掘裕子「見てください、プロデューサー!」 モバP「忙しいから後でな」 (41)


裕子「いや、本当に見て欲しいんですよ」

P「今忙しいんだよ。来週のライブを成功させなきゃいけないんだ」

裕子「ちらっと、ちらっとで良いのでこっちを見ましょう」

P「分かった、分かった。まあ、どうせスプーンが云々——」チラッ

裕子「どうですか!」

P「あー……スプーンが浮いてるな」



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裕子「え、他に感想はないんですか。今プロデューサーは、超能力を目の当たりにしてるんですよ!」

P「どうせピアノ線か何かで吊るしてるんだろ? 悪いが手品の披露は後にしてくれ」

裕子「違いますよ。これは私の超能力です」

P「はいはい。さすがはサイキックアイドルの裕子だな」

裕子「う、うう……なら、これでどうですか!」

P「どうって何が——ぎゃ、俺のペンが宙に!」

裕子「これで信じてくれますよねっ」

P「え、お、お前、これを本当に裕子が……」

裕子「そうですよ。さあさあ、今度こそ信じてくれたでしょう!」

P「……ああ、信じたよ。だからペンを下ろしてくれ。これじゃあ仕事ができない」

裕子「あ、すいません。下ろせないんです」

P「は?」



裕子「そ、その……実はついさっきこの能力を覚えたばかりで……」

P「物を浮かせることはできるが、下ろせない、と」

裕子「……はい」

P「まったく、はた迷惑なエスパーだな……」

P(一応、ペンに触ってみるか)ツンツン

P「——って、あれ? これ普通に取れるじゃないか」ヒョイ

裕子「え、そうなんですか」

P「本当に浮いてるだけなんだな。しかも、一回摘んだら浮かなくなったし」

裕子「ならこのスプーンも……本当だ、簡単に取れちゃう」

P「ある程度の力が加わると、浮かなくなるらしいな」

裕子「で、でも、これも立派な超能力ですから」

P「……しかし、見たところ浮かせることしかできないんだろ?」

裕子「う」



P「スプーンとかペンとか、小さいものばかり浮かせてるし、大きいものは対象にできないとか」

裕子「うう」

P「ちょっと力を入れたら能力も解けるみたいだし、正直——微妙」

裕子「ううう、プロデューサーの馬鹿、一般人、非サイキッカー!」タッタッタ

P「あ、おい裕子! ……さすがにからかい過ぎたか」

P(にしても、微妙とはいえ、あの能力は凄いなぁ。アイドルとしては良い個性だ)

P(おっと、まずは来週のライブだったな。新しい子のライブだし、成功させなきゃ……)

神崎蘭子「煩わしい太陽ね!」(おはようございます!)

P「おはよう、蘭子」



蘭子「我が下僕よ、しかと目に焼き付けるが良い」(あ、ちょっと見てください、プロデューサーさん)

P「ん、蘭子もか。悪いが今忙しくてな……」

蘭子「いたずらに時を費やすことはない」(少し、少しで良いですから)

P「……仕方ないな、少しだぞ?」

蘭子「それでこそ、我が下僕だ!」(ありがとうございます、プロデューサー!)



蘭子「黒く、深く、何者をも寄せつけぬもの。滅びの誘いをその身に宿し、呼び声に応えよ」

P(……なんの詠唱してんの?)

蘭子「闇よ、永久の限りを尽くし、その姿を我にさらけ出せ——」

蘭子「魂の欠片!」ポンッ

P「お、おお!?」

P(可愛らしい擬音と共に、黒い何かがフワフワと!)

蘭子「どうだ、下僕よ」(どうですか、プロデューサー)

P「よく分からんが、すごいな……」

蘭子「えへへ」



P「それで、蘭子。このフワフワしたのって何なんだ?」

蘭子「我が魂の欠片よ」

P「いや、すまん。訳せないんだが」

蘭子「わ、我が魂の欠片だ。それ以外を知る術は無い」(ご、ごめんなさい、私もよく分からないんです)

P「……もしかしてお前、この能力をついさっき身につけたんじゃ」

蘭子「ククク……その通りだ。下僕よ!」(よく分かりましたね、プロデューサー!)

