P「美希、かけそば食べるか?」 (26)

美希「かけそば? 食べるの!」

P「じゃあ、はい」

美希「わーい」

P「冷めないうちにな」

美希「はいなの……って、ハニー?」

P「ん?」

美希「このおそば……具が入ってないの」

P「そりゃあ、かけそばだからな」

美希「えー」

美希「ミキ的には、もっとこう、えび天とか、かき揚げとかー」

P「じゃあ食べなくていいぞ」ヒョイッ

美希「あーん! 食べないとは言ってないの!」

P「じゃあ文句言うな」

美希「モンクってわけじゃないけど……」

P「……まあ、気持ちは分からんでもないけどな」

美希「でしょ? やっぱりおそばだけじゃ寂しいって思うな」

P「でもな美希。たまにはこういうシンプルなのもいいもんだぞ」

美希「うーん……ミキ的には、ちょっとシンプル過ぎるような気がするの」

P「まあとりあえず食べてみろって」

美希「わかったの。じゃあとりあえず一口……」チュゾゾッ

P「どうだ?」

美希「んー……うん! 美味しいの!」

P「だろ?」

美希「うん……確かにおそばとおつゆしかないんだけど、なぜだかすっごく美味しいの!」

P「具が無い分、そば本来の旨味が口いっぱいに広がるんだ」

美希「ふむ……ふむ……」ゾゾッ

P「こうやって、そばだけを食べることなんて今まであんまり無かっただろ?」

美希「確かに無かったの」

P「いわゆる天そばなんかだと、どうしても、上に載ってるえび天とかに目がいきがちだ」

美希「うん」

P「そばはそばで美味いんだが、あんまり印象には残りにくいよな」

美希「確かに、そんな気がするの」

P「でもな美希。天そばが天そばとして美味いのは、やっぱりそばがあるからなんだ」

美希「そうだね。おそばが無かったら、ただおつゆに浮いたえび天でしかないの」

P「そういう意味では、そばは華やかなえび天を支える屋台骨みたいなもんだな」

美希「あはっ。それ、なんかハニーみたいだね」

P「え? 俺?」

美希「うん。だってハニーがいなかったら、ミキ達アイドルはキラキラできないの」

P「なるほど。さしずめ美希達はえび天ってことか」

美希「そうそう。えび天のミキ達がキラキラできるのは、おそばのハニーがどっしりしっかり支えてくれてるからなの」

P「そんな風に思ってもらえるなら、プロデューサー冥利に尽きるってもんだな」

美希「きっとミキだけじゃなくて、他の皆もそう思ってるの」

P「それはありがたいことだな」

美希「ちゅるる……あ、もう無くなっちゃった。ねぇねぇハニー、もう一杯ちょうだいなの」

P「おう、いいぞ」

美希「えへへ……具が無いから、ぺろりと食べられちゃうの」

P「まあそれもかけそばの良いところだな。小腹が空いたときとかに、軽く食べられる」

美希「うんうん」

P「だからといって、あんまり食べ過ぎちゃ駄目だけどな。はいよ」コトッ

美希「えへへ……今日はレッスンいっぱい頑張ったから、これくれいヘーキなの!」

美希「ちゅるる……んふ、美味しいの」

P「……最初はあんなに不満そうだったのに」

美希「もー! そういうイジワル言わないでほしいの!」

P「はいはい」

美希「でもこのおそば、なんかこう……もちもちしてるね?」

P「ああ、それは多分、『芋そば』だからだな」

美希「いもそば? おいもが入ってるの?」

P「ああ。そば粉だけじゃなく、山芋を練り込んでつなぎとして使ってるんだ」

美希「ふーん。だからもちもちしてるんだね」

P「ああ。ちなみにさつま芋をつなぎに使う芋そばもあるらしい」

美希「へぇ、それもなんだか美味しそうなの」

P「もちろん、そば粉だけで作ったそばも十分美味いんだが、こういう芋とかのつなぎを使ったそばも、また独特の美味さがあるよな」

美希「うんうん。ハンバーグとかはつなぎが入ってない方が美味しいっていうイメージがあるけど、おそばの場合はそうじゃないんだね」

P「他にも、抹茶を練り込んで打つ『茶そば』なんてのもあるしな」

美希「あー! それ、前に雪歩に連れて行ってもらったお店で一回だけ食べたことあるの! すっごく美味しかった!」

P「そうだったのか。いかにも雪歩らしいな」

美希「うん! お茶にかけては雪歩の右に出る者はいないの!」

P「お茶マスター雪歩、だな」

P「まあでも、何を練り込むかによって味や風味が変わるっていうのも、これはこれで美希達アイドルみたいだよな」

美希「? どういうこと?」

P「そのまんまの意味さ。ダンスに歌に演技に……どこに重点を置いて磨いていくかで、アイドルとしての輝き方にも違いが出てくるだろう」

美希「あー、そう言われてみればその通りなの」

P「もっとも、美希の場合はどこをとっても輝いてるけどな」

美希「……そ、そんな風に言われると、ミキ、ちょっと照れちゃうの」

P「照れる必要なんかないさ。それが美希の実力なんだから」

美希「……ううん。さっきも言ったけど、ミキがキラキラできてるのは、全部ハニーのおかげなの」

P「俺は何もしてないよ。ただほんのちょっと、美希達が輝いていくための手伝いをしているだけだ」

美希「そんなこと……」

P「……だからこれからも、もっともっと輝いていく美希の姿を……俺に見せてくれ」

美希「ハニー」

P「美希の一番近いところで……な」

美希「……はいなの!」





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