勇者「最終決戦」(88)

勇者「……ここが魔界」
 
戦士「うおっ…なんだこの感じ」
 
僧侶「空気に魔素が含まれているようですね」
 
戦士「皆、平気なのか?」
 
僧侶「いえ、大丈夫なのは勇者さんだけのようです
   おそらく精霊様のご加護のおかげでしょう」
 
魔法使い「うぇ~、気持ち悪い…」
 
勇者「大丈夫か?魔法使い、少し休んだほうが…」
 
魔法使い「ア、アンタに心配されたくなんか無いわよ!」
 
勇者「う……そうか」ショボン
 
魔法使い「なによ、そんな落ち込まなくても」
 
勇者「うぅ……」
 
魔法使い「…う、嬉しかったわよ!ありがと!心配してくれて!!///」
 
勇者「ほ、本当か!?」

魔法使い「な、何度も言わせないで!嬉しかったって言ってんじゃない!!///」
 
勇者「♪」
 
戦士「まったく……アイツ等はこんな所に来てまでイチャイチャして…」
 
僧侶「ラブラブですもんね、あ、そういえば、結婚するらしいですよ?あの二人」
 
戦士「な!なにぃ!?勇者が結婚!!?」
 
僧侶「ええ、これでますます負けられなくなりましたね」
 
戦士「そうか……勇者もとうとう男になったか…」
 
勇者「おーーーい!!呼んだーーーー?」
 
僧侶「何でもないでーーーす!!」

勇者「ふぅ……今日はもう寝ようか」
 
戦士「あたりも暗くなってきたしな」
 
僧侶「やはりこの空気には慣れませんね…」
 
戦士「ああ、人間界よりも数倍体力を使う」
 
魔法使い「くー………くー………」
 
勇者「ハハ、魔法使いは相変わらずだな」
 
戦士「まったくだ、勇者、尻にしかれるなよ」
 
勇者「!な!!何で知ってるんだ!?」

戦士「僧侶から聞いた」
 
僧侶「魔法使いちゃんから聞きましたよ?
   嬉そーに自慢してました」
 
勇者「アイツ………」
 
僧侶「『魔法使い、お前を愛してる、だから――』」
 
勇者「わあああぁぁぁぁぁ!!!」
 
戦士「おお、中々男らしいじゃねーか」
 
勇者「ちょ!もう、ヤメロ!!」
 
僧侶「ホラ、あんまり大声出すと魔法使いちゃん起きちゃいますよ?」
 
勇者「うぅ………も、もう寝る!!///」ガバッ
 
戦士 僧侶「「アハハハハハッ」」

戦士「………グー………グー」
 
僧侶「………スー………スー」
 
魔法使い「………くー………くー」
 
勇者「………」ムクッ
 
勇者(魔素で弱ってる皆をこれ以上無理させる訳にはいかない
   魔王城にはさらに濃い魔素が充満しているはず………)
   「ハァ………!!」グオッ
 
 
勇者「待っててくれ、皆、魔法使い―――」ゴオオオォォォォ・・・・・・・

勇者「!!」ピタッ
   「………なぜ、ここに?」
 
魔王「なに、奇襲でもされて同胞達がやられては困るのでな」
 
勇者「よんでたのか…」
 
魔王「少し考えれば解る事よ」
 
勇者「女だからって、容赦はしないぞっ!!」ゴウッ
 
魔王「ぬうぅっ!!」ドゴォォォン
 
勇者「チッ」

魔王「物騒な奴だ、いきなり雷を落とすとは」

勇者「魔物に情けなんていらないだろう」

魔王「何故そこまで魔族を憎む?
   共存という考え方は無いのか」

勇者「ある訳……無いだろ!!!」ブンッ

魔王「クッ!!」キイィィン

勇者「う…おぉ…!!」グッ……

魔王「ぬ……強いな」ギリギリッ
   「貴様は、人の中では、一番強いのだろうっ…?」

勇者「…それが…どうしたっ…!」グググッ

魔王「ハァッ!!」ギンッ
   「ハァ…ハァ、私は魔族で最も強い」

勇者「なにが、言いたい?」

魔王「なら、私と貴様が手を組めば…
   それで全て丸く収まるのではないか?」

勇者「………何?」

魔王「私は魔族の王、一声で全魔族がひれ伏す、
   なら魔族の問題は解決だ」

勇者「―つまり、俺が人間を説得し
   魔物との共生を目指すと、そういうことか?」

魔王「おお、さすが、物わかりが良いではないか」

勇者「残念だが、それは無理だ」

魔王「む…何故、そういい切れる」

勇者「魔物は―――悪だからだ!!」ギュン

魔王「ッ!!!」

勇者 スッ

魔王「ガッ……ハァッ、ハァッ………想像、以上だな」

勇者「……終わりだ」

魔王「待て……」

勇者「?命乞いか?無様だな」

魔王「何故、その強さを平和の為にいかさん」

勇者「!ふざけるなっ!!」バキッ

魔王「グッ…!」

勇者「魔物を皆殺しにする事こそ平和だ!!」

魔王「違う!それはただの殺人と何ら変わらん!!」

勇者「ッだまれ!!もういい!とどめだ!!」グオッ

魔王「―――!!」

 
 
  
 
 
 
     カッ!!!!

