キョン「休日のの午後?」 (52)

 とある休日のことである。普段ならSOS団の探索活動にあてがわれるのだが、本日はハルヒの都合により休みと相成った。

 せっかくの休みである。家でのんびりと過ごすのも1つの案としてはあったのだが、なんとなく街に出ることにしてみた。
いつもは誰かと一緒にぶらぶらするのだが、たまには一人ってのもいいだろう。

 さて、そんな風に目的もなく街をぶらついていたわけだが、なんの偶然か天使に出会った。
我らがSOS団の天使こと朝比奈さんである。手には小さな紙袋を携えており、
そんな何気ないことでも朝比奈さんを修飾するには十分過ぎる程であった。

「あ、キョンくん!偶然ですね~」

 朝比奈さんが俺に気が付き、にっこりと微笑まれた。
もうその笑顔だけで目的もなく街を彷徨い歩いた成果が得られた乗ようなものである。


「こんにちは。お買い物ですか?」

「はい。ちょうど部室のお茶っ葉を切らしちゃって」

 休みの日までSOS団のことを考えておられるなんて、本当にこの人は天使なのではないだろうか。

「私が好きでやってることですから」

 にっこりと朝比奈さん。

 ああ、もう。可愛すぎる。君をさらっていく風になりたいというのは誰の歌だったか。
もし許されるのであったらこのまま朝比奈さんをお持ち帰りしたいものである。いや、まぁ、絶対にそんなことはしないのだが。

「良かったらお茶でも飲みませんか?」

 俺にできるのはこうしてお茶に誘うくらいである。

「いいですねー。この近くに良いお店があるんですよ」

 そんなわけで春の陽気が降り注ぐカフェにやってきた。SOS団の面子ではまず来ることはないであろう落ち着いた雰囲気の店である。
ハルヒがいたら絶対に落ち着いてコーヒーを飲むことなんてできやしない。

「そんなことないですよ。涼宮さんだってキョンくんとなら大丈夫です」

「そんなもんですか?」

「そんなもんです。私が保証しますよ」

 パチっとウインクする朝比奈さんに思わず見惚れてしまう。出会った当初は少し頼りないように思われたが、
そんなことはなかった。実際の年齢は禁則事項とやらで教えてはもらえないのだが、
SOS団の中ではお姉さん的な存在である。いつもハルヒの動向だけでなく、
全員のことを温かく見守ってくれている。

 ずずっとコーヒーを啜る。コーヒーの味なんぞわからないが、インスタントなんかより遥かに美味い。
まぁ、1番の美味いのは朝比奈さんの淹れてくれるお茶であるのは間違いがないのだが。

「温かくなりましたねー」

「そうですね」

 暦も5月に差し掛かり、一層陽気が高まったように思える。少し暑いくらいだ。

「こう温かいとついついのんびり日向ぼっこしたいですね」

 貴女とならいつまででも一緒にいられますよ。

「キョンくんたら冗談が上手いんだから。お姉さんをからかっちゃ、めっですよ」

 朝比奈さんに笑われてしまった。からかったつもりはまったくないのだが。

 会話が止まる。少しだけ温くなったコーヒーを啜る。普段よりも時間がゆるゆると流れていく。
沈黙に気まずさはなく、この時間の流れが心地良い。

 流石、朝比奈さんといったところか。こんな朝比奈さんだからこそ、
ハルヒもついつい甘えてしまうのだろう。それはハルヒだけでないのだが。

「キョンくんはこの後予定とかありますか?」
 
「いえ、特にないです」

 たとえあったとしても、そんなものは即キャンセルである。

「じゃあ、デートしませんか?」

「……は?」

 突然の申し出に思考が停止する。

「じゃあ、行こっか」

 朝比奈さんが俺の手をとって立ち上がる。小さくて柔からな掌を実感しても思考回路はまったく働いてくれない。
本当に役に立たない脳みそである。

 会計を済ませて店の外へ。春の陽気に少し目を細める。

 隣には朝比奈さん。春の日差しをめいいっぱい身に受けキラキラと輝いているようにみえる。

「楽しませてくださいね?」

 悪戯っぽい、それでいて大変魅力的な微笑み。またまた見惚れてしまう。

 手は繋いだまま、俺たちは歩き出す。

 そんなある日の出来事。

終わり

終わりかよ!早ッ

キョン「犬好き?」

 最近は夏の暑さもすっかり過ぎ去って既に秋と称しても違和感は感じない程度に涼しくなった。
夏から秋へと季節は移ろいでいくわけだが、俺の所属するSOS団は季節によって活動が変化するわけではない。
そりゃもちろん、季節毎のイベントなんかはやったりするがそれも限定的なものであり、放課後の活動風景は年がら年中同じである。

