勇者「魔王様はとても素晴らしいお方です」(186)

勇者「ううっ……」

兵士「勇者殿!気がつきましたか!」

勇者「ううーん……僧侶……僧侶ちゃんのおっぱいが……」ワキワキッ

兵士「勇者殿、それは自分の胸であります」

勇者「硬い……です……んっ!?」

兵士「勇者殿……///」ポッ

勇者「ぎゃあ!」ゾクッ

兵士「気づきましたか?」

勇者「ここは……?いてて」

兵士「王城です。その怪我ではまだ動くのは……」

勇者「そうだ!王様に伝えないといけないことが!」ガバッ

兵士「ちょっ、無理しないでください」

勇者「大丈夫だ……」ズルズルッ

勇者「ふぅ……ふぅ……」

バタンッ

王様「勇者殿!?」

勇者「王様……お伝えすることが……」

王様「伝えたいこと?もしかして魔王のことかの?」

勇者「魔王……」ビクッ

王様「?」

勇者「魔王様はとても素晴らしいお方です」

勇者(え?俺今なんていった?)

王様「勇者……殿?」

勇者「あ、あの……」

王様「わしの聞き違いかの?やはり怪我の具合がよくないのではないですかな?」

勇者「いえ、そんなことは……いつつ」ガクッ

王様「傷だらけで倒れておったときは本当にだめかと思ったぞ。休んだ方がいい」

勇者「いえ!ここで報告しないといけないことが!」

王様「その傷、やはり魔王にやられたのか?」

勇者「……」ビクッ

勇者「いえ!魔王様と戦うなどとんでもない!魔王様はとても素晴らしいお方です」

王様「なっ……」

「勇者殿が……」

「まさか……まさかだろ?」

ザワザワ

勇者(ま、また口が勝手に)

王様「本気で言っておるのか?勇者殿……」

勇者「当然です!」

勇者(また……思ってもないことが)

王様「魔王軍が人類と敵対し、戦争していると知っておるであろう」

勇者「魔王様は戦争なんて望んでいません!我々は魔王様に従うべきです」

王様「……」

勇者(おかしい……なんでこんな言葉が……)

勇者(いつっ……この怪我は魔王にやられたはず)

勇者(えっと……何があったんだったか……)

勇者(確か、魔王の間の前で死亡フラグについてみんなで話をしていて……)

―――数日前 魔王の間前

盗賊「いよいよっすね!勝つっすよ!」

戦士「おう!俺たちならやれる」

僧侶「命にかえても魔王を倒しましょう」

勇者「僧侶……この戦いが終ったら……結婚しよう!」

僧侶「え」

戦士「おい!ずりぃぞ、勇者。抜け駆けすんなよ」

戦士「俺、この戦いが終ったら田舎に帰るんだぜ!」

盗賊「ちょっ!ちょっと!それ死亡フラグっすから!」

勇者「は?いいじゃないか。なぁ僧侶」

僧侶「……」プイッ

盗賊「こんな時やめてくれっす」

戦士「で、その死亡フラグってのは具体的にどうなるんだ?」

盗賊「死ぬんすよ!縁起でもねーっす」

勇者「そんな迷信信じるなよ。俺たちの力のほうを信じようぜ」

戦士「がはは、そうだな。もっと言ってやれ」

勇者「僧侶、俺に何かあったらお前は逃げろ!」

僧侶「勇者様……///」

戦士「がはははは」

盗賊「ちょっ!マジやめて」

勇者「いいじゃないか、別に」

盗賊「それにこんな魔王の間の目の前で……」

勇者「大丈夫だって!魔王って待ってるものだろ。ジーッと一人で寂しく」

戦士「そうそう、盗賊、お前も言ってやれ言ってやれ」

盗賊「あー、もうしらないっすよ!」

盗賊「新世界の神に俺はなるっす!」

勇者「おー、なってやれ、なってやれ」

戦士「がははははは」

盗賊「この戦いが終ったら、俺、世界一の盗賊になるっす!」

戦士「いや、それ犯罪」

勇者「ないわ、それはないわ」

僧侶「犯罪はいけないことですよ」

盗賊「……」


盗賊「あー、もう早くいくっすよ!」グッ

勇者「ちょっ、待てよ」

僧侶「でもいつまでもこうしてられませんし、行きましょうか」

戦士「がはは、開けるぜ!」

バタンッ

魔王「極大爆裂魔法!」

ドギャアアアアアン

勇者「」バタッ

僧侶「」バタッ

戦士「」バタッ

盗賊「」バタッ

魔王「馬鹿が!部屋の中に声が丸聞こえだ!」

勇者「卑怯……な……」

僧侶「扉を開けたところを狙い撃ちするなんて……」

戦士「うぐぐっ……」

盗賊「だから言ったっすのに……だから……」

魔王「ふはははは、どうしてくれようか」

勇者「こ、殺すのか……」

僧侶「う、動けないです……」

戦士「お、俺はいいからみんなは助け……」

盗賊「戦士、そ、そういうのもやめて……」

魔王「くくくっ、ここでただ殺してしまうのもつまらんな」

勇者「くっ……」

魔王「そうだ、いいことを教えてやろう。勇者よ」

勇者「なん……だ」

魔王「私は今度人間達の王に会談を持ちかける」

勇者「突然何を……」

魔王「和平会談だ」

勇者「お前が……和平?」

魔王「その会談の場で……お前たちの王を殺す」

勇者「なっ……」

魔王「ふははは、どうする?」

勇者「なぜ俺にそれを……うぐぐっ……教える」

魔王「はははは、絶望を味わってもらうためだよ」

勇者「絶……望」

魔王「お前たちは生かして返してやろう。その代わり私の呪いを受けてもらおう!」ゴゴゴゴゴゴ

魔王「お前たちの苦しみ、悲しみ、恨み、絶望。それが私の力となろう」

魔王「ふはははははははは」

―――王城

勇者(そうか……これが魔王の呪い)

勇者(魔王に不利なことは言えないのか……)

勇者(僧侶……戦士……盗賊……あいつらも何か別の呪いを受けたはずだ……)

勇者(確か僧侶が犬にされたところまでは覚えているが……戦士と盗賊は……)

勇者(駄目だ、思い出せない)

