璃緒「凌牙を尾行します」 Ⅳ「は?」 (59)

璃緒「凌牙、今度の日曜日お買い物に付き合ってくれない? 新しい服とか見たいのよ」

凌牙「あー、悪いが日曜はちょっと用事があるんだ。荷物持ちなら別の誰かに頼めよ」

璃緒「え~、またぁ? 先週もそう言って断ったじゃない。
そもそも私が居ないとぼっちの凌牙が休日に何の用があるって言うのよ?」

凌牙「実の兄をぼっち言うな。俺には俺の都合ってもんがあるんだよ」

璃緒「むぅ~」ホッペプクー

翌日・ハートランドシティのファミレス……

璃緒「凌牙を尾行します」

Ⅳ「は?」

璃緒「『は?』じゃありませんわ。尾行は今度の日曜日ですからスケジュールは開けて起きなさい、良いですわね?」

Ⅳ「いや、いきなり凌牙の奴を尾行すると言われても……何でだ? 理由も含めてまずは順序立てて話せよ」

璃緒「あなた、最初からきちんと説明しないと何も理解出来ませんの? 少しは会話の内容から全体を察しなさい。
そんな理解力の無さで良く極東エリアのチャンピオンなんてやってますわね」ヤレヤレクス

Ⅳ「急に呼び出されたと思ったら何で俺、こんな理不尽な怒られ方されてんだ?」

※今更ながら若干のキャラ崩壊注意

Ⅳ「つまり最近凌牙の奴が日曜になると用事があると言って何処かに出掛けてしまう。しかもその理由はお前にも秘密と」

Ⅳ「で、教えてくれないからこっそり尾行して調べてやろう……まとめるとこういう事か?」

璃緒「そういう事ですわ。一応聞きますけど、貴方はこの事について何か知りませんの?」

Ⅳ「知らねえな。そもそもあいつとは頻繁に連絡取ってるって訳でもねえし」

璃緒「まったく、私に隠し事するなんて凌牙のくせに生意気なのよ。これで下らない理由なら本当に許さないんだから。
もういっそしばらくの間、夕飯は玉葱料理だけにしてやろうかしら?」イライライロ

Ⅳ「おい、イラつく気持ちは分かるが少し落ち着けって。
コップ掴んでる手が震えて、まるで水見式の時の強化系の反応みたいに中の水が零れてるぞ?」

璃緒「とにかくこれで理由は分かっていただけましたわね。さあ、四の五を言わずに私に付き合いなさい、Ⅳ」

Ⅳ「それ、人に物を頼む時に使う言葉じゃねえよな? そもそも尾行したいならお前1人でやれば良いだろ?
何で俺が付き合わないといけないんだよ?」

璃緒「雑用係が1人居れば何かと便利と思いません?」

Ⅳ「……雑用係ってもしかして俺の事か?」

璃緒「…………」フッ

Ⅳ「鼻で笑いながら『何を当たり前の事言ってるんだ、こいつ』みたいな顔してんじゃねえよ」

Ⅳ「悪いが雑用係なら他を当たってくれ。俺だって暇じゃないんだ」

璃緒「断りますの? ありえないから、そんな事」

Ⅳ「あのな、極東エリアのチャンピオンって肩書きを持っているとそれだけで色々とやる事もあって忙しいんだよ。
今度の日曜日は雑誌のインタビューがあるしな」

璃緒「……デュエルで私に重傷負わせて病院送りにしたくせに」ボソッ

Ⅳ「うぐっ!? そ、それは今は関係ねーだろ?」←Ⅳさんの精神にダイレクト・アタック

璃緒「私、あの事件で心に深い傷を負ってしまいましたの……ねえ、知ってます?
身体の傷は癒えても、心の傷って中々治らないものなんですよ?」ニヤニヤ

Ⅳ(心に傷を負った奴がそんな悪魔みたいな笑顔浮かべてたまるかよ、畜生!)グヌヌ

璃緒「それでも貴方の生活の事を思ってこれまでの件は黙っていましたけど……心の傷を癒す為にも、ちゃんとした所に知らせるべきかしらね?」

Ⅳ「てめえ、この俺を脅してんのか……?」

璃緒「あら、脅すだなんてとんでもない。私は凌牙同様にⅣ、貴方のファンなんですよ?」

璃緒「でもチャンピオンならファンのお願いは聞いて然るべきだと思いますわ。
特にファンサービスは貴方のモットーなのでしょ?」フフン

Ⅳ(こいつ……魔女だ)

