佐天涙子氏が記者会見「無能力者と偽ったことをお詫びしたい」(47)

「とある科学の超電磁砲」で明るく可愛い、そして無能力者として知られる佐天涙子氏が学園都市内のホテルで記者会見を開いた。

佐天氏は無能力者ということで様々なSSにおいて一風変わった能力を持たせられ、活躍するという場面が多かっただけに今回の問題では波紋が広がった。
そもそも今回の発端は佐天氏の親友である初春飾利氏の会見であった。

初春氏は佐天氏と同じく「とある科学の超電磁砲」の主要キャラであり、名コンビとしてこちらも知られていた。
しかし、その初春氏が会見を開き佐天氏が無能力者ではないことを告発し今回の問題へと発展した。

以下は佐天氏の記者会見を記したものである。

佐天「ーーこの度は、世間を騒がせてしまいましたことを深くお詫び申し上げます。申し訳ありませんでした」

パシャッ パシャッ

記者A「佐天さん、今回の問題に関してですがあなたは無能力者ではないということで間違いは無いんですね?」

佐天「……はい、その通りです」

記者B「今回改めて能力を測定したそうですが、その結果を教えていただけませんでしょうか」

佐天「はい、今回測定した結果ですが……低能力者(レベル1)と結果で出ました」

パシャッ パシャッ パシャッ

記者C「それは正しい結果で間違いないんですよね?」

佐天「はい、間違いではありません。あたしは無能力者ではないと証明されました」

パシャッ パシャッ パシャッ

記者D「今回、初春さんの告発により無能力者ではないとわかった訳ですが、その告発に関しては全て正しいということでいいんですね?」

佐天「一部は認めますが、その他は初春の都合のいいように改ざんされています。全て正しい、全て認めるという訳ではありません」

記者A「では、その一部とその他について教えていただけますか?」

佐天「はい。……もともとは初春からの提案でした。結果的にあたしもそれに同調したのは事実ですが」

記者B「初春さんから? 無能力者ではないことを隠そうと提案したのは初春さんだったんですか?」

佐天「はい、間違いありません」

パシャッ パパシャッ パシャッ

記者E「初春さんは佐天さんの方から無能力者としてやって行きたいと相談された、と会見では言っていましたがそれは違うということですね?」

佐天「違います。初春からです」

記者F「もう少し詳しく、初春さんからの提案を教えていただけますか?」

佐天「……あれは、測定の結果が出た後のことでした」

回想

佐天「聞いてよ初春! あたしね、ついにやったんだよ!」

初春「どうしたんですか? 何かいいことでもあったんですか?」

佐天「うん、実はね……ついに無能力者から卒業したのだよ!」

初春「なぁーんだ、そんなこと……うええっ!?」

佐天「ふふーん、驚いた? いやー、あたしもこの日が来るなんて思わなかったよ」

初春「……佐天さん、まさかまた幻想御手(レベルアッパー)を」

佐天「使ってない! そんなもの無しでもちゃんと能力が使えるんだってば!」

初春「そ、そうなんですか……」

佐天「ほら、初春。もっと褒めてもいいんだよ?」

初春「…………」

佐天「初春? どうかしたの?」

初春「……佐天さん、本当にそれでいいんですか?」

佐天「えっ……?」

初春「無能力者ではなくなった、本当にそれで佐天さんはいいんですね?」

佐天「な、なにその言い方。まるであたしが能力持ったらいけないみたいに聞こえるんだけど」

初春「確かに佐天さんが無能力者でなくなったことは喜ばしいことです。でも、それで佐天さんは得しますか?」

佐天「得って……決まってるじゃんか! なにが言いたいのかさっぱりわからないよ……」

初春「ほら、佐天さんって、無能力者だけど頑張るみたいなところが人気だったりする訳じゃないですか」

佐天「……はい?」

初春「明るく可愛い、でもそういう悩みもあるから応援したくなるんですよ。超能力者の御坂さんと対比もできて物語的にも美味しかったりする訳です」

佐天「あの……なに言ってんの?」

初春「ともかく! 佐天さんの無能力者っていうのはアイデンティティだと私は思うんです!」

佐天(……なんだかすごく失礼なことを言われてる気がする)

