修道女「えっ?私を異端審問にかける?」 (137)

修道女「乗っていた船が難破し、遭難してから早二年」

修道女「なんとか漁村の漁師さんに救助されたものの、祖国に帰ること適わず」

修道女「しかし望郷の念を捨てられず、やりたくも無い騙し騙されの危険な商売を続け」

修道女「愛する故郷へいつか帰れる日を夢見て生きながらえてきたものの」

修道女「明日どころか今日の食事すらままならない始末……」

修道女「ああ、私はどうすれば!これからどうやって生きていけばいいのでしょう……オヨヨ」チラ

僧侶「……」

修道女「オヨヨヨヨ……」チラッチラッ

僧侶「…………」

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僧侶「……はあ、そういう供述は教会の方で聞きますから」ガシャン

修道女「えっ?手錠?なんで?アイエーソウリョなんで?」

僧侶「いいからほら、立って下さい。さっさと最寄の教会に行きますよ」

僧侶「手錠をかけた手前、貴方を引き渡さなければなりませんから」

修道女「いやいやいや!脈略無さ過ぎやしませんかちょっと!?」

修道女「なんであの流れで逮捕になるんですか!」

僧侶「だって貴方でしょう?最近、この近辺で変なモノを売りつけている異国の女って」

僧侶「被害者の方から教会に苦情が来ていますよ」

修道女「ほえ?」

修道女「いやいやいやいやいや!待ってください!私の言い分も聞いてくださいって!!」

僧侶「いえ、異教徒の話には聞く耳持ちませんので」

修道女「あれ?私の立ち位置もっと酷くなってません?」

修道女「さっきの口振りじゃ、私はまだ詐欺罪を働いたと思しき容疑者ってだけでしょう?」

修道女「なのになんで発言権がないの?なんで罪状増えてんの!?」

僧侶「自分の姿を鏡で見てみたらいかがですか?」

修道女「ダメだこの僧侶さん、話が通じない上に超辛辣!」

僧侶「……はあ。それ、本気で言っているのですか?」

修道女「当然です!どうですこの質素ながら艶やかな白黒の衣装!」

修道女「どう見ても清廉潔白な神の使徒たる修道女でしょう!」

僧侶「……もう一度訊きますが、それ、本気で言ってるんですか?」ジロ

修道女「あっ、あっれー?おかしいなー、僧侶さんがさっきより機嫌悪そうだゾー?」

僧侶「はあ……まさか神の使徒まで騙るとは。これは異端審問を開かなければなりませんね」

修道女「アイエェェェエエエ!?ソウリョ!!ソウリョ=サンナンデェェェエエエエ!?」

修道女「私を異端審問にかける?マジで!?なんで!?」

僧侶「なんでも何も、火を見るより明らかでしょう?」

僧侶「十字架を首に下げている癖に、なんですかその魔女のような白黒の妙な格好は」

僧侶「それにその背中にしょってる棺桶!怪しすぎです」

僧侶「どうせ邪教の儀式に使う死体でも入っているんでしょう? この異教かぶれめっ!!」

修道女(あっ、今の言い方ちょっと可愛かったな)

修道女「失礼なっ!私はただ異大陸から流れて来ただけのおのぼりさんですよ!」

修道女「これは私がいた大陸でのメジャーな修道服です!」

修道女「こちらでは珍しいでしょうから、客寄せのために仕方なく着ているんですよ!」

修道女「それにこれだって棺桶じゃなくて棺桶っぽい形の道具箱です!ほら、棚がある」ガポ

修道女「形が棺桶なのもやっぱり客寄せの為です!物珍しいと人が寄ってきますからね、それ以外にありません!」

修道女「そういう訳で、私はただ商魂逞しいだけの普通の行商人です!異教的思想なんて持ち合わ

せてません!」

僧侶「ならその頭の上の魔物はなんですか!目玉で触手じゃないですか!」

修道女「あー……これはですね……」

目玉「オ゙ナ゙ガベッ゙ダ」ウジュルウジュル

僧侶「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!」

修道女「ふ、ふーんだ!そういう貴方だって十分おかしな格好じゃないですか!」

修道女「なんですかその全身タイツとエプロンは!擬似裸エプロンですか!破廉恥な!!」

修道女「第一、僧侶って役職なのに教会にいたり神に仕えるのはどうかと思います!」

修道女「尼僧なら尼僧らしく、頭坊主にして寺で雑穀でも食ってろ!」

僧侶「言いたいことはそれだけですか?」ニッコリ

修道女「あっ、すんませんでした口が滑りましただからそんな怖い顔しないでくださいお願いします」

僧侶「とにかく、抵抗は無意味ですからさっさと歩いて下さい!」

修道女「ぐ、ぐぬぬぬ!……いいでしょう、こうなったら実力行使です!せいっ!」バキィ

僧侶「なっ!?手錠を素手で!?」

修道女「フハハハハー!誰にも私は止められないぜー!!」

僧侶「コラ、待ちなさい……って、早っ!逃げ足早ッ!!」

修道女「捕まえられるものなら捕まえてみろこの全身タイツ!お前の神様ファッキンジーザスッ!」

僧侶「……ッ!そこを動くなよ白黒目玉女ぁぁぁああああああ!!」



目玉(疲れるなぁ……)

―――
―――――


僧侶「はぁ、はぁ……逃げられた……!」

僧侶「しかも気が付いたらこんな森の奥にいるなんて……」

僧侶「屈辱的ですが……辺りも暗くなって来ましたし、今日のところは引き返す以外になさそうですね」

僧侶「ん?」



??「どうだ?今回の成果はよ」

??「へへへ、結構いい感じだぜ?」

町娘「……ううっ」



僧侶(……これは、まさか!)ガサッ

??「ッ!?誰かいやがるのか!?」

僧侶「しまった……!」

―――
―――――


修道女「……ふぅ、どうやら撒いたようですね」

目玉「随分と酷い逃走劇だったな。……いや、それよりお主、ここが何処か分かっておるのか?」

修道女「いえ、全然?」

目玉「やはりか……どうするのだ?また野宿か?」

修道女「まあ、そうなりかねませんね。結構深い森に入ってしまったようですし」

修道女「時間も時間ですし、野営を視野に入れたほうがいいのは違いありませんね」

目玉「難儀なことだ。お主のその計画性の無さ、どうにかならんのか?」

修道女「そんなこと言われても……っと、あれ?」

目玉「どうかしたか?」

修道女「あれってもしかして……奴隷商人と盗賊、か?」

盗賊1「へへっ、お前も中々の上玉じゃねぇか。まあ、ちと胸が小さいが」

僧侶「ッ!放しなさい!」

盗賊2「そう嫌がるなよ。その格好で身を捩ったって、俺達が興奮するだけだぜ?」

盗賊3「ああ、とんでもねぇエロさだ……前から思ってたんだが、どうして僧侶の格好ってこんななんだ?」

盗賊4「さあ、知らねぇよ。きっとアレだろ、神様か神官がそういう趣味なんだろ」

盗賊3「ハハハ、違ぇねぇ!」

僧侶(まさか盗賊に捕まるなんて……今日は厄日ですね)

僧侶(ざっと見ただけでも十人以上か。とにかく、この数相手では抵抗は無意味)

僧侶(今は大人しくしておく以外にありませんか……)ギリッ

盗賊5「それでよぉ、コイツ、どうするんだ?」

盗賊6「そりゃあお前、やることなんか一つだろ」

盗賊7「そうだな。このまま帰して、教会の連中にこの場所のこと告げ口されるのは面倒だし」

盗賊1「んじゃぁ、いっちょ派手に犯っちまいますか!!」

一同「おーッ!」

僧侶(……クソッタレ!)ギリッ



修道女「あっ、じゃあこういうおクスリはいかがですか?」

盗賊達「!?」

僧侶「!?」

修道女「私の住んでいた大陸で取れた即効性の精力剤でして」

修道女「どんな不能でもあらビックリ!これ一粒だけで射精することしか考えられない化物に早変わりッ!」

目玉「でもお高いんでしょう?(棒)」

修道女「いえいえ、そんなことはありません!この場の全員分をなんと、この破格でご提供!」

目玉「キャーヤスーイ(棒)」

修道女「そんなワケで、どうです?買いません?手頃な価格だと思うんスけどねぇ……?」

僧侶「いや、なにやってんですか貴方」

修道女「えっ?」

僧侶「えっ?」

僧侶「私が言うのもアレですがね、ここは普通颯爽と助けに入るところでしょう!?」

僧侶「なにここぞとばかりに商売やってるんですかッ!」

修道女「うっせえ!仕方ないでしょう懐が寂しいんですから!ていうか私に何を期待してるんですか!」

修道女「背に腹は代えられませんし、何より人を異端者呼ばわりした全身タイツ女を助ける人情も持ち合わせておりません」

修道女「助けて欲しかったら金を用意しろッ!」

僧侶「清々しいほどに俗物的ですね貴方は!」

修道女「ハッ!今更煽てたって遅いですよ!」

目玉「いや、今のはそういう意味では無いと思うぞ。というか、それよりな」


盗賊達「へへへ」ジリジリ


目玉「既に我々も囲まれているようだが」

修道女「……えっ?なんで?」

僧侶「本当に馬鹿ですね貴方」

盗賊1「ゲヘヘ、別にそんなもん必要ねぇよ、お穣ちゃん」ビンビン

盗賊2「そうそう。お前、そこの僧侶なんかとは比べ物にならないほどイイ体してるしな」ビンビン

盗賊3「精力剤なんかなくてもビンビンになっちまうぜ」ビンビン

修道女「あー……ありがとうございます?」ササッ ドン

盗賊4「おっと。今更逃げようたってそうはいかねぇぜ?」

盗賊5「そうだ、逃げる必要なんかねぇよ。お前の荷物やら何やらだって全部買ってやるぜ?」

盗賊6「もっとも、実際に買うのはどこぞのお偉いさんだろうがな。ゲッヘッヘ」

修道女「いやー、そういうモノは商品として取り扱っていませんし……」

修道女「ていうか、それって私にお金返ってきませんよね?」

盗賊7「あーもう面倒臭ぇ!いいから大人しくしろってんだよ!」ガッ

修道女「ちょっ!まさかのウ=ス異本な展開!?流石の私も予想外!!」

目玉「前々から思って追ったが……お主、阿呆だろ」

僧侶(羽交い締めにされた!このままじゃ……!)