日曜日・待ち合わせの公園……

璃緒「遅い、罰金」

Ⅳ「てめえは何処の団長だ。ちゃんと待ち合わせ時間の5分も前に来ただろうが」

璃緒「待ち合わせ時間5分前だろうが女を待たせた時点で紳士失格ですわよ、機関車さん?」

Ⅳ「機関車言うな。それより何だ、その格好?
黒いスーツにソフト帽とサングラスって探偵物語のコスプレか何かか?」

璃緒「変装ですわ。尾行するんですから当然目立たない格好の方が良いでしょう?」

Ⅳ「逆に目立ち過ぎだろ、その格好……」

璃緒「さて、あまり時間もありますんし……とりあえずこれをどうぞ」

Ⅳ「……このジュラルミンケースは何だ?」

璃緒「貴方の分の黒スーツとソフト帽、サングラスが入っていますわ。
そこのトイレの中で着替えてらっしゃい」

Ⅳ「俺も着るのかよ!?」

璃緒「着替えたらすぐに家の近くに移動しますわよ。そろそろ凌牙が出掛ける時間ですから」

神代家近くのゴミ捨て場……

璃緒「ここからなら我が家も良く見えますし、凌牙が家を出たらすぐに分かりますわ」

Ⅳ「なあ、やっぱりこの格好目立たねえか? 明らかに浮きまくってる気がするんだが?」

璃緒「男のくせに心配性ですわね。大丈夫ですわよ。この黒ずくめの格好なら仮に並んでジェットコースターの最後尾に乗っても浮いたりなんかしませんから」

幼女「ママーあそこに変な人がいるよ?」

ママ「しっ、見ちゃいけません!」

Ⅳ(……これ通報されねえだろうな?)

凌牙「…………」ゲンカンガチャ

璃緒「あ、凌牙が家から出て来ましたわ!」

Ⅳ(当たり前だがあいつは何時もの普段着か。何か羨ましいぜ)

璃緒「私に隠れてコソコソ何をしているのか……必ず突き止めてみせますわ! 行きますわよ、銀河美少年!!」ダッ

Ⅳ「俺は颯爽登場なんかしねーぞ、たくっ」ダッ

…………

凌牙「…………」テクテク

璃緒「街中の方まで来ましたわね」

Ⅳ「通行人の視線がさらに痛くなって来やがったな……しかしさっきから思ってたんだが何で凌牙の奴は徒歩なんだ?
普段乗ってるバイクはどうした?」

璃緒「ああ、原因は不明ですけど昨日の朝からエンジンの調子が急におかしくなったらしく、今は修理に出してますの。
そのおかげで尾行もしやすくなったから、こちらとしてはありがたいんですけどね」

Ⅳ「……お前、まさか」

璃緒「あ、凌牙が建物に入りましたわよ!」

Ⅳ「何だよ、ただのコンビニじゃねえか」

璃緒「中で何をしているのかしら? よし、私達も入りましょう!」

Ⅳ「やめとけ。距離を取っているから何とかバレずに済んでいるが、店内に何か入ったら一発でアウトだぞ?」

璃緒「むぅ、ついでにファミチキを買おうと思ってましたのに」

Ⅳ「あそこはマチのほっとステーションだからLチキはあってもファミチキはねえよ……お、もう出て来たぞ」

璃緒「何も買ってないみたいですし、何となく寄っただけみたいですわね……しかし璃緒リポーターはめげずに『男子中学生神代凌牙 禁じられた休日』のレポートを続けますわ!」