初春「そのアイデンティティがなくなったらどうなりますか? 少し考えてみてください」

佐天「うーん……あたしがその能力を駆使して学園都市の問題を解決! とか?」

初春「甘いです!」

佐天「ええっ……」

初春「いいですか? 無能力者でなくなると、後残るのは佐天さんが可愛いってことと私のスカートをめくる位しか個性がないんですよ!?」

佐天「そ、それだとあたしが初春のスカートめくるだけの女みたいだよ! そんなことは……」

初春「そんなことある!」

佐天「ええっ……」

初春「スカートめくる可愛い女の子なんて掃いて捨てる程います。そこに無能力者が付くから人気キャラなんですよ!」

佐天「そ、そんなぁ……」

初春「このまま無能力者ではない、なんて公の場に露わになったら……それこそ他の人にポジション奪われちゃいますよ」

佐天「別にあたしは人気とか欲しい訳じゃ……」

初春「佐天さん……私達、友達ですよね? 名コンビですよね?」

佐天「急にどうしたの? 確かに初春は親友だと思ってるよ」

初春「はい。ということは……」

佐天「ということは?」

初春「ーー佐天さんの出番が減ったら私の出番まで減っちゃうじゃないですかッ!」

佐天「……は?」

初春「佐天さんが困れば私も困る、親友として当然です!」

佐天「別にあたしは困ってる訳じゃ」

初春「佐天さんが困らなくても私が困るんです! 私が困ってるんですよ!!」

佐天「お、落ち着いて落ち着いて……」

初春「私は落ち着いてます! 佐天さん、もう一度考え直してください。本当に無能力者でなくなってもいいんですか?」

佐天「うーん……別にいいっていうか思いっきり喜びたいんだけど」

初春「……いくらですか?」

佐天「へっ?」

初春「いくら払えばいいかって聞いてるんです。私はいくらでも払いますよ」

佐天「お、お金なんて何円あっても要らないよ!」

初春「私を甘く見ないでください。……積みますよ、花飾りの高さまで」

佐天(初春……あんたおかしいよ。でも、これはあたしのせいで……こんなに……)

佐天「……わかったよ、初春。あたしはーー」

佐天「ーーという風に、あたしは初春に押される形で提案に乗りました」

パシャッ パシャッ

記者F「それが真実だとすると、初春さんの話はほとんどが嘘ということになりますね?」

佐天「はい、その通りです」

記者G「確認したいのですが初春さんの話によると、あなたはSSでの佐天さん能力シリーズの衰退を恐れ嘘をついたということでした」

佐天「違います」

パシャッ パシャッ

記者G「初春さんの天才的なコンピュータ技術により結果を改ざんするようあなたから要請された、というのは」

佐天「違います」

記者G「となると、自分の個性が可愛さとスカートをめくるだけになってしまうのを恐れていたというのも」

佐天「ち、違います! それにあたしはそこまで可愛い訳でも……」

記者H「佐天さんは可愛いと思います。そこは否定しないでください」

佐天「あ、あの……その……どうも」

パシャッパシャパシャパパシャッシャッ

記者A「無能力者ではないのに無能力者だと偽っていた、これは間違いありませんね?」

佐天「……はい、その通りです」

記者A「罪の意識は感じていますか?」

佐天「はい、結果的にあたしのせいで多くの方に迷惑をかけてしまったことを深くお詫びしたいです」

記者B「自分が無能力者ということを利用し、なにか利益はありましたか?」

佐天「特にはありません。あたしはあたしらしくいつも通り生きていたつもりです」

記者C「では得をしたのは初春さんだけということですか?」

佐天「……わかりません」

記者D「結局初春さんからお金はもらったんですか? または他の対価は?」

佐天「お金はもらっていませんが……お礼です、と言われクレープを一口貰いました」

記者E「クレープの味は?」

佐天「ストロベリーチョコです」

パシャッ パシャッパシャッ

記者G「今回のことで初春さんとの関係が悪化するとは思いますか?」

佐天「……わかりません。あたしはただ初春の言われた通りにしただけです」

記者F「初春さんとの名コンビに問題があるとなると今後の超電磁砲の展開にも影響があるのでは?」

佐天「それは……そう、かもしれません」

記者B「多くのファンが支持するあなたのスカートめくり、それがなくなるとどれだけの経済的損失になるかは把握していますか?」

佐天「えっ? そ、そんなこと言われても……」

記者H「ちなみに最後に初春さんのスカートをめくったのはいつですか?」

佐天「えっと……一週間前、だったと思います」

記者H「色は?」

佐天「青のストライプでした」

パシャッ!パシャッ!パシャパシャッ!パパシャッ!パシャッ!パシャッ!パシャパシャパシャッ!パパッ!

