一夏「ISなんて俺は認めない」 箒「その2」 (196)

前作
一夏「ISなんて俺は認めない」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1341283823/)

・このSSはアニメ版ISを元にしておりますが、過度な俺設定やキャラ崩壊を含みます。
これらの苦手な方は、ご覧にならないことを推奨致します。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1389234446

一夏「……」ムクッ

一夏「なんか……とてつもなくろくでもない夢を見た気がする」ポリポリ

一夏「…………」ボケーッ

一夏「もっかい寝るか」ボスッ

ラウラ「寝るな馬鹿者」ドスッ

一夏「あい……」


一夏「なんでお前がここにいるんだ?ラウラ」ムクッ

ラウラ「昨日の晩、『ダス・ボート』のディスクを貸すと言ったろ。約束通り借りに来たぞ」

一夏「それなら別に後でもいいだろ……」ブスッ

ラウラ「それともう一つ用事があってきたのだ。これを見ろ」ペラリ

一夏「ん?」

一夏「夏の終わりに縁日デート……ね」

ラウラ「……」モジモジ

一夏「あー。あの高層ホテルの廃墟潰して作ったアミューズメントプールか」

一夏「縁日広場で浴衣のレンタルもしてるのか……へぇ」

ラウラ「どうだ……行く……か?」モジモジ

一夏「いいぜ、今日は別に用事もないから」

一夏「あと『Uボート』のディスクはラックにあるから、勝手に持ってってくれ」

セシリア「やっと帰ってきましたわね」

セシリア「やはり想い人とは同じ空のもとにいたいものですわね……」ウットリ

一夏「お?」

一夏「よー、セシリアー」フリフリ

セシリア「あ、一夏さん……(まさか、私を出迎えにここに……)」

セシリア「(……と思いましたが、小脇に抱えた缶スプレーと箱と広告の束を見るに、単にプラモデルにスプレーを吹くために外に出ただけ。ってところですわね)」ガックシ

一夏「いやあ、そのうち部屋に行って誘おうと思ったんだけど、ちょうどいいや。これ行くか?」ペラリ

セシリア「夏の終わりに縁日デート……浴衣レンタル……」

一夏「オレは暇だし、そっちの都合がよけりゃってことなんだけど」

セシリア「……はい、喜んで」ニコッ



一夏「あ、ラウラがあのチラシ持ってきたって言うの忘れちまった」

一夏「まあいいか。早くジェネラルウルフにサフ吹かないと」

シャル「ただいまー」ガチャ

ラウラ「遅かったなシャルロット」ムグムグ

シャル「まあね。はい、サセボのおみやげ」

ラウラ「うむ」ムグムグ

シャル「海兵隊の皆のお陰で可変武装に活かせそうな運用データはいっぱいとれたんだけど、やっぱり移動厳しいね」コキコキ

ラウラ「そうだろうな。なにせサセボは日本の端だ」ムグムグ

シャル「ん……これって」ペラリ

シャル「(夏の終わりに縁日デート……プールかぁ)」

シャル「(この際、気晴らしに泳ぎに行こうかな?)」

ラウラ「どうした?」

シャル「いや、なんでもないよ?」

箒「(……)」サー

箒「(……また胸が大きくなったような)」サー

一夏「箒ー、いるかー?」ガンガン

箒「な……ッ?」サー

一夏「あ、すまん。シャワー中だったか。それじゃここで要件だけ言ってくぞ?」

一夏「箒さ、あのお化けホテルの跡に出来たプールってわかるか?」

箒「あ、ああ……あそこか」

一夏「そこで今日の夜から、縁日やるんだってさ。浴衣もレンタルできるって」

一夏「箒は行くか?」

一夏「つっても急だからな、別に用事があるんならいいぞ」

箒「……一夏が行くなら、いいぞ!」

一夏「よっしゃ。それじゃ五時にモノレール前で待ち合わせな」

箒「……」

箒「……一夏、できれば……その」ガラッ

箒「……誰もいない」

キーンキーンキーン

ラウラ「おぉ……」

チクショウバクライダッ!

ラウラ「……ッ!」バッ

ボガーーン ボガーーン ブシュー!

ラウラ「……」チラッ

シャル「(なんか、こういうの見てる時のラウラってかわいいよね)」

鈴「ちょっとー、入るわよー」コンコン

シャル「いいよー」

ガチャ

鈴「はい、これ。頼まれてたレシピ集」

シャル「ありがと、鈴」

シャル「どうしてもボクのレパートリーだと作れる献立がかたよっちゃうからね」

鈴「そこでビデオ見てるのは、料理作れないもんね」

ブシュー ウワー!

ラウラ「……」ワナワナ

鈴「(ん?これって……)」ペラリ

シャル「どうしたの?」

鈴「(縁日デート……かぁ)」ペラリ

シャル「あ、そのチラシ持っていく?」

鈴「うん。そうさせて貰うわね」


鈴「(……箒には悪いけど、これはチャンスよね)」ピッピッ

鈴「あ、一夏?」

一夏『おう、鈴』

鈴「あのさ、今日の夜……」

一夏『今俺からも電話しようと思ってたんだよ』

一夏『今日の夜、お化けホテルんとこに出来たプールで縁日やるからさ、行かないか?』

鈴「あ、うん!あたしもそのことで電話したの!」

一夏『んじゃ話早いな。五時にモノレール前で集合でいいか?』

鈴「うん!全然大丈夫!ありがとっ!またあとでねっ!」ピッ

鈴「……」

鈴「……なんか妙に準備が整いすぎてない?」フアンゲ

鈴「まあ、こんなこったろうとは思ったわよ」

セシリア「なんとなく予想はしていましたが……」

ラウラ「最初に誘ったのは私なのに……」ムスッ

箒「……一夏の奴」プクー

シャル「……皆、どうしたの?」

セシリア「シャルロットさんもわかるでしょう?」

シャル「いや、全然……ボクは単にサセボから帰ってきた気晴らしに泳ごうかなと……」

シャル「うん。でもみんなの反応見てたらだいたいわかるよ」

一夏「いやすまんすまん!ちょっと掲示板でイギリス海軍の新型ISの動向見てたら遅れて……」

箒「……」ゴゴゴ

鈴「……」ドドド

セシリア「……」ゴゴゴゴ

ラウラ「……」ドドドド

一夏「あの……皆さん……?なんか凄いオーラが出てますけど」

シャル「『みんなで行こう』ってよく伝えずにみんなに誘っちゃったんでしょ?縁日のこと」

シャル「命令系の誤伝達が及ぼした被害の実例って、戦史マニアの一夏ならよくわかるよね?」

一夏「……お、おう」

箒「これは」ゴゴゴ

鈴「きつい」ドドド

セシリア「お仕置きが」ゴゴゴゴ

ラウラ「必要だな」ドドドド

一夏「……申し訳ありませんでした」ペコリ

ワーワーワーワー

一夏「結局オレが使う金全部持つハメになるのかよ」

シャル「それだけで済んだってことでいいでしょ」ムグムグ

一夏「お前もどさくさに紛れて俺の金でたこ焼き食うなよ」

シャル「後でちゃんと返すってば」

箒「おい一夏、こっちに来い!次はあのりんご飴だ!」

一夏「……はいはい」スタスタ

シャル「じゃあボクも着いていこうかな、っと」

PRRRRRR

シャル「……電話?しかもシャーリーンから?」

ピ

シャル「はい、こちらシャルロット」

シャーリーン『こちらゴーマーパイルでぇーす……シャル、こないだのテストはどうもね』

シャル「どういたしまして」

シャル「で、何かあったの?」

シャーリーン『そうそう、それそれ。ワンサマーの電話にかけたんだけど、繋がらなくってさ……』

シャル「今ロッカーの中だからね、一夏の携帯は」

シャーリーン『だからそっちにかけたってワケ。これうちのボスが流した情報なんだけどさ』

シャーリーン『ウチの陸軍の研究所が何者かに襲撃されて、新型機がパクられたってさ』

シャル「……どうしてその情報を?」

シャーリーン『我らが合衆国はこのことを公表するつもりはないからよ』

シャーリーン『一応あんた達の学園にはウチのボスが手回してるみたいだけど、合衆国の国益を考えたら、国家機密級IS持ち本人にも気をつけろって伝えた方がいいと思ってね』

シャーリーン『こっちもよく情報伝わってないんだけど、ウチのボスが言うには色々と面倒な事になってる上に、ヤバいのがバックにいるって話だから』

シャル「わかった。伝えておく」ピッ

シャル「……IS強奪か」

数日後

一夏「(アメリカ陸軍……IS強奪……バックにヤバいの……か)」ペンクルクル

一夏「(あの兎耳ストレンジラブ博士の仕業なら、強奪なんてせずにアクセスして中身をいじるはずだ。福音事件の時みたいに)」クルクル

一夏「(となると、ストレンジラブ博士以外の誰か……)」クルクル

一夏「(つっても、一機で原潜一隻分の維持費がかかるISを所有できるほど裕福なテロ組織なんてあるわけないだろうし)」クルクル

一夏「(まさか、世界を影で操る秘密結社?)」ピタッ

一夏「(なワケねえよな)」クルクル

パッ

一夏「おわっ!?」ビクッ

??「だぁれだ?」

一夏「……誰だ?」

パッ

一夏「あのさ、今ちょっと考え事――」

ペチッ

??「引っかかった」

一夏「……」

一夏「誰ですか、あなたは?」

??「さあね?」

??「でもすぐにわかるわよ」


一夏「……なんだったんだ、あの人」

一夏「文化祭に関する全校集会、ね」ハァッ

箒「どうしたんだ、一夏」

一夏「この学園のノリで文化祭。って考えると、どうしても疲れそうな気がするんだ」

一夏「何やるんだろうか、だいたい想像がついてさ」ハァッ

箒「ああ……」

箒「そう考えると私も何か気が進まないな」ハァ

一夏「お前もキャピキャピしたノリ苦手だしな……」

一夏「もういっそ当日には二人でフケようか?」ハァ

箒「……それもいいかもな」フフッ

ツギハ,セイトカイチョウカラノオコトバデス

一夏「(生徒会長か。そいや俺一度も顔拝んだ事無いな)」

一夏「(前の全校集会ん時は例の無人機騒ぎで保健室だったから)」

スタスタ

一夏「(お?)」

??「えー……生徒会長の更識楯無です」

一夏「あー、なるほど」

一夏「……すぐわかるって、そういう意味ね」

箒「どうかしたか?」

一夏「いや、ただのひとりごと」ハハッ

一夏「えー、ではこのクラスの出し物の案ですが……」ワナワナ

一夏「織斑一夏のホストクラブ、織斑一夏とツイスター、織斑一夏とポッキーゲーム、織斑一夏と王様ゲーム、この4つを考えついた人だけ教室に残って、あとは少しだけ廊下に出てて下さい……」プルプル

ガタガタガタッ

ガラガラガラッ

一夏「……」ピシャッ

のほほんさん「あー、こう言うのネットで見たことあるかもー」

シャル「だよね」

ラウラ「そして次に何が起こるか、だいたい予測がつくな」


一夏「却下にきまってんだろうがああっっ!!」ゴァァァァァ

シャル「やっぱり。予想通りだ」

一夏「大っ体こんなもん誰が喜ぶんだっ!女好きのオッサンだって今日日こんなもん考えねえぞ!」ゴァァァァァ

一夏「それに学園外からも、男の客だって普通に来るんだぞ!そんなとこでこんなもん出し物出せるか!」ゴァァァァァ

モブ「でも私は嬉しいと思うの!」

モブ「そうだそうだ!女子を喜ばせる義務を全うせよ!」

一夏「内輪だけで盛り上がって外の客ドン引かせんじゃねえつってんだよ畜生があああああ!」ゴァァァァァ


山田「……しばらくは、入れそうにありませんね」

箒「当然といえば当然、か」


セシリア「……それでは、ここにいる皆様で、できるだけ一夏さんの怒りに触れないような出し物を考えましょうか」

のほほんさん「メイド喫茶とかどーかなー?」

セシリア「メイド喫茶。他にご提案は」

ガッデエエエエエム!!

セシリア「無いようなので、メイド喫茶で決定。ということで」

一夏「えー、ではこのクラスの出し物の案ですが……」ワナワナ

一夏「織斑一夏のホストクラブ、織斑一夏とツイスター、織斑一夏とポッキーゲーム、織斑一夏と王様ゲーム、この4つを考えついた人だけ教室に残って、あとは少しだけ廊下に出てて下さい……」プルプル

ガタガタガタッ

ガラガラガラッ

一夏「……」ピシャッ

のほほんさん「あー、こう言うのネットで見たことあるかもー」

シャル「だよね」

ラウラ「そして次に何が起こるか、だいたい予測がつくな」


一夏「却下にきまってんだろうがああっっ!!」ゴァァァァァ

シャル「やっぱり。予想通りだ」

一夏「大っ体こんなもん誰が喜ぶんだっ!女好きのオッサンだって今日日こんなもん考えねえぞ!」ゴァァァァァ

一夏「それに学園外からも、男の客だって普通に来るんだぞ!そんなとこでこんなもん出し物出せるか!」ゴァァァァァ

モブ「でも私は嬉しいと思うの!」

モブ「そうだそうだ!女子を喜ばせる義務を全うせよ!」

一夏「内輪だけで盛り上がって外の客ドン引かせんじゃねえつってんだよ畜生があああああ!」ゴァァァァァ


山田「……しばらくは、入れそうにありませんね」

箒「当然といえば当然、か」


セシリア「……それでは、ここにいる皆様で、できるだけ一夏さんの怒りに触れないような出し物を考えましょうか」

のほほんさん「メイド喫茶とかどーかなー?」

セシリア「メイド喫茶。他にご提案は」

ガッデエエエエエム!!

