モバP「驚き桃の木桃の皿」 (62)




―4月6日・都内デパートにて―



アヤ「めんどくせえ…… 服なんてどこで買っても一緒だろ?」

千奈美「わざわざあんたの買い物に付き合ってあげてるのに、その言い草は何なのよ。
     あんたもアイドルなら、この機会に少しはファッションに気を遣いなさい。
     あまり安物の服でうろつかれると事務所の品格にかかわるわ」

アヤ「へいへいそりゃすみませんね。で、どこ回ったらいいんだ?アタシデパートで
   買い物なんてした事ないからわかんねえぞ」






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千奈美「上から下まで一式全部揃えるからどこからでもいいけど、まずは靴から見て
     回りましょうか。しっかり資金は準備してきたわね?」

アヤ「言われた通り銀行から10万円おろして来たけど、ホントにこんなに必要なのか?
   アタシ普段のカッコ全部合わせても1万円いかないぜ」

千奈美「せめて5万円くらいは使いなさいよ。あら?あの子は……」

アヤ「ん?誰か知ってるヤツでもいたのか?」








―デパート内・食器売り場―



ありす「う~ん……」マジマジ

アヤ「よ、ありす。何やってんだこんな所で?」ヒョコ

ありす「わわっ、アヤさん!? 」ビクッ!!

千奈美「普通に声かけなさいよ。ありすが驚いて食器を落としたらどうするの」スタスタ






ありす「千奈美さんもいらっしゃったんですか。こんにちは」ペコリ

千奈美「こんにちはありす。1人なの?」

ありす「はい。桃華の誕生日プレゼントを買いに来たんです」

アヤ「桃華?ああ、キュートのお嬢様か。もうすぐ誕生日なのか?」

ありす「明後日です。だからどうしても今日中に買いたいんですけど、思うような物が
    なかなか見つからなくて……」ウ~ン





千奈美「それでティーカップを見てたのね。だけどこれは高すぎるんじゃないかしら。
     小学生がプレゼントするような物じゃないわよ」

アヤ「どれどれ…… 3万円!? アタシの服全部より高いじゃねえか!? 」ギョッ!!

ありす「やっぱりそうですよね。でも相手は桃華ですから、普通のプレゼントだったら
    満足しないんじゃないかと思って……」

千奈美「高価な物をプレゼントすればいいというものではないわよ。お嬢様相手に上を
     見ればキリがないしね」





ありす「お金を出せばいいって事じゃないのはわかってるんですけど、桃華が気に入り
    そうなものを考えるとどうしても高くなってしまうんです」ハア
    
千奈美「難しいわね。私も考えてあげるから、お茶でも飲みながら話しましょうか」

ありす「いいんですか?千奈美さん達も買い物に来たんじゃ……」

千奈美「いいのよ、私達はそれほど急ぎでもないし。アヤもいいわね?」

アヤ「問題ねえよ、こっちの方が面白そうだし。カップの値段とか全然わかんねえけど、
   アタシもちょっとは役に立つと思うぜ?」








***



―喫茶店―



アヤ「でもありすが桃華の為にそこまで一所懸命になるなんて意外だな。お前らいつも
   ケンカしてるし、そんなに仲が良くないと思ってたよ」

ありす「仲が悪いわけじゃありません。ただあの子は私と同じ歳なのに、私を子供扱い
    するのが気に入らないだけです。神戸生まれのお嬢様だからって偉そうにして
    いい理由にはなりません」ムスッ

アヤ「めんどくせえなお前は。千枝といい雪美といい、クールのチビ達はどうしてこう
   子供らしくないというか、一癖も二癖もあるんだ?」

千奈美「あんたや晴みたいな単純な子もいるじゃない。私達から言わせてもらえば、
     あんた達の方が心配になってくるわよ」





  



アヤ「アタシを晴と同レベルで見るんじゃねえ。でもそういうのって結局、そいつが
   育ってきた環境によるからなあ。紅茶ひとつとっても、アタシは桃華と違って
   ティーセットで飲んだ事ないし」