盗賊1「グヘヘヘヘ。それじゃあ、まずは俺からいかせて貰うぜ!」モニュン

修道女「」

盗賊1「すげぇ!手に吸い付くような揉み心地だぜ!」モニュモニュ

盗賊3「マジか!そいつはすげぇな!」

盗賊5「でも俺貧乳派だからそっちはいいや」プイッ

盗賊4「そうだな、俺等少数派は大人しく僧侶ちゃんとにゃんにゃんしてるか」プイッ




修道女「」プルプル




目玉「あっ、此奴ら死んだな」

――――――
―――


僧侶(一体、なにが……)

僧侶(急に、盗賊達が、はじけて)ベシャ

僧侶「ひっ……!?」



修道女「……はあ、最悪ですね。血糊でベタベタです」ドスッ

目玉「あれだけ派手にやったのだ、当然であろう」

修道女「まったく……今日は厄日のようですね。結局、一文の得もしない内に夜になってしまいましたよ」

目玉「お主の無計画さのせいだな」

修道女「いちいちうっさいですよ、口の減らない目玉のおやじですね」

目玉「オイキタロー」

修道女「似てませんよ」

修道女「はあ。人から騙してぼったくるのは趣味ですが、盗賊が奪った金を奪うのは嫌だしなぁ」

修道女「どうすればいいと思いますか、僧侶ちゃん?」グルン

僧侶「っ!?」ビクッ

修道女「……むむぅ。なんか怖がられてませんか、私」

目玉「それはまあ……いや、最早何も言うまい」

修道女「? そうですか。なら仕方ない。先にあっちの馬車の人達を解放しますかね」トテテテ



修道女「鍵がかかっていますが……まあいいや。壊してしまいましょう」バギン

修道女「お邪魔しまーす」キィ


奴隷達「……っ!?」ビクッ


修道女「あー、そんなに怯えないでくださいよ。私は盗賊じゃありません」

修道女「それに結果的且つ不本意にですが、これでも一応は貴方達の命の恩人ですよ?」

奴隷「あなた……だれなの?」

修道女「私は一介の修道女ですよ。それより、さっさとここから離れた方がいい」ニコリ

修道女「まあ、帰る場所が無いというのなら、ここに残るのも一興でしょうけど」

町娘「………………」

修道女「なにはともあれ、強く生きてくださねーッ!」



修道女「ふぅ。さて、後回しにした僧侶はどうしてますかね?」

修道女「僧侶ちゃーん?」

僧侶「」

目玉「返事がない」

修道女「まるで屍のようだ……」

僧侶「…………な…です……か」

修道女「ん?」

何か、ナイア・ルラトホテプみたいな修道女ちゃんだな

>>23-24
な ぜ バ レ た し

私の作品を使うからには見事に使うのだよ ラブクラフトより

僧侶「なんなんですかッ!貴方はッ!!」

僧侶「これだけの人間をっ、こんな……!一体どうやったら……ぐっ、どうやって……!?」

修道女「ああ、そういうのですか。まあ一言で言うと魔術ですかね」

僧侶「魔術って……魔術で、こんなこと出来る訳ないじゃないですか!」

修道女「確かに、人間では無理でしょうね」サラリ

僧侶「なっ!?それは、どういう……?」

修道女「……知っていますか?この大陸で使われている魔術」

修道女「あれって、実は元々私の故郷で使用されていた技術なんですよ?」

僧侶「それが……どうしたんですか」ガクガク

修道女「ふぅん、分かりませんか?まあいいですけどね。分からない方が幸せですよ、人間?」

>>26
ラヴクラフト御大が降臨なされた……だと……!?

僧侶「………………」

修道女「ともかく、私達はこの辺で離脱させて貰いますよ。……奴隷商の男が一人逃げたようですし」

修道女「私はそちらを追わなければなりませんから」

僧侶「……ッ!追うって、なんで!」

修道女「なんでって、そりゃあ……後腐れなくする為ですかね」

修道女「後で徒党を組んで襲って来られたら面倒ですし、変な噂を立てられたら適いませんし」

修道女「今の私には売り上げで黒字を出すことだけが唯一の趣味ですから」ニコリ

僧侶「そ、そんな理由で、人を殺していい訳がありません!」

目玉「まったく、ぐうの音も出ないほど正論だな」

修道女「貴方はどっちの味方なんですか」

修道女「というか、流石は敬虔な信徒ですね」

修道女「自分を犯そうとした連中の悲惨な末路を笑えない上に、奴隷商の命まで『殺していい訳がない』、と?」

修道女「確かに正論ではありますが、私はそれを正しいとは思いませんよ」

僧侶「人外の貴方がそれを言いますか!?」

目玉「ぐうの音も出ないほど正論だな」

修道女「だから貴方はどちらの味方なんですか。もしかしてそのセリフ気に入ったんですか?」

僧侶「いい加減茶化すのはやめて下さい!」

目玉「ごめんなさい」

修道女「ごめんなさい」

前スレある?

>>33
前スレはないです。これが初めてですね

僧侶「貴方が超常の存在であれ、他大陸から来た存在であれ、この国にいる以上はこの国の法に従うべきです!」

僧侶「そうです、それが全てなんです!そこに貴方の超常性も思想も能力も関係ありません!」

僧侶「よって貴方は罪人として出頭し、速やかに異端審問にかけられるべきです!!」

修道女「ダメだ、この娘一時的狂気に陥ってる」

目玉「SAN値を5以上失ってアイデアロールに成功したのだろうな……可哀想に」

僧侶「なんでそんな哀れみに満ちた目をするんですか!いい加減真面目にしてくれませんか!?」


町娘「あ、あの……」オズオズ


僧侶「なんですか!?」ギュルン

町娘「ひ……っ!?」ビクゥ

修道女「売られかけた町娘を脅かす僧侶」

目玉「シュール……というよりは犯罪的だな」

町娘「あ、あの……私、そちらの方にお礼が言いたくて、それに、お願いが……」

修道女「おっ、こっちの娘さんは大分まともそうですね。少し引っ込み思案っぽいですが」

目玉「そうだな。我の周りにはロクでもない女しかおらぬからな、貴重なオアシスだ」

僧侶「そんなに私をディスって楽しいですか?楽しいんですよね!?」

町娘「……ちょっと静かにして貰えませんか?」

僧侶「あっ、すみません」

修道女「意外とはっきり言いますね、彼女」

目玉「大丈夫、十分許容範囲。女の子は少しアクが強そうなくらいが丁度イイってばっちゃが言ってた」

町娘「それでは改めまして、この度は助けて頂きありがとうございました」

修道女「いえいえ、いいですよ気にしなくて。お互いに一文も得しませんから」

僧侶(本当にコイツの頭にはそれしかないんですねぇ……)

町娘「得、ですか……それなら、報酬さえあれば私のお願いを聞いていただけますか?」

修道女「ん?報酬?例えば?」

町娘「貴方のお望みするものを」

修道女「ほう、言い切りましたか。中々面白そうな人ですね」

修道女「まあいいでしょう。そちらは追々検討するとして、なんですか?貴方のお願いって」

修道女「いくら何でも、依頼の内容によっては判断しかねますから」

町娘「それは簡単です。私を、私の実家にまで帰して欲しいのです」

目玉「ふむ、意外と普通だな」

修道女「そうですね。ちょっと拍子抜けしました」

僧侶「一体どんな無茶振りを想像していたんですか貴方達は」

修道女「まあ、それくらいなら構いませんよ。基本的に暇ですし」

修道女「ですが、アレですね。貴方以外にも無事家へ帰ることを望んでいる娘達がいるにも関わらず、臆面もなくそんなことを頼みに来るとは」

修道女「中々度胸があるじゃないですか。いいぞ、気に入りました。家に来て同僚共をファックしていい」

僧侶「貴方って本当に自重しませんね。その意見には全面的に同意しますが」

町娘「…………」ギリッ

町娘「私は、どうしても帰らなければならない理由があります」

町娘「何をしようと、何を言われようと、決して止まるわけにはいかないんです……」ギリッ

修道女「アーソッスカ。それは大変そうデスネ」

目玉「お主……自分から振っておいてその対応とか……」

僧侶「ああそうか。この人、馬鹿なんじゃなくて何も考えてないだけか」

修道女「なにはともあれ、これで交渉成立ですよ」

修道女「貴方の望むとおり、貴方を家に帰してあげましょう」

町娘「っ!ありがとうございます!」ペコリ

僧侶「いやいやいや!ちょっと待って下さい!」

修道女「待つ?何を?」

僧侶「あ、貴方は大量殺人を犯した犯罪者です!例え相手が悪人でも関係ありません!」

僧侶「そもそも、悪人だから殺してもいいなんて発想自体が異常です!そんなおかしな思想を持つ相手を野放しには出来ません!!」

修道女「今日のお前が言うなスレはここですか?」

目玉「言ってやるな。此奴も法という神に踊らされた、犠牲者に過ぎぬのだからな……」

僧侶「おい目玉!無駄に遠い目で適当なこと言わないで下さい!!」

僧侶「と、とにかく!貴方には教会に出頭する義務があります!」

目玉(面倒だなこの小娘。無意識に組織の権威に縋ることで、脅威そのものを無かったこととして処理しようとしておる)

目玉(絶対であった法によって正当化することで、恐怖を誤魔化している訳だ)

目玉(……まあ、だからどうなる訳でもないがな)ハァ

修道女「ふーん。ですが、私には教会に出頭する気はサラサラありません」

修道女「どうしても私を異端審問にかけたいというのなら、力尽くで連れて行くしかありませんよ?」ニコリ

僧侶「」ビクッ

目玉(放って置けばいいものを……哀れな)

修道女「確かにこの帝の国……いや、この大陸全土では、貴方達教会の意思が法そのもの」

修道女「逆らうものには死罪と拷問。勿論、ソレは罪を犯すほうが悪いという大前提の上に成り立つものですから決して悪とは言い難い」

修道女「けれど、所詮貴方は一介の僧侶」

修道女「対して、私は小規模とはいえ盗賊団を一人で潰した歴としたバケモノ」

修道女「見たところ丸腰で、しかも下等魔術すらロクに使えない貴方が……私に、ナニを、言っテイル?」


僧侶「」ビクッ

僧侶「……」ガタガタ


修道女「(まあ……こんなもんですかね)」フゥ

目玉「(可哀想に、生まれたての子馬の如く震えておるではないか……ん?)」


僧侶「はぁ、はぁ……はあ」チャキン


目玉(僧侶が 盗賊の剣 を装備した!)

