小鷹「変態は友達が少ない」 (472)

『図書室』


小鷹「…………」


モブ子A「やだ、何で変態が図書室にいるの」ヒソヒソ

モブ子B「おまけにヤンキーでしょ、あいつ。もう何人も被害者がいるって噂よ」ヒソヒソ


小鷹「」ハァ……

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『廊下』


小鷹「」トボトボ

小鷹(……俺が何をしたっていうんだ)

小鷹(……まだ何もしてないっていうのに)


小鷹「あっ……体操着忘れた……」

小鷹「戻るか……」クルッ、トボトボ


モブ子C「でさー、帰りにちょっとどこかに寄ってこうよ」テクテク

モブ子D「うん、行く行くー。あっ……」ピタッ


小鷹「…………」


モブ子C「ご、ごめんなさい!」タタタッ

モブ子D「気持ち悪いとか、一言も言ってないんで!」タタタッ


小鷹「」ハァ……

小鷹(ずっと転入の時の事が尾を引いてる……)

小鷹(誰からも話しかけられやしない……)

小鷹(友達が……欲しい)ソッ


そんな事を思いながら、小鷹が教室の戸に手をかけた時……


夜空「そんな……。恥ずかしいよ、友ちゃん、この格好は///」モジモジ


教室内でスカートを恥ずかしそうにたくしあげている三日月夜空の姿が目に入った。

小鷹(あいつ……確か同じクラスの三日月夜空)

小鷹(だけど、教室で何してるんだ……?)



夜空「ほら、これでもういいだろう? だから……///」モジモジ

夜空「えっ、そんな! 下着まで脱げと言うのか!?///」

夜空「流石の私もこれ以上は……。いや、そう言われても……///」モジモジ



小鷹(まさか……誰かに脅されてるのか?)

小鷹(恥ずかしい写真か何かで、クラスメイトから脅しを?)

小鷹(そういえば、さっき丁度そんな本を読んでいたっけ……。誰もいなくなった放課後の教室で、脅されて仕方なく脱ぐっていう……)

小鷹(その本の導入部とそっくりだ、これ……)

小鷹(それを見かけて助けたドSの主人公は、やがてその子と恋に落ちて、更なる快楽の日々が待っているっていう……)



夜空「わ、わかった! だから、お願いだからその事は誰にも!」

夜空「脱ぐ! 脱ぐから、だから!///」

夜空「うっ……うう……///」ソッ



夜空がそっと下着に手をかけ、今にも泣き出しそうな瞳をしながら、するりと足下まで下着を下ろした時

ガラッ


小鷹「…………」

夜空「あっ……///」


扉を開けると、教室には夜空以外、誰もいなかった……

小鷹「」トコトコ

夜空「ぅ……」フイッ


小鷹「……お前さ。幽霊でも見えるのか?」

夜空「馬鹿な! 幽霊などこの世に存在しない!」

小鷹「でも、さっき……。それに、その……。パンツまで下ろして」


夜空「み、見てたのか!///」カアッ


小鷹「しかも、太ももまでぐっしょり垂れてるじゃないか。お前の愛え」

夜空「い、言うなあっ!///」ササッ



顔を真っ赤にして、慌てて下着を戻す夜空……

夜空「……確か、同じクラスの小鷹だったよな///」

小鷹「いきなり呼び捨てかよ……」

夜空「言っておくがな、小鷹。何も私は一人で羞恥プレイをしていた訳じゃないぞ//」

小鷹「そこは認めるのか」

夜空「私はな、エア御主人様の友ちゃんと羞恥プレイをしていたのだ!」ビシッ


小鷹「エア……御主人様?」

小鷹「何だ、そのエア御主人様ってのは?」

夜空「エアギターというのがあるだろう。その御主人様版だ」

小鷹「つまり、一人なんだな」

夜空「違う! エア御主人様は実際にそこにいる!」ビシッ

小鷹「…………」

夜空「今も、エア御主人様の友ちゃんと、仲が良かった二人が暴走してしまい、連れ込まれた体育倉庫で恥ずかしい写真をばらまかれたくなければ言う事をきけ、という設定の元で羞恥プレイをしていたところだ」

小鷹「……お前さ、ドMなのか?」

夜空「違う! 私はただ、絶対的な御主人様の下で思うままに凌辱され強引に屈伏されたいだけだ」

小鷹「そういうのを、ドMって言うんじゃねーのか?」

夜空「失礼な事を言うな、小鷹。私と御主人様の関係をSだとかMだとかの記号によって一括りにするな。そこには虐げる虐げられる中にも愛があるのだからな」

小鷹「ああ、そうかい……」ハァ

夜空「大体だな、小鷹」

小鷹「あ?」

夜空「お前は……その……///」

小鷹「?」

夜空「わ、私のあれだけ恥ずかしいところを見て、何も感じないのか……?///」モジモジ

小鷹「……は?」

夜空「お、お前だって男だろ。わ、私が下着を脱いで……。その……露出……をしていたのだ///」モジモジ

夜空「何かこう……感じるところとかないのか……?///」モジモジ


小鷹「…………」

小鷹「感じるところ、な」

夜空「そ、そうだ! 何かないのか!//」

小鷹「ない」

夜空「……!」

小鷹「だって、俺、ホモでショタだし」

夜空「そ、そうか……」ズーン


小鷹「女の裸なんか見ても何一つ感じるところなんかない。むしろ、気持ち悪い。見せるな」

夜空「ふ……ふふふふふ……」ズーン


小鷹「何て言うのかな……。脅して無理矢理調教するっていうそのシチュエーション自体には大いに共感出来るところがあるんだが……」

夜空「そ、そうだよな!」パアッ

小鷹「だけど、それは相手が可愛らしい男の娘ならの話だからな。女なんか論外だろ」

夜空「あああああ……」ズーン

小鷹「大体、お前。こんなところでエア御主人様なんか作ってないで」

夜空「作るとか言うなあ! 友ちゃんは、私の友人でしかも立派な御主人様までこなす、最高の子なのだぞ!!」

小鷹「お、おう……」ビクッ


小鷹「いや、だけどな」

夜空「まだ何か言うのか、ヤンキー崩れホモ野郎」ギロッ

小鷹「」

小鷹「……とは言ってもな」

小鷹「」ハァ

小鷹「……お前だって、本当は思ってるんじゃないのか?」

夜空「……何をだ」

小鷹「本当の御主人様が欲しいって……。実際に存在している友達が欲しいって……」

夜空「…………」シュン

夜空「別にそんな事はない……」

夜空「何も、私はそこまで御主人様や友達が欲しい訳じゃないのだ」

夜空「ただ、出来る事なら、気兼ねなく自分の趣味を話せる相手が欲しい」

夜空「私が自分の趣味の事について全開にして話してもドン引きしないような、そんな相手が欲しい。……それだけだ」


小鷹(確かに……)

小鷹(世間の風は変態について厳しい……)

小鷹(人とは少しだけ違う趣味嗜好を持っているだけで、急に周りは冷たく突き放す……)

小鷹(まるで、変態でいる事が罪悪であるかの様に、自分達の世界から変態を排除しようとする……)

小鷹(露出狂で、ホモショタである事の何が悪いのかも理由付けないままに……)

小鷹(そんな俺達に居場所はないし、友達すら出来ない……)

夜空「これまでも、それなりにいるにはいたのだ。私にも友達らしき人間が」

夜空「だが、私が少し三角木馬や亀甲縛りの事について語っただけで、全員がひきつった顔と共に離れていって……」

夜空「そして、二度と帰って来なかった……」


小鷹(その切ない気持ちはすごくわかる……)


夜空「そんな人間は友達だとは呼べないだろう」

小鷹「確かにな……」

夜空「だからと言って、それらの事について語り合えないなら、それもまた友達とも言えないだろう。違うか、小鷹?」

小鷹「いや、合ってると思うぞ……」

夜空「だが、世間は友達がいないというだけで、私に憐れみや蔑みの目を向ける。私はそれも嫌なのだ」

小鷹「……わかる」

夜空「だから、うわべだけの友達でも作ろうとは私も思うのだが……」

小鷹「これまで、そんな友達すらいなかったのだから、その作り方がわからない……」

夜空「どうやって作ったらいいのかも。何があったら友達になっているのかも……」

小鷹「そうだよな……」


夜空・小鷹「友達が欲しい……」ハァ

小鷹「どうだろう、部活に入るっていうのは」

夜空「部活? それは駄目だな。この中途半端な時期に部活に入ったところで、周りは既にコミュニュケーションを築いているのだから……」

夜空「いや、待てよ。部活か。そうか、部活か!」

小鷹「?」

夜空「良い事を思い付いた。少しやる事が出来たから、私はこれでな」ササッ、スタスタ

小鷹「え? あ、ああ……」


夜空「」スタスタ、クルッ

夜空「それじゃあな、小鷹」ニコッ


小鷹「……ああ。じゃあな」


小鷹(……急にどうしたんだ、あいつ?)

『翌日 学校終わり』


夜空「」スクッ、スタスタ

夜空「小鷹。私の後について来い」


小鷹「……?」



ザワッ、ザワザワ


モブ子E「ヤンキーショタホモの変態に夜空さんが声をかけた……?」ヒソヒソ

モブ子F「どうしたんだろ、一体……」ヒソヒソ

『中庭』


小鷹「おい、急にどうしたんだよ、一体? 俺に何の用だ?」

夜空「昨日、話しただろう。部活だ。新しい部活を作ったのだ」

小鷹「部活?」

夜空「そう。既存の部に入部したら、そこは既にもう皆が周りとのコミュニュケーションを築いているのだから、そこで私達が新たなコミュニュケーションを築くのは難しい」

夜空「だから、新しく部活を作ったのだ。そうすれば、一からコミュニュケーションを築ける」

小鷹「ああ、なるほど……」

小鷹「それで、どんな部活を作ったんだ?」

夜空「変人部だ」

小鷹「は?」

夜空「間違えた。隣人部だ。名前が似ているのでついな」

小鷹(あからさまな間違え方に聞こえたんだが……)


小鷹「それで、その隣人部ってのは何をする部活なんだ?」

夜空「決まっているだろう。隣人による円滑なコミュニュケーションの場だ。ロウソクを垂らしたり、ムチで叩いたりして、お互いのコミュニュケーションを築くという」

小鷹「そりゃ一般的にSMクラブって言うんだよ!」

夜空「昨日も言っただろう! 私達の愛の形を、SMとかいう記号ごときで括るなと!」

小鷹「その前にクラブ違いな事を自覚しろよ! それは部活じゃねえ!」

小鷹「大体、そんな部活、学校側が承認する訳ないだろ」

夜空「そんな事は言われずとも承知している。だから、表向きは聖書にもある通り、『汝の隣人を凌辱せよ』という」

小鷹「……いつから聖書はそんなバイオレンスな書物になった」

夜空「ならば訂正する。『汝の隣人を愛しながら強姦せよ』という」

小鷹「愛がつけば何でも許されると思うな」

夜空「」フンッ

夜空「まあ、実際のところは聖書の適当な箇所を引用して、適当に文を繕っておいた」

夜空「良い隣人を探し出す為の部活。つまり、友達を作る為の部活だとな」

夜空「この学校は宗教関係に対しては甘いからな。本当、宗教ってのはチョロいよな」

小鷹「お前な……」

夜空「それに、キリストは言っただろう? 右の頬を打たれたら左の頬を差し出しなさいと。これはつまり、キリストも」

小鷹「いや、キリストはドMって訳じゃねーからな。……つーか、その内、天罰が当たるぞ、お前」

夜空「」フフン

『教会 談話室』


夜空「そういう事で、この談話室を貸してもらえる事になった。ここが部室だ」

小鷹「ここを使っていいのか。すげーな、お前……」

夜空「ああ、それと。昨日、小鷹が帰ってしまったから入部届けは私の方で出しておいてやったぞ」

小鷹「な、お前! 勝手に!」

夜空「別に構わないだろ。小鷹だって、友達が欲しいんだから」

小鷹「いや、そりゃそうだけど……」

夜空「なら決まりだな」ニコッ


小鷹「…………」

小鷹「」ハァ

夜空「それなら、隣人部の最初の活動を始めるぞ」

小鷹「……何をするんだ?」

夜空「まずはこのビラを校内の掲示板に貼っていく」スッ

小鷹「何だよ、これ……? これだけだと具体的に何をする部なのかが全くわからないんだけど……」

夜空「よく読め、小鷹。そのビラの文章を斜め読みしてみろ」

小鷹「斜め読み……?」


『 御 主 人 様 を 募 集 』


小鷹「あのなあ……」ハァ


夜空「更にだ。そのビラを逆から斜め読みしてみろ」


『 と も だ ち 募 集 』


小鷹「……よく考えたな、こんな文章。ある意味、尊敬する」

夜空「まあな」フフン

小鷹「でも、どうせならショタホモの募集もしてくれると」

夜空「さあ、行くぞ、小鷹!」グイッ

小鷹「え、おい、ちょっと待てって! 男の娘も!」ズルズル

夜空「黙れ!」スタスタ

小鷹「おい、引っ張るなよ! 服が伸び」


バタンッ!!

『中庭』


小鷹「なあ、おい。ショタホモも」

夜空「くどい!」

小鷹「お前さあ……」

夜空「それとだ、小鷹」クルッ

小鷹「ん?」

夜空「そのお前という呼び方をやめろ。イラっとする」

小鷹「じゃあ、何て呼べばいいんだ?」

夜空「そうだな……。それなら例えば……」

小鷹「例えば?」

夜空「め、雌豚……とかだな。そういうのが……///」ドキドキ

小鷹「変態が……」

夜空「バ、バカッ! そんな言い方されたら……私は!///」キュンッ

小鷹(めんどくせえ……。超うぜえ……)

小鷹「……なら、これからは三日月って呼ぶから」

夜空「ば、馬鹿者! 私の承諾なしで勝手に決めるな!」

小鷹「いや、でも、雌豚はないわ。絶対に呼びたくないし」

夜空「そ、それなら、淫乱痴女でもあさましい変態女でも、罵倒する言葉なら何でもいいぞ!///」ドキドキ

小鷹(ダメだ、こいつ……。根っからのドMだ……)


小鷹「三日月で」

夜空「それは、駄目だ! 興奮しない!」

小鷹「何でホモの俺が、女のお前を興奮させなきゃなんねーんだよ……」ギロッ

夜空「おい、小鷹……。マジ切れはやめろ……。ちょっと怖いぞ……」

夜空「それなら……」シュン

夜空「私の事は……夜空と呼べ。それで我慢する」


小鷹「夜空な。わかった。お前がそれでいいなら、そう呼ぶよ」

夜空「仕方がないからな……」シュン


小鷹「…………」

小鷹「……何か、別のアダ名とかでもいいぞ」

夜空「いや、それはいい」


夜空「私にも、昔はアダ名があったんだがな……」

夜空「だけど、小鷹にはそれを教えたくはない」

夜空「アダ名は、友達がつけるものだからな」


小鷹「……そうか」

『談話室』


夜空「さてと」

夜空「ビラも貼り終わった事だしな。それじゃあ、今日の部活は」


コンコン


小鷹「?」

夜空「早速、新入部員でも来たか?」スタスタ

小鷹「まさか、そんな。あんなポスター貼っただけでいきなり来るなんて……」

夜空「とにかく、開けるぞ」ガチャッ


星奈「隣人部ってここ? ポスター見て来たんだけど」

夜空「」バタンッ!!


小鷹「ちょっ、おい!」

小鷹「夜空、今のマジで新入部員だったんじゃ」

夜空「違う」

小鷹「いや、違うって……何でそんな断言を」


コンコン、コンコン、コンコン!!


小鷹「ほら見ろ、さっきからずっとノックしてるじゃねーか。だから」

夜空「」ガチャッ


星奈「ちょっと! 何で急に閉めるのよ! この私が部活に入ってやろうって言うのよ。あんた達はむしろ有り難がるべきで」

夜空「リア充は、死ねっ!!」バタンッ!!


小鷹「」

小鷹「すげーな、お前……。ていうか、夜空、あいつの事を知ってるのか?」

夜空「直接は知らん。話した事もない。だが、誰かは知っている」

小鷹「誰なんだ?」

夜空「あれは柏崎星奈とかいう、この学校で一番有名なリア充だ」

小鷹「リア充?」

夜空「そうだ。成績は常に学年トップ。運動神経も抜群で、しかもこの学校の理事長の娘だ。見てくれも良く、金髪に巨乳とかいうお嬢様だ。いつも周りに男をはべらしているという、とんだビッチめが! 死ねばいいのに!」

小鷹「……はあ。とにかくスゲーやつなんだな」

小鷹「でも、何でそんなやつがこの部に入ろうなんて」


ダンダン、ダンダン、ダンダン!!


小鷹「ん? 窓?」クルッ


星奈「」ダンダン、ダンダン!!


小鷹(……何してるんだか、一体)ガラッ


星奈「ちょっと! 何で私を閉め出すのよ! 私も部活に入りたいって言ってるのに!」グシュッ

夜空「生憎、冷やかしならお断りだ。帰れ」

星奈「冷やかしなんかじゃないわよ! ビラを見て来たんだから! 御主人様と友達募集って書いてあったじゃないの!!」グシュッ

星奈「私も、『御主人様と友達』が欲しいのよおっ!!」グスッ


夜空「は……?」

小鷹「え……?」

『数分後』


夜空「つまりだ」

夜空「貴様の言う事を要約すると、自分は完璧過ぎて、それで同姓から嫌われているとそういう事か? 死ねばいいのに」

星奈「何で死ねばいいとかさらりと付け加えるのよ! 酷いじゃない!」


小鷹「まあ……友達がいないって理由はわかった。けど、御主人様が欲しいってのは?」

星奈「そ、それは……その……///」モジモジ

小鷹「?」

夜空「」カチンッ

夜空「おい、そこの乳牛淫乱猥褻ビッチ」ユラリ

星奈「なっ! 何を言い出すのよ、いきなり! って、ひいっ!!」ビクッ

夜空「まさか、貴様……」ゴゴゴゴゴ

星奈「な、な、何よ……!」ビクビク

夜空「貴様も、ドMなのか……? 罵られ、蔑まれ、唾を吐かれ、ビンタされ、口汚い言葉を吐かれながら容赦なく凌辱される事に快感を覚えるとでも言うのか……?」ゴゴゴゴゴ

夜空「しかも、それを私の……! 私の真の御主人様である小」

星奈「……は?」


夜空「え……?」


小鷹「おい、夜空?」

夜空「……え? だ、だってこの肉が御主人様が欲しいって……!///」


星奈「さっきから何勘違いしてるの、あんた……?」

夜空「え? え? ええ?///」カアッ

星奈「私が欲しいっていう御主人様は……。その……///」

星奈「言ってみれば、メイドと主人の関係よ///」


星奈「そう。片方は優しく思いやりのある主人。仕えるもう片方は気が利いて何でも完璧にこなす使用人。その二人は信頼と愛で結ばれ、何者もそれを汚す事など出来ないような、清く美しい関係なのよ……!」パアッ

星奈「メイドは主人を愛し、尽くす……! 主人もメイドを信頼し、これ以上ないほど大事にする……! そんな素敵で甘美な愛し合う二人の関係……!」キラキラ

星奈「やがて二人は主人とメイドというその一線を越えてしまい、夜な夜な愛を確かめ合う様な、そんな関係になっていくの! それってもう凄く興奮するっていうか、体が火照って熱くなって濡れるっていうか!///」ハァハァ、ハァハァ


小鷹(つまり、こいつも変態か……。夜空とは違う意味で。夜空よりはまだマシな部類だけど……)

夜空(うわ……。なに、この気持ち悪い変態は……。甘い関係とか優しい主人とか、吐き気がする……。おえ……)

夜空「おい、そこの無駄乳」

星奈「え? ていうか、無駄乳って何よ! 自分が貧乳だからって妬いて」

夜空「黙れ、無駄乳」ゴゴゴゴゴ

星奈「ひっ!」ビクッ


夜空「大体だな。そんな関係を貴様が求めているというなら、別にこの部に入らなくたっていいだろう。貴様には取り巻きが腐るほどいるのだから、その中から選り取りみどり好きな御主人様を選べばいいんじゃないのか?」

夜空「なあ、小鷹? お前もそう思うよな?」

小鷹「ん……まあ、確かにな」

星奈「ええっ!? 何でよ!」

小鷹「だって、お前。モテるんだろ? そこら辺は夜空の言う通りだし、それに」

小鷹「お前のそのメイドっていうか、使用人になって主人から愛されたいって願望? よく考えたら、そこまで変って訳でもないからな」

小鷹「別に周りからそこまでドン引きされるって訳でもないだろうし」

夜空「そう。小鷹の言う通りだ」ウンウン

星奈「え、だ、だけど……!」オロオロ


夜空「それにだな」

夜空「ここの隣人部という名称は、あくまで表向きのものだ。裏には真の名称というものがある」

小鷹「初めて聞いたぞ、それ」

夜空「言ってなかったからな」

小鷹「言えよ……。俺、一応部員なんだろ?」

星奈「そんなのはどうだっていいのよ。それより、何よ、真の名称っていうのは」

夜空「知りたいか。ならば教えてやる。ここの真の名称は!」

星奈「め、名称は……!」ゴクッ


小鷹(何で、いちいちこんな真剣なんだ、こいつら……?)

夜空「この部の真の名は 変 人 部 だ!」ババンッ

星奈「変人……部……!」


小鷹(なんつーか……。予想通りというか……。前のあれ、やっぱり本気だったのか……)


夜空「そう。変人部」

夜空「ドMである事によって社会的に迫害され、最後にはぼっちになってしまったキリストを反面教師として、とりあえずうわべだけの友達を作ってその場を凌ぎ、そして更には真の友達まで作ってしまおうと必死になってリア充になろうと抗う部がこの部だ!」ババンッ

小鷹「夜空……。後で、全世界のキリスト教徒に謝れよ」ハァ


星奈「友達を作って、リア充に……//」ドキドキ

夜空「つまり、この部に入る為の条件は二つ」ビシッ

夜空「友達がいない事。そして、その原因が変態であるという事だ」

夜空「私はこう見えてドMでな。もしも、小鷹の足で顔を踏まれたら六秒で潮を吹く自信があるぞ」フフン

小鷹「うわ……」

星奈「キモ……」

夜空「何とでも言え、ノーマルな駄肉が。アブノーマルになってから出直して来い、乳牛」フフン


星奈「」ハァ

星奈「つーかさ、あんたら、付き合ってんの? そういう関係なの?」

夜空「は?」

星奈「だから、付き合ってんのか聞いてんのよ。夜な夜な、足で顔を踏んだりとかしてんの?」

夜空「なっ! 何をいきなり! わ、私と小鷹が付き合うなんて、そんなっ!///」カアッ

星奈「だって、あんた今、足で顔を踏まれたら六秒でイクって……」

夜空「は、はあ!? そんな恥ずかしい事を誰が!!///」


小鷹「お前だろ」

星奈「あんたじゃない」


夜空「え、は、ええっ!?///」カアッ

夜空「わ、私、いつのまにかそんな事をっ!!///」


小鷹「」ハァ


夜空「こ……小鷹……///」チラッ

小鷹「馬鹿馬鹿しい……」ボソッ

夜空「うっ、ううっ……///」グスッ


星奈「」ハァ

小鷹「言っとくがな、俺と夜空は別に付き合ってなんかないぞ」

星奈「……そうなの?」チラッ

夜空「あうぅ……」グスッ


小鷹「そう。話したのだって、昨日が初めてだし、それに俺は夜空に対してこれっぽちも性的な興味がない。何があっても、ムラムラと来ない。だから、俺と夜空が付き合う事は有り得ない」

夜空「こ……小鷹ぁ……」グスッ

小鷹「何故なら、俺はホモだから。男の尻に興味はあっても、女の尻には一切興味がない」


星奈「……ホモ? だけど、そこの狐目の女はあんたにそう言われて何だかショックを受けてるみたいだけど……。それに、さっきあんたの足で踏まれたらすぐにイクって……」


小鷹「夜空は変態マゾ女だからな。男なら誰でもいい淫乱痴女なんだろ。別に俺だけ特別って訳じゃないと思うぞ」


夜空「ち、違う……! 私は、ううっ!!///」ゾクゾク

夜空(ご、誤解されて泣きたいぐらい悲しいのに、こ、小鷹にそんな風に罵られるなんて……!///)

夜空(悲しいやら、気持ち良いやらで、頭がどうにかなりそうだ!///)


小鷹「ホント……根っからの変態だな、夜空って」ハァ


夜空「あううっ! こ、小鷹ぁ!///」ビクンッ


星奈(ホント、変態ね……。こいつ……)

小鷹「あ、あと、一応誤解されると嫌だから言っておくと、俺はガチムチな男は嫌いだからな」

星奈「は?」

小鷹「俺が好きなのは、小さくて可愛い男の娘だけだ。言ってみればショタコンだな」

星奈「へえ……。あんた、ホモでショタコンなんだ。ふうん……」

小鷹「何だよ、そんなにジロジロ見て。どうせお前も気持ち悪いだとか、変態だとか言うんだろ」

星奈「え、ううん、そんな事ないわよ! むしろ、応援するわ!」

小鷹「でもな、どんな風に言われようと、好きなものは好きだから、俺は意見を変えないって……え? 今、何て……?」

星奈「だからあ、応援するって言ってるのよ! 私、あんたの気持ち、よくわかるもの!」ニコッ

小鷹「は?」

夜空「……は?」


星奈「だって、私、レズでロリコンだもん!」ニコッ


小鷹「……は?」

夜空「……え?」


星奈「だから、小鷹のその気持ちはよくわかるの! 私たち、正反対だけど仲間よ!」ニコッ


小鷹・夜空「ええええっ!!?」

夜空「つ、つまり何か……」ヒクヒク

夜空「貴様は、いたいけな幼女しか愛せないと、そういう事か……」ヒクヒク


星奈「うん、そうなの! それも、飛びっきりの可憐で可愛くて萌える様なそんな子しかダメなの!」キャアン♪

星奈「ほら、私ってえ、こう見えて完璧じゃない!? それにお嬢様だから、昔から大事に育てられてきたでしょ!?」

星奈「だからなのかなあ、可愛くて放っておけない様な子の面倒を見てあげたいって言うかあ、面倒を見させて下さいお願いしますって言うかあ!」キャハァ♪

星奈「そんな子のメイドとして仕えて、愛されたいって言うかあ!」キャアン♪

星奈「それで、長い時間を使って育まれた感情はやがて燃えるような恋に変わってえ! 気が付けば、お風呂場や寝室でお互いを求めあうような、そんな激しい愛の営みを!///」ハァハァ、ハァハァ


夜空(駄目だ、こいつ……。正真正銘の変態だ……)

小鷹(ヤバイ……こいつ。ガチの変態だ……)

小鷹「だけどまあ……」

小鷹「メイドとして仕えたいとか、そこら辺のところは俺にはよくわからないけど……」

小鷹「青い果実をもいで、それを美味しく食べたいというその気持ちはよくわかる」グッ

夜空「こ、小鷹……!?」


星奈「でしょう!? それに、男と女でくっつき合うとか気持ち悪いじゃない! そう思うわよね!」パアッ

小鷹「ああ、それは間違いない。男は男同士、女は女同士でくっつくのが自然だ。それがむしろ普通だろ」

星奈「でしょでしょ! やっぱり私達は間違ってなかったのよ! 間違ってるのはこの世界の方なのよ!」

小鷹「ああ、俺もお前と会ってこうして話す事で、初めてそれに気が付いた。間違ってるのは、俺達じゃない。この社会の方だ!」ババンッ

星奈「そうよ! 可愛いはいつだって正義よ! 正論なのよ!」ババンッ


夜空「私達……だと? 俺達……だと?」ピキッ

星奈「あんた、なかなか話がわかるじゃない!」

小鷹「お前もな! まさか、こんな意外な同士がいたなんて思わなかったぞ!」


夜空「」イライラ、イライラ


星奈「あんた、名前は? 特別に覚えておいてあげるわ!」

小鷹「ああ、俺は羽瀬川小鷹って言うんだ。宜しくな」

星奈「へえ、小鷹ね。悪くない名前ね。なら、これから私は小鷹って呼ぶから、あんたも私の事を名前で呼んでいいわよ」ニコッ

夜空「……あ?」ボソッ

小鷹「いいのか? それならこれから星奈って呼ぶ事にするぞ」ニコッ

夜空「……ああ?」ボソッ

星奈「そうね。そうしなさい。それにしても、何だかいいわね、こういうの。何か友達同士みたいって言うかあ」


夜空「!!」

夜空「ざけんなっ!」ダンッ!!


