不良女「金よこせよ」男「貸すだけなら」 (338)

不良女「ふぅ……」ガララッ

男「……!」

不良女「おや、これはこれは」

男(……委員会で帰るタイミングを逃したらまずいことになった)

不良女「へ~え、珍しい顔が残ってるもんだな。しかも一人でかわいそうに」

男「ど、どうも……こんにちは…」

男(よりによって財布がパンパンの日にこの人と目が合うなんて!やっとここまで貯まったのに!)

不良女「うーす。いつものバカっぽい方はどうしたんだよ?」

男「へ…あ、あいつはバイトがあるとかで、先に帰りました…」

不良女「なあんだよ。あっちの方が羽振り良さそうだってのに、しょうがねえなあ……」

男(ううぅ……こっちに歩いてきた…!)

男「そ…そう言う不良さんだって、今日は珍しく、一人じゃないですか」

不良女「……ああ、薄情なもんだねえ。皆あたしを置いていくとはさ」

男「じゃあ僕はこれで…」

不良女「待ちな」ガシッ

男「ぐあっ」

不良女「仮にもクラスメイトなんだ。あたしの言いたいこと、わかるだろ?」ギリギリ

男「いえ…何でしょうか……?」

不良女「今、いくら持ってんだよ?あ?」グイッ

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男「ひいいい…っ」

不良女「おら。財布出せよ」

男「い、嫌です……」ブルブル

不良女「ん??」ニコッ

男「だ、出します……!」コクコク

不良女「よし、いい子だ」ヒョイ

男「はぁ……はぁ……」

不良女「くふふっ。お前、女相手にビビりすぎ。サイコーに笑える表情してたぜ」

男「だって…不良さん…怖いんですもん……」

不良女「そうだろうそうだろう。わかったら金、よこせよ」

男「嫌です」

不良女「あ?」

>>1「さっ、3万です!!だから男は見逃してください!orz」

男「>>1!!お前!」

男「ひいいいっ」

不良女「お前……今、なんて?」ガシッ

男「うう……」ウルウル

不良女「あたしの聞き間違いじゃねえよな……もう一度言ってみろよ。なあ」

男「嫌……です……」

不良女「そりゃあ嫌だろう。喜んで金渡す奴がいるんならそいつん所行ってるよ」

男「……」

不良女「とりあえず財布出しな。痛い目見る前に」

男「うう……」

不良女「財布ごと盗りゃしねえよ。いくら持ってるかだけ見せてみな」

男「はい……」

不良女「こいつは驚いた」

男「……」

不良女「お前、不用心にも程があるぞ。どこの世界に10万財布に入れて登校する高校生がいるよ?」

男「だから、嫌だって……」

不良女「何か……入り用なのか?」

男「はい…」

不良女「言ってみな」

男「ギター、欲しくて……」

不良女「は?」

男「欲しいギターがあって…やっと先週貯まったんです。10万円。で、やっと今日手に入るって、思ってたのに……」

不良女「あたしに捕まったってか」

男「……」

不良女「そりゃあついてない一日だな。ご愁傷さま」

男「えええ…」

不良女「もうちょっと泣ける話だったら、あたしも考えたけどな。お前がギターを手に入れられなくてもあたしには関係ない」

男「だ、だったら」

不良女「ん?」

男「貸すだけ、なら……いいですよ?」

不良女「そうか。永遠に借りといてやる」ギュム…

男「い、あ、あ……」ギチギチ

不良女「なめてんのかお前?」

男「いい、え…」

不良女「まあ、肝っ玉だけは認めてやるよ」

不良女「そんな顔するなよ。痛くはしてないはずだぞ」

男「怖いから……」

不良女「失礼な奴だな。一応あたしも女なんだけど?」

男「僕より大きいじゃないですか!」

不良女「うっせーチビ。大抵の男子はお前よりデカいだろうが」

男「うう……」

不良女「安心しろ。肝っ玉はデカいって、今言ったろ?そっちの方が男には大事だ」

男「ありがとうございます……」

不良女「ほう。カツアゲされて礼を言うとは、律儀な奴だねえ」

男「お金ならあげませんよ」

不良女「まだ言うのかてめえ」

男「大体、なんでそんなにお金が要るんですか」

不良女「女という生き物は金がかかるのだよチビ助くん」

男「……」

不良女「お前も知ってんだろ?あたしが援交してること」

男「……噂程度には」

不良女「うんうん、よろしい。でさあ、制服で行くとやっぱ、足がつくじゃん?最近は色々とうるさいのよ世間の目が」

男「はあ」

不良女「で、水商売風の服が何着も要るって訳さ」

男「お金が欲しいんならカツアゲだけで充分じゃないですか」

不良女「甘いね。皆が皆、お前みたいに大当たりって訳じゃねえよ。この間の奴なんか小銭すら満足に持ってなかった」

男「……」

不良女「旨味があんのはやっぱりこっちだね。売るモンあるなら売らなきゃ損だろ?」

男「それなら……なおさら渡しませんよ」

不良女「そうか。お前には泣ける話に聞こえたか?」

男「別に、そこまでじゃないですけど」

不良女「なら結構。下手に可哀想なものを見る目で見られたくはねえからな」

男「可哀想だとは思います」

不良女「なんだよ。がっかりだ」

男「不良さんの親御さんが」

不良女「おおっと、これは驚いた」ガシッ

男「……」ビクッ

不良女「言うねえ。あたしに肝っ玉褒められて、いい気になったのか?あん?」

男「せっかく綺麗に産んでくれたっていうのに、よくそんなこと出来ますね。似合いませんよ」

不良女「……あたし、綺麗かな?」

男「僕はそう思います」

不良女「残念ながら言われ慣れてる。嬉しいとは思わないね」

男「そうですか。僕は言い慣れてないんで、緊張しました」

不良女「ほう」ジー

男「……っ」

不良女「お前みたいなのは相手したことないからな。新鮮だよその反応」

男「そう……ですか」

不良女「ああ。照れてんのか?」

男「はい……」

不良女「お前……女はいないのか?」

男「……はい」

不良女「ふーん。だろうな。チビだもんなお前」

不良女「じゃあお前は今、人生で最もセックスに近い状況にある訳だ」

男「やめて下さい」

不良女「2万で相手してやるよ。今ここで。どうだ?お前もあたしもハッピーになれる」

男「……」

不良女「Win-Winってやつだな」

男「……」

不良女「ああ、でもそれだとギターが買えなくなるのか。うーん、参ったな…」

男「不良さん」

不良女「うん?」

男「不良さんの話術に負けました。1万円あげるので、帰らせて下さい」スッ

不良女「え、いや」

男「それじゃあ」ダッ

不良女「……」



不良女「……嫌われちゃったかなあ」

えつえつえつえつえつ??

男(噂には聞いてたけど、やっぱり本当だったんだ……わかってたとは言え聞きたくなかったよ)

男(それにしても、1万円は大きかったよなあ……店員さん、まけてくれるかな?それとも一つ下のグレードのを買おうか…)

男(……いや、やっぱりあれがいい。そのために今まで我慢してきたんじゃないか)

男(ひとまず財布の中身を確認して、これからの計画を立てよう)

男「んしょ……」

男(いち、にい、さん……?)

男「え……」

男(もう一回数えても……)

男(……ちゃんと10枚ある。どうして?もしかして、僕は間違えて…)



不良女「……どう見ても0が一つ少ないよな」

不良女(あいつなりのジョーク、いや……何かのメッセージか?)

【翌日】


男(僕は今日殺される…僕は今日殺される……)

男(死ぬ前にあのギターに触れて僕は幸せでした……神様…)

友「ひどい顔色だな、お前。大丈夫か?」

男「あ、ああ、おはよう。えーと、僕は全然平気だよ…?」

友「さてはお前、アレを手に入れたもんだから嬉しくて眠れなかったんだろ?夜通し弾いてたのか?」

男「い、いや嬉しすぎて、どうしていいかわかんなくて、結局チューニングして寝ちゃった」

友「なんだそりゃ。もったいね。せっかくの初夜を」

男(初夜……そうか、僕はそれを迎えられないまま死ぬのか?清い身体のまま死んじゃうのか?)

友「やっぱり調子悪そうだぞ。……思ってたのと違ってショック!とか?」

男「ある意味ではそうかも……」

男(一体どうして僕は1万円札と千円札を間違えたんだろ……普段ならあり得ないよ)

男(こんなに憂鬱な昼休みは初めてだ)

男「はぁ……」チラッ


不良女「……」ペチャクチャ

側近「……!」ペチャクチャ

参謀「……」ボソ


男(不良さん、ひょっとして気付いてない……ってことは無いよなあ…)


不良女「……」

側近「……!!!」ゲラゲラ

参謀「……」ケタケタ


男(様子はいつも通りか)

男(とうとう放課後を迎えてしまった)

友「じゃあお先~。今日は無理しないで早く寝ろよ」

男「あ、うん、ありがと。お疲れー……」

男(でも僕の戦いはこれからなんだよ友……)

男(どうしよう。僕から対面しに行くか、向こうが来るのを待つか……しらばっくれるのも手だけど、そうしたら余計怒らせちゃうかもしれない)

男(そもそも一対一で会ってくれるかな?あの3人で僕をボコボコにするつもりかも……)

男(そうなったら僕に手段は)

不良女「おい」

男「はいっ!」

男(きっ、来たっ!!)

不良女「昨日ぶりだな。今日も一人なのかよ?さみしいやつ」

男「そういう不良さんも……一人みたいですね」

不良女「みたいって何だ。どう見てもあたし一人だろうが?」

男「ええ、よかったです……」

男(なんだか怒ってないみたいだ。よかった。本当に気付いてないのかな?)

不良女「で、欲しいモノは買えたのか?」

男(そんな訳ないよね)

男「あ、え…えーと」

不良女「金は足りてたようだし、さぞかし素敵なお買い物が出来たんだろうねえ?」

男「すみませんでした!でも、そんなつもりは無くって!僕は1万円札を渡したつもりだったんですが、僕は緊張してたみたいで!自分でもよくわからな」

不良女「落ち着けよ」

男「っ……」

不良女「お前、あたしが怒ってると思ってんのか?」

男「違うんですか?」

不良女「怒ってたら一人では来ない」

男「よ、よかったー……」

不良女「まあお前みたいなモヤシ男、あたし一人でもオーバーキルだろうけどな」

男「……そうかもしれませんね」

男「昨日はすみませんでした」

不良女「いいんだ。あたしもつまらない話をしてしまって申し訳なかった。忘れていいぞ」

男「それは……難しいですね」

不良女「お前には刺激が強すぎたか?」

男「はい…」

不良女「忘れさせてやることも出来なくはないが、どうだ?試してみるか?」

男「痛いことですか?」

不良女「痛みを感じる前に気を失うほど痛い。あたしも食らったことがある」

男「やめておきます」

不良女「そうだな。賢明だ」

男「……いつ食らったんです?」

不良女「忘れるほど昔だよ」

男「あの、今日は何もしないんですか?」

不良女「ああ?して欲しいのかよ?」

男「そうじゃなくて……だったら何で僕なんかに話しかけたのかなって」

不良女「ああ、そうだったな。これを渡しにきたんだ」

男「?」

不良女「んー、ちょっと待て。これだ」

男「昨日僕が間違えて渡した千円札……ですか?」

不良女「おう」

男「ちょうどよかった。僕もどうにかして1万円を工面したんです……」

不良女「おいおいおい、そうじゃない」

男「え?カツアゲし直しに来たんじゃないですか?」

不良女「あたしがそこまで悪い女に見えるかよ?」

男「見えます」

不良女「見えるな。そりゃな……」

不良女「つーか、お前はそれでいいのかよ?」

男「間違えたのは僕ですし、不良さんも予定が狂っちゃったかな、と」

不良女「……お前、あれだな。いつか痛い目に遭うぞ」

男「そうですね。もう遭ってます」

不良女「ああん?」ガシッ

男「すみませんっ」ビク

不良女「……いいんだよ。そんなつもり無え。ほら、これとっとけ」

男「元は僕のお金ですけど」

不良女「んだけどくれたのはおめえだろうが!」ビシッ

男「ひいっ!」

不良女「ったく、ウジウジしやがってこのヤロー……」

男「でも返してくれるなんて、意外ですね」

不良女「ふっふっふ。誰が"返す"っつったよ?」

男「え……」

不良女「お返しに"やる"って言ってんだよ」

男「あの、何のお返しなんですか?」

不良女「そいつはな……今から頼みごとを聞いてくれないか?」

男「え」

不良女「お前に断る権利は無えぞ?貰うもん貰ってんだからなあ?」

男「……鉄砲玉とかは嫌ですよ…!」

不良女「お前みたいなモヤシに頼まねえよんなもん」

男「よかった」

不良女「まあ値段相応のお願いよ」

男「それなら構いません」

不良女「頼みってのはな」

男「はい」

不良女「……あたしを、その…」

男「?」

不良女「お前なりに、ちょっとでいいからさ……褒めてくれないか?」

男「……」

男「はい!?」

不良女「んだよ!?」

男「それ、千円分のお願いですか…?」

不良女「そーだよ……」

男「タダでも頼まれますよ?それくらい」

不良女「だったら千円分褒めろ」

男「は、はい。でも……」

不良女「ほ、ほ、褒めるとこ無いとか、言うんじゃねえぞこのヤロー……!」

男「あの……何かあったんですか?」

不良女「ねえよ。何も……」

男「……」

男(どういう意図だろう?)

不良女「……」

男「……」

男(この場面を抑えて笑い者にするとか…)

不良女「……」

男(いや、そういう趣味の悪いことをするような人じゃないし)

不良女「……なあ、褒めるとこ、無いか?あたし……」

男「あります!あるけど予想外すぎて、なにがなんだか」

不良女「まあ、どうしても無いんならそれでいいよ……」

男「ちゃんとありますから聞いて下さい」

不良女「うん……」

男「不良さんは」

不良女「うん」

男「キャラクターがはっきりしてて」

不良女「まあ、そうだな」

男「自分のやりたいように生きてて」

不良女「うん」

男「時間を自由に使ってて」

不良女「……ただ遅刻魔なだけだ」

男「賑やかで」

不良女「声がでかいだけだ」

男「何でも美味しそうに食べて」

不良女「!?…なーに見てんだよオラぁ!」ギリッ

男「すみませんっ!」

不良女「ああ、悪い。つい……続けろ」

男「楽しそうな仲間がいて」

不良女「まあ退屈はしないね」

男「意外と優しくて」

不良女「そうか?」

男「今日はそう思いました」

不良女「そりゃどうも」

男「あとは……」

不良女「話の途中で悪いんだけどさ」

男「はい」

不良女「なんか……嬉しくない」

男「え…それは僕のせいですか?」

不良女「自分で考えろ馬鹿」

男「は、はい」

不良女「もっとこう……女が喜ぶようなことは言えねえのかよ?」

男「でも昨日は言われ慣れてるから嬉しくないって」

不良女「ああ!?誰が言ったよンなこと!!?」

男「ごめんなさいっ!!」

男「不良さんは……とっても素敵です」

不良女「ふふん。まあな」

男「黙っていれば」

不良女「あ?」ガッシ

男「いててっ……そういうとこですっ!」

不良女「……慎むよ」

男「今みたいな、時折見せるしおらしい表情は良いと思います」

不良女「~っ……!」

男「嫌でしたか?」

不良女「そういうリアルに恥ずかしいのはやめろ……」

男「リアルに恥ずかしがってる姿も素敵です」

不良女「だあああああ!」

男「それは素敵じゃないです」

不良女「うう、う……もうヤメロ……」

男「もういいんですか?」

不良女「昨日みたいな褒め方……まだしてないだろ」

男「でも嫌なんでしょう?」

不良女「嫌じゃねえよ……だから、言え」

男「……改まると照れますね」

不良女「ああ、いいから言え」

男「綺麗です」

不良女「くう」

男「言いましたよ?」

不良女「どこが!」

男「はい?」

不良女「どこが綺麗なのかも言え。千円分ちゃんとだ」

男「え、あの…えーと」

不良女「言うだけなら簡単だからな。説明して欲しいんだ。嘘じゃないってこと……頼む」

男「僕は……不良さんの、髪が綺麗だと思います」

不良女「……髪」

男「はい。染めてるんですよね?」

不良女「今はな。流石に地毛が金髪の日本人はいねえよ」

男「金髪が似合うのって、すごいと思います。大抵の人は髪だけ浮いちゃうのに」

不良女「……」

男「何で違和感を感じないんでしょうね?」

不良女「……あたしが派手な顔してるからか」

男「それは化粧のせいなんじゃ」

不良女「ああ?化粧なんざ生まれてこのかたしてねえよ。ぶっ飛ばすぞ」

男「え!?」

不良女「なんだ。援交の噂は聞いてるくせにこっちは知らなかったか。珍しいなあ、おい?」

男「は、はい…」

不良女「…マジで知らねえのか?悪気は無いんだな?」

男「何の話です?」

不良女「そうか。ならいいんだ。でも、今後あたしに化粧の話はしない方がいいぞ。わかったな?」

男「はい。肝に命じます」

不良女「よし」

男「……あの、まだ褒めた方がいいですか?」

不良女「自分で考えろっつってんだろ。てめえは犬かよバカ」

男「すみません」

不良女「すぐ謝るんじゃねえ!!腹立つな、くそ」

男「じゃあ、もう……今日は勘弁して下さい」

不良女「何だ。用事でもあったのか?早く言えよ」

男「いえ。もう心臓が色んな意味で持ちそうにないんです……」

不良女「……そうか」

男「はい……あの、千円、ありがとうございました…」

不良女「だから、もともとお前のだろうが。人が良すぎんぞ」

男「そうですかね」

不良女「そうだ。不良に目付けられるタイプだ」

男「あー……」

不良女「……」

男「じゃあ、僕はこれで失礼します」

不良女「ああ。じゃあな。ありがとよ」

男「……」ペコリ

不良女「……」

不良女「……はぁー……」

男「ハァ……ハァ、はぁっ」タッタッタ

男(いやあああああああああ、怖かったよおおおおおおお)

男(何あの人!何あの人!)

男「はぁー……ゲホッ、ゲホッ」ゼーゼー

男(何あの人!!)

男「……」

男(命は助かったけど、それ以上に寿命が縮んだ気がするよ……色んな意味で)

男(不良さんの殺気は怖いし、女の子をあんなに喜ばせようとしたことは無いし……)

男「……」

男(……そもそも不良さんは女の子と呼べるのかな?格好はともかく喋り方とか素行は……)

男(僕より男らしいかも)

男(でも……思ってたより優しい人だな。お金は返してくれたし。暴力も……ちょっとは振るってきたけど)

男(多分もう…僕を狙うことは無いだろう。こんなお得感の無い相手)

【翌日】


不良女「よお、また居残りか?人は見かけによらないとはよく言ったもんだな」

男(げっ…!何で来るんだよこの人……!)

