伊織「裏側の町」(77)

―仕事帰り 車内―

P「伊織、今日はどうしたんだ?」

伊織「何よ……」

P「あそこで失敗するなんて、伊織らしくない」

伊織「私だってちょっとくらい失敗するわよ」

P「その後、スタッフに当たり散らしたそうじゃないか」

P「そういう態度はいけないぞ」

伊織「……」

伊織「止めなさい」

P「え?」

伊織「いいから、車止めなさい!」

P「……わかったよ」

P「じゃあそこのコンビニのところで止めるから」

伊織「ちょうどいいわ。そこでオレンジジュース買ってきて」

P「ああ。でも買ってきたら俺の説教をきちんと聞くんだぞ」

伊織「……」

食べちゃダメ

―コンビニ前―

P「おーい、買ってきたぞー……」

P「……」

P「いない……」

P「おい、どこ行ったんだよ!!」

―裏路地―

伊織「にひひ、うまく撒いてやったわ」

伊織「今頃アイツ、凄い慌ててるわね」

伊織「……」

伊織「それにしても、裏路地にこんな道があるとはしらなかったわ」

伊織「ここ、まっすぐ行くとどこに着くのかしら……?」

イオリー

伊織「やばっ、追いつかれる!早く逃げなきゃ」

―路地裏の奥―

伊織「いつの間にか、凄く遠くまで来ちゃった気がするわね……」

伊織「ここ、どの辺りなのかしら……?」

伊織「全然大通りにも出ないし……」

伊織「道も狭いわね……」

伊織「仕方ないか……。道行く人に聞くしかないわね」


伊織「あの~、すいませ~ん」(営業用)

通りすがり「はい?」

伊織「ちょっと道に迷っちゃって~。大きな通りへはどうやって出たらいいんですか~?」

通りすがり「ああ、そこの角を曲がった所ですよ」

伊織「ありがとうございます~」

通りすがり「……あなた」

伊織「へ?」

通りすがり「早く、元いた場所に戻ったほうがいいわよ」

伊織「わ、分かりました~(変な人……)」

これはなにかとのクロスかね

>>10
クロスというか、題名はトワイライトシンドロームという名作ホラーゲームの一篇

伊織「えーっと、この角を曲がって……」

伊織「……あ」

伊織(確かに大通りなんだけど……、なんか古臭い感じね……)

伊織(都内にこんな所あったのね……)

伊織「しかし、全然見覚えが無い場所ね……」

伊織「しょうがない……交番で聞くしかないわね」

―交番―

伊織「すいませ~ん」

警官「どうしました?」

伊織「道に迷っちゃって~」

伊織「~区の~通りってどうやって行けばいいんですか~?」

警官「ん?~通り?知らないなあ……」

伊織「……え?」

警官「どこかと勘違いしてない?」

伊織「そんな……、だって……」

伊織「あ、~っていうお店があって、そこの近くにたるき亭っていう……」

警官「知らないなあ~……」

伊織「まったくもう!信じらんない!!
 公務員なんだから市民のために働きなさいよね、まったく!!」

伊織「あ、いつの間にか夕焼け……」

伊織「そろそろ戻らないと、みんな心配するわね……」


              ――忘却――

子供1「あのー」

伊織「え?はい?私?」

子供2「そうそう、お姉ちゃんだよ」

伊織「何か用?」

子供1「一緒に遊ばない?」

伊織「え?あ、悪いんだけど、私帰らなきゃ……」

子供2「どこに帰るの?」

伊織「え?どこって……、そんなの……」

伊織「765プロっていう事務所に、みんなが……」

子供1「みんなって?」

伊織「ちょうどあなたたちくらいの子で……」

伊織(あれ?思い出せない……?そんな……)

子供2「思い出せないの?じゃあ、思い出せるまでここで遊んでいけばいいじゃない」

伊織「……」

子供1「あ、私は亜美って言うんだ」

子供2「私は真美。双子だよ」

伊織(え……?)