王様「勇者殿?」

勇者「はい」

王様「本気なのか?」

勇者「当然です!魔王様に従いましょう!決して悪い話ではありません」

王様「おい」

兵「はっ」

王様「兵を集めよ」

兵「御意!」ダダッ

勇者「お、王様?」

王様「残念じゃ……まさか勇者殿が魔王につくとは……」

勇者「王様も魔王様につきましょう!(違う!)」

王様「魔王……そして勇者殿、二人に手を組まれてはどうしようもない」

勇者「だから魔王様と……(違う!)」

王様「ひっとらえよ!」

「はっ」

「動かないでください、勇者殿」グイッ

勇者「ちょっ、やめ……」

王様「それとも操られているのか……少し牢で頭を冷やすが良い」

「さあ、こちらへ」

勇者「王様!」グイッ

「あ、こらっ」

勇者「本当のことを言います!」

王様「ん?」

勇者(言え!言うんだ俺!呪いなんて俺の力で……)ゴゴゴゴゴ

勇者(言うぞ……言ってやる!)

勇者「魔王様は!」

王様「……」

勇者「本当に!!」

王様「……」

勇者「素晴らしいお方です!!!」ビシッ

王様「つれていけ!」

勇者「あああああああああ」ズルズル

―――牢

勇者(駄目だった……)

勇者(どうする……どうする俺)

勇者(王様に真実を伝えないと……そうだ……字で書けば……)

勇者(この紙に……)サラサラッ

勇者(……『魔王様はとても素晴らしいお方です』?)

勇者(字まで魔王を称える言葉に……)

勇者(一緒に呪いを受けたあいつらなら……分かってくれるかな?)

勇者(しかし、この牢……しっかり魔力封じまでしてやがる)