男「委員会の仕事があるんです。行事の前後は忙しくて」

不良女「くっだらね。やめちまえよそんなもん」

男「そういう訳にはいきません」

不良女「お前……そういうの、やりたくてやってんのかよ?」

男「まあ、そうですね」

不良女「ふうん。変な奴」

男「不良さんには言われたくないです」

不良女「なんだと」

男「冗談ですよ」

不良女「……面白くねえ冗談は冗談って呼べねえな」

男「すみません」

不良女「すぐ謝る癖、治せよ馬鹿野郎」

男「面倒に巻き込まれるよりは謝った方が得なんですよ。みんなそうしてると思いますけど」

不良女「ほお。あたしとのおしゃべりは面倒っておっしゃいますか。悪うございましたね」

男「……そんなこと言ってません。でも、不良さんに胸ぐらを掴まれるのは…ちょっと」

不良女「……ああ。それこそあたしの悪い癖だったか。悪かったな」

男「いえ。いいんです」

不良女「ん」

男「……」カリカリ

不良女「……」

男「……」カキカキ

不良女「ふぁ……あ」

男「……」

男「……帰らないんですか?」

不良女「あ?帰って欲しいか?」

男「その言い方は語弊があります。でも、僕の作業なんか見てもつまらないでしょ?」

不良女「まあな。見るからに面白くねえな」

男「だったら、どうして僕のところに」

不良女「お前に用があるからだよ」

男「カツアゲですか」

不良女「いや。あたしもそこまでワルじゃない」

男「それは良かった」

不良女「ま、まあ、カツアゲとは違うんだけどよ」

不良女「お前……あたしの髪、綺麗って言ってたろ?」

男「は……い?」

不良女「……」

男(半分言わされたんだけどな)

不良女「だから……よ」

不良女「触らせてやる、よ…」

男「はい!?」

不良女「おっと!タダでとは言わねえぜ!自分を安売りはしたくねえからな!」

男「……」

不良女「千円。で、どうだ?」

男「……」

不良女「……高いかな?」

男「いや……安いくらいだと僕は思いますけど」

不良女「へへっ。言ってくれるねえ」

男「でも買いません」

不良女「あ?」

男「それって……そういうことでしょう?」

不良女「お前……怖いもの知らずだな」

男「怖いですけど、でも僕はやっぱり、そういう男にはなりたくないんで」

不良女「……」

男「他をあたって下さい。気にいらないなら、別に殴っても……いいですよ?」

不良女「……」

男「すみません」

不良女「あ」

男「……?」

不良女「あたしの髪が触れないって、言うのかよ…」

男「そういう訳じゃ」

不良女「だったら触れ」

男「……」

不良女「お前、タマついてんのかよ」

男「多分」

不良女「……腰抜け」

男「……」

不良女「……いや、腰抜けではないな。悪い」

男「お金、要るんですか?」

不良女「まあな。ああ、財布、忘れちまったんだよ。今日」

男「それを早く言って下さいよ」

不良女「信じてくれないと思って」

男「千円、要るんですか?」

不良女「ああ。雑誌を買おうと思ってたら、財布を忘れた」

男「……はい」

不良女「……」

男「貸してあげるだけですから、いつか返して下さいよ」

不良女「……ん」

男「当てにはしてませんけど」

不良女「むう……」

男「もう僕相手に商売はやめて下さいね」

不良女「……うん」

男「じゃあ、僕はこれで」

不良女「待てよ」

不良女「礼、言ってねえだろ」

男「いいですよ。そんなの」

不良女「だから、触れよ。髪」

男「……」

不良女「売春とは違うぞ。お礼だお礼」

男「……」

不良女「お礼は受け取るのが礼儀ってモンだろう?」

男「……」

不良女「あたしはこれくらいしか礼できねえし」

男「はぁ……」

不良女「ほら」

男「……それもそうですね」

不良女「うんうん。お前は正しい」

男「じゃあ、ちょっとだけ」

男「……」ソッ

不良女「んっ」

男(すごい……サラサラだ…)

不良女「……」

男「……」スーッ…

不良女「どーだ?」

男「綺麗です」

不良女「そうだろう」

男(しかし……本当に黙っていれば、普通の人だよなあ。しゃがめば僕より小さいし)スーッ

不良女「……っ」

男(それは当たり前か)ナデ…

不良女「お前……本当は触りたかったんじゃないか?」

男「……少しは」ナデナデ

不良女「ん……正直でいい」

男「どんな感じですか?」ナデナデ

不良女「悪くねえよ」

男(今までどんな人がこの髪に触れてきたんだろう)ワシャ

不良女「……」モジモジ

男(色んな人がいたんだろうな。噂だけど、辞めていったあの先生とか……会ったこともないおじさんとか)サラー

不良女「……ぅぅ」

男(そういうのを考えると……ダメだな)

不良女「……」

男「手入れ、ちゃんとしてるんですね」ナデナデ

不良女「おう。そりゃもう大変よ。雨の日とか、体育の日は特に」

男「もっと大雑把な人かと思ってました」ナデナデ

不良女「ま、商売道具だしな」

男「……」

不良女「冗談だよ」

男「面白くないです」

不良女「ふふ。だろう?さっきのお前と一緒」

男(また帰りが遅くなっちゃった)

男(おかげで仕事が全く捗らなかったし…)

男「……」ドキドキ

男(腹が立つのがこのドキドキだよ!不良さんの頭に触っただけなのに)

男(そりゃ……女の子に耐性はあんまり無いけどさ)

男「……」

男(女の子、ねえ……不良さんが?)

男「……」

男(僕の想像する女の子って、もっとこうお淑やかで、笑顔が可愛くて、ちっちゃくて……)

男(そのはずなんだけど……)

男(…不良さんとは真逆だな)

男「クスッ」

男(って言ったら怒られるだろうなあ……)

【翌日】


不良女「うーっす」ドカ

男「……どうも」

不良女「どうしてそんな嫌そうな顔するかねえ」

男「してました?」

不良女「してるね。今も」

男「すみません」

不良女「つまんねえな。ビビってる顔の方がよっぽど面白い。もう怖くねえのかよ」

男「何がですか?」

不良女「あたしが」

男「そう悪い人じゃないみたいなんで」

不良女「あ?何言ってんの?悪いぜ?」

男「まあ机の上に座るのはどうかと思いますけど……その程度でしょ?」

不良女「このくらいでネチネチ言うなようっせーなあ」

男「別に気にしてませんけど、一応これは僕の机ですから」

不良女「何も上に乗ってねえってことは、あたしに座って下さいっておすすめしてるようなもんだろ」

男「じゃあ今度からカバンを置いたままにしておきます」

不良女「どかす」

男「……他にも机はあるでしょう?そこに座ればいいのに」

不良女「ははっ、お前のマヌケ面が見えるのはここだけだ」

男「……」

不良女「んだよ。向こうに何かあんのか?」

男「……見えそうなんです」

不良女「あ?」

男「気にして下さい。女の子でしょう?」

不良女「ああ……見るだけタダだぜ?」

男「そう言われると有り難みが失せます」

不良女「そうか。言って損した」

男「はい!?」

不良女「ああ!?」

男「やめて下さいよそういうの!」

不良女「は?見えるんなら黙って見りゃいいだろうが」

男「そんなの卑怯です!」

不良女「はーん。つーことは、お前はパンツが見えてるってことをわざわざ知らせて、女の子が恥ずかしがってる姿を見たい変態ってことだな?」

男「ち、違いますっ!」

不良女「もう…っ、やめて……みてえな反応する女子がいいのかよ?」

男「……」

不良女「へーんーたーいー」

男「……そうです」

不良女「……あ?」

男「不良さんのそういうとこ、見てみたくないことも…ないです」

不良女「……ハッキリしろよバカヤロー」

男「まあ出来ないでしょうけどね」

不良女「できるし」

男「じゃあやってみて下さい」

不良女「さっきやりましたー」

男「あれは演技じゃないですか!」

不良女「演技でもあたしはあたしだろ」

男「じゃあ不良さんの照れてる姿は全然ダメですね」

不良女「なんだと?」

男「あの程度じゃ全然心に来ませんよ」

不良女「はっ。お前の心なんか知るか。誰がお前なんかを落とそうとするよ?」

男「その僕がなびかないんじゃあどんな男だって落とせませんよ不良さん?」

不良女「ああ!?」

男「あははは」

<ガラッ

男「!」バッ

不良女「!?」クルッ

委員長「わっ!…あはは……お邪魔だった?」

男「委員長さん!」

不良女「うーす」

委員長「うーす。あの…来週までの書類私が出しといたから、男くんは気にしないで全部にハンコ押しといてね?」

男「あ、うん…わかった、やっとくよ。ありがとうわざわざ」

委員長「いいよ全然。えっと…それじゃあまたね!」

男「うん。おつかれさまー……」

委員長「不良さんもばいばーい」

不良女「おう。気をつけて帰れよ」フリフリ

男「……」

不良女「……」フリフリ

男「……」

不良女「珍しい客だったな。なんだお前。死にそうな顔して」

男「いや、別に」

不良女「ああ。お前ああいうの好きそうだもんな」

男「そんなんじゃないです」

不良女「でも仲良さげだったぞ?男く~ん、だってよ。げえっ。あたしにはできねえ」

男「……」

不良女「図星かよ……悪かったなあたしなんかが隣に居て」

男「それは全然いいんです」

不良女「そうかよ?じゃあ何でそんな顔してんだ?」

男「……わかりません」

不良女「ふうん。お前でもわかんねえことあるんだな」

男(好きとは違うけど……憧れてたからな、委員長さん。まあそれだけか)

不良女「おい……大丈夫か?」

男「不良さんに心配されるなんて、レアな体験ですね」

不良女「あたしだって人間だ。心くらいある」

男「……」

不良女「仕方ねえなあ。ほら、これやるからよ。元気出せって」ヒョイ

男「え……これって」

不良女「昨日お前に借りた千円。ははっ。まさか返ってくるとは思わなかったか?」

男「はい。永遠に貸すことになるのかと」

不良女「今日お前に話かけたのもこれのためよ。話が長引いて迷惑かけたけどな」

男「全然迷惑なんかじゃないです。気にしないで下さい」

不良女「は?全然気にしてねえよ。馬鹿」

男「昨日の今日でよく返せましたね」

不良女「まあ、あたしにはツテがあるし」

男「……ああ」

不良女「あたしにかかりゃこれくらい、すぐだね」

男「……」

不良女「冗談っつってんだろ。わからねえ奴だな」

男「はぁ……笑えません」

不良女「大体、昨日は財布忘れただけだから、モノはあるに決まってんだろうが」

男「……そうですね」

不良女「じゃあ、用は済んだし、帰るぜ。お前はハンコだっけ?押すんだろ?」

男「ああ、今日じゃなくてもいいんですけど」

不良女「やっとけよ。後回しにしたら、またあたしに捕まるぞ?」

男「いいですよ?」

不良女「……変なやつ」

男「じゃあまた明日」

不良女「おう。また……明日」

男「……」

男(また仕事にならなさそうだな、今日も)

男(委員長さんには見つかっちゃうし……あの感じ、絶対勘違いされちゃってるよね)

男(委員長さん……)

男「……」

男(まあいいけどさ。僕なんかには釣り合わない凄い人だし。人気もあるし)

男「……」

男(なんか不良さんに失礼な気がしてきた)

男(不良さん、今日は妙に優しかったな……暴力は振るわなかったし)

男(僕を気遣ってくれたし……お金は返してくれたし)ゴソゴソ

男「……あ」

男(僕としたことが……お札の向きがバラバラだ)

男「……」ゴソゴソ

男「……よし」

男(動揺してるのかな、僕……)

【翌日】


男「おはよう」

友「おっ。おはよう、色男」

男「……なんで僕が色男なのさ」

友「俺にもわからねえけどさ、今朝から噂になってるんだよ」

男「えーと……何が?」

友「え?お前がだよ。心当たり無いのか?」

男「そんな話は」

友「お前、不良さんに何かしたろ?」

男「あ……」

男(委員長さん……昨日のこと、言いふらしたな)

友「女子の間じゃあ色気づいた噂として回ってるけど、俺には信じられなくてさ。お前と不良さんが……なんて」

男「……」

友「本当のとこはどうなんだよ?やっぱり、絡まれてただけか?」

男「その……不良さんに聞いたら?」

友「あの人がこんな早い時間に居るわけないだろ」

男「ああ…それもそうだよね」

友「で、どうなのよ実際」

眼鏡「俺も気になるな」

長髪「俺も」

デコ「俺だって気になる」

男「えええ、みんな……」

眼鏡「実のところさあ、あの人美人だもんね。ちょっと羨ましいよ」

友「へー。お前が不良さんをそーゆう目で見てたとは意外だな」

長髪「でもビッチだぜ」

眼鏡「そこがいいんじゃん」

長髪(うわあ……)

友(うわあ……)

デコ「うわあ……」

男「……」

眼鏡「なんだよなんだよその反応」

友「ないわー」

眼鏡「考えてもみろよ。俺みたいなのでも相手してくれる可能性があるんだぜ?」

長髪「うっせー駄眼鏡」

デコ「不良さんにも選ぶ権利はあるよ」

眼鏡「そうか?結局のところ、金なんじゃねえの?」

男「……」

友「おい、今こいつの前で言うことじゃねえだろ」

男「……別にいいよ」

長髪(あー、これは怒ってる顔だわ)

デコ「金があっても、あの不良さんに話しかける勇気は無いだろ眼鏡」

友「言えてる」

長髪「確かにそうだな。その点頑張ったなお前」ワシャワシャ

男「や、やめてよぉ」

友「一体なんて話しかけたんだ?そもそも本当に絡まれてたんじゃないのか?」

デコ「とてもそんな風には見えなかったって、委員長さんは言ってたけど」

眼鏡「あの人の情報は信頼できるからなあ」

長髪「でも見たの一瞬だけなんだろ?委員長さん、乙女チックビジョンが発動しそうな見た目してるからな。どうだか」ワシャワシャ

眼鏡「そこがいいんじゃないか」

友「お前誰でもいいんだな」

デコ「正直失望したよ」

長髪「ちょっとは慎むべきだね」ワシャワシャ

男「もう……やめてよ長髪くん」

<キーンコーンカーンコーン

友「なんだ、時間か」

眼鏡「女子はまだ騒いでるし、いいんじゃないの」

長髪「賑やかなことで」

デコ「座ろうよ。続きはまたでいいじゃん」

長髪「たまには良いこと言うなデコ助」

男(ふう……助かったよ。とりあえず難を逃れたかな)

友「おい、逃げられたと思うなよ。休み時間はたっぷりあるんだからな」

眼鏡「またその時に頼むぜ」

長髪「言い訳でも考えとけ。幸い一限は現国だ」

デコ「やっぱり気にはなるからね」

男「ああ……」

現国教師「であるわけでして、えー、つまりその~」

男「……」

現国教師「このときのKの心情というのは~」

男「……」


<ガラガラッ!!


男「!」

不良女「待たせたな、じじい」

現国教師「始めさせてもらってるよ。早く座んなさい」

不良女「おう」ドカ

男「……」

男(いつも通りだな)

不良女「……」

男(授業中は意外と静かなんだよね、不良さん)

不良女「……」

男「……」チラッ

不良女「……」

男「……」

不良女「ふぁ……」ペラ

男(授業、真面目に聞いてるんだ)

不良女「……ん」クルッ

男(うわっ!気づかれた!!)

不良女「と……悪い」

長髪「いや」

男(なんだ……消しゴムを拾っただけか)

不良女「……」

男(長髪くん、凄いな。不良さんと対等に接してるよ。どちらかと言えば格好は不良さん寄りだけど)

男(……仲良いのかな?)

男「……」

男(……不良さんと長髪くんが仲良いからって、何だって言うんだ僕は)

男(とうとう昼休みか。いつもなら待ち望んでいるはずの時間だけど、今日は)

友「飯にしようや。購買行くか?不良さんとの話を聞かせていただけるようだから、何か奢ってやるぜ」

男(……少し大変になりそうだ)

男「いいよそんなの。みんな盛り上がってるとこ悪いけど、そんなに面白い話じゃないし」

友「面白いさ。我が友人初の色恋沙汰が不良さん相手なんて」

男「色恋沙汰じゃない」

友「いずれそうなる」

男「……怒るよ」

友「なんだ。そんなに嫌なのか」

男「……」

友「ほら、そうやって黙るからみんな面白がるんだ。嫌なら嫌、嬉しいなら嬉しいって言え」

男「そんなの、不良さんに失礼だよ」

友「どうしてだよ?」

男「なんだか僕が勘違いしてるみたいじゃないか」

友「勘違い?」

男「不良さんは……ただ普通にお話をしてるだけだと思うよ。あ、不良さんの感覚での"普通"ね」

友「はあ」

男「確かに僕にとっては刺激の強い話もするし、お金を要求することもあるけど、それは不良さんにとって何でもないことだと思うんだ」

友「なるほどな」

男「だから、僕は不良さんのためにもこれまで通り接したいんだよ。せっかく話せるようになったんだし」

友「ふうん。流石クラス委員」

男「わかってくれた?」

友「まあね。俺はお前の良き友人だから。でもあいつらはどうかな?」

男「ああ……勝手に話を広げそう」

友「ま、約束通り奢ってやるよ。何がいい?」

男「いいってば」

友「またそのうち何かで返してくれればいいからさ。この貸しは俺のためでもあるんだ」

男「……じゃあ、いちごミルクで」

友「ん。お前いつもそれだな」

男「ありがとう。次は僕が奢るよ」

眼鏡「お。帰ってきたかご両人」

デコ「先にお昼食べてるよ」

長髪「……」モグモグ

友「おーす」

男「僕もいただきます、っと」

眼鏡「で、何か聞き出せたのかよ?」

友「こいつなりに喋ってくれたよ。お前とは違って正直者だからな」

デコ「ははは。そこは同意するよ」

眼鏡「そうかよ」

長髪「結局、不良さんとの恋は芽生えそうなのか?」

友「芽生えなさそうだ」

眼鏡「なんだつまんねえ」

男「他人の恋を面白がるのは良くないと思うよ」

長髪「全く同感だ」

眼鏡「それで、恋じゃないなら何だって言うんだ男の野郎は?」

友「それはだな」

友「……なんだとよ」

眼鏡「つまんねー」

長髪「お前らしいな。俺はお前のそういうところが気に入っている」ワシャワシャ

男「食事中にやめてよ……」

デコ「じゃあ不良さんはただのお友達、ってこと?」

男「そうなんだと思う」

眼鏡「何だよはっきりしねえ言い方だなあ~」

長髪「でもそうとしか言えないんじゃないか?本当の友達には金をせびらないだろ。あくまで俺の感覚でな」

友「そういやそうだな。カツアゲとは違うのかよ?」

男「最初はそうだったんだけど、結局後で返してくれるんだよ」

デコ「借金ってこと?」

長髪「へえ、あいつが金を返す、ね……」

男「でも、不良さんにはお金を手に入れる術があるわけだから、おかしいことじゃないと思う」

友「言ってやるなよ」

男「それが不良さんにとっての普通になってるんだと思うよ。僕たちにどうこう言われるのは、不良さんもきっと嫌がるよ」

長髪「……」

男「でも僕を相手にしようとしてきたときは、流石に反論しちゃったけど」

一同「!?」

男「今は反省してる。僕の価値観を無理矢理押し付けるのは良くないもんね」

友「お、おい。お前、流石にそれはよ……」


<キーンコーン、キーンコーン


長髪「……予鈴だな」

眼鏡「次ってなんだっけ」

デコ「数学」

男「だったらもう片付けないと。とにかく僕はもう答えたから、この話題はおしまいね」

友「あ、ああ」

長髪「……」

眼鏡「いや、まだ……」

デコ「……」

男「ほら、座ろうよ」

友「……そうだな」

男(言い訳のつもりだったけど、なかなか良い考えだったな)

男(そうだよ。不良さんには何の意図も無いんだ。ただお喋りしてるつもりでも、僕たちとは住む世界が違うから、話がズレて行っちゃうんだ)

男(事実、悪い人じゃないってことはわかってきたしね。むしろ、僕たちの接し方が悪かったから、不良さんが悪いように見えてたんだよ)

男「……」

男(今日も授業が終わったら、僕に話しかけてくるかもしれない。お金を要求してくるかもしれない)

男(それでいいじゃないか。不良さんにとって、それはおかしいことじゃないんだ。人とのコミュニケーションの形なんだ)

男「……」

男(普段では味わえない会話を面白いと思い始めた僕もいる)

男(僕が不良さんの良き理解者になれるんなら、そんなに素晴らしいことって無いじゃないか)

男「……」チラッ

不良「くかー……」グデーン

男(やっぱり数学は寝ちゃうんだな、不良さん)

友「お先ー、おつかれー」

男「じゃあねー」

男(よし!今日も一日が終わった。もうひと仕事しよう)

男「……」トントントン

男(この書類を片付けちゃおうかな)

男「……」カキカキ

不良女「……」

男「……」カキカキ

不良女「……」

男「……あの」

不良女「……あ?」

男「今日は邪魔してこないんですか?」

不良女「あ、ああ……そう、だな……」

男「?」

不良女「あ、ううぅ……」

男「はい?」

不良女「……」

男「?」

不良女「……!!」ダッ

男「えっ」

<ガラッピシャンッ!!!