勇者「ん………ここは………?」ジャラ……
   (鎖?俺は…捕らえられているのか!?
    そんな、俺は魔王に―――)

魔王「気がついたか」

勇者「!魔王!キサマッ!!・・・・・・って、え?
    何でお前も縛られてるんだ?」

魔王「ここは、魔界でも人間界でもない、天界だからだ」

勇者「天界!?天界ってあの……?」

魔王「ああ、神と神官達が住む世界だな」

勇者「ハッ、ざまあみろ魔王!
   お前の悪事は神によって裁かれるんだ!!」

魔王「ハァ………貴様も、縛られているではないか」

勇者「これは…手違いだ!きっと俺は助かる!!」

魔王「どうだかな……見てみろ、神官が来たぞ」

勇者「!お、俺をここから出してくれ!俺は勇―」

神官A「五月蝿いぞ、罪人ども」

勇者「な、何!?俺だ!勇者だぞ!!」

神官A「それがどうした、魔族を大量虐殺しやがって
    立派な悪人だろう」

勇者「違う!魔物こそ悪だろうが!!」

神官A「ええい!まだ言うか!!火炎魔法!!」ゴウッ

勇者「ガァッ!!」

魔王「もういいだろ、少しカッとなっているだけだ」

勇者「ううぅ………」キッ

神官A「チッ!少しは魔王を見習うんだな!!」カツカツカツカツ………

魔王「……行ったか」

勇者「クソ、何で……!!」

魔王「魔族と人間は同じなんだ、ただ種族が違うだけ
    両方命もあれば家族もある、これで解っただろう」

勇者「クソォ………俺は、俺は………!!」

魔王「………」

勇者 グウウゥゥゥ

魔王「食わないのか?」

勇者「ああ、欲しけりゃやるよ」

魔王「では貰うぞ」モグモグ

勇者 グウウウウウウウゥゥゥゥゥゥ

魔王「なっ!もう返せんぞ!?」

勇者「いいって言ってるだろ…」

魔王「ぬぅ………」モグモグ

勇者「・・・・・・・」

神官B「おい!神様がお呼びだ!出ろ!!」ガチャッ

魔王「やっとか、丸一日放置しおって」

勇者(これで、なんとかなるかもしれない)

神官B「粗相の無いようにしろよ」

神「良くぞ来た、勇者に魔王よ」

魔王「ぬかせ…あんな所に幽閉しおって」

勇者「…俺は、どうなる」

神「決まっておろう、罪も無い魔族を無残な姿にし
  反省の色も見られん、死刑だ」

勇者「な!先に襲ってきたのは魔物の方だ!!」

魔王「自分より数段強い化け物が、
    殺気全開で現れたら仕方の無い事だ」

神「お主は自ら襲いかかった事は一度も無いと申すか」

勇者「そ…それは………」

神「よって、お主は死刑だ」

勇者「………!!」

魔王「私も、だな」

神「ほう、こっちは幾らか賢いようだな
  しかし死刑に変わりは無い」

勇者「ま、待ってくれ!もう一度チャンスを――」

神「ならん、話は終わりじゃ、連れて行け!!」

神官B「………ハッ」ザッ

勇者「クッ………!」

・・・・・・・・・・・




魔王「どうする、勇者」

勇者「………死にたく、ない」

魔王「それは誰もがそうだろう、
    私も、死にたくはない」

勇者「いやだ、いやだ、まだ死ねないんだ……!」

魔王「さっきから何度同じ事を言っている
   まるで子供みたいだな」

勇者「うるさい!」

魔王「まったく、勇者が聞いて呆れる」

勇者「うう………魔法使い…」

魔王「………」

魔王(神にあった日から二日が過ぎた、
    おそらく後一日二日で殺される)

勇者「………おい」

魔王「?」

勇者「お前共存するとか言ってたな」

魔王「ああ、それがどうかしたか?」

勇者「聞かせろよ、その話」

魔王「おお、やっとその気になったか」

勇者「ただ暇だっただけだ、
    それにもう何もできやしないだろ」

魔王「ずいぶんと弱気だな」

勇者「…いいから早く話せ」

魔王「いいだろう、まず人間と魔族両方にお互いが敵ではない事を証明する」

勇者「どうやって?」

魔王「魔族はほとんど説得できているんだ
   後はお前と私が一緒に演説でもすれば一発だ」

勇者「まぁ、そうだな」

魔王「次は、同族同士で争いが起きないようにする」

勇者「ほう…」

魔王「もし片方で争いが起きればもう片方が止めに行く、
    それに私や勇者、その仲間が加われば完璧だろう」

勇者「なら魔族と人間が手を組んだらどうする」

魔王「大丈夫だ、既に魔族の有力な者達は
    この意見に賛成している、
    そいつ等は決して裏切ったりしないし、
    下級魔族が裏切っても大した脅威にはならん」

