垣根「ただいま」(477)



※この作品はフィクションです。実在の人物、番組、ゲームなどにはいっさい関係ありません※

台本形式だったり地の文だったりします。


ラジオ『背伸び寝転びクッション完備』

ラジオ『あなたに届けるお喋りセラピー』

ラジオ『はじまるよっ!』

垣根「はぁー、木曜日はやっぱりこれだよなぁ…」



ラジオ『豊崎愛生のおかえりらじお』



ラジオ『みなさん、おかえりなさい。豊崎愛生です』

垣根「ただいま」

ラジオ『さぁ、この番組はお疲れモードで帰宅した貴方を私、豊崎

愛生がおかえり!っとお出迎え』

ラジオ『心通わすほっこりトークで、溜まった疲れをゆる~りとほぐしてしまおうというリアルタイムプログラムです』


ラジオ『9月最後じゃん!今日!』

ラジオ『おかえりラジオは半年になりました♪』

垣根「はぁ…冒頭だけでも超癒されるぜ……」

心理「ねぇ、」

垣根「うるせぇなぶっ殺すぞ出てけ」

心理「……」イラッ

心理(ピンセット強奪が迫ってるっていうのに、ふざけないでよ)

スタスタ

バタン

垣根(もっとドアゆっくり閉めろよ。音うるせぇだろクソが…!)


ラジオ『今日はぁ、リスナーの皆さまに何を聞きたいかっていうと』

ラジオ『許せない食べ物!を聞きたいと思います』

垣根「メール送るか」メルメル

垣根「読まれないかなぁ……」

ラジオ『まずはDillの話をしますね!』

垣根「きたきたきた!え、クラムボン!?愛生ちゃんすげぇ!!」

ラジオ『え、じゃあここで一曲お届けしたいと思います』

ラジオ『発売日は11月10日です!』

ラジオ『豊崎愛生でDill!』

ラジオ<~♪~♪

垣根「うおおおお!!なんだこの曲、神曲じゃねぇか…」

垣根「やべぇ…はやくCD欲しいぜ……」

垣根「とかくに感想メール送るか」メルメル

垣根「けいおん!の映画も楽しみだ。舞台挨拶とかあんのか?」

垣根「ちょ、なんだ今の声…可愛すぎんだろ…」

垣根「アキオきたーーー!!!」

垣根「やっべぇwww腹いてぇwww」


ラジオ『番組中に届いたお便りもどんどん読んでいきますね!』

ラジオ『おかえりネーム、“ゼロさん”からです。いつもありがとねー!』

ラジオ『“豊崎さん、ただいま”』

ラジオ『おかえり!あ、これ今日のテーマですね』

ラジオ『“僕の許せない食べ物はシャケ弁です”』

ラジオ『えぇー、なんで?美味しいよねぇ?シャケ弁。私好きですよ?』

ラジオ『“なぜなら、今の上司がシャケ弁が好きだからです”』

ラジオ『“その上司は僕にとても厳しく横暴です”』

ラジオ『“しかもファミレスで店のメニューを頼まずシャケ弁を貪ってます”』

ラジオ『へへっへぇー!すごー!普通、そんなこと出来ないよ、おもしろーい、ふふふぇっ』

ラジオ『“店員は慣れているのか何も言ってきません。そして周りのお客さんの目が痛いです”』

ラジオ『“そのせいでシャケ弁を見ると上司を思い出してしまいます”』

ラジオ『“シャケ弁は悪くないと分かっているのですが、ストレスを感じてしまうので許せません!”』

ラジオ『上司が嫌なんだぁ…。どんなお仕事してるか分からないけど、大変そう…』


ラジオ『厳しくて横暴か…。でも、厳しいっていうのは嫌なことばかりじゃないと思うんですよ』

ラジオ『確かに自分ばかりに厳しいと心折れちゃうよね』

ラジオ『でもねでもね、厳しいっていうのはゼロさんに期待してるからだと思いますよ?』

ラジオ『だってさ、考えてみて』

ラジオ『何も出来ない人には誰も期待なんかしないでしょ?』

ラジオ『上司の厳しさは期待の裏返しなんですよ!』

ラジオ『と、私は思いますねー。お便りありがとうございました!』

垣根「読まれなかったか…。つーかこのゼロってやつ、最近よく読まれてるよな……羨ましい」

ラジオ『次のお便りは、私生活のことですね!これはおんにゃのこからですね!!』

ラジオ『おかえりネーム“つぼつぼさん”ありがとうございます』

ラジオ『“あきちゃんただいま”おかえり~』

ラジオ『“私は今好きな人が居ます。でも何をどうしたらいいか分かりません”』

ラジオ『いいね!いいねこういうの!!…すいません、ちょっとテンション上がっちゃった、ふえへへへ』

垣根「恋バナでテンション上がるなんて……女の子らしいじゃねぇか……可愛い……」


ジオ『“好きな人は同じ職場の人なんですが、職場には魅力的な女の人がたくさん居ます”』

ラジオ『“なので心配です。あきちゃん、助けて”』

ラジオ『おー…恋愛相談ですよ!?恋愛相談!』

ラジオ『おかえりラジオで恋愛相談なんて前代未聞じゃないですか!?』

ラジオ『えーっとねぇ、とにかく優しくしてあげればいいんじゃないですかね!』

ラジオ『ぜんぜん、アドバイスになってないー…すいません。でも応援してるよ!』

ラジオ『良い報告まってるよー!』

ラジオ『こういうお便りもいいですよね。じゃんじゃん送ってきて下さい!』

垣根「……また読まれなかった」

ラジオ『もう一つ!生放送中に届いたお便りです』

ラジオ『おかえりネーム“オジギソウさん”です。ありがとう』

ラジオ『“豊崎さん、ただいマカロニ”。おかえリンゴ!』

ラジオ『“Dill初めて聞きました!すっごい良い曲で興奮しました!”』

ラジオ『“発売日まで待てません!”』

ラジオ『本当にありがとうござます!Dillの感想、たくさん来てますよー』  


ラジオ『本当に、本当に、すっごく嬉しいです!』

ラジオ『Dillはヘッドフォン推奨ですよー』

垣根「俺もDillの感想送ったのに…」

垣根「つーか、このオジギソウってやつもよく読まれてるよな…。
    しかもおかえりラジオに限ったことじゃねぇし……いいなぁ…」

ラジオ『どんどん、メール読んでいきますねぇ!』






ラジオ『そんなわけで、この番組ではリスナーの皆から話たいこと報告したいことまだまだ募集しています』

ラジオ『ではでは、今週はこれにておしまい!』

ラジオ『豊崎愛生のおかえりラジオ、明日も貴方にとって素敵な一日になりますよーに!』

ラジオ『おやすみなさーい!』

垣根「おやすみ!」

垣根「……」

垣根「もう終わりか…」

垣根「はぁ…一日の疲れが超取れたぜ……」

垣根「でも、またメール読まれなかったな……。ちくしょうッ…!!」

―――翌日

心理「ねぇ、ピンセットのことなんだけど」

垣根「俺が取りに行く。そんでお前は追ってきたやつをどうにかしろ」

心理「ピンセットって一人で持てるの?大きいんでしょ?」

垣根「能力使えば平気だろ。未元物質に常識は通用しねぇからな」

心理「……いい加減ね。そんなので上手くいくの?」

垣根「どうせ他の組織の妨害があんだろ。緻密な計画立てたって無駄だ」

心理「そうだけど…」

垣根「馬鹿共が暗殺騒動に夢中になってれば上手くいく。平気だ」

心理「すぐ気付きそうだけどね。追ってきたらどうするの?レベル5なんて相手にしたくないわ」

垣根「能力使えば逃げるくらいはできるだろ。頑張れ」

心理「はぁ…」

垣根「ピンセットが無事回収できたら合流する。いいな?」

心理「はいはい」

垣根「あと、一番大切なことなんだけど」

心理「なに?」

垣根「当日はおかえりラジオがある。だから時間までには必ず帰るぞ」

心理「…………………………」

垣根「あとは当日まで待つだけだなー。一応ラジオの録音は予約しとくか」

心理「…………………………」


この日をどんなに待ちわびたことだろうか。
今日は、週に一回楽しみしているおかえりラジオの日だ。
違う。間違えた。
今日は、ピンセット強奪計画を実行に移す日だ。
この日の為に、普段はお便りの内容を考えることにしか使ってない頭を必死に回転させたのだ。

アレイスターへの突破口を必ず手に入れてやる。
腐った学園都市を変えるのは、この俺だ。


心理「順調に進んでるみたいよ。みんな暗殺に夢中だわ」

垣根「分かりやすい目くらましだと思ったが、馬鹿が多くて助かったな」

心理「狙撃手が殺された時は、ヒヤッとしたけどね」

垣根「あんなモン飾りだろ。急いで補充したことを気にされるかもしれねぇけど」

心理「そしたら厄介なんじゃない?施設で足止めされるかもしれないわよ」

垣根「狙撃手をやったのは『アイテム』の連中だ。来るとしたらアイツらだろうな」

戦力ねぇしどうにでもなんだろ、と余裕そうに言う。
そんな彼の横顔は心理定規の不安を和らげさせた。


心理定規は垣根のことが嫌いだ。なぜならキモいからだ。
声優のラジオを熱心に聞く垣根の姿はキモオタそのもので吐き気がする。
前に握手会に行こうとしたが外出許可がおりず本気で涙していた。
これらの行動は、唯一の長所である顔をもってしてもカバー出来ないほどに気持ち悪い。

心理(いつもこういう顔してればいいのに…)

垣根「やべぇな。今すっげぇ愛生ちゃんの声が聞きてぇ」

心理(死ね)

垣根「そろそろ時間だ。もし他の組織が居たら俺がどうにかする」

行くぞ、と声を掛けられ心理定規は頭を切り替える。
気持ち悪い声オタだけれど、頼りになるのだ。

垣根が学園都市の何が気に喰わないかは知らない。
垣根が学園都市の何を変えたいのは知らない。

でも彼が命をかけてこの街に革命を起こすというのなら、少しくらいは手伝っても良い。

心理「油断しすぎて殺されたりしないでよ」

垣根「ねーよ馬鹿」

下っ端が待機させているステーションワゴンに乗り込む。目指すは素粒子工学研究所。
車の中では“たくさんの奇跡が待ってる こんな何気ない一日”と優しい声が唄っていた。

こんな感じで声オタていとくんの日常を書いていく物語です。
読んでくれてありがとうございます。


期待

乙!
オジギソウは博士か?

乙!
この感じ…初春「むしろ、すっごく感謝してます!」の作者?違ったらごめん

俺、スクール入るわ


続きに期待


なんだこのほっこり感は……

レスありがとうございます。
とても嬉しいです。

>>15
はい

投下します。


警備が手薄になった施設に侵入するのは簡単だった。
張り合いがなくて拍子抜けしたが、計画通りに事が進んでいる証拠だ。
垣根の端整な顔に笑みが浮かぶ。
この調子ならおかえりラジオまでには余裕で帰れそうだ。

と考えた瞬間、ドゴォンという音と共にドアが吹っ飛んできた。
いやドアだけではない。普通では考えられないほどの強力な光線も飛んできた。
その全てを防ぎながら垣根は舌打ちする。

垣根(そんなに上手くはいかねーか…。つーかあいつは何やってんだ)

垣根はスクールの構成員の男の顔を思い浮かべる。

垣根(死んだのか?まぁ、そんな強いヤツでもねぇし仕方ないか)

目をやると、明るい色の半そで秋物コートを着た女が立っていた。
自分と同じレベル5、第4位の麦野沈利。

垣根「何だ?新手のナンパか?」

麦野「死ねよクソ野郎。その荷物置いてさっさと失せろ」

垣根「いくら顔が綺麗でも言動が汚いと意味ねぇぞ」

麦野「気持ち悪いこと言ってんじゃねぇホスト崩れ」

明確な殺意を持った瞳が垣根を射抜く。
それでも余裕そうにしている態度は余計に麦野をイラつかせた。


麦野「暗殺騒動は囮でそれが本命か。手の込んだことしてるのね」

垣根「それに気付いてわざわざ来てくれるなんて、お前って俺のこと好きなわけ?」

からかうように垣根が言う。
ブチブチィ、という音が聞こえそうなくらいに麦野の顔が歪んだ。

麦野「んなわけねぇだろぉぉぉぉ!!!テメェみてぇなチャラ男に発情する女が居るわけねぇだろうがぁあぁぁぁ!!!」

麦野は垣根に向かって、光線を放つ。
ズバァと空気を切り裂きながら光線は雨のように垣根に降り注いだ。
大きな音を立てて壁が崩れていく。
攻撃を防いだとしても、瓦礫の下敷きになれば死んでしまうだろう。
いつもならこれで戦闘が終わる。しかし今日の相手はいつもと違うのだ。

垣根「すげぇな。研究所倒壊するぞこれ」

関心したように垣根は言う。
傷など一つもついていない。おまけに先ほどの余裕そうな顔のままだ。
攻撃前と何一つ変わっていない垣根の様子を見て麦野は唇を噛み締めた。

麦野(くそっ……2位と4位とじゃここまで力の差があるのかよ……!)

自分より上の相手と戦うことは前に一度あったけれど、目の前の男はその時とは比べ物にならない。
攻撃を防ぐ時に不自然な風が生じるが、彼の能力はそんなものではないだろう。

垣根「次はこっちの番だよな?」

そう言った瞬間、大きな瓦礫が垣根に向かって飛んできた。
しかし垣根が潰れることはなく代わりに瓦礫の方が粉々に砕けた。

垣根「不意打ちかよ。マナーわりぃな」

絹旗「人を殺すのにそんなもの超いらないですから」

垣根「それもそうだな」

瓦礫が飛んで来たほうに目を向ける。
そこには髪の短い少女が立っていた。


絹旗「流石は第2位ですね。私と麦野を前にしても超焦らないなんて」

垣根「焦ってるぜ?二人の女から、こんなに激しく迫られたのは初めてだからな」

絹旗「超黙って下さい」

麦野の殺意が膨らむ気配がした。
気が短いなんて女として致命的な欠点だろう。
俺の愛生ちゃんを見習え。

垣根(どうするか…。こいつらは別にどうにでも出来る。でも戦闘に巻き込まれてピンセットが壊れたらまずいな)

垣根(ここは逃げるか。ピンセット回収した後にこいつら潰せばいいし)

垣根(そういや、Dillの初回版は予約したけど通常版はどうするかな…?どうせ欲しくなるだろうし予約しとくか)

アイテムの二人に緊張が走る。
垣根は何かを考えている。自分達をどう処分するかでも考えているのかもしれない。
無防備な行動だが、垣根と二人とではそんな余裕を与えるほどに戦力が開いている。

麦野(クソ野郎が…、何仕掛けて来やがる…)

麦野はいつでも反応できるように、全神経を垣根に向ける。
油断すれば一瞬で殺されるだろう。

しかし垣根は二人に背を向けると、そのまま走って行った。


不意の行動に麦野は頭がついていかなかった。
どう考えても向こうが有利なこの状況で、垣根が逃げ出すなど思わなかったからだ。

麦野「に、逃げてんじゃねぇぞ!!こっち来て戦え租チン野郎!!!」

光線を打ちながら垣根を追いかける。
攻撃は背中に飛んでいくのに、一つも当たらない。
垣根の周りだけが綺麗に崩れていく。

麦野(私の攻撃を防ぐのに見る必要はないってのか…!)

絹旗「麦野、超待って下さい!無暗に攻撃しては私たちも超危ないです」

そんな声を麦野は無視した。
確かに施設は半分くらい壊れていつ全倒壊してもおかしくない。
しかしそれで垣根が死ねばラッキーなのだ。そんなことありえないが。

もう一発撃ち込んでやろうと垣根に標準を合わせていると、不意にこちらを向いた。

麦野(不味い!何かしかけて、)

そう思った瞬間、麦野は床に叩きつけられていた。
何をされたかは分からない。自分が攻撃されたことだけしか分からなかった。

垣根「ごめん、車走らせるまで大人しくしててくれ」

軽い口調で言う。命を狙われている自覚が全くないようだ。
そんな態度は麦野をさらにイラつかせた。

麦野(いつ車なんか呼びやがった…!まさか、逃げながら連絡取ってたのかよ…!)


床に転がったまま、麦野は舌打ちした。
戦力の差が開いていると分かっていたが、ここまでとは。
悔しい。ぶち殺したい。
殺意だけが麦野を支配する。

麦野「絹旗、立て。追いかけるわ」

返事がない。
どうやら小柄な少女は麦野より吹っ飛ばされてしまったようだ。
それでも心配する暇も探す暇もない。

麦野(そういえばフレンダはどうした?建物に潰されて死んだか?)

建物に入ってから一回も会ってない同僚の顔を思い出した。
まぁいい。今はあっちが先だ。
考えながらゆっくりと立ち上がる。それと同時にステーションワゴンが走り出した。

車の中の垣根と目が合った。
手を振りながらウィンクしている。

麦野(あの野郎っ……!!!!)

麦野は後を追う為に走り出した。
しかしステーションワゴンはスピードをあげ、アイテムの下っ端と緑のジャージの女の横を通り過ぎて行った。


垣根が窓から後ろを見ると、アイテムがこちらを追いかけようとしていた。
前に向きなおすとタイミング良く垣根のポケットに入った携帯が震えた。
そんな様子を後ろの席から見ている少女が一人。

フレ(ど、どうしよう…)

アイテムの構成員であるフレンダはピンチだった。
麦野達と研究所に入ったのはいい。
別れてスクールを探していたのが……

フレ(変なドレスの女に捕まっちゃうし、しかもあいつの言うことに逆らえなかったし!!)

そのドレスの少女に車に乗れと言われて、スクールのステーションワゴンに乗っているのだ。
前に座っている男は電話で話している。
第2位の垣根帝督。自分がどうにかして勝てる相手じゃない。

垣根「あ?適当に足止めしとけ。殺してもいいから」

フレ「……」

垣根「え?なんで捕まえさせたかったって?」

フレ(やばい!これって私の話じゃん!!!)

垣根「決まってんだろ」

言いながら垣根が振りかえる。
鋭い眼差しと目が合い、フレンダは心臓が停まりそうになった。

垣根「こいつにアイテムの隠れ家を聞き出すためだ」

フレ(あーーーー!!!麦野!絹旗!滝壺!助けてーーーー!!!!)

垣根「じゃあな」

ブチッっと電話が切られる。
ガタガタと震えるフレンダを無視して、垣根は運転手に声をかけた。


垣根「おい、曲流せ」

運転手「わかりました。本当に好きですよね」

垣根「好きじゃねぇよ。愛してるんだ」

運転手と垣根の会話などフレンダの耳には入ってこない。
後ろを見るとアイテムの車が鉄球で潰されている。
息を飲んでフレンダは窓に張り付いた。
フロントガラスから脱出したらしく麦野、滝壺、浜面の三人がバラバラに走る。
先ほど自分を捕まえたドレスの女が浜面の後を追いかけるのが見えて、ホッとした。
あの男なら死んでも問題ない。

フレ(結局私はここで終わりって訳よ……麦野の胸、揉みたかったな…)

組織のリーダーの顔、仲間の顔を思い浮かべた。
きっと皆とはもう会えない。
そしてファミレスで好きなことしながら皆で駄弁るのも出来ないし、
大好きなサバ缶も食べることは出来なくなる。
そう思うと涙が溢れてきた。

垣根「泣いてんじゃねぇよ」

いきなり声をかけられ肩がビクッと揺れる。
フレンダは涙目で垣根を見つめた。

垣根「別に殺すなんて言ってないだろ」

フレ「……へ」

意外すぎる言葉に首をかしげる。
この言葉が本当であるかどうかは分からないが少しだけ肩の力が抜けた。

垣根「アイテムの隠れ家と構成員、それぞれの能力をきちんと教えてくれたら、生かしてやってもいいぜ?」

フレ「え……えっと……」

垣根は意地の悪そうな笑みを浮かべながら、フレンダを見た。
思った通りかなり動揺している。
アイテムの中で一番口が軽そうなやつを選んだが、どうやら正解だったみたいだ。
教える気の無い奴はすぐに否定を口にする。
動揺するのは仲間を売ろうかどうか考えてる証拠だ。


垣根「どうすんの?」

フレ「そ、それは、できな」

垣根「へー」

プシュッと、音がした。
フレンダが音の方を見ると小さい穴が空き煙が出ている。

垣根「サイレンサーってすげぇな。本当に音が全然しねぇ」

運転手「弾、無駄にしないで下さいね」

垣根「分かってるよ」

その会話でフレンダはようやく気付いた。
垣根が銃を撃ったのだ。

垣根「車の中が血まみれになるのは気分が良くねぇ。話してくれると助かるんだけど」

ゴリッと銃口がおでこに押し付けられる。
フレンダはごくりと唾を飲んだ。

垣根「黙るなよ。それとも質問忘れたのか?」

フレ「えー…っと、その……」

長いこと暗部で働いているが、ここまでピンチになったのは初めてだ。
頭に銃を向けられるなんて数時間前は考えてもいなかった。

もし、言ったらどうなるのだろう。
きっと麦野はそんなことを許さないだろう。間違いなく殺される。
しかし言わなくても殺されるのだ。

先ほど垣根は正直に言えば生かすと言った。
それが本当ならば、正確に情報を言ってしまえばよい。
でも、そのせいでアイテムのメンバーに危機が及ぶ。
でも、言わなければこの場で殺される

フレ(どうしよう……、でも、どっちにしろ死ぬんだから、)

死ぬのなら、麦野に殺されよう。
ここで訳の分からない男に殺されるよりかはマシだ。


フレ「分かったって訳よ……。教えるから銃をおろして」

垣根「賢い選択だ。隠れ家はこれに書け」

ボールペンと紙が渡される。
全部書けよ?と念を押された。
フレンダは震える手で隠れ家の場所を記入した。
情報を伝え終わった後、垣根は安心したように言った。

垣根「前に入手した情報と違う所はないのか。良かった良かった」

フレ(知ってたなら、私に聞かなくてもいいじゃん!!)

いちゃもんをつけたかったが、そんな勇気と度胸はない。
生かして貰えるというのに垣根の機嫌を損ねるようなことなど出来なかった。

垣根「もう少ししたらお前はおろしてやるよ」

フレ「……」

垣根「後は好きにしろ。つーか早く曲かけろよ」

運転手「あ、すいません」

運転手がCDの再生ボタンを押す。
暗部の車内には相応しくない優しいメロディーが流れ始めた。
優しく甘い女性の唄声が三人を包む。

フレ(あれ、これって……もしかして、)

フレンダはその曲を知っている。最近、大好きでよく聞いている曲だった。
歌手は知らないけれど、作詞作曲の人のファンでmp3に入れているのだ。

フレ「この唄が人生最後の曲か……悪くないって訳よ……」

ポツリと独り言をつぶやく。
聞き入るために目を瞑ると、涙が頬に流れた。



垣根「おまえ、いま、なんつった?」



フレ「へ?」


垣根が不意に話しかけてきた。
表情は驚愕に染まり、声は震えている。しかしどこか嬉しそうだ。

フレ「今って…」

垣根「この唄、知ってんのか?」

フレ「え、う、うん」

フレンダは訳が分からなかった。この男はなんでこんなに動揺しているのだろうか。
今流れている曲に何かあるのか?
この曲に“スクールの機密事項”が隠されているのだろうか…。

フレ(もし、そうだったら形勢逆転のチャンスがあるかもしれない!結局、まだ死ねないって訳よ!)

フレンダはこれでも暗部の人間だ。今まで敵の不安や動揺を利用して生き延びてきたのだ。
今回だって、頑張ればどうにかなる、と自分に言い聞かせて涙をとめた。

垣根「なぁ、お前、愛生ちゃん知ってるのか?」

フレ「…………は?」

誰だそれ。
恥ずかしそうに聞いてくる垣根を見た。もしかして、歌手の名前だろうか。
フレンダは自分のmp3を取り出し操作し始めた。
作曲者のカテゴリ“谷山浩子”をクリックすると、豊崎愛生という歌手名があった。


フレ「あんたの言ってる愛生ちゃんって豊崎愛生のこと?」

垣根「ちゃんをつけろよデコ助野郎!!!!」

フレ「ご、ごごごめんなさい!」

光の速さでフレンダのひたいに銃口が突き付けられた。
垣根は今にも引き金を引きそうだ。怒りで手が震えている。

フレ「ちょおおおお落ち着いてってわけよ!今は豊崎愛生ちゃんの話じゃないの!?」

顔も知らない女性の名前をフレンダは口にした。
きっと彼女がこの状況を打破するキーとなるだろう。

フレ「銃なんてあったら愛生ちゃんの話なんて出来ないでしょ!」

その言葉を聞くと垣根は満足そうに笑い銃をおろした。

垣根「お前が知ってるとはな。アイテムにも話が分かるやつが居るじゃねぇか」

フレ「あー……実は知らなくて、」

垣根「え」

垣根の嬉しそうな顔は一瞬で曇った。
絹旗が普通に面白い映画を見終わった時の顔と同じだ。彼は落胆しているらしい。


フレ「この曲作ってる人のファンって訳よ!みんなのうたとかでよく流れるんだけど」

垣根「あ?作曲者?気にしたことねぇな」

言いながら、垣根は歌詞カードを取り出した。
なんですぐ出てくるんだ。

垣根「谷山浩子か…。もしかして、まっくら森の歌とか作ってる人?あれトラウマなんだよな…」

フレ「そう!だから“何かが空を飛んでくる”を知ってるの」

垣根「なるほどな…」

垣根は俯いて難しそうな顔している。
そして、顔をあげフレンダを真っ直ぐ見つめた。
垣根は少し緊張した声でフレンダに問いかけた。

垣根「どう思った?」

フレ「何が?」

垣根「作曲者が好きなお前は、愛生ちゃんの唄声を聞いてどう思った?」

フレンダは別に声など気にしていなかった。
歌詞と曲調が好きなだけで、あとはどうでも良かったからだ。
しかしこの男は“豊崎愛生”という女性が大切らしい。
ならば、それを利用しない手はない。

フレ「結局、素晴らしいって訳よ!谷山さんの曲と愛生ちゃんの唄声は相性抜群だと思うわけ!!!」

垣根「そうだよな!お前はやっぱり話が分かるやつだよ!」


フレ「サビに入る前の所が好き。可愛いと思う」

垣根「もうちょっとでその部分だな」

CD<指をくわえてみーてるだけー♪

フレ垣根「「ライッ♪」」

フレ「そうそうここ!結局、最高って訳よ!」

垣根「分かる!すっげぇ分かる!!お前いい奴だな!!」

垣根は暗部のリーダーを務めている男とは思えないほどの眩しい笑顔だった。
鋭い眼光は消え失せ、少年のような無邪気の笑みだ。

垣根「ファン意外の人からそう言って貰えるなんてすっげぇ嬉しいぜ!」

フレ「ファン……?えっと、その豊崎愛生ちゃんって何なの?」

垣根「天使だよ」

フレ「は?だから、誰?」

垣根「豊崎愛生(とよさき あき、1986年10月28日 - )日本の声優・歌手・女優。
    ミュージックレイン所属。徳島県出身。血液型はAB型。身長169cm」

フレ「え?は?」


垣根「来歴:高校生時代は地元徳島のローカル局四国放送(JRT)のテレビ番組『土曜はナイショ!!』に出演していた。
    なお、その縁で2008年6月12日放送の『530フォーカス徳島』の取材を受けている。
    2005年から2006年にかけて開催された「ミュージックレイン スーパー声優オーディション」に応募・合格し、
    声優としてデビューする。声優を目指したきっかけとして、『土曜はナイショ!!』に届いた視聴者からの手紙で、
    それまで嫌悪していた自分の声を励みにしてくれる視聴者の存在を感じ、「声の仕事に就いて恩返ししたい」
    と思ったことを挙げている。
    テレビアニメでは、2007年の『ケンコー全裸系水泳部 ウミショー』(蜷川あむろ役)で
    自身初のレギュラーを獲得するとともに主役デビュー。以降、名前のある役を演じるようになるとともに、
    『しゅごキャラ!』シリーズ(スゥ役)といった長期レギュラー作品へも出演するようになる。
    2009年2月15日に開催された「ミュージックレインgirls 春のチョコまつり」において、
    同じミュージックレイン所属の寿美菜子・高垣彩陽・戸松遥とともに声優ユニット「スフィア」の
    結成を発表(所属レーベルはGloryHeaven)。
    2009年4月に放送されたアニメけいおん!の平沢唯役で知名度を大きく上げる。
    自身23歳の誕生日となる2009年10月28日に、『love your life』で歌手デビューを果たした。
    本人曰く、「偶々、誕生日の10月28日が水曜日だったからデビューの話が進んだ」とのこと。
    2010年3月6日に発表された第4回声優アワードにて、新人女優賞を受賞すると同時に、
    テレビアニメ『けいおん!』の劇中にて結成したユニット"放課後ティータイム"として、
    日笠陽子、佐藤聡美、寿美菜子、竹達彩奈とともに歌唱賞も受賞[5]。
    アニメージュ第32回アニメグランプリ声優部門においてもグランプリを受賞している(出典wikipedia)」

フレ「ちょ、待って!」

垣根「なんだよ。俺はお前の質問に答えただけだぜ?」

フレ「……声優なの?」

垣根「そうだよ!今をトキメク女性声優さんだよ!」

垣根「顔も可愛いし、演技も上手い!ラジオのトークも面白い!」

垣根「イラストを描いたり、ゲーム趣味だったり、料理が上手だったり、女の子としても超魅力的だ!!!」

垣根「八重歯と笑顔がチャームポイントなんだよ!」

垣根「巨人とか言われるけど、180㎝ある俺には関係ねぇ!むしろヒール履いて横に立ってほしいぜ!!」

垣根「愛生ちゃんのせいでアニメも大好きになっちまったよ!これは愛生ちゃんに責任とって貰うしかねぇ!!!」

垣根「これから、たくさん活躍するに決まってる!でも無理して倒れたりして欲しくないぜ…」

垣根「それに、」

フレ「すとーーーっぷ!!分かった!分かったから!」

垣根「そうか。なら良い。それでな、」

フレ(まだ、続けるんかい!?)


愛のトークは続けられた。
フレンダはマシンガントークに相槌を打ちつつ全てを聞き流していた。
途中で携帯に電話が着たが“ばーか死ね”と一言だけ言うとブチリと切り、キモい話は続行された。

フレンダはもう垣根に恐怖を感じていなかった。その代わり心の底から気持ち悪さを感じていた。
この日、フレンダは生まれて初めて“声オタ”と接したのだった。




垣根「そろそろ降りろ」

フレ「……話に満足したから用済みなの?」

垣根「ちげぇよ。ここに隠れてろ」

垣根から小さい紙が渡された。
広げると住所と簡単な地図が描かれている。

フレ「は?何言ってんの?」

垣根「このままじゃお前、あの怖いお姉さんに殺されるだろ」

フレ「あー…麦野のことね…」

垣根「だから、そこに身を隠せって言ってるんだよ」

フレ「へ?」

その言葉にフレンダは目を見開いた。この男は一体どういうつもりなのか。
自分を生かしておいて何か価値があるのだろうか?
絹旗や麦野のように戦闘力なんかない。滝壺のように便利な能力もない。
生かしておくメリットはない筈だ。

フレ「ど、どうして?これってスクールの隠れ家じゃ…」

垣根「そうだけど?」

フレ「だって、私はアイテムで、あんたの敵じゃない」

垣根「そうだな。でも、」

垣根は一呼吸置いてから言った。



垣根「愛生ちゃんの魅力を分かるやつを、見殺しにできる訳ねぇだろ」


.


それはとても優しい声で心底フレンダを心配していると分かる。
しかし、台詞が台詞だ。
“お前が可愛いから”だの“運命を感じた”だの言われたら、
ロマンスが始まったかもしれない。けれど残念ながらそれはない。
正直ありがたいとは思わなかったが、フレンダは顔を引きつらせてお礼を言っておいた。

垣根「じゃあなー。そこの隠れ家におかえりラジオの録音したやつあるから聞いてていいぜー」

意味の分からないこと言いながら上機嫌に去って行った。
殺されなくて良かったけれど、なんだか素直に喜べなかった。

フレ「なんだったの。……結局、意味分からないって訳よ」

フレ(麦野達に連絡した方がいいかな、…って携帯はドレスの女に取られたんだった!)

今の地点からだとアイテムの隠れ家は遠い。
しかし他に行く宛てなどない。
はぁ……とため息をつくと、垣根に渡されたメモの住所に足を向けた。

ここまでです。
読んでくれてありがとうございました。

前作も楽しませていただきました。乙です

フレンダが生存ルートだと…

あの方か
前作からファンでした!

ところでこれもしかして帝春?


期待して待ってる

まさかの帝フレww

レスありがとうございます。
今のところ、このSSは恋愛ものになる予定はありません。
初春は出てきますが帝春にはなりません。
期待してる人はすいません。

投下します。


フレンダと別れた垣根達は第四学区に居た。
この学区は料理店が多く、食品に関する施設も多い。
それらの一つである食肉用の冷凍倉庫の中にステーションワゴンを隠していた。

運転手「いいんですか?『アイテム』の構成員を生かしておいて」

垣根「いいんだよ。愛生ちゃんの魅力を理解できるヤツに悪人は居ない」

運転手「……」

垣根「でも『アイテム』の存在は潰さないとな。あいつらの役割は計画の邪魔になるだろうし」

運転手「役割……確か、上層部や極秘集団の暴走を防ぐこと、でしたっけ?」

垣根「そうだ。しかもプライド高そうな女がリーダーやってんだ。きっと地獄の底まで追いかけてくるぜ?」

運転手「……厄介ですね」

垣根「力は大したことねぇから平気だろ。それに隠れ家も分かってる」

運転手「隠れ家はたくさんありますけど、目星はついてるんですか?」

垣根「下っ端に全ての隠れ家を見張らせてんだよ。『アイテム』の連中が来たら俺に連絡が入る」

垣根は会話を打ち切り強奪したピンセットを開け、小さくするために組み直し始めた。
壊してしまうんですか?と部下に問われたが手を休めることなく作業に集中した。


そういえば、あの女はおかえりラジオを聞いているだろうか?
でも録音だとリアルタイムでメールを送ることが出来ない。
もしかしたらあの女は歯がゆい気持ちでラジオを聴いているかもしれない。
そして放送中にメールを送りたいが為に、おかえりラジオを聴き始めるのだろう。
やったね愛生ちゃん、リスナーが増えたぜ!

とか考えていると、バギン!という鋭い金属音が倉庫に響いた。
倉庫の分厚い壁が崩れて外から光が差し込んでいる。
光は差し込んでいるけれど、そこには誰も立っていなかった。

垣根(誰だ?思ったよりも早く見つかったな。もしかしてアイテムの連中か?)

運転手「ぎゃっ。ぐああああああああああああああああッ!?」

いきなり運転手が悲鳴をあげた。
目を向けると、運転手の顔の皮膚や脂肪、筋肉が順番に消えていく。
最後には脳みそもなくなり、服と骨だけになって地面に崩れた。

垣根(おいおい、なんだこのグロいのは。
    やべぇな…愛生ちゃんがこんなの見たら泣いちまうだろ……優しく抱きしめてあげてぇな…)

馬鹿げた妄想にニヤけそうになったが、敵は近くに居るので不抜けた顔は晒せない。
垣根はわずかに眉をひそめてニヤけるのを我慢した。
しかし人影は一切見えない。中年男性の声だけが倉庫に響いてきた。

男「垣根帝督か。レベル5をここで失うのは惜しい事だ」

垣根(……どこに居やがる。テメェの気持ち悪い声なんて不愉快なだけだクソ野郎。愛生ちゃん連れてこいコラ)

垣根は全方位に注意を向けながら、ピンセットを起動した。


垣根「……『グループ』か、それとも『アイテム』か」

男「残念だが、私は『メンバー』だ。時に垣根少年、君は煙草を吸ったことがあるかね?」

垣根「……」

男「箱から煙草を取り出す時、指でトントンと叩くだろう?私は子供の頃、あの動作の意味が分からなかった」

垣根(……愛生ちゃんに俺のをトントンして貰いてぇな)

男「しかしとにかく見栄え良く思えたんだな。だから私は、菓子箱をトントンと叩いたものだ」

垣根「ああ?」

男「今の君がしているのは、そういう事だと言っているのだよ」

垣根「ナメてやがるな。よほど愉快な死体になりてぇと見える」

ピンセットからピッと電子音が鳴る。
モニタに目をやると、採取した空気中の粒子の中に機械の粒のようなものが見えた。
電子顕微鏡サイズの世界の中に明らかな人工物が混じっている。

垣根「ナノデバイスか。人間の細胞を一つ一つ毟り取っていやがったんだな」

男「いや、私のはそんなに大層なものではないよ。回路も動力もない。
   特定の周波数に応じて特定の反応を示すだけの、単なる反射合金の粒だ」

垣根(つまんねぇ話だな。さっさとぶっ殺したい…)

男「私は、“オジギソウ”と呼んでいるがね」

垣根「!!!!?」

垣根は酷く動揺した。


“オジギソウ”


その単語には酷く聞き覚えがあった。
スフィアのラジオでも、らじおん!でも、おかえりラジオでも、
愛生ちゃんが携わっているラジオでは必ず耳にするラジオネーム。
垣根が尊敬すると同時に嫉妬しているリスナーの名前だ。


垣根(馬鹿な…!こいつがあの“オジギソウ”なのか…!)