僧侶(わ、私は、神の代理人。神罰地上の代行者……)ガタガタ

僧侶(我等が使命は、我が神に逆らう愚者を、一片までも絶滅すること……)ガタガタ

僧侶(そうだ、神官様も仰っていました。私達が暴力を振るうべきなのは、化物共と異教徒共)ガタガタ

僧侶(化物も、異教徒も、あってはならないものなんだ……絶対、絶対ッ!)

僧侶(ここで、私が、命を賭してでも、このバケモノを……)ガタガタ


修道女(人間って面倒ダナー)


僧侶(その澄まし面を歪ませてやる……ッ!)


僧侶「……ッ!」ダッ

修道女「ていっ」バシィ


亡骸「」ドスッ

目玉(あっ、刺さった。死体殴りはやめてやれよ……)

僧侶「」ガク

修道女「悪足掻きは終わりですかね?」

修道女「ま、貴方のような人間が何人かかって来ようとも同じですが。化物を殺せるのは人間やめた人間だけですからね」

修道女「今回のことは、犬に噛まれたと思って忘れるのがベストですよ、人間」

修道女「宇宙……っつーか、この世には別に理解しなくてもいいコトがあまりにも多いので」

僧侶「」

僧侶「う、……うぅっ、ぐっ…………ゔゔぅ」メソメソ

僧侶「か、神よ……わた、わたしは、一体どうすれば……」グッ


修道女「(……あれ?これってもしかして私が泣かした感じ?)」

目玉「(もしかしなくてもそうだろう。お主バカじゃねぇの?)」

修道女「あー……」カリカリ

修道女(はあ、仕方ありませんね。……それに、今なら言いくるめられそうですし)スッ


修道女「えーっと、僧侶?貴方としては私のような罪人は見過ごせない訳ですね?」

僧侶「」コクコク

修道女「しかし、私には教会に出頭する気は無い。そして、貴方には私を教会まで引き摺っていく力が無い」

修道女「なら、こうしませんか?」

修道女「私がこれ以上神の法を犯すことが無いよう、貴方が監視するんです」

修道女「暴力等で物理的に私を諌めるのは実質不可能ですが」

修道女「隣で貴方がギャーギャー喚き続ければ気が変わ……心を入れ替える可能性が無きにしも非ず、です」

修道女「そういう訳で、ついて来ますか?」

僧侶「……!」コクコク

目玉(天啓を得た、みたいな顔で頷いておるな……哀れだ)

修道女「じゃあ、早速移動しますか。流石の私でも肉塊と臓物で溢れかえった場所に居続けるのは勘弁したいんで」

目玉(精神衛生的な問題ではなく、ただ単に汚れるからだろうな……どう見ても既に手遅れだが)

修道女「さて、と。……って、あれ?町娘ちゃーん!何処いったんですかー!?」

町娘「あ、終わりましたか?」ガサガサ ヒョコ

修道女「む?勝手に離れられると困りますね。どこに行っていたんですか?雉狩りにでも?」

目玉「バッカお前、女の子なんだから花を踏み躙りに、だろう」

僧侶「それも違うと思います」

町娘「す、すみません。……でも、ここは……死体が多くて、その、眩暈が」フラフラ

修道女「この程度の数の死体を見ただけで貧血ですか。私の日j……戦場を見ればその場で昇天しかねませんね」


僧侶(今コイツ『私の日常』って言いかけましたよね……本当に諌められるのか私)ウーン

目玉(諦めた方がいいと思うぞ)


町娘「本当に、申し訳ありません。無理を言ってお願いを聞いてもらっている立場なのに、心配までおかけしたようで……」アセアセ

修道女「いえ、構いませんよ。それが普通の人間の反応ですから」ニコリ


僧侶「……あれ?私の扱いと随分違くね?」

目玉「半分は自業自得だろう」

修道女「それじゃあ、今日はちょっと歩いた所で野営をしますよ」

修道女「こんな場所で寝る訳にはいきませんし」

修道女「私一人なら夜通し森を歩いても大丈夫ですが、貴方達はそうもいかないでしょうから」

修道女「いいですよね?」

町娘「はい、特に問題はありません」

僧侶「私も、まあ、特には」

修道女「じゃあ行きますよ。着いて来て下さい」トテトテ

町娘「……」トテトテ

僧侶「……」トテトテ

――――――
―――


修道女「おっ?湖ですね」

修道女「これはツイてる。飲み水は幾らでもありますが、水浴びと洗濯が出来ないのは致命的でしたから」

修道女「っつーワケで私はここで水浴びしているので、貴方達はそこら辺で焚き火でもして寝ててください」

修道女「……覗きやがったら同性でも容赦しねーゾ☆」

僧侶「覗きませんよッ!」

町娘「あはは……」

修道女「そうですか、それは結構な心がけです。では、また後ほど」



ヒャッハーミズダァ――――!!!



町娘「……」

僧侶「……」

町娘「あの、それじゃあ……焚き火、しましょうか」

僧侶「あっ、はい」

町娘「……」ガリガリ

僧侶「……」グリグリ

僧侶(……気まずい)ハァ

修道女「ぷはぁ!やっぱりいいですね水浴びは!」

修道女「オラァ目玉ー!ちゃんと洗濯やってますかー?」

目玉「ちゃんとやっておるわ!まったく、何故我がこのような真似をせねば……」ブツブツ

修道女「……ふぅ」チャポン

修道女(さて、勢いで町娘の依頼を受けた上に僧侶を同行させることになってしまいましたが……よくよく考えればちょっと面倒ですねぇ)

修道女(問題なのは距離ですね。馬車の中にいた奴隷達よりも綺麗な服を着ていましたから、彼女達とは別に割と近い所で捕まったのでしょうが……)

修道女(それでも馬でいける範囲。徒歩でどれだけかかるかなんて、考えたくもない)

修道女(それに、道すがらも安全とは言い難いですし。私の目的的に考えて)

修道女(まあ、変なのが出て来ても彼女達のお守りをする気はサラサラありませんが)

修道女(唯一の利点は、僧侶が隣にいることで馬鹿な客に『法的に保障された商人と商品』だと思わせられることですかね)

修道女(この国の僧侶は実質警察と同義……いや、民草にはもっと信頼されていますから、多少は私の商売も楽になる)

修道女(もっとも、彼女はお堅いから、あまりに分かり易い詐欺紛いの商法は全力で阻止されるでしょうけど)ハァ

修道女「さて、それじゃあそろそろ上がりますか」ザバァ

修道女「オラ目玉、洗濯は終わりましたか?」

目玉「一応はな」

修道女「そうですか、上々です。ウチの無駄に多い糞同僚共をファックする権利をあげましょう」

目玉「いらぬ」

修道女「ですよねー。……っと、それじゃあ着替えますか。当然洗濯したての服ではなく、予備の方を着ますかね」ゴソゴソ

修道女「頭はドライヤーで乾かしますか。文明の利器って凄いですよねー」ガー

修道女「ふぅ。頭も乾かし終わりましたし、これ完璧ですね」

メイド「あ、やっと終わりました?待ちくたびれましたよー」

目玉「うむ、そうだな」



目玉「って、えっ?」

修道女「やあ、またお前ですか。ファッキン小間使いのクソメイド」

メイド「そう、私です!何を隠そう私なのです!」

メイド「毎度御馴染み!いつもニコニコ貴方の隣に這い寄る混沌ッ!」

メイド「パパ(白痴)の為に奮闘する派遣メイド!ご主人様のどんな要求やニーズにも応える(曲解込み)メイドの鑑!」

メイド「素敵な笑顔(嘲笑)とプレゼント(意味深)が憎らしくも愛らしい、私こそが!」

メイド「皆様ご存知!需要と供給の申し子、メイドでっす!」


メイド「あっ、『お前新キャラだろ』とかそんなツッコミは無視しますからそのつもりで」


修道女「……チッ。相変わらずウザいですね、貴方」

目玉(普段のお主もこんなもんだろ……とは言えんな。決して)