 我ながらよく飽きないなと思ったりするのだが、この非生産的な活動が行動パターンに組み込まれてしまったせいでそんな疑問も浮かんでは直ぐに消えていく。
古泉なんぞはそんな日常にありがたみを感じているだろう。俺は俺でこんな状況に満足という程でもないが不満とも言えない。
幸せってものはふとした日常に紛れ込んでいるから気が付かない、
なんて言われているように『幸せである』ということはこんなもんなんだろうと人知れず感じている。
それがどうしたというものではないがな。

「ねぇ、キョン。キョンって犬好き?」

 突然団長さまからお声がかかり、俺は思考を一旦停止する。ハルヒの横顔を覗き込みながらその質問の意図を考えてみるが、
そもそもそんな他愛のない雑談に裏なんてあるはずもない。

「普通に好きだぞ。それがどうかしたのか?」

「別に。今日ちょっと阪中と犬について話したからなんとなく。阪中は猫より犬派だってさ」

 確かに、そうでもなけりゃ猫をかっているだろう。そういえばいつぞや体調が悪くなった阪中の飼い犬はどうしているだろうか。
名前は確かルソーだったか。あの時も長門のおかげで事無きを得たが、もしものことがあったら阪中はどうであっただろう。
ふとそんな思考に飛びかけたが頭を振って馬鹿な考えを追い払った。ふわりと香る良い匂いもついでに追い払う。

「お前はどうなんだ?猫も犬も好きそうだが……」

「あたし?そうねぇ……。うん、どっちも好きよ」

 やっぱりそうか。シャミセンもたまにハルヒに遊んでもらっているが、シャミセンと遊んでいるハルヒはシャミセンよりは楽しそうにしている。
シャミセンとしてはのんびりて寝ていたいのかもしれないが、妹といいハルヒといいそういうのはお構い無しだからな。
少しだけシャミセンに同情してしまう。

「……犬好き」

「ん、何だ?」

「だから、犬好き」

 よくはわからないが、ハルヒがそんなことを言ってくる。普通に好きとはいったが、犬好きと呼ばれる程なのだろうか。
いや、犬が嫌いでなければ犬好きなのかもしれない。子犬が可愛くないと感じる人間は確実に少数派であり、
子犬に愛情を感じる人間は犬好きだろう。いや、待てよ。子犬は好きだが成犬は嫌いという場合も考えられる。
それは小さくて弱いものは可愛いという心理が働いているのだろうか。

「だから、犬好き」

「いや、何が言いたいのかよくわからんのだが……」

「そんなんじゃダメよ。減点ね、減点。団長であるこのあたしの心中を察しなさい」

 そんなことを宣われてもこちらは困るしかない。そもそも減点の意味がわからない。

「出世に響くわよ?」

 現段階より俺の地位が向上する必要は無い。というか、出世ってなんだ出世って。

>>9
すまんな短くて

「ノリが悪いわね。ただの遊びじゃない」

 頬を膨らますハルヒ。お前はハリセンボンか、なんてツッコミを入れてもよかったが、我ながら寒々しいので止めた。
冬の到来にはまだ一、二ヵ月程早すぎる。

「だから、犬好きで減点よ」

「いやいや、だから何で犬好きで減点なんだよ?」

 まったくもってハルヒの意図しているところが見えてこない。ハルヒのことを察する必要があるのは古泉だけでいい。
俺に超能力なんてものは備わっていない。


「じゃあ、ハルヒも犬好きだから減点なのか」

「あたし?そ、そりゃあたしも減点してくれたら嬉しいわよ」

 減点されたら嬉しいのか?ますますわけがわからない。しがない一般人にハルヒの愉快なフィルターを排除できるはずがない。
結果、お手上げである。

「こら、諦めるな!ちゃんと考えなさいよ!」

 ポカポカと小突かれる。ハルヒは俺が真面目に考えないことにご立腹らしい。
そんなことは知ったこっちゃ無いと丸投げしたら世界が滅びかねない。古泉が半泣きで神人と戦っている姿が目に浮かぶ。
で、しばらく真面目に思考してみたがまったく答えに行き着く様子は無い。
その間にもハルヒは不機嫌そうに足をぶらぶら前後に振っている。