男「え……」

男(帰っ……ちゃった?)

男「……」ポツーン

男(不良さん……どうしちゃったんだろう?)

男(急用かな?いや、だったら居残らずに真っ直ぐ帰るはずだ)

男(体調が悪くなったとか?)

男(……そんな人があんなに走れるとは思えない)

男(今日の噂を気にして?まさか。火種なら僕が抑えて……)

…………


友『女子の間じゃあ色気づいた噂として回ってる』


…………

男(……まさか)

男(不良さんも女の子だ。噂を耳にしない訳が無い。しかも当事者なんだ。女子の誰かが真偽を聞いたとして……)

男(どうして逃げられたんだ!僕は……嫌われてはいないと思ってたのは、僕の方だけだったのか?)

男(そんなに僕との噂が……嫌だったのかな?)

男「……」

男(幸い今日は金曜日だ。不良さんが部活をやってるという話も聞かない。明日、ばったり会うってことは無い)

男(これで多分、今まで通りになるだろう。これまで通りの日常が戻るだけ。お金をとられないか心配しなくて済む、平和な毎日)

男「……」

男(今日はもう帰ろう。回り道をして。不良さんに追いつかないように)

【翌週】


男(……)

男(憂鬱だ)

男「はあぁぁ……」

友「月曜からため息かよ。やめてくれ。俺にもうつる」

男「別に出したくて出してる訳じゃない」

友「そうかい」

男「というより……出してるって自覚が無かったよ」

友「重症だな。ここ最近ずっとそんな感じだぞお前」

男「うう、モヤモヤする」

友「外の空気でも吸ってこい。変わるもんだぜ」

男「……ありがとう。そうしてみる」

友「まあ俺も自販機に用があるからな。着いてってやるよ」

男(結局、気分が晴れないまま一限か。先が思いやられるな)

現国教師「はーい、じゃあ段落に番号振りますよ~?」

男「はぁ……」

男(またため息だ。だめだな、こんなことじゃ)

男「……」カキカキ

現国教師「んー、ざっと14段落くらいあるかね?」

男(え……僕のは12段落しかないぞ)

男「……」

男(落ち着こう。僕らしくない)

男「……」

男(うん、ちゃんと14個ある。この調子)

現国教師「そろそろ終わりですかね」

男(ふう。今日の現国はやたら長かったな)

現国教師「そういえば、この時間になっても今日は来なかったねえ、あの子。私の授業は出てくれるのに」

男「……!」

現国教師「今日は休みかなあ。いつも元気なのに珍しい」

男(やっぱり先生もそう思うよね……不良さん、この時間になっても来ないってことは無いのに)

男(風邪でもひいたのかな。先生の言うとおり、あの、いつも元気そうな不良さんが)

男(……あまり考えたくないけど、僕との噂がよっぽどショックで寝込んでるとか)

男(いやいや、それは自意識過剰だよ。きっとただのサボりだ。寝坊だ。不良具合に磨きがかかったんだ)

男「……!」

男(……事故にでもあったとか)

男「……」

男(それはないか。でも……モヤモヤするよ……)

男(……不良さん、今日は最後まで来なかったな)

男「……」

男(どうしたんだろ。大丈夫かな。具合が悪いのかな)

男「あ」

男(……連絡先、聞いておけばよかった。聞く機会はいっぱいあったのに)

男「……ははっ」

男(聞いても教えてくれなかったかもな。はあ?とか言われて)

男(ああ、連絡先を売ってくるかもしれない。うん、あの人ならやりそうだ。絶対そうする)

男「……ふぅ」

男(でも……もし)

男(もし、お金と交換って条件でも連絡先を教えてくれなかったら……僕はどうすればいいんだ?)

【翌日】


数学教師「二項間漸化式っつうのがよお」

<ガラガラッ!

不良女「……うーっす」

男「……!」

数学教師「うーす、じゃねえだろ。また遅刻しやがって……昨日はどうしたんだ?」

不良女「…野暮なこと聞くな。寝たら治ったよ」

数学教師「だったら、今日は俺の授業で寝なくても済むな?」

不良女「……うるせぇ」

数学教師「まあ治ったようで何よりだ。席着け」

不良女「ん」

男(不良さん、ただの体調不良だったのか。よかった。でも、)

不良女「……」ボケー

男(今日も逃げられちゃうかもしれないよな。そうなったら終わりだ)

不良女「……」ウトウト

男(放課後になったら、男らしく謝ろう。僕なんかとの噂がたってしまってすみません、って)

男(……よし!ホームルームも終わった!不良さんに謝りにいこう!)

男「……」ガタッ

不良女「……っ!」

男「うわっ!!」

不良女「い、いきなり立つんじゃねえよ……!危ねえだろうが!」

男「不良さんこそ音も無く僕の背後を取らないで下さいっ!」

不良女「うるせえ!気づかねえお前が悪いんだよボンクラ」

男「声くらいかけてくれてもいいでしょ」

不良女「はあ?偉そうに言ってくれるじゃねえか」ズイッ

男「っ!」

不良女「……お前、本当にチビだな。ちゃんと食ってるか?」

男「余計なお世話です……」

不良女「急に落ち込むなよ……不安になるだろ」

男「すみません……」

不良女「悪かったって」

男「いいんです。慣れてますから」

不良女「……」

男「あの、不良さん」

不良女「んだよ」

男「この前の金曜日は、すみませんでした」

不良女「……はあ?」

男「僕みたいなチビとその…ああいう噂になるなんて、嫌でしたよね。ごめんなさい」

不良女「……」

男「……逃げ出すくらい、ですもんね」

不良女「!」

男「……」

不良女「……馬鹿かてめえ」

男「……はい?」

不良女「馬鹿だな本当に。馬鹿だよ……くそ」

不良女「……」

男「……」

男(き、気まずい)

男「あの……不良さん?」

不良女「お前……あたしが、あー……逃げたとき、どう思ったんだよ?」

男「どうって……不良さんに急用でもあったのかなあ、とか」

不良女「はあ?」

男「体調でも悪くなったのかなあ、とか……で、あの日に広まった噂が嫌だったのかなあ、と思いまして」

不良女「そういうことじゃねえよ……」

男「え」

不良女「あたしが逃げたとき、お前はあたしに対してどう思ったかって聞いてんだよ」

男「最初はなんとも思いませんでしたけど……今は申し訳ないなと思ってます」

不良女「……はぁ」

不良女「お前さあ……目の前で喋ってた奴が何も言わずに帰ったんだぞ?普通嫌だろう?」

男「……ああ!それは思いつきませんでした」

不良女「……」

男「あれ?そう言うってことは、僕に嫌がって欲しかったんですか?」

不良女「お前馬鹿にするのもいい加減にしろよ」ガシッ

男「え、わわわわわわすみませんっ!でも僕は馬鹿になんて!」

不良女「……珍しくあたしが謝ろうってのに勝手に謝ってんじゃねえよ馬鹿。この底抜けのお人よしが」ギリッ

男「む、胸ぐら掴むのはやめて……!」

不良女「ああ?やめて欲しけりゃさっきの謝罪を取り消せや阿呆。それか身長伸ばしなチビ」

男「と、取り消すってそんな!」

不良女「うるせえ。あたしが取り消せっつってんだろうが。聞けねえってのか?あ?」

男「聞きます!聞きます!」

不良女「……よし」

不良女「……すまなかった」

男「いいんです。久しぶりでびっくりしましたけど」

不良女「そうじゃねえよ腹立つなお前」

男「え?胸ぐらを掴んだことに対してなんじゃ」

不良女「……何も言わず逃げたりしてすまなかったって言ってるんだ」

男「……」

不良女「本当に申し訳なかった……許してくれ」

男「でも僕、許すも何も全然怒ってませんよ?」

不良女「……はははっ、そうだったな……じゃあ忘れろ。はぁ。とんだ無駄骨だよ」

男「……ってことは、あの噂が嫌だったって訳じゃ」

不良女「何言ってんだ。嫌に決まってんだろ」

男「」

不良女「……冗談だよ馬鹿」

男「冗談、でしたか」

不良女「……ああ」

男「じゃあ、嫌じゃないんですね」

不良女「……」

男「不良さん?」

不良女「……お前は」

男「……はい?」

不良女「お前はどうなんだよ……嫌じゃ、ねえのかよ」

男「ええ、全く。僕はむしろ嬉しいんです」

不良女「はあ???」

男「女の子との噂を喜ばない男はいません。しかも僕は、こういう噂の主役になるの初めてですし」

不良女「はん。あたしを女の子呼ばわりかよこの童貞野郎」

男「う……」

不良女「ははははっ、童貞くんの噂の相手があたしとは、お前も可哀想になあ」

男「何ですかそれ。そう思ってるんなら僕もう帰りますよ?もともとはこの場面を見られたのが原因ですからね」

不良女「あ?」

不良女「おい……本気で帰んのかよ」

男「帰らないで欲しいんですか?」ガララッ

不良女「は?そんな訳……」

男「じゃあ、僕はこれで」スタ…

不良女「待てよ」

男「?」

不良女「……帰んなよ。冗談っつってんだろ阿呆」シュン

男(ちょっとからかおうとしただけなのに……今のは反則だ)

男「ま、まあ、カバンもそこに置きっぱなしですしね。まだ帰りませんよ」

不良女「っ!てめえっ!!」

男「僕は不良さんと違いますから。お話の途中で帰ったりしません」

不良女「……この!!」ガシッ

男「ぐわっ」

不良女「何だよ……何のつもりだよお前?」

男「不良さんをからかってみたくて」

不良女「ほう。そりゃいい趣味してんなあ、おい。あたしが休んでる間に頭でもぶつけたか?」ギリッ

男「……っ!?い、いいじゃないですか…不良さんだって、僕を何度もからかって…」

不良女「それとはタチが違えんだよ。あ?誰があたしとは違うって?こちとら帰りたくて帰った訳じゃねえぞ」ギリッ

男「!」

不良女「なけなしの乙女心踏みにじりやがってよお!?マジふざっけんじゃねえぞてめえ!?」ブチンッ

男「え……!?」

不良女「あたしが帰ったの、は、は……あ……」

男「……」

不良女「あ……やば……」

男「……」

不良女「う、うるせえっ!!」

男「…何も言ってませんけど」

不良女「こいつ……ぅ!!」ギリリリ

男「ねっ、ネクタイが千切れちゃいますっ!」

不良女「くっそおおおおおおお!!」ギリリリリリリ

不良女「ハァ……ハァ……ハァ……」

男「ふ、不良さん……」

不良女「ゲホッ、はぁぁ……はぁ……」

男「すみません、調子に乗り過ぎました……」

不良女「……」シュン

男「……」

不良女「……」

男「……あの」

不良女「触んな」

男「」

不良女「触んなら金とるぞ」

男「……」ポフ

不良女「……おい」

男「……お金くらい安いものです」

不良女「いいのかよ……嫌だって、言ってたじゃねえか…」

男「今は特別ですよ」ナデナデ

不良女「……そうか」

男(だって不良さん)

不良女「……ん」

男(泣いてるじゃないか)

不良女「……」

男「……」ポンポン

不良女「……」

男「……」ポンポン

不良女「……いつまでそうしてるつもりだ」

男「不良さんが泣き止むまで」ポンポン

不良女「泣いてねえ」

男「嘘はいけません」

不良女「……」

男「……」

不良女「……何でやめる」

男「泣いて無いそうなので」

不良女「馬鹿野郎」

男「はい」ポフポフ

不良女「……ん」

男「今日は怒ったり泣いたり笑ったり、大変ですね」ポフポフ

不良女「……うるせえ」

男「……」ポフポフ

不良女「(ったく、誰のせいだよ……)」

男「すみません」ポフポフ

不良女「聞いてんじゃねえ変態」

男「落ち着きました?」

不良女「……いや」

男「そうですか」

不良女「……」

男「こんなところ見られたら、今度こそ噂になっちゃいますね」

不良女「ならねえよ」

男「学年一の不良を僕が泣かせたんです。僕の武勇伝になります」

不良女「だから、泣いてねえ」

男「……そうでしたね」

不良女「ああ」

男「……」

不良女「……」

男「落ち着いたら言って下さいね」

不良女「ん」

男「そろそろ帰りましょう」

不良女「……」

男「もう暗いんで、泣き顔は見えませんよ」

不良女「泣いてねえって言ってるだろ」

男「そうでした」

不良女「……金」

男「はい?」

不良女「いや、なんでも無…」

男「ああ、忘れてました。はい」

不良女「……」

男「昨日がお小遣いの日だったんで、お札がそれしか無いんです」

不良女「じゃあ、お前……」

男「貸すだけですから、いいんです。いつか返して下さい」

不良女「……」

男「言っておきますけど、不良さんの髪がその価値しかないって意味じゃありませんから。金額なんかつけられません」

不良女「……そうかよ」

男「はい。だから……」

不良女「……」

男「……いえ、なんでもありません」

不良女「ん」

男「帰りましょう。駅までは同じですよね?」

最初はキュンキュン(お股が)
今はキュンキュン(胸が)

【翌日】


男(昨日の不良さん、何と言うか……可愛かったな。うん、可愛かった)

男(一緒に帰るときも……並んで歩いた訳じゃないけど、着いてきてくれたし)

男「……」

男(……不良さんも女の子だもんな。可愛い一面もあって当然、か)

男「……」

友「どうした?今日はやけに嬉しそうじゃんか」

男「えっ、そう見えてた?」

友「そりゃもう。顔が違うよ顔が」

男「そう……なんだ。そっか。あはは」

友「何かあったのか?」

男「うん。不良さん、僕のこと嫌いじゃなかったらしいんだ」

友「そりゃそうだろ。じゃなきゃどうしてあんな噂がたつんだ?」

男「あ、ああ……あの噂が流れた後、色々あったんだよ。不良さんと」

友「へえ、羨ましいことだ」

男「……いや、正確には何も無かったって言うべきかな」

友「なんじゃそりゃ」

男「それで、僕が不良さんに嫌われてるだろうって思った出来事があったんだけど、どうやら僕の勘違いだったみたい」

友「何だその出来事って」

男「……話したら不良さんが嫌がると思うけど」

友「言いふらしたりしねえよ。言ってみろ」

男「僕が不良さんと喋ろうとしたら、不良さんが突然帰っちゃったんだ」

友「突然?」

男「うん。何も言わずにさ」

友「……それ、いつの話だよ?」

男「この前の金曜日」

友「ちょうど噂が広まった日か……」

男「うん……僕は、その噂が嫌だから不良さんは怒って帰っちゃったのかなと思ったんだけど」

友「そりゃ無いだろ。あの人がそう思ったんなら、帰るよりむしろお前を殴ってるよ」

男「そうかな」

友「ああ。不良さんは何て言ってたんだよ?」

男「何て、って……どういうこと?」

友「どうして帰っちゃったのか、聞いてないのか?」

男「ああ、聞こうとしたんだけど……聞ける雰囲気じゃなくて」

友「なるほど」

友「俺が思うに男くんよ」

男「うん。何?」

友「不良さんはお前との噂を嫌がってない」

男「……うん、だからそう言ってるじゃない」

友「それどころか、不良さんはそれを照れてお前から逃げるほど喜んでる」

男「え……?」

友「客観的に見てそう思うぜ」

男「まさか……あの不良さんだよ?」

友「ああ。色々と危うい噂のあるあの不良さんだ」

男「どうして僕なんかとの噂を喜ぶのさ?」

友「それは不良さんにしかわからない」

男「……」

友「ま、頑張れよ。事の真相はお前が自分で確かめるべきだ。お前が知りたいんならな」

男「そう……だよね」

友「お、乗り気じゃねえか。……(安心しろ。いつもの他の連中には言わねえから)」ボソッ

男「そんな囁かなくても」

友「でも長髪の野郎はお前を気にいってるみたいだから、色々と聞いてみたらどうだ?顔広いしなあいつ」

男「うん……ありがとう。僕、ちょっと自信が出てきたよ」

友「その調子だ。ため息ばっかり吐くお前よりずっといい」

男(いつもの放課後。友はバイトへ、他の皆は部活へ)

男(不良さんは相変わらず教室に居る。携帯かなんかをいじって)

男(……あ!そうだ、不良さんの連絡先、聞いてない!忘れてたよ)

男「不良さん不良さん」

不良女「んあ?んだよ」

男「連絡先、教えて下さいよ。知ってるようで知らなくて」

不良女「お、ちょうどいいな。あたしも今それに気づいたとこだ」

男「そうですか。じゃあ」

不良女「お前の、赤外線付いてんのかよ?」

男「はい。付いてますよ?」

不良女「あたしのは付いてねえんだ。悪いけど手打ちさせてくれ」

男「ああ、今流行りのアレなんですね。不良さんの機種」

不良女「まあな。これだけは不便だけどよ」

男「だったら僕が不良さんのに自分で手打ちしますよ。そっちの方が早いでしょ?」

不良女「ん。じゃああたしはお前のケータイにあたしのメアド手打ちすりゃいいんだな?」

男「そうです。交換するんです」

不良女「……」ポチポチ

男「……」

不良女「……お前の予測変換、つまんねえ」

男「見ないで下さいそんなの」

不良女「やらしー単語のひとつもねえのな。流石優等生くんは違いますねえ」

男「……そういう管理はしっかりしてるんです」

不良女「はあん。むっつりって事かお前は」

男「何も答えませんよ」

不良女「お前も男ってか。チビのくせになあ」

男「早く入力して下さい」

不良女「あー……それがよ、自分の記憶に自信が無えんだ。あたし、自分のメアドわかんない」

男「……実を言うと僕も自信無いです」

不良女「なんだよ。じゃああれか。プロフィール欄でも出せばいいのか」

男「そうですね。出し方わかりますか?」

不良女「なんとなくな。適当にいじりゃ出るだろ。ほら」

男「あ、それですね。……何だ。僕の記憶は正しかったみたいです」

不良女「そうか。じゃあ次はあたしの番」

不良女「……」ポチポチ

男「……」

不良女「……もっと近くに」

男「はい」グイッ

不良女「つーか隣に来いよめんどくせえ」

男「すみません」

不良女「ったく……おら、もっと寄せろ。画面が反射して見えねえ」

男「こうですか?」ズイッ

不良女「ん。サンキュ」

男「……」

不良女「……」ポチポチ

男(……近いな。肩が触れる程だ。不良さんは気にならないのかな?)

