璃緒「節電するわよ!」 凌牙「は?」 (16)

夕方……

凌牙(最近めっきり冷え込んで来たな。早く家に入って温まろう)

凌牙「ただいま……って、家の中、寒っ! ぶるっと来たぜ!?」

璃緒「お帰りなさい、凌牙」ズシンズシン

凌牙「おい、璃緒! 先に帰ってるなら何で暖房……!?」

璃緒「どうかしたの、凌牙? ポカンと口を開けたまま呆けていると死んだ魚みたいよ?」

凌牙「どうかしたのはお前の方だろ? 何だその厚着の量は?
膨れ上がって自業自得のイラストのキャラみたいになってるぞ?」

※若干のキャラ崩壊注意

璃緒「可愛い妹に対してその例えは無いんじゃない? しょうがないでしょ、寒いんだから」

凌牙「限度ってもんがあるだろう、限度ってもんが。つーか、寒いなら暖房つけろよ」

璃緒「そういう訳にもいかないのよ。はい、これを見て」

凌牙「何だ、この紙は?」

璃緒「今月の電気代の領収書。結構な額でしょ?」

凌牙「まあ最近は暖房とかつけっぱなしだったからな……で、これがどうした?」

璃緒「どうしたじゃないでしょ! これは由々しき事態なのよ、凌牙!!」プンスカブックス

凌牙「別に良いだろう、これぐらいの出費。ウチはそこまで生活に困ってる訳でもないんだから」

璃緒「駄目よ。お父さん達が残してくれたお金だって無限にある訳じゃないのよ?
節約出来る時には節約しないと」ズシンズシン

凌牙「分かった、分かったからその姿で近づいて来るな。なんか力士に迫られてるみたいで怖いから」

璃緒「という訳でこの電気代を少しでも減らす為、神代家は今日から節電生活を始める事にします!!」

凌牙「1人でやってろ。俺は部屋に戻って温まって来るから」

璃緒「あ、ちなみに勝手に暖房使ったらその分の使用料は凌牙のお小遣いから引くから」

凌牙「はあ!? 何勝手に決めてんだよ!!」

璃緒「当り前でしょ? 今の神代家の家計は私が預かっているんだから。
つまり最初から凌牙に残された道は私に従う事しか無いの……フフッ、悔しいでしょうね」

凌牙「てめえ!」

璃緒「とにかくこれは決定事項だから。諦める事ね」

凌牙「くそ、何でもかんでも勝手に決めやがって……お前は何処ぞの団長か」

璃緒「何とでも言いなさい。さて、そろそろ部屋に戻りましょうか。ホッ! ホッ!」エッチラオッチラ

凌牙「……当たり前だが何か動きにくそうな格好だな、それ」

璃緒「真っ直ぐ歩くのは良いんだけど、方向転換が意外と難しくて……きゃあ!?」

ずてーん

璃緒「うぅ、頭打った~……って、何これ? 起き上がれない!? 助けて、凌牙~」ジタバタ

凌牙(……しばらくこのまま放置しとくか)スタスタ

璃緒「あ、私を放っておいて何処に行くのよ、この鮫畜生! うえ~ん、りょーがー!!」ジタバタ

…………

ぐつぐつ……

璃緒「という訳で今晩はガスコンロでお鍋よ!」

凌牙「という訳がどういう訳なのかは知らないが、鍋は悪くねえな。
ああ、それとあの厚着は脱いだのか」

璃緒「さすがにあの恰好のままじゃお鍋作れないし、食べにくいからね」

凌牙「まああの恰好で鍋とか食べてたらまんま力士の食事みたいだしな」

璃緒「だから妹に対してそんな例えは止めなさいって。せめて妊婦にしなさいよ」

凌牙「それはそれで何か嫌なんだが……」

璃緒「凌牙の分は私がよそってあげるわね」

凌牙「おい、玉葱あんまり入れるな。それともう少し肉入れろよ」

璃緒「駄目よ、好き嫌いしちゃ。まったく、凌牙は私がいないとまともな食生活も送れないんだから」

凌牙「うるせーよ。で、この節電生活っていうのは何時まで続くんだ?
ツッコまなかったが明かりも小さい豆電球1つだけだし……まさか来月まで続くんじゃないだろうな?」

璃緒「少なくとも今日と明日は暖房なしでいきましょう。
で、その後は続けられる限り続けましょう。こう、いい感じの日まで」

凌牙「いい加減だな、おい」

璃緒「し、仕方ないじゃない……私だってこんな事、初めてなんだし///」
凌牙「何で照れるんだよ」

…………

璃緒「さて、ご飯も食べ終わったし、一緒にお風呂に入ってさっさと寝ましょう」

凌牙「まだ寝るには早すぎるだろ。後一緒に風呂には入らねえから」

璃緒「だって寝ていれば電気使う事ないじゃない。寒くてもお布団の中なら暖かいし」

凌牙「しかしさすがにこの時間に寝るのはな……」

璃緒「じゃあデュエルでもする?」

凌牙「お前困ったらとりあえずデュエルしとけば良いって思ってるだろ?」

璃緒「そういう訳じゃないけど……でも白熱したデュエルをすれば身体も温まると思わない?
それに最近ようやくレベル5の水属性・鳥獣族が出たから、それをデッキに入れたテストプレイもしたいし」