垣根が動揺している間も中年男は何かを言っていたが、何も耳に入ってこなかった。

垣根(いや、たまたまだ。暗部に所属してる人間のお便りなんかが、頻繁に読まれるわけがねぇ……!!!)

ザァ!!という音が垣根をの周囲を取り囲む。
戦闘から思考が離れていた頭がようやく現実に引き戻された。
辺りを見たが、逃げ道を見つける前に襲いかかってくる。

垣根(これが“オジギソウ”?…なんだ、大したことねぇな……ラジオでは無双してるくせによ)

中年男性の声が聞こえる。
芸術に絶望したのは12の冬だったとか、見所が多くて疲れるだの、数式が大好きだとか、アレイスターの犬でもいいだの……。
内容は興味を持てなかったが、彼の言い廻しは耳触りが良かった。
頭の良い人物なのだろう。でなければ、こういう話し方はできない。

垣根(こいつが“オジギソウ”だったら納得できるな……。頭使って思わず読みたくなるようなお便り送ってんだろ……)

垣根(クソッ……もしそうだったら秘訣とか聞きてぇけど、こいつ敵だしな……)

垣根(つーか、今はこの状況をどうにかしねぇと)

オジギソウを能力で防いで垣根は思考を巡らす。
反射合金の粒。
目に見えないほどの小さい粒が空気に乗って細胞を毟り取るなど恐ろしいな、と思う。
だが空気中の粒子と共に滞空しているのなら、簡単に風に流されてしまうだろう。

垣根(……だったら、爆風でも起こしてどっかにやっちまえばいいだろ)

別に未元物質で防ぎながら戦うことも出来たのだが、それはめんどうすぎる。
まとめて薙ぎ払ってしまった方が簡単だ。


垣根(『メンバー』のクソ野郎は完全に油断してやがる。……チャンスだな)

この世にはない物質を使い、大爆発を起こす。
ゴッ!という音と共に倉庫の壁が粉々に吹き飛ばされた。
あまりの爆発力に周囲のビルが崩れ、人々が逃げ惑っている。
そんな光景には目もくれず、垣根はゆっくりと歩き出した。

外に出ると驚いた顔をした中年男性が居る。
こいつが『メンバー』なのだろう。

垣根「よぉ、絶望したのは12歳の冬っつったよな」

目の前の中年男性は小型端末を慌てて操作するが何も起こらない。
オジギソウを遠くへ追いやるのは成功したみたいだ。
それでも男性はカチカチと操作を繰り返す。
もちろん反応が無く、彼は不思議そうにキョロキョロしている。
いい年した大人が慌てるのは、とても滑稽だ。
可笑しくて我慢できす、垣根は笑いながら言った。



垣根「もう一度ここで絶望しろコラ」


.


目の前の中年男性は諦めたようにため息をついた。
小型端末を白衣のポケットにしまい、垣根に向き直る。

垣根「ずい分、潔いじゃねぇか?さっきまで慌ててたくせによ」

男「現状を打破する策がなければ何をしても無駄だからな。残念だが私に切り札はない」

垣根「へぇ、殺されるのが怖くねぇってのか?」

男「怖くない訳ではない。しかしこんな生き方を選んだ以上は仕方の無いことだ」

垣根「そりゃそうだな。じゃあ死ね」

男「少し待ってもらっても良いかな?垣根少年」

垣根「あ?何言ってんだテメェ」

男「電話がしたい。安心したまえ、仲間を呼んだりなどしない」

垣根「……呼んでも意味ねぇから、別にいいけどよ」

男「君は案外優しいのだな」

垣根「うるせぇな。早くしねぇと殺すぞコラ」

男は薄く笑いながら、携帯電話を取り出した。
使い古した黒い携帯電話は彼の雰囲気に似合っている。


垣根(何のつもりだ?もしかして家族とかに電話すんのか?それって俺が悪役みたいじゃねぇか……)

男「あぁ、私だ。いや、平気だ。ただ、頼みたいことがある」

垣根(最後の頼みなんてよっぽど大切なことなんだろうな。俺には関係ねぇけど)

男「来月の件についてだ。あぁ、そうだ。私が行くと言ったが行けそうにない」

通話をしている男を垣根は警戒しながら見つめる。
男は実に残念そうな顔をしながら通話を続けた。

男「別に曲を聞くことが出来なくても、売上に貢献できれば良いのだよ」

垣根(……曲?来月の件?売上?…………まさか、な)

一つの予想が垣根の頭を過る。
いや、でもありえない。こんな男性が、まさか……。
垣根が自分の考えを否定していると、男性の口から決定的な言葉がはきだされた。

男「……いいさ、“オジギソウ”の名は君が使いたまえ」

垣根「!?」

通話を終了すると男は携帯をしまった。
ゆっくりとした動作で、再び垣根に向き直る。

男「電話が終わるまで待つとは暗部のリーダーらしからぬ行為だな」

垣根「テメェ……」

男「どうした垣根少年。敵は速やかに処分するのがこの世界の基本だろう?遠慮はしなくていい」

垣根「………」


男「垣根少年?」

垣根「……」

男「……」

垣根「……」

男「……」

垣根「背伸び寝転び?」

男「クッション完備!」

垣根「あなにとどける?」

男「お喋りセラピー!」

垣根男「「はじまるよっ!」」

垣根「……」

男「……」

垣根「……おまえ、まさか、本当に、」

男「君がそのフレーズを知っているとは想定外だったな」

垣根「おま、お前のラジオネームは、も、もしかして」


男「“オジギソウ”という」


垣根「!!!!!!!!!!!」

男「ずい分驚いているな垣根少年。私は運が良く人より多く読まれているから一度くらいは耳にしているのかな?」

垣根「一度なんかじゃねぇ……!!」

男「……」

垣根「愛生ちゃんが出てるラジオを聞いた限りじゃ絶対に耳にする名前だ!!」

男「……」


垣根「ネットじゃ伝説になっている“オジギソウ”がテメェだとは…」

男「……そうか。君も豊崎さんのファンだったのか」

垣根「“も”ってことは……」

男「そうさ。私も彼女の甘く優しい声に心が癒されている一人なのだよ」

垣根「……マジかよ」

男「同士に殺されるのなら思い残すことはない。来月にリリースされるDillを聞けないのは残念だがね……」

垣根「……だろ」

男「?」

垣根「殺せるわけねぇだろ!!」

男「……」

垣根「愛生ちゃんが収録を頑張って、一人でも多くの人間に届けたいと思ってる曲が来月リリースだぞ!?」

男「……」

垣根「あんな神曲を聞かずに死ぬなんて、俺が許さねぇ!!!」

垣根「それに、今日はおかえりラジオの日だ。
    愛生ちゃんはあんたの、“オジギソウ”のお便りを待ってるに決まってる!」

垣根「彼女が“おかえり”って言ってくれるのに、テメェは“ただいま”を言わねぇつもりかよ!!」

男「……」

垣根「何とか言えよクソ野郎」

男「……君の言いたいことは、とてもよく分かる。しかし私を殺そうとしているのは君だろう」

垣根「……あ」

男「君は馬鹿なのだな」

垣根「はぁ!?」


男「しかし今の言葉、胸に響いたよ」

垣根「……」

男「そうだな。Dillを聞くまでは私は死ねない。少し悪あがきをしようじゃないか」

そう言うと『メンバー』の男は懐から銃を取り出した。
銃を持っているのなら、もっと抵抗できた筈だ。
それでも何もしなかったのは本当に死ぬつもりだったのだろう。

男「レベル5の君に、こんな物が通用するとは思えないがね」

銃口は真っ直ぐ垣根を捉えていた。
引き金が惹かれる。
パンと乾いた音が響いた。

垣根「――っ!」

男「な、なんのつもりだ」

レベル5に銃など通用するわけがない。
それなのに、弾は垣根の肩を貫き、肉を抉っていた。

垣根「痛ってぇな……クソッ」

男「何故防がなかった、垣根少年」

垣根「これは戒めだ」

男「戒め?」

垣根「伝説のリスナーを消そうとしちまった、俺への罰だ」

男「……」


垣根「『スクール』のリーダーは負傷。テメェの前から逃げ出す。追ったがテメェは俺を見失う。いいな?」

男「君は、本当に馬鹿だな」

垣根「何とでも言えクソジジィ」

くくく、と喉をならして男が笑う。
それにつられて垣根も笑った。

垣根「オッサン、名前は?」

博士「皆からは“博士”と呼ばれているよ」

垣根「博士、か……。あと、もう一つだけ教えてくれ」

博士「なんだね?」

垣根「メールを読まれる秘訣は?」

博士「ふむ……。少々長くなるがいいかな?」

垣根「……時間がない。次の行動に移らねぇと」

博士「ならメールアドレスを教えたまえ。私の心掛けていることを全て教えようじゃないか」

垣根「本当か!?」

博士「その代わり君がなぜ学園都市に逆らうのか、何を変えたいのか、教えて貰ってもいいかな?」

垣根「……聞いても面白くねぇぞ?」

博士「構わない。ただ純粋に興味があるのだよ」

垣根「……分かった」


二人は携帯を取り出し、赤外線通信でお互いのアドレスを送り合った。
そして垣根は、博士に全てを話した。
自分がこの街に何をされたのか。
自分がこの街の何を変えたいのか。

垣根はそれを誰にも話したことはない。
なぜなら悲劇を口にするのは嫌だったからだ。
しかし、目の前の男になら話すべきだと思った。

博士「…………」

垣根「これが俺の命をかける理由だ」

博士「……」

垣根「つまらねぇだろ?」

博士「そんなことないさ。君が、少し羨ましい」

垣根「は?」

博士「若いというのは良いことだな。悲しみを行動に変える力がある」

垣根「……」

博士「私もその経験をしたことがある。きっと、同じ悲劇を味わった者はたくさん居るだろう」

垣根「やっぱりそうか。この街は腐ってやがる……!」

博士「何も出来ないがひっそりと応援しようじゃないか」

垣根「心強いぜ“オジギソウ”」

博士「……リアルでラジオネームを呼ばれるのは少し恥ずかしいものだな」

垣根「ふーん。そうかよ」


博士「ところで垣根少年、さっきからニヤけているがどうかしたか?」

垣根「いや、……愛生ちゃんファンとメアド交換したのなんて初めてで……」

博士「そんな些細なことに喜びを感じる男だったとはな」

垣根「うっせーな。……なぁ、ラジオの感想とかアニメの感想もメールしていい?」

博士「勿論だとも。豊崎さんについて語ろうじゃないか」

垣根「やった!さっそく今日送るからな!無視すんなよ!?無視したら泣くぞ!?」

博士「ああ、待っているよ」

垣根「死ぬなよ博士。少しでも長生きして愛生ちゃんを応援してくれ」

博士「言われるまでもないさ」

そう言うと、背を向けゆっくりと手を振る。
二人はそれぞれ、別の道を歩いて行く。
二人は振り返らない。
振り返る必要などない。

今夜の“おかえり”と言ってくれるあのラジオで、“ただいま”が言えれば同じ場所に居ることになるのだから。

こうして男達は別れた。
殺し合う筈の二人の男は一人の女性により、“友”となったのだった。

やったねていとくん!友達が出来たよ!

そんな訳で今日はここまでです。
読んでくれてありがとうございます!


笑うとこのはずなのにかっこいい

なんかシュールな光景だな
殺し合いから仲間になるとか、それも声優談義でwww

なんだこれ…なんだこれwwwwww

垣根ファンとして全力支援だわ
おもしろすぎるww

一方さんにはげしく期待

ってゆーか このていとくん御花畑に会ったら発狂するんじゃね?

運転手「・・・・・・」

垣根くんテラアホスwwww

>>62
運転手は豊崎愛生のファンじゃ無かったから仕方ない

一方通行「クカカカ……伊藤かな恵ちゃン……いいねいいね最ッ高だねェ!!」

レスありがとうございます。
読み返すと誤字脱字だらけですね。すいません。

投下します。


運転手が居なくなったのをいいことに、車の中では自分で編集した
“うんたん♪うんたん♪”をループさせていた。
いい気分に浸っていると、第三学区の隠れ家に『アイテム』が来たという連絡を受けた。
車で行けばあまり時間はかからなかったけれど、車内の居心地の良さに、つい遠回りをしてしまった。

数十分後、第三学区に着くと名残惜しそうに曲(?)を消して車を止めた。

垣根(さっき撃たれた所は能力で止血したし、腕は動くし平気だな)

垣根「……」

垣根(俺の能力ってマジ便利だよな。なのになんで2位なんだよ……)

どうでもいいことを考えながら、連絡を受けた地点に向かう。

アイテムの隠れ家があるらしい高層ビルの一角。
スポーツジムやプールなどの屋内レジャーを利用するのにはそれなりの資格が要る。
建物に入るだけで会員証を求められたり、各施設を利用するのに会員証のランクを調べられたりするのだ。
垣根はいつか憧れの女性と二人で来る時のために、会員証は発行したが一度も使ったことがない。

垣根(こんな目立つ所を隠れ家に選ぶなんて『アイテム』はアホか?)

ビルを見上げ垣根は目を細めた。
金持ち共が乳繰り合いながら屋内レジャーで遊んでいると思うと腹が立つ。リア充死ね。
絶対に愛生ちゃんと来てやる。

垣根は一つの決意を胸に『アイテム』の元へ向かった。


―――――――――――――――――――――

麦野と絹旗と滝壺、そして浜面の四人はVIP用の個室に居た。
研究所の襲撃以来、フレンダの姿はない。
もちろんリーダーの麦野は探しに行くなどせず、『スクール』への反撃を考えていた。

麦野「『アイテム』の存在意義は上層部や極秘集団の暴走を防ぐこと。そいつをまっとうしてやろうじゃない」

滝壺「検索対象は『未元物質』でいい?」

浜面「誰だそりゃ」

麦野「第2位のレベル5。『スクール』を指揮してるクソ野郎だよ」

浜面「ふーん……」

そういえば、と浜面は思った。
今日は浜面が楽しみにしているラジオの日だ。
今日は色々あるが夜には帰れるのだろうか?
聞き逃したとしても、録音はセットしてあるので問題ないけれど、やはりリアルタイムで聞きたい。

浜面(最近よくお便り読まれるし、今日も読まれたりして……)

期待を膨らませながら、『アイテム』のメンバーに目をやると滝壺が『体晶』を使用してる。

絹旗「滝壺さんも超難儀していますよね。『体晶』がないと能力を発動できないなんて」

滝壺「別に。私にとってはこっちの方が普通だから」

能力者も色々居るらしい。
浜面は興味無さそうにそのやりとりを見る。
今日のラジオのテーマは何だろうか?と考えていると滝壺が口を開いた。


滝壺「結論。『未元物質』は、この建物の中に居る」

麦野「――ッ!?」

絹旗「!?」

二人の目が見開かれる。
何故、こんなに早く?
何故、隠れ家がバレている?
しらみつぶしに探して辿り着ける筈がない。
誰かがこの場所をリークしたというのだろうか?

そんな疑問を無視するようにサロンの壁が蹴り破られる。
蹴り破ったのが誰かなんて見なくても分かる。
研究所で対峙した忌々しい男。

麦野「『未元物質』………ッ!」

垣根「名前で呼んで欲しいもんだな。俺には垣根帝督って名前があるんだからよ」

垣根の手にはピンセットが装着されている。
機械でできた奇妙な『爪』だ。
それを見て浜面はだせぇ、と思った。口には絶対に出せないが。

麦野「『ピンセット』か……」

垣根「カッコイーだろ。勝利宣言しに来たぜ」

レベル5同士のやりとりに部屋の空気が張り詰める。
垣根と麦野は睨みあったまま会話を続けていたが、いきなり途切れた。
ソファに座った絹旗が垣根に向かって数十キロありそうなテーブルを投げつけたからだ。
しかし、テーブルが垣根にダメージを与えることは出来ない。


垣根「痛ってぇなぁ」

浜面(いや、全然痛そうじゃねぇよ……。やっぱりレベル5ってキチガイばっかりだな)

垣根「そしてムカついた。まずはテメェから粉々にしてやるよ」

垣根はとても機嫌が悪かった。
ここに来る間、仲の良さそうなカップルをたくさん見て来たからだ。
それに加え、絹旗は垣根の頭を狙ってテーブルを投げつけてきた。

能力が無かったら、垣根の頭部に直撃していただろう。
そんなことになったらどうなる?
死ぬかもしれない。
死なないとしても、耳が聞こえなくなるかもしれない。
耳が聞こえなくなったら?
耳が聞こえなくなったら、おかえりラジオを聞くことは出来ない。
いや、おかえりラジオだけではない。
マイエンジェル愛生ちゃんのほっこりヴォイスが聞けなくなってしまうのだ。

垣根(このクソガキ、絶対に許さない!)

垣根がくだらないことを考えていると(本人にとっては深刻なことだが)、
絹旗は二人の手を取って麦野に目配せし、壊れた壁の奥に飛び込んでいった。

麦野「テメェの相手は私だ。包茎野郎」

垣根「見たこともねぇのに勝手に決めんな」

麦野「テメェの狙いは『能力追跡』だな?」

垣根「さぁ?お前かもよ?あぁ、でもお前って口汚いからタイプじゃねぇや。わりぃな」

麦野「死ね!」

麦野の言葉を合図に二人は同時に動き出した。


―――――――――――――――――――――

浜面と滝壺はエレベーターホールまで来ていた。
一緒に居た絹旗は二人を逃がす為に再び戦場へと戻って行ったのだった。

絹旗の話によれば、能力追跡を持っている滝壺が『アイテム』の要らしい。
彼女さえいれば状況が巻き返せるというのだ。
だから滝壺を車に乗せ逃げろ、と言われたのだが……。

浜面(あの二人は待たなくていいのか?つーか車なんかで第2位から逃げ切れるのかよ)

滝壺(はまづら、不安そうな顔してる……。だいじょうぶかな?)

この緊迫した状況で滝壺は場違いなことを考えていた。
自分を逃がす為に『アイテム』の仲間が危険な戦いに挑んでいることは十分に理解している。

している、けれど。

時として乙女は、理性が感情に押し流されてしまうのである。
不安と緊張と殺伐がまじった空間で、滝壺は胸を高鳴らせていた。

滝壺(こんなに長くはまづらと二人きりで居るの、はじめて……)

そう。滝壺理后は浜面仕上に恋をしているのだ。


彼女が浜面を好きになった理由はとても単純だ。
浜面が優しいからだ。
役に立たない人間はゴミとして扱う暗部で、滝壺はずっと過ごしてきた。
そんな彼女にとって人を殺す依頼で嫌そうな顔をしたり、
誰かも分からない死体の処理で心痛める少年の姿は眩しかった。
最初は少し気になっていただけのだが、今では大好きになってしまっている。

滝壺(どうしよう……二人きり、それに、エレベーターって密室……)

浜面「……」

―――とにかく優しくしてあげればいいんじゃないですかね!

滝壺(……あきちゃんはそう言ってたけど、優しくってどうすればいいのかな?)

すっかり恋する乙女モードになってしまった滝壺は頭を悩ませていた。
そんな彼女を現実に引き戻すように、エレベーターが止まった。
扉がゆっくりと開いていく。

垣根「いたいた」

浜面(嘘だろっ!何でこんなに早く……!む、麦野は?絹旗は?)

滝壺(はまづら、あせってる…)


垣根は二人に向かって何かを投げてきた。
それは二人がよく見たことのある小柄な少女。
絹旗最愛。レベル4の窒素装甲。
可愛らしい外見だが、戦闘力の高さは確かだった。
なのに、それなのに……。
ぐったりと倒れる絹旗を見て、浜面はレベル5の強さに恐怖を覚えた。

垣根「そいつの判断は良かったな」

二人が言葉を返さなくても垣根は一人でベラベラ喋っている。
浜面は、絶望的な顔していた。汗が頬をつたう。
一方で滝壺はこの状況に希望を感じていた。

滝壺(はまづらが怖いなら、私が助ける)

滝壺(きっとそれが“優しくする”っていうことだから)

滝壺(これが俗に言うアピールチャンス。頑張らなきゃ)

優しくすれば自分の想いに浜面は答えてくれるかもしれない。
そう思うと目の前のレベル5なんか怖くなかった。

恋する乙女は、強いのだ。


不意に隣に居る想い人が小声で話かけてくる。
いつもより吐息が多くて低い声に、滝壺はドキッとした。

浜面「…(お前はエレベーターに乗って降りろ)」

滝壺「…(でも、はまづら)」

浜面「…(どっちみち、ここでテメェを見捨てて『スクール』から逃げたって、
    そんな事をすれば『アイテム』に潰されんだ!板挟みなんだよ、ちくしょう!!)」

垣根「で、どうするよ?別れのあいさつってどれくらい時間がかかるものなんだ?」

別れ?
滝壺はその言葉に反応して垣根の顔を見る。
目の前の男が自分たちを引き裂くというのなら手段は選ばない。
滝壺が垣根を倒すなんて奇跡が起きても不可能だ。
でも、大丈夫。
滝壺には、とっておきの切り札がある。
これを使えば愛おしい彼を助けることができる筈だ。

浜面「―――ッ!!行け!!」

浜面は滝壺の体をエレベーターに押しこもうとしたが、逆に押し込まれてしまった。
滝壺の行動が予想外だったため、浜面は尻もちをついた。


浜面「テメェ、何してん―――」

滝壺「ごめん、はまづら」

浜面の顔は驚きに染まっていた。
何か言いたそうに口を開いているが、言葉を出すことはできなかった。

滝壺「大丈夫。私はレベル4だから。レベル0のはまづらを、きっと守ってみせる」

閉じていく扉の向こうに微笑んで、彼を見送った。
高速でエレベーターが降りていくのを見て安心する。

垣根「すげぇな。レベル0の役立たずを守るために自分を犠牲にするとは」

滝壺「……」

垣根は笑いながら言った。
その言葉に滝壺は激しい怒りを覚えた。

滝壺「役立たずじゃないよ」

垣根「あ?」

滝壺「はまづらは役立たずじゃないよ。何も知らないのに、そんなこと言わないで」

垣根「……っく、ははは」

堪え切れない、というように垣根は笑いだした。
滝壺は黙ってそれを見えていた。


垣根「お前バッカじゃねぇの?組織の要の自覚が全然ねぇな」

滝壺「……」

垣根「あの男が殺されてる間に逃げれば良かっただろーが」

滝壺「それは無理」

滝壺は即答した。
それに対して垣根は眉を潜めた。
『アイテム』の要である女が命張って守る男に何の価値ある?
もしかして、あの男が『アイテム』の要だったりするのか?
下っ端という役職はカモフラージュで、本当はリーダーだったり?
いくつかの可能性を考えたが、フレンダが提供した情報と合致せず頭から考えを消した。

滝壺「たとえ『アイテム』が無くなってもはまづらは無くしたくない」

垣根「はぁ?」

滝壺「それに、優しくすればいいってあきちゃんが言ってた」

垣根「…………あ?」

滝壺「だからはまづらを置いて逃げるなんて、そんな酷いこと絶対にできない」

滝壺はジャージのポケットに手を突っ込んだ。
何かしてくるのか、と垣根は身構える。

滝壺ちゃン生存おめでとう


緊迫した雰囲気で彼女が取りだしたのは、一枚の小さな紙だった。

滝壺「これ、何かわかるよね?」

垣根「!?」

垣根の目が大きく見開かれる。
滝壺が手に持っている紙は人によってはゴミになるが、一部の人にとっては宝物になる紙だった。
そして垣根は後者に当てはまる。

滝壺が持っている物は正確には紙ではなく、栞だった。

栞には赤いリボンが付いている。
表面にはチューリップが描かれていた。
チューリップの隣には可愛らしいフォントでこう書かれている。



“豊崎愛生のおかえりラジオ”



それはラジオでお便りを採用された者だけに送られる栄光の証だった。

栞を手放すのは少し寂しいけれど、守りたいものがあるのだ。
大切な物を失ったとしても、好きな人は助けて見せる。
自分も絶対に生き延びる。
そして、この想いを彼に伝えたい。
強い決心を胸に垣根を見据えた。
その目には迷いも恐怖もない。


恋する乙女は、強いのだ。


ネットの画像でしか見たことのない栞が目の前にある。
初めて生で見た感動が垣根を興奮させた。
滝壺はその様子を見て、内心ニヤリとする。

滝壺「これ欲しい?」

垣根「!?」

滝壺「あげるよ」

垣根「!!!!???」

それは喜ばしい提案だった。しかし栞を譲ってもらって手に入れるなど邪道すぎる。
垣根の顔が歪む。
欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。
けれど、自分のお便りが読まれてこそ手にする意味があるのだ。
しかし、欲しい。

垣根(クソがッ……!!なんで、この女がこの栞を持ってやがる……!!!)

滝壺「あと10秒で返事しないと破いちゃうよ?」

垣根「あ?え、は、ちょっと、ま―――」

滝壺「本気だよ?」

垣根は唇を噛み締めた。
全身に嫌な汗を搔いている。


滝壺「1、2、3、」

垣根「!?」

淡々とした声でカウントが始まる。

滝壺「4、5、6、」

滝壺は栞を両手で持った。

滝壺「7、」

栞はいつでも破ける状態だ。

滝壺「8、」

でも、指に力は入っていない。

滝壺「9、」

カウントと同時に指に力がこもる。

垣根「おい、待て、そんなこと、」

あとは、裂くだけ。

滝壺「じゅ、」

垣根「欲しい!!!!!!!!!!!」

堪え切れなくなった垣根は力一杯に叫んだ。
叫びと共に滝壺は栞を破こうとするのを止めた。


滝壺「……でもね、条件がある」

垣根「……」

栞が彼女の手にある限りは一歩も動けない。
垣根は滝壺を睨みつけることしか出来なかった。

滝壺「『アイテム』を見逃して」

垣根「却下だ」

吐き捨てるように返した。
栞は欲しい。
しかし『アイテム』を見逃すなどできるわけなかった。

滝壺「……そっか。じゃあこれはあげられない」

そう言うと滝壺は栞をくしゃくしゃに丸めようとした。

垣根「待て待て待て待てぇぇぇぇぇ!!!!」

滝壺「だっていらないんでしょ?」

垣根「いらないなんて言ってねぇだろ!!」

滝壺「『アイテム』を見逃さない=栞はいらないってことだよ?」

垣根はこめかみを引きつらせた。
長いこと暗部に身を置いている垣根だったが、ここまで外道な女は見たことが無い。


いっそのこと、この女を殺して栞を奪いとればいいのではないか?
―――しかし、それは、

滝壺「私を殺して栞を手に入れるの?そんなことしたら、この栞は汚れちゃうと思う」

垣根「……ッ!!」

考えが読まれた垣根はビクリと体を震わせた。

垣根の両手は血で染まっている。
今までの人生も汚れて腐りきっている。
でも、それでも。
愛生ちゃんだけは、汚すことが出来なかった。

滝壺「『スクール』の人員を全て撤退させたら交渉成立。あと、これからも『アイテム』の邪魔はしないで欲しい」

垣根「要求することが増えてねぇか?」

滝壺「ないよ。『アイテム』を見逃せばいいだけだよ」

滝壺はまっすぐ垣根を見つめている。
その瞳には一歩も引かない、という強い意志が表れている。

垣根(クソッ、こんな女の言うことなんざ聞きたくねぇ!
    愛生ちゃんを交渉手段に利用するゲスが……!!)

滝壺(本当は、しおりをこんなことに使いたくない。でも、今はこれしかないから…)


突然、滝壺の後ろの扉が開いた。
下に降りた筈のエレベーターが戻ってきたのだ。
このタイミングで誰が来るというのだろうか?
二人は同時に視線をそちらに送る。


浜面「滝壺!無事か!?」


エレベーターの中からは、逃げた筈のレベル0が走ってきた。
そのまま滝壺の前に立ち垣根を睨みつける。

滝壺「…な、なんで?はまづら、」

浜面「一人で逃げれる訳ねぇだろ!!怪我はしてないか?」

てっきりレベル5にコテンパにやられてると思ったけれど外傷は無いようだ。
別れる前と違う所と言えば、滝壺が手に持つ小さい紙。

浜面「あれ、その栞、おかえりラジオのやつ?」

滝壺「……え、うん」

浜面「それ、俺も持ってる」

その言葉に、滝壺と垣根は驚きを隠せなかった。
なんでこの男が栞の存在、ラジオの存在を知っているのか?

垣根(どうなってやがる…!!なんで『アイテム』の連中が栞のことを…。もしかして、こいつらも、)

滝壺(なんで、はまづらがあきちゃんのラジオを……)

垣根(しかも、お便りを読まれてる、だと……?)

浜面「なんでこんな状況で栞?」

浜面の疑問は当然のことだ。
レベル5に追い詰められて、いつ殺されても可笑しくない状況。
栞はこの雰囲気に相応しくない。


滝壺「……交渉中」

浜面「は?」

垣根「その栞を譲る代わりに『アイテム』を見逃せだとよ」

浜面「……え」

浜面は垣根と滝壺を交互に見た。
その顔は驚いてるようにも怒っているようにも見える。

浜面「ふざけるなよ…」

滝壺「……」

垣根「……」

浜面の声は震えていた。
垣根に背を向けて、滝壺を見ている。

浜面「その栞を持ってるってことはお前も聞いてんだろ!?」

浜面「しかも、メール読まれたんだろ!?」

浜面「ふざけんな、ふざけんなよっ……!!!」

浜面は滝壺の肩に手を置いた。
悲しそうな瞳で彼女を見つめる。
滝壺は浜面のこんな顔を見るのは、こんな声を聞くのは初めてだった。


浜面「どんな理由があろうとも、読まれた証を他人に譲るなんてしちゃいけねぇ!!」

浜面「しかも、こんなクソ野郎に!!」

浜面「お便り送るほど好きなんだろ?だったら本当はそれを手放したくないんだろ!!」

滝壺「……はまづら」

浜面「それが家に送られてきた時の喜びを思い出してみろよ!!」

滝壺は栞を優しく握り、俯いた。
初めて、家に届いた時のこと――
とても嬉しく、一生の宝物にしようと思った。

滝壺「ごめんね、はまづら。これしか突破口がなかったから」

浜面「……」

垣根「……」

浜面を助けることが優しさだと思っていた。
そうすれば、自分の恋が報われるのではないかと期待していた。

滝壺「……」

浜面「……」

でも、愛おしい彼は怒りをぶつけてきた。
浜面が自分を助けようとしてくれた時は、嬉しかったのに……。


滝壺は目から溢れて来そうな感情を必死に堪え顔を上げる。

滝壺「……優しくするって難しいね」

浜面「え?」

いつもボーッとしている滝壺の顔は悲しそうだった。
その顔に浜面は酷く動揺する。
滝壺は他の『アイテム』のメンバーと違い、浜面に優しかった。
だから逃げずに戻って来たのだ。

浜面(こいつのこんな顔、見たくねぇのに……言いすぎたか?)

二人のやり取りを見ている垣根は完全に置いてけぼりだった。
暇すぎて欠伸がでそうだ。

垣根(優しく、ねぇ……。そういえばこいつら、
    どんな内容のお便り送ったんだ?…………参考まで教えてくれねぇかな……)

垣根「……」

垣根(つーか俺空気過ぎんだろ。こいつら見つめ合ってるし……
    もしかして、そういう関係なのか?ちくしょう…リア充し、)

垣根「……ん?」

垣根「……」

垣根「!?」


一つの予想が垣根の頭をよぎる。
こないだの放送で、愛生ちゃんが“優しくしてあげればいい”とアドバイスをしていたお便りがあった。

強気な態度。必死な行動。選ばない手段。

ここまで女が頑張ることなんて一つしかない。
それが分からないほど、垣根は馬鹿ではなかった。

垣根「おい、能力追跡、ちょっとこっち来い」

浜面「はぁ!?お前なんか、」

垣根「テメェが居ると出来ない話だ」

滝壺「?」

いきなりの提案に二人が振り向く。
浜面は警戒している。
それに引き換え滝壺は落ち着いているみたいだ。

垣根「無理に栞取ったりしねぇよ。あと殺さないし」

浜面「行くな滝壺!」

滝壺は垣根の顔をジッと見た。嘘を吐いているようには見えない。
何かあったとしても、手の中に栞があれば平気だろう。
そう判断し滝壺は足を動かした。

滝壺「平気だよ。待ってて、はまづら」

垣根「テメェは来るなよ?絶対来るなよ?来たら怒るからな」

浜面「くそ…」

浜面は戻ってきても滝壺を守れない無力さに情けなくなった。
何かあったら銃で……しかし、相手はレベル5。
こんな物が効くとは思えない。
ギリッと奥歯を噛み締める。

浜面が出来ることは二人を見ることだけだった。


滝壺「何?」

垣根「お前“つぼつぼ”だろ」ボソボソ

滝壺「!?」

垣根「そんで好きな男はあそこのレベル0か」ボソボソ

滝壺「……何でわかったの?」ボソボソ

垣根「第2位の頭脳舐めんな」ボソボソ

滝壺「すごいね」ボソボソ

垣根「で、あいつを助けるのが優しさだと思ったわけだ」ボソボソ

滝壺「……」コクン

垣根「なるほどな……」ハァ

滝壺「?」

垣根「お前のしたこと、許してやるよ」

滝壺「え?」

垣根「愛生ちゃんは、アンタを応援するって言ってたろ?
    だから栞をそんな風に使っても、愛生ちゃんは怒らねぇよ」

滝壺「……」

垣根「だから俺も怒らねぇ。上手くいくといいな?」

滝壺「……ありがとう」


垣根「礼なんかいらねぇよ。同士だろ?」

滝壺「……優しいんだね」

垣根「そんなことない。つーか何で俺が愛生ちゃん好きって知ってたんだ?」

滝壺「とうちょう」

垣根「あ?」

滝壺「盗聴したの。車に仕掛けて」

垣根「……いつだよ。全然気付かなかったんだけど」

滝壺「研究所でつけてみた」

垣根「つけてみたって……」

滝壺「ごめん」

垣根「いや、別にいいけど……」

垣根(こいつ、大人しそうな顔しておっかねぇな……。やっぱり要だ……)

滝壺「どうかした?」


垣根「別に。あと俺からのアドバイス」

滝壺「なに?」

垣根「優しくするのもいいけど、お前はスタイルがいいんだ。
    それも使え。あと病院行っとけよ。能力使って体に負担かかってんだろ」ボソボソ

滝壺「……わかった」ボソボソ

垣根「ここでは見逃してやるが、それでも『アイテム』が
    追ってくるなら殺さなきゃならねぇ。それだけ覚えとけ」

滝壺「へいき。追いかけたりしない。元々そういう指示を受けた訳ではないし」

垣根「でもお前らのリーダーが黙ってるとは思えねぇよ」

滝壺「むぎのは話が分かる人だよ?」

垣根「あと、ハーフっぽい女はどうするつもりだ?盗聴してたなら知ってんだろ?」

滝壺「それにも平気。フレンダは私がちゃんと迎えに行くから」

垣根「まぁ、『アイテム』の内部事情は俺には関係ねぇし……。頑張れ」

滝壺「うん」


垣根「じゃあな。俺はもう行くぜ」

話が終わり垣根は歩き出した。
滝壺は慌てて垣根の袖を掴む。
垣根が振り向くと、名残惜しそうに栞を差し出しだ。

垣根「何だよ?」

滝壺「これ、」

垣根「いらねぇよ。自分で手に入れなきゃ意味がねぇ」

滝壺「……見逃してくれるの?」

垣根「ピンセットは手に入れたんだ。雑魚には用はねぇよ」

垣根は言いながらポケットから何かを取り出した。
小さいケースに入った粉。それは体晶だった。
滝壺は急いで自分のポケットに手を入れる。
そこには何も入っていない。
体晶は滝壺が能力を使用する際に使う特殊な粉だ。
これが無いと滝壺は何も出来ない。
無力な女の子になってしまう。

滝壺「いつの間に……」

垣根「内緒話してる時だよ。これでお前は無害だ。殺す必要はねぇ」


浜面「おい!!!!!」

浜面は二人の会話を遮るように叫んだ。
仲良く内緒話をしたあげく爽やかに別れようとしている。
状況が理解出来ない浜面は、駆け足で二人の近くへ行った。

浜面「何でいきなり見逃すなんて流れになってんだよ」

垣根「うるせぇな。殺さないでやるんだからもっと喜べよ」

浜面「訳分かんねぇよ……」

垣根「説明してやれ。じゃ、今度こそ行くから」

滝壺「うん」

滝壺は垣根の背中を見つめた。
殺し合う、いや、一方的に虐殺されるかもしれなかったのに、恋の応援までしてくれた。
頑張ろう。

滝壺「はまづら、未元物質が私達を見逃してくれた理由、話すね」

浜面「おう……」

滝壺は話した。
垣根が豊崎愛生を大好きなこと。
自分が彼女のラジオ聴いていること。
垣根は同士である滝壺を見逃したこと。
でも、自分の恋愛については一言も言わなかった。

浜面「アイツが、おかえりラジオ大好きだったとはな……」

滝壺「だから栞で交渉してたの」

浜面「なるほど……」


滝壺「はまづらも知ってるんだよね?」

浜面「おう。俺もお便り読まれたことあるんだぜ!」

滝壺「どんな内容?」

浜面「それは……えっと、秘密。そういうお前は?」

滝壺「私もひみつ」

浜面「何だよ……」

浜面はお便りの内容を言えなかった。
オブラートに包んでいるとはいえ麦野への不満だったからだ。
滝壺もお便りの内容を言えなかった。
自分の想いを伝えるのは、もっと別の方法が良かったからだ。