男(ああ……慣れてるのか)

不良女「うし。終わったぞ」

男「結局、携帯を交換した意味はありませんでしたね」

不良女「そだな。慣れない他人のケータイな分余計面倒だった」

男「これで、不良さんが寝坊しそうでもメールできます」

不良女「ほっとけ」

不良女「つーか、これでお前も窓口を持った訳か」

男「窓口?」

不良女「わかるだろ?」

男「……やめて下さい」

不良女「ははっ。お前、あたしに歯向かう度胸はあっても、そっちの話はてんでダメだな」

男「男連中だけならそういう話もしますけど、女の子相手にはやっぱり……」

不良女「まーたあたしを女の子扱いか。やめとけよ。いい事無えぞ」

男「照れなくてもいいんですよ?」

不良女「照れてねえよ馬鹿」

男「じゃあ目を合わせて下さい」

不良女「……馬鹿野郎」

男「不良さんがいきなり泣き始めたときは、とっても女の子っぽいって感じましたけど」

不良女「だから、泣いてねえっつーの」

男「頭撫でを要求してたじゃないですか」

不良女「要求はしてねえ。何でやめるか聞いただけだ」

男(ばっちり覚えてるじゃないか。自分の言ったこと)

不良女「だいたいな、あんな気楽にあたしの頭に触れたら、フツーはボコボコにしてやるんだからな」

男「気楽じゃありませんでした。あれでも僕なりに勇気を出したんですよ?」

不良女「はっ。そうかよ」

男「はい……でもあそこまで綺麗に泣いてる人がいたら、誰だって放っておかないと思います」

不良女「一言余計だぞ」

男「今の一言も結構勇気を出したんですけど」

不良女「知らねえよ。今ので一気にお前の下心が見え見えになったな」

男「そっ、そんな!僕はそんなつもりで言ったんじゃ……」

不良女「あたしがしおれてる姿を見て、ああ、今なら触っても怒られないな、とでも思ったか?」

男「そんなこと……」

不良女「……」

男「……僕はただ……僕は、違う」

不良女「……冗談だよ。マジな顔すんな」

男「……」

不良女「ふぅ……悪いな。あたし、性格悪いから」

男「……」

不良女「いいもん見させてもらったよ」

男「僕は……悪くないと思います。不良さん」

不良女「……ん?」

男「不良さんはいい人ですよ。性格が悪いなんて思いません」

不良女「そうかよ」

男「はい。不器用なところは少しありますけど、そこは人間味ってやつですから」

不良女「……ふん」

男「お金も返してくれますしね」

不良女「それは……なあ」

男「この前のお金はもう使いましたか?」

不良女「……いや……なあ、お前、さ」

男「?」

不良女「あたしの髪……綺麗って言ってくれるだろ…?」

男「は、はい」

不良女「嬉しい」

男「!!!」

不良女「嬉しいんだ。すごく……でも」

男「ゲホッ、ゲホッゲホッ……!」

不良女「大丈夫かよ」

男「っ…はい……ちょっと、びっくりして」

不良女「聞いた話だけどよ……お前さ、委員長みたいな髪の方が……いいんじゃないか?」

男「ええっ?」

不良女「色とかさ……結び方とかさ……」

男「そんな情報、誰から……ええと、不良さん?」

不良女「なんだよ」

男「つまり……あー…どうしたいんでしょうか」

不良女「……」

男「ははは…」

不良女「……ふんっ」ガバッ

男「ぐはっ」ドサッ

不良女「……」

男(い、痛い……っ!背中が!首が!)

不良女「……」ギチギチ…

男「そっ!?きゅっ、急には……反応できな…」

不良女「……分かれよ、それくらい」ギチ

男「へ……」

不良女「頼むから……察してくれ」

男「……」

不良女「あ……」

不良女「悪い。頭が回らなくなるとあたし……つい手が先に出ちまって」

男「いや、もう慣れました……いててて」

不良女「お前相手ですらさ……悪いな。本当に。お前の言うとおりだよ」

男「……?」

不良女「あたし……不器用だよな」

男「いいんですよそれで。不器用じゃない人なんて居ません」

不良女「でも」

男「僕が許してあげます。不良さんは、不器用でいいんです。少なくとも僕の前では」

不良女「……」

男「今度は掴みかからないんですね」

不良女「ふん、偉そうに……」

男「いいですよ?僕ならいつでも掴まれますから」

不良女「……はぁ」

不良女「やめろ。調子狂うんだよちくしょう……あたしだって、好きで暴力振るってる訳じゃねえ」

男「え」

不良女「……」ギュム

男「……そう言いながらネクタイを引っ張ってるじゃないですか」

不良女「暴力に見えるか?」

男「いえ。それにしては優しすぎます」

不良女「優しくしてるからな」

男「え、あ……ええ?」

不良女「でもよ、こうすると逃げられないだろ?あたしは大して力入れてねえのに」

男「不良さん……」

不良女「それはあたしが怖えからか?逃げる勇気が無いからかよ?」

男「……」

不良女「……」

男「逃げる勇気なんて無いです」

不良女「……はん、」

男「そもそも逃げる気なんて無いんですから」

不良女「!……っ」

男「だから、勇気を出す必要もありませんよね?」

不良女「そ、そうかよ」

男「それに」ガッシ

不良女「!?」

男「僕だって男です。本気を出せば不良さんの握り拳くらいほどけますよ」ギュッ

不良女「あ……あ……」

男「ほら」

不良女「……」

男「……指、細いんですね」

不良女「ーーーっ!!」バッ

男「いてっ」

不良女「あんま調子に乗んじゃねえぞこのチビ野郎っ!……ああ、さっさと帰るぞコラぁ!!」

男「す、すみません」

不良女「だから謝るんじゃねえよバカ」ギュッ

男「!!い、いいい、いてててて!!!」

不良女「その手で覚えとけ!あたしの方が強えんだ!わあったな!?わあったな!?」ギリリ

男「わかりました!不良さん強い!強いですからっ!!」

不良女「ばか・・・」

男「ええっ?」

不良女「馬鹿やろうっていってんだよ!!」

男「ええと、不良さん?」

不良女「なんで押し倒さねえんだよ!そんなに魅力ないかよ!!」

男「つまり……あー…どうしたいんでしょうか」

不良女「……」

男「ははは…」

不良女「……ふんっ」ガバッ

男「ぐはっ」ドサッ

不良女「……」

男(い、痛い……っ!背中に!おっぱいが!)

不良女「……」ギチギチ…

男「そっ!?きゅっ、急には……反応できな…」

不良女「……分かれよ、それくらい」ギチ

男「へ……」

不良女「頼むから……察してくれ」

男「……」

男(まずい……)

男「……」

男(まずいまずいまずいまずい!!)

男「はぁ……」

男(おかしいとは思ってたんだ。最近どうにも不良さんのことが気になるな、って。不良さんとの会話を心待ちにしてる自分がいる、って)

男(……気づいてはいたんだけど)

男「……」

男(不良さんの顔が頭に浮かんで離れないよ!顔だけじゃない!はねた髪の毛先とか、わざと鋭くさせようとしてる丸い目とか…)

男(見た目によらず意外と長くない爪とか、今日わかった指の細さとか……)

男「……」

男(そういう何でもないはずのことが、僕の頭の中ではまるで大切なことみたいに扱われ始めている……)

男(……認めたくない)

男(だって、僕が一体何を不良さんにされた?一緒に将来の夢を語った訳じゃない。好きな音楽とか、気に入ってる本やなんかを教えあった訳でもない)

男(なのに……どうしてこんなに惹かれるんだ!僕は不良さんのことを何にも知らないのに。つい先月までは同じクラスの怖い人ってだけの認識だったのに)

男「はぁ……」

男(この……ため息ばかり出したいような身体の調子も、今日が初めてじゃない)

男(……もう今日は寝よう)

<ヴーーン、ヴーーン

男「……?」

男(携帯か……こんな時間に?)

男「……あ」

男(不良さんからメールだ。僕から送ろうと思ってたのに、先越されちゃったな)


『よお。ちゃんと届くか?』


男「……クス」

男(メールでもこんな口調なんだ。不良さんらしいや。それにしても、ちゃんとメールが届かなかった場合はどうするつもりなんだろ?)

男(聞いてみようかな。とりあえず返信だけしよう)


『届いてませんよ?』


男(……文字におこしてみるとイラっとくるな、これ。会話ならこう返すんだけど……送ったら怒られるかな)

男(まあ、いっか)ポチ

男「ふぅ」

<ヴーーン、ヴーーン

男「」ビクッ

男(返信早っ!)


『届いてるじゃねえか!』


男(おー、怒ってる怒ってる。でも残念。メールでは殴れないからね)

『すみません。でも、もし届かなかった場合どうするつもりだったんです?』


男(うーん、もしかして不良さんへの僕の話し方って無愛想なのかな……なんてつまらない文章なんだろう)

<ヴーーン

男(返信早いなあ)


『明日会って確認すりゃよかったろ』


男(……明日も喋ってくれるんだ。悔しいけど、安心してる僕が居る)

<ヴーーン

男「?」


『そんでもってお前を殴ってた』


男(ひどい)

<ヴーーン

男(そうか。不良さんはスマホなんだった。スマホの人ってどんどんメッセージを送ってくるよね)


『安心しろ。さっきのお前の返信生意気だったからどのみちちゃんと殴ってやるぞ』


男(うへえ)ポチポチ


『優しくお願いしますね』


男「……」

男(気持ち悪いな、僕って。どうしてこんな……絵文字?絵文字が足りないのか?)


『優しくお願いしますね☆』


男(……気持ち悪っ。慣れないことはよそう)

『明日は遅刻しないでくださいよ。一応言っておきますけど』


男(これくらい付け足してごまかせば真面目感が出るかな。でもこれ、後が続かないんじゃ……)

男「……」

<ヴーーン


『覚悟しとけ。またな』


男「ふぅ……」

男(これで終わりか。まあアドレスの確認だけだもんね)

男「……」

男(メールでこんなに緊張したのは久しぶりかもしれない)

男「……」

男(また眠れなくなっちゃったよ)

【翌日】


男(今日の不良さんは二限に登校か。昨日あのあと夜更かししたのかな)

男(いや不良さんのことだ。夜更かしなんて毎晩のことだろう。きっと一限目の教科が嫌いだからに違いない)

不良女「……ふああ」

男(……大きなあくび。気持ち良さそうだな。僕も昨日は眠れなかったからなんだか……)

男「くぁぁ……」

不良女「……?」

男(うわ!つられて僕もあくびしちゃったよ!)

不良女「ふっ……」ニヤ

男「っ!……」カァァァ

男(不良さんに見られちゃったし……わざわざこっちへ振り向いて見なくてもいいのに……)

不良女「……」

男(不良さんの席から気付かれるなんて……僕のあくび、そんなに大きな音出てたかなあ。ちょっと恥ずかしくなってきた)

不良女「……んん」

男(あ、のびてる)

不良女「……」

男(いつも思うけど、不良さんって猫っぽい。いや、ライオンか?ネコ科の大型動物……)

男「……」

男(うん、しっくりくる)

【放課後】

不良女「よお、あくびボーイ」

男「僕がそれなら不良さんは居眠りガールですね」

不良女「違いねえ。なかなかいい表情だったよ、アレ」

男「不良さんのあくびがうつったんです!というか、わざわざ振り向いて見ないでください」

不良女「わりいな。あんまりでけえ変てこな音がしたからよ、つい」

男「……そんなに大きかったんですか?僕のあくび……」

不良女「ああそりゃあもう。爆心地って感じだった。みんな笑いを堪えてたぞ?」

男「う、うそだ」

不良女「ああ、うそだ」

男「……」

不良女「おー、いい表情だな。面白え。ずっと遊んでいたくなる」

男「人をおもちゃにしないでください!」

不良女「いいだろ別に?そんなに嫌ならやめるけどよ」

男「……」

不良女「……嫌じゃないんだ」

男「僕は何も」

不良女「いーや、お前は嫌だったら嫌って言える奴だよ。あたしにはわかる」

男「……」

不良女「まあ、あたしみてーな人間と関わるのを認めたくないってあたしに言えるほど、無遠慮な奴でもねえけどな」

男「……不良さん、それは違いますよ」

不良「……ああ?」

男「僕、不良さんと喋っていてすごく楽しいんです。今も」

不良女「……」

男「僕は……不良さんと関わりたいって思ってますけど」

不良女「はん。言い方がやらしーぞ、お前……」

男「え……あっ、そういう意味じゃないですよ!」

不良女「そういう意味じゃないのか」

男「そうです!」

不良女「ほーん……」

男「不良さん的には、そういう意味の方が良かったりします?」

不良女「あ?んなことねえよ、バカ野郎」

男「ですよね。……でも、だったら、どうして……」

不良女「……」

男「……すみません。僕が聞くことじゃないですよね」

不良女「謝るんじゃねえ」

男「はい」

不良女「……」

男「……あの、今日はもう仕事も無いんで、あとは帰るだけなんですけど、不良さんはどうします?」

不良女「あたしも用事があるから帰る。なんだ、奇遇だな。気持ち悪い」

男「じゃあ帰りましょうか。……って言っても、最近は一緒に帰ってますよね」

不良女「そうだったか?たまたま帰る方向が同じだっただけだと思ってたぞあたしは」

男「えっ……」

不良女「……」

男「じゃ、じゃあ……不良さん?」

不良女「ん」

男「えーと……一緒に帰りませんか?」

不良女「……っ」

男「い、いや、ダメならいいんですけど」

不良女「…ダメだね」

男「え……」

不良女「あのな……そういうことは、目を見て言うもんだろ?」

男「っ!?」

不良女「ちゃんとこっち見て言ってくれないと嫌だから」

男「は、はい」

不良女「もう一回」

男「あ……」

不良女「……」ジー

男「……」

不良女「……」

不良女「……なんで黙る」

男「頭が回らなくて」

不良女「回せ」

男「はいっ」

不良女「……」ジッ

男(や、ば……不良さんの眼に、吸い込まれる……なんだか時間が止まったみたいな……)

不良女「……お前、あたしが怖いのか?」

男「そんなことありませんけど……」

不良女「じゃあ何で固まってるんだよ?待ってるんだけどな、あたし」

男「緊張してるんです」

不良女「仕方ねえやつ……」

男「不良さん」

不良女「ん」

男「一緒に帰りませんか?」

不良女「なんだ、言えるじゃねえか」

男「当然」

男(……ぼーっとして、もう目の焦点が合わなくて、逆に緊張しなくなったから言えた、とはとても言えない……)

不良女「……じゃ、帰るか。行くぞ」

男「は、はい!」

不良女「……」

男「……」

男(僕、今すごく緊張してるよね……絶対緊張してるようわあどうしよう帰り道って何を話せばいいんだろまずは天気の話からとはよく言うけど最近ずっと晴れてるしそもそも一緒に帰るってなんなんだ?)