千奈美「あら、珍しく意見が合うわね。アイドルの勝負ならともかく、普段の生活まで
    対抗心を燃やしても無意味よ。桃華は外見は12歳の女の子だけど精神年齢は
    もっと高いし、同世代の子は幼く見えるんじゃないかしら」

ありす「それもわかってるんです。同じ出身地生まれの同じ歳ですけど、あの子と私は
    住んでいた世界が違いますし、どうしても敵いません。お互いアイドルという
    仕事をしなければ一生話をする事もなかったでしょう」

アヤ「そんなに卑屈にならなくてもいいと思うけどな。確かに桃華はお前を子供扱い
   するかもしれないけど、お前を見下したりはしないだろ?こずえにも優しいし、
   母性あふれる良い子だと思うけどな」






ありす「卑屈になっているわけじゃありません。ただ私は桃華の友達として、あの子と
    対等でいたいと思っているだけです。桃華は私がどんなプレゼントを渡しても
    きっと喜んでくれるでしょうけど、それじゃダメなんです!」バンッ!!

アヤ「お、おう、そうなのか。それじゃびっくりさせてみるとか?箱のフタを開けたら
   カエルのおもちゃがビョーンって飛び出すとか」

千奈美「あんたはどれだけ子供なのよ。外見は19歳でも、精神年齢は9歳みたいね。
    麗奈でももう少しレベルが高いわよ」ハア

アヤ「んだとコラ、ケンカ売ってんのか」ガタ




ありす「いえ、確かに低レベルだと思いますが間違いとも言い切れません。私は桃華が
    想像もつかないようなプレゼントを探しています」

アヤ「ほら見ろ、びっくりさせるで合ってるじゃねえか」フフン♪

千奈美「レベルは低いって言ってるでしょ。話を戻しましょうか。サプライズを考えて
    いるなら、プレゼントを渡すシチュエーションも考慮しないといけないわね。
    桃華は誕生日パーティーをするのかしら?」

ありす「はい。都内にある櫻井グループ経営のホテルで、私達アイドルの他に桃華の
    ご両親や櫻井家の関係者の人達も呼んでささやかな晩餐会をするそうです。
    招待された私の方がサプライズなんですけど……」

アヤ「絶対ささやかじゃねえなそれ。きっと宴会場貸し切ってご馳走が並ぶぜ」






千奈美「主導権は桃華が握ってるのね。そうなるとサプライズを行うのは難しいわね。
    桃華に内緒でホテルの人に協力してもらわないと」

ありす「でも私だけそんな事をすると他の子達に悪いですし、パーティー全体の流れを
    壊さないようなサプライズが理想なんですけど……」

千奈美「それならパーティーの料理を一品作らせてもらうのはどうかしら?料理なら
    パーティーの流れを壊さないし、みんなも一緒に食べられるでしょ」

アヤ「お、いいなそれ。お前料理の仕事してたし、桃華にうまいもん食わせてやれよ」




ありす「ですが桃華は苺パスタが好きじゃないみたいで……」シュン…

アヤ「お前アタシの話を聞いていたか?アタシは『うまいもん』を食わせてやれって
   言っただろ。どうしてそれで苺パスタが出て来るんだよ」

千奈美「あら、あんたはありすの苺パスタがまずいと言いたいのかしら?私は本場の
    苺パスタと遜色ない素晴らしい出来だと思ったけど」ジロリ

アヤ「喜ぶのはお前とお前の地元の人間くらいだよ。こっちに持って来るんじゃねえ」

ありす「苺パスタおいしいのに……」イジイジ






千奈美「大丈夫よありす。桃華とアヤも、いつかあのパスタの素晴らしさが理解出来る
    日が来るわ。それまで翠と布教活動を頑張りましょう」ナデナデ

ありす「千奈美さん…… ありがとうございます……」グス

アヤ「翠も登山家だったのか。一緒にメシを食いに行く時は要注意だな」






千奈美「苺パスタは今度にするとして、桃華の好きな料理とか知らないの?あんたが
    作れなくてもホテルのシェフに手伝ってもらえばいいでしょ」

ありす「桃華は紅茶が好きですから、もしも作るとしたらスコーンやクッキーみたいな
    お茶請けになると思います。ですが紅茶が好きな桃華なら、お茶請けもきっと
    相当こだわってると思いますから私が気軽に立ち入って良いのか……」
    