滝壺「はまづら、むぎのを探そう。それで『スクール』から手を引いてもらおう」

浜面「え……それは無理だろ…」

滝壺「平気だよ。私が説得してみる」

そして、滝壺は浜面に抱きついた。
彼女の豊満な膨らみがダイレクトに伝わってきて浜面は赤面した。


浜面「な!?いいいきなりどうした!?」

滝壺「こうしたかったから」

浜面「ええええ」

滝壺「いや?」

浜面「そうじゃないけど、え、えっと……その」

滝壺「?」

浜面「言いにくいんだけど、その…」

滝壺「はまづら、いいの」

浜面「へ?」

滝壺は少し背伸びをして、浜面の耳元で囁いた。

滝壺「あててるから」

浜面「!?」

滝壺「あと、今日のらじお、一緒に聞きたい」

浜面「ももももちもちろんいいですよ」

滝壺が何を言ったか一瞬理解出来なかった。
理解した途端、赤い顔がますます赤くなる。
その様子を見て、満足した滝壺は浜面から離れる。


滝壺「きぬはたを運んであげないと」

浜面「そうだな。麦野も怪我してるかもしれないし、早く行こう」

滝壺「うん」

合流した麦野はブチ切れていた。
二人で麦野を宥めたが全く効果は無い。
そこで滝壺は、麦野と二人で話をすると言って個室に籠ってしまった。
浜面は滝壺が殺されないか、不安だったのだが……
数分後、個室から出てきた滝壺はいつもと変わらずボーっとしていた。

そして、麦野は真っ赤になり俯いていた。

浜面「……どうした?」

麦野「……なんでも、ない」

浜面「?」

とにかく滝壺の説得(?)が通じたのか『スクール』を追うのは中止となったのだった。

その後、絹旗の病院に運んだ。
命に関わるような怪我ではなく、すぐに目を覚ました。
『スクール』を追うのを中止、と聞くと意外そうな顔していたが、不満を言うことなくそれに従った。

そして、滝壺がどこからかフレンダを連れてきた。
フレンダは泣きながら麦野に抱きつき、“ごめんね”と言っていたが、麦野は怒ることなくフレンダを撫でた。


浜面はその光景を見て、胸が温かくなった。
『アイテム』はあまり好きじゃない組織だったけれど、
彼女たちにの為にもっと働いてやってもいいのではないかと思った。

ここまでです。
滝壺が麦野をどうやって説得したかは、滝壺と麦野だけが知っています。

読んでくれてありがとうございます。


暗部の愛生ファン率高すぎだろww

すっごく感謝してますの人か。

待ってたよ!
速攻でブクマ入り余裕でした。

これていとくんが初春ちゃんの声聴いたらいろいろとやばそうだね。

おつんつん。


ていとくんが初春さんに出会ったらどうなるか気になって眠れませんwwww

>>97
確かに。クラスで知ってるの俺くらいだったしな。
なぜ俺は?
ふふ…二年前からディープな声ヲタやってるからな‥
中三で、あきチャンファンは珍しいかな?
くるってる?それ誉め言葉ね。
イット ア ツルー ワールド

乙!前作も好きだったから、今作も期待してます!
とりあえず馬に蹴られろ浜面
帝春と心理定規の三角関係ものだと期待してたけど違うらしい。
ちょっと残念。

なんだこの暗部ww

>>100

       そうなんだ
          シュッ  シュッ
              ∧∧ シュッ   シュッ
             (`・ω・) シュッ  シュッ
             (つ と彡 / シュッ
              /// /
             /c□ /
            /旦  /
         //c□ ./
      /旦 Y  /
       | |   旦 |
旦 | | 
     | | 
旦~          旦~

       旦~       旦~


  
          旦~

旦~         すごいね
       ∩∧_∧ ∧_∧旦~
      ∧ヽ∩旦ヘ_∧゚ Д゚∩il
     (゚ Д |lヽ∩ ゚ Д゚)   ノ

    旦⊂二、ミヽ    ⊃旦~
         / (⌒)  ノ ∧_∧
        (_)~ し' ⌒つ゚ Д゚)つ旦~



>>100
>>100
>>100
>>100
>>100
>>100





>>100
うわぁ……。

>>100
これコピペ?
見た事あるような、ないような。




あと、つぼつぼさん可愛いです。

初春との会話期待

初春勢力できちゃうやん

私もつぼつぼに当てられたいです…グスン

レスありがとうございます。
恋愛要素を期待している人が居るようですが、前にも言った通りないです。

投下します


隠れ家に戻ってきた垣根は、解析を始めていた。
『滞空回線』なんて代物があったことに驚いたけれど、
アレイスターの情報収集力を考えれば、納得がいった。
『滞空回線』からは凄まじい量の情報を得ることが出来る。
しかしアレイスターと対等に渡り合うには不十分だ。

垣根(ちくしょう……やっぱりこれだけじゃ駄目か)

ガチャリと扉が開く。
目だけでそちら見ると、『スクール』の構成員である心理定規が居た。

垣根「お前、どこ行ってた訳?」

心理「ちょっとお小遣いを稼ぎに。やっぱり学者はダメね。
    基本料金をきっちり計算していて、ちっともチップを弾んでくれない」

垣根「ふーん。一時間って時間が生々しいな」

心理「別にやましい事はしてないんだけど。
    ホテルの一室に入ったって言っても、雑誌をめくりながら少し話をしたくらいだし」

垣根「……エロい事しないの?」

心理「しないわよ。する必要もないし。場合によっては―――」

彼女は話を続けていたが、興味がない垣根はあまり聞いていなかった。
それよりも、さっさと解析を進めなくてはならない。
垣根が興味なさそうな声で相槌を打っていると、彼女は話を止め、話題を変えた。


心理「そういえば『アイテム』ってどうなったの?」

垣根「能力追跡は無力になった。俺達を追って来れねぇよ」

言いながら心理定規に向かって小さいケースを投げる。

心理「これって、体晶?そういえば『アイテム』の能力追跡は意図的に能力を暴走させてたんだっけ」

垣根「そうだ。あの女弱ってたし、俺が殺すまでもなかった。あと数回、能力を使えば確実に死ぬだろうし」

心理「それで殺さなかったのね。能力が使えなきゃ確かに無害だけど……」

垣根「なんだよ?」

心理「体晶を奪うなんて、まるでその女を助けたみたいね」

垣根は内心動揺したが表には出さない。
おかえりラジオのリスナーだから助けた、なんて言ったら心理定規に殺されるだろう。

垣根「俺が他の女に優しくすんのが気に喰わないの?」

心理「自惚れるなよキモオタ」

垣根「あ?キモオタじゃねぇし」

心理「声優なんかに夢中になってるなんてキモいわよ。死んだ方がいいわ」

垣根「うっせぇな。テメェに迷惑かけてねぇんだから別にいいだろ」

二人はお互いに、こいつマジうぜぇ死ねと思いながら会話を続ける。
同じ組織の者同士が話しているのに、殺伐としている雰囲気は異様だった。


心理「解析結果は?」

垣根「ダメだな」

滞空回線には膨大な情報があるが、アレイスターと対等にやり合える立場になれるようなものではない。
このデータにプラスして、もう一押しする必要がある。
垣根は心理定規に、そう話した。
垣根の言葉を聞いた彼女はため息を吐く。

心理「なら、やっぱりやるのね」

垣根「……ああ。学園都市第1位を殺す。そしれしか道はねぇな。
    アレイスターと交渉を優位に進めるためには、やっぱり『第2候補』じゃダメだ。
    代わりの利かない『第1候補』の核にならなくっちゃな」

心理「そう。何でも良いけど、私は一方通行戦に関わるつもりはないから」

垣根「ふーん。で、暇な時間はまた小遣い稼ぎにでも行くのかクソビッチ」

心理「だからエッチなことはしてないって言ってるでしょ底辺声オタ」

心理定規は汚物を見るような目で垣根を見た。
そして結果が分かったら教えろ、と言い『スクール』の隠れ家から立ち去った。


垣根は『ピンセット』を眺めながら、ゆったりと笑った。

垣根「―――『一方通行』か」


―――――――――――――――――――――――

垣根は“最終信号”を探すために隠れ家から出た。
幼い少女を利用するのは気が進まないけれど、交渉権を手に入れる為だ。
手段など選んでられない。
一刻も早く、野望を実現させたかった。

垣根(……確か、この辺りだよな?)

厄介なのは最終信号が一人ではないことだ。
そのうえ、今は行方を暗ましてしまっている。
入手した情報に寄ると、暗部でも何でもない一般人と行動を共にしているらしい。
まぁ、たかが一般人だし愛想良くヘラヘラしとけば警戒されないだろう、と思いながらターゲットに近づいて行く。

ターゲットの少女は、幸せそうにパフェを食べていた。
その少女は風紀委員の腕章が付いている。
しかし、彼女に戦闘力があるとは思えない。
変わった所といえば頭の花だけで、他には特徴がなくどこにでも居そうな普通の中学生だ。

垣根(人の良さそうな顔してるし、最終信号がどこに行ったかはすぐに教えてくれんだろ)

垣根は、完全に油断していた。
少女はそこまで馬鹿ではないし、垣根が思っているほど弱くもない。
そして、何より―――。


垣根はこの少女が特別な存在になるなんて、今は知らなかった。

.

―――――――――――――――――――――――
初春飾利はオープンカフェに居た。
見知らぬ女の子の世話した自分にご褒美でも
あげようと思い、大型甘味パフェに挑戦中だ。
元気なアホ毛を持つ女の子は一人でどっかに行ってしまった。
追いかけるべきなのだろうが、パフェを食べ始めた初春は席を立つなど出来なかった。

そして、初春はパフェのアイスクリームゾーンへ突入したのだったが、

  「失礼、お嬢さん」

不意に横からそんなこと言われた。
目をやるとガラの悪そうでチャラい少年が立っていた。
手には奇妙な爪のようなものを装着している。
見るからに妖しい。
でも、顔はけっこう好みかもしれない。
少年は胡散臭い笑みを浮かべて初春を見つめている。
正直かかわりたくなかったけれど、無視する訳にもいかず言葉を返す。

初春「はぁ。どちら様ですか?」

少年「……」

初春「?」


少年「失礼、お嬢さん」

初春「はい?何ですか?」

少年「……」

初春「……」

少年「……」

初春「……」

少年「失礼、お嬢さん」

初春「ちゃんと聞こえてますけど……。何か用ですか?」


そう言った瞬間、少年は倒れた。


別に初春飾利は何もしていない。
そもそも、そんな力は彼女にはない。
しかし垣根を動揺させる要素を彼女は持っているのだ。
もちろん本人は全く自覚していない。




運命かどうかは分からないけれど、とにかく二人は出会ってしまったのだった。



.

ここまでです。
よんでくれてありがとうございます。

おつおつ。
ついに二人の遭遇ktkr
これは今後もwwktkせざるをえない。

「……エロい事しないの?」
はい、名言いただきましたありがとうございます。

ピンセットって何?
原作読んでないから分からん…

>>117
原作を読めばいいと思う

おいおい、垣根さん本物に会ったらどうなるんだよ

え…まさか…

えんだぁ用意…?

>>65
一方通行「クカカカ……日高翌里菜ちゃん……いいねいいね最ッ高だねェ!!」

一方通行「クカカカ……ささきのぞみちゃン……いいねいいね最ッ高だねェ!!」

りこりんと最愛ちゃんのCVが誰なのかすごく気になる

レスありがとうございます。
すっごいくだらない内容に付き合ってくれる人にはマジ感謝です。
どうやら一方さんに期待が集まっているようですか、期待されると困ります。

投下します


どこだ、ここ。

俺は何をしてたんだっけ?

あれ?

何かやるべきことがあったんじゃないか?

でも、何かすっげぇ驚いたことがあって……

驚いたこと?

なんだ、それ?

そういえば俺、倒れたような気が……





??「ねぇねぇ」


―――あ?誰だよ?


蜷川「倒れてないで、一緒に泳ごうよっ!海、すーっごく気持ち良いよ!」

―――あれ、あむろちゃんじゃねぇか……。スク水似合ってるな……。

スゥ「倒れるなんて疲れちゃってるんですかぁ?スゥがスタミナ料理作ってあげるですぅ!」

―――スゥの手料理か……。そんなの食べれたら、死んでも後悔しないだろうな……。

天空寺「無理しちゃだめだよ。帝督ちゃんはなじみの大切な人なんだから」

―――なじみちゃんにそんなこと言ってもらえるなんて、これは夢か?

町中「今の仕事つらいの?だったら、新風新聞専売所にきなよ?皆、優しい人ばっかりだよ!」

―――……今すぐ『スクール』止めよう。配達なんて能力使えば一瞬で終わるぜ。

平沢「寝てないで一緒にケーキ食べようよぉ~。早くしないと全部食べちゃうぞぉ」

―――相変わらず唯ちゃんは食いしん坊だな。そんな所が好きなんだけど。

別所「お兄ちゃん!頭打ったんでしょ?大丈夫?小宵、すっごく心配したんだよ!?」

―――小宵ちゃんのアニキになれるなら、頭打つくらい安いもんだぜ。

山辺「燈が膝枕してあげるね。ほら、恥ずかしがらないで?」

―――膝枕もいいけどソーマも欲しい……でも、燈ちゃんにそんなこと言ったら恥ずかしがるだろうな。見たい。



「まだ、起きないんですか?早くしてくれないと、帰れないですよ」


―――誰だ、お前


「はぁ……アホ毛ちゃんだけじゃなくて、知らない男の人にまで振り回されるとは……ついてないですね」

―――よく知ってる声なのに、知らねぇな。

「起きて下さいよぉ……はぁ……」

―――うるせぇな。起きればいいんだろ。







            だから、俺の好きな声で、ため息なんか吐くんじゃねぇよ








.

―――――――――――――――

―――――――――――

――――――――

―――――

―――

長い夢を見ていた気がする。
内容は覚えていないが、暖かくてとても嬉しい夢だったと思う。
垣根はゆっくりと目を開けると、見知らぬ場所に居た。

天井が白い。
薬品の匂いがする。
ここは自分の家ではない。
自分がどこに居るのかを確認する為に体を起した。
窓からはオレンジの光が差し込んでいて、日が落ち始めていることを知らせていた。

        「起きたんですか?」

可愛らしい高音が耳に触れる。
垣根は声の持ち主を見た。

少女「連絡先も何も分からなかったので、私が付き添ったんです」

垣根「……」

少女「覚えてますか?貴方、倒れたんですよ?ちなみにここは病院です」

花飾りの少女がふんわりと笑う。
少女は飴玉を転がすような甘ったるい声だった。
甘さが心地が良く、ずっと聞いていたかった。


少女「あ、いきなり知らないヤツが居たら驚きますよね?」

確かに垣根はとても驚いている。
でも、別に知らない人間が居るからではない。

少女「私は風紀委員の“初春飾利”と言います。妖しい者ではありません」

垣根が驚いている理由は、知らない間に病院に運ばれていたからでもない。
目の前の少女の発する音が、どうしようもなく愛おしい声だったからだ。
初春と名乗った少女は、垣根の溺愛する彼女と声が似ていた。
もし初春飾利がアニメのキャラクターだったのなら、声をあてるのは間違いなく“豊崎愛生”になるだろう。

それくらいに初春の声は、甘くて優しいほっこりボイスだった。


打止「あ!イケメンのお兄ちゃん起きたんだ!ってミサカはミサカは安心してみる!」

ガラッと勢いよく扉が開かれた。
ヒマワリの様に眩しい笑顔をした少女が、ベッドに駆け寄ってくる。

初春「あ、アホ毛ちゃん。ちゃんと苺おでん買って来てくれました?」

打止「それくらいミサカにもできるよ!ってミサカはミサカは
    缶を落とした事実は隠ぺいしつつ、頼まれた物を差し出してみたり」

初春「落したんですか!?あー……缶ヘコんでるじゃないですか」


医者「ほらほら、病室では静かにして欲しいんだね?」

立派なアホ毛を持つ少女が開けたままの扉から、白衣を着た男が入って来た。
カエルのような顔をしている。

医者「目が覚めたようだね?入院する必要はないから、帰って安静にするんだね?」

垣根「俺は、一体どうなったんだ?」

垣根の質問に医者はのんびりと答えた。

オープンカフェで倒れた垣根は、救急車でこの病院へ運ばれたそうだ。
身分証明書や連絡先が分からなかった為、近くに居た風紀委員が一緒に救急車に乗った。
騒ぎを聞きつけたアホ毛少女は、なんとなく一緒に来たらしい。

垣根「……なるほどな。大体分かった」

医者「何かよほどショックを受けたようだね?無理はしないで欲しいんだね?」

それだけ言うと医者は病室から出て行った。
垣根は医者の背中を見ながらぼんやりしていた。

垣根(無理はするな、か……)

でも、それはできない。
垣根は目が覚めてからも、ずっと驚き続けている。
垣根は初春を見た。


初春「どうかしました?それよりも私、帰ってもいいですか?」

打止「ミサカも帰らなきゃ……結局、迷子は見つからなかったってミサカはミサカは落ち込んでみる……」

垣根(このお嬢ちゃんが最終信号か……。いや、今は最終信号に構ってる暇なんかねぇ)

垣根はベッドから降りると、初春の前に立った。
大きいくりくりとした目が垣根を見上げる。

垣根「迷惑かけちまったみたいだな。お詫びに送ってやるよ」

打止「ミサカも初春のお姉ちゃんを送ってあげるってミサカはミサカはやる気満々!」

初春「一人で帰れますから結構です」

即答だった。
その言葉には送ってもらうのなんて悪いから……とかではなく、
さっさと知らないヤツ等から解放されたいという願いが込められていた。


垣根「いいから送るって。可愛いお嬢さんが一人で帰るなんて危ないだろ?」

初春「……そこまで言うなら仕方ないですね。送らせてあげますよ」

垣根「……」

可愛らしい声なのに全然可愛くない女だな、と垣根は思った。
初春は垣根を見て“帰りたいので早くして下さい”と言い歩き出してしまった。

やっぱりこいつ、可愛くねぇ。



―――――――――――――――――――――

打止「はぁ……迷子はどこに行っちゃったのかなってミサカはミサカはうな垂れてみたり」

病院から出た、打ち止めはシュンとしていた。
立派なアホ毛もうな垂れている。

初春「迷子って結局何だったんですか?」

打止「迷子は迷子だよってミサカはミサカは事実をぼかしてみる」

垣根「お嬢ちゃんが言ってる迷子って、一方通行じゃないのか?」

垣根は打ち止めが第1位を探しまわっていることを知っていた。
1位の男が、こんな少女に迷子と呼ばれているなんて面白すぎる。

打止「お兄ちゃん、あの人のこと知ってるのってミサカはミサカは質問してみる!!」

初春「良かったですね。手がかりが見つかったみたいなので私はこれで……」

垣根「勝手に帰るな」

そう言うと垣根は、強引に初春の手を取る。
初春の体が強張るのが伝わって来た。

打止「あ!ミサカも手を繋ぐってミサカはミサカは初春のお姉ちゃんの手に飛びついてみたり!」

初春「わっ!……何するんですか、もう」

二人に手を繋がれた初春は、観念したように歩き出した。


垣根は初春を見つめた。

幼さが残る顔は全く好みではない。
胸はペッタンコで全くそそられない。
頭の髪かざりは意味不明だ。
大きい瞳は子どもそのもので見つめられてもドキドキしない。
握った手は細く幼くて女性特有の柔らかさが足りない。
足は細いだけで微塵も色気を感じられない。

けれど―――

初春「垣根さん、でしたっけ?倒れてるんですから、無理しないで下さいね」

彼女の声を聞くと、胸が締め付けられ切なくなる。
高鳴る心音はうるさいけれど、悪い気はしなかった。

初春「そういえば、私に何か用だったんですか?」

垣根「忘れた」

初春「なんですか。それ」

打止「ねぇねぇ、イケメンのお兄ちゃん、あの人のこと知ってるの?ってミサカはミサカは会話に割り込んでみる」

打ち止めが垣根を見上げた。
そういえば、最初は打ち止めを探していた筈だった。
しかし今はどうでもいい。
交渉権は手に入れたいが、今は甘い声に耳を傾けていたかった。


初春「アホ毛ちゃん、真剣に探してるみたいなんですよ。
    何か知っていたら教えてあげてくれませんか?」

お願いしますよ、ね?
甘い声は優しく問いかけてきた。
その聞き方は卑怯だ。断れる訳ないだろう。
けれど、垣根だって一方通行がどこに居るかは知らなかった。

垣根「……教えてやりたいけど、俺も居場所は知らねぇ」

打止「なら、仕方ないかって、ミサカはミサカは……」

初春「落ち込まないで下さいよ。きっと見つかりますって」

初春は宥めるように言った。
打ち止めに付き合ってるのは嫌そうに見えたが、それなりに心配はしているようだ。

初春「だから元気出して下さい。暇な時はまた付き合ってあげますから」

打止「本当!?ミサカはミサカは」

打ち止めが元気にパァっと笑った瞬間、ぐぅ~っと大きい音が響いた。
可愛らしいお腹からの音だとは思えないほどの、でかい音だった。

垣根「すげぇな。そんなに腹減ってるのか」

打止「ちが……ちがうってミサカはミサカは……」

初春「一日中、歩き回ってたから仕方ないですよ」

打止「うぅ……」


初春「ファミレスでも寄ります?でも、アホ毛ちゃんの保護者は心配しちゃいますか……」

初春は口に指をあてて、どうしようかな、んー?と考え事をしている。

“んー?”

これ、破壊力やばい。
別に愛生ちゃん本人ではない。
しかし、ほっこりエンジェルボイスであることには変わりない。
もう少しだけ彼女の声を聞いていたい。
でも、初春に“お前の声をもっと聞かせてくれ”なんて言ったら、何か誤解されそうだ。
ならば……

垣根「なら、俺がアホ毛の嬢ちゃんの家に連絡してやるよ。迷子になってる所を保護して夕飯食べさせてるって」

打止「アホ毛じゃないもんってミサカはミサカは抗議してみる!」

初春「へ?アホ毛ちゃんを任せてもいいんですか?」

垣根「ついでだし、花飾りのお嬢さんも来いよ」

打止「やったー!新しいお友達とご飯だってミサカはミサカは喜んでみたり!」

初春「え?」

戸惑う初春を引きずるようにして、三人はファミレスに向かった。
垣根は心の中でニヤニヤしていた。
ご飯食べる、というのはけっこう色々な声が聞けるのだ。


打ち止めの家に電話をすると、気だるげな声が聞こえてきた。
声の主は、今日は愛穂の帰りが遅いから助かったわ、と言うと一方的に電話を切った。
この女からは駄目人間の臭いがする。

まぁ、そんな訳で、会って間もない三人はファミレスで食事をすることになったのだ。




完璧な笑顔の店員に席を案内されて、三人はメニューを開いた。
夕飯の時間のせいか店内は賑やかだ。
ざわついた店内でも、初春の声は最高だった。

垣根「奢ってやるから、遠慮すんなよ?」

打止「やったーってミサカはミサカはお子様ランチを希望してみたり」

初春「えぇ……奢りなんて悪いですよぉ……。
    私は、このパスタと苺のパフェと苺のミルフィーユだけでいいです」

垣根「全く遠慮する気がねぇな」

初春「冗談ですよ。本当は…」

垣根「別に構わねぇよ。金はあるから。全部頼んでやるよ」

初春「へ!?いや、ほ、本当に悪いですよ」

垣根「病院まで付き添ってくれた礼だよ。気にするな」

言いながら店員の呼び出しボタンを押した。
にこやかな笑顔の店員に手際良く注文をする。


店員「少々お待ち下さいませー」

初春「すいません……ご馳走になっちゃって」

垣根「気にすんなって」

垣根は、笑顔で言った。
そう、気にしなくていい。
ファミレスに入って数分しか経っていないのに、ほっこりボイスの冗談や悪びれた声を聴けたのだ。
でも、全然足りない。

垣根「なぁ、うんたん♪うんたん♪って言ってみてくれ」

初春「はい?」

垣根「うんたん♪うんたん♪ repeat after me?」

初春「……うんたん?うんたん?」

垣根「?じゃねーよ!♪だよ!」

初春「……う、んたん♪うんたん♪」

垣根(こ、これは、“うんたん”だ―――!!!!)

初春(なんだろう、この人、気持ち悪い、かもしれないです)

微笑ましい談笑をしていると、料理が運ばれてきた。
パスタを見た初春は“美味しそうですねぇ”と上機嫌に言った。
正直パスタなんかよりも、その声の方が甘くて美味しそうだと垣根は思う。


打止「いただきますってミサカはミサカは手を合わせてみる」

初春「いただきます……貴方は食べないんですか?」

垣根「腹減ってないんだ」

それは嘘だった。
でも、せっかく良い声が身近に居るのに、食べ物を咀嚼してる音で掻き消してしまったら勿体ない。
だから食べないのだ。

打止「初春のお姉ちゃんにプレゼントあげるってミサカはミサカはピーマンをお皿に乗せてみたり」

初春「好き嫌いは駄目ですよ」

打止「あ!戻さないでってミサカはミサカは涙目になってみる」

初春「そんな顔しても駄目です。ピーマン美味しいじゃないですか?」

打止「おいしくないもんってミサカはミサカは不貞腐れてみたり」

初春「美味しいですって。ほら、一口食べてみて下さい。一口だけでいいので」

打止「……なら、一口ってミサカはミサカは忌々しい緑をかじってみる」

垣根は微笑ましいやりとりを見てほっこりする。
幼い子を諭すような声も素晴らしい。
やはり、ファミレスに来て正解だ。
そして初春飾利の声の良さを実感していた。


打止「やっぱり無理ってミサカはミサカは残りのピーマンを初春のお姉ちゃんに押し付けてみたり!」

初春「あ!駄目ですって!」

垣根「……」

初春「あの、垣根さんも黙ってるだけじゃなくて、何とか言って下さいよ」

垣根「え?俺?」

初春「はい、お願いします」

彼女の声は魔力がある。
“お願いします”
その言葉だけで、垣根の思考は停止して、初春の言うことを聞かなくてはならないと思ってしまう。

垣根は箸でピーマンをつまむと打ち止めの口元に持っていった。

垣根「ほら、食え」

打止「やー!絶対にやー!」

打ち止めはそう言うとそっぽを向いた。
しかし、垣根は諦めない。
なぜなら初春の“声”にお願いされたからだ。


垣根「ほら、食えって」

打止「むー!」

打ち止めは口を絶対に開けずに、涙目で睨みつけてくる。
垣根は大人げなく、睨み返す。
そんな二人のやりとりを眺めながら初春はパスタを口に運んだ。

垣根「いい加減にしろよクソガキ」

打止「……」

垣根「こっち向いて口開けろ」

打止「……」

垣根が強硬手段に移ろうと打ち止めに手を伸ばした。

その瞬間。

ガゴォン!という音がファミレス中に響き渡った。
他の席から、イスが飛んできたのだった。
その一撃を喰らったことで垣根はバランスを崩す。
打ち止めに食べさせる予定だったピーマンは机の上に落ちていた。


それでもパスタを食べることを止めない初春飾利は確かに聞いた。

「……ったく、シケた遊びでハシャいでンじゃねェよ。三下」

白熱し白濁し白狂した、
学園都市最強の、悪魔のようなレベル5の声を。

「もっと面白いことして、」

最強がそう言いかけた時、言葉を遮るように大きな着ボイスが店内に響き渡った。




携帯<プロデューサー、あのぅ、メールですよぉ……。
    え、えっと私、どうすればいいんでしょうか……。
    うぅ、とにかく確認してください~。



おどおどしたその声は、透き通るウィスパーボイスだった。

ここまでです!
いよいよ第1位と第2位の衝突ですね。

読んでくれてありがとうございましした!

乙!
この衝突も、ただでは済みそうにないぜ・・・・

おつ。

これは……。
シリアスっぽいのに台なし
てかていとくん愛生ちゃんに精通しすぎれす。

まさか…
一方通行までも…………

ふぅ

シリアスブレイカーか!

レスありがとうございます。
シリアス?そんなものを書いた覚えはありません。

投下します


ただごとではない雰囲気に、初春は打ち止めを連れて避難した。
打ち止めは嫌がっていたけれど、無理矢理にでも連れて行かないと危険だ。
遠巻きに二人を見つめる。
くだらない会話だけれど、殺伐とした雰囲気がこちらまで伝わって来た。


垣根「痛ってぇな」

垣根帝督はピーマンから一方通行に視線を向けると、静かに言った。

垣根「痛すぎるぜオマエ。アイマスが好きな上に、着ボイスが雪歩だと?」

一方「……」

垣根「流石は第1位。大したキモオタぶりだ。
    公の場で気持ち悪い着ボイス披露してんじゃねぇぞ?」

一方「ハッ。類似品に惹かれて目的を見失ったアホ野郎が何言ってンだ。
    声オタなンつー最底辺の時点で、テメェのがキモオタなンだよ」

垣根「バッカじゃねぇの。マナーモードにするのを
    忘れてたクソ野郎に、人を最底辺呼ばわりする資格はねぇよ」

学園都市の第1位と第2位。
一方通行も垣根帝督も、コソコソと会話をする気はなかった。
周りにキモオタとバレても、何も問題はない。


一方「大体、豊崎愛生なンか、にわかが好きになる代表声優じゃねェか」

垣根「あ?」

一方「声域が広いとか言われてるけどよォ、
    ショタ声からお姉さん声まで出せる女性声優さンはたくさン居るンだよ」

垣根「愛生ちゃんはその中でも魅力的なんだ」

一方「なンであいなまさンってスフィアメンバーとの写真の時、一人だけ前に出てンの?」

垣根「……」

一方「背が高いっつーか、全体的にデカイよなァ?」

垣根「テメェ……!」

一方「進撃の愛生」

垣根「ぶっ殺す!!!!」

一方「キレたらすぐ手を出すのかァ?あいなまファンがゆとり丸出しのDQNってのは本当なのかよ」ニヤニヤ

垣根「ぐっ…クソッ……!!!」

一方「三下が。嫌がってるガキに無理矢理ピーマン
    食べさせようとするから、好きな声優がディスられンだよォ」

垣根「……」

一方「これに懲りたら、あのガキには手を出すンじゃねェぞ?いいなァ?」

垣根「……」

一方「……」


垣根「……」

一方「……」

垣根「……萩原雪歩って、声がゆりしーだっけ?」

一方「あ?」

垣根「それだけでプロデュースする気なくなるよな?」

一方「テメェ、」

垣根「あ、でも、キャスト変わったか?誰だっけ?」

一方「……」

垣根「まぁ、ゆりしーじゃなくなって、心置きなくプロデュースできる人が増えただろ。いいことだ」

一方「…………」

垣根「ゆりしーって大した都合がねぇのに、アイマスライブ欠席してんだろ?
    忙しいのに予定調整して、大事なライブには顔出すくぎゅを見習えよ」

一方「屁だな」

垣根「……」

一方「テメェの言ってることは事実だ。でも、それは散々ネット上で言われてンだよ。
    正論並べたつもりかもしれねェが、実際は汚ねェ口からプープー漏れてんのは屁だ」


垣根「テメェが萩原雪歩を好きなのは分かった。
    でも、テメェはプロデューサーとして彼女を応援しきれてねぇだろ?」

一方「そンなことねェよ。俺は、」

垣根「アイマスライブに一度も行ったことの無い野郎が何言ってやがる」

一方「!?」

垣根「アイマスのキャラって中の人の性格が反映されることが珍しくねぇよな?」

一方「……そうだ」

垣根「ライブに行って声優に声援送るのは、キャラに声援を送るのと同じことだ」

一方「……」

垣根「それに、物販じゃライブ限定のグッズが売られたりすんだろ?」

一方「……ッ!!」

垣根「アイマスのビッグイベントに参加したことないヤツがプロデューサーとは、笑えるな」

一方「……」


垣根「しかも、アイマス2は男が出てくんだろ?」

一方「!!」

垣根「テメェは何もできずに、画面の向こうで萩原雪歩の処女が
    切られるのを黙って見てることしかできねぇんだろ?」

一方「……や、めろ」

垣根「“団結”がテーマとか言うくせに、
    水瀬伊織、三浦あずさ、双海亜美はプロデュース対象外だしな」

一方「やめろ」

垣根「人の好きなモンをディスったら自分の好きなモンもディスられんだよバーカ」

一方「テメェ!!!」


      「いい加減にしろよ!!!!!」


垣根と一方通行の騒ぎのせいで、二人の周りには人が居なかった筈だ。
それなのに、垣根でも一方通行でもない人間の怒号が響いた。
垣根は、第三者を睨みつける。


垣根「何だテメェ?人の会話を盗み聞きしてんじゃねぇよ」

??「お前らでかい声で喋ってるからだろうが!聞きたくもない会話が聞こえるんだよ!」

垣根「なら失せろ」

??「嫌だ」

垣根「あ?」

垣根は眉をひそめた。
この男は何を考えているのだろうか?
一方通行がイスを投げた瞬間、ほとんどの客が逃げ出した。
それは当然だろう。イスは普通に投げたとは思えないほどの威力だった。
しかも垣根はイスを受けても平然としていた。

その異様な光景に、恐怖を覚えない客は居ないだろう。
なのに、なんだこいつは。

??「黙って聞いてれば、好きな物のディスり合いだと!?」

垣根「それが何だよ?よくあることだろ」

??「よくあるからって許されることじゃない!」

??「お前らが何でいがみ合ってたかなんて知らない。興味もない!」

??「でもな、いくらお前らの好きな物であっても、テメェらの喧嘩には無関係なんだよ!巻き込んでんじゃねぇ!」

??「アイドルマスターも萩原雪歩ちゃんも豊崎愛生ちゃんも全部素晴らしいじゃないか!?」

??「なんでそれが分からねぇんだよ!」


垣根「いきなり出て来て説教かよ。つーか、やめろよ」

??「何を?」

垣根「愛生ちゃんとキモオタ童貞専用のゲームを同列に扱うな」

??「!?」

垣根「……」

??「ふざけるな…………!!」

垣根「あ?」

??「その言い方からして、お前はアイマスをやったことないな?」

垣根「あんなの、やるわけねぇだろ」

一方通行は、黙って二人を見ていた。
いや、見ていることしか出来なかった。
一方通行はいきなり割り込んできた少年を知っていたからだ。
別に友達ではない。
けれど、その少年は――――


??「やったことねぇくせに、ネット上で拾った情報でアイマスを馬鹿にしてたのか」

垣根「馬鹿にしてねぇよ。事実を言ったまでだ」

??「……」

垣根「……」

??「……いいぜ」

垣根「は?」

??「テメェがアイドルマスターを童貞専用ゲームだと思ってるなら」




上条「―まずは、そのふざけた幻想をぶち殺す……ッ! 」



.

自分でも何を書いてるかよく分からなくなってきました。

読んでくれてありがとうございます!

父さん母さん学園都市は今日も平和です

平和っていいよなぁ

平和すぎて逆に引くわww

一方さん・・・好き嫌いさせてんなよ・・・・・・

おつ。

ダメだこの学園都市……早くなんとかしないと……!

レスありがとうございます。
ちょっとだけ投下します。


垣根はウニのようにツンツンした髪形の男を睨みつけた。
いきなり出て来て、アイマスとかいうキモゲーと愛生ちゃんを同列に扱いやがった。
ぶっ殺すしかない。

垣根「テメェ、俺が誰だか知って喧嘩ふっかけてるのか?」

上条「お前が誰かなんて関係ない。ただ、あんなこと言ったヤツを見過ごせないだけだ」

哀れな目で男を見つめる。
こいつは自分のことを誰だか知らないらしい。
軽く捻ってやろうと思い、未元物質で男の周りの物理法則を変える。

垣根「お前、すっげぇムカつくやつだな」

ボゴォッ!という音と共に、見えない何かが上条を襲った。
何かに腹を殴られたようだ。
その衝撃に上条の体が前のめりになる。

上条「かはっ、……ぅッ!」

倒れそうになったけれど、どうにかその場に踏み止まった。
そして垣根を睨みつける。
こいつの能力は何だ?
分からなければ反撃のしようがない。


垣根「何驚いた顔してんだ?テメェはレベル5に喧嘩売ったんだぜ?」

上条「……レベル5?」

垣根「今更怖気づいてんじゃねぇぞコラ」

上条(……何か来る!何かは分からないけど、嫌な予感がする!)

見えない何かが、顔に向かってくるような気がして右手を動かす。
上条の予感は的中した。
垣根は未元物質で上条の顔を潰してやろうとしていたのだ。
しかし男の右手が顔を庇うように差し出され、強制的に未元物質が掻き消される。

垣根(なんだ、今の―――)

演算に間違いはなかった。
手で防いだくらいでは垣根の能力は止められない。
でも、手に触れた瞬間、手応えがなくなった。
驚きのせいで、垣根の思考が乱れる。


わずかに動揺を見せたチャンスを逃さずに、上条は垣根の間合いを詰めていた。
垣根がそれに気付いた時、既に上条は殴りつけるモーションに入っていた。
普通に防ぐのでは間に合わない。

垣根(でも素手での攻撃なんざ、)

能力で拳を破壊してやろうと、演算をする。
レベル0の拳とレベル5の演算。
その速さには絶望的な差があった。もちろん、垣根の演算の方が速い。

それなのに、垣根の顔には拳がのめり込み、体は無様に床へと叩きつけられた。

垣根(何が起こった?何で俺は殴られた?何で未元物質が通用しない?)