不良女「おい、待て」

男「なっ、なんでしょう?」

不良女「お前、カバンは……」

男「……あ」

不良女「大丈夫か?忘れるか?フツー」

男「うう……不良さんにそんなこと心配されるなんて」

不良女「はやくしねーと置いてくぞ。先に下駄箱行ってるからな」スタスタ

男「ああっ、待ってくださいよおっ」

【下駄箱】

不良女「……ふぅ」

委員長「……」

不良女「!」

委員長「え、えーと……」

不良女「よお。委員長も今帰りか」

委員長「不良さん……ご、ごめん!途中から覗いてた!」

不良女「は!?」

委員長「あ、あの、不良さんって、やっぱり男くんと付き合ってるの?だって、今、今っ、すごくいい感じに……」

不良女「っ!!え、あ、いや、あのなっ」

委員長「男くんと見つめ合って……顔も真っ赤だったしっ」

不良女「う……」

委員長「大丈夫、今度は秘密にするから。……このあいだは本当にごめんなさい。私が言いふらしたってこと、やっぱりバレバレだよね」

不良女「委員長は嘘つけねえタチなんだろ?仕方ねえよ……」

委員長「そうかな……?ふふ、物は言いようだね。ありがと、不良さん」

不良女「ん……」

委員長「その……お詫びと言ってはなんなんだけど、私、応援するから!協力出来ることがあったら何でも言ってね!」

不良女「だ、だから違うっての」

委員長「そうなの?」

不良女「いや、あのな、委員長……」

委員長「うん?」

不良女「あいつは別に、なんつーか……あたし」

男「すみません!お待たせしました!」

不良女「うああっ!!」

委員長「!!」

男「あれ、委員長。え?今日集会なんてあったっけ?」

委員長「へ?ああ。予定通り無いよ。私はさっき日誌を職員室に置いてきたから、今から部活」

男「ああ、そっか。お疲れ」

委員長「うん、ありがと。男くんも頑張ってね!」

男「え?」

委員長「不良さんのエスコート」ボソッ

不良女「!!!」

男「!!!!」

委員長「それじゃあね。不良さん、男くん。邪魔者はさっさと退散するよ!」フリフリ

男「」

不良女「」

男「」

不良女「」

男「」

不良女「……おい」

男「はい!?」

不良女「エスコート、頼むぞ」

男「きこえてたんですか……」

不良女「……うん」

男「えっ!ってことは……」

不良女「ああ。委員長に見られてたらしい」

男「それで委員長はあんな冷やかしを」

不良女「……」

男「でもまあ、見られるのは初めてじゃないですし、今度は大丈夫ですよね?」

不良女「は?大丈夫って、何が?」

男「いえ、何でもないんです」

不良女「お前……もしかしてあの時あたしが休んだこと言ってんじゃねえだろうな」

男「ふふっ。僕は何も言ってませんよ」

不良女「……」

男「……」

不良女「……」

男「……」

男(まずい……何を喋ればいいんだろう。今まで取り留めの無い話しかしてこなかったせいか、思いつかないよ)

男「あの……」

不良女「おい」

男「!」

不良女「……んだよ」

男「不良さんこそ、何ですか?」

不良女「何でもねえよ。お前が何だよ」

男「なんだか漫画みたいですね、今のタイミングといい」

不良女「ベタすぎだろ。……つーか、お前みたいなのでも読むんだな」

男「読みますよそれくらい。偏見はやめてほしいですね」

不良女「はん。どーせお前はベタな、優等生タイプの王道漫画しか読まねえんだろ?努力で勝つ、とかそういう系の」

男「そういうのも読みますけど、どうしようもなく理不尽な展開のものも読みますよ。どっちかって言うと、そういう暗い漫画が好きです」

不良女「へー。意外だな」

男「そういう不良さんはやっぱり不良漫画を読むんですか?」

不良女「は?読むわけねえだろバカバカしい。一回勧められて読んだけどよ、ありゃ暴力を正当化してて……あたしは嫌だったな」

男「そうなんですか?というか暴力嫌いなんですか!?」

不良女「あ?ちげーよ。意味の無い暴力が嫌いなの、あたしは」

男「僕をよく殴るくせに?」

不良女「それはちゃんと意味あるだろうが」

男「無いと思ってましたけど……」

不良女「あんまりお前が生意気だから、これ以上調子に乗るなよ、って愛のある一撃だろう?」

男「それは知りませんでした。それじゃあ結構ありがたいものなんですね」

不良女「そうだ。力ってものはそうやって使うんだ」

男(やばい……今、不良さんとすっごく会話してる!!今までで一番会話してる!!!)

………………………………

不良女「……とまあ、そこで人類はどう出るかって話なわけよ」

男「面白そうですね」

不良女「だろ?敵の刺客がいい味出してんだよなあ。あたしの憧れでさ……」

………………………………

男「……まあ僕はほとんど床屋で読んだんですけど」

不良女「あたしも何故か知ってる、それ」

男「やっぱりみんな何処かで読んでますよね」

不良女「あたしはイルカを治療する話を覚えてるなあ……」

………………………………

不良女「あれ読んでるとさ」

男「お腹空きますよね」

不良女「だよな!だからあたし封印してんだ。妹の部屋に」

男「妹?妹さん居たんですか?言ってくださいよそういうことは」

不良女「あれ?話さなかったっけか」

………………………………

不良女「……そういうお前もお姉さんいるのかよ!」ガシッ

男「ひいっ、すみませんっ!僕も話してませんでした!!」

不良女「んで、仲良くやってんのか?」

男「就職して一人暮らししてるんで、家にはあんまり帰ってきませんね」

不良女「ふーん。歳離れてんだな」

………………………………

男「もう駅ですね」

不良女「早いもんだな」

男「じゃあ僕はこっちなんで」

不良女「電車来るまで結構あるぞ、時間」

男「あと10分ですか……」

不良女「喉渇いたな」

男「僕もです。喋りましたからね」

不良女「コンビニ行ってくる」

男「じゃあ、僕も」

………………………………

不良女「……」

男「うーん……」

不良女「そんな真剣になるか?早く選べよ」

男「不良さんが選ぶの早すぎなんです」

不良女「あたしはいつもこれだし」

男「僕、豆乳ってちょっと苦手で」

不良女「これは初心者向けだよ。そんなに癖無いしな……あたしはこれで豆乳が大丈夫になった」

男「……いつか飲んでみます」

不良女「ぜってー飲まねえな。その顔は」

男「いいや。これにしよう」

男「それじゃあ、また明日」

不良女「んー。気を付けて帰れよ」

男「それはこっちの台詞です」

不良女「お前の方が誘拐しやすそうだ」

男「……」

不良女「牛乳でも飲むんだな」

男「もう飲んでます!」

不良女「じゃあな」

男「はーい」フリフリ

男「……」

男「……ふぅ」

男(なんだろう……僕そんなに良いことしたかな?すごくいい一日だった!不良さんとあんなに普通の会話ができるなんて!)

男(…………楽しかったなあ……)

男(知れば知るほど、不良さんって普通の女の子だ。言葉遣いなんて関係ない……でも、どうして不良なんてやってるんだろう?憧れてる訳でもなさそうだし……)

男「……」

男(そうだ……今度、長髪くんに聞いてみよう。何か知ってるらしいし……うん。明日にでも聞いてみようかな)

【体育館】

委員長「はーい!!そろそろ交代の時間ですよバスケ部のみなさん!!」

バスケ部長「げ、もうそんな時間か……撤収だ野郎ども!一年ももう終わっていいぜー!お疲れー!」

男バスA「へいへい」

男バスB「後半が外練とかやっぱないわー……だれて仕方ねーわー……」

男バスC「まあ委員長の姿が見られるだけで幸せよ」

長髪「そうだな」

男バスC「うっせー!お前はいつも仲良く喋ってんだろうが!」

男バスB「あの子は誰とでもそんな感じだっての」

男バスA「お前が嫌われてるだけだって、いつも言ってんだろ」

女バレA「あんた、なーんか鈍臭いからねえ……」

男バスC「くそぅ……くそぅ……!!」

男バスA「そのエネルギーはランニングにとっとけ。ほら、行くぞ」

女バレB「早く出てってくださーい。臭いが移りますー」

女バレA「鈍臭さもねー」

女バレC「……」

女バレC(やっぱり部長さん、かっこいいな……見てるだけで幸せだって気持ち、わかるよ……はぁ)

委員長「コート立てるよー!!私ネット!ネットやるから残しといて!!」

長髪「ん」ポス

委員長「あ、ありがとうございま……ってなんだ長髪か」

長髪「委員長さんにはこれくらいしないと近づけないんでね」

委員長「そんなことないのにね。運動した後の男の子の匂い、私は好きだよ?」

長髪「またそういうこと言う……」

長髪(自覚が無いって恐ろしいな……)

委員長「あ!そうだ、不良さんと男くんの様子、見てきたよ」

長髪「そうか。どうだった?」

委員長「ふふーん。秘密!不良さんとの約束だから教えてあげられない!ごめんね」

長髪「見つかったのか」

委員長「ううん。いや、うーん。見つかったのかな?自分から見つけられに行ったというか……」

長髪「良心が痛んだんだな」

委員長「うん。そんな感じ」

長髪「まあそうなるだろうとは思ってたよ。やっぱ自分で調べにいくか」

委員長「そうだねー。それがいい」

長髪「おう。ありがとな」

委員長「あのさ……」

長髪「ん?」

委員長「髪、切った方がかっこいいと思うよ?やっぱり」

長髪「それは出来ない」

委員長「どうして?」

長髪「俺のアイデンティティが崩壊する」

【翌日】

男「ねえ、長髪くん」

長髪「どうした?」

男「不良さんって、いつから不良になっちゃったの?」

長髪「……また急な質問だな」

男「長髪くんなら知ってるんじゃないかなって……二人とも仲良さそうだし」

長髪「嫉妬か?」

男「そんなんじゃない」

長髪「随分あいつに対して興味があるみたいだな、男くん?」

男「それは……否定はできないけど」

長髪「別に俺に聞かなくても、本人に直接聞けばいいだろう?」

男「その本人がまだ登校してないし……」

長髪「ああ……」

男「それに……僕にそんな勇気ないよ」

長髪「そうか?お前にだったら教えると思うぞ、あいつ」

男「いや、でも……不良さんにとって、聞かれたくない過去だったりしたらどうしようかとか、考えちゃって」

長髪「それはお前の独りよがりだ。そのせいで嫌われるんじゃないか、とか、気にしてるんじゃないか?」

男「う……」

長髪「……残念ながら、俺が答えられることでもないしな。あいつとは中学からの仲だが、そのときにはすでに不良だったよ」

男「すでに……?途中からとかじゃなくて?」

長髪「一年の自己紹介のときには、もう周りから浮いてた。髪も一人だけ茶色かったからな」

男「そうなんだ……」

長髪「変な噂もその頃から多くて……まあ、美人なだけに好奇の目で見られることも多かったし、それこそ女子連中からの嫉妬ってのもあったんだろう」

男「……」

長髪「……自分で聞くのが一番だと思うぜ」

男「そうだね……ありがとう、長髪くん」

長髪「どうしても外堀を埋めておきたいってことなら、そうだな……あいつの取り巻きみたいな奴らが居るだろ?」

男「側近さんと、参謀さん?」

長髪「ああ。そいつらなら古い付き合いらしいし、色々聞けるんじゃないか?情報が正しいかはともかくとして」

男「……ちょっと怖いけど、行ってみる」

【地学室】

男(ここ……だよね。確かに普段使ってないけど、人が居る気配は……)

ギィ…………

男(無いな。昼休みだから居ると思ったんだけど……)

男「あのー……すみません。ちょっと……」

側近「んあ?……あっれーー!!男ちゃんじゃーーーん!!!!なあに?なに?おねえさんに、なんか用かなー??」

男「!」

参謀「……」

男「えーと……」

側近「キャハハハハハ!!!新しくなーい!?アタシより背低い系男子ってぇ、マジ新しくなーーい!??かわいすぎなんですけどぉーーー!!!」

参謀「……悪いね。そいつ、悪気はないはずだから」

側近「ありまくりーーー!!!キャハハハハハハハハハ!!!」

男「……」

参謀「何か?」

側近「そんなん決まってんじゃん。普段話しかけない系男子がアタシらんとこに来たってことはさ……」

男「?」

側近「ドーテー捨てに来たってことでしょ!!?金で!!!マジ悲しすぎーーー!!!アタシらそんなに安い女じゃないんですけどぉ!!!」

男「ち、違いますっ」

参謀「……そいつはともかく、私は今彼氏居るから、構ってあげられないよ。ごめんね」

男「だから違うって……!」

側近「え?童貞じゃないの?」

男「え、それは違っ……あ……」

側近「やーーーい!!引っかかった引っかかった!!ドーテー発見!!!みなさーん!!ここにサクランボ系男子がいますよぉーーーー!!!!」

参謀「ここの棟、あんま人来ないから安心して……」

男「はい……」

側近「んで、何?ホントに童貞捨てにきたの?ドーテーくん」

男「あんまり童貞童貞言わないで下さい」

参謀「……本当にすまないね」

側近「まあホテル代持ってくれるってんならいいけどー……それともここでする?今Mサイズしか無いんだけどぉ」

男「しません!!!」

参謀「ねえ……この子、不良ちゃんのお気に入りだよ、側近」

側近「はっ!うそ、そうだったの……?!」

男「……」

側近「へえ~、じゃあアタシが相手しなくてもいーじゃん。女ちゃんに頼みなよ」

男「えっ……」

側近「女ちゃんかわいいもんね。アタシなんかよりずぅぅーっと。でもさ……身体はアタシの方が自信あるけどぉ……?」

参謀「やめてあげな、側近」

男「……」

側近「ちょっ……そんな泣きそーなカオしないでよ。なにその、アタシが悪い、みたいな……」

参謀「ごめんね。本当に悪気ないんだ、この子……」

側近「仕方ないな……よしよし、おねえさんがここ貸してあげるからさぁ、元気出しなよもー。ほら、おいでおいで」

参謀「子供扱いはやめてさしあげろ」

男「……不良さんの噂って、やっぱり……本当なんですか……?」

側近「え……」

参謀「……」

男「そんな……僕…………信じたくないです」

側近「ちょ、何?どしたの?」

男「……」

側近「あんた……もしかして女ちゃんのこと……」

男「えっ……」

側近「惚れてるの?」

男「はい…………好き、です……」

参謀「……!」

側近「……そっかー」

参謀「ふーん……」

男(言ってしまった……う…口に出して言うと改めて……恥ずかしいな)

側近「うんうん。男ちゃん見る目あるね!今までなよなよしたヤツだなって思ってたけど、あんた意外と漢だよ!!」

男「あの……不良さんって、いつからああいう……不良なんですか?」

側近「……は?」

男「……」

側近「あんたねえ……女ちゃんのこと、好きなんでしょ?本当にあの子が不良だと思う?」

男「え……」

側近「あの子が不良だったことなんて一度も無いよ。何?あんた、あの子がそーゆーことしてるトコ、見たことあんの?」

参謀「……」

側近「もう!今ちょっといいヤツかな、って思ったのに!あんた女ちゃんのドコを見てるわけ??結局カオなわけ???」

男「あの……カツアゲ、されましたけど……」

参謀「はぁ……」

側近「え…………えっマジで?」

男「はい……」

参謀「ごめん……それ提案したの、私」

側近「……どーゆーこと???」

参謀「だから……この子をカツアゲでもすればいいってアドバイスしたの、私だ……」

側近「は……い……?えっと……」

男「……?」

参謀「まさか本気にするなんて……まあ、結果オーライみたいだけどさ……」

男「あの、どうして僕をカツアゲなんかしたんでしょう?」

参謀「自分で考えなよ、それくらい。優等生なんでしょ?」

側近「……ごめん……アタシもわかっちゃったかも」

男「えー……」

参謀「……で、何だっけ?噂は本当かって?」

側近「どの噂かにもよるけど……あんたが気になるのはアレでしょ?……アタシみたいなコト、してないかってことでしょ?」

男「あ、あのっ、僕、悪気があって聞いたわけじゃ」

側近「いーの。アタシは好きでこういうコトしてるんだから。まあ、良い事だとも思ってないけど」

参謀「で、その噂だけどさ」

側近「完っ全にデマだよ!!マジむかつく!!あー、あーーー!!!なんなのマジで!!!」

男「そう……ですか」

側近「あんたまで信じてるわけぇ!?……ないわー」

参謀「私も保証するよ。あの子はそんなことしない」

側近「アタシらとつるんでるから、そういう目で見られるってことはわかるんだけど……何でアタシらより酷い噂が立ってるか、あんたわかる!?」

参謀「落ち着け」

側近「……!!」

参謀「それ以上言ってやるなよ……あの子のためにも」

側近「そうだけどぉ……」

参謀「まあ……噂は嘘だってことだよ。わかった?」

男「はい……でもどうして」

参謀「それ以上私たちに頼るんじゃないの。あの子も、こういう形でキミに知られたくは無いと思うよ」

男「……そうですかね」

参謀「そうだよ。あの子、キミに悲劇のヒロインとして扱われたくはないと思うから」

男「……」

男(……ってことは、やっぱり不良さんにとって、嫌な思い出があるってことか……)

男(長髪くんも知らなさそうだったってことは、相当昔の話だな……)

男「あの、二人はいつ不良さんと知り合ったんです?」

側近「小学校……いや、女ちゃんを知ってたのは幼稚園の頃からかな?」

参謀「私はスイミングで初めて会った。小学校のとき。学校が一緒なのは中学からだけど」

男「そうですか……」

側近「……げぇ、また思い出してきちゃった」

参謀「……」

男「……そろそろ休み時間終わりますけど」

側近「次何ぃ?」

男「現国です」

側近「しゃあないな、出てやるか」

男「あの!」

側近「ん?」

男「ありがとうございました……馬鹿な質問しちゃってすみませんでした」

参謀「いいんだって」

男「側近さんのおかげで目が覚めました」

側近「えっアタシ?アタシ何か言ったっけ?」

男「不良さんが……不良でも、そうでなくても、僕は不良さんが好きです。不良かどうかなんて、関係ないんです」

側近「へえ……やっとわかったわけ?」

男「はい……ありがとうございます」

側近「別にぃ……アタシこそ、ごめんね?」

男「え……何がですか」

側近「その……色目使っちゃって。えへへ」

参謀「たまに私らのとこに来るんだよ。噂を信じた馬鹿どもが」

側近「女ちゃんのトコに向かわないよーに、アタシが相手してやってんの。もちろんそんなヤツに身体は使わせないけどね!!大抵は手で……ね」

参謀「一発出してやればおしまいだからな。男ってやつは……」

側近「だから最初あんたがここに来たとき、アタシビビっちゃった。お前もかよ!って……でも、アタシの誘いにキョーミ無いみたいだったし……」

男「いえ、僕も……不良さんが頭の中に居なければ、危なかったです……」

側近「……ねぇ」グイッ

男「!」

側近「(もしあの子に振られちゃったらさ……アタシがシてあげよっか?)」ヒソッ

男「なっ……!!」ビクッ

側近「キャハハハハ!ジョーダンだよ、ジョーダン!……絶対シてやんなーい」

男「……僕もそうなることを祈ります」

参謀「言うねえ……応援するよ。キミと不良ちゃんの恋」

男「あ、ありがとうございます……本当に」

側近「もうわかったから。はやくしないと、授業始まっちゃうよ?」

男「……本当だ!側近さんと参謀さんも早く!」

側近「アタシたちはちょっとダベってから行くからいーの。ほら、遅れるよ優等生くん」

参謀「また後でな」

男「……なるべく早く戻って来て下さいね!ありがとうございました!」

バタン!

側近「こーいうトコが優等生だよねー」

参謀「あんた……ちょっともったいないことしたなって顔、してるよ」

側近「は!?そんなことないし……そんなことないからっ!!」

【放課後】

男(不良さんの噂はデマだった)

男「……」

男(不良さんの噂はデマだった)

男「……」

男(不良さんの噂はデマだった……)

男「はぁ……」

男(それを踏まえて今までのことを振り返ってみると……色々おかしいというか、なんというか……)

男(……援助交際してないってことは、そもそも僕をカツアゲする理由が無いってことだし……)

男(何度もお金の貸し借りをしたのも、今思えば不自然だよね。だってそんなお金、必要無いんだもの)

男「……」

男(不良さんが本当にそういう事をしているんなら、お金に困るなんて事態にならないのが自然だろうし……)

男(それに)

男「はぁ……」

男(……不良さんが僕に誘惑じみたことを何度もしてきた、その理由がわからない)

男(お金の為だと考えれば納得がいく。でもそのお金は必要無いんでしょ?だったらどうして……)

男「……」カアァァァァァ

男(まるで、もともと僕を誘惑することそのものが目的みたいじゃないか!!)

