?」

アニ「……いいや、私はただ、自分がラクしたいだけだよ……」

アルミン(アニは厳しい。でも、他人に厳しいのと同等に、自分にも厳しそう……)

アルミン(だからかな、ちょっとだけ生き辛そうに感じてしまう……)

_________
____
_

数日後 医務室

医師「~というわけで彼が女性であるということは理解していただけましたか?」

ハンネス「はぁ、いや、まぁ、ここに来るまでの間に一通りは聞いてたんですがね、私はこの子を幼い頃から知ってるせいか、どうも未だに信じられませんね」

医師「恐らくそれは本人も同じ気持ちでしょう。本日は様々な疑問にお答えした後、手術の同意と、術後の女性ホルモン投与に関して判断を下していただきます」

ハンネス「手術っていうのは、つまり身体の中に溜まった血を外へ出すために必要だってんですよね?それじゃ、女性ホルモン投与ってのは?」

医師「現在、アルミンくんの身体には性ホルモンが不足しています。このまま放置すれば、慢性的ホルモン不足による骨量低下、それに伴う骨粗しょう症が起こるでしょう」

医師「また、ホルモンのアンバランスによる自律神経失調、卵巣機能の低下による頻発月経など、様々な危険が考えられます」

アルミン「あの……女性ホルモンを投与すると、僕の身体に何か変化は起こるんでしょうか?」

医師「陰核や大陰唇の肥大が無くなり、乳腺と乳管が発達することで乳房が膨らみ始めます」

アルミン「女性ホルモンではなく、男性ホルモンで不足を補うことは出来ないんでしょうか?」

医師「不可能ではありません。けれど、あなたは女性ホルモンが働かず男性体型になっているだけで、肉体は女性です」

医師「男性ホルモンの補充治療した場合、何らかの障害を招き、兵士としては致命的な事態となる危険性を孕んでいます」

ハンンス「そいつは困ったな……」

アルミン(……僕はエレン、ミカサの二人と肩を並べて生きていくんだ。だから、二人が調査兵団へ入るなら、僕もそれを追わなくちゃいけない……)

アルミン(こんな所で立ち止まっているわけにはいかないんだ。でも……)

アルミン「例えばの話ですが……僕が女性ホルモンの投与を受けて、身体が女性のように変わっていったとして……心も変わっていくのでしょうか?」

医師「と言うと?」

アルミン「つまり、僕は今まで自分が男性だと思って生きてきました。そして今もそう思ってます」

アルミン「今後、女性になったとして……その、例えばですが……男の人を好きになれるとは思えないんです……」

医師「そうですね。今きみがそう考えることを疑いはしません。けれど、きみはまだ若いし、今後その考えが一生続くかどうかは誰にも分かりません」

医師「それと関連して理解していただきたいのは、性別と性自認、性指向の三つはそれぞれ別のものだということです」

アルミン「どういうことですか?」

医師「性別とは肉体的に男か女かということ。性自認とは自分が男と感じられるか、女と感じられるかということ」

医師「そして、性指向とは男性を愛するか、女性を愛するか、ということ」

医師「恐らく君が抱いている一般的な女性像は、肉体的に女性で、自分でも女と思っていて、男の子が好きというものでしょう」

医師「しかし、世の中には男だけど男の人が好きだったり、肉体的には男だけど自分のことを女性だと感じている人もいる。人間は複雑なんです」

医師「これら性自認や性指向がホルモンバランスの影響をどれほど受けているかは分からない。きみも女性ホルモンの投与を受けることによって、何かしらの影響を受けるかもしれない」

医師「この問題は、人間誰しもが抱える普遍的なものでもあるのです」

アルミン「……つまり、今後僕の心がどう変化していくかは僕のみぞ知る、ということですか」

医師「そうですね。ですが、我々もカウンセリングによって知る事のお手伝いをします」

ハンネス「いやはや、一筋縄ではいかないとは思ってたが、想像以上の難題だな……アルミン、お前はどう考えてる?」

アルミン「僕は……僕は自分が女だと感じられるようになるとは、やっぱり思えない。でも……」

アルミン「僕は兵士を続けることを何よりも優先したい……そのために女性ホルモンの投与が必要だというのなら、その治療を受けようと思います」

ハンネス「そうか……ま、お前は賢い頭を持ったヤツだ。俺はお前の判断を信じるぞ」

医師「では、まず造膣手術、並びに尿道上裂に対する尿道形成術を行うため、しばらく入院していただきます」

医師「兵団基地外部の医療施設を使用させていただきますが、宜しいですね?キース教官」

キース「許可しよう。それとアルレルト訓練兵は退院後、女子寮へ転寮してもらうことになるので、私物は入院の際にまとめておくように」

アルミン「!女子寮へ、ですか?!」

キース「周囲の訓練兵の風紀のためにも男子寮に留まらせるわけにはいかない。理解できるか?」

アルミン「……ハイ、理解しました」

_________
____
_

数日後 図書室

アルミン(さてと、取り敢えず荷物の整理は終わった。後は病院への出発の時間を待つばかりだ)

アルミン(まだ少し時間の余裕がある。それまでに頼まれていた演劇の脚本だけでも仕上げておこう)

アルミン(あとちょっとで書き上がりそうなんだ)

アルミン(……)カリカリ

アルミン(『かつて、本は文学者が書いて大衆が読んだ。現在、本は大衆が書いて誰にも読まれない』か……)カリカリ

アルミン(ふふっ、アニなら似たようなことを言いそうだな)カリカリ

ガラッ

アニ「……なに一人で思い出し笑いしてるんだい」

アルミン「やぁ、アニ。今日も本を読みに来たのかい?」

アニ「ん……その荷物は?」

アルミン「ああ、これね……実は僕、今日からしばらく外部の病院へ入院するんだ……」

アニ「え?」

アルミン「手術といっても命に関わるものではないから、今日まで誰にも言わなかったんだ。心配しなくてもすぐ帰ってくるよ」

アニ「……別にあんたの心配なんかしないけどね」

アルミン(やっぱりアニってけっこう優しいね)クスッ

アニ「なに笑ってるんだい?」

アルミン「なんでもないよ、ふふっ。……ともかく、今日から入院するんで、その前に脚本を皆に渡しておきたくてね」カリカリ

アニ「そう……あんたもつくづく真面目だね」

アルミン「……」カリカリ

アニ「……」

小一時間経過

アルミン「よし、出来た!」

アルミン「いけない、もう出発の時間が近付いてる!アニ、すまないけど、この原稿を皆に渡しておいてくれないか?」

アニ「別に構わないよ……」

アルミン「それじゃあ、しばらくお別れだ……」

アニ「ああ……」

アルミン(次に会う時……僕はどう変わってしまっているんだろう……)

アニ「?……なに、人の顔をじっと見たりして」

アルミン「……あ、ゴメン。じゃあね!」

ギィバタン

アニ「……」

兵舎廊下

エレン「アルミンのやつ、当日まで入院のこと伏せてるだなんて水臭いよな……」

コニー「おかげで見送りもロクに出来なかったしよ」

ジャン「本人が大した事ないって言ってんだ。外野がギャーギャー騒ぐ事じゃねーだろ」

マルコ「でも、部屋の私物を全部まとめて出掛けるなんて……やっぱりちょっと気になるよ」

ミカサ「アルミンが問題無いと判断したなら大丈夫。アルミンはいつも間違ってない」

ライナー「だな。座学トップの頭脳を信じてやろうぜ」

ミーナ「あ、アニだ。おーい!」

サシャ「どこ行ってたんですか?実はアルミンが……」

アニ「ああ、それなら知ってるよ。これはあいつからの預かり物……」バサッ

クリスタ「あ、これって……」

ユミル「一般開放日用の脚本か。仕上げてから行くなんて、律儀なヤツだぜ」

ライナー「どんなのが出来あがったんだ?見せろ見せろ」

サシャ「あ、私も見たいです!」

ガヤガヤ

エレン「どれどれ……」

『進撃のロミオと眠れるジュリエット様がみてるグルメ旅』

一同「……」



ミカサ「なかなか斬新」

お疲れ様です。途中がお医者さん無双でスイマセン
ちょい慎重にググって調べたけど、間違ってたらゴメンなさい
続きはたぶん水曜夜に書きます。お付き合い有難うございました。

>>1さんはこういう性に関する事の問題に関係があったのかな?
気になりました!

答えにくかったら無視してくだされ

>>165
全く接点ないです
前の米でも名前あがってましたが、「革命の日」って少女マンガがネタの大元で
あとの九分九厘はグーグル先生

コニー「なんだ、この長ったらしいタイトルは?」

アニ「……あいつは全員の希望を一つにまとめたらしいよ」

クリスタ「それって、つまり、私の『ロミオとジュリエット』と……」

ジャン「『眠れる森の美女』と……」

ユミル「『~様がみてる』ってのは、まさか私の?」

サシャ「私の要望はグルメの部分に反映されているんですね」

エレン「俺の巨人駆逐は『進撃の~』って部分か。どうしてそのフレーズなんだ?」

ミカサ「さぁ」

コニー「なぁ、俺の希望だけハブられてねーか?」

マルコ「多分だけど、流浪のヒーローっていう設定が『旅』に反映されてるんじゃないかな」

コニー「分かんねーよ!」

マルコ「ざっと目を通した感じだと、基本的な筋は『ロミオとジュリエット』の流れを踏襲してるみたいだ。配役も既に決められてる」

マルコ「あるところに二つの対立している組織がありました。一つは人間勢力、もう一つは巨人勢力で、人間側の代表役は僕、巨人勢力の側役にはライナーが割り振られてる。」

マルコ「そして人間側にはエレン、ミカサ、ミーナが属している。原作で言うところのロミオ、ベンヴォーリオ、マキューシオに当たるね」

ジャン「ちょっと待て!それじゃエレンが主役じゃねーか!!納得いかねーぞ!」

マルコ「落ち着いて、ジャン。この台本は誰か一人が主役ってわけじゃなくって、ちゃんと全員に活躍できる場面が用意してあるから」

ミカサ「私はどんな役?エレンとはどんな関係なの?」

マルコ「従兄弟で友人という関係だ。ロミオにとって一番信頼できる誠実な友人というポジションだね」

ミカサ「従兄弟……家族……すごくいい」ジーン

ミーナ「あれ、私のマキューシオって、確かとっても良い役なんじゃなかったっけ?」

マルコ「うん、そうだね。ロミオの友人で、機知に富んだ名台詞のたくさんある、主役格に次ぐ重要人物だ」

ミーナ「え~!!モブに毛の生えた程度の私が、そんな役もらっちゃっていいの?!」

マルコ「そんな自虐しなくても……。ともかく、マキューシオがティボルトに殺されることによって物語は動き出す」

ミーナ「私、死んじゃうんだ~!!」ガーン

マルコ「で、ミーナを殺すティボルト役をやるのがアニだ」

アニ「私?」

マルコ「そう。ティボルトはジュリエットの従兄弟で、この劇では巨人勢力側の次期当主候補といったところだ」

マルコ「劇中、ミーナはアニに殺され、アニはエレンに殺され、エレンは追われる身となる。『ロミジュリ』通りの流れだ」

エレン「俺がアニを殺しちゃうのかよ、イヤだなぁ」

アニ「……」

ユミル「私は何の役なんだい?」

マルコ「うん、このあたりはユミルの希望に沿う形でアルミンがだいぶ書き替えてるんだけど、まず、ジュリエットがクリスタ」

ユミル「ま、それは当然かな」

マルコ「で、原作ではジュリエットの乳母にあたる役が、ジュリエットのグラン・スールって事になってて、それがユミルの役だ」

ユミル「アルミンのやつ、分かってるじゃないか。ってことはクリスタが私を呼ぶ時は……」

マルコ「『お姉さま』だね」

ユミル「くぅ~、たまんないね!!クリスタ、普段からそう呼んでも構わないんだぜ」ベタベタ

クリスタ「も~、呼ばないよ」

マルコ「コホン、それからサシャは、原作のロレンス、バルサザー、ピーターなど複数の役を一つにまとめたようなコメディリリーフ担当になってる」

サシャ「コメディリリーフって何ですか?」

ユミル「お笑い担当のことだよ。あんたの場合、素のままでやれば簡単だろ」

サシャ「そんなことありませんよ!慎み深い私には不向きとさえ言えるかもしれません!」

マルコ「ちなみに、アルミン渾身の梃入れで、サシャの食べ歩き場面が追加されている」

サシャ「私、生まれついてのコメディアンなんです!その役、やらせてください!!」ガバーッ

マルコ「エレンとクリスタは両勢力を和解させるべく示し合わせて行動しようとするが、サシャが食べ歩きにうつつを抜かしている間に行き違いが生じてしまう」

マルコ「クリスタは目覚めぬ眠りに落ちてしまい、その呪いを解くために……」

ジャン(お、話が今度は『眠れる森の美女』っぽくなってきたな)