勇者「そう、か」

魔王「まあそれでも多少問題は出てくるだろうが
    私と幹部達、それに勇者とその仲間が協力すれば
    解決できないことなどないさ」

勇者「………」

魔王「どうだ?できる気がしてきただろ?」

勇者「そうだな」

魔王「なんだ、珍しく素直じゃないか」

勇者「どうしたんだろうな」

魔王「諦めているのか?勇者ともあろう者が」

勇者「もう、無理だろ死刑を待つだけだ」

魔王「む………おい、勇者」

勇者「なんだよ」

魔王「貴様の話をきかせろ」

勇者「俺の、話?」

魔王「ああ、できれば仲間との話が良いな」

勇者「仲間との話………よし」

魔王「おっ、ホレホレ早くしろ」

勇者「戦士っていうやつがいるんだ
そいつ腕っ節は良いんだけど頭わるくてさ、
   初めて会った時なんか初心者用の探検の洞窟で迷子になってたんだよ」

魔王「ははは、そいつはいいな」

勇者「でも滅茶苦茶良い奴でさ、
   自分が死にそうなときでも仲間かばうんだ、
   『お前らの盾になるのが俺の役目だ』ってカッコいいんだ、
   俺の一番の親友だよ」

魔王「男気溢れる奴だ、是非会って酒を酌み交したいな」

勇者「んと、僧侶はうちで唯一の回復役なんだ、
   確か俺が大怪我して宿屋に泊まってた時会った、
   一瞬で治してくれて皆ビックリしてた」

魔王「ほう、治癒系の魔法を使うのだな」

勇者「アイツの魔法は温かいんだなんか安心するんだよ」

魔王「ああ、本当に心のこもった魔法は温かいものだ」

勇者「あ、戦士との相性抜群だったなあのコンビ滅茶苦茶強いんだよ」

魔王「それは凄いな、うちの幹部にも見習わせたい」

勇者「最後は、魔法使いだな、
   アイツは子供の時から一緒に居るんだ、そんで一緒に旅に出た」

魔王「幼馴染というやつだな」

勇者「ああ、でもアイツ昔からキツイんだ、すぐ怒るしワガママだし」

魔王「む、仲が悪いのか?」

勇者「いや、良い所も多いんだよ、実は優しいし、子供好きで
   美人で、可愛くて、ワガママな所もまた良くて」

魔王「………もういいわ」

勇者「なんだ、まだまだあるんだけど」

魔王「…好いているのか?魔法使いとやらを」

勇者「当たり前だ、結婚するんだぞ」

魔王「な!?貴様婚約しているのか!!?」

勇者「お、おう、そんな驚かれるとショックだな」

魔王「ならなおさらこんな所で死ねんではないか!」

勇者「!そう、だ、そうだよ、何諦めてんだ俺」

魔王「そうだ、その意気だ」

勇者「よし、絶対生きて帰るぞ!魔王!!」

魔王「うむ!世界を平和にするんだ!!」

勇者「…お前、話せば話す程魔王とは思えないな」

魔王「それはよく言われるが違うぞ、
    魔王は魔族の王だから魔王なのだ
    けして悪い残虐な奴が魔王なのではない、
    だから私は魔族の王として魔族が安全に過ごせる道を選ぶのだ」

勇者「お前は立派な奴だな、尊敬するよ」

魔王「いや、戦闘力は貴様が上ではないか
    戦闘力は必要だぞ?
    何故貴様はそんなにも強いのだ」

勇者「そんなもん知らねーよ」

魔王「そうか、それはそうだな」

勇者「………お休み、魔王」

魔王「ああ、お休み」
  (やっと、勇者と解り合えた、しかしここから出ねば意味がない、
   何か方法を考えねば……)

・・・・・・・・・・




魔王「勇者、貴様盗賊に転職した事はあるか?」

勇者「?あるよ?」

魔王「で、盗賊と言うのは鍵を開けれんのか」

勇者「開けれるけど」

魔王「この鎖の錠も牢屋の錠もか?」

勇者「うん、余裕」

魔王「な!何故それを早く言わん!?」

勇者「いや、開けたところでどうすんだよ、見張りもいるし、ここ天界だぞ?」

魔王「む……ま、まぁ良い……
    よし、そうと解れば作戦会議だ!」

勇者「いいけど、作戦とか俺苦手だからな」

魔王「見れば解るわ、まずは………」

勇者(バカにされてるな)