「悪い。何が何やらさっぱりだ」

「バカキョン」

「いやいや、面目ない。だから答えを教えてくれ」

「だから、犬好きで減点。漢字で考えてみなさいよ」

『犬好き』で『減点』つまり点を減らせってことか?ふむ、犬と好きで点があるのは一ヶ所のみ。それを除けると――

「――なっ」

 気が付いて一瞬で顔面が沸騰しそうになる。『犬好き』から点を減らしたら『大好き』

「バカキョン……」

 ぼそりと呟くハルヒを俺はそっと抱き締めた。面と向かって言うのは確かに恥ずかしい。

「ハルヒ――大好きだ」

「えっと、何で涼宮さんはキョン君の膝のうえに座っているんですか?」

「そこはスルーですよ、朝比奈さん」

「………犬も食わない」

終わり

>>13
と言いつつまだ続いてるやんw・・・と思ったら別のシナリオか
新しいのやる時はタイトルをもうちょい目立つ感じで書いてもらえるとありがたい

>>17
すまんな
目立たせるのはどうすればわかりやすい?

キョン「鶴屋さん?」

「ほら、キョン君こっちだよっ」

 俺の手を握って元気いっぱいな御方がにこりと笑う。
もうこれでもかというような程美しいポニーテールをなびかせた鶴屋さんと俺は人混みを抜けていく。
夏真っ盛りなこの季節、走るには少々躊躇われるのだがそれもお構い無し。
ハルヒにだって負けやしないその元気さを少しは分けていただきたいくらいだ。

「おんや、キョン君。もう疲れちゃったのかな?」

「いえ、疲れたというわけではないんですけどね、走り回って暑いといいますか……」

「そっかそっか。それじゃあ、どっかその辺の喫茶店にでも入ろうかっ」

 ニコニコと汗一つ掻いていないような御様子で、近くにある喫茶店を指差される。ここは鶴屋さんの好意を素直に受けよう。
そんなわけで俺たちは喫茶店の中へ。中はよく冷えており、それだけど生き返った気がする。文明の利器のありがたさをしみじみと実感してしまう。

 アルバイトであろうウェイトレスに案内されて窓際の席へ。注文したアイスコーヒーは殆ど待たされずに運ばれてきた。
それを一口飲んでほっと一息を吐いた。

「ごめんねっ、キョン君。今日はずっと走ってたから」

「いえ、さっきも言いましたがそれは構いませんよ。そういうのには慣れてますから」

 思わず苦笑を浮かべてしまう。ハルヒに連れ回されたおかげで、それなりのことではへこたれないようになった。
しかし、どうにもこの暑さには参ってしまう。地球温暖化の影響もあるのだろうか、ここ数年で一段と暑くなったような気がする。
ハルヒの力でどうにかならないものか。いや、いつぞやのように季節外れの桜なんかは止めてもらいたい。少し暑さを軽減してくれればいいのだ。

「キョン君はつまんないかい?」

「えっ?」

 少し驚いて鶴屋さんを見る。たははと笑う姿はいつもの元気さからいうと三割減といったところか。

「そんなことないですよ。楽しいです、はい」

 照れ臭さはあるものの、偽りのない気持ちを口にした。鶴屋さんと一緒にいて楽しくないはずがないし、
そもそも楽しくないなら鶴屋の買い物に付き合おうとも思わないだろう。

「そ、そっか。それは良かったにょろ」

 言った俺も照れ臭いが、言われた本人も照れ臭いのだろう、にははと恥ずかしそうに俯いている。
鶴屋さんがこんな表情をするなんて知らなかった。いつもいつも元気いっぱいな姿からは想像するのがちょっと難しいくらいだ。