マルコ「ジャン、きみが現れるんだ!」

ジャン「お、俺?!」

マルコ「そう、きみだ。『ロミオとジュリエット』でいうところのパリス役、ジュリエットの婚約者」

マルコ「原作ではロミオにあっけなく殺されてしまうんだけど、この脚本ではクリスタを目覚めさせるためのキスを巡ってエレンと熾烈な戦いを繰り広げる!」

一同「キスぅ?!」

クリスタ「キ、キスシーンがあるの?」///

ユミル「ちょっとそれは聞き捨てならないね。そーいうシーンはクリスタ専属マネージャーの私を通してもらわないと」

ライナー「お、俺も承服しかねるぞ」

ミーナ「いーじゃん!やっちゃえ、やっちゃえ♪」

エレン「か、勘弁してくれよ……」

ミカサ「……」
アニ「……」

マルコ「待って待って。実際のキスシーンは無いんだよ」

マルコ「エレンとジャンの最終決戦は、コニーの登場によって収められる」

コニー「ようやく俺の出番か。でも、最後の最後に表れるってのはヒーローらしくていいな」

マルコ「大公エスカラスにあたる役で、原作では両勢力の不和を諌めるだけなんだけど、ここでは全知全能のヒーローとして登場」

マルコ「クリスタの眠りは覚め、死んだはずの人物は全て生き返り、両勢力も和解して大団円となって幕が降りるんだ」

ライナー「なんつー強引な……」

ユミル「ちょっとご都合主義過ぎじゃないか?」

ミーナ「そんな事ないよ!やっぱり最後はハッピーエンドじゃないと」

アニ「物語に整合性を求めるのは近代以降の悪癖でしかない……ってアルミンなら言いそうだけど」ボソッ

クリスタ「私はこれ、面白いと思うな。そもそも『ロミオとジュリエット』が原作を尊重する形で上演されるようになった歴史は意外と浅いの」

クリスタ「それまでは改作された様々なヴァージョンでもって上演されていて、なかには二人とも生き残るハッピーエンド版もあったんだって」

クリスタ「そうやって長い年月を生き残ってきたお芝居なんだから、こういう風に手を加えるのも悪くないんじゃないかな」

エレン「理屈はともかくとして、アルミンの書いた物なら俺は信用できる」

ミカサ「私もエレンと同じ気持ち」

マルコ「まぁ、とにかく、アルミンが退院するまで、皆で本読みくらいしておこう。ちなみにアルミンは演出兼舞台監督ということで、劇中には登場しない」

ベルトルト「マルコ……」

マルコ「なんだい?」

ベルトルト「僕の役は?」

マルコ「ん?」

ベルトルト「……」

マルコ「……あ、ここに書いてあった」

ベルトルト「……」

マルコ「壁、だって」

ベルトルト「……」

ライナー(イジメか?イジメなのか?!)

ベルトルト「……あ」

ライナー「どうした?」

ベルトルト「結構、台詞多いな」

ライナー「マジか?!」



クリスタ「ちなみに、『ロミジュリ』とほぼ同時期に書かれた『真夏の夜の夢』には、『ピラマスとシスビー』という劇中劇が出てくるんだけど、これは『ロミジュリ』を茶化したような内容で、しゃべる壁の役が登場するの」

ユミル「誰に向けての解説だい、それは」

_________
____
_

数日後 訓練終了後

ライナー「だから立体機動装置調整の際にファンの角度をだな~」ウンヌンカンヌン

エレン「でもそれじゃ吸入口から入るガスが排出部に干渉しちゃいそうで~」ウンヌンカンヌン

ライナー「シャフトが摩耗していないなら、その心配はない筈で~」ウンヌンカンヌン

エレン「う~ん……なぁ、アルミンはどう思う?……って、まだ帰ってきてないんだったな……」

ライナー「こういった理論はアルミンの方が説明上手だからな」

ジャン「言っとくが、実践だったら俺のが圧倒的だぞ」

ライナー「今は誰もそんな事きいてねーぞ」

コニー「あ~あ、早く戻ってこねーかな、あいつ」

エレン「……」

エレン「……!来た!!」

ライナー「え?!」

エレン「アルミンだ!帰って来た!!」

ダダダッ

エレン「お~い!アルミン!!」

アルミン「ビクッ

エレン「帰って来たんだな!今、こっちに着いたばかりか?」

アルミン「や、やぁ、エレン……それに、皆も……」

ライナー「今ちょうどお前の噂をしてたとこなんだぜ」

エレン「体調はもういいのか?」

アルミン「あ、ああ……ひとまず問題ないよ……心配かけてゴメンね……」

ジャン「で、結局のところ、お前の手術ってなんだったんだ?」

アルミン「そ、それは……」

コニー「まさか包茎手術とかじゃねーだろうなwww」

アルミン「ハハハ……」

アルミン(どうしよう……後で教官から皆に向けての説明があるけど、今ここで僕の口から言ってしまおうか)

アルミン(信じてもらえるかな?……信じてもらえなくても言うしかないんだけど……奇異の目で見られやしないかな)

アルミン(そして何よりも怖いのは……皆が僕から離れてしまう事……エレンが僕から離れてしまう事……)

エレン「アルミン、お前……」

アルミン「……え?」

エレン「もしかして、ちょっと変わった?」

アルミン「!!」

アルミン(まだ見た目はそれほど変化していない筈なんだけど……エレンには気付かれた?!)

アルミン「か、変わったって、何が……?」ヒヤアセ

エレン「ちょっと髪が伸びすぎじゃねぇか?ここんとこ、ずっと切ってなかったろ」

ジャン「女じゃあるまいし、男のくせに鬱陶しいんだよ」

アルミン「ああ、そんなことか……」ホッ

ライナー「?おかしなヤツだな」

アルミン「あ、あの!僕、寮の方に荷物を置いてきちゃうよ。それじゃ、また後で!」

タッタッタッタッ

エレン「おい、何もそんなに急がなくたって……って行っちゃったか」

ジャン「あいつ、何考えてんだ?あっちは女子寮の方角だぞ。こんな時間から覗きにいく気か?」

コニー「パンツでも盗みにいくんじゃね?」

ライナー「誰もが自分と同じだと思わない方がいいぞ、コニー」

コニー「はぁ?何言ってんだ、ライナー。俺はパンツなんか欲しくないぞ。俺は靴下にしか興味無いし」

ジャン「……お前を見てると、自分がまともに思えて救われた気分になるよ」

コニー「褒めたって何もやんねーからな」

タッタッタッタッ

アルミン「ハァハァハァ

ミカサ「!!アルミン」

アルミン「ミカサ……」

ミカサ「今日、戻ってきたの?」

アルミン「うん……」

サシャ「なんか久しぶりですね~」

クリスタ「心配してたんだよ」

ミーナ「具合は大丈夫なの?」

アニ「……お帰り」

アルミン「みんな……あ、あの……」

ミカサ「どうしたの?」

アルミン「今日から宜しくお願いします!!」ガバッ

ダッダッダッダッダッ

一同「キョトン

サシャ「改まって挨拶だなんてどうしたんですかね」

ユミル「入院中に脳ミソでもイジられたんじゃねーの?それよりも、ハゲ教官から集合かけられてんだから、さっさと行こうぜ」

今日は脳みそが腐ったウニで全然働いてくれない……
取り敢えず土曜日夜また来ます
もしかしたら、今夜あとちょっとだけひっそり書くかもです
ひとまず、お付き合い有難うございました。お休みなさい

集会施設

ザワザワ

ライナー「それにしても、わざわざ訓練兵全員を集めてアルミン退院の報告するって、なんでなんだ?」

マルコ「随分と大袈裟だよね」

エレン「本人は心配するなって言ってたけど、こんな事されちゃ余計気になるよな~」

コニー「分かったぞ!アルミンは極秘に研究されていた巨人化生体実験の被験者なんだ!!」

ジャン「はぁ?」

コニー「実は、巨人化できる薬が発明されていて、いざという時、アルミンは巨人兵に変身して口からビームを吐いて、悪い巨人を一掃してくれるんだ!」

エレン「そんな夢みたいな事あるかよーwww」

コニー「だよなーwww」

ジャン「そもそも、口からビームって……そりゃ巨人兵じゃなく巨神兵だろ」

マルコ「ジャン、何を言ってるの?」

ジャン「……いや、俺、疲れてんのかな。電波な事を口走っちまった……」

キース「静かにしろ!」

キース「~というわけで、本日よりアルレルト訓練兵が復帰するが、先日の検査により彼は、いや、彼女は女性であることが判明した」

「……」

キース「詳しい病名等については省くが、彼が、いや彼女が(……ムム、慣れないとどうも言い間違えるな)その事実を意図的に隠蔽した疑いは全く無い」

「……」

キース「よって、これまで男性として行動していた事に関しては不問と処す」

「……」

キース「なお、彼は(……彼でも構わんだろう)本日より女子寮へと移る事になる」

一同「……」

ジャン「やっぱり、俺、疲れてんのかな。幻聴が聞こえる……」

ライナー(どっきりカメラだな、どっきりカメラなんだろ!!俺は騙されないぞ!理不尽な暴力も受けないぞ!!)

クリスタ「教官のジョークって、どこが面白いのかよく分からないね、アハハハハハ……」

マルコ(という事は、今までアルミンとは男女混浴?!)

ミーナ(れ、冷静にならなきゃ!こういう時は手のひらに豚って書いて飲み込むんだっけ)

コニー「アルミンのパンツはいいパンツ~♪すごいぞ~♪」メダパニ

ミカサ「エレン、落ち着いて」

エレン「俺は落ち着いてるぞ。って言うか、今ミカサが話しかけてんのはサシャだ。俺はこっちだ」

アニ「……そう言ってるエレンも、私に向かって話しかけてるけど……」

サシャ「ありゃ~、みんな良い具合に現実逃避してますね」

サシャ「『人は許容量を超える驚きに直面した時、心凍てつかせる』ってヤツですね」ウンウン

ユミル「んな恰好良い言い回しをしてる場合じゃねー!!」ゲシッ

アルミン(みんな驚いてる……当然だよな)

アルミン(エレンたちはひたすら当惑してるし、僕の事を知らない人たちは何か得体のしれない物に遭遇したかのようだ……)

アルミン(でも、僕は、これから先エレンやミカサが態度を変えずに接してくれる事を知っている)

アルミン(今は驚いているけど、二人は必ず僕を受け入れてくれるだろう。他の皆もきっと……)

アルミン(なのに何故、僕はエレンが離れてしまうんじゃないかという心配をしたのか)

アルミン(答えは簡単。僕自身がまだ自分の事をどこか受け入れられずにいるからだ)

アルミン(そのせいで、僕の目の前には薄いもやがかかってるみたい。何もかもがハッキリと見えなくなっている……)

キース「女子寮では、△△△訓練兵とxxx訓練兵の部屋に空きがあるそうなので、そこへ入ってもらう」

△△△「きょ、教官!」バッ

△△△「お言葉ですが、仮にもつい数日前まで男性であった人間と同室になるのは、あまりにも……」

キース「認識が誤っているようだな。アルレルト訓練兵はこれまで男性であった事実は無い。生来、女性であったのだ」

△△△「では、言い直させていただきます。先日まで、男性として生活してきた者と同室になるのは……」

キース「これは命令だ。貴様の意見は必要としていない」

△△△「!……」

ミカサ「教官、私から提案があります」スッ

キース「なんだ、アッカーマン訓練兵」

ミカサ「私はアルレルト訓練兵の同室を希望します」

ミカサ「私とアルレルト訓練兵は同郷の出身です……。ので私は……他の人よりも彼の事を理解しています」

ミカサ「今後、彼の生活面において様々なフォローが可能と思われます」

キース「ふむ……」

サシャ「あ、それなら、私もアルレルト訓練兵と同室を希望します」

サシャ「多分、他の人に比べて、私はあまり抵抗を感じませんから」

キース「宜しい、許可しよう。では、△△△訓練兵とxxx訓練兵は、それぞれアッカーマン訓練兵とブラウス訓練兵の部屋に移れ」

キース「空いた部屋にアルレルト訓練兵たち三名が入るように。以上、解散」

ザワザワ

アルミン「……」

エレン「アルミン!」

パタパタパタ

アルミン「……みんな、今まで黙っててゴメン……」

エレン「いや、つーか、お前も最近知ったばかりなんだろ?…そもそも、本当の事なのか?」

アルミン「うん……僕もショックだけど……事実なんだ……」

コニー「じゃあ入院してたってのは……分かった!チ○コ取っちゃったんだな!チ○コ!!」

ジャン「恥ずかしいから連呼すんじゃねー」ゲシッ

アルミン「あ、あの、別に性転換したわけじゃないから……」

コニー「?よっく分かんねーな」

ライナー(今、あの服には、見慣れたはずのアルミンの身体が包まれている……)

ライナー(そう、俺は何度もあの身体を見たはずなんだ。普段は気にも留めてなかったが……)

ライナー(しかし、教官の話では、アルミンは女に変わったのではなく、元から女だったという)

ライナー(つまり、俺の記憶の中には本物の女の裸が確かにインプットされている筈なんだ!)