星奈「きゃっ!」ビクッ

小鷹「うおっ!」ビクッ

小鷹「な、何だよ、夜空……。急にどうしたんだ?」

星奈「そうよ。び、びっくりしたじゃないの」


夜空「はあ?」ユラリ


小鷹「……ちょっ。マジでどうしたんだ……? 夜空……」

星奈「な、何よ……。何を急に怒り出してるのよ……」


夜空「何が男は男同士、女は女同士でくっつくのが自然だあ? そんな事、ある訳ないだろう」


小鷹「い、いや、でもな……」

星奈「そ、そうなんだからね……。男と女がくっつくなんてそんな、ふ、不潔じゃないの……」ビクビク


夜空「ほう。不潔かあ、肉?」ユラリ

星奈「きゃああっ!」ビクッ

夜空「じゃあ聞くがなあ、そこのミートボール」

夜空「お前はどうやって生まれたんだ? 貴様の両親が夜な夜なベッドの上でギシギシアンアンやってたから生まれたんじゃないのか? 違うのか?」

星奈「ちょっ! い、いきなり何を言い出すのよ!///」

夜空「何をって、現実を教えてやってるんだろうが。白いどろどろとした液体を子宮にぶっかけられる事で、お前はこの世に生を受けたというその事実をだな」

星奈「や、やめてよ! そんなんじゃない! やめてよおっ!!」

夜空「黙れ、肉。じゃあ何か? お前はコウノトリが運んで来たとでも今更その歳になって言うのか? 現実を直視しろ。お前が生まれてきたのは、お前が言う不潔な行為を両親がしたからだ。つまり、お前は不潔な行為が生んだ不潔の塊、不潔しかない存在だと自分でそう言うのだな?」

星奈「ち、違う! 私は不潔なんかじゃない!!」グシュッ

夜空「なら、認めろ。男と女のセックスは決して不潔ではなく、それに伴うありとあらゆる行為もまた不潔ではないと。それこそが本当の愛の営みだという事を」

星奈「だ、だけど……! それは……!」

小鷹「お、おい……夜空。もういいじゃないか。そんなに星奈を追い詰めなくても……」

夜空「小鷹。貴様はこのレズ肉の肩を持つと言うのか? 私の言っている事に何か一つでも間違いがあるとでも言うのか?」ギロリ

小鷹「あ、いや、でもな……」

夜空「男と女が愛し合うのはごく普通の事だ。そうだろう、小鷹?」

小鷹「いや、その……だけど……」

夜空「小鷹! 何も私はこの肉や貴様の言う事を全否定している訳ではない。私達は内容は違えども『普通ではない』という一点で共通した悩みを抱えているのだからな」

夜空「だが、その『普通ではない』という事実を狭い仲間内でねじ曲げて、それが当たり前の事だと、それが普通の事だと考えるのには無理があると、私はそう言っているのだ」

夜空「私達は残念ながら、他から見れば変態だと言われる性癖を持っている。その事実を理解しろ」

夜空「私達は……自分達が変態だという自覚を忘れてはならないのだ」

夜空「忘れたら、もう変態同士でしか友達など作れないぞ。それは友達じゃなくて傷をお互いになめあっているだけの関係だ」

夜空「それが本当の意味での友達と言えるのか、小鷹?」

小鷹「…………」


夜空「乳牛! お前だって、本当の意味での友達が欲しいんじゃないのか?」

星奈「…………」シュン


小鷹「……そう……だな。悪い、その通りかもしれない……」

星奈「そうね……」

夜空「とにかく、もういい。おい、そこの肉」

星奈「わ、私は肉じゃないわよ! な、なによ! 勝手に変なアダ名をつけないでよ!」

夜空「うるさい。それよりお前、入部するのかしないのかどっちだ?」

星奈「え? じゃあ……」

夜空「仕方ないだろう。気に食わないが、お前は入部条件を満たしてる。それを止める理由が私にはないのだ」

星奈「やったあ! 夜空、あんた案外いいやつじゃないの!」パアッ

夜空「あ、当たり前だ。私は常々いいやつだ//」


小鷹「……そうだな」ニコッ


夜空「まあ、こいつならレズだし邪魔にはならないだろうからな」ボソッ

小鷹「ん? 何か言ったか?」

夜空「な、何でもない! お前には関係のない事だ」フイッ

星奈「じゃあ、早速入部届けを書くわよ。紙は?」ルンルン





隣人部。もとい、変人部。活動一日目。

ドM一人、ショタホモ一人で結成。ロリレズ一人が入部。

変態が三人。友達は0人。

『翌日 廊下』


小鷹「」テクテク


モブ男A「げっ。あっちから来るの、変態ヤンキーの羽瀬川だぞ」ヒソヒソ

モブ男B「バカ、目を合わせるな。掘られるぞ」ヒソヒソ

モブ男C「端によって、とにかく尻だけは守れよ、お前ら」ヒソヒソ


小鷹「」ハァ……

小鷹(やっぱ、転入初日がまずかったよなあ……)

転入初日。ここで俺の新たな高校生活の運命は決まったと言っていい。

危うく遅刻しかけたが、どうにか時間に間に合った俺は朝のホームルームの時、自己紹介を求められた。

この金髪に近いくすんだ髪の事もあって、自己紹介をする前から教室はちょっとした緊張感と恐怖とに包まれていて、その場の雰囲気が俺にも伝染したのか、俺は挨拶をする前からガチガチの状態だった。

来る途中のバスの中で考えていた挨拶の言葉なんて完全に頭の中から抜けていて、でも既に教壇の前に立たされていたから、考える暇や思い出す時間なんて全くなくて。

それで、つい、本音が出ちまったんだよなあ……。何であんな事を言ってしまったのか、俺は……。



小鷹「羽瀬川小鷹だ」

小鷹「ただのホモには興味なんてない。この中に可愛くて可憐な男の娘がいたら、俺のところへ来い」

小鷹「たっぷり、可愛がってやるからな。ふへへへ……」



その日以降、俺に変なアダ名がついた。

ショタホモキラー番長だ。


どうしてこうなっちまったのか……。

男も女も、誰も俺には話しかけて来ず、それどころか進路指導室にまで呼ばれる始末だ。ジョークに交えてちょっと本音が出た程度で。

何もかも、世界が悪い。

そう思うしかないじゃないか。

『談話室』


小鷹「よーす」ガラッ


夜空「来たか。ショタホモキラー番長」

星奈「」ブハッ

小鷹「なっ!///」


星奈「ちょっ、小鷹。あんた、周りからそんな風に言われてるんだって!? それ、ホント!? マジで!?」ケラケラ

小鷹「い、言ったのか、夜空……///」プルプル

夜空「いや、なに。先程、丁度小鷹の話になったのでな。特に口止めをされている訳でもなかったので、私の知っているある事ない事を全部、な」

星奈「もう四人ぐらいトイレに連れ込んだんだって!? ホントに!? それマジ!?」クスクス

小鷹「あのなあ……! せめて、ない事は黙ってろよ、夜空ぁ!!」


夜空「悪かったな。以後、気を付けよう」フフン

小鷹「」ムスッ


夜空「おい、小鷹。部活を始めるぞ。いつまでむくれてるんだ」

小鷹「全部、お前の責任だろがよお」ギロリ

夜空「わ、悪かった……。だから、睨まないでくれ……」


星奈「まあまあ、小鷹。どうせ、いつかは耳に入る事だっただろうしさあ」クスクス

小鷹「お前ら、二人とも死にやがれ……」プルプル


夜空「小鷹。そんな本気モードで怒られても私は興奮しないのだ。だから、その……もう少し機嫌を直してくれないか」

小鷹「ふざけんな、ドMの変態女が」プルプル

夜空「あんっ! そう、そんな感じでだな///」ビクッ

星奈「夜空……それ、マジ引くから……」

夜空「という事で、小鷹の機嫌も直った事だし、部活を始めるぞ」

小鷹「全く直ってなんかねーよ」

星奈「でも、部活って具体的に何するのよ? 御主人様と友達を作る部なのよね、ここ?」

夜空「そう。まあ、友達すらいない現状、御主人様はあまりに難易度が高いから、まずは友達作りから始めていくがな」

小鷹「で、どうやったら友達が出来るんだ?」

夜空「それが簡単にわかるようなら、私達はとっくにリア充の仲間入りを果たしているはずだ。それがわからないから、こうして部活に集まっているのだろうが」

星奈「つまり、それをこれから皆で考えるって事?」

夜空「まあ、そんなところだ。今日のところは、私に考えがあるがな」

小鷹「へえ、どんな?」

夜空「うむ」

夜空「実は昨日、私の中学の時からの親友である友ちゃんと一緒にファミレスに行ったのだがな」

星奈「え! あんた、親友なんていたの!?」

小鷹「…………」


夜空「当たり前だ。それとも、肉。お前は中学の時にも友達がおらず、一人でずっとぼっち状態だったのか?」フフン

星奈「え、あ、あの……」オロオロ

夜空「ほーう。やはりそうか。貴様は中学の時からずっと友達が誰一人いない寂しい生活を送っていたのだな。可哀想なやつめ」

小鷹「……お前が言うなよ」ボソッ


星奈「ち、違う! い……いたわよ……。沢山……い、一杯いたんだから!」

夜空「なら、名前を言ってみろ。後で調べて確認をとってやる」

星奈「な、名前……! え、えと、あ、あの……!」オロオロ


小鷹「」ハァ

小鷹「それで、ファミレスに行ったらどうしたんだ、夜空?」

星奈「そ、そうよ! わ、私の中学の時の付き合いなんてどうだっていいでしょ!」

夜空「」チッ


夜空「まあいい……。それでな、友ちゃんと一緒にそこでドリンクバーを頼んだんだが」

小鷹「一人でドリンクバーを頼むって……」

夜空「一人ではない! 友ちゃんも一緒にだ!」

小鷹「わかった、わかった。で? ドリンクバーがどうしたってんだ?」

夜空「その時にだな、他のテーブルに座っていた四人組ぐらいのリア充どもが、罰ゲームというのをやっていたのだ」

星奈「罰ゲーム?」

夜空「そうだ。『やりぃ、勝ったー。それなら、俺、オレンジジュースなー』『私、メロンソーダねー』『俺はコーラの氷抜きなー、あはははは』とか、そういうのだ」

小鷹「おお。そう言えば、そういうやり取りをたまに見かけるな。昼休みの教室とかでも」

星奈「私も! たまに、見るあれね」

夜空「そうだ。おまけに、謎な事にも負けた側も笑っているのだ。『ちぇー、しゃーねーなー。あはははは』とか」

夜空「自分がその狭いグループ内において、最底辺の格付けを受けたというのにも関わらずだぞ? 私なら、何が何でも勝ちに行く。絶対に負けたくないからな」

夜空「しかし、奴等リア充どもは、笑ってそれをやるのだ。笑って負けを許容するのだ。私からしたら頭がおかしいとしか思えないのだが、それがリア充というものなら、いつか、私達がリア充の仲間入りをした時にそういう試練が訪れる可能性もある」

小鷹「大袈裟な……」

星奈「ううん、夜空の言ってる事は正しいわよ。私もそういうので負けたくないし。ていうか、私なら元から負ける事なんか有り得ないんだけどね」

小鷹「……ああ、そうかい」

小鷹「まとめると、今日はそういう罰ゲームをやるって事か?」

夜空「そうだ。そもそもゲームというのは、それを一緒にやるだけで、何となく仲間意識がわくと聞く。私達が友達を作るという面においても、十分に役立つだろう」

小鷹「まあ、一緒にサッカーとか一緒に野球とか、単なる人数集めで入れられただけでも、会話のとっかかりにはなるよな」

星奈「わかったわ。じゃあ、今日は罰ゲームをやるって事で」

夜空「決定だな。では、始めるぞ」

小鷹「それで、俺達はどうすればいいんだ? ファミレスにでも行くのか?」

夜空「いや、わざわざ出掛けるまでもない。ここで行うぞ」

星奈「大体、何の罰ゲームをやるって言うの?」

夜空「うむ。罰ゲームというからには、やはり多少ダメージを伴うものでなければ意味がない。そうだろう?」

小鷹「そりゃ、嫌な事ってのは確かだろうな」

夜空「そこでだ、私が昨日の内に調べて用意しておいた。ビンゴゲームの様な、一般的なパーティーとかでよく用意される、罰ゲーム用のグッズをだな」ゴソゴソ

星奈「へえ。なかなか気が利いてるじゃない」

小鷹「だな」

夜空「まずは、鞭!」ババンッ

夜空「次に、蝋燭!」ババンッ

夜空「最後に、荒縄!」ババンッ


小鷹「……おい」

星奈「……あんたねえ」プルプル


夜空「これが、一般的なパーティーでよく用いられる罰ゲーム用の」

小鷹「SMの三大グッズじゃねーか!!」

星奈「あんた、何のパーティーをするつもりなのよ!!」

夜空「馬鹿な。二人とも何を言っている。罰ゲームと言えば痛みを伴うものだと、さっき納得したばかりで」

小鷹「お前の場合、痛みじゃなくて快楽だろう!」

星奈「どこのパーティーでムチやロウソクを用意するって言うのよ! そんなパーティー、全然一般的じゃないわよ!」

夜空「何を言う、肉。一般的な紳士淑女が集う乱交パーティーではこの様な物が当然の様に用意されると」

小鷹「紳士は乱交なんかしねえ!!」

星奈「淑女もよ!!」

夜空「ぐっ……」

夜空「し、しかしだな……。他には何も用意してないのだ。だから……」

小鷹「じゃあ、他の事をすればいいだろ。例えば、負けた奴は可愛い男の娘に声をかけて、部室まで連れ込むとか」

夜空・星奈「却下」

小鷹「お、おい、何で!」

夜空「犯罪だ、それは」

星奈「連れ込むなら、可愛い幼女に決まってるからでしょ」

夜空「お前のも犯罪だ。ロリ肉が。死ね」

星奈「何ですってえ!」

小鷹「いや、でも合意の上でなら連れ込んでイタズラ(意味深)しても……」

夜空「黙ってろ、小鷹」 ギロリ
星奈「黙ってなさい、ショタホモ番長」ギロリ

小鷹「お、おう……」

星奈「大体さあ、あんた。どうにかなんないの、その変態的な趣味は?」

夜空「あ?」カチン

夜空「肉。貴様、今、なんと言った?」ユラリ

星奈「その変態的な趣味をどうにかしなさいよって言ったのよ。叩かれたり、罵られたりして喜ぶなんてどう考えてもおかしいじゃないの」

夜空「なん……だと……! 貴様……!」ギリッ


小鷹「お、おい……。二人とも……」

夜空「ロリレズの変態女なくせして……! この私の崇高な趣味に文句をつけると言うのか……! 肉!!」ギリッ

星奈「だって、あんたの趣味とか、私、全然理解出来ないし」

夜空「ああ?」ギロリ


小鷹「おい、だから、もう少し穏便にな……」


星奈「」チラッ

星奈「まあ、同じ変態でも、小鷹のはわかるのよ。小さな子は可愛いし、可愛いは正義だもの。それに、愛さえあれば性別なんか関係ないじゃない? 好きなのが男か女かなんて些細な問題よ」

小鷹(それは確かに)コクッ

星奈「でも、ぶたれたり罵られたりされる関係とか、そんなの愛でも何でもないじゃない。イジメか、そうでなきゃ、虐待でしょ? それのどこに愛や信頼があるの? ゼロじゃない」

星奈「そんな事をされて喜ぶなんて、やっぱりどう考えても理解出来ないわね。私は確かに普通の人とは違う性癖の持ち主だし、それが変態だって言われるのは仕方がないとは思うけど……」

星奈「その私でも、あんたみたいなドMの考えなんかまるで理解出来ないのよ。変態の中でも異質って言うか、同じ変態として見られたくないって言うか……」

夜空「貴様ぁ!!」ダンッ!!


小鷹「お、おい! 落ち着け、夜空!」

星奈「な、何よ! 何でそんなに怒ってるのよ!」

星奈「あんた、ドMなんじゃないの!? 変態って言われて喜ぶ女でしょ! だったら、むしろご褒美だと思って私に感謝するところなんじゃないの!?」

夜空「この……! 駄肉が! 乳女がっ!!」ギリッ


夜空「貴様なんかに……!! 貴様なんかに何がわかる!!」

夜空「メイドと御主人様の関係が素晴らしいとか考えてる脳内スイーツなとろけ女に何がわかる!!」


星奈「何よ、その言い方! 素晴らしいじゃないの! 愛と信頼で結ばれた美しい関係じゃないの!」

夜空「変態だと言われて喜べだと……!? 御主人様に仕えて奉仕する事が愛と信頼の証だと……!?」

夜空「覚えておけ、肉! 私は蔑まれるのが大嫌いだ!! そんな甘い考え方も大嫌いだ!!」

夜空「イジメ!? 虐待!? 馬鹿か、貴様?」

夜空「そこに愛があるからこそ! 信頼があるからこそ!」

夜空「私は凌辱され、無茶苦茶にされたいのだ! 酷い事をされ、誇りも何もかも踏みにじられて蹂躙されたいのだ!」

夜空「変態だと罵られようとも! 鞭で血が出るまで叩かれようとも! そこに愛が感じられるからこそ嬉しいのだ!! 信頼があるからこそ、調教され思う存分いたぶられたいのだ!!」


夜空「でなきゃ、誰が凌辱など望む!! 誰が調教されたいなどと望む!!」


夜空「好きな男に身も心も何もかも弄ばれたいなどと、誰が望むというのだっ!!」ドンッ!!

夜空「ドMである事の……」

夜空「何が悪いというのだぁ!!」ババンッ





小鷹(うわあ……。流石の俺もドン引きするわ、これ……)

小鷹(愛だの信頼だのって……ドMが自分の性癖について、そんな熱く語られてもなあ……)

小鷹(これじゃあ、星奈も……)チラッ


星奈「そう……なのね」ウルウル

星奈「愛と信頼があるからこそ、あんたは……」ウルウル


小鷹(簡単にのせられてるぞ、この変態……)ヒクヒク

星奈「悪かったわ、夜空。あんたの言いたい事はすごくよくわかった。形は違うけど、夜空も愛と信頼の素晴らしさがよくわかっているのね」ウルウル

夜空「そうだ。私は虐められる事で愛されたいのだ」ウルウル

星奈「夜空……! あんたと私は仲間よ! 同士よ! 友達にはなれないし、変態である事に変わりはないけど、それでも仲間よ!」ウルウル

夜空「私も貴様の腐ったスイーツ脳の事などまるで理解出来ないが、しかし、お前が私の事を誤解せずにわかってくれたのならそれでいい!」ウルウル


小鷹(何だ、この茶番は……?)


星奈「夜空!」ウルウル

夜空「肉!」ウルウル


星奈・夜空「私達は、形は違うけど同じ変態同士だ!」ウルウル


小鷹「…………」

小鷹「」ハァ

こういうのを、夜空が昨日言っていた、傷のなめあいというのではないかとは思ったのだが……。

しかし、二人がそれなりに幸せそうだったし、それは紛い物とは言え、一見、友達同士の様に見えたのだから……。

俺は何も言わずに、手と手を取り合って感動の余韻に浸っている変態二人を尻目にそっと部屋から出ていった。


変態は友達がなかなか出来ない。

それなら、例え、紛い物でも傷のなめあいでも……。

今日二人の間に出来た『友情らしきもの』、それを大事にしてやりたい。

そんな事を思いつつ……。

俺はゆっくりと家路につくのだった……。





隣人部。もとい、変人部。本日の活動記録。

ドMとロリレズがわかりあった。

変態は三人。友達は0人。

『翌日 談話室』


小鷹「うーす」ガラッ


三角木馬「ちぃーっす」


小鷹「な……」


夜空「遅いぞ、小鷹。こっちはもう準備万端でお前が来るのを待っていたというのに」

星奈「ほら、小鷹。御主人様が鞭で叩いてあげるわよ! さあ、這いつくばって、私の足を舐めなさい」ビシィッ

夜空「馬鹿者! 小鷹はドSなんだぞ! 何でそうなる、肉! その鞭で私をぶって下さい、御主人様と言うのがM奴隷の礼儀だとあれほど」


小鷹「おい、ちょっと待てぇ!!」

小鷹「で、何でこうなった? どうしてここに当たり前の様に三角木馬が置いてあるんだ?」


夜空「ふむ、それはだな」

星奈「つまりね、私達は昨日、わかりあったのよ。お互いの変態は認め合うものだと」ピシィッ

小鷹「いいから、お前はその妙な仮面を外せ……。あと、鞭もデフォルトで持つな」

星奈「えー? 似合ってない? これ、可愛くない?」

小鷹「そんなSMクラブにいそうな仮面が似合うやつなんかいねーっての……」

夜空「まあ、おおむね肉の言う通りの事で合っている」

夜空「私は未だに肉の『メイドとなってロリな女御主人様に仕えたい』などという脳内お花畑全開の怪しげな欲求などまるで理解出来ないが……」

星奈「それは私も一緒よ! あんたの……レ、レイプされて……せ、性奴隷になりたい……とかいう、そんないやらしい欲望なんて全く理解出来ないんだけど……///」

夜空「しかし、変態が変態同士で争い合うものではない。我々はまるで理解しあえない別種の生き物だが、しかし、変態という大きなくくりで見れば味方同士だ、という事に昨日気が付いてな」

星奈「だから、お互いの趣味嗜好は尊重するし、理解しようと努力する、って話になったのよ。いつのまにかあんたが帰っちゃった後にね」


小鷹(俺がいない間にそんな事が……)

夜空「という事で、今日はお互いの変態性を理解しあうと同時に、昨日の友達作りの続きを行う事とする」

小鷹「おい、まさか……」

夜空「そう。小鷹の予想している通りの事だ」

星奈「SM罰ゲーム大会をやるわよ、小鷹!」ピシィッ


小鷹「だから、何でこうなるんだよ!」

小鷹「夜空も星奈もよく考え直せよ!」

小鷹「俺達は変態だって理由で社会や友達関係から弾かれた存在なんだぞ!」

小鷹「それをどうにかしようって部活で、何でまた変態行為をしなきゃなんねーんだ!? どう考えてもおかしいだろ!」

小鷹「部活でこんな事をしていたら、余計に友達が出来なくなると思わないのか!? そうだろ!?」


星奈「あ……。そ……そうよね。言われてみれば……」

夜空「ちっ……」

小鷹「大体、俺は女をムチで叩くとかはしたくない」

小鷹「確かに俺はホモだが、女嫌いって訳じゃあないからな。女を殴ったり傷つけたりする様な事は絶対にしたくないし、それを見たら腹が立つ」

星奈「……ふうん。ホモのくせして、妙なところで男らしいのね、あんた」

夜空「全くだ……。何でお前はこういうところだけ男らしいんだ……腹立つ」ボソッ

小鷹「は? 何か言ったか?」

夜空「何も言ってなんかない!」フイッ

小鷹「何だってんだよ、全く……」

夜空「」ハァ……

夜空「ならば、小鷹」ジロッ

小鷹「……何だよ?」

夜空「鞭で叩くとかではなく、ごく一般的な罰ゲームなら構わないんだな?」

小鷹「ん……そりゃまあ。……内容にもよるけど」

夜空「それなら、こういうのでどうだ」


夜空「勝った人間は負けた人間に対して、一つだけ何でも言う事をきく、というものだ」キラン


小鷹「小学生の頃にそういうの、聞いた気がするけどな……。だけどそれは」

星奈「いいじゃない、それ! 私は賛成よ!」

小鷹「はあ!?」

小鷹「おい、星奈! お前、そんな事言ってるけど、もし負けたらどうするつもりなんだよ!」

小鷹「相手は夜空だぞ! 真性のドMだぞ! どんな命令されるか」

星奈「別に構わないわよ。だって、何でも完璧な私が負ける事なんて有り得ないし」フフン

小鷹「いや、だけど」

星奈「それに、夜空から何を命令されたって構わないし。私は別にSって訳じゃないけど、夜空を鞭で叩いたり縛ったりするぐらいなら平気だし」

夜空「」フッ


夜空「言っておくがな、肉」

夜空「私は小鷹に対してなら完璧なドMとなるが、貴様に対してなら鬼畜度マックスのドSになるぞ」キラン

夜空「その出荷前の乳牛の様な無駄にデカい乳を、思いきり握り潰し、乳首を摘まんで引っ張ってひねり回すぐらい、むしろ愉しんでやるからな」フフフフフ

星奈「ひ!」ビクッ


小鷹(こいつ……ドMもドSもいけるド変態かよ……)

夜空「まあ、あれだ」

夜空「貴様は完璧で負ける事なんてない、のだから、別に負けた時の心配なんかする必要なんかないよなあ、肉?」

星奈「あ、あったり前じゃないの! 私が夜空ごときに負ける事なんて、天地がひっくり返っても有り得ないし!」

夜空「よし、ならば決まりだな。敗者は勝者の言う事に対して、一つだけ絶対服従だ。このルールで早速罰ゲームを始めるぞ」


小鷹「って、待てよ! 俺はそのルールで納得なんかしてないぞ!」


夜空「小鷹。何を言っている? 私とそこの乳女が賛成しているんだ。多数決でもう自動的に決まりだろうが」

小鷹「多数決って、そんな!」

夜空「民主的に平和な手段で決めた事だぞ? 暴君が一人で決めた訳ではない。民主国家で暮らしている身としては、それに従うべきじゃないのか、小鷹?」

小鷹「でも、俺の意見や意思とかは……!」

夜空「言っておくがな。多数決というのは、数の暴力だ。形を少し変えた、集団リンチに近い。故に、少数派に口答えする権利など……」

夜空「ない!」ギラリ


小鷹「マジかよ……ちくしょう」

小鷹「そ、それなら……」

小鷹「せめて、先に罰ゲームの内容を決めておかないか」

小鷹「やっぱり、あんまり無茶な命令なんかきけないだろ? だから、お互いに納得した内容で罰ゲームをしようぜ」

夜空「何を言っている、小鷹。そんな事が許されるとでも」

星奈「そ、そうよね! そうするべきよね! もちろん私が負ける事なんて有り得ないんだけど、よ、夜空に、あ、あんな事を提案される事自体が屈辱な訳だし!」

夜空「肉、貴様……! 裏切るのか!」

小鷹「よしっ。これで多数決で決まりだな。罰ゲームの内容は事前に決める。それで文句なんかないよな、夜空? 民主的に決めた事だぞ」

夜空「うぐぐ……!」

夜空「……仕方がない」

夜空「それなら、先に罰ゲームの内容を決めるぞ」

小鷹「ああ」

星奈「そうね」


夜空「まず、私が勝った場合の時だが……」

夜空「敗者が肉の場合は、そこの三角木馬に乗せて搾乳プレイをした後に鞭打ちを100回ほどして」

星奈「ちょっと、夜空!! 駄目に決まってるでしょ、そんなの!! 夜空のド変態!!」


小鷹(やっぱ、予想通りかよ……)ハァ

『痛みを伴う命令禁止』


夜空「なん……だと……!」

小鷹「だって、こうでもしなきゃ、お前の欲望、止まりそうにないしな」

夜空「こ、小鷹……。それは私の人生における愉しみを全て奪う事に……」プルプル

小鷹「禁止だ」


夜空「そ、そんなぁ!!」

夜空「ふ……ふはははは……」ズーン


小鷹「ほら、さっさと決めろよ」

星奈「そうよ、変態夜空。いつまでショックを受けてるのよ。さっさと決めなさいよね」


夜空「もう……何かどうでもいい……。肉の事なんかどうでも……」ズーン


星奈「なっ! 失礼なやつね! この学校一の天才美少女をつかまえて、何よ、その言い草は!」


夜空「奴隷に……」ボソッ

星奈「は?」

夜空「私が勝って肉が負けた場合は、私の奴隷にする……」ボソッ


星奈「嫌よ! バッカじゃないの、あんた! 絶対にお断りなんだから!」


夜空「なら、私の事を御主人様と呼ばせる……。もうそれだけでいい……」ズーン


小鷹「まあ、それぐらいなら妥当……なのか?」

星奈「妥当って! そんな訳ないでしょ!」

小鷹「いや、でも、ここにいる間だけの事だろ? それに期間も一週間ぐらいにしとけばいいんじゃないのか? それぐらいなら、別に星奈もいいだろ」

星奈「う……まあ……。一週間だけって言うなら……」

小鷹「夜空もそれでいいか?」

夜空「肉の事なんか、どうでもいい……」ズーン


星奈「腹立つわねえ、もう!」

小鷹「じゃあ、それで決定で」

小鷹「じゃあ、次は俺が夜空に負けた時だけど……」

夜空「こ、小鷹か……」パアッ

星奈「何であんた、ちょっと立ち直ってんのよ。ムカつく」


夜空「そうだな……。小鷹の場合は……むむむむ」

夜空「しかし、痛みを伴う命令は禁止だと言うし、それなら……」

夜空「いや、しかし、こんなチャンスは滅多にないのだから、もっと大胆な感じで……」

夜空「ああ、私はどうすればいいのか……! うむむむむ」


星奈「あんた、考えすぎ。……正直、鬱陶しい……」

小鷹「何か、ろくでもない予感がするんだけどな、俺……」

夜空「い、痛みを伴わなければいいんだよな、小鷹?」

小鷹「ん、まあ……。よっぽどの事でない限りは……」

夜空「そ、それならだな……///」モジモジ


夜空「ぜ、全裸になるから……ペ、ペットとして、外へ連れ回してくれ///」ドキドキ


小鷹(うわあ……)

星奈(怖いかも、こいつ……)

夜空「そ、そのだな///」

夜空「私は正直、人前で肌を晒すなど、物凄い恥ずかしいのだ///」

夜空「だから、それを解ってて小鷹が無慈悲にもそれを命令してくれたら、な、何て言うか///」

夜空「それを想像しただけで、イッてしまいそうになるぐらい逆に興奮すると言うか、その……///」モジモジ


小鷹(解ってたけど……)

星奈(本物の変態ね、こいつ……)

小鷹「悪いが、それ、パスな」

夜空「な、何故だ! 痛みは伴わない命令だろう! 何が駄目だと言うのだ!」

小鷹「いや、俺にダメージ来るし。風評被害という名のダメージが」

夜空「なっ……!」ガーン

小鷹「もしそんなの見つかったら、また生活指導室行きだしな。噂されたら、余計に友達が出来なくなっちまうし」


夜空「そ、それならだな、小鷹! ギャラリーが肉しかいないのが残念だが、この部屋だけでもいいぞ! だから、私を犬として扱ってくれ! お願いだ、小鷹!」

星奈「夜空、諦めなさいよね、あんた。大体、そういう問題じゃなくてねえ」

小鷹「まあ、この部屋だけってんならいいけど」

星奈「はあああっ!?」

夜空「小鷹ぁ!///」パアッ

星奈「ちょ、ちょっと小鷹! あんたもあんたで何を言ってんのよ! 夜空を犬として扱うのよ! おまけに全裸よ!///」

星奈「そ、そんなの駄目に決まってるじゃないの! いやらしい!///」


小鷹「って言われてもな……」

小鷹「だって、星奈も知っての通り、俺、ホモだからさ。女の裸とか興味ないし、興奮もしないし」

小鷹「見る奴も、知ってる奴も、星奈一人なんだから、別にそれぐらいの命令なら」


星奈「良くない!///」

星奈「そんなの、見てる私が恥ずかしいじゃないの、バカぁ!///」


夜空「黙ってろ、そこの牝豚!! 折角、小鷹がやる気になってくれてるんだぞ! 私のプレイの邪魔をするなぁ!!」

星奈「いい加減にしなさいよ、この淫乱ビッチ! 私の見てる前でそんな変態行為をしようとしないでよね!!」

夜空「何だと、肉の分際で!!」ムギュッ!!

星奈「痛いっ! 胸を掴まないでよ! 掴む胸がないド貧乳のくせして!!」バシッ!!

夜空「殴ったな、貴様ぁ! 親にもぶたれた事ないのに!!」バシッ!!

星奈「何すんのよ、この色情魔!!」バシッ!!