セシリア「無いようなので、メイド喫茶で決定。ということで」

連投すみませんでした

一夏「あ゛ー疲れた……一年分は大声出した気がする」

一夏「だから女子校のノリで学校行事ってのはイヤなんだ」

一夏「学園祭の時本気でフケよう。今のうちに逃亡計画立てておかないと……」ピッピッ

楯無「それはお姉さん関心しないなあ」クスッ

一夏「……!?」バッ

一夏「せ、せいとかいちょ……?」

楯無「盾無でいいよ。君と私の仲でしょ?」

一夏「は、はあ(出会って一日かそこらなんだが……)」

楯無「ところで、これからどこへ向かう予定だったの?逃亡計画のために旅行代理店?」

一夏「……ちょっとした特訓っす」

楯無「それなら丁度いいところだったわ」

楯無「当分君のISコーチをしてあげる」ニコ

一夏「……何すか急に」

楯無「今の君はまだまだ弱い。だから、私が鍛えてあげようと思って」

一夏「悪いですけど、コーチと特訓の相手はもう間に合ってますんで……」スタスタ

楯無「……そういう反応をすると思ったよ」

楯無「じゃあ一戦だけやってみないかい?」

楯無「それで君が勝てば、私はもう君に付きまとわない。逆に君が負ければ……」

一夏「……俺に対するメリットが少なすぎやしませんかね」

楯無「どう転んでもメリットだと思うよ?私は」

道場

楯無「じゃあ、私から一本でも奪えれば君の勝ち。ってことでいいかな?」

一夏「は?」

楯無「代わりに君が続行不能になったら、私の勝ち」

一夏「……慢心は敗北のモトっすよ?」

楯無「大丈夫よ。絶対に私が勝つんだから」

楯無「それじゃあ、始めましょうか!」


***

ラウラ「一夏の奴、どこへいったんだ?」テクテク

ラウラ「特訓のついでにこの前借りた『ダス・ボート』の感想を言おうと思ったのに……」テクテク

ラウラ「……」テクテク

ラウラ「たー、たったたー、たったたー……てててんてててんっ」←映画「Uボート」のテーマ

千冬「随分ごきげんだなボーデヴィヒ」

ラウラ「……教官!?」

千冬「織斑先生、だ。いい加減覚えろ」パシン

ラウラ「す、すいませんでしたっ!」

千冬「……」テクテク

千冬「ところでボーデヴィヒ」ピタッ

千冬「お前の探してる兵曹長なら、部室棟の保健室の近くにいたぞ」テクテク

ラウラ「……保健室?」

一夏「……な」

楯無「お早う、気分はどう?」

一夏「……ここ数ヶ月で最悪の目覚めでした」

一夏「っつつ……」

楯無「少し安静にしてなさい。かなり重いのブチ込んだんだから」

楯無「あれ一撃で倒れなかったのって、あなた以外には数人しかいないくらいよ」

一夏「そうですか」

楯無「ほめてるんだから素直に喜びなさい?」

楯無「IS学園生徒会長。即ち全生徒最強の、かなーりきつい一撃を食らって、三十秒も倒れなかったんだから」

一夏「有難いんだか有難くないんだかよくわからないんで……」

ラウラ「失礼する」プシュッ

一夏「お、ラウラか」

ラウラ「……一体何があったんだ?」

一夏「単なる慢心だ」

一夏「蛇を捕まえるつもりでヤブに棒突っ込んだら、トラが出てきた。そんだけだ」

一夏「……」ムスッ

シャル「……あれ?一夏」

セシリア「今日は第四アリーナで射撃訓練をするのでは……」

楯無「ああ、私がこれから専属コーチをするの♪」

シャル「会長が、専属コーチ?」キョトン

セシリア「どういうことですの?」ムスッ

一夏「……俺の招いた結果だ」

楯無「……そうね。二人にも協力してもらおうかしら」

楯無「少し、ね」


一夏「……」ヒィィィィ

楯無「まずは一夏くんと、セシリアちゃん、シャルロットちゃんとの模擬戦。」

楯無「ただしセシリアちゃん、シャルロットちゃんには私が指示を出す」

一夏「了解です」

楯無「それじゃあ、開始よ」

ピィーーーーーーーーー

楯無「―――――」

セシリア・シャル「」コクッ

ギュンッ

一夏「(ラフベリーサークル陣形にサークルロンドを応用した戦闘法か……)」ヒィィィィ

一夏「(ラフベリーは本来二次元的な死角を無くす戦闘機隊の防御機動だが、武器を上下左右に向けられるISなら三次元でも死角がなくなる)」

一夏「(シューターフローで並走状態で狙撃体制をとったとして、『クロムウェル』は元々高機動戦闘には不向きだ)」ヒィィィ

一夏「(『雪羅』は福音の一件以来沈黙したまんま。よしんば使用できてもあのエネルギー消費じゃ5分と保たない)」ヒィィィ

一夏「(となれば……)」

一夏「(高速かつ高度な機動で、一瞬のスキに生まれた死角を見つけて、そこを『零落白夜』でぶち抜くしかないな)」ギュンッ

一夏「って、これ結局前に良くやってた方法じゃねえか……瞬時加速、開放!」

一夏「がら空きだぜセシリア!」


楯無「それはどうかしらね」

セシリア「インターセプター!」

ギィンッ!

一夏「な……っ」

シャル「もらいっ!」

パパパパパパパパッ!!

一夏「(畜生が!さっき楯無先輩と戦った時と全く同じだ!)」

一夏「(読まれてやがる!全部!)」


楯無「そう。それが君の弱さよ」

楯無「君は戦訓に学びすぎた。足りない経験を補えるように錯覚できるほど、知識を持ちすぎた」

楯無「ラフベリーの攻略法も戦闘機機動を熟知した君だから、当然マニューバで突破しようとした」

楯無「高度な戦闘機動でラフベリーを突破したエースパイロットの話だってある……確か、坂井三郎だったかしら」

楯無「でも。だからこそ、知識ある人間にはとても行動が読みやすいの」

学生寮ロビー

一夏「戦訓に学びすぎた……知識ある故の弱さ……か」ボスッ

一夏「生兵法は大怪我のもとってことか……」

一夏「知識に頼らないためにも、それに勝る経験が必要……」

一夏「そうなると、月月火水木金金で特訓か」

一夏「一人美保関事件なんて起こさなきゃいいんだけどな」ハァ


箒「一夏」

一夏「よう、いつからそこに?」

箒「セシリアにあんまりにお前が沈んでるって聞いてな」

箒「これでも飲め」チャプン

箒「好きだったろ?クリームソーダ」

一夏「……」

一夏「箒。ありがとな」チャプン

プシュッ

箒「知識ある故の弱さ……か」

一夏「まさか、俺の最大の武器が、そのまま弱みになっちまうなんてな」

一夏「今まで俺が戦ってきた相手は、まだ戦闘経験の圧倒的に浅い新入生や、複雑な思考を持たない機械相手だった……」

一夏「だからこそ気づけなかったんだろうな。俺が戦訓に足を引っ張られすぎているってのが」

一夏「なまじ、知識と直感で世界を揺るがしたどっかの誰かを意識しすぎたせいで、勘違いしたのかもな」グビグビ

箒「……」

一夏「……悪い。嫌なこと思い出させたか?」

箒「いや、そうじゃない」

箒「ただ、余り思いつめない方がいいと思う」

箒「お前は、思いつめて答えが出る人間じゃないからな」

一夏「……かもな」



楯無「(少し気になって、来てみたけど)」

楯無「(あの様子なら、まだ大丈夫そうね)」フウ

千冬「更識、覗き見はあまり趣味がいいとはいえないぞ」

楯無「あら。こんばんわ、織斑先生」

千冬「……あまり後輩を追い詰めるなよ」

千冬「自暴自棄な訓練で怪我でもされたら大変だ」

楯無「大丈夫だと思います」

楯無「一夏君は自分の嵌った落とし穴からはい出せるだけの賢さは持っているはずです」

楯無「意外とすぐに、答えに気づけますよ」

千冬「何故そう言い切れる?」

楯無「なんとなく、です」

千冬「……それは単なる買いかぶり過ぎだ。お前もあまり人を見る目がないな。小娘」

楯無「……その言葉、いずれそっくり返せる日を待っています」ニコ

出来れば、あまり過激なコメントはお控え下さい。
それと更識姉妹の出自の設定に関しては「それっぽく見せるために」相当変更するつもりです。

数日後・道場

一夏「……」スゥ

箒「……」スゥ

ピィー---

一夏「……」ジリジリ

箒「……」ジリジリ

一夏「……ぁっ!」グオオオオオッ

箒「……ッ!」バッ


パシィィーーン!


箒「胴っ!」

一夏「……くっ!」

箒「……一体どうした?一夏」

箒「剣がいつもに比べて鈍いぞ」

一夏「そう……か?」

箒「……どうせ、まだ何をすべきなのか迷っているのだろう」

一夏「……バレてたか」

箒「バレバレだ」

箒「今のお前の剣を見ていて、太刀筋の迷いというのが本当にあるのを知ったくらいだ」

一夏「やっぱ……か」ハァ

箒「……一夏。剣は迷いや考えの末に打つものではないぞ」スッ

箒「剣は、無心で打つものだ」ピタッ

一夏「……無心、か」

一夏「そうだよな。大事なこと忘れてた」フフッ

一夏「ありがとうな。箒」

箒「気にするな」ニコ

箒「では。もう一本、行くか」スッ

一夏「そう来なきゃな」スッ


ピィー---


一夏「……」ジリジリ

箒「……」ジリジリ

一夏「……ぁっ!」グオオオオオッ

箒「……ッ!」バッ


パシィィーーン!

一夏「面っ!」

箒「やっと、調子が出てきたみたいだな」

一夏「……まあな」

一夏よICPOに入れ

そして束をおえ

一夏「束逮捕だぁ!!」

束「悪いけど束さんはまだ捕まるわけにはいかないんだ、じゃねいっくん
。」

同日午後・アリーナ
一夏「お待たせしました、楯無先輩」

楯無「おや、一夏くん。今日は一段と素敵な顔つきだね」

一夏「……なんとなくだけど、先輩の言いたいこと、わかった気がして」

楯無「なるほど。やっぱり君は賢いみたいだね」

楯無「まさか一週間もせずに、私の言いたいことを理解するなんて。お姉さん驚きよ」

一夏「只の買いかぶりですよ。俺一人で見つけ出した答えじゃないですし……」

楯無「……なぁるほど。妬けるねぇ」

楯無「それじゃあ、言いたいことを理解したところで、今日の訓練に入ろうか」

楯無「今日からは、特別にお姉さんが相手になったげる」シュイイイイ

一夏「それがロシア代表専用機、『モスクワの深い霧』……ですか?」

一夏「ロシア代表の更識楯無さん」

楯無「ノンノン。それはこのコの古い名前よ」

楯無「今は『ミステリアス・レイディ』って呼んであげて、ね」シャキン

文化祭当日
一夏「大変長らくお待たせしました。こちらへどうぞ、お嬢様」

キャーキャーキャー

鈴「そこの執事、調子はどう?」

一夏「あいにく繁盛してるよ。大陸娘。そっちは点心喫茶だったっけか?」

鈴「ええ」

鈴「案内してくれるかしら」

一夏「了解いたしました、お嬢様。こちらへどうぞ」スッ



一夏「(点心喫茶……か)」スタスタ

一夏「(学祭お約束の焼き鳥もいいし、4組の葛切りセットも捨てがたいし)」スタスタ

一夏「(何を食おうか悩むな)」スタスタ

一夏「ご注文はお決まりでしょうか、お嬢様」


モブ「あの執事さん、思慮深げで素敵ねー」

モブ「そうねー。あのなんとなく影のある雰囲気とか!」

一夏「さあ、休憩だ」

一夏「俺は模擬店巡りに行ってくるから。お前らはどうする?」

ラウラ「私は別行動で模擬店を巡ってこよう」スッ

シャル「ボクはラウラに付いて行くよ。何かあったら面倒だろうし」

一夏「そうか」

一夏「ラウラ、油断するなよ。文化祭の模擬店巡りは戦場だぞ」

一夏「腹の空き具合、攻める店、時間。これらを常に考えて行動しないといけない」

ラウラ「……そうなのか」プルプル

シャル「一夏。いい加減なこと言わないの」

一夏「俺は至って大真面目だ。とりあえず焼き鳥は1パック半までに抑えておくのがベストだな」

ラウラ「了解した。忠告ありがとう」

一夏「健闘を祈る。少佐」ビシッ

ラウラ「そちらもな」ビシッ

一夏「まず予定としては、点心喫茶で小籠包と揚げ団子買って、それから……」ブツブツ

??「ちょっとよろしいでしょうか?」

一夏「……はい?」

??「織斑一夏さんですね?」


ニーハオー テンシンキッサデスヨー

一夏「っと……巻紙、玲子さんですか」

巻紙「はい。織斑さんの白式に、ぜひ我が社の製品を使用していただけないかと……」

一夏「そうしたいのはやまやまなんですが、白式はかなり面倒な機体でして」

一夏「ソフトウェア面でも独自規格が多すぎて、追加装甲一つつけるのも難しいくらいなんですよ」ペラペラ

一夏「例えば機体制御ソフトなんですが、コレに関しては川崎の開発した次世代型制御ソフトのβを使用していて、これがまた今までの機体との互換性が存在しないんですよ」ペラペラ

一夏「だから補助スラスターの装着にしても、一度量子変換プログラムや内部プログラムを書き換えないといけないんです」ペラペラ

一夏「ただまあ、このソフトっていうのが先日百里とDDIしまかぜに配備されたばかりの打鉄弐式と共通でして、要するに軍機なんで、ブラックボックス化されていて、川崎に持っていかないと書き換えができないんすよね」ペラペラ

一夏「このカタログを見ると、少しその辺りの装備が多くて、ちょっとこちらでの取り付けは難しいかなあと……」ペラペラ

一夏「なので、ひと通りの開発企業を通さないと、ちょっと検討できないかと」ペラペラ

巻紙「は……はい」ピクッ

鈴「お待たせしました。鉄観音です」カチャ

一夏「ありがとうございます」

一夏「というわけで今日のところは……」ペラペラ

鈴「(よくもまあ、あそこまでデタラメをそれらしく並べられるわね……)」

鈴「(ブラックボックスの固有武装ユニットを勝手に弄って、新しい機能をつけたのはどこの誰よ)」

?「……お待たせいたしました。葛切りです」

一夏「ありがとうございます、テイクアウトできますか?」

?「はい。こちらの容器をどうぞ……」


一夏「……とりあえず目星つけた店はあらかた回ったか」ムグムグ

楯無「フケるって言ってた割には随分エンジョイしてるのね、一夏くん♪」

一夏「……いきなり声かけないでください。心臓に悪い」

楯無「その葛切り、少し貰っていいかしら」

一夏「……少しっすよ」

楯無「わかってるわ」

楯無「うん、美味しい」ムグムグ

楯無「そうそう、一夏くん。ちょっと生徒会の出し物に協力して欲しいんだけど」

一夏「いや、俺そろそろ業務に戻らないと……」

一夏「(それにこの人のことだ、何企んでるかわからんしな……)」

一夏「(と言うか俺この人苦手だし……)」

楯無「そこは手を回しておいたわ。もちろん異論は認めないから♪」

一夏「拒否権なしかよ。汚え」

楯無「心の声が漏れてるわよ?」

一夏「……なんだこのコッテコテのコスプレは」

一夏「王子様か?この衣装」

一夏「こんなん着せるならドイツ帝国皇太子の礼服着せて欲しいもんだわ。飾緒と勲章ジャラジャラの」ブツブツ

一夏「つーか劇らしいけど、台本も読んでないぞ、俺……」

一夏「……まあ、仕切ってるのがあの人だし。何が起きても仕方ないと思おう」スタスタ


ムカシムカシアルトコロニシンデレラトイウショウジョガオリマシタ

一夏「……」

イナ,ソレハナマエデハナイ

一夏「(さて、雲行きがおかしくなりはじめました)」

イクタノブトウカイヲクグリヌケ~

一夏「(何だそりゃ……)」

カノジョラヲヨブニフサワシイショウゴウ、ソレガシンデレラ

一夏「(どこのB級忍者映画だよその設定)」プルプル

オウジノカンムリニカクサレタグンジキミツヲネライ!ショウジョタチガマイオドル!

一夏「(……突っ込むのももう疲れたわ)」

ガシャッ

コヨイモマタ,チニウエタシンデレラタチノヨルガハジマル……

一夏「ああ、俺に求められる役割って」ハァ

鈴「もらったあああーーー!!」ゴオオオオ

一夏「ブルース・ウィリスかジャッキー・チェンか……ってわけか」ヒョイッ


鈴「その王冠をよこしなさああいいっっ!」ビュンビュン

一夏「知るか!つーか凶器投げるな!死ぬわ!」カキンカキン

楯無『あ、大丈夫よ。ちゃんと只のプラスチックだからね』

一夏「……もはや何も言うまい!」ヒュッヒュッ

セシリア「もらいましたわ!」カシュッカシュッカシュッ

チュンチュンチュンッ

一夏「……スナイパー!?セシリアかっ」チッ

一夏「香港コンビを相手取るのは面倒臭いな……お互いの苦手なレンジを補い合えるから」ヒュッヒュッ

チュンチュンチュンッ!

鈴「……チッ!」ヒュッ!

一夏「……いや、今の反応を見ると、どうやら連携は無いみたいだな」ヒュッ、スタッ!

一夏「(敵は恐らくこの二人以外にも機会を伺っているとして……)」

シャル「(これはあの掲示板のみんなに面白そうなもの見せられそうだね)」ジー

一夏「(今シャルが客席でニヤニヤしながらビデオ回してるのを確認したから、あとこの劇に加わってそうなのは……)」

ラウラ「待たせたか?」ニヤッ?

一夏「やっぱりかっ!」

ラウラ「神妙にその王冠を渡せ。そうすれば何もせずに済む」

一夏「……一体あのヒトから何の条件出されたんだよ、お前ら」チッ

ラウラ「でやあああっ!」パンパンパンパンッ

セシリア「いただきましたわ!」カシュカシュカシュカシュ

鈴「そこを動くな嗚呼ああっ!」ヒュンヒュンヒュンッ

一夏「……略奪愛って今流行ってるのか?」スイスイスイッ

一夏「って、シャルか箒がいる気がして口走っちまった……」


楯無「ん~、当初の予定とは異なるけど」

楯無「もうちょっと派手にした方がいいかしら?」ピッ


クィーン

一夏「あぁ!?」

ボーーーン!

一夏「……お前ら!伏せろ!」

鈴「へ?」

セシリア「……え?」

ラウラ「……っ!?」

ボゴーーーーンッッ!!

