豊音「吸血鬼ごっこしよう」(56)
咲「吸血鬼ごっこ?」
豊音「うんうん。こう、首筋をガブッとねー」
咲「ガブッと?」
豊音「噛むの。そしてチュウチュウ」
咲「チュウチュウ?」
豊音「吸うの。ゴクゴクと」
咲「なにを吸うの?」
豊音「もちろん血だよー」
咲「おいしいの?」
豊音「うーん、どうだろうねー」
咲「鼻血が出るとね」
豊音「うん」
咲「口の中に、血の味が広がるよね」
豊音「口と鼻は繋がってるんだよー」
咲「じゃあね、わざわざ血を吸わなくても」
豊音「うん」
咲「鼻血を出したら、血が飲めるんじゃないかなあ」
豊音「わかってないねー」
咲「わかってない?」
豊音「例えばの話」
咲「うん」
豊音「唾を飲んでるからって、喉が渇かないわけじゃないでしょー?」
咲「そうだね」
豊音「つまりそういうこと」
咲「そっか、汗かいたりするもんね」
豊音「常に水分は失われていくんだよー」
咲「すごいね。……すごいの?」
豊音「いくら鼻血を飲んでもね?」
咲「うんうん」
豊音「他のところから出血したりするからねー」
咲「その血も全部飲めばいいんじゃないの?」
豊音「できる?」
咲「豊音さんなら、きっとできるよ」
豊音「できるわけないよねー」
咲「そうかなあ……」
豊音「咲ちゃんは知らないだろうけど」
咲「私は知らない?」
豊音「涙の原料も血なんだよー?」
咲「知ってるよ」
豊音「だから、吸血鬼は涙も飲めるという計算」
咲「それは知らなかったかも」
豊音「血と涙、どっちを吸ってほしいのかな?」
咲「今はね、血が出てないの」
豊音「見たらわかるよ?」
咲「だから、涙の方がいいなあ」
豊音「うんうん、わかったよ」
咲「泣けばいいの?」
豊音「あくびでもいいんじゃないかなー」
咲「ふああ……」
豊音「あっ、ちょっと出てきたよ」
咲「ふああ……」
豊音「がんばれ。ちょーがんばれ!」
咲「……ん、このくらいでいい?」
豊音「十分だよー」
咲「早く舐めて?」
豊音「ドキドキするねー」
咲「しないよ。ぜんぜんしない」
豊音「いただきまーす。……ぺろ」
咲「ん……」
豊音「ごちそうさまでした」
咲「どうだった?」
豊音「あのね、咲ちゃん」
咲「うん」
豊音「味なんてしなかったよ」
咲「しなかった。なんで?」
豊音「だって私、吸血鬼じゃないもん」
咲「……?」
豊音「あくまで、ごっこ遊びだからねー?」
咲「悪魔で。吸血鬼じゃなくて?」
豊音「悪魔でもないよ。ごっこ」
咲「ごっこ。吸血鬼じゃない?」
豊音「私はちょー人間だよ」
咲「ちょー人間。人間なんだ?」
豊音「うんうん」
咲「じゃあなんで舐めたの?」
豊音「うーん……」
咲「うーん……」
豊音「強いて言うなら」
咲「うん」
豊音「咲ちゃんをぺろぺろしたかったからかな」
咲「私をぺろぺろ?」
豊音「かわいかったよー。ちょっと恥ずかしがってる咲ちゃん」
咲「かわいい私が恥ずかしがってる?」
豊音「うんうん」
咲「えへへ、照れるね」
豊音「咲ちゃんの涙なら、フローラルな味がするかと思ったんだけど」
咲「期待を裏切っちゃった」
豊音「バニラエッセンスだよね」
咲「バニラ。……エッセンス?」
豊音「あれって、ちょー美味しそうでしょ?」
咲「バニラだもんね」
豊音「でも不味いんだよ、ほんとうは」
咲「バニラ味じゃないの?」
豊音「バニラ味じゃないよー」
咲「私の涙はバニラエッセンス?」
豊音「期待外れって意味では」
咲「すごいね。……すごいの?」
豊音「吸血鬼。ちょーかっこよくない?」
咲「吸うの?」
豊音「血をね。チュウチュウ」
咲「でも、豊音さんはちょー人間なんでしょ?」
豊音「うんうん」
咲「血を吸わないんだよね?」