小鷹「ケンカはやめろよ、変態二人!!」


夜空「お前が!」
星奈「言うんじゃないわよ! ショタホモ!!」


小鷹「うるさい!! お前らだって変態だろうがぁ!!」

『ケンカするほど仲がいいは変態には当てはまらない』


小鷹「つーか、ケンカするぐらいなら、罰ゲームなんかやらねーぞ、俺……」

夜空「な、何を言っている、小鷹! これはもう多数決で決まった事だぞ! 今更やめるなど、私は認めないからな!」

夜空「大体、こうなった責任は、この肉が横から口出しするからだろうが!」

星奈「違うわよ! あんたが余りに変態な事を言い出すからでしょ! 全部、夜空が悪いんじゃないの!」

夜空「何だと、肉! ジャガイモと一緒に煮込んでビーフシチューにでもしてほしいのか!」

星奈「あんたの方こそ、その腐った脳味噌を取り替える手術でもしてもらったら!」

小鷹「だからなあ!」プルプル


小鷹「いい加減にしろよ、お前ら!!」ダンッ!!


夜空「」ビクッ
星奈「」ビクッ

小鷹「ここは、変態が友達を作る為の部活だろうが!」

小鷹「なのに、友達を作るどころか、同じ変態同士でケンカしてどうすんだよ!」

小鷹「こんなんで……友達なんか出来る訳ねーだろ」

小鷹「お前ら、友達を作りたくないのか!? 俺は友達が欲しいぞ! 変態じゃない普通の友達が欲しいぞ!」

小鷹「外見がちょっと怖いからって……。変態だからって……。誰からも近寄られないのは嫌だろがよ……」


夜空「む……」シュン

星奈「そうね……」シュン

『全裸になる命令は禁止』


夜空「ぐはっ!」ガーン

星奈「あんたも、最低限、人としてのモラルぐらいは守りなさいよね。全くもう//」

小鷹「そういう事にしといた方が良さそうだよな」

夜空「そ、それなら、せめて下着姿で……」ピクピク


星奈「」カキカキ

『脱ぐ命令は禁止』ババンッ


夜空「ぐはあっ!」

小鷹「人間、諦めって肝心だよな」

星奈「ていうか、これ普通に考えたら夜空に対しての罰ゲームでしょ……」

小鷹「ドMに常識は通用しないからなあ」

小鷹「他に何かないのか? 痛みを伴わず露出しない罰ゲームは?」

夜空「あ、あるにはあるんだが……。しかし、やはりこの二つを禁じられるというのは……興奮度が……」ズーン

星奈「あるなら、さっさとそれを言いなさいよ。いちいち手間かけさせないでよ」

小鷹「で、どんな命令なんだ?」


夜空「い……///」

小鷹「い?」


夜空「私を……椅子として扱ってくれ///」モジモジ


星奈「…………」

小鷹「…………」

夜空「こ、こうして私が四つん這いになるからだな///」ペタッ

夜空「こ、小鷹に、その上に座ってもらって……///」

夜空「私が少しでも動こうものなら、『てめえ、椅子の分際で動くんじゃねーよ!』と、わ、私の尻をその度に思いきり叩いてもらってだな///」ハァハァ

夜空「たまに、熱い紅茶をわざと私の背中にこぼして、それで私が動こうものなら、また容赦ないお仕置きが始まってだな!///」ハァハァ、ハァハァ


小鷹「その飛びきりの笑顔が逆に怖いわ……」ヒクヒク

星奈「あんた……その姿、写メに撮ってネットにアップするわよ……」


夜空「な、何だと、肉!///」カアッ

星奈「ん、何? ひょっとして夜空、恥ずかしいの? やめて欲しいの? でも、そんな醜態を目の前でさらしていたらあ、撮って下さいって言ってるようなものだしぃ」

夜空「お前……。小鷹との初プレイ記念写真を撮ってくれた上に晒してくれるなんて! ひょっとしてすごい良い奴だったのか、肉!///」キラキラ


小鷹「なんか……。すげーな……本当に……」ヒクヒク

星奈「怖い……。ちょっと本気で夜空が怖いわ……」

夜空「という事でだ//」

夜空「私の罰ゲームはこれで決まりだな//」


小鷹「本当……いい笑顔してるよな、お前」


夜空「なっ! わ、私を誉めるな、小鷹! けなせ!///」ドキドキ


星奈「言っとくけど、小鷹は誉めてないからね。引いてるだけだから、夜空……」ハァ

星奈「じゃあまあ、次は小鷹、あんたね」

星奈「勝ったら、どういう罰ゲームをするつもり?」


小鷹「んー……どうしようかな」


夜空「小鷹、私は何でもお前の望むプレイをするぞ///」ハァハァ

小鷹「それなら……」

小鷹「ここから三つぐらい離れたバス停のすぐ近くに小学校があるだろ?」

小鷹「そこまでデジカメを持っていて、可愛い男の子の写真を撮ってきてくれないか?」

小鷹「俺だと、このなりだろ? すぐに通報されちまうだろうけど、夜空と星奈ならそんな心配はないだろうから……って、あれ?」


夜空「…………」ジトォ
星奈「…………」ハァ


小鷹「何で二人とも、そんな汚物を見るような目で……」


夜空「なるほど……。これが犯罪者予備軍か……」

星奈「小鷹。あんたと私は、近いようで遥かに遠い存在だという事がよくわかったわ……」


小鷹「いやいやいや! 普通だろ!? 写真を隠し撮りして家でハァハァするぐらい誰でもやるよな!?」


夜空「変態が」チッ
星奈「子供の敵ね」ハンッ


小鷹「何でだよ! やるだろ!? やるよな!?」

星奈「小鷹。念の為に言っとくけど、隠し撮りは犯罪なんだからね。どれだけ可愛い幼女がいたとしても、同意の上でないと写真は撮っちゃいけないのよ!」

夜空「私なら、小鷹の前でどんな破廉恥なポーズでも喜んでとってやるというのに、コソコソと隠し撮りなど。恥を知れ、小鷹。貴様には羞恥心というものがないのか?」

小鷹「それは俺の台詞だろ!」

夜空「馬鹿な。恥ずかしいからこそ興奮するのだろうが。私はきちんと羞恥心を持っている。そこらの痴女と私を一緒にするな!」

星奈「大体、隠し撮りってのが小物臭が漂うわよね。こういうのはお金や物をあげたりして、撮るものだっていうのに」

夜空「……おい、肉。お前、まさか……」ヒクヒク

小鷹「おお、そういう合法的な方法があるのか!」

星奈「そうよ。この前、五千円をあげた子なんて、喜んでポーズをとってくれて、しかも(略)」ペラペラ

小鷹「すげーな、そんな美味しい思いを!」キラキラ


夜空(犯罪者が……ここに……!)ヒクヒク

小鷹「しかし、隠し撮りが駄目ってなるとなあ」

小鷹「特に命令したい事もないし……」

小鷹「それなら、俺は缶ジュースとかをおごってもらうとかそんなんでいいんだけどな」


星奈「」ハァ
夜空「」ハァ


小鷹「何だよ、その残念そうな反応は」


星奈「……小鷹。あんたって本当につまんない男ね……。可哀想になってきたわ」

夜空「全くだ。何でも命令が出来るというのに、缶ジュースなどと……」ハァ

小鷹「い、いいだろ、別に! 大体、お前ら女だから、特にして欲しい事とかないし」


夜空「……小鷹。お前、ファンタジー物のRPGで、魔王に世界の半分をやろうと言われても、それをあっさり断るような奴だろ」

星奈「そうそう。それで、ならその代わりに何が欲しいとか聞かれたら、とりあえず明日の夕食のおかずとして唐揚げが欲しいとか言うような奴よね」

小鷹「い、言わねーよ!」

夜空「いや、小鷹はそう言ってしまうような残念な奴だ。無欲とかではなく、他の言葉が思い付かない。『俺が欲しいのはたった一つ、平和だけだ!』などとカッコいい台詞もまるで思い付かないような、つまり、空気が読めない残念な奴だ」

星奈「友達が出来ない訳よね、こんな見かけだけヤンキーのヘタレじゃ」フッ

小鷹「何で俺が罰ゲームの話一つでそこまで言われなきゃなんねーんだよ!」

星奈「ま、あんたがそれでいいって言うならもういいけど」

夜空「残念さを治す薬はないからな。仕方あるまい」

小鷹(好き放題、言いやがって……)ヒクヒク


星奈「なら、最後は私ね!」

夜空「肉か。時間の無駄だから、さっさと言え」ボソッ

星奈「夜空、あんたねぇ!」

小鷹「で、星奈は何にするんだ? もう決めてるのか?」

星奈「もちろん。私のはねえ……」

星奈「夜空が負けた場合は、今日一日、私のメイドになる事」

夜空「メイド……だと!」ピキッ

星奈「そうよ。まあ、メイド服がないから、そこは我慢してあげるけど」

星奈「でも、私の為に尽くしてもらうからね。私の事を御主人様と呼んで、『喉が乾いていらっしゃいませんか、御主人様』とか、『用があれば、なんなりとお申し付け下さい』とか、しっかりメイドをやってもらうわよ」

夜空「断る! 肉相手に何でそんな事を私が」

小鷹「ま、いいんじゃないのか」

夜空「な!?」

小鷹「だって、夜空の罰ゲームが、『一週間、御主人様と呼ぶ事』だろ? 星奈のは一日だけだし、妥当だと思うけどな」

星奈「そうよ、夜空。条件はほとんど対等よ」

夜空「だ、だが……」

小鷹「それに、最初に言ってたじゃないか。お互いの趣味嗜好を理解しようと努力するって。メイドと主人の関係を理解するのに丁度いいだろ」

夜空「ぐ……」


星奈「それじゃあ、決まりね。やったぁ」

夜空「まあ……いいだろう。……私が負けなければいいのだからな」フイッ

小鷹「で、俺が負けた場合は?」

星奈「別に、あんたには特に望む事なんか何もないんだけどね。男だし」

小鷹「だろうな」

星奈「だからまあ、罰ゲームなんて何でもいいんだけど、メイドの代わりに執事でもやってもらおうかしら」

小鷹「執事?」

星奈「そ。夜空と一緒で、私の身の回りの世話みたいな事するだけ。で、私の事は御主人様って呼ぶ事」

夜空「!?」

星奈「ま、取り巻きにいっつも囲まれてる私としては当たり前みたいな事なんだけど、他に思い付かないしそれでいいわよ」

小鷹「そうだな。別に俺も構わな」

夜空「駄目だ!!」


星奈「……は?」

星奈「何言ってんのよ、夜空。何がダメなのよ?」

夜空「あ、いや、あの……//」

星奈「やる事は、小鷹もあんたも対して変わんないのよ。それ、聞いてたでしょ? なのに、何であんたは良くて小鷹は良くないのよ?」

夜空「いや、その……///」フイッ

夜空「こ、小鷹は……わ、私の御主人様……だから……///」ボソッ

星奈「は? 声が小さくて聞こえないわよ」

夜空「だから、あの……! 御主人様……候補、なのだ///」

夜空「わ、私の知り合いの男など……こ、小鷹しかいないから……。だから……こ、小鷹は私の御主人様……候補で……///」

星奈「……?」

星奈「そりゃ私達は友達いないから、候補が小鷹だけってのはわかるけど……」

星奈「でも、それがどうかしたの? あんたが止める理由なんかないでしょうが」

夜空「だ、だからだな///」

夜空「その……///」フイッ


小鷹「?」


星奈「」ピーン

星奈「あんた、もしかして……」

星奈「小鷹が私の事を『御主人様』って呼ぶのが嫌なの? そうなの?」ニマニマ

夜空「う///」カアッ

星奈「小鷹は私の御主人様だからぁ、その小鷹が他の女の事を御主人様と呼ぶなんて嫌ぁ! とか、そんな事を思ってるの、ねえ、そうなの? 変態夜空ぁ?」ニマニマ

夜空「ち、違……///」

星奈「じゃあ何? 自分と同じ条件なのに、夜空が小鷹だけを止める理由って何? それ以外に私、思い付かないんだけどぉ」ニマニマ

夜空「べ、別にそういう訳じゃ……! ただ、私は……!///」

星奈「じゃあ、何の問題もないわよねぇ? 別に私が小鷹から御主人様って呼ばれても夜空には関係ない事でしょ? そうよね?」ニマニマ

夜空「うっ……!」

星奈「それとも、何? 変態の夜空ちゃんはあ、御主人様候補とか言いながら、本音では小鷹の事を御主人様として本気で慕っちゃってるの? 好きとか思っちゃってるの? ねえ、そうなの?」ニマニマ

夜空「ち、違う……! それは、その……!///」


小鷹「夜空……?」


夜空「///」カアッ

夜空「か、勝手にしろ!///」フイッ


星奈「だって、小鷹。じゃあ、勝手にしましょ。罰ゲームはこれで決まりね。何かすごく楽しみになってきちゃった」ルンルン

小鷹「あ、ああ……」チラッ

夜空「……///」フイッ


小鷹「…………」

夜空「そ、それでは……罰ゲームをするぞ」

星奈「で、変態夜空ぁ? 何で罰ゲームを決めるの?」ワクワク

夜空「ぐ……。これだ」ゴソゴソ


ルービックキューブ「ハロー」


小鷹「ルービックキューブ……」


夜空「それぞれ時間を計って、最も先に終わらせた者が勝者だ。これなら誰もが一度はやった事があるだろうし、最も公平に勝負が」

小鷹「いや……。俺、今まで一回もやった事ないし……」

星奈「ていうか、夜空……。あんた、単に自分の得意なもの、選んだだけじゃないの?」


夜空「なななな何を言う。私がそんな卑怯な真似など」ダラダラ


星奈「却下」

小鷹「だな」

小鷹「ここはオーソドックスにジャンケンでいいんじゃないのか?」

星奈「そうね。平等だし」

夜空「い、いや待て。安易に決めるのは良くない。しっかり話し合った上で決めた方が」

小鷹「それならいくぞ」

星奈「出さなかったら不戦敗ね」

夜空「え、ちょっ、待て!」アセアセ

小鷹「最初はグー……」

星奈「ジャンケン……」

夜空「なっ、待て待て、待っ」アセアセ



「ポンッ!」

星奈「」アハハッ、アハハハッ♪

星奈「やっぱり、あれよねえ。私って何をやらせても完璧って言うかあ」

星奈「ジャンケンも例外じゃないって言うかあ」←グー


小鷹「あーあ……負けたか」←チョキ

夜空「ま、負けた……。よりにもよって肉に……」←チョキ


星奈「それじゃあ、負け犬同士で罰ゲームが誰をするか決めなさい」

星奈「まあ、私的にはあ。小鷹が負けると変態夜空が壊れそうでとっても楽しみなんだけど」


小鷹「」ハァ

小鷹「じゃあ、ジャンケンするぞ。夜空」


夜空「ああ……! ま、まずい……!!」ウルウル

夜空(私が肉のメイドとかになるなんて、絶対に嫌だ……!)

夜空(だけど、勝ったら……! もし、私が小鷹に勝ってしまったら……!)

夜空(小鷹が肉の事を御主人様と呼ぶ事に……!)

夜空(それだけは……!!)

夜空(死んでも嫌だ!!)ウルウル

小鷹「夜空。ジャンケンするぞ。聞いてるのか?」

夜空「…………」


夜空「小鷹……」

小鷹「どうした?」


夜空「私は……グーを出す。だから……お前はパーを出せ」

小鷹「……心理戦ってやつか? こういうの、俺、苦手なん……だけ……ど……?」

夜空「お願いだから、パーを出してくれ……」ポロポロ

夜空「私は……お前を絶対に裏切らない。だから、私を信じてパーを出してくれ……」ポロポロ

夜空「お願いだから……」ポロポロ


小鷹「夜空……?」

星奈「夜空……あんた……」

思えば……。

妹を除けば、女の子の泣いている姿をこんなに間近で見たのは初めての事だった……。

悔しさを噛み締めるように、両の目から涙を溢す夜空……。

俺はホモだから、女なんかには一切興味を持てないのだが……。

この時の夜空には、不覚にも……。

少しだけ……ドキリとした。


そんな俺が、ここで夜空の想いを踏みにじるのは間違っている、なんて大層な事を思った訳でもなかったのだが……。

俺は自然とパーを出していた。

夜空はそれを見て……。少しだけ、ほんの少しだけ、笑顔を見せた後で……。

審判がいれば、完全に後出しだと宣告したであろうタイミングで……。

グーを、出した……。

夜空「ご、御主人様……。何か御用は……あ、ありますでしょうか……」ポロポロ

星奈「…………」


小鷹(考えてみれば……夜空って女に対してはドSなんだよな)

小鷹(それが今は……星奈に『御主人様』か……)

小鷹(あいつ、残念なプライドだけは高そうだしな……。屈辱なんだろうな……)


星奈「」ハァ

星奈(何なのよ、これ……)

星奈(私はただ単に、あの生意気なバカ夜空をからかうチャンスだと思ってしただけなのに……)

星奈(何であいつ、泣いてるのよ……。泣くほど嫌なのに、何で素直に従ってるのよ……)

星奈(そんなに嫌なら適当に誤魔化すなりはぐらかすなりすればいいじゃないの……。なのに……)


星奈(これじゃ、まるで私が夜空を本気で虐めてるみたいじゃないの……! 何でこんな事になったのよ……!)

星奈「夜空、喉が乾いたからジュース買ってきて。小鷹の分も。これ、お金」スッ

夜空「はい……。な、何がよろしいでしょうか……?」ポロポロ

星奈「何でもいいわよ! 早く行って!」

夜空「は……い……」クルッ、トボトボ


バタンッ


星奈「あのバカ……」ハァ

星奈「…………」

小鷹「…………」


小鷹「なあ、星奈……」

星奈「…………」

小鷹「この罰ゲーム、もうやめに」

星奈「」スクッ、スタスタ


小鷹「って、星奈?」

星奈「今日はもう帰る。用事を思い出した。あのバカにもそう言っといて」ガチャッ

星奈「あと、私、罰ゲームなんか二度とやらないから」スタスタ

バタンッ


小鷹「…………」

小鷹「……そうだよな」

何でか知らないが。

変態が罰ゲームをやると、ろくな結果にならないみたいだ。

マジギレして、ケンカして、意地を張り合って、マジ泣きして、謝る事も、誤魔化す事も出来なくて。

友達が一人もいない変態にとって、罰ゲームは早すぎたのかもな……。

階段は一歩一歩上らなきゃいけない。でも、限度や常識ってものを振り切っている俺たち変態には、自分が今いる場所が何段目なのかもわからない。

結果、無茶をして転ぶ。転べば痛い。だけど……。

転ばないと……学習もしない。


俺たちに友達が出来るまでにはまだまだ時間がかかりそうだが……。

それでも、前に進んでいる。そんな気がした。




隣人部。もとい、変人部。本日の活動記録。

ぼっちの変態に罰ゲームは早すぎた。

残念な変態が三人。友達は0人。

『変態に常識は通用しない』


夜空「」ガチャッ

小鷹「お帰り」


夜空「ああ、うん……」


夜空「」キョロキョロ

夜空「肉……ではなく……その……」シュン

夜空「御主人様……は? 言われた通り、ジュースを買ってきたのだが……」


小鷹「用事を思い出した、だってさ。……さっき、帰っていったぞ」

夜空「え?」

小鷹「罰ゲームの約束は、今日一日だけだから、これでおしまいだな」

夜空「そうか……」

夜空「うん……。わかった」

小鷹「ああ」

夜空「そうだ。これ……小鷹の分のジュースだ」スッ

小鷹「ああ、ありがとな」

夜空「いや、礼なら……あの肉に言え。あいつのお金で買ったものだからな」

小鷹「……そうだな」


夜空「あと、肉の分のジュースが余っているのだが……」

小鷹「もう帰った事だし、夜空が飲んでもいいんじゃないのか?」

小鷹「……多分、その為に買わせたものだろうしな。あいつなりのお詫びだろ」

夜空「ん? 今、何か言ったか、小鷹? よく聞こえなかったが」

小鷹「……聞こえてただろ、十分」ボソッ

夜空「では、捨てるのも、もったいないし私がもらおう」プシュッ

小鷹「……そうだな」

夜空「」ゴクッ、ゴクッ

小鷹「」ゴクッ、ゴクッ


夜空「ふぅ……」

小鷹「…………」


小鷹「……なあ、夜空。一つだけ、聞いていいか?」

夜空「ん? どうした?」


小鷹「さっき……ていうか、罰ゲームを決める時に星奈が言ってた事なんだけどさ……」

小鷹「自意識過剰って思われるかもしれないけど……」

小鷹「お前、俺の事が好きって事は……」

夜空「///」カアッ


小鷹「ないよな……? まさか、そんな、なあ……。は、ははは……」

夜空「あ、当たり前だ! 誤解するな!///」

小鷹「そうだよな……。俺、ホモだし。おまけにショタだし」

夜空「そ、そうだ! ホモなんか好きになる訳ないだろ!///」

小鷹「だよな……。話したのだって、つい最近だし」

夜空「最近なんかじゃ……」ボソッ

小鷹「ん? 今、何か言ったか?」

夜空「何も言ってない!」

夜空「さ、さっきも言っただろ。私が小鷹を気にかけているのは、わ、私の知り合いに男がいないからで///」

夜空「だから、最有力候補の小鷹を……ご、御主人様と今のところ決めているだけだ。それだけだ///」


小鷹「……そっか」

小鷹「悪かったな、誤解して」


夜空「謝るな……。何にもわかってないのに……」ボソッ


小鷹「だけど、それならいいんだ……」

小鷹「もしも、夜空が俺の事を好きだったら……」

小鷹「フルしかないからな……。俺、ホモだし」

夜空「っ!!」


小鷹「そうじゃなくて、俺の誤解で良かったぜ。本当に悪かったな。こんな、自意識過剰な変態で」

夜空「うっ……くっ……」グシュッ

俺はこの時、嘘をついていた。

どうして夜空が俺の事をこんなに気にかけているのか、その理由なんかまるでわからなかったけど……。

夜空が俺に『好き』という感情を向けていたのは、わかっていた……。

これまでのやり取りとか……。聞こえなかった振りをした言葉の内容とか……。今の『フルしかない』と言った時の反応……。

薄く涙を目にためて。感情を出さない様に必死で我慢して。


俺は多分、鈍感と言える部類だと思うけど。誰でも、他人の事ならよく見えるって言うか……。

全く女に興味がないから、逆にわかってしまうと言うか……。


俺は、夜空にかなり残酷な一言を言ったんだと思う。

夜空が告白とかする前に、それを潰した。

だけど、そうするしかなかった。俺は、女を愛せないショタホモだから。

期待をずっと持たせる方が残酷だ。それなら、先に終わらせた方がいい。

こんなヘタレな方法しか思い浮かばなかった俺には、そうするしかなかったんだ。

夜空は、いい奴だと思うから……。ずっと期待を持たせたくはなかった。男の娘が好きだという俺の気持ちは……。

いつまで経っても変わる事なんかないのだろうから。

夜空「なあ……小鷹」グスッ

夜空「」ゴシゴシ

夜空「私からも、一つだけ聞かせてくれ……」


小鷹「……何だ?」


夜空「どうして……」

夜空「どうして、お前はショタホモなんかになったんだ?」

夜空「どうして……」グシュッ


小鷹「…………」

小鷹「……俺には、昔、親友がいたんだ」

小鷹「名前を『ソラ』って言った」

夜空「!!」


小鷹「そいつは、本当にいい奴で……。絶対に忘れる事の出来ない想い出だ」

夜空「小鷹……。覚え……」

小鷹「ん?」

夜空「あ、いや! 何でもない! それで!?」


小鷹「え、ああ、うん……」

小鷹「俺と『ソラ』は本当に親友だったんだ」

小鷹「色んな所へ遊び歩いて、色んな事をして……」

小鷹「一緒にいると楽しいとか、そういうのを通り越して、魂の半身っていうか……そう思えるようなやつだった」

夜空「そうだな、小鷹!」ウルウル


小鷹「ただ、その後に俺が転校する事になっちまってさ……」

夜空「あ……」


小鷹「最後のお別れも言えなかったけど……。でも、それでも俺はあいつの事を親友だとずっと思ってた」

夜空「そ、そうか!」ホッ


小鷹「それから何年も過ぎても、『ソラ』はずっと変わらず俺の親友だった。いや、無理矢理そう思おうとしていたんだな、俺は」

夜空「……え……?」

小鷹「中学に上がる時ぐらいの事だ」

小鷹「クラスの男とかも思春期に入って、まあ、嫌でも耳に入って来るんだよ」

小鷹「クラスの女子の誰それが気になるとか、誰それが好きだとか、そういう話がな」

小鷹「ただ、俺にはそういうのが一切なかったんだ」

小鷹「女子の誰かが気になるとか、その子の顔を思い浮かべるとドキドキするとか、その子と付き合ってみたいとかそういうのがな」

小鷹「俺がそんな風に感じたのは、クラスの女子じゃなくて『ソラ』だったんだ」


夜空「なっ!///」カアッ

夜空「い、いきなり何を言い出すのだ、小鷹は。す、好きだとか、そんな……///」ドキドキ


小鷹「ああ、まあ、そう思うのが普通だろうな。俺も最初は勘違いだと思ってたんだ。これは、友情と愛情をごっちゃにしてるからこうなったんだってな」

小鷹「でも、違った。やっぱり自分を騙す事も、自分に嘘をつく事も出来なかったんだよな」

小鷹「俺は、心の底から『ソラ』を好きだったんだ。俺の初恋は『ソラ』だったんだ」


夜空「こ、小鷹!///」キュンッ

小鷹「それで、俺は重要な事に気が付いたんだ」

夜空「そ、それは……その……まさか……///」ドキドキ


小鷹「『ソラ』は男だ。つまり、俺はショタでホモな変態だったんだと」

夜空「」


小鷹「俺だって、最初はショックだったさ。『ソラ』が女の子だったらどれだけいいかと思った。だけど、この気持ちを誤魔化すって事は、『ソラ』を裏切るのと同じ行為だ。だから、俺は!」

小鷹「自分がショタホモである事を受け入れたんだ! 自分が変態だって事をな!」

夜空「」

小鷹「それからはもう、わずかに残ってた女に対する興味とか完全になくなったしな。女の裸とか見ても何も興奮しないし」

夜空「あ、あ、あ、あの、小鷹、その……」

小鷹「ん? どうした?」

夜空「いや、その……お、お前が『ソラ』を好きなのはいいんだ。むしろ、歓迎と言うか、う、嬉しいと言うか……」

夜空「だ、だがな、それはその……思い込みというやつでな……」

小鷹「おい、夜空。流石にそれは俺も怒るぞ。俺の『ソラ』に対する恋心が思い込みな訳ないだろ」

夜空「ち、違う……。そういう意味ではなく……こ、小鷹は勘違いをしているんだと……」

小鷹「だから、俺の『ソラ』に対する恋心は本物だ。友情と勘違いしているとか、そういう事はない」

夜空「いや、だから、その……。あああああ、もう! 私は何と言えばいいのだ……!」ウルウル

小鷹「まあ、確かに俺の初恋は実らなかったけどな……。『ソラ』も今、何処で何をやってるのか、まるでわからないし」

夜空「いや、あの、小鷹……」

小鷹「ひょっとしたら、俺は『ソラ』の面影を追い求めているだけなのかもな……。俺が男の娘しか愛せないのもそれが原因なのかも……」

夜空「小鷹。お前はその……凄く正しいんだ! 正しいんだが! ……凄く残念な間違え方をしている」

小鷹「はあ?」

夜空「気が付け! というか、どうして気が付かないんだ、お前は!?」

小鷹「いや、意味がわかんねーんだけど……」

夜空「お前が好きなのは、男じゃない! 女なんだぞ!」

小鷹「いや、俺、男の娘しか愛せないってさっきから言ってるだろ? 何を聞いてたんだよ」

夜空「違う! そうではない! お前が好きなのは実は男なんかじゃなくて、それは全部お前の誤解だ! 早とちりだ! 何でそれがわからないのだ!」

小鷹「おい、夜空。いい加減にしろよ。俺と『ソラ』の大切な想い出を、そんな風に言うな」ギロッ

夜空「あ、いや、あの……。私はそういう意味で言った訳では……」

小鷹「悪いけど、今日は俺もう帰るから」スクッ

夜空「!!」


小鷹「……また明日な」ガチャッ

バタンッ……




夜空「……何なのだ、もう」

夜空「私が……悪いのか……? あの時、女だと伝えなかったから、それで……?」ウルウル

夜空「小鷹がホモになった理由が……。私がフラれる理由が……。全部、私のせいだと言うのか……?」ウルウル

夜空「何でこんな……裏目裏目に……」グシュッ

『小鷹家』


小鷹「ただいま、小鳩」

小鳩「クックック……。我が半身よ、今日は早かったではないか」

小鷹「ああ、ちょっとな。部活が途中終わりになったって言うか……それで帰ってきた」

小鳩「ならば、今日の供物はさぞ豪勢なものになるであろうな。クックック……」

小鷹「いつも通りだ」

小鳩「何でや……あんちゃん、はよう帰ってきたのに……」シュン

小鷹「昨日の残り物が冷蔵庫の中に残ったままだからな。それに、ちょっとあって、疲れててさ」

小鳩「…………」シュン


小鷹「文句言うなら、今日から一人で寝るか、小鳩?」

小鳩「やあ! あんちゃんと一緒に寝る!」

小鷹「ったく。お前もそろそろ本当に一人で寝ろよ。いい歳なんだから」

小鳩「だって、あんちゃんの事が好きなんだもん……」シュン

小鷹「はいはい。飯作るから、テレビでも見ながらちょっと待ってろよ」

小鳩「うん! じゃなくて……クックック。宴の時間までの間、しばし楽しんでやろうぞ」

小鷹「そうしてくれ」

こいつの名前は、羽瀬川小鳩。

俗に言う中二病というやつで、普段は某アニメに出てくるキャラクターになりきっている。

そして、寝る時も風呂も俺と一緒じゃなきゃ泣き出すという重度のブラコンだ。

変態ってのは、遺伝子レベルで受け継がれるんだろうか? 俺の親父も、ちょくちょく覗きや下着泥棒で捕まってたしな。あれは本物の変態だ。


そして、小鳩も……。

確かに重度の変態かもな。

アニメのキャラクターの影響もあっての事だろうが……。


小鳩は、俺の血が大好物だ。

小鳩「あんちゃん、はよう生き血///」スッ

小鷹「はいよ。つーか、カッター自分で持ち出すなって言っただろう?」

小鳩「ごめん……なさい」シュン

小鷹「次から取り上げて隠すからな」

小鳩「うん……」


小鷹「たく」スパッ

小鷹「っ……。相変わらず、切る瞬間ってのは慣れないな……」

小鳩「もう飲んでいい?」

小鷹「五分だけだぞ。それ以上は禁止だからな」

小鳩「うん!」パアッ

小鳩「///」ペロペロ、ゴクッ

小鷹「そんなに、うまいのか?」

小鳩「うん!///」ニコッ


小鷹「ま、いいけど……。俺はこっちで勝手に飯食ってるからな。五分経ったら言うから、すぐに離せよ。前みたいに粘るなよ」

小鳩「わ、わかっちょる……。もうせえへん……」

小鷹「ん」パクッ、モグモグ

小鳩「はあ///」ペロペロ、ゴクッ





変態として生まれた者は、ずっと変態なんだろうか?