ライナー(思い出せ、思い出すんだ!風呂場で見たはずの裸を!!恥部を!!!)ブフーッ

マルコ「ライナー、鼻息が荒くて怖いよ……」

サシャ「ハイハイ、皆さん、色々聞きたい事はあると思いますけど、インタビューはここまでですよー」

クリスタ「そうね、アルミンだってまだ戸惑ってるだろうし、話はおいおい聞いていこう」

アルミン「うん、ありがとう……そうしてくれると助かるかな」

ミーナ「あの、これからはアルミンのこと、アルミンちゃんって呼んだ方がいいのかな?」

アルミン「それは勘弁してほしいかな、アハハ……第一、ちゃん付けで呼ばれてる人なんて誰もいないよね」

エレン「ミカサ、アルミンのこと、宜しく頼んだぞ」

ミカサ「うん、まかせて」

女子部屋

アルミン「ミカサもサシャも、あらためて、さっきは有難う。二人のおかげで、揉めたりせずに済んだよ」

ミカサ「気にしないで、アルミン。あなたは私の大事な友達だから」

サシャ「そ~ですよ。アルミンにはいつも座学で分からない箇所を教わったりしてるし、こんな時くらい恩返しさせてください」

アルミン「あの、同部屋で迷惑かけるかもしれないけど、気に障る事あったら遠慮しないで言ってね」

サシャ「アルミンは、人に迷惑かかるような変な癖とかあるんですか?」

サシャ「ちなみに、私は食べられそうな物を何でも口に入れちゃう癖があるんで、貴重品は出しっぱなしにしない方がいいですよ」

アルミン「そういう意味じゃなくて……と言うか、サシャのその癖は危険だから止めた方がいいと思うんだけど」

サシャ「そうなんですよ~。この前もカリン糖だと思って口に入れたら、犬のウ」

アルミン「言わなくていいから!!いや、ほら、僕がいると着替えたり何したりする時、気になるだろうって意味で……」

ミカサ「そんな事は無い。だって、アルミンは女の子なんでしょ?」

アルミン「うっ……そう言い切られると、まだかなり抵抗あるんだけど……」

サシャ「大丈夫ですよ。アルミンは元から女の子みたいでしたもん!むしろ、ユミルなんかより、ずっと女の子らしくて可愛いですよ」

ユミル「話は聞かせてもらった。サシャ、表出ろ」ガチャ

サシャ「ひぇっ?!何しに来たんですかぁ~?!」

ミーナ「ユミルだけじゃなくて、私とクリスタも来てるよ」

クリスタ「お邪魔します。もしよければ、荷物の片づけ、手伝おうかと思って」

ユミル「アニのやつは面倒くさいからパスだってよ。相変わらず冷たいヤツだぜ」

アルミン「わざわざ有難う、みんな。でも、荷物はそんなに多くなかったから大丈夫だよ」

ユミル「ま、色々戸惑う事も多いだろうが、男だったらクヨクヨすんな!おっと、男じゃないんだな、ウシシ」ニヤニヤ

クリスタ「も~、またそうやって憎まれ口叩くんだから……」

ミーナ「実際のところ、アルミンには自分が女性だっていう自覚はあるの?」

アルミン「う~ん、今のところはそう思えないかな。でも、男性だと言い張るだけの自信もないんだ」

ミカサ「?」

アルミン「僕は子供の頃から腕力も体力も弱くて、いつもエレンやミカサに助けられていたじゃない。それって男の子としてはコンプレックスだったんだよね」

アルミン「女性であることを受け入れれば、今さらだけど、そういった幼少期のコンプレックスとは完全に決別できる」

アルミン「そういった思いも含め、男だと主張し続ける事に、あまり意義を見出せないでいるんだ」

ユミル「兵団という組織に属していた事は、ある意味であんたにとって幸運だったかもな」

クリスタ「どういう事?」

ユミル「兵団って組織は寮こそ男女で分けられているものの、訓練じゃ扱いに差は無いし、実戦ともなれば完全に男女の区別なく行動する事になる」

ユミル「だから、アルミンみたいなイレギュラーな存在に対しても、カリキュラムの面で不都合な事態は起こらないだろう」

サシャ「そうですね。女の役割、男の役割なんて分けられ方は、ここでは無いですからね~」

クリスタ「あるとすれば……」

ミーナ「……お薬の支給かなぁ」

アルミン「薬?」

ミカサ「……アルミン、正直に答えてほしい」

アルミン「?」

ミカサ「生理はあるの?」

アルミン「ブホォ!!

サシャ「うひゃっ!唾と鼻水がコンボで私の顔面直撃です!!」

アルミン「ご、ごめん」フキフキ

アルミン「……えっと」///

ミカサ「ジーッ

アルミン「お、お医者さん曰く、初潮はきてるって話なんだ。ただ、それは僕の知らぬ間に身体の中で起こっていた事で……」

ミーナ「じゃあ、まだ実際には体験してないんだ……」

アルミン「えっと、もしかして薬って……生理痛用の鎮痛剤のこと?」

ユミル「甘い!甘いわ!!そんなものだけで過酷な訓練が乗り切れると思ったら大間違いだぞ!!」

アルミン「?」

ミカサ「アルミンも覚えておくといい。私たち兵士にはこれが優先して配給される」サッ

アルミン「このシート状の錠剤は?」

ユミル「俗に言うピルだな」

アルミン「!!!そ、それって、あの……」

ミーナ「まぁ、アルミンも男の子だったわけだし、ピルって聞けば避妊薬としか思わないんだろうけど……」

クリスタ「生理痛の軽減にも効果はあるんだよ」

ミカサ「少なくとも、鎮痛剤よりはよっぽど効果的」

クリスタ「勿論、お薬だから体質によって個人差はあるし、中には服用して逆に重くなっちゃう人もいるみたいだけど……」

ミカサ「だけど、大半の人はこれでかなり助かっている。痛みが軽くなるだけじゃなくて、量も減る」

ミーナ「定期的に服用すれば、生理不順なんかとも無縁になれるしね」

アルミン「……」

ユミル「おい、アルミン。今、お前が考えてる事を当ててやろうか」

ユミル「お前は『こいつら全員ピル飲んでんならヤリ放題中出しウハウハ』とか思ってんだろ!このドすけべゲスミン野郎め!!」

アルミン「お、思ってないよ!」///

アルミン「僕が考えてたのは、その……身体に悪い影響は出ないのかなって事なんだ……」

ユミル「ほーほー、お優しいアルミンくんは、私たちが将来不妊に悩まされるのではないかと、心痛めていると」

クリスタ「嫌味はダメだよ、ユミル。でも……アルミンの疑問に答えるとしたら、少なくとも安全を確認してから処方は受けてるけど」

ミカサ「私はもともと重い方だったから、薬は必需品」

ミーナ「そもそも、あんな無茶な行軍訓練なんてしてたら、誰だって生理不順になるって話よね」

サシャ「私は大丈夫ですよ。普段から生理痛はほとんどありませんし、皆さんみたいに薬も飲んでません」エヘン

ユミル「野生児かつ健康優良児って、一昔前の熱血少年漫画の主人公みたいなヤツだな、お前は」

ミカサ「ナプキンやショーツはもう用意してある?」

アルミン「い、一応は。入院中に紙資料を渡されたから、それで勉強して、必要そうなものは揃えておいたよ」

ミカサ「どんな物か見せて」ズイッ

アルミン「う、うん。いいけど……」

アルミン(う~ん、やっぱりミカサって世話やきの母親みたいなところがあるな。時々エレンが鬱陶しい分かる気がする……)

ミカサ「ちなみに、私はカルラおばさんから布ナプキンの作り方を教わったの」

ミカサ「……カルラおばさん、厳しいけど、とっても優しい人だった……」グスッ

アルミン「ミカサ……」

アルミン(そうか、ミカサはカルラおばさんから教わった事を僕に伝える事で、亡くなった人の思いを繋げていこうとしてるんだ……)

アルミン(ゴメンよ、ミカサ……一瞬でも鬱陶しいと思ってしまった僕を許してくれ……)

アルミン「……僕も教わりたいな。ミカサ、お願いするよ」

ミカサ「うん、任せてほしい。アルミンの周期も私がキチンと把握しておく」グッ

アルミン「いや、そこまではしてもらわなくても……」

クリスタ「でもミカサ、ナプキンだと立体機動の時とか簡単にズレちゃって困らない?」

ミカサ「大丈夫。ちゃんと羽根も作るから」

ミーナ「う~ん、それでも私は不安だなぁ」

ユミル「ジャンみたいに中途半端な知識しか持ってないヤツは、タンポンを使うヤツは非処女!とか思ってそうwww」

アルミン(ううっ……みんな本気で僕のことを男だと思ってなさそうな会話……男子部屋の時とはまた別の意味で居づらいな)

アルミン(けど、そもそもは僕のために色々アドバイスしようと思って集まってくれたんだから、多少の恥ずかしさは我慢しなきゃ)

ワイワイガヤガヤ

小一時間経過

クリスタ「あ、もうこんな時間。長居し過ぎちゃったね」

ユミル「そろそろ部屋に戻るか。邪魔して悪かったね」

アルミン「いや、色々と教えてくれて助かったよ。有難う」

ミーナ「また遊びにくるから。じゃあね」

パタン

アルミン「ふぅ……」

ミカサ「アルミン、疲れた?」

サシャ「考えてみたら、今日、退院したばっかりなんですよね」

アルミン「ああ、でも大丈夫だよ。ただ、ちょっと外の空気が吸いたくなっただけ」

ミカサ「私もついていこうか?」

アルミン「いや、いいって。本当にミカサは過保護だなぁ」クスッ

ミカサ「だって、エレンから、アルミンを宜しくって頼まれたから」

アルミン「ああ、なるほど。でも、僕がエレンほど無鉄砲でないのは知ってるだろ?だから心配しないで」

アルミン「少し気分転換したら戻ってくるよ」

ギィバタン

ミカサ「……」

サシャ「確かにアルミンって、いつも落ち着いてて、慎重派って感じですよね」

ミカサ「うん……。でも、落ち着いてるから慎重ということはない」

サシャ「え?」

ミカサ「アルミンは落ち着いている時ほど、かえって大胆な行動に出たりする……そういう種類の人間」

図書室

アニ「……」ペラ

ガラッ

アルミン「やっぱりここに居たんだね」

アニ「……何か用でも?」

アルミン「特別に用事があるわけじゃないけど……ちょっと気分転換に話をしたくなって、ね」

ここまでお付き合い有難うございました。
また明日夜、続きやります。お疲れさまでした。

すげー今さらですが
>>266
時々エレンが鬱陶しい分かる気がする

エレンが鬱陶しがるのも分かる気がする

の間違いです。なんかまるでエレンが鬱陶しいみたいでゴメン!
きっと皆さんが脳内変換してくれていたと信じてます

アニ「私は別に話したい事は無いけどね……。どうせさっきまで、ユミルやクリスタたちのいい玩具になってたんじゃないの?」

アルミン「玩具扱いっていうのは、厳しい言い方だなぁ」ハハハ……

アルミン「まぁ、ユミルからは『男らしくない』みたいに、からかわれたりもしたけど……」

アルミン「よくよく考えてみたら、ほんの少し前まで、僕は『女みたいだ』って言われる事に反発してたんだ」

アルミン「それを思うと、この状況は何とも皮肉だよね」

アニ「……」

アルミン「ともかく、さっきはユミルも含めて、みんな僕のために集まってくれてたんだ。悪い気は全然しないよ」

アニ「悪意がないからこそ、逆にタチが悪いね」

アルミン「どの話も、これから女性として生きるにあたって必要になる情報だったよ」

アニ「知ってる。あいつら、私にも知っておいた方がいいとか言って、色々と押し付けてくるからね」

アルミン(なるほど……アニは、男子部屋にいた頃の僕と似ているのかも)

アルミン「アニはユミル、クリスタと同室なんだよね。ユミルはともかく、クリスタはデリカシーありそうだけど……」

アニ「……私は、みんなの優しさと思い遣りで息が詰まりそうだよ……」

アルミン「……」

アニ「共同生活ってのは、同じ時間を過ごしつつ、誰もが背を向けて生きるべきなんじゃないかな……」

アルミン「……」

アニ「もしそうであったなら、あんたが男だろうと女だろうと、誰も騒ぎ立てたりはしない」

アルミン「それだと確かに心乱れる事はないだろうけど、何だか寂しい気がするな~」

アニ「『私たちは誰しも暗夜の海の遊泳者』……」ペラ

アルミン「ん?」

アニ「この本にたまたま書いてあったんだけどね、生活する事って、本当はそんなもんじゃないの?」

アニ「真っ暗だから周囲なんか見えないけど、他の人がバシャバシャ水を掻く音だけ聞こえてる」

アニ「私には、そんな距離が一番気楽でいいよ……」

アニ「……ちょっと言い回しがスノッブ染みてて恥ずかしくなってきた。今言った事は忘れて」

アルミン「ハハハ……」

アルミン「アニは……実は皆の事が気にかかって仕方ないんだね」

アニ「ハァ?!なんでそうなるのよ」

アルミン「アニにとって暗夜の海は、冬の晴れた日みたいに見通せる場所なんだよ、きっと」

アニ「勝手なこと言って……。私はもう部屋に戻るから」プイ

アルミン「……」

アルミン(僕は薄もやの向こうに皆を見て不安になっている。アニは、クリアな視界で他人を見ることを恐れてる)

アルミン(僕らは異なるようで似ているのかな。それとも、似ているようで異なるのかな……)

_________
____
_

数日後 劇の練習

ジャン『それはともかく、例のお願いの件は?』
ライナー『彼女は世間知らずの箱入りのまま、まだ十四の春を迎えていない』

アルミン「……どうやら、みんな真面目に取り組んでいるようだね」ヒソヒソ

マルコ「うん、みんなアルミンの脚本を気に入ってくれたから、練習にも積極的に参加してくれてるよ」ヒソヒソ

ライナー『あと二夏がそのさかりを過ぎぬうちは、花嫁となる年頃に思われないのだ』
ジャン『世の中には、もっと若くして幸せな母となった例えもある』

アルミン「衣装の手配はどうなってるの?」ヒソヒソ

マルコ「クリスタとミーナを中心に、私服をアレンジしたりして用意してる」ヒソヒソ

ミカサ『しち面倒な挨拶なんて流行遅れ。登場するのに、しどろもどろな台詞など御免こうむる。さっさと踊りに行こう』
エレン『お前の靴底は軽いかもしれないが、俺の心の底は鉛のように重い。踊りに行く気にはなれないよ』
ミーナ『あなたが沈んだら、下で支えるのは大変だ。かよわい乙女には重すぎる荷物だもの』