男(そんなことあるわけないのに……そんなことを男子がされたら……)

男(誰だって期待しちゃいますよ不良さん……)

男「……」

男(現に僕は今、不良さんのことが)

男「……」ギュッ

男(……今日も多分、これから不良さんに会うことになるんだろうけど)

男(平気な顔をしていられる自信が無い……今までの不良さんへの接し方は、不良さんが僕よりも"進んでる"と思ってのことだから……)

男(……不良さんがこれまでの想像以下、下手をすれば僕くらいの異性経験しか無いんだと思ったら)

男「~~~っ!!!」

男(絶対今までみたいに話せない!!)

男「……はぁ」

男(……とはいえ、あの二人が……側近さんと参謀さんが信用できるかどうかもわからないけど)

男(僕をからかうためにあんなこと言ったのかもしれないしね!……そんな人たちには見えなかったけどさ)

男(……こういうのを独り相撲って言うのかも)

男「……」

不良女「よ」ヌ

男「うわあっ!!!!!」ビクゥッ!

不良女「そんなにビビんなくてもいいだろ……相変わらず背後取られんのが上手えなお前は」

男「そっ、そんなこと……ないです」ドッドッドッドッ

男(へ、へ、平常心!平常心!不良さんがいきなり現れるのはいつものことだしっ!)

不良女「何見てたんだよ?黄昏る時間でもねーし……かわいい娘でもいたか?」ヒョイ

男「……別に、下の方は見てませんでしたから」ドッドッドッ

不良女「しかしよお、お前が窓辺に居るのは珍しいな。いつもはデスクワークだろ?今日はしねえの?」

男「いつもあるって訳じゃ、ないんで……」ドキドキドキドキ

不良女「ふーん……」

男(僕の予想以上にこれは……マズいな。不良さんの方を向けないし……心臓とか、なんだろ、胸の内側がおかしい)

不良女「ま、こーいう何もしない時間も大事だよな。なんつーか、心が軽くなる」

男「そうですね」ドキドキドキドキ

不良女「うん……」

男「……」チラッ

不良女「はぁ~あ、帰りてえな~」

男「……」ドッドッドッドッ

男(僕のすぐ隣で頬杖をついた不良さんが、今日はなんだかいつもより綺麗に……違う。そうじゃなくて)

不良女「……」

男(……可愛らしく見える)

不良女「……ん?」

男(今まで不良さんを綺麗と感じたことはあっても、かわいいと思ったことは無かった。無かったはず)

男(……そう思いながら今まで気付いていなかっただけかもしれないけど)

不良女「お前、今日静かだな」

男「そ、そうですかね?」ギクッ

不良女「いつもなら、会ってすぐ嫌味のひとつでも言ってくるのによ。……あたし、邪魔か?」

男「とんでもないです!……居て欲しいです」

不良女「なっ……急にどしたんだよ」

男「え……」

不良女「……お前、ホントに大丈夫か?顔、っつーか耳まで、真っ赤だぞ?」

男「日差しのせいですかね」

不良女「まだそんな時間でもねえだろ……ちょっと悪い、動くなよ」

男「あ」

不良女「……」ピト

男(不良さんの手が……僕の頬に)バクバクバクバク

不良女「熱い」

男「……」バクバクバクバク

不良女「……そりゃあ口数も減るわな。熱出てるぞ」

男「そういえば少し暑いなって……」ドッドッドッドッ

不良女「そんで窓辺で涼んでたのか。とりあえず座れって。ほら」

男「すみません……」

不良女「病人が謝んな。お前は普段から謝りすぎだっての……今くらい甘えとけ。な?」

男「……はい」

不良女「つらいか?」

男「まあ……少し」

不良女「でもなんだろうな?昨日は元気だったろ?今日だって授業中は普通だったよな」

男「ははは……不思議ですね」

男(絶対不良さんが原因だと思うんですけどね……ああ、本当情けないな、僕)

不良女「このまま帰れそうか?それとも保健室行くか?」

男「多分、帰れると思いますけど……」

不良女「……」ジッ

男(そっ、そんなに覗き込まないで……!)

不良女「保健室行って、ちょっと休んだ方がいいと思うぞ」

男「うぅぅ……不良さんが優しい……」

不良女「弱ってるヤツで遊ぶほど趣味悪くねえよ。それと、あたしは普段から優しいだろ」

男「はい……ごもっともです」

不良女「立てるか?」

男「はい」

不良女「じゃ行くぞ……途中辛くなったら、あたしに掴まっていいから」

男「そ、そこまでヤワじゃないですっ!」

不良女「ん……悪かった」

【保健室】

保険医「んー、熱は37.4℃……微熱ってとこね。平熱はどのくらい?」

男「36℃くらいです……多分」

保険医「それじゃ、これでも結構辛いでしょ。朝ご飯は食べた?」

男「はい。パンとヨーグルトを」

保険医「トイレも行って?」

男「はい」

保険医「んー……昨日は元気だったんだよねえ?咳とかも無く?」

男「はい」

不良女「……」

保険医「じゃあ……ちょっと、疲れが溜まってたのかな?身体がこたえちゃったのね、きっと」

男「あー……」

保険医「今日は部活とかもお休みして、帰ることね。お迎えがあるといいんだけど……お母さんは今、どちらに?」

男「今日は……まだ仕事だと思います」

保険医「そう……お父さんもお仕事だし……あ!お姉さんも社会人よね?」

男「いや、でも……姉の運転は怖いんで、それはちょっと……」

保険医「そう……じゃ、奥のベッド使っていいわよ。といっても、学校が閉まるまでだけど」

男「ありがとうございます」

保険医「いーえ。不良さんも、ありがとね。付き添い」

不良女「いえ……別に、これくらい」

保険医「じゃあ君はそこに寝てて。楽になったらいつでも言ってね。あ、それと不良さん、悪いんだけど、この子の荷物、持ってきてくれないかな?」

男「い、いえ!そこまでしてくれなくても……」

不良女「いいですよ。全然」

男「不良さん!」

不良女「お前は休んでろ。あのカバンの他に何かあるのか?」

男「……机の中に入ってる本も、お願いします」

不良女「あいよ。じゃ先生、あいつのこと頼みます」

保険医「ええ。本当にありがとね。助かるわ」

男「……」ゴロン

男(不良さんに助けられてしまった)

男「……」

男(……あの先生とは仲良いのかな?敬語だったし…)

男(それにしても本当に熱が出るなんて……僕どうしちゃったんだろう?)

男(確かに今日は色々分かっちゃって、頭が回らなかったけど……それにしたってね)

男「……」

男(不良さん……実は不良じゃないっていう話は本当なんだろうな。今も全然怖く無くて、自然な感じだったし)

男(疑問はそれでも残るけど……)

男「……」

男(……素直に寝よう。熱があるのは本当なんだ)

………………………


男「……」

男「あ……れ」

男(そうか……僕は学校の保健室で寝てたんだっけ)

男「……」

男(結構寝ちゃってたんだな……もう六時過ぎてる)

不良女「ん、起きたか」パタン

男「えっ」

不良女「ん?」

男「不良さん……何で居るんですか」

不良女「なんだよ……居ちゃ悪いのか?」

男「違いますけど、でも」

不良女「居て欲しい、つったのはお前だろ」

男「そ、そんなこと言ってません!」

不良女「いーや、言ったね。覚えてないのか?」

男「……そういう不良さんこそ、あ~帰りたい、ってぼやいてましたよ?」

不良女「は?言ってねえよ」

男「言ってました。……ホントに、帰っても良かったのに」

不良女「あたしがお前を保健室に押し込んでそのまま出て行ったら、あたしが悪いみたいになるだろ?」

男「そんなこと思いませんよ」

不良女「お前が思わなくても、周りの目がよ……」

男「……そんなこと誰も思いませんって!不良さんは僕を助けてくれたんですよ!?」

不良女「やめろよ」

男「でも……」

不良女「いいんだ。あたしは慣れてるから」

男「……不良さんって、いつから不良なんですか?」

不良女「さあな。忘れるほど昔だよ」

男「……」

不良女「と、悪いな。これ、勝手に読んでたぞ。やらしい本でも無さそうだったし」

男「いえ、全然いいですよ。そうだった…荷物まで……ありがとうございます」

不良女「重えよお前のカバン。何だあれ。あんなの背負ってるから背が伸びねえんだ」

男「あははっ、そうかもしれませんね」

不良女「……元気になって、良かったな」

男「不良さんのおかげです」

不良女「んなことねえ」

男「いえ、本当に……ありがとうございます」

不良女「……やっぱ、まだおかしいぞ、お前」

男「えっ?」

不良女「今日、一度でもあたしと目を合わせたか?」

男「え……そんなこと、覚えてませんよ…」

不良女「お前が礼を言うときは、いつも相手の方を見てんのに」

男「そんなっ、そんなことないですっ」

不良女「少なくともあたしにはそうだったけど」

男「うぅぅ……」

不良女「……まさかお前、今更あたしが怖いって言うんじゃねえだろうな」

男「違います!それは違って!……なんでもないんです」

不良女「うそつけ」ワシッ

男「は……」

不良女「よ。久しぶり」グイッ

男「……っ!」カアァァァァァ

不良女「頭ちっせえな……頭の良さと大きさは比例しねえのか?」

男「そ、そんな、知りませんよぉ……っ」ドッドッドッドッ

不良女「……お前、もしかしてさ」

男「はい……?」バクンバクンバクン

不良女「照れてんの?」

男「っ……!!!」バクンバクンバクンバクンバクンバクン

不良女「顔赤いし……」ジッ

男「~~~!!!」バクンバクンバクンバクンバクンバクン

不良女「お前っ…マジかよ……」

男「……はい、そうです……」カアァァァァァ

不良女「……ぷふっ」

男「なっ、笑わないで下さいよっ!」バクンバクンバクンバクン

不良女「ふふふっ……くふ…いやあ、だってさ…どうして急に照れてんだよ。昨日まで別にフツーだったろ?」

男「そうですけど……ううう」

不良女「おかしいやつ」

男「そろそろ手を離して下さいよ……」

不良女「嫌だ」

男「なっ……!?」ビクゥッ

不良女「面白えからな、そのアホ面。なあ……どうして照れてんの?」

男「女の子に看病されたら、男子なら誰だって照れます……っ」ドッドッドッドッドッドッ

不良女「なるほど……相変わらずあたしを女の子扱い、か」

男「……」ドキドキドキドキ

不良女「てことは、女の子だったら誰にでも照れるってことだな?」

男「……今日の不良さんは優しいと思ったのに……そんなに僕をいじめないで下さい」ドッドッドッドッ

不良女「悪い悪い。つい、な……で、どうなんだ?」

男「女の子に看病された経験なんて無いんで、わかりませんよ……」バクンバクンバクンバクンバクンバクンバクンバクン

不良女「……それもそうか」ヒョイ

男「……」ドキドキドキドキ

不良女「くふっ、何固まってんだ?」

男「はぁぁぁ……」ドシャ

不良女「おい……また寝るのかよ」

男「脱力してるんです……~~~っ!」

男「そういえばあの、時間は大丈夫なんですか?もう校舎閉まっちゃうんじゃ」

不良女「職員室にはまだ何人か居るし、ここの鍵も先生から預かった。あたしらのタイミングでここを閉めればいい」

男「先生?」

不良女「ああ、ここの……保健室の。もう帰っちゃったから鍵だけ借りたんだ」

男「保健の先生と仲いいんですね。不良さんが敬語使ってるの初めて見ました」

不良女「仲良いっていうか、お世話になってるからな。一年のときから」

男「へえ」

不良女「だからまあ、そう急ぐこともねえ。調子はどうよ?」

男「もう治ったみたいです。ありがとうございます」

不良女「帰る前に一応体温測っとけ。……ん」スッ

男「あ、はい」ヒョイ

不良女「……」

男「……」

不良女「……」ポス

男「!」

不良女「なあ……」

男「な、何でベッドに座るんですか……?」

不良女「暇つぶしだ。それが鳴るまで」

男「……」

不良女「考えてもみろよ。金曜の夜にさ、学校の保健室で……」ズイッ

男「……!」

不良女「……二人の男女が二人っきりでさ」ジー

男「……」ドッドッドッドッドッドッ

不良女「ベッドの上で喋って……見つめ合って」スイッ

男「!!!!!!」バクンバクンバクンバクンバクンバクン

不良女「こんな……(息がかかるくらい近い距離まで寄ったらさ)」コショコショ

男「!!!!!!!」バックンバックンバックンバックンバックン

不良女「(……"まちがい"が起きても……おかしくないよな?)」コショッ

男「~~~~~っ!!!!」バックンバックンバックンバックンバックン

不良女「(……ぅ…………ゴク……はぁ……)」

男(な、ななななななに考えてるのこのひとっ!!!??こんな、息遣いとか喉の音まで聞こえる至近距離で!????)

不良女「(逃げないってことは……あたし、どうすりゃいいんだ?)」ヒソ

男「やめ…………だめです……っ、あ……!」バクンバクンバクンバクンバクンバクンバクンバクン

不良女「(なあ…………このまま、さ……)」ヒソッ

男「!!!!!!」バックンバックンバックンバックンバックンバックン

不良女「(……あたし、と、お前で……)」ヒソッ

男「」バックン…

不良女「(し……ょ)」


ピピピピッ!!ピピピピッ!!ピピピピッ!!ピピピピッ!!


男「うわっ!」ビクゥッ

不良女「……と、体温、どこまで上がったかなあ?」ヒョイ

男「!!!!!!不良さんっ!!!!」バクンバクンバクンバクンバクンバクンバクンバクン

不良女「意外と時間かかったからな……結構あるんじゃねえの?」

男「はぁ……はぁぁぁ……」バクンバクンバクンバクンバクンバクン

不良女「37.2……ふふっ、熱、戻っちまったみたいだぞ?」

男「不良さん……ほ、ほんとにっ!!ほんとに焦りましたよっ!!!??」ドッドッドッドッドッドッドッドッ

不良女「言っとくけど、こういうイタズラはお前にしかしねえよ」

男「そんな言い訳で……」

不良女「お前なら絶対襲わないもんな。そこらの男とは違う」

男「褒めてるんですか?それ」

不良女「ああ」

男「嬉しくないです……」

不良女「これ、測り間違えだと思うから……もう一回測るか?」

男「測りませんっ!!!!!!」

元不良女「…移すか?」

男「へ!?」

不良女「あああ!もう!!」ガバッ

男「な!?」

不良女「はあ、はあ…」

男「なに、やってるんですか……」

不良女「…押し倒してる」

男「…僕より熱いですね」

不良女「うるさい黙れよ。こんな状況で冷静なもんだな」

男「冷静じゃないd…!!!」ブチュウゥゥ

元不良女「…移すか?」

男「へ!?」

不良女「あああ!もう!!」ガバッ

男「な!?」

不良女「はあ、はあ…」

男「なに、やってるんですか……」

不良女「…押し倒してる」

男「…僕より熱いですね」

不良女「うるさい黙れよ。こんな状況で冷静なもんだな」

男「冷静じゃないd…!!!」ブチュウゥゥ

不良女「なあ、悪かったよ」

男「……」

不良女「……」

男「……」

不良女「……ったく」

男「すみません……」

不良女「なんだ。喋れんのかよ」

男「……」

不良女「お前、学校出てからずっとそんな調子だな」

男「喋ろうとはしてるんです……でも」

不良女「?」

男「ああいうことは本当に……困るんですから」

不良女「……悪かったっつってんだろ」

男「あ!別に嫌だったとかそういうわけじゃないですよ!」

不良女「いいっての」

男「……本当に嫌じゃありませんからね」

不良女「気持ちわりい」

男「なっ…!?仕掛けたのは不良さんの方でしょ!?」

不良女「うるせー馬鹿。ちょっとからかっただけだよ……もうやってやらねえ」

男「……僕、不良さんが分かりません」

不良女「分かられてたまるか」

男「……」

男(この人は本当に…本当にそういうことを……していないのか?)

男(してないと聞いたときは心底安心した。嬉しくもあった。今までの自分の発言を思い出して恥ずかしくもなったけど)

男(でも、噂が嘘だとして……どうしてさっきの……保健室でしたみたいに振る舞えるんだろ?)