俺の血を美味そうに飲む小鳩を見て、毎回思う。

いつかは小鳩も、血を飲む事からもブラコンからも卒業する時が来るのだろうか?

例えば、夜空の様な一途な感じのする女の子や、星奈の様な明るくて完璧な女の子に恋をする日が俺にもやって来るのだろうか?

俺はともかく、小鳩はこのままじゃいけないってのは、何となくわかる。

いつかは変態から卒業させないと、まずい事になりそうだと。

まあ、三十年も四十年も痴漢や覗きから卒業出来ないバカ親父を見ると、そんなのは不可能な様にも思えてしまうのだが……。



小鷹「お前が好きなのは、男ではなく、女か……」

小鳩「あんちゃん……?」

小鷹「何でもない」

小鳩「?」



変態は友達が少ないから……。

誰かに相談も出来ない。

それはちょっと辛い。

変態ってのは、切ない生き物だ。

今日は、そう思わざるを得ない一日だった。

『変態の辞書にデートという文字はない』



ソラ「でや!」バキッ!!

子供A「いってー! 何するんだ!」

ソラ「弱い者イジメはするな!」


タカ「!!」

タカ「」ムクッ

タカ「うりゃ!」バキッ!!

ソラ「痛っ! 何で殴るんだ!」

タカ「俺は弱い者じゃない!」

ソラ「……!」


ソラ「」ニマ

ソラ「やったな! このっ!」バキッ!!

タカ「こんにゃろ!」ドカッ!!


子供A「無視するなよ、このやろう!」バキッ!!

子供B「うりゃ!」バキッ!!

タカ「」ハァハァ

ソラ「」ハァハァ


タカ「お前……名前は?」

ソラ「ソラ。そう呼んでくれ」

タカ「そうか……。それなら、俺はタカだ。そう呼んでくれ」

ソラ「ああ」ニコッ

タカ「友達を100人作らなくてもいいから、100人分大切に出来る友達を作りなさい……か」

ソラ「ああ」

タカ「それなら、俺はソラの100人分大切に出来る友達になる。絶対にだ!」

ソラ「恥ずかしい事を言うやつだな……お前は」

タカ「だって、タカは俺の親友だから!」

ソラ「そうか……。それなら俺もタカの100人分大切に出来る友達になる!」

タカ「うん!」ニコリ

タカ「ほら、早くしろよ、ソラー! 置いてくぞ!」タッタッタ

ソラ「待ってくれよ、タカー!」タッタッタ

タカ「はははっ!」

ソラ「あはははっ!」

タカ「ほら、ソラ。早くしろよ。でないともっと苦しくなるぞ」グリグリ

ソラ「や、やめろよ、タカ! 縛った上で、足を顔に押し付けるだなんて!」

タカ「ジャンケンに負けたのはソラの方だろ。母さんに教えてもらったSM遊びをするって言ったのは、ソラじゃないか」グリグリ

ソラ「だ、だけど! まさか、こんな遊びだなんて思ってなかったから!」

タカ「ほら、早くしろよ。顔だけでなく、足や手も踏まれたいのか。おらおらおら」グリグリ

ソラ「わ、わかった! 言うから! 踏むのをやめてくれ、タカ!」

タカ「黙れ、変態。下らない事を言ってないで、さっさと俺の足を舐めろ」グリグリ

ソラ「うああっ!/// すみません、タカ様ぁ!」ゾクゾク

ジリリリリッ、ジリリリリッ


小鷹「ん……」

小鷹「夢……か……」

小鳩「」スヤスヤ


小鷹「久しぶりに見たな……。ソラとの夢……」

小鷹「昨日、夜空にソラとの事を話したからかな……」

小鷹(思えば、あの頃は亡くなった母さんの影響もあって、ソラとSMごっこをよくやってたっけ……)

小鷹(うちの母さんがドSだったとは言え、子供にそんな遊びを教えるなよな……)

小鷹(子供だったから、SMなんてものが何かわからなくて、俺たちも特に疑問も持たずにやってたからなあ)

小鷹(それで、ソラの奴、ジャンケンだけはからっきし弱くて……)

小鷹(ほとんど、俺がS役だったよな)

小鷹(俺も、好きな子をイジメたいっていう心理が働いたんだろうな。なかなかの鬼畜っぷりで)

小鷹(ソラが今どうしてるかは知らないけど、あいつ、ひょっとしたら今頃ドMになってるかもな)クスクス

小鷹(だとしたら、同じ変態同士、いつかは出会うかもしれない、あいつと……)


小鳩「」スヤスヤ


小鷹(そろそろ起きて、仕度するか)スクッ

小鷹(今日こそ友達が出来るといいけど)

『教室』


夜空「」ドヨーン……



小鷹(何か、夜空のやつ、今日ずっと死んでるな……)

小鷹(机に突っ伏して、ゾンビみたいに生きた屍になってやがる……)

小鷹(体調不良か?)

小鷹(それとも……)


『もしも、夜空が俺の事を好きだったら……』

『フルしないからな。……俺、ホモだし』


小鷹(…………)

小鷹(……仕方ないだろ。……そんなの)

小鷹(結果はどうせ……決まってるんだし……)

小鷹(悪い……夜空……。ごめん……)

『授業後 談話室』


小鷹「うーっす」ガチャッ



隣人部。もとい、変人部。創設から四日目の活動記録。



星奈「あっ、ダメ! 御主人様、ダメよ!///」ハァハァ

星奈「そんなんされたら、私! 私、もう!///」クチュクチュ

星奈「イッちゃう! イッちゃうのぉ!///」ビクンッ!!



ロリレズが教会でオナニーして、イッた。

小鷹(何してんだ、こいつ……)

小鷹(つーか、女の生オナニーとか気持ちわりい。吐き気が……)


星奈「///」ハァハァ、ハァハァ

星奈「ああ、やっぱりナツミ御主人様……。すごい……///」ハァハァ

星奈「本当はもう少し余韻に浸りたいんだけど……///」ハァハァ

星奈「こんなところ、誰かに見つかったら自殺もんだし、早く片付けな……いと……」


小鷹「」ウエッ


星奈「こ、小鷹ぁぁぁぁ!!///」ビクッ

星奈「あ、ああああんた!///」

星奈「いつからここに! え、ななな何で!? どうしているの!?///」


小鷹「デカイ声を出すな……。余計に気持ち悪くなるだろ……」ゼェゼェ


星奈「あああんた、ひょっとしてさっきの見た!?///」ダダダッ

星奈「ねぇ、見たの!? どっち!?///」グイッ


小鷹「やめろ、愛液臭い手で掴むな……。うえ、気持ちわりい……」ゼェゼェ


星奈「あ、愛液って! み、見たの!? 見ちゃったの、小鷹!?///」


小鷹「お前、部室でオナニーとか、頭おかしい……」ゼェゼェ


星奈「い!」

星奈「いやあぁぁぁぁ!!!///」

『私は恥ずかしい変態女です』

星奈「///」グシュンッ



小鷹「で、何でこんな事をしてたんだ?」ジロッ


星奈「だ、だって///」グスッ

星奈「仕方なかったのよ! もう!///」ポロポロ

ロリレズ女から聞いたところによると。

原因は全部、夜空にあるらしい。


何でも、今日の授業が終わってすぐ、星奈は夜空に会いに行ったとか。

昨日の罰ゲームの一件が気になって仕方がなかったので、やり過ぎた事を謝りに行ったのだが……。



星奈「き、昨日はごめん……。わ、私も少しやり過ぎたから……。だから、ごめん……」ペコリ



しかし、夜空の反応はと言えば……。



夜空「あ……?」ドンヨリ

夜空「何だ、肉か……。お前の事など、今はどうでもいいのだ……。失せろ」ドヨーン

星奈「ひどくない!? この私がわざわざ謝りにまで行ってやったのよ!?」グスッ

星奈「なのに、あのバカ夜空! 死んだ魚の目みたいになってて、私の話なんか全く聞こうとしないし!」グシュッ

星奈「私、もうあったま来て、バカ夜空ー!って叫んでここまで走ってきたのよ! ひどいでしょ、夜空のバカのやつ!!」グスンッ


小鷹(今の夜空じゃなあ……)

小鷹(ごく普通の反応の様な気が……)

小鷹「それで?」

星奈「それで、私! ここに着いてからもずっとムシャクシャしてて!」グスッ

星奈「だから、癒されようと思って、持ってきてたノーパソ使ってエロゲを始めたの! ロリレズゲームなんだけど、その中に出てくるナツミっていうお嬢様がスッゴく可愛いから!」グスッ

星奈「で、そのゲームをプレイしてたら! その……。な、何か……ムラムラっとしてきちゃって……!///」

星奈「こ、小鷹、来るの遅かったし……。あ、あんた、いつも遅いから一回ぐらいなら……って……///」



夜空はほとんど無関係だった。



小鷹「」ハァ

小鷹「つーか、お前。部室でエロゲとかどうなんだよ?」

星奈「い、いいじゃないの! みんな、変態なんだし!///」

星奈「それに、このゲームは感動のラブストーリーなのよ! 過激な表現が含まれてるから18禁になってるだけで、内容はそこらの文学作品なんか目じゃないぐらい素晴らしい内容なんだからね!」

小鷹「ああ、そう……」ハァ

星奈「そ、それで、あの、小鷹……。この事は……その……秘密に……」

小鷹「わかってる。夜空には言わねーよ」

星奈「夜空だけじゃなくて! 誰にも言わないでよ! お願いよ!」ウルウル

小鷹「そんな念押ししなくても大丈夫だ。それに……」

小鷹「話す相手、一人もいねーし……」


星奈「そ、そうよね……。私たち、友達いないし……」シュン

小鷹「……あ、そうだ」

星奈「?」

小鷹「その代わりって訳じゃないけど、次の日曜日、プールに付き合ってくれないか?」

星奈「それは別にいいけど……。でも、何で?」

小鷹「町内会のイベントだとかで、竜宮ランドに遊びに行くらしいんだ。だから」

星奈「あんたが町内会のイベント? よく誘われたわね」

小鷹「いや、誘われてはないし、俺の住んでるところの町内会じゃないんだけど。ただ、ネットでそれを見つけただけで」

星奈「は? 話がよくわかんないんだけど。何で別の町内会のイベントに小鷹が行こうとしてる訳?」

小鷹「町内会は町内会でも、子供限定だからな。多分、水着姿の可愛い男の子がいるんじゃないかと思ってさ。それを見て、ハァハァしたいんだ//」

星奈「……小鷹。あんた、その内、マジで捕まるわよ……」ヒクヒク

星奈「でも、子供限定って事は幼女もいるのよね……」

星奈「それに、取り引きしといた方が、私も安心出来るし……」

星奈「行くわ」キリッ


小鷹「流石、星奈。俺一人だと、こんな外見してるからマジで通報されそうだし、困ってたんだよな」

小鷹「持つべきものは、やっぱり趣味の近い変態だよなあ。助かる」


星奈「別にいいわよ。私も幼女を見て癒されたかったとこだし」


星奈「にしても、あのバカ夜空。来るの、遅いわね。あいつ、今日は来ないつもりなのかしら」

小鷹「……かもな」

予想通り、夜空はこの日、部室に姿を現さなかった。

俺たちはと言えば、特にする事を決めていた訳でもないので。

星奈は、ノーパソでエロゲの続きを。俺は、一応、星奈の変態性への理解を深める為にもそれを見ていたのだが……。


やはり、エロシーンは気持ち悪かった。女しか登場しないだけに尚更だ。


例えば、普通のやつがホモセックスを見たら気持ち悪いのと同じで、俺にとって女のセックスは見てるだけで気持ち悪い。


それを思うと、やっぱり変態ってのは治らない気がするんだよなあ……。

ふと、小鳩の事を思い出して……。

少し凹んだ。

『翌日 談話室』


小鷹「うーっす」ガチャッ



夜空「」ドンヨリ……

夜空「小鷹か……」ドンヨリ


小鷹「……今日は来たんだな、夜空」

夜空「ああ……。肉が今日は用事があって来ないと、わざわざ言いに来たからな……」ドンヨリ

夜空「多少、空気がマシだろうと思って、今日は来た……」ドンヨリ


小鷹「……そうか」

夜空「」グデーン


小鷹「…………」


夜空「」ハァ


小鷹「…………」


夜空「」グデーン……


小鷹(ずっと机に突っ伏したままか……)

小鷹(……俺、何しにこの部活に来てるんだろう)


夜空「」グデーン

夜空「……なあ、小鷹」ボソッ

小鷹「?」

夜空「質問してもいいか……?」

小鷹「……何をだ?」

夜空「お前、女には本当に一切興味がないのか……?」

小鷹「……ないな」

夜空「そうか……」ハァ


小鷹「…………」

夜空「それなら、小鷹……」ボソッ

小鷹「?」

夜空「お前の好みって……どんな男だ……?」

小鷹「好みか……」

夜空「ショタホモだってのは……もう知ってるから、それはいい……。ただ……」

小鷹「……?」

夜空「子供じゃないと……駄目なのか……?」ジッ


小鷹「…………」

小鷹「……そうでもないと、思うけどな」

夜空「!」


小鷹「俺がショタホモになった理由は昨日話しただろ?」

小鷹「ソラが多分その理由だからな」

夜空「あ、ああ」ゴクッ


小鷹「あいつ、男らしくてカッコいい奴だったんだけど」

小鷹「顔とか、スゲー可愛くてさ」

夜空「な///」カアッ

小鷹「他にも、色々と女っぽい可愛らしいところとかあって、スゲーときめいた時とか結構あったんだよな」

夜空「くうっ///」ボンッ

小鷹「今だから、笑い話で言えるんだけど、俺とあいつ、SMごっことかやっててさ」

夜空「あ、あ///」オロオロ

小鷹「縄跳びで叩いたりとかして、泣きそうになってる時のソラとか、本当にもう死んでもいいぐらいの可愛い泣き顔をしてて」

夜空「や、やめろ! 小鷹、その話はやめろぉ!///」ウルウル


小鷹「……へ?」

夜空「笑い話で済むか!///」ウルウル

夜空「貴様の、貴様のせいだろ!///」ウルウル

夜空「責任をお前は取るべきだろう! というより、何でそんな余分な事だけ覚えてるんだ、お前は!!///」ウルウル


小鷹「お、おい、どうしたんだよ、夜空? 普段のお前なら、むしろSM話は喜ぶところじゃないのか?」


夜空「ぅぅ!///」カアッ

夜空「死ね!///」ゲシッ!!


小鷹「痛っ!!!」

小鷹「お、お前……! 今、本気で蹴っただろ!?」

夜空「黙れ!///」


小鷹「何で俺が蹴られなきゃなんねーんだよ! そりゃまあ、いたいけな子供にSMとかしてたのは良くないとは思うけども」

夜空「もういい! お前はもう、それ以上口を開くな!///」

夜空「人に本気で殺意を覚えたのは、お前が初めてだぞ、小鷹!///」

小鷹「な……! 何だよ、もう……。くそっ……」


夜空「うるさい! それで、そのソラの話がどうショタコンの話へと繋がるんだ!? 話せ!!」ゴゴゴゴゴ

小鷹「お、おう……」ビクッ

小鷹「まあ、要するにだ」

小鷹「ソラは確かにカッコ良くて、イケてる男の子だったけども」

小鷹「女っぽくて可愛いところも多くて、俺はそれが好きになったんだと思うから」

小鷹「だから、中性的って言うか、女よりも可愛い男の子が俺は好きな訳で」

小鷹「そういう子だったら、別に子供じゃなくてもいいと思うって事だよ」

小鷹「俺がよく言う、男の娘だな。そういう男だったら年上とか同い年とかでも大丈夫な気はする」


夜空「そ、そうか……。なるほど……」


小鷹「……何か嬉しそうだな?」

夜空「そ、そんな事はないぞ! うん//」

夜空「じゃあ、その……」

夜空「男の娘、というのは、具体的にどんな感じの男を言うのだ? 私は、あまりそっち方面の事については詳しくないからな」

夜空「わかりやすく教えてくれ、小鷹」


小鷹「わかりやすくって言われてもな……。男の娘は、その名の通りの存在だし……」


夜空「その名の通りと言うと、女っぽい男、と考えて間違いはないのか?」

小鷹「うーん……どうだろな。何かニュアンス的に違うよな」


小鷹「どっちかって言うと、そこらの女よりも可愛いらしい男、じゃないか」

夜空「……?」

小鷹「俺もネットで適当に見ただけの事だけど」

小鷹「心理学用語で、確かアニマだったかな?」

小鷹「男が思う理想の女性像ってやつなんだけどな。女と男で考え方って違うだろ? 女が思う理想の女性像と、男が思う理想の女性像ってのは違うんだ」

夜空「それはあれか? 時折、ネットなどで見かける、『女が言う可愛い子は信用出来ない』というやつか?」

小鷹「それとはちょっと違う気がするが……」


小鷹「まあ、つまりだな。男の方が、理想の女になれるって事だ」

小鷹「仕草や性格や外見も女より可愛らしい。それが男の娘ってやつだと俺は思うけどな」

夜空「……どうにもわかりにくいな」

小鷹「そうか?」

夜空「そんなに女らしさを追い求めるなら、もう女で良くないか? と、私は思うのだが。男である必要性がない」

小鷹「いや、女と男の娘は全く別物って言うか……。説明しにくいな、これ」

夜空「一つ聞くが、小鷹。その男の娘とやらは、ニューハーフとどう違うのだ? 男の娘は女装をしないのか?」

小鷹「いや、そんな事はないな……。むしろ、女装させたい」

夜空「なら、もう女でいいだろう! 何で男にこだわる! 穴に突っ込むのは同じだろうが!」

小鷹「男の娘と女を一緒にするな! つーか、穴って何だ、穴って!」

夜空「全く。意味がわからない奴だな、小鷹は」

小鷹「お前は、話が通用しない奴だよな」

夜空「」フンッ


夜空「だが、まあ、これなら十分更正が出来そうだな……。ムキムキのマッチョが好みだと言われたら、どうしようもなかっただろうが……」ボソッ


小鷹「何か言ったか、夜空?」

夜空「いや、お前には全く関係のない事だ」キッパリ

小鷹「ああ、そうかよ」


夜空「それより、小鷹。もう一つ聞いておきたい」

小鷹「今度は何だよ?」

夜空「女の体についてはどう思う? 拒否反応とかあるのか?」

小鷹「いや、特にないな。興奮しないってだけで、見るのは平気だ。俺には妹がいるしな」

夜空「……そ、そうか」ウンウン

小鷹「あー、ただ、オナニーとかセックスを見るのは無理だぞ。あれはきつい。特に巨乳のは」

夜空「つまり、小鷹は貧乳好きという訳だな」パアッ

小鷹「いや、無乳好きだ」キッパリ

夜空「いや、しかし……。巨乳よりは貧乳の方が良いという事だろう?」

小鷹「巨乳よりはな」

夜空「よしっ。腹は立つが、十分いけるな」ボソッ

小鷹「?」

夜空(これなら、小鷹をノーマルにするのも夢ではないな)

夜空(可愛い男を小鷹に近付けないようにしつつ、少しずつ女の良さを教えていけば出来そうな気がする……)

夜空(小鷹は、元々、思い込みでショタホモになった様なものだし、上手くいく可能性は十分あるだろう)

夜空(問題は、どうやって女の良さを小鷹に教えていくかだが……)

夜空(一人で考えても裏目に出そうで怖いな。これまでがこれまでなだけに……)

夜空(少し、ネットで調べてみるか……)

夜空「悪いが小鷹。私は急用を思い出した。今日は解散にしてもいいか?」

小鷹「え? ああ、それは別にいいけど……」

夜空「そうか。なら、先に失礼させてもらうぞ。急ぎの用だからな」

小鷹「あ、ああ……」

夜空「」スタスタ


小鷹(何だ、急に……?)


夜空「」ガチャッ

夜空「小鷹」


小鷹「ん?」


夜空「また月曜日にな」ニコッ


小鷹「あ、うん……。また月曜日に」

夜空「ああ」コクッ


バタンッ


小鷹「よくわからないけど……。元気になったのか、あいつ……?」

小鷹「でも、まあ……」


逆光のせい、それだけなのかもしれないが。

夜空の笑顔が、俺には眩しいほど輝いて見えたから。

深く考えずに、それで、良しとした。

『日曜日 竜宮ランド』



星奈「お待たせー、小鷹!」バイン、バイン

小鷹「おー。やっと来たか。何かここから見る限りだと、まだ小学生の子達は来てないみたいだからな。少し待ちだな」

星奈「あ、そうなの? ふーん、残念ね」


小鷹「ま、しばらく泳いで暇潰ししてりゃ、その内来るだろ」

星奈「あ、まあ、そうかもしれないけど……」

小鷹「とりあえず、あっちにあるウォータースライダー行ってみるか? ああいうの、久し振りだからな」

星奈「あ、あの、それならちょっといい、小鷹?」

小鷹「?」

小鷹「何だ、星奈って泳げなかったのか?」

星奈「し、仕方ないでしょ! これまで水泳の授業なんか一回もなかったんだから!」

小鷹「で、泳ぎを教えろってのか? でも泳げるまでには時間がかかるからな」

星奈「私ならすぐに泳げる様になるわよ! それに、ある程度教えてくれたら、一人で練習するから平気よ」

小鷹「一人でって、お前、幼女はどうするんだ? お前もそれが目当てで来たようなもんだろ?」

星奈「いいのよ。別に。そりゃ可愛い幼女は惜しいけど、機会は他にもあるんだし」

小鷹「ふうん。それなら、教えるぐらい構わないけど、でも、何でそんなに泳ぎたいんだ? やっぱり学校の奴らから泳げないって言われるのが悔しいからか?」

星奈「それもあるわ。だけど、それ以上に……」

小鷹「それ以上に?」

星奈「わからないの、小鷹? ゲームの定番じゃないの。溺れてる女の子を助けて、好感度を上げるのは。もしもそんな場面に遭遇したら困るでしょ」

小鷹(ゲームと現実は違うけどな……。大丈夫か、こいつ?)

星奈「それじゃ、早速教えて」

小鷹「……わかったよ」

星奈「こんな感じ、小鷹?」バシャバシャ

小鷹「ああ、上出来だ。ていうか、お前、覚えるの早いな」

星奈「あったり前じゃない。私を誰だと思ってるのよ」ニコッ

小鷹「そっか」ニッ



子供A「わーい、プールだ、プールだー!」タッタッタ

子供B「お前、待てよー! 俺が先だぞー」タッタッタ



小鷹「あ……」

星奈「来たみたいね、あんたが言ってた子供たち」

小鷹「ああ」

星奈「折角、これからクロールの息継ぎに入るところだったのに、ちょっと残念。でも、仕方ないわね」

星奈「見てきたら、小鷹。でも、あんまり近くに行くんじゃないわよ。あんた、そんなナリだし、絶対に通報されるから」

小鷹「でも、まだ……泳げる様にはなってないだろ、お前」

星奈「やり方は教えてもらったし、後は一人で大丈夫よ。私はこっちで練習してるから、帰る頃に迎えに来なさいよ」

小鷹「…………」

『二時間後。プール内 出店』


小鷹「ほらよ、焼きそば」トンッ

星奈「ありがと」


小鷹「」パクッ、モグモグ

星奈「」パクッ、モグモグ


星奈「にしてもさあ、小鷹」

小鷹「ん?」

星奈「あんたまで練習に付き合う事なんかなかったのに。目的と行動がバラバラになってるじゃないの。何の為に、あんた、プールに来たのよ」

小鷹「ああ、まあな……。でも、気になったんだから仕方ないだろ」

小鷹「あのままだと、何て言うか……。楽しくハァハァ出来ないって言うか」

小鷹「俺が楽しめないんだよ、だから」

星奈「変な奴ね、あんた」

小鷹「悪かったな」

小鷹「ああ、そう言えば、夜空から前にちょっと聞いたんだけど、星奈の親父さんって学校の理事長なんだよな?」

星奈「ええ、そうよ。ま、それで得した事なんて何もなかったような気がするけど。で、それが何?」

小鷹「いや、その内挨拶に行かなきゃなって思ってたから」

星奈「挨拶? ホモのあんたがどうして私のパパに挨拶しに来るの?」

小鷹「ああ、俺の親父とお前の親父さんとが昔からの友達なんだよ。それで、この学校に編入して来る時に、色々と便宜をはかってもらったみたいでな」

星奈「ああ、それで。挨拶って言うから、てっきり結婚の挨拶とかそういう事を考えちゃったじゃないの。紛らわしい言い方しないでよ」

小鷹「紛らわしいも何も、そんな事、俺とお前で有り得ないだろ。ホモとレズが何で結婚しなきゃなんねーんだ」

星奈「だから、勘違いだって言ってるでしょ。それより、これ食べ終わったら今度こそ幼女のところへ行くわよ」

小鷹「練習はもういいのか?」

星奈「うん。小鷹のおかげでだいぶ泳げる様になったしね。そこは感謝しといてあげるわ」

小鷹「なら、良かったけどな」

『食事後』


星奈「それじゃ、行きましょ。小鷹」

小鷹「ああ、悪い。その前に俺、ちょっとトイレ行ってくる」タッタッタ



『戻った後』


星奈「ちょっと、さっきからあんたら気持ち悪いって言ってるでしょ!」

モブ男A「おいおい、何だよ、その言い方はよ」

モブ男B「俺らとちょっと遊ぼうって言ってるだけじゃねーかよ」

モブ男C「つーか、お前、ちょっと口悪すぎだろ、ああ?」


小鷹(絡まれてやがるのかよ、ったく)

小鷹「おい、星奈」

星奈「小鷹!」


モブ男A「あ? 何だよ、お前は?」

小鷹「その女の連れだよ」

モブ男A「ちっ。男連れかよ」


モブ男B「馬鹿馬鹿しい。行こうぜ」

モブ男C「ああ」クルッ


星奈「ちょっとあんたら待ちなさいよ!」


モブ男A「あ?」


星奈「この私に迷惑かけたのよ。そこに這いつくばって土下座しなさいよ! それか、今すぐ死んでくれる? あんたらみたいな気持ち悪い男とか、生きてる価値なんかないでしょ!」

小鷹(このバカ……)

モブ男A「何だと、このっ!」ブンッ

小鷹「」バシッ

小鷹「暴力は良くないだろ」ギロッ


モブ男A「てめ!」

小鷹「」サッ、ガシッ

モブ男A「い、いててて!! 離せ! 腕をきめんな!」


モブ男B「このっ! やる気かよ、お前!」

モブ男C「そういうつもりなら、やってやるぞ!」


小鷹「」ハッ

小鷹「そりゃ嬉しいなあ。俺はこう見えてホモだからよ。お前らがやる気なら、こっちも願ったり叶ったりだ。全員まとめて後ろの穴に突っ込んでやろうじゃねーか」


モブ男全員「!!」

小鷹「特にお前、可愛い顔してるし、いいケツしてるよなあ」サワサワ

モブ男A「うわあああっ!」

小鷹「おいおい、感じやすいのか? そんな声聞いたら、興奮して来るじゃねーかよ。それとも誘ってんのかよ?」サワサワ

モブ男A「やめろ、バカっ! 気持ちわりい!!」ゾワゾワ

小鷹「無理矢理ってのも、結構好きだぜ、俺。昔はよくこうやってレイプ紛いの事をしてたからよお」モミモミ

モブ男A「うぎゃあああ!!」


モブ男B「に、逃げるぞ!」ダダダッ

モブ男C「こいつ、ガチでやべえ!」ダダダッ


モブ男A「お、おい! 助けてくれっ! お前ら!」


小鷹「おーおー、逃げられちまったか。まあ、いいや。じゃあ、俺とお前は向こうのトイレでゆっくり楽しもうな」ガシッ、ズルズル

モブ男A「や、やめろっ! マジでやめてくれ!」ブルブル

小鷹「あ? ああ、安心しろよ。逃げた二人の分までたっぷり可愛がってやるからよお。ふへへへへ」

モブ男A「たた助けてくれっ! 助けてくれぇぇっ!」ブルブル


星奈「うわあ……」

『五分後 トイレ前』


小鷹「ったく、手間かけさせやがって」ブツブツ

小鷹「星奈の奴は……」キョロキョロ


星奈「……ここよ」

小鷹「ちっ」タッタッタ


星奈「……小鷹。何て言うか……お疲れ様」

小鷹「お前、こんなところにいたのかよ」

星奈「……にしても、小鷹って早漏なの……? いくらなんでも早すぎない、あんた……?」

小鷹「……あのなあ!」プルプル

小鷹「この、バカ女が!!」

星奈「はあ!?」

星奈「何よ! 何でキレてんのよ! あんたが早漏なのはあんたのせいでしょうが!」

小鷹「違う! そうじゃない! 大体、してもいねえよ! ちょっと脅しかけといただけだ!」

星奈「え?」

小鷹「俺の好みはあんなムサい男とかじゃねえんだよ! つうか、何でお前、あんな挑発する様な事を言ったんだ! 黙ってりゃそれで済んだ事だろうが!」

星奈「な、何よ! ホモのくせに私に説教する気!?」

小鷹「そうだな。説教だ。俺は今、怒ってんだよ!」

小鷹「ここは部室じゃねえんだ! 毎回、俺がああやって守ってやれる訳じゃねえんだぞ!」

星奈「う、うるさいわねえ! 小鷹には関係ない事でしょ!」

小鷹「関係ない訳あるか!」


小鷹「俺たちは、同じ変態仲間だろうがっ!!」


星奈「!!」

小鷹「子供の頃……『みにくいアヒルの子』って童話をお前だって読んだ事があるだろ!」

小鷹「俺たちがそうなんだよ! みにくいアヒルの子なんだよ!」

小鷹「他と違うって、自分達と同じじゃないって! バカにされ、イジメられ、ハブられて!」

小鷹「友達なんか出来やしない! 友達の作り方さえわからない! 変態として生まれた俺たちは人生の方向音痴なんだよ!」

小鷹「みにくいアヒルの子は、最後には白鳥になった! じゃあ、俺たちは最後には何になるんだ!」

小鷹「変態がどれだけ成長したって変態のままだろうが!」

小鷹「それが解ってるから! 悲しくて! 寂しくて! だから、友達が誰よりも欲しくて!」

小鷹「俺とお前は! そんな切ない想いを持つ同士の! 大事な仲間だろうが! わかりあっただろうが!」


小鷹「マジで心配したんだぞ……! お前の事を……。会って一週間も経っていないお前の事を……!」


星奈「小鷹……」

星奈(な、何よ、こいつ……///)