魔王「まず気づかれないように勇者が鎖と牢屋を開ける」

勇者「ふむふむ」

魔王「見張り一人くらいなら騒がれないうちに倒せるだろう」

勇者「ほうほう」

魔王「そしてできるだけ広くて人気のない場所に行く」

勇者「どこだよ」

魔王「解らん、運任せだ」

勇者「………不安だけど、次は?」

魔王「魔界への扉を開く」

勇者「どうやって?人間界と魔界みたいにゲートがあるのか?」

魔王「いや、そんな物はないが……私は魔王だぞ?」

勇者「おお!できるのか!」

魔王「フッ、朝飯前だ」

勇者「じゃあここで開けよ」

魔王「それはできん、広い場所でないと無理なんだ」

勇者「めんどくさいな」

魔王「贅沢言うな、そういう仕様なんだ」

勇者「でもさ、逃げても追いかけてくるんじゃねーの?」

魔王「!!なんと!!」

勇者「『なんと!!』じゃねーよ、考えて無かったのかよ!」

魔王「そうか、私達は犯罪者だったな、魔界まで逃げても連れ戻されるのがオチか」

勇者「……もういっそ神倒すか?」

魔王「いや、無理だな、たとえ神を倒した所で天界と戦争になるだけだ」

勇者「そうなったら本末転倒だな」

魔王「ああ、神を倒しても神官達が怒らない理由でもあれば
    平気だろうが……………ダメだ、何も思いつかん」

勇者「う~ん、諦めたらだめだぞ、考えるんだ」

魔王(絶望的だな……)

勇者「・・・・・・」

勇者「なぁ………」

魔王「ん、どうした」

勇者「なんか、騒がしいな」

魔王「!本当か!?」

勇者「何だ?助けでも来たのか?」

魔王「いや、違うな、考えたくは無いが…」

勇者「!処刑……!?」

魔王「ああ、恐らく大勢の神官が集まっているのだろう」

勇者「そんな……もう、終わりなのか…」

魔王(なんとか、勇者だけでも…)

神官B「いるか、二人とも」ザッ

勇者「くっ……」

魔王「・・・・・」

神官B「………すまない」

勇者 魔王「「?」」

神官B「二人はそれぞれ人間界と魔界の英雄だ、死刑は行き過ぎていると思うのだが…」

魔王「なに、気にするな」

勇者「…そう考えてる奴は、お前だけか?」

神官B「いや、神官の半数近くはこう考えている、
    皆幼い時は勇者や魔王の冒険記を聞いて憧れていたんだ
    しかし、神様には逆らえんのでな………それが、どうかしたのか?」

勇者「いや、なんでもない」

魔王(勇者、何か企んでおるな)

昼ご飯食べてきます

勇者 ザッ

魔王 ザッ

神「ではこれより――勇者、魔王の処刑を執行する」

勇者「…一つ、聞かせてくれ」

神官A「罪人に話すことなど…!」

神「まあまて、神官A、最後ぐらい良いではないか」

神官A「ッ!ハッ!!」

勇者「俺はただの旅人だが、こいつ、魔王は魔界の指導者だ、
   指導者を失った魔界は混乱するんじゃないのか?」

魔王「!な、勇者、お前――」

「そうだよ、魔王が居ないと困るんじゃないか?」

「ああ、確かに」

「それに魔王は平和主義者って聞いたぞ」

神官B(神官達がざわつき始めた…)

魔王(これは…勇者はこれを狙っていたのか!)
  「聞いてくれ、神!!」

神官A「き、貴様達いい加減に…」

神「かまわん、話せ」

魔王「勇者が魔族を殺してきたのは自分なりの正義を信じてきたからだ」

神「虐殺する事が正義と申すか!」

魔王「ああ、確かに以前の勇者はそうだった、しかし今は違う!
   もう一度チャンスをくれ、争いの無い世界を作ってみせるから!!」

「おおー!カッコいいぞー!!」

「よく言った魔王ーーー!」

「勇者も頑張れーー!」

神官B(神官達が二人を応援している、これはもしかしたら―)

神官A「くっ、何だこの空気は!」

神「………私は、過ちを犯した」

勇者「?」

神「人間と魔族という相容れぬ存在を作ったのがそもそもの間違いだった」

魔王「なにを言っている?」

神「人間は勇者を生み出し、魔族は魔王を生み出した」

神官B(一体神様はどうなさったんだ?)

神「勇者と魔王、貴様らは脅威だ」

勇者「………」

神「我は神、この世界で神は絶対、しかし今、神官共でさえ貴様らの味方をしている」

「な、なんだ?」

「様子がおかしいぞ?」

「一体何を話しているんだ?」

勇者「お前は何が言いたい?」

神「我は絶対、貴様らは我を脅かす、人と魔族、神官共も失敗だ」

魔王「勇者」

勇者「どうした」

魔王「戦闘準備だ」

神「よって再び――全てを、創り変える!!!」バチバチッ

神官B「まずい!皆、逃げ――」

神「ハアアァァァッ!!!」



ドゴオオオオオォォォォォォン

・・・・・・・・・・・




「あ、あれ?」

「俺…生きてる!?」

「神様?どうして攻撃を…」

神官A「う、うそだろ…?神様は、俺も消そうと……」

神官B(おかしい、神の雷撃をくらって無事なわけが…)