男(あああ、今はもうこれ以上考えたらダメだよ……隣には不良さんが居て、僕のせいでただでさえ気まずい空気なんだから)

不良女「……」

男(また家に帰って熱が出るほど考えればいい。明日は休みだし)

不良女「お前さ」

男「はいっ!?」

不良女「いきなり大きな声出すんじゃねえよ……ビビるだろ」

男「す、すみません」

不良女「……マジで今日どうしたの?」

男「え……」

不良女「学校休まねえし、殴りかかっても平気なお前が急にあんな熱出すか?」

男「僕だって体調くらい崩します」

不良女「それに、お前が照れてたのが納得いかねえ」

男「!?」

不良女「昨日はなんか、盛り上がったしな。お前と話してて」

男「それは良かったです……僕も、楽しかった」

不良女「んでよ……昨日の今日で、今更どうして照れるんだ?」

男「……」

不良女「今だってそうだろ。看病されて照れるって言い訳はもう通用しねえぞ」

男「それは……」

不良女「……何か言われたのか」

男「え」

不良女「なんつーか……あたし、と……噂っていうか、あのな」

男「……」

不良女「……なんでもねえ。はぁ……忘れろ。忘れてくれ」

男「はい」

不良女「……」

男「……でも、不良さん?」

不良女「ん?」

男「誰だってこうされれば」スッ

不良女「む……」

男「照れると思うんですけど……」クイッ

不良女「……!」

男「……」

不良女「……あたしが掴んだのは顎だったか?お前の頭じゃなかったか?」

男「僕の背じゃ頭は掴みにくいんで……」

不良女「それもそうか」

男「……」ドキドキ

不良女「……」ジッ

男「あの……なんともないんですか?」

不良女「照れてるように見えるか?あたし」

男「見えません」

不良女「だろうな」

男「……」ドキドキ

不良女「お前の方がヤバいんじゃねえか?」

男「そうかもしれません……」ドキドキ

不良女「ふふっ。お前にはまだ早えってことだ」

男「……」

不良女「……」

男「……」

不良女「おい」

男「な、なんでしょう?」

不良女「こっからどうするんだ?」

男「はいっ?」

不良女「キスでもしようって格好じゃねえか」

男「そっ……!?そんなこと思ってませんっ!」

不良女「なんだ。ノープランであたしに手ぇ出したのかよ」

男「……不良さんを照れさせる予定だったんですけど」

不良女「……」

男「すみません……僕がこういうことに慣れてないだけですよね」

不良女「……あたしが照れてねえと思ってんのか」

男「え……思ってますけど」

不良女「まあ、ポーカーフェースはあたしの得意技だからな……でも、身体までは騙せねえよ」

男「?」

不良女「……心臓、今すげえんだけど」

男「あ、ああ、なるほど」

不良女「確かめてみるか?」

男「!!!!!??」

不良女「馬鹿、ちげーよ変態。何考えてやがんだ……手首だ手首」

男「そ!?そっか……そうですよね……今日一番焦りました……」

不良女「ったく……心拍数測るっつったらここだろうが……ん」

男「すみません……」ピト

不良女「……早えだろ」トク、トク、トク

男「多分……早い、のかな?」

不良女「……」トクン、トクン、トクン

男「あ、また早くなってますね……」

不良女「そうか」ドキドキ

男「早くというより……強くなってます。トクン、トクンって」

不良女「ああ……あ、あんまり実況するな。あたしもそんな器用じゃない」

男「なるほど……面白いですね。不良さんが僕をいじめたくなる気持ちも分かります」

不良女「……そろそろいいか」

男「はい」

不良女「これでわかったろ……あたしだって、急にされたら余裕無いよ」

男「なんだか安心しました」

不良女「……で、そう言うお前はどうなんだ?」ピト

男「あ」

不良女「……」

男「……」トクントクントクントクン

不良女「お前さ」

男「はい」トクントクントクントクン

不良女「早過ぎないか?死ぬんじゃねえの、これ」

男「すみません、調子に乗り過ぎたみたいです……」ドキドキ

不良女「……」

男「……」トクントクントクントクン

不良女「……まだ調子悪い、とか?」

男「違うと思います……」

不良女「……」

男「……」ドクンドクンドクンドクン

不良女「まさか本当に死なないよな?」

男「多分……」ドクンドクンドクン

不良女「よし……じゃあさ」ズイッ

男「……えっ…な、不良さんっ!」

不良女「いじめたくなったんだけど」ジッ

男「道の真ん中ですよ……!ダメですって……!」

不良女「街灯もねえし、人は来ねえよ。大丈夫……(嫌なら言え。な?)」コソッ

男「~~~~!!」バクンバクンバクンバクン

不良女「お、すげー……早くなった……」

男「ううう……」バクンバクン

不良女「……手、開いてみろよ」

男「なんですか……?」

不良女「いいから。あたしが握ってる方の手、開け」

男「はい……」ドキドキ

不良女「……」ニギッ

男「ふあっ」

不良女「……おもしれー……」サスサス

男「なっ、なんで中指だけ……握って……っ!?」

不良女「ここらへんさ……あたし、紙で切ったことあるんだよね」ツーー

男「あ、ああ、痛いですよね。意外と」

不良女「うん……普段気にしたことも無いとこなのに、意識するとむず痒くってよ……何日も何日も」コチョコチョ

男「……っ」

不良女「指の一部だから、敏感なんだよな、ここ……ほら」スリスリ

男(不良さんが僕の中指を……指の股のところから第二関節のあたりを爪でなぞっている)

男「ほっ、本当ですね……ゾクゾク、します」

不良女「……なんで中指だと思う?」ツーー

男「へ……」

不良女「わからねえのか……?」サスッ

男「……」

不良女「(なに目ぇ逸らしてんだ)」ボソッ

男「っ!!!」

不良女「(まあ……この距離なら合わす必要も無えけど……)」コショコショ

男「やめて……くださ……」

不良女「フゥゥーーーー…………」

男「んぅっ……!!!」ゾクゾクッ

不良女「くふっ。……(弱過ぎだろ、耳。脈、すごいことになってんぞ……)」ヒソヒソ

男「や、やめて……」

不良女「ん……指先、なんだこれ……」ギュ

男「え……?」

不良女「なんか、ぷにぷにしてる」プニプニ

男「あー……ギターのせい、ですかね……指の皮が分厚くなるんで」

不良女「そういやそうだったな……なるほどなぁ……」プニプニ

男「くすぐったいですよ……」

不良女「……」プニプニ

男「……」

不良女「ん……やべーな、これ……気持ちいい……」サスサス

男「っ……」

不良女「……くふっ」シュッ

男「!!」

不良女「ふぅ……ま、これくらいにしといてやるか。お前が死んじまう」

男「そうですか……良かった……」

男(これ以上されたら僕、危なかったかも……)

不良女「前かがみになったら止めようと思ってたしな」

男「!!!??」

不良女「ははっ。安心したよ」

男「な、なにがです……?」

不良女「ひょっとして、女には興味無いんじゃねえかと思ってた」

男「は!?」

不良女「あたしをそういう目で見ないしな……」

男「そういうの、失礼だと思ってますから……」

不良女「あんまり無反応なのも失礼なんじゃねえのか」

男「あの……そういう目で、見て欲しいってことですか?」

不良女「……あ?」ギロ

男「すみませんでした」

不良女「……」

男「……」

不良女「……やべ、マジで帰るぞ。あ、お前歩けるよな?」

男「今ので元に戻りましたよ……」

友『たはははははっ、そんで不良さんに看病されてのこのこ帰って来たってか』

男「うん……本当に自分を情けなく思ったよ」

友『でも羨ましいよなー。俺も女の子に看病されてえ。不良さんの看病ってどんな感じなわけ?』

男「看病っていうか……普通に目が覚めたら隣の椅子に座ってて…ずっと僕の本読んでたみたい」

友『いい……』

男「……」

友『すげーいい……なに、不良さんってそんななの?そんなイメージ無かったわ』

男「うーん、それは僕が弱ってたからだと思う」

友『あの人ならさ、ちゅーしてあたしに熱移せーとか言いそうじゃん。そういうのは無かったの?』

男「無いよ……あるわけ無いじゃん」

友『本当か?怪しいなー』

男「本当だよ……」

友『ふーん。じゃあ不良さん、ただのいい人になっちゃうな……お前さ、それヤバいぞ』

男「え……何が?」

友『そういうことが知れ渡ったらさ、絶対不良さんを狙う輩が出てくるって』

男「なっ……なんでそれがヤバいのさ。それでいいじゃない……」

友『だってお前絶対不良さんのこと好きじゃん』

男「な、何言ってんの!この間、違うって言って…!」

友『いやー、わかるって男くん。バレバレよ。最近不良さんのことばっか喋ってるしな。今だってそうだし』

男「これは友が電話してきたからでしょ……今日は不良さんと帰ったのか、って」

友『あっははは。からかうつもりだったんだが予想以上に進んでて参ったよ。今更話すことでも無いから別にいいわ』

男「気になるから話してよ」

友『そうか?……お前が不良さんを好きだと認めたら話してやる』

男「ひ、ひどい」

友『安心しろって。誰にも言わねえよ。特に眼鏡には』

男「……うん。もう自分でも分かってるよ。好きだよ、不良さん」

友『おー』

男「……」

友『って言ってますけど旦那』

男「え」

長髪『……よお。俺が分かるか?』

男「な……!なんで長髪くんが!?」

長髪『帰りに偶然会ってよ。せっかくなんでこいつの店で飯食ってるんだ』

男「……ちょっと友と代わってよ」

長髪『ん。……』

友『どうした?』

男「嘘つき」

友『嘘はついてないぜ?誰にも言ってはいないしな』

男「……」

友『悪かったよ。今度うちのラーメンおごるから』

男「……トッピング全部のせてやる」

友『なに!?それは……キツいな……』

男「で、長髪くんは?」

友『あ、ああ代わるよ……』

男「……」

長髪『俺も謝る。悪かった』

男「別にいいんだけどさ……これ以上広めないでよ」

長髪『分かってるさ。言っておくが電話を頼んだのは俺の方だ。あんまり友を責めるなよ』

男「そうは言っても、でも……」

長髪『俺に知られるのは嫌だったか?』

男「そうじゃないけど……どうして長髪くんが?」

長髪『お前の番号を知らなかったからってのもあるけどな。まあ、気になったんだ』

男「長髪くんでもそういうこと、気になるんだね……ちょっと意外だな」

長髪『俺だって男子高校生だからな。気にはなる。しかもお相手があいつときたらもうね』

男「不良さんと仲良いもんね、長髪くん」

長髪『妬くか?』

男「ちょっとは」

長髪『お前ほどあいつと仲良い奴も居ないと思うがな。俺はただ中学からの知り合いってだけで、仲が良い訳じゃない』

男「そうかな……」

長髪『そうさ。……応援するよ。上手くいくといいな』

男「……恥ずかしい」

長髪『お前なら大丈夫だ。良いやつだしな。それは俺が保証させてもらう』

男「あ、ありがとう……?」

長髪『もしあいつに邪な感情があるんなら、俺が殴りに行くけどな』

男「無いよ!そんな気持ち……っていうか、やっぱり不良さんと仲良いじゃない。そんなこと言えるなんて」

長髪『そうじゃなくて……あいつ、苦労してるんだよ。ああ見えて……って言うか、見た通りだな』

男「不良さんが?それは…うーん……そうかもしれないけど」

長髪『俺が言いたいのは、あいつに惚れたのがお前のような出来た人間で良かったな、ってことだよ』

男「あ、あんまり僕を褒めないでよ長髪くん……くすぐったいから」

長髪『悪い悪い。で、これからどうするんだ?』

男「どうする、って?」

長髪『あいつ……不良のやつと付き合いたいんだろ?告白はしないのか?』

男「そっ……そうだよね……告白、か……」

長髪『ひとつ質問していいか?』

男「うん」

長髪『お前、彼女いたことあるのか?』

男「無いよ。あったらこんなに緊張してないよ……」

長髪『何だ、緊張してるのか』

男「うん……意識し始めたらもうドキドキしちゃって……」

長髪『意外だな……この間まで淡々と話してくれてたのにな』

男「あのときは……多分、既に好きだったんだろうけどまだ認めたくなかったというか……だって、好きになる理由もわからなかったし」

長髪『男。恋に理屈は通用しないぞ」

男「え……」

長髪『……悪い。自分で言って恥ずかしかった』

男「ううん。長髪くんが言うと説得力あるよ。そうかもしれないね」

長髪『説得力?無えよ、そんなもん』

男「あるよ。長髪くん、慣れてそうだし」

長髪『俺、彼女いたこと無いんだが』

男「え……え?嘘でしょ?」

長髪『残念だが本当だ。情けないことにな……だから、俺がアドバイス出来ることなんて少ししか無いが』

男「うん……」

長髪『あいつをデートに誘うんなら今しか無いと思うぞ』

男「……急すぎるよ。デート?僕が不良さんとデート……」

長髪『したくないのか?』

男「そんなの……出来たら良いとは思うけど……でっ、でも、デートって付き合った後に行くものなんじゃ」

長髪『それは考えがそれぞれあるんだろうが……お前、いきなり告白出来るのか?段階も踏まずに……』

男「……」

長髪『そういうタイプには見えないぞ、男くん』

男「……そうかも」

長髪『まあ、デートって言い方がまずかったな。ちょっと一緒に出かけるんなら今が良い』

男「そ、そっか。出かけるだけか……ちょっと待ってよ、どうして今なの?」

長髪『いいか。女の子を誘うのは簡単だ。勇気出して"これ、行こうぜ"とか言うだけだからな』

男「簡単に言ってくれるよ……」

長髪『待て待て。ここからが問題だ……誘うだけなら簡単だが、誘う口実を考えるのは難しい』

男「……」

長髪『無闇に誘っても、相手は"何故お前と?"とか、"こいつあたしに気があるんじゃ?"とか思うはずだ。断られるリスクも高まる』

男「……なるほど」

長髪『まあそこでダメならどうやったってダメなんだろうがな……諦めはつくが』

男「うん……覚悟はしてるよ。それで?」

長髪『だから、一緒に出かける理由があると誘いやすいってことだ。お前はその状況にあるぞ』

男「え……僕、そんな覚え無いよ?一緒に出かける理由なんて」

長髪『今日、保健室まで運んでもらったんだろ?結構な重労働だよな』

男「背負われた訳じゃないよ!」

長髪『学校閉まるまで付き合わせたんだ。それだけでも大変だったと思うぞ?』

男「そうだね。それは不良さんに感謝してる」

長髪『ああ……だから、それで誘えばいい』

男「……?」

長髪『"今日はお世話になりました。お礼がしたいんですけど、今度何か甘いものでも……"とかな』

男「な、何か強引だね」

長髪『じゃあ、駅前に新しく店出来たろ?"そこに入りたいけど、男一人じゃ入りにくいから……"とか組み合わせればどうだ?』

男「あ、あの店……確かにちょっとお洒落で覗くの怖いよね。そうか、ああいう店ってそうやって誘うためにあるんだ……」

長髪『ご不満か?』

男「そこまで考えてる長髪くんにすら彼女が居ないのに、僕なんか上手くいく気がしないよ」

長髪『お前……さらっと痛いとこ突くな……』

男「ごっ……!ごめん!悪気は無いよ!でも……そうでしょ?長髪くんに出来なくて、僕に出来るわけ無いよ……」

長髪『まあ、どうしてもダメって言うんなら別に無理することも無いがな。そういう考えもあるってことよ』

男「うう……」

長髪『……あとひとつだけ言っておくが、誘うなら今日が良い』

男「今日!?」

長髪『ああ。あんまり時間空けると不自然だ。あくまで看病のお礼なんだからな。それに今日は金曜だぞ?』

男「まさか……明日か明後日に誘えってこと?」

長髪『そうだ』

男「本当に急すぎるってば!」

長髪『俺の言い方が悪かった。最初にデートって表現すべきじゃなかった。ただ友達と遊びに行くだけだと思えばそれでいい』

男「……」

長髪『俺が言えるのはこれだけだ。じゃ、健闘を祈る』

男「ま、待ってよ、友は?」

長髪『接客中だ。代わるか?』

男「それならいいけど……長髪くん」

長髪『ん?』

男「ありがとう」

長髪『いいんだ。上手くやれよ……じゃあな』

男「うん……じゃあね」

男「……」

男(いやいやいやいや……無理だよそんなの!!)

男「……」

男(一緒に出かける……不良さんと一緒に……)

男「……」

男(全然想像出来ない!というか、僕が釣り合う気がしない!)

男(不良さん身長高いし……いや、これは僕が低すぎるんだけど……制服ならともかく、私服で同い年に見えるかどうか)

男(……私服!)

男(不良さんの私服が見られるのか……どんなだろ。やっぱり派手なのかな。髪とかも巻いてきたり……)

男(……なんか、見てはいけない気がする……)

男「……!」

男(人の事言えないよ!僕は何を着ればいいんだ?かっこいい服なんて持って無いよ!)

男(……いや、ただ出かけるだけなんだ。そんなに気にして行ったら変に思われるかも……いや、でも……!)

男(……まだ誘ってないのに何を盛り上がってるんだろ。行けるって決まったわけじゃないぞ、僕)

男「……」

男(メールで誘ってもいいのかな。それとも電話……?いきなり電話したらおかしいかな……でもメールだと何だか軽いって言うか……)

男(……それは僕の独りよがりだ。そんなの不良さんが気にするわけ無いよね。メールでいいか)

男「……」

男(……やっぱり電話しよう。今日のお礼をしたいのは本当だし、電話したことないし……長髪くんの言う通り、いいきっかけなのかも)

男「……」ポチポチ、ポチポチポチ、ポチ

男「……」プルルルルルルル…

男(あ、今何時だっけ?そんな遅くないはずだけど……まだ眠くないよね?)

男「……」プルルルルルルル…

男(お風呂の時間かも……)

男「……あ」プルルルルルルル…

男(今日……金曜の夜って…………大丈夫、だよね……?)

男「……」プルルルルルルル…

男(……いや、不良さんはそんなことしてないんだ。してないはず……してないはず……)

男「……」プルルルルルルル…

男(……出てくださいよ)

男「……」プルルルルルルル…

男(……メールだってすぐ返ってくるわけじゃないんだ。始めたら早いけど)

『お留守番サービスに接続します……』

男「……」

男(……宿題でもして待つかな)

【30分後】

<ヴーーン、ヴーーン

男「!」

男(来た!不良さん……!)

男「もしもし!」

不良女『よ。ごめんな、さっき出られなくて……ちょっとな』

男「いえ、大したことじゃないんでいいんですけど……あの…何してたんです?」

不良女『お前、それ聞くか?』

男「はい……嫌ならいいんですけど」

不良女『ちょっとは察しろよ……風呂だよ。想像すんなよ変態』

男「な……しませんよっ!」

不良女『さあな。わざわざ聞く辺り怪しいな……あ』

男「なんです?」

不良女『あたしがどこに居るか、知りたいわけだ』

男「……すみません」

不良女『別にいいっての。そりゃ気になるだろ……今な、ベッドの上』

男「……」

不良女『ふふふっ……悪かったよ。あたしのベッドの上、だ』

男「……ですよね。はぁ……」

不良女『クスッ……想像すんなよ』

男「それは難しいです」

不良女『正直でいい。ちなみにあたしのパジャマは水色だ』

男「なんですかその情報」

不良女『中学んとき着てたやつでな、首元がゆるゆるになってよ……なあ』

男「はい?」

不良女『今ノーブラだぜ、あたし』

男「……そうですか」

不良女『想像したか?』

男「して欲しいんならしますよ」

不良女『ふふっ。今日は刺激の強い一日だったな。そりゃ熱も出るだろ』

男「そうですね。半分不良さんのせいです」

不良女『で、何の用だ?わざわざ電話で』

男「お礼が言いたくて電話したんです。あ、遅くにすみません……」

不良女『そんなのいいんだっての。まだ遅くねえし……』

男「いえ、ありがとうございました。……それで、お礼がしたいんですけど、あの、不良さん?」

不良女『……うん?』

男「明日か明後日、暇ですか……?」

不良女『ああ……今のところ、暇だけど……』

男「どこか行きません?」

不良女『え……』

男「あの……お昼か何か、奢ろうかな、と思って」

不良女『あ、ああ。うん……』

男「僕がお礼で出来るの、それくらいですから」

不良女『……しゃあねえな。奢られてやるよ』

男「本当ですか?」

不良女『なんだよ。嘘の方がいいのか?』

男「いえ。よかったな、と思って……」

不良女『ふーん……』

男「あの、いつが良いですか?」

不良女『そうだな……日曜、でいいか?』

男「はい。っていうか、不良さんに合わせないとお礼にならないんで」

不良女『ほお。あたしに合わせられるんだな?』

男「?」

不良女『だったら今からでもあたしはいいんだけど』

男「よっ、夜はちょっと厳しいと思います……次の日学校あるし」

不良女『ま、そうだよな……飯食った後はどうする?』

男「そうですね……あ、まずご飯どこで食べましょう?」

不良女『なんだよ、決めてねえのか』

男「最近駅前に出来た店があるんですけど、そこにしようかなと思ってます」

不良女『あー、あそこね……帰りの電車から見えるわ。気になってはいたけど……』

男「けど……?」

不良女『一人じゃ入りにくそうなんだよな』

男「そっ、そうなんです!僕もそう思ってたんです!」

不良女『なんだ、結局お前が行きたいだけか』

男「あははっ。そうとも言えますね」

不良女『はーん……あたししか誘う相手がいないとは、お前も寂しいやつだねえ』

男「なんですかそれ。……相手が誰でもいいわけじゃないですよ」

不良女『ん……そうかよ』

男「不良さんへのお礼なんですから」

不良女『……へいへい』

男「どこで待ち合わせます?」

不良女『駅前なんだし、改札出たとこでいいだろ。時間は?』

男「あそこ、並びますかね?11:30くらいじゃ遅いですか?」

不良女『いいんじゃねえのか?混んでたら別の店でもいいし……あ、あの店行きたいんだよな』

男「いえっ、そういうわけでもないんですけど、僕他にお店知らない……」

不良女『まあ、そんときはぶらぶらして決めればいいだろ』

男「あー……そうですね。それも楽しそうです」

不良女『その後はまあ、考えとくよ』

男「はい。僕も一応考えます」

不良女『それがいい』

男「……じゃあ、また明後日に」

不良女『ん……』

男「おやすみなさい」

不良女『おやすみ……』

男「……」

不良女『……』

男「……」

不良女『……』

男「……切らないんですか?」

不良女『はあ?お前から切れ』

男「嫌ですよ。僕から電話したのに」

不良女『あたしからだろ』

男「……最初に電話したのは僕です」

不良女『電話代かかるのはあたしだけど』

男「あ……ずるいですよそれ!」

不良女『まあ、かけ放題だからいいけどよ。ほら、早く』

男「おやすみなさい……」

不良女『ん……』

男「……」ポチ

男「……」

男「ふぅー……」

男(なんか……予想以上にデートになりそうなんですけど)

男(……今日も眠れなさそう)

(※長髪くんの誘い方レクチャーに関して、保証は一切ございません。ご了承下さい)

【日曜】

男「……」

『10:58am』

男(か、かなり早く着いちゃった……遅れるよりは良いとはいえ)

男「……」

男(こんな格好でいいのかなあ。昨日服買いに行こうか迷ったけど、結局いつもの格好だし……)

男(いいんだよね。デートじゃないんだし……それこそ、友達と出かけるくらいの感覚で良いはずだ)

男(友との待ち合わせでこんなに早く来たことは無いけど……)

男「……」

男(うわあ、何か緊張してきた……どうしよう、僕、変じゃないよね?あっ、汗臭くないよね?)