Ⅳ「お前は何時からリポーターになったんだ? そして何だ、その怪しげなタイトルは?」

…………

<アジュジュシター

凌牙「…………」テクテク

璃緒「本屋に靴屋、CDショップに楽器店……今のとこ寄ってる所は全部凌牙が良く行くお店ですわね」

Ⅳ「ほとんど何も買わずに5分くらいで店を出てるが……これ単に休日だから町をブラブラしてるだけじゃねえのか?」

璃緒「でもブラブラしたいだけなら私と一緒に出掛けても良いはずでしょう?」

Ⅳ「たまにはお前から解放されて1人でのんびりしたかったんだろ」

璃緒「ふん!」バシッ

Ⅳ「痛っ! くっ、お前……弁慶さんは……弁慶さんは蹴るなよ……」ウズクマリー

璃緒「絶対に凌牙は何かを隠してますわ! ほら、良く凌牙の行動を見てみなさい!」

Ⅳ「行動って……ん?」

凌牙「…………」チラッ

Ⅳ「そういやさっきからやたら腕時計を確認してるな。時間を気にしているのか?」

璃緒「生真面目な凌牙が時間を気にしているという事はきっと誰かと待ち合わせしていますのよ。
店に入っていたのはその時間まで暇を潰していただけですわ」

Ⅳ「つまり友達と待ち合わせしてるってか?」

凌牙「まさか。あの人付き合いの悪い凌牙とわざわざ休日を共にする様な物好きな友達なんて居るはずありませんわよ(断言)」

Ⅳ「お前ブラコンのくせにたまに凌牙に酷い事言うよな」

凌牙「まあ、それでも凌牙は格好良いですから……それに惹かれた相手が居てもおかしくはない、と思いますわ」

Ⅳ「…………」

…………

凌牙「…………」

璃緒「時計台の前で動きを止めましたわね」

Ⅳ「あの様子だとお前が睨んだ通り、誰かと待ち合わせしてんだろうな」

璃緒「わざわざ私に内緒で……一体どんな相手か、一目顔を見てやりますわ!」フンス

Ⅳ「…………」

璃緒「…………」

Ⅳ「…………」

璃緒「…………」ソワソワ

Ⅳ「……なあ、神代璃緒」

璃緒「……何ですの?」ソワソワ

Ⅳ「もう帰らねえか?」

璃緒「はあ? ここまで来て何を言ってますの、貴方は!?」

Ⅳ「凌牙は誰かと待ち合せをする為に出掛けた……これだけ分かればもう十分だろ?」

璃緒「全然十分じゃありませんわ! 相手が誰なのかキチンと確かめませんと!」

Ⅳ「確かめてどうすんだよ? 相手がもし女だったら乱入して無茶苦茶にすんのか?」

璃緒「!」

Ⅳ「兄妹同士でもプライバシーってもんはあるんだ。何でもかんでも知りたい、聞きたいってのはどうかと思うぜ?」

璃緒「でも……それでも嫌なのよ、凌牙が私に隠し事しているなんて! その事実が!」

Ⅳ「……凌牙はお前を相当大切に思ってる。なんせお前を傷つけた俺に対し、本気で殺すくらいの勢いで挑んで来たからな」

璃緒「いきなり何ですの?」

Ⅳ「その凌牙が大切なお前に話さなくて良いと判断したんだ。
隠した理由まではさすがに分からねえが、きっとそこにはお前を想っての事もあるはずだ」

Ⅳ「俺が言えた義理じゃねえかもしれねえが……もう少し凌牙の奴を信じてやれよ。
お前にとってはたった1人の家族じゃねえか」

璃緒「う、うるさいですわよ、Ⅳのくせに! そんな事は貴方に言われなくても……」


?「すいません、お待たせしました!」


璃緒&Ⅳ「!」

Ⅳ「あいつは……」

璃緒「小鳥、さん?」


小鳥「あの、待ちましたか?」

凌牙「いや、単に俺が早く来てただけだ。時間通りだから気にするな……それじゃさっさと行くぜ」

小鳥「はい!」


Ⅳ「あいつ、遊馬と良くつるんでる奴だよな? あいつらって仲良かったのか?」

