紬「ケンカのあとは」澪 (104)

律「そうあせんなくてもいいと思うけど」

紬「でも…でも…」

律「…えーっと、付き合い始めてどれくらいになるんだっけ?」

紬「6ヶ月と12日」

律(即答かよ…)

紬「こんなにたってるのに…それなのにわたしたちまだ…」

律「半年かあ…」

紬「半年と12日!」

律「わかってるわかってる」

紬「わかってない! りっちゃんはわたしと澪ちゃんの12日間の重みをわかってないわ!」

律「ごめんごめん…わるかったわるかった」


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紬「普通、半年と12日も付き合ってたらチューくらいしててもいいと思わない?」

律「さぁ……まぁ……人によるんじゃね」

紬「でも…それくらい普通じゃない? お互い好きなんだし、付き合ってるんだし」

律「うーん、どうだろうなぁ……人によるからなぁ…」

紬「フフ…でもね。わたし、そろそろだと思ってるの」

律「あっ、そう。ふーん、よかったじゃん。じゃ、そゆことで」

紬「なんでだと思う?? ねぇなんでだと思う??」

律(帰りたい……)

紬「ほら~もうすぐわたし、誕生日でしょ? だから…その…きっと澪ちゃん、誕生日プレゼントくれると思うのね? ね? なにもらえるとおもう?? なにもらえると思う?? ねぇねぇ??」

律「さぁーなー、んーっと、なんだろーなーわっかんねーなー」

紬「わたしね…アレじゃないかと思うの。わたしがいちばんほしいもの! ね? アレ! わかるでしょ? ねぇねぇ!」

律「あぁーうん。そだな。わたしもそう思うぞ。うんうん」

紬「聞きたい? ねぇ聞きたい?? ねぇねぇ!?」

律(…どうしても聞かなきゃダメか)ハァ~ア

律「…ヘイヘイ、じゃあなにもらえるんですかー?…っと」

紬「ダァ~メッ! おしえてあーげないっ♪ だって澪ちゃんとわたしの秘密だもん♪♪」ムフ

律「わたしかえる」

紬「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ!!!」

律「…で、結局なにがほしいんだよ?」

紬「“ナニ”って…りっちゃんたら………」

律「かえるぞ」

紬「言うわ! ちゃんと言うから聞いて!」

紬「あのね…その…あの…えっと…わたし…澪ちゃんと…したいことがあって……」モジモジ

律「言いたくないなら言わなくていいんだぞ?」

紬「言います! 言いたいです!!」

律(言わなくていいのに)