一夏「……っ!火薬なんか使うんじゃねえ![ピーーー]気か!?」

楯無『こうしたほうが盛り上がるでしょ?』

一夏「西部警察とか香港映画でやれ!そういうのは!」

ブシュワアアアア!!ボゴーーーーン!!


箒「一夏っ!こっちだ!」スッ

一夏「おお、箒……」スッ

一夏「って!ダマされるかっ!」スパーンッ

箒「……一夏」チャキッ

一夏「……悪いな。略奪愛って苦手なんだよ。俺」シュタッ

ブシュワアアアア!!ボゴーーーーン!!ボゴーーーーンッッ!!

楯無『さあ、只今からはフリーエントリー組の参加ですよー!』

楯無『王子さまの王冠を手に入れ、ルームメイトになるなら今ですよーっ!』

シャル「(うわあ、もう客席皆ドン引きだよ)」ジー

シャル「(これは一夏、おつかれさんだね)」ジー

ワーワーワーワー

一夏「そういうカラクリだったんかっ!」

モブ「待て待て―!」

モブ「王冠をよこしなさーい!」

一夏「悪いけど俺は自分の命守る余裕しかねえよ!あと部屋にある趣味のモノ片付けたくねえんだよ!」ガササササッ

ガコンッ!

一夏「お?」

ズッ

一夏「おふっ!」ズルッ!

舞台下・アリーナ
巻紙「……ここなら見つかりませんよ」フフッ

一夏「……どうもありがとう御座います」

一夏「しかし、巻紙さん……でしたっけ?なんでこんな所に?」

巻紙「はい。この機会に白式を頂きたいと」ニコッ

一夏「……あ?」

巻紙「いいから……」

巻紙「とっとと寄越しやがれよっ!」ガッ!

ガッッ!

一夏「……あんた、何者だ?」

一夏「CIAか?人民解放軍情報部か?それとも……」

巻紙「ぐちゃぐちゃとゴタク並べて博学ひけらかしてんじゃねえよ、腐れオタクが」

巻紙「アタシはそういう知識ひけらかして悦に入るオタク見てるとな、殺したくなるんだよ」

一夏「生憎、俺も常に頭に血ぃ昇ったバカは大嫌いでね」

巻紙「そうだなぁ、強いていうなら……企業の人間になりすました、謎の美女ってとこか?」バキュッ!バキュバキュ!

バシュァッ!

一夏「蜘蛛脚……?」

一夏「っと、趣味悪いな。白式!」シュイイイイイ

巻紙「待ってたぜ!そいつを使うのをよぉ!」

巻紙「[ピーーー]やぁっ!」ビシュワッ!

一夏「……っ!」シュンッ!

ガシャアアアア

一夏「この学園でレーザーぶっ放したっつーことは、手前、母国を売ったってことだぜ」

一夏「ここはアラスカ条約で各国不干渉って決まってんだ。こういう形で干渉した場合は国際IS委員会による査問と、国連での魔女裁判間違いなしっての、よく理解してないみたいだな」

巻紙「はっ、母国!?そんなもん知ったことかよ!」

一夏「(おーおー、どんどん俺の知りたい情報勝手に言ってくれるね。やっぱヤンキー気質は扱いやすいわ)」

一夏「(さて、あの口ぶりから察するに、どーやらどっかの国のヒモ付きってえワケじゃ無いみたいだな)」

一夏「(じゃあ次に考えられるのは、国際犯罪組織か)」

巻紙「これ見てビビんじゃねえぞ!?クソガキがぁ!」シュイイイイ

ドシュバァァッッ!!

一夏「やっぱり、ISか」

巻紙「そうさ、アラクネだよ」

一夏「(あの国籍章、アメリカ陸軍の機体か)」

一夏「(となるとこの前のNY州の強奪事件該当機……)」

ゴガッ

一夏「ぐふっ!」

バキャンッ

巻紙「ヨソ見とぁいい度胸だな、おい」

一夏「……ああ、やっぱ考えすぎはいけないな。スキができる」

一夏「こういうのは、後からじっくりやろう」

巻紙「はん、口先ばっかのオタクが何か言ってるみたいだな」

巻紙「教えてやるよ。テメエみたいなオタクがアタシに楯突いたところでどうなるかをなあ!」バシュワバシュワバシュワ

一夏「……ッ!」シュイイッ!

バシュワバシュワバシュワ

巻紙「ッハッハッハァ!結局逃げてるだけじゃねえか!」バシュワバシュワバシュワ

巻紙「テメエら豚どもなんて所詮その程度なんだよ!口ではブヒブヒブヒブヒデケえこと言ってるくせに!いつも、いつも、いっっつも!逃げてばっかりだ!」バシュワバシュワバシュワ

巻紙「テメエらオタクは身の程わきまえて、その臭え息吐いてねえで、おとなしく死んでりゃいいんだよ!」バシュワバシュワバシュワ

一夏「(ぜひ世界中のギークに聞かせてやりたいセリフだな、サイバー攻撃推奨的な意味で)」

一夏「……手前もキャーキャー一人で喚いてんなよ。猿かっつの」シュイイイイ

一夏「どこの組織の人間だか知らねえが、あんまり騒いでっとお里が知れるぜ。モンキーさんよ」シュイイイイ

巻紙「ッッ!」

巻紙「……いいぜ、教えてやるよ」

巻紙「このファントム・タスクのオータム様の恐ろしさを!その身を持ってなぁ!」

一夏「(ファントム・タスクのオータム……タグ添付、分類。ってか)」

一夏「ファントム・タスクね……ッ!来い!『雪片』」ガギンッ!

オータム「そうだよ。クソガキ」ギギギギギ

一夏「軍事オタクの俺でも聞かない名前ってことは、表に出ちゃいけない組織ってことだよな」ギギギギギ

一夏「俺なんかにベラベラ喋っちゃっていいのか?あんた」ギギギギギ

オータム「いいんだよ。どうせテメエはここで脳漿ぶちまけで死ぬ運命なんだからなっ!」ガギンッ!

一夏「なるほど、ね」シュゥッ

一夏「だがな、そういうコト言う奴に限って、殺し損なうんだよ!」シュバッ!

オータム「ほざけっ!」シュバシュバシュバ!

一夏「(手数は多い、それに装甲も堅い……)」

一夏「(だがな……)」シュンッ!

ズバキイイイッッ

オータム「な……っ!?」

一夏「逆上しすぎでスキだらけなんだよ。手前はよ」

一夏「考えるまでもなく、攻撃できらあ」チャキッ

オータム「……っこのクソブタがああああああああああああああああああああっっっ!!!」シュバシュバシュバシュバシュバシュバッッ!

一夏「(楯無先輩よ、あんたの教えは正しいな)」ガキガキガキガキッ

一夏「(戦訓は、戦術戦略の場面では効果を発揮するが、ISドライバーはその限りじゃない)」ガキガキガキガキッ

オータム「もうテメエは八つ裂きじゃぁ飽きたらねえ!内臓の欠片も残さず潰してやるよ!」シュバシュバシュバシュバシュバシュバッッ!

一夏「(ISドライバーには戦術戦略は後からついてくる物で、第一に必要なのは研ぎ澄まされた判断力と、あらゆる重圧に押しつぶされない精神力)」ガキガキガキガキッ

一夏「(つまり、剣道で言うところの無心の剣だ)」

一夏「……」チャキッ

シュバゥッ!

オータム「甘えんだよ!」バキィッ!

ズガガガガガッ!!

一夏「……まあ、そう上手くはいかねえよな」ガラッ

一夏「でも、確実に言えることはある」

一夏「俺はこいつには殺されねえ」

管制室
山田「第11ロッカールームに未確認IS反応、現在織斑くんと交戦中です!」

千冬「……やはり外部の人間が侵入できる文化祭を狙ってきたか」

千冬「キャリア官僚どもの下らん足の引っ張り合いさえなければ、この事態も防げただろうに」ボソ

山田「織斑先生、どう致しましょうか?」

千冬「敵の増援に警戒、一般生徒、及び来校者は避難命令を」

山田「了解しました」カチッ

山田「第11ロッカールームに未確認IS出現、現在白式と交戦中。一般生徒及び来客者は最寄りのシェルターへ避難。専用機持ちは直ちにISを展開、状況に備えてください」


『第11ロッカールームに未確認IS出現、現在白式と交戦中。一般生徒及び来客者は最寄りのシェルターへ避難。専用機持ちは直ちにISを展開、状況に備えてください』

箒「な……っ!」

セシリア「いつの間に……っ!」

鈴「交戦中ってどういう事よ!どこから入ってきたのよ!」

シャル「どうやら馬鹿騒ぎはここまでみたいだね」ピッ

ラウラ「そのようだな」


『第11ロッカールームに未確認IS出現、現在白式と交戦中。一般生徒及び来客者は最寄りのシェルターへ避難。専用機持ちは直ちにISを展開、状況に備えてください』

楯無「……せっかく立てた計画だったのに、これじゃ台無しね」

楯無「まあ、仕方がないか。織斑くんは不確定要素が人格を持ったようなコだしね」

楯無「私もぼちぼち『お仕事』に向かわせていただきますか」

千冬「オルコットと鳳は哨戒に、篠ノ之、デュノア、ボーデヴィヒは織斑の援護に付け」

五人「了解!」

千冬「(……この襲撃、『奴』の仕業にしては少々地味だ)」

千冬「(『奴』の関与しない襲撃……随分ときな臭いな)」

---

オータム「いい加減にしやがれこのブタがあああああああ!!」バシュバシュバシュ

一夏「(……奴の攻撃は単調だ、対処そのものは大した難度じゃない)」シュンシュンシュン

一夏「(だが、こちらが攻撃を加えられるかの問題だ)」

一夏「(『クロムウェル』はこんな閉所でぶっ放せるモノじゃないし、そもそも味方のシギント無しで高速機動戦に対応できる作りでない)」

一夏「(そうなれば『雪片』で止めを刺すしか無いな)」

カチッ!カチカチカチ

一夏「(……お?)」

オータム「……チッ!弾切れか」ガシャン!

一夏「(こいつぁツイてる……)」ニヤッ

一夏「やらせてもらうっ!」シュバッ

一夏「うおおおおおおおおおおおおおおっっ!!」

オータム「かかりやがったなバカがっ!」シュワアアアアッ!!


一夏「……ッ!なんだこりゃ!」ベトォ

オータム「あんだけ言っといてもやっぱガキだなぁ、真正面から突っ込んできやがってよぉ」

オータム「クモの糸を甘く見過ぎなんだよ。ああ?このタンカスが」

一夏「(エネルギーワイア……こんなトラップ兵装を持ってるとはな)」

一夏「(と、思ったところで、こりゃどうにもならない状況だろうがな)」プラーン

オータム「んじゃあ、お楽しみタイムと行こうぜ」スチャ ウネウネ

オータム「博学なテメエなら、これがなんだか解るよな?」

一夏「……知るかよ。後学のために教えて欲しいくらいだ」

オータム「それなら教えてやるよ。こいつぁ剥離剤つってな、ISを強制解除できる優れものなんだよ」

一夏「ほんっと、趣味悪いんだよ。お前ら……」

オータム「テメエの趣味なんざ知ったこっちゃねえんだよ」ジャキン

オータム「じゃあ頂くとするぜぇ、白式とやらをよぉ!」

ズグッ!

一夏「ぐああああああああああっっ!!」バリバリバリ

オータム「そうだ。テメエを細切れにする前に教えてやるよ」

オータム「第二回モンデ・グロッソでテメエを拉致したのは、我らファントム・タスクだ!」

一夏「……つまり、感動のご対面ってことか……」バリバリバリ

オータム「そうさ!そのとおりだよ!ヒャハハハハハッ!!」

一夏「……っとに、手前はテンプレ通りの悪党だな……っ!」バリバリバリ

オータム「ごちゃごちゃ五月蝿えんだよ。その首飛ばされてえのか?」

一夏「テンプレ通りすぎて……ここまで上手く事が運ぶとは、思わなかった……ぜ……」バリバリバリ

オータム「あ?ついに頭がイカれたか?」

楯無「それはどうかしらね?」

オータム「あぁ!?」

ビシュビシュビシュ

オータム「がっ!」ゴガッ!


一夏「かかったなアホが」ゲホゲホ

一夏「最初っから罠だってわかって飛び込んで、手前が油断し切るの待ってたんだよ」

一夏「広域センサー系見りゃ一発で解るっつーのに、このおっかないお姉さんがすぐそこに居たってのも気づかなかったのか?」

楯無「そ。あなたの敗因は織斑くんの挑発と行動に載せられて、視野を狭くしすぎたことよ」

オータム「はぁ!?ここはロックを賭けて誰も出入りが出来なく……」

楯無「それが不思議なことに、出来るのよね」

楯無「IS学園生徒会長たる私は、そのように振る舞うことが」

オータム「あぁ!?」

オータム「何言ってんだよテメエは!」バシュッ!

ドスッッ!

楯無「が……」

一夏「……」

オータム「……あ?手応えがないぞ……」

一夏「……あんたも相当に趣味悪いな、先輩」

楯無「まあ、よく言われるわね」

バシャッ

オータム「ダミー……だと?」プルプル

楯無「ご名答♪水を使ったニセモノよ」


楯無「まあ、業務上趣味が悪いのも当然なんだけどめ」スッ

楯無「ある時はIS学園生徒会長、またある時はモンデ・グロッソのロシア代表」スタスタ

楯無「而してその実態は」シャキン

楯無「警察庁警備局公安課、機動強化外骨格犯罪対策室捜査員。更識楯無警部補」チャキン

楯無「あなたの人生、変わるわよ?」

同時刻:学園上空

山田『南南西よりこちらへ向かって高速巡航中のISを捕捉』

山田『およそ1分後に会敵します』

千冬『二人共、油断と無茶はするな』

セシリア「了解しました」ピッ

セシリア「食い止めますわよ、鈴さん」ジャキン

鈴「承知の上よ」ガコン


鈴「敵IS捕捉!攻撃に移ります」シュイイイイ

ゴオオオオ

セシリア「……」ピッ

セシリア「まさか、あれは……」

セシリア「BT搭載2号試験機、サイレント・ゼフィルス……?スウィフトシュアの衝突事故で失われたはずでは……」

鈴「何してるの!撃って!」バシュバシュッ

セシリア「は、はいっ!」バシュバシュバシュッ

??「…………」ビシュビシュビシュ

鈴「何よあれ!全部弾かれてるじゃない!」

セシリア「……ならば、実弾で!」ボシュッ

??「……」ニィ

チィィィィイイイイイ

??「……ヌルいな」ニィィ

ボゴァァァァァンン

セシリア「……今のは、BT兵器のフレキシブル機動?」

セシリア「そんな、現在BT兵器の適合係数はわたくしが世界で一番のはず……」

ビシュワビシュワビシュワビシュワッ!

鈴「ボケっとしないで!セシリア!」

セシリア「……っ!」

ゴオオオオオオ

同時刻:第11ロッカー室

オータム「公安だかなんだか知らねえが関係ねえ!今ここで殺してやらぁ!」ビシュシュシュシュ

楯無「一夏くんの言うとおりね、なんてテンプレじみた悪役なのかしら」

楯無「いっそ髪型もモヒカンにでもしてみたら?」

オータム「調子づくんじゃ、ねえええええええええええええ!!」ビシュビシュビシュ

チュンッ!

