不死鳥「自分の肉で作った焼き鳥うんめぇ~~~~~~!」 (213)

~ 山奥 ~

不死鳥「フンフ~ン」

不死鳥「まずは火を焚きます」

ボワァッ!

不死鳥「続いて、自分の肉をちぎります」

ブチィッ!

不死鳥「いってぇ~~~~~~~~~~!!!」

不死鳥「ちょっとちぎりすぎたか……!?」

不死鳥「でもすぐに再生するので、安心です」シュウウ…

不死鳥「続きまして──」

不死鳥「ちぎった肉を形を整えてから、串にぶっ刺します」プスッ…

不死鳥「ぶっ刺した肉を、火であぶります」

ジュウゥゥゥ……

不死鳥「串が焼けないように気をつけながら……丁寧に焼きます」

不死鳥「裏表、まんべんなく焼きます」クルッ

ジュウゥゥゥ……

不死鳥「お、いい匂いが漂い始めてきたぞぉ~」

不死鳥「そろそろかな~~~~~?」

不死鳥「まだかな~~~~~?」

不死鳥「ワクワクしつつ、なおかつ火に気をつけながら焼きます」

不死鳥「山火事とかシャレにならないからね。俺は死なないんだけど」

不死鳥「中まで火が通ったら……」

不死鳥「食べ頃!」

不死鳥「よしっ! もういい、オッケー!」

不死鳥「う~~~~ん、肉汁が垂れて実に食欲をそそりますなぁ!」

不死鳥「そしてトドメは──」

不死鳥「なんといっても塩!」

不死鳥「この山で取れた天然の岩塩を、振りかける!」

不死鳥「この絶妙なさじ加減は経験こそがものをいう!」パサッ…

不死鳥「死なないから何千何万年と生きてきた俺だからこそ、可能な技だ!」パサッ…

不死鳥「よし……これでいいかな」

不死鳥「それじゃさっそく……いっただっきまぁ~~~~す!」モグッ…

不死鳥「うん……」モグ…

不死鳥「うんうん……」モグモグ…

不死鳥「うんめぇ~~~~~~~~~~!」

不死鳥「自分の肉で作った焼き鳥うんめぇ~~~~~~!」

不死鳥「サイコォ~~~~~~!」

不死鳥「不死なんてろくなことねえけど」

不死鳥「この瞬間だけは、不死鳥やっててよかったって気がすんね! うん!」

幼児「なにやってんの? トリさん?」

不死鳥「!?」ビクッ

不死鳥(人間の子供……!?)

不死鳥(ここはめったなことじゃ、見つけられない場所なのに……)

不死鳥(子供ならではの純真さで見つけてしまったってところか)

不死鳥(……恐ろしい子!)

幼児「ねーねー、トリさん、何やってんの?」

不死鳥「ん、ああ……焼き鳥を作ってたんだよ」

幼児「へぇ~、やきとり?」

不死鳥「ああ、自分の肉をちぎって焼いてんだ」

幼児「ふう~ん」

不死鳥「どれボウズ、お前も食ってみるか?」

幼児「えっ、いいの?」

不死鳥「おお、特別大サービスだ! 熱いから、火傷すんなよ!」

不死鳥「こうやって塩をかけて……っと」パサッ

不死鳥「ほら、召し上がれ」

幼児「いただきます」パクッ

不死鳥「ん、ちゃんといただきますが出来る奴は、将来出世するぞ! 多分な!」

幼児「…………」モグモグ…

不死鳥「どうだ、美味いだろ?」

幼児「う~ん」モグモグ…

幼児「しょっぱい」

不死鳥「!?」

幼児「これしょっぱいよ、トリさん」

不死鳥「ハ……ハハ……まぁ、俺の肉は人間には合わないかもな」

不死鳥「俺の肉食っても不死になるとかはないけど、でも栄養は豊富だし……」

幼児「う~ん……おにくはおいしいと思うんだけど……」

不死鳥「!?」

不死鳥(ってことは、俺が塩かけすぎってことか!?)

不死鳥(バ、バカな……!)