紬「エッチしたいの!!!」

律「お願いだから大声で言わないで」

紬「ウフフ~誕生日たのしみだわぁ~~~~~♪♪♪」

紬「わたしの計画ではね…誕生日に初体験を済ませて、夏休みを迎えるの」

紬「学校がお休みの間、覚えたばっかりの行為に夢中になった二人は夏休み中ずっと………」

律(……なにか始まった)


~~~~~~~~


紬「でね! でね! 夏が終わってもわたし達は終わらないの! それからそれから…!!」

律(この話はいつ終わるんだろう)

紬「夏……わたしと澪ちゃんの夏………ふたりきりの…………ああ………夏休みはやくこないかしら~~~♪♪」ポー

律「ちょいちょい。ちょっと落ち着け。そんなに先走ってどーする」

紬「だって………好きなんだもん」

律「そりゃあ…まぁ…わからんでもないけどさ。でもな。わたし達まだ高校生なんだぞ」

紬「澪ちゃんの身体は超高校級よ!」

律「そういう表現やめてくれる?」

紬「だって…………」

律「まぁ待て…澪の発育がいいのはたしかだ。だけど澪はそういうのすっごく嫌がるぞ」

紬「わかってるわ。だからわたし、必死で自分の劣情を抑えてるの!」

律「“劣情”とかいうのやめような?」

紬「ハイ!」

律「わかればよろしい。ほら、澪はウブだし、そゆことすんのに抵抗あると思うんだよ」

律「だから強引なのは逆効果だ。それにあせる必要ないと思うぞ? ほら、人は人だしさ。自分たちのペースで進んでいければいいだろ?」

紬「わかったわ……じゃあしばらくは妄想だけでガマンするね。ちなみに最近お気に入りの妄想は………」

律(聞いてもないのに語りはじめたよ……)


~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~


律「………」

紬「…そこで澪ちゃんがわたしの◯▽□×を……」

律(いったいいつまでつづくんだ………)ゲッソリ

律「あのさぁムギ…」ボソ

紬「えっ?? もっと露出の高い格好で迫った方がいいかしら?!」

律「言ってないし」

律「…コホン。妄想はさておきだな」

律「もっと高校生らしい付き合い方でいーんじゃねーの。
  ほら、休みの日にふたりで遊びに行ったり、帰ってから毎日電話したり…」

律「好きな人のさ。声を聞けたり、一緒にいられたりするだけで楽しいじゃんか」

紬「りっちゃんってば乙女~~~」

律「はい、相談タイムしゅ~りょ~」

紬「ごめんなさいごめんなさい! おねがい! もうちょっとだけ話を聞いて!」

律「もう十分聞いたよ。……とにかくあせらないように、じっくり付き合うこと。先は長いんだから」

紬「…………」

律「………?」

紬「…………わかってるの」

紬「あせっちゃダメだってことはわかってるの。だけど…」

紬「遊びに誘うのもわたしからばっかりだし、」

紬「電話もメールもほとんどわたしからだし、」

紬「手をつなぐのだって、恥ずかしい……って。あんまりしてくれないの」

紬「こんなかんじでほんとうに付き合ってるって言えるのかな、って……」

紬「澪ちゃん、ほんとうにわたしのこと好きなのかな、って……」

律「うーん………」

紬「澪ちゃんがわたしのこと、ほんとうに好きかどうか、」

紬「りっちゃんからさりげな~く訊いてもらうことできない?」

律「えぇ~…」

紬「おねがい! おねがいだから!」

律「でもさー、ムギと澪が付き合ってるのって一応みんなにはナイショってことになってるだろ?」

紬「うん。澪ちゃん、恥ずかしいから誰にも言わないでくれって」

律「いかにも澪が言いそうだよな。約束破ったらアイツ、めちゃくちゃ怒るぞ」

律「第一、わたしにバラしてる時点でそーとーヤバいんだからな」

紬「だって…付き合い始める前からりっちゃんには相談してたじゃない。それなのに黙ってたら悪いもの」

律「うん……まぁ…」

紬「それにバレなきゃ大丈夫だから!」

紬「だからお願い! こんなことりっちゃんにしか頼めないの! お願いします!!」

律「う~ん………」




梓「それで引き受けちゃった、ってわけですか」

律「だってあんまり一生懸命に頼んでくるからさ」

梓「そうですねぇ。たしかに付き合って半年ですか」

律「半年と12日な」

梓「珍しく細かいですね」

律「ムギにしつこく刷り込まれちゃって」

梓「はぁ。ま、ムギ先輩が不安になるのもわからないでもないですけど。それだけたってるのに、キスはおろか手をつなぐのもたまにってのは…」

律「わたしたちなんか付き合う前にしちゃったからな」

梓「勢いだったとはいえそれはそれでどうかと思いますけどね…」

梓「で……澪先輩の反応はどうだったんですか」

律「え? 澪の反応?」

梓「だから訊いたんでしょ。ムギ先輩のことどう思ってるのか」

律「いや? 訊いてないけど?」

梓「訊けよ」

律「だってさぁ~、ムギに頼まれて訊いたってことがバレないように訊かないといけないんだぜ?」

律「…ってことは、ムギと澪が付き合ってること知らないフリしつつ、澪がムギのことどう思ってるか訊かなきゃなんない、ってわけじゃん」

律「無理っしょ~。そんな高度なことわたしにできるわけないっしょ~」

梓「じゃあ引き受けないでください」

律「それはそうなんだけどさ。なんとかしてあげたいわけじゃん?」

梓「“わけじゃん?”じゃねーです。安請け合いしないでください、どーするつもりですか」

律「そこで梓ちゅわんにお願いがありまして」

梓「キモい声出すのやめてくれますか?」

律「まぁまぁそ~言わないでさっ。梓のほうからこそ~っと澪に訊いてみてくんない?」

梓「えー…ヤですよ。なんでわたしが代わりに探り入れなきゃいけないんですか」

梓「そもそも澪先輩とムギ先輩が付き合ってるってナイショなんでしょう? わたしにバラしていいんですか?」