あ、メイドの一人称間違えたorz

次からメイドの一人称が『ボク』になりますが御了承ください

修道女「それで?私に何か用ですかアバズレ」

メイド「キャー!修道女ちゃんコワーイ!」

メイド「そんな顔してると、でっかい巨人に攫われちゃうゾ☆」

修道女「大きなお世話ですよ。それで?何の用ですか?」

メイド「いやぁ。修道女ちゃんが水浴びしているっぽい電波を受信したので、いても立ってもいられず覗きに来ちゃいました!」

修道女「死ね」

メイド「だが断るッ!」

メイド「……まあ覗きに来たついでに、ちょっとした世間話でもと思いまして」ニコ

修道女「……はあ、いいでしょう。で?どんな話題ですか?」チッ

メイド「ここから西に行った所に、中規模の都市があるじゃないですか」

メイド「そこで謎の化物を召喚しようとしている一団があるらしいんですよ」

メイド「しかも、旅行者や観光客を生贄として捕らえているとかいないとか!」

メイド「怖い話ですよねー」クスクス

修道女「……」

修道女「用件は以上ですか?」

メイド「以上ですけど、もう少しお話ししましょうよー構ってくださいよー」ウリウリ

修道女「だが断る。私はお前と違って暇なんです、これ以上私の安息を邪魔するならぶった斬りますよ?」ジロリ

メイド「あーん、ツレませんねー修道女ちゃんは!まあそこが可愛いんですけどねーッ!」

メイド「まあご明察の通りボクは忙しい身ですから、この辺りで失礼しますね。ああ、まだ見ぬ困ったご主人様がボクを呼んでいる気がする!」ビビビ

メイド「待っててねパパ!ボクが必ずたたき起こしてあげるからね!!」グッ

メイド「それではッ!また来週ーッ!宿題しろよっ!風邪引くなよっ!親孝行しろよーっ!!」シュバッ


目玉「……消えたな」

修道女「神出鬼没の嫌なヤツですよ。さあ、戻りますよ」

――――――
―――


-森の奥-


奴隷商人「はぁ、はぁ……クソッ!なんなんだよあの化物は!?」

奴隷商人「あの人数を一人で皆殺しとかありえねぇだろ!?」


メイド「ありえねぇのは貴方の方ですよ、人間」ヒョコ


奴隷商人「!?」

奴隷商人「あ、アンタ……なんでここに……!?」

メイド「なんでも何も、貴方を処分しに」

メイド「調達した奴隷を盗賊共に横流しするとは……中々思い切った愚行を犯したものです」

メイド「本来なら取引相手の盗賊ごとボクが皆殺しにする予定だったのですが、それは修道女ちゃんがやってくれたので手間が省けましたけどねっ」

メイド「まあそんなワケで、貴方にはここで死んでもらいます!」スッ

奴隷商人「ふっ、ふざけんな!大体なんだよそのおかしな杖は!?」

メイド「冥土の土産に教えてあげましょう。メイドだけに。……実は私は、メイドでもありますが同時に魔法少女でもあったのですっ!」ドヤァ


奴隷商人「……」

メイド「……」


メイド「さぁ、気を取り直して!皆様お待ちかね!レッツおしおきタァーイム!」

メイド「いあいあ☆マジカル!るるいゑ☆マギカ!イモムシさんたち、ごはんの時間だよーっ!!」


イモムシさんたち「」ウゴウゴ ウジュルウジュル


奴隷商人「あ、ああ……」ガクガク





奴隷商人「あああああ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙」バキバキゴリゴリブチュルブチュル

メイド「ふん、酷い末路です。きっとロクな生き方をしてこなかったのでしょうね」

メイド「本当、イモムシのフンのようなヒトでしたね。イモムシのフンになってしまえばいい」


イモムシさんたち「」ゲフー


メイド「ああ、食べ終わりましたか。うん、残さず食べたようですね。えらいえらい」

イモムシさんたち「///」

メイド「それじゃあ後のことは修道女さんに任せて、ボクは次のご主人様の所へ向いますか」

メイド「イモムシさんたちも、まったねー!」

イモムシさんたち「」マッタネー


メイド「じゃあ、いっちょ気合入れて頑張りますか!」グッ

メイド「ご主人様!首を洗って待ってろヨ!誠心誠意ご奉仕してあげますからネ!」

メイド「痴呆の激しいパパも見ててね!這い寄る混沌は今日も元気なのですっ!!」


メイド「それでは皆様ッ!しーゆーあげいーん!」シュバッ

――――――
―――



修道女「さて。僧侶ちゃーん、町娘ちゃーん、元気に仲良くやってますかー?」

町娘「」

僧侶「」

目玉「二人共体育座りのまま一ミリも動いとらんな」

修道女「思ったより事態は切迫しているっぽいですね」フム

僧侶「いや、まあ……共通の話題がありませんから……」

町娘「そもそも私達は出身が違いますから、どうしても話が合わなくて……」

修道女「ふぅん、そうですか。じゃあ今日はもう寝ましょう」

修道女「依頼の話も明日にしましょうか。今日はもう眠いです」フアァ…

僧侶「そ、そうですね」

修道女「ですが、見張りは置きますよ。そうですね……三時間おきに交替するとしますか」

町娘「えっと、その……時計は……?」

修道女「ここにありますよ」スッ

僧侶「? なんですかこれ、変な質感ですが」

修道女「気にしないでください。ただの時計ですから」ニコリ

修道女「それよりもまずは順番を決めるとしましょうかね。じゃんけんでいいですか?」

町娘「異論はないですね」

僧侶「そうですね、公平ですし」

修道女「そうですか。それじゃあいきますよー!」

修道女「野球をするならこういう具合にしやしゃんせーッ!」

僧侶「!?」

町娘「!?」

―――――

修道女「一番手」

町娘「二番手」

僧侶「三番手……」

目玉「ご愁傷様、とだけ言っておこう」

僧侶「ううぅ、疲れてるから朝まで寝ていたいのに……見張りなら貴方にもできるのでは?」

目玉「まあこの中で精神的に一番疲弊しているのはお主だろうがな。それは認めよう」

目玉「だが我はこの修道女の一部のようなものだからな。起きておくことはできぬのだ」

目玉(……ということにしておこう)

僧侶「マジですか……色んな意味で驚きなんですけど」

修道女「そう言う割には驚いているように見えませんけど?」

僧侶「いや、もう今更すぎるかなって思いまして」

町娘「なんかもう慣れてしまいました」ハハハ

修道女「……ふぅん。よくない傾向ですが、まあ、一々驚かれるよりはマシですね」

修道女「まあともかく、無駄話はこれくらいにしてさっさと寝てくださーい」パンパン

町娘「はい、おやすみなさい」ゴロン

僧侶「おやすみなさい」ゴロン


修道女「……」

修道女「(まったく。私が逃げるかもしれない、って可能性は考慮しないんですかねぇ……?)」

目玉「(そこまで考えが及ばぬほど疲れているのだろうさ)」

――――――
―――



-六時間後-

僧侶「うーん、むにゃむにゃ……」

町娘「僧侶さん、僧侶さん。起きてください。交替の時間ですよ」ユサユサ

僧侶「うっ、もうそんな時間ですか……」ゴシゴシ

僧侶「うわぁ、すでに空が白んでますね」

町娘「そうですね。……でも一応、見張りをお願いします」

僧侶「分かりました。ゆっくり……とはいきませんが、後は任せて休んで下さい」

町娘「はい。では、おやすみなさい」ゴロン

僧侶「おやすみなさい」

町娘「……」ZZZzz…


僧侶「……ふぅ」

僧侶「監視、ねぇ」チラ


修道女「……」ZZZzz…

目玉「……」ZZZzz…


僧侶「みんな、今頃どうしてるかなぁ……」

僧侶「……」チラ


修道女「……」ZZZzz…


僧侶(化物、か。……とてもそんな風には見えない寝顔ですね)

僧侶(銀色の美しい髪に、怜悧な整った顔立ち。豊満ながら引き締まった、しなやかな体)

僧侶(女の私でも美しく艶やかだと思います。……でも、人外)


修道女「……」ZZZzz…


僧侶(……今までは疲労で考えが及びませんでしたが。今なら、きっと、殺せる)ゴクリ


僧侶「……」ジリジリ

修道女「……」ZZZzz…


僧侶「…………」ジリジリ

修道女「…………」ZZZzz…


僧侶「……ッ!」ゴクン









僧侶「……無理、ですね。私では」

修道女「ええ、諦めた方がいいですよ」ムクリ

僧侶「!? 起きていたんですか」

修道女「ええ、まあ。諸事情あって深くは眠れないんですよ」

修道女「実は首筋に奇妙な烙印がありまして、それのせいで魔物に襲われることが多々あるんですよ。難儀なことです」

僧侶「……嘘ですよね?」

修道女「はい、嘘です」

僧侶「……」ハァ

修道女「それはそうと、のど渇いてませんか?今なら無料で飲み物を支給しますよ」ヨイショ

僧侶「渇いていますが……なんですかそれ」

修道女「酒ですよ。中世ですからね、水よりは安全な上に一般的です」ハイ

僧侶「? そんな当たり前のことを、何故わざわざ言ったんですか?というか、何です中世って」ドウモ


修道女「……」

修道女「HAHAHA、なんでしょうねぇ?なんででしょうねぇ?」

僧侶(誤魔化した)

目玉(誤魔化した)

修道女「ええ、諦めた方がいいですよ」ムクリ

僧侶「!? 起きていたんですか」

修道女「ええ、まあ。諸事情あって深くは眠れないんですよ」

修道女「実は首筋に奇妙な烙印がありまして、それのせいで魔物に襲われることが多々あるんですよ。難儀なことです」

僧侶「……嘘ですよね?」

修道女「はい、嘘です」

僧侶「……」ハァ

修道女「それはそうと、のど渇いてませんか?今なら無料で飲み物を支給しますよ」ヨイショ

僧侶「渇いていますが……なんですかそれ」

修道女「酒ですよ。中世ですからね、水よりは安全な上に一般的です」ハイ

僧侶「? そんな当たり前のことを、何故わざわざ言ったんですか?というか、何です中世って」ドウモ


修道女「……」

修道女「HAHAHA、なんでしょうねぇ?なんででしょうねぇ?」

僧侶(誤魔化した)

目玉(誤魔化した)