幼児「それじゃあね、トリさん」

不死鳥「お、おう」

幼児「またくるねぇ~!」タタタッ…

不死鳥「お、おう」

不死鳥(塩かけすぎなのかな……)

不死鳥(いや、そんなバカな!)

不死鳥(この味を出すまでに、何万年研究してきたと思ってんだ!)

不死鳥(でもしょっぱいって……)

不死鳥(いやいやいや、自分を信じろ! ビリーブ!)

やがて、幼児は少年になった──



少年「こんにちは、鳥さん」

不死鳥「おう、焼き鳥食ってけや」

少年「わぁ~い」

少年「…………」モグモグ…

少年「やっぱしょっぱい……」

不死鳥「マジで!?」

少年「ところでさ、不死鳥さんってなんで不死なの?」

不死鳥「さぁて、なぁ……」

不死鳥「生まれた時からこうだった、としかいいようがねえやな」

少年「なんで生まれた時からこうなの?」

不死鳥「それが種族ってもんだからだろうなぁ……」

少年「なんでそれが種族ってもんなの?」

不死鳥「えぇと……」

不死鳥(出た! なぜなぜ攻撃! 子供ならではのエンドレス攻撃!)

不死鳥(ある意味、不死である俺の人生みたいなもんだな!)

少年「……不死鳥さんって」

少年「焼き鳥焼く時とか、いっつも一人でベラベラしゃべってるけど」

少年「なんで不死鳥さんって、やたら独り言が多いの?」

不死鳥(大きなお世話だ!)

不死鳥「寂しいからだよ! 文句あっか!」

少年「なんで寂しいのに、ずっとこんな山奥にいるの? おかしくない?」

不死鳥「俺は人里じゃ受け入れられない存在だからだよ」

少年「なんで受け入れられないの?」

不死鳥「そりゃ……死なない鳥なんて不気味だろ」

少年「なんで不気味なの?」

不死鳥「そりゃ不死だからだよ」

少年「なんで不死鳥さんって、不死なの?」

不死鳥「そりゃ~あれだ。体内に不死パワーが駆け巡ってるからだよ」

少年「アハハッ、最初といってること違うじゃん」

不死鳥「!?」

少年「ダメだよ~、子供の質問だからって適当にはぐらかしちゃ」

不死鳥(こ、こいつ……やりやがる!)

少年「でもさ、不死鳥さん飛べるんだから」

少年「不気味がられても、逃げちゃえばいいだけの話じゃん」

少年「で、不気味がらない人を探せばいいじゃん」

不死鳥「まぁ、な」

不死鳥「こっちにも色々あんだよ」

少年「ふぅ~ん」

少年「色々ってなに?」

不死鳥「だから色々だよ!」

不死鳥(終わらねえええええ!)

少年「でもさ、不死鳥さん」

少年「ボクが来たから、もう寂しくはないでしょ?」

不死鳥「ん……まぁ、な」

少年「あ、そろそろ帰らなきゃ」

少年「じゃあね、不死鳥さん。またね~!」

不死鳥「おう!」

不死鳥(ボクが来たから寂しくない、か……)

やがて、少年は学生になった──



学生「…………」

不死鳥「おう、ずいぶん凛々しい顔つきになったな!」

学生「別に……大して凛々しくもないよ。普通さ」

不死鳥「ハハハ……」

不死鳥「ま、せっかく来たんだ。焼き鳥でも食っていけよ!」

学生「別に腹減ってないけどね」

学生「…………」モグモグ…

不死鳥「どうだ!?」

学生「しょっぱい……塩がききすぎだよ、これ」

不死鳥「うぐっ……!」

不死鳥「ところで、どうだ!? 今の年齢だと、勉強で忙しいんだろ!?」

学生「……まぁね」

不死鳥「はかどってるか?」

学生「ふん……勉強なんて、下らないよ」

学生「あんなもの、いくら頑張ったって社会に出たら何の役にも立ちやしない」

学生「所詮学校なんてのは、社会の歯車になるための通り道みたいなもんなんだ」

学生「より勉強しておいた方が、いい位置の歯車になれるってだけさ」

学生「無意味だよ、バカらしい」

不死鳥「ハハハ……」

不死鳥(なんというか、この時期の人間にはありがちな症状が出てるな……)