亜美「ねー、お姉ちゃん」

伊織「何?」

真美「何か悲しいことでもあったの?」

伊織「……どうして?」

亜美「何だか、さみしそうな感じだったから」

伊織「……そうかもしれないわね」

真美「お姉ちゃんが良ければ、ずっと居ていいんだかんね?」

伊織「……ありがとう」

伊織(夕焼け……あんなに赤く…… )


             ――忘却――

やよい「あー、亜美、真美!」

亜美「あ、やよいだー」

伊織「……?」

伊織(どこかで見たことが……、でも思い出せない……)

やよい「そちらの方は……?」

真美「伊織お姉ちゃん。友達になったんだ!」

やよい「えー、いいなあ……」

伊織「いいわよ。私たちも、今から友達ね」

やよい「本当ですか?やったー!!」

やよい「あ、あの……」

亜美「どうしたのー?」

やよい「伊織お姉ちゃんと、手を繋いでもいいですか?」

伊織「……い、いいわよ。あ、あと、伊織でいいわよ」

やよい「じゃあ、伊織ちゃんって呼びますー!!」ギュ

―橋の前―

伊織(橋……?事務所の近くに……?そんなのあったかしら……?
   思い出せない……)

やよい「この橋を渡ったところに、私たちがいつも遊んでるところがあるんです」

やよい「さあ、行きましょう?」



  ――その橋を渡っては駄目!!――

伊織(え?)

伊織「……」

亜美「?どしたの?」

真美「早く行こうよ~」

伊織「ええ、分かったわ……」

伊織(木造の橋……。軋むわね……)

伊織(怖いくらい溶けそうな夕日……)


         ――忘却――

やよい「ここだよ~」

亜美「なにしてあそぼっか?」

真美「伊織お姉ちゃんは何が得意?」

伊織「……何かしら?歌?」

やよい「えー、凄い凄い!歌ってみて!!」

伊織「え、ええ」

―― あなたと過ごした日々を この胸に焼き付けよう―― 

――     思い出さなくても 大丈夫なように   ――

伊織(私、この歌をどこで知ったんだっけ……?)

伊織(どうして私、この歌を歌えるんだろう?)

伊織(確か事務所……)

伊織(伊織ー!!今度はカバーだぞー!!って)

伊織(事務所……?どこだったかしら……?)

伊織(確か一階に……、思い出せない……)


?「やあ、凄いな。綺麗な歌だね」

亜美「あ、真さん!!」

真「やあ。あ、そちらの方は?」

真美「伊織お姉ちゃん!!」

やよい「とっても歌が上手くて、美人さんなんですー」

伊織「や、やよいったら……」

伊織「あ、でも、美人さんという事ならそちらも負けてはいないわね」

真「え?」

やよい「はい?」

亜美「ぷくく……」

真美「あはは……」

伊織「な、何よ……?」

真「ははは、いや、ボクは男です」

伊織「え?」

伊織「あ、これは……その、ごめんなさい」

真「いえ、いいんですよ」

亜美「これでしばらく悪戯のネタができたねー」

真美「ふふふ、どうやってからかいましょうかねー?」

伊織「こらっ」

やよい「亜美、真美、ダメでしょ!」

亜美「わー、怒ったー!」

真美「真さん、助けてー」

真「ははは」

――かーごめかごめー かーごの中の鳥は――

―― いついつでやる 夜明けの晩に――



伊織「随分遊んだわね」

亜美「そう?」

真美「そんなでもないよー」

伊織「だって、夕焼け……あら?あんまり変わってないわね……」

真「伊織さんさえよろしければ……」

真「ずっとここに居たっていいんですよ?」

やよい「そうです~」

???「あらあら~」

亜美「っ!!」

真美「っ!!」

???「無理に引き止めちゃ、いけませんよ~」

伊織(あずさ……?いや、違う……)

???「もしかしたら、帰りたいんじゃないかしら~?」

亜美「そんなことない!!」

真美「だって、伊織お姉ちゃん、さみしいっていってたもん!」

???「あら~?どうしてさみしかったのかしら~?」

伊織(どうして……)

伊織(どうして……だったかしら……?)