アルミン「大道具は?」ヒソヒソ

マルコ「最低限のものだけ、ベルトルトを中心にして作ってもらってるよ」ヒソヒソ

エレン『もしもこの卑しい手がきみの手に触れ、聖堂を汚したとあれば、罰はもとより覚悟の上』
クリスタ『このような礼儀正しい手に、そのお仕打ちはあまりにひどい。指の触れ合いは、巡礼の優美な口づけと申します』

アルミン「クリスタはさすがに堂に入った演技だね」ヒソヒソ

マルコ「箱入りのお嬢様って役柄もピッタリ合ってるんだよ。しかし、それよりも……」ヒソヒソ

エレン『俺は誓おう、夜を銀一色に染める清浄な月にかけて』
クリスタ『いけません、月にかけては。不実な月は満ち欠けするもの。あなたの心も変わり易いものになります』

マルコ「驚いたのはエレンだね。最初は不安だったけど、今じゃすっかり役に馴染んでる」ヒソヒソ

アルミン「エレンは感情で動くタイプだからね。感情移入できるようになれば、能力を充分に発揮してくれるのさ」ヒソヒソ

ミーナ『お前に九つの命があるのなら、そのうち一つを頂戴しよう。態度次第じゃ、残りの八つも貰ってあげようか』
アニ『相手になってやろう』
エレン『二人とも剣をおさめろ!』

マルコ「これを見たら、104期生の女子の中でエレン人気が沸騰するんじゃないの?」ヒソヒソ

アルミン「アハハ……どうだろう……」ヒソヒソ

ユミル『この指輪は私の可愛いプティ・スールからの贈り物。これが身の証となるだろう』
サシャ『では、何かあれば、私があの方の元まで知らせに参ります』

マルコ「あ、ベルトルトが大道具を運んできてくれた」ヒソヒソ

アルミン「なんかグラついてるけど、大丈夫?」ヒソヒソ

グラッ

アルミン「!」

エレン「アルミン、危ない!!」

トッ゙シーン

クリスタ「キャーッ!!」

アニ「!」

ライナー「どうした?!!」

マルコ「大道具が倒れてきたんだ!!」

ミカサ「エレンがアルミンをかばって、二人とも下敷きに!」

コニー「早くどかせ!」

ワッセワッセ

エレン「いてて……」

ミカサ「二人とも大丈夫?!」

アルミン「ぼ、僕はエレンがかばってくれたから大丈夫。それよりもエレンが……」

エレン「ああ、俺も大した事ないよ。所詮はベニヤ板だしな」

ベルトルト「いや、わりと硬めのラワン材なんだけど……」

ジャン「まぁ、こいつはタフさだけが取り柄だから、丸太で殴っても平気だろ」

エレン「なんかお前に言われるとムカつくな……」

ミカサ「でも、心配だから医務室へは行っておこう」

エレン「これぐらい平気だって」

ミカサ「ダメ!かすり傷が化膿して破傷風になって死んじゃったらどうするの!!」

エレン「そんなことまで心配してたら訓練なんか一つも出来ないだろ……。まぁ、ついでだしアルミンと一緒に行っておくか」

アルミン「え!?」

エレン「アルミンだってちょっとくらい擦ったんじゃないのか?ミカサがうるさいし、休憩がてら医務室へ行ってこようぜ」

アルミン「ぼ、僕は本当に大丈夫だよ」

ミカサ「アルミンも行ってきた方がいい。そして、エレンが治療を嫌がって逃げ出さないか見張っていてほしい」

エレン「俺は歯医者で泣きわめくガキか……まぁともかく行ってくるよ」

マルコ「じゃあ、皆は少し休憩しよう」

医務室

エレン「失礼いたします!……って誰もいないのか」

アルミン「どこかを巡回しているのかもね。自分たちで出来る限りの応急処置をしておこう。エレン、擦った箇所、見せて」

エレン「おう」ウデマクリ

アルミン「……」

エレン「……」

アルミン「……」

エレン「……それにしても」

アルミン「なに?」

エレン「前にも言ったけど、髪伸びたよな。伸ばしてんのか?」

アルミン「あ、髪ね……。別に伸ばしてるわけじゃないんだけど、最近ゴタゴタしてて切る余裕がなかったんだよね」

エレン「ふ~ん。なんなら俺が切ってやろうか?」

アルミン「えっ、ヤダよ。エレンに頼んだら虎刈りになっちゃいそう」アハハハ

エレン「ムッ、そんな事はないぞ。ここに入ったばっかの時、ミカサの髪を切ってやったのは俺だぞ」

アルミン「だから、それが毛先バラバラの虎刈りだったんだってば」

エレン「そうなのか?!ミカサは何も文句言わなかったぞ」

アルミン「ミカサは言わないさ。エレンに切ってもらえただけで満足だったんだよ」

エレン「なんだよ、そりゃ。……ところで、なんでアルミンは子供の頃からキノコ頭なんだ?」

アルミン「キ、キノコ……。これはマッシュボブって言うんだけど……」

エレン「マッシュポテト?芋頭なのか、これって」

アルミン「……キノコ頭でいいよ」

エレン「しかし、このキノコ、結べるんじゃねぇか?」サワッ

アルミン「!」///ビクッ

エレン「横でも結べそうだし、後ろでも結べそうだな」サワサワ

アルミン「!!」///ビクビクッ

エレン「それにしても、アルミンの髪の毛は、俺やミカサの剛毛と違って柔らかいな」サワサワサワ

アルミン「エ、エレン!」

エレン「ん?」サワサワサワサワ

アルミン「……髪の毛あんまりクシャクシャにしないでよ……」///

エレン「おっと、悪い悪い。あんまり柔らかいんでな、ついついいじり過ぎちゃったよ。ゴメンな」

アルミン「……もう」ナデツケ

エレン「まぁ、そのうち余裕が出来たら、切るか結ぶかしといた方がいいぜ」

アルミン「うん、そうする。……あの、エレン、ありがとうね」

エレン「は?」

アルミン「エレンがエレンのままでいてくれて、僕は本当に嬉しいんだ……」

アルミン「僕自身はまだ迷ってばかりで心落ち着かないんだけど、エレンが変わらずいてくれる事で、凄く心強い。エレンは僕の道標なんだ」

エレン「お、おう。そんなに持ち上げられると照れ臭いけど、まかせとけ。何しろアルミンとはミカサ以上に長い付き合いだからな」

アルミン「うん!」

エレン「あ、さっき俺が髪の毛いじり過ぎたせいで、ゴミがついちゃってるな」

アルミン「え、どのあたり?」パッパッ

エレン「あ~、手で払ったせいで落ちてきて、前髪のあたりに引っかかっちゃたな。俺が取ってやるよ」

アルミン「あっ……(か、顔が近い)」///

アニ「休憩そろそろ終わ」ガラッ

アルミン「」

アニ「」

エレン「よし、取れたぞ」

アルミン「あ、あの、アニ。これは……」///

アニ「るから、戻って来いってマルコから伝言」

エレン「おう、了解だ」

アニ「邪魔して悪かった。先に戻ってる」ガラガラピシャ

アルミン「ちょ!待って、アニ!!」ダッ

エレン「そんなに急いで戻らなくたって怒られないだろ」

アルミン「アニ!何か誤解してない?」スタスタ

アニ「別に何も……」スタスタ

アルミン「あの、エレンは髪の毛についたゴミを取ってくれてただけで……」スタスタ

アニ「興味無いね……」スタスタ

マルコ「あ、戻って来たね。それじゃ練習を再開しようか」

お付き合い有難うございます。
水曜日あたりの夜に続き頑張ります。

1です。今日の夜、続きちょっとだけやります。

前回までのまとめ
性染色体は女性だったことが判明したアルミンくんは、戸惑いながらも兵団に復帰
心までは女の子じゃないもん!と思ってたけど、エレンとドッキリイベント発動
アニにも見られちゃって、どうする?どうなる?……という少女マンガ脳ss

その日の夜 図書館

アニ「……」ペラ

ガラッ

アルミン「アニ!」

アニ「……」ペラ

アルミン「練習中の事を説明させて欲しいんだけど」スタスタ

アニ「……説明してもらう必要性は感じないけどね」

アルミン「本当に?」

アニ「ああ……」

アルミン「変な誤解とかない?」

アニ「ないよ……」

アルミン「ならいんだけど」

アニ「しつこいね……」

アルミン「ご、ごめん……」

アニ「……」ペラ

アルミン「……」

アニ「……」ペラ

アルミン「……」

アニ「……で」ペラ

アルミン「……ん?」

アニ「あんたはエレンが好きなの?」

アルミン「だーかーらー!!」

アニ「違うの?」

アルミン「違うよ!何度も言ってるじゃないか、医務室でアニが見た事は誤解だって!!」

アニ「私がどんな誤解をしてるって言うの?」

アルミン「んぐっ……。と、とにかく!エレンと僕の間には友情以上の何物も入り込まないから!!」

アニ「そう……」

アルミン「そうだよ!」

アニ「……」ペラ

アニ「『男女間にあるのは情熱、敵意、崇拝、そして恋愛。 友情だけが無い』……」ペラ

アルミン「むぐぐぐぐ……最近は読書量でも完全にアニに負けてる……」

アニ「……今読んでる本にたまたま書いてあっただけだよ」ペラ

アルミン「でも、本当に僕とエレンは友達以上には成り得ないから!」

アルミン「そもそも、僕は男として育ったんだから、急に心が変わる事なんて無いって!!」

アニ「『人は女に生まれるのではない。女になるのだ』……」ペラ

アルミン「それ、さっきの本と違うでしょ?!」

女子寮 廊下

アルミン「はぁ、疲れた……」トボトボ

サシャ「あ、アルミン、いい所で会いました。クリスタたちの部屋へちょっと来てくれます?みんな集まってるんで」

アルミン「どうしたの?」

サシャ「クリスタが衣装を仮縫いみたいな感じで仕上げたんで、舞台監督のアルミンにもチェックしてもらいたいんです」

アルミン「うん、分かった。すぐ行くよ」

クリスタたちの部屋

ミーナ「じゃじゃーん!どう?クリスタのドレス姿!!」

アルミン「すごい!まるで本物の夜会用ドレスみたいだ!!これ、どうやって用意したの?」

クリスタ「元になってるのはパフスリーブのロングナイティ、つまり寝巻なんだ。そこにフリルとリボンを付け足しただけ」

クリスタ「上からドレスマント……って言っても、これはただ布を縫い合わせただけのものなんだけど、それを羽織れば、遠目からなら粗も見えない筈よ」

ミカサ「とっても似合ってる。可愛い」

ユミル「クリスターッ!今すぐ結婚して、私の子供を産んでくれ!!私もあんたの子供産んであげるからーっ!!!」ガバーッ

クリスタ「キャーッ!」

アルミン「ミカサの衣装もだいたい出来あがってるみたいだね」

ミカサ「うん。私のは私服を借りただけだけど」

アルミン「それにしても、黒のフリルシャツにレザーパンツって……」

サシャ「ミカサ、その恰好でポーズとって『男は黒に染まれ!』って言ってみてください」

アルミン「言わなくていいから!……ちなみに、それって誰から借りたの?」

ミカサ「ユミル」

アルミン「うわ~……」

ミーナ「本格的に男装コスプレするんだったら、ナベシャツかbホルダーも使おうよ!」

アルミン「ナベシャツ?bホルダー?」

ミーナ「胸が出てない方がシルエット的に映える男装コスをする時、こういうのをつけると胸がギュッと潰れて目立たなくなるの」

ミカサ「なんだか苦しそう」

ミーナ「ゴムで抑えるわけだから、かなり圧迫感あるかもしれないけど、そのうち慣れるよ。あとは我慢!コスの基本は我慢!!」

アルミン(女性になってから無駄知識ばっかり増えてく気がする……)

サシャ「でも、どこから調達してくるんですか?わざわざ今回のためだけに買うのはムダだと思うんですが……」

ミーナ「大丈夫、私がもってるから貸してあげる」

アルミン(なんで持ってるの?なんて突っ込んだら負けだよね……)

ユミル「ちょっと待て、ミーナ。私は、男装時にやたら胸を潰したがる風潮をどうかと思ってるんだけどね」

ミーナ「どうして?だって、胸が出てたらキャラのイメージが壊れちゃうじゃん!」

ユミル「そもそも、潰したって、完全に無くなるわけじゃないんだ。中途半端に潰すくらいなら、男装の倒錯感を大事にすべきなんだ」

アルミン(なに?なんの話?なんで二人はこんなにヒートアップしてるの?)

