澪「あなたが隣にいる夜」(116)

「……うーん……」

………眠れない。
瞳を閉じても眠くなるどころか、ますます頭が冴えてくる。
耳をすませば聞こえてくる秒針の嵐。
仕方なく、身体を起こした。

追い込みに受けた模試も終わり、今日は私の家でお泊まり会。
しばらくの慣れない勉強尽くしの生活から解放されたからか、唯と律がやたらとはしゃいでいた。
結局、二人とも早々とトーンダウン。
流れでもう寝よっか、となり、唯はムギと梓と。私は律と寝ている。

「………………むう」

それにしても寝つけない。
こういう時、いつもなら律がいろいろ仕掛けてくるから気が紛れるのに。
その律は、と言うと。

(…………)

「ぶもっ!……キャベツぅ……」zzz

鼻を摘まんでもこの有り様。
完全に爆睡中だ。

>>1乙! 面白かった!

起こしてしまったら律に悪いし、かといってこの心のさざめきが収まる気配もない。
おまけに喉も渇いてきた。

(仕方ないなあ……)

そっと立ち上がり、部屋を出る。
ケータイの明かりを頼りに廊下を進み、台所へ向かう。

「…………んっ」

コップに水を注ぎ一口飲むと、心が洗われていくような気がした。

しえん

(もうちょっとだけ……)

「わっ!」

「ぶふっ?!」

突然の背後からの襲撃。振り返る暇もなく、思わず水を噴き出してしまった。

「かはっ……げほごほがほっ……!」

「え、澪ちゃん?!だっ大丈夫?!」

背中に暖かい手の感触を感じたけれど、今はそんな事を気にする余裕はなくて。

(きっ気管に入った………!!)

「もう大丈夫だから、落ち着いて……!」

私は驚く暇もなく、ただ悶え苦しんでいたのだった。

………………………

「けほっ、はぁっ、はぁ……」

しばらく背中を擦られたおかげで、ようやくまともに息ができるようになった。
心臓はまだバクバクしてるけれど。

「ごめんね澪ちゃん……本当に大丈夫?」

「……うん。ちょっと驚いただけだから、気にしないでよ」

そんなすまなそうな声を聞かされて、怒れるわけないだろ?
ふっと肩の力が抜ける。
私は声の主―――ムギに、改めて向き直った。

澪「で、ムギはどうしてここに……?」

紬「なんだかすっきり眠れなくて、お水をもらいに来たの。そしたら誰かいたから、驚かせてみようと思って……本当にごめんね?」

澪「だから、もう気にしてないって。それより、水いいのか?」

紬「もういいの。今ので完璧に目が冴えちゃった」

澪「そっか」

澪(なんということでしょう。昼間かなりはしゃいでたのに、このムギ、ノリノリである)

--刹那

あずにゃんペロペロ(^ω^)

紬「ところで、時に澪ちゃん?」

澪「なに?」

紬「澪ちゃんも眠れないの?」

澪「まあね。ムギと一緒」

紬「事後?」

澪「ん……え?」

紬「やっ澪ちゃん……ダメよこんなところで……!」

澪「き、きわどい発言はやめろ!何もしてないからな?!」

紬「なんちゃって☆」

澪「ぶふっ!」

紬「澪ちゃん?!」

澪「ぷ……くく……何でもない……何でもない、から……」

澪(わ、私は何と戦っているんだ……!)

紬「うーん……せっかく澪ちゃんに叩いてもらえるいいチャンスだと思ったのに」ブツブツ

澪「ゑ?」

紬「なんでもないわ。それより私、澪ちゃんにお願いがあるんだけど」

澪「お願い?」

紬「私、もっと澪ちゃんとおしゃべりがしたいの」

澪「おしゃべり?私は全然かまわないけど」

紬「外で」

澪「外で?!」

紬「家の中だとみんな寝てるし、起こしたらいけないと思って」

澪「確かに……そうだけど」

紬「それに、お散歩にもなるでしょう?私、一度夜の街歩いてみるの、夢だったの」

澪「うーん……私も歌詞作りに行き詰まった時によく行くし、いいよ。
  私でいいなら、ムギの夢、協力する」

紬「本当?!ありがとう、澪ちゃん!」ギュッ

澪「わっ!?もう、大げさだなあ」

澪(大丈夫だよね。今までも危なくなかったし、ムギが一緒だし……)