記者A「ともかく、あなたは多くの方を騙してしまった。それは認めるんですね?」

佐天「はい。きちんと罪を償いたいと思います

記者D「無能力者ではないということですが、具体的にその能力について教えていただけますか?」

佐天「はい、空力使い(エアロハンド)といいます。風を操る能力です」

記者C「最後に質問したいのですが、その能力をここで見せていただけますか?」

佐天「……わかりました。これを風で倒し、無能力者ではないと証明いたします」

記者E「あの……それを、倒すんですか?」

佐天「はい。このポッ◯ーの箱をあたしの風で倒します」

記者達「…………」

佐天「どうかしましたか?」

記者H「えっと、ちょっとしょぼ 佐天「何か?」

記者H「い、いえ、何でもありません」

佐天「それでは、いきます……ふんっ!」

シーン

記者A「どうしました? もうやっていいですよ?」

佐天「は、はい。えっと……集中して、……はいっ!」

シーン

記者B「あのー……」

佐天「あれ? おっかしいなぁ……とおっ!」

記者C「何もおきないんですけど」

佐天「ど、どうして……」


「待ってください、佐天さん!」


佐天「そ、その声はーー」

佐天「初春!? あんた、どうしてここに……」

初春「佐天さんに……真実を伝えに来たんです」

記者A「真実? また何か新しい情報が入ったんですか?」

初春「佐天さん、能力を測定したのはここ最近で二回。間違いありませんね?」

佐天「う、うん。初春に話したのと昨日やった時の二回だけど」

初春「皆さん、この映像をご覧ください。……これに真実が映っています」

佐天「え? 映像って、これ……あたしが測定した時のやつ?」

初春「はい。二つのシーンをご覧ください」

学校の中の測定する部屋


教師A「えっと、あなたは風力使いってことだけどなかなか目に見えるような能力は使えないと」

佐天「はい……」

教師A「他の測定値を見ても……なるほどねぇ。一応、実際にやってもらえるかしら? このお菓子の箱を倒してみて」

佐天「わかりました。えっと……えいっ!」

教師A「本当に何も起きないのね……残念だけどあなたはやっぱり」

佐天「ま、待ってください! もう一度……やあっ!」

教師A「うーん……何も変化は、あら?」

パタッ

佐天「た、倒れた! 先生! 今倒れましたよね!?」

教師A「え、ええ。確かに倒れたけど……」

佐天「これってもう無能力者ではないですよね! やったー! もう無能力者じゃなくなったんだー!」

教師A「あの、佐天涙子さん。まだ確定した訳では」

佐天「やっとあたしにも……先生、ありがとうございました!」ダッ

教師A「ちょ、ちょっと待って……」

初春「……これが佐天さんの測定の映像です。間違いありませんね?」

佐天「うん。ちゃんと風で倒れてるよね、これ」

初春「では、このシーンの別カメラの映像をご覧ください」



教師B『あー暑い暑い……よっと』カチッ

佐天『やあっ!』パタッ



佐天「えっ……? う、初春……」

記者C「こ、これは……まさか!」

初春「ええ、箱は佐天さんの力で倒れたのではなく……扇風機の風で倒れたんです」

佐天「で、でも! もう一回やっても倒れたんだよ!?」

初春「……佐天さん、どうぞ」


教師A『では佐天涙子さん、落ち着いてやってみてね』

佐天『わかりました……いきます』


記者D「これは、二回目の測定の時の映像ですか?」

初春「はい、ここでも佐天さんは箱を倒すことに成功しています」


佐天『えいっ!』パタッ

教師A『うーん、測定値上は能力が見えるレベルかどうかは分からないのだけど……』

佐天『でも倒れたんだから大丈夫ですよ。では、あたしは会見の準備があるので……』


初春「しかし、やはり別のカメラを見るとーー」

教師B『あー、暑い暑い』カチッ


佐天「…………」

初春「……佐天さん、もうわかりましたよね? あなたはまだーー無能力者なんです」

佐天「あたしの能力は、幻……」

記者E「では、今回の発端は佐天さんの早とちりだった、ということでしょうか?」

初春「その通りです。佐天さんはいつまでも変わらず無能力者のまま、それだけが真実です!」

パシャッパシャッパシャッ

佐天「そ、そんなぁ……」

佐天「あたし、ちゃんと確認せずに一人で舞い上がって……バカみたいじゃん」

初春「ええ、残念ですが……世間に迷惑をかけたことを改めて謝りましょう」

佐天「……はい。皆さん、ダメな無能力者ですいませんでした……」

「そんなことはない!」

佐天「えっ……?」

記者A「佐天さんはダメなんかじゃない! ちゃんと今まで頑張ってきたじゃないか!」

記者B「そうだ、佐天さんは悪くない」

記者H「そして佐天さんは可愛い!」

記者達「そうだそうだ!」

佐天「みんな……ありがとうございます!」

初春「よかったですね、佐天さん……これで私達も何も変わらず明日から」

佐天「……でもさ、これってあたしも悪いけど……だいたいは初春のせいだよね?」

初春「……はい?」

佐天「初春がわけわかんないこと言わなくて、さらに会見とかいうのもしなければ何も起きなかったよね?」

初春「……可能性は、あるかもしれませんね」

佐天「あるかもしれませんね、じゃないよ! 初春……あんたのせいで……!」

初春「さ、佐天さん? か、顔が怖いですよ?」

佐天「うーいーはーるー……」

初春「ま、まさか!? ストップ! ストップ佐天さん! こんなに大勢の前ではさすがに!」

佐天「とりゃー!」ブワッ

記者達「おおー!」

初春「きゃーっ!」

パシャッパシャッパシャッパシャパシャッパパパパパシャシャッ

翌日の新聞の一面は「佐天さん、やっぱりゼロだった」、「今日はピンクの水玉」と今回の騒動で持ちきりだった。
その後、佐天涙子氏は初春飾利氏にクレープ一週間の賠償を求め騒動の終わりを迎えた。

佐天氏は「次は扇風機の無い部屋で測定したい」、初春氏は「チェックメイト」とそれぞれコメントした。

終わり

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年03月12日 (水) 17:49:17   ID: 3Hqd-z_Y

笑いすぎたwww乙

2 :  SS好きの774さん   2014年09月10日 (水) 15:07:22   ID: K3tai1PW

パンツの柄聞いたときのシャッター音の多さにわろた

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