伊織(だって、今日、あいつに怒られて……)

伊織(あいつ?)

伊織(伊織ー!!今回はカバーだぞー!!って……)

伊織(嬉しそうに……、嬉しそうに……)

伊織(誰……?)

伊織(今日……とっても怒ってた……)

伊織(誰……?憶えてる!だって、とっても大切な、私の……)

伊織(プロデューサー!!)

伊織「私……」

伊織「大切な人と、喧嘩しちゃって……」

伊織「それで、ここまで逃げてきたんだけど」

伊織「やっぱり、帰らなきゃ。仲直りしないと!」

???「そうね」

亜美「ちっ……」

真美「余計なことを……」


イオリー ドコダー ヘンジシテクレー


???「お迎えが来たようね」

???「さっき来た橋を、戻りなさい」

???「決して振り返っては駄目よ」

伊織「分かったわ……」

伊織「それから……、えっと、本名は分からないけど……」

伊織「そこの二人、どうもありがとう。楽しかったわ」

??「……」

??「……うん」

伊織「それじゃあね……」

伊織(人魂……二つ?道案内してくれてるの……?)

???「それについて行けば、橋まで着けるわ」

伊織「ありがとう」

伊織(やっぱり木造ね……)

伊織(ここを渡り切って……)

伊織「よっと」

P「伊織ー!!」

伊織「うわっ、どうしてここに……」

P「良かった……、心配したんだぞ……」

伊織「ちょ、ちょっと、泣かないでよ……」

P「伊織に何かあったら、俺、俺ぇ……」

伊織「分かった分かった。いいからちょっと立ちなさいよ」

P「う、うん……」

伊織(言うわよ……)

伊織「今日は本当にごめんなさい。明日からは、心を入れ替えて仕事をするわ」

P「い、伊織……?」

伊織「だから、これからもよろしくね?」

P「も、もちろんだよ伊織~!!」

伊織(いつの間にか……)

伊織(日が落ちてたわね……)

―後日談―

伊織パパ「伊織、昨日倉庫を掃除していて、面白いものを見つけたんだ」

伊織パパ「これだ」

伊織「随分古いアルバムね……」

伊織パパ「えーっと、これこれ……」

伊織パパ「これ見なさい」

伊織「!!」

伊織パパ「伊織のひいおばあさんの写真だ」

伊織「……」

伊織(あの時の女の人……!!)

伊織「パパ、この写真のコピー頂戴?」

―後日談2―

P「伊織、この写真……」

伊織「まあ、いろいろあってね。お守り代わりにしてるの」

P「……」

P「こんなこと言っても信じないかも知れないけど」

P「あの時さ……」

P「伊織を探してるとき、路地裏で俺を手招きする女性がいて」

P「すっと消えては現れ、消えては現れ……」

P「それ、この人だよ……」

伊織「……へぇ、道理でタイミングよく駆けつけたと思ったわ」

P「あれ?信じたの?」

伊織「さあ、どうかしらね?にひひ!」

―後日談3―

「で、どうして、女の子を男の子にして引き留めたの?」

「だ、だってー、あのお姉ちゃんの記憶の中ではあの人が一番器量よしだったんだもん」

「あの人が男なら絶対残ってくれると思ってー」

「他の男の人はおじさんばっかりだったし」

「若い男も一人いたけど、なんかぱっとしなかったんだもん」

「ふふ……、あなたたちが人間を捕まえるのは難しそうね?」

「あー馬鹿にしたー!!」

「むくれないの。しばらく私が遊んであげるから」

「え……?いいの?やったー!」


終わり

というわけで、読んでくださった方々、ありがとうございました

彼は元から男だが

>>62
訴訟も辞さない

あ、それから、皆さん機会があったら、トワイライトシンドローム探索編/究明編
やってみてね

高!!今手に入りにくいんだね、でも入手不可能ってほどでは
夕闇通りは絶望的

>>70
夕闇は別格ハードオフと尼で泣いた

>>71
13,000円か…
一頃よりはマシになったかな

持ってないから、買っとけばよかったと今更後悔

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