律「それは…わたしと梓の仲じゃん? 梓が黙っててくれればバレないわけだし」

律「なぁ~、た~の~む~よぉ~~あ~ずさぁ~~」

梓「澪先輩に頼むのときと同じトーンで喋るのやめてくれます? 虫酸が走るんで」

律「ごめんごめん。でもほんっと、梓にしか頼めないんだよ」

律「だってさー、澪って梓には優しいじゃん? 同じこと訊いたとしてもさ、わたしならゲンコツ喰らうかもしんないけど、梓に対してそんなヒドいことしないだろ?」

梓「それはそうですけど…いきなりわたしがそんなこと訊いたらゼッタイ不自然でしょう」

律「そこはさ! うま~いことやってくれればいいからっ」

梓「押し付けないでください。…ご自分でうま~いことされたらいいじゃないですか?」プイ

律「そんなこと言わないでっ。な? あ~ずさっ」ギュ

梓「……ちょ、どこさわってるんですかっ」ビクン

律「きょうはりっちゃん、がんばっちゃうからさっ。だから頼むよ、なっ?」

梓「あした学校ですよ…こーゆーの、“高校生らしいらしい付き合い方”じゃないと思うんですけど」

律「わかってて日曜の夜に誘ったのは梓じゃん」

梓「だって……せっかく親いないし」

律「だろ~、てなわけで3回戦に行きますかっ。ついでにムギの件もよろしくな」チュ

梓「あっ ちょ くびんとこダメですって…」

律「バレないバレない」チュッチュッ

梓「みんな案外目ざといんですから……え、ちょっ………あっ、もうっ…あっあっ……ん…」




梓「…というわけでして」

唯「え~っとつまり…」

唯「あずにゃんの代わりにわたしが澪ちゃんに訊いてこい、ってこと?」

梓「はい。お願いできませんか?」

唯「確認だけどさ。澪ちゃんとムギちゃんが付き合ってることはナイショなんだよね?」

梓「そうですね」

唯「ナイショになってるからもちろん、わたしもあずにゃんも知らないってことになってるわけだよね?」

梓「そうですね」

唯「付き合ってることも、イマイチうまくいってないことも知らないフリしつつそこんとこどうなの?…って訊かなきゃいけない、ってことだよね?」

梓「そうですね」

唯「わたしがそんな器用なこと、できると思う? 思わないでしょ?」

梓「そうですね」

唯「はい。じゃあこの話はおしまいね」

梓「そうですね……じゃなくて!」

梓「ほら。澪先輩って和先輩と仲いいじゃないですか。あのひとなら頭よさそうだし、澪先輩の信用も勝ち得てそうだから、うまく訊いてくれるかな、って」

唯「その言い方だとまるでわたしが頭悪くて澪ちゃんの信用もないっていう風に聞こえるけど?」

梓「そうですね」

唯「はい。じゃあこの話はおしまいね」

梓「そうですね……じゃなくて!」

梓「いや…唯先輩には唯先輩にしかないすごいところがたくさんあるんですから」

唯「ちなみにどこ?」

梓「え……………っとぉ…」

唯「気分が悪いなぁ…」

梓「言い方が気に障ったのなら謝ります。でもこんなこと唯先輩にしか頼めなくて…」

唯「和ちゃんに直接お願いしたらいーじゃん」

梓「だってわたし、和先輩とそんなに親しいわけじゃないですし」

唯「まぁそれもそうか」

梓「そこで唯先輩に頼んでなんとかしてもらえないかと」

唯「う~ん…」

梓「なにが気に入らないんですか」

唯「いやさーこの話、わたしにメリットなくない?」

梓「唯先輩って損得勘定でしか動けないひとだったんですね。失望しました…」

唯「なんでそうなるのかなぁ…それにさぁ、和ちゃんへのお願いならわたしじゃなくて憂に頼めばよかったんじゃないの」

梓「そう言われるとそうですね。じゃあそうします」

唯「んん? ちょっと待って」

梓「なんですか。もういいです。薄情な唯先輩には用はないです」

唯「いやいや…憂の名前が出た途端引き下がるとかおかしくない?」

梓「なにもおかしくないです」

唯「これじゃまるでわたしより憂の方が頼りになるみたいじゃん?」

梓「知らなかったんですか?」

唯「んんん?」

梓「唯先輩は憂のこと、頼りにならない子だと思ってるんですか?」

唯「そんなわけないよ! 自慢の妹だよ!」

梓「ほら」

唯「いやだからそうじゃなくて…あのさ、わたし、憂のお姉ちゃんなんだけど…」

梓「知ってます」

唯「妹より頼りにならないお姉ちゃんなんている?」

梓「はい。ここに」

唯「……」

梓「事実そうじゃないですか。唯先輩はわたしのお願いを聞いてくれない薄情者なわけですし」

唯「言い方にトゲがあるなぁ…」

唯「でもそれを言うなら憂だってお願いを聞いてくれるどうかわかんないでしょ」

梓「憂は聞いてくれますよ」

唯「なんで断言できるのさ」

梓「憂が損得勘定で動く人間に見えますか? 友人が困ってるのに見捨てるような薄情者に見えますか?」

唯「そんなわけないよ! 憂は自慢の妹だよ!」

梓「じゃ、そういうことで」

唯「あーもう! わかった! わかったよ! 訊くよ! 訊けばいいんでしょ!」

梓「さすが唯先輩です。それでこそ唯先輩です。尊敬してます」

唯「ちっともうれしくない……」

梓「お礼と言ってはなんですが、今日一日は練習サボっててても抱きついてこられても文句言わずガマンします」

唯「いいよ……そう言われるとかえって抱きつく気がなくなるし、練習も頑張りたくなるよ…」

梓「それはなによりですね」

唯「それに最近のあずにゃん、抱きつくとメスっぽい匂いするし」

梓「◯$×?▽!□@&◆#?」

唯「べつにぃ、わたし達も高校生だしぃ。そーゆーことするのが悪いって思わないけどさ~あ。ほどほどにしときなよぉ?」

梓「な な な な な 何を根拠に???」

唯「ん……ナマナマしいからあんま具体的に言いたくないんだけど………くび」チョイチョイ

梓(……だから言ったのに!!)

唯「りっちゃんにも言っといてあげなよー」

