僧侶「恋はバギクロス」 (396)

僧侶「あのっ…勇者さま…」

勇者「僧侶?どうしたの?」

僧侶(今日こそ自分の想いをぶつけたい!!)

僧侶(勇者さまと共に旅を続けてきて徐々に惹かれていった…)

僧侶(この素敵な勇者さまのずっと隣を歩いていきたい…)

勇者「いきなり無言になったけど大丈夫?」

僧侶「は、はい…えっと…」

僧侶(神様……今、このわたしに勇気をお与えください!!)

僧侶「バギッ!!」ヒョォォォ

勇者「へ?…ぎゃあっ!?」バシュン!!

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あ、この話はドラクエであってドラクエと関係ないものです。
タイトルで分かるけど一部呪文やアイテムが実名で出るけど話自体は何の関わりもありません。
効果とかは同じ判断でいいですけど。

このタイトルがパッと浮かんだだけなので…オリジナルとして見てもらえたらいいかと。

僧侶「またやってしまいました…」

僧侶「何でいつもバギ出しちゃうんだろう…」

僧侶「バギじゃなくてわたしの気持ちを伝えたかったのに…」

僧侶「次こそは絶対に…!!」グッ

勇者「そ、僧侶?」

僧侶「ぴゃい!!」ビクゥ

勇者「そろそろ行こうかと思うんだけど…?」

僧侶「あ、すみません…行きましょうか」

僧侶(現状でも満足はしているけれどもっと近づきたい…)

僧侶(待っていてくださいね?勇者さま…)

勇者「はっ!!」ズバッ

魔物「グゲ…」ドサッ

僧侶「やぁ!!」シュッ スカッ

魔物「ガアァァァァ!!」ブゥン

僧侶「あ、あれぇ?」

勇者「僧侶!?避けろ!!」グイッ

僧侶(ゆ、勇者さまの手が…)

僧侶「バギぃ!!」ヒョォォォ

勇者「なぜっ!?」バシュン!!

僧侶「あぁっ?!またやっちゃいましたぁ!?」

僧侶「…」

勇者「もう土下座はやめなよ…気にしてないからさ…」

僧侶「毎度毎度本当にすみませんでした…」

勇者「うん…あ、そうそう」

僧侶「はぇ?」

勇者「さすがに二人じゃきつくなってきたし、仲間を入れようと思うんだけど」

僧侶「えぇっ!?」

勇者「えっと…ダメかい?」

僧侶「そ、そういうわけじゃ…」

僧侶(せっかく二人っきりだったのに…くぅぅぅっ!!)

勇者「それでどんな人がいい?」

僧侶「え?勇者さまが決めないんですか?」

勇者「いや、僧侶も仲間だし意見は聞こうかと思ってね」

僧侶(さすがわたしが慕っている勇者さま…こちらも気遣ってくれる!!)

僧侶「それじゃあ女性…あ、やっぱダメ…うぅん…」

僧侶(だってそれだと勇者さまがその人を…ってなったら…)

勇者「そんなに深く考えなくてもいいよ」

僧侶(でも、相談するとしたら女の人のほうがいいかなぁ…)

勇者「おーい、帰っておいでー?」

僧侶「は!?ごめんなさい!!女性の魔法使いさんでお願いします!!」

魔法使い「これからよろしく頼むわね」

勇者「うん、こちらこそよろしく」

僧侶(つい反射的に答えた案が通ってしまった…)

僧侶「よろしくお願いします…」ギギギ

魔法使い「なんかすごい眼力で睨まれてるんだけど…?」

勇者「わ、悪い子じゃないんだけどね…はは……」

勇者「それじゃ冒険の続きに戻ろうか」

魔法使い「えぇ…」

僧侶(わたしなんかと比べ物にならないぐらい美人だ…)

僧侶(このままじゃ負けちゃう…でも勝てる要素がなさすぎです…)

勇者「魔物がきたよ!!」

勇者「僧侶は後ろで魔法使いさん守って!!」

僧侶「はいっ!!」

勇者「魔法使いさんは援護お願いします!!」

魔法使い「分かったわ」

僧侶「って!?いきなりこちらに魔物が!!」ワタワタ

魔法使い「落ち着きなさいよ、ほら!!」シュボォォォ!!

僧侶「あ、すみません」

魔法使い「ちょっと!!またそっちに来たわよ!?」

僧侶「えぇ!?ま、まかせてください!!」チャッ

僧侶「えぇぇぇぇぇい!!」スカッ

魔法使い「あれだけ威勢のいい声出しておいて空振りってあなた!?」

魔物「ガァッ!!」ガバッ

僧侶「っ!?」バッ

勇者「大丈夫か?!」ダッ

ドンッ!!

僧侶「あっ…バギぃ!!」ヒョォォォ

勇者「どうして僧侶が突っ込んで…って痛い!?」バシュン!!

魔法使い「何よあれ…」

魔物「ゲ…ゲゲェ…」オロオロ

魔法使い「ねぇ」

僧侶「何ですか?」

魔法使い「さっきの何よ?」

僧侶「さ、さっき?わたし何か悪い事でも…?」

魔法使い「そりゃあ悪い事でしょうよ…何のつもり?」

魔法使い「勇者にバギとかふざけてますの?」

僧侶「あれは…えっと…」

僧侶「な、何でもありませんよ…」

魔法使い「何でもないのにあなたは仲間を傷つけるの!?」

魔法使い「説明なさい!!」

僧侶(どうする…このまま話して相談に乗ってもらうか…)

僧侶(でもあんなの説明できない…どう言えばいいの…)

僧侶(怒らせてるし、まともに聞いてくれなさそう…)

僧侶(このまま嫌われたら勇者さまにも信用を失うかも…)

僧侶(そうしたら勇者さまとお別れするはめに…)

魔法使い「ちょ…何泣いてるのよ?!」

僧侶「い…イヤなんで…すぅ…」ポロポロポロ

魔法使い「い、いきなり何よ…私がいじめたみたいじゃないの…」

魔法使い「な、泣き止みなさいよ…突然怒鳴ったのは悪かったから…」

僧侶「違うんですぅぅぅぇぇぇぇぇ…」ポロポロポロ

魔法使い「はぁ…勇者をねぇ…」

僧侶(結局、全部話してしまった…)

魔法使い「だからって普通バギはないと思うんだけど?」

僧侶「勇者さまの前だと何故かあれを出してしまうのですよぉ…」

魔法使い「そう…無意識だとすると照れ隠しなのかしらね…」

魔法使い「悪気があったわけじゃないのね…分かったわ、うまくいくよう手を貸してあげるわ」

僧侶「あ、ありがとうございます!!」ペコペコペコ

魔法使い(何よ、話せば普通に良い子じゃない)

魔法使い(最初睨まれてたの気になってたけどこれで納得だわ)

僧侶(勢いで決めちゃった人だったけど優しい人でよかった…)

勇者「次はこっちだな」テクテク

魔法使い「ねぇ」ヒソヒソ

僧侶「はい?」

魔法使い「手伝ってあげるんだからこっちの事も手伝ってもらえるかしら?」

僧侶「それはかまいませんが何を手伝えばいいので?」

魔法使い「ずばり、筋肉よ!!」

僧侶「へぁ?」

魔法使い「何アホ面してるのよ、筋肉よ!!きーんーにーくっ!!」

僧侶「も、もっと詳しく説明をお願いします!!意味が全然分かりませぇん?!」

勇者(いつの間にか仲良くなってるなぁ…よかったよかった)ウンウン

僧侶「はぁ…筋肉がお好きなのですか…」

魔法使い「そうよ…あのガチガチに引き締まった筋肉!!…最高じゃない?」

僧侶「ゆ、勇者さまはどうなのですか…?」

魔法使い「安心なさい、奪ったりしないから」

魔法使い「でも彼、見た目以上についてるのよね…細マッチョっていうヤツだわあれは」

魔法使い「でもやっぱり解剖しがいのあるガチムチ筋肉がベストだわ」ペロリ

僧侶(解剖…かなり危ない人だったかも…)

魔法使い「と、いうわけで良い素材いたらよろしく頼むわね」

僧侶「は、はぁ…(素材…)」

勇者(何を話してるかは聞こえないけど、楽しそうだなぁ)ニコニコ

魔法使い「あんたの件だけど、ひとついい案浮かんだわ」

僧侶「そ、それは何ですか?!」バッ

魔法使い「落ち着きなさい、要はバギできなければいいのでしょう?」

僧侶「そうですけど何度止めようとしても無理で…」

魔法使い「そこで魔封じの杖を使うのよ」チャッ

僧侶「そっか!!そんな簡単な事に気づかなかったわたしって…」ズーン

魔法使い「ま、やってみればいいじゃない」

僧侶「頑張ります!!」

魔法使い「はいはい、頑張りなさい」

魔法使い(この子がヌケてただけであっさり問題は解決しそうね)

僧侶「勇者さま!!」

勇者「わ!?びっくりしたなぁ…なに?」

僧侶(魔封じの杖は使ったし、これでもう勇者さまを無駄に傷つけることはないです)

僧侶「あのですね…」ギュッ

魔法使い(あの子何を握ってますの…)

僧侶「あ、あなたが!!す…」ヒョォォォ

勇者「す?…って、ふぎゃぁ!?」バシュン!!

魔法使い(何で裁きの杖を使ってるのよ…)

僧侶「ど、どうしてぇ?!」

 E裁きの杖 使用時の効果・バギ

魔法使い「何でそんなもの持っていたのよ!?おバカさんなの?!」

僧侶「何か持ってないと落ち着かなくて…」

魔法使い「魔封じの杖でいいじゃない!?」

僧侶「これが一番落ち着くので…」

魔法使い「だからってわざわざ呪文封じたのにバギできる物持つ必要あるかしら?!」

僧侶「あ、じゃあ他の効果のなら影響ないかも」

魔法使い「余裕でオチが見えるわ…やめておきなさい…」

僧侶「難しいものですねぇ…」

魔法使い「何この子めんどくさい!!」

僧侶「?」

勇者「それじゃ各自買い物ということでよろしくね」

魔法使い「えぇ、時間までには戻るわ」

僧侶「はい、行ってきます」テコテコ

魔法使い「待ちなさい」ガシッ

僧侶「ひょ!?な、何ですか…?」

魔法使い「今なら勇者と二人っきりになれるチャンスじゃない」

僧侶「あっ!?」

魔法使い「こういう時はホントぬけてるわね…ほら、ついていきなさいよ」ポン

僧侶「はいっ」テテテ

魔法使い「それじゃあ私は後ろから様子を伺いましょうかね」コソコソ

勇者「あれ?こっち来たの?」

僧侶「あ、はい…一緒に…い…いた…」

魔法使い(はっきり言いなさいよ!!そんなのじゃ伝わらないわよ!!)

勇者「え?何て?」

僧侶「何でもないです…」

魔法使い(あーイライラするわねぇ!!)

勇者「別に一緒にいるのはいいんだけどね」

魔法使い(拒否はせずか…好感度は良くも悪くもって感じのようね)

僧侶「えへへ…」

魔法使い(何を嬉しそうに…もっと頑張りなさいよね?)

勇者「この剣いいなぁ…」

僧侶「勇者さまに合いそうですけどお買いになるのですか?」

勇者「うーん…ちょっと高いんだよねぇ…」

僧侶「こちらはいかがですか?そんなに高くは…あっ?!」フラ…

勇者「危ないっ!?」ガシッ

僧侶「あ…バ…」

魔法使い(させるか!!魔封じの杖!!)カッ

僧侶「…!?」シュバッ

勇者「って、ぎゃぁぁぁぁぁ!?」ブシュー

魔法使い(持っていた剣で斬りつけたですって…)

僧侶「…」

勇者「いや、だから土下座までしなくていいって…」

僧侶「ごめんなさい…困らせてばっかりですねわたし…」

勇者「確かに…いやいや!!一生懸命がんばってくれてるのは分かってるよ」

勇者「あまり自分を責めちゃダメだよ…ね?」

僧侶「はい…」ショボン

魔法使い(あれでもダメだとするとどうしたらいいのかしら?)

魔法使い(本当面倒くさい子ね…)

僧侶(また迷惑かけちゃった…)

僧侶(好かれるどころかどんどん嫌われていっちゃう…)

魔法使い「僧侶ちゃぁん」ニコニコ

僧侶「はい?笑顔がすごく怖いのですけど…」ビクビク…

魔法使い「筋肉まぁだ?」ニコニコ

僧侶「すす、すみません…まだです…」

魔法使い「はぁ…まったく使えないわね」

魔法使い「さっきも手助けまでしたのにそれを無にするし」

僧侶「うぅ…」

魔法使い「そんなのでよく今までやってこれたわね、ドジにもほどがあるわよ?」

僧侶「うぅぅ…!!」ダッ

魔法使い「ちょ…どこ行くのよ?!」

僧侶(何もできないなんて思われたくない…)

僧侶(わたしだってやればできる子のはずだ!!)

僧侶「あのっ!!ちょっといいですか?!」

戦士「なんだ!?何か用か嬢ちゃん?」

僧侶「筋肉をください!!」

戦士「はぁ?」

僧侶「筋肉をわたしにください!!お願いします!!」

僧侶「き、筋肉を!!げほっ!?ごほっ!?喉が…」

戦士(やばい娘に絡まれたかもしれん…)

勇者(僧侶だ、何やってるんだろう?)

僧侶「お願いします…じゃないとわたし本当にダメ人間になってしまうんです…」

戦士「筋肉って…力がほしいってことかい?(真剣そうだから話は聞いてみるか)」

僧侶「いいえ、ガチムチ筋肉です」

戦士「何で筋肉なんだ…?」

僧侶「魔法使いさんが好きらしいので…」

戦士「あー…そういう…分かった、その人のところまで行こうじゃないか」キリッ

僧侶「あ、ありがとうございます!!」ペコペコ

戦士(彼女いない暦=年齢の俺についに春が来たか!?)

僧侶(この人ならすごく筋肉ついてるからいいですよね…?)

僧侶(でも解剖がどうとか言ってたけど大丈夫なのかな…)

僧侶「と、いうわけで連れてきました」

魔法使い「…」プルプル…

戦士(うはー、すっげー美人じゃねーか!!)

僧侶「あの…?」

魔法使い「よくやったわ!!」バンバン

僧侶「い、いた……お、お気に召しましたか?」

魔法使い「理想の筋肉よ!!これよあんた!!探していたのは!!」

魔法使い「あなた!!」ガシッ

戦士「お、なんだい?」

魔法使い「解剖させて☆」

戦士「はい?」

魔法使い「うふふ…こんな新鮮な素材に出会えたのは久しぶりだわぁ」シャキ ギラリ

戦士「何でナイフなんか取り出してんの…?」

魔法使い「言ったじゃなぁい…解剖するため…よ!!」シュパッ

戦士「ひぇっ!?解剖されるなんて聞いてないぞ!?何のためにだよ?!」

魔法使い「それは鍛えられた生の筋肉を見ることにより(中略)新しい筋肉の道を切り開くためよ!!」

戦士「切り開かれるのは明らかに俺の体だろ!?」

魔法使い「にくにくにく…うふふ…」ジリジリ

戦士「やべぇ、この女!!」ダダダッ

僧侶(やっぱりただの危ない人だった…筋肉なくてよかった…)

魔法使い「また逃げられたわ…どうしてなの…?」ガクリ

僧侶「あの人は正しい行動とっただけですけどね…」

魔法使い「どこがよ!?未知なる筋肉の世界を見たいと思わないの!?」

僧侶「解剖されたら本人には見えないですし…」

魔法使い「くっ…次よ!!私はまだ諦めない!!」

僧侶(どう考えても快く引き受ける人はいないと思いますよ…)

魔法使い「…次も頼むわよ、頑張り屋さん」ポン

僧侶「魔法使いさん…はいっ!!」

魔法使い(面倒だけどこの子は面白いわね…嫌いじゃないわ)

勇者(魔法使いさんのために頑張っていたのか…本当に良い子だなぁ)

魔法使い「本当にこっちから声がしたの?」

勇者「うん、間違いなく人が助けを呼ぶ声だったよ」

僧侶「助けを呼ぶほどの何があったのでしょうか…」

勇者「こんな森の中だ、きっと罠にかかって動けないとかだと思うよ」

魔法使い「誰かいないの?!いたら返事なさい!!」

??「こ~こ~だ~よ~!!」

勇者「ほら、声はもうすぐ傍のはずだけど姿が見えないね…」

僧侶「上とか?」キョロキョロ

僧侶「あきゃぁ!?」

魔法使い「ちょっと、あの子消えたわよ…」

??「な~にやってんさぁ?!首がもげるかと思ったじゃなぁい!!」

僧侶「ごめんなさいごめんなさい…いたた…」

勇者「魔法使いさん、下だったよ…」

魔法使い「あら、穴に落ちていたのね」

??「早く出して~」

勇者「結構深いな…ロープ準備するからちょっと待ってて」

魔法使い「あんた、本当ろくなことしないわね…」

僧侶「うぅ…申し訳ないです…」

??「まさか落ちてくるとは思わなかったよ~」

勇者「よし、今から引き上げるから」シュルシュル

??「やっと出られたよ~ありがとねぇ」

勇者「怪我とかなくてよかった」

魔法使い「周りぐらい確認して行動しなさいよね」

??「めんぼくない~」

僧侶「いたた…」

僧侶(また迷惑かけちゃいました…)

魔法使い「それじゃあ旅に戻りましょ」

??「待ってよ!!うちを仲間にしてほしいんだけど~」

僧侶「仲間…ですか?」ギギギ

魔法使い(またあの目で見てるし…分かりやすい子)

僧侶(また女の人ですよ!!試練?試練なの?!)

勇者「オレはかまわないけど…」

魔法使い「まず名を名乗りなさいよ、常識でしょ」

??「あ~ごめんごめん、商人っていうんだよ~」

商人「それで~いいのかなぁ?」

魔法使い「別にダメとは言ってないわ」

僧侶「そうですね、よろしくお願いしますね」グググ

商人「やった!!よろしく~…って、力入れすぎぃ!!いたいいたい!?」ギリギリ

魔法使い「本当分かりやすい子…」

勇者「?」

勇者「くっ!?そっちいったよ!!気をつけて!!」

僧侶「まかせてください!!」グッ

魔法使い(えらい気合入ってるわね…いいところでも見せたいのかしら?)

魔物「シャー!!」

僧侶「この…!!」ヒュン

商人「せいやぁ!!」ズバッ

魔物「ジョォォォ…」ドサッ

僧侶「あれぇ!?」スカッ

僧侶(くっ…わざとなの!?わざとですよね?!)ギリギリギリ

商人「ん~?何だか背中が~…」ゾクゾク

商人「勇者くん、これあげる~」

勇者「これは随分といい剣じゃないか、いくらしたんだい?」

商人「お金なんかいらないよ~、もらっちゃってよ」

魔法使い「商人ってお金にうるさいイメージあったけどそうでもないのね」

商人「仲間にまでお金とろうとなんてしないさ~」

勇者「そっか、ありがたく使わせてもらうね」

僧侶「…」

僧侶(明るく元気いっぱい…勇者さまはこういう子がお好きなのでしょうか…)

僧侶(何でこんな試練をわたしにばかり与えるのですか神様!?)

僧侶(負けないですよ…)

魔法使い「で、何で私に相談するのよ?」

僧侶「頼れる人が他にいなくて…」

魔法使い「手を貸すとは言ったけど、自分でできる事やってからにしなさい」テクテク

僧侶「えぇ!?待ってくださいよぉ…」

僧侶「行っちゃった…できることと言ったって…」

僧侶「あっ!!そ、そうか!?」

僧侶「魔法使いさんは努力もせずに人頼りにしてるから…」

僧侶「ごめんなさい…私はまだ何もやってませんでした!!」タタッ

魔法使い(案外早く気付いたようね、普通に頭の回転は良いみたい)

魔法使い(さて、何しでかすか観察してようかしら)テクテク

僧侶(確か今は宿屋で休んでいたはずですよね)コンコン

僧侶「わたしです、失礼しますね…」ガチャ

勇者「あれ、どうしたの?」

商人「僧侶ちゃんも来たの~?」

僧侶「!?」

僧侶(先手を打たれただとぉ…くそぅ…)

商人「そうだ!!僧侶ちゃんも一緒にお話しようよ~」

僧侶「え、でも…わたしは…」

勇者「オレだとすぐ話のネタ尽きてしまうんだよ、暇ならどう?」

僧侶「は、はい…勇者さまがそう言うなら…」

僧侶(とりあえず二人きりを阻止できたからいいよね…?)

商人「それでね~…」

勇者「いやいやそれはないよ…」

僧侶(どうにかして二人きりになれないかな…)

商人「僧侶ちゃんはどう思う~?」

僧侶「ふぇあ!?」ビクゥ

勇者「大丈夫…?」

僧侶「ごめんなさい…ちょっとぼんやりしてました…それで何と?」

僧侶(いけない、自分の世界に入りすぎていました…)

僧侶(今は会話に集中しないと…)

勇者「そろそろ終わりにしよう、もうこんな時間だよ」

商人「あら~楽しいことは時間経つの早いなぁ」

僧侶「それじゃあ自分の部屋に戻りま…」スッ

ドサッ

僧侶「いった…」

勇者「そ、僧侶どうしたんだ?」

商人「何でいきなり倒れたの~?」

僧侶「足に激痛が…」

勇者「ちょっと見せて…これかなり腫れてるんだけど」

僧侶「足を痛めた覚えは…あ」

商人「穴に落ちた時かなぁ?」

僧侶「多分その時ですね」

勇者「詳しくは分からないけど最悪ヒビ入ってるかもなぁ」サワ

僧侶「あ、バギ」ヒョォォォ

勇者「え、ちょぉぉぉぉ!?」バシュン!!

