男「げ……」女「あ?」(12)

男「……あー」

男「今日も空が青い……」

男「……ってぇ……何も抵抗しなくなった相手に対して追い打ちかける事ねーじゃん」

男(入学して早くも一ヶ月。いじられキャラから一転、高校デビューで不良になったのはいいけども、何故俺はこうも先輩に目を付けられるんだ……)

男(毎日毎日、よく同じ人間ボコボコにして飽きねーよな、アイツらも)

男「っけ……一服しに行こ」

男(俺の秘密基地……ふふふ、貯水タンクの裏は誰も来ない、誰にもバレない最高の場所だぜ)

男(なんで他のヤツらがあんな絶好の場所を確保しねーのかが不思議なくらいだ。アホだアホ。俺以外のヤツなんてアホばっかだ)




男「げ……」

女「あ?」

男「……なんだテメェは?ココ、俺の場所なんだけど」

女「…………」スパー

男「煙草吸ってんじゃあねーぞコラ!」

女「うっさい」

男「おお?やんのか?言っとくが俺は女だろうが容赦はしねーぞ」

女「………」スー

男(ふ、ふふふ……俺に目を付けられたのが運の尽きだ!スカッとするならこの際誰だっていいかんな!!)

男「俺が上下っつーもん教えてやらぁあああああ!!!!」ダッ

女「………」グシグシ

男(まずはその整った顔を苦痛に歪ませる!)

女「ふっ」ゴガ

男「ぷぁ!?」グラ

女「軟弱もんが」ドッ

男「っごふ!」ドサ

女「ウチはキッチリ、最後の最後まで、吸うタイプやのに邪魔しよって」ゴ ドグ バキャ

男「ちょ…すいません、調子乗ってました、ごめんなさい!」

女「何が上下やねん、お前上履きの色一年やん。ウチは二年やタコ」

男「あ……ホントだ」

女「きっちり教えといたるわ、上下」ガシ

男「え、ちょ……両足掴んで……ちょっと、それはダメでしょ…?」

女「お前みたいな軟弱もんは玉無しで十分でしょ」

男「軟弱者でもちゃんと付いてるものは付いてるんすよ!」

女「少しはビシバシ鍛えとけや」グニ

男「ほぁ!……おふ、シャレにならないっす!お願いします!」

女「シャレでケンカは売らんことやな」ドム

男「」

女「よし……とりあえず財布から札と……お、煙草みっけ」ゴソゴソ

男「っ!……う、ぐ……くそ……また俺は」

男「……また負けたか……」

男「……」ゴソゴソ

男「……煙草がない」

男「ひっく、くそ……なんで俺ばっかこんな下手を掴まなきゃあいけねーんだ」ジワ

男「あんまりだ、クソ、チクショウ、俺だぞ?俺がこんな目に合って良いわけがねーだろ」ゴロゴロ

女「……」スパー

男「うく、ひぐ……」

女「だっさ」

男「!!アンタまだいたの?」

女「あ?」

男「あ、いえ、すみません、まだいらしたんですね、うす…………ってか!俺の煙草!!」

女「うっさいわ、小さいガキみたいに駄々こねてたくせに」スー

男「くそ、どうして俺は……お前みたいな女に負けなきゃいけねーんだ!」ダッ

女「よっ」ド

男「ぴぎゃ」

女「……はぁ……なんか可哀想になってきたわ、アンタ」

男「く……ちくしょ……」エグエグ

女「度胸は買ってやる、負けてもガンガン来るっていうのはね」

男「なんでそんな強いんだよぉ………」グス

女「そんな泣いてばっかでもしゃあないやろ………まぁ、ウチがちょっと面倒見たるわ」

男「え?」

女「アンタ、今日からウチの舎弟な」

男「舎弟……」

女(なんか、体のいいパシリができたと思えばいいや)

男(舎弟、舎弟………舎弟)ポワポワ

ワーワー

女『男!大丈夫か!』ドガ

男『へへ、これぐらい朝飯前っすよ』バキャ

女『ふっ、お前になら背中を預けられるな』

男『任せて下さい姉御!』

女『あと200人や!行くで!!』

男『はっ!血が滾ってきたぜぇえええええ!!!!』ダッ

ワーワー

___

男「……」ポワポワ

男「なんか!!舎弟ってカッコいいっすね!!」

女「はぁ?」

男「ぜひ!!ぜひ!ぜひ!!!俺を舎弟にして下さい!!!」

女「ま、まぁ・・・言い出したのウチやし、そのつもりやけど……」

男「姉御二年生だったんすね。制服とか結構新しいから同級生と間違えちゃいましたよ」

女「新しいのは当たり前やんな。ウチ、転校生やし」

男「ほほう、なるほどなるほど。そういうわけですか」

女「なんやねん…」

男「姉御は友達がいないって事っすね!」

女「しばくぞボケ。ってか、姉御ってやめや」

男「なんでっすか?いいじゃあないですか、姉御!この響き、流れるようなアクセント、姉御!」

女「なるほど、お前が目ーつけられてボコボコにされるんも分かるわ」

男「?」

女「ウザい」

男「」

女「金魚の糞もいいとこやんな。もうちょっとマトモになれるとしたら……」

男「したら……?」

女「表に出て歩くな醜男、とでも言っておこか」

男「酷い!あんまりだ!!」

女「安心しやーの、嘘やし。でもな、その身の丈に合ってないちんけなプライドは捨てた方がいいかもな」

男「プライド?」

女「自分は誰よりも上だとか、自分が強いだとか、そういうん」

男「別にそんなプライドなんて……」

女「ま、気づかん間はダメな子や。人間誰しも謙虚が一番やねん」

男「……謙虚」

女「せやねー、とりあえず……瓶コーラ」

男「はい?」

女「時間制限は5分やでー、間に合わんかったら失格や」

男「失格ってどういう事ですか!?」

女「一発ドーンといくで?」ギュ

男「行って参ります!」ダッ

男「一体なんなんだあの人は……」ダダダダダ

男(見るからに問題児だっていうのは分かる。だって髪の毛真っ赤だもん)

男(しっかしなぁ、問題児の右腕……ふへへ、なんかいい響きだ)

男「………」

男(あ、自己紹介し忘れてた)

男(けどまぁいいや、噂好きの馬鹿に聞けば問題ねーや)

男「ふぅ、おばちゃん………瓶コーラ、ください」キリ



女「……で?」

男「いや、売店に瓶コーラ売ってなかったんで……」

女「そこでなんでペプシ買ってきたん?」

男「いや、シュワシュワしたいのかと思いまして……」

女「ペプシはコーラちゃうわアホ!こんな偽もん誰が好き好むんじゃ!」

男「でも俺コカコーラよりもペプシの方が好きですし……」

女「………はぁ、仕方がない、我慢しといたる」

男「あ、うす」ス

女「瓶コーラは旧校舎のボイラー室横や、ってなんで転校生のウチが知っとってお前が知らんねん」カシュ

男「へー、旧校舎に………って旧校舎!!?」

女「っ…ゴホ!………急に大声出すなや!その陰気な眉毛むしり取ったろか!」

男「旧校舎って三年生の溜まり場じゃあないっすか!」

女「なんかあかんの?」

男「いや、姉御、二年生ですよね?」

女「そうやお?……ってか姉御はやめやーの」

男(そ、そうやお?)

男「あそこに下級生が近寄ったら、ただじゃあすまないんすよ、普通」

女「ふーん、そうなんや」シレ

男(…な、なんかよく分からないが、もしかしたら結構スゴい人なのか?)

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