梓「」

唯「あれ? バレてないと思ってたの? 視線でわかるよーアイコンタクト多すぎ。バレたくないならもっと要領よくしなきゃねー」




唯「かくかくしかじか………ってわけで頼むね和ちゃん」

和「へぇ」

唯「ちょっとちょっとぉ、気の無い返事しないでよぉ」

和「よく考えてみなさいよ」

唯「?」

和「わたしがコイバナなんてするタイプに見える?」

唯「みえない」

和「というわけで無理ね。あきらめなさい」

唯「待って! ちょっと待って!」








和「   はい、ちょっと待ったわ」

唯「さぶいよ…ぜんぜんわらえないよ…そういうのやめたほうがいいよ……」

和「……………」

和「唯はわたしにお願いがあるのよね? 自分の立場わかってる?」

唯「いや……わかってるけどさ。こういうことはちゃんと言わないと、和ちゃんが恥かくでしょ。親切心だよ」

和「…はっきり言ってくれるわね」

唯「わたしだって和ちゃんが公衆の面前でスベるところ見たくないよ…それにこんなことはっきり言えるなんてわたしか憂くらいじゃん」

和「そうね。ありがとう。恥をかくところだったわ」

唯「わかってくれたならいいよ」

和「もっとウケる回答を磨かないとダメね」

唯「和ちゃんは一体なにを目指してるの?」

和「だいたいアンタ達けいおん部の中でそうゆう話しないの? コイバナとか」

唯「いやー…かえって部内でアレコレあると話しにくいんじゃないかな」

唯「だから部外にいる和ちゃんに対しての方が話しやすい、っていうか」

唯「和ちゃんは、澪ちゃんに信用されてそうだし。わたし達には話しにくいことでも和ちゃんには言えるじゃないかなーって」

和「わたし、言うほど澪の信用を勝ち取ってるのかしら」

唯「和ちゃんを信用してない人なんていないよ! いたとしても人を見る目が腐ってる人だよ!」

和「そうかしら……///」

唯「コイバナはガラじゃないけどね」

和「そうなんだ。じゃあわたし、生徒会行くね」スタスタ

唯「まってよぉ~おねがいたすけて! わたしの人間性と姉としての立場がかかってるの!」

和「やれやれ…わかったわ。でもあんまり期待しないでね」

唯「やったぁ! 和ちゃんだいすき!」ギュ

和「もう…調子がいいんだから。ところで一つ確認しと起きたいんだけど」

和「澪とムギが付き合ってるのは一応ナイショってことになってるのよね」

唯「そうだよー」

和「でも、もうけいおん部の全員にバレちゃってるんじゃないの」

和「澪、それに気づいたらすごく怒るんじゃないかしら」

唯「……」

和「……」

唯「……」

和「そのあたりはバレないように探りを入れてみるわ」

唯「よろしく……」

和「人に隠すようなことでもないと思うけど」

唯「だよね~。バレてもいいよね、別に。わたし達なんか隠す気ゼロなのにみんなぜ~んぜん気づかないし」

和「唯はもともとスキンシップ多いからじゃない?」

唯「そうかな~? この際だしわたし達のこともみんなに言っちゃう?」

和「そうね。でもいざお披露目するとなると照れくさいわね」

唯「むずかしいねえ~」




放課後、喫茶店。

澪「めずらしいな、和から誘ってくれるなんて。生徒会よかったの?」

和「ええ。最近はそれほど忙しくないから。こっちこそいきなり誘っちゃって大丈夫だった?」

澪「けいおん部のこと? 気にしないでいいよ。どうせ練習しないでお茶飲んでるだけだから」アハハ

和「そっか。じゃ、わたしと二人でお茶してても大丈夫?」

澪「? だって和が“二人で”って言ったんだろ? それとも他に誰か誘ったほうがよかった? 唯とか」

和「ううん、そうじゃなくて…(難しいわ…)」

和「澪って休みの日はなにしてるの?」

澪「どうしたんだ急に?」

和「えっと……同じクラスメイトとしてちょっと気になるっていうか…」

和「こうやって誰かとふたりで出かけたりすることもあるのかしら?」

澪「あー、律とは出かけたりするよ。でもアイツ最近付き合いわるいけど」

和「ふぅん…唯やムギとは?」

澪「うーん。そんなに」

和(なかなか核心に迫れないわね)

澪「今日は何かあったのか?」

和「えっ、どうして?」

澪「だって…急だったし。それに“二人で”って何度も言うから…何か相談したいことでもあるのかな、って」

和「………」

澪「……のどか?」

和「わたしね、実は唯とつきあってるの。中学のときから」

澪「…え」

和「ひいた?」

澪「ううん! そんなことない! いきなりだったからびっくりしちゃって…」

和「隠すつもりはないんだけど、みんな気がつかないし。なかなか言う機会もなくて」

和「澪は……誰かそういう人っている?」

澪「えっと…わたしは…」

和「………」

澪「………」

和「…ごめん。言いたくなかったらいいの。ちょっと気になっただけだから」

澪「あ、いや…そういうわけじゃないんだけど。なんていうか、うまく言えなくて」

和「?」

澪「つきあってる、って言えるのかどうかよくわかんなくて」

和「……ん?」

澪「じ、じつは…」

澪「あっ、これゼッタイナイショだぞ!」

和「ええ。澪が言うなって言うなら言わないわ(もうみんな知ってるし)」

澪「半年くらい…前なんだけど。ある人に告白されたんだ」

澪「それ以来その人と…、夜に電話したりメールしたり、休みの日にふたりでときどき出かけたり…」

澪「でもその…特にそれらしいことをしてるってわけでもなくて…」

和「“それらしいこと”って??」

澪「え……えーっとその…その…」

和「セックスでしょ」

澪「はっきり言うなよ!」

和「したらいいじゃない。つきあってるんでしょ」

澪「なななななにを…」

和「なにを照れてるの? 悪いことでもないと思うけど?」

澪「ダメだろ! 成人するまではダメだって中学のとき保健の授業で……」