千奈美「それは料理よりもハードルが高そうね。紅茶のルールは複雑だし……」

ありす・千奈美「「う~ん……」」ムムム…





アヤ「なぁありす、ちょっと聞きたいんだけどさ」

ありす「なんですか?それからありすって呼ばないで下さい」ジロ

アヤ「今更それを言うのかよ。さっきまで普通にありすって呼んでたのに」

千奈美「さっきより冷静になったんでしょ。それで何よ?手短に話しなさい」




アヤ「お前には聞いてねえよ。それでありす、桃華って紅茶しか飲まないのか?」

ありす「ローズヒップティーも好きで飲んでるみたいですけど、お茶請けは紅茶の時と
    あまり変わりませんよ。それがどうかしましたか?」

アヤ「いや、そうじゃなくてさ。アタシは神戸と聞いたら、まずは―――――」




すまない、実は書き溜めここまでなんだ……
明後日までには完成させる。では続きは2日後に。




桐野アヤ(19)
http://i.imgur.com/XgjWJcK.jpg

小室千奈美(19)
http://i.imgur.com/5Ff1uRm.jpg

橘ありす(12)
http://i.imgur.com/FOz5EBc.jpg







***



―4月8日PM7:00・桃華の誕生日パーティー会場ホテルにて―



 ワイワイ ガヤガヤ



小春「おめでとう桃華ちゃん!ヒョウくんも招いてもらって喜んでます~」ニコニコ

桃華「それは良かったですわ。で、ですが小春さん、いつも言ってますがわたくしに
   ヒョウさんをあまり近づけないでくださいまし……」ブルブル

梨沙「イグアナが苦手なら断ればいいじゃない。カッコつけちゃって」フン

桃華「そういうわけにもいきませんわ。ヒョウさんは小春さんの家族ですから」フウ







晴「おい桃華!どうしてオレはタキシード着なくちゃいけないんだよ!」グワッ!!

桃華「あら、ドレスコードは大事ですわよ。晴さんは今日はしっかりわたくしと皆さんを
   エスコートしてくださいまし♪」オホホ

晴「納得いかねえ!なんか納得いかねえ!」ジタバタ!!

莉嘉「でも晴ちゃんドレスいやがるじゃーん☆ アタシは似合ってると思うよ☆」

小春「ヒョウくんもタキシード着てますよ~?晴ちゃんとおそろいです~♪」

晴「そのでっかいトカゲと一緒にすんな!アタシは人間で女だっての!」






梨沙「普段は男っぽいカッコしてるくせに、こんな時だけ女ぶってるんじゃないわよ。
   Pが来るまでしっかり桃華をエスコートしてあげなさい」

莉嘉「Pくんもタイヘンだね~。今日は蘭子ちゃんのバースデーLIVEもやってるし、
   桃華ちゃんの誕生日パーティーに間に合えばいいケド……」

晴「シンデレラガールの蘭子さんと誕生日がカブってるなんて、お前もツイてねえよな。
  まぁPなら遅れても来るだろ。アイツはそういうヤツだ」

莉嘉「晴ちゃん最近Pくんにヤサシイよねー?この前までロリコンロリコンって言って
   Pくんにずっとツンツンしてたのに☆」ニヤニヤ

晴「な!? ば、バカ!そんなんじゃねえし!全然ちげーし!」アセアセ






桃華「殿方を待つのも一興ですわ。晴さんのおっしゃる通り、Pちゃまは約束を違える
   ようなお方ではありませんから」ウフフ

梨沙「ところでPはいいとして、ありすはどうしたのよ?もうとっくにパーティーは
   始まってるのに寝坊でもしてるのかしら?」

小春「そういえばいませんね~?どうしちゃったんでしょう?」

晴「意地っぱりなアイツのことだから、きっと桃華をぎゃふんと言わせるようなものを
  プレゼントしようとして、結局見つからなくてホテルの外で半べそでもかきながら
  うろうろしてるんじゃねえのか?」






