戦士「勇者の劣化版の俺」(26)

[魔王城]

――――勇者「魔法使い大丈夫か!? 今回復してやるからな?」

俺には、回復なんてできない。

―――勇者「僧侶! ……ふう! 危ないところだったな!」

目の前の敵で精一杯の俺には、味方の危機なんて察知できなかった。

――勇者「戦士! ……こんなボロボロになって…よく持ちこたえた! 後は任せろ!」

ああ、やっぱりお前は勇者なんだな。俺にできないことも簡単にこなしてしまう。

―勇者「戦士! 目を覚ましたか! やったんだ! 魔王を倒したんだ!」

……魔王を倒す瞬間に立ち会えなかった。勇者以下の俺でも仲間の役に立てると、信じてたのに。

勇者「おい戦士! どこに行くんだ? ボロボロじゃないか! 休めよ」

戦士「……お前には、わからないさ」

っていう感じのファンタジーを書きたいんだけど、絶対サボるから誰か続き書いてくれないかな

|ω・`)チラ

勇者「お前、本当に何を考えているんだ! そんな体で動こうとするなんて!」

戦士「本当に、俺は何を考えているんだろうな」

 魔王の放った波動に直撃したせいか、一歩歩くだけでも体が悲鳴をあげるのがわかる。

それでも、逃げ出したかった。逃げなきゃならないと思った。

勇者「待てって! おい!」ガシッ

肩をつかまれた。よりによって、勇者に肩をつかまれてしまった。

だから、俺は振り返って、

戦士「放してくれ」ギロリ

今まで向けたことのない悪意を、勇者に向けてしまった。



でも、それでいいと思った。とにかく、逃げたかった。

勇者「~~!」

何か言いたそうな顔をするのを見えた。

勇者「……。」

でも、すぐに失望したような顔に変わったのが分かった。

その顔を見て、思わず目を背けてしまった。

そして、そのまま肩にかかった勇者の手を引き離すと、入ってきた方へ引き返した。

こうして、俺は魔王の間を後にした。



勇者が諦めてしまった。勇者に、諦めさせてしまった。

勇者が諦めたところを見たのは、初めてだった。

……そんな顔をさせたくなかったな。

勇者と俺は同じ村の出身だ。

物心がついたときには一緒にいた。

勇者「せーんしくーん! あーそーぼっ!」

勇者は俺の一つ下だけど、子供のときからなんでもできる奴だった。

勇者「今日は追いかけっこしよっか!」

同年代の子供が村にいたけど、その子とは遊び相手にもならないらしかった。だから、年上でしかも集団に馴染んでいない俺と遊んでいた。

木登り、かけっこ、かくれんぼ。なんでも最初は俺の方がよくできた。

勇者「やったー!」

でも、木登りもかけっこもすぐに勇者のほうができるようになった。追われる側だった俺は、いつしか追う側になっていた。

勇者「きゃはは! 次は戦士ちゃんが鬼だよ!」

あのころは悔しくてたまらなくって、追いつこうと必死だった。

 俺の家の近くに、白髭を蓄えた話好きのおじいさんがいた。俺達はじぃじって呼んでた。

 他の子供たちはバカにしてたけど、でも勇者と俺はそのおじいさんの話が好きだった(田舎だったから、みんな魔法のことすら知らなかった)。

 炎を操ったり、変身したり、空を飛んだり。魔法使いにしか見えない妖精の話もあったかな?

 そのおじいさんの話はどこか吹っ飛んでいたけど面白くって、度々遊びに行っては聞きに行ってた。

 あの頃は、すごく楽しかったな。


 でも、そんなある日、事件が起きた。

 勇者が本当に魔法を使ってしまったのだ。

勇者「わわっ! 本当にできた!」

 じぃじの外出中だった。本棚の魔道書を勝手に読んでた俺達は、好奇心で炎の呪文を唱えてしまったのだ。

 そして、勇者が本当に炎を出してしまった。

 魔導書に向けて。

戦士「わわっ、止めて! 燃える! 燃えちゃう!」

勇者「無理! 無理!」



 台所から水を汲んできて、なんとか火を消し止めた。

 机を焦がしたうえに床を水浸しにしちゃったから、帰ってきたじぃじにすごく怒られた。

お腹すいたし牛丼食べてくる

じぃじ「本当に魔法を使ったのか?」

 俺は勇者はのほうを見た。勇者はうなずいた。

じぃじ「どれどれ……」

 じぃじは優しく勇者の手をとって、なにやら呟いた。

 すると、じぃじが触れている部分から勇者の体全体にまばゆい光が広がった。

じぃじ「これは……驚いた。勇者くんには、魔法の才能があるようだ」

勇者「ほんとに!? やった!」

 勇者はガッツポーズをとって喜んだ。

 俺はじぃじの袖を引っ張りながら、自分の魔法の才能を調べるようにせがんだ。

 じぃじは勝手に魔道書を読み始めた勇者の方を心配そうに見ていたが、諦めて俺の手をとってくれた。

じぃじ「■■■! ……? ■■■!」

 同じ呪文を二回も唱えられた。すごく嫌な予感がした。

じぃじ「……これは驚いた。残念だが、戦士くんには魔法の才能が全く無いようだ」

 世界が一瞬、白黒になった気がした。

 夢中になって魔道書を読んでいる勇者を横目に、俺はじぃじの家を出た。

 そして、ただ呆然と歩き出した。

 勇者に負けることは、何度も経験していた。でも、勝負にすらならないのは初めてだった。

 それが、たまらなくショックだった。
 

 しばらくすると、勇者といつも遊ぶ場所についた。

 そこで一人でじっとしていたら、私の心は勇者に対する劣等感で埋め尽くされた。

 そのときに、勇者に負けたくないという気持ちが、勇者を負かしてやりたいという気持ちに根こそぎ変わってしまったんだと思う。

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