侍「呪われた僕のダンジョン探索」(14)

――とある遺跡
魔物「ギャーギャー」

侍「…くそっ、負けた…僕は、こんな所で死んで……!僧侶!?僧侶は!?」

僧侶「……」

侍「僧侶…呪いで苦しんでる僕をかばって…」

ギャーギャー、キャキャキャ…

侍「ああ、僕の旅は…こんなあっけなく終わるのか…両親の敵も討てず、大切な女の子一人も守れないで…ああ、呪いの痛みもなくなってきた…もう…」

――全滅しました。

――
侍(…あれ、明るいや…ここは、あの世…?僕、一応天国に行けたのかな…?)

女の子の声「…!侍!しっかりして!!」

侍(あれ…?僧侶の声…?そっか、僧侶がいるなら、やっぱり天国…)

僧侶「ちょっと、しっかりしなさい!!」バチーン!

侍「??!?!!いった!!」ガバッ

僧侶「侍!?起きた?生きた?大丈夫?また死なない?」

侍「………えっと………」キョロキョロ

聖職者?「まだ飲み込めてないようですね。貴方は生き返ったんですよ。1度死んで」

おじさん?「初めて死んだようじゃしのう、訳が解らないのも無理はないわい、ガッハッハ」

侍(えっと、多分司教らしき人と、このおじさんは、ドワーフ?あとおじさんの脇の人形…ずいぶん可愛い人形だけど、このおじさんのかな…?)

僧侶「このおじさんが私達を寺院まで連れてきて、生き返らせてくれたのよ」

侍「そう…だったんですか。ありがとうございます」ペコリ

おじさん「いやいや、たまたま通りかかったものでな。しかし、お前さん達はひどかったぞ、死体に魔物やら動物やらが群がってな、腹から色んなモノがはみ出ておったわい。そっちのお嬢ちゃんなんぞ、白い――」

以前、3のくせに「2get」と書き込んでしまい、
「2000万年ROMってろ!」と言われてしまった者です。

言われた通り2000万年間、沢山沢山ROMりました。

猿から人類への進化…
途中、「ガットハブグフーン?」と書き込んだジャワ原人に反論しそうになったりもしましたが、
言いつけを固く守り、唇を咬んでROMに徹しました。

そして現れては消えていく文明。数え切れないほどの戦争…生と死、生と死。

2000万年経った今、晴れて縛め(いましめ)を解かれた私(わたくし)が、
2get出来るチャンスに今っ!恵まれました。
感動で…私の胸は張り裂けんばかりです。

卑弥呼女王、見てますか?
義経様、清盛様見てますか?
信長様、秀吉様、家康様 見てますか?

それでは、2000万年の歴史の重みと共に、
キーボードを叩き壊すほどの情熱をもって打ち込ませていただきます。

2get

僧侶「白い肌が見えてた!?恥ずかしいな…」

おじさん「白い骨がみえとったよ、ガッハッハ!!」

僧侶「……」

侍「と、とにかく…本当にありがとうございました。あの、司教さん?も」

司教「いえいえ、私は仕事ですから。皆さん、これからもたくさん冒険して、ほどほどに死んで、たくさん当寺院を利用して下さいね!」ニッコリ

侍「はあ…」

僧侶「はあ、じゃないでしょ!私はもう骨まで見られるのはイヤよ!」

侍「そりゃあ僕だって、腹の中身まで見られるのはイヤだよ…」

おじさん「しかしお主ら、見たところ駆け出しの冒険者のようじゃが、なんで二人だけでダンジョンに行ったのじゃ?」

僧侶「だって、この前から魔物があちこちに出たから、って、町から町への往来が大変になっちゃったんだもん!この町に来るのにも、関所ばっかりですごい時間かかったんだから!」

侍「それで、冒険者になれば、往来に制限がなくなるって聞いて、それで…」

おじさん「なるほどのう。一人前の冒険者と認められるためには、あの遺跡で『成果』を出す必要があるからの」

侍「ええ、ただ流石に甘く見すぎていたようです…」

僧侶「ちょっと焦っちゃったね」

おじさん「焦った、か。何か理由でもあるのかの?」

侍「それは…」

僧侶「話してもいいよね?私達の町、魔物に襲われちゃったの」

おじさん「襲われた?」

侍「いえ、多分襲われた訳じゃないんです。あいつらにとっては、ただ通り過ぎただけ…でも、僕らの村は…」

おじさん「それは、いつの話じゃ?」

僧侶「3ヶ月位前かな?」

おじさん「つまり、空が薄暗くなった辺りではないかな?」

侍「!確かに…」

おじさん「今、何故この国が冒険者を優遇しているか知ってるな?太陽宮が、魔物の手に落ちたという事じゃ。つまり、魔物が太陽宮を攻めるか、落とした後魔物を集めようとしたか、その時に――」