「それじゃあキョン君、午後はどうするにょろ?何処か行きたいところはあるかいっ?」

「いえ、特には」

 アイスコーヒーをまた一口飲む。程よい苦さと冷たさが体に染み渡る。

「じゃあ、さっきみたいに気になったお店にブラブラ寄る感じで構わないかいっ?」

「ええ、もちろん」

 この暑さの中歩き回るのは普通なら勘弁したいところなのだが、鶴屋さんとなら歩いてもいいと思えるのだから不思議なものだ。
案外ハルヒの探している不思議なものってのはこんなものではあるまいか。

「でも、そんなラブコメ的な展開は認めませんから」

「……認めない」

 思わぬ声に驚いて俺たちが座っている通路を挟んで反対側に朝比奈さんて長門がいた。
いったいいつから居たのだろうとか、そういった疑問よりも、朝比奈さんと長門の言った意味がわからずに首を捻る。

「鶴屋さんのことは大切なお友達と思っています」

「ありがとねっ、みくる。あたしもそう思ってるにょろよ」

「それでも!それでもキョン君のことは渡しません!」

 両の手をぐぐーっと握り締め鶴屋さんを真っ正面から睨み付ける。まぁ、そう形容するにはあまりに可愛らしいのだが。

「おおっと、みくるっ!それは宣戦布告なんだねっ!でも、キョン君は渡さないのさっ!」

 鶴屋さんも鶴屋さんで朝比奈さんに対抗するかのごとく立ち上がりびしーっといった感じに指先を向ける。
俺はというと、現状に頭がまったくついていかずにただただその様子を眺めているだけであった。
何故かはわからないが朝比奈さんと鶴屋さんは俺が関係することで覇権を争っている。
まさかハルヒの命によってSOS団の活動を優先するよう説得しに来たのかもしれない。
いや、でも俺は昨日の不思議探索には参加したし、平日の団活にだってきちんと顔をだしている。
となると、いったい朝比奈さんと鶴屋さんは何を争っているのだろう。

 わーわーぎゃーぎゃーと普段の二人からは想像もつかないようなはしゃぎっぷりだ。
やっぱりこの二人は仲はよろしいようである。そこで長門の視線に気が付いた。

「どうした、長門?」

「…………すき」

 長門の口が何かを伝えようと動くも、よく聞き取れない。

「すまん何だって?」

 そう聞き返すとあからさまに落胆の色を見せる。いや、無表情には違いないのだが、そんな顔をしている。

「キョン君はあたしのものなのさっ!いくらみくるでも譲らないんだよっ!」

 と、いきなり鶴屋さんに抱き締められた。俺を誰かから守るようにきつく頭の後ろに回された腕に力が込められる。
ナニカヤワラカイという漠然とした感覚。これはいったい……。冷静に状況を把握しているようであって実はそうではない。
脳ミソの1割程度が活動しているだけで、その他9割は機能停止中。

「キョン君は誰にも渡さないんだねっ!」

 チュッと額で柔らかい感触。

「あー!」

「―――ッ!」

 朝比奈さんの叫び、長門の息を呑んだ。つまり、俺は、その、あれだ、所謂、デコチューというものをされたらしい。

 鶴屋さんの腕の締め付けがきつすぎてブラックアウトする寸前、俺はそんな結論に達するのだった。

終わり

>>18
うーんあくまで主観だけどタイトルのカギカッコが会話のと同じだから本文に埋没
しちゃってる気がする。【】とか『』とかにしてみるとか頭に・をつけてみるとか
あとはタイトルと本文の間を3行以上開けるとか本文との間にライン「―」とか「~」をひいて見るとか
例えば>>10だったら

・キョン『犬好き?』


 最近は夏の暑さもすっかり過ぎ去って(以下略)



・キョン【犬好き?】

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 最近は夏の暑さもすっかり過ぎ去って(以下略)