豊音「人間だからねー」
咲「じゃあ何を吸うの?」
豊音「咲ちゃんの唇を吸ってみたいな」
咲「私の唇。吸っていいよ?」
豊音「ほんとに?」
咲「ウソって言ったらどうするの?」
豊音「どうもしないよ」
咲「ほんとって言ったら?」
豊音「チュウチュウしちゃうよ」
咲「じゃあほんと」
豊音「……いいの?」
咲「いいの。いいのかなあ」
豊音「初めてだよねー?」
咲「チュウチュウ。初めて」
豊音「私がもらっていいの?」
咲「いいのかな。いいんじゃないかな」
豊音「では不肖豊音、遠慮なくいくよー」
咲「ばっちこい」
豊音「……」
咲「……」
豊音「……」
咲「……?」
豊音「……」
咲「……!」
豊音「……ん」
咲「……チュウチュウ終わり?」
豊音「ちょーどきどきしてきたよ」
咲「私はどきどきしてないよ」
豊音「でも、顔赤くない?」
咲「恥ずかしいから」
豊音「どきどきは?」
咲「してないよ」
豊音「私のこと好き?」
咲「好きかなあ。嫌いじゃないよ」
豊音「好きってことだよねー?」
咲「嫌いじゃないなら、好きなの?」
豊音「そういうことにしておこうよ」
咲「じゃあ、好き」
豊音「私も咲ちゃんのことちょー好きだよ」
咲「ちょー好き。ちょー?」
豊音「うん。相思相愛だねー」
咲「すごいね。すごいよね」
豊音「ということで、吸血鬼ごっこはおしまい」
咲「おしまい、早くない?」
豊音「でも、隙あらば吸っちゃうからね」
咲「うん、待ってる。待ってる?」
豊音「待ってちゃダメだよ。ガードしないと」
咲「ガードしないと。なんで?」
豊音「隙をつくとねー、咲ちゃん赤面するから」
咲「恥ずかしいもん」
豊音「うんうん。もっと恥ずかしがっていいよー」
咲「でもね、ドキドキはしないよ」
豊音「その強がりもちょーかわいいね!」
咲「強がり。じゃあ触る?」
豊音「……え?」
咲「触って確かめてみればいいと思う」
豊音「咲ちゃん、それはエッチだよー」
咲「私はエッチ?」
豊音「やらしいことはしたらダメ」
咲「チュウチュウはいいの?」
豊音「ギリギリセーフかなー」
咲「よくわかんないね」
豊音「咲ちゃんはまだ子どもなので」
咲「豊音さんは大人?」
豊音「半分くらいは、大人」
咲「私が大人になったら、触る?」
豊音「もちろんだよー」
咲「そっか、楽しみ。……楽しみ?」
豊音「咲ちゃんは」
咲「うん」
豊音「私に触ってみたいとか、思わないのかなー?」
咲「触りたい、かも」
豊音「どうぞ! どこでもいいよ!」
咲「お股でも?」
豊音「ちょーやらしいよ! 絶対ダメ!」
咲「どういうこと……」
豊音「お股以外」
咲「お胸触りたい」
豊音「ダメだよー!」
咲「やらしいから?」
豊音「うんうん」
咲「じゃあ、もういいよ」
豊音「あ、すねた?」
咲「……」
豊音「ねー、すねた?」
咲「……」
豊音「ほら、他にもいっぱいあるよー、触るところ」
咲「お尻」
豊音「やらしいー!」
咲「豊音さんはいじわるだったの?」
豊音「すねた咲ちゃんもちょーかわいいよ!」
咲「かわいい私がちょーすねてる?」
豊音「うんうん」
咲「えへへ、照れるね。照れるよ」
豊音「なでなでしてもいいかなー」
咲「いいんじゃないかな」
豊音「よーし、スーパーなでなでタイム!」
咲「きゃー」
豊音「よしよし」
咲「ん、気持ちいい」
豊音「髪、ちょーいい匂いがするねー」
咲「だって、洗ってるから」
豊音「うんうん、えらいねー」
咲「私ね、豊音さん」
豊音「んー?」
咲「豊音さんの髪にくるまって眠りたいな」
豊音「……うーん、ムリ」
咲「ムリ。いじわる」
豊音「だって、私の髪がダメージ受けるかもだよ?」