和「そんなの誰も守っちゃいないわよ」

澪(わたしの知ってる和じゃない……!)

澪「じゃ、じゃあその……和も……唯と…その…し、してる……のか?」

和「セックス? そりゃあしてるわよ、セックス」

澪「二回も言わなくていいから!」

和「澪もさっさとしなさいよ。好きなんでしょ?」

澪「………」

和「………澪?」

澪「…正直よくわかんないんだ」

和「好きじゃない、ってこと?」

澪「わかんない…でも、は、はだかをみたいとか…からだにさわりたいとかさわってほしいとか…よくわかんないしこわいし……とにかくそういう気になれなくて…」

澪「キ、キ、キ、……キスもまだだし///」

和(顔から湯気が出てるわ…)

澪「わたし、おかしいのかな…」

和「そんなことないわよ。人それぞれだもの。自分の気持ちに従って、自然に任せたらいいと思うわ」

澪「……視線がさ。ときどきこわいんだ」

和「視線?」

澪「道ですれ違う男の人とか…じろって見てくるのがきもち悪くて。中学の頃の男子も嫌だった」

澪「わたしのこと、“そういう風にしか見てない”っていう視線。ベタってして、ギトギトして、すっごくきもち悪い」

和「……それと一緒にかんじる、ってこと?」

澪「ううん……ちがうよ。ちがうってわかってる。でも……ときどきおんなじに感じるんだよ。わたしのこと、そういう風にしか思ってないのかな、って気がしてすごく嫌なんだ」

和「気持ちはわかるわ。でもね、相手の子が、澪のこと好きだからそういうことしたい、って思うのも自然なことなのよ。わかってあげて」

澪「………わかってる、わかってるけど…」

和(……どうしたものかしらね)




和「…というかんじだったわ」

唯「さっすが和ちゃん!」

律「てゆーか完全にみんなにバレてるけどこれマズくないか」

梓「それは今更でしょう」

和「その件もマズいけどあのふたり、ちゃんとフォローしてあげないとけっこうヤバイわよ」

律「ムギは先に進む気満々だからなぁ…」

梓「ムギ先輩にはブレーキをかけるとして、」

唯「澪ちゃんがその気になるにはどうしたらいいのかなぁ…」

和「それ以前に本当にムギのこと好きかどうかもあやしいわよ…」

梓「じゃあどうしてつきあうことにしたんでしょう?」

律「それは…好きだったからだろ」

唯「でもチューしたりエッチしたりはしたくない、と」

梓「うーむ」

和「ペースなんて人それぞれだからいいじゃない」

唯「あれ? でもわたし達の初エッチってつきあった次の日だったじゃん」

和「それは…ほら、わたし達はつきあい始めるまでが長かったから。ていうか唯、あれは当日よ」

唯「あれ? そだっけ?? そもそもつきあいはじめたきっかけってなんだったっけ???」

和「まぁ……いつの間にかそうなってた感はあるわね」

律「わたし達もつきあう前にしちゃってたしなー」

梓「ちょっ、なにどさくさに紛れて暴露してるんですか!」

梓「わたし達が早すぎるのか、澪先輩たちが遅すぎるのか、それはさておき…」

和「ゆっくりふたりを見守るしかない、ってことね」

律「ムギにはあせらないように伝えておくよ」

梓「あとはしらんぷりですね」

唯「あー、わたしそれ自信ないー」

梓「勘弁してください。失言で部内カップルが破綻したら、けいおん部が存続危機に陥りかねません」

和「そういえば、昔生徒会でもそんなことがあったらしくて、まだ任期中なのに当時の会長が辞任しちゃって…」

律「ぐはー、そんなことになったら目も当てられねー! 唯! ゼッタイ口を滑らすなよ!」

唯「えー、りっちゃんには言われたくないよー。わたしりっちゃんほどバカじゃないし」

律「なにぃー! わたしこそ唯ほどマヌケじゃねーよ!」

唯「うっそだー、そもそもりっちゃんがあずにゃんにバラしたからこうなったんじゃん」

律「う…それは…そうだけど…でもこないだの小テストでは唯より点高かったしー!」

唯「バッカじゃないの。話すり替わってるし」

律「すり替わってねーよ。澪とムギがつきあってる、って話だろ!」

唯「そうそう澪ちゃんとムギちゃんがつきあってる、って話。ちゃんとわかってたんだ、へー意外」

梓「まあまあ落ち着いてください。澪先輩とムギ先輩がつきあってる、ってことはみんな知らないフリをしておく、ということで」

和「大丈夫かしら…こんなんで澪とムギがつきあってること、ナイショにしておけるのかしら…」

唯「大丈夫だよ和ちゃん! わたしこう見えて口がカタイから! 澪ちゃんとムギちゃんがつきあってるってこと誰にも言わない!」

律「さっきと言ってること逆じゃねーか…まあとにかくだ。澪とムギがつきあってることは気づかないフリをしてあったかく見守ろうぜ」

梓「はいです。澪先輩とムギ先輩がつきあってるなんて、わたし知りません」

澪「へー。わたしとムギってつきあってたんだ」

律「は? いまさらなに言ってたんだよ、そんなこともうみんな知ってるよ」

律「でもちゃんと黙っておけよ? 澪とムギがつきあってるのはナイショなんだから」

澪「ふぅん。なんで?」

律「バッカ、澪が怒るから決まってんだろ。ホントは誰にも言わないってことになってるんだからな!」

澪「じゃあなんで律が知ってるんだ?」

律「それはムギが直接教えてくれたから………アレ?」

梓「律先輩って本物のバカだったんですね」

唯「知ってたけどね」

和「………ハァ」

律「………いつからいたの?」

澪「すり替わってるうんぬんぐらいから」

律「ずっと聞いてた?」

澪「うん」

和「ごめん、澪。これには訳があって」

澪「いいよ。なんとなくわかるから。頼まれただけなんだろ? 和は」

和「そうなんだけど…話が込み入ってて」

澪「うん。わかってる。一番悪いのはここにいる誰でもない、ってこと」

