ベルトルト「スランプ」(66)


※単行本11巻以降のネタバレ有り


山奥の村にて

ベルトルト「……すぅっ」

…がぶっ


……しーーん…

ベルトルト「?」


…がぶっ

……しーーん…

ベルトルト「あれっ」

…がぶっ  がぶっ  がぶっ

……しーーん…

ベルトルト「…えっ……」

…がぶっ  がぶっ  がぶっ…


ーーーーー

A「よう」

B「よう、調子は?」

A「まあボチボチだな、そっちは?」

B「結構良い」

ーーーーー


ライナー「おーすベリックー。ベルトルト見なかったか?」

ベリック「いや?今日は今朝から見てねえな。まああれだろ、巨人化の練習」

ライナー「あーそっか、あいつのはデカイからな」

ベリック「なー。んじゃ、俺畑仕事あるから行くわ」

ライナー「おー邪魔して悪い」


ライナー「……ん?あれはベルトルトか?」

ベルトルト「………」

ライナー「おーいベルトルト……な!何だその腕!血まみれじゃねえか!!」

ベルトルト「ライナー…」


ーーーーー

A「これか?例の」

B「そうそう」

A「ふうん、見せてもらうわ」

ペラリ

ーーーーー


ライナー「転んだのか?ほら早く治しちまえよ」

ベルトルト「…出来ない…」

ライナー「はあ?出来ないって何がだよ」

ベルトルト「巨人になれない…」

ライナー「え」

ベルトルト「どうしよう…ライナー……僕巨人になれなくなっちゃった…」


ベルトルト「…うっ!ひっく…ひっく…」

ライナー「な、泣くな!まず落ち着け、な?」

ベルトルト「う、うんっ……ぐすっ」

ライナー「深呼吸しろ、深呼吸」


ーーーーー

ペラリ

A「へえー鎧の能力はライナーなのか」

B「そう、あいつの性格ならぴったりかなと思ってさ」

A「だな。いざという時は硬い鎧の体で仲間を守れるし、硬さを生かした攻撃も出来る」

ーーーーー


ベルトルト「…さっき…巨人化の練習してる広場でね…何時も通り腕を噛んだの」

ライナー「うんうん」

ベルトルト「そしたらね…全然、うんともすんともしないんだよ…」

ライナー「…うん」

ベルトルト「ど、どうしよう!?僕役立たずになったの…!?…うっ…うっ…」

ライナー「ああああ~!泣くな泣くな!」


ーーーーー

A「あれっ超大型巨人はこいつなのか?」

A、ベルトルトについての詳細が書かれた用紙を指で弾く

A「この巨人化能力はベリックに与えるんじゃなかったか?」

B「こないだの会議でベルトルトに決定したんだよ。」

ーーーーー


ベルトルト「びええぇぇぇぇえ~!!!」

ライナー「(キーン)役立たずじゃない!お前全然役立たずじゃないから!」

ベルトルト「びええぇぇぇぇぇぇ~!!」

ライナー「『先生』達が見込んだんだぞ!?お前が選ばれたんだ!自身持てって!」

ベルトルト「じゃあ僕どうして巨人になれないの?」

ライナー「……えーっとそれは…待て!ストップ!決壊するな!キープしろキーープ!!あ駄目だコレ」


ーーーーー

A「…こいつ三人の中で一番ヘタレだろ…こないだだって注射怖がって泣いてたし。大丈夫なのかよ」

B「気弱だから良いんだろ。ベリックは良くも悪くも我が強いから、能力を活かしてこちらに反逆して来るかもしれない。流され易いベルトルトならそんな心配はまず無い」

A「それもそうか」


A「あーでも超大型って最終的には50メートル超すんだろ。こいつチビだし耐え切れなくてショック死するんじゃないか?」

B「分かんないぜ~、子どもはすぐに成長する。ま、今日明日にいきなり50メートルにさせるわけにはいかないな。徐々にサイズを上げて、成長期と併せて計算して、そうだな11~12そこそこには6、70メートルに安定するだろう」