僧侶「……」

修道女「……♪」ゴクゴク

僧侶「受け取った手前言い難いんですが、なんですかこれ」

修道女「お酒ですよ」

僧侶「青いんですけど」

修道女「そりゃあ、広い世の中ですからね。青い酒くらいありますよ」

修道女「実はこれ、私が流れ着いた漁村で作られていたものでしてね」

修道女「何を発酵させたものなのかは企業秘密とかで教えてくれませんでしたが、少なくとも毒物ではないんじゃないですか?」

僧侶「……貴方は大丈夫、ですか。でも普通の人体には何か影響とか無いですよね?」

修道女「うーん。普通に冒険者とかに飲料水として売ったりしたこともありますし、大丈夫じゃないんですかね?」

修道女「少なくとも、直ちに影響が出るものではないでしょう」

僧侶「えらくアバウトですね。………………まあ、いいですけど」ゴクリ


僧侶「……口当たりはいいですね。少ししょっぱいですが」チビチビ

修道女「まあ、娯楽品ってよりは水代わりですし」チビチビ

僧侶「……修道女、さん」

修道女「別に呼び捨てでも構いませんよ。で、なんですか?」

僧侶「修道女さんは、どうして旅をしているんですか?」

修道女「出会った時に言ったじゃないですか。故郷に帰る為ですよ」

僧侶「ああ、あれって本当だったんですね」

修道女「信じてなかったんですね……まあ、嘘なんですけど」サラリ

僧侶「やっぱり嘘だったんじゃないですか……なら、どうして旅を?」

修道女「……そうですね」チビチビ

修道女「私は悪い化物を駆逐する良い化物だから、と言ったら信じますか?」

僧侶「……」















僧侶「いいえ、信じません」

修道女「分かってはいましたが、こうきっぱり断言されると意外とくるものがありますね」

それ直ちに影響が出る酒じゃないですかー
エラとか生えちゃうお酒じゃないですかー

>>68
    _ - 、
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 r .rfn、 ″   ヽ

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     /   く \
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修道女「まあ事実ですから、別に構いませんけど」

僧侶「……はあ。本当に、貴方はよく分からない」

僧侶「飄々として掴み所が無いのは勿論ですが、単身であれだけの数の盗賊を瞬殺」

僧侶「しかし鬼畜という訳でもなく、ほぼ野放しとはいえ奴隷の人達を解放し、その上町娘さんの

お願いを了承した」

僧侶「……それに、剣を向けた私を生かしている」


修道女(あれは貴方が路傍の石程度でしかなかったからなんですけどねぇ……)


僧侶「改めて尋ねます。貴方は、一体何なのですか?」

修道女「……」











修道女「愛の伝道師です」キリッ

僧侶「まともに応えないだろうと予想できてましたよ、ええ」

修道女「まあ、化物退治がメインなのは間違いないですよ」

修道女「人間を殺す場合は、相手が化物の崇拝者か私の逆鱗に触れたかのどちらかです」

修道女「はっきり言って、人間なんて路傍の石ころ程度にしか思っていませんよ。違いは岩か金塊か、って程度ですね」

僧侶「そうですか……それなら、私達教会に改宗してはどうですか?異教の怪物を殺すのが目的なら、そう不都合は無いはずですが」

修道女「ノーサンキュー。人間の妄想に付き合う気はサラサラありませんから」

僧侶「妄想、ですか……」

修道女「おや、怒らないのですか。意外ですね」

僧侶「どこぞの修道女が非常識の塊ですからね。……少し、分からなくなってしまいました」

修道女「おっ、これはもしかして回想シーンが入るパターンですか?」

目玉「お主は本当に自重せんな」

僧侶「ははは……まあ、回想しようにも、するだけの価値がある記憶がある訳でもありませんから」

僧侶「貴方に剣を向けた時、あらゆる意味で死を覚悟しました」

僧侶「その時に思い浮かんだのは、家族のこととか、楽しかった思い出とか、そんなんじゃなかった」

僧侶「ちゃんと、あった筈なんですけどね。思い出が。でも、それはきっと全部ウソだったのでしょうね」

僧侶「流石の私でも、何が『人間らしい』ことかは分かります。良い意味でも悪い意味でも、そこから逸脱する為の教えが教会の教義ですから」

僧侶「だから、一度まっ白になった頭で考えたんです。私の今までってなんだったんだろう、って」

僧侶「そしたら、私の人生って、実はとてもつまらないものだったんじゃないかなぁと、思ったん、です」ウトウト

修道女「……考えすぎな上に飲みすぎですよ。見張りは私がやりますから、貴方は寝ていなさい」

僧侶「……そうですね。こんな事を言うなんて、私らしくありませんでした」

僧侶「お言葉に甘えて、もう少しだけ休ませていただきます」

僧侶「おやすみなさい」

修道女「おやすみなさい。まあ、すぐに叩き起こしますがね」

――――――
―――



修道女「ヒャッハー!朝だァ―――!」ゲシ! ゲシ! メメタァ!!

僧侶「たわばッ!?」

町娘「あ、おはようございます」ムクッ

僧侶「ちょっ!いきなり何するんですか!!」ガバ!

修道女「HAHAHA!ちゃんと叩き起こすって予め言ったじゃないですかやだなー」

僧侶「だからってもっとやり方があるでしょう!?なんで踏んだ後さらに追撃をいれるんですか!!」

修道女「趣味です」サラリ

僧侶「詫びれも無く即答!?性質悪ぃなオイ!!」

町娘「ふふふ、朝から元気そうですね。僧侶さん」クスクス

僧侶「そりゃぁあんな起こされ方すれば元気になるか瀕死になるかしかないでしょうよ!」

修道女「まったく、騒がしい……寝る前のあのしおらしさはどこにいったんでしょうねぇ?」

僧侶「貴方のせいで殉教しましたよまったくもう!」

修道女「昨日は眠かったので保留にしていましたが」

修道女「私にもちょっと急用が入ってしまいましてね。できるだけ早く貴方を家にまで送り届けたいのですが、貴方の家ってどの辺りなんです?」

町娘「えっと……ここからあまり離れていない筈なのですが……西にある村です」

修道女「西……?ほう、丁度いいですね。正確な場所が分からないのが難点ですが、西に向うのならそれなりに都合がいい」

僧侶「? 何故ですか?西に何の用が?」

修道女「それはヒミツです」

修道女「ともかく、急ぐに越したことはないでしょう。ほら立って、さっさと行きますよー」

――――――
―――

僧侶「森を抜けてから大分経ちますが……何もありませんね」ハァ

町娘「この辺りは何かと天災が多いですから、作物どころか草木がまとも育たないんですよ」

修道女「ほう、土地の事情を知っているとは。という事は、近いのですか?」

町娘「はい。もうすぐ着くと思いますよ」

僧侶「あぁ……暑い」グビグビ

修道女「さっきから湯水のように飲んでいますが……大丈夫ですか?炎天下で酒を飲むとか自殺行為ですよ?」

修道女「それに、その酒も連続して服用するのは止めた方がいいと思いますが」

僧侶「お構いなく。この程度では死にはしませんよ、たぶん」

目玉「割といい加減だなお主」

僧侶「どこぞの誰かの奔放さがうつったんですよ」グビグビ

修道女「言うじゃない?」

町娘「あははは……あれ?」

僧侶「?」

町娘(今……僧侶さんの首になにか……)

僧侶「? どうかしましたか?……もしかして、何かついてます?」ペタペタ

町娘「あっ、いえ……気のせいだったみたい、です」

僧侶「? ならいいですけど」

修道女「……」


修道女(僧侶ちゃんは禁酒した方が良さそうですねぇ。まあ、私が止める必要性は皆無ですが)

目玉(ゲスいな、お主)


僧侶「そういえば、町娘さん」

町娘「? なんですか?」

僧侶「どうしても帰らなければならない理由があると言っていましたが、それはなんですか?よろしければ聞かせてください」

町娘「……」

町娘「……必ず、帰らなければならないんです」

町娘「でないと、両親や、町のみんなが……」ギリッ

町娘「だから、一刻も早く帰らないと……!」

僧侶「いや、その理由を訊いてるんですけどね?」

修道女「まあ、現地に着いてからでいいんじゃないですか?」

修道女「それにホラ、どうやら見えてきたようですよ」

町娘「!」

僧侶「あっ、ホントだ!これでようやく休めます!」

町娘「みんなっ!!」ダダッダーッシュ

僧侶「えっ、ちょっ、町娘さん!?」

修道女「走っていっちゃいましたね」アララ

目玉「どうやら、休むのは全力で走った後になりそうだな」ヤレヤレ

僧侶「そんなぁ!?ヤダァァアアア!!」

修道女「はあ。いいからさっさと追いかけますよ」ガッ

僧侶「えっちょ、待ってください!引き摺ってる!引き摺ってますって!!」ザリザリザリザリ

――――――
―――



-寂れた町・町外れの館-

司祭「町娘はまだ見付からんのか!?」

信徒1「も、申し訳ありません……」

司祭「あの娘がいなくなって既に三日!これ以上時間をかける訳にはいかぬ!」

司祭「何としてでも、早急にあの娘を探し出せ!!」

信徒2「し、司祭様ッ!」ガタッ

司祭「なんだ!騒々しい!」

信徒2「捜索中の町娘が発見されました!」

青年「……!」

司祭「なんと!」ガタッ

司祭「おお、これでこの町は……我等は救われる!」


\バンザーイ!!/\バンザーイ!!/\バンザーイ!!/

-寂れた町・入り口-


町娘「あ、あの……」

僧侶「」ボーゼン

修道女「なぁにこれぇ?」


信徒達「」ズラァァァ…


僧侶「な、何故私達は囲まれているのでしょう……?」


目玉(全員、黒いローブに奇妙な鹿の面を着けておるな)

修道女(何かの宗教団体でしょうね……これはこれでアタリかもです)