一夏「っと、危ねえ危ねえ。飛んだのが腕じゃなくて糸で良かったぜ」プラーン

楯無「一夏くん、今日はそこで観戦ってことにしなさいな」

楯無「ここはお姉さんに任せなさい?」

一夏「了解しました、よっと」プラーン

オータム「何呑気に話してんだこらああああ!!」ズバアアッ

楯無「ふふ。そんなザツな攻撃じゃ、私の水のカーテンは破れないわよ」

楯無「この水はISのエネルギーを伝達するナノマシンに制御されてるの」

楯無「使い方によっては、何者も通さない楯にも、何者を通す剣にも変化するわよ」

楯無「まあ、他にも色々えげつない使い方もあるのだけどね」ニコ

一夏「(理解したくないな。そっち方面の使い方だけは)」

楯無「まあ、貴方にはそのえげつない使い方も幾つか披露することになるのでしょうけど」チャキン

オータム「ほざけえええええ!!」ズガンッ

楯無「きゃんっ!」

オータム「手こずらせやがって!」ビシュワッ

楯無「……あらら、これはまずいかもね」

オータム「今度こそ貰ったぜ……」シュイイイイイ

楯無「……ねえ、この部屋って暑くない?」

オータム「あ?」

楯無「気温でなく、人間の体感温度が。って意味」

オータム「何が言いてえんだ、テメエは」

楯無「不快指数っていうのはね、湿度に依存するのよ」

楯無「ねえ、この部屋って湿度が高くない?」ニコ

オータム「……まさか」

楯無「その顔が見たかったのよ。己の失策を知った、その顔がね」ニコッ

楯無「水は霧となって、装甲の隙間からも入り込むのよ」

楯無「ここからとてもえげつないやり方にも繋げられるんだけど、それはまあ、楽しい楽しい取り調べタイムにでもとっておくとして……」

楯無「はい」パキン

ボゴンボゴンボゴンボゴオオオン

オータム「があああああああっ!!」


楯無「ミステリアス・レイディ。霧纏の淑女の通称を持つこの機体は、水を自由に操るの」

楯無「エネルギーを伝達するナノマシンによって、ね?」

オータム「……クソがああっ!まだ……終わってねえ!」

楯無「いえ、終わってるわよ。ねえ?一夏くん?」

一夏「そうッスね」チャキンッ

一夏「雪片参型、最大出力!」ヴゥン

一夏「でやあああああああああああっ!!」ガキイイインッ

オータム「ぐ……っ!」ギギギギギ

オータム「(このクソブタが!今ここで、その喉掻っ切って―――)」スッ

一夏「――あっさりスキを見せたな。邪念が多すぎなんだよ手前は」

ジャッキイイイイイイイイイイン!!


ズゴゴゴゴゴゴゴオオオオオオオッ!!!

一夏「……思わずフルスイングかましちまった」

一夏「随分ふっ飛ばしちまったか……」

楯無「一夏くん。あなたの打ち上げたホームラン、追うわよ」シュイイ

一夏「ハイ」シュイイ



オータム「……ちく……しょう!」

一夏「(見つけたぜ、ホームランボール)」

ビシュワアアアアアアッ

一夏「な……っ」

一夏「戦術レーザー……!?」

??『迎えに来たぞ、オータム』

オータム「テメェ……アタシを呼び捨てにすんじゃねえっ!」

一夏「おいおい、新手まで登場かよ……『クロムウェル』」ジャキンッ

楯無「一書くん、追っちゃダメよ」

一夏「わかってますよ」

一夏「狙ってるだけです」チチチチチッ


??「……」ピクッ

シュゴアアアアアアッ

一夏「……そっちから俺を狙いに来やがったかよ!ええい『雪片』!」

箒「一夏っ!」

一夏「箒、シャル、ラウラっ!そいつ任せる!俺はこっちに眼ぇつけられた!」

ラウラ「了解したっ!」

ビシュワビシュワビシュワビシュワッ

一夏「(BT兵器……しかもセシリアのものと違って、操者にもスキがない)」シュバシュバ

一夏「(こいつぁ、相手しないほうがいい奴だ)」シュバシュバ

一夏「(とにかく逃げまくるしか―――)」ピピピピピッ

一夏「(―――エネルギー切れ!?)」

??「……」ニィ

ズバキンッッ

一夏「げふ……っ!」

ズゴァァァァ ドゴオオオオオン

箒「一夏っ!」

シャル「箒っ!危ないっ!」

ビシュシュシュシュシュシュシュ

シャル「……これはさすがにかわせないって!」ドチュチュチュチュ

箒「ぐ……っ」ドチュチュチュ

オータム「……が」ズリッズリッ

ラウラ「逃す……ものかっ!」バッ

オータム「……てめ、何、しやがった!」

??『……この程度の相手に手こずるとは、大したこと無いな。オータム』

オータム「……エム、このクソ女が……」

エム「……」スッ

ズパァンッ

ラウラ「AICを……切り裂いただと?」

エム「貴様も、大したこと無いな。ドイツのアドヴァンスド」

ラウラ「貴様、それをどこで!」

エム「言う必要は無い」

エム「迎撃体制が整いすぎた。行くぞ、オータム」

オータム「……チッ!」カチッ カシュッ


シュゴアアアアアアアアッ


ラウラ「逃したか……っ!」バンッ

シャル「でもまだ、結構危ないかもね」

ガチャガチャガチャ

シャル「あれ、もうどうしようもなさそう」

ガチャガチャガチャ

一夏「く……」

ガチャガチャガチャ

一夏「……あれは……」

一夏「箒っ!」

箒「一夏……」

一夏「箒っ!ダメだ、にげ―――」

ズッ……ドォォォォォォン!!!!


一夏「……そんな……」


楯無「はいはい、湿っぽいのは空気だけにしましょう?」

一夏「え?」

シュワアアア

箒「あ……」

楯無「言ったでしょう?私の水は楯にも、剣にもなるって」ニコ

一夏自室

楯無「ごめんなさいね。あなた達に色々隠していて」

楯無「でもあまりこっちのお仕事の方には触れられたくないから、ね」

一夏「なるほど、よくわかりましたよ」

箒「要は一夏の周りを嗅ぎまわってる妙な組織がいて、そいつらは一夏と白式が狙いだった」

一夏「で、あんたは特訓を口実に俺を監視下において、俺のことを撒き餌にして組織との接触を待ったってことも」

一夏「本当にえげつねえな、あんた」

楯無「あら、CIAやFSBに比べればまだまだかわいい方よ?」

楯無「それに私は、君が並みのIS乗り以上のポテンシャルを持っていると判断して、わざと撒き餌にしたのだから」

楯無「あなたが本当に弱ければ、私が直に護衛したほうが早いですもの」

一夏・箒「(評価されているようなのに、なんか納得行かないのはなぜだろう)」

楯無「まあ本当なら君を専用機持ち含む衆人環視の馬鹿騒ぎの渦中に置いて、下手に手を出せない間に私がスマートに彼女を捕らえる予定だったのだけど……」

楯無「まさか君が予想外の逃亡劇を繰り広げて、あちらがISを2機も保持しているとは思ってなかったからね」

一夏「……たかが犯罪組織が原潜1隻分の予算を必要とする機体を2機も投入できるとは、誰も思っていませんよ」

楯無「それでも逮捕に踏み切れなかったのは、相手を過小評価しすぎたこちら側の慢心ね」

楯無「でもお陰で、あなたを狙う組織は特定できたわ」

箒「ファントム・タスク……でしたっけ」

楯無「そう。二人共、これからも襲撃が続くと思うから予習は欠かさないほうがいいわよ」

楯無「ファントム・タスク。またの名を亡国機業」

楯無「最初に名前が出たのは、第二次大戦末期のポーランド。ソ連侵攻のドサクサでナチスが建設した複合プラントのドイツ技術者を誘拐したこと」

楯無「ゲシュタポが必死になって掴んだのは、結局名前だけだったみたい」

楯無「その後もナチス戦犯系の技術者の囲い込みや、色々な陣営で兵器スパイ活動をいくつも行ったって言うのを、世界中の諜報機関や特種警察機構が掴んでいるわ」

一夏「ひでぇ組織だ。アニメの秘密結社かよ」

楯無「そうね。活動がほとんど表沙汰になっていないから、その主目的や実態のいずれも不明だけど」

楯無「ただひとつ確かなのは、世界中にネットワークを持ち、IS複数機を運用可能な資金力とノウハウを有してること」

楯無「つまり、一般的な中小国の軍隊よりもずっとずっと手強い相手ということよ」

楯無「それと今後の予定だけど……」

楯無「さっき上の命令を貰ってね。現時点をもって、織斑一夏の監視を解除。ISコーチも今日でおしまい」

一夏「そりゃ有難い」

楯無「でもこれからも必要に応じて二人には接触させてもらうわ」スクッ

楯無「あ、一夏くん。箒ちゃん。これは一番大切なことなのだけど」

楯無「私の裏のお仕事のことは、口外しないようにね」シーッ

箒「口外したくても、口外出来ないと思うのですが……」

楯無「あら……そうかしら?」

パタム

一夏「色々とんでもねえ人だったな……」


一夏「……しかし、ホント無事でよかったよ。箒」

一夏「アレの自爆に巻き込まれた時はヒヤヒヤしたからな」

箒「私はお前が無事でよかった」

箒「あの黒い機体に吹き飛ばされた時はもうだめかと思ったからな……」

一夏「そっか、ありがとうな」フフッ

とりあえずアニメ4話の時点まで話を進めさせていただきましたが、設定を色々ねじ曲げさせてもらいました。
因みに私は更識姉は個人的には「影の主人公」とか「ダークヒーロー」の役割が似合うと思っております
あとここまで書いててなんですが、クロムウェルがあんまり役に立ってませんね

襲撃より数日後、某遊園地・観覧車内

楯無「以下が今回のIS学園襲撃の報告書です」

男「ふむ……」ペラリペラリ

男「珍しいね。闇の中の闇であるはずのファントム・タスクがこれほど大きく動くとは」

楯無「さすが元外事三課長ですね警視。事情にお詳しい……」

警視「事後調査の結果は?」

楯無「はい」

楯無「これだけ大掛かりに動いた後でしたので、現場検証を行ったらすぐに尻尾を掴めました」

楯無「ロシア・ウクライナの軍需産業三社と、ロシアの海底ケーブル敷設業者一社。いずれもソ連時代は国営企業だった会社で、ソ連崩壊後の経済危機の中でファントム・タスクに骨抜きにされたようです」

警視「成る程」

警視「やはり君をロシアに出向かせて正解だったようだね」

警視「あの国の軍需産業はちと黒い資本が入りすぎて、自浄作用も機能できないようだしね」

楯無「肩身は狭いですよ」ニコ

警視「総じてそんなもんさ。ところで掴んだ尻尾は?」

楯無「すぐに切られてしまいました」

警視「……そう言えば今朝のニュースにあったね。函館沖でロシア籍の海底ケーブル敷設船が火災を起こした、と」

警視「さすがは老舗だよ。準備に関しては用意周到だ。更識くんも気を落とさなくてもいい」

楯無「はい」

警視「それと織斑一夏と篠ノ之箒の件、引き続き監視をお願いするよ」

警視「もし拉致や本人らによる亡命の素振りがあったなら、最悪の場合は……」

楯無「了解です」

楯無「(まあ、彼らに関してはそのどちらの愚を犯す心配もないと思いますが。今のところは)」

楯無「では私はこれで……」

警視「あ、更識くん」

警視「簪ちゃんは元気かね?」

楯無「……」

楯無「ええ」

楯無「何ならあなたが会いに行ってもよろしいのですよ。おじ様?」

警視「僕に今更会いに行けというのかい?」

楯無「ええ。快く迎えてくれるはずですわ。少なくとも、私よりも」

楯無「貴方は『正義の味方』ですから」

ガララ

警視「学園まで送ろう。車を出す」

楯無「いえ、大丈夫です」

楯無「では御機嫌よう。おじ様」スッ

ほぼ同時刻・IS学園寄宿舎付近

一夏「♪~」ニコニコ

一夏「いやあ、今年の誕生日はあまりにも豪勢だったなぁ」

一夏「だってイギリス製のタウン級のプラモに、中共でしか買えない鎮遠級の詳細本」

一夏「それにマジモンのRevi12Dに、あのフランス料理と和食の豪華な晩餐だもんなあ……」

一夏「それ以外にもみんな色々してくれた訳だし、ホント感謝だわ……」ニコニコ

一夏「それにしても、まさか千冬姉が新しいエアブラシをくれるなんてな。しかも滅茶苦茶精度良い奴」

一夏「サプライズ過ぎたわ……」

ガサッ

一夏「……?」

エム「……」

一夏「……誰だ?」

エム「……」カツカツカツ

一夏「ち、千冬姉?」

エム「いや」

エム「私はお前だ。織斑一夏」

一夏「……あ?」

一夏「……どういう意味だおい。俺はまだ真理の扉なんて開いちゃいないぜ」

エム「貴様は知る必要はないさ」

エム「それと、この間は世話になったな」

一夏「……手前、まさかサイレント・ゼフィルスの……?」

エム「そうだ」

エム「私は織斑マドカ」

一夏「……」ピクッ

エム「私が私たるためにも、私は貴様という存在を認めない」

エム「今ここで死ね。織斑一夏」チャキン

一夏「……悪いができない相談だ」

一夏「俺にも篠ノ之束を否定するって目標が残ってるんでね」

エム「ならば、死ね」

パァァンッ

一夏「……」

一夏「挨拶に鉛弾なんか持ち込むんじゃねえよ。お前は組のモンか」

エム「よく見破ったな。ただの挨拶と」

一夏「すぐに解るさ。ロクな狙い付けてないのくらいは」

一夏「それに俺を殺すだけなら、もっとスマートな方法を取ればいい」

一夏「お前が俺なら、自由時間内のIS学園なんてリスキーな状況下で俺を殺すのは無理だってくらい、解るはずだしな」

エム「さすがに物分かりはいいようだな」

エム「だが、次に合う時は必ず殺してやる」

エム「私自身の、存在意義にかけてもな」シュタッ

エム「覚えておけ。お前の存在を私は認めない。絶対にだ」ヒュウウウ


一夏「……他人に自分のレーゾンデートルを求めるんじゃねえよ。マドカさんよ……!」

食堂



一夏「……」ペラリ

シャル「隣いいかな?」

一夏「いいぞ」ペラリ

一夏「……」ペラリ

シャル「……」ムグムグ

一夏「ミステール、どうなってるんだ?」

シャル「ちょっと煮詰まってるかな。量子変換の最適化や可変動作がまだ不安定で」

一夏「やっぱり白式とは勝手が違うか」

シャル「一夏は何読んでるの?」

一夏「英国海軍の公式事故調査レポートだ。セシリアに頼み込んで取り寄せてもらった」

シャル「……コマンド空母「スウィフトシュア」と駆逐艦「ドーセット」の衝突事故について……?」

シャル「ああ。これ覚えてるよ。去年の冬に話題になった事故だ」

シャル「これ確か北大西洋で揚陸艦に駆逐艦がぶつかった事故だよね」

一夏「そうだ」

一夏「ドーセットの操舵システムがバグって全速力でスウィフトシュアに衝突したんだ」

一夏「ただ、な」

一夏「この時スウィフトシュア率いる艦隊は或るISの輸送中だったんだ」

シャル「……サイレント・ゼフィルス」

一夏「そうだよ」

一夏「なんでスウィフトシュアと一緒に沈んだサイレント・ゼフィルスが今になってファントムタスクなんて連中の下にあるのかだ」

一夏「それでちょっと事故調査記録を読んでみてるんだけど……結局わからずじまいなんだよな」

シャル「軍の調査してもわからない事が一夏にわかるわけないでしょ」

シャル「思い詰めたらダメなんでしょ?」

一夏「……だな。答えはそのうちひょっこり出てくるかもな」

教室

黛「おーい、織斑くん!篠ノ之さん!」

一夏「お、黛さん」

箒「お前がクラスメイトの名前を覚えてるなんて、珍しいな」

一夏「いや、たまたま」

一夏「(レイテ沖ん時の「利根」の艦長と同じ名字だから覚えてるだけだ。って言ったら怒られるからやめておこう)」

黛「いやー、今日は二人に用があってさ」

黛「私の姉って出版社で働いてるんだけど、二人に専用機持ちとして独占インタビューさせて欲しくて」

黛「あ、これその雑誌ね」ヒョイ

箒「……(ISドライバーのことが書いてあるだけで、至って普通の女性向け雑誌だな)」

一夏「……」シュン

箒「(軍事雑誌と一瞬思ってしまった一夏がちょっとがっかりしてる……)」

一夏「これって、IS関係ある雑誌じゃない……」

黛「あれ?知らないの?」

黛「専用機持ちってタレント的なこともするのよ。アイドルっていうか、モデルだけど……」

黛「あれ?織斑くんちょっと元気ないね」

箒「大丈夫です。軍事雑誌かモデラー雑誌を買い与えればすぐ元気になります」

食堂にて

一夏「で、取材の件どうする? ……あ、味噌バターラーメン一つ。チャーシュー二枚オマケして」

箒「もちろん断るつもりだ。見世物はどうも苦手でな……冷やし天そば一つ」

一夏「だよな。お前の場合もし顔覚えられでもしたら、面倒な連中に目つけられて外も歩けないだろうしな」

一夏「今でさえファントム・タスクとか謎の無人機繰り出す組織とか、いろんな連中に命狙われてるっていうのによ」

一夏「不用意に取材でも受けてみたりして、取材先の店を謎の組織に襲撃でもされたらたまったもんじゃねえ」

一夏「断って正解だ。箒のためにも、世間のためにも」

箒「そうだな……」

一夏「(まあ、大層なことは言ってみたが、俺も面倒くさいだけなんだよな)」

ハイ、ドウゾ。テンソバトミソバターチャーシューマシ!