レベル5の頭脳を持ってしても、考えがまとまらない。
相手が能力を使った素振りは一切なかった。
混乱した頭が落ち着かないうちに、胸倉が掴まれる。

上条「ゆりしーを、雪歩を、アイマスを馬鹿にしてんじゃねぇ!!!!」

容赦ない鉄拳が、垣根を襲う。

一発。

二発。

三発。

四発。
五発。
六発。
七発。
八発。
九発。
十発。
十、


不意に拳が止まった。

垣根が目を開けると、信じられない光景が広がっていた。
避難していた筈の初春飾利が、上条当麻の腕を力いっぱい押さえ付けていたのだ。

垣根「テメェ……なんで、」

上条「離してくれないか?」

低い声で上条は言う。
その声には怒りが込められていて、聞くだけで身震いするほどだ。
それでも初春は動かない。
腕にしがみ付き、ふるふると首を横にふった。

初春「やり過ぎです」

上条「……」

初春「……それ以上、彼を殴らないで下さい」

それは小さい声だけれど、強い意志を持っていた。
上条は腕から力を抜く。
殴るのを止めたことを確信した初春は腕を離し、垣根に向き直った。

初春「あ、顔、すっごい腫れちゃってるじゃないですか……」

柔らかい手が垣根に触れる。
殴られて熱を持った顔に、彼女の冷たい手は気持ち良かった。

初春「……平気ですか?変な痕が残らなきゃいいですけど」

飴玉を転がすような甘い声が垣根を包む。
目を閉じて、聞き入った。

上条さんテラバイオレンス

ここまでです。
読んでくれてありがとうございます。

乙……でいいよな?

傷害の現行犯

アイマスはゼノグラシアしかしらなry

☆「『井口裕香のむ~~~ん ⊂( ^ω^)⊃』か…これはこれは興味深い…」フフフ

やっぱり初春ちゃんは天使すなぁ……おつ。

上条は要らない子


上条さん最高

ゴミ条は消えろ

てか一方さんテラ空気

登場人物にいちいち文句言うな

>>1乙です

上条さんがいないと何も始まらない

レスありがとうございます!
すいませんが、上条さんの性格はウザいくらいが好きなので、これからもウザいままで出しゃばってくると思います。
分かりやすく言えばウザ条さんですね。

>>174
このスレの初春は天使ではありません

投下します


上条は心配そうな顔の初春を見て、殴り過ぎたと反省する。
二人のやりとりを静かに見ていると肩を叩かれた。
誰だ?と思い振り返る。

一方「オマエも、その、アイマスが好きなのかァ?」

第1位が俯きながら問い掛けてきた。
声は震え、普段は真っ白な彼の頬は少し赤くなっている。
おそらく彼は緊張しているのだ。
その様子を見て、上条は満面な笑みで答えた。

上条「ああ、好きだ。面白いよな?」

一方「……!!」

一方通行は顔を上げて、上条を見る。
彼はアイドルマスターを好きな男に初めて出会ったのだ。

木原には“気持ちわりぃ死ねよクソガキ”と罵られた。
芳川には“まさに童貞って感じね。似合ってるわ”と笑われた。
天井には“ゲームなんていいから実験に専念しろ”と呆れられた。
妹達には“第1位がギャルゲー……”と軽蔑された目で見られた。
黄泉川と打ち止めは“趣味は人それぞれ”と言ってくれたけれど、同士では無かった。

一方(こいつ、ヒーロー兼プロデューサーかよ…!)

上条「お前がプロデューサーだったとは思わなかったな」

一方「……」

上条「どうせだしメアド交換しとこうぜ?」

一方「!!!」

上条「9・18騒動で心が折れかけてたけど、同士が居れば励まし合えるもんな」


ニカッと上条は笑った。
その笑顔に一方通行は泣きそうになった。
上条は一方通行が行っていた実験を知っている。
それなのに自分を同士だと受け入れてくれた。

一方「……」

一方通行は俯いたまま携帯電話を取り出す。
上条も取り出すと、アドレスを交換し合った。

一方「テメェは俺のこと、」

上条「お前のしたことは許されることじゃない」

一方「……」

上条「でも、もう過ぎたことだ。お前を責められるのは御坂と妹達だけだろ?」

だからこれからヨロシクな、と手を差し出した。
一方通行はその手を恐る恐る握った。
かつて自分を殴った右手は暖かくて大きくて、こいつは頼りになるプロデューサーなのだと思った。

上条「アイマスライブとか一緒に行こうな。俺、いつも一人で寂しかったんだよ」

一方「……」

それは嬉しい提案だった。
けれど、一方通行にはアイマスライブに行けない理由があった。
一度だけチケットが当選したことがあるのだけれど、会場に向かうことは無かった。


垣根「おい、テメェら何で仲良くなってんだクソ」

いつの間にか立ち上がった垣根が二人を睨みつけている。
後ろでは初春が垣根を止めようとしていたけれど、無意味だった。

垣根「いきなり人をボコボコにしといて良いと思ってんのか?」

一方「テメェ、まだ動けンのか」

上条「あ、悪いな。お前がアイマスのこと悪く言うから、つい熱くなって」

垣根「そんな軽いノリで許されると思ってんのか?つーか第1位だって愛生ちゃんを馬鹿にしたんだぜ?」

上条「そういえば、そうだったな」

上条はそう言うと、一方通行に向き合った。
そして、右手が振り上げられる。

一方「え?」

上条の拳は一方通行を容赦なく殴りつけた。
細い体は、抵抗する暇なく床に転ぶ。
一方通行はさっきまで仲良くしていた男に殴りつけられ、少しショックを受けた。
そして、その行動に垣根も驚いていた。


一方「テメェ、何しや」

上条「声優に身長は関係無い」

一方「……」

上条「豊崎さんの演技は素晴らしいし、ほっこりした声は聞いてるだけで癒されるだろ?」

一方「……」

上条「豊崎さんのラジオ、最高だぞ?」

垣根「……」

上条「一度聞いて見てくれよ一方通行。アイマスは素晴らしい。でも素晴らしい物はこの世にたくさんあるんだよ」

一方「……オマエがそう言うなら、聞いてみてやンよ」

垣根「……」

垣根(……素晴らしい物はこの世にたくさんある、か。そんなこと考えたことなかったな)

上条「殴って悪かった。あと、お前も本当に悪かった」

垣根「……」

一方「……」

上条「えっと、いきなり出て来て殴るなんて最低だよな……」

一方「別にィ……」

垣根「……」


垣根(……愛生ちゃんの悪口言う奴らは、ボコしてきたけど、
    そんな奴らに魅力を教えるのもファンの務めじゃねぇのか?)

一方「ラジオ聴いてみるかァ……」

上条「今日やるぞ?ちなみに文化放送」

垣根(それに、やってもいないゲームを馬鹿にするなんて、ゲーマーの愛生ちゃんに怒られちまう)

一方「……」

垣根(俺は、最低じゃねぇか……!)

垣根「おい、一方通行」

一方「あ?」

垣根「俺が持ってる、愛生ちゃんのCDとか貸すからよ、」

一方「?」

垣根「アイドルマスター、貸してくれないか?」

一方「……オマエ」

上条「それいいな!お互い良い物をもっと知るべきだ!」

垣根「テメェの言ったことで気付かされたんだよ。お前の名前は?」

上条「上条当麻だ。お前は?」

垣根「垣根帝督」


上条「そういえば今度Dill出るよな?楽しみだよな?」

垣根「おう!!!クラムボンだぜ?すっげぇ楽しみ!死にそう!」

一方「Dill?」

垣根「愛生ちゃんの新曲だ。貸すから聞けよ」

一方「……いらねェよ」

垣根「あ?」

一方「…………買ってみる」

垣根「……」

一方「……」

垣根「なぁ、お前、何で俺が愛生ちゃん好きって知ってたの?」

一方「電話で男から聞いた」

垣根「……ふーん」

一方「まァ、俺は帰るぜ。色々悪かったな、垣根くン」

垣根「え……」

上条「じゃあなー」

垣根「おい、待て!一方通行!」

一方「なンだよ?」

垣根「俺の方が酷い事たくさん言ったじゃねぇか!」

一方「……」

垣根「俺の方こそ、悪かった」

一方「ハッ、別に?ゲームやったことなけりゃ仕方ねェよ。
    許してやるから、さっさとプロデューサーになれよォ?」

垣根「…………おう」


打止「捕まえた!ってミサカはミサカは会話が終わったのを見計らって飛びついてみる!」

一方「おわっ!?」

男達の会話が終わった瞬間、一方通行の腰に少女が飛び付いた。
一方通行はしまったという顔して、ため息を吐いた。
そんな一方通行のことを、ニコニコした笑顔で見つめる。

打止「お友達できて良かったね、紅白P!ってミサカはミサカは自分のことのように喜んでみる!」

一方「……」

打止「逃がさないからねってミサカはミサカ警戒しながら貴方を見上げてみたり」

一方「……クソ」

打止「早く帰ろう?貴方の部屋は弄ってないよ?
    ってミサカはミサカは貴方の雪歩コレクションが無事なことを伝えてみる」

一方「……」

打止「貴方の部屋で、雪歩が待ってるよってミサカはミサカは手を引いてみる」

一方「…………」

こうして、一方通行は打ち止めの元へと帰って行った。
その背中からは喜びと嬉しさが溢れ出ていた。

なんだろう、打ち止めさんの行動に素直に喜べない・・・


垣根「さて、俺も帰るかな」

上条「俺も帰ろう。そうだ、えっと、その子にも悪いことしちゃったな」

初春「へ?」

ずっと放置されていた初春は、不意に話し掛けられて顔を上げた。
初春は上条に何かされた訳ではないので疑問が頭に浮かぶ。

初春「別に私は何も」

上条「だって、垣根のこと何回も殴っちゃったし」

初春「いえ、私は別に……。謝るのは垣根さんにだけで十分です」

垣根「いいんだよ。俺は殴られるだけのことをしちまったんだ」

上条「そうかもしれないけどさ、」

上条はそこで言葉を区切る。
そして、二人を見つめて申し訳なさそうに言う。

上条「彼氏が殴られたら、彼女はショックだろ?」

初春「は?」

垣根「あ?」

上条は勘違いしていた。
一緒に夕飯を食べる男女。
そして殴られる男を助けるのに危険を顧みない女。
上条はそれを見ていたのだ、勘違いするのも無理はない。


上条「本当にごめ、」

初春「違いますよ!!!!!!!!付き合ってなんかいません!!!!!!!」

大人しそうな初春からは想像できないほどの大声だった。
心外だ、信じられない、という顔をしている。
垣根はそこまで嫌がらなくてもと思ったけれど、初春の言葉を聞いて固まった。

初春「ずっと聞いてて分かったんですけど、垣根さんってオタクなんですよね?」

上条「まぁ、そうだよな?」

垣根「まぁ、そうだな」

初春「オタクなんて、絶対に嫌です」

初春「それに声優が好きとかありえないですよ」

初春「どうせ、アニメにも夢中なんでしょう?良い年してみっともないですよ、恥ずかしい」

初春「貶し合いをしてたみたいですけど、目くそ鼻くそです。普通の人から見れば両方同じクソですよ」

初春「正直に言います」


初春「すっごく気持ち悪いですよ?」

.


垣根の思考はショートした。
愛おしいほっこりボイスに“気持ち悪い”だの“クソ”だの言われたのだ。
別に愛生ちゃん本人ではないけれど、けっこう、かなり、ショックだ。
ほっこり癒しボイスで、そんな言葉を使って欲しくない。

上条「まぁ、オタクを気持ち悪いと思うのは当然だからいいけど」

初春「はい?」

上条「なら、何で垣根を助けたんだ?」

初春「風紀委員だからですよ」

上条「責任感強いんだなー」

初春「そんなことないです。それに、」

上条「ん?」



初春「垣根さんの顔が、とても格好良いからですよ!」


.

――――――――――――――――

ラジオ『背伸び寝転びクッション完備』

ラジオ『あなたに届けるお喋りセラピー』

ラジオ『はじまるよっ!』

ラジオ『豊崎愛生のおかえりらじお』

ラジオ『みなさん、おかえりなさい。豊崎愛生です』

垣根「ただいま!!!!」

木曜日のお決まりである、ラジオ聴く。
今日は色々なことがあった。
本当に疲れた。
嬉しいことも、嫌なこともたくさんあった。
でも、愛生ちゃんの声とトークはその全てを溶かして、垣根に癒しを与えてくれる。






ラジオ『おやすみなさーい!』

垣根「おやすみ!」

垣根「はぁ…また読まれなかったか……」

垣根(博士のメールの心得を参考にしたんだがな……クソッ…)

ラジオを消して、ベッドに横になる。
愛生ちゃんのほっこりボイスが垣根の耳に残っていた。

不意に今日出会った少女のことを思い出す。
垣根は頭を横に振った。
あのクソガキを思い出すと、おかえりラジオの余韻が台無しになってしまう。
寝ようと目を閉じるとフェミレスでの出来事が蘇ってきて、垣根は舌打ちした。

初春黒いwwww

―――――――――――――――――――――――

初春「垣根さんの顔が、とても格好良いからですよ」

垣根「…………は?」

上条「まぁ、確かに、イケメンだな」

初春「そう思いますか!?そうですよね!」

垣根「あ?」

初春「すべすべの肌!整った唇!スッと通ってる鼻筋!」

垣根「……」

初春「程よい大きさの綺麗な目!きちんと整えられた眉!」

垣根「……」

初春「瞳を飾る長い睫毛!似合ってる茶髪!眩しくて白い歯!」

上条「……」

初春「どこを見ても最高にイケメンです!素晴らしいです!国宝級です!」

上条「だから、助けたのか?」

初春「はい!」

垣根「……」

初春「私の理想を具現化したような“顔”がこの世に存在するなんて思いもしなかったです!」

垣根「……」


初春「だから、垣根さんの顔を殴るなんて私が許しませんよ!ほら、垣根さんの顔に謝って下さい!」

上条「へ?」

初春「はやく!垣根さんの“顔”に謝って下さいよ!」

上条「垣根の顔?」

初春「はい。垣根さん自体には興味はないので。垣根さんが痛い思いをしても私には関係ないですし」

垣根「…………………………………」

初春「風紀委員ですから、目の前で殴られてたら流石に止めますけど……」

上条「……」

初春「そもそも垣根さんも自分の顔に謝るべきですよ」

垣根「あ?」

初春「だって、そんなに格好良くて素晴らしい顔してるのに、」

垣根「……」

初春「オタクだなんて、台無しですよ」

垣根「……」

初春「なんとく気味の悪い人だなぁと思ってましたけど納得しました」

垣根「……」

初春「オタクだったら仕方ないですよね。気味が悪いのは」

垣根「……」

初春「なんていうか幻滅ですよね。せっかく、超格好良い男の人と知り合えたっていうのに、オタクだったなんて」

垣根「……」

黒すぎるwwwwww


垣根は初春の頭を鷲掴みにした。
初春の頭を潰す勢いで力強く、掴んだ。

初春「痛っ!痛いですよ!」

垣根「俺はテメェみたいに顔しか見ないスイーツ脳女が大嫌いなんだよっ!」

ギリギリと初春の頭が軋む。
垣根の手を剥がそうと、初春は抵抗するが少しも手は動かない。

垣根「愛生ちゃんに似てる声で、胸糞悪いこと言ってんじゃねぇぞクソボケ!」

初春「いたたたた!あきって誰ですか!?私知りませんよ!」

垣根「声優だ。俺の天使だよ馬鹿野郎」

初春「いたいたい!て、天使とかキモいです!頭腐ってるんじゃないですか!」

垣根「あ!?腐ってねぇよアホタレ!!!!」

初春「いたっ!いたいです!離して下さいよ!
    あきさんって方も災難ですね!キモい人に好かれるなんて!!」

垣根「テメェ、愛生ちゃんに似てる声でそんなこと言うんじゃねぇ!!!」

初春「えええ!?私の声って垣根さんが好きな声優に似てるんですか!?
    最悪です!!ショックですよ!!きもい!超きもいです!!!」

垣根「だから、その声でそんなこと言うんじゃねぇ!!!!」

初春「ッ!いい加減離して下さい!痛いんですよ!」


そう言うと初春は垣根のスネに強烈なキックを叩きこんだ。
手が緩むと、初春は垣根の手を振り払った。
二人は睨み合う。

そして小学生のように取っ組み合いを始めた。

垣根は容赦なく初春にチョップをかます、負けずに初春は垣根の手に噛みつく。
その光景はポメラニアンとゴールデンレトリバーのじゃれ合いにも見えた。
しかし実際には、そんなに微笑ましいものではない。
髪を引っ張りあったり、肌を引っかいたり、耳を塞ぎたくなるような罵詈雑言が飛び交う。
見かねた上条が止めに入ったけれど、二人は止まらなかった。

上条(……ど、どうしよう)

上条がオロオロしている間も二人は取っ組み合いをしていた。
上条がもう一度止めようと足を動かそうとした時、争いを吹き飛ばすような大きい声が響いた。

黄泉川「アンチスキルじゃんよ!!!全員大人しくしろ!!!」

―――――――――――――――――――――

どうやら店員がアンチスキルを呼んだらしい。
アンチスキルにより拘束された三人は連行された。
車で移動するから乗れと言われ、三人は渋々と搭乗する。
すると先客がいた。
先ほど帰った筈の少年と少女。
一方通行と打ち止めも乗っていのだ。

垣根「お前も捕まったのか」

一方「店の外に出た瞬間に捕まったァ……」

打止「黄泉川も貴方に会えて嬉しそうだったねってミサカはミサカはニコニコしながら言ってみたり」

初春「私、風紀委員なのに……はぁ……」

上条「先に帰れって言ったけど、インデックス平気かなぁ……」

黄泉川「喧嘩の理由は後でたっぷり聞いてやる。だから、今は静かにするじゃんよ」

そう言うと、アンチスキルの女性は車を発進させた。
どんよりした車内で打ち止めだけが上機嫌だった。



目的地に着き、事情を聴くために子ども達を部屋へと通す。
すぐに終わるから別の部屋で待ってるじゃん、と打ち止めに優しい声をかけた後、黄泉川は悪ガキどもを見る。
一方通行の姿に頬が緩みそうになったが、仕事中だと言い聞かせ気を引き締めた。

黄泉川「で?何でファミレスなんかで喧嘩してたんだ?」

垣根「だって、こいつが」

初春「だって、この人が」

一方「俺は、別にィ……」

上条「つい頭に血がのぼっちゃって」


黄泉川「一人ずつ話すじゃんよ。まずは一方通行」

一方「俺は、垣根くンが打ち止めに危害を加えようとしたから、イスを投げたンだよ」

垣根「あ?危害なんて加えようとしてねぇよ(最初はその予定だったけど……)」

黄泉川「お前は黙るじゃんよ」

垣根「はい」

黄泉川「打ち止めは元気そうだけど、何をされそうになってたんだ?」

一方「ピーマンを、無理矢理食べさせられそうに、」

黄泉川「アホか!!!!」

怒鳴りながら一方通行の頭に容赦なくゲンコツした。
ゴン!と良い音して、一方通行は涙目になる。
見ているだけでも痛そうで、垣根達は頭を触った。

黄泉川「好き嫌いさせるなっていつも言ってるじゃん!!
     甘やかしてばっかりじゃ、打ち止めの為にならないじゃん!?」

一方「でも、アイツは普通の人間より長く生きられねェンだぞ!?
    だったら好きなモンをたくさん食べたほうがいいに決まってる!!」

黄泉川「嫌いな物から目を背ける人間っていうのは、
     将来ゴミみたいになるじゃん。打ち止めがそうなってもいいの?」

一方「……それは、そのォ」

黄泉川「それくらいの理由でイス投げちゃ駄目じゃん?お店の人がどう思うか想像できるじゃんよ」

一方「…………ン」


黄泉川「よし、反省してるな。で、次は髪の長い子に聞こうか?名前は?」

垣根「……垣根帝督です」

黄泉川「レベルは?」

垣根「……5です。第2位です」

黄泉川「はぁ……1位も2位も情けないじゃんよ」

垣根「俺は喧嘩売られただけだよ」

黄泉川「いちいち買うな」

垣根「でも、ムカついたし」

黄泉川「馬鹿かお前は。ムカついたって理由で喧嘩してたら友達できないじゃん」

垣根「…………すいません」

黄泉川「次は上条。小萌先生が泣くぞ?」

上条「俺は、その……頭に血が登っちゃって。すいません……」

黄泉川「……そこの少年の顔腫れさせたのは?」

上条「すいません……俺、です」

一方「でも、三下は悪くねェ!」

垣根「そうだ!俺があんなこと言っちまったのがわりぃんだよ!」

黄泉川「へぇ……とにかく、経緯を聞かせてもらうじゃんよ」

―――説明中

黄泉川「…………お前らは馬鹿じゃん」ハァ

垣根「な!」

黄泉川「自分の好きな物馬鹿にされたら、腹が立つのは分かる。でも人様に迷惑かけるなんて最低じゃんよ」

上条「ごもっともです……」

黄泉川「喧嘩なら河原とかでやるじゃんよ。夕日をバックに拳を交わせば友情が深まるじゃん?」

一方「それはねェよ……」

黄泉川「で、最後は花飾りの女の子。名前は?」

初春「初春飾利です。すいません……私、風紀委員なのに……」

黄泉川「男相手に取っ組み合いするなんてヤンチャじゃんよ」

初春「えーっと、その、私もその、少しムカッときちゃって…」

黄泉川「大人しそうな外見なのに意外じゃん。この男に何かされたの?」

垣根「何もしてねぇし」

初春「頭、掴まれました」

垣根「それはテメェが悪いんだろ」

初春「別に私変なこと言ってないじゃないですか」

垣根「あ?人を外見で勝手に判断しやがっただろうが!」

初春「外見については褒めてるじゃないですか?何が不満なんですか?」


垣根「外見しか見ない女が大っっっっっっっ嫌いなんだよ!」

垣根「いつも、いつも、顔と第2位って肩書のせいで頭カラッポのアホ女に好かれんだよ!」

垣根「そのくせ、性格知った途端バイバイだぜ!ふざけんな!」

垣根「幼い頃から、ずっと、ずーーーっと、だ!ウザったいんだよクソ!いい加減にしろ!!」

垣根「女なんかクソだ。俺には愛生ちゃんしか居ねぇんだよ!!」

初春「別に私は性格については否定してないですよ?オタクなのが嫌なだけで」

垣根「うるせぇな。どうせテメェだって俺がオタクじゃなさそうって
    外見で勝手に判断しやがったんだろ?そういうのが死ぬほどうぜぇんだよ」

初春「そうなんですか。でも、私はオタクっていう人種が死ぬほど嫌いなんですよ」

垣根「価値観狭い女はモテねぇぞ?」

初春「そんな心配、貴方にされたくありません」

垣根「あ?心配なんかしてねぇよ自惚れるなガキ」

初春「ガキって言いますけど、貴方だって学生じゃないですか?図体でかいだけで、ガキですよ」

垣根「口の減らねぇガキだな。抓るぞコラ」

初春「触らないで下さい。汚いです」

垣根「あぁ!?テメェふざけんなよ!!」ツネッ

初春「ふがっ!ふえらないへふらはい!!」

黄泉川「何で喧嘩になるじゃんよ…………ほら、やめるじゃん?」

垣根「……こいつが悪い」

初春「……この人が悪いです」


黄泉川「どっちもどっちじゃんよ。そもそも何でそんなにオタクを嫌ってるじゃん?」

初春「……」

黄泉川「あ、言いたくないことだったらいいじゃん。無理には聞かないよ」

初春「……別にいいですよ」

垣根「どうせくだらない理由だろ」

初春「気持ち悪いからです。それに怖いですし」

黄泉川「怖い?」

初春「私、幼い頃にオタクの男の人に誘拐されたことがあるんです」

上条「……」

一方「……」

垣根「……」

初春「凄い幼かった時のことなので、うろ覚えなんですけど部屋だけは覚えてるんです」

黄泉川「部屋?」

初春「はい。アニメのポスターが壁一面に張ってあったことだけは覚えてるんです」

上条「……」

初春「それが、すっごく怖かった記憶が強くて……」

黄泉川「なるほど。それがトラウマになってるわけか。辛いこと話させて悪かったじゃん」

初春「いえ、平気です。それに、誘拐がオタクを嫌いになるきっかけではありません」


黄泉川「それ以降も何かあったの?」

初春「……何でか分からないんですけど、そういう類の人に好かれやすいみたいなんです」

黄泉川「ほうほう」

初春「今までに5人からストーカーされたことがあるんです。それが5人ともオタクで……」

黄泉川「5人もか……。でも、そのストーカー全員がオタクだって何で分かったじゃんよ?」

初春「一人目はアニメの女の子がプリントされたTシャツを着ていました」

初春「二人目はアニメの女の子の人形?フィギュアっていうんですかね?それを常に持っていました」

初春「三人目はアニメの女の子がプリントされたでかいクッションみたいなのを持っていました」

初春「四人目は、漫画の女の子のキャラクターの衣装を着ていました。
    私は知らなかったんですけど、漫画に詳しい先輩が教えてくれました」

初春「五人目は、“お兄ちゃん”とか“ご主人様”って声を録音させてくれって付け廻してきました」

黄泉川「あー……災難じゃん」

初春「もちろん、頭ではそういう人ばかりではないって分かってるんですよ?分かってるんですけど……」

黄泉川「それだけのことされたら、仕方ないじゃん」


上条「……」

一方「……」

垣根「……」

黄泉川「何でさっきから三人は俯いてるじゃんよ?」

初春「その人達、三人ともオタクなんですよ」

黄泉川「そういえばそうだったじゃん。でもアホだけど悪いヤツらじゃないじゃん?」

初春「……まぁ、そうかもしれませんね」

黄泉川「まぁ、お店の人は反省してればお咎め無しでいいって言ってたから、今日は帰ってもいいじゃん」

初春「……すいません」

黄泉川「二度とこんなことしちゃ駄目じゃんよ?」

垣根「はい」

一方「ン」

上条「はい」

初春「はい」

黄泉川「よし、遅いし女子は私が送っていくじゃん」

初春「あ、すいません。ありがとうございます」

プルルル

黄泉川「ちょっと待つじゃんよ」

初春「はい」


黄泉川「はい?え?また喧嘩?……分かった。すぐ行くじゃんよ」

黄泉川「ということで、私は用事ができたから、男子はきちんとその子を送ってやること」

上条「はい」

黄泉川「二度と店で暴れちゃだめじゃん?じゃあ、気をつけるじゃんよー」

そう言うと、黄泉川は慌ただしく出て行った。
それに入れ替わり、打ち止めが入ってくる。
小走りで一方通行の近くに行き、裾を掴み上目遣いで彼を見る。

打止「早く帰ろう?ってミサカはミサカは目をこすりながら言ってみる」

一方「歩いてる途中で寝ンなよォ?」

打ち止めと一方通行は手を繋ぎ、アンチスキルの建物から出て行く。
残りの三人もそれに続いた。
前を歩く少年と少女が微笑ましく、初春は口元を綻ばせた。
すると、隣にいるツンツン頭が話しかけてくる。

上条「えーっと、名前は?」

初春「へ?私ですか?初春飾利です」

上条「初春さんか。俺が途中まで送っていくよ」

上条はそう言うと爽やかに笑う。
スッとした背筋に人の良さそうな笑顔。
初春の中にあるオタクのイメージとはかけ離れたものだった。

初春「……上条さんは、少し乱暴ですけど、悪い人では無さそうですね」

上条「え?そうかな…?」

初春「なんだか気持ち悪いと思わないので。でも、暴力はダメですよ!」

上条「……はい」


上条と話していると初春の腰に何かがまとわりついた。
視線をそちらにやると打ち止めが、初春をじっと見ていた。
何かを訴えたそうな眼差しに初春は首をかしげる。

打止「この人も気持ち悪くないよってミサカはミサカは訴えてみたり」

初春「へ?」

打止「少し、ミサカを甘やかしすぎな所があるけど本当は優しいんだよってミサカはミサカは真実を言ってみる!」

初春「……アホ毛ちゃん」

打止「確かにこの人は雪歩しか見てないけど、それは3次元に
    雪歩以上の女の子が居ないだけなのってミサカはミサカはさらに訴えてみる!!」

打ち止めの瞳は真剣で、初春をまっすぐ射抜く。
その迫力に押されて初春は後ろに下がった。

初春「分かりましたよ。この白くて赤い人は気持ち悪くありません」

打止「白くて赤いって……この人は一方通行って言うんだよってミサカはミサカは紹介してみる」

初春「はぁ、そうですか。とにかく帰りましょうか」

そう言って初春は顔上げる。すると、垣根と目があった。
垣根は自分と打ち止めのやりとりを見ていたらしい。
痛々しく腫れた垣根の顔を見て、初春は目を細める。


初春(はぁ……せっかく綺麗な顔なのに、勿体ないです。もっと大事にしないと駄目ですよ」

垣根「全部駄々漏れだぞクソガキ」

初春「クソガキじゃないです。初春飾利です」

垣根「わりぃな。興味無いことは覚えられないんだよ」

初春「学園都市第2位って言っても大したことないんですね。
    人の名前も覚えられないなんて。あ、そっか。だから第2位なんですね」

垣根「あ!?」

初春「レベル5って言っても私よりも記憶力ないんですね。
    そんなんだから頭カラッポの女の人にしか好かれないんですよ」

垣根「……てめぇ」

徐々に険悪に雰囲気になってく空気に、上条は焦る。
止めないとまた、さっきみたいに……

打止「あ、なんだか嫌な雰囲気、早く逃げたほうがいいかもってミサカはミサカはしがみついてみたり」

一方「だなァ。じゃあな三下、また明日」

上条「え、おい!逃げるなよ!」

一方通行は能力を使い打ち止めを抱き上げて、光の速さで帰って行った。
上条は、恐る恐る垣根と初春を見る。
案の定、二人は取っ組み合いを始めていた。
ちょっと目を離しただけだというのに……。
上条は帰りたくなった。
けれど、そういう訳にもいかない。

どうせ止めても無駄なので、二人をぼんやりと眺めることにした。

――――――――――――――――――――――――――――――

上条(もう、30分くらいは経ってるぞ……よく飽きないな……)

初春「はぁ、はぁ、……大人げない、ですね、バカきねさん」

垣根「はぁ、はぁ、……諦め、悪いんだよ、悪趣味花畑」

初春「……ホントにムカつく人ですね、あなたは」

垣根「それはこっちの台詞だコラ」

初春「早く、顔の腫れ治して下さいね?じゃないと垣根さんの存在意義が無いままですよ」

垣根「死ね」

初春「私が死んだら、垣根さんの一番身近に居るほっこり(笑)ボイスとやらが聞けなくなりますよ?」

垣根「…………声だけ残して死ね」

初春「アホなんじゃないですか?バカきねさん」

垣根「その呼び方止めろ。声だけ天使」

初春「なら、その気色悪い呼び方も止めて下さい」

垣根「つーか、テメェの存在意義だって声だけだろ。せいぜい唯一の長所を大事にするんだな」

初春「……死んで下さい」

垣根「俺が死んだら、お前の理想の顔とやらが消滅すんぞ?」

初春「…………顔だけ残して死んで下さい」

垣根「生首かよ!怖い事言うな馬鹿!」

初春「でも、生首のほうがいいかもしれませんよ?喋ったら残念マックスになるので」

垣根「こいつ……」


初春「垣根さんって、オタクとかじゃなくて、ただ単にムカつく人ですよね」

垣根「うぜぇよクソボケ。自分の声の価値にも気付いてねぇ愚か者が」

初春「というか、垣根さんってかませっぽい雰囲気が漂ってるんですよね」

垣根「あ?」

初春「なんか、格好つけて大口叩いたくせに数ページでさっくり倒されちゃう感じです」

垣根「テメェ!意味分かんねぇこと言ってんじゃねぇぞ!?」

上条「ほらほら、いい加減にしろって。帰るぞ初春さん」

初春「あ!すいません。待たせてしまって。このチンピラみたいな人がしつこくて」

垣根「テメェが挑発してくんのが悪いんだろうが。ぶっ殺すぞ」ビキビキ

上条「今日はおかえりラジオだぞ?早く帰った方がいいと思うけど」

垣根「そうだな。あばよクソガキ。二度とその面見せんな。でも声は聞かせろ」

初春「はい。さようなら。垣根さんは私の視界に入ったら、一言もしゃべらないで下さいね?」

垣根「テメェ……」

上条「いい加減にしろって!!」

――――――――――――――――――――
忌々しい出来事を思い出して、垣根は目を開いた。

今日は、谷山浩子ファンの女に愛生ちゃんを褒められたり、
伝説のリスナーと知り合ったり、栞を生で拝めたり、
恋するリスナーにも会えたし、上条や一方通行とも知り合うことも出来た。
良いこと尽くしの筈なのに、気分は最悪だ。

それも全部、あの花ガキのせいだ。
せっかく良い声してるというのに、糞なことしか言わない。
あのガキにあの声は勿体無さ過ぎる。贅沢だ。

垣根(こんなに人を嫌いになったのは初めてだクソ……!!)

垣根「……」

そもそも誰かを嫌いになったことは生まれて初めてかもしれない。
今まではムカついた人間はその場で全て排除してきた。
だから嫌いという感情が生まれる間もなく、気に喰わない人間は居なくなっていたのだ。

初春だって排除すれば問題は解決するのだが、彼女を殺すなど、垣根には出来ない。
あの声で泣かれてしまったら、垣根は平謝りするしかないだろう。

垣根(やべぇ、アイツに謝るとか、想像しただけで胃に穴が開きそうだ……!!!!!)

初春は垣根にとって厄介な存在だ。
消したくても消すことができない。
はぁ、と重いため息が漏れる。


初春飾利は垣根帝督にとって、ある意味特別な存在になったのだった。

.

ここまでです。
読んでくれてありがとうございます。
アイマスネタについてはググってみて下さい。
ググるのめんどくせぇよって方は気軽に質問して下さい。

乙!!
ある意味フラグ立ちまくってて吹いた

このていとくんと初春は喧嘩ップルにしか見えないな…
帝春にはならないらしいがこんな二人でも萌えられるぜ

やめろ初春! 俺をそんな目で見るな! >>1乙です。

まるで、ケンカしてるカップル <ダメェー だな…

上条は一方的に暴力振るっても逆に被害者から謝られる不思議

おつおつ。

ごめんなさい、初春ちゃんを誘拐したのもストーカーしたのも全部俺ですだって初春ちゃんがあまりにも可愛すぎるし天使すぎるからその、つい(ry

乙!

今回の初春さんは腐女子じゃなさそうで本当によかったww
垣根の顔あたりで本気に「またかよ」と思ってしまったww



それにしてもお前ら誘拐はやりすぎだぜ

明日、あいなまのライブ行ってくるわ

いくら誘拐があっても初春がうざすぎるのは変わらない

イベントで流血とか声オタはキチガイばっかすねwwwwwwww

夜の部は殴り合いがあったらしいな。
ただ、昼の部の自称応援団のキモオタは相当うざかったから殴りたい気持ちはわかる。

リアルそげぶとか声オタ怖いよぉ…

殴ったのはていとくんですね、わかります。
流石常識が通用しないべ。

オタ芸ェ……。

レスありがとうございます。
コンサートで流血沙汰なんて残念ですね。
公式がもっと注意を呼び掛けないとだめですね。

投下します。


垣根は携帯電話の着信音で目が覚めた。
昨日は疲れたから、今日は惰眠を貪ろうと思っていたのに誰だ。
ダルそうに手を伸ばし相手を確認する。

携帯のディスプレイには“心理定規”と表示されていた。
舌打ちして通話ボタンを押す。

垣根「……もしもし?」

心理『もうお昼よ?いつまで寝てる気なの?』

垣根「うっせーよ……なんのようだばか」

心理『昨日はどうなったのよ?』

垣根「あ?」

心理『一方通行とはどうだったの?』

垣根「わかいした」

心理『は?』

垣根「じゃあな。今日は連絡してくんな。寝る」

心理『ちょ、ま、待ちなさいよ!ピンセットはどうしたのよ!?』

垣根「無くした」

ブチリと携帯を切り、会話を終了させる。
ちなみに“ピンセット”は垣根が病院に運ばれた時に、冥土帰しに回収された。
さらにそこから土御門が強奪したのだが垣根が知ることはない。


垣根はもう一度眠ろうと目を瞑る。
が、家のチャイムが鳴り響いた。

垣根(……ネットで何か買い物したか?)