支援

澪「それじゃあ、とりあえずコート着て……どこから出ようか?」

紬「それなら心配ないわ。ちゃんと脱出ルートは見つけてあるから」

澪「脱出ルート?」

紬「ほら、あそこに」

澪「……」

澪(なんで?!なんで梓と唯は抱きあって寝てるの?!)

澪(しかも服めちゃくちゃだし、カーテン開いてて外から丸見えなんだけど?!)

澪「ねえムギ、あれ」

紬「早く出ましょう♪」

澪「……うん」

澪(何も見なかった。うん、何も見なかった)

カラカラ……

紬「ふわぁ……すごい……」

澪「どうしたの?」

紬「人もいないし、車も全然走ってない……」

澪「だろ?空気も透き通ってるし、なんかすっきりしない?」

紬「本当ね!まるで違う世界にいるみたい……」

まぁたレズものか…(;-_-)=3

澪「うん……私、この雰囲気が好きなんだ。
  この広い世界のなかに、ひとりきり、って感じがして」

紬「澪ちゃん、それは違うわ」

澪「へっ?」

紬「……ふたりきり、でしょ?今は」

澪「!」ドキッ

紬「……………」

澪「……………」

紬「……なんちゃって☆」

澪「なっ//」

紬「うふふ、澪ちゃん顔真っ赤」

澪「うう……からかうなら置いてくからな!」ダッ

紬「あっ、澪ちゃん待ってー!」

………………

澪「はあ……はあ……つ、疲れた……」

紬「これは……来るわね……」

澪「最近全然運動してないからかな……余計に……」

紬「身体が……重い……」

澪「」

紬「」

澪「と、とりあえずさ、そこに公園あるし、休んでかないか?!」

紬「そ、そうね!結構動き回ったからね!」

澪「ははは……わあ、ブランコ。懐かしいなあ!」

紬「私も乗る~♪」

澪「あははははは♪」

紬「うふふふふふ♪」

澪「…………………」

紬「…………………」

澪「……………ムギ」

紬「……………うん」

澪「………何キロ、増えた?」

紬「……私は、『全力回避』キロ、かな……」

澪「私なんて、『訴訟不可避』キロ……」

紬「……………」

澪「これが現実か……」

紬「……ずるい」

澪「ゑ?」

具体的な数字に興味がある

お約束

紬「ずるいずるいずるい!いくら食べても増えないなんて!」ガシッ

澪「ひぎいいいっ?!」

紬「たいして動くの好きじゃなくて、
  いつもアイス食べながらゴロゴロしてるのに増えないなんてぇっ!!」ギリギリ

澪「ちょっ、ムギキャラ違っあああああっ!腕ぇぇぇぇっ!
  ギブ!ギブギブううう!」バンバン

紬「はっ?!ああっ澪ちゃんごめんなさい!」

澪「ふう……いいよ、ムギの言うことすごくわかるし……。
  確かにずるいよな。あいつ」

紬「やけに投げやりね」

澪「……だって、最近何もしてないのに増えてたし」

紬「……………」

?「青春だねえ、お嬢ちゃんたち」

澪「ひいっ?!?!」

?「ちょっとちょっと、おじさんオバケじゃないよ。
  ほら、ちゃんと足もあるでしょ」

紬「あの、あなたは……?」

?「そこのワゴンで営業中の、しがないドーナツ屋さん。
  新作の研究中で、余っちゃってさ。1つ、食べてみない?」

紬「えっと、お気持ちはありがたいんですけど……」

澪「……いただきます」

紬「」

澪「はむ……んっ、おいしいですね!」

?「でしょ?リングのハートは愛あるしるし!なんてね。グハッ!」

澪「ほんと、こんなおいしいドーナツ食べたことない……ムギも食べなよ?」