不死鳥(世の中が下らなくなる、的な)

学生「不死鳥だってそう思うだろう?」

不死鳥「お、俺か? う、う~ん……」

不死鳥「バカらしいってことはないんじゃないか?」

不死鳥「面白いこともいっぱいあるぜ? 焼き鳥作りとか……」

学生「はっ、不死鳥も世の中のシステムに迎合する生き物だったか!」

学生「不死鳥っていうから、もっと高貴な生き物だと思ってたよ」

不死鳥「俺のどこが高貴なんだよ……」

学生「ひょっとしたら、不死ってのも眉唾なんじゃないのか?」

不死鳥「ほう……俺の不死まで疑うか」

不死鳥「だったら、見てみるか?」

学生「え?」

不死鳥「ふんっ!」

グシャッ!

学生(え……頭打ちつけて、頭が砕け──)

不死鳥「…………」ピクッピクッ

学生「お、おい、しっかり──」

不死鳥「…………」シュウウ…ムクムク…

学生「うわっ! 頭が元通りに!?」

不死鳥「どうだ、死ななかったろ? 傷一つ残ってねえ」

学生「う……うん……」ゴクッ…

学生「不死鳥、こんな力がありゃ、なんだってできるだろ!」

学生「オレだったら……もっと色々やるよ! 不死を利用してさ!」

学生「この下らない世界を変えるために!」

不死鳥「あいにく、不死ってそんな便利なもんじゃないぜ」

不死鳥「ハッキリいって俺、喧嘩はそこらのタカやワシより弱いし」

不死鳥「例えば……動けないようにされたらもうオシマイだ」

不死鳥「永遠に肉をちぎられ続ける、無限焼き鳥製造装置にされちまう」

不死鳥「俺がここで大人しくしてるのは、万が一そうなるのが怖いってのもある」

不死鳥「不死に対する夢を壊すようで、悪いけどな」

学生「なるほど……そんなもんなのか」

不死鳥「ま、無駄に長く生きてる者として、アドバイスだ」

不死鳥「悟ったようなこというのもいいが」

不死鳥「程々にしとかねえと、大きなことばかりいう口だけ野郎になっちゃうぞ」

学生「……ふん」

学生「あ、やべ、もう帰る。そろそろテストの時期だから対策しなくちゃ」

不死鳥「……フッ」

不死鳥「頑張れよ~!」

学生「ふん、程々にやるさ」タタタッ…

やがて、学生は青年になった──



青年「……やぁ、久しぶり」

不死鳥「おお~! 最近来ねえから、心配してたんだ!」

青年「仕事が忙しくてね……」

不死鳥「仕事かぁ~、大変だな」

青年「うん……」

不死鳥「ま、焼き鳥食ってけや! な!?」

青年「…………」モグモグ…

不死鳥「どうだ!?」

青年「うん、しょっぱい」

不死鳥「そ、そうか」

不死鳥「ところで、仕事は辛いか?」

青年「辛いよ……」

不死鳥「やっぱり、お客さんとかの相手は辛いか?」

青年「いや……むしろ、敵は中にありって感じかな」

不死鳥「中?」

青年「上司や先輩がすごくイヤな奴でね……」

青年「オレの手柄を自分のものにするし、口を開けばイヤミやら言いがかりやら……」

青年「何度ブン殴ってやろうと思ったか分からないよ」

青年「このままじゃいつか本当にやっちゃうかもしれない、と思って」

青年「久々に不死鳥の顔を見にきたんだ」

不死鳥「ハハハ、光栄だな」

不死鳥「で、どうだ? 俺の顔見て、少しはリラックスできたか?」

青年「まぁね……相変わらずで安心したよ」

青年「オレはこうして変わってしまったけど……君はなにひとつ変わってない」

不死鳥「成長がない、ともいえるけどな」

青年「ハハハハハ……!」

不死鳥「ハハハハハ……!」

青年「ハハハハハ……!」