凌牙「しかしやるにしてもお前って氷デッキだからデュエルしていると余計に寒くなりそうなんだよな。
どうせならお互いにバーンデッキ使うっていうのはどうだ? たまにはスタイル変えて炎系のカードで」

璃緒「ごめんなさい。炎系のカードはあんまり……」

凌牙「……すまん、悪かった」

璃緒「やっぱり今日は早く寝ましょう。とりあえず私と凌牙の着替えとタオルを用意するわね」

凌牙「そうだな。だが絶対一緒に風呂には入らないからな」

凌牙の寝室……

凌牙(やっぱり夜は一段と冷えるな……おまけに早過ぎて眠れないし)

凌牙(こっそり暖房入れるか? でも絶対バレるし、バレたら小遣いへらされるからな)

凌牙(仕方ない、諦めて寝るか。とりあえず脳内で羊トークンでも数えて……)

トントン……ガチャ

璃緒「凌牙、起きてる?」

凌牙「……お前なぁ、兄妹だからって勝手に部屋入ってくるなって何時も言ってるだろ? イラッとするんだよ」

璃緒「何よ、ちゃんとノックしたじゃない」

凌牙「返事する前に開けたら意味ないだろう。後ノック2回はトイレだ。こういう時は最低でも3回しろ」

璃緒「札付きの癖にいちいち細かいわね」

凌牙「それで何の用だ? 枕抱きかかえているから何となく予想は出来るが……」

璃緒「寒くて眠れないの。一緒に寝ましょう」

凌牙「断る」

璃緒「むぅ、そんな即答しなくても……」ホッペプクー

凌牙「寝る時くらい1人で静かにいたいんだよ。それにそんなに寒いなら暖房つければ良いだけの話だろ?」

璃緒「だって最低でも今日と明日はつけないって決めたんだもん」

凌牙「じゃあ我慢しろ。そもそも氷の女王とか呼ばれてる癖に寒くて眠れないってどういう話だよ」

璃緒「それは関係無いでしょ……ねえ、本当に一緒に寝てくれないの」

凌牙「お断りだ」

璃緒「……そう」

ドアバタン

凌牙(……諦めたか)

凌牙(まあ一緒に寝るくらいは構わないんだが……これで音を上げて暖房をつけてくれたら万々歳だからな)

タッタッタッ……ガチャ

凌牙(んっ、戻って来た?)

ジャキンジャキンジャキーン!!

凌牙(何だ、この聴き慣れた音は? そう、これはデュエルディスクの起動音……)

璃緒「この部屋に対して魔法カード発動、絶対零……」

凌牙「分かったよ! 一緒に寝れば良いんだろう、畜生!!」ガバッ

璃緒「エヘヘ~凌牙と一緒のお布団~♪」ホクホク

凌牙「あんまり引っ付くなよ、暑苦しい」

璃緒「寒いんだからちょうど良いじゃない。凌牙も『マシュマロ~』とか言いながら私に抱き着いても良いからね。
あ、デュエリスト的には『マシュマロ~ン』かしら?」

凌牙「そんなToLOVEるは無いから安心しろ。ていうかマジで引っ付き過ぎだって。思いっきり当たってるし……」

璃緒「当ててるのよ」

凌牙「そんなテンプレな回答は要らん」

璃緒「うりうり~」

凌牙「こすり付けるな、痴女が!!」

璃緒「ねえ、凌牙」

凌牙「今度は何だ?」

璃緒「実は私、寒いのってあんまり得意じゃないのよ」

凌牙「今更過ぎるカミングアウトだな」

璃緒「でも寒いからこそ、こういう時に凌牙の体温を強く感じれるんだよね」

凌牙「…………」

璃緒「だから今は寒いの、ちょっとだけ好きになったかも」

凌牙「……下らねえ事言ってないでさっさと寝るぞ」

璃緒「うん……おやすみ、凌牙」

凌牙「おう……」

璃緒「…………」

凌牙「…………」

璃緒「……うりうり~」

凌牙「やめろ!!」

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