「おい!皆あれ見てみろ!!!」

神「ほう、我の雷を打ち消すか………やはり貴様達は脅威だな」

勇者「いや、カミナリは俺も得意なんでね」

魔王「おお、よくやったぞ勇者!」

「うおおおおおおお!!!」

「さすが勇者だーーーー!!!!」

「勇者カッケーーー!!!!!」

勇者「いや~、そんなに褒められると照れちゃうな///」

神「ぬん!!!!」ボッ

勇者「!いっ!ちょ待っ―」

魔王「ハアアッ!!」ドガァァン

勇者「――おおぅ、あぶねぇ…助かった」

神「む……」

魔王「まったく、バカか貴様は」

勇者「悪い悪い、調子乗っちゃって」

「うぅおおおおおおおお!!!!!」

「いいぞ魔王ーーーーー!!!」

「魔王頑張れーーーー!!!」

魔王「………悪い気分ではないな」

勇者「だろー!?なんかヒーローみたいだよな」

勇者「ってことで魔王」

魔王「ああ」

勇者 魔王「「最終決戦だ!!」」ゴウッ

神「――ハァッ」ドンッ

神官A(勇者は、さっき俺達神官を守ってくれたのか……?)

・・・・・・・・・・・・・



「おい・・・あの三人ずっと動きまわってるぞ」

「ああ、互角だな・・・・・・」

神官B(いや、二人は牢屋で過ごして体力も落ちているはず…)

勇者「……ハァ……ハァ……」

神「…そろそろ限界のようだな……ハッ!!」ゴッ

魔王「ぐはぁぁっ!!!」ドガアアァァァァン!!

勇者「魔王ッ!!!」

神「――どこを見ている」シュッ

勇者「!しまっ―――!!!」ボゴオォォォォン!!

神官B(!やはり無理があったか…)

「ゆ、勇者がやられたぞ……」

「魔王も……、か」

「ってことは、俺達も消されちまうのか!?」

勇者「ッ………大、丈夫か」

魔王「……あまり、大丈夫とは言えんな」

魔王「勇者…もう私達には体力がない、早く、勝負をきめなければ………」

勇者「勝負を決めるって…どうやって?」

魔王「……単純だが、奴の隙を狙ってお互いの最強の攻撃を同時にぶつける、
   ………これぐらいしか考えられん」

勇者「アイツにそんな隙あると思うか?」

魔王「僅かな可能性に賭けよう」グッ

勇者「…そうだな、諦めちゃ、ダメだ」シュンッ

神「!ほう、まだ生きていたか…やはり侮れんな」グンッ

「うおおお!!!」

「やった!!生きてたぞ!!!」

神官B(…私も何か協力したいが、レベルが違いすぎる…)

勇者「ハァ、ハァ」

魔王「……ッ」
  (まずい、勇者の動きが鈍くなって来ている、いや、私もか……)