P(蘭子も裕子と同じなのかよ)



P(にしても、裕子の微妙超能力と違って、これは本当によく分からないな)ジー

P(蘭子の詠唱で出現したかと思ったら、そのままゆっくりと地面に落ちただけだし)ジー

P(大きさは——ソフトボールくらいか。とりあえず、触ってみよう)スゥー

P「あれ、触れない。通り抜けるだけだ。地面には着いてるのに、なんでだ?」」

蘭子「ならば我も……真のようね」(私も……わっ、本当だ)

P「不思議な物体だな……」

蘭子「面妖な」

P「キャラが違うぞ」



P「ちなみに、この黒いのに名前はあるのか」

蘭子「『常闇の欠片』の名を授けたわ」(『光一つ通さない場所のカケラ』っていう名前をつけましたよ)

P「長いから、縮めて『ポケモン』にしようか」

蘭子「いかなる真名から選択した!?」(どこを縮めたんですか!)

P「じゃあ『やみのま』で」

蘭子「……不服だが、仕方あるまい」(まあ、なんでも、いいですけれど)

P(765のアイドルに影響でも受けたのかな)



P「とりあえず、この『やみのま』はどうやって消すんだ?」

蘭子「古より、時は多くのもを葬ってきた」(時間が経ったら消えるんじゃないでしょうか)

P「裕子の超能力に比べると、なんか処理に困るな」

蘭子「人の持たぬ力を持つ者もか」(裕子さんもこんな能力を?)

P「あいつのは、蘭子のと違って微妙なんだけどな」



裕子「誰の超能力が微妙ですか!」バッ

蘭子「わ、わわ」

P「なんだ、いたのか裕子」

裕子「なにかフォローがあると思って、そこの影でずっと待ってたんですよ」

P「だっていつものことだし」

裕子「それが担当サイキッカーに言う台詞ですかっ」

P「俺が担当してるのはアイドルだよ」



裕子「そんなことより、私と蘭子ちゃんのときで、対応に差がありますよね!?」

P「そうかな」

裕子「そうですよ。しかも私の超能力を微妙とか……」

P「実際微妙じゃないか」

裕子「むぐぐ……ま、まっくろくろすけに負けてたまるかぁ!」

蘭子「我が魂は『常闇の欠片』よ!」(私の能力の名前は『やみのま』ですよ!)



P「ぬわっ」

P(裕子め、俺の湯のみを浮かせやがった)

蘭子「す、凄いです、裕子さん! ——あっ」(さすがは瞳を持つ者だ! ——あっ)

裕子「どうですか、蘭子ちゃんも素に戻ってしまうくらいの超能力ですよ」

P「そりゃ初めて見れば驚くだろうが、俺はもう二度目だからなぁ」

P(しかも湯のみが宙に浮いたまま揺れてるし……。このままだと中のお茶がこぼれそうだ)

蘭子「干渉は受けつけるのか」(触ってみて良いですか)ソォー

P「あ、止めろ!」

蘭子「ふぇ!?」トン

ガチャッ、バチャッ!



P「お茶がこぼれてしまったな」

蘭子「す、すいません……」

P「良いんだよ。裕子の超能力が微妙なのが悪いんだ」

裕子「浮かせたのは謝りますけど、私の超能力を馬鹿にしないでください!」

P「はいはい、すまなかったな」

P(湯のみは……よし、割れてないな。どれ、こぼれたお茶を拭かなきゃな)

P「あれ? 床にお茶が広がってない……」

蘭子「我は耳にしたが……」(私はこぼれた音を聞きましたけど……)

裕子「もしや、私の新しい超能力が!」

P「こぼれたお茶を消す能力って、使えて嬉しいのか」



蘭子「『常闇の欠片』の仕業かもしれぬな」(『やみのま』のおかげかもしれないですよ)

P「え、なんでだ?」

蘭子「雫の落ちし場に、『常闇の欠片』が存在していたからよ」(お茶がこぼれた場所に、『やみのま』があったので)

P「なるほど、『やみのま』がお茶を吸ったのか!」

P「そうなると、『やみのま』はお茶を一滴も残さずに吸いきってしまう物体なんだな」

裕子「す、凄いかもしれませんが、私の能力と比べると使い勝手が悪いですよね!」

P「え」

裕子「なんですかっ」

P「だって、蘭子の『やみのま』の方が、世間的には役立ちそうだし」

裕子「な、ななな」

P「やっぱり裕子の能力は見劣りするよなぁ」



蘭子「待て、人の持たぬ力を持つ者も、ねぎらうべきではないか」(もう、裕子さんをいじめちゃ駄目ですよ?)