???「町娘!」

町娘「その声は……お父さん!?」

町娘父「お前……!一体今までどこに行っていたんだ!?まさか逃げようとしたんじゃないだろうな!?」

町娘「っ!?違う!私は奴隷商に捕まって、それで……!」


僧侶「」オロオロ

目玉「(僧侶はオロオロしておるが……)」

修道女「(何となく事情は掴めましたね)」

町娘「」ギャーギャー

町娘父「」ワーワー


修道女「……」イラッ


修道女「あー、どうどう。それくらいにして貰えません?」

修道女「私もこの娘も疲れているので、さっさと解放して貰いたいのですが」

僧侶「貴方に引き摺られた跡が痛いです……」

町娘「ハッ、そうです!この人達を解放して下さい!奴隷商に捕まった私を助けて下さったんですよ!?」

町娘父「……いや、まだ事態が飲み込めない。それにお前の言っていることが本当かも確証が無いからな。お前もそいつらも牢に入ってもらう」


僧侶「えー」

修道女「えー」

目玉「えー」


町娘「そんな……!いくらなんでも不当です!!私は嘘なんか吐いてないし、この人達は、そんなんじゃ……」


??「そこまでにせい!!」


町娘「!?」

町娘父「!?」

信徒達「!?」

僧侶「!?」

目玉「!?」

修道女(お腹すいたな)ハァ

司祭「」カツカツカツ

町娘「司祭様……!」


ザワ…ザワ… ザワ…ザワ…


司祭「町娘、よく無事で帰ってきたな。お前の目を見れば分かる。辛かったろう?」

町娘「い、いえ。そんなことは……」

司祭「それにそちらのお方」

修道女「? 私ですか?」

司祭「町娘が世話になったようだ。礼を言う」

修道女「いえいえ。助けようと思って助けた訳じゃありませんし、連れて行けと頼まれたから連れて来ただけですし」

修道女「感謝されるいわれはありませんよ。無論、捕らえられるいわれもありませんが」

司祭「そうですな、申し訳ない。ただ、……そこのお前」ジロリ

僧侶「」ビク

僧侶「な、なんでしょうか……?」


司祭「……」

司祭「いや、なんでもない」


司祭「ともかく、三人とも疲れておるだろう?町娘父、しっかり療養させてやれ」

町娘父「……分かりました、司祭様」

目玉「(随分と閉鎖的な町だな)」

修道女「(その上統率が取れている。頭の言う事には絶対服従で、文句すらないときた)」

修道女「(あの司祭には、それを成せるだけの人望と能力があるのでしょう。……どうやら、ここに立ち寄ったのは無意味ではなさそうです)」ニヤリ

僧侶「? 何で笑ってるんですか?」

修道女「こちらの話ですよ。気にしないで下さい」


修道女「というかそれより、貴方はここでの身の振り方を考えるんですね」

僧侶「へ?何でですか?」

修道女「……分からないんですか?」

僧侶「はい、まったく」


修道女「」

修道女「……世間知らず」ハァ…

僧侶「わ、悪かったですね!」

修道女「いや、無知なのはいいことですよ。馬鹿は手に負えませんが」

僧侶「どう違うんですか、それ」


僧侶「まあいいですけど。それで、身の振り方を考えろって……一体なんなんですか?貴方が忠告なんて、本格的に嫌な予感しかしないんですけど」

修道女「まあ、そういう話は着いてからにしますよ。歩きながら話すのダルいんで」

僧侶「貴方は何かとはぐらかしてばかりですね……」

修道女「私はミステリアスな女ですからね」ドヤァ

僧侶「確かにミステリーですよね。オカルトやホラー的な意味で」

修道女「……言うじゃない?」ムス

僧侶「言われてばっかりですからね。少しは言い返さないと」


町娘「」

信徒達「」

町娘父「」


僧侶「あっ、着いたみたいですよ……って、なにこれ」

館「」

僧侶「すごく……大きいです……」

修道女「確かに、中々立派な家じゃないですか。ただの町娘かと思いましたが、あれで名士の子だったんですね」

修道女「……報酬の方、少し考えますか」ボソ

僧侶「あっ、やっぱり無償じゃなかったんですね。道中は特になにもなかったのに」

修道女「まあそれより、アレですよね」

僧侶「? どうかしたんですか?」

修道女「いえ、空模様が変だなと思っただけです。これは雪が降るかも」

僧侶「またまたぁ、そんな訳ないじゃないですか。こんなに暑いのに」


信徒達「……」

――――――
―――

-町娘邸内-


僧侶「うわー、広いですねー」キョロキョロ

修道女「まあ、確かに広くはあります。もっとも、途中に見た家々もそれなりではありました」

修道女「この町が寂れているように見えるのは雰囲気だけ。どの家も実際はそれなりに裕福に見えます。まあ、この家がより輪をかけて立派なのは認めますが」チラ


信徒達「……」


修道女「(まあ、寂れているように視えるのは、ただ単に今ここに町人が総集結しているからなのでしょうが)」

目玉「(そうだな。だが、それはあまりにも過剰な反応だ)」

目玉「(少なくとも、我等が警戒されておるのは間違い無いだろうが……)」

修道女「(それだけじゃありませんね。恐らく、この町の教義ではそれだけ町娘が重要なのでしょう)」

修道女「(替えが効かない何か……神の予言を受けた勇者的なアレか、それとも代々の血脈が所以の何かか。まあ、大体予想がつきますがね)」


僧侶「? どうしたんですか?さっきからこそこそと」

目玉「いいや、何でもないぞ」

修道女「そうですね。ただ盗むならどの壷が良いかなと、少し相談を」

僧侶「やめて!」

町娘父「よろしいですかな?」ヌゥ

僧侶「うっひゃぉい!?」ビクゥ

修道女「無様な悲鳴ですね」ハァ


修道女「……それで?ようやく私達を解放する気になりましたか、人間?」

町娘父「……私達は司祭様を交え、町娘と少々お話があります」

町娘父「お二人には悪いですが暫しの間外には出ず、ここで我々の会談が終わるまでお待ちして頂きたい」

町娘父「勿論、私共の方で部屋を用意させていただきます。どうぞ、旅の疲れを癒して下さい」

僧侶「えっ……と。……どうします、修道女さん」

修道女「……」


修道女(死んだ目にどこか事務的な態度。罠の類……では無さそうですね)

修道女(あの司祭とやらは、それなりに“話が分かる”ようでしたし)