ピンポーン

垣根(いや、してねぇ。まぁいい、居留守でも使うか……)

ピンポーンピンポーン

垣根「……」

ピポピポピポピポピンポーン

垣根「だぁぁああああぁぁっぁうっせぇぇぇぇ!!!!」

垣根はベッドから飛び起き、扉の向こうの相手をぶっ殺そうと足早に玄関に向かった。
昨日のこともありイライラがマックスな垣根は、丁度良いストレス解消だと思いニヤリと笑った。
そして、勢いよく扉を開ける。

垣根「どちらさんですか!!!!?クソ野郎!!!!!」

一方「おはよう」

垣根「……………は?」

そこには、モジモジしながら立っている一方通行が立っていた。
ソワソワしながら垣根を上目使いで見てくる。気持ち悪い。

垣根「あんだよ?」

一方「これェ……」

ゆっくりと垣根の前に何かを差し出した。
それは家庭用ゲーム機Xbox 360のソフト。
可愛いらしい女の子達が微笑んでいるパッケージには“THE IDOLM@STER”と書かれていた。


玄関に立っている訳にもいかず一方通行を家へと入れた。
そのままリビングに通し、ソファに座らせた。
垣根は、自分と彼の分のブラックコーヒーを入れてからソファに座る。

垣根「ミルクとか無くて平気?」

一方「ン。ブラック好きだし」

垣根「つーかいきなり家来るの止めろよ。連絡くらいしろ」

一方「メアド知らない。それによォ、アイマスやらせたくて仕方がなかったンだ」

垣根「……何で家知ってんの?」

一方「調べた」

垣根「……」

一方「なァ、誰をプロデュースしたい?」

垣根「お勧めは?」

一方「ゆきぽ。でも、オマエが気に入った子をプロデュースしろよォ」

垣根「分かったよ。とにかく付けるか」

いがみ合っていた男と並んでゲームをするなんて不思議だなと思う。
あれだけ気持ち悪いと思っていたゲームが、今では興味津津だ。
上条とかいう男の右手で殴られてから、自分は何か変わってしまったのだろうか?

一方「箱にホコリ被ってンな…。使ってねェの?」

垣根「買ったはいいけど面白いソフト無くてよ。アイマス以外にもお勧めあったら教えてくれ」

一方「ン……」

一方通行は、アイマスのオープンニングムービーを見ながらコーヒーを飲む。
垣根は眉間に皺を寄せながら画面を見ていた。


一方「何でそンな難しい顔してンだよ」

垣根「……こうして見ると、けっこう可愛いと思って」

一方「だろォ!?プロデュースすればもっと可愛く見えンだよォ!!」

垣根「誰にすっかな……」

一方(……こいつ真剣だなァ。昨日はキモゲーとか言ってたくせによ)

垣根「んー……」

一方「フィーリングで決めろォ」

垣根「この子にする」

一方「美希だと……?」

垣根「あ?何驚いてんだよ?」

一方「いや、何でもねェよ……最初から美希を選ぶとは、見る目があると思っただけだ」

垣根「見る目?」

一方「やってみれりゃ分かる」

垣根「分かったよ」

―――数分後

垣根「おいおい、何だこのゆとりキャラは……」

一方「まァ、落ち着けよ。美希に対しては最初皆そう思う」

垣根「キリがいいからここで止める。あとはテメェが帰った後にじっくりやるよ」

一方「おう、そうしろ。分からねェことがあったら俺に聞けェ」

垣根「そうする」


一方「なァ、オマエ、豊崎さンのキャラで誰が一番好きなンだ?」

垣根「なんだよ突然」

一方「いや、昨日帰ったあと豊崎さンのラジオ聴いて、
    けっこう気に入ってよォ、でもやってるキャラ多くてどのアニメ見ればいいか分からねェンだよ」

垣根「なるほどな。まず、けいおん!がいいんじゃねぇの?
    有名になるきっかけだし、見といて損はねぇよ。BD貸す」

一方「分かった。けいおン!か…」

垣根「俺が思い入れある作品はしゅごキャラかな。愛生ちゃんを知ったきっかけだし」

一方「あれって少女漫画だろォ?男が見て楽しいのか?」

垣根「俺はメルヘンッチクな世界観に惹かれて見始めたんだけど、けっこう面白いぞ」

一方「へェ」

垣根「スゥってキャラを愛生ちゃんがやってたんだけど、これがまた可愛いんだ。俺の所にも来て欲しいぜ」

一方「ほうほう」

垣根「そういや、アイマスってアニメに」

一方「なってねェよ」

垣根「やってろ、声優変わって」

一方「なってない」

垣根「え?なんかロボ」

一方「なっていませン」

垣根「……」

垣根てめえおっぱいで選んだな?
俺もです

―――数時間後

一方「いきなり来て悪かったなァ」

垣根「別に?でも次からはメールしろよ」

一方「ン……」

垣根「何ニヤニヤしてんだよ」

一方「……俺、今まで、ゲーム勧めたり、アニメ勧めてもらったりすンの無くて…」

垣根「……」

一方「だから、なンか、楽しいっつーかァ……」

垣根「俺もだよ。すっげぇ楽しかった。また来いよ」

一方「ン」

垣根「貸したCDちゃんと聞けよ?」

一方「当たり前だろォが。つーかよォ、オマエ、顔平気?」

垣根「見た目ほど痛くねぇよ」

一方「よく考えたら一方的に殴られて、黙ってなくても良くないかァ?」

垣根「は?」

一方「これから、三下の家に殴り込みに行かねェ?」

垣根「……それは、いいな」

一方「うし、決まったなら行くぞ」

第1位と第2位は悪ガキのような笑みを浮かべると、レベル0の家へと向かった。
軽く小突いてやろうと思ったのだが、それがあんなことになるなど、二人は知らない。
知らなくても無理はない。
この時、垣根と一方通行は好きな物を他人と共有できる喜びに感動していたのだ。

お、やっとクズ条を制裁する展開になったか

――――――――――――――――――――

垣根「かっみじょーくーん」

一方「あっそびィましょォー」

玄関の前に立った二人は借金取りのようにチャイムを連打する。
出てきた瞬間に殴ってやろうと二人は構えていた。
ゆっくりとドアノブが廻される。

??「どちらさまですか?新聞ならいらないんだよ」

そこにはパーカーとジーンスを着た銀髪の少女が立っていた。
髪は一つに束ねてありエプロンを着ていた。
手にはお玉が持たれていて、ご飯の準備をしている最中だと分かる。

二人は、開いた口がふさがらなかった。
住所は絶対に間違いないのに、女が出てきた。
しかもけっこう可愛い。声なんて最高にウザ可愛い。

??「もしかして、とうまのお友達?ちょっと待ってるんだよ。玄関にどうぞ」

笑顔でそう言うと、パタパタと音を立てて部屋の奥へと戻っていった。
二人は茫然と立っていることしか出来なかった。

垣根「……どうせい?」

一方「……ただれてんなァ」

上条「あれ?お前らどうした?」

??「せっかく来てくれた友達にそんな態度取っちゃ駄目なんだよ」

一方「その黒歴史春香さんみたいな声してる女は誰だ?」

上条「は?インデックスのことか?」

禁書「あ、自己紹介してなかったんだよ」

垣根「……」

禁書「私、インデックス。とうまと仲良くしてくれると嬉しいんだよ」

インデックスは、名前を名乗ると台所へと戻っていった。
歩くと揺れるポニーテールが眩しい。
二人はその姿をボケッと見ていた。


上条「上がれよ。ついでに夕飯食べてく?」

垣根「なにあの子?」

上条「だからインデックスだよ」

説明になってない説明に二人は頭をひねる。
早く来いよ、と上条が言うので二人は上条の部屋へと上がった。

部屋を見て二人は絶句した。

ポスターだらけで壁も天井も見えない。
フィギュアが綺麗に並べられており、ベッドには抱き枕が置いてあった。
大量の声優雑誌が詰まれいる。
地震が来たら雪崩のように落ちてくるだろう。

一方通行の部屋もけっこうな痛部屋だ。
しかし、彼は雪歩一筋で雪歩と水があれば生きていけるので、ここまでではない。
垣根の部屋は、整理されている。
ポスターは額縁に入れてきちんと飾らているし、上条の部屋のように狭くないので、ここまでひどくない。

垣根(花飾りのガキは、上条を気持ち悪くないって言ってたけど、この部屋見たら気絶すんだろ……)

ふと、声だけ天使のガキを思い出してしまって垣根は内心舌打ちする。
あんなガキさっさと記憶から抹消しようと思っていたのに。
あ、声は別です。

上条「そこ座っていいぞ」

垣根「……失礼します」

一方「……ン」

禁書「お茶なんだよ」

二人が座るのを見計らって、インデックスが紅茶を持ってくる。
その紅茶の色は薄く、味も薄くてただのお湯だった。
お茶を出したインデックスは再び台所へに引っ込んで行った。


上条「何か用?」

垣根「あ、えっと……」

壁や天井からの美少女キャラの視線に落ち着かなく二人はキョロキョロしていた。
抱き枕を見て一方通行は驚愕した。

一方通行が見たのは“魔法少女りりかる☆なのは”のコミケ限定の抱き枕。
それは、選ばれた者にだけにしか手に出来ない代物。
一方通行は上条の顔を見る。

一方(こいつ、俺が思ってるよりも、凄いヤツなンじゃ……)

垣根「すっげぇ部屋だな。この部屋で同棲してるっつーのが信じられねぇよ」

上条「同棲?同居ですよ?」

垣根「あ?」

上条「インデックスは同居人だ。今日の夕飯はインデックスの担当なんだよ」

垣根「……へぇー。つーかあそこにかかってる修道服何?」

上条「インデックスのだ」

垣根「……」


一方通行はテレビの横にアイマスが置いてあるのを確認すると、満足そうにニヤリとした。
でも、この部屋は物が多すぎる。

一方「銀髪ポニテはこの部屋に不満ねェのかよ……」

上条「え?半分はインデックスの物だし」

垣根「は?」

パタパタと足音を立ててインデックスが戻ってくる。
上条の隣にチョコンと座ると、テーブルに煎餅を三枚置いた。

禁書「紅茶とお煎餅じゃ合わないけど、今はこれしかないんだよ」

垣根「ありがとうございます」

せっかくなので垣根と一方通行は煎餅に噛り付いてみた。
しけっている。

垣根「……」

一方「……」

禁書「とうまのお友達なんだよね?好きな曲は?ライブは何回行ったの?」

インデックスがキラキラした瞳で二人を見つめてくる。
質問の意味が分からずに、二人は黙りこんだ。
上条の友達だと何かあるのだろうか?

上条「あ。インデックスこの二人は、違うんだ」

禁書「そっか……」

インデックスは俯きショボンとすると、立ち上がりエプロンを脱ぐ。
そして、再び顔をあげて、笑顔になった。


禁書「今日はカレーなんだよ?一緒に食べて行ってくれると嬉しいな」

垣根「あ、じゃあ、ご馳走になります」

一方「……黄泉川に連絡しねぇと」

一方通行が家に連絡を入れている最中に、上条とインデックスは鍋と皿を運んできた。
カレーの臭いが二人の嗅覚を刺激する。
食欲をそそる匂いに惹かれて鍋を見て、二人は愕然とした。

上条「カレーなんて久しぶりだなぁー。普段はこんな贅沢できないからな」

禁書「今日は大奮発なんだよ!」

鍋には、お湯にカレールーを溶かしただけの液体が入っていた。
具なんて何も入っていない。
可哀想なカレーだ。
カレーをかける筈のご飯はなく、代わりに茹でたもやしがある。
確かに色は近いかもしれないが、代用品になるとは思えない。

上条「美味しそうだなぁ!もやしも買ってきたばかりのやつだし!」

禁書「明日からはまた水だけの生活だね!」

垣根と一方通行は、頭が痛くなってきた。
これで贅沢とは、この二人は普段どんな食生活をしているのだろうか。


上条「ほら、お前らの分もよそったぞ?遠慮しないで…」

垣根「こんなモン食えるかーーー!!!!!!」

一方「お前らアホじゃねェのォォォォォォォ!!!!」

垣根と一方通行は叫んで、上条の家を飛び出した。
その足はスーパーへ真っ直ぐと向かう。
垣根は米を買えるだけ買いこみ、一方通行はカレーの具材を買った。
そして、上条家に戻って勝手に台所に入り、買ってきた具材をフライパンで炒める。
具に全て火が通ると、可哀想なカレーに投入した。
それと同時に、ご飯が炊ける。
炊きたてのご飯は白く輝いていて、カレーをかける為だけに存在しているみたいだった。

上条「……」

禁書「……」

一方「おら、これがカレーだ」

垣根「ちゃんと米食え。日本人だろ。あ、そこの嬢ちゃんは違うか。でも喰え」

上条「……貴方達が神様か」

禁書「主よ……感謝します……」

垣根「拝むな!やめろ!」

一方「いいから喰おうぜェ。腹へった」

上条「本当にありがとうな!!!お前ら大好き!!」

垣根「それよりも上条」

上条「ん?」

一方「礼はいいからよォ……」


垣根一方「「殴らせろ!!!」」


上条「え、ちょ、」

垣根の拳と一方通行の拳が上条の頬にめり込む。
インデクッスは“男の友情を深めるには拳なんだよ”とか何かと言いながらニコニコしていた。
上条の顔がボコボコになってから、四人は手を合わせていただきますをした。
当初の目的を果たした垣根と一方通行は、スッキリとした顔でカレーを食べ始める。


禁書「本当にありがとうなんだよ。いつもは節約してるから、こんなご馳走食べれないんだよ」

垣根「どうも。つーか節約って……。昨日、ファミレスに居たろ?」

上条「昨日は匂いがご飯だったんだよ。水を飲みながらだと実際に食べてるみたいになるんだ」

禁書「ハンバーグの匂いが美味しかったんだよ!」

一方「匂いはご飯じゃねェから。あと、店に迷惑だから止めろ」

上条「はい」

禁書「はい」

垣根「つーか、そんな切りつめてるなら買い物我慢しろよ」

禁書「それは無理なんだよ」

上条「ああ。無理だ」

一方「バイトとかすればァ?」

禁書「してるんだよ。早朝はコンビニで、そのあとはスーパーでやってるんだよ」

垣根「そんだけバイトしてんなら、ここまで切り詰めなくても……」

禁書「駄目なんだよ。ライブに行けなくなっちゃうんだよ!」

垣根「は?ライブ?ライブって一体何の?」

すると上条がドヤ顔で、テレビを付けてDVDを再生する。
画面の中では、世界一可愛い女の子が踊りながら唄い、それに合わせて国民達がズレることのないコールをしていた。
ピンクのサイリウム、王国民の振り上げる腕、眩しい照明、安定した唄声。

垣根と一方通行は、再び絶句した。

( ;∀;) イイハナシカナー


TV<OK!この余はEASY~♪

TV<(L.O.V.E. ゆかり!)

TV<All right! 私がいちばーん♪

TV<(ゆかりがいつでも一番さ!)

禁書「これはSuper Special Day っていう曲なんだよ。
    コールのタイミングが分かりやすいし、コールも覚えやすいし、私のお勧めなんだよ」

垣根「」

一方「」

上条「ちなみにこの曲はときめきメモリアル2の伊集院メイのキャラクター・イメージソングだ」

禁書「なのはの曲も大好きだけど、ゆかりんの曲はこういう可愛い系が良いと思うんだよ。二人も聞いてみるべきなんだよ!!!」

垣根(こ、こいつら、)

一方(二人揃って、)


垣根一方((王国民だったのか――――!?))

ここまでです。
読んでくれてありがとうございます。

このスレのインデックスの歩みはまさか…

学園都市にて上条と遭遇、アイマスにはまる、わーい首輪はかしたんだよー
かおりーお金ちょーだいー

ぐへへへへってかんじか

二人でユアミのラップパートを練習してる姿を想像すると涙がでるな…

だめだこいつら……はやくなんとかしないと……!

乙。

王国民とか…エリート中のエリートじゃねえか…

モジモジ一方さんにキュンとした

>>252 同感。正直俺は一方さんが居ればそれだけで生きていける。水も必要ない。

な…なんだってえ…

腐女子キモすぎだろww

>>255
初春ちゃんを敵に回したぞ

レスありがとうございます。
一方さんはやはり人気ですね。

投下します。


食事を終えた後も王国民による姫トークが続いた。
なんだか異次元に居る気分だ。
垣根がTV画面に目をやると、世界一可愛い女の子が“ドウモアリガトッ”と笑顔で言っていた。

上条「ん?垣根はゆかりんに興味あるのか?コール覚える?」

垣根「無理です」

一方「オマエらの話は分かったからTV消そうぜェ?節約してンだろォ?」

上条「それもそうだな」ブチッ

禁書「二人も興味持ってくれると嬉しいんだよ」

垣根「俺には愛生ちゃんが居るし」

禁書「あきちゃん?」

垣根「あ?知らねぇの?けっこう知名度あると思うんだけど」

上条「あー…インデックスはなのはとゆかりんにしか興味ないんだ」

垣根「すっげぇ偏ってんな」

一方(もしかしてェ……抱き枕は、この女の所有物なのか?)

禁書「“なのは”は凄いんだよ!まずキャラクターが可愛い!デバイスの設定も凝ってて、
     心が躍るんだよ!ド派手で熱い魔法バトル!心に響くストーリー!見る価値ありなんだよ!!!」

一方「へぇ…」

禁書「ロリコンアニメだと思われがちだけど、少年漫画寄りなんだよ。
    けっこう王道ストーリー。あと、私が一番好きなのは日常とシリアスの使い分けなんだよ。
    切り替えが上手くて、シリアスが良く映えるんだよ。そこがワクワクするんだよ!!!!」

垣根「……へぇ」

禁書「あるキャラ達の深い家族シーンは、私生活を見直すきっかけになったんだよ。
    ニートじゃ駄目だ、私も頑張ろうって思えたんだよ。それくらい温かいんだよ」

上条「インデックス、二人が引いてるからそろそろ止めような」

禁書「……ごめんなさい。なのはのことになるとつい熱くなっちゃって」

垣根「いえいえ、貴重なお話が聞けてびっくりしました」

一方「僕もですゥ」

上条「なんだその口調」


禁書「二人は何が好きなのかな?お話してくれると嬉しいな!」

垣根「俺はさっきも言ったけど愛生ちゃんだ」

垣根「好きなアニメのキャラの声が良いと思ってなんとくググったんだよ。そしたら、天使が居た。惚れた」

禁書「そうなんだ!」

垣根「柔らかい声を聞くとすっげぇ落ち着く。癒されるし、興奮するな。
    しかも、ラジオトークも良いし、唄声は人に聞かせる為に一生懸命唄ってるって感じがして好きだな」

禁書「なるほどね!今度聞いてみるんだよ!」

上条「俺だって散々勧めてるだろ……」

禁書「とうまは色々浮気してるから駄目なんだよ!」

上条「だって、良い物はたくさんあるし……。一番はゆかりんだけどさ」

一方(ヒーロー兼プロデューサー兼王国民かァ……)

禁書「で?何が好きなのかな?」

一方「萩原雪歩ちゃん」

禁書「とうまがやってるゲームだね」

一方「ン。雪歩は、俺に初めてメールをくれた女の子なンだよ」

垣根「は?メール?」

一方「アイマスは元々アーケードだったンだ。その時は携帯と
    連動したゲームで、待ち受けとか着うたとかダウンロードできたンだよォ」

垣根「へ、へぇ……」

一方「そンで、実際にメールも来るンだ。何時に事務所に居ますとか最近会えなくて寂しいとか」

垣根「…………すっげぇな」

上条「アーケード時代からのプロデューサーだったのか」

一方「雪歩の頑張ってる姿を見てると、俺も頑張れる気がするンだよなァ……」

上条「その気持ち分かる!俺も千早見てるとそう思う!」

一方「……なンか、語るのって性に合わねェや」

禁書「皆、色んな物が好きなんだね!こういうお話は面白いんだよ!」

垣根(ただ喋ってるだけで時間を無駄にしてるみてぇだけど、何かいいな。こういうのって……)


一方「おい」

垣根「あ?」

一方「ずっと気になってたんだけどよォ……」

垣根「ん?」

一方「オマエ、なンで1位になりたかったンだ?」

垣根「……いきなりだな」

上条(空気読んで黙っておこう……)

禁書(私は洗い物でもして来るんだよ……)スタスタ

垣根「お前はどこまで知ってる?」

一方「『スクール』は学園都市の反乱分子。そのリーダー垣根帝督は“ピンセット”を強奪。
     第1位の座の為に、あのガキを狙った。雑な説明だけど、これくらいは知ってンぞ」

垣根「全部知ってんじゃねぇか」


一方「オープンカフェからずっと尾行してたしなァ」

垣根「マジかよ。全然気づいてなかった」

一方「それ暗部のリーダーとしてのどうなの?」

垣根「仕方ねぇだろ…びっくりしてたんだからよ」

一方「倒れた時は正直、引いた。あのリアクションはねェよ」

垣根「うっせぇな。つーかさっさと出てくれば良かったろ」

一方「ヒーローっぽい登場がしたくてェ、タイミングを……」

垣根「ばーか」

上条「真面目な話かと思ったらアホな話だな」

一方「いいえ真面目ですゥ。で?」

垣根「……交渉権を得る為だよ」

一方「あ?」

上条「こーしょーけん?」

垣根「アレイスターとの、交渉権が欲しかったんだよ」

一方「……何のためだ?」

垣根「……」

一方「……言いたくねェのか?」

垣根「別に。お前らにだったら言ってもいいや」

一方「……」

垣根「……あれは、少し前のことだ」

――――――――――――――――――――――――

大人気声優豊崎愛生。
セカンドシングル“ぼくを探して”発売決定。
“ぼくを探して”の発売記念として、握手会が決定致しました。
イベントは抽選でのご招待をなります。
奮ってご応募して下さい。

垣根「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

垣根「セカンドシングルきた!!!!!!」

垣根「良い曲名だ。神曲の予感しかしないな」

垣根「しかも握手会だと……?絶対に行くしかない……」

垣根「抽選か……。色んな店舗で買って数枚、抽選券手に入れないとな……」

垣根は感喜していた。
待望のセカンドシングル。
愛生ちゃんとの握手会。
滅多に無い言葉を交わすチャンス。
絶対に行かなければ。
そして愛生ちゃんに大好きで愛していることを伝えなければ。
むしろ、ウェディングドレスと指輪をプレゼントしたい。

垣根(でも抽選券配る店舗って全部、学園都市の外なんだよな……)

垣根「……」

垣根(そういや俺って学園都市から出たことないかも……)


垣根は幼い頃から学園都市に住んでいた。
もしかしたら昔は違う場所に住んでいたのかもしれないが、そんな記憶は無かった。
そして家族が居ない垣根には外に出る理由など無い。
レベル5になってからは、未元物質の情報などの流失を恐れられて、外へ出ることは許されなくなった。

垣根(CDは下っ端に買いに行かせるか……。レベル0なら外出届は受理されやすいし)

今まで垣根は、学園都市から出ようとは思っていなかった。
大きすぎる力は学園都市に居たって持て余してしまうのだ。
外の世界になんか出たら、もっと住みづらくて煙たがられるだろう。
だから外には興味は無かった。

垣根(でも今回は事情が事情だ。当選したらIDを偽造してでも外に出てやる!)

垣根「……」

垣根(いや、偽造なんて駄目だ。俺がそんなことしちまったら、
    愛生ちゃんファンの評判が下がって、さらには愛生ちゃんの評判も下がっちまう……!!)

きっと大丈夫だ。
愛する女性に会いに行くと言えば、学園都市からすぐに出られるだろう。
愛を否定するほど、この街は無慈悲ではない筈だ。

垣根(とにかく応募して当選しないことには何も始まらねぇ)


さっそく下っ端を呼び出して命令をくだす。
街頭店舗でCDを購入し、応募券を手に入れること。
簡潔でアホくさい内容に下っ端は心の中で苦笑した。

心理「ねぇ、自分の趣味に組織を巻き込むのは止めさないよ」

垣根「うっせぇな。きちんと報酬は与えてるんだからいいだろ。
    それに遺体処理とかに比べればよっぽどマシだろうが」

心理「……はいはい」

当選する確率は低いだろう。
でも倍率が高いのは人気者の証拠だ。
そう思うと何とも言えない喜びが溢れてくる。

垣根(やべぇやべぇやべぇ…………もう当選した気分だ。
    でも、期待して抽選漏れしたらショックで死ぬから、そんなに期待しないでおこう)

垣根(抽選は完全に運だからな……。どうか当選してください!お願いします神様!!!!!!!!!)





そして、月日は流れる――――


垣根(そろそろ、当選者には参加権が来る筈だ……!)

期待と不安を抱きながら、ポストを開ける日々が続く。
何も入っていなくてため息をつくことが多かった。
しかし、神様は垣根を見捨てなかった。


暗部の胸糞悪い仕事を終わらせて帰宅した垣根はポストを確認する。
どうせハズれだろうと諦めつつポストを覗くと、そこには待ち続けた参加権が入っていた。

垣根「くぁwせdrftgyふじこlp!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

垣根は喜びのあまりのた打ち回った。
嬉しさで頭がおかしくなりそうだ。
愛生ちゃんに会える。
天使の声を生で聴くことができる。
その上、彼女に触れることができる。

垣根(ど、どうしよう、握手してるとき、何て言おう?好きです愛してますってのは絶対言うだろ?)

垣根(そんで頑張って下さいって言って、あ、でも頑張りすぎて倒れるとかは勘弁だ。健康第一で頑張って下さいって言うか)

頭の中で、愛生ちゃんとの握手のシミュレーションを何度もした。
心の準備無しで彼女に会ったら、トキメキで心臓が止まってしまうだろう。
脳内の愛生ちゃんは、はにかんだ笑顔で“ありがとうございます”と言ってくれる。
本物はもっと可愛くて素晴らしいに違いない。
楽しみすぎて死にそうだ。

垣根(あ、そうだ。学園都市から外出許可を得ないといけねぇんだ。今日はもう遅いし、明日にするかな)

垣根は最高に良い気分で眠りについた。
何を着て行こうか?髪はどんな感じにするか?プレゼントは何にしようか?
まるでデートするかのようにルンルン気分だった。


神様は残酷だ。
神様は垣根に微笑んだかのように見えたのだけれど、実際には垣根の方など見てもいなかったのだ。


垣根「は?外出許可は出せないだと?」

下っ端「はい。レベル5の第2位がそんな理由で外出するなと」

垣根「はぁぁぁぁぁぁぁ!?そんな理由!?
    愛生ちゃんの握手会をそんな理由呼ばわりだと!!!!?テメェぶっ殺すぞ!!!」

下っ端「痛い!痛いです!羽で叩かないで下さいよ!」

垣根「うっせぇばーか!死ねクソボケ!!!!」

下っ端「俺に言わないで下さい!」

心理「八つ当たりは止めなさいよ。あなたが外出なんて出来るわけないでしょ?」

垣根「あ?」

心理「分かっているでしょ?貴方くらいの力を持っていたら、
    学園都市の利益にならない限り、この街から出られないわ」

垣根「……クソが。俺は散々この街に利益を提供してきたんだ。
    たまには我がまま聞いてくれても良いだろうが馬鹿野郎」

心理「馬鹿なのは貴方よ。この街にとってレベル5は
    貴重な実験動物なのよ?モルモットが自分の意思で檻の外に出れると思ってるの?」

垣根「……超電磁砲は外に出てるだろ」

心理「彼女は家族が居るわ。外出を制限してたら、家族は黙っていないでしょ?」

垣根「……」

心理「それに貴方や第1位に比べたら、超電磁砲の力は赤ん坊みたいなものじゃない」

垣根「それはそうだけど」

心理「自分で思ってるよりも化け物なんだから、大人しくしてなさい」

垣根「でも、握手会が……」

心理「馬鹿じゃないの?そんな理由で第2位が外出できるわけないでしょ?考えなくたって分かるじゃない」


垣根「……」

心理「……」

垣根「……ッ」

心理「……泣かないでよ。気持ち悪い」

垣根「うっせぇ……出てけ……ふっ……ひっく……」

心理「……はいはい。ほら、貴方も行くわよ」スタスタ

下っ端「あ、はい」スタスタ

バタン

垣根「……」

垣根「……………」

垣根「あぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

垣根は体中の水分が無くなるくらい泣いた。
義務教育を終えた男がこんなに泣くなど、みっともないとは理解している。
けれど瞳から溢れてくる感情は止められなかった。
会いに行ける権利があるのに、街から出る権利はない。
あともう少しだったのに。
もう少しで彼女に会うことが出来たのに……!

垣根はこの街に初めて怒りを覚えた。
自分が実験動物扱いされようが、上層部の連中にいいように使われようがどうでも良かった。
しかし、今回のことでハッキリした。
この街は腐っている。腐りきっている。
愛する女性に会いに行くのすら許されないような街は、変えなくてはならない。

そして、第2位は決心する。
この街を変えよう。
レベル5でも、自分の意思で気軽に外出できるように、と。

垣根(でも今から動いたんじゃ、握手会には間に合わない……)

垣根(愛生ちゃんはこれからどんどん人気出るだろうし、握手会は二度とやらねぇだろうな……)

垣根(そう思うと、俺の行動は無駄かもしれねぇ……でも……)

垣根「それでも、俺はやらなくちゃならねぇんだよ……!」

―――――――――――――――――――――――

垣根「という訳で、俺は直接交渉権を手に入れようと色々やった訳だ」

一方「……」

上条「……」

禁書「……」

垣根「笑えるだろ?どんなに頑張った所で握手会には行けないっつーのによ」

一方「……」

上条「……」

禁書「……」

部屋には重い雰囲気が漂っていた。
上条とインデックスは、悲しそうな顔で垣根を見ていた。
一方通行は何かを思い出しているようで、少し俯いてる。

ちなみに“そんなくだらないことでいちいち暗部組織動かすな”という突っ込みは入らない。
なぜならこの部屋には、似た者同士しか居ないからである。

垣根「それに、愛生ちゃんの声に似てるクソ花に気を取られて計画は破綻した。頭悪すぎて死ねって感じだろ?」

一方「……本当に、アホ野郎だな」

垣根「心配するな。自覚はある」

一方「なンで、早く言わねェンだよ」

垣根「は?」

一方「俺もだ。……俺も、テメェと似たようなことがあった」

垣根「え」

震えた声で一方通行は話し始める。
かつて、自分がアイマスライブのチケットに申し込み、チケットが当たったこと。
そして、垣根と同じ理由で、ライブには行けなかったこと。


一方「俺はテメェと違って、この街を変えることなンか思い付かなかった」

垣根「……」

一方「俺は化け物だ。そんなヤツが他のプロデューサーと肩を並べて
    サイリウムを振って良い訳がねェと思ってあっさり諦めたンだよ」

垣根「……」

重い雰囲気の中、上条とインデックスが口を開く。
二人は好きな声優のライブに行っているし、コミックマーケットにだって行っている。
好きな人を応援し声援を送る、それが普通だと思っていた。
しかしレベル5というだけでそれをできない現実。

上条「……そんなこと、知らなかったな」

禁書「私もだよ……」

垣根「つーかなんで上条はライブに行けてるんだよ?テメェだってレベル高いんじゃねぇの?」

上条「俺はレベル0だけど?」

垣根「あんだと?」

一方「こいつはズルいよなァ……。けっこうな力を持ってるくせに、気軽に外出してンだぜェ……」

垣根「……羨ましいな」

垣根はため息をついた。
羨ましいけれど、妬んだって仕方ない。

不意に隣に居るインデックスに手を取られた。
何か用か?と視線を送る。
インデックスはまっすぐ垣根を見ながら、力強く言った。

禁書「私も協力する!!」

垣根「は?」

禁書「好きな声優さんに会いに行けないなんて、酷過ぎるんだよ」

上条「俺もだ!何か出来ることがあったら言ってくれ!」

垣根「……お前ら」


一方「……なァ」

垣根「ん?」

一方「テメェの言う直接交渉権とやらには、俺が一番近い場所に居るんだろォ?」

垣根「そうだ」

一方「なら、俺がアレイスターと交渉してくればいいンじゃねェの?」

垣根「……マジで?」

一方「知り合いに空間移動能力持ってるヤツ居るし、どうにかなンだろ」

垣根「……」

一方「でもよォ、理由には死ぬほど同意できるが、あのガキを狙おうと思ったのは理解できねェ」

垣根「……」

一方「手段を選んでる暇が無かったンだろうが、それだけはやっちゃいけねェよ」

垣根「……そう、だよな」

一方「もしかしたら、俺とお前はこうやって喋ることなく殺し合ってたかもなァ……」

垣根「……まぁ、最初はテメェを殺すつもりだったし」

一方「……俺だけが思ってるかもしれねェけど、」

垣根「?」

一方「そうならなくて、良かった」

垣根「……一方通行」

一方「だからと言って、ガキを狙ったことを許した訳じゃねェ」

垣根「……」

一方「でも、オマエと、友達になれたことは、嫌じゃねェ」

垣根「お前……」


垣根は目頭が熱くなった。
一方通行の大切な存在に危害を加えようとした自分を、友人だと認めくれるなんて。
それに誰もこんな話を理解してくれるとは思っていなかった。
自分の考えに賛同し、協力してくれる人が居るとは考えもしなかった。

垣根(不思議だな。一方通行とこんなにも近い距離に居るなんて……)

本来ならば彼と自分は殺し合いをする運命だった。
それが何故狂ったのかは分からないけれど、そんなクソッタレな運命が変わったのは喜ばしいことだと思える。
手段を選ばず行動していた自分が恥ずかしい。

一方「何ボーっとしてンだ?」

垣根「……なんでもねぇよ」

そゥかよ、と薄く笑う一方通行はどこか恥ずかしそうだった。
そんな一方通行の顔を見て垣根も何故だか恥ずかしなる。
ともだち。
その言葉を胸の中で呟いてみると、暖かい気持ちになれた。

一方「うし、明日にでも行くか」

垣根「え?」

一方「早いほうがいいだろォ?」

垣根「そうだけど……」

一方「まァ、俺に任せとけェ。その間テメェは美希をプロデュースしておくンだな」

垣根「……でも、テメェはあくまで直接交渉権に近いだけで、アレイスターと対等な訳じゃねぇぞ?」

一方「そンなモンどうにでもなンだろ」

垣根「適当だなオイ」

上条「俺も行く!」

禁書「私も!」

一方「……オマエらが居てもなァ」


二人の申し出は嬉しかったけれど彼らは無関係だ。
直接アレイスターの所へ出向くなど何があるか分からない。
危険な目に合うかもしれないと思うと連れて行くことは出来なかった。

しかし、腫れた顔の上条は必死に懇願する。

上条「じっとしてられないんだよ!頼む!お前に降り掛る幻想は俺が全部ぶち殺す!だから、お願いだ!」

禁書「私もなんだよ!絶対に足手まといにはならないから、お願い」

一方「……なら、いいけどォ」

垣根「なら俺も行く。皆で行った方がいいだろ。仲間外れとか嫌だし」

一方「やれやれ、結局全員かよ」

禁書「ライブに行けるようになったら、ゆかりんのライブに行こうね?」

垣根「さり気に布教するな」

一方「あ……でも、空間能力の知り合いってオタク嫌いなンだよなァ…」

上条「じゃあ無理かもな……」

一方「頼ンではみるけど、駄目だったらごめンな?」

垣根「別にお前が謝ることじゃないだろ」

一方「ソイツが説得出来なきゃ、あのビルには
    入れないからなァ……。もしかしたら明日に行くのは無理かもしれねェ」

垣根「まぁ、どうにかなんだろ」

話が一段落つくと、インデックスの提案で“なのは”観賞会が始まった。
垣根は正直興味が無かったのだけれど、皆で見ると面白く感じられた。
本当に、一方通行と戦わなくて良かった。
彼と戦っていたら上条やインデックスと知り合えなかったかもしれない。
こんなひと時を過ごすことも無かっただろうし、自分がプロデューサーになることもなかっただろう。

垣根帝督と一方通行の運命を変えたのは、誰だかは分からない。
けれど垣根はその知らない誰かに、そっと感謝した。

ここまでです。
読んでくれてありがとうございます。

乙です。このスレのアホ(褒め言葉)なキャラのおかげでテスト勉強の疲れが吹っ飛んだ。明日のテスト頑張るぜ!

乙です
いやー、おもしろいなww

アレイ☆に合うのか…

うん、嫌な予感しか無いなwwww

なのはの声なら北都さんも好きだな

文体はものすごく真面目なのに内容がバカバカしいってどういうことなの……。

おつんつん

上条さんは座標移動できないな

イイハナシダナー

乙!