咲「それはダメだね。うん、ダメだ」
豊音「マフラー代わりに、首に巻いてあげよっか?」
咲「うん」
豊音「おっけー。……はい、できたよー」
咲「わあ、くすぐったい」
豊音「でも気持ちいいでしょ?」
咲「うーん、あんまり」
豊音「ですよねー。ごめんね、今ほどくから」
咲「ほどかなくていいよ」
豊音「どうして?」
咲「なんとなく。うん、なんとなく」
豊音「そっかー」
咲「手、止まってるよ」
豊音「よーしよしよし」
咲「きゃー」
豊音「うーん、甘えんぼな咲ちゃんもかわいいねー」
咲「かわいい私が甘えんぼ?」
豊音「うんうん」
咲「ねえ、豊音さん」
豊音「んー?」
咲「抱っこして」
豊音「抱っこ? 持ち上がるかなー」
咲「座ったままでいいから。お膝の上に乗せて」
豊音「おいでー」
咲「んしょっ、えへへ」
豊音「……個人的には向かい合いたいところなんだけどねー」
咲「向かい合ったら恥ずかしいから」
豊音「ドキドキする?」
咲「しないよ。全然しない」
豊音「私のこと好き?」
咲「好きなんじゃないかな」
豊音「ま、いっかー」
咲「豊音さん、背もたれにピッタリ」
豊音「咲ちゃんの抱き心地も最高だよ!」
咲「気持ちいい?」
豊音「うんうん」
咲「感じちゃう?」
豊音「やらしいー」
咲「えへへ」
豊音「でもねー、咲ちゃん」
咲「なあに?」
豊音「ふっふっふ、私に後ろを見せたらいけないよ」
咲「いけないの?」
豊音「耳に息を吹きかけたり。ふーっ」
咲「んっ」
豊音「うなじに吸いついてみたり。ちゅっ」
咲「わわっ、血を吸われちゃう」
豊音「吸血鬼ごっこは終わったってばー」
咲「終わったの? じゃあ大丈夫だね」
豊音「咲ちゃーん」
咲「咲ちゃんです。どうしたの?」
豊音「愛してるよー」
咲「愛してる……。好きじゃなくなったの?」
豊音「そ、その言い方は語弊があるかな……」
咲「ちょー好きって言ってくれたのに。あれはウソだったんだね」
豊音「愛してるじゃダメ?」
咲「ダメ。……ダメじゃない、かも」
豊音「うれしい?」
咲「正直言うとね」
豊音「うんうん」
咲「すごくうれしいよ」
豊音「ドキドキは?」
咲「してない。むしろ止まりそうだよ」
豊音「えー、それは大変!」
咲「豊音さんのせいだもん」
豊音「人工呼吸しなきゃ!」
咲「心臓マッサージじゃなくて?」
豊音「人工呼吸するとねー」
咲「うん」
豊音「咲ちゃん、きっとドキドキするから」
咲「しないよ。絶対しない」
豊音「素直になりなよ」
咲「豊音さんに何されても、ドキドキはしないから」
豊音「強情だねー」
咲「事実だもん」
豊音「ドキドキしてる咲ちゃんもかわいいと思うんだけどな……」
咲「かわいい私がドキドキ?」
豊音「うんうん」
咲「じゃあ、がんばって私をドキドキさせて?」
豊音「言ったねー? がんばるよ!」
咲「ねえ」
豊音「んー?」
咲「帽子貸して」
豊音「いいけど、サイズ合うかな。……はい」
咲「ん。ちょっと大きいかも」
豊音「そうみたいだねー」
咲「どう?」
豊音「うん、かわいいよ!」
咲「えへへ。似合ってる?」
豊音「……」
咲「豊音さん」
豊音「え、えーと……、似合って、る、よ」
咲「……ほんとに?」
豊音「ほ、ほんとだよー」
咲「あやしい……」
豊音「アンバランスですごくかわいいから!」
咲「えへへ、照れるね。……アンバランス?」
豊音「な、なんでもない……」
咲「見て見て。豊音さんのまね」
豊音「え、私そんな顔してるー?」
咲「ロン、って言ってみて」
豊音「それ、ロンだよー」
咲「うん、やっぱりそんな顔してる」
豊音「もう、笑わないでよー」
咲「私、豊音さんの真似ならいっぱいできるよ」