紬「ダイエット……」

澪「いいから!ムギも私と同じ末路を辿れ!」グイッ

紬「ひいっ、澪ちゃんが壊れむぐっ?!むーっ!!」

澪「あはは。そんなに騒いだって、顔はすごく悦んでるぞ?全く、ムギは素直じゃないなあ」

紬「むぐ……む、おいしいわ。いろいろな意味で」

?「お嬢ちゃんたち、仲がいいんだねえ」

澪「はい、クラスも部活も同じなんです」

?「へえ、部活は何してるの?」

澪「軽音部です」

紬「放課後ティータイムって、バンドをやってます」

?「バンドか~。名前からして、お茶会とかやってたりして」

澪「はい。この子……ムギがいつもおいしい紅茶とかお菓子とか持ってきてくれて」

紬「でも澪ちゃん、そのわりにもっと練習がしたいって、いつも言うんですよ?」

澪「ちょっと、ムギ!」

かわいいな

?「あはは……いいねえ、若さって。ちょっと待っててね」

紬「?」

?「やあ、お待たせ。おいしい話聞かせてもらったからね。これ、サービスのドリンク」

澪「いやいや、初対面なのにこんなによくしてもらうなんて」

?「いいのいいの。疲れた時は甘い物が一番でしょ?ダイエットにもいいし、試してみてよ」

紬「そうですか?じゃあ、お言葉に甘えて……」

?「お味はどう?」

紬「んっ……甘くて……なんだか、心の奥まで染み渡る感じ」

澪「本当。しっとりしてて、それでいてべたつかない、すっきりした甘さだな」

?「それはよかった。ダイエットもいいけど、こんなおいしい物まで我慢してたら損だよ?」

紬「!」

?「いろいろ我慢してると、どうしても無理しちゃうからね。それは体にも心にも毒だし」

澪「………」

この感じ・・・

?「……なんか湿っぽくなっちゃったけどさ。
  今度はもっと楽しい話、いろいろ聞かせに来てよ。ね?」

紬「……はい!ありがとうございます!」

澪「それじゃあ、この辺で失礼します。絶対、また来ますね!」

……………

?「青春だねえ……」

?「おっといけね、ついクサいセリフになっちゃったよ」

?「まあ、おじさんの靴下はもっとクサいけどね。グハッ!
  ……さてと、仕事仕事」

…………………

紬「なんか、不思議な人だったね」

澪「え?」

紬「だって、とっても人見知りする澪ちゃんがあんな自然に話せてたんだもん」

澪「私はそんなにひどくないぞ?」

紬「え?だってあの人に話しかけられてびっくりしてたじゃない。
  それに、あの人結構強面だったし」

澪「それは……こんな夜中にいきなり話しかけられたら、
  誰だってびっくりするだろ」

紬「そんな澪ちゃんも可愛かったけどね」

澪「……ばか」

紬「冗談よ。それでも澪ちゃん、ドーナツに真っ先に食いついたでしょ?」

澪「うん」

紬「初対面で、話も聞いてないのに、全然警戒心抱かせなかったって不思議じゃない?」

澪「ああ。絶対に悪い人じゃない、って感じたのは確かなんだけど……」

♪会いたかった 寂しかった でも……

澪「あ、電話。……先生から?」

紬「こんな時間に何かしらね?」

澪「なんか、やな予感がするけど……もしもし?」

?「たっ助けてくれ!!」

澪「?!(男の声?!)」

紬「?!?!」

澪「どっどうしました?!いったい何が」

?「どうしたもこうしたも、この女がっあああああっ!!」

澪「?!」

?「とっ、突然猫の耳を取り出したと思ったら、俺の服をっうぉぉあああっ!!」

紬(キマシタワー!!!)

澪(先生ぇぇぇぇぇぇ!!)