不死鳥「おい、笑いすぎだろ」

青年「ごめん」

青年「なにしろ、笑うことすら久しぶりだったからね」

青年「愛想笑いならしょっちゅう浮かべてるけどさ」

不死鳥「…………」

不死鳥「よぉ~し」

不死鳥「だったら今日は、この俺が徹底的にお前を笑わせてやろう!」

青年「へえ、ホント?」

不死鳥「あたぼうよ! 万年生きた俺の不死鳥ギャグを披露してやる!」

不死鳥「いくぜ!」

不死鳥「不死鳥さん、なんで不死なの? 不思議だね」

青年「ハハハハハ……!」

不死鳥「この鶏肉、取りにくいね」

青年「フフフッ……!」

不死鳥「バードを逆立ちさせたらドーバーッてゲロ吐いた」

青年「アハハハッ……!」

不死鳥「死なねえ鳥は、ただの鳥だ」キリッ

青年「プッ、クククッ……!」

不死鳥「大笑いだな! そんなに面白かったか!?」

青年「いやぁ~、全く面白くなかったんだけど、なんでか笑えた」ハハ…

不死鳥「…………」ガクッ

青年「でもスカッとしたよ。ありがとう」

青年「おかげで……また元気に働けそうだ」

青年「もしまたくじけそうになったら……ここに来るよ」

不死鳥「おう、待ってるぜ!」

やがて、青年は中年になった──



中年「やぁ、不死鳥」

不死鳥「おう、久々だな」ジュウウ…

不死鳥「今、焼き鳥焼いてるから、ちょっと待っててくれ」ジュウウ…

中年「うん」

不死鳥「にしても、お前貫禄ついたよなぁ~」

不死鳥「ちょっとぐらいちぎっても痛くねえんじゃねえの?」

中年「オレとしても、ちょっとぐらいちぎってもらいたいね」ブヨッ…

不死鳥「焼き鳥、準備完了!」ドサッ

中年「オレもビールをいっぱい持ってきたよ」ガラン…

不死鳥「お、気がきくねぇ~!」

中年「じゃ、再会を祝して──」プシュッ

不死鳥「おう」プシュッ

不死鳥「って、すげえ泡出てきた!」シュワシュワ…

中年「なんたって、山道を登ってきたからなぁ」シュワシュワ…

不死鳥「んもう……濡れちゃった」シュワシュワ…

中年「じゃ、気を取り直して──」

不死鳥「カンパーイッ!」

中年「カンパーイッ!」

不死鳥「…………」グビッグビッ…

中年「…………」グビッグビッ…

不死鳥「っぷはぁ、うんめぇ~~~~~~~~~~!!!」

不死鳥「ビールと焼き鳥ってのは、最高に合うなァ!」モグ…

中年「焼き鳥が少ししょっぱいけどな」モグ…

不死鳥「…………」

不死鳥「ところで、景気はどうだ?」

中年「ん、まずまずさ」

中年「仕事もとりあえず中間管理職としてなんとかやってるし」

中年「結婚したし、ローン組んで狭いけど家も買えたし、子供も生まれた……」

不死鳥「お前が子供持つってのも、なんだか不思議な話だ」

不死鳥「俺にしてみりゃ、お前なんてまだまだガキなのによ」

中年「そりゃあ何万年も生きてる君に比べたらねえ」

中年「樹齢何千年の木だって、君にしてみれば若木なんだろうから」

不死鳥「子供は可愛いか?」

中年「うん、可愛いよ」

中年「顔はオレに似てるけど、好みとかがオレと逆なのが困るけどね」

中年「オレが子供の頃好きだったオモチャを買ってやっても、喜びやしない」

不死鳥「ハハハ、中身までは似なかったか」

中年「今はまだ可愛いけど、そのうち反抗期になっていくんだろうなぁ」

不死鳥「そりゃそうだ、それが人間ってもんさ」

不死鳥「お前だって、世の中下らねえ……とかいってた時期があったもんな」

中年「あ~……あった、あった! 社会の歯車になんかなりたくねえ、ってね」