櫻井桃華(12)
http://i.imgur.com/bP5HV0t.jpg

古賀小春(12)
http://i.imgur.com/CmeOnF1.jpg

的場梨沙(12)
http://i.imgur.com/VCvGHxi.jpg

結城晴(12)
http://i.imgur.com/n0O1qiL.jpg

城ヶ崎莉嘉(12)
http://i.imgur.com/bsJcyx9.jpg








ありす「誰が半べそをかいているんですか?」スタスタ



莉嘉「あれれー?ありすちゃんどしたのそのカッコ?お仕事の帰り?」キョトン

梨沙「あんた今まで何やってたのよ。コックのカッコなんかして、クッキングの仕事は
   とっくに終わったでしょ?」

ありす「仕事じゃありません。このホテルの厨房で料理をしていたんです。我ながら
    なかなかいいものが出来ました」フフン♪






晴「まさかお前、あの犬のエサを……」

ありす「失礼ですね、苺パスタじゃありませんよ。料理人として桃華が食べたくないと
    言ったものは出せません。いつかおいしいって言わせてみせますけど」ジロリ

桃華「そのいつかは永遠に来ないと思いますわ。ホテルのシェフと一緒に何か作って
   いるとは聞いていましたけど、期待してもよろしくて?」フフ

ありす「はい。ぎゃふんと言わせてあげますから覚悟してください。では私もドレスに
    着替えて来ますからまた後で」ペコリ







 スタスタスタ…



梨沙「……ぎゃふんと言わせるって、良い意味じゃないわよね?」ヒソヒソ

晴「あいつまたとんでもないものを作ったんじゃねえのか?苺のカレーとか……」ヒソヒソ

桃華「大丈夫ですわ。あの子はやる時はやる子ですから。何を作ったのか知りませんが、
   わたくしはありすの料理を楽しみにしています」カタカタ…

小春「桃華ちゃん、手がふるえてるよ~?」






―――



梨沙「ちょっと晴!それアタシが狙ってたピザなんだからね!」

晴「知らねえよそんなの!オレが先にゲットしたんだからオレのだ!」

小春「ふ、ふたりともケンカしたらダメですう~」オロオロ

莉嘉「あはは!おねえちゃんに写メ送っちゃおーっと☆」パシャ







 ギャーギャー アハハハハ…



桃華「もうすぐディナータイムが終了しますが、あなたの料理はいつ出てきますの?」

ありす「食後のティータイムに出て来ます。お茶請けというかデザートですね」

桃華「このわたくしにお茶請けをプレゼントするとは、相当自信があるみたいですね。
   ご存知かと思いますが、わたくしお茶には少々うるさいですわよ?」ギラリ






 ギャーギャー アハハハハ…



桃華「もうすぐディナータイムが終了しますが、あなたの料理はいつ出てきますの?」

ありす「食後のティータイムに出て来ます。お茶請けというかデザートですね」

桃華「このわたくしにお茶請けをプレゼントするとは、相当自信があるみたいですね。
   ご存知かと思いますが、わたくしお茶には少々うるさいですわよ?」ギラリ







ありす「もちろんわかっています。ですが『虎穴に入らずんば虎子を得ず』という諺が
    あるように、成果をあげるなら多少のリスクは承知の上です。そうじゃないと
    サプライズなんて夢のまた夢ですから」カタカタ…

桃華「それは楽しみですわね。ですがありす、わたくしはどんなプレゼントでも喜んで
   お受けしますわよ。ですからあなたももっとリラックスして、このパーティーを
   楽しんでくださいまし」クスクス

ありす「き、ききき緊張なんてしません!わわわわ私はいつも通りです!」カチコチ







司会『それでは皆様、食後のお茶とデザートをお楽しみ下さい。本日は桃華お嬢様が
   選ばれたお気に入りのお茶を多数取り揃えております。お茶請けのデザートも
   豊富にご用意していますので、どうぞお茶に合わせてお試し下さい』