豊音「へー、ふーん」
咲「ニヤニヤしてる。なんで?」
豊音「それだけ私のこと見てるってことだよねー」
咲「だったら、豊音さんも私の真似できる?」
豊音「……あ、あはは」
咲「……私のこと、あんまり見てないんだ」
豊音「で、できるよ! ほら、リンシャンカイホー!」
咲「うわあ」
豊音「どう?」
咲「すごいよ。すごく似てない」
豊音「だよねー」
咲「ほんとうに、私のこと好きなの?」
豊音「もちろんだよー」
咲「じゃあ、もっと上手に真似してね」
豊音「精進します……」
咲「お手本。豊音さんの真似します」
豊音「わー、ぱちぱち」
咲「豊音さんがちゅうする時の真似」
豊音「えっ、ちょ……」
咲「……」
豊音「んっ。……咲ちゃん」
咲「えへへ、似てたかな」
豊音「よ、よくわからなかったので、もう一回」
咲「もう一回。次は、豊音さんの番」
豊音「……わわ、あらためて恥ずかしいねー」
咲「恥ずかしいね。ちょっとドキドキしそう」
豊音「ほんとに? じゃあここでキメるよ!」
咲「うん、がんばって」
豊音「では咲ちゃん、目を閉じてください」
咲「……はい」
豊音「次は、耳を塞ぐよー」
咲「……なんにも聞こえない」
豊音「……よーし」
咲「……」
豊音「では、咲ちゃんがちゅうするときの真似」
咲「……豊音さん、まだ?」
豊音「いきます!」
咲「豊音さ、んっ……」
豊音「……ど、どう?」
咲「……」
豊音「咲ちゃん、ドキドキした?」
咲「ドキドキ。……うーん」
豊音「……」
咲「心臓がね」
豊音「うんうん」
咲「破裂した」
豊音「そこまで!?」
咲「だから、ドキドキはしてないよ」
豊音「それは苦しいよー」
咲「苦しい。ううん、くるしゅうない」
豊音「ほんとに手強いねー」
咲「豊音さんの唇って、柔らかいんだね」
豊音「えっ?」
咲「それに、すごくあったかかった」
豊音「て、照れるよー」
咲「豊音さんみたいな吸血鬼なら」
豊音「うんうん」
咲「私、いっぱい吸われたいな」
豊音「……がまんがまん」
咲「血を吸われたら、私も吸血鬼になっちゃうから」
豊音「そういう話も聞くねー」
咲「次は、私が豊音さんを吸ってあげるね」
豊音「咲ちゃーん!」
咲「わわっ」
豊音「ギュッてしていい? いいよねー!」
咲「う、うん、いいけど」
豊音「私、咲ちゃんにドキドキさせられっぱなしだね」
咲「私だって、……なんでもない」
豊音「心臓が破裂したり、停止したりでしょ?」
咲「うん」
豊音「ドキドキは?」
咲「してないよ」
豊音「私のこと愛してる?」
咲「……好き」
豊音「素直じゃない咲ちゃんもちょーかわいいよー」
咲「かわいい私がちょーかわいい?」
豊音「うんうん」
咲「かわいいなら仕方ないよね」
豊音「このね、咲ちゃんのサイズ」
咲「私のサイズ?」
豊音「すごくいいよー」
咲「どんな具合?」
豊音「私の身体にすっぽり収まる感じ!」
咲「豊音シェルター?」
豊音「あっ、呼び捨てにしたなー」
咲「きゃーっ」
豊音「おっと、逃がさないよ」
咲「えへへ」
豊音「ふふふー」
咲「ねえ、豊音さん」
豊音「どうしたの?」
咲「豊音さんといると、不思議なことがいっぱい起こるね」
豊音「そうかなー。例えば?」
咲「例えば。例えないとダメ?」
豊音「気になるので、教えて」
咲「豊音さんも、同じ気持ちだったらいいな」
豊音「んー?」
咲「……服がね、すごく邪魔に感じるの」
豊音「……ちょーわかるよ、その気持ち」
咲「ほんとうに? よかった」
豊音「……咲ちゃん、提案があります!」
咲「なあに?」
豊音「お風呂、入ろっか」
咲「お風呂。一緒に?」
豊音「う、うん」
咲「……」