勇者(ちょっと壊せないか……)グッグッ

キィ……

勇者「ん!?開いてる?」

勇者「施錠されていたはずだったけど……」

勇者「……」キョロキョロ

勇者「まぁいい!あいつらを探そう」ダッ

―――城下町

勇者「よし、出られた」

勇者「……んー、あいつらどこに飛ばされたんだ?」

勇者「待て……あっちも俺を探してるかも知れない」

勇者「っとするとこの町……確か僧侶もこの町出身のはず」

勇者「いるかも……確か犬にされてたんだったな」

勇者「……」キョロキョロ

勇者「手当たり次第に当たっているか」

「わんわんっ」

勇者「よし!あれから!」グイッ

「ちょっ、ちょっとあんた人の犬に何を……」

勇者「んー……オスか。違うな」ポイッ

「わ、私のポッキーがあああああああ!」

勇者「次はあの犬は……」ダッ

勇者「んー、違うかな?おい、お前僧侶か?」

「きゃうんきゃうん」

「ダニーに何をするだー!」

勇者「違うか」

勇者「おーい!僧侶ー!どこだー!」

勇者「うーん、これは時間がかかる……」

僧侶「きゅーんきゅーん!」

「あ、こら、暴れるな」

僧侶「わんわんおっ!」ダッ

「逃げるな、おい、追いかけるぞ」

ダダダッ

勇者「ん?」

僧侶「わんわんおっ!わんわんおっ!」フリフリッ

勇者「このしっぽ振ってる犬は……」

「あ、すみません。すぐ片付けますんで。ほらっ、こっち来い!」

僧侶「きゃうん!」

勇者「えっとあなたは?」

「保健所の者です。この辺りもノラ犬が増えちゃって……」

勇者「野良犬?」

「ええ、こいつ!さっさと来い」グイッ

勇者「野良犬はその後どうされるんだ?」

「殺処分ですよ。まったく、犬を飼うなら最後まで面倒見て欲しいですね」

僧侶「わんわんおっ!?」

勇者「野良犬か。あの可愛い僧侶が野良なわけないよな」クルッ

僧侶「わんわんおっ!?」

「ほらっ、行くぞ」グイグイッ

僧侶「わんっ」ガブッ

「いてっ」

ダダダッ

ギャブッ

勇者「ぎゃあああああ!いってえええ!噛みやがった!」

「こらっ、離せ」グイッ

僧侶「ギャルルルル」ガブガブッ

勇者「や、やめて。千切れる」

パッ

僧侶「わんわんおっ!」

勇者「んっ、何か持ってるな。お前、もしかして……」

「どうもすみません。すぐ連れて行きますんで」

勇者「待て」

「え?」

勇者「よく見たらこれ俺の犬だわ」

「は?」

勇者「わりぃわりぃ、あー、首輪外れちゃったんだなー」

「そうなんですか?」

勇者「そうそう、だから俺が引き取るから」

「わ、わかりました」スタスタ

僧侶「わんわんおっ」

勇者「ちょっとくわえてるそれ見せてみろ」チャランッ

勇者「これは……俺が僧侶にプレゼントしたロザリオ……」

僧侶「わんわんおっ!」フリフリッ

勇者「プレゼントして……そして趣味が悪いとか言われて捨てられたロザリオ……」

僧侶「わんわんお!?」

勇者「話しかけるたびに顔真っ赤にして3日ほど口聞いてくれなかったロザリオ……」

僧侶「……」

勇者「俺のトラウマロザリオをなんでお前が……」

勇者「こんなもの……破壊しつくしてくれる!!」ゴゴゴゴゴゴ

僧侶「がうっ!」ガブッ

勇者「いてぇ!」

チャラ

勇者「なんだよ、お気に入りか?」

僧侶「わふわふっ」グイグイッ

勇者「なんだ?引っ張って」

僧侶「うーっ」グイグイッ

勇者「わーったよ。行けばいんだろ?なんか僧侶のこと知ってるのか?」

勇者「ったく、こんな汚い犬よりはやく、僧侶に会いたいぜ」

スタスタ

僧侶「わんわんおっ!」

勇者「ここは……」

勇者「俺と僧侶が初めて会った場所じゃないか」

勇者「まさか……」

僧侶「わんわんおっ!」フリフリッ

勇者「ちょっ、お前見せてみろ」グイッ

勇者「これは……メスだ!」

僧侶「きゃふっ!?///」カー

勇者「お前僧侶か!?」

ガブリッ

勇者「ぎゃーー!また噛んだ!」

僧侶「がぶがぶっ(どこ見てるんですか!変態!)」

勇者「ほんとにちぎれちゃうからやめて!」

パッ

僧侶「わんわんおっ(もう……勇者は……)」

勇者「ふぅ。なぁ僧侶……だよな?」

僧侶「わんっ!(はい)」

勇者「そうか。なぁ、魔王様って……本当に素晴らしい方だよな?」

僧侶「わふっ!?(え?)」

勇者「わ、わりぃ。俺もお前と同じでちょっと変なんだ」

僧侶「わんわんお!?(え?まさか……)」

勇者「言えないんだけどな。よし!僧侶は見つけた。たぶん!」

僧侶「わんわんお!(僧侶です!)」

勇者「次は戦士の村が近いな。行くか!」スタスタ

僧侶「キャインキャイン」