一夏「さて、食うか」パキン

箒「そうしようか」パキン

一夏「っつーわけで、取材の件はちょっと無理かと」

黛「そう言えば織斑くんも何回も襲撃されてるからね」

黛「それなら仕方ないわ。無茶言ってごめんね」

一夏「すいませんね……」

カツカツカツ

一夏「(織斑マドカ……か)」

一夏「(千冬姉の顔をして、俺であると名乗り、そして俺を認めない存在……)」

一夏「(そんなの、たどり着く答えは一つじゃねえか)」

一夏「(あいつがレーゾンデートルを俺を殺すことにに求める以上、俺も本気でかからないといけない……か)」フラフラ

ドスッ

一夏「あ、すいませ―――って、織斑先生」

千冬「……何を考えていたかは知らんが、ちゃんと目の前を見ろ。織斑」

一夏「すいませんでした」

一夏「……織斑先生、一つ質問ですが」

千冬「なんだ?」ピクッ

一夏「俺に妹、もしくは双子の姉がいるなんて話、聞いたこと無いですよね……」

千冬「……」カツカツ

千冬「誰に何を吹きこまれたか知らんが、私の兄弟は、お前だけだ」カツカツ

一夏「……」

一夏「だよな」

一夏「俺に妹なんて、いるわけがねえ」ヘッ

再び教室

一夏「(原理そのものは簡単だ。前の世紀には既に方法論が確立された既存科学だからな)」

一夏「(設備の整ったラボラトリと材料さえありゃ、いくらでも作れる)」

一夏「(しかしまあ、俺も偉くなったもんだな。ヒトラー閣下と同列に語られるなんて)」

一夏「(いや、真に凄いのは千冬姉の方で、俺はその代替品ってだけなのかもな……)」

スパコーン

一夏「ぐぇ」

千冬「話を聞かんか馬鹿者」

一夏「……すいませんでした」


山田「というわけで、来月に専用機持ちによるタッグマッチトーナメントを行いたいと思います」

山田「現在各国でISの強奪や不審事故による喪失が相次ぎ、また先日の学園祭でも専用機が襲撃を受けました」

山田「セキュリティの強化という対応策は取られましたが、それでも最終的に身を守るのは当人次第ということで」

山田「専用機持ちのスキルアップを狙いこの高いが開催されます」

食堂

一夏「で、次のタッグマッチトーナメント、皆はどうするんだ? あ、カツカレー一つ」

箒「お前は金曜日はいつもそれだな」

一夏「そうでもない。たまに温玉カレーも頼む」

セシリア「一夏さんはどういたしますの?こちらはフィッシュアンドチップスのセットをお一つ」

一夏「とりあえず箒と出ないことだけは確かだ」シュルリ

鈴「付き合ってる癖に、やけに薄情じゃない」シュルリ

箒「鈴、第4世代と第3.5世代のISが同じチームに入ったらどうなると思う?」

鈴「……成る程。チート過ぎるから自重したってことね」

一夏「応よ。箒にも既に承諾済みだ」

カツカレートフィッシュアンドチップスオマタセシマシター。

シャル「でもそうしたら、一夏は誰と組むつもり?」ムグムグ

一夏「この四人の誰かと組むつもりだけど、まあ、今はとりあえず保留だな」ムグムグ

ラウラ「そうなるだろうな」ムグムグ

一夏「白式の欠点が今のところ、ミドルレンジに有力な武器がないことと、観測系があんまりにお粗末なことだからな」ムグムグ

鈴「白式の通常のセンサー系は、多分うちの甲龍と大差ないでしょ?どこがお粗末なのよ」ムグムグ

ラウラ「『クロムウェル』はもともと警戒管制や電子戦支援ありきで使用される武装だ。それらなしではロングレンジでの真価は発揮できない」ムグムグ

シャル「今までは狙撃に強いセシリアやラウラとのデータリンクがあったし、単独照準でもクロスレンジから攻撃することが多かったからね」ムグムグ

一夏「それに加えて白式は電子戦防御やエリント系にも弱いのがな」ハァ

鈴「あんた、それもう競技用の専用機に求める物じゃないでしょ」ムグムグ

一夏「鈴、もしファントム・タスクが電子戦でこっちの観測系狂わせてきたらどうする?」

一夏「眼が効かない、耳が効かない、そんな状態で最新鋭の軍用ISと戦うんだぞ?」

鈴「う」

箒「それはそれで一理ある……」

箒「だが、電子戦装備はタッグマッチトーナメントには全く関係ないだろう。一夏」

一夏「そうだけどよ……」


セシリア「つまり、要約すると一夏さんは観測系と電子戦支援とミドルレンジを補えるパートナーがいれば良い、と」

一夏「そうなるな」

セシリア「(そうなると、この4人ではわたくしのブルー・ティアーズが一番有利ですわね……今回は頂かせてもありますわ!)」

自室

一夏「届け先はIS学園購買に……っと。支払いは先に店舗払いで」ピッピッ

一夏「楽しみだなぁ……まさかリマスターディスクが出るなんて思ってもなかったからな」ピッピッ

一夏「コイツの作り甲斐も出るってもんだ」カチャカチャ

一夏「~♪」カチャカチャ

ピンポーン

一夏「はいどうぞ、開いてますよ」

キィィ

楯無「お邪魔しま~す」

ガチャ

一夏「……貴方でしたか。センパイ」

一夏「何の用でしょうか?ファントム・タスク関連で公安筋の情報を教えてくれるとか――」

楯無「……今日はそう言う込み入った話じゃなく、プライベートなお願いで来たの」

一夏「プライベート……?」

楯無「貴方に、うちの妹をお願いしたいのよ。一夏くん」


楯無「この子なんだけど」ピッ

一夏「ああ、この子ですか」

楯無「知ってるの?」

一夏「顔だけは。文化祭の和風喫茶や購買で何度か見かけたことあります」

楯無「そう……」

楯無「じゃあ教えておくわ。名前は更識簪」

楯無「日本の代表候補生に選ばれるくらいだから腕は確かなんだけど、ちょっと暗い子でね……」

一夏「(なんとなく解る気がする)」

楯無「……それで、彼女、専用機を持ってなくてね」

楯無「打鉄弐式ベースの三菱・倉持系の機体なんだけど」

一夏「……その辺はわかりますよ」

一夏「俺が出てきたから突如開発凍結が解除された白式にスタッフ回されたのが原因で、打鉄弐式の開発が難航して、そのせいでその改良機の専用機も出まわるのが遅れたと」

楯無「そういうこと」

一夏「我ながら本当に申し訳ないですよ。まさか自分が新型機の開発遅延の原因になってしまったなんて……」ブツブツ

楯無「で、今度のタッグマッチで簪ちゃんとペアを組んで欲しいんだけど……この通りよ」スッ

一夏「……まあ、そこまで言うならいいですけどね」

一夏「でもなんでまた俺に」

楯無「……私が貴方に、簪ちゃんを任せるだけの実力と人望を見出しているから。と言ったら?」

一夏「それはそれで、嬉しいかもですね」ヘッ

楯無「簪ちゃんには貴方から誘ってあげて。でも私の名前とか、私のお仕事の話は絶対に出しちゃダメね」

一夏「何か不都合でもあるんですか?」

楯無「仕事のことは秘密にしてるの。それに姉妹仲が悪くてね」

一夏「……お察ししますわ」

楯無「宜しくお願いするわ。一夏くん」

教室

一夏「~♪」

ラウラ「なんだその歌は」

一夏「古いイタリアの戦争映画の劇伴だよ」

一夏「最も、別の方面でも有名な曲だけどな」

ラウラ「ところで一夏。タッグマッチは誰と組むつもりだ?」

ラウラ「当然私とだろうな」

一夏「すまん。F-2支援戦闘機の選定並に厳正に考えた結果、組む奴を別に見つけた」

ラウラ「……そうか」

セシリア「(ということは、わたくしが!?)」バッ

シャル「(過度な期待はしないほうがいいのに……)」

一夏「いや本当にすまん。シャル、セシリア。あとこの場に居ないが鈴」

セシリア「!?」ズガビーン

シャル「(ほらやっぱり)」

シャル「(まあ、お陰でボクはペア決まったけどね)」


一夏「~♪」

箒「どういうことだ一夏?」ヒソヒソ

一夏「どうもしないさ。怖ぁいお姉さんの提案に乗っただけだ」ヒソヒソ

箒「……そういう事か」ヒソヒソ

一夏「(それに、俺もちょっとばかし興味が湧いてな……)」

一夏「(あのストレンジラブ博士を葬るのには、味方はひとりでも多く作ったほうがいいからな)」

休憩時間・1年4組

一夏「すいませーん……」コンコン

モブ「あら、貴方。1組の織斑くん?」

モブ「4組に何か用?何何?」

一夏「あのさ。更識さんって、居る?」

モブ「更識さんなら、あそこに……」

一夏「あ、うん。ありがと」スタスタ


簪「……」ムスッ

一夏「……」チラッ

一夏「(おいおいおい。こいつ一からIS設定し直そうとしてやがるぞ……)」

一夏「(勝手に固有武装改造した俺よりもすげー事に手を染める奴が同学年に居たなんてな……)」

簪「……あんまり見ないで」カチカチ

一夏「お、こりゃ失礼」

一夏「俺、織斑一夏。好きな映画はパール・ハーバー。もちろん爆笑痛快コメディ的な意味で」

簪「名前だけは知ってた」カチカチ

簪「で、要件は?」カチカチ

一夏「今度のタッグマッチ、俺と組んでくれないか?」

簪「……嫌」カチカチ

一夏「頼むよ、なあ」

簪「……私には、貴方を殴る権利がある」カチカチ

簪「だけど、疲れるからやらない」カチカチ

一夏「(……こりゃ一筋縄じゃいかねえな)」

簪「……」カチカチカチカチ

簪「……まだ、ダメ」カチカチカチカチ

簪「姉さんなら、もっと……」カチカチカチカチ

ブーーー

簪「……またダメか……」

簪「白式さえなければ……」スック

シュイン

一夏「よ」スッ

簪「う」

一夏「機体の再設定、調子はどうだ?」

簪「なんでそんな事を知ってるの?」

一夏「この前あった時に、ディスプレイ覗いて。簪サン」

簪「名前で呼ばないで」

一夏「じゃあなんて呼べばいい?フロイライン更識?」

簪「それはもっと嫌」

一夏「……じゃ、そこ歩いてるナウいお姉ちゃぁん」

簪「……殴っていいよね」

一夏「じゃあなんて呼べばいいんだよ」

簪「……もう名前でいい」ムスッ

一夏「はいはい。簪さん」

一夏「で、もっかい聞くけど、タッグマッチ俺とは組む気無し?」

簪「無い」

簪「大体、どうして私と組みたいの?」

一夏「……天の声に導かれてな」

簪「何よそれ」

一夏「……」カチカチカチ

一夏「……これで付け焼き刃だが、肝心の部分はどうにかなるか」

楯無「ふぅん、戦術電子戦偵察機ねぇ」

一夏「……後ろから気配消して何の前触れもなく出てこないで下さい。心臓に悪い」

楯無「で、何を組み上げてるの?」

一夏「あんたの妹の機体に、ちょっとしたアドバイスをね」

楯無「あら……」

一夏「開発どーも上手くいってないみたいなんで、俺が手伝わなきゃなと」

一夏「打鉄弐式の開発遅らせたのは俺の責任ですから」

楯無「……でも上手くいくかしら」

楯無「あの子、自分一人でISを組み上げるつもりだろうから……私がそうしたみたいに」

一夏「あんたアレ一人で組み上げたのかよ……恐ろしいな」

楯無「基本形は決まっていたし、色々アドバイスや手伝いがあったからなんとか作れたのよ」

楯無「ところで、簪ちゃんとはもうタッグ組めたの?」

一夏「聞きたいです?」

楯無「聞きたい」

一夏「なーーーんも進展ありませんよ。未だ嫌の一点張りですわ」

楯無「まあ、手強いでしょうね。変なところで強情だから、あの子」

一夏「手強いなんてもんじゃ無いっすよ……」ハァ

楯無「話題を変えて一夏くん」

一夏「何すか」

楯無「その机の上にある緑色のロボット、何?」

一夏「ああ、まあ」

一夏「むせる奴です」

一夏「一夏・アズナブルのなのもとに」

M「な、なんだこの化け物じみた速度は!」

一夏「甘いな、そんなへなちょこ弾には当たらんよ・・・・私のISはチュ-ニングによって三倍の速度を誇る!」

一夏「当たらなければ意味はない!」

一夏「まだだ、まだ終わってたまるか!俺は箒をまもる!俺は生きる!生きて箒と添い遂げる!」

シャアアズナブルな一夏 他のも混ざってるけど

セシリア「まさか一夏さんがわたくしを差し置いてパートナーを選ぶなんて……」プクー

鈴「ほんっと!妙なところで気が利く癖に、肝心なところであいつったら朴念仁なんだから!」プクー

シャル「二人とも、最終決定は本人の自由意志なんだから。あんまり責めないほうがいいって」ポチポチ

ラウラ「そうだ。少し残念ではあるが、これもまた好機だぞ」ニヤリ

鈴「何が好機よ」

ラウラ「タッグバトルは一人ひとりの技能もだが、一対一よりも高度な戦術が要求される」

ラウラ「一夏は戦闘技能もあるが、むしろ戦術が得意分野だ」

セシリア「……つまり、相当に手強い相手になると?」

ラウラ「ああ、そうだ」

ラウラ「タッグに限っては一緒に組むよりも、むしろ相手にしたほうがずっと有意義だということだ」

ラウラ「一人の女としては不服だが、ISドライバーとしては敵の方が面白い相手でもある……」

シャル「(久しぶりに軍人らしいこと言ってるね)」ポチポチ

シャル「(昨日ボクが必至に言って聞かせた甲斐があったよ)」ポチポチ

鈴「でも、なんかそれもそれで面白い気もしてきたわね……」

セシリア「そうですわね。一夏さんがどう戦うのか、敵の方がじっくり見てとれますものね」

シャル「(ボクとしても、一夏は敵に回ったほうがいいデータとか取れそうだしね)」ポチポチ

シャル「(この『シュペール・ミステール』のね)」ポチポチ

道場

箒「……」ヒュッヒュッ

箒「……」ヒュッヒュッ

楯無「箒ちゃんゲーット」ムギュ

箒「うわああああああ!!」ビクビクビクウウッ!!!

