男「また来たの?」 許嫁「ええ」(136)

男「……何か用?」

許嫁「何それ。折角来てあげてるのに」

男「………」

許嫁「随分不機嫌そうね」

男「もともとこんな顔だよ」

許嫁「そうは思わないけど。ここのところ会うたび会うたびそんな顔」

男「………」

許嫁「荷物、ここに置かせてもらうから」

男「……好きにして」

男「………」

許嫁「空ばかり見てて楽しい?」

男「……楽しくない」

許嫁「でしょうね」

男「でも他に何かしたいとも思わないんだ」

許嫁「部屋に閉じこもってばかりいるからよ。あとで散歩にでも行きましょう」

男「……行きたくない」

許嫁「どうして?」

男「面倒くさい」

許嫁「はぁ……」

許嫁「うちの庭で取れた林檎持ってきたけど」

男「そこに置いておいて」

許嫁「どうせそのままにして腐らせてしまうでしょう」

男「………」

許嫁「今私が剥いてあげるから」

男「………」

許嫁「………」シャリシャリ

男「許嫁はさあ」

許嫁「なに?」

男「なんでいつも僕に会いにくるの?」

許嫁「………」

男「無理して来なくていいのに」

許嫁「………」

男「………」

許嫁「……林檎、剥けたけど」

男「……うん」

男「………」サク

許嫁「美味しい?」

男「………」コクン

許嫁「それはよかったわ」

男「………」サクサク

許嫁「もっと剥く?」

男「………」コクン

男「………あっ」ポトッ

許嫁「あっ、私が拾うわよ」

男「いいよ、自分で拾うから」

許嫁「……そう」

男「……んっ、よいしょっと」

許嫁「………」

男「……なんでそんなに悲しい顔をするの」

許嫁「別に、そんなことないわ」

男「………」

許嫁「もういいわよね。一杯食べたし」

男「……うん」

許嫁「じゃあそろそろ散歩に行きましょうか」

男「………」

許嫁「またそんな顔して」

男「……今日はいいよ」

許嫁「ダメ」

男「………」

許嫁「ほら、支度するから」

許嫁「今日はいい天気ね」

男「………」

許嫁「もうすっかり暖かくなってちゃって」

男「………」

許嫁「向こうの川の側を歩いていきましょうか」

男「………」

許嫁「ほら、魚がいっぱい泳いでいるわよ」

男「………」

許嫁「…………」

男「……今僕たちの横を通った人たち」

許嫁「あの人たちがどうかしたの?」

男「僕を見ながら何かコソコソ話してた」

許嫁「気にしすぎよ」

男「でも僕はこんななりだし……」

許嫁「……気にすることないわ」

男「そういうわけにはいかないだろ」

許嫁「………」

男「………」

男「許嫁は美人なんだからさ」

男「いくらでも他の男なんか見つかるんじゃないの」

許嫁「そんなことないわ」

男「いつまでも僕になんかに構ってないでさ」

許嫁「まるでもう関係が終わってしまったかのような口振りね」

男「終わってるでしょ」

許嫁「そう思っているのはあなただけじゃないよ」

男「いいや、君のお父さんだってきっとそう思ってる」

許嫁「………」

許嫁「ハンカチ、いる?」

男「………」

許嫁「無理しなくていいのよ」

男「………グスッ」

許嫁「誰がなんと言おうと、私はあなたの側に居続けるから」

男「うっ……ぐっ……」

許嫁「………」ギュッ

男「…………」ギュー

許嫁「……そろそろ、戻りましょうか」

………………………………

許嫁「…………」

男「…………」

許嫁「……それじゃあ、そろそろ私帰るわね」

男「……うん」

許嫁「また来るから」

男「………」

許嫁「ちゃんとご飯食べるのよ」

男「…………」

男「……最低だ」

男「……また許嫁に甘えてしまった」

男「………」

コンコン

女性「男さん、そろそろお食事の時間ですよ」

男「………」

女性「今部屋まで持ってきますからね」

男「………」

許嫁「……ふぅ」

許嫁父「おかえり、許嫁」

許嫁「………!」

許嫁父「随分遅かったな。どこへ行っていた?」

許嫁「………」

許嫁父「まさかあの男に会っていたのではないだろうな」

許嫁「いいえ、お友達のお家に遊びにいっていました」

許嫁父「本当か?嘘ではないだろうな?」

許嫁「……私、今着替えてくるので」

許嫁父「おい!待て、許嫁!」

許嫁「…………」ガチャン

許嫁「男、来たわよ」

叔父「………!」

許嫁「………!あなた、なんでまたここに


叔父「いや、私はただ男くんの、ね?」

男「………」

許嫁「二度とここに来るなと前にも言ったはずです」

叔父「だ、誰の権限でそんなこと…!私は男君の親族だぞ!」

許嫁「帰ってください」

叔父「………チッ」

男「…………」

許嫁「まったく、もう……なんだったの?」

男「……お金に困ってるんだってさ」

許嫁「だと思ったわ」

男「従妹が音大に行きたいんだってさ」

許嫁「それであなたにたかりに来るなんて、呆れたものね」

男「僕のところに訪ねてくる人なんてみんなそうだよ」

許嫁「………」

男「この前もさ、顔も知らない、大学の同回生らしい人が来てさ……」

許嫁「………」

男「…………」

男「………」

許嫁「今日はお天気悪いわね。一雨来るかも……」

男「………」

許嫁「今日はお散歩やめにする?」

男「僕はいつだって行きたくないよ」

許嫁「そんなことだから気が滅入ってしまうのよ」

男「……関係ないよ」

許嫁「………」

男「なんで僕は生きてるんだろう」