「あー、またこんなところに野良犬が……こっち来い。保健所に行くぞ」

勇者「またか!それ俺の将来のお嫁さんだから!」

「え?犬がお嫁さん……?え?え?そういうプレイ?」

勇者「い、いや、あの……」

「変態だー!」ダダダッ

勇者「よし!首輪買って来たぞ」

僧侶「わんわんおっ」

勇者「今、着けてやるから。これで保健所に連れてかれたりしないぞ」チャッ

勇者「……」ドキドキ

勇者「お、俺今、裸の僧侶に首輪をつけようとしてる……」ドキドキ

僧侶「わんっ!?」

勇者「裸で四つんばいの僧侶に首輪を……犬だけど」ドキドキ

勇者「いや、想像しろ……想像を加速させるんだ……」

勇者「俺は……裸で四つんばいの僧侶に首輪をつける……」

勇者「見えた!」

僧侶「がぶっ!」

勇者「いてぇ!ちょっ、僧侶!冗談!冗談だって!」

僧侶「わんわんおっ!///」カー

勇者「あ、そういえば僧侶、お前お尻の穴丸見え……」

僧侶「がうっ!」ガブリッ

勇者「犬用の服買って来ました」ペコペコッ

僧侶「わんわんおっ!」

勇者「ほらっ、履かせてやる」ドキドキ

勇者「でもこんなんしたらトイレの時どうするんだ?」

僧侶「わふっ!?」

勇者「その度に俺が脱がすのか?僧侶の下」

勇者「それもいいけど……」

僧侶「……」タタッ

勇者「あ、いらねーの?服」

僧侶「わんわんおっ!(もういいです!)」

―――町

勇者「ふぅ、やっと次の町についたぜ」

勇者「城下町じゃ兵とかに見つかったらやばいしな」

僧侶「わんわんおっ?」

勇者「ここで休んでいこうぜ。体も洗いたいだろ?」

僧侶「わんっ!」フリフリッ

勇者「お前お風呂好きだったもんなー」

勇者「よし、あそこの宿にするか」

ギィ

宿屋「いらっしゃい。1名様……ですか?」ジロジロ

勇者「2名でよろしく」

僧侶「わんわんおっ!」

宿屋「まさか……その犬?」

勇者「ああ、そうだけど」

宿屋「犬はお断りだよ。泊まるんなら犬は外に繋いでおいてくれ」

勇者「いや、そんなわけにはいかないんだ。お願い!」

宿屋「だめだめ!お兄さんだけなら歓迎するから。犬なんてあっちやって。しっしっ」

僧侶「きゅぅん……」スタスタ

勇者「待て僧侶」

僧侶「?」

勇者「じゃあ俺も泊まらないからいいよ」

宿屋「え?ちょっと、この辺に犬と一緒に泊まれるような宿はないよ?」

勇者「いいんだ」

宿屋「まぁまぁ、お兄さんだけでも泊まっていってよ。サービスするから」

宿屋「こっちは魔王の手下に町を荒らされて不景気でね。一人でもお客さんは逃したくないんだよ」

勇者「……魔王様は素晴らしい」

宿屋「え」

勇者「魔王様の手下のせい!?魔王様の考えは素晴らしい!従わない町が悪いんだ」

宿屋「んだと、こらっ」

勇者(しまった!俺……僧侶もいるのに)

僧侶「わんわんお!?」

宿屋「表に出ろやこらぁ!」ドンッ

勇者「魔王様に従うのが一番だ!」

宿屋「まだ言うか!俺は女房を魔物に殺されてんだよ」ボカッ

勇者「あぐっ……それも魔王様の考えに従わないから……」

宿屋「てめぇ!殺してやる!」

ドガッ バキッ ドスッ

勇者(くっそ、この人殴っちまうわけにもいけねーし……)

宿屋「まだまだ俺の怒りはおさまらねーぞ!おらぁ!」

勇者「くっ」ビクッ

宿屋「ん?誰だ?とめんじゃねーよ」クルッ

宿屋「誰もいない?」

宿屋「オラ!続きだ……だからとめんじゃねーって」クルッ

宿屋「???」

宿屋「き、気味わりぃな。けっ、このへんにしといてやる。消えうせろ!糞ガキが!」ペッ

ベチャァ

勇者「……」

勇者「はは……悪いな、僧侶。今日は野宿っぽいわ」ボタボタ

僧侶「きゃうん(勇者……血が……それに私のせいで……)」

勇者「よっこいせっと。この辺で寝るか……うぅ……寒いな」

僧侶「……」スタッ

勇者「おわっ、なんだ、乗ってきて」

僧侶「……」ペロペロ

勇者「お前毛皮があるからいいなぁ、暖かい……」ギュッ

勇者「お休み僧侶」

僧侶「わんわんおっ(おやすみなさい。勇者様……」

勇者「んーっ朝かー!」コキコキッ

勇者「体いてー!はははっ」グッグッ

勇者「でも僧侶のおかげで凍死せずにすんだな」ギュッ

僧侶「きゃふっ///」

勇者「さて……行くか!」

僧侶「わんわんおっ!」

勇者「あ、そうそう。俺ちょっと思いついたんだけどさ。呪いって教会で解けないかな?」

僧侶「わんっ!」

勇者「だろ?ちょっと行ってみようぜ」

僧侶「わんわんおっ!」

―――教会

勇者「呪いを解いてほしくなんてないんだからねっ!」プイッ

神父「ツンデレ!?」

勇者(しまった、呪いを解くことも魔王に不利なことだったか)