楯無「そんなに驚かなくてもいいのに……」

箒「驚きます!」

楯無「ごめん。次からは気をつけるわ。ところで……」

楯無「箒ちゃん、次のタッグマッチ、私と一緒に出ないかしら」

箒「え?」

楯無「一夏くんとの頂上決戦、やってみたいでしょ?」

『For:風江のおじ様
 No Title
 近いうちにそちらに行く機会が出来そうだ。
 簪ちゃんと合うことを楽しみにしている。』

簪「……」ピッ

簪「(おじ様。私、知ってるんですよ)」コツコツ

簪「(姉さんと貴方が、いつも私に秘密で会っているのを)」コツコツ

簪「(……同じ更識であるのを苦痛に感じたのは何時からだろう)」コツコツ

簪「(顔も見つめられなくなったのも……)」コツコツ

簪「(明日の飛行試験がうまく行けば……姉さんに……)」ガララ ピロリロピロリロ

一夏「よ」

簪「……こんな夜中にまで、しつこい」

一夏「今回は単なる偶然だ。俺は自分の用で購買に来ただけだ」

店員「はい、織斑一夏さん。Amazonからのお届け物ですよ」

一夏「どうも。ついでにこれも」スッ

店員「好きですね、マカダミアチョコ」ピッ

一夏「好きですよぉ」シャリーン

一夏「ほら。次、お前の番だろ」

簪「なんでわかるの」

一夏「片手に畳んだコピー用紙なんか持ってりゃ一目瞭然だ。お前も通販の支払いか何かだろ?」

一夏「明日、飛行試験だってな」コツコツ

一夏「大丈夫か?」コツコツ

簪「貴方なんかに心配される筋合いはない」コツコツ

一夏「そうかい」コツコツ

一夏「……」フッ

一夏「ちょっと待ってろ」

簪「?」

ピ、ガコン

一夏「ほら」ヒュッ

簪「?」パシッ

簪「お茶……?」

一夏「ラベンダーティー。前に友達からそれ飲んだらよく寝れるって教わってな。俺もよく飲んだりしてる」

一夏「試験前は緊張するだろうから、それ飲んで、今日はゆっくり休んどけ」

簪「あり……がと」

翌日・アリーナ

一夏「……」ズズ

一夏「一夏が飲むアリーナのコーヒーは、苦い」

一夏「って、マジで苦いなこれ」ウヘァ

一夏「スティックシュガー取ってこよ」

一夏「…………大丈夫か。あいつ」

ヒュゴオオオオオオ

簪「センサー接続オールオーケー……姿勢補助スラスターも問題なし」ゴオオオアアアアア

簪「PIC干渉領域からずらして、グラビティヘッドを前方6cmに調整。脚部ブースターのバランスも、4-で再点火……」ゴォアアアアアア


一夏「まあ、見たところ大丈夫そうだが……」

ガスッ!ガスッ!

簪「!?」ゴオオアアアア

ドゴオオオ

一夏「まずい!」

一夏「あいつの固有無線周波数なんて知らねえし……学園内共通周波数で! 白式!」


一夏『簪!いまどういう状況だ!』

簪「織斑くっ!?」

一夏『』

簪「反動制御が効かない!右脚部のスラスターが異常加熱してる!」

一夏『右脚部……!?』

一夏『そいつはスラスター部のエアコンプレッサがイカれたんだ!今すぐ右脚部を機体から切り離して、左も推力カット!完全PIC制御に切り替えろ!』

簪「うん……」ピピピピピ

簪「……ロックが、外れない」ゴオオオオオオオオ

一夏『んだとっ!?』

簪「左の推力系も全然応答しない!こっちも加熱してる!」

一夏『畜生がっ!』

ゴオオオオオオオオ

簪「お姉ちゃん……」

簪「嫌……嫌だ」

簪「まだ……追いつけないの」

ヒュゴオオオオオオオオオ

簪「私、やっぱり駄目だ」

一夏『馬鹿野郎ぉ!』キィーーーーーン!!

簪「!?」

一夏『寝言言ってる暇があったら機体を立て直せ!スラスター燃料の純水を全投棄すれば少なくとも左の加熱は止まるし、制御もやりやすくなる!その状態でアリーナにハードランディングするんだ!』

一夏『やれっ!死にたくなかったら!』

簪「……うんっ!」

簪「燃料全投棄、PIC制御出力全開……っ」ガキュ プシュウウウウウウウウウ

ズガッ!ガガガガガガガガガガッ!!!

簪「ああああああああっ!!」ズガガガガ!!

ズガアアンッ!!

一夏「簪!そこ動くな!」ダダダッ

一夏「ほんと、あってよかったぜ。消火銃!」ブシュワアアアアアアア

ジュウウウウ

一夏「これで一安心……か。簪、大丈夫か?」

簪「織斑……くん」

簪「大丈夫。むちゃくちゃ、痛いけど」

一夏「……どうせ立てねえだろ。背中貸すぜ」

一夏「まあ、当然だよな。報告書提出は……」

簪「……」

一夏「しかも報告はレポート用紙五枚、手書きか。こりゃ一晩コースだな……」

簪「あの……ありがと」

一夏「あ?」

簪「さっき助けて、それに……叱ってくれて」

簪「あれで、私、持ち直したから……」

一夏「大したことねえよ。それより、飯食いに行かねえか?」

一夏「もう食堂も空いてるだろうし、それに腹減ったろ」

簪「あ、うん……」コクッ



一夏「かき揚げうどんと鶏天」

簪「私も、それで……」

ハイ、オマチー

簪「……」チャプチャプ

一夏「かき揚げべチャ漬けにするのか……」チャプン

簪「え?鶏天をうどんに入れちゃうの?」

一夏「……お互いデカルチャーだな」

簪「でかる……ちゃ?」

一夏「知らないなら知らなくていい。別に生きてく上で必要な知識じゃないから」

一夏「まあ、気を取り直して」ズルズル

一夏「俺と、組まねえか?」

一夏「そしたら機体の方も何かアドバイス出来るかもしれないし。これでもメカには結構強い方なんだぜ」

簪「……」

簪「うん。宜しく」コク

一夏「決まり、だな」

整備場

一夏「こいつのデータ見せてくれ」

簪「うん」ピッ

一夏「(……打鉄弐式DDI搭載タイプの先行量産機を改造した機体か。そこはシャルのラファールに似てる)」

一夏「(しまかぜ型DDIでの艦載装備はオミット、艦載装備の構造的無駄を見事に解消してる)」

一夏「……ん?」

簪「どうしたの?」

一夏「エアコンプレッサの圧縮比が高すぎる。こりゃ事故も起こるわけだ」

簪「え?」

簪「カタログ上はここまでが許容レベルだったから、そうしたんだけど……」

一夏「このコンプレッサはウェスティングハウス社のだろ。それなら多分実証試験をネリスでやってるはずだ」

一夏「乾燥したネバダの砂漠と同じ圧縮比だったら、日本の湿った空気じゃ一気にむせこむ」

簪「そう……なんだ」シュン

一夏「機動力重視のこの設計なら高速時用の空気のバイパスを組み上げて、推進器をいっそターボラムジェットにした方がいいと思う」

簪「あ、一夏くん!」

一夏「あ?」

簪「あ……その。ごめん織斑くん」

一夏「別に、一夏でいいぜ」

簪「あ、そうじゃなくて……それもあるけど……」

簪「もう一回、言ってくれる?」スチャ

一夏「そういう事か。……圧縮比は通常まで下げて、代わりに高速巡航時用のバイパスを作って、推進器をターボラムジェットに変える」

簪「圧縮比は通常まで、高速巡航時用の空気のバイパス、ターボラムジェット……」

一夏「ターボラムジェットは打鉄弐式の規格なら、GEのF506かロールスロイスのテームズが行けるはずだ」

一夏「俺が思うにF506の方がいいな。アメリカ製の部品の方が日本機なら融通が聞く」

簪「武装の方も見てくれるかな」

簪「私、メカは強くても戦術とかは苦手で……」

一夏「(最初からそのつもりだった。とは言えないな)」

一夏「武装はデフォルトのままか?」

簪「荷電粒子砲とマルチロック式のミサイルモジュールを追加した以外はほとんど……」

一夏「なるほどな……」

一夏「薙刀習った経験はあるか?」

簪「……」フルフル

一夏「オーケー、剣とかそう言う武道は?」

簪「全然……」

一夏「……よし、ならナイフとハンドガンに換装か……剣や長物は長期間の訓練受けてないと意味をなさねえ」ピッピッ

一夏「荷電粒子砲も近距離用プログラム組んで、威力落とす代わりに速射性と即応性を上げるようにして……」

一夏「ミドルレンジに穴があるのは、ハンドガンのオプションを変換して、高速換装の要領でカービン化させるとかか」

一夏「あとは……簪」

簪「何?」

一夏「思いきってこの機体の情報系能力を底上げしてみないか」

簪「情報系の……能力?」

一夏「ああ。電子戦装備とセンサー系の増強、それに情報処理・管制装備の追加だ」

一夏「軍事運用でISの目として動く、電子戦闘偵察機の能力をそのままこいつに持たせる」

一夏「そうすれば精密射撃のいる武装は使い勝手がずっと良くなるし、味方にも有利な状況を作り出せる」

簪「でも、それって……本当に私にできるの?」

一夏「簪、お前この前の情報処理の試験、学年トップだったろ。掲示板に出てたの見たけど」

簪「あ、うん……」

一夏「織斑センセ曰く、あのテストは情報処理以外にも、物事の並列処理の能力を試してるテストらしい」

一夏「だから多分お前にはできるはずだと俺は思ってる。足りない分は補助AI積むなりなんなりで解消していけばいいからな」

簪「……うん」コク

簪「一夏の提案、受け入れてみる」

一夏「……ありがとな」



一夏「さて、そうなると改装にかからなきゃな」カツカツカツ

一夏「ISの中身までいじるのは俺だけじゃできねえし、整備課の連中にも声かけて手伝ってもらうしかねえか……」カツカツカツ

一夏「だけど電子戦・観測系は完全に軍事機密に足突っ込むから簡単にはデータ引き出せねえしな。簪に大見得切ったものの、どうするか」カツカツカツ

一夏「……」カツカツカツ

一夏「……あった。エリント系の装備を充実させたISが学園に一機」

一夏「仕方ねえが、アレを参考にして組み上げるしかねえな」

格納庫
黛「ってなわけで、駆けつけてきましたよー!」

のほほんさん「きましたよー♪」

シャル「きましたよー」

一夏「サンキューな。二人共。お礼に今日の夕食奢らせてもらうよ」

簪「そんな……織斑くん、わるいよ……!」

一夏「改装プランより複雑にしちまったのは俺のせいだからな。俺が負担するさ」

黛「で、これが件の『打鉄弐式』の改装図と……推進器交換とアンロックユニットへの複合センサーブレード追加と……」

のほほんさん「これは本当に重労働かもねー」

簪「ごめんね、本音。本当に急に」

のほほんさん「別に謝る事無いってー、友達のぴんちはたすけるものですからっ!」

一夏「じゃあ三人は打鉄をお願いな。俺とシャルも、白式の武装いじってから手伝う!」

黛「えー!?織斑くんも手伝いなってば!」

一夏「ニ十分で戻ってくるって!武装にアタッチメントくっつけて量子変換実験と動作実験するだけだよ!」


一夏「さて……」

シャル「で、武装の改良って云うのは?」

一夏「クロムウェルだ」シュウィン

一夏「今回の試合の場合、観測系と遠距離武装が主兵装の簪は前に出れないだろうから、必然的に前衛の壁役は俺になる」

一夏「さらに簪は主要レンジがロングレンジからアウトレンジ、俺はクロスレンジとロングからアウトレンジという極端さだ」

シャル「成る程。その場合二人共苦手なミドルレンジがガラ空きだね」

一夏「そうなる」

一夏「特に厄介なのはサブマシンガンとかPDW(個人防護武器)、それにショットガンとかな」

一夏「だからミドルレンジの不利を埋めるために何かできないかと思って考えてたところに、海兵隊の微笑み[ピザ]が7.62mmFMJ弾代わりにアホな試作武器、2つも送ってきたんだ」

シャル「シャーリーンが?」

一夏「オウよ。アニメオタク丸出しな武器作って送りつけて、モニター頼むってさ」

一夏「幸い拡張武装のサブウェポン扱いだから大した容量にもならないし、ひとつはどうにも役に立ちそうときた」

シャル「もう一つは?」

一夏「浪漫武装すぎて泣けてくらぁ」

シャル「あはは……」


一夏「わり、遅れた! 今から手伝う!」

のほほんさん「おりむー、おーそーいー!」

一夏「ごめんって!」

黛「ふう……こんなもんかな?」

整備's「いぇい!」パァンッ

シャル「難工事の割には、早く終わったかもね」フゥ

一夏「だな。山場の推進器換装が案外簡単に行ったのがカギだろうな」

簪「あの……ありがとうございます!」

簪「私一人じゃ……多分、どうにも出来なかったっと思うから……」

簪「本当に、ありがとうございますっ!」ウルッ

黛「気にしないで。同じ学園の仲間なんだから」

シャル「それに面白い構造やパターンも見れたよ」

黛「じゃ、あたし達先上がるから」

のほほんさん「おりむー、片付けよろしくねー♪」

プシュー

一夏「簪」

簪「え?」

一夏「次の大会、行けるトコまで行こうぜ」

簪「……うん」ニコ

寄宿舎廊下
一夏「たまちるつるぎーぬきつれてー しーぬるかくごでーすすーむべーし♪っと」(軍歌『抜刀隊』)