魔法使い「ちょっとこんな場所でまでバギしないでよ!?」バンッ

商人「な、なに?何が起こったの??」

僧侶「すみませんすみません!!」

魔法使い「これはいくらなんでも説明が必要ね…誰も納得できないでしょうし」

僧侶「そ、そんな…」

勇者「男の人に対しての照れか…」

魔法使い「そういう事らしいわ」

勇者「それでオレによくバギしてきてたんだね」

商人「それなら納得~、照れ隠しなんてかわいいなぁ」

僧侶「え、かわいいだなんて…」

僧侶(でもちょっとウソなんですよね…)

僧侶(だってこれは勇者さまにだけなのだから…)

魔法使い「…」

僧侶「…」ペコリ

僧侶(全部話さないでくれた魔法使いさんには感謝してます)

魔法使い「これは非常に厳しいわ」

僧侶「はい?何の事でしょう?」

魔法使い「あんたの事よ…あんたと勇者見てきて分かったわ」

魔法使い「まずあんたの癖は予測できても回避がとんでもなく困難」

魔法使い「そして勇者だけど…あれだけ言っておいて少しも気付かないという鈍感さ」

魔法使い「もうこれはさじ投げていいレベルよ」

僧侶「投げないで!?もう少しだけでいいから手伝ってくださいよぉ?!」

魔法使い「あんたはダメ、勇者は私じゃどうもできないし」

魔法使い「もう一人手を貸してくれる人いればいいのだけど…できれば男ね」

僧侶「はぁ…」

勇者「へぇ…よく知ってるなぁ」

商人「えっへへ、戦うの苦手な分色々覚えてるの~」

僧侶「…なにあれ、あの雰囲気壊したい」ギギギ

魔法使い「あんた段々性格黒くなってきてるわね…」

僧侶「わたしは鬼になるべきでしょうか?」

魔法使い「ほしいもの手に入れるためなら少しは汚い事もするべきよ」

僧侶「ですよね…この際、甘さは捨てましょう…神様お許しください…」

僧侶「わたしの本気がどれだけすごいか思い知らせてあげますよ」ゴゴゴ…

魔法使い「すごい恥かかなきゃいいけどね」

僧侶「勇者さまに手を出せなくしてやるんだから!!」

僧侶「…」ググ…

商人「それでねー」

僧侶(いまだ!!)ピーン

ペチッ

商人「あたっ…小石?」キョロキョロ

勇者「どうしたの?」

商人「あ、なんでもなぁい…でねー」

僧侶(こうやって会話を邪魔していればきっと集中力のない子だと…)

僧侶(おっと、そこだ!!)ピーン

魔法使い(子供レベルの妨害…)

商人「たあっ!!」シュバッ

勇者「商人さん!後ろにまだいる!!」ダッ

僧侶(触らせるか!!)タッ

商人「え?えぇ!?」

ドッシーン!!

僧侶「はにゃぁ!?早すぎたですぅ?!」

商人「もーなにぃ?痛いじゃないの~」

勇者「何で僧侶が商人さんに突っ込んだの…?」

僧侶「すみませんすみません…」ペコペコ

魔法使い「またバカやって…敵無視だし…氷結呪文」カキーン

商人「あれ~?どこいったんだろ?」ゴソゴソ

魔法使い「どうしたのよ?」

商人「うちが使ってたバッグがなくなったの~」

魔法使い「…目の前の木にかかってるの違うの?」

商人「あったぁ!!どもども~」

僧侶「…ちぇ」

僧侶(ちょっと簡単すぎたかな?次はもっと難しくするんだから!!)

魔法使い(僧侶も大概だけどあれが見えてない商人もかなりヌケてるわね…)

魔法使い(しかもこれじゃただ本人への嫌がらせじゃないかしら?)

僧侶「ま、まだまだ!!」

勇者「商人さん、ちょっと…」

商人「は~い、何かな何かな?」

勇者「少し触らせてもらうよ…ふむ…」サワサワ…

商人「わ、わっ!?」

僧侶(な…勇者さまに触られているだとぉ…)

勇者「ごめん、ありがとう」テクテク

商人「??」

勇者「僧侶、ちょっといいかな?」

僧侶(わわ、わたしもですか!?まさか勇者さまは変…)

僧侶「なんでちょう!!」ビシッ!!

勇者「えっとね…」

僧侶「ひゃい…」

僧侶(は、早くわたしに触れてほしい!!商人さんより長く!!)

勇者「僧侶の服のサイズってどれぐらい?」

僧侶「触…え゛…」

僧侶「え、Sサイズですが…」

勇者「そっか、ありがとう」

勇者(触っちゃダメらしいし、聞くしかなかったんだよね)

僧侶(何で触ってくれないんですか…うぅ…)ショボーン

魔法使い(触れたらバギすること忘れてるでしょあの子…)

魔法使い「勇者」

勇者「ん?何?魔法使いさん」

魔法使い「さっき商人触ったり、僧侶にサイズ聞いてたのはどういう意味?」

勇者「あー、装備新調しようと思ってね」

勇者「別に変なこと考えてたわけじゃ…」ワタワタ

魔法使い「そういう事だったの」

魔法使い「別に疑ってたわけじゃないわ、少し気になっただけよ」

勇者「あ、魔法使いさんもいいかな?」

魔法使い「いいけど、誰でもあまり無闇に触らないほうがいいわよ」

魔法使い(異性であるのは一応意識してるわけか…)

僧侶「やっぱりわたしじゃダメなんですかね…ううっ…」

魔法使い「全部自爆してるようなものだったけどね」

僧侶「もう諦めるしかないのかな…」

魔法使い「あの程度で諦めるとかとことんダメな子ね」

僧侶「あの程度って!?私は全力でやってきたのですよ?!」

魔法使い「だったらただの根性なしじゃない」

僧侶「何でそんな事しか言ってくれないんですか!?」

魔法使い「はぁ?じゃあもっと実績を積みなさいよ」

魔法使い「そんなへっぽこじゃこっちも言う事なくなるのよ」

僧侶「うぅ…」

僧侶「わたしはドジだしバカだし…何も取り得なんかないし…」

僧侶「戦闘の時だって空振りばかりで、歩く回復剤ぐらいにしか役に立たないし…」

魔法使い「歩く回復剤って…」

僧侶「分かっているんです…自分が悪いからうまくいかないって…」

僧侶「もう諦めた方がいいですよね?」

僧侶「せっかく手伝ってもらったのにすみません…」

僧侶「そちらの件はまだ手伝いますがこちらはもう終わりということで…」

魔法使い「待ちなさいよ、勝手に終わらさないでくれる?」

僧侶「もう無理なんですよ…今までありがとうございました…」トボトボ…

魔法使い「だから待てと言ってるでしょう?!」ガシッ

魔法使い「確かにあんたはダメな子よ」

魔法使い「でも、何事も頑張って解決しようとしてたじゃない」

僧侶「でも、勇者さまは少しもこちらを振り向いてくれません…」

魔法使い「そんな簡単にうまくいくわけないじゃない、何事も経験を…」

僧侶「いえ、もういいんですよ…諦めましたから…」トボトボ…

魔法使い「待ちなさい!!勇者への想いはその程度だったの?!」

僧侶「もういいんですって!?離して!!」ブンッ

魔法使い「あ…」ズルリ

ドタドタドタァッ!!

僧侶「ま、魔法使いさぁぁぁぁぁん!?」

………

勇者「どうだった?」

商人「まだ目を覚まさないよぉ…」

勇者「そう…僧侶は?」

商人「ずっとつきっきりで…」

商人「いくら話しかけても生返事で動こうとしなかったぁ…」

勇者「自分の責任だって思ってるんだろうね」

商人「偶然言い争った場所が悪かっただけなのにね…」

勇者「そういう子だからね、僧侶は…」

商人「うん…」

僧侶「魔法使いさん…」グッ

魔法使い「…」

僧侶「本当、わたしロクな事しませんよね…」

僧侶「こんなにしちゃってごめんなさい…ごめんなさい…」ピチョン…ピチョン…

魔法使い「…冷たいじゃない」フッ

僧侶「!?」

魔法使い「魔力もないし…あんた…何やってんのよ…」

僧侶「階段から落ちてすぐ必死で回復呪文かけたんです…」

僧侶「でも目を覚まさなかったから…」

魔法使い「だからって…空になるまでかけ続けなくていいじゃない…バカね…」

僧侶「こんなことになるとは思わなかったんです!!ごめんなさいっ…!!」ポロポロ…

魔法使い「私の事なんかいいわよ…」

魔法使い「誰に何と言われても…諦めずに頑張りなさいよ…」

魔法使い「まだ好きなんでしょ…勇者の事…」

僧侶「はい…」

魔法使い「勇者に直接聞いてからでも…遅くないわ…よ…」スゥスゥ

僧侶「魔法使いさん…寝ちゃったみたいですね」

僧侶「やっぱり良い人です…」

僧侶「背中を押してくれてありがとうございます…」ギュッ

僧侶「わたし…諦めずに頑張ってきますね」ガチャ バタン

僧侶「勇者さま、ご迷惑をおかけしました」

勇者「その顔からすると魔法使いさんは目を覚ましたようだね」

僧侶「はい、また寝ちゃいましたけど」

勇者「少し安心したよ…あまり気を落とさずにね」

勇者「あと魔法使いさんだけど、しばらく療養してもらって様子見ることにしたから」

僧侶「頭ぶつけてますものね…」

商人「じゃあ三人で行くの?」

勇者「いや、代わりに途中まで同行してくれる人がいてね」

僧侶「な…」

僧侶(か、神様!?あなたはどれだけ鬼畜なのですか!?いくつ試練を与えれば気が済むので?!)

勇者「そろそろ来てくれる頃だけど……あ、来た」

賢者「勇者よーい、来てやったぞぉ」

商人「何だかやる気のなさそうな人~」

勇者「多分、やる時はやってくれると思うよ…」

僧侶「えっと…しばらくの間ですけどよろしくお願いしますね」ペコリ

賢者「な…な…」ブルブル

賢者「おい勇者!!聞いてないぞ!?」

勇者「へ?何をだい?」

賢者「何が普通の子だ!?天使かと思ったじゃねぇか!!」

僧侶(男の人かぁ…それなら安心ですね)ホッ

賢者「やばい…テンション上がってきた!!」

勇者「はは…まぁこれからよろしく」

商人「よろしく~」

賢者「よろしゅう!!キミ、名前は?」

僧侶「わたしですか?僧侶ですけど」

賢者「僧侶ちゃんね…早速だけどボクと付き合う気はないかい?」

僧侶「はい?」

商人「さっきよりすごくやる気出してるけど~?」

勇者「話しててなんとなく分かってたけど、やはりこういう人だったか…」

賢者「きっと満足させてあげられるから!!」

勇者「魔物だ!!そっち頼むよ!!」

賢者「うぃうぃ」

僧侶「きましたよ!!やぁっ!!」ヒュッ

賢者「おぉ、凛々しいな」

僧侶「ふぉあっ!?」スカーン ドテッ

商人「あーあ、またやっちゃってるよぉ」シュバッ

賢者「見事な空振りだな…だがドジっ娘なのがまたいい!!」ガキーン

僧侶「うぅ…なんでいつも空振りしちゃうんだろう…」

僧侶「ダ、ダメダメ!!弱気になるな!!わたしは諦めない!!」シュッ バシュ

僧侶「あ、当たった…」

勇者「ふぅ…結構きついな…」

僧侶「勇者さま、回復します」ポォォォ

勇者「ありがとう」ニコ

僧侶「い、いいええ…バギマ」ビョォォォ

勇者「触ってないんだけどぉ?!」バシュゥン!!

賢者「…あれは?」

商人「恥ずかしくなると男の人につい呪文かけちゃうんだってー」

賢者「変な体質だなぁ…待てよ?あれを利用すれば…」ブツブツ

僧侶(バギしちゃうのだけはどうにもならないです…)

勇者(いつの間にかパワーアップしてるんだけど…)

僧侶「またやっちゃった…許してはくれるけど…」

僧侶「こんな事繰り返してたらわたしがもたないです…」

賢者「こんな所で考え事かい?ボクで良ければ相談に乗ろうか?」

僧侶「賢者さん…少しだけ聞いてくれますか?」

僧侶(そうですよ…同じ男の人なら気づく事があるかもしれません)

僧侶(魔法使いさんとは違った案を出してくれるかも?)

賢者(おそらく体質の事だろうな…ここで好感度を稼いでおけば…ふふ)

賢者「いいよ、話してごらんよ」

僧侶「はい…わたし…」

勇者(僧侶と賢者が何か話してるようだけど…)

賢者「ほぅ、勝手にバギをねぇ…」

僧侶「どうにかならないかとずっと考えているのですが…」

賢者「要は相手に呪文しなきゃいいわけっしょ?」

僧侶「はい…ですが呪文封じても無駄だったし…他にいい方法など…」

賢者「あるよ」グイッ

僧侶「あ…」

賢者「……あるぇー?」

賢者「出ないじゃん」

僧侶「えっと…」

僧侶(どうしよう…勇者さまのみなんて恥ずかしくて言えるわけがないです…)

賢者「うーむ…じゃあ勇者にも協力させるか」

僧侶「えぇっ!?」

賢者「?…勇者出てきな、いるんだろ?」

勇者「あーバレてたかぁ」コソコソ

僧侶「な、何で勇者さまがそこに…」

賢者「何話してるか気になったんじゃない?」

勇者「まぁ…あまりお互い慣れていない二人がどんな話を…ってね」

賢者「それはいいや、僧侶ちゃんに触れてみてくれよ」

勇者「でも触ったら…」

僧侶(勇者さまに触ってもらえる…でもまた傷つけちゃう…)ドキドキ

賢者「いいから触ってみなよ」

勇者「分かったよ…失礼するね」ポン

僧侶「バ、バギマッ!!」ビョォォォ

賢者「よっしゃ勇者、交代だ…反射呪文」グイ キィン

勇者「うわっと…って、ぎゃぁぁぁ?!」バシュゥン!!

賢者「はぁ!?何で反射先が勇者なんだよ!?どうなってんだ?!」

僧侶「勇者さまがズタズタに!?すみませんすみません!!」ペコペコペコ

賢者(コイツはかなり難航しそうだな…それに…ちっ……)

僧侶「回復呪文!!回復呪文!!回復呪文!!」パパパァァァ

勇者「も、もう大丈夫だから…かけすぎだよ…」

賢者「僧侶ちゃーん、ボクと話をしないかい?」

僧侶「すみません、今それどころではないので…」スタスタ

……

賢者「僧侶ちゃんは何か好きなものあるかい?」

僧侶「うーん…裁きの杖ですかね」

賢者「いや、そういうのじゃなくてね…」

僧侶「あ、ちょっと失礼しますね」パタパタ

賢者「おぅ…ずいぶんそっけないのね…」

賢者「でも諦めないぜ、隙を見つけてそこから一気に…ふふ」

僧侶「くちゅん!!鼻がむずむずするです…」

商人「勇者くーん」クイクイ

勇者「なに?」

商人「勇者くんって好きな人いる?」

勇者「え?いきなりどうしたの?」

商人「気になったのです!それでそれで?」

勇者「うーん…いないかなぁ」

商人「そかそか、ふふーん」

勇者「何だか嬉しそうだね…それより何でずっとオレの服掴んでるの?」

商人「意味はないです!!」

僧侶(意味ありますよ!?商人さん、まさか勇者さまに気がある?!)

勇者「えっと…」

商人「へへ…」ギュウ

賢者「おたくら仲良いなぁ」

僧侶「…」ギリギリギリ

僧侶(これは間違いありません!!勇者さまに恋心を抱いています!!)

僧侶(勇者さまも気がないなら拒否すれば良いのに…)

僧侶(これは大問題に直面しちゃいましたよ…)

賢者(コイツはチャンスかもしれんな…このまま関係が深くなれば諦めざるをえないわけだ)

賢者(その落ち込んだところをつけば…そう!突きたいんだ君を!!)グッ

勇者(何でオレにくっついてくるんだろう…ちょっと歩き辛いんだけどな…)

僧侶「勇者さま、ちょっといいですか?」

勇者「どうしたの?」

商人「勇者くん!来て!早く早く!!」グイーッ!!

勇者「ちょ…待って…まだ…」ズリズリ

商人「…」チラッ ニッ

僧侶「そんな無理矢理…行っちゃった…」

僧侶「明らかにわたしから引き離すために強引に割り込んできた…」

僧侶「あんな事されたらわたしに何もできないじゃないですか…」

僧侶「だって…あんな強引なことできませんもん…」

僧侶「勇者さま…うぅ…」

商人「あのねー、いいもの見つけたんだよ!一緒に見にいこっ?」

勇者「そう…でもさっきのはさすがにひどいんじゃないかと思うんだけど…」

商人「ん?」

勇者「僧侶と話してたよね?なのにそれを無視したの?」

商人「え?そうだったの?夢中で気付かなかったよ!失敗失敗!!」

勇者「…オレ戻るよ」

商人「えぇ?!まだ用事終わってないよぉ?」グイグイ

勇者「先に話してきた方を優先させるよ」

商人「あの子よりうちを見てほしいのに…」ボソリ

勇者「今なんて?」

商人「なんでもないよぉ…」

勇者「じゃあオレは戻るから」クルッ

商人「ま、待ってよぉ!?」

勇者「…なに?」

商人「うちも戻るよぉ、えへへ」トコトコ

勇者「同じ事になったら困るからしばらく時間おいて戻ってきてほしい」

商人「でもでもっ…分かった…」シュン

勇者「悪いね」コツコツ

勇者(何でこんなマネをしたんだろうな…ここまでそんな事する子じゃなかったはずなのに…)

勇者(ちょっと様子を見ていようか)

勇者「僧侶?」

僧侶「…え?あっ!!な、なんですか?」ゴシゴシゴシ

勇者「さっきはごめんな…途中だったのに」

僧侶「い、いえ…」

僧侶(もしかしてわざわざ戻ってきてくれたのでしょうか?)

勇者「それでさっき言いたかったことは何だったの?」

僧侶「時間がいただけるのでしたら一緒に買い物でもと…」

勇者「うん、今からでもいい?よければ一緒に行こうか」ニコ

僧侶「はいっ!!」パァ

勇者(さっきまで泣いてたようだ…やっぱりあんな事されたら傷付くよな)

商人「勇者くん…はぁ…」

賢者「おーい、どうだったよ?」

商人「途中まではよかったんだけど勇者くん戻っちゃった…」

賢者「ばっかだなぁ、もっと強引にいきゃ良かったんだよ」

商人「でもぉ…」

賢者「まぁ失敗したのは仕方ないさ、次の作戦あるからそれ実行するぞ」

商人「ホントにうまくいったら勇者くんと一緒になれるの?」

賢者「なれるなれる、これはお前さんと俺がお互いに幸せになるためなんだから頑張ってくれよ」

商人「わ、分かってるよぉ…頑張るねぇ」

賢者「じゃあ次はなぁ…」

僧侶「敵です!!」グッ

商人「たぁっ!!」ザクッ

僧侶「あっ!?」

商人「どったの?」ニコニコ

僧侶「い、いえ…何でもありません…」

商人「そぉ?勇者くーん、うち頑張っちゃったぁ!!」

勇者「え?うん…」

僧侶(先に倒されちゃった…わたしが遅いからいけないんですけどね…)

賢者(これなら地味だが確実に勇者への評価を上げられるだろう)

賢者(僧侶ちゃんには悪いけど後でいっぱい慰めてあげるから許してくれよ…へへへ)

勇者「くっ…」ザシュッ

僧侶「勇者さま!!今回復を…」

商人「勇者くん、薬草だよぉ」スリスリ

勇者「あ、ありがとう…」

僧侶「え、あ…」

賢者「僧侶ちゃーん、こっちに回復お願ーい」

僧侶「あ、はーい」テテッ

僧侶(さっきから勇者さまに近づくことすらできなくなってきたんですけど…)

商人「さぁ、頑張ろ?」

勇者「うん…」

僧侶「はぁ…あれから何度も同じ事がありましたが…」

僧侶「わたしだって良いところ見せようという下心はありましたよ…」

僧侶「いくらなんでもわたしがやるべき仕事すらとるのはあまりにひどすぎです…」

僧侶「わたしが何をしたの…」ポタポタ…

僧侶「うぅぅ…」ポタポタポタ…

賢者「泣いているのかい?」

僧侶「ひっく…賢者さん…」

賢者「何があったかは聞かないけどさ…泣きたい時は泣いてもいいんだよ」

僧侶「ぐす…」

勇者「賢者、話し中で悪いけどちょっとこっちへ…」

賢者「なんだ?今ちょっとそれどころじゃないんだが…」

勇者「こっちもそれどころじゃないんだよ」ジッ

賢者「しゃーねぇな…すぐ戻るからね?」スクッ

勇者「僧侶、少し待ってて」

コツコツ…

僧侶「ひっく…どうしたのでしょう…」

僧侶「勇者さまが…すごく怖い顔してました…」

僧侶「いつも優しそうな顔してるのに…」

商人「僧侶ちゃん…」

僧侶「あ、どうしました商人さん?」

勇者「キミが商人さんに何か吹き込んだんだね」

賢者「何の事だ?」

勇者「理由は分からないけど商人さんが僧侶にひどい事ばかりやってるみたいでね」

賢者「そうなのか…俺がガツンと言っておこうか?」

勇者「誤魔化すつもりならそれでいいよ」

勇者「ただ二人ともパーティから即外させてもらう」

賢者「はぁ!?」

勇者「商人さんから話は聞いた」

賢者「…ちっ、あのおしゃべりが」ボソリ

勇者「…」

勇者「商人さんはキミからそうするように聞いたと言っていた」

賢者「めんどくせぇな…」

賢者「そうだよ、俺が彼女に言ったんだよ」

勇者「どうしてこんな事を?」

賢者「俺と彼女にとって必要な事だったからだ」

勇者「そう…」

勇者「できたら…いや、もうやめてくれ」

勇者「僧侶があまりにかわいそうだ」

賢者「俺だって好きでやってたわけじゃないんだぜ?」

勇者「…反省する気はないのか?」

賢者「…悪かったよ、もうしねぇ」

勇者「よかった」ニコ

賢者「いつから気付いてたんだ?」

勇者「ちょっと前に話中に強引に割り込んできた時からかな」

賢者(ほぼ作戦の最初からじゃねぇか…)

