ほむら「はぁ……早く本当の役割を思い出してくれないかしら、まどか」 (32)

さやか「やれやれ、あんたの口からそんな台詞が出るなんてね」

ほむら「……仕方ないじゃない」

杏子「もとはと言えば、あんたがまどかの設定に不満たれるからこうなったんじゃねえか」

ほむら「だって!あんな鼻持ちならないまどか、あなた達だって嫌だったでしょう?」

杏子「そりゃあ、まあ……」

さやか「二言目には、アメリカでは……アメリカにいた頃は……って感じだったからねえ。ウザい帰国子女の典型っていうか」

マミ「もとの鹿目さんに戻すために、再び円環の理に帰したうえでまたもぎ取ってくる、っていう暁美さんのアイデアはいいと思ったんだけど……」

ほむら「やって来るまどかは、なんだかアレなまどかばかり……」

杏子「そんなの上手く行くわけなかったんだよ。ゲームじゃねえんだし」

さやか「だよね……」
チラッ


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まどか「……もしもし?寝落ちしてんじゃねーよ糞が。電話で叩き起こすっつったろ?」
カタカタタッ

マミ「鹿目さん、誰と電話してるのかしら……」

ほむら「……今回のまどかは、ネトゲ廃人のようね」

さやか「気のせいか、円環からもぎ取るたびに、付け加わる設定が先鋭化して行ってない……?」

マミ「円環返上→お迎え→もぎ取りのサイクル、もう何回くらい繰り返したかしら?」

ほむら「私が一人でやってた時期も加えれば……100回くらい行ってるかも」

さやか「そんなに……。おかしくなってきて当然っちゃ当然か」

杏子「まあ、それはいいんだけど……」

ほむら「ここに来て、新たな問題が浮上して来たわね」

さやか「そうなんだよね……」

マミ「鹿目さん、だんだん自分の役割を思い出さなくなってきてる……」

ほむら「いい?まどか。円環の理よ、え・ん・か・ん・の・こ・と・わ・り」

マミ「ほら、なんだか懐かしい響きじゃない?心の奥底に響き渡るというか……」

まどか「……は?」

ほむら「やっぱり駄目ね……」

ガラッ
杏子「おーい、キュゥべえ連れてきたぞー」

ほむら「杏子、でかしたわ……!」

杏子「ほら、こいつ見て何か思い出さねえか?」

QB「ちょ、乱暴に扱うのはよしてくれ。毛羽立ってしまうじゃないか」

まどか「……何だか知らないけど、PCの隙間に毛が入りそうだから近づけないでくれる?」

杏子「……こいつでもダメか」

マミ「これでダメとなると、もうどうしたら……」

さやか「まどか!!」
ガラッ

杏子「おおっ?!」

ほむら「あれは……」

マミ「アルティメットまどかコスプレ……!」

ざわ……ざわ…

さやか「ほら、これがあんたの本当の姿なんだよ!思い出して!」

まどか「これが、私の……?」

さやか「そうだよまどか。どう、思い出した?」

まどか「そうだった……私には本当の姿、本当の役割が……」
ゴゴゴゴ………

ひーかーりーがー
ゆーめーのーよーおーなーうーたーがー

さやか「ふぅ……」

マミ「どうにか、円環に帰ってくれたようね」

ほむら「若干、教室がざわついているようだけれど……」

ざわ……何あの格好……

杏子「おめー、毎回その格好するつもりかよ……?」

さやか「こ、今回で終わりだっての。次こそ本当のまどかを取り戻すんだよ!」

マミ「そうね、ぼーっとしてる暇はないわ。早速、次の作業に移りましょう」

―校庭。


マミ「じゃあ行くわよ、佐倉さん?」

杏子「ちゃんと手加減してくれよ……」

マミ「心配御無用。ティロ・フィナーレ!!」
ドーン!