神「……とどめだっ!!!」グオッ

勇者「くっ!」

魔王「…ここまで、か」

神「――――ッ!!!!!」ピタッ

勇者「ッ……どうしたんだ…!?」

魔王「!見ろ、勇者!!」

勇者「?…………!!」

神官A「うおおおっ!勇者、借りは返すぞっ…!!!」

神官B「もっとだ!!もっと力を合わせろ!!」

「はああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」

「俺達が何もしない訳にはいかないぜええええ!!!!」

勇者「あいつら……」

魔王「勇者!今のうちだ!!」

勇者「ああ!!」

勇者 魔王「「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」」

神「!!!!!!!」




ズガアアァァァァァァァァァン

勇者「ハァ…ハァ…やったか?」

魔王「死んでなくても、致命傷だろう…」

神官B「!!二人とも!後ろだ!!」

神 ガッ

勇者「なっ!!」

魔王「!は、離せ!!」

神「…我の負けだが、貴様らは許さん、本来なら世界もろとも消し去るところだが
  そんな力は残っていない、せめて貴様らだけでも道連れにしてやろう」

勇者「く、くそぉ!!やめろ!離せ!!」ジタバタ

魔王「ぬうぅ……!!」ギリギリ

神「………終わりだ」

勇者「!!!!!」

魔王「ッ―――!!!」

「ふ、二人はどうなったんだ!?」

「あ、だんだん煙がはれてきたぞ!」

「!な、なんてこった…!!」

神官B「く……最後の最後でッ!!」

・・・・・・・・・・・・・




勇者「ん……ここは?」
  
   「俺、死んだのか?」

   「あ、魔王だ」
 
   「おーーーい!!!魔王ー!!」

   「?聞こえないのか?」

   「行ってやるか」スタスタ

者「おい!魔王!ここは…」

魔王「来るな!」

勇者「!何だよ、どうした?」

魔王「いいから止まれ!一歩たりともこっちへ近づくんじゃない!!」

勇者「わ、わかったよ」

魔王「おそらく、ここは生と死の狭間の世界だろう」

勇者「生と死の……ってことはまだ生きてんのか!」

魔王「ああ、貴様はな」

勇者「!おい…貴様はって」

魔王「私はまもなく死ぬだろう」

勇者「な!何言ってんだ!!」

訂正 一行目

勇者「おい!魔王!ここは…」

魔王「私の方へ行くと死、勇者の方へ行くと生の世界だな」

勇者「で、でもまだ生きてんだろ?こっち来ればいいじゃねーか」

魔王「いや、それがそうもいかんのだ……そっちへ行こうとすると体が動かなくなる、
    もう私には死しか待っていないんだ」

勇者「………そんな」

魔王「だから勇者、貴様にコレを託す」ポイ

勇者「っと……水晶?」パシッ

魔王「ああ、貴様がこのまま生き返れば魔族は私が貴様に殺されたと誤解するだろう
   だからその中に私から幹部達へ念を込めた、それを幹部達に見せ、
   協力してこれからの世界を創っていってほしい」

勇者「…………そんなの、嫌だ」

魔王「な!貴様は何故変なところで意地を張るんだ!?
   貴様も世界を平和にすることに賛成したじゃないか!!
   嘘だったとはいわせんぞ!!!」

勇者「魔王も一緒じゃなきゃ嫌だ!」

魔王「!!」

勇者「言ったじゃないか!
   俺とお前で演説するって!!
   協力すればできないことは無いって!!!
   絶対生きて帰って、世界を平和にするんだって!!!!」

魔王「いくらあがいても、こればっかりはどうにもならんのだ!!」

勇者「嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ!!
   俺は絶対諦めないぞ!!
   引きずってでも連れ帰ってやる!!!」ダッ

魔王「こっちへ来るなといっただろう!貴様まで帰れなくなるぞ!!」

勇者「そんなの構うもんか!!」タッタッタッタッ

魔王「…ならこちらも実力行使でいくぞ!!」ボッ

勇者「……お前は俺より弱いだろうが!!」ガンッ

魔王「ハアアァァァァァッ!!!!」

勇者「ウオオオォォォォッ!!!!」

・・・・・・・・・・・・・




勇者「うっ………!」ピタッ

魔王「やっとかかったか……束縛魔法だ」

勇者「こんなものっ……!!」ジタバタ

魔王「無理だ…私の勝ち、だな」

勇者「ううっ……何で、くそぉ!!」グググッ

魔王「貴様にこんな所で死なれては困る、少し手荒だが追い返すぞ――」グッ

勇者「やめろ!魔王も一緒に生き返るんだ!!離せ!!頼むから、やめてくれっ!!!」

魔王「―――じゃあな、勇者」ドンッ

勇者「うわあああああああっ!!!魔王ッ!魔王ッ!!まお――………」シュンッ

魔王「…まったく、最後まで手の掛かる奴だ、会って数日、しかも魔王の私を救おうとするとは」


魔王「おかげで、貴様が何故そんなにも強いのか解ったよ、
   『命をかけてでも守りたい者がいるから』…なのだな」










魔王「ようやく、私にもそう思える者が出来たというのに……」

『…う……ゆ…しゃ……勇者…!』

なんだ…だれかに、呼ばれてる…この声は……

勇者「…魔法、使い……」

魔法使い「!!ゆ、勇者ッ!!」ガバッ

勇者「おっと……」

魔法使い「バカ!バカバカバカ!!!」ギュウウウ

勇者「ちょ…痛いって」

魔法使い「どこいってたのよぉ…ホントに心配したんだから……」

勇者「………ゴメンな」ギュッ

魔法使い「もう…いいわよ、許してあげるから」

勇者「……うん」

魔法使い「その代わり、もうどこにも行かないで………!!」ギュウウウウウッ

勇者「ああ、もうどこにも行かない」ポンポン

・・・・・・・・・・・・




勇者「光の、柱?」

戦士「そうだ、空からパアアアアッと降りてきてな」

僧侶「その中に勇者さんがいたんです」

魔法使い「なんか、温かい優しい光だった」

勇者(……魔王……………)

戦士「まったく、どこ行ってたんだ?空から帰ってくるなんて」

僧侶「しかも気絶してましたし…………勇者さん?」

勇者「!あ、ああ…ゴメン、ボーっとしてた」

魔法使い「?」

戦士「大丈夫か?頭でも打ったんじゃねぇか?」

僧侶「戦士さんに言われちゃおしまいですね」

戦士「おい!」

魔法使い「アハハハッ」

勇者「………」

戦士「お、おーい、勇者?」

僧侶「本当に頭打っちゃったんですか?」

魔法使い「だ、大丈夫?」

勇者「……大丈夫、だけど、ちょっと一人にしてくれないか」

戦士「ん…そうした方がいいんならそうするけどよ」

僧侶「何かあったら呼んでくださいね」

魔法使い(心配だな……)

勇者「……」

勇者(結局、魔王を助けられなかった…)