星奈(そんなに本気で怒って……)

星奈(小鷹のくせに……。残念なヤンキーのくせに……。ホモのくせに……)

星奈(ちょっとだけ……。本当にちょっとだけ……)

星奈(キュンってしたじゃないの……///)


星奈(もう……///)フイッ

星奈「わかったわよ……。悪かった。もうしない///」

星奈「それと」

星奈「あんた、声、大きすぎよ……周り///」


ザワザワ、ヒソヒソ

「変態だって、あの二人……」 「通報した方が……」


小鷹「……あ」

星奈「い、急いで帰るわよ、小鷹! もう!///」クルッ、タッタッタ

小鷹「お、おう……。悪い///」タッタッタ

『駅前』


小鷹「なんか、悪かった……。恥かかせて」

星奈「別に……。そんなに怒ってないから、謝らなくていいわよ」


小鷹「…………」

星奈「…………」


星奈「小鷹」

小鷹「ん?」

星奈「助けてくれた事、ありがと」

小鷹「……ああ。うん」

星奈「あんたが女だったら良かったな、って今日ちょっとだけ思ったわ」ニコッ

小鷹「……そうか」ニッ


星奈「また明日ね、ホモ小鷹」バイバイ

小鷹「また明日な。レズ星奈」

今日は、ショタな子を見てハァハァする予定だったけど、それは完全に潰れちまった。

でも、後悔とか悪い気はしなかった。

女だったら良かったのにと言ってくれた星奈の言葉が少し嬉しかったから。

女友達を探している星奈にそう言われた事が、少し嬉しかったから。

気分は悪くなかったんだ。


帰って、小鳩に飯を作ってやらないとな。あいつ、最近むくれ気味だから。

駅の中に消えていく星奈の背中を見ながら、そう思った。

『星奈の家 夕食時』


天馬「」カチャカチャ、パクリ

星奈「」モグモグ


天馬「時に星奈、最近、学校はどうだ? 部活に入ったそうだが、楽しいか?」

星奈「うん、そうね。それなりよ」ニコッ

星奈「皆、私を頼ってきちゃうから、それがちょっと困るみたいなところはあるけど、でも、始める前よりは学校が楽しくなったわ」

天馬「そうか。なら、いいが」パクリ

星奈「ああ、そうだ。パパ。小鷹って知ってる? 羽瀬川小鷹」

天馬「」ピクッ


天馬「知ってるが、お前はどうして彼を?」

星奈「同じ部活なのよ。それで、話す機会があって。編入の事でお世話になったから、パパに挨拶したいみたいな事を言ってたわ」

天馬「そうか。いずれお前にも引き合わせるつもりだったが、先にもう会ったのか」

星奈「偶然にもね。私も少し驚いたわ」

天馬「挨拶なら、今は少し仕事が忙しいからゆっくり時間が取れない。その内、こちらから連絡するのでそれまで待ってくれないか、と伝えておいてくれ」

星奈「わかった。そう言っておくわ」

天馬「ところで、星奈」

星奈「何?」

天馬「お前から見て、小鷹君はどうだ?」

星奈「そうね……。悪い奴じゃないわね。むしろ、いい奴、だと思う」

天馬「そうか」ホッ

天馬「まあ、あの男の息子だ。悪い奴じゃないのはわかりきっていたし、お前も気に入るだろうとは思っていた」

星奈「そう言えば、小鷹のお父さんとパパは友達なのよね? そう言っていたけど」

天馬「ああ、あの男と私は無二の親友だからな」

星奈「パパにも親友なんていたんだ」


ステラ「変態同士だから気が合う、と私は前に奥様から伺っておりますが」


天馬「ステラ!?//」

星奈「何となく予想はしていたけど、やっぱりそうなのね……」ハァ

天馬「た、確かにだな。あの男は、覗きや下着泥棒など、卑小なエロ行為が大好きな真の変態だったが、私は別に変態という訳では///」

ステラ「まずは、鏡を見られる事をお勧め致しますが」

星奈「パパ……。メイド服姿でそんな事を言っても、全然説得力ないんだけど……」

ステラ「女装が好きなのを、世間では『変態』と称すると何度もお伝えしているのですが……」ハァ


天馬「ち、違うぞ! これはスカートとかではなく、特注の和服でだな……!///」


ステラ「左様でございましたね」フッ

天馬「何で、そんな諦めた様な目をする!///」

ステラ「そもそもお嬢様が、この様なロリレズでメイド大好き女となってしまったのも全部、旦那様のせいだと言うのに……」ハァ

天馬「それも違う! それは私のせいではなく、あいつの」

ステラ「確かに、奥様にも半分程は責任があると思いますが、しかし、もう半分はやはり旦那様の責任だと、事情を全て知っている私は思うのですが……」

星奈「事情?」

天馬「い、いや! それより、その! 急用を思い出したので、私はもう部屋に戻る!」スクッ

天馬「星奈、小鷹君に伝える事を忘れないようにな! それでは!」スタスタ

星奈「あっ、パパ!」


ステラ「…………」


星奈「全くもう……。パパったら自分の都合が悪くなるとすぐにこうなんだから」

ステラ「…………」

『後輩の変態レベルが色々と高い』



『学校 廊下』

小鷹「」スタスタ


小鷹(……何か、視線を感じる)


小鷹「」ピタッ、クルッ


シーン……


小鷹「…………」

小鷹「」クルッ、スタスタ


小鷹(やっぱり、視線を感じる。後をつけ回されてる様な……)


小鷹「」ピタッ、クルッ


シーン……


小鷹(何だよ、一体……!)

『授業後 談話室』


夜空「後をつけ回されている?」

小鷹「ああ、ここ何日か後ろから妙な視線を感じるんだよ。誰かにつけ回されてるような」


星奈「…………」

夜空「…………」


小鷹「これってひょっとして、ストーカーって奴じゃないかと思うんだけどな」


星奈「可哀想な小鷹……。初めてあんたに同情したわ」

夜空「遂にこの時が来てしまったとはな……」ハァ


小鷹「な、何だよ、その意味深な台詞と表情は!」

夜空「小鷹。お前は今、学校中の人間からショタホモヤンキーとして色々な意味で恐れられているのだぞ」

星奈「そんな人間の尻を追いかけるなんて、ホモ以外いる訳ないじゃない」

小鷹「その理屈はわかるんだけどな……。だったら、何でお前らそんな残念そうな顔をしてるんだよ?」


夜空「小鷹。この際だから言っておくが、お前が好きだという男の娘など、あまたのホモ共が生み出した幻想の中の存在に過ぎんぞ。空想上の生き物だ」

星奈「ホモって言ったら、やっぱりガチムチの男なんでしょうね。少なくとも、可愛くもショタでもないのは確かだと思うけど」

小鷹「べ、別に、そんな期待をしてる訳じゃねーから……。ただ、ストーカーってだけで」


夜空「」ハァ

星奈「」ハァ

夜空「どうやら、まだ自分の危機に気が付いてないようだから、私から説明してやろう」

夜空「そんなガチムチのホモがお前の後ろをずっとハァハァつけ回しているのだぞ? お前の貞操を狙っての事以外、考えられないだろ」

小鷹「!?」


星奈「小鷹って見かけはヤンキーじゃない? だから、下手に手を出すとまずいって事で、物陰に連れ込んで気絶させる機会を伺っているに決まってるじゃない」

小鷹「!?」


夜空「そして、そこでレイプされ、写真を撮られ、それを使って脅され、肉便器となって調教される毎日の始まりだな」

小鷹「お、おい! それはお前の妄想というか願望だろ! 変な事を言うなよ!」


星奈「じゃあ、それ以外の理由で何でショタホモの小鷹をつけ回すのよ。そんな風に学校中から認知されてるあんたをコソコソつけ回すなんて、やっぱりどう考えても強姦目的に決まってるじゃない」

小鷹「なっ! お前まで!」

夜空「しかしだ。私も鬼ではない。小鷹が凌辱されるのを黙って見ているのも後味が悪いしな」

星奈「まあ、そうね。あんたは変態仲間だし、肉便器にされるのはいくらなんでも可哀想だから」

小鷹「俺、そんなにピンチだったのか、今まで……!」


夜空「ここは一つ、私が助けてやろう、小鷹。もちろんお前も協力するよな、肉?」

星奈「ええ。変態は変態同士、助け合って生きるものだし」


小鷹「マジか! ありがとうな、夜空! 星奈!」


夜空「なに、小鷹の為ならお安いご用だ」

星奈「三人で協力して強姦魔を捕まえるわよ!」

小鷹「おう!」

『廊下』


小鷹「」スタスタ

小鷹「」ピタッ


シーン……


小鷹(間違いない……後をつけ回されてる)

小鷹(それなら、夜空の作戦通り……)

『回想』


夜空「いいか、相手はガチムチなマッチョ男だ。普通に捕まえようとしても、返り討ちに遭う可能性が高い。だから、罠を仕掛ける」

小鷹「罠?」

夜空「そうだ。小鷹は後をつけ回されてると感じたら、強姦魔に都合がいいように、人けのない廊下へと向かう。すると、強姦魔は喜んでその後を追うだろう。そこに罠を張る」

星奈「どんな罠を張る気なのよ?」

夜空「これだ」ゴソゴソ、スッ


荒縄「ちぃーっす」


星奈「何で普通に鞄から荒縄が出てくるのよ……」

夜空「M奴隷のたしなみだ」

小鷹(何かが既におかしい……)


夜空「でだ。この縄を廊下の曲がり角に張っておいて、犯人を転がす。そこを三人がかりで取り押さえる、という手筈だ」

夜空「私は亀甲縛りも得意だし、手錠とポールギャグも持っている。一旦、取り押さえてしまえば、捕らえるのは容易いだろう」

小鷹「……ある意味、尊敬する」

夜空「むしろ罵倒すべき場面だろう、ここは! ドMの変態女と何故言わない、小鷹!」

小鷹「何で怒られなきゃなんねーんだよ! 俺は誉めたんだぞ!」

『廊下』


小鷹(この先を曲がったところで、夜空と星奈が罠を張って待っている)

小鷹「」スタスタ


小鷹「」サッ

夜空「来たか?」ヒソヒソ

小鷹「ああ。後をつけてるはずだ。そろそろ来る」ヒソヒソ

星奈「強姦魔が転んだら一斉に飛びかかるのよね、足引っ張らないでよ」ヒソヒソ

小鷹「来るぞ」ヒソヒソ



幸村「」タッタッタ

幸村「あっ……!」トテッ



夜空「今だ、行け!」

小鷹「それっ!」ダダダッ

星奈「えいっ!」ダダダッ

幸村「あっ!」ビクンッ


夜空「よしっ! よくやった! これで確保だ!」ガチャリ


小鷹「って……あれ?」

星奈「女の子……? ひょっとして、人違い」

夜空「いや、だが……。こいつ、男子の制服を……」


幸村「はあ……。この様な罠を仕掛けられていたとは……。流石、小鷹先輩です。この幸村、感服致しました//」


小鷹「……!//」ドキッ

夜空「な……!?」

星奈「幸村? じゃあ、男……?」

夜空「お、お前……。まさかとは思うが、男……なのか?」

幸村「はい。わたくしは見ての通り男です」

星奈「見ての通りって……。すごい女の子っぼいわよね。いわゆる男の娘ってやつ?」

夜空「こ、これが、男の娘というやつなのか!?」

幸村「お恥ずかしい……。わたくし自身はもっと男らしくなりたいと望んでいるのですが……//」


小鷹(な、何だよ、この可愛らしい生き物は!///)キュンッ

星奈「なんか、小鷹の好みっぽいわよね。ねえ、小だ……」

小鷹「お、落ち着け、俺。落ち着け///」ドキドキ、ドキドキ

星奈「聞くまでもなかったわね……」


夜空「あああ……!」ガクッ

星奈(あ、夜空が死んだ……)

『談話室』


夜空「」グデーン

小鷹「……///」ドキドキ

星奈「」ハァ


幸村「……?」

星奈(この反応見ると、やっぱり夜空って小鷹の事が好きなのよね……)

星奈(だけど、小鷹はショタホモで、だからまるで恋が実ってないってところに)チラッ

幸村「……?」

星奈(最大のライバル登場っていうか。差がありすぎて、ライバルにすらなってないっていうか)

星奈(なんか、可哀想になるぐらい悲惨よねえ、夜空って……)チラッ

夜空「」グデーン

星奈「それで、幸村だっけ? あんた、何で小鷹の後をつけ回してたりしたの?」

幸村「それは……//」チラッ

小鷹「///」ドキッ


幸村「小鷹先輩は……わたくしにとって憧れの人であり、そして……理想の人だからです///」


夜空「!!?」ガタリ

星奈「!!?」

小鷹「!!?///」キュンッ

幸村「実は、わたくしは戦国武将の様な真の男に憧れを持っていまして//」

幸村「そして、昔から殿方しか愛せない同性愛者なのです//」


星奈「それ……ホモって事よね!?」


幸村「はい//」コクリ


小鷹「ゆ、幸村がホモ!///」パアッ

夜空「あ、あああああ……!」ガクリッ


星奈(夜空にとどめが!)

星奈「え、えっと……それで小鷹をつけ回してたのね」

幸村「はい//」コクリ


小鷹「///」ゴクッ


幸村「小鷹先輩は……とても男らしく、自由奔放にて豪胆、暴虐なお方です。正に真の武将と呼べるお方」

幸村「その方にお仕えして、幸村も男を磨きたいと考え、話す機会を伺っていたのですが……いざ、話しかけようとすると足がすくんでしまい///」


小鷹「そ、そうだったのか//」ドキドキ


星奈「……ていうか、その」チラッ

夜空「」ボーッ

星奈「こ、小鷹って見かけはともかく、ショタホモじゃないの! そんなホモが男らしいっていうのは、ちょっと違うって言うか……!」


幸村「いいえ。その様な事はございません」キッパリ

星奈「ええ……?」

幸村「お聞きしたところ、小鷹先輩は自分が同性幼児愛者だと言う事を転入初日からクラス全員に言明されたとか」

小鷹「お、おう……」ヒクヒク

幸村「その様な事をすれば、世間の風当たりは強くなるとわかっておられたはずです。しかし、それをものともせずに、小鷹先輩はさも当たり前のようにそれをやってのけられました」

幸村「その潔さ。周りの事など気にもかけない豪胆さ。正に真の男。幸村はその男らしさに武士の生きざまを見たのです」

星奈「も、もののふ?」

幸村「左様でございます。『武士道とは、死ぬ事と見つけたり』。合戦に出ればいつ命を失うかわからぬ身。だからこそ、武士というのは、後悔を残さぬ様に常に全力で生きるものなのです」

幸村「いつ死んでもいいように、今を生きるのが真の武士の姿なのです」

幸村「自分が同性幼児愛者である事を宣言し、自分に嘘をつかず、後ろめたさも残さず、自分の信じる道を突き進む。まっこと、小鷹先輩は真の武将と呼べる立派なお方なのです!」ババンッ


星奈「な、何か、そう言われると、急に小鷹がカッコよく見えてきたわね」

小鷹「お、俺も何か、自分に自信が持ててきたぞ」

夜空「バカかお前ら……まとめて死ね……」ボソッ

幸村「あの、小鷹先輩。これから兄貴とお呼びしても宜しいでしょうか?//」

小鷹「あ、ああ! お前がそう呼びたいのなら///」パアッ

幸村「嬉しいです、兄貴……///」ポッ

小鷹「俺も嬉しいぞ、幸村!///」キュンッ


小鷹(ヤバい……! 可愛くて悶え死にしそうだ!///)ドキドキ


星奈「……小鷹のくせして、リア充臭がしてムカつくわね」ボソッ

夜空「だから、皆死んでしまえばいい……」ブツブツ

小鷹「な、なあ、幸村//」ドキドキ

幸村「はい、兄貴///」キラキラ

小鷹「お前もその……この部活に入らないか// 同じホモだし、上手くやっていけると思うんだ」ドキドキ

幸村「兄貴がそれを望むのであれば、幸村はそれに従う所存です」キラキラ

小鷹「よしっ! なあ、おい、夜空! 星奈! 幸村を部活に」

夜空「ああ?」ギロッ

星奈「」フンッ


小鷹「え……ちょっ」

幸村「……?」

小鷹「な、なあ、夜空。幸村はその……俺と同じでホモだし……いわゆる変態だから……部活に」

夜空「忘れたのか、小鷹」ユラリ

夜空「この隣人部に入る為には二つの条件がある事を」

夜空「そいつは、ホモだから確かに一つ目の条件は満たしてる。だがな!」

夜空「もう一つの条件を満たしてるとでも思うのか? そのちっこくて、全身から守って下さいオーラを発しているそいつが、そう見えるのか!?」

星奈「まあ、そうよね。多分、クラスのマスコット的存在として大人気よね、きっと。わざわざ部活に入る必要なんかないぐらいに」フンッ


小鷹「あ、いや……。だ、だけどな……」


幸村「……?」

幸村「兄貴。この部活に入る為の二つの条件というのは一体どのような事なのでしょうか?」

小鷹「ああ、それはだな……」

夜空「一つ、変態である事」

星奈「二つ、変態のせいで友達がいない事」

小鷹「って事でな……」ハァ

幸村「それなら、何も問題はないかと」

小鷹「え?」

夜空「何?」

星奈「は?」

幸村「わたくしは、友達が一人もいませんし、クラスでは全員から無視されていますので……」


小鷹「!?」
夜空「!?」
星奈「!?」

幸村「わたくしは、この様な軟弱な体をしておりますので、小学生の頃からオカマや男女などと、ずっとからかわれてきておりました」

幸村「下駄箱に上履きがない事もしばしばで、机に落書きなども何回もされました。教科書が水浸しになっている事も幾度か」

小鷹「それって……ガチのイジメだよな……」

星奈「ひどい……」

夜空「…………」フイッ


幸村「ですが、中学校に上がるとそういった事も少なくなり、こんなわたくしにも友達が何人か出来たのです」

幸村「主に女の友達が多かったのですが、男の友達も一人」

幸村「その時は大変嬉しかったです。これまでずっと友達がいませんでしたから」

小鷹「……ああ。そうだよな」

星奈「そうね」

夜空「そうだな……」

幸村「ですが、同時に悩んでもいたのです」

幸村「わたくしは真の男に憧れ、そして目指しておりましたので……」

幸村「友達に、自分は同性愛者であるという事を隠していていいのかと」

幸村「同性愛者である事を隠し友達付き合いを行うなど、真の男にあるまじき卑劣な行いではないかと」

幸村「そんな付き合いが、本当に友達と言えるのかと」

幸村「武士ならば。男ならば。友情と言うのは、そういうものではないと、わたくしの心が訴えてくるのです」


小鷹「……少しニュアンスは違うけど……気持ちはわかる」

星奈「……そうね」

夜空「……ああ」

幸村「ですが、わたくしにはそれを言う勇気がありませんでした」

幸村「ひたすら隠し、そのまま中学を卒業してしまったのです」

幸村「そして、この高校に入ってからも、ずっと」

幸村「ですが」


幸村「しばらくして、兄貴が編入してきて……。わたくしはその時の話を聞いて感動致しました。兄貴から勇気をもらいました」

小鷹「お前……まさか!」


幸村「はい。わたくしは兄貴に見習い……」

幸村「自分が同性愛者である事を友達全員に告げました」


星奈「……!」

夜空「……!」

幸村「その結果、友達は誰一人いなくなり、クラス全員から無視される存在となりましたが……」

幸村「ですが、わたくしはその事を後悔してはおりませんし、心の重荷が消えた事による清々しさもあります」

幸村「結局……わたくしが友達だと思っていた人は全員、友達ではなかったのでしょう」

幸村「ただの話し相手だったのです」

幸村「それならば、悔いはありません」

幸村「例え、友達が一人もいなくても、わたくしは少しだけ男となれたのですから」ニコッ


小鷹「身につまされるな……」

星奈「うん……」グシュッ

夜空「……くそっ」ゴシゴシ

小鷹「だけど、幸村ぐらい可愛かったら……。誰か告白してきたりとか……そういうのはなかったのか?」

幸村「はい。何人かはいました」コクッ

小鷹「そんな!!」

星奈「ちょっと、小鷹。なに、ドサクサに紛れて彼氏の有無を聞いてるのよ」

夜空「最低だな、お前は。この雰囲気の中でそんな事を聞くとは」チッ

小鷹「いや、俺はそんなつもりじゃ……!」


幸村「ですが、告白は全員お断り致しました」

小鷹「!!」パアッ


星奈「へえ、何で? やっぱり小鷹がいたから?」

夜空「やはり、気に食わん」ボソッ


幸村「もちろん兄貴の存在もありましたが、ですが……」

幸村「告白してきた方の全員に、わたくしはこう言ったのです」

幸村「好きになれるかどうかわからないので、友達から始めても宜しいでしょうか? と」

幸村「すると、全員が断りました。友達になってもいいという方も、恥ずかしいから学校では他人のフリをしよう、と」


夜空「つまり、全員がホモだと知られたくない。だから、お前とは学校では話さない、とそういう事か。自己保身に長けた身勝手な連中だな」フンッ

星奈「そんな奴、フッて正解よ。あんたの事を本当に好きじゃなかったんじゃないの」


幸村「はい。わたくしもそう思います。やはり変態には恋人の前に友達が出来ない、というのを実感致しました」


小鷹「ひでえ連中だよな、本当に……」チッ

星奈「ちなみに、女の子の方もあんたって友達いないの? 私的には、幸村可愛いし、ちょっとロリ入ってるし、男じゃなかったら結構好みなんだけど」

幸村「残念ながら、女の子の友達も誰も。逆に一部の女の子からはかなり嫌われているようで……」

夜空「ああ、なるほど。そういう事か」

星奈「理解出来たわ、そういう訳だったのね。ホンット、女って下らないわよね」フンッ


小鷹「……どういう事だ?」


星奈「わかんないの、小鷹? 幸村ってそこらの女子より可愛いでしょ?」

小鷹「あ、ああ……///」

夜空「だからだ」ギューッ!!

小鷹「痛っ! 踏むなよ、夜空!」


夜空「つまり、幸村より可愛くない女に嫉妬されているのだ。そいつは」

星奈「自分より可愛いなんて、くやしー! みたいな脳ミソ空っぽのバカ女はどこにでもいるのよ。しかも、それが男だって言うなら尚更よね。逆恨みされてても不思議じゃないわ」


小鷹「ああ、それで……」

幸村「そうだったのですか……」シュン

星奈「ま、あんたも気を付けなさいよ。逆恨みとはいえ、バカ女って何するかわかんないから」

星奈「女ってそういうところ、結構怖いもんがあるし」

幸村「わたくしは……子供の頃の様に、またイジメられてしまうのでしょうか……。それもこれも全部、わたくしが男らしくないから……」シュン

小鷹「大丈夫だ、幸村!」ガシッ

幸村「あ、兄貴……?///」

小鷹「もしも、幸村がイジメられるっていうなら、俺が必ず守ってやる! そいつら全員ぶっ飛ばしてやる! だから、安心しろ!」

幸村「兄貴……///」グシュッ


星奈「」ムカッ

夜空「」カチンッ

星奈(何なのよ、小鷹のやつ。私には、いつも守れるかわからないとか言って、説教したくせに……)

星奈(相手が幸村だと、必ず守ってやるとか言って……。なんかイライラするわね)


夜空(小鷹のやつ。ソラが……私が好きだと言っていたのに……!)

夜空(子供の頃に、散々、私をあれだけ弄んでおきながら、気付きもしないで……!!)ギリッ



小鷹「幸村……。お前は俺が守ってやるし、俺はお前の為なら何でもしてやるぞ」

幸村「兄貴の今のお言葉……。この幸村、生涯忘れません///」グシュッ


星奈「ふんっ」フイッ

夜空「殺す……」ボソッ

幸村「それでは……兄貴」ゴシゴシ

小鷹「どうした、幸村?」

幸村「この幸村。兄貴にお願いしたい事がたった一つだけあります。聞いて頂けますでしょうか」

小鷹「ああ! 俺に出来る事なら、何でも。それで何だ? どんな頼み事だ?」

幸村「口にするのも恥ずかしい限りなのですが……//」ジッ

小鷹「///」ドキッ


幸村「兄貴……///」

小鷹「ゆ、幸村……///」ドキドキ




幸村「女性を犯して頂けないでしょうか?///」

小鷹「え……?」




星奈「は……?」

夜空「犯す……だと?」ドキッ

幸村「実はわたくし、同性愛者の他にも変態な性癖を持っていまして……//」

幸村「いわゆる、覗きと寝取られが大好きなのです。というよりも、それ以外では全く興奮出来ないのです//」ドキドキ


小鷹「え……」ピキッ


幸村「ですので、わたくしの憧れる兄貴が、その逞しい雄の象徴でわたくし以外を……///」ドキドキ

幸村「それも、男ではなく女と。わたくしの見ている前で見せつける様に性行をしていたら、どれだけ興奮するかと///」ハァハァ

幸村「しかも、わたくしは凌辱や調教などの鬼畜な性行為が好きなので、兄貴が女の子を容赦なく襲い、ためらいなく中出しをして、更には脅しをかけて肉奴隷にする様を見せつけられ、『あ、何だ? 幸村、そこにいたのか? お前のケツには興味ないんだよ、失せろよ』などと冷たい目で言われたら、わたくしは、幸村はもう!///」ハァハァ、ハァハァ


小鷹「」


星奈(この子……結構、ガチで変態ね……)ヒクヒク

夜空「ふ。ふふふふふふふふふ……!」ユラリ

夜空「そうか……幸村。お前は肉体的なマゾではなく、精神的なマゾという事だな?」

幸村「はい。恐らくそうなのです//」コクッ

幸村「裏切りだとか、無視だとか、わたくしはそういった事でしか感じない体なのです///」

幸村「ですので、わたくしの信頼し憧れる兄貴が、実はその優しさが見せかけだけで、本当はわたくしの事など使い捨ての駒程度に思っていると想像しただけでも///」ゾクゾク

夜空「要約すると、貴様は小鷹に愛されたい。だが、心の底の底では本当は小鷹になど愛されたくない。想いを裏切られたいとそう願っているのか。このマゾめ」

幸村「はい。申し訳ございません、兄貴。わたくしは、尽くして尽くして、それでもなお報われないとか、信じて信じて最後には裏切られるとか、そういった事以外では興奮出来ないのです///」ハァハァ


小鷹「」


星奈(小鷹が……死んでる!)

夜空「そうか、幸村。私はお前の事を誤解していた。お前は私の最大の敵だが、最高の味方でもあるのだな」

幸村「それはどういう意味でしょうか?」

夜空「安心しろ、幸村。お前の望みは私が全て叶えてやる。なにせ、私はドMだからな」フフン

幸村「なんと! それは真でしょうか?」

夜空「ああ、もちろんだ。そして、私はギャラリーがいた方が興奮するタイプだ。つまり、お前と私の利害は完全に一致している」

幸村「そうだったのですか。嬉しいです//」パアッ


小鷹「お、俺は……! 俺は嬉しくない……!」グシュッ


星奈(……あーあ、何このカオスっぷり)

夜空「だが、小鷹はあの通りのショタホモだ。なかなか私には手を出さなくてな」

幸村「そうなのですか。姉御も苦労されているのですね。お察しします」

夜空「ああ。そこでだ、幸村。お前はこの隣人部に入り、私に協力しろ。二人で協力すれば、小鷹も理想的な鬼畜御主人様になれる可能性がある」

幸村「それはもちろん。この幸村、微力ながら姉御に加勢をさせて頂きます」

夜空「うむ。ついでにお前も男らしいガチムチマッチョに肉体改造してやろう。誰が見ても、真の男だと思うようなムキムキの体にな」

幸村「ありがとうございます、姉御。何から何まで」

夜空「いや、構わんぞ。変態は助け合って生きるのが当然だからな」


小鷹「やめろっ! 幸村をそんな風にするなぁ!!」ポロポロ


星奈(小鷹がマジ泣きしてる!)

小鷹「何でだよ! 何でそんな酷い事を言うんだよ! 夜空! 幸村!」ポロポロ


幸村「兄貴……申し訳ございません。ですが……」シュン

夜空「黙れ、小鷹。私は幸村の為を想って言っているのだぞ。お前も幸村の事を考えるのなら、協力して、鬼畜な御主人様になる努力をするべきだろう」


小鷹「だけど、これは何か違うだろ! どこかおかしいだろ!」ポロポロ


夜空「おかしくなどない。私は牝犬になりたがり、幸村はお前の犬になりたがっている。私は性処理道具になりたがり、幸村はお前の道具になりたがっている。それだけの事だ。何がおかしい?」

小鷹「俺の……! 俺の気持ちはどうなるんだよ! 幸村は男の娘なんだぞ! 俺がようやく出会った、初めてのショタホモなんだぞっ!!」ポロポロ


夜空「だが、同時に幸村は寝取られと覗きでしか感じない変態でもあると言っている。同じ変態であるお前が、どうして一方的に幸村の事をおかしいと言える? どうして酷いと言える?」

夜空「性癖は人それぞれだ。自分もショタホモな変態のくせして、幸村の性癖だけを責めるのは間違いだろうが。違うか、小鷹!」


小鷹「だけど……! だけどっ……!!」ポロポロ

もしも、神様ってやつがいるとしたら。

どうして、変態なんて存在を生み出しやがったんだ……!

どうして、こんな悲しい生き物を作ったんだよ……!


俺が変態でなかったら……こんな事にはならなかった。

幸村が変態でなかったら……俺はまだ希望を持てていた。


今日初めて幸村に出会って……そして、ときめいて……。

恋する前に何もかもが終わった……。

ただ、性癖の違いによって……。

変態って理由によって……。


好きになる前に、潰された。

告白する前に、何もかも潰された。


性癖の……違いによって……。

変態って……理由によって……。


こんなのって……。

あっていいのかよぉ!!