杏子「ぐえっ」

ほむら「……4人でやるようになってから、このステップはだいぶ楽になったわ」

さやか「ローテーションでやられ役を決めて、同士討ちで死にかけにすれば、まどかがお迎えに来てくれるんだもんねー」

ほむら「一人でやっていた頃は、死にかけるまで魔獣と戦う必要があったから、大変だった……」

さやか「まあ、あんたのそんな姿を見兼ねて手伝うことにしたわけだけど……」

マミ「四人がかりでやれば、上手く行くと思ったのにね……」

杏子「そ、そんなことより……まどか……は……早く……」

さやか「おっ、お迎えが来たようだよ」

まどか「杏子ちゃん、待たせちゃって、ごめんね……」

マミ「さあみんな、準備はいい?」

ほむら「……ええ」

さやか「はいよ」

まどか「さあ、私と一緒に……」

マミ「せーのっ」

ガシッ

まどか「……?」

マミ「いち、にの……はいっ!」

グイッ

まどか「みんな……!私が、裂け」

マミ「あーはいはい」

ビリビリ

ほむら「ふぅ」

さやか「さーて、今回の出来ばえはどうかしらね」

マミ「上手くもぎ取れてるといいけど……」

ー翌日。


さやか「ほらほら、アルティメットまどかちゃんだよー!ウェヒヒ!ウェヒヒヒ!」

マミ「ほら鹿目さん、思い出して!ティロ・フィナーレの閃光を!」

ほむら「まどか、交わした約束忘れちゃったの?私は覚えてるのよ!?」

まどか「……?」

杏子「ほら、てめーも何かそれらしいこと言えよ」

QB「……そ、それは因果律そのものに対する反逆だ!」

まどか「……」

さやか「神まどかだよ!ウェヒヒヒ!!」

マミ「ゆーめをーかなーえーてー、ひとりーでーさーがしてーたー」

クラスメイト1「何やってるの、あの人たち」

クラスメイト2「やばいよね、あれ」

杏子「ダメかー……」

ほむら「もう、美樹さやかのコスプレも通じない……」

マミ「一体どうすれば……」

杏子「もういいんじゃねえか、これで?一応こいつが鹿目まどかであることには変わりないんだし……」

ほむら「だ、駄目よ!休み時間に教室の隅で心霊写真集を読んでいるようなまどかでいいって言うの?佐倉杏子」

杏子「でもさぁ……」

ほむら「と、とにかく。もう、上っ面のことじゃだめなのよ。「そもそも、円環の理とは何なのか」という所から理解させないと」

マミ「!!そうだわ!こんなこともあろうかと、私、模式図を用意してきたの」

パラッ
ゴチャッ

さやか「うっ……」

マミ「いい、鹿目さん?ここがあなたが初めにいた世界、仮に「絶望と希望の空隙」と名付けるけど……この、無数の並行世界が交錯するただ中で、呪われた因果に捕縛された存在としての私たち魔法少女が……」

さやか「ちょ、マミさん、ストップストップ」

マミ「え?」

さやか「その説明じゃ、事情を知ってるあたしたちでも分からないよ……」

マミ「そ、そうかしら……?」

ほむら「だいたい、A3の紙にこんなにギッシリごちゃごちゃと……」

QB「口を差し挟むようだけれど……もっと分かりやすい資料にできないのかい?スライドとか、パワーポイントとか」

ほむら「ああいう分かりやすい資料を作るには、それなりのセンスがいるわ」

杏子「だいたい、図で表すには複雑すぎるんだよなー。今の状況」

マミ「……じゃあ、ストーリー仕立てというのはどうかしら」

ほむら「ストーリー?」

マミ「ええ。鹿目さんが円環の理となりおおせるまでの経緯を、物語として聞かせるの」

さやか「うーん……。まあ、とりあえずやってみるか……」

マミ「……「危ない美樹さん!」魔獣の冒涜的な毒牙が美希さやかの無垢なる魂を打ち砕こうとした刹那、私のマスケット銃が気高く咆哮した!「ティロ・フィナーレ!!」」

まどか「……ごめん。私、帰っていい?この人、何言ってるのかわかんないし……」

マミ「な、何を言ってるの鹿目さん?ここからがいいところなのよ?」

さやか「いや、マミさん。別のやり方を考えよう」

マミ「でも……」

杏子「やっぱさ、耳から聞いてるだけってのはダメなんじゃないか?もっとこう、筋の流れを追いやすいように……」

さやか「……マンガとか?」

ほむら「そんな絵心のある人間が、私たちの中にいないわ」

マミ「じゃあ、小説……?」

杏子「いや、何かこう、もっとビジュアル的に……」

さやか「そうだ!」

マミ「何かいいアイデアがあるの?美希さん」

さやか「恭介の知り合いには、テレビ関係の人もいるはず……そういう伝手を使って、私たちの物語を映像化して貰うんだよ」

ほむら「なるほど……悪くないわね」

マミ「確かにそれなら、鹿目さんもちゃんと思い出してくれそうね」

杏子「でも、そのシナリオは誰が書くんだよ?」

マミ「それは私が……」

ほむら「駄目よ」

さやか「あ、それはダメ」

マミ「え……?どうして私じゃ駄目なの?」

さやか「えっと、それは……」

ほむら「……皆で書きましょう」

杏子「……だよな。それが一番偏らないし」

マミ「みんながそう言うなら……」

さやか「じゃあ早速だけど、出だしはどうする?」

ほむら「それは、私が転校してくるシーンからでしょう。そこが全ての始まりなのだから……」

さやか「でも、それじゃあまどか本来の人となりとかが伝わりにくくない?」

ほむら「……じゃあ、まどかの家庭での様子から始めることにして……」

マミ「駄目よ!そんなありきたりの幕開けじゃ、インパクトが足りないわ」

杏子「……そういうのは別にいいんじゃねえの」

マミ「て言うか、鹿目さんが円環の理になる時間軸って……私、途中でパックンチョじゃないの!別の時間軸にしましょう!」

杏子「いや、それじゃ意味ないだろ」

マミ「嫌よ!もっと私の華麗な活躍を……」

ほむら「……却下ね。他に意見はあるかしら?」

さやか「まどかが円環になることに説得力を持たせなきゃいけないし、あたしの悲惨なエピソードは外せないよねえ」

杏子「こいつは憎たらしく書こうぜ」
ムンズ

QB「だ、だから乱暴しないでくれ。毛羽立ってしまうから……」

マミ「じゃ、じゃあせめて私にも見せ場を……」

カンカンガクガク

まどか「……?」




―こうして、一本のアニメが世に放たれることとなった。

後の「魔法少女まどかマギカ」である。

この作品が一世を風靡することになろうとは、彼女たちはまだ知る由もなかった。

――おしまい――

一発もののつもりで書いた↓の続きですが、いちおう単体でも差し支えないように書いたつもりなので、興味のある方だけどうぞ

まどか「あー、早くアメリカに戻りたいなー」

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