璃緒「…………」ダッ

Ⅳ「ちょ、後つけんのか? そんなに走ったらバレるぞ! おい、待てって!!」ダッ

…………

Ⅳ「1人でさっさと行きやがって……何処に行っちまったんだ?」

璃緒「…………」

Ⅳ「居た! おい、凌牙はどうしたんだ?」タッタッタッ

璃緒「…………」

Ⅳ「返事くらいしろよ。何かあったのか?」

璃緒「凌牙ならこの店に……小鳥さんと仲良く入って行きましたわ」

Ⅳ「ここって……ジュエリーショップか?」

璃緒「立派なお店ですわ。ただの友達で入る店では……ありませんわよね?」

璃緒「私、知りませんでしたわ」

璃緒「てっきり小鳥さんは、遊馬の事が好きだとばかり思ってました」

璃緒「まさか私に隠れて凌牙と付き合っていたなんて……本当に驚きですわ」

Ⅳ「待てよ。まだ凌牙があの嬢ちゃんと付き合ってると決まった訳じゃねえだろ?」

璃緒「2人でこんな店に入ってますのよ? 確定的ですわ」

Ⅳ「お前、大丈夫か?」

璃緒「ええ、大丈夫ですわよ。だって凌牙が、だ、誰と付き合おうがそれは凌牙の、じ、自由ですもの」ジワッ

璃緒「い、妹の私が、口を出す権利なんて……さ、最初から……」ウルウル

Ⅳ(あ、やべえ。これは絶対にやべえ)

璃緒「凌牙の、自由、だから……うっ、うっ、ふえええええぇぇん!!(号泣」

Ⅳ「お、おい! こんな往来で泣くなよ!?」オロオロットン

璃緒「えぐっ、泣いてなんか……ひくっ、ありませんわよ……えぐっ」ポロポロ

Ⅳ「これほどまでに説得力の無い言葉なんてそんなにはねえぞ……と、とにかく向こうに行くぞ!
ここは人目につく!」

子供「あー兄ちゃんが姉ちゃん泣かせてるー。
言ってやろ~言ってやろ~♪ 先生に言ってやろ~♪」

Ⅳ「うるせえよ、クソガキ! 俺が泣かせたんじゃねえつーの!!」

璃緒「うぇぇぇぇん、りょーがの馬鹿~」ポロポロ

…………

Ⅳ「落ち着いたか?」

璃緒「ええ、もう大丈夫ですわ。さっきは少し取り乱してしまっただけですから」オメメゴシゴシ

Ⅳ「まあこれでも飲めよ。俺からのファンサービスだから金は要らねえからさ」

璃緒「……私、ファンタならグレープよりオレンジの方が好きですわ」

Ⅳ「そういう口が聞けるなら一先ずは大丈夫みてえだな」

Ⅳ「で、どうすんだ?」

璃緒「どうするもこうするもさっき言った通りですわ。凌牙が決めた相手なら、私に口を出す権利はありませんもの。
温かく見守るだけですわよ」

Ⅳ「……お前がそれで良いなら俺は何も言わねえよ」

璃緒「でもまさか凌牙に先を越されるとは思いませんでしたわ。あーあ、もう私も彼氏を作っちゃおうかしら?」

Ⅳ「ハッ、お前みたいな女を彼女にする男なんていんのかよ?」

璃緒「あら、これでも私って結構モテますのよ? その気になれば彼氏くらい何時でも作れますわ」

Ⅳ「まあ俺の目から見ても見た目だけは悪くないからな、お前は」

璃緒「褒め言葉として受け取っておきますわ」

璃緒「…………」

Ⅳ「…………」

璃緒「……ねえ」

Ⅳ「……何だ?」

璃緒「ご飯でも食べに行きません? 勿論貴方の奢りで」

Ⅳ「何が勿論かは分からねえが、確かに腹は減ったな。賛成だ」

璃緒「そこのファミレスにでも入りましょう。私、今日は食べますわ」

Ⅳ「まあ昼飯くらいファンサービスしてやるよ」ヨッコラセイクリッド




小鳥「あれ、そこに居るのってもしかして璃緒さんですか?」

凌牙「そっちはⅣか? お前ら、その格好は何だよ?」

璃緒&Ⅳ「!?」

Ⅳ(まさかこのタイミングで会っちまうとは……)

