夜空「きょ、今日は小鷹の家に泊まろうかな……」(131)

放課後

夜空「さて、私はもう帰るから小鷹、戸締りはちゃんとしておくように」

小鷹「おう、お疲れさん」

夜空「……(一緒に帰ろうとか、そういうのはないのかこの男は)」

小鷹「……」

小鷹「はーぁ、今日は家帰っても誰もいねえし……久々にコンビニ弁当で手抜きするかぁ」

夜空「……」ぴく

小鷹「ん? どうしたんだ夜空、扉の前で立ち止まって」

夜空「……別になんでもない」

夜空「ただ小鷹が今日の夕食を手抜きにするとか聞こえてきたからな」

夜空「い、妹はどうしたんだ‥…って思って。流石にコンビニ弁当は可哀想だろ」

小鷹「いや小鳩は今日家にいねーんだよ」

夜空「あ、そ、そうなのか……?(聞き間違いじゃなかったか)」

小鷹「中等部のほうで合宿があるらしくて、それに行ってるよ」

夜空「ふむ、つまり今日は小鷹は一人寂しく家でお留守番というわけか」

小鷹「……言葉は少しアレだが、まあそんなとこだな」

夜空「どうせ家に呼ぶ友達もいないのだろう、どこかへ出かける予定とかは?」

小鷹「……ない(ていうか友達いないとか夜空に言われたくねーよ!)」

夜空「そうか、寂しいヤツなんだな小鷹は」

夜空「仕方がない、少しでも小鷹が寂しくないようにせめて家に帰るまでは私が一緒にいてやろう」

小鷹「……は?」

夜空「『は?』じゃない、聞こえなかったのか? 一緒に帰ってやると言ったんだ」

夜空「私も本当はそんな面倒くさいことはしたくないのだが……聞いてしまったからな」

夜空「度量のあるこの私の、心ばかりの気遣いと思ってくれ、ほらさっさと鞄を持て」

小鷹「いや、そんなに悲観してねーから……別に寂しくもないし」ごそごそ

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小鷹「……」

夜空「……」

小鷹「……そんなに後ろのほうを歩かなくてもよくないか?(微妙に距離も離れてるし)」

夜空「い、一緒に歩いてるのを見られたら何かへんな誤解されてしまうかもしれないだろう」

小鷹「……(自分で一緒に帰るとか言っておいて)」

夜空「いいから! さ、さっさと歩け、こっちを振り向くなよ!」

小鷹「……はいはい」

小鷹「そういえば誰かとこうやって一緒に帰るのは初めてかもな」

小鷹「隣人部のみんなは家の方向がバラバラだし、そういや夜空ん家ってどの辺りなんだ?」くる

夜空「あ……」

小鷹「……」

小鷹「……な、何ニヤついてるんだよ、なんか怖いぞ」

夜空「あ、あ……/// 」かぁあああ

夜空「だ、だからこっちを向くなと言ったろバカ!」

夜空「勘違いするな昨夜見た動画が面白かったから思い出し笑いしてただけだ!」

小鷹「……わ、わかったから、悪かった(そんな顔真っ赤にして怒るほどのことか?)」

夜空「……ふん」

小鷹(うーん、いつものことだが急に不機嫌になるんだよなぁ……)

小鷹「あ、そうだ。悪いがちょっと途中でコンビニに寄ってもいいか? 弁当買っときたいんだよ」

夜空「……」

小鷹「すぐ済むから……」

夜空「違うそうじゃない、別に寄り道とかはいいのだが……」

夜空「コンビニ弁当はさすがに味気無さすぎないか?」

小鷹「まあ確かにそうだけどさ、ほらウチは基本小鳩の為の栄養バランス考えた料理つくってるわけだし」

小鷹「たまにはああいう弁当もいいんじゃねーかなって思ってさ」

夜空「単に作るのが面倒くさいだけじゃないのか?」

小鷹「……正直言うとそれもある。一人分、しかも自分のだしなぁ……作り甲斐がない」

夜空「……」

夜空「じゃ、じゃあ二人分作ればいいじゃないかバカだな小鷹は」

小鷹「いや俺そんなに食わねーし」

夜空「……」

夜空「そういえば前の合宿で小鷹が作った料理……あの凝ったヤツ、あれは美味しかったぞ」

小鷹「そ、そうか? へへ、まあかなり気合入れて作ったからなあん時は」

夜空「うむ、すごく美味しかったぞ。あれならまた食べたいくらいだ」

小鷹「……そこまで褒められるとなんか照れくさいな。ああ、また機会があれば腕を振るうよ」

夜空「……」

小鷹「えーと、じゃあ、あの角の所で買うわ。すぐ済ませるからちょっと待っててくれ、悪りぃ」

夜空「……私も行く」むすっ

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小鷹「……何だかんだ言って夜空もコンビニ弁当買ってるじゃねーかよ」

夜空「うるさい」

小鷹「今日は家のご飯食べないのか?」

夜空「……私はいつも一人でファミレスに行って食事をしてる」

小鷹「そ、そっか……(家庭の事情かな、あんま深く聞かないほうがいーな)」

小鷹「って、それなら今日ファミレスにすれば良かったなー」

夜空「え」

小鷹「そうすりゃ夜空もコンビニ弁当買うことなかったのに、一緒に飯食えばよかったんだよ」

夜空「な……そ、それならそうと早く言え! 小鷹が買うから私も買ってしまったじゃないか!」

小鷹「弁当買ったのまで俺の所為にするなよ……」

夜空「……」

夜空「これは返品とかできないのか?」

小鷹「……出来るかどうかはわからんが、恥ずかしくてそれだけはしたくない」

夜空「む……」じぃー

小鷹「買っちゃったものは仕方が無いし、大人しく家で食おうぜ」

夜空「……」

夜空「だが、さっきの小鷹の心の叫びは理解できたぞ」

小鷹「……え?」

夜空「さっき言ったじゃないか、「一緒に飯食えばよかったー」って」

小鷹「確かに言ったが、それがどうかしたか?」

夜空「照れるな。やはり口ではどうの言っても、家で一人コンビニ弁当は寂しいんだろ? 私にはわかる」

小鷹「そういう意味で言ったんじゃないんだが……」

夜空「恥ずかしがるな。よし! 今日は私が一緒に食事に付き合ってやろう」

小鷹「食事に付き合うって……コンビニ弁当だぞ?」

夜空「だが食べものであることには変わりはない」

小鷹「いやそうだけど、第一どこで食べるんだ? 弁当の持込のできる場所なんてないぞ?」

夜空「……」

小鷹「……外で食うか? 公園とか……」

夜空「……外は落ち着かないからイヤだ」

小鷹「じゃあどうしろってんだよ……」

夜空「……」むすっ

小鷹(……ホント一体なんなんだ?)あー……俺のことはいいからさ、何度も言ってるが別に寂しがってないから」

小鷹「今日は家で食べる。気ぃ使ってくれてありがとな、夜空」

夜空「……」

夜空「私も一緒に食べる」ぼそっ

小鷹「ん? 何か言ったか?」

夜空「……」

夜空「(あ、そうだ! いいこと思いついたぞ)」

夜空「小鷹、私の家に来ないか?」

小鷹「え、よ、夜空の家? 今からか?」

夜空「そうだ今からだ。で、一緒にご飯を食べてやる」

夜空「私はそのまま家に帰れるし、小鷹は一人で食事という哀れな状況を回避できる……」

夜空「なかなかに魅力的だとは思わないか?」

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