修道女「いいでしょう。部屋にまで案内して頂けますか?」

町娘父「分かりました。おい、彼女達を案内しろ」

信徒「……分かりました。こちらへどうぞ、お二方。荷物をお持ちしましょう」

修道女「いえ、結構ですよ。私や私の荷物に触れば即殺しますので、そのつもりで」

目玉「悪即斬、というヤツだな」

僧侶「違うと思いますよ」

町娘父「では、私はこれで」

修道女「ああ、そうそう。言い忘れていたことがありました」

町娘父「」ピタ


町娘父「……なんですかな?」

修道女「私やこのちんちくりんに晩餐を振舞う必要はありませんから、お気遣い無く」


信徒「!」

町娘父「!」


僧侶「えっ、ちょ!?今ちんちくりんって言いました!?と言うか、なんですか晩餐って!?」


町娘父「……分かりました。司祭様にそう伝えておきます」

修道女「ええ、頼みますよ。決して不備が無いように。……さあ、行きますよ僧侶」カツカツ

信徒「……」カツカツ


僧侶「やめて!私を無視して話を進めるのはやめて!おいてかないでー!!」タッタッタッ

――――――
―――

-町娘邸・客室-


信徒「こちらになります」ガチャ

修道女「ふむ、悪くない部屋です。早速物色しますか」ガサガサ

僧侶「やめて!」

修道女「」

修道女「」コト


修道女「さて、と。そこの貴方」

信徒「」

修道女「私に何か言いたいことがあるのでは?」

信徒「……お見通しですか」スッ

青年「」

修道女「ふぅん、仮面を外しましたか。いいでしょう、その誠意に免じて話すことを許可します」

青年「」ペコ


僧侶「ごめん、ちょっとなに言ってるかわからない」

目玉「まあ、今は聞いておくだけに留めておけ。話が進まんからな」

僧侶「ひでぇ」

青年「俺は青年。町娘の……恋人です」

僧侶「恋人!?」

修道女「へぇ、それはなんともまあ……ご愁傷様」

青年「……どうやら、貴方はすべてお見通しのようですね。この町の事も、あの娘の事も」

修道女「当然です。更に言えば、貴方が私に何の用があるのかも」

青年「そうですか。……どうやら、貴方は俺が思っている以上の存在らしい」

修道女「あたりまえです。私は人間の理解の外に位置する者なのですから」ドヤァ


僧侶「あの、これ一応私も当事者ですよね?なのになんで会話の一片も理解できないんですかヤダー!」

青年「申し訳ありませんが、少し静かにして頂けませんか?」

僧侶「あ、すみません」

修道女「そうですよ。これでも飲んで大人しくしていなさい」スッ

僧侶「あ、どうも」


修道女「……さて、話がそれてしまいましたね」コホン

修道女「それで?私に一体何の用ですか?」

青年「……」

青年「頼みます。町娘を、助けてやってください……!」

とりあえず僧侶はそれをこれ以上飲むのをやめなさい。

>>96
僧侶「酒ッ!飲まずにはいられないッ!」

修道女「いいですよ」

僧侶「えっ」

目玉「えっ」

青年「えっ」

修道女「えっ」


修道女「何なんですか揃いも揃って、窓に触手が張り付いているのを発見した時のような顔をして」

目玉「だって……なぁ?」

僧侶「今までの修道女さんのキャラ付けを考えれば……ねぇ?」

青年「正直、引き受けてもらえるとは微塵も……」

修道女「なら何故頼んだし」

青年「なんていうか……駄目元で?」

目玉「お主も相当抜けておるな。まあ、それほど切羽詰っておったのだろうが」

僧侶「前から思っていたんですけど、貴方ってフォローいれるの上手ですよね」

目玉「そう褒めるな。だが安心するのはまだ早いぞ青年。恐らく此奴は頼みを聞く対価に何らかの無理難題をお主に迫るぞ、気をつけよ」

僧侶「そういえば町娘さんにも対価を要求していたような気がしますね。青年さん、注意してください!」

青年「は、はあ……がんばります」


修道女「お前ら剣でぶっ刺すぞ」

修道女「……まあ、確かに無償で助けてやる気はありませんけど」

目玉「ですよねー」

僧侶「ですよねー」

修道女「コラそこ、半眼で私を見るんじゃない。というかそもそも、人間が私のような存在に助力を求めるならそれ相

応の代償を払うのは当然の義務です」

修道女「幸福であることが義務であり、自らが施しを受ける権利が正当であるというのなら。せめて、神に祈りを捧げ

るのは当然の対価でしょう?」

僧侶「ムッ。祈りを捧げるのは個人の自由意志です。神は無償で人々をお救いになるものでしょう」

修道女「そうですね、神様とはそういうものでしょう。ですが、私は神ではありますが確固たる意思を持っています。無償で誰かを助けたりはしませんよ」

僧侶「ついに自分が神だなんて戯言を……流石にそこまでいくと呆れますね」

目玉「」ハァ…

青年「」ヤレヤレ…

修道女「」クウキヨメ…

僧侶「えっ、なんですかこの空気。なんなんですかその視線。私何か間違ったこと言いましたか!?」


青年「それは、理解しています。彼女を救ってくれるというのなら、必ず貴方の望むものを用意しましょう」

修道女「ほう、良い台詞ですね。感動的だ。ですが、場合によっては無意味極まりませんよ?」

僧侶「やめて!数少ない私の出番を無かったことにしないで!空気はイヤー!!」

修道女「……どんなものでも、と言いましたが。その言葉に偽りはありませんね?人間」

青年「はい。彼女を助けるためなら、俺は……悪魔にだって魂を売ります」

修道女「ふむ、いいでしょう。引き受けてあげますよ、人間」

青年「本当ですか!?」

修道女「ええ。時間も押していることですし、供物の謙譲もコトが終わってからで構いません」ニコ

青年「ありがとうございます!」


僧侶「絶対裏がありますよねコレ」

目玉「まあ、ただで済む訳あるまい」


青年「では、その……俺は、貴方に何を捧げればよいのですか?」

修道女「決まっています。―――貴方の最も大切なモノを頂きましょう」


僧侶「きましたね。流石にこれは予想通りです」

目玉「うむ、予想通りの抽象的な要求だな。言いくるめて何もかも毟り取る気なのだろう」


修道女「ちょっと外野は黙ってろ」

青年「俺の、一番大切なもの……?」

修道女「そうですよ、人間。ちなみに依頼の取り止めは不可能ですので、今すぐ速やかにこの部屋から出て行きなさい

」ドゴォ

青年「ちょっ、待っ!?」

ドア「」ガチャン ガチン

僧侶(青年さんを放り投げて鍵を閉めた……!しかもなんて手馴れた動き……!)


修道女「さて、と。それでは寝ますかね」トサッ

僧侶「えっ?」

修道女「えっ?」

僧侶「いやいやいや!説明は!?分からないことだらけで私の頭がパーンってなりそうなんですけど!?」

修道女「正直めんどいのでパス」ズイッ

僧侶「諦めんなよ!?どうして諦めるんだよそこで!!」

修道女「いいじゃないですか、回答編は事件の後で。そもそも、このタイミングでネタばらしなんてありません」ズズイッ


僧侶「……」

修道女「……」ガシッ


僧侶「というか、あの、その……修道女さん?」

修道女「なんですか?」ニコニコ

僧侶「一体なにをする気なんです?」ダラダラ

修道女「ああ、気にしないでください。ただ、少しだけ確かめたいことがあるだけですから」

修道女「雪も降って寒くなり始めたことですし、丁度いいでしょう?」チラ

僧侶「え―――アイエェェェエエエエ!?」ガタン

修道女「ソーレ悪代官ごっこ~♪」フハハハ

僧侶「いっ、いやぁぁぁああああああああ!?」アーレー



目玉「……ふぅ」キマシタワー

僧侶「うぅ……なにするんですか、いきなり……」グスグス

修道女「全身タイツをちょっと剥いて肩を露出させただけですが、何か?」

僧侶「だから!なぜそんな血迷ったことをしたんですかッ!?」

修道女「趣味です」サラリ

僧侶「なに言ってんだ!?ぷじゃけるなー!!」ウゾダドンドコドーン


修道女(まあ、アホは放って置くとして)

修道女(僧侶の首から肩にかけて、何か窪みのようなラインができていまますね。……まあ、注視しなければ分からないようなモノですが)

修道女(しかし指には特に変化が無い、か)

修道女(原因の方はどう考えてもあの酒ですよね。……まあ、どうでもいいですけど)

修道女(重要なのは、“コレ”が使えるかどうか……)


僧侶「ちょっと!聞いてるんですか!?」

修道女「もちろん聞いてませんよ」

僧侶「ムキー!!」

修道女「まあまあ、そう怒らないでくださいよ」ヤレヤレ

修道女「そうだ。代わりに『私に何でも質問する権利』を上げますから、機嫌を治しなさい」

僧侶「随分と安いなオイ。……でも、質問したってどうせ全部に答えてくれる訳ではないんでしょう?」

修道女「当然ですよ。私は質問では怒りませんが、それに答えるかどうかは気分次第です」


僧侶「……」ハァ


僧侶「では、まず一つ」

修道女「どんとこい」


僧侶「何故貴方の天気予報は的中したのですか?」

修道女「むむ?そんなことですか。もっと確信を突いた質問が来ると思ったのですが」

目玉「恐らくは外堀から埋めようという魂胆なのだろう。考えなしのお主に対しては有効な手だな」

僧侶「私も少しは考えてますからねっ!」エッヘン


修道女(それでもかなりちょろいんですけどね)

修道女「雪が降るのを当てられたのは、アレです。はっきり言えばカンですね」

僧侶「カンで天気が分かれば不作に苦しめられる人なんていないと思います」

修道女「そうでもありませんよ。経験則で得られる知識もカンの精度に関わる重要な要素ですからね。武術ではこれを心眼と呼ぶのですが」

修道女「まあ、教会で教えを説く“だけ”の貴方には分かり辛いかもしれませんが?」

僧侶「ムッ」


僧侶(今の言い方はちょっとムカつきましたが、言い返せないのが現状ですね。事実私が知っていることなんてこの世の一片にも満たないほんの一握り程度でしょうし)

僧侶(しかも、その全てが『正確な情報』であるとも限りませんから)


修道女「……話を続けてもよろしいですか?」

僧侶「よろしいです」フンス

修道女「結構。では、私が何故『雪が降る』と直感したのかという理由ですが」

僧侶「? カンに理由なんてあるんですか?」

修道女「……貴方、私の話を右から左に流したりしてませんかね?」

僧侶「そ、そんなつもりは無いんですけど……すみません」

修道女「……まあ、私の言い方が悪かったのもあるでしょうからくどくは言いませんがね」コホン


修道女「いいですか?直感には必ず理由――というか、そう感じるに至った原因が存在するものです」

修道女「基本的に動物の肉体は受動的なものですからね。時には外界の変化に対し敏感に反応します。ほら、犬や猫なんかは地震が起こる前に安全な場所に避難したりするでしょう?」