賢者(これからもっと分かりにくい手を考えないとやべぇな…)

賢者「結局、最後まで理由は聞かないのか?」

勇者「そこまで大事な事に首突っ込むほどオレは馬鹿じゃないよ」

賢者「そうか…商人はどうした?」

勇者「多分、僧侶と一緒にいるよ」

僧侶「…」グシグシ

商人「…」オドオド

僧侶「元気ないですけど大丈夫ですか?」

商人「僧侶ちゃんだって…さっきまで…」

僧侶「はい?」

商人「ごめんなさいっ!!」ペコッ

商人「ひどいことしてごめん!!」

僧侶「はわっ!?」

商人「うちバカだから気付かなかったんだ…自分の事ばっかり考えてて…」

僧侶「商人さん…」

僧侶「いいんですよ」グイッ

僧侶「今だから言っちゃいますけどわたしも商人さんと同じような事考えたことありましたし」

商人「でも、ホントはうちが考えた事じゃ…」

商人「って、えぇ!?同じような事ってもしかして…」

僧侶「…」ニコ

僧侶「これからは正々堂々やりませんか?」

僧侶「そしたらわたし達も勇者さまも納得できる結果になりますよ」

商人「…負けないんだからぁ!!」

僧侶「わたしだって負けませんよ?」

僧侶「これからはライバルです」ギュッ

勇者「何だか泣いてたみたいだけどもう大丈夫?」

僧侶「はい、ご心配おかけしました」

賢者「もっと慰めてあげたかったのにぃ…」

勇者「キミは…」

僧侶「ふふふ…」

商人「…」コソコソ

勇者「何でそんなにコソコソしてるの?」

商人「まだ怒ってるかなって…」

勇者「怒ってないよ、もう気にしないで」ニッ

商人「うん…ごめんね」

僧侶「敵ですよ!!」バッ

勇者「そっちは頼むよ!!」ダダッ

商人「は~い」

僧侶「あぁっ!?こっちにきましたよ!!」

商人「はいズバーン!!」シュバッ

僧侶「商人さん!!後ろにも?!やぁっ!!」スカッ

商人「やると思ったよぉ!?たぁっ!!」シュバッ

僧侶「すみません…」

商人「どんまいどんまいっ」ポンポン

賢者(さすがにあれはやりすぎたか…せめて人を巻き込むのはやめておこうかね)

賢者「僧侶ちゃーん」

僧侶「はい?何ですか?」

賢者「調子はどう?」

僧侶「えっと良好ですけど」

賢者「例の問題も解決したのかい?」

僧侶「へわっ!?忘れていました…」

賢者「大切な事忘れちゃうなんてかーわいっ…まぁそうだろうと思って案を考えておいたよ」

僧侶「本当ですか!?それは助かります!!」

賢者「それじゃ今から言う事を実行してみるんだ」

賢者(まずは信頼を得る!正攻法でいくしかないけどしょうがないよな)

勇者「やっとここまで来たか…」

僧侶「確か半分ぐらいですよね?」

勇者「うん、残り半分も頑張っていこう」

僧侶「はいっ!!」

僧侶(賢者さんは自分で触りに行けと言いましたが…)

僧侶(どういうタイミングで触ればいいんだろう?)

僧侶(今なら魔力もないし装備も変えた)

僧侶(これなら勇者さまを傷つけずに触れられるはず!!)

僧侶「ゆ、勇者しゃま!!」

勇者「え、何?しゃま…?」

僧侶「いきなりですみません!!失礼します…」ジリジリ…

勇者「な、何?怖いんだけど…」ジリジリ…

僧侶「あぅ…逃げないでくださいぃ…」

勇者「え?えっと…ごめん…?」

僧侶(止まった!!今なら!!)

商人「ダメだよぉ!!」バッ

僧侶「!?」

商人「ほら、触ったらまたバギしちゃうよぉ」

僧侶(あぁ…やっぱり出てくると思いました…はぁ…)

賢者(しまった、お邪魔虫の存在を忘れていた!!)

僧侶「あれからずっと警戒されて近づけなくなったのですけど…」ショボーン

賢者「ごめんよ、アイツいたの忘れてたよ」

賢者「こうなったら不意をついて無理に触るしかないか」

僧侶「無理矢理だと怒られませんか?」

賢者「大丈夫大丈夫、勇者なら許してくれるさ」

勇者「僧侶は許すけどキミはダメだ」

賢者「うげ…いつの間に…」

勇者「忘れてそうだから言いに来たけど、キミとはここまでじゃなかった?」

賢者「しまったぁぁぁ!?夢中になりすぎて完全に忘れていたぁぁぁ!!」

僧侶「んに?どうしたんですか?」

勇者「彼の同行期間はここまでだったんだよ」

賢者「そ、そうだったんだよ…」

僧侶「じゃあわたしのお手伝いも…」

賢者「ごめんよ!さすがに契約を破るわけにはいかないからここでお別れなんだ…」

僧侶「あぁう…また一人でやらないといけないんですね…」

勇者「?ここまでありがとう、色々助かったよ」

勇者「また悪い事考えてそうだったけど見なかった事にするよ」

賢者「へ、へへ…まぁお前らこの先も頑張れよ」

賢者「あと僧侶ちゃん!また俺はキミの元へやってくるから!!」

僧侶「え?あ、はい」

商人「それじゃあもう別れちゃったの?」

勇者「うん、まだ下心全開だったけどね…」

僧侶「?」

商人「そっかぁ…結局三人になっちゃったね」

勇者「一応また探してみるけどしばらくはこのままかな」

僧侶「仕方ないですよ」

僧侶(ぁぅ…協力者をまた失ってしまったです…)

僧侶(いや!まだ諦めたりはしませんよ!約束しましたから!!)

僧侶(でも前より条件が厳しくなってるんですよね…)

僧侶(どうしたらいいのでしょう…)

商人「僧侶ちゃん、ボーっとしてどうしたの?」

僧侶「ひょぉぉぉい!?」ビックゥ

商人「どんな叫び声!?」

僧侶「ご、ごめんなさい…何でもないです…」

商人「あ、分かったぁ!勇者くんの事でしょ~?」ポンポン

僧侶「!?バギマ!!」ビュォォォ

商人「えぇっ!?いだぁ!!」バシュウン!!

僧侶「あれぇ?!」

僧侶(何で商人さんにバギしてしまったの?)

僧侶(勇者さま以外一度も暴発した事なかったのに…)

勇者「え?商人さんにまでバギした?」

僧侶「はい…」

商人「一体全体どういうことなんだろうねぇ?」

勇者「うーん…確か元は男の人にだけだったんだよね…」

勇者「よく分からないけど何かがきっかけで性質が変わったのか?」

僧侶「こんなのじゃ人に近づけないです…」

商人「もしかして…」

勇者「何か分かったのかい?」

商人「多分だけどぉ…ちょっと説明はできないかなぁ」

僧侶「えぇ…」

僧侶「結局曖昧なままで話は終わらせちゃいましたが、何だったのですか?」

商人「今勇者くんいないから話すけどぉ…」

商人「バギするのは僧侶ちゃんの感情で発動してるんじゃないかなって思ったの」

僧侶「感情…ですか?」

商人「ほら、勇者くんには恥ずかしいからで~…うちには多分嫉妬して出してるんじゃないかな」

商人「つまり強い感情の変化でバギ出しちゃうわけ」

僧侶「な、なるほど…」

僧侶「確かに魔法使いさんや賢者さんに触れても何も起きませんでしたし」

僧侶「でも、今は商人さんに触れても危険なのは間違いないです…」

商人「気を付ければいいんじゃない~?」

商人「ほら、さっきだって勇者くんの事言った後だったし?」

商人「意識しなければどうという事はないんじゃないかなぁ」ポンポン

僧侶「あ…本当ですね、何も起きません」

商人「さっ、戻って旅の続きしましょっ」

僧侶「勇者さま待たせてますしね」

僧侶(勇者さまにだけかと思っていたのに…)

僧侶(この体質は治せないのでしょうか…)

僧侶(他の人にまで迷惑かけてたらわたしは…)

僧侶(うぅん、弱気になるな!頑張りますよ!!)コクコクコク!!

商人(僧侶ちゃん、物凄い頷いてるけど大丈夫かなぁ?)

勇者「ここは市場か」

僧侶「はぁ~…人がゴミみたいにいますねぇ…」

勇者「ゴミとか言わないでくれ…」

商人「…」

僧侶「商人さんどうしました?何だかすごく大人しいですけど」

商人「へ?元気だよ~」

勇者「オレも気になってた、何かあるなら聞くけど?」

商人「じゃあ言っちゃうけど…早くここから出よ?」

勇者「え?ここにいたら何かまずい事でもあるのかい?」

商人「え、えっとぉ…」

僧侶「良くない事があるなら避けてもいいのではないですか?」

勇者「うーん…休憩する時間がなくなるけど仕方ないかな」

商人「ごめんねぇ…」

勇者「冗談じゃなさそうだし、嫌だと言うのに無理強いはしないよ」

僧侶「じゃあ先へ進みましょうか」

商人「いこいこっ!!」グイグイ

勇者「うわっ!?」

僧侶「あっ!?無理矢理引っ張っちゃダメですよ!!バギマ!!」グイ ビョォォォ

商人「今わざと触ったよね!?ふぎゃぁ!?」バシュウン!!

??「あれは…」

僧侶「ふぅふぅ…」

勇者「大丈夫?」

僧侶「ち、ちょっと苦しいです…」

勇者「もう少し我慢しておくれよ…」グイグイ

僧侶「ひゃぁ!?あぁぁぁ…」ビクッビクッ

勇者「やっと抜けたよ」

僧侶「す、すみません…また罠にかかってしまって…」

僧侶「ありがとうごバギマ」ビョォォォ

勇者「出ないと思ったらこんなタイミングで?!ぎゃあ!?」バシュウン!!

商人「何で時間差があったんだろ?」

勇者「すっかり夜になってしまったな…」

商人「もうヘトヘトだよぉ…」

僧侶「さすがに限界ですね…」

勇者「そうだね、今日はここで休もう」

勇者「ごめんよ、少しでも早く休めばよかったね」

僧侶「わたしは気にしてませんよ」

商人「うちも~」

勇者「ありがとう…とりあえず食事の準備をするよ」ゴソゴソ

僧侶(野宿かぁ…これだと二人っきりでお話とかは無理そうですね…残念です)

僧侶(少しでも近づきたいのですけど…)

商人「勇者くん寝た?」

勇者「…」

商人「…無反応を確認~」

商人「では失礼しま~す」ゴソゴソ

商人「ふへへ…おやすみなさぁい」

僧侶「…」ジー

商人「ひぇっ…ど、どうしたの?」

僧侶「いきなりですけど触っていいですか?」ニコニコ

商人「さ、触ったら勇者くんごとバギしちゃうよ…?」

商人(こう言えば僧侶ちゃんなら何もできないはずだよ…ね?)

僧侶「そうですね…」ジリジリ…

商人「ちょ…さすがに寝てるのにまずいってぇ…」

僧侶「その寝ている相手のところに潜り込むのはまずくないんですか?」ジリジリ…

商人(やばいよぉ…いつもの僧侶ちゃんじゃないよぉ…)

商人(ううん、きっと寸止めするつもりだよ)

僧侶「…」ジリジリ…

商人「…」

僧侶「…バ」ジリジリ…

商人「ま、まいったぁ!離れるからぁ!?」ズリズリ

僧侶「そうですか」ニッコリ

勇者「んん…まだ起きてたの?早く寝るんだよ…」ゴロン

僧侶「すみません、騒がしくして…おやすみなさい」

商人「おやすみぃ~」

商人(こんな本気な僧侶ちゃん初めてだよ…)

商人(今日は諦めよ…)トボトボ ゴロン

僧侶「ふぅ…」

僧侶(はぁ…勝った…)

僧侶(諦めずに立ち向かいましたよ魔法使いさん!!)

僧侶(わたし、まだ頑張っています!!)

僧侶(明日もこの調子で頑張るぞ!!)

勇者「…」ジー キョロキョロ

僧侶「勇者さま?険しい顔してますけどどうしました?」

勇者「何者かが背後からついてきているんだ…」ジー

僧侶「え?」キョロキョロ

商人「誰だろぉ?」

勇者「二人とも一応気をつけておいて」

勇者「何者か分からない以上危険だから」

僧侶「わ、分かりました…」

商人「了解です~」

??「…」コクリ

僧侶「何だか人が集まっていますね」

勇者「こんな何もない草原に何があるんだろう…聞いてみるか」

勇者「あの…ここで何かあったのですか?」

冒険者「ん?ひとつのパーティが人に襲われたみたいでな」

勇者「襲われた…ですか…」

商人「見てきたよ~、黒こげの人たちが手当て受けてたよ」

僧侶「黒こげ?」

勇者「魔法を扱う人間ぐらいしかそんなマネはできないはずだが…」

勇者「何か理由でもあったのだろうか…」

??「…」

勇者「町に着いたけど…まだついてきてるのか…」

僧侶「ぴょぇ!?まだいるんですかぁ?!」

勇者「被害が出る前に対処するか」

勇者「キミ達はここにいてくれ…捕まえてくる」タタッ

商人「大丈夫なのぉ?あーあ、反対側に走って行っちゃったけど…」

僧侶「回りこんで後ろから奇襲して捕まえる気ではないですかね」

商人「あ、それで反対かぁ…僧侶ちゃん頭良い~」

僧侶(あ…そうですよ、勇者さまも背後から触ってしまえばいいんですよ)

僧侶(そうすれば商人さんも気付かないだろうし…ふふっ)

商人(何で僧侶ちゃん悪い顔してるんだろ?)

??「仲間が一人消えた…」

勇者「オレの事か?」

??「へ…うわぁ!?」ダッ

勇者「逃がさないぞ、ずっとつけ回して何のつもりだ?」ガシッ

勇者「場合によっては切り捨てないといけない」グッ

??「話すから!!迷惑かけるつもりじゃなかったんっすよ?!」

勇者「そうか…それじゃキミは何の用でオレ達を?」キン

??「ただ心配だったんすよ…アイツの事が…」

勇者「それは誰の事だい?」

勇者(そういえばあの時…)

僧侶「戻ってきませんね…」

商人「だねぇ…それにしても僧侶ちゃん人気者だね」

商人「この短時間にもう五人もの人に話しかけられてるし~」

僧侶「わたし何もしてませんけど?」

商人「それだけ僧侶ちゃんが魅力的なんだよ~」

僧侶「そ、そんなことないですよ…」

勇者「おまたせ」

僧侶「あ、おかえりなさいです…その人は?」

勇者「あぁ、ちょっと訳あってオレ達をつけていた人だよ」

商人「えぇっ!?」

勇者「商人さんの知り合いなんだって」

僧侶「あ、そうなんですか」

商人「やっぱり市場で見たのは君だったんだねぇ…」

??「心配だったんだよ、お前が勝手に旅に出たからさぁ…」

商人「だからってついてこないでよぉ!!旅に出るのはうちの勝手でしょ!?」

僧侶「そちらの方とどういう関係なのですか?」

商人「多分、幼馴染…」

??「多分って何だよ?!間違いなく幼馴染だっての!!」

??「あ、名前は盗賊っていうっす」

勇者「名前は聞いてないけど…」

盗賊「俺も連れていってくれ!!」

商人「やだよ、君弱いしぃ」

盗賊「前より遥かに強くなったっての!!だから!!」

勇者「ちょっと気になった事があるんだけどいいかい?」

盗賊「なんすか?」

勇者「ここに来る途中、ひとつのパーティを焼き払ったのは君か?」

盗賊「そ、そんなことできたらしたいっすよ?!魔法なんてまったく使えないっすけど…」

勇者「あれ?でもこっそりついてきてるぐらいだから君かと思ったんだが…」

僧侶「じゃあ黒こげさんにしたのは誰だったのでしょうね?」

勇者「誰が何の目的であそこまでしたのか気になるな」

勇者「それでどうするんだい?」

盗賊「仲間にしてほしいっす!!」

商人「ダメだって?!」

盗賊「俺にはお前が必要なんだよ!!」

商人「うちには勇者くんだけで十分なんだよ!!」ギュッ

勇者「うわ…っと…」

僧侶「商人さん!!何やってるんですか?!」

盗賊「そうか…あんたがコイツをたぶらかしたのか…!!」ジャラ

勇者「何でそうなるんだよ…」

僧侶「くさり鎌だ…本気なんですねこの人…」

勇者「人同士の戦いはしたくなかったんだけどな」キン

盗賊「つ…強すぎる…くそぉ…」ガクリ

商人「勇者くんが強いのもあるけど君が弱すぎるんだって!!」

僧侶「さすがにそれは言い過ぎではないですか…」

商人「それじゃあ僧侶ちゃんと戦ってみなよ!!そしたら話ぐらいは聞くよ!!」

勇者「おいおい…それはさすがに…ダメだよね、僧侶?」

僧侶「えっと…何でわたし?」

商人「そりゃ弱…一番大人しそうだから?」

勇者「理由になってないんだけど…」

盗賊「勝ったら話聞くんだな!?やってやるよ!!」ジャラ

盗賊「」チーン

勇者「空振りで倒した子は初めて見たよ…」

商人「見事な空振りからの回し蹴りだったねぇ」

僧侶「何故、勝ったのにあまり嬉しくないのでしょうか…」

商人「これで分かったね?君は弱いんだよ」

盗賊「くそぉ…なんで俺は何も出来ないんだ…」

盗賊「市場で見つけたと思ったら見失うし…見つけても完全拒否されるし…」

勇者「あれ?」

僧侶「どうしました勇者さま?」

勇者「いや、ちょっとした違和感があってね」

鋭い風が相手を切り刻んだ気がしてた

えっと、一応知らない人のために説明を。

バギの内容は>>132で合ってる
バギ→バギマ→バギクロスの順に強くなります
ドラクエ全体通して、職業で言えば僧侶がバギ系を使えることが多い気がする(たまに違うけど)
全攻撃呪文の中では多分弱い部類に入ると思います(あくまで個人的な感想)
でもバギクロスになるとそれなりに強いから弱すぎるほどでもないです

以上説明終わり
本編投下します

勇者「キミはここへ来るまでオレ達を見失っていたのかい?」

盗賊「そうっす…なんとなく行った先を追ってやっとこの町で見つけたんす」

勇者「じゃあ道中で感じていた気配は別人だったのか…?」

商人「コイツにそこまでできる力ないよぉ」

盗賊「くっ…」

僧侶「じゃあ誰だったのでしょう…怖くなってきました…」プルプル

勇者「まだ油断はしてはいけないな」

勇者「あとキミには悪いけど同行させられない」

勇者「さっきの話の通り、俺達は何者かにつけられているみたいなんだ」

盗賊「そうすか…でも…」

盗賊「どうしてもダメっすか?」

勇者「商人さんは仲間なんだ、意見は尊重したい」

盗賊「そっすか…だったらお願いします!!」

盗賊「コイツを無事に帰してやってください!!」

商人「盗賊…」

僧侶「大丈夫ですよ、勇者さまならきっと守ってくれます」

勇者「うん分かったよ、必ず無事帰すと約束しよう」

盗賊「よろしくお願いしまっす!!」ペコリ

僧侶(きっと盗賊さんは商人さんの事を…)

僧侶(商人さんはどう思っているのでしょう…)

商人「…」ボー

僧侶「勇者さま…」

勇者「うん?」

僧侶「商人さん、また元気がなくなっていますね」

勇者「先ほどの彼の事で考えているんだろう」

勇者「あそこまで言われたらさすがにね…」

僧侶「商人さんもきっと嫌いではないと思うのですよ」

僧侶「盗賊さんがもっとしっかりすれば変わりそうな気もしますが…」

勇者「しっかり…ねぇ…」ジー

僧侶「え、何でわたしを見ているのですか!?」ドキドキ

勇者「よし、準備はできたな」

僧侶「それじゃあ行きます?」

勇者「うん…あれ?商人さんはどこへ?」

僧侶「え?さっきからそこの段差に座って…」キョロキョロ

僧侶「荷物だけ置いてありました」グイ

勇者「どこ行くにも荷物は手放さないだろう…」

勇者「職業柄、その辺は特に気を使っているはず」

僧侶「だとすると何故突然いなくなったのでしょう…」

町人「おい、さっきの見たか?白昼堂々人攫いだぜ?」

勇者「嫌な予感がする…」

勇者「すみません、その攫われた人ってどういう人か分かりますか?」

町人「女の子だったぜ、服装からして商人じゃないだろうか?」

僧侶「ゆ、勇者さま…それって…」

町人「お仲間攫われたのか?この町では有名な奴等だから裏通り探せばすぐ見つかると思うぜ」

勇者「情報提供感謝します…僧侶、探そう!!」

僧侶「はいっ!!」

勇者「ちょうど考え事してる時だったし、狙いやすかったせいか」

僧侶「まだ無事だといいのですけど…」

勇者「彼と約束したし、何があろうと守らないと!!」

??「…」タタッ

商人「むーむー!!」ジタバタ

男A「大人しくしろ!!」バシッ

男B「予想以上にあっさり攫えたな、コイツいくらするかな?」

男C「見た目悪くないからかなり期待できるぜ」

男A「例の場所までさっさと行くぞ、さっさと売り捌かないと厄介な事になるぞ」

盗賊「お前ら待てぇぇぇぇぇ!!」ダダダッ

商人「む!?むーーーっ!!」

男C「なんかすごい早さで変なヤツ来たぞ」

男B「黙らせとけよ」

盗賊「商人を返しやがれぇぇぇぇぇ?!」

勇者「どこだ?!」キョロキョロ

僧侶「本当にこっちでいいんですか?」

勇者「こういう奴らはまず人気のない場所へ向かうはずだ」

勇者「そこで取引相手に売りつけると聞いたことがある」

僧侶「はー、色んな事知ってますね勇者さまって」

勇者「まぁ勇者だし、色々な知識は得ておかないと…」

商人「もうやめてよぉ!?」

僧侶「勇者さま!!商人さんの声ですよ!?」

勇者「まだ無事みたいだな!!急ごう!!」

僧侶(ライバルだけど仲間ですもんね、助けなきゃ!!)