勇者「この犬は呪われてなんかないんだからねっ!」

神父「あ、あのキモいです」

勇者「神父様!!」グイッ

神父「な、何?」

勇者「呪いを解いてなんて欲しくないんだからねっ!」

神父「さっき聞きましたよ!解いて欲しくないんなら帰ってください」

勇者「なぁ神父。お願い!」

神父「な、何?」

勇者「呪いを解くなよ」グイッ

神父「こ、怖い……」

勇者「絶対に呪いを解くなよ?」ギラギラ

神父「血走った目で顔近づけないで……」

勇者「絶対に……絶対にこの犬の呪いを解くなよ?絶対だぞ?絶対」

神父「そ、それ何かのフリですか?」

勇者「絶対だからな!解くな?解くなよ?」

神父「は、はい、解きません」

勇者「これで呪いを解くなよ?」チャリーンッ

神父「あ、お金。毎度。じゃあ解きますね」スッ

神父「神よ……この忌まわしき力を祓いたまえ……」

神父「南無南無……破ああああああああああああ!」カッ

僧侶「どうです?解けました?」プルンプルン

勇者「お……おぅ……」

神父「こ、これは……」

僧侶「?」

勇者「だ、駄目みたいだ。解けてない、まだ解けてないなぁ、なぁ?神父」チラチラッ

神父「は、鼻血が……そ、そうですね。もうちょっと破魔の呪文が必要ですね!」

僧侶「やっぱり魔王の呪いは根深いんですね……」

神父「では今度は後ろから……」チラチラッ

勇者「おい、俺にも見せろ」チラチラッ

神父「押さないでください」

勇者「馬鹿。呪いを解いた礼代わりに見せてやってんだぞ。触ったら殺すぞ」

神父「南無南無……破ぁ!南無南無……破ぁ!」カッ

勇者「むむむっ、これはしつこい呪いですなぁ」

神父「ですなぁ、おっぱいの揺れがまたたまらんですなぁ」

僧侶「勇者様。呪いが解けないのなら行きましょう」

勇者「そ、そうだね」グッ

僧侶「ちょっ、ちょっと首輪の紐引っ張りすぎです」

勇者「ああ、ごめん。ちょっとサイズが違うから引っ張りすぎちゃったよ」

神父「そのまま外へ?」

勇者「な、なんか興奮してきた……」ドキドキ

僧侶「あの……もしかして言ってること分かってます?」

勇者「え?分からない!ぜんっぜん僧侶の言ってる言葉わかんないよ?」

僧侶「……」チラッ

僧侶「あ……体が……元に……」

僧侶「きゃああああああああああああ!!///」

勇者「ご、ごめ……調子に乗りすぎ……」

僧侶「がうっ」

ガブッ

勇者「ぎゃああああああああああ!噛んだ!」

神父「わ、私も噛んでください!」

僧侶「即死呪文!」カッ

神父「」バタッ

勇者「冗談!冗談だから!ほらっ、服、俺の服あげる!」

僧侶「うーっうーっ!」ガブガブッ

勇者「だから悪かったって。ねっ、ねっ」

僧侶「もう……勇者様の馬鹿……」プイッ

勇者「でも教会で呪い解けたんだからさ」

僧侶「うーっ///」

勇者「で、この人……死んじゃったの?」

僧侶「手加減しましたから気絶してるだけです」プイッ

勇者「そ、そう。良かった」

僧侶「でも魔王の呪いが教会で解けるなん……」シュウゥー

僧侶「わんわんおっ」

勇者「あ、犬に戻っちゃった!?」

僧侶「わんわんおっ!?」

勇者「一時的にしか元に戻らないのか……」

勇者「やっぱ呪いをかけた相手を倒すって感じなのかな……いや、まだ手はあるかも……」

神父「ううーん、はっ……ここは……」

勇者「あ、気がついた」

神父「危うく天に召されるところでした……あれ?あのおっぱいの子は?」

僧侶「うーっ!わんわんおっ!」

神父「あら?元に戻ってしまったんですか、残念……」

勇者「ああ、今回も駄目だったよ」

神父「こんな犬になってしまっておかわいそうに……」

神父「あ、お尻の穴丸見えですよ?」

勇者「それ俺が前言ったから……」

僧侶「がうっ!」ガブリッ

神父「ぎゃあああああ!」

―――都市

僧侶「わんわんお?」

勇者「なんでこんな町に寄り道するのか?って顔してるな」

僧侶「わん!」

勇者「この町で色々と道具を預けてあっただろ。預かり所で色々調達していこうぜ」

僧侶「わんわんおっ!」

勇者「っていってももう夜遅いな。おっペットOKの宿屋があるぜ?さすが都会」

僧侶「わんっ!」

勇者「ははは、久しぶりにゆっくり休もうぜ」

スタスタッ

勇者「裸で四つんばいの僧侶を首輪で引っ張って宿屋へ……脳内変換しておこう……」ドキドキ

僧侶「?」、

宿屋「お食事の用意ができました」

勇者「僧侶、行こうか」

僧侶「わんっ!」フリフリッ

勇者「えっと……」

僧侶「……」

勇者「俺のは普通の飯だからいいとして……僧侶にドッグフード!?」

僧侶「きゃうん……」ウルウル

勇者「泣くなって!なっ。俺の半分やるから」

僧侶「わんわんお!」

勇者「あ、犬ってネギ駄目なんだっけ?これ駄目だな……」

僧侶「……」ウルウル

勇者「あー、もう、泣くなよ!ドッグフード?いいじゃねーか」

勇者「俺も半分食ってやる!」パクッ

僧侶「わんわんおっ!?」

勇者「ほらっ、人間が食っても大丈夫だって。なっ、僧侶」

僧侶「きゅうんっ……(勇者様……無理しちゃって……)」

勇者「ほらほらっ、モタモタしてると俺が全部食っちまうぞ」

僧侶「わんわんおっ」ガツガツッ

勇者「ああ、ドッグフードはうまいなぁ」

勇者「さて、僧侶。体洗ってやるよ」

僧侶「きゃうんきゃうん///」カー

勇者「一人じゃ洗えないだろ」

僧侶「///」フルフル

勇者「いまさら恥ずかしがるなよ。トイレも俺が一緒に入って流してやって……」

ガブッ

勇者「いてぇ!」

僧侶「わんわんおっ!」タッ

勇者「おい、俺が洗ってやるって一人で行くな」

―――翌日

勇者「さて、預かり所に行くか!」

僧侶「うーっうーっ(全部見られちゃいました……触られちゃいました……)」

勇者「どうした僧侶」

僧侶「わんわんおっ!」

勇者「おー、元気いいなぁよしよし」ナデナデ

僧侶「わふっ!?(完全に犬扱いされてる!?)」

勇者「いやぁ、昨日みたいなプレイ、人間になってからもやりたいなぁ。あははははは」

僧侶「がうっ!」

ガブッ

―――預かり所

勇者「あー、もう、俺の体が歯型だらけだよ」

僧侶「わんわんおっ!」プンプン

勇者「おー、あったあったこれこれ」

僧侶「わんっ?」

勇者「これか?これ冒険の途中で使っただろ?真実を写す鏡」

勇者「これを通して僧侶を見れば……おおぅ……」

勇者「すげぇ……やっぱ首輪で裸っていいわぁ……」

勇者「おおぅ、僧侶ってこんなところにホクロがあるんだな……」

勇者「腰もくびれててすげぇ……エロ……」ハァハァ

僧侶「あおおおおおおおおおおおおん!(キャアアアアアアアアアアアアアアア!)」

ドンッ

勇者「あ」

ガシャーン

勇者「ああ……これがあれば王様に呪いを証明できたのに……割れてしまった」

僧侶「わんわんおっ!(別の目的で使ってたじゃないですか!)」グイグイッ

勇者「だ、だって仕方ないじゃん!僧侶の裸みたいんだもん!」

僧侶「わんわんおっ!(開き直らないでください!)」

勇者「これで魔王を倒す以外なくなっちゃったかな……」

僧侶「わんっ!」