みたいな。あくまで個人的意見なんであんま気にしないで。気に障ったら申し訳ない

あ、あと「終わり」の一語は本文の最後につけた方が「あ、ここで終わりなんだな」ってわかりやすい気がする

>>25
気をつけてみる

キョン「夢?」
~~~~~~~~~~~~


 クリスマスも間近に迫り、世間が浮き足だっている今日この頃。俺は飽きることなく文芸部の部室へ足を運んでいた。
ひんやりと冷たい廊下を流れる水のごとく歩いて辿り着いた部室の扉をノックする。これも毎度お馴染みなった行為の一連の流れに組み込まれている。

 朝比奈さんが先に着ているならマイナスイオンが出ているに違いないお声で返事が返ってくるはずで、
まだ来ていないようなら長門の沈黙による返事がある。しかしながら、今日はそのどちらでもなく「開いてるわよ」という素っ気ないものであった。

「ハルヒだけか?」

 見れば判るような状況ではあるのだが、何となくそう尋ねる。
もしかすると、古泉辺りが掃除用具の入ったロッカーからこんにちはってことも考えられるからな。

「そうよ。みんな用事があるんだって」

 頬杖をついたハルヒが面倒くさそうにそう答えた。そういえば、三人から冬休みに入ると忙しくなるから定期連絡を近々するつもりだということを聞いた。
今回のこれはその辺りのことが絡んでいるんだろうよ。もちろん、そんなことハルヒに言えるはずも無いが。

「そうか。じゃあ、今日はこのまま解散にするのか?」

「何言ってんのよ?今日はあんたとあたしで活動するに決まってるじゃない。
もし休みにでもした時に限って宇宙人や未来人や超能力者が現れたらどうするのよ?」

 ハルヒの言うところの宇宙人やら未来人やら超能力者が本日は休みだからそう意見しているだけなんだがな。

「そもそも、平団員のくせに早々に帰りたいとか口にするなんて百年早いわよ。団長であるあたしに意見したいんだったら、
それなりの功績をあげなさい。ま、まぁ、別に話くらいは聞いてあげないことはないけど」

 結局どっちなんだかわからないが、それを訊いて蛇を出すつもりはさらさらない。触らぬ神に祟り無しである。

 さて、こうなってくると暇を持て余してしまう。古泉がいるならオセロや将棋などのボードゲームで時間を潰すことも可能だが、
その古泉が不在の上に長門や朝比奈さんも休みなので代わりを務める人がいない。長門のように本を読むというのも一つの手ではあるのだが、
長門が居なければどの本が面白いのかよくわからない。

 朝比奈さんみたいに可憐なメイド服を着込んで甲斐甲斐しく給仕に勤めることも可能だが、ハルヒ相手ではヤル気が出ない。
そもそも、俺がメイド服を着たところで変態扱いされるのがオチである。

朝倉たのむ

 ハルヒと暇を潰すようなことが出来ればいいのだが、そのハルヒが先程からこっくりこっくり船を漕いでいる。
寝不足気味というか寝不足そのものだろう。
授業中もずっと寝ていたようだ。

「なぁ、ハルヒ」

「なななな、何よ!全然寝てないんだからね!」

 そんな言い訳をしたところで、ずっとハルヒを観察していた俺に通用するはずがなかった。

「眠いなら机みたいな固いところで寝るより、ちゃんとベッドで寝たほうがいいぞ。そんなんじゃ寝ても眠気がとれないだろ?」

「そ、そんなことないわよ!一時間ぐらいなら瞬きしないでも平気よ?」

 それは寝不足と関係が無いような気がする。

「ほら、今日はもう終わりにして帰ろうぜ」

「嫌よ。絶対帰らない」

 強情なハルヒに思わずため息が零れた。一体全体何がそこまでハルヒを突き動かすのやら。

>>31
このあとで

「だって久しぶりに二人っきりになれたんだから……」

「ん、何だ?何か言ったか?」

「知らないわよ!バカキョン!」

 何故俺が怒鳴られなければならんのだ。まったくもって理不尽である。まぁ、今に始まったことではないがな。

「なら、どうするんだよ?何時もの時間になるまで帰らないのは百歩譲って良しとしよう。