僧侶「魔物が私達の町を通った、って事?」

侍「つまり、町のみんなの敵は、太陽宮にいる…!」

おじさん「そういう事じゃな。そして、太陽宮に行くには結局、冒険者になるのが手っ取り早いじゃろう。じゃが、お主らまだ二人だけで冒険を続ける気かの?」

侍「いえ、それが厳しいのは身にしみました…」

僧侶「でも、私達大分遅れたみたいで、もうほとんどの冒険者がどこかのパーティーに入ってたよ。私達が焦って、ちゃんと仲間を探さなかったからかも知れないけど」

おじさん「ふむ、ふむ。そう言うと思ってたわい。そこでじゃ!」ズイッ

侍「!?」

おじさん「わしらとパーティーを組まんか?実はわしらも後発組での、仲間を探すのに難儀しとったんじゃ。悪い話ではないと思うがのう」

僧侶「もしかして、私達を助けたのって…」

おじさん「ま、パーティーに誘うためでもある。金は払ったんじゃ、文句はないじゃろ、ガッハッハ!!」

侍「助けてもらったんです、文句なんかありません。でもわし『ら』って言ってましたけど、他にメンバーがいるんですか?この司教さんではないですよね」

司教「ええ、私は寺院の者ですから、冒険者ではありません。お仲間なら、その方の隣に居ますよ」

侍「隣…?」

僧侶「葬送、さっきから気になってたの、そのお人形!おじさんのなの?かわいいね」

人形「(ギギギ)かわいいですカ?ありがとうございまス」ペコリ

侍「…!」

僧侶「え、え、え~!?動くの!?喋るの!?」

おじさん「ガッハッハ、驚いたかのう?こいつは、わしが錬金術師の頃に作った魔傀儡じゃよ」

僧侶「おじさん、錬金術師なの?」

おじさん「元じゃがな。フィールドワーク好きがこうじて、今は狩人になったわい」

人形「マスターハ変わり者でスからネ」

おじさん「まあ、そんなとこじゃな。どうじゃ?こんな変わり者で良ければ、パーティーを組まんか?」

僧侶「私は構わないけど…侍は?」

侍「僕は…とりあえず、僕の左腕を見てもらえますか?」スッ

おじさん「!!これは、呪印か!?」

人形「正確にハ破滅の烙印でスね」破壊力ト引き換えニ、体力を奪われ続けルといウ」

おじさん「痛みも相当なモノだと聞く。お主、これはお主の村が魔物に襲われた時に?」

侍「そうです、魔物達が通り過ぎた後、気付いたら…」

僧侶「寺院でも、この呪いは解けないって言われたし…」

おじさん「どうじゃ?」

司教「これは…確かに難しいですね。ただひとつ言える事は、この手の呪いはやはり、かけた張本人か、それともその魔物の親玉を倒せば、おそらく…」

おじさん「まあ、そんなとこじゃろうな」

僧侶「結局、やる事は変わらないわね」

侍「そうだね。それでおじさん、こんな風に、僕は呪われています。こんな僕と一緒だと…」

おじさん「なんじゃ、そんな心配をしとったのか?構わん構わん、さっきも言ったが、わしらは他にパーティーを組むアテがないんじゃ」

人形「お互い、二人旅ハ危険でスよ?」

侍「そう、ですね…じゃあ…よろしくお願いします」ペコリ

僧侶「よろしくお願いします!!」ペコリ

おじさん「こちらこそ、な。さて、パーティーも決まった事じゃし、早速ダンジョンに、と言いたい所じゃが、今日はとりあえずもう休むかのう?」

人形「お二人ハ今日1度死んでまスしネ」

僧侶「平気よ!って言いたい所だけど…やっぱりちょっと体がだるいかな~」

侍「そうだね…」

おじさん「そうじゃろうのう。じゃあ今日はもう宿に泊まるとしよう。親睦も兼ねて、な」

僧侶「はーい」

――宿屋

僧侶「そういえば、お人形さんは、お人形君なの?それともお人形ちゃん?」

人形「どちらでモありませン。マスターガ設定ヲ面倒くさがっタのでス」

おじさん「その辺の設定はちと複雑での。まあ、時間のムダというヤツじゃ、ガッハッハ!!」

僧侶「ふーん、じゃあ女の子だと思えば女の子なのね?」

おじさん「それで構わんよ」

僧侶「そっかそっか、じゃあお人形ちゃん、こっちの部屋に来て、着せ替えさせてあげる!」

人形「私ハ着せ替え人形でハ…」

僧侶「いいからいいから。じゃあバンザイして――」

おじさん「楽しそうじゃのう」

侍「はい。良かったです、彼女もあれ以来、少し元気がなかったですから」