裕子「蘭子ちゃん……! そうです、プロデューサーはサイキッカーをもっと大切に扱うべきですよ!」

P「あー……うん、悪かったよ、裕子。お前の反応が面白いから、ついな」

裕子「許してあげますから、今度一緒にスプーンを曲げましょうね」

P「分かった。それまでに握力を鍛えておくよ」

裕子「超能力に目覚めてくださいよ!」

蘭子「瞳は選ばれし者しか持たぬぞ」(プロデューサーにそこまでを求めるのは酷ですよ)



P「——って、そうだ、握力を鍛える暇なんてないんだった。早く仕事しないと」

裕子「仕事なんて、超能力に目覚めれば一発ですよっ」

P「お前を見てると、とてもそうとは思えないんだけど」

蘭子「我はどうだ」

P「『やみのま』はお茶を吸うだけだしなぁ……じゃなくて、そろそろレッスンの時間だろ」

裕子「安心してください。レッスン場までのテレポートを覚えれば一発で」

P「覚えてないんだから早く行け」



P(やっと静かになったな……)

P(楽しかったが、ずいぶん時間を使ってしまった。早く仕事にとりかかろう)

P「と、そうえばまだ『やみのま』があるんだよな」

P「……これって、お茶以外も吸うのだろうか」

P(ちょっとだけ試してみよう)



P「お、おお、ジュースも吸いやがったぞ、こいつ」

P「よしよし、次は砂糖水を注いでみよう——って、あれ?」

P(突然『やみのま』が消えてしまった。時計は……ふむ、一時間くらいで消えてしまうものなのか)

白菊ほたる「あの、なにをしてるんですか。プロデューサーさん」

P「おう、おはよう、ほたる」

ほたる「おはようございます。……それで、その、プロデューサーさんはいったいなにを?」

P「夏休みの宿題だよ」

ほたる「そ、そうですか……」




P「すまん、冗談だ。まあ、ちょっとした実験というか」

P(あ、そうだ、来週にほたるのライブがあるんだった)

P「こんなことしてる場合じゃない——と、しまった」バシャ

P「ぎゃ、書類に水が!」

ガチャ

裕子「プロデューサー、トレーナーさんが来てないんですけど」

P「しかも面倒くさいのが」

裕子「出会い頭になんですか!」

ほたる「すいません、プロデューサーさん……私の不幸のせいで……」

裕子「私が来たことは不幸だとでも!?」

ほたる「あ、そういうわけでは」



裕子「——って、ほたるちゃんだ。そうだ、ほたるちゃんも見る? 私の超能力」

ほたる「スプーン曲げなら……前に二度三度見せてもらいましたよ」

裕子「ノンノンノン、なんと私は新しい能力を手に入れたのよ。というわけで、ご覧あれっ!」

P「あ、お前また湯のみを」

ほたる「すごいです、湯のみがどんどん上に……!」

パリン!

裕子「わわわ、浮かせ過ぎた!?」

P(げぇ、照明を割りやがった!)

ほたる「……すいません。私が見たいなんて言わなければ」

P「安心しろ、ほたる。お前は見たいなんて一言も言ってないぞ」



ガチャ

蘭子「我としたことが、休息の時だというのを忘れて——如何した?」(今日はレッスンが休みなのを忘れて——あれ、どうしたんですか)

P「エスパーの被害にあってたところだよ」サッサッ

裕子「エスパーを農作物を荒らす獣みたいに言うのは止めてください!」

P「似たようなもんだろう」サッサッ

裕子「似て非なるものですよ」

P「似てはいるんだな」サッサッ

裕子「というか、割れた照明の片付けくらい、私にやらせてくださいっ」

P「お前はアイドルだぞ? 怪我したらどうするんだ」サッサッ

ほたる「そうです。こうなったのも私の不幸のせいかもしれませんし、ここは私が……」

蘭子「幸運を掴めぬ者も同業ではないか」(ほたるちゃんもアイドルじゃないですか)

裕子「そうだ、私の超能力で照明の破片を浮かせて」

P「俺を切り刻む?」

裕子「掃除の手伝いをするんです!」



P「あ、蘭子、『やみのま』は結構凄いぞ。どうやらお茶以外にも水分なら吸えるらしい」

蘭子「クックック、さすがは我の魂ね」

裕子「私の話を遮ってする話じゃありませんよね?」

P「裕子と話してたら、掃除が進まないし」

裕子「その掃除を進めるために協力するって言ってるんですよ!」

P「まあ、もう破片を集め終わったんだけどな」

P「というわけで、これを処理してくるよ」タッタッタ

裕子「く、くぅ……プロデューサーめ、サイキッカーを馬鹿にして……!」

ほたる「プロデューサーさんは、サイキッカーを馬鹿にしてるわけではないと思いますけど……」

蘭子「幸運を掴めぬ者よ、それ以上は言ってはならぬ」



裕子「ところで、ほたるちゃんは今日レッスンの予定じゃなかったよね? プロデューサーに用事でもあった?」

ほたる「はい……来週のライブのことで、相談したくて」

裕子「プロデューサーの言ってたライブって、ほたるちゃんのだったんだ」

ほたる「そうなんです。それに、その……初めてのライブなんですよ」

蘭子「幸運を持たぬ者よ、闇よりの祝福を捧げようぞ!」(おめでとう、ほたるちゃん!)