こんな悲しい理由って……。

あっていいのかよぉぉ!!




俺はその場で……子供みたいに泣き崩れた……。

小鷹「うっ……うぅぅ……」ポロポロ


幸村「兄貴……申し訳ございません」グシュッ


夜空「…………」

夜空「」フンッ

夜空「……少しは私の気持ちがわかったか。……バカ小鷹」ボソッ


星奈「」ハァ

星奈「…………」





そう。これは……。

俺が夜空にした事……。告白される前にそれを潰した事……。

それと、全く同じ事だったのだ……。


俺は……今更後悔した。

泣きながら……するんじゃなかったと、悔やんだ。


変態の業ってのは……どこまで深いんだろうか。

俺には……それがわかっていなかったのだ。

『翌日 学校』


小鷹「」ハァ


小鷹「」ボーッ


小鷹「」ハァ



夜空(……小鷹のやつ、今日は溜め息ばかりだな、あいつ)

夜空(いい気味と言えば、いい気味なのだが……)

夜空(何で私まで罪悪感を感じねばならんのだ……。まったく)

夜空「」ハァ

『昼休み 廊下』


夜空「」トコトコ

夜空(む? あれは幸村? しかし、教室の前で何をこっそり覗き見しているのだ?)


夜空「幸村」

幸村「あ、夜空の姉御」


夜空「お前、何をしている、こんなところで? 小鷹にでも用事か?」

幸村「……はい。昨日の事があったので、兄貴の様子が心配で……」

夜空「お前が気にするような事ではないだろう。あれは小鷹が自爆した様なものだしな」

幸村「ですが……。今日もあの様に御元気がなく、やはり心配で……」シュン

夜空「ふぅ……」

幸村「兄貴がああなってしまったのは、やはりわたくしのせいでもありますので……」

幸村「どうにか、元気付けて差し上げたいのですが、しかし……」シュン

夜空「時間が解決する問題だ。今は放っておけばいい」

幸村「ですが、あの様な兄貴のお姿を見るのは、心苦しいので……」

幸村「夜空の姉御。どうにか兄貴をお慰めする方法はないでしょうか?」

夜空「さあな」

幸村「この幸村の初めてを捧げれば、兄貴は喜んでくれるでしょうか?」

夜空「なっ!?//」

夜空「馬鹿な事を言うな!// 大体、お前は自分がされるのには興味が持てないのだろう!」

幸村「はい……。恐らく、快楽は得られず、ただ痛いだけではないかと……」

夜空「なら、そんな事は考えるな! 小鷹もお前が痛いだけなら喜びはしない。もっと別の方法を考えろ」

幸村「左様でございますか。……言われてみれば確かに。兄貴はああ見えて舎弟にはお優しいお方の様ですから」

夜空「しかし、お前はそれを裏切られたいと思っているのだろう?」

幸村「はい///」ポッ

夜空「萌えるポイントが私にはまるで理解出来ないな……」

幸村「わたくしのは、恐らく倒錯的な快感なのです」

幸村「悲しみと同時に悦びを見いだしてしまうのです」

幸村「恐怖を喜ぶような方は誰もいません。ですが、怖い話やジェットコースターを人は好みます。それと同じなのでしょう」

幸村「悲しみや苦しみと同時に悦びを見いだしてしまうとは、変態とはなんと悲しくて愚かな生き物なのでしょうか」


夜空「急に哲学じみた事を語られても困るのだが……」

夜空「理解出来てしまうだけに、反応が難しいな」


幸村「きっと織田信長も、信頼していた明智光秀に裏切られて、幸せな最期を迎えたのだと思います。戦国武将もまた、変態の集まりですね」

夜空「それは違う」

夜空「それより、幸村。小鷹をホモからノーマルに戻す件についての事だが……」

幸村「はい。この幸村。夜空の姉御に協力を惜しまない所存です」キリッ

夜空「それならいい。今日は小鷹があんな様子だから、今、無理強いをすると逆効果になりかねんし、もう少し落ち着いてから作戦を進めていくつもりだ。構わんな?」

幸村「夜空の姉御の仰せの通りに」

夜空「うむ」


幸村「それにしても……」

夜空「何だ?」

幸村「夜空の姉御は、兄貴の事をよく考えておいでの様で安心致しました」

夜空「ま、まあな。小鷹は私の御主人様候補だから、それは当然の事だ//」

幸村「姉御が兄貴に凌辱される事を、この幸村、心の底から願っております。ご武運を」

夜空「あ、ああ。ちゃんとその……小鷹にレイプされて、調教されてやるから、期待していろ//」

幸村「はい」コクリ

夜空「それじゃあ、私はこれでな//」クルッ

幸村「? 教室にお戻りにはなられないのですか?」

夜空「ちょっと、用を思い出した。だからだ」

幸村「左様ですか。それならば、お気を付けて」ペコリ

夜空「ああ」スタスタ


夜空(さっき、少し想像したせいで頬が赤くなっている。こんな状態で小鷹に会えるか//)スタスタ

『理科室前』


夜空「」スタスタ


ボソッ


夜空「ん?」クルッ

夜空「今、何か声が聞こえたような……」


「……し……い」


夜空「理科室から……?」


「た……すけ……て……」


夜空「何だ?」

夜空「…………」

夜空「」ガラッ

扉を開けて中に入ると、そこには床に倒れている白衣の女がいた。


夜空「おい、どうした、お前!」ユサユサ

理科「……ぅ」ガクッ


夜空「気絶したか。だが、ここで何が……!」

夜空「これは、ロープ……? しかも首にかかって……」

夜空「まさか、自殺か!」

夜空「面倒な事を! とにかく保健室か! そこまで連れていく!」ガシッ

理科「ぅ…………」

夜空「何で私がこんな面倒くさそうな女をおぶらねばならんのだ、ああもう!」ヒョイッ

夜空「」タッタッタ!!

『次の休み時間 廊下』


理科「三日月夜空って人なんですけど、見かけませんでしたか? このクラスって聞いたんですが」

モブ女子生徒「三日月さん? 教室にはいないみたいだけど……」


夜空「」スタスタ


モブ女子生徒「ああ、あの人」

理科「そうですか、ありがとうございます」ペコッ


理科「」タタタッ


理科「夜空せんぱーい!」


夜空「む……あれは」

夜空「お前、さっき理科室にいた女だな」

理科「はい。志熊理科と言います。先程は助けて頂きありがとうございました」ペコリ

夜空「通行の邪魔だ。失せろ」

理科「え?」

夜空「先に言っておくが、どんな理由であれ私は自殺しようなどと考える軟弱な奴は嫌いだ」

理科「はあ」

夜空「更に言えば、面倒事に巻き込まれるのはより嫌いだ。だから、礼など要らん」

理科「でも、夜空先輩はやっぱり私の命の恩人ですから。助けて頂いたお礼がしたいんですけど」

夜空「必要ない。と言うか、お前。何故、あんな所で自殺しようなどと考えた? お前はそれでいいかもしれんが、発見した奴に迷惑がかかるだろう」

理科「ああ、それは誤解なんです。理科、別に自殺とか考えてた訳じゃないんで」

夜空「じゃあ、事故だとでも言うのか?」

理科「事故……と言えば、事故ですね。実は理科、変態なんで」

夜空「変態?」

理科「はい。首しめオナニーの真っ最中だったんです」ニコッ

夜空「」

理科「医学上は、ハイポクシフィリアって言うんですけど」

理科「窒息だとかの酸素欠乏状態に興奮を覚える性癖でして」

理科「理科室で実験をやってたら、ちょっとムラムラしてきちゃいまして、つい」

理科「今日は普段より危ない領域に踏み込んじゃいまして、危うく本当に死ぬところでした」テヘ

夜空「お前……! かなり危険度の高い変態か……!」

理科「そうですね。確かに変態度は高いと思います。理科はタナトフィリアも入ってるんで」

夜空「……タナトフィリア?」

理科「自分の死に興奮を覚える性癖ですよ。溺死だとか失血死だとか、そういうのです。ほら、理科の手首、カッターで切った痕で一杯でしょう?」サッ

夜空(こいつ……! 危険度Sクラスの変態だ……!)

理科「あ、でも、本当に死にたいとか殺されたいとかそういうのじゃなくて、あくまで死に近付いて興奮を得たいってだけです。メンヘラとかヤンデレでもないんですよー」

夜空「」

理科「そういう訳で、自殺ではないんです。ですので、命を救ってくれた夜空先輩にはお礼がしたいんですけど」

夜空「お前……!」プルプル

理科「ん? どうされました、夜空先輩?」

夜空「馬鹿かっ!! そんなのをしてたらいつか本当に死ぬぞ!!」

理科「それはそうなんですけど……。でも十分に気を付けてますし」

夜空「今日死にかけた奴の言う事か!」

理科「わかってます、理科だってわかってるんです。でも、首しめオナニーは理科の生き甲斐なので……」

夜空「生き甲斐で死ぬ馬鹿がどこにいる!?」

理科「毎年、世界で一人ぐらいは首しめオナニーで死ぬ人はいるらしいですよ」

夜空「お前がその一人になりかけてただろ! 本物の馬鹿だ、お前は! いや、本物の変態か!」

理科「それって誉めてくれてるんですか?」

夜空「そうだな。今、本気で殴ろうかどうかを考えているところだ! それとも鞭で打たれる方がお前の好みか!?」

理科「あ、いえ、ハードなSMとかはちょっと……。理科、そういうのドン引きしちゃいますから……」

夜空「殺す……!」ユラリ

理科「ひぃ!」ビクッ

夜空「とにかく、その首しめとかリスカとかはやめろ。いつか、本当に死ぬぞ、お前」

理科「先輩は理科の趣味を奪うって言うんですか? 横暴ですよ、それ」

夜空「趣味のレベルを超えてるから言っている。だいいち、私の通う学校で変死体騒ぎとかを起こされると迷惑だ」

理科「変死体と言うか、変態死体ですけどね」

夜空「黙れ、貴様」ギロッ

理科「す、すみません……」

理科「まあ、仕方ないですね。出来るだけしないように努力はしてみます」

夜空「確約は出来ないのか、お前……」

理科「難しいです。理科、変態なんで。それに、変態行為って麻薬と同じで依存性があるんですよ? 興奮度が違いますから、脳が覚えちゃうんです」

夜空「む……。まあ、それだけは理解してやらんでもない」

理科「はい。でも、本当に努力はしてみます。命の恩人の言う事ですし」

夜空「……仕方がないな。お前は……変態なのだから」

理科「そうですね。仕方ないんです」

理科「それにしても、夜空先輩って変わってますね。理科が自分の性癖を言うと、大体の人はドン引きして、どうやってその場から逃げ出そうか必死になって考えるみたいなんですけど、夜空先輩はそんな事が全くなくて」

夜空「まあ、こちらにも少々理由があってな。確かにドン引きはしたが、別に変態だという理由で避けたり嫌ったりはしない」

理科「その理由ってやつが気になりますね。何ですか?」

夜空「お前に言うような事ではない」

理科「えー、そんなあ。教えて下さいよぉ」

夜空「黙れ、ド変態」

理科「つれないですねえ、夜空先輩は」

キンコーンカンコーン


理科「あっと……。授業が始まっちゃいますね。残念ですけど、理科はこれで」

夜空「首しめオナニーはするなよ」

理科「頑張ってはみます」クルッ、タッタッタ


理科「」ピタッ


理科「夜空せーんぱい」

夜空「何だ?」

理科「さっき、先輩に殺すって言われた時、とっても怖かったんですけど……」

理科「理科、ちょっと濡れちゃいました。先輩になら、理科、殺されたいです///」ゾクゾク


夜空(鳥肌が……!)ゾゾゾゾッ


理科「三次元に興奮を覚えたのは、理科、生まれて初めてなんですよ。それじゃ」ニコッ


夜空「お、恐ろしい奴だな、あいつ……」

『教会 廊下』


小鷹「」ハァ

小鷹「」トボトボ

小鷹「」ハァ


小鷹(幸村に会うのが辛いな……。何を話していいかもわからないし……)

小鷹「」ハァ


ガチャッ


小鷹「……うーっす」


ケンジロウ「お務め、御苦労様です、兄貴」

小鷹「誰だ……お前」



部室に、七つの傷を持つ男がいた。

ケンジロウ「わたくしでございます、兄貴。幸村改め、ケンジロウです」

小鷹「幸村!? 幸村なのか!? 何だよ、その妙なマスクとムキムキの体は!?」

ケンジロウ「はい。夜空の姉御が、真の男になる為には、まずは形から入るべきだという事で、このマスクと肉襦袢を頂きまして。名前も幸村ではなく、ケンジロウと改めた方がハクがつくと……」

小鷹「夜空ぁ!!」


夜空「…………」フンフンフーン♪

夜空「おや、小鷹。ようやく来たのか。しかし、来るなり早々大声を上げてどうした?」

小鷹「どうしたじゃねーよ! 幸村に何を吹き込んでんだよ! 幸村をこんなムキムキの男にするな!」

夜空「しかし、やはり真の男たるもの、筋肉が多いものだしな。ひ弱で貧弱な男など、真の男とは言えまい?」

小鷹「そうかもしれないが、これは単なるコスプレだろ! 幸村に適当な事を言って騙すのはやめろ!」

夜空「騙すなどと人聞きの悪い。私は幸村が真の男になる為の手助けをしているだけだぞ。言ってみれば、これはイメージトレーニングだ。普段からこんな男でありたいと願っていれば、より早くムキムキのマッチョになれるというものだからな」

小鷹「いい加減にしろよ、夜空っ! これは幸村を騙して変なコスプレをさせてるだけのイジメだろ! お前はそういう事をする奴だったのかよ!」

夜空「イジメだと!」ダンッ!!


夜空「私がそんな事をする訳がないだろうっ!!」バンッ!!


小鷹「なっ……」

星奈「……ちょっ、ちょっと夜空。なにマジ切れしてるのよ」

ケンジロウ「夜空の姉御……?」

星奈「とにかく……二人とも落ち着いて。一旦、席に座りなさいよ」

小鷹「…………」ストッ

夜空「…………」ストッ


星奈「小鷹。夜空だって幸村をイジメようとして、それを着せた訳じゃないでしょ、きっと。夜空はドSも入ってるけど、イジメみたいな事をする様なやつじゃないわよ。多分……」

夜空「」フンッ

小鷹「…………」


星奈「夜空もよ。小鷹の言う事だって一理あるわよ。私もこれはちょっとって少し思ってたし……。普通の格好でいいじゃないの」

小鷹「からかうぐらいならともかく……あれはやり過ぎだろ」

夜空「…………」

幸村「わたくし自身は結構気に入っていたのですが、兄貴がそう仰るのであれば、普通の制服にする所存でございます」

小鷹「そうだな。悪いけど、そうしてくれるか、幸村?」

幸村「はい」コクッ


幸村「しかし、男らしい格好と言うものには、やはり男は憧れるものです。兄貴のお許しが頂ければ、何か制服以外のものに着替えたいのですが」

小鷹「そうか。それなら……。ナース服とかどうだ?」

夜空「」バシンッ!!

小鷹「ってー……。ちょっと言ってみただけだろ!」


星奈「男らしい服ねえ……。何だったら幸村、あんた、うちの執事服でも着てみる?」

幸村「執事……ですか」キラキラ

星奈「うん。うちでは家令って言ってるんだけど。タキシード風のだから、結構男らしいと思うわよ」

幸村「なら、それを是非お願いします。主君に仕える者として、相応しい服だと思いますので」

星奈「わかったわ。じゃ、明日持ってきてあげるから」

幸村「有り難き幸せ。星奈の姉御には感謝致します」

星奈「大袈裟ね。大した事じゃないわよ」


小鷹「執事か……。それも悪くはないな」

夜空「執事か……。まあ、メイドとかよりはマシか」

星奈「それじゃあ、小鷹も来たし、部活でもしましょ。夜空、今日は何するの?」

夜空「今日か……。今日は本当なら、ゲームによって友達を作るという作戦を考えていたのだが……」

小鷹「何か、別のにするのか?」

夜空「ああ。実は今日、少し思うところがあってだな。志熊理科という、とてつもない変態に会ったのだ」

小鷹「とてつもない変態?」

夜空「これまで私が会った中で、一番レベルの高い変態だったな。魔王クラスの変態だ」

小鷹「そりゃ、すげーな。夜空がそう言うんだから、よっぽどの変態なんだろ」


星奈「……志熊理科?」

星奈「私、その子知ってるわよ。直接会った事はないけど」

夜空「そうなのか、肉?」

星奈「うん。小学生の頃から天才少女だって騒がれていて、企業とかに協力して色々な発明やプログロムを作ってる特別な子ね」

星奈「パパが授業に出なくてもいいって条件まで出して、うちの学校に呼んだのよ。奥の理科室もその子の研究用にって、新しく作ったんだから」

夜空「あいつがか……。天才には特殊な性癖が多いと言うが、それは本当だな」

星奈「脳を常人とは別の方向に使ってるんでしょうね。片寄ってるって言うか、歪んでいるって言うか、そんな感じじゃない?」


コンコン


夜空「む……。来客か?」

幸村「わたくしが出ます」ガチャッ


理科「あ、いたいた。夜空せんぱーい!」


夜空「お前……! 志熊理科!」

理科「先輩って隣人部って部活に入ってるんですね。ここ探すの苦労しちゃいました」

夜空「何しに来た、お前……?」

理科「そんなの決まってるじゃないですかあ。先輩に殺して欲しくなって来たんですよお」ニコッ

夜空「」ゾゾゾゾッ


小鷹「は……?」

星奈「殺す……って……?」

理科「あ、理科。ハイポクシフィリアのタナトフィリアなんですね」

理科「ついでに、二次元専門でもあるんですけど。あ、でも、夜空先輩だけは別ですからね」


小鷹「は、はいぽくし……?」

星奈「二次元専門……?」


小鷹「なあ、夜空。何だその、はいぽくし何とかってのは?」

星奈「二次元専門はわかるけど、なに、タナトフィリアって?」


夜空「ググれ……。まともに説明すると凄く疲れる」

小鷹「?」

星奈「?」


理科「♪」

ノーパソ「どぅーゆーあんだーすたん?」


小鷹「……これは」

星奈「……きついわね、なかなか」


夜空「わかったか? この気持ちが……」


理科「すみませーん。理科、ド変態なんです」テヘ

幸村「……わたくしには、理科殿の気持ちが少しだけわかります」

理科「え?」

小鷹「って、幸村!?」

夜空「本当か!?」

星奈「あんた、わかるの!? これ!?」

幸村「はい。武士道とは如何に立派な死を迎えるかを追求したものですから」

幸村「死に美学を求めたものが武士道と言っても過言ではありません。ですので、死に憧れを抱くというその気持ちは少しだけわかります」

小鷹「……そういう綺麗なものとは別だと思うんだがな」

幸村「確かに快感を得るのとは違いますが、しかし、武士は綺麗な死に名誉を得ます。それはやはり少しだけ似ているのです」

夜空「わかるような、わからないような、微妙なラインだな……」

星奈「ギリギリアウトな感じはするんだけどね……」


理科「……はあ」

理科「なんか皆さん、変わっていますね。普通、こういう話って全力でスルーか流すかして、その後、用事を思い出したからとか言って、さっさと逃げていくものじゃありませんか?」

小鷹「そういうもんなのか?」

星奈「さあ……? あ、でも、思い当たるふしはあるわね。やな事を思い出しちゃった。あのバカ女たち……!」

幸村「確かに、普通ならそうかもしれませんね。わたくしにも似たような経験がありますので……」

夜空「」フゥ……


理科「なんか……皆さん、変わってますね、やっぱり」


星奈「ちょっとね」フンッ

小鷹「事情があってな……」ハァ


理科「そうですか……」チラッ

夜空「……気にするな。ここはそういう部活だからな」

理科「なるほど。でも……」


幸村「どうされました?」

理科「いえ。何か初めて来たっていうのに、すごく居心地いいなって、ここ」ニコッ


夜空「……だろうな。私もだ」

小鷹「……まあな」

星奈「そうね」ニコッ

幸村「はい」コクッ

理科「あ、そうだ。理科、ここに入部しに来たんです。お願いしていいですか?」

理科「ポスター見たら、斜め読みで友達募集ってありましたけど、理科はこの通りのド変態なんで友達なんか誰一人いませんし、きっとこれからも誰一人出来ませんよ」

理科「本当は、理科の変態性を暴露して、皆さんが逃げ帰ったところで夜空先輩とイチャイチャしようかなって考えてたんですけど」テヘ

夜空「別の意味で魔性の女だな、お前……」


理科「でも、何かここ、居心地がいいんで」

理科「ちょっと惜しいけど、理科の変態っぷりを皆さんの中の誰か一人でも気持ち悪いって思うのなら、このまま帰ります」

理科「何か……皆さんの居場所を壊すのも嫌なんで……」テヘ


夜空「…………」
小鷹「…………」
星奈「…………」
幸村「…………」


理科「それに、夜空先輩とは、ここじゃなくてもイチャイチャ出来ますし。だから、いいです」ニコッ


夜空「お前とイチャイチャした事もする事も、永遠に有り得ないが……」

夜空「別にお前の入部を止める理由は、私にはない」

小鷹「……俺もかな」

星奈「私もよ」

幸村「わたくしもです」


理科「皆さん……。いいんですか? 理科、本当にド変態ですよ? 部室で平気でエロエロな同人本とか見ますし、変態トークもガンガンしますよ?」


夜空「別に問題ない。入りたいなら、入れ。ド変態」

小鷹「……友達いないのは、やっぱり寂しいからな」

星奈「好きにすればいいのよ。変な遠慮なんかせずに」

幸村「そうです、理科殿。どうぞ」


理科「」パアッ


理科「皆さん、ありがとうございます! 理科、結構本気で嬉しいです!」グスッ




隣人部。もとい、変人部。活動記録。

ヤバめのド変態が増えた。

変態が四人。ド変態が一人。友達は0人。

『夕方 小鷹家』


小鷹「それでな、今日入部したその理科ってやつが、かなりのド変態でな」モグモグ

小鳩「…………」シュン


小鷹「どうしたんだ、小鳩? さっきからろくに食べてないけど」

小鳩「我が半身よ……。最近、我への供物が手抜きになっておらぬか……?」シュン

小鳩「今日なんかスーパーの弁当だし……」モソモソ


小鷹「ああ、悪い。今日はその理科ってやつにそれぞれ自己紹介して、変態趣味の事について説明とかやってたんだけど、そいつが元気なやつでな。いちいち下ネタを絡めて来るからやたら遅くなって」

小鳩「……それに、部活の話ばっかりで」シュン

小鳩「最近、あんちゃんの血、ちょっとドロッとしちょる……。後味も苦くなった……」

小鷹「そうなのか?」

小鳩「多分、野菜とか果物、ちゃんと食べとらんから……」モソモソ

小鷹「そんな事ですぐには変わらないだろ。小鳩の気のせいだ」

小鳩「うー……! あんちゃんのバカ」

『夕食後』


小鳩「クックック……。我が半身よ。今日は我に生き血を捧げる約束の日だぞ。契約に従い、我に腕を差し出すがいい」

小鷹「俺の血、最近、苦いんだろ? なら、飲まなくていいだろ」

小鳩「!?」


小鳩「わ、我が半身よ。我との契約を破ると言うのか。破れば、異界との均衡が取れなくなり、こ、この世界が崩壊するやもしれぬぞ」

小鷹「今、洗い物の真っ最中だ。それに、洗濯物もたたまないといけないしな」

小鳩「な、ならばその後でも良い。我に生き血を捧げよ」

小鷹「生き血、か……」

小鳩には、多分、友達がいない。

小学校ぐらいまでは、友達が家に遊びに来たりもしたが、小鳩が中学に上がってからは一回もなくなった。

小鳩が中学校でも中二病全開でいるのかは知らないし、ブラコンだとか血を飲むのが好きだとか、そういった事を知られているのかも、俺は知らない。

小鳩は、自分の事は滅多に話さないから。


俺自身が変態だし、小鳩の趣味についてどうこう言う気は全くないけど。

今日、理科の変態趣味を聞いて、小鳩が少し心配になったのも事実だ。

血が好きってのはやっぱりまずいよなあ……。

小鷹「そうだよな……。やっぱり……」

小鳩「あんちゃん?」

小鷹「小鳩、今日は血を飲むのは禁止な」

小鳩「ええ!?」


小鳩「あんちゃん、何で!? 今日、血を飲んでもいい日言うたやんか! 三日も我慢したけん、飲みたい!」グスッ

小鷹「駄目だ。美味しくないって言ってたし」

小鳩「言うとらへん! ちょっとだけ苦くなったって言っただけ! あんちゃんの血が美味しい事に変わりはない! 飲みたい!」グスッ

小鷹「また三日待て。死ぬ訳じゃないんだから、別にいいだろ。もう少し我慢しろ」

小鳩「うっ! うっ!」グシュッ


小鳩「あんちゃんのバカー! アホー!」ダダダッ

小鷹「お、おい、小鳩」


小鷹「ったく……」

『翌日 談話室』


小鷹「うーっす」ガチャッ

小鷹「って、あれ?」


マリア「」スヤスヤ


小鷹「何で、全裸の幼女がここで寝てるんだ……?」

小鷹「おい、風邪引くぞ」ユサユサ


ドサッ


小鷹(ん? 後ろから鞄の落ちる音?)クルッ


夜空「こ、小鷹……! そいつは……」

星奈「小鷹! 私、あんたの事を見損なったわよ! あんたはショタホモだとずっと信じてたのに! よりにもよっていたいけな幼女を誘拐してきてイタズラするロリコン男だったなんて!」

幸村「ああ、わたくしの好きな兄貴がそんな鬼畜なプレイを///」ハァハァ


小鷹「」

小鷹「ち、違う! 俺はショタホモだ! 幼女なんかに興味はない!」

星奈「じゃあ、その子は何なのよ! 服まで全部脱がせて、どう見ても事後じゃないの! 小鷹の嘘つき!」

幸村「兄貴、どうぞわたくしに構わず、その幼女に凌辱の続きを///」ハァハァ

小鷹「だから、違うって言ってんだろぉ!!」


小鷹「俺は何もしてない! 俺が来た時には、こいつは全裸でソファの上に寝てたんだ! 本当だ! 信じてくれ!」

小鷹「夜空! お前からも何か言ってくれ! 俺は本当に何も!」


夜空「小鷹……。そんな事はどうでもいい。すぐさま、そいつを外に放り出せ」

夜空「そいつは危険だ。ここにいてはいけない変態なのだ! だから早く追い出せ、小鷹!」


小鷹「え?」

星奈「夜空。あんた、この幼女、知ってるの?」

幸村「夜空の姉御……。どこか顔色が悪いような……」

マリア「」スヤスヤ


夜空「そいつの名前は高山マリア」

夜空「この隣人部の顧問であり、この世で最も危険な変態だ」


小鷹「顧問? この子供がか?」

星奈「危険な変態ってどういう事よ?」


夜空「そいつは変態度で言えば低い方だが、危険度なら理科を遥かに上回るモンスターだ! この部の核兵器の様な存在なんだぞ!」

星奈「だから、どういう変態かって聞いてるでしょ。教えてもらわなきゃわからないじゃないの」


マリア「ん……」ムニャムニャ

マリア「……何だ、お前ら? 私の昼寝の邪魔を」


夜空「しまった! 起きてしまったか!」

夜空「こうなったら!」ヒュンッ



バシンッ!!!