僧侶「そうなんスか?」

修道女「そうなんですよ」

僧侶「ほえー」


修道女「……話を戻しますが」

修道女「その手の第六感めいた感覚器を、一応は人間も持っています」

修道女「これは一種の未来予測とでも言うべきもので、肉体が五感から得る情報の全てを脳で統合し『これから起こること』を予測するってモノなんですよ」

修道女「つまり日常的に、且つ無意識かで行われる未来予測が直感の正体と言う訳です。勿論、神格的な存在による天啓というのもあるにはありますが」

修道女「何であれ、それらに共通しているのは『必ずしも正確では無い』ということです。無論、私も例外ではありません。私の予知は不完全ですから」

修道女「ここまでで何か分からないことは?」


僧侶「大丈夫だ、問題ない」

修道女「不安になる返事ですね。まあ、いいですけど」

修道女「ともあれ、私が『雪が降る』と“直感”し得た判断材料は割りとそこまで多くはありません」

修道女「まず一つ目の要因は、町娘の台詞です」


町娘『この辺りは何かと天災が多いですから、作物どころか草木がまとも育たないんですよ』


修道女「天災――と聞くと地震や津波の類を想起しがちですが、実際にそんなモンが頻発する土地に住む馬鹿はいません」

修道女「ならば天災とは冷雨や蝗害、あとは次期外れの嵐や雪だろうなー、と“何となく”思ったワケです」

僧侶「ほうほう、それで?」

修道女「もう一つはさっきまで異常なほど晴れていたから、ですね。異様な暑さの次は異様な寒さが来ると相場は決まっていますから」

僧侶「お、おう……」

修道女「最後はあの信徒達が着ていた格好と、彼らの慌てた態度から、天候が真逆のものに変わるスピードはかなり速いんじゃないかな、と思いました、まる」

修道女「以上です」

僧侶「……まあ直感の説明ですし、色々とツッコミ所が満載なのは仕方がないと思います」

僧侶「でも、最後のはまた違うんじゃ……?」

修道女「その辺りは、アレです。事件が終わった後の解答編みたいなものに期待して下さい」

僧侶「お、おう……」

修道女「まあ、さっきも言いましたが。完全な予知ではないので、別に外れてもよかったんですけどね」

僧侶「えっ。じゃあ何であんなことを言ったんです?」

修道女「色んな人に『こいつ……できるっ!』と思わせる為ですね。その方が色々と都合が良いんで」

僧侶「また豪くぶっちゃけましたね……」


僧侶「うーん……じゃあ、さっき私を剥いたのは何でですか?」

修道女「貴方の肩が見たかっただけです」ニコリ

僧侶「」

修道女「冗談ですから顔を青くして後ずさらないでください。割りと傷付きます」

僧侶「……じゃあ、『ここでは身の振り方を考えろ』とか意味深なことを言ってましたが、あれは?」

修道女「ああ、それですか。話すのがバカバカしいくらい簡単な話ですよ」

修道女「先ほども言った通り、この世界の法は貴方達教会そのものです。ですが、そのすべてを取り仕切れている訳ではありません」

修道女「それが、貴方達が異端と呼び排斥する者共のことですよ」

僧侶「と言うことは……つまり」

修道女「ええ、断言しましょう。この町は異端の神を崇める宗教組織です」

僧侶「なら、私は……」

修道女「そうですね。お察しの通り、いつ殺されてもおかしくない立場にありますよ、貴方」

修道女「自分達を異端と呼び虐げるモノが縄張りに、それも単身でやってきたのですからね。この町の住人は、貴方が教会に自分達のことを告げ口されるのを恐れている」

修道女「私がいなければ、たぶんあの場で八つ裂きにされてましたね」

僧侶「oh...」

修道女「……恐らく、今後も私が旅をして回るのはこんな場所ばかりでしょう」

僧侶「え?」

修道女「この世界には、貴方達教会が崇める『神様』以外の神が多すぎる。ですが、無理にその事実を受け入れる必要はありません」

修道女「悪魔だろうが神だろうが、そんなに違いはありませんからね。貴方は、貴方の信じたいものを信じればいい」

修道女「もっとも、自己責任でお願いしますがね」ニコリ

僧侶「…………」

修道女「長話をして疲れました。私はもう寝ますが、貴方はどうしますか?」

僧侶「……私は、もう少し起きています」

修道女「そうですか。まあ、酒はほどほどにしておきなさいよ」

修道女「おやすみなさい」

僧侶「おやすみなさい」


僧侶「…………」


僧侶「私、なにやってんだろ……」ハァ

――――――
―――

-町娘邸・町娘の部屋-


青年「町娘ッ!!」バン

町娘「」ビクッ

町娘「せ、青年……」

青年「……話は聞いた。俺の早計な判断のせいで、町娘を危ない目に合わせてしまった」

青年「本当に、すまないと思っている」

町娘「…………いえ、その件については謝る必要はありません。貴方が私の身を案じてあんなことをしたというのは、理解しているつもりですから」

町娘「でも、だからこそ……もう二度と、あんなことはしないでください」

青年「あ、ああ……すまない。だが、どうしても、俺は……」

信徒「町娘様、そろそろお時間です」ガチャ

町娘「分かりました。それでは青年……また、後ほど」パタン

青年「ああ、分かった」



青年「……」

青年「お前を生贄になんて、絶対させないからな……町娘」

ゆっくりでいいからねー(はよ)
むりしないでねー(はよ)

――――――
―――

-町娘邸・客室-


修道女「……」パチ

修道女「くぁ……よく寝ました」ムクリ

目玉「ああ、目が覚めたか、おはよう。……もっとも、今は夜だがな」

修道女「問題ありませんよ。むしろ、その方が都合が良いですし」

僧侶「……」スヤァ…

修道女「やはり酒を渡しておいて正解でしたね。ちょっとやそっとじゃ起きそうもなさそうだ」

目玉「その代わり凄まじい勢いで人間をやめていっているようだがな。まあ、本人は未だに自分の体の変化に気づいていないようだが……」

修道女「気付いていようがいまいが、私には関係ありませんよ。さあ、行きますよ」

目玉「? どこに行くというのだ?」

修道女「ちょっとした散策ですよ。……参加しないとは言いましたが、覗かないとは言ってませんからね」クククッ

目玉「ああ、そう」

-町娘邸・晩餐会場-


信徒達「」ワイワイガヤガヤ


司祭「……さて、そろそろ頃合いか」

司祭「良いかな、町娘?」

町娘「はい……構いません」

司祭「それは結構。……できればあの修道女殿にも参加して貰いたかったのだが、まあ、仕方があるまい」

町娘「……」





修道女「(予想通りやってますね)」ヒソヒソ

目玉「(司祭と町娘を除く全員が例の装束を着ておるな。……潰れた獣の顔に鹿角の装飾が付いた仮面、か)」ヒソヒソ

修道女「(そちらよりも注目すべきは、食卓に並べられた料理の方ですね。どういう訳か、野菜や魚などの副菜ばかりで主菜が見当たらない)」ヒソヒソ

修道女「(もっとも、主菜は“これから”用意するのかもしれませんが)」ヒソヒソ





司祭「では……我らの繁栄とこの地の平穏を願って、風の神性に受肉を乞う」

司祭「巫女よ、前に出よ」

町娘「はい」スッ





修道女「(おっ、始まるようですね)」ヒソヒソ

目玉「(……なあ、修道女よ。一つ、気になることがあるのだが)」ヒソヒソ

修道女「(なんです?)」ヒソヒソ

目玉「……何故、町娘は全裸なのだろうな)」ヒソヒソ

町娘「皆様、今宵はこの場にお集まりいただき、ありがとうございます」

町娘「そして私の不注意で晩餐の予定が狂い、結果として今夜にまで遅れてしまったことについては謝罪を。誠に、申し訳ありませんでした」

町娘「しかし、心配には及びません。歴代の巫女様方がそうであったように、私の命と血肉を以って、この地に潤いをもたらすことを約束しましょう」


町娘「それでは―――是非、“私を”ご賞味くださいませ」


信徒達「」オー!イタダキマース!!





目玉「oh…」

修道女「これで確定ですね。この町の住人が信仰している神性は把握しました」

修道女「それじゃあ、部屋に戻りますよ」

目玉「……町娘を放って置いて良いのか?青年との約束があった筈だが」

修道女「……」チラッ





信徒「」ワイワイガヤガヤ





修道女「別にいいんじゃないんですか?」サラリ

目玉「お主という奴は……」ハァ

修道女「HAHAHA!さあ、明日に備えて今夜はもう寝ましょうねーッ!」

目玉「……」ヤレヤレ

――――――
―――


修道女「朝だぞオラァ―――ッ!」ソニッヴーム!サマソッ!

僧侶「ひでぶっ!?」ゴブァ


僧侶「」ピクピク


目玉「ユーウィーン(棒)」

修道女「故郷へ帰るんだな、お前にも家族がいるだろう」ドヤァ


僧侶「いきなり何するんですか!?」ガバァ

修道女「ストツーごっこ」

僧侶「なに訳のわからないことを言ってるんですか貴方は!?いい加減にしないと本当に訴えますよ!?」

修道女「いいじゃないですか、そう怒らないでくださいよ。それに、私だって別にやりたくてやってる訳じゃないんですよ?」

修道女「最初の方と比べると大分キャラがブレてますからね、私。だからこの辺りで整合性を取るために一発ボケをかましておかなければならない、と神が言っています」

僧侶「いや、そんなメタい事情知りませんから」ハァ…

修道女「まあ、何はともあれ」

僧侶「今日も元気だ酒がうまい!」グビグビ

目玉「もうお主のキャラ付けは戻りそうにないな」

修道女「そうですね。今の台詞も、聖職者のソレとは到底思えませんし……おや?」


ドア「」コンコン

??「朝食をお持ちしました」


修道女「どうぞ、鍵は開いていますよ?」ククッ

??「では、失礼いたします」キィ


僧侶「大きなお屋敷ですし、やっぱり女中さんですかね?」ヒソヒソ

目玉「さあ、どうだろうな……む?」





町娘「おはようございます」ニコ

目玉「ファッ!?」

僧侶「おはようございます、町娘さん」

修道女「おはようございます、人間」

目玉「」

町娘「今朝はよく眠れましたか?」

僧侶「それはもう!完全に疲れも抜けましたよ」

修道女「あの後ずっと寝てましたからねぇ」

町娘「そうですか、それはなによりです。……では、朝食はいかがですか?こんなものしかお出しできなくて、恐縮なのですが」

僧侶「いえいえ、そんな!いただけるだけでもありがたいんですし、そんなに謙遜しないでください」

修道女「そうですね。……もっとも、材料にもよりますが」

町娘「ふふ、警戒しなくてもかまいませんよ。普通の食材しか使っていませんから」

修道女「ならば結構。いただきましょうか」

僧侶「主に祈りを捧げてからですけどね」エイメン






目玉「……」

目玉(解せぬ)

目玉(のう、修道女よ)

修道女(なんです?)

目玉(これはどういうことだ?何故町娘が生きている?)

修道女(ネタ晴らしは後ですよ。今は食事が優先です)モグモグ

目玉(…………ならばいいが)チラ


僧侶「今日も元気だメシがうまい!」ガツガツ


目玉(あやつはもう駄目かも知れんな、色んな意味で)

修道女「さて、町娘さん。私達はいつ解放されるのですか?」

町娘「近い内に……早ければ明日にでも町から出られると思いますよ」

僧侶「そうですか……では、町娘さんともお別れなんですね……」

町娘「……はい、そうなります。……修道女さん、僧侶さん、私を無事ここまで送り届けてくださって、本当にありがとうございまいした」

僧侶「そ、そんな!お礼なんていいですよ」テレテレ

修道女「そうですね。気にするほどのことじゃありませんよ」


修道女(まあ、最終的には貴方の護衛分の依頼料も、あの青年から頂くワケなんですがね)クククッ


町娘「それでは、私はこれで」ペコリ

修道女「ええ。では、また近い内に」


目玉「……」

僧侶「……」

修道女「……」

僧侶「町娘さん……なんか、ヘンでしたね」

修道女「彼女と会ってからそう経っていない貴方が言っても、説得力はありませんがね」

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