勇者「あとは……戦士の村行ってみるか。盗賊はどこで生まれたか知らないしな……」

―――戦士の村

勇者「んー、来てみたけど実際戦士がどんな呪いを受けたか知らないんだよなぁ」

勇者「僧侶、お前なんか見たか?」

勇者「僧侶?」

勇者「おーい、僧侶?」

僧侶「きゃうんきゃうん!!」

勇者「どこだ!?こっちか!?」ダダッ

雄犬「はふはふっ」カクカクッ

飼い主「おー、いい嫁さん見つけたなぁ、やれやれ」

勇者「いやああああああああああああああ!!」ドガッバキッ

雄犬「」

飼い主「」

僧侶「きゃうんきゃうん!」ウルウル

勇者「僧侶!?大丈夫か?」

勇者「僧侶、やられちゃったのか?交尾されちまったのか!?見せてみろ」グイッ

僧侶「きゃふっ!?///」

勇者「ふぅ……無事か」

僧侶「……」プルプル

勇者「どうした?」

僧侶「わんわんおっ(どこジロジロ見てるんですかー!)」ガブッ

勇者「あたたっ、助けてやったんじゃないかー!」

僧侶「わんわんお……(早く元に戻りたい……)」

勇者「あのー……」

「おお、これは……勇者殿!?」

勇者「あ、俺を知ってるんですか?」

「ああ、戦士が世話になっておる」

勇者「それで戦士のことなんですが……」

「それどころじゃないのじゃ」

「そうそう、助けてくれ。勇者殿」

勇者「あの……それより戦士は……」

「この村は危機に瀕しておるのじゃ!」

「山から悪魔が……悪魔が襲ってくるのじゃ」

勇者「悪魔?」

「ああ、鎧をまとい、そして剣を携えた……」

「ゴリラが!」

勇者「あー……戦士見つかったな……」

僧侶「わんわんおっ!」

―――山林

勇者「おーい、ゴリラー!」

僧侶「わんわんおー!(戦士さーん!)」

「うほっ(親分、また人間がきやがりましたぜ)」

戦士「うほうほっ(親分じゃねー、くそー。魔王め……ゴリラになんぞしやがって)」

「うききっ(兄貴ー、また頼みますぜ)」

戦士「うほっうほっ(兄貴でもねー。村に帰っても怖がられるしどうすりゃいいんだよ)」

「うほっ(親分!)」

「うきっ(兄貴!)」

戦士「うほっ(あー、分かったよ。ここで生き延びたのもお前らのおかげだ。追い出せばいいんだろ)」ジャキンッ

戦士「うほぁ!」ダーンッ

僧侶「わふっ!?(上!?)」

勇者「うおっと。剣撃!?」ギィン

戦士「うほっ!(勇者!)」

勇者「やっぱり戦士じゃないか!変わらないなぁ!」

戦士「うほっ!(変わってるっての!なんですぐ俺って分かるんだ!)」

勇者「久しぶりだなぁ。戦士」バンバンッ

戦士「うほっ!(勇者、俺ゴリラにされちまって……)」

勇者「ゴリラ?お前どこも変わってないじゃん。呪い受けなかったんだなー」

戦士「うほほっ!?(呪われてるっての!ってなんで言葉わかんだよ!」

勇者「あははははは、戦士は最初からそんな感じだっただろ?」

戦士「……うほっ(凹むぞマジで)」ズーン

勇者「あ、戦士、こっちの犬が僧侶だ」

僧侶「わんわんおっ!」

戦士「うほほっ(おおうっこんなちっちゃくなっちまったのか)」グイッ

戦士「うほほうほっ(んーっ、メスか。尻の穴丸見えだな)」

僧侶「がうっ!///」ガブッ

戦士「うほほっ(しかし魔王のやつめ……えぐいことしやがる。言葉が伝わらないのがこんなにつらいなんてな)」

勇者「何を言っている。魔王様はとても素晴らしい方だろうが」

戦士「うほっ?」

勇者「あ……これはちがくてだな……その……俺は魔王様を尊敬している!」

戦士「うほほ(魔王は俺たちの敵だろ)!?」

勇者「魔王様を倒すなど許さないぞ!」

戦士「うほっ(おい、どうしちまったんだよ!勇者!)」グイッ

勇者「魔王様は……とても素晴らしい……お方です……」ブルブルッ

勇者「ううううっ……」ツーッ

戦士「うほっ(お、おい……唇噛んで……血が出てるぞ)」

勇者「魔王……様は……ぐぬぬ……」ブルブルッ

戦士「うほほっ(お前……もしかしてそれが魔王の呪いか?)」

勇者「戦士!?」

戦士「うほっ(魔王に媚びへつらっちまうのか……ひでえ目にあっただろ?)」

勇者「戦士……お前……ただの足の臭いゴリラじゃなかったんだな……」ポンッ

戦士「うほほっ!(お前が酷いな!)」

勇者「よし!お前の口から王様達に説明してくれ」

戦士「うほっ!?(いや、俺今ゴリラだから!)」

勇者「もともとゴリラだろ。行くぜ」グイッ

僧侶「わんわんおっ!」

戦士「ちょっ」

「うほうほっ(親分、いっちゃうんすかー)」

「うほほ(兄貴ー、行かないでくれー)」

「うほうほっ(女達残して行くなんてかわいそうっすよー)」

「うほっ(群れのボスなんだから最後まで面倒見ろよな)」

戦士「うほっ!(俺はボスじゃねーし、メスゴリラ達と結婚もしてない!)」

勇者「何?お前ゴリラとやったの?」

―――王城前

勇者「行くぜ」

僧侶「わんわんおっ」

戦士「うほうほっ(いやいや、無理だろ。無理無理、無理だって!俺の言葉わかんねーって!)」

勇者「俺は警戒されてるからな。強行突破で王様に直談判だ」

戦士「うほほ(それより盗賊のやつ探そうぜ、なぁ)」

勇者「でも盗賊どこいにいるか見当もつかないしなぁ」

戦士「うほっ(結構その辺にいるかもしれねーぞ?)」

勇者「お前盗賊が何されたか見たか?」

戦士「うほほっ(よく見えなかったな。突然消されたようだったが……)」

勇者「うーん……」

ポンポン

勇者「ん?誰だ」クルッ

勇者「誰もいない?まぁ当たって砕けろだ!戦士!任せたぞ!」ポンッ

戦士「うほほっ!(だから無理だって!)」

兵「あ、勇者殿」

勇者「悪いけど……通らせてもらう」ジャキンッ

兵「探しましたよー。王様が待ってますよ」

勇者「え」

兵「ん?後ろのそれは?」

勇者「あ、えっと、お、俺のペットのゴリラと将来の妻!」

兵「……なかなか良いご趣味ですね、ま、まぁどうぞ」スタスタ

戦士「うほほっ(なんだ?警戒されてねーじゃねーか)」

勇者「おかしいなぁ」

僧侶わんわんお!(妻とか言わないでください!恥ずかしい!)」

王様「おお!勇者殿!戻って来ていただきましたか!」

勇者「王様……これは?」

王様「わしは勇者殿に謝らねばならんな.……」

勇者「え」

王様「魔王のことじゃ」

ビクッ

勇者「魔王様はとても素晴らしいお方です」

勇者「あ……くそっ……また言っちまった……今度こそ殺されるか)グッ

王様「まったく勇者殿の言うとおりじゃ」

勇者「へ?」

王様「なんとの、魔王から丁重な書状での、謝罪と停戦の申し入れがあったのじゃ」

勇者「王様!それは素晴らしい申し入れです!(騙されるな!)」

王様「じゃろう?わしも誤解しておった。この度の戦も魔王の望んでいることではなかったようなのじゃ」

王様「お互いの誤解が誤解を生みこのようなことになったと」

王様「近く、この王城で停戦協定の会談を行うことになった」

王様「勇者殿、いろいろすまなかったな。魔王を倒せと言ったり、勇者殿の言動を疑ったり」

勇者「うううっ……」ブルブルッ

勇者(動け……動くんだ……俺の口……)

勇者(戦士……言ってくれ……)