ムギ澪とは珍しいナ

?「とっとにかく助けてくれ!!このままじゃあいつの尋問より惨いことにっあっ!!」

さわ「はやとくんってばぁ、なんでにげるのぉ……?夜はまだまだ長いのよ……」

?「ひぃいいいいっ!くっ来るなぁぁぁッ!!」

さわ「……今夜は、寝かさないんだから」

?「うおぁああああっ!!ふっ不幸だっアッー!!!」

………………………

さわちゃんェ・・・

澪「……先生ぇ……」

紬「……お取り込み中だったみたいね」

澪「うん……相手が私たちでよかったな、これ」

紬「えっ?」

澪「聞かれたのが、ってことだよ」

紬「ああ、唯ちゃんやりっちゃんに聞かれたら、しばらくからかわれそうだもんね」

澪「先生って恋愛沙汰でいい話聞かないからな」

紬「見た目は美人なのにね?」

澪「やっぱり、性格かなあ」

紬「でも、私は先生のこと、すごいと思う」

澪「何が?」

カミジョーさんかよ!
毎度毎度羨ましい奴め!

紬「男の人に積極的にアタックできるところ。私にはマネできないもん」

澪「あー……確かに私も無理かな。ちょっと怖い」

紬「えー?でも、澪ちゃんならわりと簡単にできそうだけどね。彼氏さん」

澪「なんでだよ?」

紬「可愛いじゃない」

澪「……」

紬「クールな見た目で中身は乙女チック。そんなギャップが可愛いのにな」

はやと君って誰だ

澪「……そういうムギこそ、男がほっとかなさそうだよ」

紬「ふぇっ?!」

澪「ぽわぽわしてて可愛いし世話好きだし、話上手で聞き上手だし」

紬「そ、そんな」アタフタ

澪「いかにも優しいお姉さん、って感じだもん」

紬「澪ちゃんっ!!」

澪「はい?!」

紬「お姉ちゃんって呼んでみてっ!!」

澪「お、お姉ちゃん?」

紬「むぎゅうううううううう!!」グラッ

澪「?!」

紬「……我が生涯に、一片の悔いなし……」ガクッ

澪「お姉ちゃぁあああああん!!」

さわちゃんに襲われるなんて羨ましい男だ

スミーレにお姉ちゃんと呼ばれなくなって久しいからな

………………………

紬「ん……?」

澪「あ、ムギ!気分はどう?」

紬「うん……なんとか。運んでくれてありがと、澪ちゃん」

澪「はは、いいって。突然倒れてびっくりしたけどね」

紬「だって、澪ちゃんがあんな事言うから……」

澪「あんな事って、お姉ちゃんって呼んだ事?」

紬「う」

澪「?」

紬「いきなりは……ずるい……」

澪「え?何?」

紬「なんでもない!」

澪「そ、そう……」

澪(なんだったんだろ?)

澪「それより、もし疲れたんなら、そろそろ引き返すか?」

紬「うーん、そんなに疲れてはいないし、どこか建物の中に行きたいな」

澪「近くの、まだ開いてる建物……あっ」

紬「?」

………………………

某大手チェーンのレンタルビデオショップ

紬「あったか~♪」

澪「こんな時間でも開いてるもんだな」

紬「わたし、真夜中にこういうお店に来てみたかったの~」

澪「そう?それじゃ、いろいろ見てくか!」

紬「いぇす!」

澪「ムギってどんなのが好きなんだ?曲とか、ドラマとか」

紬「んー、そうねえ……あ、これ!」

澪「これ?」

紬「そう!《茶店部シリーズ》の『消化』ってドラマ♪」

澪「ああ、原作の小説は読んだことあるよ」

紬「私はドラマから。もも姉が主演って聞いて、気になって見始めたらハマっちゃったの」

アダルトコーナーですね

ふむふむ

澪「もも姉って……確か、現役高校生カリスマモデルの?」

紬「好きなの!ファンなの!だからそう呼んでるの!」

澪「い、意外だな」

澪(むしろ予想外だよ)

澪「そ、それでどんなところが好きなの?」

紬「最後の方で黒幕に『私、血になりました!』って叫ぶんだけどね、
  いつも途中で噛んじゃうの!なんか安っぽいグダグダな感じが最高なの!!」

澪「」

澪(私の知ってる話と違う)