おじさん「それは良かったのう。ところで、あのお嬢ちゃんは、もしやお主の呪いを何とかしようとして僧侶になったのか?」

侍「ええ、そうです。それが申し訳なくて…」

おじさん「なに、本人がやりたいと思ってやったんじゃ、お主が気に病む事はない。しかし、人間とエルフのアベックとは少々珍しいのう」

侍「あ、アベックじゃないですよ!ただ…確かにこの国は人間ばかりで驚きました。彼女も少し窮屈そうです」

おじさん「どこの国もそんなもんじゃよ。同じ種族同士で集まって国を作っとる。お主らのふるさとの方が、特別懐が深かったんじゃなかろうかのう?」

侍「そうだったのかもしれません。旅に出てから、驚く事ばかりです」

――

人形「――じゃあ僧侶さんハ、侍さんノ為ニ僧侶になったのでスか」

僧侶「うん…そうなんだけど…」

人形「?どうしたのでスか?」

僧侶「私…まだ回復呪文使えなくて…」

人形「そうなんでスか」

僧侶「私が回復呪文使えてたら、今日も全滅しないで済んだかもしれないのに…」

人形「大丈夫でスよ。僧侶なのですかラ、そのうち回復呪文ハ覚えまスよ。今日寝て明日起きたラ、レベルが上がって覚えてルかもしれませンよ」

僧侶「そうかなあ…?そうかもね。ふふっ、ありがとうね人形ちゃん。人形ちゃんは慰めるの上手だね」

人形「私にハマスターノ人生経験がインプットされテいまスから」

僧侶「そっか、おじさん人生経験豊富そうだもんね」

人形「ドワーフハ長生きですかラね」

――

僧侶「じゃーん!!どう?着せ替えたら可愛くなったでしょ?」

侍「すごく女の子っぽくなったね」

おじさん「ふむ、馬子にも衣装じゃのう」

人形「データ上ハ Eローブ で変わらないンでスけどネ」

侍「見も蓋もないね…」

おじさん「さて、お嬢ちゃんも十分楽しんだじゃろう?明日は早くからダンジョンに行くからの、今日死んだ二人は早めに休んでおくんじゃな。わしは酒場でもう一杯やるがのう」

人形「マスター、飲みすぎないデ下さいヨ?」

侍「そうですね、じゃあ僕は早めに休む事にします。おやすみなさい」

僧侶「私も寝るね。おやすみ?」

人形「おやすみなさイ」

おじさん「おう、じゃあまた明日な――」

――

侍「おはようございます」

人形「おはようございまス」

僧侶「…おはよー」

おじさん「おお、おはよう。なんじゃお嬢ちゃん、元気がないようじゃな」

僧侶「レベルが上がったのに、回復呪文覚えなかった…」

おじさん「ふむ、まあそういう事もあるじゃろ。そう気を落とすな」

侍「僕はレベル自体が上がりませんでした…」

人形「上級職ハレベルガ上がりづらいでスからネ」

おじさん「そうそう、二人ともそう落ち込むな、これからじゃよ」

僧侶「うーん…」

おじさん「誰しも最初から強い訳ではない。少しずつ、じゃよ。まずは経験じゃ、さ、飯を食ったらダンジョンに行くぞい」

侍「そうですね、少しずつ…ですね」

僧侶「そっか、そうよね、うん。じあ、そうと決まったら、早速ご飯食べて冒険よ!」

おじさん「うんうん、その意気じゃ、ガッハッハ!!」

――数時間後、寺院

侍「……」ムクリ

司教「いやいや、連日当寺院を利用していただき、まことにありがとうございます」ニコニコ

僧侶「ごめんね、私が回復呪文覚えてれば…」

人形「僧侶さんノせいじゃないですヨ」

おじさん「そうじゃな、わしらも配慮が足りんかったの」

侍「…僕、足を引っ張ってますよね…」

おじさん「そんなことはないわい。じゃが、確かにわしらもお主の呪いを甘く見とった部分はあったかものう」

人形「思った以上ニ体力を削られるようでスネ」

おじさん「じゃが、これも経験じゃ。どういうモノかが分かれば、次からは対策も取れるしの」

僧侶「対策…?」

おじさん「確かに呪いは厳しいが、その対価の攻撃力は目を見張るモノがある。お主を誰かが庇い、その間にお主の攻撃で殲滅する。これで行こう」

人形「ダンジョンノ滞在時間モ短くしテ、私ヤ僧侶さんノ呪文モ惜しまず使って行きましょウ」

僧侶「なるほど、戦い方を工夫するのね」

おじさん「そうじゃ、大体の問題は知恵と工夫で何とかなる。道のりは困難かもしれんが、諦めるでないぞ」

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