律「いや……ちょっと待て澪」

澪「でもとりあえず律は殴っとく」

ガツン!

律「うう…なんでこんな目に…」

澪「………………」

唯「澪ちゃん! ムギちゃんは悪くないよ! ムギちゃんは…」

梓「そうですよ! ムギ先輩はちょっと不安だっただけです!」

澪「それと約束を破ったことは別だろ?」

ガチャ

紬「みんな遅れてごめんね~、今日はチーズタルトを……あれ?(変な空気)」

律「ムギ……あの…ごめん」

澪「…」ツカツカツカ


ガチャ バタン!


紬「澪ちゃん…?」




澪(………)スタスタ

澪(………)スタスタ

澪(……ムギのバカ)

澪(恥ずかしいから誰にも言わないで、って約束したのに)

澪(嘘ついてみんなにバラしてたんだ)

澪(遊びにいったときどうだったとか、電話でなに話したとか、)

澪(全部みんなにバラしてたのかな)

澪(別にバラされて困ることなんてないけど)

澪(ドヤ顔でひけらかしたりしてたのかな、って思うと…)

澪(わたしはやめて、って言ったのに…約束…したのに…)

澪(…………)ジワ

紬「澪ちゃん!」ハァハァ

澪「…………!」

澪「…………」ゴシゴシ

紬「……澪ちゃん?」

紬「いきなり出て行っちゃうから……これ、澪ちゃんの分のチーズタルト」ハイ

澪「……いらない」プイ

紬「おいしい、って評判のお店なの。普段は並ばないと買えないんだけど、昨日知り合いの人がお土産にくれて…」

澪「いいよ。いらない」

紬「チーズの風味がしっかりしててね…でもあんまりしつこくなくて…」

澪「いらない、って言ってるだろ!」パシ

紬「あっ」ツルッ ポテ

澪「あ」

澪「………」

紬「エヘヘ…ごめんね、落としちゃった」

紬「ぐちゃぐちゃになっちゃったからもう食べられないね」

紬「でもね、このチーズタルト本当においしいの。また持ってくるから今度は食べてね」

澪「…いらない」

紬「あっ…チーズ、苦手だったっけ?? ごめんね気づかなくて…、じゃあ明日はガトーショコラ持ってくるね。好きだったよね? ガトーショコラ」

澪「いらない」

紬「わ、和菓子の方がよかった?? 暑くなってきたし水ようかんなんていいかしら?? わたしね、すっごくおいしい水ようかん知ってるの!!」アセアセ

澪「いらない」

紬「そっか…」

澪「………」

紬「………」

澪「………」

紬「………」

澪「………」

紬「澪ちゃん……あの…あのね……」

澪「わたし、帰る」

紬「待って!」

澪「…………」

紬「待って……あのね…あの……えっと…わたし…その…わたし…わたし…」

澪「…いいよ、もう」

紬「……わたしのこと、嫌いになった?」

澪「………べつに」

紬「……じゃあ、好き?」

澪「…………」

紬「わたし、澪ちゃんのことが好きよ?」

紬「だからね…その…わたし、澪ちゃんと……キス……したいな、とか、そういうこと思っちゃうの」

紬「それなのに、全然そういう雰囲気にならないから…付き合って半年と19日もたつのに…」

紬「だからその…わたし不安で…考えすぎかもしれないんだけどそれで…」

紬「りっちゃんに相談にのってもらってたの。約束を破ったのは悪かったかもしれないけど…でも…でもね…」

澪「」カチン

澪「……“かも”ってなんだよ」

紬「………え?」

澪「悪かった“かも”ってなんだよ」

澪「悪いに決まってるだろ! 約束破ったんだから!」

紬「だからそれには理由があって…」

澪「なんだよ…わたしが悪い、っていうのか」

紬「ちがうわ! そうじゃない…そうじゃなくて…」

澪「もういいよ」

紬「よくない!」

澪「もういい!!」

紬「……っ」ビクッ!!

澪「………もうこれ以上話しても仕方ないよ。ムギが約束を破ったのは事実だろ。それにわたし、」

澪「ムギとそういうことしたい、って思えないから」

紬「…え」

澪「じゃあな」



背を向けたわたしに、ムギはもう声をかけてこなかった。
わたしは一度も振り向かずそのまま前を向いて歩き続けた。
しばらくして曲がり角を折れるところで振り返ると、大きな夕焼けの中に黒い影がぽつんと見えた。
それがムギだったのかどうか、わたしにはわからなかった。




二学期!

律「おいーっす」

澪「…おはよ」

律「ん? どした、元気なくない?」

澪「そんなことないよ」

律「ひっさしぶりだなぁ学校。起きれてよかったよ」

澪「わたしがモーニングコールしたおかげだろ」ポカ

律「いて。わかってますアリガトウゴザイマス」

澪「わかってるならよろしい」

律「そーいやさ。どうだった? 夏休み」

澪「どうだった、って…まぁボチボチ」

律「ボチボチ、ってなんなんだよー。ほら、なにかあるだろ? あったんだろぉ~?」

澪「夏期講習行ってた」

律「それは知ってる。それ以外にもあるだろ、ほらぁ~」

澪「んー、本読んだり、ベース弾いたり、詩を書いたり…」

律「またまた~、も~言っちゃえってば!」

澪「しつこいな…ムギのこと聞きたいならはっきりそう言えよ」

律「だって…怒るじゃん」

澪「今更怒んないよ」

律「……そか。で。どうだったんだ? どっか行ったりしたか?」

澪「どうもこうもないよ。会ってないし、連絡もとってない」

律「………は? なーに隠してんだよ? 照れてんのか?」

澪「隠してないってば」

澪「あの日からずっと、ふたりきりで会ってないし、メールも電話も一切してない」

律「はぁ~~~~!???!!!?」

律「マジか…マジなのか……」

澪「嘘なんかつかないよ」

澪「あっ、思い出した。そういえばお盆に中古レコード屋巡りしたよ」

律「なんだよ…デートしてるじゃんかよ…」ホッ

澪「ひとりで」

律「ダメじゃねーか!」

律「なんだよそれ…部室でみんな一緒にいるときは全然普通だったじゃん! 普通にお茶してたし、練習もしてたじゃん!」