裕子「初ライブかぁ、超能力が必要なときはいつでも呼んでねっ」

ほたる「……ありがとうございます。良かったら、お二人で見に来てくださいね」ニコ

裕子「もちろん行くよ。来週までにテレポートを覚えて行っちゃうーノ!」

蘭子「我は鋼鉄の騎馬を用い参上しよう」(私は普通にタクシーで行きますね)

裕子「蘭子ちゃん、そこは一緒に能力に目覚めようよ!」

蘭子「魂ならば『常闇の欠片』だけで充分だ」(超能力なら『やみのま』だけで充分です)

ほたる「ふふふ……」



少し経って

P「悪い悪い、ゴミ袋が見つからなくてな。あれ、裕子と蘭子は?」

ほたる「テレポートを身につけてくる……らしいです」

P「なにをしてるんだ、あいつら」

ほたる「……プロデューサーさん」

P「なんだ?」

ほたる「私は前の、前の前の、そのまた前のプロダクションを含めて……一回もライブが出来なかったんです」

P「ああ、来週のライブが初めてなんだろう」

ほたる「どのプロダクションでのライブも、始まる前に機器が故障したり、スタッフさんが怪我をしたり、プロダクション自体が潰れてしまったり」

ほたる「どれも私の不幸のせいで、一度も開催できなかったんです……」

P「そうか」

ほたる「それに来週のライブ、裕子さんと蘭子さんが来てくれるんですよ」

P「良い奴らだよ、本当に」



ほたる「不幸になるかもしれないのに……あのお二人は、私と仲良くしてくれます」

ほたる「プロデューサーさん、私、頑張ります。とっても頑張りますから、だから」

ほたる「——来週のライブを、絶対に成功させましょう」ニコ

P「もちろんだ! うちのアイドルを、不幸になんかさせないからな」 

ほたる「はい……!」






『続いての天気予報です。来週の天気は雨風が強く、所により雷も——』





ライブ当日

裕子「おお、開催まで一時間近くあるのに、お客さんが多いねっ! もしかしたら、私のライブでくるお客さんと同じくらいいるかも」

蘭子「幸運を掴めぬ者は、前世での経歴があるからな」(ほたるちゃんには、前のプロダクションからの根強いファンがいますから)

ざわ……ざわざわ……

裕子「にしても、なんかざわついてるね。やっぱり、天気のせいかな」

蘭子「風吹きぶさむ中での戯れだが、行えるのかしら」(せっかくの屋外ライブなのに、大丈夫でしょうか)

裕子「このまま曇り空が続けば良いんだけど……」

ポツり

裕子「あ、雨粒っ!」



ザーザー

P「ライブまであと三十分、しかしこの雨では……」

P(経歴があるとはいえ、ほたるは新人アイドルだ。今回の規模のライブを延期して、もう一度行うのは厳しい)

P(なんとかならないものか)

ほたる「すいません、私の不幸のせいで……」

P「はっはっは、大丈夫だ。お前のせいじゃないし、きっとすぐに雨も上がるさ」

P(そうだ、きっと止むはずなんだ——)



ざわざわ、ざわざわ

蘭子「始まりの鐘の音が響かぬな」(ライブ、始まらないなぁ)

裕子「お客さんも、戸惑ってるよ」

蘭子「このまま時に流されてしまうのか」(このまま中止になっちゃうんでしょうか)

蘭子「幸運を掴めぬ者が、平常を保てれば良いが」(ほたるちゃん、がっかりするだろうなぁ)

裕子「……蘭子ちゃん」

「少し付き合ってくれるかなっ?」



蘭子「人の持たぬ力を持つ者よ、いったい何用なの?」(裕子さん、会場から離れてどうするんです?」

裕子「ほたるちゃんのライブを、成功させる手助けをするの!」

蘭子「……しかし、我らにできることなど」

裕子「なに言ってるの、蘭子ちゃん。私はサイキックアイドル、エスパーユッコ——」

裕子「出来ないことなんて、サイキッカーにはないんだっ!」



ほたる「プロデューサーさん、もう、止めましょう……」

P「なにを言ってるんだ、大丈夫だよ。もうすぐ雨だって」

ほたる「雨の中でファンの皆さんを待たせてたら……きっと、風邪をひいてしまいますよ」

P「まだライブ開始予定時刻から十分経っただけだ。アナウンスだってしたし、時間さえ経てば」

ほたる「プロデューサーさん!」

P「……お前の、初ライブなんだぞ」

ほたる「——良いんです。これ以上、ファンの皆さんを不幸にしたくありません」

ほたる「プロデューサーさんなら、きっとまた、ライブを企画してくれますよね……?」ニコ

P(雨さえ止めば……糞!)チラ

P「な」

P「く、雲が……」

ほたる「え?」



P「お、おおおお、雨雲がどんどん消えていってる!?」

P(なんで? いやいや、これは好機だ。雨脚も凄い勢いで弱くなっていってる)