 ゴロゴロゴロゴロ…… 



桃華「あら?あのワゴンは何でしょう?上に載っているのは…… 蒸し器?」

ありす「私も蒸し器だと思っていましたけど、正しくは『せいろ』と呼ぶそうですよ。
    ホテルにあるもので一番大きいのを使いました」

桃華「あれがあなたが作った料理ですの?まさか蒸し料理だとは思いませんでしたわ」

ありす「驚くのは中を見てからにして下さい。さ、行きますよ」スタスタ










―――



晴「これ中に何が入ってるんだ?イメージ的に肉まんか?」マジマジ

梨沙「デザートに肉まんはおかしいでしょ。蒸しパンとかじゃない?」

莉嘉「あまーいニオイがするよー?お菓子が入ってるんじゃないかな☆ 」クンクン






P「すまん遅くなった!食後のデザートには間に合ったみたいだな!」バタバタ



晴「おせーよP!もうパーティーはほとんど終わってるっての!お前が来なかったせいで
  オレは今日ずっとこんなカッコするハメになったんだからな!」グワッ!!

P「似合ってるじゃないか晴。そういう路線で売り出すのもアリだな」マジマジ

晴「ねーよ!人を着せ替え人形にして遊ぶんじゃねーよ!」ウガー!!






桃華「お待ちしていましたわPちゃま。本日はお仕事がお忙しい中、わたくしの誕生日
   パーティーに来てくださってありがとうございます」スタスタ

P「遅れてごめんな桃華、そのドレスよく似合ってるぞ。まるで本物のお姫様みたいだ」

桃華「Pちゃまに褒めて戴けると嬉しいですわ。それにちょうど良いタイミングで来て
   下さりました。今から本日のサプライズイベントですわよ」ニッコリ

P「サプライズイベント?そんなのがあるのか?」





桃華「そのせいろの中には、ありすがわたくしの為に作ってくれた料理が入ってます。
   それを今から開けるところですわ」

P「ありすが?まさかあの犬のエサにもならない……」

ありす「失礼ですね。あれから改良を重ねて苺パスタは格段に美味しくなったんですよ?
    今度Pさんにも食べさせてあげます」イラッ

P「じょ、冗談だって冗談!いや~、中にどんな料理が入っているのか楽しみだな~!
  ありすが作った料理ならきっと可愛いんだろうな~!」アセアセ

桃華「さて、何が入っているのやら。では……」パカッ






晴・小春・梨沙・莉嘉・P「「「「「 おお~…… 」」」」」

桃華「こ、これは………… 」

ありす「『桃饅頭』です。中国では寿桃包(スーパオタイ)と呼ばれているそうです。
    桃は中国では縁起物の果物で、おめでたい席で食べられるそうなので桃華の
    誕生日パーティーにぴったりだと思いました。温かいうちにどうぞ」



~~~



アヤ『アタシは神戸と聞いたら、まずは元町の中華街をイメージするけどな。桃華は
   飲茶とか点心とか興味ねえのか?あれだったら紅茶みたいにそんなに堅苦しく
   ないし、肩肘張らずに楽しめると思うけど―――――』





桃饅頭(寿桃包)
http://i.imgur.com/5dy7O7G.jpg






***



莉嘉「すごーい! チョーカワイー☆ これありすちゃんが作ったの?」パシャ パシャ

ありす「私は生地をこねたり飾りの葉っぱを作ったりしたくらいですけど。あ、最後に
    ピンクの色付けもお手伝いさせてもらいました」

晴「お前まともな料理も作れるんだな。意外だったぜ……」パクパク

ありす「苺パスタがまともじゃないと言いたげですね。今度食べさせてあげます」

晴「い、いや、遠慮する…… うまいな小春!」

小春「ヒョウくんにも食べさせてあげたいです~♪」パクパク









 ワイワイ… ザワザワ…



梨沙「すごい人気ねあんたの桃饅頭。アタシ点心ってクセがあるからあんまり好きじゃ
   なかったんだけど、これは美味しいわ」パクパク

ありす「点心のあんは松の実やラードを入れますから、日本のあんこを食べ慣れてると
    口に合わないって人もいるそうですね。今回は軽く食べられるように、油類は