璃緒(凌牙、あの店の手提げ袋持ってる……小鳥さんに何か買ってあげたんだ……)

凌牙「やけに早く家を出たと思ったら……お前、Ⅳなんかと一緒に何してんだ?」

小鳥「もしかしてそれってペアルック? まさか璃緒さん達、デートしてたんじゃ♪」キャー

Ⅳ「いや、これはだな……」アタフタキオン

璃緒「――デートしてるのはお二人の方でしょ?」

凌牙「は?」

璃緒「水臭いですわよ、凌牙。私に小鳥さんとの関係を黙っているなんて♪」ニコッ

凌牙「は? お前何言って……?」

璃緒「小鳥さん、兄の事よろしくお願いしますね」ペコリ

小鳥「あの、璃緒さん?」

璃緒「ではデートの邪魔をしては悪いので私達はこれで。行きますわよ、Ⅳ」

Ⅳ「おい、神代璃緒……って、急に引っ張るな! ちょ、何でお前こんなに力強いんだよ!?」

凌牙「何だ、あいつ?」

小鳥「……これはまずいわ」

凌牙「まずいって何がだ?」

小鳥「分からないんですか? 璃緒さん、私達の事を絶対に勘違いしてます!」

凌牙「勘違い?」

小鳥「ああ、これだから私の周りの男子はどいつもこいつも……とにかくすぐ璃緒さんを追ってあげて下さい!
それとさっき買った物ももう渡してあげて!」

凌牙「いや、しかしそれだとサプライズが……」

小鳥「いいからさっさと行きなさぁい!!」プンスカブックス

凌牙「は、はい!」ビクッ

…………

Ⅳ「お、おい! 何処まで引っ張るんだよ? もうファミレスの前も通り過ぎたぞ!?」

璃緒「…………」

Ⅳ「聞いてんのか? おい、神代璃緒!!」

璃緒「……やっぱり、駄目でしたわ」

Ⅳ(肩が……震えてる?)

璃緒「温かく見守るって決めたのに……2人を見ると、我慢出来ない……」ウルウル

璃緒「凌牙が誰かに取られるなんて……私には……我慢……うぅ……」ポロポロ

Ⅳ「お前……」

凌牙「――璃緒!!」

璃緒「!」

Ⅳ「凌牙!?」

凌牙「ハァ、ハァ……たくっ、いつの間にそんなに足が速くなったんだよ? もう少しゆっくり走れよ」

璃緒「……何で追って来たのよ?」

凌牙「お前の様子がおかしいからに決まってるだろ? それに観月の奴にも追えって言われたし」

璃緒「別に心配して貰わなくても結構よ。それより小鳥さんを一人にして良いの?
早く小鳥さんの所に戻りなさいよ」プイッ

凌牙「何をそんなに怒ってんのか知らないが、それは多分お前の勘違いだぜ……ほらよ」

璃緒「何よ、急に手提げ袋を突き出したりなんかして。それは小鳥さんの……」

凌牙「お前のだ。中にはイヤリングが入ってる。
まあ高くはねえが、お前の好きそうなデザインだとは思う」

璃緒「…………」

璃緒「ふぇ!?///」ボン☆

璃緒「えっ、何で? だって凌牙は小鳥さんと……そもそも誕生日でもないのに何で私にプレゼントなんか!?」

凌牙「退院祝い」

璃緒「へ?」

凌牙「お前、前に言ってただろ? 『これだけ長い間入院したんだから、退院祝いは豪華なのが良い』って。
だから俺なりに考えて用意したんだよ」

璃緒「た、確かにそんな事言ったけど……///」

Ⅳ(なぜだろう? 何かこの場に居るのが凄く気まずい……)