ここまでくると中の人まであんな感じなのか?
だとしたらやばいな

魔術サイドはオタクになりそうなやつ多いから出てくると大変そうだ

ってことはバーコードは…
そしてヘタ錬は…

アレイ☆なら学園都市にいつつ、握手会に参加とか余裕だろうなwww

このスレの上インは、ある意味究極の完成型だな。

レスありがとうございます
恋愛要素ないと言ったのに、あります。すいません。

投下します


翌日、4人は再び集まった。
一方通行の知り合いである空間移動能力者を説得する為だ。
数分待つと一人の女性が現れた。
彼女の名前は結標淡希。

軽く挨拶を済ませると一方通行が結標に事情を説明する。
結標は、話を真剣に聞いていたのだが……

結標「いやよ」

一方「なンでだよォォォォ!?」

話が終わった後の第一声は、拒否だった。
それもそうだろう。
たかが声優のイベントの為だけにアレイスターに会いに行くなど、頭が悪すぎる。
そんなことに自分の能力を使うなんてバカバカしくて出来る訳がない。

それに、一方通行が他の女性に会い行くのを手伝うなんてしたくなかった。
これは本人に言えないけれど。

結標「そんなくだらないことに、何で私が協力しなくちゃいけないの?」

垣根「くだらなくねぇよ!!!ぶっ殺すぞクソ女」

結標「あらヤダ。声オタって本当にキチガイね。自分の思い通りに
ならなかったら相手に危害を加えるの?最低ね。キモい、気持ち悪すぎるわ」

垣根「……う」

一方「テメェに全面協力してやるよ」

結標「は?」

一方「テメェにも大切な仲間とやらが居ンだろォ?ソイツらを助ける時には、オマエと一緒に命をかけてやる」

垣根「事情は知らないけど、俺も協力する。だからお願いします」

結標「……別にいらないわよ」

一方「お願いだ!この通りィ!」

垣根「本当にお願いします!!」


二人は同時に土下座をした。
第1位と第2位のこんな姿は滅多に拝めないだろう。
一方通行のつむじが見えて結標は胸キュンする。
触りたいな、と思っていると残りの二人も土下座を始めた。

上条「俺からもお願いします!」

禁書「私からもなんだよ!」

結標「ちょっと……私を囲んで土下座しないでくれる?何の宗教よ」

人通りの多い街中で四人から土下座されているのは異様な光景だろう。
通行人の視線がこの上なく痛い。

結標「はぁ……分かったわよ。顔上げなさい」

一方「連れて行ってくれンのか!?」

結標「いいけど、私はこの件には無関係よ?キモオタに巻き込まれた被害者ってだけだから」

一方「分かってるゥ!ありがとう!すっげェありがとう!!」

結標「ひゃっ!?」

一方通行は感謝のあまり結標に抱きついた。
とくに仲が良い訳ではない。一緒の組織に属しているだけの関係。
それに一方通行は前に彼女を殴り飛ばしている。
加えて結標はオタクに嫌悪感を持っている女の子だ。
それなのに、結標は協力してくれると言うのだ。


一方「オタク嫌いなのにわりィな」

結標「別に嫌いな訳じゃないわよ……」

一方「え?」

一方通行は首をかしげた。
隠れ家でアイマスをしていると邪魔してくるし、ゲームなんかしてないで彼女作りなさいよ、とか余計なことを言ってくる。
本当はオタクが嫌いでやっている行為ではない。
しかし彼女の心を全く知らない一方通行は結標がオタク嫌いだと勘違いしているのだ。

結標「…………離してよ」

一方「あ、わりィ」

一方通行は結標を離した。
少しだけ残念だけれど、これ以上彼に抱擁されていたら、嬉しさで頭がおかしくなってしまう。

一方「本当にありがとなァ!オマエはいい子だと思ってたよォ!!」

結標(私の協力で、こんなに喜ぶなんて……。手伝ってあげるって言って良かった……)キュン

一方「何か礼してやる。俺に出来る範囲でだけどな」

結標「じゃ、じゃあ一日だけ買い物に付き合いなさいっ!」

一方「あン?カード貸してやるから、一人で行ったほうがいいンじゃねェの?」

結標「馬鹿!アンタなんて荷物持ちよ!荷物持ち!」

一方「なるほどォ」

結標「べ、別にアンタと一緒に居たいとか、デートしたいだなんて思ってないから!勘違いしないでよねっ!」

一方「分かってるっつーの。冗談抜きでマジで感謝しンぞ」


垣根「……」

上条「……」

禁書「……ここまで典型的なツンデレ台詞が聞けるなんて思ってなかったんだよ」

一方「あ?」

垣根は呆れた目で一方通行を見た。
雪歩一筋とか言ってたくせに、3次元でフラグ立ててんじゃねぇよ。
しかし、これでアレイスターと会うことができるのだ。
もうすぐ願いが叶うと思うと、口元が緩んでしまう。

一方「笑うのはまだだ。これからが本番だからなァ?」

垣根「分かってるよ。頼りにしてるぜ一方通行」

こうして4人は窓の無いビルに行くことになった。
話し合いで事が済めば良いのだけれど、どうなるかは分からない。
一方通行と垣根は気を張り詰めた。
上手く行けば、輝かしい未来が待っている。

―――――――――――――――――――――――

結標「無理ね」

上条「……そうですか」

一方「やっぱりか……」

窓のないビルに行く前に、一方通行が気になることがあると言いだした。
それは上条当麻を座標移動することができるかどうかだ。
結果としては無理だった。
結標が完璧な演算をしても上条の体が動くことは無い。

上条「これっばかりは……諦めるしかないか……」

一方「右手置いて行けばァ?」

上条「できるか!!!!!」

上条はその場でうな垂れる。
二人の手助けをしたかったというのに、それすらも叶わない。
ヒロインでもあるまいし、外で皆の無事を祈っているだけなんて嫌だった。

インデックスの暖かい手が上条の右手を包んだ。
まるで“貴方の右手は何も悪くないよ”と言っているみたいに。
そして彼を慰めるように、シスターは笑う。

禁書「大丈夫だよとうま。私が当麻の分まで頑張るから」

上条「……インデックス、無理するなよ?」

垣根「インデックスちゃんは俺達に任せとけ。傷なんてつけさせないから」

一方「三下は待ってるしかねェな。すぐ戻ってくるからそンな泣きそうな顔すンな。きもい」

結標「決まったわね?行くのは、第2位と一方通行とそこの女の子でいいわね?」

一方「おう。頼む」

上条「…………頑張れよ」

上条に見送られ、垣根達は窓の無いビルへと向かった。

垣根は緊張と高揚と不安で鼓動が早くなっていた。
何が待ち受けているか分からない。

垣根「……」

隣に居る一方通行を見た。
目が合うと彼は力強く微笑んだ。

禁書「平気だよ。ていとく。きっと神様は私達に味方してくれるんだよ」

不意にインデックスが言う。
そちらを見ると彼女も力強く微笑んでいる。

この二人が居れば、どうにかなる気がしてきた。
緊張を解すため、息を吐く。
そして愛する彼女のこと想った。

愛生ちゃん、待っていてくれ。この街から出て必ず君に会いに行く。

――――――――――――――――――――――――――――――

ラジオ『うわぁぁぁああああぁぁぁ!!!』

ラジオ『井口裕香のむ~~~~~~ん⊂( ^ω^)⊃!!!』

ラジオ『こんばんはー。井口裕香でーす』

ラジオ『ちょっとー作家さん?冒頭から叫ぶの止めてもらいます?』

ラジオ『えぇ!?俺?』

アレ「素晴らしくうざ可愛いな。それにこの出落ちがたまらない。さすがゆかちだ」

垣根「……」

一方「……」

禁書「……」

結標「……」

アレ「ん?」

アレ「…………え?」


――――――――――――――――

―――――――――――

―――――

――

――――――――――――――――

―――――――――――

―――――

――

四人は窓のないビルに潜入した。
ここには、この街の最大権力者、学園都市総括理事長の“アレイスター・クロウリー”が居る。
四人に緊張が走る。
薄暗い雰囲気に圧倒され、頬に汗が伝う。

震えた足で進むと、彼は居た。
男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える『人間』。
緑の手術着を着た彼は生命維維持槽のビーカーの中で逆さまに浮かんでいる。
顔には薄い笑みが貼り付けられていて、まるで4人がここに来ることを知っていたみたいだった。

 「何か用かな?」

ゆったりと口調で問う。
睨みつけてくるわけでもないのに、何故か威圧感がある。





一方「いや、さっきのことを無かったことにしてシリアスに話を進めようとすンな」

アレ「……」

垣根「ラジオの録音聞くとか……お前、声オタかよ……」

一方「オマエが言うな」

アレ「……」

結標「うわぁ……こんな薄暗い部屋で声優のラジオ聴くなんて本格的にキモオタね」

アレ「……」

一方「なンだよォ……色々心配してたのに。テメェも同類か」

アレ「……」

結標「もうやだこのまち」

アレ「……」


今のアレイスターに威厳など微塵も無かった。
隠していた趣味が一気にバレてしまったのだ。しかも4人に。
誰も来ないと思っていたらこの有様だ。
穴があったら入りたかった。
顔が熱くて沸騰しそうだ。ついでにビーカーの水も沸騰しそうだった。
良い年して声優に夢中など、誰にもバレたくなかったのに……。

アレイスターが羞恥心に襲われいると、修道服を纏った少女がペタリとビーカーに手を付いた。

禁書「何でそんなに恥ずかしいのかな?」

優しい声で、優しい顔で聞いてくる。
微笑みは聖女そのものだ。

禁書「自分の趣味を恥じるなんて、悲しいんだよ」

アレ「……」

禁書「私は今の人を誰かは知らないけど、あなたは好きなんでしょう?」

アレ「……」

禁書「誰かを好きになるのは全然恥ずかしいことじゃない。むしろ良いことなんだよ?」

インデックスは彼を宥めるように話す。
その声にアレイスターの羞恥心は薄れていったが、すぐに別の感情がわき上がってくる。

アレ(この、可愛らしいロリボイス。どことなくウザい感じ……)

インデックスの声はアレイスターが夢中になっている井口裕香にそっくりだったのだ。
もしインデックスがアニメのキャラクターなら、声をあてるのはゆかちに違いない。

垣根「おいアレイスター」

アレ「何だ」


アレイスターがゆかちそっくりな声に耳を傾けていると、それを遮るように低音が響いた。
今はゆかちに似た声を堪能しているというのに、なんだこの空気を読めない男は。
そんなアレイスターを無視するように垣根は続ける。
本当に空気読めないなお前は。
だからスペアなんだよ万年2位野郎め。

垣根「俺達がここに来た理由、テメェなら知ってんじゃねぇのか?」

アレ「……知っているが、本当に来るとはな」

垣根「早く外出許可出せコラ」

アレ「まさか案内人がこんな理由で動くとは思わなかったからな。完全に油断していたよ」

結標「……」

アレ「そういえば、一方通行のことを……」

結標「あー!!!!わー!!!駄目よ!言わないで!お願い!!!」

アレ「仕方ないな。黙っていよう」

一方「おい、なンで俺や垣根をこの街から出さない?」

アレ「決まっているだろう。君達だからさ」

一方「訳分からないこと言ってンじゃねェよ」

垣根「俺達と同類なら気持ちが分かるだろ?」

アレ「君たちの気持ちなど関係ないさ。それに同類と言われたくないな」

垣根「なんだと?」


アレ「私が興味あるのは、ゆかちの演技と声とトークだけだ。本人に直接会いたいとは思わないのでね」

一方「……」

アレ「ファンサービスなどラジオだけで十分だ。それ以上はやりすぎだし、無駄だな」

垣根「……」

アレ「握手会やコンサートをやる暇があるのなら、少しでも台本を読み込んで良い演技をして貰いたいだろう?」

垣根「……」

禁書「意味分かんないんだよ」

アレ「なに?」

禁書「握手会だってコンサートだって大事なお仕事なんだよ。それを無駄とか言うのは許せないんだよ」

アレ「……ふむ」

禁書「それにコンサートって凄い楽しいんだよ。行ったことないから分からないだけだよ」

アレ「人の多い所は苦手でね」

禁書「分かった。なら、コンサートの楽しみを分かってもらうしかないんだよ」

一方「あ?」

禁書「口で言っても分からないから、体に分からせるんだよ」

アレ「ふむ。どうやってだゆかち?」

垣根「いや、ゆかちじゃねぇからインデックスちゃんだから」

禁書「こうやってだよ!」


そう言うと、インデックスはDVDデッキを勝手に操作し始めた。
大きな画面にDVDの映像が映し出される。
そして手際良くピンク色のサイリウムとコール表を全員に配る。
アレイスターにはビーカーの上から落として渡した。


TV<Chuppy Chuppy スpi にゃん スpi にゃん Chuppy Chuppy ぴょんぴょん chu/(*^ ^) \


垣根「」

アレ「」

一方「」

結標「え?何これ?」

禁書「何ボーっとしてるんだよ!?ゆかり王国の国家なんだよ!さっさとサイリウム振るんだよ!!!!」

インデックスに凄まれ、四人は渋々サイリウムを振り始めた。
画面の中の王国民達はズレることなくサイリウムを振っているが、四人はバラバラだ。
インデクッス一人だけリズミカルかつ正確に振っていた。

禁書「ゆーかりはい!ゆーかりはい!ゆーかりはい!ゆーかりはい!はい!はい!はい!はい!」

インデックスのノリノリコールが部屋に響く。
その声からは王国民であることを誇りに思っていることが伝わってくる。
楽しそうなインデックスにつられて、四人のサイリウムは少しずつ合わさっていった。

垣根(いや……なんでこんなことに……)

一方(DVDとかサイリウムとか、どこに持ってたンだよォ……)

アレ(ふむ。ゆかちのあらぶる声も良いものだな)

結標(なにこれ……なにこれ……)


禁書「ふふふふふっ・ふー!」

TV<願いごとを 乗せて廻る 今日も 明日も これからも ずっと側にいてね

垣根(インデクッスちゃんマジで楽しそうだな……)

一方(アイマスライブもこンな感じなのかァ?)

アレ(ゆかちの楽しそうな声……思わずつられてしましそうだ……)

TV<このままどこまでも 二人 描く未来探しにゆこう~♪

禁書「ゆーかーり ゆかり!」

アレ(もう駄目だ!我慢できん!)

アレ「ゆーかーり ゆかり!」バシャバシャ

垣根「!?」

一方「!?」

禁書アレ「「はい!はい!はい!はい!」」

垣根(ば、ばかな……!アレイスターがコールだと……!?)

一方(すっげェノリノリじゃねェかァ……)


TV<ちょっとずつねー♪

禁アレ「「ちょっとずつねー!!!」」

垣根(……そもそも俺達がアレイスターを説得しなきゃいけないのに、)

一方(こいつばっかりにやらせてちゃ、駄目なンじゃねェの?)

垣根(インデックスちゃんは頑張ってるんだ…)

一方(俺達が頑張らなくてどうすンだ!!!!)

TV<ちょっとずつよ~♪

禁アレ垣一「「「「ちょっとずつよー!!!!」」」」

結標「Oh...」


~数分後~

TV<いつかこの恋が叶うなら 私、なんにも いらないかもしれない~♪

禁アレ垣一「「「「へい!へい!へい!へい!へい!へい!へい!へい!」」」」

結標(なんなの…?なにこれ?……でも、一方通行が楽しそうだからいいか……)

禁アレ垣一「「「「誰にも負けないこのキモチ!」」」」

禁アレ垣一「「「「ゆかりに向かって咲いている!」」」」

禁アレ垣一「「「「世界で一番大好きな!!!」」」」

禁アレ垣一「「「「ゆかりにもっと恋したいー!」」」」

TV<ひまわりみたいに きらきら揺れてる この想い~♪


~さらに数分後~

TV<Happy fancy baby doll  Love me fancy baby doll♪

禁アレ垣一「「「「世界一 かわいいよっ!! 」」」」

TV<ドウモアリガトッ

禁アレ垣一「「「「 うぉおおおおおおおおお!!」」」」

結標(休まず腕振ったりしてるけど疲れないのかしら……?)


―――――――――――――――――――――
熱い掛け声。振り上げる腕。飛び散る汗。乱れることのないコール。
なんとも言えない一体感に垣根達は満足していた。
汗が頬を伝ってくるが、全く不快ではない。

アレ「はぁはぁ……これがライブ、けっこう楽しいものだな。興味深い」

禁書「そうでしょ!?」

垣根「つーかアレイスターの水でビショビショなんだけど」ビッショリ

一方「ビーカーの中ではしゃぐなよォ…」ビッショリ

DVD鑑賞が終わった四人は向かい合う。
アレイスターは顎に指を置いて、何やら考えている。

禁書「あのね、この二人もコンサートに行きたがってるんだよ!」

アレ「……」

禁書「好きな人を生で見れるって凄いことなんだよ!だからお願い!」

アレ「考えを改めよう。素晴らしいものだな。それに楽しかった」

禁書「なら!」

アレ「でも、この二人を学園都市から出すことはできない」

アレイスターの声は冷たかった。
さっきまで熱いコールをしていた男と同一人物だとは思えない。
垣根と一方通行は苛立ちを覚えた。
そこまでして、自分達を学園都市に閉じ込めておきたいとは。

禁書「……何で駄目なの?ていとくもあくせられーたも可哀想なんだよ」

アレ「それには仕方のない理由があるからさ」

垣根「ふざけんなよ…!何が理由だ!!!!!!」

一方「答えによってはビーカーと一緒にスクラップにしてやるよォ……!」

垣根は力一杯ビーカーを叩く。
ヒビが入ることは無かったけれど中の水が大きく揺れた。
一方通行は電極にスイッチを入れてアレイスターを睨みつけている。
そんな二人をアレイスターは冷静に見つめていた。


禁書「理由ってなに?」

アレ「理由は今、二人がしたことだ」

垣根「あ?」

一方「は?」

アレ「君たちは、ありえないくらいに怒りやすい。そんな奴らを外に出せる訳ないだろう?」

結標「確かに……」

垣根「……そんなことねぇよな?」

一方「……そンなことねェな」

アレ「自覚なしか……。短気なうえに強大な力を持つ化け物を普通の人間と一緒にできるわけがない」

垣根「外に行ったら能力なんて使わねぇよ」

アレ「本当か?」

垣根「本当だ」

アレ「信用できんな。今だって怒りに任せて行動したではないか」

一方「……」

垣根「……」

アレ「学園都市の中で何が起こっても隠蔽できる。しかし外で問題を起してみろ。大騒ぎになって収拾がつかなくなるぞ?」

垣根「でも、俺は」

アレ「“トド崎マジ巨人。つーかキャラ作りすぎだよねぇ”と言われたら、君は我慢していられるか?」

垣根「!!!!」

アレ「反射的に翼を出してしまうようでは、外出を認めることなどできないな」

垣根「クソが……!」


アレ「レベル5であっても人並みに温厚であれば外出くらい許可はするぞ?」

垣根「なんだって?」

禁書「怒らなければいいんだね?」

アレ「ん?どうしたゆかち?」

禁書「これから一週間、二人が一度も怒らなければ、外出を認めて欲しいんだよ」

アレ「それは無理だ。この二人にそんなことが出来る訳がない」

垣根「やる!」

一方「できますゥ!」

アレ「なんだと?」

垣根「絶対、一週間怒らずに過ごしてみせる!我慢できるってこと分からせてやるよ!」

一方「俺もだ!そンくらい楽勝なンだよォォォォ!!!」

アレ「雪歩って喋ってる声と唄声が全然違うな?他のメンバーに比べて浮きすぎだろう」

一方「……」プルプル

アレ「あいなまさんって顔だけで演技はそこまで上手くないな」

垣根「……」ギリギリ

アレ「…………ふむ。本気のようだな。ならば明日から一週間、本当に我慢できたのならば外出を考えてやってもいい」

一方「本当かァ!?」

垣根「やった!」

アレ「しかしどんな理由であれ怒ったらその場でアウトだ。チャンスは一度だけだぞ?」

垣根「ハッ。楽勝なんだよ」

一方「楽勝すぎて欠伸が出ちまうなァ……」

結標(え……本気で言ってるの?)

アレ「そうか。せいぜい頑張れ」

こうして四人は窓のないビルを後にした。
交渉が成功したか失敗したかは分からないけれど、外出への第一歩を踏み出すことができたのだ。

>>173
貴方は予言者でしたね

ここまでです。
読んでくれて本当にありがとうございました。

乙。
アレイスタン自重汁wwwwww
あわきんの恋愛よりアレイ☆の残念っぷりのほうが目立ってるってどういう事なの……。

さて、ていとくんが初春ちゃんと遭遇したらどうなるんだろうね!

毎度毎度楽しく読ませてもらってますぞ。



アレイスターもかよwwwwwwww



☆もお仲間だったのかよW
外出許可できない理由が普通にまともだったのには驚いた

☆……なんだ同志じゃねえか……

まさか冗談で書いた>>173が現実となるとはw

はじめは☆の趣味バラすぞって脅せば楽勝じゃね?って思ってたけど
許可しない理由がまっとう過ぎてなんも言えねえw

☆がゆかちファン、風斬の声がアスミスもといもこタンなのももしかして☆が関係してるのか……

もうやだこの都市w

怒ってはいけない学園都市

初春さん出番です!

なんだこれ…外に出られない理由がここまで正論だったこと見たことねえ

やだ…なにこれ…面白すぎる…

奈々様ファンはいないの?

ゆかりんって、斜めからの写真ばっかりだよね。
たまには正面からの天使スマイル()見てみたいな^^

 /i               iヽ
 ! !、      ___        / ノ
 ヽ ヽ、 ,彡フ ̄  ̄ヽミミ、/ /

  ヽ フ''         く /
   _ 〉'           ヽ/,_
  (ヽi,      /;ヽ       i/ )
   i ! ,,_____ノ、i;;iヽ、_____、 i i
    ! 'ヽ__●ノ' 'ヽ_●,ノ ,ノ i
   !、jヽ、 ,-   ;; -、 / _ノ
    〉 /,、''`ヽ__/` ' ,、'  )
    '!, ヽ`t-,、__, -'イ/  /
    ヽ ヽt,=,='='=イi  /
     \ `'"~⌒~"' ノ

       `-- ^-- '

 /i               iヽ
 ! !、      ___        / ノ
 ヽ ヽ、 ,彡フ ̄  ̄ヽミミ、/ /

  ヽ フ''         く /
   _ 〉'           ヽ/,_
  (ヽi,      /;ヽ       i/ )
   i ! ,,_____ノ、i;;iヽ、_____、 i i
    ! 'ヽ__●ノ' 'ヽ_●,ノ ,ノ i
   !、jヽ、 ,-   ;; -、 / _ノ
    〉 /,、''`ヽ__/` ' ,、'  )
    '!, ヽ`t-,、__, -'イ/  /      ドウモアリガト///
    ヽ ヽt,=,='='=イi  /
     \ `'"~⌒~"' ノ

       `-- ^-- '


……たのしいか?

まだかな……

そろそろ落とすか

はァ?

 /i               iヽ
 ! !、      ___        / ノ
 ヽ ヽ、 ,彡フ ̄  ̄ヽミミ、/ /

  ヽ フ''         く /
   _ 〉'           ヽ/,_
  (ヽi,      /;ヽ       i/ )
   i ! ,,_____ノ、i;;iヽ、_____、 i i
    ! 'ヽ__●ノ' 'ヽ_●,ノ ,ノ i
   !、jヽ、 ,-   ;; -、 / _ノ
    〉 /,、''`ヽ__/` ' ,、'  )
    '!, ヽ`t-,、__, -'イ/  /
    ヽ ヽt,=,='='=イi  / >>1マダァー??
     \ `'"~⌒~"' ノ

       `-- ^-- '

>>1まだか……

生存報告ぐらいはしてほしい

あ、愛生に彼氏がいたことが発覚したらしいね
どうでもいいけど

逆に付き合う程度の人生経験もない演技なんて・・・

あいなま信者怖いよ……。

ていとくんなら学園都市を破壊するレベルの発狂ぶり。

作者逃げたっぽいね

なんか最近いろんなところで作者消えるんだけど

大丈夫だ…!

まだ1ヶ月も経ってないんだから……!

どれだけ時間が経とうと、俺は待ってるぜ…

その間、オタ業界は着々とカオスな状況へ

・豊崎彼氏疑惑
・アイマスPS3で発売
・平野アレな写真流出 new!

>>331
なんでニコ厨ってすぐにカオスって使ってどうでもいい情報言いたがるん?

などと意味不明な供述を繰り返しており…

で、このまま終わりなの?

つーか、これからっしょ

間をあけてしまって本当にすいませんでした。
レスありがとうございます。
少しですが投下します。


佐天「それは初春が悪い」

白井「わたくしもそう思いますの」

御坂「んー……私もそう思うかな……」

垣根が窓のないビルで命がけ(?)の交渉をしている時、
とあるフェミレスでは四人の少女が集まっていた。
流行っている曲や服、新しく見つけた都市伝説、風紀委員の仕事、
最近あったことなどをケーキやパフェを食べつつ仲良くお喋りしていた。

他愛のない話が一段落すると、久しぶり集まったということで、一人ずつ近状報告をすることになった。
先ほどの言葉は初春の話を聞き終えた三人の感想である。
ちなみに初春がした話は垣根のことだ。

初春「……やっぱりそうですよね」

白井「大体、過去に色々あったからと言ってオタクという人種を差別しすぎじゃありませんの?」

初春「でも、実際キモいですし」

白井「平気ですの。真性オタクは3次元の女になんか興味ないですから。
   初春に性的興奮を覚えるのはオタクではなくロリコンですの」

初春「ロリコンですか……」

御坂「そもそもオタクって言っても色んな人居るでしょ?
   き、きっと良い人だって居るわよ!ひ、人の為に頑張っちゃうヤツとか!」

白井「……お姉様、それって」

御坂「へ!?アイツとは関係ないわよ!」

佐天「あ!例の殿方ですね!」


初春「え、御坂さんの好きな人ってオタクなんですか?」

御坂「え!?べ、べべべべ別に好きとかじゃなくて、でも、いや、その!!」

佐天「へー。オタクの彼氏かぁ……。御坂さん漫画好きだし、お似合いなんじゃないですか?」

御坂白井「「お似合い!!!?」」

御坂「そんな、そそそそそそんなことあるわけ…………!」

白井「そんなことわたくしは認めませんわよ!!!あんな類人猿!絶対に!ぜーーーーったいに認めませんの!!!!!!」

初春「二人とも落ち着いて下さい」

白井「お姉様は類人猿のゴミみたいな部屋を見てもまだ目が覚めませんの?」

御坂「だって趣味なんて人それぞれじゃない」

白井「だからってあんな男と付き合ったりなんかしたらお姉様が腐ってしまいますの!」

御坂「でもアイツは良いヤツだし!そ、それに優しいし、ちょっとお人よしの所があるけど、でも…」

白井「キッー!!!あの類人猿キモオタのクセにお姉様をたぶらかして!!!」

初春「はぁ……でも、恋愛してるって良いですよね……私なんか何も無いですよ」

白井「あら、初春が発情期ですの」

初春「違いますよ!」

佐天「初春にはまだ早いんじゃない?」

初春「そんなことないですよ!」

佐天「好き嫌いが多いお子様は恋愛なんてまだまだ先だと思うわ」

白井「ですの!ですの!」


佐天「それにさ、顔が良いなら性格くらいどうでもいいんじゃない?」

初春「でも、その“うんたん”とか意味分からないこと言われましたし……」

御坂「うんたん?」

初春「そう言ってくれって言われたんですよ。言ったらテンション高くなってキモかったです」

御坂「……それは気持ち悪いかも」

白井「気持ち悪いというか……やっぱり気持ち悪いですの」

佐天「でもすっごく理想の顔に近かったんでしょ?その垣根さんって人」

初春「はい」

佐天「初春が変なこと言わなきゃLOVEが始まったかもしれないのに」

初春「……」

佐天「自分で出会いを潰しちゃうなんて、アホだよねぇ」

白井「ですの。欠点の一つや二つ、目を瞑れないようでは恋愛なんて出来ませんの」

初春「そんなことないですよ……」

白井「実際、わたくしはお姉様の欠点である子ども趣味や男の趣味の悪さなど目を瞑っていますの」

御坂「おい」

白井「まぁ好きになってしまえば、欠点さえも愛おしくなってしまうのですけれどね」

御坂「……それは、分かるわ」

白井「類人猿のことかーーーーッ!!!!」

初春「白井さん、叫ばないで下さい」

佐天「初春って乙女思考だから理想高そうだよね。その理想をクリアするなんて垣根って人は凄いなぁ」

初春「でも顔だけですし。それに、オタクとか抜きでも性格良く無さそうでした」

佐天「どういう所が?」


初春「病院まで付き添ったって話したじゃないですか?」

佐天「うん」

初春「寝てる時に色んな女の人の名前を呼んでたんですよ」

御坂「あら…それは……」

白井「イケメンな殿方でしたら彼女が数人居ておかしくないですの」

初春「そういうのって嫌じゃないですか?やっぱり一途な人が良いですよ」

御坂「それにはすっごく同意だわ!!!!!!」

白井「初春が変な男に引っかからなくて良かったですの」

佐天「つまんないなー……青春が始まったかと思ったのに」

白井「初春はわたくし達と談笑したり、風紀委員の仕事をしてるのがお似合いですの。男なんてまだまだ早すぎますの」

初春「なんですかそれ……」

佐天「とにかく、次にその垣根さんって人に会ったら先日はすいませんでしたくらいは言った方がいいんじゃない?」

初春「……そうですね」

御坂「それじゃそろそろ行く?もう夕方よ?」

白井「そうですわね」

話題が終わった所で四人はファミレスを後にした。
病院で垣根が口にした名前は全て2次元の住人なのだが、彼女達は知るよしもない。



友人達に“悪い”と言われ、初春は深く反省した。
確かに初対面であそこまで言ったのは失礼だ。
しかし、ほっこり(?)ボイスを大切にしろとか訳の分からないことを言ってくるあの男は、やっぱり嫌だ。
良い顔だと思ったら、相当な女たらしのくせにオタクだし、でもやっぱりあれは言い過ぎだと思うし…………。

とにかくあの男にもう一度会えたら謝罪をしようと思う。
会えたら、だけれど。

ここまでです。
間をあけてしまって本当にすいません。
次はいつ投下するか分からないですが、ここまで間をあけることはないと思います。

読んでくれてありがとうございました。

帰ってきたっ・・・富樫になったかと思ったが良かったよかった
期待してるぜ

              __  ―   二二ミ...、
               /三三)二(三三三)、\
            r{三三'/:::::::::::`ー― 'ヽ ){⌒)/7__
           し' ̄::::::::::::::::::::::::::::::::::::: i⌒о´ )/
             ′::::::::::::::|::::::::::ト、 ::::: |::::::゙ーr ,‐くミ
          |::::::: |r:=ミ:|i:::::::::|=:ミ:::|i:::: |:::∨廴oア

          |ハ:|:::L:;;;::」'ヾ:_::j _L::;ハ:;ノ::i::::::::Yヾ

              从::|灯尓   '~乍ぅ}ミ|::::::|:: |::::|
          厶:::ヾ弋iソ     弋)ノ '|::::::|:: トミ=-
_____,ィXヘ ハ:::} ''''' ′    '''''ノィ::ノッ从}
三三}三三i三|XX}  j八   r==‐、     ,小:::: |
¨777' ̄ ̄ ̄ヾXソ    ヽ  V´__ノ   イ:::i::|ヽ:| ということで、ギター弾いて歌ってみようかと
///                  _>--r< _|'7ス`  
//               }////_j /////,ー- 
/              ,,|/〉/{   {///// '    \
 _                /,'/人ハ r''/ハV │       \
′ \          {,'//  Vi}{/X/´   | ,, __    \
\  \         /// Y }ミ7//     ヽ   \      \
  ,>、,x、\     /// / 」ミ//       \_ノ \      \
 | r'゙/x  \  ///  { /ミ/'゙      ...::::::: |   \      ヽ
 | | { r'\   \'\/   Vミミ}o   、 ....:::::,::::: │   \     ,′
 \  ヽ ノ /,/\|   /ミミj    `¨¨¨´:::::::..│    /   /



乙!!帰還おめでとう、そしてありがとう!!!

>>343
とりあえずぴゅあぴゅあはーと頼む。

おかえり

初春がエレキ持って歌う姿……すまん、マンガにしか見えない

おー待ってたぜ!!
次も楽しみにしてる

おっ、やっと来たか。
ずっと待ってた。
それにずっと音信不通でかなり心配だったが……無事で何よりだ。

ともかく久々の乙。

レスありがとうございます。
待っていてくれてありがとうございます。
本当に嬉しいです。

今回は垣根と心理定規の過去をありえないくらい捏造しています。
そういうのが嫌いな人はすいません。

投下します。


垣根は気持ち良く朝を迎えた。
昨日はアレイスターとの交渉が上手く(?)いった。
その後は上条家にお邪魔してなのはA's観賞会をしながら一方通行と垣根のお金で寿司を注文し、盛大にお祝いした。

この街から出られないのは、レベル5だからという理由ではなかった。
自分の性格。短気なせい。
そんなものいくらでも変えられる。
彼女に会えるのなら罵倒されようがプライドをへし折られようが全て笑って許せる、と思う。

垣根(こんな清々しい気持ちは久しぶりだぜ……)

リモコンでデッキを操作し愛する彼女の曲を流す。
彼女の唄声は、垣根の心をほっこりとさせてくれる。

朝食のトースターとブラックコーヒーをテーブルに置き、イスに腰掛けた。
窓から差し込む朝日が、部屋を明るく照らす。
いつもの光景なのになんだか特別に感じた。

ゆっくりと、カップを手に取った瞬間、チャイムがけたたましく鳴りだした。
狂ったように響くチャイム音に良い気分は削がれていく。

良い気分でご飯を食べようと思っていたのに誰だ。
舌打ちしそうになったけれど、我慢した。

垣根(これくらいで怒ったら駄目だ、きっと急用なんだ、急用だったら
   メールか電話でいいだろクソボケ、いちいち家に来てんじゃねぇよ死ね)

イライラしてきたことに気付き、頭をふった。
駄目だ。
こんなことで腹を立てていたら外出許可が出なくなってしまう。
心を落ち着かせるために深呼吸をしてから、玄関に向かった。

――――――――――――――――――――――――――

心理「……」

垣根「は?」

扉を開けると見知った顔が居た。
同じ組織に属する少女。
普段着ている派手なドレスに比べると、いくらか落ち着いた服をまとっていた。
そういう格好してる方が年相応に見えて可愛い、とか言ってからかってやろうと思ったけれど、少女の目は鋭くつり上がっている。
そんなことをして良い空気ではないようだ。

心理「あなた、馬鹿なの?」

垣根「……意味分からないんだけど」

心理「自分の胸に聞いてみなさいよ」

心理定規は更に垣根を睨みつける。
視線だけで人を殺すことが出来そうだ。
心理定規は任務を遂行するときだってこんな顔を見せたことはない。
垣根は唾を飲んだ。蛇に睨まれたカエルは、きっとこんな気分なのだろう。

心理「…………」

垣根「…………」

垣根は自分より背もレベルも低い少女に圧倒されていた。
何やら、よろしくない雰囲気が漂っている。
今すぐ逃げ出したほうが良いと、脳が警報を鳴らす。

心理「あがっていいかしら?」

垣根「あ……は、はい」

シベリアの大地のような冷たい声で心理定規が言い放つ。
思考が氷ついた垣根はその声に従うしかなかった。

心理定規を玄関に招き入れて、扉をしめた。
しめた瞬間、頬に衝撃がはしり、視界がブレた。
数秒立つと頬がじんじんと熱を持ちだした。

垣根(は…?ビンタ……?)