盗賊「うぐ…」

男A「よわっちぃくせに突っ込んでくるんじゃねぇよ!!」ゲシッ

商人「もういいよぉ!!逃げてぇ!!」

盗賊「大丈夫だ…無計画に突っ込んだわけじゃない…」

勇者「商人さん!!」

僧侶「ご無事ですか?!」

盗賊「…勝ちは勝ちだ」ニヤッ

男B「なんだぁ?ごはっ!?」ドサッ

勇者「ふぅ…キミはオレ達が来るのを耐えて待っていたのか」

盗賊「逃げられないように足止めも兼ねてたんす…カッコ悪いすけどね…」

僧侶「いいえ、カッコイイですよ」ニコ

男A「のんびり話している暇じゃないんじゃないか?」ゾロゾロゾロ

勇者「ちっ…他の仲間が近くにいたのか…」

僧侶「ちょっと多いですね」

商人「ちょっとどころじゃないよぉ…」

勇者「仕方ない…連中には少々痛い目見てもらうか」グッ

??「…傷つけてもいいなら今すぐ吹き飛ばすわ」シュイーン

勇者「へ?」

ドガァァァァァァァァァァァン!!

商人「きたぁぁぁぁぁ!!」

僧侶「魔法使いさん!!」

魔法使い「こんな所で何遊んでるのよ」フリフリ

勇者「遊んでたわけじゃないんだけど…」

魔法使い「冗談よ、陰で見てたから大体の事情は分かってるつもり」

僧侶「もう頭の方は大丈夫なのですか?」

魔法使い「検査に異常なかったからすぐ追いかけてきたのよ」

僧侶「よかったぁ…」

勇者「もしかして途中で感じていた気配は魔法使いさんだったのか?」

魔法使い「えぇ、影で観察してたけどわりとまともに進んでいたようね」

魔法使い「こっちは微妙な筋肉のパーティに付きまとわられたから焼き払ったりしてたというのに…」

僧侶「あれは魔法使いさんだったのですね…しかもやっぱり筋肉…」

勇者「ふぅ、やっと大人しくなったか」

魔法使い「まったく…面倒事ばかり起こすわねあんたらは」

僧侶「えへへ…あ、盗賊さんはあれからまだつけていたのですか?」

盗賊「すいませんっす…やっぱり心配で…」

商人「…勇者くん」

勇者「ん?何だい?」

商人「好きです!!」

僧侶「!?」

盗賊「なっ!?」

商人「でも諦める事にしたよ~」

僧侶「どうしてです?あれだけアタックしていたのに…」

魔法使い(あんた知らない間にライバルできてたの?)

僧侶(はい、負けないよう頑張ってました)

魔法使い(ふぅん)

商人「結局、うちは自分の気持ちを偽っていたのね」

商人「確かに勇者くんは好きだったけどホントは最初から好きな相手がいたんだ」

商人「でもソイツの事が自分でどう思っているか分からなかったんだ」

勇者「そっか、今ではもう分かっているんだね?」

商人「うん、そのまま気付かずに後悔しなくてよかったよ!!」

僧侶(わたしの苦労は何だったのでしょう…)

盗賊「じゃあお前…」

商人「言っておくけど旅はやめないよ」

盗賊「え、ちょ…」

商人「一緒に旅する?二人でねっ」ニコ

盗賊「へ…お、おうっ!!」

勇者「それじゃあ商人さんとはここまでだね」

商人「短い間だったけどお世話になりました!!」ペコッ

盗賊「色々ご迷惑をおかけしたっす」ペコリ

勇者「気にしてないよ、これからはしっかり守ってあげるんだよ」

盗賊「おっす!!もっと鍛えて自分の力で守れるように頑張るっす!!」

僧侶「一緒に旅できて楽しかったです、お元気で」

商人(僧侶ちゃん僧侶ちゃん)ボソボソ

商人(ひとつ教えてあげたい事があるんだ)

僧侶(なんです?)

商人(体質の事~…意識しなかったら出ないって言ったよね?)

商人(もしかしたら勇者くんにも出ないようにできるかもよ~)

僧侶(ほ、本当ですか!?)

商人(一度、ちょっと遅れて出てた事あったから頑張って制御すればもしかしたら~)

僧侶「そうですか…最後までありがとう…最後にバギでお別れを」ニコ ビョォォォ

商人「自分で出した?!いつそんな意地悪になったの!?いたぁい!!」バシュゥン!!

勇者「な、なんだかよく分からないけどバイオレンスなお別れの仕方だね…」

僧侶「えへへ」

商人「さすがに勘弁してほしかったけど…これも楽しい思い出になりそうっ」

魔法使い「それじゃ行くわよ」

勇者「そうしようか、二人とも仲良くね」

盗賊「はいっす!!」

僧侶「また会えたらいいですね」

商人「でももうバギはやめてよねぇ…」

商人「ライバルいなくなったんだから頑張ってね~」

商人「みんなばいば~いっ!!」ブンブン

勇者「ところで…」

僧侶「はい?」

勇者「商人さんが最後に言っていたライバルって何の事だったんだい?」

僧侶「えひぇ…ひ、秘密ですよ…バギマ」ビョォォォ

勇者「だから触ってないのに!?ふぎぃ!?」バシュゥン!!

魔法使い(相変わらず鈍いわね…僧侶も改善されてないし…むしろ悪化してないかしら?)

魔法使い(まぁライバルいなくなったなら少しはやりやすくなったでしょ)

僧侶(魔法使いさん戻ってきたしここからが頑張りどころですよね!!)

僧侶(あまり手を借りるとまた相手にされなくなりそうですけど…)

僧侶(なるべく頼らないよう頑張ります!!)

ザァァァ…

勇者「いきなり降ってきたなぁ」

僧侶「山道ってすぐ天気変わりますよね?」

勇者「そうだね、空に近いからだろうけどタイミングが悪いよね」

魔法使い「のんきに話なんかしてる場合?!早く雨宿りできる場所探しなさいよ!!」

勇者「ごめんごめん」

僧侶「わたしは気持ち良くて好きですけどね、雨」

魔法使い「あんたは良くてもこっちは嫌なのよ!!」

勇者「先に洞窟があるよ、あそこでいいかな?」

魔法使い「雨に打たれないならどこだっていいわ、早く行きましょ」

魔法使い「まったく…ずぶ濡れじゃない…最悪…」バシャー

勇者「火ついたから暖まってよ」パチパチ

僧侶「あれ?勇者さまはあたらないんですか?」

勇者「俺は後でいいよ」テクテク

僧侶「どこ行くのですか?」

勇者「お、奥にいるだけだって」プイッ

僧侶「あ、そうですか」

魔法使い(さすがにそれぐらいの気は使うのね)

魔法使い(それすら気づいてない子もいるけど…)

魔法使い(自分の事には果てしなく鈍いわよね…だから今まで男なんていなかったのか)

僧侶「勇者さま?」

勇者「な、なんだい?」プイッ

魔法使い「服!!着てから話しなさい!?」

僧侶「あ、わわっ!?」バタバタ

魔法使い「あんなのでよくここまで連れて来れたわね…」

勇者「は、はは…あれでもやる時はちゃんとしてくれるからね」

魔法使い「それならあんた、あの子の事気付いてないの?」

勇者「何をだい?」

魔法使い「こんな調子でうまくなんていくのかしら…」

勇者「?」

僧侶「止みませんねぇ…」

勇者「別に急いでないからいいんだけど手持ちぶさたになるよね…」

魔法使い「仕方ないと言えばそれまでよね」ペラ

僧侶「魔法使いさん、何読んでるのですか?」

魔法使い「魔道百科事典」

魔法使い「魔法使う者としては常に勉強は欠かせないのよ」

勇者「へぇー、オレには真似できないなぁ」

僧侶「わたしもですよ」

魔法使い「いやいや、あんただって体鍛えるより知識の方が必要でしょ」

魔法使い「回復や補助だって扱うには知識が必要よ」

僧侶「そうなんですか?」

魔法使い「自分の事でしょ!?しっかりなさい!!」

僧侶「はぁ」

勇者「まぁまぁ…勉強の仕方は人それぞれと言うし…」

魔法使い「こんなの常識よ?!こんな事も分かってないのよこの子は!!」

勇者「そ、そうか…ごめんな」

魔法使い「はぁはぁ…なんだか会話してるだけで疲れたわ…」

勇者「あ、飲み物ならあるから用意してあげるよ」ゴソゴソ

僧侶(勇者さまの事ばかり考えてたからなぁ…)

僧侶(でも気になって仕方ないんですよぉ…勇者さまぁ…)ポー

勇者「ここ、なんだか奥まで続いてるみたい」

魔法使い「ふぅん、待つついでに探索してみる?」

勇者「そうしようか」

僧侶「じゃあ行きましょう」

魔法使い「あんたは留守番してなさいよ」

僧侶「な、何故ですか?!」

魔法使い「すぐ戻るけど荷物番する人が必要でしょ」

僧侶「はぅ…はい、おまかせください…」ショボーン

魔法使い「じゃあ行くわよ」

勇者「あ、うん…」

僧侶「…暇ですね」

僧侶「できれば勇者さまと二人で行きたかったのですけど…」

僧侶「魔法使いさんの事ですからわざととかではないでしょうけどね」

僧侶「だから待つしかないのですが…」

ザァァァ…

僧侶「でもすることがないです…」

僧侶「あ、読書でもしておこっと…」ゴソゴソ

僧侶「さっき言われましたしね」ペラッ

ザッザッザッ

僧侶「もう帰ってきたのかな…あれ?外から??」

魔法使い「何よ、ただ少し深いだけだったじゃない」

勇者「奥行きはなかったけど…これを見て?」

魔法使い「あら、やけに生活感があるわねここ」

勇者「焚き火の跡がまだ新しいようだから人が近くにいるかもね」

魔法使い「…」ピクッ

魔法使い「何だかすごく胸が高鳴ってきたわ…」

勇者「え?どうしてだい?」

魔法使い「何かある時決まってこんな感じがするのよ」

勇者「どこで何が起こるかまでは分からないの?」

魔法使い「さすがにそこまでは分からないわ…一旦戻ってみましょ」

僧侶「あの…どちらさまですか?」

??「どちらさまと言われてもな…お主は何をしておる?」

僧侶「読書ですけど?」ペラッ

??「あいや、そういうことではなくてだな…こんな場所で雨宿りか?」

僧侶「そうですよ、わたしは今荷物番してるんです」

??「仲間がおるのか」

僧侶「はい」

??「ふむ、その仲間はどこへ行かれたのだ?」

僧侶「この奥ですけど…あ、戻ってきました」

勇者「僧侶、戻ったよ…その方は誰だい?」

僧侶「先ほど外から来た人ですよ」

??「正確には帰ってきたというべきか」

勇者「もしかして奥に生活感があったのは…」

??「今はここを寝床にしていたからだな」

魔法使い「な…な……」プルプル

僧侶「魔法使いさんどうしました?」

魔法使い「どうしたもこうしたもないわ!筋肉よっ!!」

僧侶「あー…」

??「何があったのだ?かなり興奮しておるようだが」

僧侶「ちょっとした病気が再発したようでして…」

魔法使い「予感は当たったわ!あなた!!」

??「私か?何だ?」

魔法使い「解剖させなさい☆」

??「はぁ?」

勇者「僧侶、彼女はそんな趣味があったのかい…?」

僧侶「はい…筋肉が絡むとかなり危ない人になるようで…」

勇者「さっき何か感じたと言っていたのはこれ(筋肉)か…」

僧侶「あ…あはは…」

魔法使い「新たな筋肉の世界を見に行きましょ!!」シャキン

??「何だそれは!?お主ら、コレをどうにかしろ?!」

勇者「鍛錬ですか」

武闘家「うむ、自分の限界まで鍛えてみたくてな」

勇者(限界まで…相当腕が立ちそうだ)

魔法使い「にく…に、にくにくにく…!!」ギシギシギシ

僧侶「お話中なのでお静かにしてもらえませんか?」

魔法使い「何で目の前に筋肉あるのに解剖させてくれないのよ!?この縄を解きなさい!!」

勇者「人としてさすがに…ね…」

武闘家「そんな者をよく仲間にしたものだ…」

僧侶「普段はすごくまともで良い人なんですよ…」

魔法使い「目の前に筋肉があるのにぃ!?きぃぃぃぃぃ!!」ギッシギッシ!!

武闘家「私を仲間にか?」

勇者「あなたさえよければですけど…どうでしょうか?」

武闘家「アレを何とかしてくれるのであればかまわぬ…」

魔法使い「に、にく…ダ、ダメよ…耐えなさい自分!!」ギリギリギリ

僧侶「ま、魔法使いさんもこらえようとしてくれてますし…」

武闘家「むぅ…分かった、同行しよう」

勇者「ありがとうございます」

僧侶「雨止みましたね」

勇者「いいタイミングだ、それじゃ行こうか」

僧侶(また新しい人かぁ…)

ガサガサ

武闘家「魔物だ」

僧侶「え?」

魔物「ガウッ!!」バッ

勇者「よく分かりましたね?」シャキ

武闘家「物音の大小で大体何者か分かる」

魔物「!?」ビクッ テテテ…

魔法使い「あら、逃げたわね」

僧侶「どうしたのでしょうね?」

勇者「さぁ…」

武闘家「生物は本能で相手がどれだけ危険な存在か分かるのものだ」

勇者「なるほど…勝てる相手じゃないことに気付いたため逃げたわけですか」

武闘家「そういうことだ、別のがきたぞ」

魔物「シャー!!」

武闘家「今度のはくるから気をつけろ」

僧侶「魔法で一気に片付けますね!バギマ!!」ビョォォォ

勇者「何でこっちに飛んできたの!?ふぎゃぁ!?」バシュゥン!!

武闘家「何をやっておるのだ…」

僧侶「どうしてぇ!?」

魔法使い(この子、段々面倒くささが極まってきてない?)

武闘家「ほぉ、自然に勇者にバギするのか」

僧侶「はい…」

魔法使い「最初は触れた時だけだったけど、今はそれすらも関係なくなってるようね」

僧侶「もう勇者さまに近づけない…うぅ…」

魔法使い「またその程度で諦めるつもり?」

僧侶「い、いえ…でも…」

武闘家「先程の時、確実に魔物に放とうとして呪文を唱えたか?」

僧侶「もちろんですよ…あ、そうだ」

僧侶(商人さんが言ってたじゃないですか)

僧侶(意識すれば抑えられるかもしれないって…)

勇者「こんな所に来て何があるんだい?」

魔法使い「この子の特訓に付き合ってよ」

勇者「特訓?」

武闘家「何をしようともバギを出さないようにしたいそうだ」

僧侶「出なくなるかもしれないヒントを得たのですよ」

勇者「そう…分かった手伝うよ」

魔法使い「じゃああなたが思うとおりやってみなさい」

僧侶「はいっ!!早速ですが触らせてもらいますよ勇者さま」ズイッ

勇者「え…?」ジリジリ

魔法使い(まぁ今までの事考えたら逃げ腰になるわよね)

僧侶「に、逃げないでくださいよぉ…」

勇者「ごめん、いつもの癖で…」

僧侶「そう…今から触るのは勇者さまじゃない…そっくりさんなんだ…」

僧侶「…」サワ

勇者「あ、何も起きない…」

武闘家「わりとあっさり克服したな」

魔法使い「いえ、問題はここからよ…この子の今まで見てたから分かるわ」

勇者「え?でも何もないんだけど」

僧侶「そうですよ、これならもうだいじょバギクロス」シュゴォォォ

勇者「またそんなタイミングで?!ぎゃあっ!!」シュバァン!!

魔法使い「時間差があったわね…確かに前とは何か変わっているようだけど」

武闘家「ふむ」

僧侶「触れた相手を勇者さまと違うイメージ浮かべたのに…」

武闘家「その発想は悪くない、問題はちゃんと頭で別のモノに変換できているかだ」

僧侶「う?」

武闘家「自分ではできているつもりでも油断をして元のイメージに戻っているのだろう」

勇者「そう言ってもなかなかできないものだけどね…もっと簡単にできる方法ないかな?」

魔法使い「発想の転換、放つ呪文の方を変えてしまえばいいんじゃないかしら?」

僧侶「バギを回復に変える感じですか?」

勇者(誰もツッコんでくれなかったけどさらにバギが強化されてたんだよね…)

僧侶「い、いきます!!」

武闘家「脳内イメージを変えるなよ」

武闘家「寸前で使う呪文をこれだと固めてしまえ」

僧侶「はい…!!」

魔法使い「今度は勇者から触ってみなさいよ」

勇者「分かった…はい」ポン

僧侶「!?バ…」

僧侶(ダメ!バギじゃない別の何かに…)

僧侶「バ…ザキクロスぅぅぅ!!」ズゴォォォ…

勇者「ちょ…」コロリ

ドラクエ知らない人のための簡単な解説その2


ザキ:対象を即死させる…FFでいうとデスと同じ

   種類としてザキ(敵単体)・ザラキ(グループ)がある(ザラキーマってのもあった気がする)

   3ではイカ系に高確率で効いたりする

   4ではザラキ神官として有名なキャラがいる

魔法使い「これはお手上げね」

武闘家「別の呪文にするにももう少し考えるものだろう…」

僧侶「うぅ…すみませんすみません…」ペコペコペコ

魔法使い「あんたの思考回路から直さないといけなかったみたいね」

魔法使い「つまり詰み状態ね」

僧侶「いやぁぁぁぁぁ?!どうにか!!どうにかいい方法を!!」

勇者「まだまだ時間かかりそうだね…」

僧侶「まだ迷惑かける事になってすみません…」

勇者「いやいいよ、さぁ先へ進もう」

武闘家(なかなか面白い者に出会ったな)

僧侶「どうしよう…」

僧侶(やっぱり自分で止められないのかな…)

僧侶(うぅん…諦めちゃダメですね)

僧侶(自分で魔法を変える練習をしておこう)

僧侶「えっと、まずバギを出して…と」ヒョォォォ

僧侶「ここで別のに変換する…!!」ズズズ…

僧侶「」コロリ

武闘家「不審な動きをしていたから追って来てみれば…」

武闘家「何故また同じ過ちを繰り返すのだこの娘は…」

武闘家「とりあえず蘇生させるか」

僧侶「はぁ…ご迷惑をおかけしました」

武闘家「お主はかなりヌケているようだな」

僧侶「はい…魔法使いさんにも言われました…」

武闘家「だが、その努力は認めよう」

武闘家「私が直にイメージを鍛える特訓をしてやろう」

僧侶「本当ですか?」

武闘家「うむ、ただし条件がある」

僧侶「出来る事であるならお手伝いいたします」

武闘家「簡単な事だ」

武闘家「知りうる限りの情報を提供してくれればいい」

勇者「え?また手伝ってくれって?」

僧侶「こ、今度こそ大丈夫ですので!!」

魔法使い「本当かしら…」

武闘家「私が確認した、問題ないと保証しよう」

勇者「それなら…じゃあ触るよ?」ポン

僧侶「…どうですか?」

魔法使い「まだよ、時間差で出るかもしれないわ」

僧侶「はい…」

勇者「このままって怖いなぁ…」

武闘家「…」

―――

僧侶「え?勇者さまの事を知りたい?」

武闘家「あぁ、それが条件だ」

僧侶「それはかまいませんがわたしもそこまで詳しくは…」

武闘家「普段、傍にいて見聞きした事でよい」

武闘家「お主の知りうる限りすべて話してくれ」

僧侶「分かりました…まず勇者さまは真面目でお優しいです」

武闘家「あぁ」

僧侶「一度お休みになられるとかわいい寝言を言う時があります」

武闘家「そういうのは必要ないのだがな…」

―――

勇者「あれから結構な時間経ったよ」

魔法使い「本当に今度こそ克服したようね…でもどうやってここまでさせれたの?」

武闘家「こやつのイメージをあっさり変えないようにしたのだ」

武闘家「条件反射のようにできるよう特訓させたので油断せん限り大丈夫だろう」

僧侶「や、やりましたよ!!皆さんの協力のおかげですよ!!」シュゴォォォ

僧侶「あ、バギクロス」

魔法使い「ちょ…言った先から油断してるじゃない!?しかもこれ全員対象よ!!」

武闘家「こればかりはこやつの性格が関係するから直りはせんだろう…」

勇者「これは克服したって言えるのかな…ぎゃあっ!?」シュバァン!!