男性「……」キョロキョロ

一夏「(男? カード下がってるから来賓みたいだが、誰かの親か?)」

男性「あ、キミ。ここの生徒さんかい」

一夏「あ、はいはい」

男性「1年4組の更識簪の部屋……わからないかな?」

男性「地図はあるんだが、似たような通路と部屋が多くてね」

一夏「あ、簪の部屋ですか。それならそこの突き当り行って2番目の十字路を左に行った4番目の部屋です」

男性「……」

男性「いや、ありがとうね」スタスタ

一夏「なんだったんだ……簪の親戚か?」

一夏「まあいいか……」

一夏「みくにのかぜとーもののふはー♪」スタスタ

一夏「ただいまー……って、またアンタ勝手に上がり込んだんですか」

楯無「チャオ♪」フリフリ

一夏「今日は何かの報告っすか?」

楯無「いえいえ。妹の様子を聞きに少し……ね」

一夏「最近よく笑うようになりましたよ。以上」

楯無「そう……」ニコ

一夏「……自分で様子見に行けばいいでしょう。せっかくの姉妹なんですから」ハァ

楯無「そうは。いかないのよ」

楯無「私は憎まれ役演じてるからね」

楯無「あの娘の業を、私が余計に背負うために」フッ

一夏「……業?」

楯無「そういえば話してなかったわね。織斑君には。日本のフーバーになりそこねた男と、その末裔の物語」

一夏「更識機関……?」

楯無「ええ。主にKD機関、S機関の俗称で呼ばれていたらしいわ」

楯無「元々は永田鉄山少将が参謀本部時代に、来るべき対支戦争での諜報と後方工作のために設立した諜報機関よ」

楯無「当初の標的は民国政府と中国東北部の軍閥が主だけど、それ以外にも国内政変を予期しての日本の政界財界の調査も独自に行っていたわ」

楯無「トップになったのは更識刀郎陸軍大尉。それ以前から関東軍で活動していた、私の4代前の先祖に当たる男」

楯無「当初、更識機関は永田少将のコントロールのもとで、行動こそ非合法ながらも健全に動いていた機関だったわ」

楯無「だけど、ある日それが崩れた」

楯無「一夏くん、あなたなら知っているでしょう?」

一夏「……相沢事件か」

楯無「そう。相沢中佐による予期せぬ永田少将の暗殺。これで更識機関と更識刀郎を抑え、コントロールするものは無くなったの」

一夏「後継の東條英機は駄目だったのか?永田局長の腹心だろあいつは」

楯無「永田の秘密守秘が徹底して、腹心の東條すらKD機関と言うものを永田が作っていた。というぐらいにしか知らなかったらしいわ」

楯無「後に全て知ったらしいけど、巣鴨プリズンの獄中で、ね」

楯無「閑話休題、永田暗殺以降制御を失った更識機関は暴走をはじめるわ。誰の命令もなく、独自の幽霊諜報機関として」

楯無「日本国内と大陸、そしてソ連で諜報、暗殺、破壊工作が更識刀郎の独断の元で行われた」

楯無「特にソ連での嫌がらせは相当に功をなしたらしいわ」

楯無「そして時代が下って終戦後、日本国の立て直しを図るときになって、更識刀郎は初めて表舞台に現れたの」

楯無「今までに作り上げた諜報リストを引っさげて、ね」

一夏「諜報リスト……」

楯無「そう。日本の軍人や政界・財界人、その他注意人物を執拗に調査したリストよ。皇族から共産主義者まで、何百人と書き込まれていたらしいわ」

楯無「彼は当時かろうじて公職追放を免れていた政治家や財界人に対し、戦争中や戦前の裏の行動の、GHQへのタレコミをちらつかせたの」

楯無「自分と更識機関の存在を誇示し、手を出せなくするために」

楯無「もちろん政治家は更識を敵に回せない。しばらくは彼に服従していたの。その間にもファイルは拡充を続けた」

楯無「今度はGHQまで相手取って、今公開してもこの国が憲法からひっくり返りそうになるくらいに大量の秘密を拡充した」

楯無「でも、それもあっけなく終わったわ」

一夏「終わった?」

楯無「1953年に更識刀郎が急死したの。心臓発作で」

楯無「それからカリスマを失った機関は、それまで更識機関を良く思っていなかった者達の手で、壊滅に追い込まれたわ」

楯無「だけど、肝心の調査ファイルは見つからなかった」

楯無「ファイルを探す者達は更識の息子にファイルの在処を聞き出したのだけど、結局ファイルは見つからなかった」

楯無「その際、彼の息子もまたファイルを巡って知らず知らずのうちに暗部に踏み込んでしまった」

楯無「それからよ。見つからないファイルを巡って、更識の家の者が暗部に生きてしまうようになる堂々巡りが完成したのは」

楯無「暗部の更識家。全てフーヴァーになりそこねた男の妄執が招いた一族への業なのよ」

楯無「簪には公安の事も、更識の真の姿も、一族の業も、何一つ背負わないで生きてほしいと思った」

楯無「だから私は必要以上に優秀に振る舞い、あの娘に疎まれて、あの娘を私に染み付いた業から引き離そうとしてるの」

楯無「……嫌な女を演じるのも、疲れるのだけれどね」フゥ

一夏「……いろいろあるんだな。あんたんところも」

楯無「一夏君はいいね。お姉さんと仲良くて」

一夏「そうでもないさ。お互い気を使っているよ」

楯無「練習で人一倍キツイのも、一夏君が死なないために、強くするからでしょ?」

一夏「それもありますけど、多分千冬姉、モンデ・グロッソ事件の時の負い目も感じてるんだと思いますわ」

一夏「少し気を使いすぎるから……千冬姉は昔っから」

一夏「紅茶、淹れますよ。喉乾いたでしょう」

廊下
簪「(風江のおじさまにもらったパウンドケーキ、一夏にも持って行こうっと)」トタトタ

簪「……あれ?」

ガチャ キイ

楯無「紅茶ごちそうさま。ありがとうね」

一夏「それじゃ良い夜を、先輩」

簪「(……どういうこと?)」

楯無「ところで、簪ちゃんの機体、どうにかなった?」

一夏「勿論。メカニックと軍事知識の結集しうる限りに仕立てあげてますわ」

楯無「私の機体データ、役に立ったでしょ?」

一夏「確かにレイディのエリント能力を参考にしなけりゃ、完成はしませんでしたけど」ポリポリ

簪「……!?」

簪「全部……姉さんが?」

簪「……っ!」ダッ ドサッ


楯無「……あら?」

楯無「この銘柄……よく風江警視が簪に買うパウンドケーキじゃない」

楯無「どうしてこんな所に……」

以上で本日分終了です。これで8話分ですか……
これ以降のトーナメントでは独自にセシリア・鈴戦、シャル・ラウラ戦も追加いたします。
あと箒と学園最強が組むのはチートじゃねえかと云うご指摘については、楯無が
「ISは機体性能と操縦技量の両立によりはじめて力を発揮するので、機体は超級でも技量に大幅に劣る箒では局地戦では大きなハンデは必要ない」
と考えたためです。いずれ本文中で説明させます。

一夏「じっごっくーをみっれーばー こっこっろーがかっわーくー」

一夏「たったっかーいは あーきたーのーさー♪」

プシュー ピロリロピロリロ イラッシャイマセー

一夏「ん?」チラ

一夏「よぉ簪」

簪「……」ピクッ

一夏「その箱、この前頼んでた物か?」

簪「うん……」

一夏「そっか。俺もちょっとまた頼むものできて、払込するトコだ」

簪「そうなの……」

簪「ねえ。一夏」

一夏「お?」

簪「少し、話がしたいの。貴方の部屋に寄っていい?」

一夏「……」

一夏「……オーケーだ。少し待ってろ」

一夏「まずは払込させてくれ」

一夏の部屋
一夏「ちょっと待ってろ。今紅茶用意する」コポポポポ

簪「……さっき、全部聞いた」

一夏「聞いた……?」

簪「姉さんが関わっていたこと、打鉄の観測系にレイディのデータが使われていたこと、全部……」

一夏「…………まずったか」

簪「答えて。あれは本当なの?」

簪「私は貴方のこと信じてたのに」

簪「結局私は姉さんの手のひらの上で踊らされていて、貴方はそれを面白がっていただけなの?」

一夏「……確かに、俺がお前に接触したきっかけは、あの人に頼まれたからだ」

一夏「だが接触したのもISに関して助言したのも全部俺の意思だ」

一夏「信じようと信じまいと、それが事実だ」トポポポポ

一夏「ほら、紅茶」

簪「……うん」ズズッ

一夏「……多分、お前は打鉄の中にレイディのデータが使われてるのが嫌なんだろう」

一夏「お前の言葉を借りれば、優秀な姉の手のひらの上で踊らされてるみたいで」

簪「……そう」ズズッ

簪「無能なままでいなさい。私が全部してあげるからって……」

簪「そんな声が、聴こえる感じがして」

一夏「……」カチャ

一夏「こいつ、何だかわかるか?」スッ

簪「……飛行機?」

一夏「三菱零式艦上戦闘機。通称ゼロ戦。日本でこの名前を知らねえ奴はいねえ、第二次大戦中の帝国海軍の主力戦闘機だ」

一夏「だが、こいつは純粋な全日本製の機体じゃねえ」

簪「……?」

一夏「栄エンジン、ハミルトン式恒速プロペラ、クルシー式無線電話、引き込み脚機構、五二丙型に積まれた13.2mm機銃」

一夏「これ全部が敵国アメリカのコピー品だ。純粋な日本製なのはそのコンセプトと機体設計だけ」

簪「……」

一夏「俺の白式も同じだ。コアに固有武装、それに展開装甲と、肝心なとこは全部俺が認めたくねえ相手が手ぇつけてる」

簪「……」

一夏「だが、それもまた好都合と俺は考えてるんだ」

簪「どうして……?認めたくない相手が作った物なのに」

一夏「認めたくない相手でも、その優れた技術を自分のものにして、それを手前の目的のために生かせればいいんだよ」

一夏「そうでもして割りきらなきゃ、俺は永遠にあいつには勝てねえからな……」

簪「……」

一夏「ただ、そー言う俺の考えを押し付けて再設計しちまったのは謝る。問題あるなら今からでも他の方法で観測系を設定し直すから……」

簪「……いい」フルフル

一夏「……そうか?」

簪「うん。例えレイディのデータが使われていても、打鉄弐式改は私が設計しなおした機体だって教えてくれたから」

簪「そのゼロ戦みたいに」

一夏「……まあな」

一夏「確かに細かい部品はアメリカ製のコピーでも、こいつの素性は堀越二郎オリジナルの機体だ」

簪「……それに、私も超えてみたいと思う。姉さんを」

簪「姉さんのデータを姉さんとは違う方法で運用して、姉さんに私を認めさせたい」

一夏「(……違う方法で、運用か)」

一夏「(案外俺と似てるのかもな。簪も)」

引き込み脚ってアメリカ製だったっけ?
風立ちぬかなんかの特番で日本の発明って言ってたような・・・記憶違いか?

一夏「そういや、その箱の中身何だ?」

簪「あ、え……!?」

一夏「まー多分その箱の大きさだと、何かのディスクボックス系だろうが……」

簪「そ、そそ、そう言う一夏もこの前何頼んでたの?」

一夏「あ、ああ。アレ?」

一夏「アニメのディスクボックス」

簪「……え?」

一夏「本編だけでなく後から出てきたOVAまで付いてくるお得なリマスター版でさ。絶対に買わなきゃって思って」

簪「……一夏もなの?」

一夏「も……って事は、それもアニメのディスクボックスか」

簪「……うん」コクリ

簪「……見る?」

一夏「見せてくれるなら」

簪「……」ベリベリ

一夏「お、こいつ……懐かしいな。ガキの頃よく見てたヒーローシリーズだ」

一夏「これ今見てもアツいんだよなあ」

簪「……子供っぽいとか、バカにしたりしないんだ」

一夏「そんな事言ったらキッズアニメに心血注いでる知り合いに殴られらあ」

簪「そうだ。一夏の買ったのも見せてよ」

一夏「いいぞ、ほら」スッ

簪「……なにこれ。ロボット?」

一夏「ああ。最高にむせるヤツだ」

一夏「良かったら貸すぜ?」

>>157
ゼロ戦の引き込み脚機構は米チャンス・ボート社のコルセアV-143を参考にしたとされています。
まあ一夏はパクリでなく参考にしただけとわかってて、半分誇張的に云ってるだけです。

ザワザワザワザワ

一夏「…………」カツカツカツ

一夏「(俺と簪の組は一回戦で鈴・セシリアの香港コンビ、二回戦でシャル・ラウラのユーロコンビと激突ね)」カツカツカツ

一夏「(そんでもって準決勝で……箒と更識センパイか……チートくせえ相手だなこりゃ)」カツカツカツ

一夏「(つーか俺と箒が組まなかった意味ねえじゃないか……)」

楯無「あら一夏くん。こんにちわ」スッ

一夏「……楯無センパイですか」

楯無「組み合わせ表もう見たかしら」

一夏「見ましたよ。なんですかあのチートくせえ組み合わせ」

楯無「あら?私はそうは思わないけれど」

一夏「学園最強と第四世代機乗りのどこがチートじゃねえっつーんですか」

一夏「そもそも第四世代機は他の機体と性能が違いすぎる。展開装甲なんて物もあるわけだ」

一夏「周りがF-4やMiG-21に乗ってる中で、一人だけステルス戦闘機持ってくるようなもんですよ」

楯無「一夏くん。何か勘違いしていない?」

一夏「は?」

楯無「IS同士の戦闘で重要なのは彼我の性能だけではないわ。その操縦技能や戦闘技能も同じくらいに重要」

楯無「むしろモンデ・グロッソ代表のようなエースドライバー級ならば技能のほうが重要になってくるの」

一夏「……それはわかっているつもりですけど」

楯無「率直に言うけど、箒ちゃんはあなたが思っているほど強くは無いから」

一夏「率直すぎますね」

楯無「今の彼女は適正こそ高いけど、急激な適正向上で操縦技能が足りずに機体の性能に振り回されているわ」

楯無「だから、あなたが1とすれば彼女も1か、それより低い総合能力しか出し切れていない」

楯無「もちろんこれが上級生になれば第二世代機でも2や3を引き出す専用機乗りだっている。そう云う意味ではとても公平と云うこと」バサッ

一夏「……言いたいことはわからなくもないです」

楯無「あと箒ちゃんも少しコーチしとかないと。いざまた強奪があった時に自衛できなければ大変だから」

一夏「と云うより、それが主目的でしょう?」

楯無「お仕事的にはそうなるわね♪」ヒラヒラ

カフェテリア
一夏「さて……対策と作戦立ての時間だ」バサッ

簪「凄い……本格的だね」

一夏「大会まではあと1週間しかねえからな。そうなるとお前は慣熟訓練でいっぱいいっぱいだろ」

一夏「3日かそこらの訓練じゃ簡単に連携はとれないからな」

簪「あ……」

一夏「そうなるとある程度の戦術のパターンを組んだほうがずっと対応が取れる。練度の差を作戦で補うわけだ」カチカチ

一夏「で、打鉄弐式の手応えはどうだ?」

簪「すごくいい。射撃の命中率も段違いだし、いろんな情報からドローンの挙動が手に取るようにわかる」

一夏「成る程、それなら問題ないか……」

一夏「まず状況説明だ」

一夏「簪は装備上ロングレンジがメインになるから、クロスレンジは俺が担当する。これは決定な」サラサラ

簪「うん」コクリ

一夏「で、簪は常に遠距離戦に持ち込める位置をマークし続ける必要がある」

一夏「幸いな事に打鉄は機動性はあるから徐々に距離を詰められることはまず無いだろう。機動パターンに関しては後からアリーナで実践するとして、あとは相手の瞬時加速によるレンジ詰めへの対抗策だ」サラサラ

一夏「これは……スタングレネードとランチャーをどこかに突っ込んでおけばなんとかなるはずだ」

簪「スタングレネード……近接防御とかじゃなくていいの?」

一夏「あくまで瞬時加速を解かせて間をとることが主目的だからな。シールドに邪魔される近接防御ミサイルよりも、中の人間を確実に怯ませられるスタングレネードの方がいい」

簪「成る程……」

簪「でもスタングレネードだと観測系が壊れるかもしれないから……使用時に一瞬だけ観測をカットする防護プログラムも組まなきゃ」

一夏「だな」

一夏「それと俺なんだが、非常にまずいことに今回戦う相手は大体俺の手の内を知ってる」

一夏「ミドルレンジがお留守なのも、瞬時加速で間合いを詰めて雪片で攻撃するのも、クロムウェルをいまいち持て余してるのも、全部だ」

一夏「だから、できればでいいから援護はやってくれると嬉しい。ミサイル……山嵐の飽和攻撃で足止めするとか」

一夏「ミサイルモジュールの美点の一つが、足止めに優れた飽和攻撃ができるところだからな」

簪「うん」コクリ

一夏「俺も今回届いた後付武装でなんとか善戦してみる」


今日は以上です。タッグマッチの実戦は明日以降になります。

それと蛇足的な設定バラシでも


戦術レーザー砲『クロムウェル』
BAEシステムス社が開発したIS用の対地対艦用化学レーザー砲。
英国の第二世代IS就役時に開発されたもので、大型の機関部と『物干し竿』と揶揄されるレーザー輻射機能を持つ長砲身が特徴。
その威力は1門で20世紀のエクセター級重巡洋艦なみの打撃翌力を有するとも。
だが大型長砲身の砲故に取り回しは非常に悪く、またエネルギー効率も非常に悪いとIS戦闘には絶望的に不向きなため対地対艦攻撃が主任務(それでも対IS戦闘を行う事例もあるにはある)。
また内蔵照準装置が簡素なものしか無く、長距離狙撃や高速戦闘においては味方の観測及びシギント下でなければ真価を発揮しないという欠点も持つ。
本来電子戦機とチームで運用されるため英国軍でこの欠点が露呈することはなかったが、一夏は結構これに悩まされている。

これらの欠点を受けて英国海軍の第三世代機「シー・ティアーズ」に搭載されたクロムウェルMk.IVは出力を少々減じる代わりに砲身と機関部を大幅に小型化し、対空・対IS戦闘用の速射砲撃モードや拡散砲撃モードなどを設けている。
ただこのモードもどちらかと云うと遠距離向けで、中距離では取り回しが不向きな一面を持つ。これもBT兵器をミドルレンジに使用する「シー・ティアーズ」では全く問題にならなかったが、白式ではいまだ問題となっている。
なおMk.IVの大きさは派生の対ISライフルであり、「シー・ティアーズ」原型機である「ブルー・ティアーズ」に搭載されるスターライトMk.IIIとほぼ同じ程度。

英国のBMD(弾道ミサイル防衛)構想では駆逐艦とデータリンクの上、本砲で弾道ミサイルを撃墜するプランもあった。
実際に宇宙空間を慣性飛行するミサイルを撃墜可能なモードを持つ改造砲「クロムウェル・ロードプロテクター」も用意されたが、価格の高騰と「ブルー・ティアーズ」開発の余波でお蔵入りとなった。

タッグマッチバトル当日 アリーナ

一夏「可変武装……オーケー。調子はいい」

一夏「簪、そっちは?」

簪「補助機体制御AI「島風」、補助情報処理AI「雪風」、観測管制系全部よし」

一夏「頼むぜ、スーパーシルフ」

簪「行こう」

一夏「ああ」


ワーワーワーワー

サンカイセン オリムラ、サラシキペアタイオルコット、ファンペア

鈴「こうやってぶつかるのはクラス対抗戦かしらね」

一夏「だな。あんときゃ邪魔入ったが……今回は勝たせてもらうぜ」チャキン

セシリア「更識さん。あなたに恨みはありませんが、この戦い、セシリア・オルコットが勝たせてもらいますわ」

簪「それはこっちのセリフです……!」


一夏「……5」

セシリア「4」

鈴「3」

簪「2」

「「「「1」」」」

ピィーーーー

鈴「先手必勝ぉ!」ギャンッ!