戦士「うほうほうっほー!(王様ー!戦士だ!話を聞いてくれ!)」

王様「おお!可愛いゴリラじゃのぅ。勇者殿のペットかの?」

勇者「はい……今日はこれで帰ります」ブルブルッ

王様「そうか、会談の折にはまた来るがよい。お主の尊敬する魔王に会えるぞ。あっはっは」

勇者「うぐぐ……」ブルブルッ

戦士「うほっ(おい!どうするよ!会談で王様を殺すとか言ってただろ。魔王は)」

僧侶「くぅ~ん……」

勇者「戦士の言葉が通じないとは……なぜだ」

戦士「うほっ!?(そこ!?)」

勇者「お前本当にゴリラになったの?」

戦士「うほうほっ!(マジ怒るぞこのやろう)」

勇者「あとは盗賊か……」

戦士「うっほうっほ(なぁ勇者、きっと盗賊は雉だぜ雉!)」

勇者「は?なんで?」

戦士「うほっ(犬、猿と来たら雉だろ?)」

勇者「お前は馬鹿でいいなぁ」ハァー

戦士「うほっ!(お前が言うな!)」

勇者「もうこうなったら実力行使しかないかもな……」

戦士「うほほ?(力づくってことか?)」

僧侶「わんわんおっ?」

勇者「ああ、魔王が自身で会談にくるんだ。そこで仕留めれば呪いも解けるかも……」

戦士「うほっ(まぁ俺らが何を言っても聞いてもらえないからな)」

僧侶「きゅぅん」

勇者「そんな落ち込むなよ!大丈夫!」

戦士「うほほ?(だが、勝てるのか?以前負けただろ。それに今回は盗賊もいないで……)」

勇者「前は不意打ちでやられただけだ。今度は真面目にやろう」

僧侶「わんわんおっ!(最初から真面目にやってください!)」

「」

僧侶「わふっ?(え?)」

勇者「どうかしたか?僧侶」

僧侶「わんわんお!(なんか盗賊の突っ込みを聞いた気がして……)」

―――会談の間

王様「ようこそお越しくださいました。魔王殿」

魔王「歓迎など結構。まずは謝罪させていただこう」スッ

魔王「この度の戦……私の不徳のいたすところだ。本当にすまなかった」ペコリッ

王様「そ、そんな、頭を上げてくだされ」

魔王「だが……」

王様「ほらっ、どうぞ席に」

魔王「分かった。ところでここには二人きりですかな?」

王様「ああ、兵も下がらせてある。勇者殿たちが後から来ることになっておるが……」

魔王「そうか」ニヤリッ

王様「魔王殿?」

兵「ちょっ!ちょっと勇者殿!まだですって!まだ入っちゃだめ!もうちょっと待って!」

勇者「待ちきれないの私!魔王様!」ズルズルッ

兵「ちょっとー!」ズルズルッ

戦士「うほほっ(もうやけだな)」ダダッ

僧侶「わんわんおっ!」タタッ

勇者「魔王様ー!」

バタンッ

王様「勇者殿!?」

魔王「ふふっ、来たか」

勇者「魔王様はとても素晴らしいお方です!」ジャキンッ

王様「ちょっ、勇者殿、その剣で何をする気じゃ……」

勇者「魔王様!敬愛しております!」ダダダッ

王様「や、やめっ!」

勇者「うおりゃあああ!」

兵「取り押さえろー!」ガシッ

勇者「な……何を……」

「動くな」グイグイッ

「乗れ乗れー!」ドシドシッ

勇者「うおっ……おもっ……」ググッ

戦士「うほっ(うごけねぇ)」ググッ

僧侶「きゃうんっ(変なとこ触らないでー)」ググッ

勇者「や、やめろ……こいつは……魔王様はとても素晴らしいお方なんだぞー!分かっているのかー!」ジタバタ

王様「申し訳ない……勇者殿がこんなに乱心しているとは……」

魔王「いえ、気にする必要はない。ははは」

魔王(くくくっ、勇者、もっと見せろ。貴様の苦しむ姿を、絶望を……ふはははははは)

魔王(勇者よ……貴様は自分の守ろうとしたものの手にかかって死ぬのだ)

魔王(くくっ、感じるぞ。お前の憎しみ、絶望、それが私の力となる)