紬「今度、DVD見せてあげるね!」

澪「せ、せやな……」

澪(むしろ唯に勧めた方が間違いなくハマるだろうな)

紬「で、澪ちゃんのオススメは?」

澪「私?えーっと……」

紬「澪ちゃんの事だから、案外魔法少女もののアニメとか出てきそうね」

澪「はずれ。っていうか、どういうイメージだそれ」

紬「むむむ。あんなに乙女チックな歌詞が浮かぶくらいだもん。
  そういうのに憧れてると思ったのに」

澪「(遠からず当たってるのが憎い……)
   あ、これこれ!『Trinity』の最新ライブDVD!」

紬「へぇ~、澪ちゃんこういうのも見るんだ」

澪「最近ハマったんだけどな。ダンスのキレがすごくて、とても高校生とは思えないよ」

紬「高校生?!」

澪「ああ。メンバー全員同級生なんだ。
  メジャーになった今でも、地元でよくライブしてるんだって」

紬「てっきりもっと年上だと思ったわ」

澪「あー……」

?「あの、すいません!」

澪「?」

今度は誰だよww

紬「何かしら?」

?「その『Trinity』のライブDVD、先に借りてもいいですか?!」

??「すみません。私たちダンスやってるんですけど、そのDVDが明日どうしても必要なんです」

?「これ以上待たせたらミキたんに怒られちゃう……」

??「もう。連休だからって宿題全然してないから、こんなドタバタする事になるのよ」

?「だって~……」

紬「まぁまぁ」

澪「私も急ぎじゃないし、これどうぞ?」

?「わはっ、ありがとうございます!!急ご、せつな!」

??「あっ!ちょっと、待ってってばぁ!」

澪「……すごいエネルギーだ……」

紬「りっちゃんと澪ちゃんみたいだったね」

澪「そうかなぁ?どっちかって言えば唯と和だと思うんだけど」

紬「どっちも羨ましいわ。……私には、そういう人がいないから」

澪「ムギ……?」

菫「・・・」
斎藤「・・・」

紬「……なんてね。お金もないし、そろそろ出ましょう」

澪「あ、あぁ」

紬「ところで、このあとどうする?」

澪「うーん……結構歩いたよな……
  距離的にはぼちぼち引き返すべきなんだけど」

紬「?」

澪「最後にちょっと寄りたい所があるんだ。ついてきて?」

支援。おもしろいよ。

…………………

紬「ふわぁぁ……」

澪「最近見つけたんだけど、どうかな?」

紬「素敵……街の明かりがあんなに……」

澪「だろ?ここの丘、ちょうど街を見下ろせる所だから」

紬「本当ね!だって、サイレンの光までくっきり見えるんだもん」

澪「……サイレン?」

紬「ほらあそこの、赤いの」

澪「まずっ……!!」

紬「まぁまぁ澪ちゃん、落ち着いて」

澪「落ち着くも何も、さすがに警察は――!!」

紬「よく聞いて?……このサイレンの音、救急車のよ」

澪「………………」

夜逃げしてるみたい

紬「もーっ!澪ちゃんってば、慌てんぼさんなんだから~」コノコノ

澪「…………………」

紬「……澪ちゃん?」

澪「……脅かさないでよぉ……」ヘナッ

紬(可愛い――!!)キュンキュン

紬「あ、安心して?もし澪ちゃんが危ない目に遭っても、私が絶対に守るから」

良かった
いきなりサイレンの世界にならなくて

澪「ほんと?」

紬「ほんとにほんと。何があっても、最後の最後まで守り抜いてみせるわ」

澪「……どうして、そこまでしてくれるんだ?」

紬「それはね……澪ちゃん。
  ……あなたの事が好き。大好き。――ううん、愛してるから」

澪「え……えぇっ?!」

なんとおおおおお

紬「大好きな人には、いつだって笑っていてほしいもの」

澪「ででででもわっ私女だし、その想いはちょっと重いっていうか困るっていうかっ」

紬「………………」グス

澪「わっ?!泣くなって!もっもちろんムギが嫌いなわけじゃないしっ、