許嫁「滅多なこと言わないで」

男「父さんも母さんも酷いよな。僕を置いてって」

許嫁「男」

男「僕もあのとき一緒に死ねばよかったんだ」

許嫁「………っ」ギュッ

男「もうさ、生きててもいいことなんてないんだ」

許嫁「……そんなことない」

男「………」

…………………………………

女性「あら?彼女さんはもう帰られたんですか?」

男「……彼女じゃないです」

女性「またまたぁ。……部屋の空気入れ替えておきますね」

男「………」

女性「あんなに可愛い彼女さんが来てくれるんなら、そりゃもう嬉しいでしょう?」

男「………」

女性「もう、また窓の外ばかり眺めて」

許嫁父「許嫁、少し話がある」

許嫁「なんでしょうか」

許嫁父「今日も友達の家に遊びに行っていたらしいな」

許嫁「ええ、それが何か」

許嫁父「嘘じゃないだろうな」

許嫁「私が嘘を言っているとでも?」

許嫁父「近頃のお前はおかしい」

許嫁「怒りますよ」

許嫁父「それは自分の身の潔白を証明することができないからか?」

許嫁「……ご馳走様」

許嫁父「………」

男「…………」

男「……お久しぶりですね」

許嫁父「ああ、元気にしてたかね」

男「………」

許嫁父「私がなぜここに来たか分かるかね」

男「………?」

許嫁父「……近頃娘が君に会いにいっているようなのだが」

男「………」

許嫁父「もしそれが本当なら、黙って見過ごすわけにはいかないのだがね」

男「………」

許嫁父「いいかね、君たちはもう許婚同士でもなんでもないのだよ」

男「………はい」

許嫁父「君だってわかっているな?」

男「わかってますよ。もう父さんも死んでしまっていますし、結婚する意味もない」

許嫁父「そうだ。だが、許嫁はそうは思っとらんらしい」

男「………」

許嫁父「そんな状態で君たちを会わせるわけにはいかないんだよ」

男「……………」

許嫁父「まさかとは思うが、君が娘を呼び出しているんじゃないだろうな」

男「………」

許嫁父「どうなんだね、言いたまえ」

男「…………」

ガラッ

許嫁父「………!」

許嫁「え……お父さん……?」

許嫁父「やっぱりお前は……!」

許嫁「ちょっと、離して!」

許嫁父「いいからこっちへ来なさい!」

許嫁「嫌、やめて!」

男「…………」

女性「最近彼女さん来ませんね」

男「………」

女性「何かあったんですか?」

男「………」

女性「まただんまりですか。もう、彼女さんのこと教えてくださいよ~」

男「………」

女性「ねえねえ、もしかして彼女さんってお嬢様だったりします?雰囲気がそんな感じなんですよね~」

女性「ハッ!まさか恋愛を禁止されていて、親御さん目を盗まないと来れないとか!?」

男「………………」

>>18
× 許嫁「そう思っているのはあなただけじゃないよ」

○ 許嫁「そう思っているのはあなただけじゃないの」


致命的な誤字だったので
すみません

男「…………」

男「そうだ、いくら待ったって許嫁はもう来ないんだ……」

男「…………」

男「……これでやっと一人ぼっちか」

男「…………」

男「…………………」



ドサッ

大学生A「なあ、知ってるか?」

大学生B「え、なにが?」

大学生A「同じ学科に男って奴いたじゃん?」

大学生B「今年に入ってから見かけなくなったけど……」

大学生A「それがさ、あいつ入院してたらしいぜ」

大学生B「そうだったんだ。どこか悪いの?」

大学生A「それが事故に遭ったらしい。なんでも、両足と片腕が無くなるほど重症だったとか」

大学生B「うわあ……」

大学生A「そいつがさ、ついこの間病院で飛び降り自殺したらしい」

大学生B「え……」

許嫁「………」

許嫁父「許嫁、気に病むことはない」

許嫁「………」

許嫁父「なんなら私がまた婚約相手を……」

許嫁母「あなた!」

許嫁「………っ」ガタッ

許嫁父「………許嫁?どうした、急に立ち上がったりして」

許嫁「すみません、少し気分が……うっ……!」

許嫁父「お、おい!誰か洗面器を!」

許嫁「………」

許嫁母「余程ショックだったのかしら、あれから随分経ったのに……」

許嫁父「ここのところずっと戻してばかりいるが……」

許嫁「………」

許嫁父「許嫁、大丈夫か?」

許嫁「……ええ、大丈夫です」サスサス

許嫁父「……?」

許嫁「私、部屋に戻って休みますね」

許嫁父「あ、ああ……安静にしているんだぞ?」

許嫁「…………」

許嫁「男の、バカ」

許嫁「……私がお見舞いに行けなくなったばっかりに」

許嫁「私がついてあげなくちゃいけなかったのに……」

許嫁「…………」

許嫁「……男」サスサス

許嫁「……私は、あなたのことを忘れないから」


このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年03月29日 (土) 16:46:27   ID: vNrs-9T1

これは...なんというか 

2 :  SS好きの774さん   2015年07月25日 (土) 21:43:59   ID: xJ6iKFHu

いい話だった

3 :  SS好きの774さん   2016年03月01日 (火) 13:33:42   ID: kuvmrftC

最後ってつわりってこと?

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