ミーナ「だったら宅コスでもやってればいいじゃない!みんな苦しい思いして潰してるのに、そんなのキャラに対して失礼だよ!!」

ユミル「キャラに対して失礼とか、新参どものそういった物言いが気に食わないんだ!昔は誰も胸なんか潰してなかったぞ!!」ヒトセダイマエノハナシダケド

ミーナ「なによ、老害!」

ユミル「うるせぇ、にわか!」

ミーナ「アルミンはどっちの味方なの!!」

アルミン「ふぇっ?!」

ユミル「元男性の目線から見て、どっちの男装コスが正しいと思えるんだ?」

アルミン(ううっ、知りたくもないユミルの趣味まで知っちゃった気分だよ……)

アルミン「えっと……そもそも、今回のはコスプレじゃないんだけど……」

サシャ「当事者のミカサの意見はどうなんですか?」

ミカサ「私はどちらでも構わない。けど、エレンが気にいる方にしたい。……ので、エレンに聞いてくる」

スタスタ

ミカサ「アルミンも一緒に来て。私は男子寮の部屋割りを知らないから」

アルミン「あ、うん、分かった」

ちょっとだけ更新でゴメンなさい。明日夜また来ます
2/3は終わったと思います。週末には決着つけたい…

男子寮 廊下

アルミン「ふぅ……助かったよ、ミカサ。あの場から連れ出してくれて」テクテク

ミカサ「アルミンはなにか困ってたの?気付かなかった……」

アルミン「あ、いや、別にいいんだ。結果的に助かったってだけの話だから……」

ミカサ「ところで、エレンの部屋はどこ?」

アルミン「もう少し先かな。3人部屋が主流の女子と違って、男子は6~7人の大部屋が基本なんだ」

ミカサ「私もエレンと一緒の部屋がよかった……」

アルミン「ほら、エレンたちの部屋はあそこだよ」

ミカサ「どの部屋?」

アルミン「あの、ドアノブに傘が引っかかってる部屋」

ミカサ「あれがエレンの部屋……」テクテク

アルミン「テクテク

アルミン(あれ?なにか頭に引っかかる事が……)

回想 ホワンホワンホワンホワワワ~ン

コニー「最初に決めるルールつったら、コレしかないだろ!!抜くための、一人で部屋を使用できる時間の確保!!」

ライナー「想像派にもオカズ派にも、一人で部屋を使用できる時間の確保は悪い話じゃない。早急にルールを作るべきだ」

アルミン「部屋の前に何かサインを出しておくというのはどうかな」

アルミン「さり気無いものでいいと思うんだ。例えばドアノブのところに傘を引っかけておくとか」

_________

アルミン「思い出した!」

ミカサ「突然どうしたの?」

アルミン「ミカサ!今、部屋に入っちゃダメだ!!」

ミカサ「どうして?」

アルミン「ええええっと、今は部屋に誰もいないかも!」

ミカサ「そうなの?」コンコン

アルミン「のおおおおおっ!」

ミカサ「誰かいる?」

ガサガサゴソゴソドコンッ

シーン

アルミン「ゴクリッ

ミカサ「物音がした。誰かいるみたい」ドアノブグッ

アルミン「あああああっ!勝手に開けちゃまずいんじゃ……」

ミカサ「でも、もしかしたら、中でエレンがいじめられてるかも」

アルミン「いやいや、絶対にそんな心配は必要ないから!」

ミカサ「エレン!」ガチャ

アルミン「わああああああ~!!」

コニー「わああああああ~!!いてててててて、はさんだはさんだ!!」チャックニハサマッタ!!

ミカサ「……コニー一人?」

コニー「お、おま、お前ら、なに勝手に入ってきてんだよ。つーか、ルール違反だぞ、アルミン!」テンガカクサナキャ

アルミン「ご、ごめん」

ミカサ「ルール?」

アルミン「い、いや、こっちの話……」

ミカサ「コニー、エレンはどこに行ったの?」

コニー「知らねーよ……今は俺のリフレッシュタイムだったんだよ」ブツブツ

ミカサ「?」

コニー「つーか、アルミン、次回からは体張ってでも止めてくれよな……マジでビビるから」

アルミン「……肝に銘じておくよ」

エレン「お、アルミンとミカサじゃないか」テクテク

ミカサ「エレン!どう、この衣装?」トテトテ

エレン「なんつーか、随分と男前な恰好だな」タカラヅカ?

ミカサ「この衣装について、エレンの意見を聞きたい箇所があるの」

エレン「なんだ?」

ミカサ「エレンは胸が出てるのと出てないの、どっちが好き?」

エレン「……は?」

_________
____
_

数日後 兵站訓練中

キース「どうした、アルレルト!貴様だけ遅れているぞ!」

アルミン「ハァハァ

キース「貴様には重いか!?貴様だけ装備を外すか!?」

アルミン「ハァハァ……また…この場面か……」

ライナー「貸せ、アルミン!」ヒョイッ

アルミン「ライナー……これってデジャヴ……」

ライナー「バレねぇように尽くせ!俺の気が変わらねぇうちにな!」

アルミン(取り敢えず「お荷物なんか死んでもごめんだ!」って言っておくか……)ハァハァ

アルミン(それにしても胸が擦れて痛い……なんとなく張ってる気もする……)ハァハァ

アルミン(これって確か……)ハァハァ

ジャン「貸せ、ライナー!アルミンの装備は俺が持つ!」ヒョイッ

ライナー「な!」

アルミン「あれ?」

ジャン「べ、別にアルミンが辛そうだから助けてやるわけじゃないからな!」

ジャン「このぐらいの装備じゃ、俺には軽くて物足りないから持ってやるだけなんだ!」

ライナー「意味分かんねぇ……。とにかく返せ!アルミンの荷物は俺が持ってやるんだ!」グイッ

ジャン「騒ぐな、ホモゴリラ!教官にバレるだろーが!!」グイッ

ライナー「なんだと!お前こそテンプレのツンデレなんか今どき流行んねーんだよ!!」グイッ

テメーハナセ!ウルセー!オマエガハナセ!!

アルミン「……なんなの、これ?」

キース(アルミン・アルレルト、体力面において兵士の基準に達しないものの、仲間からの妙な親愛を集める)

キース(本人が自分の魅力を利用できるようになればあるいは……)

アルミン「いい加減、装備返してよ」ヒョイッ

ジャン「あ……」

ライナー「う……」

アルミン「まったくもう……」ハァハァ

アルミン(……お腹にもなんとなく違和感あるなぁ)

アルミン(!)

アルミン(……今なにかヌルッとしたものが下に……。もしかして……)

訓練終了後

コニー「ひー、今日も終わったなー。みんな、お疲れ!」

エレン「おぅ、お疲れ!あれ、アルミン。どこ行くんだ?」

アルミン「トイレ!」ダッダッダッダッ

コニー「なんだ、あいつ?腹でも壊したのか?」

タッタッタッ

アルミン(うう、女性トイレに入るのは、未だに抵抗があるんだよな……)

サシャ「アルミン、あせってどこ行くんですか?」

アルミン「サシャ!ちょうどいいところに。実は、トイレに行きたいんだけど……」

サシャ「連れションですか?いーですよー」

アルミン「いや、そうじゃなくって、中に誰もいないか見てきて欲しいんだ」

サシャ「へ?はぁ、構いませんけど……なんで?」

アルミン「やっぱり僕が一緒に入ってると、気になる人もいるだろうし……」

サシャ「ん~、そんなもんですかね?じゃあ、ちょっと待ってて下さい」

サシャ「okです。中には誰もいませんよ」

アルミン「ありがとう。ついでに、誰か入ってこないかも見ててくれるかな……」

ギィ パタン

アルミン「ヌギヌギ

アルミン(さっきの感触……もしかして生理がきたのかな?)

アルミン(……あれ?別に血は出てないみたい……)

アルミン(え、じゃあ僕この年になっておしっこ漏らしちゃったの?!)

アルミン(でも、おしっこにしては色があるし、ちょっとネチョッとしてる……)

アルミン(なんだろう……何かの病気?この上まだ何かが僕の身体にはあるのかなぁ……)

アルミン(なんで僕ばっかり……ううぅ、泣きそう……)ジワッ

ゴボッ ジャー ギィ パタン

サシャ「お帰りなさい、アルミン。……ってどうしたんですか?なんだかヒドイ顔してますよ」

アルミン「……え?そんなヒドイ顔…してる……かな…」ボロッ

サシャ「!!あ、あわわわ~私、何か悪いこと言っちゃいましたか?!泣かないでくださいよ~」オロオロ

ミカサ「二人ともどうしたの?」

サシャ「あ、いいところに来てくれました!実はアルミンが……」オロオロ

アルミン「ミカサ……」グスッ

ミカサ「? とにかく部屋へ行こう」

お付き合いくださった方、ありがとうございます。
話題的にやり過ぎた感が否めないかも……
明後日金曜日に続きやります。お疲れさまでした。

女子寮 ミカサたちの部屋

サシャ「ははぁ」

ミカサ「なるほど」

アルミン「さっきは取り乱してゴメン……」

サシャ「いやぁ、急に泣き出したんでビックリしちゃいましたよ」

アルミン「恥ずかしいから、あんまり言わないでね……」

ミカサ「アルミン、何も心配する事はない。あなたの身体はちゃんと働いてる」

アルミン「どういう事?」

ミカサ「以前にアルミンは、入院中に渡された紙資料で一通り勉強したと言っていたけど、恐らくそこに書いてあると思う」

アルミン「え?」

サシャ「単なるおりものですよ」

アルミン「あ……」

ミカサ「これまでなかったのなら、少ない体質なんだと思う。きっと、あと数日したら生理が始まる」

アルミン「そ、そう言えば、そんな事も書いてあったな……パニックになってすっかり忘れてた……」

アルミン「じゃ、じゃあ、胸が擦れて痛かったり、張るなぁって感じてたのも……」

ミカサ「うん、生理の始まるサイン」

アルミン「そうか……よかったぁ~」ホッ

ミカサ「アルミン、不安だったのね……」スッ

ヤサシクダキシメ

アルミン「!」///

サシャ「ありゃま」

ミカサ「大丈夫、心配しないで……アルミンは独りじゃないから。不安があったら私に相談して……」

アルミン「あ、あの、その、ありがとう……」///

ミカサ「うん……」ダキシメー

アルミン(いい年して女の子に抱きしめられるなんて、恥ずかしいな…でも、なんだかとっても安心する……)

