犬「私を飼ってみませんか?」 (30)

犬「今なら毎朝、新聞をとってきます」

男「うちは新聞とってないんで……」

犬「ならお隣から取ってきましょう」

男「犯罪ですよ」

犬「犬なら許されます」

男「飼い主は許されません」

犬「」

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犬「散歩もいりません」

男「それで我慢できるのですか?」

犬「大丈夫です
  むしろ食べて寝るだけなんて幸せの極み」

男「はいっ!」

タオルポイ!

犬「ワフッ! フガ、フググ!!」ガジガジィ!



男「」

犬「」ハッ!!


犬「すいません、嘘をつきました……」

男「やはり」

犬「ですが、放っておいてくれれば勝手に歩いてきますので」

男「大丈夫なんですか?」

犬「?」

男「下世話な話、他の人や犬に、こう」

犬「は、ハレンチな!」カァァ


男「あなた、体格いいですから」

犬「私はちゃんとしつけのできている犬なので安心です」

男「そんな犬がどうして捨てられたんですか?」

犬「……」

男「?」




もう、この子の面倒、ちゃんと見るって言ったでしょう!

だって、大きくなったら可愛くないんだもん






犬「人間は勝手だ!」

男「なんですか急に」


犬「では、こういうのはどうでしょう?」

男「?」

犬「おためしに一週間ほど家に置いてもらって、
  それから飼うか決めるというのは」

男「それは……」

犬「いえ、ほんと、駄目なら駄目ですぐ出ていきますんで」

男「ウチのマンション、ペット禁止なんです」

犬「」







犬「おとといきやがれ!」

男「アウチ!」

犬パンチ!!


主婦「あの大きい犬、見ました?」

主婦B「ええ、あの雑木林よ
   遠い所からたまに、捨てに来る人がいるのよ」

主婦「危ないわよねぇ……早い所、保健所の人呼んだほうがいいかしら」

男「……ううむ」


犬「……(捨てられて10日、か……)」

犬「(本能のズイまで染み付いたしつけのせいで、拾い食いもできない……)」

犬「(はかない犬生だった……)」

男「こんにちわ」

犬「」チラ

犬「」フイッ

男「そんなあからさまな」


犬「なにをしに来たのですか?」

男「実は、犬を飼おうという話がありまして」

首輪

犬「!?」


犬「あなたの家では飼えないのでは」

男「実家の方の話です」

犬「実家」

男「はい」

犬「私でいいんですか?」

男「まずは一週間お試しです」

犬「それが駄目だったら、ここに帰るんですか?」

男「実家の地元の保健所ですね」

犬「そんなエクストリームな」



男「今日一日だけ、部屋に入れます」

犬「ありがとうございます」

男「吠えないでくださいね?」

犬「大丈夫です」


犬「……すいません、体を洗って欲しいのですが」

男「え?」

犬「この毛並みでは、気に入ってもらえないかもしれません……」

男「……」

犬「! す、すいません、勝手なことを言いました」

男「いえいえ」


ジャパー

犬「ちょっとはなれてください」

男「はいはい」

犬「」ブルブルッ!



犬「……」

男「……」

犬「私は気に入られるでしょうか?」

男「大丈夫でしょう」

犬「あなたはどうですか?
  ペット禁止がなかったら……」

男「是非、欲しいと思いますよ」

犬「……そうですか」

男「……では、おやすみなさい」

犬「はい、おやすみなさい……」


男「ふうう……(8時か……)」

犬「……」

男「まだ寝ているとは、寝坊助ですね」

ユサユサ

男「……?」

犬「」

男「……」




男「(病院に連れて行った所、もともと病気を患っていて……
   それが原因で捨てられたのではないか、ということだった
   捨てられて、食事もとれず、体力の低下が追い打ちをかけたんだろう)」




男「あー、うん、俺
  ごめんな、あの話の犬、ちょっと無理になっちゃって……」

犬「」ムクッ

男「!?」ポロ

カタン!





犬「」カッ!

男「!??」


犬娘「」フシュゥゥゥ~

男「……」





犬娘「これならペット禁止でも問題ありませんね」

男「何が!?」


犬娘「年月を経た動物は、不思議な力を得ると言います」

男「聞いたことはありますが」

犬娘「であれば、私が人間の姿になってもなんら不思議は」

男「不思議すぎますが」


犬娘「まあ、細かいことはいいではないですか」

男「(細かいのだろうか)」

犬娘「これからよろしくおねがいします」

男「え?」

犬娘「たしかに、ペット禁止がなければ是非飼いたいと」


男「……」

犬娘「ほら、首輪だって自主的に巻けますよ」カチリ

男「……」

犬娘「ほ、ほらほら、家に出るネズミも取りますよ!」

男「……」

犬娘「……か、家事も覚えますよ……?」

男「……」

犬娘「……」

男「……では、一週間のお試しから」

犬娘「はい!」




おしまい

最後まで読んでいただき、ありがとうございました
短いお話でしたが、楽しんでいただけたのなら幸いです
では

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