不死鳥「……で、どうだい」

不死鳥「今でも世の中は下らないと思ってるかい?」

中年「どうなんだろうねえ……」

中年「下るとか、下らないとか、そういうのを全部ひっくるめて」

中年「世の中……なんだろうねえ、きっと」

不死鳥「ま、そんなもんだ」

中年「ま、そんなもんか」

中年「さぁ~て、そろそろ帰らないと浮気だとか思われちゃうな」

中年「どっこいしょ、と」スクッ

不死鳥「ホントオヤジになったな、お前」

中年「おいおい、よしてくれよ」

中年「久々に来たけど、やっぱり君は全く変わってなくて、安心したよ」

不死鳥「お前は少し痩せろよ。生活習慣病になるぞ」

中年「分かってるよ! ──じゃあな!」

不死鳥「おう!」

やがて、中年は老人になった──



老人「ふう、ふう……」

老人「この年になると、ここまで来るのも一苦労だ」

不死鳥「おう、ちょうどいいとこに来た!」

不死鳥「ま、焼き鳥でも食っていけや! な!?」

不死鳥「ちょうどもうすぐ焼きあがるところだったんだ」

老人「そうさせてもらうよ」

老人「…………」モグモグ…

老人「オレはこのとおりすっかり髪の毛も白くなって、シワだらけだけど……」

老人「君はなにも変わらないねえ」

老人「この焼き鳥のしょっぱさとおんなじだ」

不死鳥「お前も味覚オンチは全く変わってないな」

老人「ハハハ」

老人「……ところで」

老人「君はオレに、何度か不死なんていいもんじゃない、と話してくれたろう?」

不死鳥「ん、あったっけな」

老人「理由は……色々あった」

老人「不気味がられるとか、動けなくされたら意味ないとか……」

不死鳥「ああ、いった覚えがある」

老人「だけど、この年になって……本当の理由がようやく分かった気がするよ」

不死鳥「…………」

老人「不死鳥……君は何度も他人と知り合っては、死別、を繰り返してきたんだろう?」

老人「何度も何度も……数えきれないくらい……」

老人「オレもこの年になると、友だちや仲間と呼べる人間が次々減っていき……」

老人「ようやく気づいたんだ」

老人「君が山奥から出ない理由にね」

老人「誰と出会おうが、仲良くなろうが、どうせ自分より先に死んじまうから……」

老人「これって……キツイよなぁ……」

不死鳥「…………」

不死鳥「ま……そういうところもあるかもな」

老人「実は……オレももう長くない」

不死鳥「!」

老人「病院で宣告されちまってな……」

老人「オレは自然に任せる道を選んだ」

老人「すまんなぁ……もっと焼き鳥食いにきたかったんだが」

不死鳥「お前が謝ることじゃねえだろ」

不死鳥「人間は不死じゃないんだ。いいってことよ」

不死鳥「よくもまぁ、そんな年になっても俺に付き合ってくれたよ」

不死鳥「……ありがとう」

老人「こっちこそ、ありがとう……」

老人「君みたいな変わった鳥と知り合えてよかったよ」

老人「さて……そろそろ行くかな」

老人「家のもんが心配すると、いかんしな」

不死鳥「……あと何回ぐらい来れそうだ?」

老人「あと……二回……いや、一回かもな……。一回は必ず来るよ」

不死鳥「そうか……」

不死鳥「ま、体を大事にな!」

老人「ああ、そうさせてもらうよ」

やがて──



不死鳥「…………」

不死鳥(あれから、アイツ来ねえなぁ……)

不死鳥(まさか──)

不死鳥(いや、まさかな! 忙しいとか、ここに来るのがおっくうになってるだけだ!)