マリア「ふぎゃああっ!!」



……それは、ソフトボールのピッチャーが全力投球で投げるような、下からすくいあげる一切の容赦も迷いもない強烈なビンタだった……。

夜空「ふぅ……。危ないところだったが、どうやら上手く気絶したようだな」

マリア「」グデーン


星奈「ちょっと夜空! あんた幼女に何て事をするのよ! 信じらんない!!」

小鷹「夜空! お前……児童虐待だぞ、これ!」

幸村「夜空の姉御……恐ろしいお方です」


夜空「何もわかっていないやつらが口を挟むな! 私は今、この部を救ったのだぞ!」

夜空「そいつが目覚めたらどんな事になるか、何もわかっていないだろう、お前たちは!」


小鷹「だから、どうなるんだよ!?」

星奈「あんたが説明しないからでしょ! 大体、どんな理由があっても、こんな事をしていいはずないでしょうが!」


夜空「ある! 何故ならその高山マリアは……」

夜空「露出狂のスカトロマニアだからだ!」


小鷹「!?」
星奈「!?」
幸村「!?」

夜空「何かある度に、うんこうんこと言い出す変態女だ」

夜空「排泄行為を、するのも、見るのも、見せるのも大好きという、この世で最も危険な変態だ」

夜空「私は変態に対してはかなり寛容な方だが、そいつだけは絶対に駄目だ。この部屋に置いておく訳にはいかない。即刻、追い出すぞ」グイッ

マリア「」ズルズル……


小鷹「た、確かに、それはちょっとな……」

幸村「御意」コクッ


星奈「ま、待って! その……確かにそれは私もダメだけど、でも幼女なんだし……」


夜空「なら、肉。お前はこの部屋を汚物まみれにされてもいいと言うのか? 暴走したら、こいつは本当にやりかねんぞ」

夜空「それを責任もってお前一人で後片付けをすると言うなら、私も考えなくはないが……」

星奈「わ、わかったわよ……! 私も手伝うから! どこまで運べばいいの!?」

夜空「教会の外だな。木にでも縛りつけておこう。小鷹、手を貸せ」

小鷹「ああ、わかった。幸村はそっちの足を持ってくれ」

幸村「はい、兄貴」

こうして俺たちは一致団結してマリアを外へと運び、木に縛って全裸のまま放置した。

思えば、この面子であれだけの団結心が出たのは、初めての事だった。


夜空「何かを皆で協力して行うというのは良いものだな」

星奈「そうね。ちょっと楽しいかも」

幸村「仲良き事は美しきかなと申しますし」

小鷹「少しわかりあった気になるよな、こういうのって」


なんて風に全員が誤魔化しつつ。

言葉で綺麗に飾る事で、現実から目をそらしつつ。

変態にだって受け入れられないものがある。

仕方なかったんだ。すまん。

星奈「にしても……全裸のままなのはちょっとまずかったんじゃないの、夜空?」

夜空「心配ない。あいつは露出狂だからな。むしろ、ご褒美だ」

小鷹「そうじゃなくて、誰かに襲われたらとかって話じゃないのか……?」

夜空「それも心配ない。人目につかない場所だし、仮に見つかったとしても、うんこ女を襲うやつなど誰もいない」

小鷹「妙な説得力があるから困るな……」


夜空「まあ、あいつはこの部のリーサルウェポンというところだな。敵が現れた際に、単騎で殲滅してしまう程の強力な武器(汚物)を持っているのだから」

小鷹「最終兵器変態かよ……」

夜空「が、扱い方を一つ間違えると、こちらにも被害が及ぶという人型決戦兵器でもある。暴走に十分注意しなくてはならない危険な代物だ」

星奈「何かどっかで聞いた話ね」

小鷹「」ハァ

夜空「とりあえず、あいつは来たるべき敵との決戦に備えて、私が適当に飼い慣らしておく。心配はするな」

幸村「流石です、夜空の姉御」キリッ

小鷹(敵なんかいないだろうが、この部に……)



コンコン、ガチャッ


理科「夜空せーんぱい。それと、皆さん。遅くなりましたー。ちょっと技術提供している企業と打ち合わせがあったので」

夜空「よし、来たか。これで隣人部は全員揃ったな」


夜空「それなら、今日の部活を始めるとするか」スクッ

小鷹「そうするか」

理科「理科にとっては初部活ですので、ちょっと楽しみです」


夜空「では、今日の部活内容を発表する」コホン

小鷹「変態を……」

星奈「治す……?」


夜空「そうだ。今日はそのミーティングを行う」


小鷹「だけど、何でまた?」

星奈「あんたの為じゃないの? 幸村と協力して、ホモを治すって言ってたし」

幸村「そうなのですか、姉御?」


夜空「もちろん、それもある。だが、それ以上にそこのド変態の為でもある」

理科「誰ですか?」キョロキョロ

夜空「お前だ」

小鷹「理科だろ」

星奈「あんたでしょ」

理科「ああ、やっぱり……」テヘ

夜空「私達の場合、危険な目に遭う可能性は低いが、理科の場合、直接生死に関わってくるからな」

星奈「まあ、流石に放置出来る範囲を超えてるわよね。死にかけたって言うし」

小鷹「ヤバめ系だからなあ、お前のは」

幸村「おいたわしや、理科殿……」


理科「皆さん揃って、そんな残念そうな顔を向けないで下さいよお!」

星奈「それで、変態を治すってのには賛成だけど、でも、治るものなの、これ?」

夜空「調べたところによると、治る、かもしれないといった感じらしいな。確実に治るとは言えないようだ」

小鷹「……だよなあ」

夜空「だが、治る可能性はあるし、何もしなかったら永久に治らないのは事実だ。少なくとも、治す努力はするべきだろう」

星奈「正論なんだけど、どうにも心に響かないわね」

小鷹「変態だってのを受け入れてるからな、俺たち」

理科「ですよねえ。理科も特に気にしてませんし」

小鷹「お前だけは気にしろよ……。本当に死ぬぞ、その内」

理科「ですから、理科だってそれぐらいはわかってるんですよ。でも、こういうのって理屈じゃないですし」

夜空「だからこそ、どうにかしようと言ってるのだ、私は。何も今すぐ治せと言っている訳でもないし、ゆっくりとでも努力していくものだろう」

理科「まあ、そうなんですけどね……」ハァ

小鷹「で、具体的にはどうするんだ? それも考えてあるのか?」

夜空「当然だ。私を誰だと思っている」

星奈「で? どうするの?」

夜空「うむ。お前たちは、因果律という言葉を知っているか?」

小鷹「因果律?」

理科「タイムスリップとかでよく言われる理論ですよね。原因があるから結果があるのであって、その逆は有り得ないっていう、結構当たり前の理論です」

夜空「そう。例えば、私達に友達がいないのは変態だからであって、友達がいないから変態になった訳ではない。そうだろう?」

星奈「悲しい例えを出さないでよ、夜空」

夜空「しかし、事実だ。そして、それと同じ様に、私達が変態になったのにも、何か原因があるという事だ」

理科「つまり、その原因を調べて分析すれば、変態を治す方法も思いつくんじゃないかって事ですか?」

夜空「そういう事だな。そこの肉の様に、根っからの変態という可能性もあるが、後天的に変態になったのなら、治す方法もあるだろうという事だ」

星奈「あんたにしては、珍しくまともな事を言うわね」

夜空「私はいつもまともな事しか言わない。それがまともに聞こえないと言うのなら、肉。お前の方に問題があるという事だ」

星奈「私に問題なんかないわよ! あんたに問題があるからに決まってるでしょ!」

小鷹「お前ら、前にわかりあったんじゃないのかよ……」

夜空・星奈「それとこれとは」

夜空「別だ」
星奈「別よ」

小鷹(仲がいいのか悪いのか……)ハァ

夜空「という事でだ、小鷹。まずはお前からショタホモになった原因を言ってみろ」

小鷹「え、俺からかよ」

夜空「そうだ。お前のはショタホモになった原因がなかなか良い話だからな。トップバッターとして相応しいし、お前だって話して恥ずかしいという事はないだろう」

小鷹「そりゃそうだけど……」

夜空「お前が話せば他の面子も話しやすくなる。それに、部員第一号だしな。小鷹からがベストだ」

小鷹「そうまで言うなら、別にいいけど……。ただ、少しだけ照れるな」

夜空「照れる事はない。美しい思い出話じゃないか。気にするな」

小鷹「わかった。なら……」


星奈「夜空、あんた小鷹がショタホモになった原因を知ってるの?」

夜空「前に聞いた。お前が急用だからと言って帰った後にな」

星奈「ふうん……。そう……」

小鷹「えっと……俺には昔、本当に仲の良かった友達がいて、名前を」

夜空「待て、小鷹。名前は伏せておけ」

小鷹「別に、伏せなくてもいいんじゃないか? アダ名なんだし」

夜空「いや、伏せてA君にでもしておけ。その方が身の上話っぽくなる」

小鷹「どんなこだわりだよ、それ」

夜空「いいから、そうしろ。男のくせに、いちいち細かい事を言うな」

小鷹「……わかったよ。なら、名前はA君って言ったんだけどな……」

小鷹「……て事で、俺は自分がショタホモだって事を受け入れたんだ。俺は、A君の事が本当に好きだったからな」

夜空「//」ウンウン


星奈「へえ……。小鷹のくせして、本当に結構いい話じゃない」

理科「意外です。この中で一番残念そうな小鷹先輩に、こんな一途で純真なところがあったなんて」


小鷹「お前らなあ……。誉めてんのかけなしてんのか、どっちだよ」


幸村「兄貴は昔から自分の心に対して、常に真っ直ぐなお方だったのですね。素晴らしいです、兄貴//」

小鷹「そ、そうか……?//」ドキドキ


夜空「」ゲシッ

小鷹「痛っ! 何するんだよ!」

夜空「足が滑っただけだ。いちいち騒ぐな」フンッ

小鷹「そんな滑り方はしないだろ! ったく」

夜空「じゃあ、次は肉」

星奈「私ね!」

夜空「は、飛ばしていいな。幸村、お前の番だ」

幸村「はい」

星奈「って、何でよ! 何で私を飛ばすのよ!」

夜空「どうせ肉の事だ。元から変態だったに決まっている。なら、いちいち聞く必要はない。時間の無駄だ」

星奈「そんな事ないわよ! 私にだって理由ぐらいあるんだから!」

夜空「どうせ、どうでもいい様な事だろう。やはり、時間の無駄だな。幸村」

幸村「はい」

星奈「じゃ、なくてぇ! 私の話を聞いてよぉ!!」

『ケース2 星奈の原因』


星奈「私の場合は、多分、ママが原因なのよね」

星奈「ほら、ちっちゃい時の事って、自分じゃ覚えてなくてもトラウマだとかそういった原因になっちゃう事があるでしょ? 私も多分、それと似たような感じなの」


小鷹「俺のも、子供の時の話だしな」

理科「人格とか性癖って、子供の頃にほとんど決まっちゃうらしいですからね。やっぱり幼少の時に体験した事って大きいですよね」

夜空「確かに、それは認めてやらんでもないな」

幸村「はい……」コクッ

星奈「で、私のママっていうのが……何て言うの? 少女趣味?」

星奈「ロリータファッションとか、ファンシーグッズとか大好きなのよ。家に可愛いぬいぐるみ沢山あるし、ヒラヒラフリフリの服とか大量にあるし」

星奈「それで、使用人の子も全員ロリ顔の可愛い子ばっかり集めて、メイド服を着せてたのね」

星奈「私が生まれた時からそうで、それが当たり前の様に育ったから、私も特に疑問に思わなかったし……」

星奈「外出しない限り、男の人にも男の子にも会わなかったから、要は可愛くてロリータな女の子に囲まれてるのが当たり前だったのね」

星奈「だから、多分、私がロリレズのメイド好きになったのはママが原因なの」


小鷹「へえ……」

理科「そうですか」

夜空「やはり、どうでも良かったな。では、幸村」

幸村「はい、姉御」


星奈「ちょっと待ってよ! 何か感想とか言ってよぉ!」

星奈「それに、まだ私の話は終わってないんだからぁ!」グスッ


夜空「まだ何かあるのか……。面倒くさい肉だな」

星奈「さっきの小鷹の話とちょっと似てるんだけど」

星奈「私にも昔、大好きな友達がいたのよ。名前を『チイちゃん』って言って、とっても可愛いお姫様みたいな女の子だったのね」

星奈「あ、ていうか、名前出しちゃったけど、まずかった、夜空?」

夜空「いや、肉の事だからどうでもいい」

星奈「あんた、さっきから私にだけ酷くない!?」

夜空「いいからさっさと言え、肉。きちんと聞いてやるから、その『チイちゃん』とやらがどうした?」

星奈「あ、うん、それでね……」

星奈「本当にちっちゃな頃だから、私もあんまり『チイちゃん』の事を覚えてないんだけど」

星奈「すっごく仲良しで、私の家でよく遊んでたのよ。ままごとみたいな感じで、お姫様ごっことか、メイドごっことかして」

星奈「『チイちゃん』はとっても可愛かったんだけど、言葉使いとか態度とかがちょっと男の子みたいで、それが逆に好みって言うか私は大好きで、もうカッコ可愛いって感じだったのね」

星奈「多分、私、そんな『チイちゃん』に恋してたのよ。あれが私の初恋だったんじゃないかなあ、きっと。『チイちゃん』が家に来る度にいっつもベタベタしてたし、キスとかも一杯したし」

星奈「で、そんなんだったから、パパもママも私に『大きくなったら、星奈はチイちゃんと結婚したいか?』とか聞いてきて」

星奈「私はもちろん『うん!』って大きな声で答えたのよ。そしたら『チイちゃん』も『セーちゃんと結婚する!』って言ってくれて、やあん、何か思い出してきちゃった。あの時の『チイちゃん』、カッコ可愛いかったなぁ//」


夜空「ほほう。聞いたか、理科? つまり、肉にはもう婚約者がいたらしいぞ」

理科「ていうか、親が公認してるなら許嫁ですよね」


星奈「別にそんな大袈裟なもんじゃないわよ。子供の頃の約束だし、女同士だし」

星奈「でも、私がロリレズのメイド好きになったのって、きっと半分は『チイちゃん』が原因なのよね。女同士って結婚出来ないって後から知って、それなら『チイちゃん』のメイドになるって思った訳だし……」

星奈「『チイちゃん』がいつのまにか家に来なくなって、引っ越したって事を後からパパに聞いたんだけど……」

星奈「『チイちゃん』、今、どうしてるんだろ……? 私の事、覚えててくれてるといいんだけど……」


小鷹「いや……覚えてるだろ、それは。そんなに仲が良かったんだったら、そうそう忘れるもんじゃないぜ」ニッ

星奈「そうだといいんだけどね」ニコッ

星奈「ま、私がロリレズになった原因ってそんな感じ」

星奈「ちょっと、いい話っぽくない?」


夜空「いや、それはない」

理科「別に、いい話ではないですよね」

小鷹「ああ……えっと……」

幸村「わたくしは何もお答え出来ません」


星奈「何で!? 小鷹の話と似てるじゃない!」

夜空「幸村、悪いが紅茶を淹れてくれ。口直しがしたい」

幸村「はい、姉御」ペコリ

星奈「どういう意味よ、それ! ていうか、私が持ってきたのよ、ティーセット! 先に感謝しなさいよ!」

理科「そういえば、幸村君は何で今日執事服を?」

幸村「兄貴にお仕えする身として相応しい服装ですので。星奈の姉御から頂いたのです」

理科「よくわからないけど、似合ってますよね。ねえ、小鷹先輩?」

小鷹「え? ……そうだな。男らしさというよりも、可愛さの方が遥かにあふれていて……中性的な魅力がたまらないな。今すぐ押し倒したいぐらいだ」

幸村「……あ、ありがとうございます。兄貴///」カアッ

理科「おお……// 大胆ですねえ、小鷹先輩」

小鷹「え? 今、俺、声に出してたのか!?//」

理科「それはもう、バッチリ。理科はBLには興味ありませんが、二人の事、応援はしますよ!」

小鷹「あ、いや、その……///」チラッ

幸村「兄貴……///」ドキドキ


夜空「」イラッ

星奈「……小鷹のくせにイチャつくなんて、何かムカつくわね」ボソッ

夜空「理科」

理科「あ、はい。何ですか、夜空先輩?」

夜空「幸村はお茶を淹れてるし、先にお前から話せ」

理科「それは構わないですけど……。何か怒ってません、先輩?」

夜空「怒ってなどいない」

理科「そうですか? それならまあ、いいんですけど……」チラッ

小鷹「?」

理科(…………)


理科「じゃあ、先に理科から話をしますね」

『ケース3 理科の原因』


理科「理科の場合、原因は子供の頃にはないと思うんですけど……」

理科「でも、関わっているとは思うんですね、多少は」


理科「夜空先輩、理科の事って聞いてます? 私、性癖以外でもちょっと普通じゃないんですけど」

夜空「多少はな。天才少女と呼ばれているというのは、そこの肉から聞いた」

理科「そうなんですね、そんな呼ばれ方を子供の頃からされてまして」

理科「だから、理科って普通の学生生活を送った事なんてないんです」

理科「子供の頃から一人だけずっと特別扱いで」

理科「先生達もそうだったんですけど、親もそうだったんですね」

理科「小学校、中学校って義務教育じゃないですか。どれだけ学校を休んでも卒業出来るんです」

理科「小学校や中学校の授業なんて、理科にとっては退屈で時間の無駄だったんですね。そう考えたのは理科だけじゃなくて、親もなんです」

理科「理科、学校に登校したのなんて、両手の指だけで足りちゃうんですよ。誰からも、行く必要がない、行かなくていいって言われてたんで」

理科「自分から引きこもりになったんじゃなくて、周りや親からそう言われて引きこもりになったんです。だから、学校での思い出なんて、理科、一つもないんですね」


夜空「……そうか」

小鷹「……ある意味、引きこもりよりひでーな」ボソッ

星奈「かもね……」

幸村「…………」

理科「別に、無理矢理そうされたって訳でもないんですけどね」

理科「理科も、授業は退屈だったので出たくはなかったですし、親も理科が学校に行きたいって言えば反対はしなかったと思います」

理科「やっぱり半分以上は理科の責任なんです。好きで引きこもりになったって言われたら否定は出来ませんし」

理科「でも、これまでずっと引きこもってた訳ですから、たまに学校に行ったって特別視されて声もかけられないんですね。いないのと一緒なんです。理科がいてもいなくても同じなんです」

理科「中学校一年生の時にそれを一回実感しちゃいまして。体育祭の日に行ってみたんです。そしたら、出場する競技なんかありませんし、クラスの誰からも声をかけられませんし、誰あれ? みたいなそんな視線が突き刺さってくるんですね」

理科「先生も、気をきかせてくれたんでしょうね。私だけ来賓席に呼ばれて。同じ学校の生徒なのに、私だけお客扱いなんです。本当だったら、暑い中、グラウンドで皆が整列している中に理科もいるはずなのに、一人だけクーラーのきいた部屋に着替えもせずにソファに座って見学して……」

理科「お前はこの学校の生徒なんかじゃないって、皆からそう言われた気がしました」

理科「そう思ってたのは、理科だけだったんです。実際は違ったんですね」

理科「それから理科はちょっとした鬱病気味になって」

理科「寂しいって、初めてそう実感しちゃったんですね」

理科「エビはゆっくり水温を上げていくと、何も気がつかないまま幸せに死んでいくんです。どうしてかって言ったら、どこからが危険な水温でどこまでが安全な水温かを知らないからなんです。理科もそれとおんなじだったんです」

理科「私はどこからが寂しくて、どこまでが寂しくないか知らなかったんです。部屋に一人でいる時の孤独と、大都会の真ん中で一人でいる時の孤独がまるで違うという事を知らなかったんです」

理科「私は何の為に生まれて、何の為に死んでいくんだろうってそう思いました。理科がいてもいなくても同じ存在なら、私は何の為にここにいて、何の為に生きているんだろうってそんな風に」

理科「何日かそんな事を考えた後、不意に自殺しようって気になりました。衝動的なものです。勢いってやつです」

理科「本当に自殺する気はなかったと思います。ただ、誰かに見て欲しかったんだと思います。自分は必要な存在だと確かめたかったのかもしれないです」

理科「立派なメンヘラだったんですね、理科。あの頃の事は正直あまり思い出したくないです。……恥ずかしいですし」テヘ


夜空「…………」

小鷹「…………」

星奈「」グスッ

幸村「…………」

理科「それで、何回か自殺未遂をしちゃいました……」

理科「実は、この手のリスカ痕も、半分以上はその時のものなんです。ちょっと自棄になっていまして……」

理科「死ぬ事に憧れる気持ちってその時に生まれたんだと思います。自分の手首からどんどん血が流れていって、だんだんボーッとしてくるのって、ちょっと気持ち良かったんです」

理科「死ぬ事って、生きる事とおんなじなんだって思いました。死に近付く事で、今、生きてるって事を実感出来るんです」

理科「気が付いたら、お風呂でもよく水中に潜るようになってました。限界ギリギリで酸素が脳に回らなくなってボーッとしてくるのが気持ちいいんです」

理科「変な話ですけど、死に近付く程、苦しい程、気持ちいいんですよね、あれって。酸素の欠乏と快楽性って関係ないらしいんですけど」

理科「やっぱり心の問題なんでしょうね。本気で死にたい訳じゃないけど、死に近付きたいっていう矛盾した考えなんです。普通じゃない特殊な状況がそうさせてるのかもしれませんね」

理科「それについて気になって調べてたら、首しめオナニーっていうのを発見して……。試しに何回かやってる内に、いつのまにか、理科、それにハマっちゃって……」

理科「今ではこんなド変態です。でも、その代わりに何かスッキリしちゃったのも事実なんです。誰かに必要にされたいとか、理科が生きている意味とか、そんなのを考えない様になりました」

理科「生きたいから理科は生きてますし、生きてないとこの先ずっと楽しい事や気持ちいい事は出来ないんです。新しく出てきもしないんです。……未来まで殺しちゃったらもったいないじゃないですか」

理科「理科が首しめオナニーから学んだ事は、そんな当たり前の事でした。変態でも寂しくても生きている方がいいんです」

理科「理科の人生はまだ長いんですから」ニコッ


夜空「……そうか。そうだな」

小鷹「……ああ」

星奈「生きてるって良い事よね……」グスッ

幸村「……はい。精一杯生きて、生き抜いてこそ、武士は躊躇いなく散っていけるのです」

理科「ちなみに、理科が二次元専門になったのもそれのせいですね」

理科「AVとかじゃ有り得ませんし、実際、自殺に繋がるヤバめのものですから三次元じゃ難しいんですね」

理科「で、それがきっかけで二次元にもハマって、学園物のアニメだとかラノベを見まくって」

理科「友達とかは相変わらずいませんでしたし、多分、これからも出来ないと諦めてたので、代償行為みたいなものですね。アニメとかを代わりにして、楽しんでたんです」

理科「そんなこんなで完全に、オタク・引きこもり・変態という三種の神器を手にしちゃいまして」

理科「現在の理科に至るって、そんな感じですね。見事に友達は0人です。ネットの中でさえ、異端児扱いですからね。自殺を考えている人の板に行ったら、変態出ていけとか言われちゃいましたし」


小鷹(そりゃ、そうなるだろ……)

夜空(向こうが真剣に悩んでるところへ、いきなり首しめオナニーの話をされてもな……)

理科「ま、そんなところです。理科が変態になった原因は」

理科「何か雰囲気を暗くさせちゃってすみません。あまり、気にしないで下さいね。理科、今は楽しく生きてますんで」

理科「主に新作のアニメとか同人誌とかオナニーで」


夜空「……良い話を最後の一言で全部台無しにしたぞ、お前」

理科「仕方ないです。理科、変態なんで」テヘ

『ケース4 幸村の原因』


幸村「次は……わたくしの番ですね」

夜空「ああ、お前はホモで寝取られ好きの覗き魔だったな。その原因みたいなものはあるのか?」

理科「これまで私も含めて全員が子供の頃の体験が関係してますし、やっぱり幸村君も?」

幸村「……そうだと思います。恐らくは」

星奈「何があったのよ? ねえねえ」

幸村「はい。実は……」

幸村「わたくしが小さな子供の頃の話です」

幸村「公園の砂場で遊んでいたら、男子の何人かとケンカになりまして」

幸村「理由はもう覚えておりませんが、その時、わたくしは一人で相手は四人でした」

幸村「わたくしはその頃から真の男を目指しておりましたが、しかし、男子数人に囲まれるというのは怖いものです。そして、わたくしにはその怖さを乗り越えるだけの勇気がありませんでした」

幸村「怯えて涙目になり、一言も喋る事が出来ませんでした」

幸村「このままわたくしは殴られ、蹴られ、踏まれたりするのだろうとそう思っておりました」

幸村「しかし」

『回想』


???「やめろよ!」

幸村「……!」


???「理由なんかわかんねーけど、そんな大勢で囲んでイジメるな!」


子供A「なんだよ、お前!」

子供B「いきなり出てきて何言ってんだよ、変なやつ!」


???「うるさい! 俺はそういう事する奴が大っ嫌いなんだよ!」

星奈「へえ。じゃあ、その子が助けてくれたんだ」

夜空「なかなかいい奴だな」ウンウン

幸村「はい。名前を仮にT様としておきましょう」

小鷹「……ん?」

理科「どうしました、小鷹先輩?」

小鷹「いや……何も」

理科「?」


小鷹(何か昔、似たような事をした様な気が……)

幸村「//」ジッ

星奈「ねえねえ、それでその後、どうなったの?」

幸村「はい。T様は怯えるわたくしの前にかばう様に出てきて、背中ごしにわたくしにこう言ってくれました」


『安心しろ。お前は俺が守ってやるからな』


夜空「ほう。そいつ、格好いいな」

理科「女の子だったら、一度は言われてみたいセリフですよね。夜空先輩とかもそういうの好きだったりします?」

夜空「ん……ま、まあな// 悪くはない」

理科「ふうん……。夜空先輩、そういうのが好みなんだあ……」ボソッ

夜空「何か言ったか?」

理科「あ、いえ、何も。ちょっとした参考にってやつです」


小鷹(あれ……。えっと……それって)

幸村「//」ジッ

星奈「で、その後は? どうなったの?」ワクワク

幸村「やはりケンカとなりました。T様は強かったのですが、四人相手では流石に多勢に無勢。しかし、わたくしだけは必死にかばって、殴られないようにしてくれたのです」

夜空「ますます格好いいな」

理科「ですね」

幸村「わたくしもそう思いました。そして、その時にはわたくしはT様に一目惚れをしておりました」

夜空「……そこは、小鷹と似たようなものか」

小鷹「…………」

夜空「どうした、小鷹? 何やら考え込んで」

小鷹「あ、いや、何も……」


小鷹(まさかな……)

幸村「……///」ドキドキ

幸村「しかし、初恋は実らないものだと言う通り、わたくしの初恋もすぐに砕け散りました」

夜空「!!」

幸村「その方には、わたくしなんかよりもずっと男らしい友達がいたのです。名前は仮にS殿としておきましょう」

夜空「し、しかし……初恋が実らないなどと言うのは、科学的根拠のない迷信だぞ。だから……その……」

幸村「確かにそうかもしれませんが、しかし、わたくしの場合はそうだったのです。そのS殿が後から加勢してくれた時、二人はお互いに深く通じあっているようにわたくしには見えたのです」

夜空「う……」

幸村「お二人のおかげで、わたくしは怪我一つなく助けられました。しかし、心に辛い傷を負いました。そのお二人の中に入り込む事など、わたくしには到底出来ないという辛い傷です」

幸村「わたくしは、また泣いてしまいお二人にお礼を告げる事も出来ず、『良かったな、今度からは気を付けろよ』と笑顔で手を繋いで去っていくお二人の背中を見守る事しか出来ませんでした」

夜空「そ、そうか……」ショボン

理科「一瞬の内に芽生え、一瞬の内に散る恋ですか……。何だか儚いですね……」

星奈「そうね……」

小鷹「…………」


小鷹(TにSってやっぱり……)

幸村「そうして、わたくしの初恋は散ってしまったのですが、女々しい事にもそう簡単には諦めがつきませんでした」

幸村「公園に何度も足を運び、T様とS殿が仲良く遊ぶ姿を陰からこっそり見ておりました」

幸村「その姿を見るのはやはり辛いものがありましたが、しかし、それでも見ずにはいられなかったのです」

星奈「わかる。わかるわよ、幸村」グスッ

理科「健気というか、一途というか、何か理科まで切なくなっちゃいます」

夜空「ああ……。辛いよな、その気持ち」


小鷹(なんか、口を出せる雰囲気じゃなくなってきちまったぞ……)

幸村「そんなある日の事です」

幸村「その日は、お二人が公園から移動して、別の場所へと向かいました」

幸村「わたくしはお二人に見つからないよう、こっそりその後をつけていったのです」

幸村「着いた場所は神社の裏手でした。そこで一匹の小さな黒猫に餌をやっていたのです。わたくしは少し離れた場所からそれを見ておりました」

幸村「餌をあげた後に、お二人は小さな黒猫と一緒になっていつもの様に仲良く遊んでおられたのですが、何か話した後に、不意にケンカのようなものを始められたのです」


夜空「喧嘩?」

幸村「はい」

『回想』


T「ほら、S! さっさとそこに四つん這いになれよ! お前は俺の雌犬だろうが!」

S「わ、わかった……。これでいいか……?//」ペタッ

T「よし。じゃあ上に乗ってやる」ドシンッ

S「う……。も、もっと優しく乗ってくれよ、T」

T「はあ? 犬のくせに生意気な事を言うなよ!」バシンッ

S「い、痛い! お尻を叩くな!」

T「何言ってんだよ? お前は尻を叩かれて喜んでる変態だろ。だから、ご褒美をあげてるんじゃないか」バシンッ

S「痛い! や、やめてくれ、T!」

T「うるさい、黙れ。この雌犬!」バシンッ

S「あうっ!」ビクンッ

T「犬のくせに生意気だぞ!」バシンッ

S「い、痛い! 本当に痛いんだ! だから、やめてくれ……お願いだ」ウルウル

T「それなら代わりに、私は尻を叩かれて喜ぶ変態雌犬ですって言ってみろ。言えたら、やめてやる」

S「い、言えるか、そんな恥ずかしい事を///」

T「はあ? 言えよ。ほら!」バシンッ

S「はうっ!」ビクンッ

T「ほら、ほら!」バシンッ、バシンッ

S「や、やめてくれ! 言うから! わ、私は尻を叩かれて喜ぶ変態雌犬ですっ!///」ゾクゾク

T「よし。ならご褒美だ。たっぶり叩いてやるから感謝しろよ!」バシンッ!! バシンッ!!

S「ひ、ひどい! あ、あああっ!///」ビクンッ

夜空「ま、まさか……それは……!」ダラダラ

星奈「ケンカじゃなくて、SMじゃないの……。うわあ、流石に引くわね」

理科「小学校の頃からSMとかどんだけ変態なんですか……。理科もドン引きしちゃいます……」

小鷹「お、おう……。そうだよな……ドン引きだよな……」ダラダラ


幸村「はい。わたくしはその頃、SMというものを知らなかったので。最初はてっきりケンカをしているのかと……」

幸村「しかし、S殿の恍惚とした表情を見ている内に、そうではないとわかり……」

幸村「とても淫らな行為を二人で隠れてなさっているのだと、子供ながらにそう得心しました」


夜空(マズイ……マズイ……マズイ)ダラダラ

小鷹(ヤバイ……ヤバイ……ヤバイ)ダラダラ

幸村「わたくしは、正直、嫉妬しました」

幸村「お二人はその様な特別な関係だという事を、わたくしの見ている前でまざまざと見せつけられたのですから」

幸村「そして、出来る事ならS殿とわたくしが代わりたいと思いました。わたくしもT様から苛められて気持ちよくなりたいと。ですが、それは叶わぬ夢……」

幸村「わたくしはただそれを陰からこっそりと覗き見る事しか出来なかったのです。混ざりたいと言い出す勇気もなく、ただ見ている事しか」

幸村「初恋の人が、わたくし以外の方と淫らな行為を行っているのを見るのは辛いものです。ですが、その行為から目を逸らす事も出来ませんでした。身体が熱くなり、妙な興奮を覚えました」

幸村「わたくしはその日以来、毎日の様に神社裏に覗き見に行くようになり、そしてその……//」モジモジ

幸村「お二人の行為を見て、恥ずかしながら我慢できず……///」

幸村「陰で自慰行為を行っていたのです……。股を触ってみるととても気持ち良かったので……///」カアッ


星奈(やっぱり幸村もその頃から変態なのね……)ヒクヒク

理科(……うわあ)ヒクヒク

夜空(うわああああっ! 見られていた! 何度も見られていたのか、あれを!///)

小鷹(うわああああ……! マジかよ……おい……!)