男(……大丈夫。落ち着くんだ。デートじゃないんだ……デートじゃないんだ……)

男「……」

男(不良さん、どんな格好で来るのかな?……特攻服?)

男(それはそれで面白いけど……って違うんだ。不良さんは別に不良ってわけじゃなくて)

男(……でも本当に想像つかないや。不良さんのプライベート…)

男「……」ドキドキ

男(……やっぱり緊張するな)

…………………………

男「……」

男「……あ」

男(あれって……不良さん……だよね?)

不良女「よ。なんだ、待たせたか?」

男「い、いえ全然。さっき着いたばっかで」

不良女「そうか。結構早く出たと思ったんだけどな……先越されちまった」

男「……」

男(まずいよ……)

不良女「……どうした?」

男「いえ、なんでもないんです」

男(かっ、かわいいとか言った方が良いのかな?でも不良さんそんなこと言われて喜ぶかな?)

不良女「はーん……緊張してんだろ」

男「ち、違います!」

不良女「本当かよ?ならいいんだけど」

男「なんか……想像以上というか……えっ、本当に不良さんですよね?」

不良女「思い出させてやろうか?拳で」

男「それは遠慮しますけど……あのっ」

不良女「ん?」

男「すごく似合ってます」

不良女「ん……ありがと」

男「でも不良さん、全然不良感無いですよ。そんなんでいいんですか」

不良女「いいんだ。休みだし。つーか、褒めて終わっときゃいいのに…お前は懲りねえな」

男「なんか信じられないんですよ!なんですかその格好。めちゃくちゃ良いじゃないですか」

不良女「そうか?フツーだろ」

男「スカートなんて履くんですね……いや、制服はスカートですけど、私服で履くなんて」

不良女「これはスカートじゃねえよ。キュロット」

男「キュロット?」

不良女「ほら。布一枚ってわけじゃないんだ。なんつーか、裾の広い半ズボンって言やいいのか」

男「へー……考えてありますね」

不良女「昔っからあるぞ」

男「キュロット……そう言えば世界史で出てきたような……」

不良女「そうなの?」

男「はい。勉強になります」

不良女「ふーん。そりゃ良かったな」

男「えっと……その髪型も良いです」

不良女「あんま褒めるなよ。ムズムズする」

男「こうやって緊張をほぐしてるんです!」

不良女「……好きにしろ」

男「学校もそれで来れば良いのに」

不良女「やだよ。めんどくさい」

男「あー、確かに毎朝は大変そうですね」

不良女「!」

男「?」

不良女「あ、いや、別に大変ではねえよ?女なら誰でも出来るし」

男「えーっ、僕が女の子でも出来ないと思います。後ろどうなってるんですか?」

不良女「こ、こう」クイッ

男「……すごい」

男(見てもわからない……ひとつに縛ってある髪が背中に垂れている。それはわかる。でも、この三つ編みはどこがどうなってるんだ……?)

男「器用なんですね」

不良女「別に。フツーだよフツー……本当になんてことねえから」

男「かわいいと思います」

不良女「はあ?あたしが?」

男「そうです!」

不良女「……」

男「えっと……かっこいい方が良かったですか」

不良女「いや……」

男(これって……失敗したかなあ……もしかして怒らせちゃった……?)

不良女「……ああ、くそ…嬉しいよ」ボソ

男「え……」

不良女「さ、行くぞ。腹減った」

男「待っ……!もう一回言って下さいよ今の!」

不良女「うるせえ!嬉しいっつったんだよ聞いとけバーカ!」パシッ

男「えっえっ、ならもっと言いましょうか?かわいいって……」

不良女「うるせー!」カアァァァ

【店の前】


不良女「ここか」

男「ここですね」

不良女「……」

男「……」

不良女「壁がもう洒落てるんだよなあ」

男「そうですね。ツタ張っちゃってるし……新しいのに」

不良女「……入る勇気、ある?」

男「不良さんとなら、多分」

不良女「まあ二人なら大丈夫だよな。一人じゃ厳しい」

男「意外ですよね。不良さんならどこでも入って行っちゃうのかなと思ってました」

不良女「ああ?そりゃどういう意味だよ」

男「いえ、なんとなく」

不良女「まあ……ラーメン屋とかは入れるけどよ、こういう店はなんつーか、似合わないんだよな。あたし」

男「今日の不良さんなら似合いますよ。それに、僕はもっと似合わないから安心してください」

不良女「ん……否定はしない」

男「ひどい」

不良女「あははっ、冗談だよ冗談……そうか。今日のあたしなら似合うかね」

男「はい。それはもう」

不良女「これで美味しくない店だったら笑い者だな」

男「えっ、怖いこと言わないでくださいよ」

不良女「大丈夫だろ。そこにメニュー書いてあるけど、美味そうだぞ」

男「あ、本当だ……黒板に書かれちゃうとどれも美味しそうに見えますよね」

不良女「そうだな……ふーん。値段もまあ手頃だし、当たりなんじゃねえか?」

男「良かった……あ、遠慮せず好きなの注文してくださいね。お礼なんですから」

不良女「うん。そのつもり」

男「……じゃあ、入りますか」

不良女「ん……」

<カロンカロン

男「……あの、どうぞ」

不良女「ん?……ああ、入れってか」

男「はい」

不良女「ぷふっ、そりゃどうも」

男「……」ギィ…


店員「いらっしゃいませ。何名様ですか?」

男「二人です」

店員「お煙草はお吸いになられますか?」

男「えっ」

不良女「いえ、吸いません」

店員「はい……ではこちらのお席へどうぞ」

男「……」

不良女「……」

店員「こちら、メニューになります」

男「はーい」

店員「ご注文決まりましたら、またお伺いしますね」

不良女「はい」

男「……」

不良女「……んだよ?」

男「吸わないんですか?」

不良女「吸わねえ」

男「はははっ、ですよね。……不良さんが大人っぽいから、聞かれたんでしょうね」

不良女「どうだかな。そういうオーラが滲み出てたのかもしれねえ」

男「煙草を吸いそうな?」

不良女「この髪が効いたか」

男「関係無いと思いますけど」

不良女「ま、気にしてねえよ。早く選ぼうぜ」

男「そうですね……何がいいかな」

不良女「うーん……」

男「真剣ですね」

不良女「そりゃ悩むだろ。どれも美味そうなんだよな……」

男「僕はこれにします」

不良女「あ!それ取られちゃったか」

男「えっ、変えましょうか?」

不良女「いやいい。……一口くれる?」

男「構いませんけど」

不良女「よし。じゃああたしも一口やるよ」

男「いいんですか?」

不良女「いいだろ」

男「別に遠慮しなくてもいいんですよ?」

不良女「やるっつってんだから貰えよ。嫌ならいいけど」

男「いっ、いただきます」

不良女「それでいい」ジー

男「……決めるの、ゆっくりでいいですから」

不良女「あいよ」

…………………………



店員「あの、先ほどは失礼しました……」

男「はい?」

不良女「?」

店員「あの、未成年……の方ですよね?」

不良女「あっ……はい」

店員「すみませんでした!失礼なことを伺ってしまって……!」

不良女「えっ?い、いえ、いいんです。全然気にしてないし」

店員「あの、当店夜はアルコールもお出ししますので、そのっ、癖でああいった質問を……」

男(あ、別に不良さんが大人びて見えた訳じゃないんだ……)

不良女「……」

男(……なんかちょっと嬉しそうだぞ、不良さん)

店員「お詫びといっては何なのですが、ドリンクサービスさせていただきますので……」

不良女「そんな、悪いです」

男「ここは甘えていいんじゃないですか?不良さん」

不良女「……」

店員「はい。そうして頂けると助かります」

不良女「じゃ、じゃあ紅茶で……」

店員「ミルクはお付けしますか?」

不良女「はい……」

店員「かしこまりました……そちらのお客様は?」

男「……えっ、僕もいいんですか?」

店員「はい、もちろんです」

男「えー、いいのかなあ。どうしよう」

不良女「甘えていいんじゃねえのかよ」

男「でも、僕は、どう見たって未成年で……」

店員「?」ニコッ

男「!じゃ、じゃあミルクコーヒーでお願いします……」

店員「はい……こちらですが、食後にお持ちしますか?」

不良女「はい」

男「それでお願いします」

店員「かしこまりました……では、少々お待ち下さいね」

不良女「……」

男「……」

不良女「なんだ。何か言いたそうだな」

男「あはは。いえ、なんでもないんです」

不良女「別に何もしねえよ。言ってみろ」

男「……やっぱり気になってたんですね。煙草のこと」

不良女「ああ?別に……ああ、ちょっとは」

男「あははっ、やっぱり」

不良女「どうでもいいんだけどよ。割と聞かれるしさ……金髪だし、目つき悪いし、仕方ねえんだけど……」

男「……」

不良女「なあ」

男「はい?」

不良女「お前、委員会入ってるくせにあたしの髪のこと注意しないよな」

男「え?ああ、そうかもしれませんね」

不良女「たるんでるんじゃねえの?」

男「なっ、何言ってるんですか!」

不良女「だって校則違反だぜ?注意しろよ」

男「えー……それはそうですけど」

不良女「……正直なところさ、直した方がいいのか?この髪」

男「えっ、直すって……染めるんですか?」

不良女「あー、そうじゃねえけどさ……お前の意見が聞いてみたい」

男「難しいですね」

不良女「せっかくだからな。学校じゃできない話をしようぜ」

男「……そりゃもちろん、クラス委員としての僕は、不良さんにも校則を守って欲しいと思ってます」

不良女「あ、そうなのな」

男「でも僕は……えっと、僕自身は不良さんに金髪は似合うと思ってて……」

不良女「うん」

男「あの、僕も質問していいですか?」

不良女「うん。あんまり難しくなければ」

男「不良さんは、何か理由があって髪を染めてるんですよね?」

不良女「ああ……まあな。染め始めた頃はな」

男「僕は、理由があるなら良いと思うんです。校則を破っても」

不良女「……」

男「かっこいいから、とか、憧れの先輩が染めてたから、とか、そういう理由でいいんです。理由なき反抗はちょっと理不尽で嫌ですけどね」

不良女「うん」

男「その……校則って、その人がどれだけ従順かどうかを見るためのものだと思うんです。つまりどれだけ言われたことをそのまま受け止めるかってことで」

男「でも、そういう人間ってつまらないと思うんです。自分の考えが無いっていうか……僕もそういう人間なんですけど」

不良女「そんなことねえよ」

男「あ……すみません、変な話になっちゃって」

不良女「いいよ。あたしが聞いたんだし、変な話でもねえよ」

男「そうですか?」

不良女「あたしはお前と話してて楽しいと思ってるぞ?つまらない人間じゃねえよ」

男「……ありがとうございます」

不良女「うん。それで?続けろよ」

男「え……えっと、だから……」

不良女「……」

男「不良さんがかっこいいな、って話です」

不良女「……はあ?」

男「自分のスタイルがあるってすごいことだと思うんです。不良さんみたいに」

不良女「はっ。そりゃどうも」

男「本当ですよ?」

不良女「やめろよ……あたしなんて別に」

男「……」

不良女「お前の方がすげえよ。勉強できるじゃん。音楽だって」

男「あれは……そうしないと僕は馬鹿にされちゃうから」

不良女「?」

男「僕は……背が小さいし、運動も別に得意じゃないんで、学校だとみんなに押しつぶされちゃうんです」

不良女「そんなことねえだろ」

男「いえ、以前はそうでした。小学校の頃は本当そんな感じで」

不良女「へえ」

男「だから……集団について行けるように、勉強で反抗しようとしたんです。僕はこれだけ出来るんだぞ、って」

不良女「……やっぱお前偉いよ」

男「そんなことないです……僕だって、不良さんみたいな反抗がしたかった」

不良女「馬鹿言うなよ。あたしなんか……はああ」

男「……どうしたんですか?」

不良女「目的はお前と同じだよ……結局、馬鹿にされるのが嫌で不良っぽくなったんだあたしは」

男「誰も馬鹿になんかしてませんよ」

不良女「そりゃ不良を馬鹿にしたら後が怖いからだろ。力だけはあると思い込んでるからな不良は」

不良女「あ……お前は命知らずだったけど」

男「最初絡んできたのは不良さんじゃないですか」

不良女「でもそれが今は昼飯を食おうって言ってるんだろ?他にそんな奴いねえ」

男「……」

不良女「で、答えは?」

男「答え?」

不良女「あたしは髪を染めるべきなんですかね先生?」

男「あっ、そうか。そういう話でしたね……」

不良女「そうだろ」

男「不良さんの好きなようにすればいいと思います」

不良女「ふーん、なんかフツーだな」

男「フツーって難しいんですよ?」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年09月25日 (木) 03:43:34   ID: w45CFAtn

続き!続き!

2 :  SS好きの774さん   2014年09月27日 (土) 01:47:37   ID: wrgZlYTU

デート!デート!

3 :  SS好きの774さん   2014年10月18日 (土) 15:29:50   ID: JVVhAQ5B

ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉ

4 :  SS好きの774さん   2014年11月15日 (土) 15:56:41   ID: POaqZpob

これはすごくおもしろい!!!
キュンキュンする
続きがたのしみです!!

5 :  SS好きの774さん   2014年11月16日 (日) 07:07:40   ID: fheiysYt

うわぁ
めっちゃキュンキュンするー!

6 :  SS好きの774さん   2014年11月18日 (火) 10:23:29   ID: 1msovxr6

続きめっちゃ見たくなりますね! こういうのすごい好きです!

7 :  [巫女]博麗霊夢   2014年11月20日 (木) 12:57:10   ID: yOaDq2GX

続きが見たい!!

8 :  SS好きの774さん   2014年11月25日 (火) 21:33:10   ID: Zqp3_GFL

何だろう
幸せそう過ぎてちょっと泣きそう

9 :  SS好きの774さん   2014年11月27日 (木) 22:45:45   ID: IYRsBo3J

辻堂さんやりたくなった…とても好きです

10 :  SS好きの774さん   2014年11月28日 (金) 13:49:44   ID: 6BaoVOeV

まだかなー

11 :  SS好きの774さん   2014年12月02日 (火) 22:22:39   ID: 9N7tqthe

続き待ってます!

12 :  SS好きの774さん   2014年12月18日 (木) 03:39:13   ID: 8rPxBaTF

…いい!

13 :  SS好きの774さん   2014年12月30日 (火) 09:17:54   ID: ZLlAV41V

なにこれ面白い。
出来れば続編、まだかな〜(チラッ)

14 :  SS好きの774さん   2015年01月07日 (水) 01:47:59   ID: FCa2ckeS

ごめんなさい、長髪をとらドラ‼のあのバカで想像してました。

続きはよ~

15 :  SS好きの774さん   2015年02月13日 (金) 13:25:28   ID: wIc6oc0U

はよ

16 :  SS好きの774さん   2015年03月17日 (火) 07:48:22   ID: s1rTevwk

(普通は難しい)
何だこの逆説的哲学みたいなん
深い。

続きオネシャス

17 :  SS好きの774さん   2015年03月23日 (月) 03:15:32   ID: DnfS_0XP

神は言っているここで終わる運命では無いと

18 :  SS好きの774さん   2015年03月26日 (木) 04:40:27   ID: M45gGAOl

放置するなら書くなや

19 :  SS好きの774さん   2015年08月01日 (土) 13:28:06   ID: AmFoIexb

ちょwwここで終わりとかwwひどww

20 :  SS好きの774さん   2015年11月05日 (木) 22:08:06   ID: w4puhpwE

中途半端ばかり止めろ

21 :  SS好きの774さん   2015年11月25日 (水) 02:26:09   ID: SFaHUacg

完結するまでひた走れ
続きが気になって朝も起きれないじゃん‼

22 :  SS好きの774さん   2016年04月09日 (土) 20:13:48   ID: gyhKhpq6

こんなところで終わらすって..ここまで頑張ったのに自分が可哀想だと思わないん...?

23 :  SS好きの774さん   2017年01月30日 (月) 02:53:30   ID: S74jYxij

おいこの胸きゅんどないしてくれんねん

24 :  SS好きの774さん   2017年02月06日 (月) 02:36:36   ID: vQbDDEiy

数年ぶりに来たが続きは無いか...
良作だからホント勿体ない

25 :  SS好きの774さん   2017年04月11日 (火) 19:03:20   ID: fP0DSoH7

早く!早く!更新!

26 :  SS好きの774さん   2017年12月06日 (水) 13:54:13   ID: 4xJ4nQZe

ここで終わりとかマジか

27 :  SS好きの774さん   2018年04月17日 (火) 17:53:56   ID: __xNMA45

今見てる人いる?

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