僧侶「…」

勇者「土下座してるの久しぶりに見たよ…」

魔法使い「全員巻き込んだからじゃない?」

僧侶「ほんっとうに申し訳ありませんでした!!」

武闘家「かまわん、今後はバギを完全に抑えてから別の行動に移せ」

僧侶「はい…」

勇者「でもすごく進歩した方だと思うよ」

魔法使い「そうね、当初よりは大分マシになったんじゃない」

勇者「じゃあそろそろ行こうか」

僧侶「はいっ!!」

武闘家「ふん」バキャ

魔物「ヒギャァ!?」ズサー

勇者「…」

武闘家「終わりだ」フイッ

魔法使い「…」

僧侶「おつかれさまです…お二人ともどうしました?」

勇者「え?いや、何でもないよ」

魔法使い「ちょっとした考え事よ」

僧侶「そうですか?」

武闘家「…」

勇者「みんな来たね」

僧侶「大事な話するのに武闘家さんがいませんよ?」

勇者「あの人はいいんだ」

魔法使い「彼の事でしょ?大体分かってたわ」

勇者「うん…武闘家さんの件なんだけど、ここまで来て思っていたんだ…」

勇者「何というか…変なんだよね…」

僧侶「変ですか?すごくいい人だと思いますけど」

魔法使い「あんたの目は何を見てきたのよ」

僧侶「見えるもの全部ですよぉ」

勇者「そりゃ当たり前だって…不審な点がいくつかあるんだよ」

勇者「基本的に戦闘での事が多いね」

魔法使い「あの人が仲間になる前と比べて魔物と戦闘になる回数が明らかに減ったわね」

勇者「うん、本人は魔物が強さを判断してるからだと言ったけど…」

勇者「あとは普通の人と戦い方が特殊というか…いくらなんでも強すぎるんだよね」

勇者「一人であの数を捌ききっても息を乱してすらいなかったし」

僧侶「ただ修行しすぎてああなっただけじゃ」

魔法使い「あんたは黙って聞いてなさい」

僧侶「何故ですか!?ひどいですぅ!!」

魔法使い「で、どうするのよ?」

勇者「オレが直接探ってくるよ…場合によっては詳しく話を聞かないとね」

勇者「武闘家さん」

武闘家「何だ?」

勇者「いきなりで悪いのですがお手合わせ願えませんか?」

武闘家「…断る」

勇者「何故ですか?」

武闘家「その内嫌でも相手しなければならぬだろうしな」

勇者「え?」

武闘家「お主達の事だからそろそろ私に違和感を覚えるころだとは思っていた」

武闘家「すぐ言うてもよかったが面白い者を見つけたから遊んでいたのよ」

勇者「結局、あなたは何者なんだ…」

武闘家「お主らの言う最終目的だとでも言えば理解できるか?」

勇者「ま…まさか…!?」

魔法使い「普通に溶け込んでいるとはね…」

僧侶「誰なんですか?」

武闘家「こやつだけまだ分かっておらぬのか…くく、やはり愉快な奴よ」

武闘家「ただ待っているだけではつまらぬから世界を直接見ておったのよ」

武闘家「おかげで勇者にも会え、面白い者にも会えたわけだ」

勇者「初めて見たがこんな奴だったとは…」

勇者「魔王!!」

僧侶「え?魔王??」

魔王「本当、愉快な奴よ」

勇者「何が目的でこんな所にいた!?」

魔王「最初に言うただろう?鍛錬のためよ」

魔法使い「ただでさえ魔王と呼ばれるほどなのにさらに強さを求めるなんて…」

僧侶「…」

僧侶「えぇぇぇぇぇぇっ!?本物なのですかぁ?!」

勇者「さっきから言ってるじゃないか…」

魔法使い「こんな時までボケかまさないでほしいわね」

魔王「くくく…」

僧侶(わたしに特訓までしてくれたこの人が魔王だったなんて…)

魔王「まぁよい、目的は果たした」

魔王「あるべき場所へ戻って、お主らが来るのを楽しみに待つことにしよう」ヒュン!!

勇者「待て!?くそ、逃がしたか…」

魔法使い「あのまま戦ったって勝てるとは限らないわ」

勇者「そうだね、もっと強くなっておかないと…」グッ

勇者「進もう」

僧侶「…」

魔法使い「何ボケッとしてるのよ?」

僧侶「あ、ごめんなさい…何でもないです」テテッ

僧侶(何も知らないと勇者さまの情報バラしちゃったけど大丈夫でしょうか…)

勇者「かなりダメージ受けてしまった…僧侶、悪いんだけど回復お願いできるかな?」

僧侶「あ、はい」ポォォォ

勇者「悪いね、油断しちゃって…って、ちょぉぉぉ!?」シュゴォォォ シュバァン!!

僧侶「あれぇ!?」

魔法使い「改善したはずなのにまたやらかしてるし…また油断したの?」

僧侶「最初から回復呪文しようとしただけですよぉ…」

勇者「」チーン

魔法使い「それよりまず勇者を起こさない?あんたがトドメさしたみたいだし」

僧侶「あぁっ!!勇者さまゴメンなさいぃ!!」

魔法使い(抑え込みすぎて他に支障が出てきたのかしら…)

魔法使い「ちょっと私に何でもいいから呪文してみなさい」

僧侶「は、はい…ザキ!!」

魔法使い「ちょ…」コロリ

勇者「何でもいいからってそれはないよ…起こしてあげて」

僧侶「そ、蘇生呪文!!」ポワワァ

魔法使い「くっ…本当信じられないわ…」

魔法使い「何でもいいからってと言ってザキかけていいと思ってるの?!」

僧侶「すみませんすみません…」ペコペコ

魔法使い「今までこんなに脳の足りない子に会ったのは初めてよ!?」

僧侶「すみませんすみません…足りなくてすみません…」ペコペコペコ

勇者「じゃあさ、出す呪文指定してみたらどうかな?」

魔法使い「そうね…速度増加呪文かけてみて」

僧侶「はい、速度増加呪文!!」グイーン

魔法使い「ふむ、普通に発動するよ…ぎひぃ!?」シュゴォォォ シュバァン!!

勇者「なるほど、指定してやってもらうとあとでバギが出るのかぁ」ポォォォ

魔法使い「くぅ…どこまで面倒くさい子になるのよ…」

僧侶「うぅ…」ペタリ

勇者「また土下座しようとしてるし…」

魔法使い「もうあんた自力で解決法探しなさい…私には手に負えないわ…」

僧侶「そ、そんなぁ…」

魔法使い「ここはまた大きな町ね」

勇者「今日はここで宿をとるよ」

僧侶「ふぁ~…また人がゴミのようですねぇ」

勇者「だからゴミって言わないでくれる…?」

『だから人探ししてるだけだっての!!』

魔法使い「向こうが騒がしいわね」

僧侶「もめてるみたいですけど…」

勇者「えっと、宿屋に行くよ?見て回るのはそれからにしようよ」

僧侶「あ、はーい」

僧侶(何だか聞いた事のある人の声でしたけど…)

勇者「よし、じゃあこれからは自由にしていいよ」トコトコ

僧侶「はい」テテッ

魔法使い「ちょっと一緒に来なさいよ」グイ

僧侶「ふぉあ?!」

魔法使い(今回は勇者についていくのやめなさい)

僧侶(な、何故ですか!?)

魔法使い(もう少し特訓とこちらの手伝いをしてもらうからよ)

僧侶(それじゃ仕方ないですね…勇者さまぁ~)

魔法使い(ほら、行くわよ)

勇者(相変わらず仲が良くていいなぁ)ニコニコ

魔法使い「さぁ、筋肉を探しなさい」

僧侶「そんないきなり言われても…」キョロキョロ

『だーかーらー!見なかったかって聞いてるだけだろ?!』

魔法使い「まだやってるようね」

僧侶「近くで見てみます?」

魔法使い「私の筋肉感知に反応しないから却下」

僧侶「筋肉感知…」

魔法使い「ほら、他回るからしっかり探しなさいよ」

僧侶「はい…筋肉の人筋肉の人…」キョロキョロ

『くっそー!!どこにいるんだ僧侶ちゃーん!!』

僧侶「あの人はどうでしょう?んむ…どこかで見たことある気もしますが」

魔法使い「!?きたきたきたぁ!!」

僧侶(やっぱり筋肉ムキムキの人見たら豹変しますね…)

戦士「誰だ変な声出してるのは…げぇっ!?解剖女!!」ダッ

魔法使い「前のガチムチ男?!僧侶、彼に速度低下呪文かけなさい!!」

僧侶「ほぇ?は、はい…えいっ!!」シュゴォォォ

戦士「は…ぐぎゃぁぁぁ!?」シュバァン!!

魔法使い「呪文がまったく違うけど止めたならどうでもいいわ」

魔法使い「にくにくにく…うふふ…」ジリジリ…

僧侶「魔法使いさんの動きが獲物を狙う肉食獣みたいですねぇ…」

戦士「離せ!?バカな真似はやめろ!!」

魔法使い「あぁ…鍛えぬかれた無駄のない筋肉…どんな味がするのかしら?」ペロリ

戦士「ひぃ!?」ゾゾゾ

魔法使い「汗かしら?塩辛いわね…それじゃ中身の方はどんな味かしらね…うふふ」シャキ

僧侶「…」

僧侶(助けた方がいいのかな…でもそうしたら魔法使いさん裏切ることになるし…)

魔法使い「じゃあ早速解剖するわよ!新しい世界はすぐそこ!!」

戦士「助けてくれ嬢ちゃん?!マジで殺される!?」

僧侶「ま、待ってくださいね…どちらも納得できるいい方法は…」

僧侶「そうだ!魔法使いさん待ってください!!こうしてはいかがでしょうか?」

戦士「た、助かった…」

僧侶「戦士さんの死後、自由に解剖してもいいという条件で納得してくれますよね?」

戦士「生きたままやられるよりはマシだし、それがいつになるか分からんからいいわ…」

魔法使い「本当に死んだら体をそのまま差し出すのよ?ぜ、絶対だからね?!」プルプル

戦士(やべぇ…不覚にも今の仕草が可愛いと思っちまった…)

魔法使い「あと!私が呼んだらすぐさま会いに来なさいよ!!」

戦士「わ、分かったよ…」

僧侶「定期的に触りたいのは断ってもいい気がしますよ?」

戦士「いや、いいんだ…それぐらいならな」

戦士(だってよ…こんな美人の傍にいれるというなら少しぐらいは…な)

魔法使い「しっかしあんたが別の呪文出すのはどういう原理なのかしらね?」

僧侶「さぁ?」

魔法使い「さぁ?じゃないわよ!!これはこれで問題になるわよ」

僧侶「やっと改善できそうなのにそれは嫌ですよぉ…」

魔法使い「だったら頑張りなさい」

僧侶「は、はいっ!!」

『だからナンパしてるわけじゃないっての!!』

魔法使い「またぁ?うるさいわねぇ…」

僧侶「さすがに何度も遭遇すると気になりますよね?」

魔法使い「どこのバカが騒いでるか見て黙らせてくるわ」トコトコ

魔法使い「あれのようね」

男「人の女をナンパとはいい度胸じゃねぇか!!」

賢者「だから言ってるだろ!?人探しで聞き込みしてただけだ!!」

男「だったら肩を抱く必要はあるか!?」

賢者「それは癖であってだな…落ち着け…な?」

魔法使い「ただのバカ男じゃない、無視したらよかったわ…」

賢者「お?そこの美人すぎるお姉さん助けてくれないか?!」

魔法使い「はぁ?私ぃ?」

賢者「頼むよ!お礼なら何でもするから!!」

魔法使い「ったく、仕方ないわね」

賢者「いやぁ助かったよ、ありがとう」グッ

魔法使い「そんな調子だから勘違いされるのよ」バシッ

賢者「はっはっは、こればかりはなかなか直らなくてさぁ」フリフリ

魔法使い「で?あんた誰か探してたみたいだけどいいの?」

賢者「全然良くないさ!俺に絶対必要な子だからな!!」

魔法使い「一応聞くけど、どういう人よ?」

賢者「見た目はほわほわしてて激しくドジで、超絶可愛くて癒し系で…」

魔法使い「もしかしてだけど…」

僧侶「魔法使いさーん、どうでしたかぁ?」テッテッテ

魔法使い「探し人って、コレ?」

僧侶「みぇ?」

賢者「!?僧侶ちゃん見つけたぁぁぁ!!」ガバッ

魔法使い「だからそういうのをやめろと言ってるでしょ」ガシッ

僧侶「あの…どちら様でしたっけ?」

賢者「うそだろぉ!?あんなに頑張って体質改善のお手伝いしたじゃんか!!」

僧侶「…?あぁ、賢者さんですか」

賢者「すぐ思い出してくれて嬉しいよ!!」ガバッ

魔法使い「あんたしつこいわね、やめなさい」グイ-

賢者「感動の再会を邪魔しないでくれよ、美人さーん」ジタバタ

魔法使い(大体この男の事は分かったけど僧侶は全然好意に気付いてないわね)

僧侶「でもどうしてここへ?」

賢者「もちろん再び仲間になりに来たのさ!!」

賢者「今度は条件なしだからずっと一緒にいられるよ!!」

魔法使い「気持ち悪いわね…」

賢者「あなたはマジで厳しいなぁ…」

僧侶「でも良い人ですよ?」

賢者「そだなー、俺を助けてくれたしなっ」

魔法使い「で、仲間になるなら勇者に話通した方がいいわよ」

僧侶「そうですね、今から行きましょうか?」

賢者「ま、大丈夫だろ!!この俺だぜ?」

勇者「ダメ」

賢者「まだ何も言ってないんだが!?」

勇者「また仲間にしろって言うんだろう?前科があるし、すぐには決定できない」

賢者「もう何もしねーっての!!」

勇者「じゃあ『何も』しないならいいよ」

賢者「あ…修正、酷い事はもうしないわ…」

魔法使い「この人、何やらかしたの?」

勇者「何もしてない子にひどい事をして泣かせたんだ」

魔法使い「最低ね」

賢者「あれについては反省しただろ!?もう許してくれよぉ!?」

僧侶「わざわざわたしのために来てくれたわけですし、再び仲間にしてあげれませんか?」

賢者「僧侶ちゃんが俺のために…くぅー泣ける!!」

勇者「はぁ…分かったよ、またよろしく」

賢者「ぃよっしゃぁぁぁぁぁ!!」

勇者「そのかわりちゃんと働いてくれよ…」

賢者「もちろんさ!僧侶ちゃんと頑張るぜ!!」

僧侶「はい、頑張りましょうね?」

魔法使い「あまり調子に乗らせるとあんた危険よ?」

勇者「そうだね、適当にあしらったほうがいいよ」

僧侶「ふに?」

賢者「早速だけど、また例の件を手伝おうじゃないか」

僧侶「ありがとうございます」

賢者「で、今の状態は?」

魔法使い「何とか自力で抑えることができたところよ」

賢者「あんたが答えるんかい…って、あれ?もう解決できてる?」

僧侶「でも別の問題を抱えてしまいまして…」

魔法使い「何の呪文使ってもバギになるのよ」

賢者「悪化してねぇ?!」

僧侶「えぅ…」

勇者(こっそり様子見に来たけど、今回は魔法使いさんいるし大丈夫かな?)

僧侶「どうしてなのでしょう…」

賢者「触られたり触ったりした時はもう大丈夫なんでしょ?」

僧侶「はい…」

賢者「じゃあ試しに俺に回復かけてみてくれよ」

僧侶「えっと回復呪文」ポォォォ

賢者「何だできるじゃ…って、ふぎゃぁ!?」シュゴォォォ シュバァン!!

僧侶「すみませんすみません!!」ポォォォ

賢者「あ、ちょっと待って!?さすがに今回復は…ぎぇぇぇぇぇ!?」シュゴォォォ シュバァン!!

魔法使い「さすがに連続は鬼畜ね…」

賢者「っつー…自分で回復できなかったらやばかったわ…」

僧侶「本当にすみません…」

賢者「気にしなさんなって、こうなるのは予想してたし」

魔法使い「それはフォローになってないわよ」

賢者「とにかく!まだあきらめるのは早いよ?!」

賢者「俺は最後まで突き上…付き合ってあげるから!!」

僧侶「?はい」

魔法使い「この男は本当最低な奴ね」

賢者「魔法使いさんはウソでももう少し優しい言葉かけてくれよぉ」

魔法使い「悪いけど私は言いたいことをはっきり言うの」

勇者「何か解決法見つかった?」

魔法使い「さっぱりね」

勇者「だろうね…」

僧侶「ひどいですぅ…」

賢者「ばっか!これからだっての!!」

勇者「いつかいい方法見つかるといいけどね…さぁそろそろ行こうよ?」

魔法使い「そうね、あともうちょっとだし」

僧侶(そっか…もう少し進めば旅も終わってしまうのですよね…)

僧侶(まだ勇者さまに何も伝えられていない…)

僧侶(終わるまでに必ず一言でもいいから伝えられたらいいなぁ)

旅商人「よぉ、あんたが魔法使いさんかい?」

魔法使い「そうだけど、何かしら?」

旅商人「手紙を預かってるぜ」ピッ

魔法使い「あらありがとう、誰かしら?」ペリペリ

僧侶「いつも思いますけど手紙の配達ってすごいですよね」

勇者「相手の特徴とか、ある程度の位置だけで見つけられるからね」

賢者「伝書鳩もあるけどかなりの数飼育しないといけないから維持が大変なんだよなー」

魔法使い「悪いんだけど私ちょっと離脱するわ…病院に呼ばれてるのよ」

勇者「それなら仕方ないけどいきなりだね」

僧侶「病院って…もしかしてやっぱり頭に異常が!?」

魔法使い「その言い方、何とかしなさいよ…」

魔法使い「詳しくは戻ってから説明するらしいからまだ何とも言えないわ」

僧侶「あぁ…何事もなければいいのですが…」

魔法使い「あんたが心配する事じゃないわよ」

魔法使い「じゃあ行ってくるわ…転送呪文」シュンッ

賢者「いっちまったな」

勇者「うーん…普通治ったって言うのにまた呼び出すものかなぁ?」

僧侶「おかしい事ですか?」

勇者「まぁ手紙寄越すぐらいだから何かあったんだろうけど…」

賢者「…」

勇者「このまま進んでもいいけどどうしようか?」

僧侶「戻ってくるまで待っておきませんか?」

賢者「んだな、下手したら最後に間に合わなくなるかもしれないしな」

僧侶「ここまで来たのですから最後まで一緒にいてほしいですよ…」

勇者「ふむ…よし、なら少し寄り道しようか」

勇者「そうしてる内に戻ってくるかもしれないしね」

僧侶「そうですね」

賢者「そいつはかまわねぇけどどこ行く気だ?」

勇者「宝探し」ニッ

勇者「珍しい物が隠されてる洞窟が近くにあるんだってさっき聞いてきたんだ」

勇者「ここだよここっ!!」

僧侶「勇者さま、楽しそうですね」

勇者「元々勇者になったのって色んな所を冒険できるからなんだよね」キョロキョロ

賢者「落ち着けよ…勇者よりトレジャーハンターのほうがよかったんじゃないか?」

勇者「でも、誰かのために何かしたいって気持ちが強くてね」

賢者「ふーん」

僧侶(子供みたいに無邪気な勇者さまもいいなぁ)

賢者「んじゃ早速入ってみようぜぇ」

勇者「絶対お宝見つけるぞー!!」

僧侶(勇者さまの意外な一面が見られただけでわたしはもう満足ですよ♪)

勇者「誰かいるね」

僧侶「あ、本当ですね」

賢者「若い女だな」

勇者「そこまでは薄暗くて気付かなかったよ…さすが賢者だね…」

僧侶「お宝目的の人ですかね?」

勇者「それならちょっと困るんだけどな…ねぇキミ」

??「はい?」クルリ

勇者「キミも噂聞いてここへ来たのかな?」

??「待ってた!!」ガバッ

僧侶「あぁぁぁぁぁっ!?」

勇者「え?え?」

??「きっと来るって信じてたよ勇者~」

勇者「オレを知ってるの?それよりキミは誰なの?」

??「勇者に一目惚れして追っかけはじめて数ヶ月!!キミしかいないと思った!!」

勇者「えっと…」

僧侶「ゆ、勇者さまが困っていますよ!まず離れましょうよ!?」

賢者「勇者モテるねぇ…いつも女の子ばっかり寄って来てるしさーうらやましいなぁ」ニヤニヤ

勇者「いや!そういう問題じゃないよ!?」

勇者「頼むからイチからちゃんと説明してくれよぉ…」

僧侶(何ですか…いきなり敵が湧いてくるなんて聞いてないですよ?!)