幸村「それから何日か経った後、いつのまにかお二人が遊んでいる姿を見かける事はなくなりました。わたくしが覗き見している事がバレて場所を変えたのか、それとも仲違いをしてしまったのかはわかりません」

幸村「ですが、わたくしが同性愛者の寝取られ好きの覗き好きとなったのは、やはりその事が原因なのではないかと思っております」

幸村「わたくし自身としては、後悔もしておりませんし、お恨みもしておりません。お二人はきっとその事を知らないでしょうし、幸村が変態になったのは他の誰でもない幸村の責任なのですから」

幸村「出来る事なら、わたくしはお二人にもう一度会って、あの時言えなかった感謝の言葉と、ずっと覗き見していた事を謝ろうと思っております」

幸村「T様、S殿。あの時は助けて頂き有り難うございました。そして、盗み見をしていて申し訳ございません」

幸村「この場を借りて、幸村は懺悔致したく存じあげます。どうかお許し下さい」ペコリ


夜空(う……)

小鷹(……参ったな)

星奈「それにしても、そんな子供の頃から変態のMだなんて、Sってまるで夜空みたいじゃない」ニマッ

夜空「あ……! いや、その、わ、私は……!」アセアセ

星奈「は? 何でそんなに慌ててるのよ。まさか……本当に夜空なの?」

夜空「あ、あの……!」アセアセ

幸村「いえ、夜空の姉御のはずがありません。S殿は男の方なので」

星奈「ま、そうよね。いくらなんでもそんな事ないわよね」

夜空「う、あ……そ、そうだな……」


理科「だけど、その二人、今頃どうしてるんでしょうかねえ。子供の頃からそうなら、二人とも結構な変態になってると思うんですけど」

星奈「そうよねー。絶対、そうなってるわよね。幸村と歳が同じぐらいって事はひょっとしたら、この学校にいるかもしれないし」

夜空「」ダラダラ


理科「でも、そんな偶然ありますかねえ。やっぱり違う学校に行ってるんじゃないですかあ? ここにこれだけ変態が集まってる訳ですし、もうこの学校には他に変態はいないと思うんですけど」

小鷹「」ダラダラ

小鷹「その……わ、悪い。ちょっと俺、トイレ……」スクッ

夜空「わ、私もだ。少しの間、席を外すぞ」スクッ


理科「あ、はい。どうぞ」

星奈「?」

幸村「…………」

『礼拝堂』


小鷹「あ、えっと……前に少しだけ話したから、ひょっとしたら、お前ならもう気が付いてるかもしれないけど……」

小鷹「あのTってやつ……俺なんだ」

夜空「わ、わかっている……。それぐらい予想はついてた」

小鷹「まさか見られてるなんて思ってなかったし……。しかもそれが幸村だったなんて……」ハァ

夜空「全くだ……。顔から火が出るくらいに恥ずかしかった……///」ハァ

小鷹「ん? 何で夜空が恥ずかしがるんだ?」

夜空「あ、いや! その……! 顔から火が出るくらいに恥ずかしかっただろうと私は尋ねたのだ! 別に私の事ではない!」

小鷹「そ、そうか……。聞き違いか。まあ、確かにそれぐらい恥ずかしかったけど……」

夜空「だろう!」

小鷹「あ、ああ……」

小鷹「えと……それで俺、どうしたらいいと思う」

夜空「どうしたらというのは、具体的にどういう事だ」

小鷹「だから……幸村に俺がTだって伝えた方がいいかどうか……」

夜空「それは伝えなくていい」キッパリ

小鷹「そうか……?」

夜空「当たり前だ。幸村も言っていただろう。謝罪したいと。それはつまり、幸村がお前に対して負い目を持っているという事だ。そんな幸村を追い詰めてどうする?」

小鷹「いや、まあ、そりゃそうだけど……」

夜空「更に言うなら、お前は幸村を変態にした張本人だぞ。幸村自身は恨んでなどいないと言っていたが、その加害者のお前が今更名乗り出てもお互いに気まずいだけだろう」

小鷹「そ、そりゃまあ……そうだろうけど……。でも、俺が幸村を変態にしたって事はその責任があるって事だろ。やっぱり名乗り出て謝るべきじゃ」

夜空「謝るぐらいで足りると思うのか、小鷹!」

小鷹「う……」

夜空「変態にしたなら、その責任を取って幸村の願いをお前は叶えてやるべきだ。あるいは、幸村の変態を治してやる事だ。それが正しい責任の取り方というものだろう!」

小鷹「……だよな。返す言葉がねえ……」

夜空「それまでは、今の良好な関係を崩す事もない。名乗り出てヒビが入ると、余計に難しくなるからな。だから、幸村の願いを叶えるか、幸村の変態を治してからお前は名乗り出ればいい。わかったか、小鷹」

小鷹「ああ……。そうするよ。その方が幸村の為になるっていうなら、俺はそうしないといけないだろうからな」


夜空「むう……」

小鷹「……それにしてもなあ」ハァ

夜空「どうした、小鷹?」

小鷹「俺と幸村が付き合えない理由って、間接的にとはいえ、俺が作ったって事だろ? 皮肉っていうか……神様は意地悪だっていうか……」ハァ

夜空(それは私もか……)シュン


小鷹「俺……報われないよな……」

小鷹「幸村の願いを叶えても、幸村の変態を治しても、俺と幸村が付き合う事はないんだぜ……」

小鷹「どっちに転んでもダメだっていうのは……残酷じゃないか……?」

小鷹「どうしても、そう思っちまうんだよ……」


夜空「……あまり考えるな、小鷹。お前の変態が治れば、幸村への想いも忘れる」

小鷹「……そういうんじゃないだろ。人の心ってのは……」

夜空「……悪かった。謝る」フイッ

『談話室』


夜空「待たせたな。では続きを始めるぞ」

星奈「別に待ってないけど。ていうか、次、あんたの番でしょ?」

理科「そうですね。残ってるのは先輩だけですね」

幸村「やはり、夜空の姉御も子供の時に何かあったのでしょうか?」

夜空「そうだな。私の場合は……」

『ケース5 夜空の原因』


夜空「生まれついての変態だ。私は元からドMなのだ。だから、治しようがない」

星奈「は?」

夜空「以上だ。これで全員済んだな」

星奈「って、夜空! あんたそれ、絶対ウソでしょ!」

夜空「嘘ではない。私は昔からそうだったのだ。特に理由などない」

星奈「この流れであんただけ理由がないっておかしいじゃない! 何かあるけど、それを隠してるでしょ、あんた!」

夜空「か、隠してなど……いない」フイッ

星奈「怪しい」ズイッ

小鷹「確かになあ」

理科「ちょっと不審ですよねえ、夜空先輩?」

幸村「」コクッ

夜空「そ、そんな事は……ない。本当に私は……根っからの変態なのだ」

星奈「」ジーッ

夜空「うう……」

星奈「夜空、あんたがさあ、照れ屋だってのはわかるけど……」

星奈「人に言わせといて、自分は言わないってのはないんじゃないの? それ、ズルくない?」

夜空「う……」

星奈「別にあんたがどれだけ恥ずかしい過去を持ってたって笑わないわよ。私たちは同じ変態なんだし」

理科「そうですよね。引く事はあっても、笑う事は絶対にないですよね」

小鷹「この際だから、言っちまえよ、夜空。全員が原因を言って、全員で治し方を考えようぜ」

夜空「だ、だが……」


夜空(子供の頃にSMをしていたから、などと言ったら流石に全員が気付くだろう……!)

夜空(小鷹にだけ気付かせる予定だったのに、幸村があんな事を言うものだから……!)

夜空(この私が、全員の前でそんな告白を出来る訳がないだろうが……! 馬鹿……!///)

夜空「な……」

星奈「な?」ワクワク

夜空「何でも……ない。原因などない! 私は元から変態なのだ!//」

星奈「あんたねえ……」

小鷹「」ハァ

理科「仕方がないですね……。そこまで言いたくないんだったら」ハァ

幸村「残念です。夜空の姉御……」


夜空「わ、私だって……! 言えるものなら……! 言えるものなら言いたいんだ!」グスッ

夜空「だけど、どうしても言えないんだから仕方がないだろうが!」グスッ


星奈「あーあ……。夜空ってば、本当に残念な奴よね、あんた」


夜空「お前に……! お前に何がわかる! 馬鹿ーっ! 死んでしまえ!」グシュッ

夜空「全員嫌いだ! 馬鹿ーっ!!」ダダダッ



小鷹「子供かよ……」

星奈「大体、バカなのはあんたの方でしょうが。言ってくれてもいいのに……。バカ夜空」

理科「でも、夜空先輩……。ちょっと可哀想でしたね。無理を言い過ぎたかも」

幸村「夜空の姉御……。少し心配です」


小鷹「…………」

夜空が何でそんなに自分が変態になったのかを言いたくないのか。

それがこの時の俺にはまるでわかっていなかった。

ヒントはいくらでもあったはずなのにな……。

気付いてやれなかった。

飛び出していった時の夜空の気持ちにも、その辛さにも。

俺は気付いてやれなかったんだ。


鈍感と言われたら、反論なんか出来やしない。

俺は変態以前に残念な男だったのだ。

それを思い知らされるのは、もう少し後の事だ……。

『小鷹家 夕食時』


小鷹「」モグモグ

小鳩「」モソモソ


小鷹「どうした、小鳩? さっきから何か元気ないぞ」

小鳩「……あんちゃんの血、昨日飲めなかった」

小鷹「だから、それは三日後までおあずけって言っただろ」

小鳩「……あんちゃん、怒ってるん?」グスッ

小鷹「怒ってなんかねーよ。ただ、我慢しろって言っただけだろ」

小鳩「……うー」

小鷹「大体、血を飲むなんておかしいだろ? 小鳩もそこはわかってるだろ。だから、ちょっと今回は我慢しろって言ったんだよ」

小鳩「……おかしくない。吸血鬼だから」

小鷹「トマトジュースで我慢しろ」

小鳩「うー……」グスッ

トゥルルル、トゥルルル

小鷹「っと、電話だ」

小鷹「」トコトコ

小鷹「はい、羽瀬川です」


『あ、あの、私は……羽瀬川君のクラスメイトの三日月と言いますが、小鷹君は御在宅ですか?』


小鷹「三日月……? 夜空か。どうしたんだ、電話なんてしてきて?」

『あ、ああ……小鷹か。その……少し相談があるんだが、いいか?』

小鷹「相談? 俺にか?」

『ああ、こ、小鷹にだ』

小鷹「いいぞ。どうした?」

『いや、その……で、電話だと少ししにくい。だから……』

小鷹「?」

『今から、そっちに行っても……いいか……?』

小鷹「俺の家にか? 別に構わないけど……」

『なら、すぐ行く。場所を教えてくれ』

小鷹「ああ、えっと……」

小鷹「おーい、小鳩ー」

小鳩「……どうした、我が半身よ」ボソッ

小鷹「今からお客さんが来るっていうから、早い内に食べ終えててくれ。片付けがしたいからさ」

小鳩「お客……?」

小鷹「ああ、部活のメンバーの一人が用事があるから来るってさ」

小鳩「それ……あんちゃんが前に言ってた幸村って男?」

小鷹「いや、夜空っていう女だよ」

小鳩「……なら心配しなくてもいいかな」ボソッ

小鷹「何か言ったか?」

小鳩「な、何でもない!//」

小鷹「玉ねぎも残さず食えよ」

小鳩「うー……あんちゃんのバカー!」

『十数分後』


ピンポーン

小鷹「夜空かな……」


小鷹「」ガチャッ

夜空「あ、えと……!」

小鷹「よ。どうしたんだ、相談って?」

夜空「……その」

小鷹「とりあえず、上がってくれ。お茶ぐらいは淹れるから」

夜空「いや、それはいい! こんな時間に男の家に上がるなど……ふ、ふしだらだからな//」

小鷹「普段から散々ふしだらな言動を吐いてるだろ……。夜空がそんな事を言うと、すげー違和感を感じるぞ」

夜空「ビ、ビッチとM奴隷を一緒にするな! 私は確かに雌犬だが、誰にでも股を開くようなふしだらな女ではない! 勘違いするな、不愉快だ!///」

小鷹「そ、それは悪かったな……。これからは気を付ける」

夜空「ああ、そうしろ//」フンッ

小鷹「つっても……。玄関前で立ち話もなんだしな」

小鷹(ビッチだとかM奴隷だとか大声で叫ばれるのは余計困るし……)

夜空「そ、それならな、小鷹……」

小鷹「ん?」

夜空「少し、歩かないか……。適当に」

小鷹「……わかった」

夜空「」テクテク

小鷹「」テクテク


小鷹「それで……相談って何だ?」

夜空「ん? ああ……」


夜空「」テクテク

小鷹「」テクテク


小鷹「夜空……相談って?」

夜空「うん……」


夜空「」テクテク

小鷹「」テクテク

夜空はなかなか相談を切り出そうとはしなかった。

俺達は何か話をするでもなく、なんとなく歩いて。

たまに横を歩いている夜空の顔を見てみたが、その顔は切羽詰まっているようでも思い悩んでいるようにも見えなかった。

それは本を読んでいる時の夜空の表情に似てはいたが、全く違う様にも見えた。どことなく穏やかというか、昔のアルバムを眺めている様な表情というか……。


そうやって十五分か二十分ぐらいだろうか。

不意に夜空が足を止めて、俺の方を向いた。



夜空「帰るか、小鷹」


夜空「」クルッ、テクテク

小鷹「って、夜空。相談はどうしたんだ?」

夜空「相談か……」


夜空「」テクテク

小鷹「」テクテク


夜空「相談はあったんだけどな。もういい」

小鷹「もういいって……」

夜空「相談しようかと思っていたが、こうして歩いている内になくなった。だから、もう大丈夫だ。付き合わせて悪かったな、小鷹」

小鷹「……そうかよ」


夜空「」テクテク

小鷹「」テクテク


夜空「大切なものは、やはり大切にするべきだと、そんな風に思ったのだ」

小鷹「……何だかわかんないけど、その考えには俺も賛成だな」

夜空「そうだろう? だから、相談事はなくなったのだ。ただ、それだけだ」

小鷹「……そっか。それならいいけどな」

『玄関前』


小鷹「本当に送らなくていいのか?」

夜空「ああ、まだそんなに遅いって訳ではないからな。一人で大丈夫だ。それに、一人で帰りたい気分でもある」

小鷹「……そうか」

夜空「また明日、部活でな」

小鷹「ああ、また明日」

夜空「じゃあな」クルッ、スタスタ


小鷹「…………」

小鷹(よくわかんなかったけど……。落ち込んでるって感じじゃなさそうだし、良かったのかな)

『帰り道』


夜空「」テクテク

夜空「…………」


夜空「」フゥ……

夜空「私は……」

夜空「あと、どれぐらい嘘をつき続ければ良いんだろうな……」

夜空「辛くはないが……切ない」

夜空「これだけ近くにいるのに……姿が見えないぐらいに遠い……」

『翌日の授業後 談話室』


夜空「さて、昨日の部活の続きだが」

夜空「ここにいる全員が、幼少期の頃の体験により変態になったという事が判明した訳だ」

星奈「あんたは言ってないでしょうが、夜空。昨日、勝手に飛び出していったきり、帰って来なかったじゃないの」

夜空「黙れ、肉。肉に発言権はない」

星奈「何であんたはいっつもそんなケンカごしなのよ!」

理科「まあまあ……。それで夜空先輩、今日は何を?」

夜空「今日はその対策会議だ。どうすれば変態が治るかという事について話し合うぞ。諸君らの活発な意見交換に期待する」

幸村「了解しました、夜空の姉御」

小鷹「少し考えてみるか……」

夜空「まず、議長である私から意見を言わせてもらうが」

夜空「何でも、慣れというものが重要だと私は考える」


小鷹「慣れ、か」

夜空「慣らしとも言うな。いきなりアブノーマルからノーマルになるのは難しい。徐々にノーマルになっていくべきだ」

理科「いきなり熱湯をガラスコップに入れるとひび割れてしまうみたいな感じですか? 段々と温度を上げていくみたいな」

夜空「まあ、そんなところだ。急激な変化は歪みを生むからな。段階を踏んで、変態を治していくべきだ」

星奈「夜空の場合だと、ドMから普通のMに戻していくみたいなそんな感じ?」

夜空「わざわざ私を例に出すな、肉」

星奈「だって、夜空の場合ってわかりやすいし」

幸村「わたくしの場合だと、まず覗き好きを治していくという感じでしょうか?」

夜空「そうなるな。とりあえず、普通の寝取られホモにしていく」

小鷹「それ、普通か?」

夜空「で、その方法についてだが」

夜空「この前、私はネットでホモの事について色々と調べていたのだがな」

理科「夜空先輩って……いわゆる腐女子なんですか? BL大好きみたいな」

夜空「ち、違う! 私にそんな趣味はない!//」

理科「じゃあ何でホモの事について? 普通、調べませんよ、そんな事」

夜空「そ、それはだな……//」チラッ


小鷹「…………」

幸村「夜空の姉御……わたくしの為に」


星奈「まったく……」ハァ

星奈「理由なんかどうだっていいわよ。私たちに関係ある訳じゃないし。そうでしょ、理科?」

理科「えー。理科にはスゴく関係ありますよ。夜空先輩がホモ大好きな腐女子だったら、私への興味が薄れるじゃないですかあ。理科はレズ希望なんですし」

星奈「はいはい。で、夜空。話の続きは?」

理科「無視ですか? ひどい。昔のトラウマが……うぅっ!」

星奈「面倒くさいわね、あんたも!」

小鷹「それで、ホモについて調べていたら?」

夜空「ああ。三代将軍の徳川家光の事が出てきたのだ。やつは見かけによらずホモだったらしい」

幸村「家光殿が……意外です」

小鷹「お前ら、知り合いなのか? 言い方がおかしいだろ」


夜空「で、その家光だが、将軍家なので世継ぎを作らねばならない。つまり、ホモだと困る訳だ。男同士だと子供は出来ないからな」

理科「でしょうねえ。でも、将軍家って事はきっと可愛い男の子を沢山侍らせていたんじゃないですか? そんな状態でホモを治すって難しいと思うんですけど」

夜空「うむ。そう思った人間が当然他にもいた。家光の乳母の春日局だ」

星奈「乳母って、育ての親みたいなものでしょ? そりゃ心配するわよね。息子がホモだったら」

小鷹「そうなのか? うちの親父は『そうか』で終わらせたけどな。そういうもんなのか?」

理科「そりゃまあ、一般的に考えたら息子がホモだったって知った時ってやっぱりショックなんじゃないですか?」

幸村「確かに。わたくしの場合、両親に言ったら泣かれそうな気がします」

小鷹「まあ、うちの親父は特殊だからな……。そうか。普通はそういうもんなのか」

夜空「恐らくはな」

夜空「で、話を戻すが、その乳母の春日局も何とかしなければいけないと思い、対策を講じた」

星奈「へえ。どんなの?」

夜空「簡単な事だ。可愛くて美人な女を集めて、家光にあてがったのだ」

理科「それって、ハーレムって事ですか?」

夜空「そうなるな。要は、女に興味を持たせる様に努力したのだ。これが後の大奥となる訳だ」

幸村「そうなのですか」

夜空「という事でだ。小鷹、幸村。お前たちはハーレムを作れ」


小鷹「は?」

幸村「え?」



「ええええっ!」

夜空「何をそんなに驚いている? ホモを治す為に女の魅力に気付かせる。その為にはハーレムを作るのが一番だ。そう順を追って説明しただろうが」

小鷹「いや、ちょっと待てよ! 俺はそんなハーレムを作る前に友達すら一人も作れないんだぞ! 無理だろ!」

幸村「わたくしも、兄貴と全く同じ状態なのですが……」


夜空「そうだな。確かにお前たちには友達すら作れない。そんな事はわかりきっている」

夜空「だが、ここには幸い女の変態仲間が三人ほどいる。三人では少ないが、全員を侍らせればハーレムと言えなくもない」

夜空「だから、お前たちはまずここにいる三人から女の魅力を学べ。そうすれば、時間はかかるかもしれないが、ホモは治るだろうからな」

小鷹「そりゃそうかもしれないけどよ……」チラッ


理科「あ、理科はノーサンキューなんで。理科の興味は夜空先輩しかありませんし」

星奈「私も男はパスよ。幸村は可愛くて女の子っぽいからまだマシだけど、小鷹なんてヤンキー崩れだし」

夜空「」ウンウン

夜空「ま、まあアレだ。私はレズではないし、同じ変態同士、小鷹のホモを治してやりたいと思っているからな//」

夜空「わ、私だったら小鷹が望むのなら、きょ、協力してやってもいいぞ//」

夜空「そ、その……デートの誘いとかな、そういうのに……///」ボソッ


小鷹「……うーん」

小鷹(夜空には、前に悪い事をしてるしな……)

小鷹(もしも、俺と夜空の立場が逆で、相手が幸村だったとしたら……)

小鷹(デート……一回ぐらいはしたいよな……)

小鷹(そうだな……。一回ぐらいは……)


小鷹「じゃあ、夜空。今度、俺とデートしてくれないか?」

夜空「///!」

夜空「デ、デートと言うか……///」

夜空「あくまで真似事だからな。小鷹のホモを治す為のもので、別に本当のデートという訳じゃないからな///」

小鷹「ああ、わかってるよ」

夜空「わ、わかってなどいないが、まあ、今はそれはいいか//」ボソッ

小鷹「どうした? 何か言ったか?」

夜空「いや、何でもない/// と、とにかく!」


夜空「……わ、わかった。デートするぞ、小鷹///」

小鷹「ああ、よろしくな」

夜空「う、うむ……///」ドキドキ




理科「なーんか、面白くないんですけど」イラッ

星奈「リア充っぽくて、見てて腹立つわね」ボソッ

幸村「兄貴が夜空の姉御とデートを……//」ズキズキ、ドキドキ

夜空「///」ホワーン


星奈「見事にとろけきってるわね」ムカッ

理科「夜空先輩と小鷹先輩ってそういう感じだったんですね。理科、知りませんでした」ムスッ

小鷹「そういう感じって、何だよ?」

理科「そういう感じはそういう感じです。それ以上は理科、言いたくないですから」プンッ

小鷹「おい。……何だよ、ったく」


幸村「兄貴……//」ズキズキ、ドキドキ

幸村「あの……夜空の姉御//」

夜空「幸村かあ……どうした?//」ホワホワ

幸村「でしたら、わたくしともデートをお願いします//」

夜空「……へ?」


幸村「先程、姉御は仰いました。わたくし達がホモである事を治すのに協力して下さると。ですので、わたくしともデートをお願いします//」

理科「むうっ……」

夜空「あ、いや、だが……」

小鷹「ま、待て、幸村! 別にお前まで夜空とデートする必要は……!」


星奈「そうよね。小鷹とはデートするのに、幸村とデートしないってのは不公平よね」

星奈「そうでしょ、夜空? あくまでホモを治す為の練習だって自分でそう言ってたんだし」

夜空「う……。そ、それは、まあ……」

星奈「じゃあ、決まりね。夜空と幸村もデートをするって事で」

夜空「わ、わかった。私に二言はない。幸村ともデートをする」

幸村「ありがとうございます、姉御//」

夜空「いや、なに……。この部の代表として当然の事だ」

小鷹「マジかよ……」ズキッ

夜空「それでは、デ、デートの日取りだが……//」

夜空「今度の日曜に幸村、その次の日曜に小鷹という順で」

理科「ちょっと待ってもらえますか、夜空先輩」

夜空「何だ、急に」

理科「理科も先輩とデートします」

夜空「はあ!?」


星奈「?」
小鷹「?」
幸村「?」

夜空「何で私とお前がデートしなきゃならない! その理由がないだろう」

理科「ありますよ。大ありですよ。だって、理科は二次元にしか興味がない変態ですし」

理科「理科が三次元に興味を持っている唯一の人が先輩なんですよ。だから、まずは夜空先輩から慣らして、三次元に興味を持つようにするんです。理屈は通ってるじゃないですか」

夜空「いや、お前は二次元とか三次元とか言う前に、自分の死に対して性的興奮を覚えるド変態ではないか。まずはそこから治すべきだろう」

理科「治しますよ。理科はタナトフィリアから、段階的にまずはドMになるんです。先輩に殺されたいと思っているのを、先輩にいたぶられたいに変わるんです」

理科「夜空先輩は女に対してはドSになるので、だからその相手にピッタリなんです。ほら、やっぱり理屈は通ってるじゃないですか」

夜空「それはこじつけというものだ。理屈など通ってない!」

理科「なら、他の人はどう思いますか? 理科の言っている事は間違ってますか?」


星奈「私は合ってると思うけど……あんたたちはどう思う? 小鷹、幸村?」

小鷹「合ってるんじゃないか?」

幸村「わたくしもそう思います」


夜空「お前ら……。理科に買収でもされたのか!?」

理科「違いますよお。理科の言っている事が客観的に見て正しいんです。これで、多数決で決まりですね。理科、夜空先輩とデートします♪」

夜空「何故、こうなる……!?」ガクッ

星奈「それじゃあ、ロリレズの私は幸村とデートって事になるのかしら?」

小鷹「!?」

理科「そうですね。幸村君、女の子みたいですし、星奈先輩としては一番取っつきやすいですよね」

小鷹「あ、いや、幸村は……」

星奈「幸村、あんた私とデートね。いいでしょ?」

幸村「星奈の姉御がそう仰るのであれば、わたくしは女性に恥をかかせる事は出来ません。お受けいたします」

星奈「なんか微妙に引っかかる言い方だけど……。まあいっか。それじゃあ、よろしくね、幸村」

幸村「はい」


小鷹「何でこうなる……!?」ガクッ

星奈「なら、あと残ってるのは夜空だけなんだけど……」

理科「夜空先輩の場合、ドMのドSですから、ノーマルな幸村君とのデートでいいですよね。つまり、もう決まってます」

夜空「い、いや、それならノーマルな小鷹ともう一度デートを……」

理科「増やす必要はないです。もう決まってるんで」

星奈「そうよね。あくまで試しなんだし」

夜空「だが……その……!」


コンコン

理科「あれ? お客さんですか」

星奈「またあのマリアとかじゃないの? 夜空、あんた追い返してよ」

小鷹「夜空ぐらいだしなあ、子供にあんな事を出来るのは」

幸村「お願いします、姉御」

夜空「」

夜空「いいんだ、私など所詮、うんこ女を追い返すだけの存在なのだ」トボトボ

夜空「」ハァ

ガチャッ


小鳩「……あ、あの……あんちゃんは」


夜空「? 何だ、この子供は?」

星奈「やあん! なに、この子、チョー可愛い!!// ハァハァさせて! ペロペロさせて!!」ダダダッ

小鳩「ひぃっ!」ビクッ


小鷹「小鳩!?」

小鳩「あ、あんちゃん! 助けて!!」グスッ

夜空「小鷹、この子供を知っているのか?」

理科「あんちゃんって言ってましたけど、妹さんですか?」

星奈「まさか! ホモの妹がこんなに可愛い訳ないじゃない!」

星奈「ねえ、小鳩ちゃん! お姉ちゃんに靴を舐めさせてくれない? 小鳩ちゃんなら一万円ぐらいお姉ちゃん出し」

夜空「」ビシッ!!

星奈「いったー! 何するのよ、夜空!!」

夜空「犯罪を止めてやったのだぞ。むしろ、礼を言え!」

星奈「犯罪って、同意の上なら合法でしょうが!」

夜空「犯罪だ! そこまで阿呆だったのか、貴様は!」


小鳩「あ、あんちゃん、あの変態なに?」ビクビク

小鷹「いいか、小鳩。アレには絶対に近付くなよ。監禁されるぞ」

星奈「し、しないわよ! 私だってそれぐらいはわきまえてるんだから!」

小鳩「う、ううっ……変態」ビクビク

夜空「これでよしっと」パンパン

星奈「ちょっと、このロープほどいてよ! 小鳩ちゃんをクンカクンカする事も出来ないじゃないの!」ジタバタ

理科「亀甲縛り出来る夜空先輩もそうですけど、星奈先輩も結構な変態ですよね。ていうか、今まで捕まらなかったのが不思議なくらいのレベルで……」

小鷹「よし、小鳩。これでもう安心だからな」

小鳩「う、うん……じゃなくて、クックック。大儀であった」

夜空「……何だ、それは?」

理科「理科、知ってますよ。鉄の死霊使い(くろがねのネクロマンサー)ですよね。アニメです」

小鷹「ああ。小鳩は今、そのアニメにハマってるから」

理科「それでコスプレですか。理科と気が合いそうですね」

小鳩「コスプレなどではない。我は悠久の時を生きる」

星奈「きゃあん! 小鳩ちゃん、痛可愛い!! 私の御主人様になって、踏みつけられたい!///」ハァハァ

小鳩「ひぃっ!」ビクッ

夜空「黙ってろ、肉」ビシッ

星奈「ったー! もう!!」

理科「それで、やっぱり小鷹先輩の妹さんなんですか?」

小鷹「ああ。羽瀬川小鳩。間違いなく、俺の妹だ」

夜空「小鷹に妹がいたとはな……。初耳だ」

幸村「兄貴の妹君ですか……」

小鳩「」ジロッ

幸村「?」


小鷹「それで、小鳩。どうしたんだ? こんなところに来て?」

小鳩「我の望みを叶える為に、契約に従い我が半身を迎えに来た、と言っておこう」

夜空「つまり、お願いがあって小鷹のところに来たという事か」

小鷹「どうした、飯か? お腹すいたのか?」

小鳩「クックック。そうではない。かねてから伸ばされて来た我への特別な紅き供物。それを要求しに来たのだ」

小鷹「特別な赤い供物って……血か?」

小鳩「あ、あんちゃん、それは言っちゃダメって!」アセアセ


夜空「血だと……?」

理科「何だか理科と近しい匂いがしますね」

星奈「血……!?」

幸村「……血ですか」

小鷹「ああ、小鳩は血を飲むのが好きなんだ。あと、ブラコンだな」

小鳩「だから、あんちゃん! それ言っちゃダメって言うたやないか! 何で言うん!?」

小鷹「いや、ここにいるの全員変態だしな。それに、今、その変態を治そうって話になってるから、丁度いいと思って」

小鳩「で、でも!」ドキドキ


夜空「ふむ……。変態の妹は変態という訳か……」

理科「医学的にはヴァンパイアイズム、もしくは吸血病って呼ばれるやつですね。血液自体が好きなヘマトフィリアってのもあるそうですけど」

星奈「小鳩ちゃんに血を飲まれたりしちゃうんだ……///」ドキドキ

幸村「変態道とは、奥が深いものですね」


理科「まあ、あれですね。動物にしか興奮出来ない人とか、食べ物や乗り物にしか興奮出来ない人とかもいるんで」

理科「一番ヤバいレベルのだと、殺人嗜好病とか死体性愛者とかの、快楽殺人に死姦とかのグロい話になりますし」

理科「それに比べれば、理科たちはノーマルな方です」


夜空「お前だけは違うがな」

理科「え?」

小鷹「確かにな」

星奈「ド変態、あんただけだし」

幸村「」コクコク

理科「おかしいなあ……」


小鳩「……?」

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