澪「そうだよ」

律「合宿だって行ったじゃん! 盛り上がったじゃん!」

澪「そりゃ…まぁ…」

律「あのさ…もしかして“別れた”んじゃないよな……?」

澪「さぁ……」

律「さぁ……ってなんだよ!」

律「わたし達ちょ~責任感じてめちゃくちゃ心配してたんだぞ!」

律「でも次の日、二人とも全然普通だったし、あーよかった仲直りしたんだーって安心してたのに…」

律「なにしてんだよ!」

澪「なにしてんだ、って言われても……」

澪「なにもしてないし」

律「それがダメだって言ってんの!!」

律「あっそうだ! 誕生日どうしたんだよ、ムギの誕生日!」

澪「えっ、みんなでお祝いしただろ」

律「そんなん知ってるわ! ふたりでお祝いしなかったのか、ってことだよ!」

澪「いや…とくに…なにも……」

律「………おい」

澪「だってムギからは特に連絡もなかったし」

律「そりゃ自分で自分の誕生日祝ってほしい、なんて澪に直接言えるわけないだろ」

澪「…もうわたしのこと好きじゃないんだろ。祝ってほしいなんて思ってなかったんじゃないか」

律「……みお」

澪「な、なんだよ…」

律「ほんっとうにそう思ってるのか?」

澪「………」

律「……ムギな。めっっっっっっちゃくちゃたのしみにしてたんだぞ、誕生日」

律「夏休みもな。澪とアレしたいコレしたい、どこに行きたい、ってそんな話ばっかしててさ」

律「…………ムギの気持ち、考えたことあるか?」

澪「………」

律「今日、ムギとちゃんとふたりで話しろよ」

澪「話すってなにを……」

律「澪。お前はムギのことどう思ってるんだ? 好きなのか? 好きじゃないのか?」

澪「わたし………」

律「どうするかはふたりのことだけどさ。ちゃんと決着、つけてやれよ」

澪「りつ…」

律「なんだ?」

澪「ムギ……わたしのことなにか言ってたのか?」

律「なにも言ってないよ。あの日以来ムギはなにも言ってこない。ムギはムギなりに約束を破ったことを悪いと思ってるよ、きっと」

律「確かにムギも悪いとこあったと思うよ。でもさ、もうちょっと寄り添ってやれよ」

律「それがつきあう、ってことなんじゃねーの」

澪「…」

律「かっこつけねーで思ってることをそのまま言えばいいんだよ。それしかできないだろ」

澪「……」コクン




昇降口!

ザーザー

澪(…………)

澪(……夕立かぁ)

唯「あれ? 澪ちゃん今帰り?」

和「もしかして傘、持ってないの?」

澪「唯、和………うん。まさかこんなに降ると思わなくって」

和「澪にしては珍しいわね。わたしの傘貸そうか?」

唯「わたし達は相合傘で帰るから♪」ムフフ

澪「ううん。大丈夫。きっともうすぐやむから」

唯「そーかなー? 降り出したとこだよ?」

澪「うん。大丈夫」

和「……」ピーン

和「ほら、唯帰りましょ」

唯「えー澪ちゃんホントに大丈夫なの?」

和「大丈夫でしょ。本人がそう言ってるんだから」

唯「えぇぇー…澪ちゃんに傘貸してかえろーよーそしたら相合傘できるしぃ」

和「はいはい。じゃあわたしは自分の傘使わないから。これでいいでしょ」

唯「あ、そっか。さっすが和ちゃん」エヘヘ

和「じゃあね、澪(がんばって!)」グッ

澪(……和!)

唯「じゃーねーみおちゃーん」ブンブン

澪「ああ、気をつけて」



ザーザー


澪(全然降り止まない)

澪(その方が都合いいけど)

紬「……澪ちゃん?」

澪「……ムギ」

紬「どうしたの? もしかして傘、持ってないの?」

澪「う、うん……うっかり忘れちゃって。ム、ムギは…?」

紬「わたしも」

澪「…そっか」



ザーザー


澪(作戦失敗したなぁ)

紬「やまないね」

澪「そうだな」

紬「先生にお願いして学校の傘借りよっか?」

澪「あ、いやその…ちょっと待って!」

紬「??」

澪「ああー! こんなところにかさがー かばんにいれてたのわすれてたー(棒)」

紬「……」

澪「……」

紬「……」

澪「………」

澪「はは……ごめん。持ってきてたことわすれてた」

澪「………よかったら、一緒に帰らないか?」

紬「………」コクン



シトシト


澪「……」

紬「……」

澪「……」

紬「……」

澪(か、かいわかいわ~…)

澪「あ、あのさっ」

紬「……?」

澪「日本の気候は楽器にやさしくないよなっ」

紬「梓ちゃんも同じこと言ってたね」

澪「へ? そうだっけ?」

紬「うん」

澪「そ、そっかぁ~…」

澪「……」

紬「……」



パラパラ


澪(ダメだ…気の利いた話題を思いつかない…)

澪(バカッ! わたしの大バカッ!!)

澪(うう…わたし、なにがしたいんだ…)

澪(あぁ…結局交差点まで来てしまった)

紬「じゃあ澪ちゃん、ここまでで大丈夫だから」

澪「いやっ、でもっ…そうだ雨! 傘! 傘がないと濡れちゃうから駅まで送るよ!」

紬「ありがと。でももう小ぶりだし」

澪「ダメだっ! 小ぶりでも濡れちゃうからダメだ! 風邪引いたら大変だから!」

紬「そ、そう…? じゃあ甘えちゃおう…かな」

駅!


紬「あー…電車遅れてるみたい」

澪(やったぁ! 夕立ありがとう!)ウルウル

紬「じゃあ駅まで来たからもう大丈夫。わざわざありがとう」

澪「う、うん……」

澪「せ、せっかくだから……電車が来るまで……」

紬「でも……悪いわ。けっこう遅れてるみたいだし」

澪「わ、わたし…最近電車にハマってて! だから走ってるとこ見たくて!」

紬「……そう?」

澪(よし………よし………自然だった…今のは自然だった…)

紬「……」

澪「……」

紬「……」

澪(なにをやってるんだ……今こそ…今こそ…)

紬「こうしてふたりきりになるの、久しぶりだね」