璃緒「こ、小鳥さんと一緒だったのは……?」

凌牙「こういうの選ぶのは初めてだったから女の意見も聞きたくてな。
遊馬経由で相談したら選ぶの手伝ってくれるって言うから素直に甘えた」

璃緒「お金は? 高くないって言ってもあんなお店なら結構するんじゃないの?」

凌牙「バイトで貯めた。最近日曜に出掛けてたのはそれだ」

璃緒「バイトって凌牙、まだ中学生でしょ?」

凌牙「年齢ごまかせばどうにでもなる。札付き舐めんな」

璃緒「凌牙……」

璃緒「でも本当に買ってくれるなんて……半分は冗談で言ったのよ?」

凌牙「ああ、知ってた。だからこっそり買って驚かせようとしたんだよ。
まあその結果お前に変な勘違いさせたのは……その謝る」

璃緒「うぅ、凌牙~(感涙」

凌牙「何泣いてんだよ。たくっ、お前は何時まで経っても泣き虫のままだな」ナデナデ

Ⅳ(……終わってみればベタベタな展開だが、とりあえずこれで一件落着か)

璃緒「ありがとう、凌牙……私これ、大切にするからね♪」

凌牙「そうしてくれると俺も頑張ったかいがあるぜ」

Ⅳ(後は凌牙に任せれば問題ないだろ。ちょうど俺も空気になってるし、雑用係ももう必要ねえだろ)

Ⅳ(ここはさっさと退散するか……トーマス・アークライトはクールに去るぜぇ)ノシ

…………

Ⅳ「しかし今日は1日疲れたな……結局、昼飯も食いそびれたし」

Ⅳ「急にスケジュール変更したから、Ⅲの奴も機嫌悪いだろうな。仕方ねえ、途中でケーキでも……ん?」

<タイセツナモノハスベテーコワレソウナホドニハカナクテー

Ⅳ(電話? 神代璃緒からか)ピッ

Ⅳ「はい、もしも……」

璃緒『何勝手に帰ってますのよ! この機関車サービス野郎!!』ゲキオコアキメイル

Ⅳ「なっ! お前、そんな大声で叫ぶなよ……耳な奥がキーンとなっただろうが!?」

璃緒『そんな事どうでも良いですわよ! それより何で私に一言も言わず、勝手に帰りましたの?
急に居なくなったからしばらく凌牙と辺りを探してましたのよ?』

Ⅳ「お前ら兄妹の雰囲気があまりにも良かったから空気を読んだんだよ。
ある意味ファンサービスしたんだからむしろ感謝して欲しいくらいだぜ」

璃緒『そんなファンサービスは要りません!』

Ⅳ「悪いが今日は疲れてんだ。文句だけならもう切るぞ」

璃緒『お、お待ちなさい! 話はまだ済んでいませんわよ!!』

Ⅳ「何だよ? ああ、このスーツならちゃんとクリーニングに出してから返すぞ?」

璃緒『そうじゃなくて、その……』ゴニョゴニョ

Ⅳ「何だ? 珍しく歯切れが悪いじゃねえか」

璃緒『こんな事……貴方に言うのは少し気恥ずかしいのですが……ええい!』

Ⅳ「?」

璃緒『今日は……色々と助かりましたわ! ありがとう、トーマス!!///』ピッ

ツー……ツー……

Ⅳ「……切れてやがる」

Ⅳ「…………」

Ⅳ「お前が素直に礼とか気持ち悪いんだよ、馬鹿が」フッ

おわり

読んでくれた人、ありがとうございました。

最近は他に『遊馬「さっぱり分かんねえ」』や『小鳥「私にもデュエル、始められるかな?」』などのSSも書いていますので、もし見かけたらよろしくお願いします。では。

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