一夏「そう来ると思ったよ!」ガキイイン!

セシリア「そこですわ!」バシュンバシュン

一夏「だから、読めてるつってんだろ!」ガキュガキュ

一夏「(思った通りに、鈴を前衛に出してセシリアが援護射撃を担当するか……)」

一夏「(一見簡単に読めるフォーメーションだが、実際に相手するとふたりとも連携の息があっていて、かなり手強い)」

一夏「(策がなきゃ防戦一方だが……今回ばかりは用意させてもらったんだよな!)」

一夏「簪! 作戦Aで行くぞ!」

簪「分かった!」

一夏「一気に決めるっ!」ギュンッ

鈴「いつもどおりの変則機動と瞬時加速を組み合わせた接近戦……、ホント、芸が無いわね!」ギュンッ

一夏「言ってろ!最も確実な手段で戦うのもまた手だぜ!」ヒイイイイイ

ガッギイイイイン! ギィィン!

一夏「んーでもって、厄介なBT兵器が飛んでくる前に……」

セシリア「本当に近距離戦闘のぶつかり合いはやかましくて困りますわね」

セシリア「でも、そのおかげでマークががら空きになって下さるんですもの。感謝しないといけませんわね!」ジャキン!

簪「そうだね」チチチチチ……シュバァウッ!

セシリア「!?」バッ

ズガンズガンズガンッッ!

簪「『山嵐』はオルコットさんを自動追尾砲撃モードにしたまま、『雪風』『島風』に制御をまかせる。間を絶対に途切れさせないように……!」シュバゥッ シュバゥッ シュバゥッ

簪「そして私は……『春雷』で鳳さんを狙って!」バシュバシュバシュ!

鈴「何してるの!援護まだ!?」ガギインッ

一夏「援護は期待しないほうがいいぜ。今あっちも立てこんでるみてえだしな」ギギギギギギ

一夏「たまにはいいだろ!俺と二人っきりってのもよ!」ガギィンッ!

ズガンズガンズガンズガンズガアアアンッ

セシリア「一発の破壊力は大したことはありませんが、波状攻撃で照準を狂わせて、集中を途切れさせてくる……!」ズガンズガン

一夏「(ブルー・ティアーズは武装の設定上、BT兵器と狙撃の両方の面で集中力を極度に求められる機体だ)」

一夏「(だから隙を与えねー波状攻撃で、集中力とセンサー系を狂わせてもらう……そうすりゃ一定時間の足止めはできる)」

一夏「(……最も、手の内読まれた以上、長くは持たねえだろうがな!)」

鈴「でええいやああああああっっ!!」ガキイインッッ

一夏「チッ!」ギギギッ!

鈴「ほらほら!女にダンスをエスコートされるなんて、みっともないじゃない!」ボシュボシュ

一夏「(鈴の衝撃波砲による牽制攻撃も厄介だな……そろそろ決めるか!)」

一夏「『零落白夜』発動!一気に決めさせてもらうぜ!」シュバアウッ

鈴「(なるほど。持久戦で不利だからって短期決戦に持ち込む気ね……)」

一夏「でえええええいやああああっっ!!」

鈴「でも、隙が大きすぎよ!」ブワッ! ボシュボシュボシュッ!!

鈴「斬撃と『龍咆』の両方食らって落ちなさいな!」ザシュアアアアッ!

一夏「かかったな、アホが」ズアアアアアアッ!!

ギィィィィィンンンッッ!!

鈴「な……!?」

鈴「ノーガードのまま、斬撃を押し切った……!」

一夏「お前の青竜刀は攻撃するときの隙がでかいからな」

一夏「だからわざとフルスイングして、攻撃に誘い込んでガードを解かせてもらったのさ。そこからはもう押し切りさ」

一夏「肉を切らせてなんとやらってな……こっちもジリ貧だが、お前も『零落白夜』のフルスイングの直撃食らったんだ。そっちのシールド残値だってゼロだろうよ」トントン

一夏「接近戦に持ち込まれたら箒と並んで一番厄介な相手だからな。全力で潰させてもらったぜ」トントン

鈴「くうぅ……」


一夏「鈴はリタイア……さてあと問題はセシリアだが……」ヒィィィ

一夏「シールド残値22……こりゃ『零落白夜』は相打ち覚悟でも10秒程度しか期待できねえな」ヒィィィ

一夏「しゃあねえ。俺は援護に回って、あとは簪に任せるしかねえか……『クロムウェル』!」ヒィィィ



セシリア「そこですわ!」ビシュビシュビシュ!

簪「遅いっ!」シュンッ

簪「(一夏の言ったとおり、オルコットさんにこの打鉄ではやりやすい相手かも)」ヒィィィ

簪「(BT兵器のフレキシブルな動きがちょっと厄介だけど、その分本体は制御に集中力を割く必要があるから、対応が隙もでき易い)」ボシュボシュ

簪「(その反対に打鉄はミサイルの動きは単調だけど、絶えず入ってくる観測結果とデータ、それに『島風』と『雪風』の補助のおかげで素早い対応もできる!)」ヒィィィ

セシリア「(……最初に一夏さんをマークして攻撃したのが失敗でしたわ)」ビシュワビシュワ

セシリア「(二対一に追い込もうとしたら簪さんの援護攻撃で鈴さんとの連携が分断され、一対一の状態に……)」ビシュワビシュワ

セシリア「(しかも……遠距離戦で、ああまで流れるように動けるなんて!)」ヒィィィ

セシリア「やりにくい相手ですわね……!」

一夏『簪、わりい。少し遅れた!』ヒィィィ

簪「遅いよ、ちょっとミサイル残数がピンチ」シュィィィ

一夏『じゃあ一気に畳むか。プランⅡでいく。照準リンク頼む』ヒィィィィ

簪「わかった!」ジャキンッ

セシリア「ようやく攻撃を止めましたわね……」

セシリア「仕留めますわ!行きなさい!『ブルー・ティアーズ』!」シュビンシュビンシュビン

簪「『春雷』はオルコットさんを狙って断続射撃しながら……『山嵐』の全ポートを開放っ!」シュバウシュバウ ボシュボシュボシュ

セシリア「な……っ!?三……いえ、四正面からの攻撃?!」

セシリア「ですが、まだこれなら逃げ場が――――」シュバァウッ!

一夏「いーや、無いんだよな。これが」ビシュワアアアアッ

セシリア「……っ!」


ズッガアアアアアアアン!!


一夏「ブルー・ティアーズ最大の欠点は、BT兵器を使うとそっちに意識が行き過ぎて、周りの状況が見えにくくなることなんだよな」

一夏「戦車ゲーとかで照準器モードで近づきすぎて、周りの敵にいつの間にかボコられるかのごとく」

一夏「まあ結局コーディネーターでもなけりゃ、脳波操縦ユニットの操作しながら周り見て戦うなんてできないってことか……」

一応セシリア・鈴戦は軽く書かせていただきました。
なんかどんどん主人公組がチートじみていく……

ワーワーワーワー

一夏「……やっぱここのコーヒー濃すぎるな。砂糖足さなきゃ」サーッ

簪「あ、ミルク取ってくれる?」

一夏「ほいほい」

一夏「……一回戦の結果が大体出揃ったか」

一夏「ラウラ・シャルのユーロコンビと、箒と更識センパイのチートコンビも勝ち抜けか」

一夏「ってことは……次もまた厄介な相手と当たるか」ズズズ

簪「一回戦の二人よりも厄介だったりする?」ズズ

一夏「シャルとラウラはあいつらと別の方向で厄介なんだよな」ズズズ

一夏「セシリアと鈴みたいにレンジ特化は無いが、シャルはひたすら手数が多いし、ラウラは正規の軍での訓練を受けているから空間認識能力がとにかく高い」

一夏「その上武装も全方向全方位で隙が無い。打鉄弐式の主武装のミサイルも飽和状態で撃ちまくらない限り、全部AICで止められるだろうな」ズズ

シャル「さらに今回シャルには隠し球もある」ヒョコッ

一夏「うわっ!」ビクッ

一夏「お前いつからそこに!?」

ラウラ「ついさっきからだ。コーヒーのミルクを取りに来たらたまたまお前が居た」

シャル「今回秘密の新兵器を用意したのは一夏と簪だけじゃないってことだよ」

一夏「お前も何か用意したのか」

シャル「まあ、前々から用意していたモノがね。ようやく試作段階までこぎつけたんで」ニヤリ

一夏「成る程……こりゃ更に厄介になるな……」ニヤリ

ジュッカイセン オリムラ、サラシキペア タイ デュノア、ボーデヴィヒペア

ピィーッ!!

一夏「『クロムウェル』!」ジャキンッ

ラウラ「……見慣れない部品が銃身にぶら下がっているが、あれが件のアクセサリ武装か?」

シャル「そうだよ。中身はボクもわからないけど」

一夏「簪!援護とデータリンク頼む!」ギュンッ!

簪「りょ……了解!」ジャキン

一夏「喰らえ!」ボシュボシュボシュ

ラウラ「(サークルロンドでの牽制射撃……いつもの一夏に比べて周りくどいな)」

ラウラ「(なにか企んで、仕掛けてきているのは間違いない!)」ビシュビシュ

一夏「(ラウラが本気で当てて来ていない……策に気づいて警戒しているのか)」ボシュボシュ

一夏「(用心深い戦闘だ。流石ドイツ連邦統合軍少佐殿)」ヒィィィ

シャル「一夏!」ギュンッ!

一夏「……っぶねえ!」ヒィィィ

シャル「いつまでも逃げまわってても、試合は終わらないよ」ジャキンッ

一夏「カットラスなんて使えたのか?お前」ヒィィィ

シャル「アボルタージュ(接舷攻撃)はフランスの十八番だよ♪」ヒィィィ

一夏「そっちがその気なら、俺もやらせてもらうか。雪片!」ジャキンッ

一夏「簪!ラウラを抑えておいてくれ!俺はシャルの相手をする!」

簪「わかったっ!」

ガギン!ガギンッ!

一夏「(剣の扱いはそれほどじゃあねえが……)」

シャル「今っ!」シュイン!

一夏「な……っ!」

ズドォンッ!

一夏「(カトラスが一瞬でショットガンに変わりやがった!)」

シャル「まだまだ!」シュイン パパパパパパッ!!

一夏「今度はPDWかよ、痛いとこばっかついてくるな」ガギンギンギン

シャル「敵の嫌がることをするのも戦術じゃないの?」

一夏「……まさしくその通りだな」ニヤッ

一夏「(さっきからの連撃、シャルお得意の高速換装にしてはタイムラグと隙が少なすぎる)」ガギンギンギン

一夏「(ってえと……思い当たるのはただひとつ)」ガギンギンギン

一夏「ついに完成させたか。千変の剣『ミステール』」

シャル「ちょっと違うかな」シュイン

シャル「ミステールの機構をボクなりに洗練化して、可変にかかるタイムラグとスロット内の無駄をできるだけ省いた……」

シャル「いわば『シュペール・ミステール』ってトコかな?」チャキッ

一夏「ほんと、チートくせえなあ……」

一夏「非常にまずい。防戦一方だ」ガギンギンギン

一夏「こいつを打開する方法は……」ジャキン!

一夏「やっぱこれしかねえか!」ボシュン!

シャル「グレネード!?」

ラウラ「S-マイン(対人散弾)!?)」バッ

一夏「ちげーよ、ただのテルミット焼夷手榴弾だよ。IS乗ってりゃ大したことはない」

一夏「最も、俺の意図はお前ら身構えさせることじゃなかったんだけどな」ニヤリ

ッドオオオオオオオオオオンンンッッ!!!!

ザワザワザワザワ
ナニアノバクハツ
コワーイ!

シャル「――ッ!何なの!?この爆発は!」ゲホゲホ

シュバウッ!

シャル「な――」グラッ

一夏「……大誤算だが、結果的に一騎取れたな」チャキッ

簪「一夏、大丈夫?」

一夏「なんとか生きてるよ、相棒」

一夏「マインスロウアー(滞留爆薬散布器)……おっそろしいな、こいつは」チャキン

一夏「調子に乗って散布しまくったが、加減して使わないとダメだなこりゃ」

ラウラ「(シャルロットがこうも簡単にやられてしまったとは……誤算だな)」

ラウラ「(先程の爆発はあのアタッチメント兵装が原因か)」

ラウラ「全く、いつもいつも碌でもない物を持ち込んでくれる」シュバウッ


一夏「くっそ。こっちも爆風のせいでシールドエネルギーが結構削られてるな」ヒィィィィ

一夏「仕方ねえ。プランEで行こう。簪」

簪「マインスロウアーの存在は見切られてるんじゃないの?」

一夏「だからお前の技術に賭けるのさ」

簪「……了解。期待して」コクッ

簪「『山嵐』ポート開放……『春雷』も射撃準備!」ガコンッ

シュバウシュバウビシビシュビシュ


バシュアバシュアバシュア

ラウラ「くっ!」バッ

ラウラ「(ミサイル程度ならAICで止めることも造作ではないが、この数では……!)」

ヒィィィィ

ラウラ「(一夏……クロムウェルを持っていると云うことは、先ほどの爆発を起こす気か!)」

ラウラ「(更識機の攻撃で爆心地に誘い込むつもりだな……となると、攻撃の方向からして、アリーナの中心部が爆心地か!)」

ラウラ「その手には乗らないぞ!」ギュンッ

簪「逃げられた!?」バッ

一夏「さすがにこっちの作戦を読んできたか……」

一夏「だが、それもアウトだぜ」ボシュッ

ラウラ「なっ……!」


ボッズウウウウウウン!

ラウラ「真後ろ!?」

ラウラ「いかん、反射波―――」

ズッガアアアアアアアアアアアアンン!!!

簪「ねえ……大丈夫なの?結構すごい爆発だけど?」

一夏「多分大丈夫だろ。『クロムウェル』の直撃受けて大丈夫だった機体だぜ」

簪「と言うより、中央に誘い込んで爆発させるんじゃなかったの?」

一夏「いや、ラウラはぜってー誘導に気づくと思ってな。わざとお前に中央への誘導をするように云ったんだ。そのほうが意図を読まれにくいと思ってな」

一夏「で、絶対壁際の方に瞬時加速かますと思って、そこにマインを設置しておいたのさ」

一夏「そんでもってアリーナの壁のほうに指向した爆発のエネルギーは反射波で跳ね返って……」

簪「ボーデヴィヒさんは本来の爆発以上のダメージを受けたってわけ」

簪「なんか、敵に回したくないね。一夏のこと」

一夏「どっかの恐いお姉さんより俺のほうが数百倍マシだよ」

結構遅れていますが、一応二回戦も書き終わりました。次はいよいよ三回戦となる予定です。

一夏「さて、次は念願のチートコンビとのバトルか」ズズッ

簪「うん……」

一夏「向こうも急ごしらえだからコンビネーションで攻めてくることはないだろうな。更識センパイが周囲を見て逐次指揮してくスタンスで来るはずだ」

一夏「こっちはマインスロウアーの存在もバラしちまったわけだし、あっちもレイディのスタンスを知っている。お互い心理戦だな」

一夏「お互いに援護しつつ、1対1に持ち込むしか無いな。周りをどれだけ見れるかが重要になるな」

一夏「俺はまだ相性的にやりやすい箒に付く。だから簪、お前はセンパイに貼り付け」

簪「姉さんと!?無茶だよ!」

一夏「俺より接近戦番長で爆発力のある箒をお前が相手できると思えねえからな」

一夏「それよりはまだ姉貴相手のほうがずっとやりやすいはずだ。」

簪「でも……」

一夏「完全に勝てなくても、全力で一発ぶちかましてやるくらいはできるはずだ」

一夏「そうすりゃ勝てなくても、学園最強の鼻もちったあ明かせるはずだぜ」

簪「……」

簪「……うん」

簪「私が姉さんを抑える」

一夏「そうだ。ただ熱くなりすぎて周りを無視するのだけはやめてくれよ」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年05月20日 (火) 22:29:37   ID: PjGK3Ftl

イタリア映画・・・むせる・・・レッドショルダーマーチ(Arrivano I Marines)ですね分かります。

2 :  SS好きの774さん   2014年07月04日 (金) 11:44:50   ID: pK3n9HCp

これは凄く期待出来る(確信)

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