ぼく「ぼくは家にいる」(40)



ぼく「おるすばんなんだ」

ぼく「おかあさんがおとなしくしていなさいって」

ぼく「おとな……ぼく子どもなのにね」クスクス

ぼく「えっと、おかあさんとのお約束」

ぼく「お外に出ちゃいけない。だれが来てもげんかんをあけちゃいけない。ちゃんと家にいる!」


ぼく「……」

ぼく「本でもよもうっと」トテトテ

ぼく「あった」ペラッ

キャー!

ぼく「!?」

トタトタトタ……

ぼく「うるさいなぁ」

ぼく「あ、おひっこししてきたんだっけ?」

ぼく「えっと、おとうさん、おかあさん、女の子、男の子」

ぼく「女の子はお姉さんだったかな?」

ぼく「……ぼくはしずかにおるすばんしてるのに」


ぼく「……」

ぼく「でもいいな。おとうさんやおとうとがいて」

ぼく「ぼくにはおとうさんはいないし、お姉さんもおとうともいない。ひとり」

ぼく「おとうさんはしんじゃったっておかあさんが言ってた」

ぼく「……おとうさんってどんな感じなんだろう」

ぼく「……」

ぼく「いいんだ! ぼく、おかあさん大好きだし!」

ぼく「おかあさんがいるからだいじょうぶ!」

ぼく「……おかあさん、早く帰ってこないかな?」


ぼく「……」

ぼく「てれびでも見ようかな?」トテトテ

ぼく「スイッチスイッチ……リモコン見つけた」

ぼく「ぽちっと」ポチッ

パッ! ――ワハハハハ

ぼく「お笑いてれびだ」フフ

ガチャンッ!

ぼく「!?」

バタバタバタ……

ぼく「……びっくりした。あの子のおかあさん? 何か落としたのかな?」


ぼく「大人もうるさくしちゃうんだね」クスクス

ぼく「“おとなしく”ってなんだろうね」クスクス

ぼく「そういえば……こっちのお部屋には入ったことないな」

ぼく「おかあさんがダメだって」

ぼく「でも今はおかあさんはお出かけ中」フフフ

ぼく「入っちゃおうかな?」トテトテ

ぼく「んしょ」ガタガタ


ぼく「……」

ぼく「あかないなぁ……カギかな?」ガタガタ

ウワッ!!

ぼく「!?」

ドタドタドタ……

ぼく「おとうさん……かな? 足音大きいなぁ」

ぼく「おとうさんって大きいのかな?」

ぼく「どれだけ大きいのかなぁ……」

ぼく「ぞうさんくらい? きょうりゅうくらいだったりして」クスクス


ぼく「……」

ぼく「おかあさんまだかなぁ」

ぼく「おかあさんはちょっと怒りっぽいんだ」

ぼく「やっぱりさっきお部屋に入らなくてよかった」

ぼく「怒られちゃう」

ぼく「でもね、やさしいんだよ」

ぼく「寒いときとかぎゅってしてくれたりするんだよ」フフ

ぼく「だからおかあさん大好き!」


ぼく「……」

ぼく「おもちゃで遊ぼうっと」トテトテ

ぼく「ひこうきのおもちゃ」スッ

ぼく「ぶーん!」タタタ

アハハハハ!

ぼく「!?」

パタパタパタ……

ぼく「……今のは男の子かな?」

ぼく「楽しそうだったな」

ぼく「ふふふ……ぼくもなんだか楽しいや」

ぼく「ぶーん!」タタタ



.


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



おばさん「あら、お引っ越しですか?」

お母さん「ええ……まあ」

おばさん「結構最近よね? こちらに越してきたの」

お母さん「ええ……」

男の子「ボクはね、おひっこししたくないのにね、ひっこしちゃうの」

お母さん「あ、こら!」

男の子「すごいんだよ! ひこうきのおもちゃがかってにとんだんだよ!!」

お母さん「こら! お家に戻ってなさい!」

男の子「だって、おもしろかったんだよ! なのにみんなきもちわるいって!」

お母さん「いいから、ほら、あっちにおやつがあるから」

男の子「わーい!」パタパタパタ


おばさん「……やっぱりでたんだね」

お母さん「えっ……でたって……」

おばさん「知らないで越して来ちゃったの? この辺りでは有名なんだよ、“でる”って」

お母さん「そ、そうなんですか?」

おばさん「ええ! でるのよ」



おばさん「小さな男の子の幽霊がね」


.