「こんにちは」ザッ…

不死鳥「お、ウワサをすれば、来たか! 焼き鳥食ってけよ!」

「…………」モグモグ…

不死鳥「いやぁ~、てっきりもう来ないもんかと思ってたぜ」

不死鳥「しっかし、ずいぶん顔つきが若返ったな!?」

不死鳥「見違えたぜぇ~! 最新医療ってやつか!?」

不死鳥「ところでどうだ、焼き鳥の味は? ん?」

不死鳥「っていっても、お前はいっつも──」

「塩がよくきいていて、美味しいですね」

不死鳥「!!!」

不死鳥「ま、まさか……」

不死鳥「まさか……アンタ、まさか……アイツの……」

息子「はい……私は息子です」

不死鳥「だよなぁ……人が若返るわけないもんな。瓜二つってのは、このことだ」

不死鳥「もうアイツ、自分でここに来れなくなるほど悪く……」

息子「いえ、父は亡くなりました」

不死鳥「…………!」

息子「三日前……家で安らかに息を引き取りました……」

不死鳥「そうだった、のか……」

息子「父はよくいってましたよ」

息子「この山にはしょっぱい焼き鳥を焼く不死鳥がいるって」

不死鳥「ハハ、アイツらしいや」

息子「いくら場所を聞いても、自分だけの秘密だって」

息子「決して教えてくれなかったのですが……」

息子「亡くなる寸前……オレの代わりに焼き鳥を食いに行ってくれ、と……」

不死鳥「そうだったのかい」

不死鳥「アンタの父さんはいっつもオレの焼き鳥に文句いってたぜ」

不死鳥「結局、一度も褒めてくれたことはなかった」

息子「父はなんでも薄めて食べるほど、薄味が好みでしたから……」

息子「私は逆なんですけどね」

息子「それと……父から伝言が」

息子「あと一回、石にかじりついてでも行きたかったがすまない、と」

不死鳥「ハハ、それもまたアイツらしい。気に病む必要なんてねえのによ」

不死鳥「……あ、そうだ」

不死鳥「肉は腐っちまうから……この串と塩をアイツの墓前に、頼む」

息子「分かりました」

息子「父もきっと喜びます」

不死鳥「い~や、アイツはしょっぱいっていうね」

息子「では私はこれで……」

不死鳥「おう、達者でな!」

息子「──そうだ。もしよろしければ、また来てもいいですか?」

息子「あなたの焼き鳥、私の好みにドンピシャだったので……」

息子「できれば、私の息子……父の孫と一緒に……」

不死鳥「もちろんだ!」

不死鳥「あ、できれば、ビールも持ってきてくれよ!」

息子「分かりました」ニコッ

息子「では……」スタスタ…

不死鳥「…………」

不死鳥「さぁ~て、焼き鳥焼くかぁ~」

不死鳥「立派な息子じゃねえかよぉ……お前よりよっぽど味ってもんを分かってるぜ」

不死鳥「…………」

ジュウゥゥゥ……

不死鳥「そろそろ……いいかな……」

不死鳥「…………」モグッ…

不死鳥「……へっ」ホロッ…

不死鳥「まだ塩もかけてねえのに……今日の焼き鳥はなんだかしょっぱいや」





~おわり~

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年04月19日 (土) 17:21:44   ID: _C8QNvzn

最高だろこれ…

2 :  SS好きの774さん   2014年04月29日 (火) 13:58:04   ID: _J19NYB4

泣いた

3 :  SS好きの774さん   2014年05月11日 (日) 19:02:02   ID: n_bIe6OW

全米が泣いた

4 :  SS好きの774さん   2014年08月07日 (木) 21:27:36   ID: FbYwMdYA

泣けてきた。

5 :  SS好きの774さん   2014年08月11日 (月) 01:53:05   ID: fAFCG35s

全俺が泣いた。

6 :  SS好きの774さん   2014年10月18日 (土) 20:31:27   ID: JVlcgbQi

俺もこんな焼き鳥と出会いたい

7 :  ミーアキャット   2015年04月17日 (金) 19:45:46   ID: 9F5qWQQa

うわぁぁぁぁぁぁぁ

8 :  不死鳥   2016年03月07日 (月) 13:37:11   ID: imnJGM-n

全俺が泣いた

9 :  SS好きの774さん   2016年04月05日 (火) 20:00:57   ID: 37Ys3kMl

全宇宙が泣いた。感動作(´;ω;`)

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