京太郎「明るい」咲「家族計画」 (27)


 ある日の清澄高校麻雀部。

 面子が足りていないため、卓が立っていないそんな部室。

咲「京ちゃん、そういえば、クラスで友達と話してたんだけどね――」

 ベッドに腰掛けて雑誌を捲っていた宮永咲が、ふと思い出したように話題を振ってきた。

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咲「――なんだか変な噂が流れてたよ」

京太郎「んー……噂って、何のだ?」

 ベッドに寝そべり、麻雀漫画に目を通しながらの気のない返事。

咲「えっとね」

京太郎「おう」

咲「なんでも、女子部員が男子部員を奴隷扱いしてる――そんな部活動があるらしいんだ」

京太郎「まじか、そんな酷い部活があるもんなのか」

咲「本当だとしたら酷いよねー」

京太郎「まぁ、所詮噂だろうけどな……ちなみに、何部だ?」

咲「噂ではね……なんと――麻雀部なんだって。びっくり」


京太郎「あー、麻雀部か、そっかそっかー」

咲「そう、麻雀部なの」


京太郎「……」

咲「……」


京太郎「失望しました。清澄の麻雀部やめます」

咲「えぇー、じゃあ、私もやめるー」


京太郎「……」

咲「……」


京太郎「なーんちゃって」

咲「ジョークジョーク」

京太郎・咲「HAHAHAHAHAHA――」


咲「あ、ちゃんと噂は否定しておいたからね」

京太郎「当然だな――ま、奴隷っていうのは、ある意味で間違いじゃないか」

咲「えー……私達は京ちゃんを奴隷扱いなんかしてないよ?」

京太郎「いや、だってな――よっ、と」

 答えつつ身を起こし、宮永咲の隣へ座る。

 丁度、本からおもてを上げた彼女と視線がぶつかった。

京太郎「咲――俺はお前の愛の奴隷、だろ?」

 きりっ。

咲「きょ、京ちゃん――」

 ぽっ。

京太郎「……」

咲「……」

京太郎・咲「HAHAHAHAHAHA――」


京太郎「あ、クラスで思い出したけどな」

咲「ん、何?」

京太郎「いや全く関係ないんだけど、今日友達と話してる時に、こんどーさんの話題が出たんだよ」

咲「……こんどーさん?」

京太郎「おう、こんどーさん。国士無双がブンブン出るんや、じゃなくてゴムのことな――あ、ちなみに男友達と、だぞ」

咲「微妙に古いよ京ちゃん……というか、いきなり女の子にそういう下ネタ振る?」

京太郎「微妙に引くなよ。お前だからいいだろ」

咲「……それはどういう意味?」

京太郎「……で、そいつが昔、両親のタンスからこんどーさんを発見した時の話なんだけどな」

咲「スルーしたし……まあ、両親のタンスからっていうのが、微妙に生々しいね」

京太郎「あー……確かに生々しいな、例えば俺が今、同じ状況で見つけたら見なかったことにするな……」

咲「だよねぇ……」


京太郎「……ま、話を戻すけど、その時のそいつは無知で、それが何か分からなかったらしいんだよ」

咲「そうなんだ」

京太郎「小学生の時だったらしいからな――そいつは何をしたと思う?」

咲「……ゴムで?」

京太郎「そう、ゴムで」

咲「えー、問題形式なの――んー……風船みたいに膨らませてみたり、とか?」

京太郎「ありそうだけどハズレだ。それだとベタ過ぎて面白くないだろ?」

咲「面白いかどうかが大事なんだ……」

京太郎「そいつはな――履いたんだ」


咲「えっ?」

京太郎「えっ?」

咲「……ちょっと、京ちゃん、私のマネしないでよ」

京太郎「いや、このパターンは何となくしないといけないかな、と」

咲「って――はく? どういう意味?」

京太郎「なんと……靴下みたいに履いたらしい、そいつ、こんどーさんを」

咲「えぇー……」

京太郎「で、履いたはいいけど、暫くして耐えられるわけもなく裂けたらしい。ぱーん、と」

咲「それはそうだよ……むしろどうして履こうと思ったの……訳がわからないよ」


京太郎「ばっか、お前、その訳のわからなさが面白いんだって」

咲「っていうか、履けるほど拡がるものなの……?」

京太郎「んー、どうなんだろうなー」


京太郎「……」

咲「……」


咲「……京ちゃん」

京太郎「……何だ?」