    最小限にしておきました。風味は残っていると思いますが……」チラ

桃華「…………」パク







P「ど、どうした桃華、さっきから静かだが……」オロオロ

ありす「……どうやら桃華は好きじゃなかったみたいですね」シュン

桃華「いえ、驚きで言葉を失ってましたの。昔の事を思い出していましたわ……」フフ…

ありす「え……?」ピク

桃華「懐かしいですわ桃饅頭。一度食べてみたかったのにもう少しの所で食べられず、
   それっきり食べる機会を失っておりましたが、まさかこのような場所でめぐり
   逢うとは思いませんでした」フフ…

P「食べられなかった?どういう事だ?」






桃華「お恥ずかしい話ですわ。幼い頃ですが、わたくしは毎日の習い事に嫌気がさして
   家出をした事がありますの。そして中華街に逃げ込みました」

晴(幼い頃って、今も幼いじゃねえかってツっこんだら負けか?)ヒソヒソ

梨沙(くだらないこと言ってるんじゃないわよ。黙って聞きなさい)ヒソヒソ

桃華「中華街を彷徨ってお腹をすかせたわたくしは、たまたま目にした美味しそうな
   桃饅頭に心を惹かれて食べようとしましたが、もう少しの所でSPに見つかり
   連れ戻されました。そしてお父様とお母様に叱られて、それっきりわたくしは
   中華街に行く事も桃饅頭を食べる事もありませんでした」






ありす「嫌な事を思い出させてしまいましたか……?」

桃華「そうではありません。今となっては良い思い出ですし、桃饅頭もいつか食べて
   みたいと思っていました。ですが月日が経つにつれて、いつの間にか桃饅頭の
   ことをすっかり忘れていましたわ」クス

梨沙(月日が経つって、アンタ子供だしまだそんなに経ってないでしょ)ヒソヒソ

晴(うるせーよ、黙ってろ)ヒソヒソ

莉嘉「あははー☆ 桃華ちゃんもワルだったんだね☆ アタシもママにスッゴク怒られて
   家出したコトがあるケド、お姉ちゃんがさがしてくれたっけなー☆」

小春「みんな心配しますからダメですよ~?」






桃華「ふふふ、そうですわね。ですがあの時家出をしたから、今日こうして驚きと共に
   桃饅頭と再会出来たと思うと感慨深いです。ありす、本日はわたくしに桃饅頭を
   作ってくれて本当にありがとうございました」ペコリ

ありす「お、大げさですね、おいしいならおいしいって言ってください」カアア

桃華「とても美味しかったですわ。それともぎゃふん、と言った方がよろしくて?」クス






P「よかったなありす、サプライズは大成功じゃないか」ニコ

ありす「当然です、私の料理は完璧ですから。あとありすって呼ばないで下さい」フンス

桃華「Pちゃまにも感謝致しますわ。わたくしをアイドルにスカウトしてくださって、
   素敵な友人達と出会わせて戴いて本当にありがとうございました。これからも
   わたくしのプロデュースとエスコートをお願い致しますわ―――――」








***



―同日PM7:00・都内のとある高級レストラン前にて―



千奈美「よかったのあんた?ありすに自分の誕生日も今日だって言わなくて」コソコソ

アヤ「別にいいんだよ。あいつは桃華のプレゼントの事で頭がいっぱいになってたし、
   余計な気を遣わせたくなかったからな」コソコソ

千奈美「それもそうね。それに余裕がなかったのはあんたも一緒だし」クス

アヤ「そういう事だ。それで千奈美、そこから中に誰が居るか確認できるか?」







千奈美「ちょっと待って。ええと、あいさんと千夏さんと…… 千秋さんも来てるわね。
    みんな最新のファッションに身を包んであんたが来るのを待ってるわよ。他に
    お客さんはいないし、どうやら貸し切りみたいね」ヒョコ

アヤ「はぁ、やっぱり体調不良って事にしてフケようかな……」

千奈美「あのメンバーの誘いを断れるのあんた?私だったら絶対に無理だけど」

アヤ「アタシも無理だっつーの。レッドバラードでアタシの誕生日を祝ってくれるって