  むしろ好きだし、だからこそもう少し建設的にだな……」

紬「……ぷふっ」

澪「へっ?」

紬「あははっ、ごめんなさい!反応が可愛くて、つい……ふふっ」クスッ

澪「は、図ったな?!」

紬「ううん、違うの!そういうことじゃなくて、純粋でいいなー、って思って」

澪「純粋?」

紬「ほら、澪ちゃんってかなりストレートに物事を受け止めるじゃない」

澪「言われてみれば、そうだけど……そのせいでよく貧乏くじ引くし、損な事ばかりだぞ」

紬「そう?どんな事でも真剣になれるって、素敵なことだと思うけど」

澪「逆だよ。馬鹿正直に考えすぎて、先に進めない時だらけでさ」

紬「…………」

澪「変えたいと思ってるんだ。でも、結局変えられなくてさ……時々、こんな自分が嫌になる」

紬「――えいっ」ぎゅーっ

澪「むぎゅっ?!」

紬「いいのよ、そのままで。気に病む必要なんて全然ないわ」

澪「……でも」

紬「大丈夫……私がついてるから。言ったでしょ?何があっても、絶対に守るって」

澪「…………」

紬「私が好きなのは、いつもクールで真剣で、時折見せる子供っぽさが可愛い、とてもまっすぐな女の子なの――」

紬「――だからお願い。そんな素敵な子、嫌いにならないであげて」

澪「……ありがと」

紬「どういたしまして。こんな私のアドバイスでも、役に立つなら嬉しいな」

澪「十分すぎだよ!すごく落ち着いたし……やっぱり、ムギはすごいな」

紬「そんな、全然……それを言ったら、りっちゃんの方がずっとすごいよ」

澪「へ?律?」

紬「ほんとに羨ましいの。いつも隣にいるのが当たり前で、
  澪ちゃんの事ならなんでも知ってる――幼馴染みがね」

澪「……うーん、美化しすぎじゃないか?そんな恋人みたいな奴じゃないってば」

紬「そんなことないよ。私の知らない澪ちゃんをいっぱい知ってて、それを自然に引き出せるんだもん」

澪「……」

紬「澪ちゃんとりっちゃんの仲良しは見てて楽しいんだけど。仲良しすぎるぶん、余計に……ね」

澪「……ごめん」

紬「え?」

澪「こんなに私のこと考えてくれてるのに、何も返せなくて」

紬「いいの、気にしないで?私が勝手にお節介焼いてるだけだから」

澪「でも!私のこと大好きだって、守ってくれるって言ってくれて……嬉しかった」

澪「だから私も、ムギに何かしてあげたい」

紬「うーん……」

いいねぇ

そっか澪を狙おうとするとりっちゃんは大きな壁だよな
逆もまた然り

         /::::/::::/::∧::::::、::::::::::\
        /:::::::::::::;イ::.:;' ハ:::::::ハ::ヽ:::::::ヽ
        /:/::::/:::/-:::/  ハ:|‐::ハ::::|:::、:::ハ
        l::::::::::|::::| |/     | ヾ::N:::::|:::::|     クチャクチャクチャ
        |:::|::::lレ'≦、     ,,≧、|::::l:::|::!     うん、やっぱり自分で作った
        |:::|::::|〈{.んハ      代ハ }〉::l:::l::|     サムゲタンはすっごくマシッソヨだゾ!
        |:::|::ハ  Vソ       Vソ´リノ:::|::l
        |:(lヾヘ ,,,,   '   ,,,, ム:イ:::!
        |::::|::::ハ    、_ _,.    ノ::::::|:::|

澪「お願い!私の気が済まないんだ、何かさせて!何でもするから!」

紬「……ホントに?」

澪「あ、ああ」

紬「じゃあ……して?」

澪「してって、何を――わぁっ!?」

澪(ム、ムギがいつの間に、こんな近くに……!)