でもな、そんな風に眠そうにされても気になって仕方ないぞ」

「そうね……そんなに気になるんならここで寝るわ」

「だから、横にならな――」

「なるわよ。確かマットがどこかにあったはずだから、それを床に敷いたらいいでしょ?」

 自信満々にハルヒが胸を張る。いったいどこからマットを持ってきたのやら。

「体操部から拝借したのよ。もしかするとマットが必要になるかもしれないと思ってね」

 確かに必要にはなったが、本来の用途からは著しく離れている。マットだって誰かに寝てもらうためにあるわけではないだろうに。


「いちいちうるさいわね。いいから、さっさとその机をずらしてマットが敷けるようにしなさい」

 どうして俺がと反論したところで、雑用なんだから当たり前でしょというありがたい御言葉を賜わうだけである。
だから俺は言われたとおりにせこせこと労働に従事するわけだ。

 しかしあれだ、ハルヒが雇用者にでもなったりしたら労働基準法なんぞ一蹴してしまいそうだな。
現に、俺に対する扱いが余りに酷いような気がしてならない。

「ほら、これでいいだろ?」

 簡易ベッドの完成である。たかだかマットを敷いただけではあるのだが……。そもそも、ベッドというよりは布団だな。
毛布が無いので少し寒いかもしれないが、ストーブによって室温は高くなっているので風をひく心配もないだろう。

「うーん……」

 しかし、ハルヒは何やら難しい顔で腕を組み、考え事をしているようだった。

「快適な睡眠をとるために何か足りないのよね……」

 不満があるなら家に帰ってゆっくりと寝ればいいだろう。そんな俺の提言はスルー。

「そうよ!枕が無いのよ!」

「そんなものはその辺にある分厚い本でいいだろ」

>>35
なんだ?

「ダメよ。本じゃ固すぎるわ」

 やっぱり家に帰るべきだろう。

「何よ、ここまでやっておいて帰るなんて負けじゃない」

 勝ちでもないがな。

「膝枕とか腕枕とかあるし、人間ってある意味枕よね……」

 それは違うだろう……。

「そうね。キョン、あんたが枕になりなさい」

「は?」

 思わずハルヒの顔をまじまじと見つめてしまう。まったくわけがわからない。

「キョンなら筋肉もそんなについてないからちょうどいいと思うのよ。そういうわけで、お願いね」

「断固拒否する」

 常識的に考えてそんなこと出来るはずがない。恋人同士ならすることもあるだろうが、俺とハルヒはそんな関係ではない。

「キョンに拒否権なんてあるわけないでしょ。ほら、早くしなさいよ」

 既にマットの上でスタンバっているハルヒがマットをポンポンと叩く。
やるべきか。やらざるべきか。古泉のにやけ面が頭の中でちらつく。古泉が苦労するのは一向に構わない。
しかしながら、この状況でハルヒを不機嫌にしてもし朝比奈さんや長門に迷惑が掛かるようであるならば、それは絶対に避けなければならない。

 で、結局。保安官に拳銃を突き付けられたカウボーイの如く両手を挙げて降伏。

「なぁ、膝枕じゃダメなのか」

「ダメよ。それじゃあちょっと高すぎるわ」

 さいですか。こうなったら自棄だとばかりに腕をぐいとハルヒのほうに差し出した。
そこに乗せられた頭の重さを感じたと同時に、言い様の無い良い匂いがした。頭の中がとろけるような甘い匂い。
食虫植物に誘われるハエのような気分だ。

 ドキドキして思考がまとまらずにぐるぐると渦巻いている。そんな人の気も知らずにハルヒは規則正しい寝息をたてている。
ちらりとそちらに視線をやってさらに頭が沸騰した。普段とは違い、安らかで少し幼いハルヒの寝顔。ドキドキするなというほうが無理である。

 しかし、そんなドキドキも時間が経つにつれて収まり、続いて俺にも眠気が訪れた。

 ゆっくりと目を閉じる。ハルヒが側にいる心地よさを腕の重さに感じながら、俺は夢の中にへと落ちていった。

 ちなみに、どんな夢を見たのかは内緒である。一つだけ言うとするならば、幸せな夢だったってことぐらいだ。

 終わり

>>31
キョン「鍋?」