状況を把握した瞬間、反対の頬にも彼女の怒りがぶつけられる。
バッチーン!と良い音がして、垣根の両頬には赤い手形がくっきりと浮かんだ。



垣根「……何するんだよ」

心理「……」

ビンタされた後に髪を引っ張られたり、鋭いネイルで首を引っかかれたり、ヒールで足を思い切り踏まれたり……
いきなり暴れ出す彼女をなんとか宥めて、リビングまで引っ張ってソファに座らせた。
コーヒーを二つ用意してから、垣根は向かいに座って心理定規の様子を観察する。
普段は冷静な彼女が、ここまで感情をぶつけてくるのは珍しい。

垣根「おい、何か用があるんじゃねぇのかよ?」

理不尽な暴力でキレそうになったが、どんな理由であれ怒ってしまったらアウトなのだ。
何があっても耐えるしかない。
心理定規は垣根の問いを無視して不貞腐れた顔をしながらコーヒーに、ふぅ、ふぅ、と息を吹きかけていた。

垣根(そういやこいつ猫舌だったな。無視してんじゃねぇよ舌火傷しやがれ暴力ビッチ女)

口に出せない悪態を心の中でつく。
不意に心理定規が垣根を見つめてくる。
相変わらずその瞳には怒りが込められていた。

心理「ねぇ、お砂糖とミルクは?」

垣根「台所」

心理「そう」

それだけ言うとカップを持ってキッチンに向かった。
いつもは華麗に振る舞っている心理定規の足音は、ドシドシと大きくて彼女らしくなかった。
その足音からは心理定規の明確の怒りを感じた。
垣根は首をひねる。
彼女は、何に対してこんなに怒っているのだろうか。

ゴミ条だけは勘弁な


しばらくするとティースプーンでコーヒーを混ぜながら心理定規が戻って来た。
そのまま真っ直ぐ垣根の元に歩いて来てちょこん、と隣に座る。
隣に座った心理定規は、垣根をじっと見つめた。

心理「何で私がここに来たか、本当に分からないの?」

垣根「は?分かるわけ、」

言い終わる前に心理定規の手に持たれたカップが傾き、生暖かい液体が顔に勢いよくかかった。
ぽたぽたと、ミルクと砂糖がたっぷりのコーヒーが垣根の髪から滴る。
先ほどの引っかき傷にコーヒーがしみて顔を歪めた。

―――――もう、無理だ。

―――――なんでここまでされて我慢しなくちゃならねぇんだ。

―――――クソ女にされるがままだなんて意味がわからねぇ。

垣根は心理定規の胸ぐらを乱暴に掴む。
思い切りつかまれたせいか、心理定規の口からひゃっと声が漏れた。

しかし彼女は笑っている。
垣根の行動がおかしくてたまらない、という顔だ。

垣根「テメェ、」

心理「あなた、怒っちゃいけないんでしょ?」

垣根「…………あ?」

心理「これくらいで腹を立ててたら、外出なんて絶対にできないわよ」

垣根「…………何でお前がそれを知ってんだ」

電話が掛かって来たの、と心理定規は笑いながら言った。

――――――――――――――

昨夜。
垣根に何度も連絡をしても繋がらず、作戦は失敗したのだろうかと心理定規は肩を落とした。
それにしても一方通行との和解とはどういうことなのだろう。
もしかして、第1位と第2位が手を組んだのだろうか?
そうしたら作戦は失敗ではない?
そもそも垣根は無事なのだろうか?
スクールは学園都市の反乱分子の筈だ。
リーダーである彼が殺されてもおかしくない。

心理(……ばか。メールくらい返してくれてもいいじゃない)

彼女の手には携帯電話が握りしめられていた。
彼は心配する必要ないくらい強いけれど、今回は学園都市が相手なのだ。
五体満足のままである保証はない。

心理(もう一回、電話してみようかな)

携帯を開き垣根の番号を呼び出そうとした時に、着信で手の中の携帯が震えた。
心理定規は番号を確認もせずに通話ボタンを押す。

心理「もしもし?」

??『初めまして、になるな』

心理「…………誰よ」

心理定規は聞き慣れない声に眉を潜めた。
指示を出す男でも、下っ端でも、構成員でも、リーダーでもない。
その声は男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも聞こえる。

??『スクールの心理定規だろう?上司が駄目だと部下は大変だな』

心理「え?」

??『まだ分からないのか?ヒントをあげよう。私は園都市総括理事長という役職についている』

心理「アレイスター!?」

心理定規に緊張が走る。
まさか、あちらから接触があるだなんて予想していなかった。
そして彼女は思う。
垣根はもうこの世にいない。居たとしても、それは人の形をしていないだろう、と。


心理「な、なんで、あなたが……」

声が震える。泣いてはいないけれど、泣きたい。
きっと自分は処分される。されなかったとしても、死ぬ方がマシだと思うような人生が待っているに違いない。

いつもはピンチになるとレベル5のリーダーが敵を蹴散らしてくれた。
そして嫌味な笑顔で言うのだ。
戦闘に向いてないんだから無理してんじゃねぇよ、と。
彼の嫌いな所はたくさんあった。
でも、嫌いじゃない所もたくさんあった。

垣根が今どうなっているか、自分がこれからどうなるか、それを考えると、どうしようもない絶望に包まれた。
涙が頬に垂れた時に電話の向こう側から、くっくっと笑い声が聞こえた。

アレ『泣くとはwwwwwwそうかwwwぶふっwww何もww知らないからwwwかwwwwwふふふ』

心理定規はアレイスターが笑っている理由が全く分からい。
思考が停止した心理定規は黙って笑い声を聞くことしか出来なかった。
アレイスターの笑い声は数十分続いた。

アレ『ふぅ……笑いすぎた……』

心理「……」

アレ『垣根帝督は生きている。彼は私の所に来た』

心理「!?」

アレ『彼は君に何も言っていないみたいだな。真実を全て教えてやろう』

心理「……しんじつ?」

アレ『TVをつけたら垣根帝督の今日の行動を見れるようになっている。
   安心していい。要所はまとめてあるからそんなに長くはない』

心理定規はさらに混乱した。
いきなりアレイスターから電話が来たと思ったら、垣根が生きていると言われた。
そしてテレビをつけろと言われて……。
何がなんだか分からない。
そもそもスクールの隠れ家のテレビに干渉することができるのなら、スクールの企みだって知っていただろうに。
スクールの企みというか垣根の企みなのだけれど。

心理(そういえば、私はあの人が何をしたかったのか、何も知らないわね……)

テレビ画面にはベッドで熟睡している垣根が映っている。
枕元に置いてある携帯が鳴ると、ダルそうに適当な言葉で対応していた。

心理(これ、今朝の……私とのやりとりじゃない……)

本当に垣根の一日が映し出されているようだ。
心理定規がテレビ画面に釘付けになっていると、アレイスターは静かな声で告げた。

アレ『それを見終わった頃にまた連絡をいれる。垣根帝督の野望をきちんと知っておくのだな』

心理定規は携帯を畳み、テレビの前に正座した。
これは作られた映像ではない。一秒でも見逃さないようにしなければ。

そして心理定規は知ることになる。
自分が属している組織のリーダーは、私欲の為だけに大掛かりな計画を立てたことを。

―――――――――――――――――――――――
見終わった頃に、携帯が震えた。
心理定規は無表情で電話を取る。
悲しみや怒りが体中に渦巻いて感情の整理が上手く出来ない。
怒りに震えた手で携帯を持つと軋む音がしたが、そんなことはどうでも良かった。

アレ『言いたいことは分かる。落ち着いて欲しい』

心理「…………」

アレ『垣根帝督は私の所でゆかりんのライブDVD見てコールしてたのに、心配をしていたのが滑稽だな』

心理「…………」

アレ『ミシミシ聞こえる、もうちょっと携帯を労わってやれ』

心理「…………ばかじゃないの」

アレ『ん?』

心理「…………計画を立てるのに、私がどれだけ手伝ったと思うのよ?」

アレ『……』

心理「ピンセットがどこで保管されているか調べるのだってすっごい大変だったのよ!」

アレ『ほうほう』

心理「施設のデータが管理されてるバンクにアクセスしたら凄腕ハッカーにメタンコにされるし!」

アレ『ふむふむ』

心理「それに、狙撃手の補充だって私がやったのよ!!
   適当に選んどけ、とか言ってたくせにふざけんなって感じよ!!!!!!!」

アレ『お疲れさまだな』

心理「慣れないクレーン車だってちゃんと操作したのよ!!!アイテムの足止めだって頑張ったし」

アレ『そうだな』


心理「それなのに……!それなのに!!!!」

心理「声優に会いに行くための外出許可の為だなんて!!!!!!!!!!!」

心理「私の頑張りはなんだったのよ!!!!!!!!!!!!!!!
   ふざけんなよ腐れメルヘン!!!!!!!!!!!!!!!!」

アレ『あまり怒鳴らないでくれ。耳が痛い』

心理「煩いわよ!キモオタのくせに!!!!」

アレ『私はキモオタではない。ゆかちの』

心理「うるさい、うるさい、うるさーい!!!」

アレ『え、シャナ?』

心理「………っ」

アレ『?』

心理「ふっ……ひっく、ふぇ…う、ぅ……」

アレ『……』

心理「れ、れんらくも、ひっく…無くて、どれだけ、心配したと…ぐしゅっ……」

アレ『泣きたい気持ちは分かるが泣いている場合じゃない』

心理「なによぉ……」グシュ

アレ『垣根帝督に、ちょっかいを出してみないか?』

心理「へ?」

アレ『彼は今、怒ることができない。煮るなり焼くなり好きにしたらいい』

心理「…………」

アレ『気が済むまでなじってやるのがいいだろう。じゃあな』

心理「…………」



心理「…………」

―――――――――――――――――――――――――――――

心理「ということがあったの」

垣根「へー」

心理「学園都市を変える、だなんて馬鹿馬鹿しい。あなたなんて冷蔵庫になれば良かったのよクソ野郎」

垣根「そんなに怒ることか?」

垣根「あ、いたいいたいいたいごめん、ごめんなさい」

心理「サイッテーよ、あんた」

垣根「そうでもないだろ」

心理「…………私は、てっきり、チャイルドエラーのことを」

垣根「はぁ?そんなもん助けたいヤツがやりゃいいだろ」

垣根「いたいいたいいたいたいいたたたたごめんね、ごめんってば」

心理「学園都市よりあなたの思考回路の方が腐ってるわよ。ばか」

垣根「はぁ……アレイスターの野郎、余計なことしやがって」

心理「余計なことしたのはあなたでしょ。声優に会いに行くだなんて、本当にアホよ。ばか。私の時間をかえせクズ」

垣根「おい、口が悪いぞ」

心理「でも、さっきのでスッキリしたわ。一応許してあげる」

垣根「ありがたい」

心理「思ってもないことを……」

垣根「俺を殴りに来ただけならもう用済みだろ?出てけ、俺はアイマスやんだよ」

心理「……はぁ」

垣根「なんだよ?」

心理「少しでも期待した、私が馬鹿だったわ」

垣根「何も言わなかったのは悪かったな」

心理「撫でたって機嫌は直らないわよ。もう、子どもじゃないんだから」


垣根「…………」

心理「何よ」

垣根「お前が、チャイルドエラーなんて言葉を使うとは思わなくて」

心理「……」

“チャイルドエラー”
学園都市における社会現象の一つだ。
学園都市では原則的に入学した生徒は都市内に住居を持たなければならない。
その制度を利用し、入学費のみ払って子供を寮に入れて、その後に行方を眩ます行為のことだ。
もちろん捨てられた子どもを保護する制度はあるが、
それを逆手にチャイルドエラーに非人道的な行為をする研究チームもある。

心理「法に触れるような実験を黙認してる学園都市に殴り込み
   でもするのかな?とか思ったけど、あなたがそんなことするわけないわよね」

垣根「よく分かってんじゃねぇか」

心理「……」

垣根「俺はそこまで、この街が嫌いなわけじゃないからな」

心理「……あなただって、けっこうな実験されたじゃない。よくそんなこと言えるわね」

垣根帝督と心理定規もチャイルドエラーだ。
垣根は自分がチャイルドエラーであることに対して特に何も思っていない。
家族の記憶なんてあまり無いし、今では学園都市で好き勝手しているので不満なんか何もないのだ。

しかし、心理定規は違う。
彼女は家族との記憶がはっきりとある。
そのせいか自分が捨てられたという事実はあまりにもショックだった。
そのうえ酷い実験にも関わったり、哀れな目で見られたり、
家族に愛情を注がれながらぬくぬくと育っているやつらに同情されたりした。
たくさん嫌な思いをし、チャイルドエラーであることが嫌になって、チャイルドエラーという言葉さえも嫌いになった。

心理「…………」

垣根「つーか学園都市の外だって、親に捨てられる子どもなんざ腐るほど居るぜ?」

心理「……そうね」

垣根「俺達は捨てられたのがたまたま学園都市だっただけだ」

心理「……」


垣根「もしかしたら公衆便所で生み捨てられてたかもしれねぇんだぜ?
   それを考えればチャイルドエラーの方がマシだろ」

心理「まぁ、そうかもしれないけど」

垣根「むしろ学園都市に捨てられてラッキーだと思わないか?
   反吐が出るような実験はたくさんあったが、そのお陰で力と財力と地位を手にできたしな」

心理「あなたって、ポジティブよね。もしかしたら死んでたかもしれないのよ?」

垣根「実際、死んでないからいいだろ」

心理「はぁ……」

垣根は結果オーライってやつだ、と薄い笑みを浮かべて言った。
この男はおかしい。
心理定規よりも過酷な実験に付き合わされていたというのに、何で笑えるのだろうか?

垣根「それにチャイルドエラーに対する非人道的な実験をやめさせたって、捨てる親がいりゃ問題は解決しねぇよ」

心理「そうよね……」

垣根「俺は実験に狂ってガキの脳みそ弄くるアホな学者より、
   恋愛に狂ってガキ作って捨てるアホな大人の方がよっぽど残酷だと思うぜ?」

心理「…………」

それに関しては心理定規も同意だった。
生命活動が停止しそうな実験をされた時や、血を撒き散らしながら
死んだ同じ施設の子を見た時は衝撃のあまり気を失ったことがある。
それでも、両親に捨てられた事実の方がずっと、ずっと、ショックだった。

心理(……だって、ここに来る時は、)

少しでも昔のことを思い出すと、学園都市に来る時に両親と一緒に車に乗ってきたことも、自動的に思いだしてしまう。
車内で自分に向ける笑顔はいつも通りで、捨てられる気配なんて少しもなかった。
何年経っても、あの笑顔だけは一生忘れないだろう。


垣根「どうかしたか?」

ずっと俯いている彼女に声をかけた。
心理定規はチャイルドエラーの話をすると決まって俯いてしまうのだ。
だったらこんな話題を口にしなきゃいいのに、と垣根は思う。

心理「気分、悪くなっちゃって」

垣根「だから施設に居た時のことは忘れろって言ってるだろ?」

肩に寄り掛る心理定規の頭を柔らかく撫でた。
彼女の元気がないと頭を撫でてしまうのは幼い頃からのクセだ。
このクセは直したいのだけれど、なかなか直ってくれない。


垣根が手をどかすと、心理定規が顔をあげる。
その顔には少し笑みが浮かんでいた。
ようやく機嫌が直ったようで垣根はホッとする。
そして心理定規は、意地悪そうな笑顔になり、ゆっくりと口を動かした。

心理「忘れられないわよ。あなたが職員にイタズラしたら、すっごく怒られて涙目になってたのは一生忘れないわ」

垣根「忘れろって言ってんだろ!!」

心理「えー?無理よ。だってあの時のあなたってすっごく可愛かったもの」

垣根「……クソ女」

心理「はいはい」


垣根「……」

心理「何よその顔」

垣根「お前、昔は可愛かったよな。俺のこと」

心理「あー!!!!あー!!!!!止めて!!!!!!!!!!!!聞こえないわ!!!!」

垣根「お」

心理「止めてって言ってるでしょ!!ばか!!!!」

垣根「仕方ない。言わねぇでやるよ」

心理「……もういいわ。疲れたから帰る。あなたシャワー浴びたら?コーヒー臭いわよ?」

垣根「テメェのせいだろ尻軽女」

心理「煩いわよキモオタ。さっさとブチ切れて一生、学園都市に飼い殺しにされるといいわ」

垣根「ねーよ。一週間堪え切って絶対外に出てやる。外に出れたらお前の親でも探して来てやろうか?」

心理「…………」

垣根「……わりぃ、今のは意地が悪すぎた」

心理定規がまた俯いてしまったので、垣根は少しだけ焦る。
頭に手を置こうとすると、彼女が頭を上げて笑いだした。

心理「ふふふ。……俯くと泣いてるんじゃないかって焦るのは昔から変わらないわね」

垣根「うせるぇよ……」


心理「あの頃のあなたは声オタなんかじゃなくて、活発で可愛い男の子だったわよね」

垣根「あの頃のお前はビッチじゃなくて、清楚で可愛い女の子だったよな」

心理「……」

垣根「……」

二人はしばらく睨み合った後に、笑い合った。
そして心理定規は垣根の頬を抓りながら
“せいぜい頑張るのね。努力が無駄になることを願ってるわ”と言って、家から出て行った。
垣根は頬をさすりながらシャワーを浴びる準備を始めた。

そういえば、心理定規のあんなに怒った顔を見たのは彼女を置いて施設を脱走したとき以来だ。
あの時は実験が嫌になって一人で抜け出したのだけれど、あっさり捕まってしまった。
施設に戻って来た垣根に“置いて行くなんてひどいよ”と、彼女は泣きながら怒ったのだ。
そしてどこかに行くは一緒に連れて行く、と指きりをした。

垣根(だからって暗部にまで着いて来なくて良かったのによ…)

施設に居た頃の二人は、仲が良くて行動を共にすることが多かった。
垣根の後ろを一生懸命に着いてくる少女は、妹みたいでとても可愛かった。
実際、心理定規は垣根のことを兄ように慕い“お兄ちゃん”と呼んでいた。
初めて呼ばれた時はくすぐったい気持ちになったけれど、家族が出来たみたいで本当に嬉しかった。

垣根(それが今じゃキモオタ呼ばわりだ。しかもケバい尻軽ビッチになりやがって。成長ってのは残酷だな)

昔のことを少しだけ思い出しながら、浴室に向かう。
シャワーを浴びたらすぐにアイマスをやらなくては。
買い物したい気持ちもあったが、外出して嫌なヤツに遭遇するのは危険だ。

垣根(今日から一週間、温厚に過ごさないとな。カルシウムでも多めに取るか……)


シャワーから出たあと、垣根はアイマスに没頭した。
今日はもう誰にも会いたくないし、このゲームをさっさとクリアして一方通行に返さなければ。

垣根(明日はどうするかな……)

一週間はまだ始まったばかりだ。
一日目は怒らないで済んだが、キレかけてしまった。
まだ一日目だというのにとんだ失態だ。これでは先が思いやられる。
せっかくのチャンスを潰すわけにはいかない。

まぁ、とにかく今はプロデュースに没頭しよう。
明日のことは明日になったら考えればいい。
そう思いながら垣根は画面に集中する。
画面の中では金髪の少女が、笑顔で元気に唄っていた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

垣根のマンションを後にした心理定規は足早に自分の家に向かっていた。
声優に会うための計画に付き合わせれていたなんて、腹立たしくてムカムカする。

心理(ケロッとしてるのがムカついたわね。人がどれだけ心配したと思ってるのよ)

心理(…………でも、)

垣根にキズ一つないことが分かった時は、泣きそうになるくらい安心した。
向こうが自分のことをどう思っているかは分からないけれど、心理定規は垣根のことを、勝手に家族みたいなものだと思っている。
施設でも、研究の時でも、捨てられたと気付いて泣いた時も、隣にはいつも彼が居た。

心細くてたまらなかった心理定規に、手を差し伸べてくれたのは彼だ。
優しくて強い彼は、まるで兄のようだった。
いつからか心理定規は垣根のことをお兄ちゃんと呼ぶようになり、二人は本当の兄妹みたいに仲良くなった。
喧嘩することは少なくなかったけれど、今も一緒に居ることを考えると相性は悪くないのだろう。

今は気持ち悪い声オタだ。
でもピンチな時も、不安な時も、泣きそうな時も、垣根が居てくれれば何とかなると思える。
笑顔を見ればこっちまで元気になれるし、頭を撫でられれば心が安らぐ。
成長しても心理定規にとって垣根は頼りになるお兄ちゃんなのだ。

心理「…………」

そういえば、彼のことをお兄ちゃんと呼ばなくなったのはいつからだっただろうか。
心理定規の記憶が正しければ、暗部に在籍した時くらいからだったと思う。
殺伐とした世界で、いつまでも彼に甘えている訳にはいかず、妹面するのを止めたのだ。

心理定規が垣根のことを“あの人”とか“あなた”と呼び始めたとき、彼は“何か怒ってる?”とか言って焦っていた。
その時に、垣根はお兄ちゃんと呼ばれるのが嫌ではなかったのだと気付き、とっても嬉しかった。

嫌なことだらけの幼少期だったけれど、垣根とのことだけは良い思い出だ。
ウザくて気持ち悪くて大嫌いだと思うこともあるけれど、他人だらけの学園都市で、彼は唯一の家族なのだ。
そんなこと本人には絶対言えないけれど。

心理(ムカついたけど、無事だったから許してあげるか……)

ここまでです。
読んでくれてありがとうございました。


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 '.   'く   \ / \ \ ___...  </    .||   |     l_
  ヽ  | ̄ ̄\ l    \    ___/    ||      / |_
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  ,′     .|  ./ / .ト、  `ー‐---―'  / /     /
 ,         |/   /  | \        /  /    /



心理定規かわいいよ心理定規

イイハナシダナー(;∀;)

イイハナシカナー?

やべえこの二人萌えた


            __   ____
         ,.  ´::::::::`´:::::::::::::::::::::` 、
        /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`ヽ
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  l:::::/ l:::::::::::l |:::::::::::::::|  ヽ __ノ   /!:::::::::::::::|  ニコッ♪  
  ヽ::{  ヽ::::::/ l!ヽ:::::::li:| 、     ,.イ   |::::::::::/l::!  
    _,.ー-_ノ   \::l i! /`:::rーi::::l   l:::::/ j/
__ r ´: : : :\     ヾ! / \   ヽi   //    
: : : :\: : : : :ヽ      |: : : :ヽ __

: : : /: : : :ヽ、: :ヽ      /: : : /: : :`ヽ
: : /: : : : : : : :llヽ!    /ri ´ : : : : : : : ∧
: : : : : : : : : : :||: :l`ー-/: || : : : : : : : : /: :ヽ

: : : : : : : : : : :||: :ヘ  /: : !!: : : : : : : :./: :


心理定規報われねえなあ

   ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
   ┃    Q 初春飾利(ういはる かざり)とはーー     ┃
   ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
         t─v‐ァく {`ヾ⌒)く^☆´レ-ァ
      __ハrvくjムト' > O 、_}´/~Yヽjヘ

        」 [ 0 ] ☆| {_人_,ノ、}‐Oく::::::',  ←頭にお花という、時代の最先端を行くオシャレ
      ☆ヘムフ^::::|:レi::⌒ヽ人|☆ヘ.ソヽ:ハ
     /:::´::::::::|:::|:::|:| ||::::::|:l::::|:ヽ::::::::ヽ/::::iハ  ←『守護神』の名を持つに相応しい頭脳

      /:/::::::::::|」:::Ⅳ|! |!:::::ハ厂|::::i:::::::::::i::::::|
      |/|::i:::::´Nァ=、  l!⌒ァ=ミx:|:::::::::::|::::〈  ←絶妙に外側にはねている髪の毛
      |人:::: |〃7ハ     7ハT::::::::::l::::ト\
        ヽ:lハ r':::}    r' :::::}:|::/::/:厂>一  ←つぶらな瞳
.          ∠::;代ソ   弋zソ 7イ{/::::!:i
           j八    、 ,    . イ:|:::::ノN  ←『飴玉を転がしたような甘ったるい声』
             /_>''´ ̄|-;<ヽト-<:ヘ{
            {_,. -─‐|7 /⌒ヾー一  ←華奢で小柄な体型
           ∧ /  r┴<ノ/   、}
              Y´ろ {ミ  }厶--、 〉  ←能力は保温。冷まさないし、温めない
            `ヽ \ ハ  Y /T′
.           / ̄八_,ノ.八___/ ト、  ←似合い過ぎてるセーラー服
      r─ 、ゝ⌒ヽ 厶イ⌒    〉
  r──┴一´: : : : : :\____/ヽ__  ←安産型のプリプリしたお尻

  |`ヽ: : : : : : : : : : : : : / : : : : { : : : :`ー 、: ヽ

.   \ハ: : : : : / : : : : / : : : : : 、 : : : : : : : : >一ァ  ←捲られても中は見せない、夢が詰まった鉄璧スカート
.       \: : / : : : / : : : : : : : ヽ : : : : : : : : :/

   ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
   ┃        A. 可愛すぎワロタ               .┃

佐天さんには中見られてなかったっけ?

猫舌と見せかけて、ていとくんにぶっかけるコーヒーをふーふーして
さらにミルクまで入れてわざわざ冷ましてあげる定規たん優しい
ただし砂糖は嫌がらせ

         rvi__ノ'´> 。くr-( )、_,、_ハ_r┐
        y'Y}ー o `r‐'iゝ o  、)v' o ノ≦、
         ,ケ/^!_人_/`ケ^ーイ廴_,イーヒ_ ,._ノ r' フ
       <フ_,、<;√|ハ/./ : :i:人ハ!vーvーY^Y|イ、
        !,.イ: : /: :| : /|: : :|: :| : |: : !: ≦、_r'V!:.i
        |:ハ: :/: : |:./´|:| : |: :!: :ハ: :|: :|: : ;ハ_ノト、!
       { |: !: : :|/  {:!_八从{ |_!L !ノ:ハ!、: {´

         |: |: | |             !リノj フr、ゞ
           ハ |: |:| x=ミ    x=ミ./:/_ノ、:ヾ、
           '^): :|:! 、、  、      、ムイノ!: :ト、{`
          `ヽ八    - 、    イ : | :ハY
        ,...-:‐:‐:‐\_ `ー '   イ:リ.: :ハ{
 _人_    / \:.:.:.:.:.:.:.:.:/ ー ‐ ´  ト :ノ_          ウンタン♪ ウンタン♪
 `Y´    /   / \:.:.:.:.:/ー-、 ,.--/:.:.:.:.:.:\_   f゚}∩  *
      / nんn_ \:.{ー-、__/:.:.:.:.:.:.:/ 〈ヽ.ノ///〉   
      /  | ! // 〉   iヽ:.:.:.:.:.:./.:.:.:.::/    }     っ
     ゝ、_/ __,ノ    \ゝ<----イ      /   ,イ´
     /  /   /        ><´ ̄ ̄´  /  /   /
.     i  /   /      / / 〉       /ー-/   /
.    |     /    / / /     /  /   /   *
    `ー七'     ∠_/ー‐′    /i      /
     //                  / |    /  
   /⌒〈              /  `ー‐ '   *


おつおつ。
心理定規も可愛いがかわ初春はもっと天使。

         /: :/: :.|: : : : : ! : : : \: : : :.ヽ: : ヽ           <フ_,、<;√|ハ/./ : :i:人ハ!vーvーY^Y|イ、

         /: /: : 八: :!: : :|\: : : : ヽ: : : :',: : :.',   .           !,.イ: : /: :| : /|: : :|: :| : |: : !: ≦、_r'V!:.i
        ,': /ニ7⌒!:.!: : :| ⌒ : : : : : : : : |: : : :!            |:ハ: :/: : |:./´|:| : |: :!: :ハ: :|: :|: : ;ハ_ノト、!
          /: :.|: :./  V\: !   ヽ: :!: :.|\|: : : :.\__,         { |: !: : :|/  {:!_八从{ |_!L !ノ:ハ!、: {´
       /: : :ハ: :|     ヾ   ∨!∨: : : : : : : : :ヽ           |: |: | |             !リノj フr、ゞ
        /: : : : :.V:! x=ミ    x=ミ. !: : : : ハ: : : : : :.ハ      .    ハ |: |:| x=ミ    x=ミ./:/_ノ、:ヾ、
     /:/: : : : /: :! 、、  、       、、 !: : !: : :!: : : : : : :.}           '^): :|:! 、、  、      、ムイノ!: :ト、{`
     // |: : : /| :八    - 、    ,ィ: :/: : /: :ハ: : :|V            `ヽ八    - 、    イ : | :ハY
     {! 从: i'´ ̄::::>、 `ー '  イ!V /: : /: / |: :/          ,...-:‐:‐:‐\_ `ー '   イ:リ.: :ハ{
  _人_    /N::::_:::::/::| ` r ' //:/: /‐く  V    _人_    / \:.:.:.:.:.:.:.:.:/ ー ‐ ´  ト :ノ_      ウンタン♪ ウンタン♪
 `Y´    /::::::://:::/:::::|  ><  /:::丁´:::::::::::::V゚}∩    `Y´    /   / \:.:.:.:.:/ー-、 ,.--/:.:.:.:.:.:\_   f゚}∩  *
       /::::nんh_::∧:::::}/八. ∨::::::」::::::::::〈ヽ.ノ///〉         / nんn_ \:.{ー-、__/:.:.:.:.:.:.:/ 〈ヽ.ノ///〉  


追いついた・・・乙!自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

なんか後ろにいたのでageさせてください

気持ちはわからなくもない、でも[ピーーー]

ゆういち×あずにゃん記念age

まさか終わったワケじゃないよね?

レスありがとうございます
台風凄かったですね

一人の少女をトップアイドルへと導いた垣根は、暇を持て余していた。
家に籠っていても仕方ないので、とある友人の所へと来ていた。

垣根「なぁなぁ、何の実験してんの?面白い?」

博士「特に実験はしていない。私の出題した問題を部下が解いて来たから答え合わせをしているだけだよ」

垣根は博士に電話で居場所を聞き出し、無理矢理訪ねたのだ。
しかし構ってはくれず、何束もある紙に熱心に目を通している。
楽しそうに眼を細める博士を見つめて垣根はぼんやりとしていた。

博士「垣根少年は同世代の友達が居ないのだな?若者風に言えば、ぼっちというやつだ」

垣根「ちげぇよ!」

垣根は博士の言葉を必死に否定する。
学校になんか行ってないので友達は多いほうではない。
でも、ぼっちではない。
ぼっちではないのだ。
……たぶん。

博士「それにしても外出の許可が降りない理由が短気だからとは」

垣根「俺もビックリした」

博士「ふむ。ならば私もアレイスターに抗議してみるか」

垣根「博士が?」

そういえば彼は何故、学園都市から出ることが出来ないのだろう。
攻撃的な面もあるが、知的でゆったりとした雰囲気の彼が自分と同じ理由で許可が降りないとは思えない。
垣根が疑問を浮かべると、それを見透かしたように博士が口を開く。

博士「外出ができない理由は君と同じだと思う」

垣根「え」

博士「こう見えても私は短気なのだよ」

垣根「マジで?」

博士「マジだ」


そう言って博士は少し前の話をした。
愛生ちゃんがけいおん!で有名になってから、部下の中でファンが増えたそうだ。
しかし、それと比例するようにアンチも増えた。
それからファンとアンチの争いが毎日のように研究室で行われた。
最初は博士の居ない所で行われていたけれど、争いがどんどん過激になっていき、博士の前でも愛生ちゃんの悪口を言うようになったそうだ。

博士「そして、私はオジギソウでその部下を」

垣根「もういい」

博士「まだ話の途中なんだが?」

垣根「もういいから。分かったから」

博士「それに私は学園都市のことを色々と知ってしまっているからな。外出させたくないのだろう」

垣根「あ……なるほどな」

博士「しかしレベル5でも外出できるのなら私だって出来る筈だ。アレイスターに聞いてみるか」

垣根「外に出れるようになったら、一緒にコンサートとか行きてぇな」

博士「そうだな。豊崎さんがソロコンサートをやる予定はないが、あれだけの人気者だ。そのうちやるに違いない」

垣根「だよな!!!」

博士「オリジナル曲はゆったりとした曲が多いから、サイリウムを振ったりするようなコンサートではないと思うのだよ」

垣根「それは俺も同意だ。歌声をじっくり聴けるような静かなコンサートが愛生ちゃんらしいと思う」

博士「坂本真綾さんのコンサートみたいな雰囲気が理想に近いな」

垣根「あー…真綾はマクロスしか知らねぇや」

博士「あと彼女は人気がある。中途半端なキャパ数でやるとチケットの倍率が高くなるだろう」

垣根「でも、流石に武道館くらいの会場は早いだろうな」

博士「そうだな。しかし、そのうち一人で会場を埋められるようになって欲しいものだな」

垣根「……愛生ちゃんが大きい会場でソロコンサートやったら、泣く自信がある」

博士「私もだよ」

その後も、もし愛生ちゃんがコンサートをやるならどこでどんな感じのコンサートになるかという妄想トークをした。
誰ともそういう話をしたことない垣根はテンションが上がり過ぎて死にそうだ。
博士に、やはりぼっちだな、と笑われてけれど、怒りは全く沸かなかった。


垣根「博士のアドバイス通りにメールしても読まれないんだけど」

博士「そればかりは運だ。あのアドバイスはあくまで読まれやすいというだけで、必ずしも読まれる訳ではないからな」

垣根「……運、か」

博士「そういえば、垣根少年」

垣根「ん?」

博士「全然関係のない話になるがいいかな?」

垣根「別に構わねぇよ」

嫌なことを言われても許せるし、愛生ちゃん以外の話もできる。
これが友達ってやつなのか、と思うと少しニヤけてしまう。
会ったばかりだというのにこんなにフレンドリーになれるなんて、不思議だ。
やはり愛生ちゃん好きに悪いひとは居ない。

博士「何をニヤけているんだ垣根少年。気持ち悪いぞ?」

垣根「あ!?ニヤけてねぇよ!いいから話って何だよ」

博士「……最近、眠れないのだよ」

垣根「は?」

博士「寝る直前までパソコンを見ているせいか、なかなか眠れない。翌日辛くてな……。何か策はないかね?」

垣根「俺が眠れない時は愛生ちゃんの曲かけてる。やってみれば?」

博士「……ふむ」

垣根「布団の中で聞く愛生ちゃんの声はすっげぇいいぜ。暖かいし、優しいし、甘いし、何より落ち着く」

博士「豊崎さんの声はいつもそうじゃないか」

垣根「いつもよりそうなるんだよ。試してみろって」

博士「そうだな」

垣根「超お勧め」

博士「……彼女の唄声を子守り歌にするというわけか。それは思い付かなかったな」

垣根「……」

博士「どうかしたか?」

垣根「言われてみれば、確かに子守り歌みたいだと思って」

博士「てっきりそれを意識してやっていたと思ったが、違うのか?」

垣根「……別に」

博士「?」


垣根「俺も関係ない話していい?」

博士「もちろんだとも」

垣根「ムカつくヤツはどうすればいい?」

博士「処分すればいいのだよ」

垣根「それはちょっと……」

博士「意外だな。垣根少年は気に喰わない人間はすぐに殺してしまうイメージがあったのだが」

垣根「そんなことねぇよ」

博士「よく分からないが関わらなければいいのではないかな?」

垣根「ばったり遭遇したらどうしたらいい?顔見たらブチ切れそうで怖い」

博士「ふむ……。そうだな……」

垣根「そしたら外出は出来なくなる……」

博士「逃げればいいのだよ」

垣根「!」

博士「ただ逃げるだけが嫌なら一方的に暴言でも吐いてやればいいさ。それで即退散すれば良い」

垣根「それでいいか!さすが博士だな!頭いいぜ!」

博士「いや、これくらいで褒められても困る。それにこれは私が若い頃、嫌いな人間にやっていたことをそのまま言っているしな」

垣根「……博士ってけっこうガキなんだな」

博士「ガキでなければ、研究者なんて職業には就けないさ」

垣根「そういうもんか?」

博士「さて、垣根少年。私はこれから別の研究所に行かなければならないのだよ」

垣根「俺来たばっかりだぜ?」

博士「急に来られても困る。次は2日前くらいに連絡をくれると嬉しい」

垣根「分かった」

博士「そうだ。最近、通り魔が出没しているらしい。気をつけるのだな」

垣根「心配してくれるのは嬉しいが、俺を誰だと思ってるんだ?」

博士「いきなり襲われても怒らないように気をつけろ、という意味なのだよ」

垣根「なるほどな……」

――――――――――――――――――――――――

研究所を出た垣根はあてもなくブラブラしていた。
家に帰ろうと思ったけれど、なんとく帰りたくない。

垣根「……」

博士との会話を思い出して、立ち止まる。

“子守り歌”

施設に唄ってくれる優しい大人など居なかったな、と思う。
あの頃は眠れない夜がいくつもあったけれど、今と違って何もできなかった。
心細い夜も恐怖に震えた夜も布団にまるまって耐えるしかなかった。

心理定規と出会ってからは、自分が唄う側となった。
彼女が初めて過酷な実験を目の当たりにした日の夜、震えながら“眠れないからお歌唄って?”とねだられたのだ。
その時の垣根は意味が分からず、なんで寝るのに歌?馬鹿かこいつ?と思った。
そう、垣根はその時まで子守り歌というものを知らなかった。

垣根(昨日、昔のこと思い出したせいか?ガキの頃のこと考えちまうな)

少しだけセンチメンタルになった気がして苦笑する。
自分らしくない。
過去の自分を哀れに思っても空しいだけだ。
そう思い垣根は思考を切り替える。

垣根(それにしても、愛生ちゃんの子守り歌か……。やべぇな、膝枕されながら聴きてぇな)

妄想にニヤニヤしながら、再び歩き出す。
ガキの頃がなんだ。
今の自分は素敵な女性に会えて、こんなにも幸せな気持ちなのだ。
少しくらい過去が気に喰わなくても、今が楽しいのだからそれでいい。

垣根は目を瞑り彼女の笑顔を思い出した。
どうしようもなく胸がいっぱいになる。
あぁ、早く会いたい。
垣根は足早になる。
早く家に帰って、おかえりラジオを聴いて癒されよう。
彼女が“おかえり”と言ってくれればほっこり出来る。
それだけで十分だ。

 

「あ」

沈んだ気持ちが、元通りになった所で不意に声がした。
その声は、飴玉を転がしたような甘い声で、垣根が愛する彼女に似ていた。
良い声なので“あ”だけでも素晴らしいと思っていたけれど、学園都市でこんな声の持ち主は垣根の知る限りでは一人だけだ。
垣根は眉間に皺を寄せた。

初春「えっと……こんにちは……」

ぺこり、と初春が頭を下げる。
花飾りが揺れた。
控え目にお辞儀する彼女は小動物のようで可愛らしい。
気まずそうに上目遣いで垣根を見上げる。
揺れる大きい瞳は、吸い込まれそうなくらいに愛らしさが宿っていた。

しかし垣根はそんなことはどうでもいい。
今すぐこの場を離れたいという気持ちでいっぱいだ。

初春(えっと……とにかく、その)

初春は謝罪の言葉を口にしようとする。
しかしなかなか出て来ない。
モジモジする少女とそれを見つめる少年。
傍からみれば告白の現場に見えるのだけれど、実際は全然違う。

垣根(クソが……やっぱり声だけはいいな。声だけは)

初春(やっぱり、顔はいいなぁ。顔は。一言も喋らないから完璧ですね)

垣根(つーか何でこいつ俺の前で立ち止まってんだよ。花でも見せびらかしてんのか?邪魔なんだよクソボケ)

垣根の顔を見ると、こないだのことが思い出される。
店でくだらないオタク話を大声話したり、短気だったり、この顔の持ち主に相応しくない。
そう思うとなんだか、謝りたくないなぁと思ってしまう。
いやいや、あれだけ失礼なこと言ったのだ。頭を下げるのは当然だろう。