勇者「うーん、俺を慕ってくれるのはいいんだけど…」

勇者「仲間にはできないんだよ」

??「えー?三人なら一人増えてもいいじゃーん」

勇者「いや、ホントは四人なんだけど」

??「人数なんて決められてるわけじゃあるまいしー」

賢者「そういう問題じゃねぇんだよ」

勇者(まさかの賢者が助け舟を…)

賢者「遊びで来るなら帰れ、痛い目見るだけだ」

賢者「…それにしてもお前、見たことがある気がするんだが」ジロジロ

??「え、気のせいじゃない?」

賢者「どこかで見たと思うんだがなぁ…」ジー

勇者「賢者の言うように冗談で連れて行けるものじゃないんだ」

??「少しの間でいいからさぁ…お願い~」

僧侶「少しの間とかの問題でもないと思いますが…」

??「うるさいよバーカッ!!黙っててよチンチクリン!!」

僧侶「チ、チンチクリン…」ガーン

賢者「その子はチンチクリンじゃないぞ、おい」ゴゴゴ…

??「あんたも黙ってろー!!」

勇者「キミも一度静かにしてくれ…」

賢者「…まさか」

賢者「勇者、悪いけどしばらくここで宝探ししててくれ!!」ダッ

勇者「どこ行くんだよ!?」

賢者「すぐ戻るからよー!!」タタタッ

僧侶「何があったんでしょう?」

??「(ニヤ、邪魔者が一人いなくなった…)勇者~連れてって~」ギュー

僧侶「だから勇者さまが…」

勇者「あぁもう!!離れて!!」バッ

??「うわっ!?」ドテッ

勇者「もう、何なんだよ!?」

僧侶「勇者さま落ちついて…」

勇者「僧侶…」

僧侶「はい」

??「どうしたの?そんな子放っておいて宝探そうよ?」グイグイ

勇者「きっと不満だろうけど、しばらくこの子を連れていっていいかい?」

僧侶「か、かまいませんが…」

僧侶(嫌ですよ!!勇者さまにベタベタするしバカにしてくるし!?)

??「いいの?やったぁ!!あたし踊り子!よろしくね!!」

勇者「あくまでここにいる間だけだからね…賢者戻ってきたらどうなるか分からないし…」

踊り子「はいはーい!!」

僧侶(何だかこの子、普通と違う嫌な感じがします…)

踊り子「ねぇ、勇者って童貞?」

勇者「はぁ!?君は何を言ってるんだ!!」

踊り子「この反応はそうなんだな~?」

勇者「知らないよ!!」

踊り子「反応がいちいちかわいいなぁ」

僧侶「勇者さまをからかうのはやめてあげてください」

踊り子「はぁ?あんたに関係ないんだから黙っててよ!!」

勇者「そんな言い方はないだろう…」

踊り子「あ、ごめんね勇者~」

僧侶(好きな人が困ってるのに関係ないわけないじゃないですか!!)ギギギ

勇者「うーん、宝ってどんな物なんだろうな…」ウロウロ

踊り子「勇者~?お~い…」

踊り子「聞こえてないのかなぁ…」

僧侶「集中すると周りを気にしないことがありますからね、勇者さまは」

踊り子「…何?自分の方が勇者に詳しいですよって?」

僧侶「あなたより詳しいつもりですが何か?」

踊り子「うわぁ、このバカ女ムカツクわぁ…」

僧侶「お願いですから勇者さまの邪魔をしないでくれますか?」

踊り子「あたしがいつ邪魔したのさ?」

踊り子「適当言わないでほしいわ~」

僧侶「あなたの旅の目的って何ですか?」

僧侶「今は息抜きのためにここへ来ていますが、わたし達には重大な目的があるんです」

踊り子「魔王倒しにでしょ?なーにが重大な目的だよ」

踊り子「それこそ大したことないじゃん」

僧侶「なっ…」

踊り子「どうせ勇者だってそこまで思ってないっての」

踊り子「裏で自分をいかにいい人演じられるか常に考えてるんだよ」

僧侶「それが事実だとして、あなたは何で勇者さまに近づいたのですか?」

踊り子「だって顔も体型もいけてるじゃん?頭も良さそうだしー」

僧侶(うわぁ…予想以上に最低な人でした…)

踊り子「と・に・か・く!関係ないあんたは黙っててよ」

僧侶(関係ないと言えばウソになるけどこればかりは…)

僧侶(自分で勇者さまに伝えたいですから…でも…)

踊り子「勇者はあたしのものだから」

僧侶「勇者さまにだって選ぶ権利はありますよ?」

僧侶(こんな人になんか渡してなるものですか?!負けない!!)

踊り子「!?黙ってろって言ってるでしょ!!」バシッ

僧侶「っ!!…お断りします」ギッ

踊り子「このっ!!」バシッバシッ!!

僧侶「今のわたしに触れると抑えられなくなりますよ…コレだけは…!!」シュゴォォォ

踊り子「いたぁぁぁ!?」シュバァン!!

踊り子「うぅ、今の何…」

僧侶「すみません、わたし条件次第で勝手にバギしてしまうのです」

踊り子「そ、そんな分かりやすいウソつかないでよ!?バカにしてるの?!」

勇者「やめないか!?何があったんだい?」グイッ

僧侶「ちょっとワケあって彼女と接触してしまい、ついバギを…」

勇者「あー…」

踊り子「え?!納得してるけどウソじゃないの!?」

勇者「冗談みたいだけど本当みたいなんだよ」

僧侶(叩かれた分は余るぐらいにして返してやりましたよ!すごく痛かったけど…)ジワ…

踊り子「こんな危ない人さっさと別れたほうがいいよ?!」

僧侶「…」

勇者「彼女は何も好き好んでこんな体質してるわけじゃない」

勇者「これぐらいで別れたりしたらかわいそうだろう」

踊り子「でもでもっ!!」

勇者「どうしてもイヤだと言うならキミとはここまでになるけど?」

踊り子「う…」

僧侶「さっきのはわたしが注意する前に触ってしまったわけですから…」

僧侶「ほら、宝探し続けましょう?」

勇者「うん…」

踊り子「…本当に注意する気あった?」

僧侶「さぁ?どうでしょうね?信じてくれそうもなかったですし?」

踊り子「ホントムカツクわ、このバカ女…」タッタッタ

僧侶(絶対負けたりしませんよ)ニコ

踊り子「ねぇねぇ」グイグイ

勇者「なに?」

踊り子「勇者、好きな人っている?」

勇者「いきなりだね…いないけど」

踊り子「じゃあさ!あたしと付き合わない?ううん、付き合って!!」

僧侶(何てストレートな!?勇者さまの答えは…?!)

勇者「悪いけど…」

踊り子「何で?付き合ってる人いないんでしょ?」

勇者「いないけど…でも…」

踊り子「もしかして気になる人いるの!?まさか、そこのバカ女?!」

僧侶「…」

勇者「いやいや、何でそうなるんだよ…」

勇者「あと人をむやみにバカ呼ばわりするのは感心しないな」

踊り子「あ、ごめんねぇ」

僧侶(怒られてる…くすくす)

僧侶(勇者さまって気になる人いたりするのかな…何だか返事が曖昧だったけど…)

勇者「…ここまでか」

僧侶「はい?」

勇者「悪いんだけどやっぱりキミとはここまでだ」

踊り子「え?」

勇者「さっき僧侶は自分が触ったからと言ってたけど…」

勇者「先に触った…叩いたのはキミだろう?」

踊り子「ちが…」

勇者「気づかないフリしておこうかと思ったけど我慢できなかった」

勇者「僧侶は繊細な子でね、けっこう傷付きやすいんだ」

勇者「無闇に仲間を傷付けるような人にいてほしくない」

踊り子「違うよ!?」

踊り子「この子があたしをバカにするから!!」

僧侶(何か言ってもいいけど…勝手にしゃべって自爆してるんですよねこの人)

勇者「バカにしたからと手をあげたの?」

踊り子「!!だから違…」

勇者「その反応だけで十分だよ」

勇者「仲間を傷付ける人もウソをつく人も嫌いなんだよオレは」

踊り子「ぅ…」

ザッザッザッ

勇者「誰か来たみたいだ…」

僧侶「あれ?」

賢者「おいすー、修羅場ってるかい?」

勇者「賢者だったのか…早かったね」

賢者「だから言ったじゃないか、すぐ戻るって」

賢者「さすが勇者、もうソイツの化けの皮剥がしたのか」

踊り子「…」

勇者「化けの皮って…」

賢者「ダメ人間だってもう分かってるんだろ?」

賢者「俺が出てったのはソイツの素性調べるためだったんだよ」

勇者「そういえば見たことがあるみたいな事言ってたね」

賢者「うん、まぁ…俺もこんな所で会うなんてびっくりだったけどな」

賢者「ちょっと質問に答えてくれよ、嬢ちゃん」

踊り子「何よ?」

賢者「正直に答えないとおしおきだべー」ワキワキ

賢者「ゴホン…まずは出身地はここから遥か西の島国だよな?」

踊り子「…何でそんなの分かるの?」

賢者「そっちの質問には答えませんのでーあしからずー」

踊り子「くっ…」

賢者「で、親がかなりの富豪だ」

踊り子「そ、そうだよ…」

賢者「で、次が最後の質問な」

賢者「兄弟がいるな?」

踊り子「いない…」

賢者「予想通りの答えだな、全部事実か?」

踊り子「正直に言えって言ったじゃん…」

賢者「うん、確かにすべて事実であるけど間違いがあるのさ」

勇者(賢者はどうやって彼女の事を調べたんだろうね?)

僧侶(さぁ?)

踊り子「じゃあ何が間違いだって言うの?」

賢者「さすがに物心すらついてない頃にしか会ってないから分からなかったかマイシスター」

踊り子「は…?」

賢者「は?じゃねぇよ、わざわざ実家に突撃してお前の事無理矢理聞いてきたんだよ」

賢者「俺の存在はあのクズ親が最初からいなかった事にしてると思ってたがな」

勇者「えっと…家庭の事情には口を挟まないけど…」

勇者「結局、オレ達にはもう関係ない話?」

賢者「あーいや、先に今までの事説明しとくわ」

賢者「コイツは勇者のためだけに手の込んだ真似してくれたんだよ」

僧侶「どういう事です?」

賢者「簡単に言うと誘導されて俺達はここに来てるんだわ」

賢者「もう出てきていいよー」

魔法使い「早く出しなさいよね」ザッ

僧侶「あれ?魔法使いさんは病院に行ったはずじゃ?」

賢者「あれはウソの手紙だったのさ」

賢者「コイツがわざわざ調べて、本物っぽく手ぇ加えて彼女に送ったものさ」

踊り子「…」プルプル

魔法使い「私ですら彼に真相聞くまで本物だと信じて疑わなかったぐらいよ」

魔法使い「よく怪我した事まで知ってたわね?」

賢者「もしかしたらこっそり覗いてたかもしれない…な?」

踊り子「…」ギリ…

勇者「それはそれですごい執念を感じるけど…」

賢者「で、三人になった俺らが待つために寄り道する事まで想定してやがった」

賢者「勇者がお宝の話聞いたの信用できるところからだよな?」

勇者「うん、確かな筋からの情報だと思ったんだけど…」

賢者「金掴ますかなりして事前に懐柔してウソ情報言わせてたのさ」

賢者「何も気づかなけりゃ俺や僧侶ちゃんもその内どこかに行かされてたんじゃないだろうか」

僧侶「じゃあ本当の事って…」

賢者「勇者を待ってたってことぐらいかな」

賢者「ぜーんぶ自分の都合だけでここまでやらかしたんだよ」

賢者「つまらねぇ事によくここまで知恵働かせたもんだ」

僧侶(嫌な感じしてたのはあながち間違いではなかったんですね…)

賢者「で、反論は?」

踊り子「あなたが兄ってウソでしょ…?」

賢者「バカ親がいない事にしてやがったらしいけど、正真正銘血の繋がった兄妹だ」

踊り子「それならあたしの味方をしてくれても!?」

賢者「お前がまともな生き方していたらなー」

僧侶「賢者さん…」

賢者「ウチの問題だから同情も何もしなくていいよ…勇者も悪かったな」

勇者「かまわないけど…」

魔法使い「でも私は許さないわよ…」ゴゴゴ

賢者「わーお、無駄な労力使わされたから怒ってらっしゃる…あなたも落ち着いてよー」

賢者「真面目な話、あの親に何も期待するな」

賢者「子供を地位と名誉のための道具にしか見ていない」

勇者「それを知った上でキミは冒険者になったんだね?」

賢者「そゆこと、あんな家いたらお先真っ暗の操り人形になっちまう」

踊り子「ホントは分かっていたんだ…二人ともあたし自身を見てないって…」

賢者「だったらもう帰るな、クズ親の言いなりはもうやめろ」

賢者「自分の好きに生きていくといいさ」

賢者「頼る人間がいなくて不安なら俺が何とかしてやる」

踊り子「お兄…ちゃん…」

魔法使い「本当、ただの変態かと思ったら真面目な事も言えたのねこの男」

勇者「結局、オレ選んだのはそういう事だったのか」

賢者「全般なレベルの高い信頼のある伴侶を探せとでも言われてたんだろ」

魔法使い「自分の伴侶ぐらい自由にさせろって感じね」

僧侶「そうですね…これからは何もかも自由に暮らしていければいいですけどね」

賢者「クズ親にアイツの縁も切らせてもらってきたから大丈夫だと思うけどね」

僧侶「でも一人にさせていいのですか?」

賢者「一応頼れる場所教えたから、これからの人生はそこでアイツが決めるさ」

賢者「それにしても僧侶ちゃんは優しいのぉ」

勇者「あれだけひどい事言われたりしてたのにね」

僧侶「あの子自身が悪かったわけじゃないですし…また会ったら友達になってくれないかな?」

賢者「しばらく考える時間も必要だし放っておいていいさ」

賢者「何かありゃ俺が手を貸してやりゃいい」

魔法使い「シスコン?」ジトー

賢者「そんな目で俺見るのやめてくれない!?あいつの存在自体忘れてたんだぜ!!」

勇者「それよりお宝…」ショボーン

魔法使い「勇者がしっかり落ち込んでるけど?」

僧侶「宝探しできなくなりましたからねぇ」

賢者「いいや、あったぞ」スッ

賢者「なーんちゃって、家からパクってきてやった宝石だけどなー」

勇者「ちょっと期待したオレのワクワク感返してくれ?!」

賢者「なぁなぁ、思ったんだけどさー」

勇者「なに?」

賢者「俺だけ家の事知られてるのは不公平だと思わないか?」

魔法使い「思わない、人の事知っても面白くないわよ」

賢者「君は相変わらずバッサリなのね…でも気にならね?」

僧侶「少しは…」

僧侶(と・く・に!勇者さまの事が気になります!!)

勇者「オレは別に言ってもいいけど他の人は…」

魔法使い「別に悪い事してるわけでもないし問題ないわ」

僧侶「わたしもかまいませんよ?」

賢者「よっしゃ、じゃあ始めは勇者からな?」

勇者「分かったよ、俺の家は何の変哲もない普通の家庭だったね」

勇者「普通に育って普通に勇者になったよ」

魔法使い「予想通り、全然面白くなかったわね」

勇者「そんな事言われても…」

僧侶「いいじゃないですか、普通なのは悪い事じゃないですよ」

僧侶(わたしにとって勇者さまは普通ではなく『特別』ですからっ)

勇者「そう?ありがとう」

賢者「じゃあ次は魔法使いさん?」

魔法使い「仕方ないわね」

魔法使い「家は上流階級の家庭だったわ」

勇者「話し方からして何となくそういう雰囲気は出てたけどね」

魔法使い「誰からもちやほやされる生活は退屈でたまらなかったわ」

賢者「だから逆にひねくれてしまったんだね」

魔法使い「呪文ぶつけられたいの?」ゴゴゴ…

賢者「うへ、すいましぇ~ん」

魔法使い「まぁあんたのところと比べたらまともだったけど嫌気が差してさっさと家出たのよ」

僧侶「魔法使いさんも色々大変だったんですねぇ」

魔法使い「私の話は終わりよ、次はあなたね」

僧侶「あ、はい…お話しますね」

僧侶「わたしは教会で暮らしていました」

僧侶「神父様と二人でしたけど不満もなく充実した日々を過ごせていました」

賢者「神父『様』って親じゃないのかい?」

僧侶「わたし、赤ん坊の頃に教会前に捨てられていたらしいのですよ」

賢者「マジか…」

僧侶「でもわたしにとって神父様は大切な家族でした」

勇者「神父さんが良い人でよかったね」

僧侶「はい、おかげでわたしはこうして生きていられるわけですしね」

魔法使い「あんた今、聞くんじゃなかったって思ってるでしょ?」

賢者「そりゃねぇ…そんな重い過去あるなんて思わないよー…」

僧侶「でも賢者さんの所はご両親に…」

賢者「これでも産んでくれたのには感謝してるんだぜ?」

賢者「じゃないと僧侶ちゃんに会えなかったかもしれないしー」ガバッ

魔法使い「ある意味、道踏み外してると思うけど?」ガシッ

賢者「いつも思ってたけど何で邪魔するんだよぉ?」

魔法使い「よく分からないけどその子を放っておけないのよ」

勇者「魔法使いさんは優しい人だね」

魔法使い「鳥の雛が地面でもがいていたら普通無視できないでしょ?それと同じよっ!!」プイッ

賢者「ツンデレ乙ー」

僧侶(やっぱり魔法使いさん選んでよかったと思っている自分がいます)ニコ

勇者「この山超えればついに見えてくるのか…」

賢者「まぁ俺達なら余裕で魔王なんて倒せるっしょ、ねー?」

僧侶「そうですね」

魔法使い「油断は禁物よ、特にあんた」

僧侶「な、何故ですか!?」

魔法使い「何故も何も、今までの事例がありすぎて言うのも面倒よ」

僧侶「ぁう」

勇者「…」

賢者「どうした勇者?」

勇者「いや、何でも…進もうか」

魔物「キィ!!」バッサバッサ

勇者「くそ…空飛ばれると攻撃がしにくいな…」

賢者「そんな時こそ俺達の出番だろ!!そいやぁ!!」ボワッ!!

魔法使い「そうね、そのための呪文でもあるし」カキーン!!

僧侶「わ、わたしだって!!バギクロス!!」シュゴォォォ

勇者「ちょ…それ使ったら…」

三人「「「ぎゃあぁぁぁぁ!?」」」シュバァン!!

魔物「ギヒィ!?」シュバァン!!

僧侶「やった!!倒しましたよ…あれ?」

魔法使い「とうとう全員にやるようになったわねあんた…うっ…」ガクリ

僧侶「…」

勇者「その土下座もいい加減やめなって…」

魔法使い「普通にバギ使ったら全体化するのは気付かなかったわ…やる機会なかったし」

賢者「でも制御できるようになったんだろ?ならバギ自体使わなけりゃいい話じゃん」

魔法使い「触った時のバギ止める事はできても他の呪文使ったらバギになるのよ?」

賢者「うーん、さすがにこれは……詰み?」

僧侶「そんなぁ!?」

勇者「僧侶、どんな呪文もイメージを崩さず使ってるの?」

僧侶「もちろんですよぉ…」

賢者「…なぁ、とんでもない結論に至ったけど聞いてくれね?」

勇者「いいけど何?」

賢者「バギ止める為に別のモンのイメージ変換して止めれたんだろ?」

賢者「この子まさか全部バギでイメージ固めてしまってるんじゃねぇか?」

魔法使い「『別の呪文』を無意識の内に『バギ』にしてるって事?」

賢者「そうそう、多分だけどなー」

魔法使い「だとしたら相当ややこしい思考回路してるわよこの子…」

僧侶「い、言ってる意味があまり分からなかったのですけど…」

魔法使い「簡単に言えば『何をやっても無駄』という事よ」

魔法使い「あんたの頭脳が異常だから」

僧侶「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!??!」

勇者「理解はできたけどどうにかしてあげられないかな?」

賢者「してあげたいのは山々なんだけどなぁ…」

魔法使い「これは難解なパズル解くより難しい事よ…」

僧侶「ど、どうにかしてくださいよぉ?!」

魔法使い「…どうにかしろ?」ギロリ

僧侶「お、お願いします…迷惑ばかりかけるわたしに救いの手を…」ビクビク

勇者「…オレにバギ以外をしてくれ」

僧侶「えっ!?」

勇者「そのしている瞬間を二人に見てもらっておかしな点を見つけてもらおう」

勇者「何か解決策が見つかるかもしれない」

魔法使い「あなた正気?」

賢者「バギを耐えるつもりかよ…」

勇者「方法がないから仕方ないじゃないか」

勇者「オレなら気にしなくてもいいから、ね?」

僧侶「しかし…」

僧侶(わたしのために体を張ってくれるのはすごく嬉しいけど…)

賢者「そこまでしてくれるならやるしかないよ、僧侶ちゃん」

魔法使い「彼の好意を無にする気?」

僧侶「…そうですね、分かりました」

僧侶「勇者さま!ごめんなさい!!」シュゴォォォ

勇者「くぅ…」ドサッ

賢者「ダメだな…何も見つからねぇ」

魔法使い「もうこれはやめたほうがいいわね…」

僧侶「はぁはぁ…そ、そんな…」

賢者「勇者の体も限界だしな…ほれ」ポォォォ

勇者「ありがと…」

勇者「僧侶…ごめん…」

僧侶「えぇ!?何で勇者さまが土下座するのですか!?」

勇者「ここまでさせたのに何も解決させれなかったから…」

僧侶「勇者さま…」

僧侶「いいんです」

勇者「僧侶…」

僧侶「こんなわたしのために体まで張ってくれただけで十分なんです」

僧侶「これから足手まといになるかもしれないけど」

僧侶「呪文なしでも武器使って頑張りますから!!」

魔法使い「いいんじゃない?ちょうど私達が呪文使える事だし」

賢者「僧侶ちゃんの分まで頑張るさ」

僧侶「二人ともすみませんがお願いします…」ペコリ

僧侶「ほら、行きましょう?」

勇者「うん…」

勇者「はっ!!」ズバッ

賢者「はいさいならー」ドガッ!!