澪「…ふぇっ?! あ、そ、そうだなっ」

紬「なぁに、澪ちゃん、変な声だして」クス

澪「ハハ…なんか鼻がつまっちゃって」

澪「……ほんと。久しぶりだな」

紬「……そうだね」

紬「澪ちゃん、夏休み中なにしてた?」

澪「うーん、夏期講習とか。あとはベース弾いたり、本読んだり、詩を書いたり。ムギは?」

紬「家のことがアレコレあって…ちょっとの間だけフィンランド行ってたよ」

澪「へー、いいなぁ海外かあ」

紬「そうだ、これお土産」ハイ

澪「………飴?」

紬「うん。有名なお土産。澪ちゃんにどうしても食べてほしくって」

澪「…そっか。ありがと」

澪「ごめん。わたしもどっか旅行にでも行ってたらお土産渡すんだけど」

紬「ううん。気にしないで」

澪(夏休み、ふたりでどこか遊びに行きたかったな…)

澪(わたしが変な意地張ったりしなければ楽しい夏の思い出作れたのかな)

澪(…………でも元はと言えばムギが悪いんだし)

澪(…………なんでわたしが謝らないといけないんだ)

澪(そうだよ! わたしは悪くない!)

紬「……どうしたの? 怖い顔して」

澪「なんでもない!」ブンブン

澪(ダメだ。意地を張るのはやめようって決めたんだ!)

澪「な、なぁ…ムギ」

紬「なぁに?」

澪「こ、今度の日曜、ふたりでどっか出かけないかっ?」

澪(やった! 言えた!)

紬「……いいの?」

澪「へ? いいの?って……そりゃあ…」

澪(え? え?? いまの反応なに?? どゆこと??)

澪(ムギ……わたしと遊びにいきたくない?)

澪(わたしたち…つきあってるんじゃなかった?)

澪(ひょっとしてもう終わってた??)

澪(わたしがひどいこと言ったから…夏休みの間ぜんぜん連絡取らなかったから…)

澪(おわり?? ほんとうにおわりなのか??)

澪「…………」

紬「…………?」

澪「…………ヤダ」

紬「…みおちゃん?」

澪「うぇぇぇ………」ポロポロ

紬「ど、どうしたの急に泣き出したりして…」

澪「だって……だって……ムギぃ…」

紬「もぅ…泣いてちゃなに言ってるかわかんないよ?」

澪「ムギ……わ、わたしの…こと………キライ? キライになった??」

紬「……澪ちゃん」

澪「キライ……なんだろ? わたしのこと…」

澪「わ゙たしが……ヒック……ヒドイこと…した…から…」

澪「ムギに……ヒック…つめたく………したから」

澪「ごめん…………ごめん…………」

澪「あやまるから…………だからおねがい…」

澪「キライに………ヒック…ならないで……ヒック」

紬「澪ちゃん………」

澪「ムギ……ムギ……」

紬「澪ちゃん」

澪「…………」

紬「わたしが澪ちゃんのこと、キライになるわけないわ」

澪「…………」

紬「…そんなこと、ゼッタイにないから」

澪「…………ホント?」

紬「本当よ。むしろわたしの方が澪ちゃんに嫌われちゃったと思ってた」

澪「………」

紬「ごめんね。約束破って」

澪「………グズ」

紬「わたし、自分のことばっかり考えてて、澪ちゃんのこと傷つけちゃって…ごめんなさい」

紬「澪ちゃんと一緒にいるとね、もっと一緒にいたくなっちゃうの。いっぱいさわりたくなっちゃうし、さわってほしくなっちゃうの」

紬「でもそうしたらきっと澪ちゃんのこと傷つけちゃう。だからね、距離を置こうと思ったの」

紬「落ち着いて澪ちゃんと向き合えるようになるまでガマンしよう、って」

紬「それができるようになったらもう一度澪ちゃんとおつきあいしたいな、って思ってたの」

澪「………」

澪「わたしの方こそごめん。ごめん……」

紬「澪ちゃんはなんにも悪くないよ」

澪「だって…誕生日プレゼントも…なにもあげてない」

紬「いいよ。澪ちゃんが隣にいてくれたらなんにもいらない」

澪「わたし……キスとか…その先のこととか…こわくて…でも」

澪「ムギが遠くに行っちゃう、って考えたら…たまらなくさみしくて…」

澪「…だからそばにいてほしい」

紬「………澪ちゃん」

紬「わたし、離れてる間もずっと澪ちゃんのことばっかり考えてたの。ずっとよ。もうずーーーーっと!」

紬「いっつも澪ちゃんのこと考えてるの! もう自分でもどうかと思うくらい!」

紬「…こんなわたしだからきっとまた先走って澪ちゃんのこと傷つけちゃうかもしれないけど」

紬「好きなの。澪ちゃんのこと、大好きなの。だからね、改めてお願い」









紬「また、わたしとおつきあいしてください」










澪「……うん」

紬「…………」ヘナヘナヘナ

澪「ムギ!? ど、どうしたんだ?!」

紬「だって…だって…仲直りできなかったらどうしようって…このまま別れちゃったらどうしようって…そればっかり考えて……」

澪「ムギ…………」

紬「みおちゃん……みおちゃん………みおちゃぁぁぁん……うぇぇぇぇぇん!!!」

澪「……ごめん」

紬「みおちゃん……みおちゃん……」

紬「……ヒック」

澪「落ち着いた?」

紬「……うん。ごめんね」

澪「いいよ。お互いさまだろ」

紬「エヘヘ…そだね」

澪「アハハ」

紬「ねぇ澪ちゃん…手、握ってもいい?」

澪「……うん」

ギュ

紬「………あったかいね」

澪「………ムギの手だって」

澪「電車、まだ来ないな」

紬「うん……でもそのほうが一緒にいられるからうれしい」

澪「…そうだな」

紬「ごめんね、帰るの遅くなっちゃう」

澪「平気。まだ日も長いし」

紬「雨、すっかりあがったね」

澪「うん…アレみて。夕日」

紬「わぁ……」


チュ



紬「……えっ」

澪「………」


紬「澪ちゃん、アレ!」

澪「え?」


チュ



紬「……しかえし」


おしまい!

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