ミカサ「こうやっていると、カルラおばさんの事を思い出す……」

アルミン「え?」

ミカサ「カルラおばさんも、私が初めてで不安だった時、こうして抱きしめて『おめでとう』って言ってくれた……」

ミカサ「お母さんも生きてたら、きっとそうしてくれた……」グスッ

アルミン「ミカサ……」

ミカサ「これ以上、家族を失いたくない……」

アルミン「僕も同じ気持ちだよ。エレンとミカサが家族なのと同じように、僕も二人の事をそう思ってるよ……」

ミカサ「うん、アルミンの周期もなんとなく把握できたし、これで家族同然」

アルミン「いや、そのネタはもういいから」

サシャ「ところで、胸が擦れて痛いのなら、そろそろ下着買った方がいいんじゃないですか?」

アルミン「下着って、もしかしていわゆる一つの……」

サシャ「はい、ブラジャーです」

アルミン「うう、ついに僕にもその時が来てしまうのか……なんだか自分が変態になった気分だよ」

サシャ「今さら何を言ってるんですか。私たちと一緒にお風呂まで入っておいて」

アルミン「だ、だから、せめてもの言い訳に、他の部屋の人とは時間をズラして入ってるじゃないか……」

ミカサ「でも、擦れて痛いと感じるのならやっぱり必要」

アルミン「そうだね……僕もいつまでもこんな些事で悩んでいても仕方ない。覚悟を決めるよ」

ミカサ「今週末は一般開放日の当日。その前日は準備日で、演習はお休み。だから、その日にでも街へ一緒に買いに行こう」

アルミン「一人じゃどれを買っていいか分からないし……お願いするよ」

ユミル「話は聞かせてもらった。私たちも同行するぞ」ガラッ

サシャ「またこのパターンですか?!」

クリスタ「アハハ……お邪魔します。ユミルがどうしてもって言うから」

ミーナ「毎度のことながら、アニは不参加だけど。ホントに付き合い悪いんだから」

ユミル「こんな面白いイベントを逃すなんて、生活に潤いの無いヤツだな」

アルミン「面白いイベントって……」

ミカサ「ユミル、これは遊びではない。アルミンにとっては、とても重要な買い物」

ユミル「分かってる分かってる。まぁ、どうせ最初に買うブラなんて、誰しも色気のないもんだから、期待はしてない」

クリスタ「アルミンはシャツさえ着てれば、まだ胸の裾野部分は目立たないから、ジュニア用のハーフトップブラでいいと思うよ」

アルミン「ハーフトップっていうのは、タンクトップみたいな形の?」

クリスタ「うん、そう。トップの保護が目的だから、スポーツブラみたいに揺れの保護には向いてないけど、今のアルミンならそれが最適だと思う」

アルミン「タンクトップ型だったら、着けるのにも抵抗感じないかな。普通の着けるのは、なんだか倒錯者めいててイヤだし……」

ミーナ「言っておくけど、私たちだって野外演習のある時はスポーツブラ以外しないわよ」

アルミン「あ、そうなんだ」

ユミル「当たり前だろ!立体機動とか、どんだけハードに動くと思ってんだよ!!」

クリスタ「だから可愛いのをつける機会は休日くらいしかないの」

ユミル「と言うわけで、私が今からアルミンのカップサイズを測ってやろう」

アルミン「何が、と言うわけで、に繋がるのか全く分からないよ!」

ユミル「じゃあ、お前は買いに行った先で売り場のお姉さんに測ってもらいたいのか?触ってもらいたいのか?!この変態!!」

アルミン「い、いや、別にそんなわけじゃないよ……。むしろ、そんなの恥ずかしいし……」

ユミル「だったら今、私たちで測ってやった方がましだろ?ほら、脱いで脱いで」ワキワキ

クリスタ「こら、ユミル!いじめちゃダメ!!」コツン

クリスタ「アルミン、騙されちゃダメだよ。ハーフトップにはカップサイズなんて無いから、測る必要ないよ」

アルミン「え、そうなの?」

クリスタ「うん、mとかlとか、そういうサイズだけだから」

ユミル「なんだよ~、せっかく私がちょっとhなイベントで話を盛り上げてやろうとしてんのに」

アルミン「いやいや、誰の得にもならないから、そのイベント!」

ユミル「そういうのを隙あらば盛り込んでかないと、移ろいやすい十代男子のハートは掴めないんだって」

ミカサ「僕が掴む必要ないでしょ!!」

ゴメンなさい
>>403のラストはアルミンです

アルミン「ともかく!準備日は通し稽古が終わった後に買い物へ出発って流れでいいかな?」

クリスタ「うん、それでいいよ。ついでに、衣装に必要な小物もいくつか買い揃えておきたいんだ」

サシャ「クリスタって凝り性ですよね~」

ミーナ「アニにも声かけておくね。多分、行かないって言うだろうけど……」

ユミル「あの鷲鼻は、いつか私とクリスタで街中を引っ張りまわしてやる」

_________
____
_

一般開放日前日 通し稽古

ジャン『この悪党め、死ぬ覚悟は出来てるだろうな』
エレン『俺を怒らせる気か。情けをかけてやるから、さっさと逃げ出せ』

サシャ「こうしてみると、ジャンは顔だけは二枚目ですね。性格があれだから、人気は出なさそうですけど」ヒソヒソ

ミーナ「そうかなぁ、私はエレンの方が恰好いいと思うけどな」ヒソヒソ

サシャ「え~!ミーナって実は隠れエレン・ファンだったんですか?」ヒソヒソ

マルコ『終わりがこのようにめでたく収まるとは、誰が想像しただろう』
コニー『運命の力でなくては出来ないと思うことを、人がやってのけることもある。この空の下には自由な余地がたくさん残されているのさ』

ミーナ「う~ん、恰好いいとは思うけど、付き合いたいとは思わないかな」ヒソヒソ

サシャ「確かに、男子と付き合うのって面倒くさそうですもんね」ヒソヒソ

ミーナ「でも実際、エレンって人気高いよ。私、模擬戦の所属がエレンと同じ34班だから、よく紹介してくれって頼まれるもん」ヒソヒソ

クリスタ『では、もう行ってしまわれるのですか?』
コニー『フッ、主人公はいつも孤独に去っていく宿命を背負っているものなのさ』

サシャ「へぇ~、私とは違った意味の肉食系女子が、この兵団にもいるんですね」ヒソヒソ

ミーナ「ねぇ、アルミンには好みの男子とかいる?」ヒソヒソ

アルミン「ふぇっ?!」

コニー「……おい、アルミン!最後まで通しで終わったぞ」

アルミン「え?!あ、ああ、ゴメンゴメン。みんな、お疲れ様」

マルコ「監督から見て、仕上がり具合はどうかな?」

アルミン「うん、みんなバッチリだったよ。これで明日の本晩も安心だね」

ユミル「あ~、私のクリスタが可愛過ぎて生きるのが辛い」ベタベタ

クリスタ「んもう。やめてよ、ユミル」

ライナー「しかし、確かにクリスタの演じるお嬢様は嵌まり役で、何と言うか、こう、実に……」ゴニョゴニョ

エレン「可愛いよな」

ライナー「んぐ」

ジャン(こいつはよく照れもせず、そんな台詞が言えるもんだ)

クリスタ「ありがとう。でも、エレンだって凛々しい若者役がピッタリだわ」

エレン「いや、俺なんて緊張しっぱなしさ。本当はこういうのって性に合わないんだよな。本番でトチらないか不安でいっぱいだよ」

ミカサ「大丈夫。エレンは自信を持っていい」

ユミル「しかし、この劇を披露したら、今まで以上にクリスタの人気が出そうで心配だ……」

ミカサ「エレンもクリスタもきっと拍手喝采」

ユミル「クリスタ!先手を打って、二人で既成事実を作っておくぞ!!」ガバーッ

クリスタ「キャーッ!!」

ミーナ「クリスタだけじゃなくて、きっとエレンも人気出ちゃうぞ~」ニヤニヤ

サシャ「ミカサも気が気じゃないんじゃないですか?」ニヤニヤ

ミカサ「? エレンが皆から良く思われるのは、とても嬉しい事でしょ」

サシャ「うわ、さすが本妻。余裕が違いますね」

ミカサ「?」

マルコ「さぁさぁ、これで練習はおしまいだから解散しよう。明日に備えて、各自休んでおこうよ」

コニー「お~、そんなら街まで遊びに行こうぜ!」

コニーは台詞の誤認も無かったのか。ノリノリな事ならちゃんと覚えられるのかねぇ

エレン「ミカサはこの後どうするんだ?」

ミカサ「私はアルミンやクリスタたちと一緒に街へ買い物に行く。エレンも一緒に来る?」

エレン「女の買い物だろ?どーせ長いだろうから、行かねー。それよりも、コニーたちと遊びに行くよ」

ミーナ「ねぇ、アニ。やっぱり一緒には来ない?」

アニ「ああ、私は団体行動が苦手だからね……」

アルミン「午後から天候が崩れるって予報だ。用心のために傘を持っていこう」

サシャ「はーい」

お付き合い有難うございました。
ss内でいうところの一般開放日前日と当日の二日間で終わりますが、
週末までに書き切るのは無理っぽいです。書き始めてすでに2週間も経過……
とりあえず明日夜また来ます。お疲れさまでした。

>>413
そのネタいいですね!仕込みたかったなぁ。でも私自身にその余裕がなかった……

市街地

サシャ「さて、アルミンの下着は無事に買えたわけですが」

ユミル「これで帰るのはつまらないだろ!もっと色々買おうぜ!!」

アルミン「本人は別につまらなくても構わないんだけど」

ユミル「せっかくのイベント機会じゃねぇか。こう、アルミンが試着してる途中でカーテンが勝手に開いちゃったりとか……」

アルミン「勝手に開いちゃうって言うか、どうせユミルが開けちゃうんだろ?」

ユミル「もしくは、私がサシャに命令して開けさせるとか」

アルミン「どっちでも同じだから!」

アルミン「そもそも、僕がブラなんか着けるってだけで、既に男性陣にイベントを提供しているようなものなんだから……」

ミカサ「うちのエレンに限っては、そんなやましい心と無縁」

アルミン「うん、エレンや、それからライナーたちみたいに同部屋で親しかった人たちはいいんだけど……」

ミーナ「アルミンと親しくなかった男性陣は、今でも遠巻きにニヤニヤしながら見てるもんね。感じ悪いよ」

ユミル「だからいっそのこと、もっと開き直って女だぁってアピールした方がいいんじゃねぇか?」

サシャ「例えば、どうやってですか?」

ユミル「そうだな、私服をいかにも女の子って感じのにしてみるとか。ふわふわスカートとか履いて」

アルミン「イヤだよ!下着だけでも抵抗あるのに、スカートなんて絶対無理!!」

サシャ「そういえば、アルミンの私服って、男子寮時代の物から入れ替わってませんもんね」

アルミン「わざわざ買い換える必要性を感じないから……」

ミーナ「う~ん、でも今日の服装とか正直、それはないんじゃないのって思ってたんだけど……」

アルミン「そんなにおかしいかな。エレンだって似たようなの着てるじゃないか」

クリスタ「男の子はそれでいいかもしれないけど……」

サシャ「今のアルミンはまさに、服を買いに行く服がない!状態ですよね」

アルミン「どっちにしろ下着以外は買わないよ。僕が女っぽい私服を着たって笑われるだけだし」

ミカサ「笑う人は心無い人たち。笑わせておけばいい」

アルミン「そこまでは割り切れないよ。笑いをとりにいってウケるのと、笑い物になるのとじゃ大違いでしょ」

クリスタ「私はちょっと残念かな。アルミンは元が可愛いから、服の選び甲斐があると思ったのに」

ミーナ「そうだよね、セーラー服とかバニーガールとか、いっぱい選択肢はあるのに……」

アルミン「それ、私服の選択肢じゃないでしょ?!」

一方その頃 兵舎 図書室

アニ「……」ペラ

アニ「……」ペラ

アニ(ここにある本もだいぶ読んじゃったな……)ペラ

アニ「……」ペラ

アニ(たまには街の本屋でも覗いてみようかな……)ペラ

アニ「パタン

市街地 書店

ジャン「で、なんで俺たちはこんな所にいるんだ?」

コニー「新しいエロ本を仕入れにきたに決まってるだろ」

ライナー「決まってんのかよ……。まぁ、いいや。俺もデラべ○ぴん買ってくか」

ベルトルト「ライナー……もう随分前に休刊になったよ……」

ライナー「なにぃ?!」

ジャン「2歳年上だから、でゴマかせるレベルじゃねーぞ!」

コニー「エレンは何を買うんだ?」

エレン「ちょ!見んなよ!!」

コニー「ペン○ンクラブか……。山○版じゃなくて無印の方なんだな」

エレン「は?なんだ、それ」

コニー「お前!もしかして、違いも分からずに買ってんのか?!」

エレン「いや、別にいつも買ってるわけじゃないから、よく分かんねーよ」

コニー「しょうがねぇなぁ……。俺が一から説明してやるよ」

コニー「マルコは……百○姫とエロテ○クス・エフだと?!両方ともエロじゃねーじゃん!!」

マルコ「何買ったっていいじゃないか!人の趣味に口出さないでよ」

コニー「いいや、言わせてもらうぞ。エロっていうものはなぁ、実用的に抜けて初めて~」ウンヌンカンヌン

ワーワーギャーギャー

アニ「……あんたら、何してるの?」

男子一同「!」ビクッ

エレン「ア、アニ?!一人で何してんだよ!!」

アニ「別に……。ただ、本を見に来ただけだけど……」

ライナー「おい、みんな!隠せ!隠せ!!」コソコソ

アニ「……慌てて隠す必要ないよ。別に何とも思ってないから」

ジャン(ば、ばれてーら!!)

コニー「そ、そうか。なら、折角だしエロ本について語らせてもらうぜ」

アニ「いや、聞きたくもないけど」

ライナー(と、ともかくここは戦術的撤退だ!)ヒソヒソ

ジャン(ああ、了解だ)ヒソヒソ

エレン「そ、それじゃあ俺たちはもう行くな」

アニ「……」

男子一同「スタコラサッサ

コニー「なんだよ、一冊も買ってかねーのかよ」

ジャン「いいから黙っとけ……」

アリガトウゴザイマシター

マルコ「あ、雨が降ってきてる。傘を持ってきて正解だったね」

ジャン「くそ、踏んだり蹴ったりだぜ」

ライナー「そういや、アニのヤツ、傘持ってなかったな。ベルトルト、あいつに傘貸してやったらど」

エレン「アニに傘貸してきてやるか。みんな、ちょっと待っててくれよな」スタスタ

ライナー「……うだ」

ベルトルト「……いいんだ、僕はいいんだよ、ライナー……」

アニ「……」ペラ

アニ(兵舎には無い本がたくさんある……。面白い……)ペラ

アニ「……」ペラ

エレン「アニ!」

アニ「……まだ何か用?」

エレン「お前、傘持ってきてないだろ?外、雨が降ってきたぜ」

アニ「そう……。それがどうしたの?」

エレン「俺の傘貸してやるよ。俺はみんなと帰るから、誰かに入れてもらってくさ」ホイ

アニ「え……」

エレン「じゃあな」スタスタ

アニ「……」

エレン「みんな、お待たせ。ジャン、傘に入れてくれよ」

ジャン「なんで俺の傘に入ろうとすんだよ!」

エレン「一番お前が俺と身長近いんだよ」

ジャン「鬱陶しいから肩近付けんな!」ワーワーギャーギャー

ミーナ「あ、エレンたちだ。おーい!みんな、これから帰るところ?」

マルコ「やぁ、偶然だね。そっちも今から帰るの?」

アルミン「うん、一通り買い物も終わったしね」

ユミル「ちょうどよかったぜ。ほら、男子ども。荷物持ちしな」ドサッ

コニー「ぐわ!何を買ってきたんだよ」

クリスタ「あ、ゴメンね。いいよ、私が持つから」

ライナー「大丈夫。荷物持ちは俺らの役目さ」キラッ

コニー「いや、持たされてんの、俺なんだけど……」

エレン「それで、何を買ってきたんだ?」

ユミル「各自の私服が少し、コスメが少し、クリスタの衣装に使う小道具、それからアルミンの下着」

アルミン「ちょ!言わないでよ……」

>>446
まぁそうなんだけどさ。

急にぶっこんできたから違和感が、ねってだけです。

>>448
ゴメンなさい。適当にやらかした小ネタなんでスルーしてください

ライナー(アルミンの!)

ジャン(下着…だと…?!)