豊音「……」
咲「だって、せまいよ」
豊音「くっついちゃえば平気だよー」
咲「くっついちゃうの?」
豊音「あわわっ、そこは気にしないでね」
咲「気になるよ。くっついていいの?」
豊音「……むしろお願いしたいかな」
咲「うん。……うん」
豊音「咲ちゃん?」
咲「私、先に入ってるね」
豊音「えっ、えー。一緒に行こうよ」
咲「豊音さん」
豊音「……?」
咲「……待ってる、から」
豊音「……ちょっ」
咲「だから、早く来てね」
豊音「……うん。鼻血が止まってから行くねー」
咲「それはベタすぎるよ」
豊音「では、おじゃましまーす」
咲「豊音さん、おっきい」
豊音「ぶっ、そんなことないよー!」
咲「胸じゃなくて、全体的に」
豊音「あはは、さすがにせまいねー」
咲「せまいね。お湯が溢れちゃった」
豊音「……こういうことって、言うべきなのかな」
咲「なあに?」
豊音「咲ちゃん、……すごく、綺麗だよ」
咲「綺麗。かわいい私はどこに行ったの?」
豊音「さあ、どこだろうねー」
咲「豊音さんも……」
豊音「私も?」
咲「……」
豊音「咲ちゃん?」
咲「……なんでもない」
豊音「ふふ、残念」
咲「ねえ、触っていい?」
豊音「好きにしてくれていいよー」
咲「ほんとうにいいのかな」
豊音「どうだろうね」
咲「触るだけならいいのかな」
豊音「咲ちゃん」
咲「うん」
豊音「私のこと、好き?」
咲「好き。うん、好き」
豊音「愛してる?」
咲「愛? 愛は、してるかも」
豊音「私も、咲ちゃんのこと好きだよー」
咲「愛は?」
豊音「ちょーしてる」
咲「そっか。じゃあ、いいよね」
豊音「うんうん。私だって、そろそろ」
咲「そろそろ?」
豊音「我慢の限界……、かな」
咲「……優しく、お願い」
豊音「……うん」
咲「……」
豊音「……」
咲「……」
豊音「……」
咲「んっ」
豊音「……」
咲「……」
豊音「あっ、……うん」
咲「……」
豊音「んー……」
咲「……」
豊音「……」
咲「むう」
豊音「ふふっ」
咲「……」
豊音「え? ……ちょっ」
咲「……」
豊音「あっ、ん」
咲「……」
豊音「……」
咲「……」
豊音「……」
咲「……えへへ」
豊音「……ん」
咲「んっ」
豊音「……」
咲「……」
咲「うわあ」
豊音「もう……」
咲「……だめ?」
豊音「……」
咲「……」
豊音「……ねー」
咲「……ううん」
豊音「……」
咲「……」
豊音「……」
咲「……あっ」
………
……
…
咲「明かり、消すね」
豊音「うん、いいよー」
咲「……」
豊音「……いやー、びっくりしたね」
咲「びっくり。ごめんね」
豊音「咲ちゃんが謝ることないよー」
咲「帰ってくるとは思わなくて」
豊音「照さんも相変わらずだったね」
咲「お姉ちゃん、いつもいきなりだから」
豊音「手厳しいねー」
咲「だって、……良いところだったのに」
豊音「あ、あはは……。内緒ね」
咲「内緒。どうして?」
豊音「どうしても、だよー」
咲「そっか」
豊音「いつかは言わなきゃだけどね」
咲「ん。いつか、ね」
豊音「……それにしても、ほんとにびっくりしたねー」
咲「うん。まだドキドキしてる」
豊音「えっ?」
咲「ん? ……あっ」
豊音「……ふふ。私の勝ち、だねー?」
咲「……負けちゃった」
豊音「罰ゲームしよう!」
咲「罰ゲーム。何する気?」
豊音「うなじ、出して」
咲「……やらしい」
豊音「夜はまだ長いからねー」
咲「……えへへ」
豊音「ねえ、咲ちゃん」
咲「なあに?」
豊音「吸血鬼ごっこしよう!」
おわり
読んでくれた人乙
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