勇者「魔王…俺は、自信がないよ」

魔法使い「勇者?」

勇者「!」

魔法使い「えっと………」

勇者「…心配してくれたのか」

魔法使い「だって勇者、すごく苦しそうだよ?」

勇者「……魔法使いには、先に話しておくよ」

魔法使い「うん……」

勇者「―――で、目を覚ますと魔法使いがいたんだ」

魔法使い「………」

勇者「信じられないか?」

魔法使い「信じるわよ、アンタがこんな嘘つく訳ないもん」

勇者「……ありがとう」

魔法使い「で、どうするの?」

勇者「?」

魔法使い「悩んでるんでしょ、その『世界を平和にする』作戦」

勇者「…なんでわかるんだ」

魔法使い「解るわよ、何年一緒にいたと思ってんの」

勇者「そうだな、ずっと一緒だったもんな…魔法使いと一緒に居られなかった間、すごく辛かったよ」

魔法使い「バカ、私の方が辛かったわよ」ムスッ

勇者「いや、俺の方が倍は辛かった」

魔法使い「なに言ってんのよ、私はその十倍は辛かったわ」

勇者「じゃあ俺は百倍」

魔法使い「千倍!」

勇者「一万倍!!」

僧侶「はいはい、そのへんにしときましょう」

戦士「お前らほんとラブラブだな」

魔法使い「なっ///」

勇者「当たり前だろうが」

魔法使い「~~~ッ!!」ポカポカ

勇者「ちょ、痛い痛い」

僧侶「魔法使いちゃん、勇者さんに嫌われちゃいますよ?」

魔法使い「!」ピタッ

戦士(おお、止まった)

勇者(おお、可愛い)

僧侶「勇者さん、お話、聞かせてもらいました」

勇者「!そう、か……」

僧侶「そして、もちろん信じさせてもらいます」

戦士「俺も信じるぜ!!」

勇者「戦士…僧侶……」

魔法使い「だから、これからどうするかしっかり決めときなさいよ、
     ………私は……アンタに、ついて行く、から…///」

勇者「魔法使い…わかった、明日には結論を出すよ」

戦士「おお!そうと決まれば早速飯だ!!」

僧侶「戦士さんはお腹が空いてるだけでしょ」

魔法使い「勇者…無理は、しないでね」

勇者「ああ、大丈夫だ」

・・・・・・・・・・・




勇者「みんな、とりあえず魔王城に行くことにする、この水晶を届けなくちゃならない」

僧侶「そうですね、魔王さんの意思が込められてるんですもんね」

魔法使い「襲われたり、しないよね」

勇者「うん、こっちに敵意が無い事をわかってもらおう」

戦士「そうと決まれば早速出発だぜ!」

「「「おーーー!!!」」」

魔王城




門番A「ん………?お、おい!あれ勇者一行じゃねえのか!?」

門番B「ああ、ってことは魔王様は…!!」

勇者「すまない、幹部達に会いたいんだが」

門番A「ふ、ふざけんな!そう易々と通す訳ねえだろ!!」

門番B「それより魔王様はどうしたんだ!!」

勇者「魔王は……………死んだ」

門番A「!!!!!」

門番B「お、お前!魔王様を殺しやがったな!!!」

勇者「違う!そんな事してない!!」

門番A「問答無用!」

門番B「魔王様の敵だ!!」バッ

「待て」

勇者「!」

門番A「な、この声は…」

門番B「鬼魔…様!?」

鬼魔「勇者を通せ」

門番A「は、ハイッ!!」

門番B「…通れ」

鬼魔「さて、用件を――と言いたいところだが、先にこの一週間どこで何をしていたか、
   魔王様はどうなったかを詳しく聞かせてもらおう」

勇者「ああ、―――」



勇者「―――、と言う訳なんだが」

鬼魔「……にわかには信じ難い話だな」

勇者「ああ、だからこれを預かってきた」スッ

鬼魔「これは……おい!」

魔物「ハイ!」

鬼魔「今すぐ幹部達を招集しろ!!」

魔物「ハッ!」

・・・・・・・・・・・・・




老魔「では……」キィィィィン

『………あ、あーー、聞こえるか?』

『魔王だ』

龍魔「おお!魔王様の声だ!!」

獣魔「おい、静かにしろ!」

勇者(魔王…)