   言われたけど、どう考えてもオモチャにされる展開しか予想出来ねえ。アタシに
   女としての心構えを徹底的に教育してやるって楽しそうに言ってたし、こんなに
   気が進まない誕生日パーティーは初めてだぜ……」ガックシ






千奈美「あんたが泣きついてきたからとりあえず防衛策として全身コーディネートして
    あげたけど、ファッションセンス最高水準のあの人達の前ではまったく無意味
    だったわね。あいさんもスカートを履いてるし、あれは本気を出してるわ」

アヤ「いつも男みたいなカッコしてるのに、女のファッションも普通に着こなせるとか
   反則だろあの人。あいさんまであっちに回ったら、もう誰もアタシのフォローを
   してくれる人がいねえよ……」ブツブツ

千奈美「ぐずぐずしないでさっさと行きなさい。どうせ行かなくちゃいけないんだし、
    あの人達を待たせると後が怖いわよ。礼子さんはまだ来ていないみたいだし、
    いい加減に覚悟決めなさいよ」グイグイ

アヤ「ちょ、押すなって!アタシにも心の準備ってもんが……」グイグイ






礼子「こんなところで何を騒いでいるのあんた達?」スタスタ



アヤ「ひっ!? 」ビクッ!!

千奈美「こんばんは礼子さん。アヤが遅くなってしまってすみません」ペコリ

礼子「あら千奈美、あんたもアヤの誕生日パーティーに来たの?」

千奈美「いえ、私はアヤをここまで引っ張って…じゃなくて道案内をしただけですから
    ここで失礼します。皆さんで可愛がってあげて下さい」

アヤ「ち、千奈美ぃ~……」ウルウル

千奈美「ほら、情けない顔しない。主役が行かないとパーティーが始まらないでしょ。
    今日は礼子さん達にしっかり祝ってもらいなさい」ポン





高橋礼子(31)
http://i.imgur.com/kI3WyLV.jpg





礼子「……よかったらあんたも来る?千奈美」

千奈美「え?」

礼子「一応Pの席も予約しているけど、あいつ今日は蘭子のバースデーLIVEと桃華の
   誕生日パーティーを回ってからこっちに来るって言ってたから遅くなると思うわ。
   空席があるのは嫌だし、Pの代わりに参加してくれないかしら?」

千奈美「ですがレッドバラードと無関係の私が出席するわけには……」

アヤ「問題ねえ!全っ然問題ねえよ!同じクールだし無関係じゃねえよ!」グワッ!!






礼子「ほら、主役もこう言ってるし遠慮しなくていいわよ。あんたも来なさい」クス

千奈美「それじゃお言葉に甘えて…… くっつかないでよアヤ、暑苦しいわ」グイグイ

アヤ「ありがとう…… マジでありがとう……」グス






礼子「普段のアヤの様子を詳しく教えてくれないかしら。この子と仲の良いあんたなら
   よく知ってるでしょう?アヤは服装だけじゃなくて、生活態度から見直さないと
   教育する意味がなさそうだしね」ニヤリ

千奈美「もちろん協力させてもらいます。私も楽しみですから何でも聞いてください」ニヤリ

アヤ「…………え?」



―――――こうしてアヤは大きな着せ替え人形として、レッドバラードの面々と千奈美の
     オモチャにされた。なお、それらの着せ替え衣装(総額200万円超)は、全て
     アヤの誕生日プレゼントになりましたとさ



おわり









 ここまで。桃華と蘭子とアヤ誕生日おめでとう!しかし自分で読みなおして「なんだ
この美味しんぼ的展開w」と思ってしまった。桃饅頭は機会があれば食べてみて下さい。
わざわざ中華街に行かなくてもたまにデパートで見かけますよ。(桃饅頭のステマ)
 蘭子も桃華も人気の高いアイドルなので、総選挙ではアヤに頑張って欲しいなあと
思います。ついでにきりのんこむろんが流行りますように。では





あ、それから>>31>>32重複です。すみません。

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