魔法使い「ちょっと!後ろにきたわよ!?」

僧侶「おまかせください!!やっ!!」シュッ

魔物「ゴェ…」ズシャッ!! ドサリ

魔法使い「あんた、攻撃当てれるようになったじゃない」

僧侶「ただでさえ役立たずなんですから本気出しますよ!!」

魔法使い「その言い方だと今まで手を抜いていたって事になるわよね?」

僧侶「えわ!?もももちろん今までだって本気でしたよ?!」

賢者「慌ててる僧侶ちゃんかーわいっ」

賢者「うほー、魔王城がこの町から見えてるぜ」

僧侶「思ったより怖そうな所に見えませんね」

魔法使い「怖いとかそういう問題じゃないでしょ」

勇者「みんな、宿屋まで行くからついてきて」

僧侶「あ、はい」

賢者「とうとう最後の宿か」

魔法使い「どう考えてもこの先、休める場所はなさそうね」

勇者「はは、さすがに小休憩はしたりするけどね」

僧侶「どんな宿屋なんでしょうか?ふかふかベッドだといいなぁ」

勇者「…」

勇者「僧侶いる?」ガチャ

僧侶「はい?何でしょう」

魔法使い「ノックぐらいしなさいよ…女性の部屋よ?」

勇者「ごめんごめん、それでちょっと出てきてもらっていいかな?」

僧侶「いいですけど…」テコテコ

魔法使い「こんな時間に呼び出しなんて珍しいわね」

勇者「急に話さないといけないことできたからね」

僧侶「では出ましょうか」

勇者「うん」バタン

魔法使い「何があったのかしら…」

賢者「おい勇者ー、まだポーカーの勝負は終わってないぞー」ピラピラ

勇者「ごめんよ、今ちょっと用事あるからできないんだ」

賢者「えー、ここまでやってやめるとか白けるぞ…って僧侶ちゃんどうしたの?」

僧侶「何か勇者さまが話があるとかで…」

賢者「そうなの?」

勇者「ちょっと真面目な話だから邪魔しに来ないでくれよ」

賢者「はーいよ」

勇者「じゃあ外に出ようか」

僧侶「はい」

賢者「…アイツらしくない、険しい顔してやがったな」

勇者「ここでいいかな」

僧侶「わ…風が気持ちいい…」ヒュゥゥゥ

勇者「ねぇ、僧侶?」

僧侶「はい」

僧侶(いきなり呼び出されましたけど何の話でしょう?)

勇者「キミはこの旅で何か得られたものはあったかい?」

僧侶「もちろんですよ」

僧侶「勇者さまや他の人達…色々な人に出会えましたし」

僧侶「旅に出る前より様々な事を知ることもできました」

勇者「そっか意味があってよかった」

僧侶「でも何故突然そんな話を?」

勇者「もう最後だしね、聞いてみたくなったんだよ」

僧侶「そうですか…」

僧侶(よく考えたらすごく久しぶりに勇者さまと二人きりです…)ドキドキ

僧侶(この時を待っていました!!今なら言えそうです!!)

僧侶「あの、わたし…」

勇者「でもね…下手すればもう話す事もなくなるかもしれないからなんだよね…」

僧侶「ふぇ…?今なんて…?」

勇者「僧侶、悪いんだけど…」

勇者「ここでキミにパーティを離脱してほしい」

僧侶「え?」

勇者「…」

僧侶「勇者さまって冗談言う人でしたっけ?」

僧侶「そんな顔されたってさすがにわたしでもウソだって分かりますよぉ」

僧侶「えへへ、だって勇者さまはそんな…」

勇者「冗談なんかじゃないんだ」

僧侶「ひどい事…言う人じゃ…」

勇者「真剣に話を聞いてくれ」

僧侶「ぁ…」

僧侶(この目をしてる時の勇者さまは……本気だ)

僧侶「何故…ですか?」

勇者「一番の理由は呪文…バギの件だね」

勇者「使わないとは言ったけれど何かの拍子に使う事があるかもしれない」

勇者「でもこれより先は冗談で済ますことができない状況になる」

僧侶「つまり…邪魔…だと?」

勇者「…」コクリ

僧侶「ぜ、絶対呪文は使いませんのでそんな事言わないでください!!」

勇者「ごめん…これでも精一杯考えて出した結論なんだ…」

僧侶「な…」

僧侶「納得いきません!!」

勇者「なら聞くよ、僧侶」

勇者「混戦になった時、キミが偶然誰かに触ったりしてついバギしてしまったらどうなると思う?」

僧侶「え…そ、それは…」

勇者「何もかもがギリギリの状況でそんな無駄なダメージが許されると思うかい?」

僧侶「…」

僧侶「そんな事言われたら反論できないじゃないですか…」

勇者「こんな卑怯な事言いたくなかったけど仕方ないんだ…」

僧侶「じゃあここで別れてくれと?」

勇者「できたらそれがいいね、この先から一人で引き返すのは大変だろうし」

僧侶(もう…何を言っても無駄なのかも…しれませんね…)

僧侶「分かり…ました…」

勇者「ごめんね、ここまで来させておいて」

僧侶「仕方ないと思います…」

僧侶「あの二人には?」

勇者「キミが出て行ってから言うつもりだよ」

勇者「きっとすぐ納得してくれそうもないだろうしね」

勇者「いなくなった後だし殴られるかもしれないなぁ…でも我慢しなくちゃ…」

僧侶「あの…一つだけ約束してください」

勇者「うん?」

僧侶「絶対みんなで無事に帰ってきてください」

勇者「分かったよ、約束しよう」

僧侶「それでは荷物をまとめてきますので…」

勇者「キミと一緒に旅できてすごく楽しかった」ニッ

勇者「こんなオレと一番長くいてくれたしね」

僧侶「こんな時に…卑怯ですよ…」ボソ

勇者「え?」

僧侶「何でもありません…では」ペコリ

勇者「ごめん…」グッ

僧侶(そんな顔されても…わたしは…わたしは?!)

僧侶「うぅ…」ダッ

魔法使い「あら?どうしたの、そんな顔して」

僧侶「何でもありませんよ…」ゴソゴソ

魔法使い「そう?」

僧侶「ちょっと外に出てきますね」グイッ

魔法使い「えぇ…あ、ちょっと待ちなさい」

僧侶「…お元気で」ボソ バタン

魔法使い「…今なんて言ったあの子?」

魔法使い「荷物まで持ってどこに行く気なの…」

魔法使い(勇者に話を聞いてみましょう)

魔法使い(これはちょっとただ事じゃないわよ…)

僧侶「はぁ…」

僧侶「何だかあっさり旅が終わっちゃった…」

僧侶「こんな事になるなんて思いませんでしたし…」

僧侶「しょうがないかな…」

僧侶「…しょうがない?」

僧侶「すべての原因はこの体質ですよね」グッ

僧侶「この体質のせいでみんなに迷惑をかけ続けて…」

僧侶「どうして…わたしがこんな目に合わないといけないのでしょう…」

僧侶「神様…どうしてわたしなんですか…?」

僧侶「どうしてわたしにこんな真似ばかりするのですか!?」

僧侶「生まれてからすぐに捨てられた!!」

僧侶「そして旅に出るとこうしてまた捨てられた!!」

僧侶「わたしはそんなに必要ないものか!?」

僧侶「いらないなら最初から生み出さないでほしい!!」

僧侶「バカにするのも大概にしてよぉ!?」バンッ!! ガラガラ…

僧侶「はぁはぁ…荷物ばら撒いちゃった…最後までドジしちゃった…」ゴソゴソ

僧侶「結局、どこにいてもわたしはいらない子なんですね…」

僧侶「でもそれでも死ぬつもりはないです…」

僧侶「生きている者ですから…ね?神父様…」

僧侶「…」テコテコ

僧侶「ふぅ…この先は崖ですね」

僧侶「あ、ここの景色綺麗…」

僧侶「…」ジワ…

僧侶「ダメダメ!こんな所にいたら!!」ブンブン

僧侶「早く誰にも見つからないところまで行こう…」テコテコ

僧侶「もう全部忘れちゃおう…」テコテコ

僧侶(何かと面白かった賢者さんも…怒りっぽいけど優しかった魔法使いさんも…)

僧侶(特別だと思っていた勇者さま…も…)

僧侶「ぐす…ひっく…」テコテコ…ピタッ

僧侶「ぅわぁぁぁぁぁぁぁ…」ポロポロポロ

僧侶「好きだったのにぃぃぃ…」

僧侶「何も言えなかったよぉぉぉ…」

僧侶「忘れたくないよぉぉぉ…」

僧侶「ぬくもりがほしかったよぉぉぉ…」

僧侶「でももう…会う事も…ひっく…」

僧侶(もう…思い出さないように…全部涙に流してしまおう…)

僧侶(そうすればきっと忘れられるから…)

僧侶(楽しかった思い出も全部全部真っ白に…)

僧侶(そうじゃないとずっと泣いてしまうから…)

僧侶「ぐす…さよなら…わたしの…大切な…」テコテコ…

 こうしてわたしの旅は終わった

 思えば迷惑ばかりで何もできてなかった気もする

 でも、もう思い出す必要はない

 すべて記憶から消してしまうのだから

 そう…嵐のようにすべてを飛ばしてしまうのだ

 巻き込んで、飛ばして、それで終わり

 残されたものは何もない

 空っぽの空間だけ

 そうなるようにわたしは見知らぬ土地でひっそりと生きていく

 もう何も思い出せぬよう…ずっと――

僧侶「そういえば」

僧侶「わたし帰る場所ないんだった…どうしよう」

僧侶「色々渡り歩くにもお金がないからすぐ行き詰っちゃうし…」

僧侶「魔物退治のお仕事とかしようかな」

僧侶「あーでも呪文使ったら暴走しちゃうから難しいかなぁ」

僧侶「でも人がいなかったら使えるんじゃ…?」

僧侶「ちょっと試しに…バギ」ヒョォォォ

僧侶「あ、普通に使えるよ…ぎゃふぅ!?」バシュン!!

僧侶「じ、自分に返ってくるのは初めてでしたね…回復呪文を…」ポォ…ヒョォォォ

僧侶「にょほぉ!?」バシュン!!

僧侶「うぅ…何やっても自分に返ってきちゃいますぅ」

僧侶「対象がいないからなのかな?」

僧侶「わたし頭悪いからよく分かりません…」

僧侶「こんなとき魔法使いさんか賢者さんがいれば…」

僧侶「!?…ふぐっ」バッ

僧侶「もう思い出しちゃダメ…忘れるんだ…」

僧侶「ここまでわたしは『一人で』旅を続けていたんだ」

僧侶「誰とも一緒にいたことはないんです」グッ

僧侶「神父様と別れてからずっと一人…」ジワ…

僧侶「一人だったんだ!!一人!!」ブンブンブン!!

??「どうなされたのですか?」

僧侶「はわ!?」

??「なんだか泣いていたようですが…」

僧侶(み、見られていた!?恥ずかしいです…)

??「えっと、冒険者の方ですか?」

僧侶「え?!いえ…あ、はい…」

??「どっちですか…」

僧侶「現在は仕事…と、住む場所を探しているのですけど…」

??「あら、じゃあうちの学校にいらっしゃい」

??「人手不足で困っていたの」

僧侶「強引に連れて来させられました…ここがこれから住むところかぁ」

僧侶「住む所だけでなく、お仕事までもらえるとは思いませんでした」

僧侶「先生にはすごく感謝しています」

僧侶「明日から頑張らなきゃ!!」

子供「おねぇちゃん?」ガチャ

僧侶「にゃっ!?な、なんですか…?」

子供「新しい人だよね」

僧侶「そうですよ、これからよろしくお願いしますね」ニコ

子供「えへへ、よろしく~」

僧侶(子供達に囲まれて楽しく生活をしていればいつか過去の事も…)

僧侶「皆さん、ここが教会の中ですよ」

子供達「きゃっきゃ」

僧侶「あぁ、そんなに走り回ったらダメですよぉ…」

僧侶「ここは神様がいらっしゃる場所なのでお静かに…ね?」

少女「おねぇちゃん、ホントに神様っているの?」

僧侶「えぇ、わたしもお会いした事はないですけどね」

僧侶「でも信じる人にはきっと神様も優しくしてくれますよ」

少女「そうなんだ、じゃああたしも信じるー」

僧侶「ここでは神様に聞いてもらえるようお祈りをするのですよ、こうして」スッ

僧侶「神様…幼いこの子達に幸せな未来を…」

少年1「おねーちゃんおねーちゃん」

僧侶「はい?なんですか?」

少年1「結婚しようよ!!」

僧侶「え、えぇぇぇぇ!?」

少年2「ばっか、オレとするんだよ!ねー?」

少年3「ダメですよ、こういうのは順序というものがあるんですよ」

少年3「まずボクとデートしましょう、おねえさん」

僧侶「えとえとえと…」

僧侶(どうしてかは分かりませんが…)

僧侶(どこへ行っても子供大人関係なしに男性がわたしに近寄ってくるんですけど何故…)

少女「もぉ!みんなおねぇちゃん困ってるじゃない!!」

少年2「うるせーブス!!」

少年1「だっておねーちゃん見てたら放っておけないんだもん」

少年3「守ってあげたくなるんですよね」

僧侶「あ、あはは…」

少年4「…」ガチャ タタッ

僧侶「慌ててどうしたのですか?」

少年4「…」モゾモゾ

僧侶「ひゃ!?ス、スカートに潜り込まないでぇ~」グググ

僧侶「!?」ヒョォォォ

僧侶「は、離れて!?」グイッ

少年4「!!」ブンブン

僧侶(この子にバギしちゃう…そんなのダメ!!)

僧侶(そうだ!!自分で抑えれば…バギじゃないイメージを…)

僧侶「…収まった」ヒョォ…

僧侶(特訓がこんな時に役立つなんて…それにまたあの時の事思い出してしまった…)

少年4「…」プルプル

僧侶「震えているけどどうしました?」

少年4「外に…」

少年4「バケモノが…」

僧侶「え」

少年4「怖い…」ガタガタ

僧侶「…大丈夫ですよ、わたしが君達を守りますから」ニコ

僧侶「みんなここから出ないで」ガチャ バターン

少女「おねぇちゃん?」

僧侶「…」

魔物「グルルル…」ウロウロ

僧侶「どこから入ってきたのでしょう…」

僧侶「先生も出かけていていないし…」

僧侶「わたしがみんなを守らなきゃ!!」

魔物「ガァ!!」ダッ

僧侶「何か武器になる物は…」キョロキョロ

僧侶「影に何か棒みたいなのが!!」グイッ

僧侶「ホウキ…」

魔物「ガフッ!!」ガバッ

僧侶「もうこれでいいや!!えぇい!!」ブゥン

魔物「ギャン!!」バシッ!! ドシャ

僧侶(でもこれじゃ倒す事はできません…どうすれば…)

僧侶「倒すにはこれしか!!」シュゴォォォ

僧侶「バギクロス!!」バッ

僧侶「うぐぅ!?」シュバァン!!

僧侶「やっぱり…自分に…うぅ」

魔物「ウゥ…」ウロウロ

僧侶「でも負けない!!バギクロス!!」シュゴォォォ

僧侶「ふぁっ!?」シュバァン!!

僧侶「ぁ…ぅ…」ドサッ

僧侶(やっぱりわたしの呪文は役に立たないのかな…)

魔物「ガァァァァ!!」バッ

僧侶「!?」

僧侶(しまった、逃げられなかった)

少年1「おねーちゃんが危ないよ!!」

少女「助けなきゃ?!」

少年2「でもどうするんだよ!?おれ達じゃ何もできないぜ!!」

少年3「誰か助けを呼ぶしかないです…」

少女「裏からお外に出よう!!」ダッ

少年4「待って…」

少年2「人人…あ!あそこに知らないにいちゃんいるぞ!!」

少年1「剣持ってるし助けてくれそう!!」

少女「そこのおにぃさん!!おねぇちゃんを助けて!!」

魔物「ガァ!!ガァ!!」ガチンガチン

僧侶「くっ…やめ…」グイグイ

僧侶(どうかわたしを…みんなを守って!!)



僧侶「バ ギ ク ロ ス ! !」シュゴォォォォォ



魔物「ギャヒィィィン!?」シュバァン!! ドサッ

僧侶「…ちゃんと出せた」

魔物「グルルル…ガァァァァァ!!」ダダッ

僧侶「!?」

魔物「ガ…」ドサッ

僧侶「え?」

??「どうしていつも何かした後油断しちゃうかな…」キン

??「子供達に助け求められたから慌てて来たんだけど…」

僧侶「あの子達が…ありがとうご…」クルッ

??「でも会えてよかった」

僧侶「え…」

??「まだオレの事覚えててくれてるかな?」

勇者「僧侶」

僧侶(勇者さま…何故ここに…)

勇者「ずっと探していた」

僧侶「…」

少年1「誰?おねーちゃんの彼氏?」

少年2「かっこいい!!」

勇者「オレはこのお姉さんとちょっと前に旅をしていた勇者なんだよ」ニッ

僧侶「そんな…まさか…」

勇者「キミが忘れていても、オレはずっとキミの事を忘れる日はなかった」

僧侶「ど…どうして今頃!?」

勇者「あの時からずっと言えなかった事を伝えに来たんだよ」

勇者「ここに来るまで半年かかちゃったけどね」ニッ

僧侶「せ、説明をお願いします!!」

勇者「とりあえず言いたい事言うのは後回しにしようか」

勇者「まずはあの後の話するよ、知りたかったでしょ?」

僧侶「…」コクリ

勇者「僧侶が出て行ってすぐにオレの元へ魔法使いさんが飛んできた」

勇者「『あの子に何を吹き込んだ?』って」

勇者「全部話したよ…そしたら引っぱたかれた」

勇者「その後は賢者も来て、オレに説教の時間が始まった」

勇者「もう罵倒罵声ばかりでうんざりするぐらいだったよ」

勇者「そして言われたんだ、『あの子がどうしてずっと頑張ってこれたのか分かるか?』ってね」

勇者「そこでやっと知ることになったんだ」

勇者「キミの…オレに向けていた想いに…」

勇者「オレはもう合わせる顔がないと言ったんだが二人は許してくれなかった」

勇者「賢者に『それなら自分が僧侶ちゃんをもらうぞ』って言い出すものだから」

勇者「オレもついムキになって本音を言ってしまったんだ」

僧侶「本音…?」

勇者「そう、ここでキミに言いたい事が出てくるわけだよ」

僧侶「え」

勇者「オレはキミに出会ってからずっとキミだけを見続けてきた」

勇者「キミに恋をしていたんだ」

僧侶「勇者さまが…?」

勇者「その呼び方久しぶりだね」

勇者「オレもたった一言が言えず、ずっと悩んでいたんだ」

僧侶「で、でもそんなところ一度も見せなかったじゃないですか!?」

勇者「魔法使いさんが言うには、『分かりにくい分僧侶よりタチが悪い』ってさ」

僧侶「…」

勇者「でもそのせいでこうしてトラブルになってしまったわけだよ」

勇者「でもオレは何も考えず僧侶をパーティから抜けさせたわけじゃない」

勇者「キミだけはこれ以上危険に晒したくなかったんだ」

僧侶「!!」

勇者「あの二人にはもちろんそれでも怒られたよ」

勇者「それだけ大切な人ならバギが飛んでこようが傍で守ってやれってね」

勇者「ホント、バカな真似したって今では思うよ」

勇者「絶対戦いが終わったら会いに行けと何度も念を押された」

勇者「それからは色々な想いが頭の中を駆け巡っててあまり記憶にないんだよね」

勇者「魔王が『あの面白い娘はいないのか』と、ちょっと残念そうだったのを覚えてるぐらいかな」

勇者「そしてすべて終わったその日からオレはキミを探す旅を始めた」

僧侶「…そ」

僧侶「そんなのウソですよね…?」

勇者「…」

勇者「何を言われようとも覚悟はしていた」

勇者「こっちの都合でキミを離脱させ、傷付けた」

勇者「で、自分は魔王を倒して伝説の勇者とまで言われちやほやされた」

勇者「本当はその中にキミもいたはずだった」

勇者「その未来をオレが閉ざした」

勇者「もはやオレは勇者でもなんでもない…ただのクズだ」

勇者「どんな仕打ちだって受ける」

僧侶「…」

勇者「もうひとつ言い忘れてた」

勇者「勇者としてのオレを神様になかったことにしてもらった」

僧侶「どういう…意味ですか…?」

勇者「つまり勇者として選ばれたという事実を消してもらったんだ」

勇者「神様探し出すのはすごく苦労したけど、おかげでオレは最初から勇者ではなくなった」

勇者「きっと周りは魔王を倒したのは誰だと騒ぎ立てただろうけど」

勇者「オレにはどうでも良いことだったんだ」

僧侶「じゃああんなに頑張っていたことが…」

勇者「すべてパァだね…でも無駄だったとは思わない」

勇者「自分と仲間達の力で世界を救った、それだけでいいんだよ」

勇者「オレはこれでも深い事考えるのが苦手なバカなんだ」

勇者「魔王倒すより大切なものの事を最優先した大バカヤロウなんだ」

僧侶「信じられませんよ…」

勇者「うん、信じてくれるには証拠も不十分だ」

勇者「それでも気になるならオレに関わった人達や勇者と知っている人達に聞くといいよ」

勇者「『そんなのいたか?』って言われるから」

僧侶「じゃあじゃあ!今まで仲間だった人達はどうなるんですか!?」

勇者「そこは神様が考慮してくれてね、一部の人達だけ記憶がそのままなんだってさ」

僧侶「そんなの都合良すぎですよぉ…」

勇者「はは、確かにね」

勇者「ふぅ…これで話は終わったかな」

勇者「あとはオレが僧侶に本当に言いたかった事だけ言うよ」

勇者「君の心にもうオレがいなくてもいい」

勇者「それでもオレは言うよ」



勇者「僧侶、キミが好きだ…ずっと傍にいさせてほしい」



僧侶「わたしは…」

勇者「…」

僧侶「あの日からすべてを忘れるつもりだったんです…」

僧侶「でも、今のですべて思い出してしまいました…」

僧侶「すべてを…」

僧侶「最初はこれからを生きていくために仕事の募集を始めました」

僧侶「そこで勇者さまに誘われて旅をすることになった」

僧侶「途中でわたしが勇者さまに勝手にバギすることに気づきました」

僧侶「しばらくして、口は悪いけど優しい魔法使いさんが加わりました」

僧侶「一度別れたけど再び戻ってきた面白い賢者さんも仲間になりました」

僧侶「進みながらわたしの暴走を止める方法をみんなで探ってくれたのは嬉しかったです」

僧侶「結局、今の今まで止められなかったですけどね」

僧侶「そして…わたしの旅は終わりました…」

僧侶「これで最後まで告げられなかった想いも無になった……はずだった」

僧侶「わたし、まだ完全に捨てきってなかったんです」

僧侶「今からでも間に合いますか…?」

勇者「ん?」

僧侶「またあなたを好きになってもいいですか?」

勇者「もちろんだよ」

僧侶「ゆ、勇者さま…」ポロポロ

勇者「やっぱりキミは繊細な子だね」

勇者「そのおかげか、俺は惹かれたんだ」

勇者「キミに会えて…好きになってよかった」ギュッ

僧侶「ゆうしゃさまぁぁぁぁぁ…」ギュウ

勇者(空気壊しちゃうから言えないけど、どうして今オレは『無事』なんだろうな?)