サシャ「あ~あ、アルミン用のスカートも買いたかったですねぇ」

アルミン「絶対に履かないから!」

ミカサ「エレン用の替えのパンツと靴下も買ってきた」

エレン「俺は小学生か!!」

ワイワイガヤガヤ

_________
____
_

一般開放日当日

ワイワイガヤガヤ

誘導係の訓練兵a「本日の入場は3番ゲートからとなっております!入場の際には身分証の提示をお願いいたします!!12歳未満のお子さんは必ず保護者同伴でご入場ください!!」

誘導係の訓練兵b「アルコールの持ち込みは禁止となっておりまーす!所持品検査にご協力くださーい!!」

**********

サシャ「うわ~、結構たくさん人来てますよ」

クリスタ「昨日の雨から一転して、今日はお天気に恵まれて快晴だしね」

コニー「やべぇ、なんか緊張してきちまった」

ジャン「はっ、この程度でビビんなよ。戦闘模擬演習に比べりゃ、こんなの何て事ないぜ」

エレン「……」

ジャン「なんだよ、死にたがり野郎もビビってんのか?案外、意気地がねぇなぁ」ハッ

エレン「……」

ジャン「……おい、何か言えよ」

ミカサ「エレン、どうかした?」

エレン「……」

ミカサ「エレン?」

エレン「うおっ?!ビックリした!!急に話しかけるなよ、ミカサ」

ミカサ「エレン、もしかして緊張してる?」

エレン「え?あ、う、い、いや、だだだ大丈夫だ、ももも問題ない」

マルコ「本番までもう少し時間があるけど、舞台裏へ移動して衣装に着替えておこう。その方がリラックスできると思うよ」

舞台裏

アルミン「あれ、アニはもう着替え終わったの?こっちへ先に来てたんだね」

アニ「……ああ」

ユミル「相変わらず個人行動ばっかりだな、お前は」

ミーナ「スーツ&ネクタイしたアニの男装、とっても恰好いい!ちょっとポーズとって!!」

アニ「フイッ

ミーナ「ああ、もうアニって冷たいんだから!」

アニ「スタスタ

アニ(そうだ、昨日エレンに借りた傘を返さなきゃ……)

ミカサ「エレン、まだ緊張してる?着替えを手伝ってあげたほうがいい?」

エレン「だ大丈夫だから。……しばらく一人にしてくれ」ガチガチ

アニ(今は話しかけない方がよさそうだね)

アニ(時間あるし、寮の部屋にでも届けておいてやるか……)

男子寮

アニ(そう言えば、あいつがどこの部屋なのか知らないんだった、私……)

アニ「ねぇ、そこのあんた、ちょっと聞きたいんだけど」

□□□「? 何かな」

アニ「エレン・イェーガーって男の部屋、どこだか分かる?」

□□□「エレンの部屋ならそこだよ」スタスタ

アニ「そう、ありがとう」

アニ(勝手に入っちゃ悪いかな。ドアノブのところにでも掛けておけば分かるよね)カサッ

アニ「……戻ろう」

スタスタ

お付き合い有難うございました。もうすぐ終わります。
また明日夜、続き頑張ります。お疲れさまでした。

舞台裏

マルコ「さぁ、いよいよ開演の時間だ!みんな、頑張ろう!!」

アルミン「いっぱい練習したんだ。気負う必要は無いよ。楽しくやろうね!!」

ブザーッ

ミカサ「幕開きは私とアニの登場場面から。行こう」スタスタ

アニ「ああ」スタスタ

アルミン「続いてライナーとマルコだ。準備はいい?」

ライナー「おう、任せとけ!」

マルコ「やれるだけやってみるさ」

クリスタ「ゴソゴソ

サシャ「どうしたんですか?何か探し物ですか?」

クリスタ「昨日買ってきた衣装用の小物、シルクフラワーの髪飾りなんだけど……」

ミーナ「それって確か、買った時にユミルがまとめて持ってくれたんじゃなかったっけ」

ユミル「あ~、そう言えば、荷物は男どもに会った時にまとめて渡して……」

ジャン「コニーが持たされてたよなぁ」

コニー「え、昨日の荷物か?私服とかは寮に帰ってから渡しただろ」

クリスタ「その中に10cm四方の小さな箱があったと思うんだけど」

コニー「もしかしたら、俺らの部屋に置きっぱなしにしちゃったかもしんねー」

クリスタ「ちょっと取ってくるね」パタパタ

ユミル「クリスタの出番は2幕目第2場からだからもうちょい先だけど、急げよ~」

ジャン「あいつ、俺らの部屋の場所、知ってんのかなぁ」

コニー「しょうがねぇ、俺が追いかけるよ」バタバタ

アルミン「さぁ、間もなくエレンの出番だ。準備はいい?」

エレン「……」

アルミン「出番だよ、聞こえてる?」

エレン「……」

アルミン「どうかしたの?」

エレン「アルミン……」

アルミン「?」

エレン「やばいんだ……さっきから武者震いが止まらなくってさ……」

アルミン「えっ……」

エレン「練習の時も緊張はしてたんだけどな……人前に立つのって、思った以上にクるな……」

アルミン「……」

エレン「このままじゃ、大失敗をやらかしちまう気がする……」

アルミン「エレン……ねぇ、手を出して」

エレン「えっ……?」スッ

アルミン「……」

(―静かに手を重ね合わせ、そっと握る)

エレン「ア、アルミン……?」

アルミン「エレン……。きみなら大丈夫だよ。きみの背中をずっと追いかけて、見続けてきた僕は分かるんだ」

アルミン「きみは、昔からどんな事にだって勇敢に立ち向かっていった。エレンは、小さな頃から僕にとって、ずっとヒーローだったんだ……」

アルミン「だから大丈夫。何も心配することはないよ……」

エレン「……」

エレン「……不思議だな。アルミンに手を握ってもらったら、震えも止まったし、なんだか心が落ち着いてきたよ」

エレン「ほんと、アルミンにはいつも助けられてばかりだぜ……」

アルミン「ううん、僕は何度もエレンとミカサの二人に助けられたけど、僕が二人を助けたことは一度だってないじゃないか……」

エレン「何言ってんだ。俺はお前に命を救われてるじゃないか。お前がいなかったら、俺もミカサもウォール・マリア陥落時、巨人に食われて死んでたさ」

エレン「それに、背中を追い続けてるのは、お前じゃなくって俺の方だぜ」

アルミン「え?」

エレン「お前が外の世界を教えてくれたから、進むべき方向を指し示してくくれたから、俺は今こうやって走っていられるんだ」

エレン「俺は、ずっとお前に導かれて進んできたんじゃないか」

アルミン「!」

エレン「俺にとってのヒーローは俺自身じゃない。時にはミカサでもあり、時にはアルミンでもある……。いつだってヒーローは、俺の半歩先で道を示してくれる存在だ」

エレン「そして、今またお前が俺に勇気をくれた。だから……行ってくるぜ!」

サシャ「エレン!もう出番ですよ!!ミカサが舞台で待ってます!!」

エレン「おう!アルミン、ありがとな!!」

スタスタ

アルミン「……エレン、頑張って!!」

男子寮

パタパタパタ

クリスタ「えっと、エレンたちの部屋は……。すみません、あの~」

クリスタ「あ、そこの部屋ですか。どうも」

*******

バタバタバタ

コニー「クリスタのヤツ、意外と足早いのな」ヒィヒィ

コニー「お、向こうの先にようやく発見。なんだよ、俺が追ってこなくても部屋の場所、分かったんじゃねぇか……って、待て待て!」

コニー「なんで、男のリフレッシュタイム・サインがドアの所に出てるんだ?!」

コニー「え?!今って誰も部屋にいないハズだろ?!なんでだ?!」パニック

*******

クリスタ(急ぎの用事だから、失礼して勝手に入らせてもらうね)ドアノブグッ

コニー「!」

コニー(部屋には誰もいないハズだけど、もし居たら、この前の俺の二の舞!!)

コニー(ましてや相手はクリスタ!いくらなんでも可哀そ過ぎる!!)

コニー(それに、あの時アルミンに体張ってでも阻止しろと宣言しちまったのは俺だし)

コニー(何が何だかよく分からんが、とにかく止める!やるしかねぇ!!)

コニー「クリスタァーッ!!」

クリスタ「え?」ギィ

コニー「だ~~~っ!!」ターックル!!

クリスタ「キャーッ!!」

ドシーンバターンゴロゴロゴロゴロ

舞台裏

ユミル「クリスタのヤツ、遅いな……」ソワソワ

アルミン「もうすぐ1幕目第4場が終わる。そろそろスタンバイしてもらわないと」

ユミル「髪飾りぐらい無くたっていいじゃねぇか」ウロウロ

アルミン「確かに戻りが遅すぎる。なかなか見つからないのかなぁ……」

コニー「ぉ~い……」

ユミル「あ、コニーの馬鹿が戻って来た……って、ありゃなんだ?!」

アルミン「!!どうしたの?なんでコニーがクリスタをおぶってるの!!」

コニー「……いや、実はそれが……」

セツメイチュウ

アルミン「……なるほど。つまり、ちょっとした勘違いから、コニーはクリスタにタックルしちゃって……」

ユミル「クリスタの足を捻挫させただとぉ!!てめぇ、死刑だ!!今すぐ死刑だ!!」ガシガシ

コニー「いて、いてて!!悪かった!俺が悪かったよ!!頭を丸めて謝るから!!」

クリスタ「ユミル、そんなに怒らないで。私は大丈夫だから……クッ!!」

アルミン「かなり腫れてる。無理しない方がいい。これじゃ歩くのもツラいハズだ」

クリスタ「硬くテーピングしておけば大丈夫!もうすぐ出番なんだから泣き言はいってられないよ!!」

ユミル「バカ!今ここで無理して、今後の演習に響いたらどうすんだ!!こんなイベントごとで気張って評価を落とすなんざ、本末転倒もいいとこだぞ」

クリスタ「でも!」

ユミル「アルミン……くやしいだろうが、ここで劇は中止にしてくれ。皆には私から説明して納得してもらう」

クリスタ「そんなのダメよ!!ここまで皆で一生懸命頑張ってきたのに!!」

アルミン「……」

ユミル「アルミン!中止にしろ!!」

クリスタ「ダメ!お願いだから、私にやらせて!!」

アルミン「……」

アルミン「クリスタ……残念だけど、きみに無理をさせるわけにはいかない。ユミルの言う通り、ここで無理するのは兵士として正しい行動と思えない」

クリスタ「!そんな……」

アルミン「だけど、中止にもさせない」

ユミル「え?」

アルミン「僕に考えがある」

コニー「どどどどーすんだ?!」

アルミン「1幕目が終わるところだ。さぁ、急いで!!僕を手伝ってもらうよ」

舞台上

ミカサ『しち面倒な挨拶なんて流行遅れ。登場するのに、しどろもどろな台詞など御免こうむる。さっさと踊りに行こう』
エレン『お前の靴底は軽いかもしれないが、俺の心の底は鉛のように重い。踊りに行く気にはなれないよ』
ミーナ『あなたが沈んだら、下で支えるのは大変だ。かよわい乙女には重すぎる荷物だもの』

ミカサ(おかしい……本来ならクリスタが舞台袖に待機していなければならないタイミングなのに……)

ミーナ(クリスタの姿が見えない……。ミカサと私が引っ込んだら、次はエレンとクリスタの出会いの場面になっちゃう……)

エレン(何かアクシデントがあったのか?いざとなったらアドリブで繋ぐしかないか……大丈夫、今の俺なら出来る!!)

数分経過

エレン(さすがにこれ以上、アドリブで場を持たせるのは無理だ……くそっ、どうする?)

スッ

スタスタ

???『このような礼儀正しい手に、そのお仕打ちはあまりにひどい。指の触れ合いは、巡礼の優美な口づけと申します』

エレン(クリスタ!!ようやく来てくれたか……って、えええ!!)