初春がごちゃごちゃ考えていると、垣根が不意に口を開いた。

垣根「その頭の花って、思考がはみ出てるの?」

初春「は?」


垣根「人の顔がどうのこうの言ってるけどよテメェはどうなんだよクソガキ」

初春「へ?」

垣根「お前はその声の持ち主として相応しくねぇんだよ」

初春「え」

垣根「謝れ」

初春「?」

垣根「お前の“声”に謝れよ。こんなクソみたいな人間ですいませんってな」

初春「へ……」

垣根「あぁ、でもお花畑は人語が喋れねぇから無理か。たった6文字の言葉でも言えないよな?悪趣味フラワー花瓶スイーツちゃん」

初春「……」

垣根「間抜け面だな。ブッサイクだぜペチャパイまな板ガリガリ女」

そう言うと垣根は全速力で走りだした。
垣根の背中をボーっと見ながら、言われた言葉の意味を考える。
ようやく初春は自分が馬鹿にされたと気付いて、垣根を追いかけ始めた。


垣根「うわぁーwwww足おっせぇwwwwそれでも風紀委員かよwww」

初春「はぁっ…はっ…うるっさい…です…よっ!」

垣根「汗ダラダラで顔が真っ赤で酷い顔がさらに酷い顔になってるぜ」

初春「うぐっ…!」

垣根「大股で走るとパンツ見えるぞ?まぁテメェの染みつきパンツなんて誰も見たくねぇけど」

初春「ついてないです!!!!」

街中で追いかけっこしてる二人は注目の的だった。
しかし二人は通行人の視線など気にせずに走り続けた。


垣根は愉快でたまらなかった。
気に喰わない人間が、悔しそうな顔で涙目になっているのを見るのは最高に気分が良い。
垣根がニヤニヤしながら顔を向けると、初春はさらに悔しそうな顔になった。
あれだけ人を不愉快な気持ちにしたのだ。
これくらいはされても文句は言えないだろう。

垣根(博士に相談して良かった。あれだけ嫌な気持ちだったのか晴れやかな気分だ…)

その時、細い足が垣根の進路を妨害した。
不意に出せれた足に気付くことができずに、垣根は盛大にずっこけた。

垣根「!!!!」

何に躓いたか分からず垣根は混乱する。
起き上がろうと、手を地面に着くと、背中に重みを感じた。

垣根「ぐっ……」

呻く垣根に冷やかな声が降りかかる。
その声はともて聞きなれた声だった。

心理「あなた、何やってるの?」

垣根「テメェかよ。どけビッチ」

心理「大声で女子中学生を罵りながら逃げるなんて、とてもじゃないけど第2位のやることじゃないわ」

垣根「俺は2位である前に垣根帝督というピュアな少年なんだよ」

心理「キモッ……」

数分経つと、初春が垣根に追いついた。
大きい口で酸素を取り込みながらその場にへたりとしゃがみ込む。
鞄からタオルを取り出すと、真っ赤な顔にあてて汗を拭い始めた。

心理「平気?顔、真っ赤よ?」

初春「へ、平気れす……」


初春は苦しさのあまり回らない呂律で一生懸命に言葉をつむぐ。
ドレスを着た小柄な少女は、手に持っていた有名ブランドのバックから冷たい飲み物を出すと初春の頬に押し付けた。

初春「ひゃっ!」

心理「それあげるわ。水分補給は大事よ」

初春「は、はい……」

垣根「どけよ。重いぞデブ」

心理定規は垣根のふくらはぎにヒールをつき立てた。
下に居る垣根はあだだだだだとか言いながら悶絶している。
その姿を見て初春は少しだけ気分が晴れた。

心理「まったく、失礼な人ね。この女の子にも失礼なことしたんでしょ?」

垣根「はぁ!?ちげーよ!!!!」

初春「あ……あの……」

心理「あ、息が話すのは整ってからでいいわ」

心理定規は可愛らしく初春に笑って見せた。
下に居る垣根は、猫被ってんじゃねぇぞクソ女と言ってまた踏まれていた。
華奢で色気のある少女は、垣根と親しいようだ。
もしかしたら、カップルなのかもしれない。
美男美女でお似合だなぁ、と思ったれど、こんな可愛い女の子にオタクの男は釣り合わないだろう。
顔だけなら釣り合うのだけれど。


少しして、初春の息が整い、汗も引いた。
それを確認した心理定規は垣根からどくと二人を近くのベンチにまで連れて行った。

心理「何してたの?」

初春「え、えっと…」

垣根「あー早く帰りてぇ」

垣根「いたたたた。足踏むな」

心理「で、何しての?こんな非力な女の子相手に」

垣根「仕返し」

心理「え?」


垣根「こいつ、大人しそうな顔してとんでもねぇ女だぜ?何もしてない人間を平気で罵倒するんだからな」

初春「……うぅ」

心理「あなたが罵倒されたの?」

垣根「おう」

心理「ふーん。でも仕方ないでしょ。だってあなたってすっごく気持ち悪いもの」

垣根「あ?」イラッ

心理「あら?怒っちゃうの?」

垣根「イイエゼンゼンオコッテナイデスヨ」

心理「そう」

初春「あ、あの、あなたは一体……」

心理「私?」

初春「はい」

心理「この人の知り合いよ。ごめんね、この人ってちょっと頭おかしいから」

垣根「テメェはクソ花の味方すんのかよ」

心理「あら?私欲のために組織を使ったお馬鹿さんは誰だったかしら?私まだ怒ってるんだからね」

垣根「…………」

心理「とにかくごめんなさい。お詫びはそのジュースでいいかしら?」

初春「へ!?く、くれるんですか」


心理「もちろんよ」

初春「ありがとうございます!」

垣根「たったジュース一本で機嫌直るなんてやっぱりバカだなアホガキ」

初春「そのアホガキに必死になって、仕返しなんてした垣根さんも同じくらいガキですね」

垣根「必死になんかなってねぇよ。思ったことをそのまま言っただけだよ芋女」

初春「私だって思ったことをそのまま言っただけですよウドの大木」

垣根「口の減らねぇガキだな。だから声以外の長所がねぇんだよカス」

初春「意味分からないこと言うから顔以外の長所がないんですよキモオタ」

垣根「その声でキモオタって言うなよ悪趣味花瓶」

初春「……垣根さん、あそこ花壇にある花の花言葉って知ってます」

垣根「パンジーか?確か思慮深いじゃなかったか?」

初春「違いますよ。パンジーの花言葉は、この野郎すっごくムカつく、ですよ」

垣根「そんな変な花言葉があるわけねぇだろ。頭わりぃんじゃねぇの?」

初春「すいません。ガキですから頭悪いんですよ」

垣根「開き直るなクズ」

初春「うるさいですよばか」

垣根「……チビ」

初春「……あほ」

心理「……っ」

垣根「?」

初春「?」

心理「あっはっはっは!」

初春「ど、どうしたんですか?」

心理「あなた達おかしいわね!……二人とも小学生みたい、あは、ははは!」

垣根「は?」


心理「仲が良いのか悪いのか分からないわ」

垣根「悪いに決まってんだろ!」

初春「悪いですよ!」

心理「でも相性はいいんじゃないかしら?」

垣根「冗談でもそんな気色悪いことは言うな」

初春「そうですよ。止めて下さい。こんなオタクと相性がいいだなんて最悪です」

垣根「あ?」

初春「最悪です。垣根さんと相性が良いなんて言われるなんて最悪すぎて泣きそうです」

垣根「オマエって、本当に、」ピキピキ

心理「あれ?怒るの?」

垣根「……帰る」

心理「そう。じゃあね」

垣根(早く帰って愛生ちゃんの声聞いて癒されよう……。アホ共のせいで心が荒んだぞクソ)イライラ

初春「あ、あの、垣根さん」

垣根「あ?」

初春「えっと、その、」

垣根「わりぃな。妖怪造花女と話すことはねぇんだよ。じゃあな」

初春「な!よ、ようかい!?」

心理「悪口が小3レベルね。帰るなら早く帰りなさいよ」

垣根「うるせぇな。テメェも暗くならねぇうちに帰れよ尺取りビッチ」

心理「はいはい。分かってるわよ声オタ羽毛」

――――――――――――――――――――――――

帰宅した垣根は、ベッドに転がった。
イライラする。イライラして死にそうだ。
身近に居る女は、揃いも揃ってカスばかりだ。
やっぱり、俺には愛生ちゃんしか居ない。

心を鎮めようとして、録音していたおかえりラジオをかける。
ほっこりトークは垣根の荒んだ心を、暖かく包み癒してくれた。

垣根「……はぁ」

ラジオでは、“さけのんというリスナーの、部下に優しくするコツを教えて下さい”
とかいうメールに対して愛生ちゃんが丁寧にアドバイスしていた。
やっぱり彼女は天使だなぁ、と実感する。

垣根(……ムカつくけど、でも、)

彼女に会う為だ。
愛生ちゃんに会うためなら、怒らない自信はそこそこあった。
けれど、あの声だけ天使のクソ花畑に会うとイライラして仕方がない。

垣根(むしろ、一週間家に籠ってるか?いや、アレイスターのことだ。そんなことしたら無効にされるに決まってる)

残りの予定をどうするか考える。
一方通行もぼっちだろうし、彼を誘ってどこかに遊びに行くのはいいかもしれない。
でも“遊ぶ暇があるならアイマスやれよォ”とか言ってきそうなので、連絡するのは止めた。


垣根「……やべぇな、俺ってマジで友達居ないかも」

―――――――――――――――――――――――――――――――――

垣根が去ったあと、二人の少女は談笑していた。
垣根のことを“気持ち悪いオタク”と呼ぶ初春と気が合いそうだと思った心理定規は、彼女と話してみようと思ったのだ。
すると予想した通り、初春と心理定規はなかなか気が合い、話が盛り上がっていった。
ベンチに座りながら、長時間話したのは初めてだ。

心理「分かるわー。真面目な顔して“うんたんって言ってくれ”なんて普通は引くわよ」

初春「ですよね!でも、やっぱり言いすぎたかなって……」

心理「そんなことないわよ。あの人はそれくらいが合ってるわ」

心理定規は華やかな笑顔で言うけれど、初春はそう思えなかった。
でも本人と対面すると、言葉がつっかえてしまう。

初春(私って駄目だなぁ……)

心理「話すと残念になるって、その通りよね。顔だけが長所なんだから黙ってればいいのよ」

初春「そうですよね!あなたは分かってます!」

心理「昔はあんな気持ち悪い人間じゃなかったんだけどね」

初春「……垣根さんと心理定規さんは、どういう関係なんですか?」

初春の質問に心理定規は言葉を詰まらせた。
一瞬だけ“家族”と答えそうになった自分に気づいて苦笑する。

心理「……仕事仲間よ」

初春「そうなんですか」

心理「それにしてもキモい人種に好かれやすいって災難ね。大人しそうな外見だからかしらね?」

初春「分からないです。でも最近はそうでもないんですよ」

心理「へぇ、良かったわね」

初春「風紀委員の腕章のお陰だと思います」

心理「……風紀委員か」


心理定規は目を細めた。
初春飾利は闇で生きている自分とは正反対の少女だ。
彼女の笑顔は眩しくて、汚れきっている自分は一緒にいていいのだろうか?

初春「どうかしました?」

心理「なんでもないわよ。ごめんね、そろそろ行かなくちゃ」

初春「そうですか。色々ありがとうございました」

心理「別にお礼言われるようなことはしてないわ」

初春「いえ、垣根さんを捕まえてくれましたし、ジュースだってくれたじゃないですか!」

眩しい笑顔で初春が言う。
こんなにも裏表のない笑顔は久しぶりに見た気がする。
心理定規が初春の笑顔に見惚れていると、彼女は自分のポケットから携帯を取り出した。
そして、驚くべき言葉を初春は言った。

初春「せっかくですし、メアド交換しませんか?」

心理「え」

初春「駄目ですか?」

心理「……」

初春「あ、嫌ならいいんですよ!すいません」

心理「……いいわよ。別に」

アドレスを交換したあと“メールしますね”と初春が笑った。
心理定規が“私もしていい?”と問い掛けようとした時、初春の携帯が震えた。
仕方ないので通話する初春を黙って見つめる。
真剣に通話する横顔は風紀委員らしくて、凛としていた。

初春「何ですか?あ、例の通り魔ですか?…え?うちの管轄でも被害が出たんですか!?」

心理(物騒ね……)

初春「分かりました。すぐ行きます!」

通話を終えた初春は頭を下げながら別れの挨拶して駆けだした。
初春が去った後も、心理定規はその場から動けなかった。

アドレス帳を見ると“初春飾利”と刻まれている。
その4文字を見ると、なんだかくすぐったい。
同年代の女の子のアドレスを登録するなんて、かなり久しぶりだ。

心理「……」

心理定規は嬉しさのあまり微笑んでいた。
それは暗部組織に所属している少女のものだとは思えないほどに、幼い笑みだった。

ここまでです。
読んでくれてありがとうございます!

きてたー!
乙!

おつおつ

おつん



ところで、さけのんって誰かな?黄泉川?

どう考えてもむぎのん

むぎのんに期待

”鮭のん”の部下。

超電波鯖かな?
いつもの”づらぁぁぁぁぁぁぁぁ”かな?
楽しみww

うっは、久しぶりの乙。
かわ初春きゃわわ、これで一ヶ月は生きて行ける!!

あっきょちゃんのラジオ聴いて見ようかな…

むぎのんもかよwwww
もうやだこの暗部wwww

浜面が爆発したら呼んでくれ

初春は携帯に登録するとき名前を聞けたのだろうか?

愛生同棲発覚記念age

どうすんだよていとくん
豊崎同棲発覚だよていとくん

ていとくんはショックを受けても発狂してアンチにはならないだろ

そうだな、むしろ騒いでる連中を鼻で笑うだろう

そして一人枕を濡らす

ここで騒ぎ知ってVIPの方見に行ったら唯のキャラソンCD砕いてるキモいのがいた
これはていとくんキレるで

Level6への道が開くな

イエーイ!カッキー息してる?

幸せを祈らず、発狂するヤツは真のファンでは無い
と、カッキー言ってくれるに違いない

しかし中の人は息してるのかしら

中の人な…どいな……い………

レスありがとうございます
間があいてすいません


垣根は最悪な気分で目が覚めた。
悪夢を見たのだ。今までの人生の中で一番最悪だと思われる悪夢を。

夢の中で垣根は、動けず正座していた。
そんな垣根に向かって花飾りの少女と心理定規がひたすらキモオタだの声オタだの言う夢だった。
昨日、あんなことがあったせいだ。
イライラして吐き気がする。

気分転換する為に外出することにした。
顔を洗い、身支度を整えてmp3を手にする。
聴く曲はもちろん決まっている。

垣根(あぁ……この声、本当に癒されるぜ……)

甘い歌声に包まれながら、自宅を後にした。

―――――――――――――――――――――――――――

チェーン店で朝ご飯を食べ終えた垣根は、ストレス解消にゲームセンターに来ていた。
苛立ちを格ゲーにぶつけるとそれなりにスッキリすることができた。

垣根(……張り合いのないヤツばっかりだな)

垣根は何回か対人戦をして全勝していた。
一方的にボコボコにするのは気分がいいけれど、何回もやっていると飽きてくる。
それに、さっきから同じプレイヤーが何回も挑んでくるのだ。

垣根(いい加減に懲りろよ……)

ため息をつきながらスティックを操る。
画面の中のキャラクターは垣根の操作通りに動いて相手をKOした。
対戦相手がどんな野郎か確かめようと思った時に、対戦相手側から大きな声聞こえた。

??「あー!また負けた!!強すぎるってわけよ!!!」

聴き覚えのある声だ。
垣根は席を立つと、声の主の方へと歩いて行った。

フレ「ちょっとは自信あったのになぁ……はぁ……」

垣根「コンボ出すのが遅い。負けるのは当たり前だろ」

声の主は垣根の予想通り、アイテムの少女だった。
フレンダは垣根を見ると驚いた顔をした。
しかし、すぐに笑顔になると親しげに挨拶をする。

フレ「このゲーム上手いんだね」

垣根「お前が弱いんだよ。それにしてもゲーセンに一人とは寂しい女だな」

フレ「一人じゃないし!」

垣根「へー」

フレ「アンタは一人なの?」

垣根「一人だからお前に話しかけてるんだけど」

フレ「ナンパ?」

垣根「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」

フレ「意味分からないって訳よー」

フレンダの元気そうな姿を見て垣根はホッとする。
アイテムの問題に自分が干渉するつもりはないけれど、
スクールの隠れ家に居た彼女が裏切り者扱いされる可能性は十分にあった。
裏切り者扱いされたらまず処分されるだろう。
そのような事態にならなくて本当に良かった。
愛生ちゃんの魅力を分かる人間は一人でも多い方がいい。

垣根「あの後どうなったわけ?」

フレ「滝壺が迎えに来てくれたの!それに麦野がスクールを見逃すって言ってたから超驚いたってわけよ!」

垣根「……へぇ」

おかえりラジオのリスナーであり、アイテムの要である少女を思い出す。
アイテムのリーダーのおっかない女を説得したのは彼女だろう。
どうやって説得したかは知らないけれど、滝壺理后がただ者ではないことは確かだ。


フレ「私はスクールに人質にされたって嘘吐いたわけよ」

垣根「お前にその価値があると思えないけど」

フレ「私もそう思うけどね。でもお咎め無しだったから良いって訳よ!」

垣根「良かったな」

フレ「それに、麦野も絹旗も無事だったし。手加減してくれてたんだね」

垣根「…………」

フレ「二人を殺さなかった理由は分からないけど、それには感謝してるって訳よ。ありがとう」

フレンダは笑いながら頭を下げる。
殺さなかったけれど、あの二人に暴力を加えたことは事実だ。感謝される筋合いはない。
でも人から感謝されるのは悪い気分ではなかった。

フレ「でもね、あの二人けっこう怒ってるみたい」

垣根「まぁ、そうだろうな。俺なんかと話してる所を見られたらヤバいんじゃねぇの?」

フレ「平気だよ。だって買い物してるから、今は居な―――」

フレンダが言いかけると垣根に向かって自動販売機が飛んできた。
ゲーセン内に居た客は、叫びながら店を飛び出して行った。

フレ「……ヤバ」

フレンダの顔が真っ青になる。
飛んできた自動販売機を防いだ垣根は、出入り口に居る小柄な少女に目を向けた。
少女は殺意の籠った目で睨みつけてくる。

絹旗「フレンダから超離れて下さいゲス野郎」


垣根を睨みつけたまま絹旗が言う。
フレンダはますます真っ青になって硬直していた。
それはそうだろう。
スクールのリーダーと仲良くお喋りしている所を目撃されたら、裏切り者として処分されるに違いないからだ。
垣根はフレンダに“大丈夫だ”と小声で言うと、店の奥へと逃げて行った。

フレ「…………」

フレンダが茫然としていると、絹旗が小走りで駆け寄って来た。
背中をさすりながら“超大丈夫ですか?”と心配そうに言ってくる。

フレ「平気だよ。でも、こんな騒ぎ起こしたら麦野に怒られるんじゃないの?」

絹旗「麦野は未元物質を超追っています」

フレ「え……スクールは見逃すって……」

絹旗「超見逃しますよ。スクール、は」

フレ「……」

絹旗「今は向こうもこっちも超プライベートですから、仕返しても上からは何も言われませんよ」

フレ「そう、かもね……」

思ったよりも二人は怒っているようだ。
もし、自分が垣根と仲良く喋っていたことがバレたら、どうなるのだろうと想像して、身震いした。

絹旗「超平気ですか?こんなに震えて……やっぱり超怖かったですよね……」

心配そうな絹旗の顔を見て、フレンダの中に罪悪感が芽生える。
先ほど、垣根に自動販売機を投げたのは、自分のためだ。
垣根に何かされそうになったフレンダを助ける為に行ったことなのだ。

フレ「……」

心配してくれている二人を騙しているので泣きそうになった。
でも、真実を言ったらどうなるか分からない。
自分の身が可愛くて仲間を騙す自分が最低すぎて吐き気がする。

絹旗「いつまでもこうしてる訳には行きませんよ。麦野と超合流します」

フレンダは腕を引っ張られて、ゲーセンを後にした。

――――――――――――――――――――――――――

垣根「何だよ。抗争でも起こしたいのか?今はプライベートだからお断りなんだが」

麦野「そうじゃねーよ。一発殴らせろって言ってんだよチンピラ」

垣根「チンピラはテメェだろ」

ゲーセンの裏口から出た垣根を待ち受けていたのは麦野沈利だった。
先日のことに腹を立てているらしく、怒りに歪んだ顔は恐ろしかった。

垣根(やべぇな…あんまり騒ぎは起こしたくねぇ…)

怒らなかったとしても派手に暴れれば、それだけで外出を許されなくなってしまうかもしれない。
しかし相手は自分より短気なレベル5だ。
相手にしたら、あの時のように建物が全倒壊するだろう。

絹旗「麦野!フレンダは超無事でした!」

麦野「そう。可愛い部下がチャラ男の毒牙にかからなくて安心だわ」

フレ「……」

フレンダは余計に罪悪感に苛まれた。
二人は心配をしてくれているのに、自分は二人に何も言ってない。
これでいいのか、という問いがフレンダを苦しませる。

垣根「おいおい、テメェらが頑張っても俺には勝てないって分かってるだろ?」

麦野「うっせぇんだよクズ」


余裕そうな態度をしているが、垣根はかなり焦っていた。
争わずに切り抜けたい。
しかし良い方法が思い付かない。

麦野「大体フレンダに絡んできたのはテメェだろうが。スクールのリーダー様がアイテムの構成員に接触なんて、抗争を起したいのはテメェなんじゃねぇの?」

垣根「ただのナンパだよ。ソイツはかなり嫌がってたけどな」

絹旗「無理矢理ですか。超キモいです。最低ですね」

フレ「……」

フレンダは気付いた。
自分のために行動しているのはアイテムの二人だけではない。
垣根もフレンダを庇っているのだ。
自分と関わりを持っていることがバレたらフレンダが殺されると分かっているから、本当のことを言わないのだろう。
この場に居る三人は、全員フレンダを心配している。
それなのに、自分は――――

フレ「ちょ、ちょっと待って!」

大声で叫んだフレンダを三人とも驚いた顔で見た。
フレンダは一生懸命に震えた足で体を支える。
怖いけど、これ以上黙っているわけにはいかない。

フレ「あのね、二人に聞いて貰いたいことがあるの」

そう言うと垣根が呆れたようにため息をついた。
もう引き返すことはできない。
驚いた顔してる二人に真実を話そうとフレンダは口を開いた。


数十分後。
フレンダが全て話し終えると、二人はさらに驚いた顔をした。
麦野はすぐに怒鳴りつけてくると思ったけど、黙って俯いていた。

絹旗「超信じられないです。それってフレンダは私達を超騙したってことですよね?」

フレ「……ごめん」

絹旗「声優の話題で盛り上がって和気あいあいとしてたのも超信じられないです。というか超意味が分からないです」

垣根「お子様は理解力が無くて駄目だな。だから背も胸も小さいんだよ」

絹旗「超死んで下さい」

フレンダは麦野を見た。
彼女は俯いていて顔を見えない。
自分で自分の腕を押さえて震えている。
そんな麦野を見てフレンダは青ざめた。

フレ(ヤバい!麦野、超怒ってる!!!……でも、当たり前だよね)

ゆっくりと麦野が顔をあげる。
眉間に皺が寄り不機嫌そうな麦野と目が合い、フレンダは失禁しそうになった。

麦野「今のことは本当?アイテムの情報を喋って、豊崎愛生の話で盛り上がって、
   このクズに見逃して貰って、スクールの隠れ家でラジオ聴いてたってのは」

フレンダは恐怖のあまり喋れなくて頷くことしかできなかった。
頷くフレンダを見て麦野は短いため息をついた。
少しの間目を瞑り、考え事をしているようだ。

麦野「……ふざけんな」

それは女とは思えないほどに低くドスのきいた声だった。
目を開いた麦野の表情は鬼のようで、フレンダは人生の終わりを覚悟した。

麦野「なんだよぉオイ。今のクソな話は……」

絹旗は諦めたように目をそらした。
こうなっては、彼女を止める術はない。
垣根は、いつ攻撃が飛んできてもいいように備えていた。

緊迫した雰囲気のなか、麦野は垣根に向かって叫んだ。




麦野「本当にふざけてんじゃねぇぞ!!!!ぶっ殺すぞカス野郎が!!!!!!!!!!!!」


麦野「なんで、テメェみたいなキモいチャラ男が愛生ちゃんファンなんだよぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」


麦野「きめぇんだよ!!!愛生ちゃんが汚れんだろうが!!!!!今すぐファンやめろ短小包茎野郎!!!!!!!」













垣根「」

絹旗「」

フレ「」

麦野「何よその顔」


麦野の絶叫はその場に居た全員の思考をショートさせた。

さけのんェ……

ここまでです。
読んでくれてありがとうございます。

豊崎さんには幸せになって欲しいですね。
ちなみにこのスレの垣根は熱愛発覚したら冷蔵庫になると思います。
よってこのスレでは熱愛ネタはやりません。



乙!

乙。
結局、あいなまにはTomと幸せになってほしいって訳よ

さけのんはやっぱりむぎのんだったか
それにしても学園都市のとよさ菌感染率すさまじいなww
もしかしてレベル5全員なにかしらの声優オタだったりしてww

もうやだこの暗部

747 名無しさん@お腹いっぱい。 sage New! 2011/10/13(木) 18:02:29.15 ID:PpdduPVY0
<速報>同棲確定

例の住所に、豊崎宛て・大嶋宛てに
それぞれ特定記録で郵便物(裏面白紙のハガキ)を送った。
本日、無事配達されているようだ。
なお、部屋番号は書かずに送ったので、
記載された番号の郵便受けに適当に投函したということはない。
郵便事業会社が氏名を照合して配達したと思われる。
よって、あのマンションの豊崎愛生という名前の人宛てに、
過去に郵便物が届いたことがある、ということが確定した。
某アフィブログでは書留書留言っていたが、書留じゃないから、特定記録だから。
そしてタイーホタイーホうるさいのだが、「郵便物を送った罪」とかないよな?
既に住居は割れてるし、そもそも自分は住所を公開してないし。(3枚目)
ちょっと怖くなってきたぜww
で、怖くなったから番号はまだ伏せとくけど、
やっぱ公開しないと証拠にならないかなあ?

で、自分的には複雑な心境なんだけど、ここの流れ的には大勝利でいいの?

>>439
マジキメえな

         _、_
      .(;^ω^)\

      | \ / \√|    
      ( ヽ√| ` ̄
      ノ>ノ  ̄
      レレ   ((


さすがの俺でもそれは引くわ
>>191の頃の初春の心境だぜ 皮肉にも

俺豊崎ファンだけど祝福してやれよって思うわ。声豚怖い

そういう頭おかしい奴らが1番金落とす商売だからね
恋愛しない事も給料の内と思って自分の身を守らないと
本名とか迂闊杉

一般人→誰それ

アニオタ→初春の人同棲してたのかー 唯ペロペロ

アンチ(元信者)声豚→裏切られたCD壊すお 住所も特定するお
              もう声聞きたくない耳に精子がかかる 声あてたキャラ全部ビッチだお

板違いだろ

>>443
ほとんどは真っ当なファンだよ
皆祝福してる
一部のキチガイでファンを語らないで欲しい

T/o/m

>>439
がいきち

*・゜゚・ *:.。..。.:*・゜*・゜゚・ *:.。..。.:*・゜゚・* ・ ・*:.。. .。.:*・゜゚・**・゜゚・ *:.。..。.:*・
 ○
(( (ヽヽ  私が作品に対しての想いや取り組み方を尊敬し
 >_| ̄|○ プライベートでの悩み事も安心して相談ができた方です
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アイマスカフェでゆきぽのミルクカルピスが飲めるらしいぞ一方さん

>>1です
12月中旬くらいまでは投下できそうにありません
でも完結はさせます
すいません


待ってる


絹旗「という訳でファミレスに超来ました」

フレ「誰に説明してるの」

麦野「鮭弁まだかにゃ~ん」

カランカラーン

垣根「おい、買ってきたぞ」

麦野「おっせぇんだよカスが。第2位のくせに使えない男ね」

垣根「4位の知能じゃお礼も言えないのか。哀れだな」

麦野「死ねクズ。さっさと何か頼め」

絹旗「超お腹すきましたね。丁度お昼ですし、未元物質も何か超選んで下さい。まとめてオーダーするので超早く決めて下さいノロマ」

垣根「何この扱い」

フレ「久しぶりにパスタでも食べようかなー」

絹旗「私も超同じのにします」

垣根「じゃあ俺もそれでいいや」

麦野「却下」

垣根「は?」

麦野「うちの部下にテメェみたいな粗大ゴミと同じモン食わせる訳にはいかないの。変えろ」

垣根「……えっと、じゃあ、肉とライスで」

絹腹「超頼んでおきますので、未元物質は私とフレンダと麦野のジュースを超取って来てください」ピンポーン

垣根「…………パシリかよ」


―数十分後

麦野「はぁ……ていうかアンタ第2位のくせに声オタとか恥ずかしくないの?世間体ってのを気にしなさいよ」モグモグ

垣根「テメェもだろ」モグモグ

麦野「鮭弁はおいしいなぁ」モグモグ

垣根「無視すんな」モグモグ

絹旗「さっきの超殺伐とした雰囲気はどこにいったんでしょうか」モグモグ

フレ「さぁ?」モグモグ

垣根「つーかテメェみたいな年増ビッチが愛生ちゃんを好きなんて意外だな」

垣根「あだだだだだだ。足踏むな!いってぇよ!!」

麦野「次はねぇぞ」

垣根「すいません」

絹旗「そうですよ麦野。私も超意外です。麦野が声優を超好きだなんて」

フレ「私もかなり意外ってわけよ」

麦野「……そうね。声優を好きだなんて私のキャラじゃないわね」

麦野は箸を置くと、豊崎愛生と自分の出会いを話し始めた。


――――――――――――――――――――――――――――――


麦野「はぁ……つっかれた……」

今日はとある施設の防衛が仕事だった。
ターゲットに勝ち逃げされたうえ、服も髪もボロボロで気分は最低に沈んでいた。
早く湯船に浸かりたかったけれど、帰って来たばかりで暖かい風呂など沸いているはずがない。

麦野(一人暮らしってのはこういう時に不便ね。誰も用意なんてしてくれないし)

破れたストッキングを脱ぎ、ゴミ箱に入れた。
風呂を沸かすためにボタンを押してからソファに座る。
柔らかい感触は疲れた体に優しかったけれど、静まりかえった部屋は居心地が悪い。

麦野(テレビでもつけるか。……でもこの時間じゃ、くだらないバラエティしかやってないのよね)

ため息をついて髪をかき上げる。
風呂が沸く僅かな時間が暇でしょうがない。

ふと、少し前に買ったプレイヤーが目に入った。
そういえばこれでラジオも聴けた筈だ。
いつもはラジオなんか聴かないけれど、なんとく手を伸ばしてみる。


ラジオ『背伸び寝転びクッション完備』

ラジオ『あなたに届けるお喋りセラピー』

ラジオ『はじまるよっ!』

ラジオ『豊崎愛生のおかえりらじお』

なんだこれは。
たまたまつけた局からは、優しいBGMと明るい女性の声が流れてきた。
くだらない、と思い番組を変えようと思ったけれど少しの間くらいいいかと思い直す。

ラジオ『みなさん、おかえりなさい。豊崎愛生です』

ラジオ『さぁ、この番組はお疲れモードで帰宅した貴方を私、豊崎愛生がおかえり!っとお出迎え』

ラジオ『心通わすほっこりトークで、溜まった疲れをゆる~りとほぐしてしまおうというリアルタイムプログラムです』

麦野(おかえり、か……)

一人暮らしの麦野はそんな言葉を滅多に使わない。
同居人が居ても使うかは妖しいが。

麦野(…………おかえりが冒頭のあいさつなんて変なラジオ。ちょっと聴いてみるか)

甘ったるい声だけれどはっきりと喋り、トーク全体のテンポも良くてなかなか好印象だった。
番組の途中で風呂が沸いたが、ラジオが終わるまで動く気が起きなかった。

麦野(……毎週、木曜日。次も暇だったら聴いてもいいわね)


それから毎週木曜日は知らない女性のラジオを聴くようになった。
ラジオの中でよく分からない単語が出て来て、調べてみたらアニメのタイトルだと分かった。
そこで初めて豊崎愛生は声優だと知る。

麦野(ふーん……最近の声優って可愛いしお洒落なのね)

声優は声が良く顔が悪いという古いイメージしか持っていなかった麦野にとって豊崎愛生の存在は新鮮だった。
それまで漫画もアニメも興味なかったけれど、少しだけ見るようになった。
ろくに練習しない軽音楽部員の日常を描いたアニメは、仕事での嫌な気分を忘れさせてくれた。

麦野「……でも、これってヤバくない?」

声優のラジオを聞いて深夜アニメを見る。
認めたくはないけれど、オタクという部類にかなり近づいてしまっている。
もし仲間にバレたらリーダーとしての威厳が無くなってしまうだろう。
それだけは避けなければ。
絶対にバレてはいけない。

麦野は今まで以上に外見に気を使い、オタクまがいの趣味を持っていることをカムフラージュした。


―――――――――――――――――――――――――

麦野「というわけよ。パックしながら聴くラジオは最高だわ」

垣根「よく分かってるじゃねぇか」

麦野「つーかテメェのせいでこの二人にバレたじゃねぇかよ。責任とって殺されろ」

垣根「はぁ!?意味分からねぇぞ!テメェが勝手に自爆したんだろうが!」

麦野「あ?テメェのせいだろハゲが!」

垣根「ハゲじゃねぇよ。それに俺のせいじゃない」

絹旗「……」

フレ「……」

麦野「ごめんね。自分らのリーダーがオタクだなんて。気持ち悪いし格好つかないでしょ?」

フレ「そんなことないってわけよ!」

絹旗「そうですよ!ただ、超意外すぎて言葉が出なかっただけです!」

麦野「……本当に?」

フレ「本当に!何が好きでも麦野は麦野だよ!!」

絹旗「気持ち悪くなんて超ないですよ。だって、麦野ですから」

麦野「……ありがとう」

垣根「なんだこの雰囲気」

絹旗「でも2位は超キモイです。超浜面みたいです」

垣根「あ?」

麦野「確かに。テメェが愛生ちゃんオカズに抜いてると思うと吐き気がするわ」

垣根「してねぇよ!!!」


麦野「はぁ……本当に最悪よ……」

垣根「だから抜いてねぇって言ってんだろ」

麦野「その話はもうしてねぇよ。いつまでも下のこと考えてんじゃねぇぞ糞野郎」

垣根「……テメェ」

フレ「何が最悪なの?」

絹旗「2位ですか?そうですよね超最悪ですよね。私も超同意です」

麦野「それもだけど、違うわよ」

垣根「お前ら素直すぎだ」

麦野「……こないだのね、ラジオを聴き逃しちゃったのよ」

フレ「あちゃー…楽しみにしてるものを逃すなんてショックってわけよ」

麦野「おい糞」

垣根「糞だけで誰を呼んでるか分かるのが嫌だな」

絹旗「分かるってことは自分が超糞だっていう自覚が超あるからですよ」

垣根「超超うるせぇぞ。ミニスカート穿いてるくせに色気が全くないチビガキ」

絹旗「な!?」

麦野「おい無視してんじゃねぇぞ」ガン

垣根「いってぇ!蹴るな!」


麦野「ねぇ、こないだの放送録音してない?」

垣根「……してるけど」

麦野「アンタに頭下げるなんて死ぬほど嫌だけど、下げるから貸して」

垣根「全然人に物を頼む態度じゃねぇな」

麦野「…………オネガイシマス」

垣根「心が籠ってねぇ」

麦野「おい!!!テメェいい加減にしろぉぉぉぉ!!!
こっちが下手に出りゃいい気になりやがってよぉぉぉぉぉぉぉォォォォォォォ!!!」ガタッ

垣根「大声出すな!そもそもお前がいつ下手に出てたんだよ!?」

フレ「凄い注目されてる…」

絹旗「超仕方ないですよ」

麦野「……いやなら、いいわよ」

垣根「ばーか」

麦野「あ?」ギロ

垣根「怖いから睨むな。別に頭なんか下げなくても貸してやるよ」

麦野「え」

垣根「テメェは気に喰わないけど、愛生ちゃん好きなら助け合わないとな」

麦野「……アンタ」

垣根「礼はいらねぇよ。その代わり、ちゃんと愛生ちゃんを応援しろよ」

麦野「分かってるわよ」

絹旗「麦野、超良かったですね!」ニコ

麦野「…………うん」ニコ

垣根(やっぱり大人しければすげぇ美人だよなコイツ)

麦野「糞野郎でも使えるときがあるのね。糞だけど」

垣根(……………前言撤回)

ここまでです。
間をあけて本当に申し訳ありません。
読んでくれてありがとうございます。

乙です。声優萌えって、声に萌えてるの? 何か不思議だな。

あけましておめでとう! 再開するの待ってたぜ!

安定の面白さww
乙!

いや~落ちるのかと思って心配してた。
頑張ってね、期待してるし

乙。
一ヶ月以上空いてたのかな……

このスレ面白ーいぞ☆
続き待ってます

そろそろ生存報告でも

マダー?

生存報告だけでもクレー

作者の書き込み2ヶ月なし・・・
残念ながら削除対象か

どうやら同棲騒動で>>1の心も折れてしまってたか

なんか戻ってきそうな気がするから、積極的に削除依頼は出さないことにする

頼む早急に生存報告だけでもくれー!

生存報告してええええ!!

無事か!?生存報告してくれずっと待ってる

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