~~~~~~~~~~

 冬も終わり、桜が咲き始めた今日この頃。気温も高くなり、花粉のことを考えなければ過ごしやすい季節になった。
とはいえ、やはり夜はまだまだ寒く、温かいものを食べたくなる。

「お待たせ」

 炬燵に入り待つこと約30分。ポニテエプロン姿の朝倉が鍋をもって部屋に戻って来た。

 なんのことはない。朝倉に鍋に誘われた。それ以上でもそれ以下でもない。
俺を殺そうとしていた人物の家に、鍋に誘われほいほいついてきたわけではあるのだが、
長門が「心配ない」と言っていたので、おそらく大丈夫だろう。

「今日は長門さんがいなくて寂しかったから、キョン君がいてくれて良かった」

 そうにっこりと微笑む朝倉に、思わず見惚れてしまいそうになる。谷口のランク付けでは確かAA+であったか。
そのランクに恥じない可憐さである。

「どうかした?」

「いや、なんでもない」

「そう?じゃあ、冷めないうちに食べましょ」

 鍋の蓋を取ると、水蒸気とともにいい香りが辺りを包む。

「今日は水炊きにしてみたの」

 少し……いや、かなり意外であった。いつぞやの長門が構築した世界ではおでんを出してくれたため、
どうも「朝倉=おでん」というイメージを勝手に持っていたようだ。

「あれ?もしかして水炊きって嫌いだったかしら?」

「いや、そんなことない」

 むしろ、鍋の中では個人的に上位に入るものである。あっさりとしているが、投入する食材によって出汁に風味が増し、食欲をそそる。


「そっか。良かった良かった」

 うふふと笑みを浮かべ、取皿にとりわけてくれる朝倉。それが、ポニーテールとエプロンと相まって旦那の世話を焼く若奥様という印象を受けてしまう。
そしてこの場では、旦那となるのは必然的に俺になるわけで……

「どうかした?」

「いや、なんでもない」

 先程と同じやり取り。見惚れてしまったなどと、気恥ずかしくて言えるはずもないので同じように誤魔化してしまう。
それを見透かすかのように朝倉はにんまりと笑っている。顔が熱くなるを隠すように豆腐を口の中に放り込ん

「あ、熱っ!」

 そりゃそうだ。さっきまで煮込まれていた豆腐である。火元からは離れているとはいえ、まだまだ熱い。

「大丈夫?」

 朝倉が心配そうに俺の顔を覗き込む。大したことはないが、少々舌を火傷してしまったのか舌先がヒリヒリする。
あぁ、恥の上塗りというかみっともないというか、格好悪くてげんなりしてしまう。

「ほら、お水でも飲んで冷やさないと」

「すまんな」

「別にそれくらい構わないわよー」

 にこにこと笑う朝倉。さっきからずっと朝倉に笑われているような気がする。俺は肩を軽く竦め、食事を再開した。

「お粗末様でした」

 締めうどんまでしっかりと頂き、満腹感に満たされる。余談ではあるが、どこぞのうどん県では締めはうどん以外認められないそうである。

「そういえば、火傷した舌は大丈夫?」

「ああ。もう痛みはほとんどない」

「ほんとに?」

 ずずいっと朝倉が距離を詰めてくる。肩が触れ合う距離。そこからじっと俺の顔を見つめてくる。

「あーんってしてみて」

 いくらなんでもそれは恥ずかしすぎる。

「いいから。ほらほら」

 さらに近くなる距離。頬を朝倉の両手で固定され、顔を背けることが出来ない。それでも、だ。口を開ける事を断固として拒否させてもらう。

「もう、意地っ張りね」

「なんとでも言ってくれ」

 拗ねたように口を尖らせた朝倉ではあるが、何かを思いついたのか、にんまりと笑った。

「しょうがないわねー。そんな強情なキョン君にはお仕置きしないとね」

 そう言うと、俺の頬から手を放し後ろ手に何かを取り出そうした。フラッシュバックするのはいつぞやの教室での出来事。
俺は、反射的に目を閉じてしまった。

 唇に柔らかい感触。

「これで消毒できたかな?」

 目を開けると間近に朝倉の顔。
 脳みそが何が起こったのか徐々に理解していく。悪戯な笑みの朝倉に、どうも俺はさらなふ火傷を負わされてしまったようだ。


終わり

短いとは言えこれだけ立て続けに作品を出せるというのも凄いな

>>48
書きため

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