少年3「あー…」

少年1「おねーちゃん取られちゃった…」

少年2「しかたねぇよ…」

少女「おねぇちゃんって勇者様の仲間だったんだぁ」

少女「いいなぁ…あたしも旅に出て素敵な出会いっていうのしてみたいなぁ」

勇者「キミ達もいつかしてみるといいさ」

勇者「このお姉さんみたいに思い出に残る良い旅ができるよ」

僧侶「わ、わたしみたいだなんて…」

僧侶「もぉ!勇者さまったら!!バギクロス!!」シュゴォォォ

勇者「何で自分で出したんだ!?ふぎゃあ!?」シュバァン!!

僧侶(後で聞いた話ではありますが…)

僧侶(あの後、魔法使いさんはというと…)

僧侶(あの戦士さんと行動を共にしていると聞きました)

僧侶(もちろん目的は『筋肉』なわけですが…)

僧侶(でもしばらく一緒にいると気持ちが変わったのか)

僧侶(相変わらず筋肉は好きですが別の感情も生まれたらしく)

僧侶(ただ解剖のためにいる存在だけではなくなったそうです)

僧侶(戦士さんもそれから魔法使いさんと距離をとらなくなったそうで)

僧侶(守りたい存在として傍にいるそうです)

僧侶(ただ筋肉をすごい怖い目で見るのは勘弁してほしいそうですが…)

僧侶(賢者さんは妹さんとのんびりどこかで暮らしているそうです)

僧侶(相変わらず女の子が大好きで追いかけ回しているみたい)

僧侶(勇者さまに聞いて知ったのですが賢者さんもわたしに好意を寄せていたそうです)

僧侶(でも勇者さまの強い想いには勝てなかったとか…)

僧侶(現在ではわたしと同じぐらい可愛い子を探すとかで……何でわたし基準なんでしょう?)

僧侶(妹さんもあれから性格が穏やかになっていったそうで)

僧侶(賢者さんの暴走のストッパーとして活躍してるとか何とか)

僧侶(今度会いに行った時、お友達になろうと思っています)

僧侶(あれだけ叩かれたのにそれでも友達になるのかって?)

僧侶(そういう事があってこそ良い友達になれると思いませんか?)

僧侶(そして…わたしと勇者さまはというと…)

僧侶「え?バギしなくなったって?」

勇者「うん、こうしてオレの手を握っても何も起こらないじゃないか」ギュ

僧侶「そう言えばそうですね…何ででしょう?」

勇者「オレに聞かれてもね…」

勇者「呪文は普通に出せるのかい?」

僧侶「えっと…回復呪文」ポォォォ

勇者「問題なく出るし、暴走もしないみたいだね」

僧侶「別に何かしたわけでもないのに何でなんだろう…」

勇者「うーん…『嵐は去った』ってことかもね」

勇者「天気と同じだよ、どんな強い嵐がきてもその内通り過ぎて晴れるものだよ」

僧侶「はぁ…」

僧侶「『恋はバギクロス』ってことなんでしょうかね?」

勇者「どういう事だよそれは…」

僧侶「ほら、勇者さまとわたしが結ばれるまで色々あったじゃないですか」

勇者「そうだなぁ…言われてみれば確かに色々そういう問題には直面してたみたいだけど…」

僧侶「気付いてなかったんですね」ニコ

勇者「こういうのにはとことん鈍くてね…」ポリポリ

僧侶「でもそういう勇者さまもわたしは好きですけどねっ」ギュッ

勇者「その勇者に何回バギしたんだろうなこの子は…」

恋は激しい時もあれば穏やかな時もある

それがいつどうなるかは誰にも分からない

でもこれだけは言える

どんな嵐でもいつかは通り過ぎるのだ



   『恋はバギクロス』



わたしにとってバギは大切な人を繋ぐ不思議な呪文なのだ

この胸の中にいつまでも消える事のない嵐を持ったまま

今を生きていくのだ

お し ま い


…と、見せかけてもう少しだけ続くのじゃ

以下より後日談+暴走の解明編みたいなものになります。
今までと違って、人によっては何かとぶち壊しな話になるので読むのは自己責任でお願いします。


実を言うと複数の結末考えてたけど需要なさそうだからやめちゃった☆

作者です。
勇者の件はミスとか色々あるのであまり突っ込まないでくだされw
自己解釈でお願いします・・・。

ちなみに他の結末にはバッドエンドやら賢者エンドやらがあったりしました。
短い上に半分適当に考えてたのでなしになったわけ。

  あれから数ヵ月後…



勇者「懐かしいなこの洞窟も…」

勇者「それでオレを呼んだのはどういう意味だ?」

勇者「そもそもお前は間違いなく…」

魔王「確かにお主達に討たれたが我はあの程度では滅ばん」

勇者「何を企んでいる?」ジロ

魔王「もうこの世界などどうでもよい、我が気にしておるのは…」

魔王「あの娘の事だ」

勇者「まさか…僧侶の事か?」

魔王「うむ、元気にしておるか?」

勇者「あ、あぁ…ここ最近はオレの元から離れようとしないな」

魔王「ふむ、彼女の生い立ちは聞いた事があるか?」

勇者「一度だけ聞いた……教会で捨てられていたらしい」

勇者「なぁ…あんたは一体何故こんな事を話しているんだ?」

魔王「あの日、一緒に旅をしている内に気に入ったのだ」

勇者「気に入ったってまさか…」

魔王「恋愛がどうとかは興味がない」

魔王「彼女自身が面白いと思っただけよ」

勇者「そ、そうか…」

魔王「それで少し話を戻るが、生い立ちについてこっちで詳しく調べ上げたのだが…」

魔王「実に不思議なのだ」

勇者「不思議とは?」

魔王「お主が聞いた時、彼女は何と言っておった?」

勇者「確か赤ん坊の時に神父さんに拾われて一緒に暮らしてたんだっけ」

魔王「そこだ、調べるとだな…その住んでおったという場所がないのだ」

勇者「え?どこかの教会じゃないのか?」

魔王「教会とやらはいくらでもあるがどこを調査しても彼女が住んでいた形跡がない」

魔王「そもそも教会に子供が捨てられていたという事実自体が存在しない」

勇者「どういう事だ…?」

勇者「じゃあ僧侶がウソをついているとでも言うのか?」

魔王「だからお主に話をしたのだ」

魔王「よくは分からぬが今でも彼女と交流があるのだろう?」

勇者「というか今、オレの彼女だからな…ほぼ毎日会ってるよ」

魔王「ならばお主が本人に聞いてみてはくれぬか?」

魔王「できればその場所を聞き出して真相を聞いてくれるとありがたい」

勇者「まったく無関係のあんたが何故そこまで気にする?」

魔王「だから言ったろう…彼女を気に入っておるのだ」

魔王「あの予想外の行動には興味を引かれるのだ」

魔王「存在まで予想外なのだぞ?気になるだろう?」

勇者「興味を持つのはいいと思うけど…」

勇者「もうあんたも悪いヤツじゃなさそうだし、オレも気になるから聞いてみるよ」

勇者「ごめん、遅れた」タタッ

僧侶「いえ、全然待ってないですよ」ニコ

勇者「その下に落ちているパン袋…1・2・3・4…どれだけ待ってる間に食べたんだ…」

僧侶「うひぇ!?」ワタワタ

勇者「相変わらず隠し事はできないんだね、僧侶は」

僧侶「うぅ…もぉ!!」

勇者「はは」

僧侶「今日はもう何も食べませんっ」

勇者「太るの気にしてるなら食べなきゃいいのに…」

勇者(さて…うまい事話を誘導させないとな)

勇者「それで…今度うちに来る?」

僧侶「えぇ!?ご両親いらっしゃるんですよね?!」

勇者「どっちも健在だよ」

勇者「それでどうかな?」

僧侶「すすす末永くよろしくお願いしまっしゅ!!」ペコペコペコ

勇者「早いよ…でも大切な人を紹介するのは当たり前だよ」

僧侶「勇者さま…」

勇者「そういえば僧侶の家…教会はどの辺にあるの?」

勇者「一度拝見したかったんだけど」

僧侶「え?」

僧侶「えっと…あの…すみません、もうないんですよ」

勇者「ないとは?」

僧侶「もう大分古くて老朽化しちゃいまして…」

勇者「そうだったのか…ごめんよ」

僧侶「いえ、あるなら見てほしかったんですけどね」

勇者(すでになくなっていたとは…それで見つからなかったのだろうか)

僧侶「できれば神父様の行方を見つけてほしかったんだけど…」

勇者「ん?神父さんいなくなったの?」

僧侶「ある日突然何も言わずにいなくなっちゃったんです…」

勇者(これは……魔王、あんたの言うように彼女の周りに不思議な事が起こってるようだ)

僧侶「勇者さまと旅に出る少し前です」

僧侶「いつものように起きて朝の掃除をしていたのですが神父様が起きてこないのですよ」

僧侶「さすがにおかしいなと思って部屋に行ったのですが」

僧侶「そこには『何も』ありませんでした…」

僧侶「お部屋は何度か入らせてもらったのですけど…本当に何もなかったんです」

僧侶「机も本棚もベッドも…そして神父様自身も…あったはずのものが消えていたのです」

勇者「それは確かにおかしいな」

勇者「よし、神父さんを探そう…名前って分かるかい?」

僧侶「あ、ありがとうございます!!ずっと誰にも言えなくて…」

勇者「もう何も隠さなくていいんだよ、オレにはね」ニッ

賢者エンドが気になってる人ちょっといるみたいだからちょっとだけw


勇者に脱退を言い渡される→崖の前まで来る→その場に留まる時間で分岐…な感じで考えてた。

ずっとその場で泣き続けていると賢者がやってきて→賢者エンド
少し留まってから帰ろうとして足を滑らせる→バッドエンド
すぐ離れる→ハッピーエンド

と、いう感じでした。

勇者「ふぅ」シュン

僧侶「転送呪文まで使ったのに何も見つかりませんでしたね…」

勇者「これはいくらなんでもおかしすぎるよ」

勇者「神父さんの名前も分かるのに誰も知らないなんて…」

僧侶「元々あまり目立つ事してた人じゃなかったらしいですけど…」

勇者「どこかの村か町に住んでいたなら名前ぐらいは知ってる人がいないとおかしいんだよね」

勇者「どうするか…」

僧侶「元教会があった場所へ行ってみますか?」

勇者「そうだね、何か手掛かりがあるかもしれない」

僧侶「はい、案内しますね」

勇者「ここがそうか」

僧侶「はい…あーあ、もう床の形ぐらいしか残っちゃいませんねぇ」テコテコ

勇者「さすがに住んでいた場所がこうなると残念だね」

僧侶「そうですね…あ、ここがわたしの部屋だったんですよ!!」ピョンピョン

勇者「跳んでるのかわいいなぁ…ん?」

勇者「教会の裏に何かお墓のようなものが…」

勇者「朽ちて小さくなっているけど間違いなくお墓だな…下の方に文字があるけど名前か?」ササッ

勇者「…」

勇者「これをどう説明したらいいんだろう…」

勇者「こんな悲しい結末なんて、魔王ですら予想してなかっただろうな」

勇者「僧侶、見つけたよ」

僧侶「んに?何をです?」

勇者「神父さんの行方」

僧侶「ど、どこに!?」キョロキョロ

勇者「これだよ」

僧侶「これはお墓ですか……うそ」

勇者「本人もいないし、真実は誰にも分からない」

勇者「でもキミは確かにここで神父さんに育てられてきた」

勇者「でもそれは普通ありえない事だったんだ」

勇者「そう……神父さんはキミを拾った時点ですでに亡くなっていたのだから」

勇者「刻まれた年からして亡くなったのが今から150年ほど前だ」

勇者「どういう事があったのかは分からないけど神父さんは再び教会へ戻ってきた」

勇者「そこで赤ん坊のキミを拾い、育てることにした」

勇者「キミは成長し、自分で生きられるほどまで育った」

勇者「おそらく神父さんはそこで役目を終えて再び還ったんだと思うよ」

僧侶「じゃあ神父様は…」

勇者「キミの事が気になっていたんだろうね」

勇者「何も残されていないけどそれは間違いないと思う」

僧侶「わたしのために…神父様…いいえ、お父さん…ありがとうございました…」ポロ…

僧侶「わたしは元気にやっています…」ポロポロ…

―――

魔王「ほう、そんな真実だったとはな」

勇者「どうだい?予想外だっただろう?」

魔王「あぁ、生い立ちまで特殊とはやはり面白い娘だな」

勇者「ひとつ知ってたら教えてほしいんだけど…」

魔王「何だ?」

勇者「彼女の本当の両親はどうしてるか分かるかい?」

魔王「あぁ、気分を害するかもしれんが聞くか?」

勇者「お願いするよ」

魔王「父親は見つからなんだが母親は発見した」

勇者「生きているのか…それにしてもよく分かったね」

魔王「人間は少々中身を調べれば血のつながりは分かる」

勇者「魔族ってすごい技術持ってるんだな…」

魔王「ふ、もう失われた技術だがな」

勇者「でも話はこれだけ?どこが気分を害すんだい?」

魔王「娘を捨てた挙句、何事もなく生活していて何も思わぬのか?」

魔王「ちなみにその母親には生気がまったくなかった」

勇者「…理由があったんだよ、きっと」

勇者「…」

勇者「彼女と会わせてみるよ」

魔王「わざわざ報告ご苦労だったな」

勇者「報告してくれって言ったのはあなたでしょ?」

魔王「そうだがな…本音を言えばそのまま現れないと思っておった」

勇者「もう争う気がないのならオレだってそれなりに行動はするよ」

勇者「―――あ」

魔王「どうした?」

勇者「いや…僧侶のバギの謎がやっと分かったんだ」

魔王「あの暴走の正体か…我にも教えろ」

勇者「いいよ」ニッ

勇者「あの教会に捨てられた時点でもうその兆候はあったんだ」

―――

僧侶「え?会ってほしい人がいる?」

勇者「うん、出来れば早くのほうがいいと思うんだ」

僧侶「よく分かりませんが急いでいるのならすぐ会いましょう」

勇者「ありがとう、きっと僧侶にとってもいい出会いになると思うんだ」

僧侶「みゅ?よく分かりませんが行きましょうよ」

勇者「旅してる時から思ってたけど時々変な声出すよね」

僧侶「へ、変って何ですか!?わたしそんな声出してましたか??」

勇者「気付いてなかったんだな…まぁかわいいからいいんだけど」

勇者「待たせちゃ悪いから早く行こうか」

勇者「指定された場所はこの辺なんだが…」

僧侶「その人って男性ですか?女性ですか?」

勇者「女性だよ、オレ達よりずっと年上の人」

僧侶「そこまで分かるんですか…どんな人だろう?」

勇者「きっとキミみたいに優しくて繊細な人だよ」

僧侶「え、えぇっ!?そ、そこでそんな事言われても///」

勇者「何でキミが照れてるんだよ…」

僧侶「だってぇ…」

女性「あの…あなたが勇者さんですか…?」

勇者「えぇ、お待たせしました…紹介したい子はこの子ですよ――」

―――

勇者「あのバギこそが神父さんをあの場に蘇らせた原因だと思うんだ」

魔王「もしや、彼女を守るためか?」

勇者「オレはそう思っているよ」

勇者「神様の加護か、またはそういう体質を持って生まれたかは分からないけど」

勇者「色々な形で僧侶を守り続けていたんだ」

勇者「バギはその自己防衛のひとつだった、と」

魔王「なるほどな、それで他人にバギ飛ばしていたわけか」

勇者「うん、仲間とはいえ知らない人だったし」

勇者「触ったり近付かれたら発動するようになってたみたいだね」

勇者「しばらく付き合ってて、元から照れ隠しにバギしちゃうような子だったのには困ったけど…」

魔王「はは、そこはあの娘らしいわ」

魔王「現在ではどうなのだ?」

勇者「もう暴走はしなくなったよ」

勇者「自惚れかもしれないけどオレが傍にいるから守る必要なくなったんじゃないかな」

魔王「それで良いじゃないか」

勇者「そうかな?」

魔王「それにアレはまだ娘の中にいて守り続けているのではないか?」

勇者「だと思うよ…あのバギは色んなものを運んできたんだ」

勇者「神父さん…オレや途中で会った仲間達…もちろんあなたも」

魔王「不思議なものだな、あんな暴走がまさかそんな効果を生んでいたとは…」

勇者「オレだって未だに信じられないよ」

勇者「『恋はバギクロス』ではなかったのはちょっと残念だけどね」

魔王「今何と言った?」

勇者「こっちの話だよ…じゃあ帰るよ」

魔王「もう会うことはあまりないだろうがな」

勇者「近い内また会うと思うよ?僧侶にも」

魔王「なんだと…」

勇者「旅メンバーとその他で集まる事になってるんだけど」

勇者「あなたの事を僧侶に話したらぜひ呼んでくれって言われててね」ニッ

魔王「魔王だと知ってなお、この我に会おうとするヤツがおるとはな…」

勇者「あの子の思考を理解できる人はそうそういないしね」

勇者「そういうわけだからまた今度誘いに来るよ、魔王」

魔王「もう魔王ではないのだがな…」

勇者「うん、知ってるよ『武闘家さん』」

魔王「懐かしい呼ばれ方だな…楽しみに待っておるよ」フッ

魔王「彼女によろしくな」

勇者「えぇ、それまでお元気で」テクテク

勇者(魔王の黒い心まで吹き飛ばすんだなバギって…)

勇者(真の勇者は彼女だったのかもしれない…なんてね)ニッ

 ――数十年後



男僧侶「さぁ、先へ進みましょう勇者さま」

女勇者「え、えっとね僧侶…」モジモジ

男僧侶「何ですか?」

女勇者「ずっと言えなかったんだけど…」

男僧侶「?私、何かしましたか?」

女勇者「そうじゃなくて…えいっ!!」グイッ

男僧侶「え?バギ」ヒョォォォ

女勇者「ずっとキミの事がす…ふぎゃぁ!?」バシュン!!

男僧侶「すみません…」ポォォォ

女勇者「うぅ…嫌われたのかと思ったよぉ…」

男僧侶「そんなわけないじゃないですか」

男僧侶「私の一族は自己防衛のためにああやって人に不意に触られたりすると反応してしまうのです」

男僧侶「どうしてバギなのかは分かりませんがね」

女勇者「そうだったんだ…」

女勇者「じゃあ不意じゃなければ大丈夫だよね?」ガシッ

男僧侶「ゆ、勇者さま…?バギ」ヒョォォォ

女勇者「ボクね!キミのこ…ぎゃふぅ!?」バシュン!!

女勇者「ただ言うだけなのに…いつになったら…」ガクッ

男僧侶「勇者さまが何を言いたいかは分かりませんが…」

男僧侶「私も手伝いますので頑張っていきましょう」

女勇者「ボクの触りながら話す癖が原因でもあるんだけどな…」

女勇者「でも、きっとキミに伝えるよ!!ボクの気持ち!!」

男僧侶「はい、お待ちしていますね」ニッコリ

女勇者「それじゃいこっか?」スッ

男僧侶「はいっ」グッ

女勇者(男の子なのにかわいい僧侶ペロペロパクンチョしたいしたい…)ブツブツ

男僧侶「?」ゾクゾク

男僧侶(寒気が…風邪かな?)


 ――これが隠された真実

 すべてを切り裂き、すべてを吹き飛ばすはずの呪文『バギ』

 その真の力は一人の少女だけが持っていた

 知らぬ場所から人を運び

 死者とすら縁を結び

 漆黒の心を純白に染め

 人前ではただ暴走するという力

 いらない子だなんてとんでもない

 キミは必要なんだ

 『バギ』も『少女』も…ね?


   本当に お し ま い ☆



最後まで見てくれた人に感謝。

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