一同「!」



「「「アルミン?!」」」

遅い時間までお付き合い有難うございます。
ようやく次回の投下で終われそうです。長かった……
火曜夜あたりに来たいと思ってます。お疲れさまでした。

舞台裏

ユミル「ふぅ~。ギリギリ間に合ったな」

クリスタ「急いで衣装を着替えてメイクして……。急造だけど、舞台に立っても違和感ないくらいには仕上げられたね」

ユミル「衣装がロングナイティを直して作ったっていうのも幸いだったな。少々丈が短くなったけど、アルミンでも何とか着られたし」

コニー「それにしても、あの野郎、ぶっつけ本番でよく舞台に立てるよな……。すげークソ度胸だ」

クリスタ「野郎じゃないよ、アルミンは女の子だもん!」

ユミル「まぁ確かに、よく台詞があんだけスラスラと出てくるよな。素直に感心するよ」

クリスタ「脚本はアルミンが書いたものだから、頭には入っていたんだろうけど……。それでも凄いよね」

コニー「……あのさぁ」

ユミル「なんだ?」

コニー「アルミンってあんなに可愛かったっけ?」

ユミル「お?!コニーもついにホモに目覚めたか?」

コニー「ホモじゃねぇ!!っつーか、あいつ、女だろ?」

ユミル「まぁ、女かと問われれば女……」

クリスタ「なんだけどね……」

コニー「なんだよ、含みのある言い方だな」

ユミル「昨日までは、つーか、ついさっきまでは、どっかその事実を受け入れられていないって感じだったんだけどな……」

クリスタ「女の子の服装をするのも、すごくイヤがってて。とくに、スカートなんか絶対に履きたくないって」

コニー「今、舞台の上であんなノリノリでお嬢様を演じてるのに?」

ユミル「それが、なんか目を離した数分の間に覚悟が決まったっつーか、肝が据わったっつーか、とにかく変わったんだよ」

クリスタ「きっと、アルミンにとって何かとても大切な出来事があったんだね」

コニー「よく分かんねー。けど、アルミンが可愛いからいいや」

ユミル「ったく、これだから男は……」


エレン『俺は誓おう、夜を銀一色に染める清浄な月にかけて』
アルミン『いけません、月にかけては。不実な月は満ち欠けするもの。あなたの心も変わり易いものになります』
_________
____
_

夜 食堂にて打ち上げ

一同「「「ベスト・カップル賞にかんぱーい!!」」」

エレン「……ってベスト・カップル賞って誰だよ。そんな賞、無いだろ」

サシャ「アハハハハハ!何を照れてるんですか!!もう、すっごい反響だったんですから、エレンとアルミンのカップル!!」バシバシ

エレン「いてぇよ、力いっぱい背中叩くなよ」

クリスタ「でも、エレンが凛々しかったのとアルミンが可憐だったのは本当。見に来てくれた人たちも皆、とっても楽しそうだったよ」

ミカサ「2人ともカーテンコールで凄い声援を受けていた。2人が人気者になって、私も嬉しい」

クリスタ「ミカサだって、とっても人気だったよ。男性だけじゃなく、女性からも凄い声援があったんだから」クスクス

アルミン「クリスタ、足の具合はどうなの?」

クリスタ「うん、あの後、医務室でちゃんと手当てしてもらったけど、あまり動かさずに冷やしておいたのが良かったって。野外演習は4日ほど参加できないけど」

ユミル「まったく、全てはコニーのせいだ。ツケはちゃんと払ってもらうからな」

コニー「うるせぇなぁ、分かってるよ。水汲み当番でも何でも代わってやるから」

ワイワイガヤガヤ

ジャン「……」

ジャン「おい、アルミン……」

アルミン「ん?」

ジャン「その、なんだ……。俺はな、お前が男の頃から、って言うのも変な言い方だが、お前はエレンとベタベタつるんでばっかで気持ち悪いけど……」

ジャン「やる時はやるヤツだと思ってたぜ……」

アルミン「え?あ、ああ、どうも……。でも、気持ち悪いって酷いなぁ……」

ジャン「……あの時は悪かったな」

アルミン「あの時?」

ジャン「お前のことを女みたいだとか、オカマ野郎だとか言って喧嘩売ったことがあったよな……。あの時は、俺が悪かった。……謝る」

アルミン「ジャン……」

ライナー(あのジャンが謝るとは……。あいつも変わったんだな……じゃなくて!!)

ライナー(まさかジャンのヤツ、標的をミカサからアルミンに変更する気か?!)

ライナー「だ、だろ!ジャン、俺が前から言ってた通り、アルミンは凄いヤツだろ!!」

アルミン「え?」

ライナー「いや、俺はな、前々からジャンに言ってたんだ。アルミンは根性あるヤツだから認めてやれって、ずっと前から言ってたんだ!ず~~っと前から!!」

アルミン「そ、そうなんだ。ありがとう」

ジャン(ライナーのヤツ、急にアピールを始めやがって、何のつもりだ?まさか……)

ジャン(この野郎、妄想世界でクリスタを弄ぶだけじゃ物足りず、アルミンにまで手を出すつもりか?!)

ジャン「俺は別にライナーに言われたから意見を変えたわけじゃないぜ。アルミンを見て、俺はこいつの凄さに気付いたんだ!!」

ライナー「俺は、ず~~っと前からこいつの凄さに気付いてたんだ!兵站訓練で最初にアルミンを助けたのは俺だ!!」

ジャン(この野郎、あくまで俺に対抗する気か……)ギロッ

ライナー(こいつを近づけてはアルミンの貞操が危ない!アルミンは俺が守ってやるんだ!!)グッ

ヒバナバチバチ

アルミン(何やってるんだろう、この二人)

アルミン(それよりも……)キョロキョロ

アルミン「ねぇ、ミーナ。アニはどうしたの?」

ミーナ「面倒くさいから出ないって。きっと、部屋に引きこもってるんじゃないかなぁ」

アルミン「そう……」

ミーナ「もう、本当に協調性が無いんだから、困っちゃうよね。みんなと仲良くなってほしいんだけど……」

アルミン「……」

アルミン「ねぇ、僕も少しだけ抜けていいかな」

ミーナ「えぇ?!ダメだよ、アルミンは今日のネタの中心……じゃなくて主賓の一人でもあるんだから」

アルミン「ほんの少しだけお願い。すぐ戻ってくる」

ミーナ「う~ん、まぁちょっとだけなら」

アルミン「ありがとう」

ミーナ「でも、どこへ行くの?」

アルミン「ここに、アニを連れて来るんだ」

図書室

アニ「……」ペラ

アニ(読みたい本はこの一冊で最後か……)ペラ

アニ(これからどうやって空き時間潰そう……)ペラ

アニ「……」ペラ

ガラッ

アルミン「アニ、迎えに来たよ。打ち上げに戻らないかい?」

アニ「……唐突に何言ってるの?それより、あんたこそ早く打ち上げに戻った方がいいんじゃない?エレンと似合いのカップルだって話題になってるみたいだし……」

アルミン「まったく参るよね。でも、折角の打ち上げだもん、今日くらいは噂の的になってあげるさ」ハハハ……

アニ「……『男女間にあるのは情熱、敵意、崇拝、そして恋愛』」

アルミン「『友情だけが無い』って?アニも意外としつこいね。でも、前回それを言われた時は、大した反論も出来なかったし、仕方ないかな」

アニ「……それって、今なら反論出来るってこと?」

アルミン「うん、今の僕の気持ちに相応しい言葉を見付けたよ」

アルミン「『僕たちは成熟しただけの子供。この愛は、性もなく正体も分からない何か透明なものに向かって投げ出される』」

アニ「……」

アルミン「考えてもみなよ。14~5歳の僕らが、愛だの恋だの友情だのについて、断定的な回答を導きだす事なんて出来ると思う?」

アルミン「今の僕は、自分の感情の正体が何なのか分からずとも、エレンの側にいたいんだ」

アニ「……側にいて、何をしたいの?」

アルミン「何がしたいか、何ができるか、それは時が至ればきっと見えてくる。重要なのは、ただ側にいること」

アルミン「僕はずっと、この世界はエレンが主人公の舞台で、僕はその芝居の脇役なんだって思っていた」

アルミン「けれど、エレンはそう考えていなかった。エレンにとって主人公は、時にミカサで、時に僕で、時にはまた別の誰かにもなり得る可能性があるって話してくれた。それで僕は気付いたんだ」

アニ「まさか、人間は誰もが主役だなんて、大人が子供を諭すような事を言うつもり?」

アルミン「似てるけど、ちょっと違うかな。『世界は一つの舞台、全ての人は男女を問わずその役者、一人の人間が一度の登場で多くの役を演じる』」

アニ「は?」

アルミン「一人の人間の役は、きっと固定化されていないんだ。主役も脇役も、場面ごとにコロコロ変わっていくんだ」

アルミン「それどころか、僕なんて男役から女役へって具合に、根本的なところから変わっちゃったしね」ハハハ

アルミン「ねぇ、覚えているかな。以前、アニは僕に『私たちは誰しも暗夜の海の遊泳者』っていう言葉を教えてくれた」

アニ「……そんな話もしたね」

アルミン「あの時、アニも僕もその言葉を、他人の姿は見えず、気配だけを感じながら暗闇の中で生きていくことを喩えたものだって受け取っていた」

アルミン「その頃の僕は、自分を信じられない事に不安を感じ、アニは他人に心を許してしまうことを恐れているように思えた。もし、違っていたらゴメンね」

アニ「……話を続けて」

アルミン「うん。だからアニも僕も、『暗夜の海の遊泳者』という言葉から、孤独や寂寞ばかりを引き出しちゃっていたんだ」

アルミン「でも、その解釈は、あの言葉の一面しか見ていないんじゃないかな」

アニ「……あんたの言いたい事が、いま一つ分からないんだけど」

アルミン「今日、僕たちが演じた劇の最後の台詞、覚えてる?」

アニ「は?突然どうしたの?」

アルミン「『主人公はいつも孤独に去っていく宿命を背負っている』。コニーの台詞なんだけどね」

アルミン「ほら、よくあるパターンじゃない。絶対的なヒーローが一人寂しく去っていく幕切れってさ」

アニ「……私もそういうのは読んだ事あるよ」

アルミン「だよね。ならば、エレンが主人公である時に、脇役の僕が演じるべきことは一つ、ヒーローを孤独にさせないために側にいてあげることなんだ」

アルミン「暗夜の海、隣を誰が泳いでいるのか顔も見えず、ただ水音だけが聞こえてくるのだとしても、僕は隣人を一人にさせないために泳ぎ続ける」

アルミン「そして、僕は、僕を一人にさせないために隣人が泳いでくれていることを信じて泳ぎ続ける」

アルミン「こうやって、主役と脇役はその役割を入れ替えながら、ともに泳いでいくんだ。僕も、エレンも、ミカサも、そしてアニだって」

アニ「……」

アルミン「そうそう、もう一つ伝えたい事があったんだ。だいぶ前だけど、『書くことは罪深い』『表現することは、ゴミを生み出すことと同義』って言われたじゃない。あれ、地味にショックだったんだ」

アニ「そう……」

アルミン「単に、言い返せなかったのが口惜しかったのかもしれないけど」ハハハ

アルミン「あの話をした前後、僕には大きな変化があって、いまだに様々な問題に直面してはオロオロするばかりの毎日を送っている」

アルミン「けれど、実は僕が経験してる問題って、周囲の女の子たちからしたら誰もが通る道で、決して特別なものでも何でもない。ごく一般的な悩みなんだ」

アルミン「だったら、僕の悩みなんて、取り立てて騒ぐようなものじゃないんだろうか?わざわざ書きたてるようなものじゃないのか?」

アルミン「世に溢れる物語の大半が、既存の言葉をモザイクのように組み換えただけって事で謗られるように、僕の経験も意味の無いものなんだろうか?」

アルミン「違う。そうじゃないんだ」

アルミン「僕の悩みが決して一般化できない僕個人の思考の軌跡であるのと同じように、書くことの本質は、既存の言葉を組み換えた結果にあるんじゃなくて、思考の中で組み換えることを促された、その過程にあるんだ」

アルミン「だから、今は胸を張って言おう。書くことは罪深く、表現することは、ゴミを生み出すことと同義であったとしても、やっぱり僕は書くだろうってね」

アニ「……」

アニ「あんたって、弱いくせに根性あるよね……」

アルミン「え、そうかな?」

アニ「そうだよ。そんな思春期丸出しの発想を言い切るなんて、私には真似できないね」

アルミン「それじゃあ最後にもう一つ、アニには真似できないことをしようかな」

アニ「どんなこと?」

アルミン「アニを、この部屋から連れ出すこと。そして、皆のいる所へ導くこと」

アルミン「アニはまだ完全には僕を信頼していないし、もしかしたら、これからも誰にも心を開かないかもしれない」

アルミン「けれど、僕にだってこの部屋の扉を開ける事くらいなら出来る」

アルミン「扉を開かなくちゃ、どんなお芝居も幕が上がらないからね」

アニ「……」

アニ「……たかが打ち上げに参加するぐらいで、一々言い回しが大袈裟だね。でも……」パタン

アニ「ちょうどここの本も読み終わってヒマになったところだったんだ。だから……一緒に行くよ」スクッ

アルミン「うん!」

アルミン「スタスタ

アルミン「!」

アルミン「ピタッ

アルミン(……うっ……これは、もしかして……)

アニ「どうしたの?行かないの?」

アルミン「あ……いや……大したことじゃないんだけど、その……」

アニ「?」

アルミン「始まっちゃったみたい……」

アニ「何が?」

アルミン「……その……アレが……」

アニ「え、あ、あ~、なるほどね……」

アルミン「///」

アニ「……」

アニ「フフフ、やっぱりアルミンは……」

アルミン「え?」

アニ「女の子だよ」

ギィバタン

こうして僕は、
少し重くなったお腹を抱えながら
一つの幕をおろし、
軽くなった背中に押されて扉を開く
次の幕を開けるために



おしまい

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
もし、3週間近くにわたってずっと見捨てず読み続けてくれた方がいたとしたら、本当に感謝です。

あと、今さらですが>>1の「遺伝子学上は女性ということが~」は「遺伝子上は~」です。超いまさら!!

とりあえず乙



アルミンが色々な男に求婚される話や、ライナーとジャンのアルミンを守る?戦いの結末や、クリスタに着せ替え人形にされる話や、アニとのチーハン作りする話とかはやらないんですか?

本当に良かった
乙です

今までに書いたやつがあれば教えて欲しいです

お疲れさまでした
まさかこんなところでトーマを目にする機会があるとはおもわなかった


充分楽しませて貰ったけど、番外編や後日談を書いてもいいんだからね!

>>538>>541
色々やりたかったんですけど、5000レス前後には収めたかったんで、申し訳ないけどここまでです。
ただ、着せ替え人形にされる話はほんと~にやりたかった!!
やりたかったけど、話の流れ的に組み込む場所が無かったんです……

>>539
前回はアニ「メイク道具?」っていうのをここで書きました。スレはもう落ちちゃったかも。

>>540
トーマを分かってくれる人がいて感涙です。思春期のバイブルでした。

ごめん、500レスで勘弁してください

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