A「60か、例の壁は50だっけ。なら充分に間に合うな」

B「おうよ」

ーーーーー


ライナー「…落ち着いたか?」

ベルトルト「う、うんっ……ぐす…」

ライナー「あー…多分さ、スランプだスランプ」

ベルトルト「スランプ?」

ライナー「お前最近巨人化のスピード遅くなったって言ってたじゃん。それ不調の現れだったんだよ」


ベルトルト「スランプ……じゃあ僕何時になったら巨人化出来るようになれるの?」

ライナー「そりゃあ分かんねえよ」

ベルトルト「そんなあ」

ライナー「ちょっとした休息日だと思えって。お前最近焦ってたからさ」

ベルトルト「……休息…」

ライナー「おう。それに安心しろ、こういうのは長続きしないもんだ」


ーーーーー

B「ただな、やっぱりサイズがサイズだから、体内の細胞が修復に追い付かなくて丸っきり巨人化出来ない期間が出て来る」

A「ただの人間に戻るってことか?」

B「ああ。まあ二、三日程度ですぐ巨人化出来るようになるだろうがな」

A「変身出来ないよ~って泣くかもな」

B「泣くだろうな~」

ーーーーー


ベルトルト「でももし……『任務』の時が来ても元に戻らなかったら…」

ライナー「いやだから」

ベルトルト「壁を壊すときまで…巨人になれなかったら…!」

ライナー「……ベルトルト!!」

ベルトルト「へぇっ!?(ビクッ)」

ライナー「ちょっと俺に着いて来い」


ザッザッザッ

ベルトルト「ね、ねえライナー…怒った?」

ライナー「……」

ベルトルト「…どこに行くの?僕達……」

ライナー「着いた」


ベルトルト「ここ、何時も僕らが練習に使ってる広場だよ…」

ライナー「おう」

ベルトルト「ここで何するの?」

ライナー「今からちょっと巨人になる。お前は離れてろ」

がぶっ …カッ


ズウゥン…

鎧の巨人「……」

ベルトルト「……ライナー?」

鎧の巨人「ン」

ズザッ…

ベルトルト「何?この手…乗ると良いの?」

鎧の巨人「ン」


ヨジヨジ

ベルトルト「乗ったよ、ライナー」

鎧の巨人「ン」

ズシーン…ズシーン…

ベルトルト「わあ!?」

ズシーン…ズシーン…


ベルトルト「凄いなあライナーの巨人体は、僕の大きいけどまともに歩けないんだよ、皮膚も無いし…変だよね」

鎧の巨人「エオ、ソオウンホウエキヨウ…」

ベルトルト「あはは何言ってるのか分からないよ~」

ライナー(ふう良かった、笑ってる)


ズシーン…ズシーン…

ベルトルト「ねえライナー…どこまで行くの?」

鎧の巨人「チョッオソオアデ」

ベルトルト「え?」

鎧の巨人「…チョッオソオアデ」

ベルトルト「……」


ズシーン…ズシーン…

鎧の巨人(散歩でもすりゃ気も紛れるかと思ってやってみたけど)

鎧の巨人(たまには悪くないな)

チコチコチコチコ

鎧の巨人(…?…腕がこそばゆい…)


ズシーン…ズシーン…

鎧の巨人(何だ……?)

チラッ

鎧の巨人(!!?)

ベルトルト「よいしょよいしょ」

チコチコチコチコ

鎧の巨人(こ、この馬鹿!何腕よじ登ってんだ!!!)


鎧の巨人「コア!ヤエオ!!!」

ベルトルト「よいしょよいしょ」

チコチコチコチコ

鎧の巨人(聞けよおい!!)