P「ほたる、衣装の準備だ。メイクもすぐにしてもらえ!」

ほたる「は、はい」タッタッタ

P(しかし、いきなりどうして)

P「ん」

P(空に何か、小さい黒点みたいなものが幾つも)

P「——ああ、そうか。あいつらが」




ワーワー、ワーワー

ほたる「皆さん、私の不幸のせいで……とても待たせてしまって、すいません」

ほたる「でもその分、頑張ります……頑張りますから、それで……」

ほたる「皆さんを、幸福にしてみせます!」

ワァアアア!

ほたる(裕子さんと蘭子さん、どこかで見てくれてるかな)



裕子「サイキッカーの活躍で、ライブは大盛況だねっ」

蘭子「我も手助けをした甲斐があったというものよ」

裕子「蘭子ちゃんの……えっと、まっくろくろすけを浮かすことが出来て、本当に良かったよ」

蘭子「『常闇の欠片』だ! しかと刻みなさい……」(『やみのま』ですってば! ちゃんと憶えてください……)

裕子「まあまあ、良いじゃないの。さあ、ほたるちゃんの歌が始まるよっ!」




数日後

裕子「うう……どうして浮かばないの……」

P「ほたるのライブ以降、すっかりと能力がなくなったなぁ」

裕子「せっかく、せっかくのスプーン曲げ以外の能力が……」

P「いや、スプーン曲げも出来ないだろ」

ガチャ

池袋晶葉「おはよう、プロデューサー」

P「おう、おはよう」

晶葉「おや、裕子もいたのか。おはよう」

裕子「おっはよう! 今日こそは超能力強化装置を作ってくれるよねっ?」

P「胡散臭い名前の装置だな……」

晶葉「ふむ、似たような物なら作ったぞ」

P「え、マジで?」

晶葉「二週間ほど前に手慰みにな。まあ、強化というよりは超能力発現装置だったが」

P「発現装置?」

晶葉「詳しい説明を省くと、人を超能力に目覚めさせる装置だ」

P「また妙な物を作ったな」

P(ん、二週間前?)

晶葉「妙とはなんだ、妙とは。まあ、数日前の雷雨でショートしてしまったんだが」

P(ああ、それで裕子の超能力が)




晶葉「それまでは事務所の開発室で起動させておいたんだが、駄目だな。超能力なんて全く目覚めなかったよ」

P「いや待て、多分だが二人ほど目覚めたぞ」

晶葉「本当か! ふっふっふ、やはり私は天才だな!」

裕子「え、その目覚めた人って誰なんですか!」

P「お前と蘭子に決まってるだろう。二週間前なら、時期的にもぴったりだ」

裕子「そ、そんな……つまりあの超能力は、鍛錬の成果じゃなかったとでも!?」

P「そういうことになるな」

裕子「が、がーん」




裕子「晶葉ちゃん、お願いだからもう一度その装置を作って!」

晶葉「私はロボが作りたいんだ。悪いが、もう作る気はしないな」

裕子「そんなぁ……。あ、私のスプーン曲げを見たら、きっと考えも変わるよっ」

晶葉「裕子のスプーン曲げなら、前にも見せられたぞ。しかも曲がらなかった」

裕子「今回こそは成功するの!」

ガチャ

蘭子「煩わしい太陽ね!」(おはようございます!)

ほたる「おはようございます……」




裕子「二人共おはよう! よしよし、観客も揃ったことだし、エスパーユッコの超能力をお披露目しちゃうぞっ」

ほたる「ふふふ……成功すると良いですね……」ニコ

裕子「成功するよ、多分っ」

蘭子「た、多分?」

晶葉「その根拠はいったいどこからくるんだ……?」

裕子「——って、プロデューサー、なんで机に向かってるんですか!」

裕子「見てください、プロデューサー!」

P「忙しいから後でな」


                 おわり



裕子ちゃんのコメディを書いていたら、いつの間にか蘭子ちゃんとほたるちゃんも混じってシリアス気味になった

皆もエスパーユッコをよろしく

読んでくれた人ありがとござました

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