『これが使われておるという事は、私は死んだのだな』

『こんな事もあろうかと用意しておいて正解だったな』

『えー、まず幹部達、あの作戦は実行する、勇者も協力してくれるそうだ』

鬼魔「とうとう、実行するときが…」

鳥魔「今、勇者も協力って……」

勇者「………」

『詳しい作戦は、老魔』

老魔「!はいっ」

『貴様に以前話した事があったな』

『よって、老魔を魔族全軍の指揮官とする、任せたぞ』

老魔「お任せください!!」

『そして残りの幹部達は魔界の各地へ赴き』

『しっかり各自与えられた土地を管理しろ、決して武力で解決しようなどと思うなよ』

「「「「「「「「ハッ!!!!!!」」」」」」」」

『そして、人間界側は…勇者』

『貴様に指揮をとってほしい』

勇者「………」

『勇者、という立場なら民衆も賛同し、王族にも軽んじられる事はないだろう』

『次に、戦士殿』

戦士「!」

『貴殿は相当腕が立つそうだな』

『だから兵士達の説得に当たってほしい』

『拳と拳だからこそ解り合えることもあるだろう』

戦士「おう、任せとけい!!」

『僧侶殿』

僧侶「はい」

『勇者一行の回復役を一人で勤め上げた貴方は』

『さぞかし徳の高い僧侶なのだろう』

『そこで、貴方には協会の勢力を担当してもらいたい』

『全国の協会が味方になれば大きな力になるだろう』

僧侶「了解しました、精一杯やらせてもらいます」

『最後に、魔法使い殿』

魔法使い「!!」ドキドキ

『勇者と幸せにな』

魔法使い「ふぇっ!?ちょ、何言ってんのよ!!///」

『勇者をあそこまで惚れさせるとは』

『恐らく絶世の美女かあるいは淫魔かなにかだろう』

勇者(あいつ…おちょくりやがって)

『勇者を宜しく頼む』

魔法使い「~~~~!!」

『おっと、これは大事な役目だぞ?』

『今後世界を変えていくであろう勇者』

『その苦労は計り知れんだろう』

『そこで、勇者を支えていってほしい、勇者の癒しになってやってくれ』

魔法使い「い、言われなくてもわかってるわよ!!///」

『………以上、皆今まで苦労をかけたな』

龍魔「うう、そんなことないぜ…グスッ」

獣魔「ヒッグ……魔王様~」

『これからはより大変な事もあるだろうが、お前達なら大丈夫だと信じている』

『では最後に……ありがとう、さらばだ』

鬼魔「魔王様、きっと成し遂げてみせます……」

鳥魔「うえぇぇ~ん、こちらこそありがとうだよぉぉ~~」

戦士「…皆から慕われてたんだな」

僧侶「ええ、私達も頑張らなくては」

魔法使い「うう……なんか弄ばれた気がする」

勇者(魔王、俺は…)

老魔「では、魔王様のご冥福と作戦の成功を願って、乾杯!!」

「「「「「「カンパーーーーーイ!!!!!」」」」」」

「うおぉぉぉ、やってやるるぞおおお!!!!」

「魔王様~、なんで死んじゃったんだよ~~」

「もっと飲めもっと飲め!!」

戦士「うおお!!もっともってこーーい!!!」

魔法使い「大騒ぎね…」

僧侶「しかし、魔王さんのお葬式でもあるのにこんなことでいいんでしょうか…」

龍魔「いーんだよ」

僧侶「あ、龍魔さん」

龍魔「魔王様は賑やかなのが好きだったし、『辛いことがあれば皆で笑い飛ばそう』
   って常々言ってたからな、逆に褒めて貰えるぜ」

僧侶「そうなんですか…いいお方だったんですね」

魔法使い「私は意地悪されたけどね」ムスッ

龍魔「ワッハッハ!いいじゃねーか、幸せになれよ!!」

魔法使い「だから言われなくてもなるっちゅーの!!」

老魔「あの、だれか勇者殿を見ておりませんか?」

魔法使い「見てないけど…いないの?」

僧侶「そういえば見当たりませんね」

老魔「むぅ…今後の為にも少し話しておきたかったんじゃが……
   では、見かけたらおしえてくだされ」

魔王城   テラス




勇者(本当に、できるんだろうか………あの時は心の底から可能だと思った、でも…)

勇者「それはお前がいたからなんだよ…
   俺はお前を救う事もできなかった、
   俺は…自身がない………」


・・・・・・・・・あー、あー、ゲフン、聞こえるか?

勇者「!!魔王!?」

私だ、魔王だ

勇者「――どこに――」

これは、私から勇者に充てたメッセージだ

勇者「あ、この水晶………」ゴソ

『勇者、臆病者の貴様のことだ』

『きっと今頃自信がない何て言っているんじゃないか?』

勇者「!」

『もしそうでなければ、今は聞かず』

『心が折れそうになった時に老魔にでも頼んで再生しろ』

『今、そんな弱気になっているのなら』

『私がこれから言う事をよく聞け』

勇者「ああ、聞かせてもらうよ」

『………勇者なら、大丈夫だ』

勇者「………」

『貴様は優しく、強く、逞しい』

『人の気持ちを考えられるいい子だ』

勇者「はは…子供かよ」

『だから、大丈夫、絶対に大丈夫、自身を持て』

勇者「お前に大丈夫って言われると………ホントに何でもできる気がするな」

『勇者は自分より他人を優先するタイプだ』

『だから、私の頼みを聞いてくれないか?』

勇者「頼み?」

『私に、平和になった世界を見せてくれ』

勇者「な――!」

『戦争が無く、子ども達が笑顔で暮らせるような世界を』

勇者「お前は…」

『私は、ずっと見ているから』

『ここで見ている、応援している』

『勇者』

勇者「魔王……」

『貴様に、任せたぞ―――』

パリンッ

勇者「………わかった、やるよ、俺」



勇者「頑張る、から………」グッ








勇者「だから………見守っててくれ」

おしまい

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