チコチコチコチコ


鎧の巨人「ヤエオッテ……」

ピョコン

ベルトルト「わーい肩に到着!ライナー見てた?うなじから」

ライナー「見てたよ!無茶しやがって!!お、落ちたらどうするつもりだったんだ!」

ベルトルト「落なかった」

ライナー「運が良かったからだよ!!」


ベルトルト「大丈夫、僕木登りは得意だから」

ライナー「だからさ………もう良いや…」

ズシーン…ズシーン…

ベルトルト「良い景色だね。鎧の巨人って大きいなあ」

ライナー「お前より大きくないけどよ、15メートルの視点から眺める景色も良いもんだろ?」


ズシーン……

ライナー「ここら辺かな」

ベルトルト「わあ~綺麗な夕日だ」

ライナー「叫んでみるか?ヤッホーってな」

ベルトルト「ええ~?良いよ、ライナーが言いなよ」


ライナー「元気出たみたいで良かった」

ベルトルト「え?…あ」

ライナー「何時までもグズグズ泣いてると、戻るものも戻らねえかんな」

ベルトルト「…ライナー…ありがとう」

ライナー「…『任務』の日までまだまだ日があるんだからさ、そう気を揉むなよ」

ベルトルト「うん!」


ーーーーー

A「…鎧、超大型は分かった。ベリックはどうする、まだ能力は決まらないのか」

B「それなんだけどな、ちょっとこれ見てくれ」

A「んん?…ちょ!これすげえな!!」

B「だろ?ぶっちゃけこれの為にこの『計画』に参加したんだよ俺は」


A「両手ロケットパンチとか膝にバルカン砲仕掛けるとか趣味入りまくりじゃねえか!!」

B「ふっふっふ、ロケットパンチは男の夢だ」


・・・

A「…駄目って言われたな」

B「しょんぼり」

ーーーーー


ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー














ベリック「逃げろっ!!!!」




ーーーーー

A「…だけどよ?」

B「ん?」

A「いくらあいつが気弱で自分の意志が無いからって、何時までもこっちに大人しいままとは分からんだろ」

B「まあな」


A「ライナーやベリックにそそのかれでもしたら、流されやすいあいつの事だ、あの巨体でこっちに襲いかかって来るぞ」

B「……例えば」

A「例えば?」

B「三人の故郷に『巨人』が襲って来たとする」

ーーーーー


ライナー「ベリック!!!!!」

ベルトルト「ベ…ベリック……!」

ベリック「何立ち止まってんだ!逃げろ二人共!逃げるんだ!俺なんかほっとけ!」

ユミル巨人「アーーー……」

ベリック「…っ!!」


ーーーーー

A「巨人が…ふむ」

B「不運な事に『任務』の為に旅立とうとした矢先だ、自分達三人だけ。頼れる大人なんかいない」

A「うむ」

B「巨人は自分達を見つけて襲いかかって来る、正義感の強いベリックは咄嗟に仲間を突き飛ばし、身代わり巨人の手に掛かる」

A「うむ」




B「巨人はベリックを、その大きな口で…」


ーーーーー


ベリック「良いかお前ら!『任務』を全うするんだ!きっと故郷に帰……」

ユミル巨人「アアーーーーーー……」

バクンッ

ライナー「うわああああ!!!!」

ベルトルト「……!!」


ーーーーー

B「…と、ベリックなら死の間際でもこう言うだろう」

A「だろうな」

B「そうしたら、もう戻れない」

A「……」

B「故郷へ帰るために、友の遺言を守るために、前へ進むだろう。嫌でもな」

A「なるほど」

ーーーーー





ライナー「……(ぶつぶつ)」

ベルトルト「…ひっく…ひっく…」

ライナー「……(ぶつぶつ)」

ベルトルト「ふっく……ふぐっ…ひっ……」


ライナー「…なあベルトルト…」

ベルトルト「…ふっ…!?」

ライナー「……」

ベルトルト「……」

ライナー「…見てたか?…ベリックが食われるところ…」

ベルトルト「……ひっく……」


ライナー「俺は見た、あの巨人に食われる瞬間を」

ベルトルト「…ひっく……」

ライナー「昨日まで…あんなに笑ってたのに…」

ベルトルト「…ううぅ…ベリック……ぐすっ」

ライナー「…お前の背中」


ベルトルト「え……?」

ライナー「俺はあの時、お前の背中しか見えなかった」

ベルトルト「…そ…れは」

ライナー「お前の背中しか…見えなかった……」

ベルトルト「ラ、ライナー……腕を離して……」


ぎゅうううっ

ベルトルト「い、痛いよ…ライナー…離して」

ライナー「……」

ぎゅうううぅぅっ

ベルトルト「い、痛い!ライナー!離して!腕から血が出る!!」

ライナー「ベリックは…何を思ってあいつに喰われたんだろう…」


ベルトルト「痛いっ痛い痛い痛い!!」

ライナー「何を考えながら、俺達を見ていたんだろう…」

ベルトルト「痛い…離して!!ライナーお願い!!痛いよぉ!!!」

ライナー「もう戻ってこない、もう帰ってこない……」

ベルトルト「ご…ごめん…なさい……」


ライナー「ごめんなさい?」

ベルトルト「ひっく!い、痛いよライナー…!お願い、離して、お願いだから…」

ライナー「ごめんなさい?」

ベルトルト「痛…い!痛い痛い痛い痛い痛い!!」


ーーーーー

A「よくもまあこんな酷い筋書きを思い付くもんだよ」

B「ノリノリで聞いてたくせに」

A「まだ12、3そこそこのガキだぜ」

B「じゃあ、お前んとこの息子にでもやらせるか?」

A「はあ?嫌に決まってるだろ」

B「だろ?勿論俺だって嫌だ。所詮他人事だからここまで好きに出来るんだ」

A「だな、死んだって嫌だ」

ーーーーー


ベルトルト「い、痛いいたい!いたいいた、ぅあああああああああああああ!!!」

ブシュッ!!…ばたんっ

ライナー「……」

ベルトルト「うぐっごめんなさい…ごめんなさい…」

ライナー「……」

ベルトルト「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」


ライナー「…帰るぞ、故郷に」

ベルトルト「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」

ライナー「きっと帰るんだ………」

ベルトルト「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」

ライナー「帰るんだ…故郷に…帰るんだ……」


ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…





『もう戻れない』





おしまい


はやく同郷組の黒幕が明らかにならないかなっと

どなたのことを言っているのか分からないがとりあえずマルコの顔の人ではないよ
ss書くの二ヶ月くらいぶりだたよ

>>63
そういや前間違えられてたねwww

>>64
うむ光栄なことに

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