咲「……今日は、ある?」


京太郎「……あー、まあ、持ってる、な」

咲「ちょっと開けて試してみようよ」

京太郎「たまにアグレッシブだよな、お前――そういうとこも好きだけど」

咲「もう京ちゃんったら――」

京太郎「ほら0.02mmの極薄サイズ」

咲「――って、私が履くの!?」

京太郎「俺だと流石にこんどーさんがまず耐えれないだろ」

咲「もぅ、仕方がないなぁ……」



京太郎「……」

咲「……」


京太郎「……お」

咲「おおぅ……履ける……」

京太郎「マジかよ……」

咲「全然余裕だよ! 凄いよ!」

京太郎「マジ履けてるじゃん……感動した」

咲「うわー、こんなに拡がるんだ」

京太郎「すげーな。日本のゴムメーカーってすげー」

咲「きっと技術力の勝利だよ、京ちゃん!」

京太郎「破けたりして、不安に駆られる人をなくすため日夜進歩してるんだなっ!」

咲「だよねっ! きっとどんなに激しくしても大丈夫な感じでっ!」

京太郎「だな! アクロバティックでアレな感じでも大丈夫、みたいな!」


咲「京ちゃん、例えばなんだけどさ……」

京太郎「……何だ?」

咲「もっと別な方法で、日本のゴムメーカーの技術力の進歩を確かめるべきなんじゃないかな? パルスのファルシのルシがパージでコクーンな感じで」

京太郎「咲……奇遇だな。俺もそう思ってたところなんだ」

咲「うわーぐうぜんってすごいねこれはたしかめないといけないね」


京太郎「……」

咲「……」


京太郎「咲……」

咲「京ちゃん……」

京太郎「咲――!」

咲「京ちゃん――!」


ドア「ちょっと待った」

京太郎・咲「「あっ」」

和「……」

京太郎「……」

咲「……」

和「……二人は一体何をしているんですか?」

咲「やっほー、和ちゃん」

京太郎「よう、和」

和「露骨に誤魔化そうとしてますよね? 部室でいかがわしい事をしないで下さいよ?」

咲「えー、そんなことしてないよ――ね、京ちゃん」

京太郎「なー。咲の言う通りしてないって」


和「いえ、ベッドの上で二人が明らかに近かったのですけど――って、なんで二人して荷物をまとめだしてるんですか?」

京太郎「なんでって――帰り支度? 急な用事ができたんだ」

 ――そう、用事だ。嘘ではない。

 爆ぜろリアル、弾けろシナプス、バニッシュメント・ディス・ワールド(意味深)なのだ。二人で。

咲「うん、そうそう用事ができちゃったの……」

 部室だとこれ以上は恥ずかしいし――とぼそりと付け加えている。

京太郎「だよな」

咲「だよねー」

和「……そうですか、お疲れ様です」

京太郎「じゃ、またな和」

咲「和ちゃん、また明日ー」

和「何か腑に落ちませんけど――咲さん須賀くん、また明日です」


+++

和「全くあの二人は打たずに帰るなんて……」

 二人を見送り、そう愚痴をこぼし鞄を棚へ置いた。

 自分一人か――と思い、部室を見やると、部屋の隅にある異質な物体。

 具体的には陰気なオーラを発する白い何かがあった。 

和「――って、ゆーきじゃないですか! いたんですかっ!?」

優希「へへっ、のどちゃん……私、燃え尽きちゃったじぇ……真っ白にな……」

 絞り出したような震えた声で答えつつ、時折ビクンビクンと痙攣している。その動きはちょっと気持ち悪い。

和「って、ちょっ、ゆーき、しっかりして下さい! 一体何が!?」

優希「は、はんにんは――」

 ――がくり。

和「ゆーきー!?」


 と、まあ、そんなことがあったとか――ちなみに後日。

 部室で、染谷まこと原村和に説教される須賀京太郎と宮永咲がいた。

 どうでもいいが、それによって部内いちゃつき禁止宣言が発表されたとか云々。

 片岡優希はその宣言内容により、須賀京太郎・宮永咲両名から、タコス一週間分、つまり三人前×七日分をゲットしたそうな。


                                                                       ――カン!

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