魔王「ふははははは」

王様「魔王殿?」

魔王「おっと、会談を続けようではないか」

トスッ

兵「はぅっ」バタッ

「」バタッ

「」バタッ

王様「兵達が突然……倒れた?」

勇者「?」

戦士「うほっ?」

僧侶「わんわんおっ?」

魔王「貴様……来ていたのか。まだ正気を保っていたとはな……盗賊!」

盗賊「」

王様「あ、あの……魔王殿?どういうことで……」

魔王「王よ、お前は眠っているがいい」ドスッ

王様「」バタッ

魔王「後でたっぷり絶望を与えて殺してやる」

勇者「盗賊?盗賊がいるのか?素晴らしき魔王様!」

戦士「うほほっ(どこだよ!?みえねえぞ)」

僧侶「わんわんお?」

魔王「くくっ、盗賊、顔色が悪いぞ?どうだ?全ての人間に無視され続ける生活は?」

盗賊「」

魔王「くくくっ、敵の私でもうれしかろう。会話が出来るのが」

勇者「いるのか!?盗賊!?」

魔王「ふははははは、盗賊はな、姿も声も消してやったのだ!気配さえな!」

盗賊「」ブンッ

シュパッ

魔王「おっと危ない」

勇者「何もないところからナイフが出てきた……」

魔王「かつての仲間に無視され続ける気持ちはどうであった?盗賊よ」

盗賊「」

魔王「ふははははは、もっと見せろ。絶望を」

魔王「つらかったであろう。苦しかったであろう。気が狂いそうではなかったか?」

魔王「安心しろ、全て終らせて楽にしてやる」

勇者「盗賊!そこにいるのか!姿を消された!?」

戦士「うほほ?(どこだ?どこにいる?)」キョロキョロ

僧侶「わんわんお?」キョロキョロ

盗賊「」

魔王「なんだと?」

盗賊「」

魔王「何を笑っている!貴様に何があるというのだ!」

盗賊「」

魔王「信じているだと!?何を信じるという。見ろこの場にいるやつらを」

魔王「私を称える勇者、でかいだけのゴリラ戦士、役に立たない犬僧侶」

魔王「貴様らで何が出来るというのだ」

盗賊「」スッ

トサッ

勇者「ん?こ、これ……光の剣じゃね!?魔界に封印されてたんじゃないのか!?」

トサッ

僧侶「わんわんお!?(これは賢者の杖!?これがあれば今の体でも法力だけで……)」

トサッ

戦士「うほっ?(これは……バナナ?)」

魔王「まさか……貴様その体を利用して盗みを……しかも伝説の武具だと!?」

戦士「うほほっ!?(いや、ちょっと俺だけおかしい!)」

魔王「だが、私にはまだこの闇の衣が……」

盗賊「」スッ

魔王「そ、それは……」

魔王「やめろ!近づくな!」

盗賊「」ガシッ

魔王「離せ!うおおおおおおお!闇の衣が消えて……」

勇者「盗賊……お前ずっと一人で俺達のために……」

僧侶「わんっ……(盗賊さん……)」

戦士「うほっ(俺のこと絶対忘れてただろ。盗賊)」

魔王「うぐぐぐっ、離せ離せ!」ジタバタ

盗賊「今っすよ!みんな!」

勇者「!」

戦士「うほっ(おい!)」

僧侶「わんっ(ええ)」

魔王「なん……だと……見えていない、聞こえていないはず……だ」

盗賊「へへっ、これが絆の力ってやつっすよ。勇者さん!戦士さん!」

勇者「行くぜ!」

僧侶「わんわんおっ!(強化魔法!)」パァァ

勇者「戦士も!」

戦士「うほっ(しゃーねーな。これでやるか)」グッ

魔王「や、やめ……」

勇者「エックス斬り!(光の剣)」ズバッ

戦士「うほっ(エックス斬り!)(バナナ)」ズバッ

勇者「ふっ、魔王様はとても素晴らしいお方です」スタッ

戦士「うほっ(しまらねぇな、その言葉)」

僧侶「わんわんおっ」

魔王「ぐおおおおおおお」メキメキ

魔王「許さん……許さんぞ、貴様だけは……」

魔王「盗賊!」

盗賊「」

魔王「私の最後の力だ……貴様の存在だけは完全に消し去ってくれる」

魔王「ぐおおおおおおおおおおおおおおお!」カッ

「」

戦士「倒した!ん?喋れる!俺喋れるぞ!」

僧侶「じゃあ私も……きゃああああああ!裸見ないでええええ」

勇者「ほらっ、これ着ろ」スッ

僧侶「勇者様……」

勇者「お前の裸も見飽きたからな」

僧侶「あ、あとで噛みますからね!」ハキハキ

勇者「それも慣れたよ」チラッ

僧侶「ちょっっと、まだパンツはいてるんですから見ないでください///」

勇者「oh……」

戦士「おい、盗賊はどこだ?呪い解けたんだろ?」

勇者「え」

僧侶「盗賊さーん!」キョロキョロ

戦士「おい!さっきまでここにいただろ!?見えなかったけど声は聞こえたし!いたよな!」

勇者「まさか魔王の最後の言葉……」

戦士「嘘だろ、おい!盗賊だけそのままかよ」

勇者「どこだ?おい!盗賊!俺の手にさわれ!」

「」

パチーン

勇者「な……ハイタッチ?」

タタッ

勇者「お、おい!盗賊!行くな!待てって!」

勇者「盗賊ーーーー!」

―――エピローグ

―――戦士の村

「戦士、よく帰ってきたね」

戦士「ああ、魔王倒したし帰ってくるさ」

「そうそう、お前のお友達が来てるよ。たぶん」

戦士「たぶん?」

「それにしてもお前もすみにおけないなぁ、このこのっ」ツンツンッ

戦士「な、なんだよ」

「うほうほっ(あ、兄貴ちーっす)」

「うほっ(親ぶーん、おひさー)」

戦士「お、お前ら……俺んちでなにやってんだ!それになんで俺こいつらの言葉わかんの!?」

「うほほ(兄貴が行っちゃって女ども泣き出しちゃって大変だったんだぜ?」

「うほうほっ(だからほらっ、連れてきたよー」

「うほっ(あなた……///)」ポッ

戦士「だから俺はゴリラじゃねーし!」

盗賊「あー、つまんねーっすねー。誰にも気づかれないって」

盗賊「まぁ、あのまま勇者さんたちと一緒にいても迷惑になるだけっすからねー」

盗賊「あー、もうつまんねーっす」

盗賊「物盗むのも風呂覗くのも飽きたし」

盗賊「食い物盗むのも風呂覗くのも飽きたし」

盗賊「金盗むのも風呂覗くのもあきたっすー」

盗賊「盗んでも使い道ないっすからねー、はぁ……」

「おらっ、金出せや」

「勘弁して下さい、それは娘の治療費で……」

盗賊「魔王倒したのに世間は相変わらずっすしねー」

盗賊「えいやっ」トスッ

「うぐっ」バタッ

「えっ、助かった?え?え?あ……ありがとうございます。ありがとうございます」ペコペコ

盗賊「俺のこと見えてないっすのに変な人ッすねー」

盗賊「はぁーつまんねーっす」

子供「わーい」タタタッ

母「こらっ、そんなに走ったら危ないわよ」

子供「うわっ」コケッ

盗賊「おっと、あぶないっすね」スッ

子供「???」キョロキョロ

母「どうしたの?」

子供「私転んだはずなのに誰かが助けてくれたの」

母「そうなの、それは盗賊様のおかげね」

子供「盗賊様?」

盗賊「?」

母「そうよ、見えないけど助けてくれる神様がいるの。盗賊様ありがとうございますって言おうね」

子供「うん!盗賊様ありがとー!」ペコッ

盗賊「なんすかこれ……」

盗賊「勇者さんたちっすか。つまんねーことするっすねー」

盗賊「つまんねーっすけど……悪くないっす」ニコッ

僧侶「勇者様……これ……恥ずかしいです///」カー

勇者「いいじゃん、似合ってるよ。首輪」

僧侶「でも……裸でお散歩なんで……///」ドキドキ

勇者「大丈夫、暗いから見えないって。人も少ないし」

僧侶「でも……///」

勇者「犬の時慣れたもんだろ。裸で這って歩くのも」

僧侶「うーっ……」

勇者「それに恥ずかしいからいいんじゃないか。ほらっ、僧侶だってここグッショリじゃん」クチュッ

僧侶「あんっ///」

勇者「ほらほらっ」クチュクチュッ

僧侶「あっ……も、もう……///」

勇者「ほらっ、行くよ」グイッ

僧侶「わんっ……///」

勇者「って言う夢を見たんだけど、実現できないかな?」

僧侶「できるわけないでしょう!!///」バシバシッ

勇者「だめ?」

僧侶「駄目です!それに盗賊さんの呪いを解く方法を探しにいくんでしょう!」

勇者「そうだけど、やっぱ僧侶ともっと仲良くなりたいし」

僧侶「方向性が違います!私は普通が良いんです!」

勇者「えー」ブーッ

僧侶「拗ねても可愛くないですよ」

勇者「あ、そういえば聞きたかったんだけど」

僧侶「エッチな質問はなしですよ」

勇者「うん、それはまた今度にしておく」

僧侶「今度するんですか……」

勇者「俺があげて捨てられちゃったロザリオなんで持ってたの?」

僧侶「そ、それは……///」

勇者「もしかして大事にしててくれた?」

僧侶「べ、別にそういうんじゃありません!///」

勇者「俺はうれしかったよ」

僧侶「え」

勇者「捨てられた時死のうと思ったもん」

僧侶「そんな大げさな……」

勇者「なぁ、僧侶」

僧侶「な、なんですか///」モジモジ

勇者「もう死亡フラグでも何でも良いからさ……」

勇者「盗賊を元に戻したら……結婚しようぜ」

僧侶「///」カー

勇者「駄目……か?」

勇者「死のう……」トボトボ……

僧侶「ま、待って下さい!」

僧侶「ゆ、勇者様私が犬の時、結構言ってる事分かってくれましたよね?」

勇者「?」

僧侶「く、首輪貸してください///」

勇者「え?これ?」スッ

カシャン

勇者「お、おお……///可愛い……」

僧侶「い、一度しか言いませんからね!///分かってくださいよ」カー

勇者「あ、ああ……」

僧侶「わんわんおっ///」チュッ



おしまい

最後まで読んでくれた方いましたらありがとうございました

それでは

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