ほうほう

紬「もう、わかってるくせに……澪ちゃんのいけず」

澪「あ、あのなムギ、こういうことはだな」

紬「んー?さっき何でもするって言ったよね?」

澪「言ったけど……でも……」

澪(うう……ムギの身体、あったかくて、絡み付いてきて……)

紬「……おねがい」スル

澪「あ……ああっ……」

紬「ね、澪ちゃん……いいでしょ……」スッ……

澪「っ……そんな、待ってっ、心の準備が――」







紬「……でこぴん、くらい」

澪「―――はい?」

紬「でこぴん、して?」

澪「……デコ、ピン?」

紬「そ。でこぴん」

澪「………………」

紬「………………」

澪「……………ぷっ」

紬「…………あれ?」

澪「くっ、あははははははっ!」

紬「?!」

澪「あははははっ……ははは……」

紬「……あの」

澪「………………」

紬「……澪ちゃん?」









澪「……バカぁぁぁぁっ!!」ピシィィィィィッ

紬「あいたーっ!」

…………………………

澪「まったく……ムギの冗談は心臓に悪いよ」

紬「ごめんなさい……。でも、結構真剣だったのよ?」

澪「だからって、あんな迫り方はないだろ」

紬「あら?私は何がしたいって言わなかったのに、先走ったのは澪ちゃんじゃない」

澪「それは……だって」

紬「『そんな、待ってっ、心の準備が――!』」

澪「なっ!!」

紬「うふふ、可愛かったわ♪」

澪「うう……ムギ、ずるいよ……」

紬「いいじゃない、今夜くらいは……ね?」ツン

澪「……ま、そうだな」

叩けたww

紬「………………」

澪「………………」

紬「……そろそろ、着いちゃうね」

澪「……うん」

紬「楽しかった。楽しくて楽しくて……ずっと歩いてたいくらい」

澪「私も――ムギが隣にいたから、こんなに楽しい夜が過ごせたんだと思う」

紬「澪ちゃん……」

澪「これから受験で、どうなるかわからないけどさ」

紬「……うん」

澪「私は……離れたくない。この先何があっても、ムギと一緒にいたい」

紬「……私も!ずっと澪ちゃんのそばにいたい!」ぎゅーっ

澪「わっ?!だから、そんなにくっつかなくても!」

紬「えーっ?恥ずかしがることないじゃない~」

澪「そういうことじゃなくてだな……」

紬「でも、こうしたほうがあったかいでしょ?」

澪「……イエローカード!」ピシッ

紬「あうっ、そんなぁ」

澪「……なんてね。『お姉ちゃん』」

紬「……~~っっ//」

…………………………

澪「やれやれ、なんとか着いたな」

紬「お疲れ様、澪ちゃん」

澪「ムギこそ、お疲れ様」

紬「また、歩こうね」

澪「もちろん。いつでもいいよ」

紬「えへへ、ありがとっ!」

澪「さて、それじゃ中に……」

ガチャッ

澪「……ん?」

紬「どうしたの?」

澪「いや……その……」

ガチャガチャ

澪「……………」

紬「…………まさか?」

澪「……その、まさか」

紬「……………」

澪「………自分ちなのに、なんで……どうして……!」

紬「……まだよ、澪ちゃん」

澪「え?」

紬「まだ残されているはずよ。どんな絶望でも跳ね返す、最後の光が」スッ

澪「……ケータイ、か……!」

紬「私たちならできる。今までだって、そうやって乗り越えてきた……そうでしょう?」

澪「ああ……ああ!」

紬「行くわよ、澪ちゃん!」

澪「うん!
  じゃあ、とりあえず私は梓にかけるから――」

紬「チェインジ!プリキュアッ!ビートアァーップッ!」

澪「いや違うでしょ、って、なんで私までえぇーっ?!」

おわる!

乙!
読んでて楽しかった

おつ
澪紬なかなかいいやり取りだったな

いい距離感だった

ゴールドハートは実りのしるし!
刈りたてフレッシュ!キュアブレッド!

って感じです。読んでくださってありがとうございました。

どんな感じだよwww
変に百合るよりこれくらいの距離がちょうどいい
乙でした

>>112
なるほどわからん
が乙です 良かった

良かった!おつ!

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