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



ぼく『まだかなぁ』



――なんでも置き去りにされたらしいのよ



ぼく『おなかすいちゃったな』



――餓死ですって……かわいそうに……



ぼく『でもおなかへったって言ったら怒っちゃうかな?』



――虐待されてたらしくてね……




ぼく『おとなしくしてなきゃね』



――声も出さずに耐えてたみたいで近所の人もよくわからなかったって



ぼく『大丈夫だよ、ぜったいお約束は守るから』



――母親に言われた事を律儀に守っててね……



ぼく『おかあさんとのお約束だからね』



――決して外には出なかったらしくて

すまん、更新見てなかった




ぼく『おかあさん、まだかなぁ』



――部屋の真ん中で発見されたの



ぼく『おかあさん、大丈夫だよ』



――母親はその三日後に行方がわかったらしいわ



ぼく『ぼくはおかあさん大好きだから』



――邪魔だったって




ぼく『だからね、ずっと、ずーっと待ってる』



――本当に酷い話だよ……






ぼく「おかあさんとのお約束。……だから」






ぼく「ぼくは家にいる」



>>14

気にすんなドンマイケル
投下速かったからな
レスありがとう

今更だがレスありがとう


スレ残ってたし、思い付いた蛇足を一気投下する
ぼく~をもし気に入ってくれてたのなら見ない方がいいのか……も


【わたし「思い出巡り」】




女「……いつ以来かな。ここに来たのは」

女「こんな辛気臭い所、二度と来たくなかったのに」

女「でもこれをやれば人生上手く行く……なんて……」

女「馬鹿な事信じて何してんだろ……私」


女「まぁ、せっかく来たんだしちょっと覗いてみっかな……」

――スタスタ……

女「……誰も住んでないのかな?」

――カチャッ

女「開いてる……」

女「……」キョロ

女「ちょっとなら入ってもいいよね?」

――パタン



わたし「……」

.


女「……」キョロキョロ

女「別に何も感じないし」

女「やっぱ適当な事言われたのか?」

女「だけど今は何にでもすがりたい」

女「アレがいた頃から不幸が始まったんだ」

女「だからあの職場の新人の言うことを聞いて……」

女「……」キョロ

女「……ここが私の不幸の始まり」


女「今になって少しは悪かったとは思うけどさ。でも邪魔だったんもんな。アレ」

女「アレさえいなければ」

――オカアさン

女「!?」

女「い、今の何? 空耳……よね?」

――シーン

女「……」ゴクッ


女「……発見されたのどこって言ってたっけ?」

女「どうでもよかったから覚えてないな」

女「ここだっけ?」

女「……」

女「……律儀に約束守ってたとか言ってな。警察が」

女「知らねぇっつーの」

女「……」


女「ただいまー……」

女「何ってなぁ――」


――おヵあさん!!


女「!?」


おヵアさンオかあサんおかァサンおかアサんオかぁさンおかアサんぉカあさん
おかアサんオかぁさンおかアサんおヵアさンオかあサんおかァサンおかアサん
オかあサんおかァサンオかぁさンおかアサんぉカあさんおヵアさンオかあサん


女「ひっ!!」ガタンッ!


――オかェりナサい

女「あ……あ……」ガタガタ

――ずットマッてたよ

女「ゆ、許して……わ、私が悪かったわ……だから」ガタガタ

――エらイ?

女「は、は?」

――いイこ?

女「う、うんうんうん!! 良い子、良い子だよ!!」


――ほントウに?

女「う、うんうんうん!!」

――よかったぁ

ぼく『おかあさん、大好き!』ニコッ

女「ひっ!!」

ぼく『おかえりなさい、おかあさん……』スゥ…フッ

女「き、消え……ひ、ひ、ああ……い」

――イヤァァァアアァ!!!



わたし「……」

.


―――――――――――



女『私ずっと不孝でさ』

女『ガキが出来たら男は逃げるし、ガキは死んじゃうし』

女『ちょっと長く留守番させただけなのに、死んだの私の所為にされるしさぁー』

女『その後もそのガキの一件でどこいっても不幸! なんだってんのよ!!』ダンッ

わたし「飲みすぎですよ」

女『何よ! 新人のくせに』

わたし「……わたし、いいおまじない知ってるんです。やってみませんか?」

女『おまじない?』


わたし「“思い出巡り”って知ってます?」

女『思い出巡り?』

わたし「上手くいかなくなったその原点の場所に行くんです」

わたし「そこからずっと現在まで辿って行くんですよ」

わたし「そうすると不思議と何もかも上手くいくようになるっていう……」

わたし「ある意味思い出を巡るので“思い出巡り”って言うんです」

わたし「多分自分を見つめ直すって意味もあるんでしょうね」

女『ふぅん』


わたし「先輩の原点ってさっき言った所なんじゃないですか?」

女『え?』

わたし「その時の“お家”に行かれてみては?」

女『家……ね』

わたし「……そこ、近くなんですか?」

女『そう……ね……』

わたし「それなら試しにでも行くべきですよ」

わたし「きっと……何か変わりますよ……」


.


―――――――――――


わたし「……」

弟「姉ちゃん。なんでここに来たの? ここ昔住んでたお化け屋敷じゃん」

わたし「お化け屋敷って。あんたここにいたいって最後まで一人でごねてたくせに」

弟「あれはまだ小さかったからだろ? 飛行機の玩具が勝手に飛ぶとか、今考えると超怖ぇよ」

わたし「……そのお化け、どういう子か知ってる?」

弟「……虐待受けて餓死した子だろ」

わたし「そう、可哀想な子。その母親は普通に生きてた……らしいよ」

弟「へー……なんで普通にしてられんだろうな」

わたし「なんでだろうねぇ……」

.


―――――――――――



――知ってる? あのお化け屋敷の話。



弟「姉ちゃん。帰ろうよ」



――ああ。最近女の人が入り込んだんだってね。



わたし「んー」




――見つかった時、おかしくなってたみたいで二つの言葉だけ繰り返してたらしいよ。



弟「……あの男の子の幽霊って、成仏出来たのかな?」



――何て言ってたの?



わたし「そうだね。出来たんじゃないかな」




――“ごめんなさい”と



弟「姉ちゃん、そういや質問に答えてないよ。なんでここに来たの?」



――“許して”だって



わたし「ふふ……ここに来たのはね、ただの……」





わたし「思い出巡り」



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