カレン「アヤヤ、私と付き合うデス!」 (121)

ー1-B教室ー

ワイワイ

アリス「お昼休みだよー」

忍「お弁当食べましょうか、アリス」



陽子「おっ綾、その唐揚げうまそうだなー」

綾「そ、そう?」

綾「これ自分で作ったんだけど、良かったら食べる?」

陽子「おーマジか!」

陽子「ありがとういただきまーす!」ヒョイパク

陽子「んーおいしい! 綾料理うまくなったなー」ムシャムシャ

綾「そ、それほどでもないわよ///」

陽子「なんかいつももらってばっかりで悪いね」

カレン「……」

カレン「だったら、ヨーコもお弁当少しアヤヤに分けてあげたらどうデス?」

綾「えっ」

陽子「おっ、ナイスアイディア。じゃあ綾、この肉団子あげるよ」

陽子「はい、あーん」

綾「え、ええっ!?」

綾「いや、別に私そんなつもりじゃ……」

陽子「まぁまぁ。綾ちょっと痩せ気味だしもうちょっと食べた方がいいと思うよ?」

カレン「そうデスそうデス」ムフフ

陽子「ほらほら。カレンもそう言ってるじゃん」

陽子「はい、あーん」

綾「う、うう……仕方ないわね」

綾「あ、あーん……///」パクッ

陽子「どう? おいしいでしょ!」

綾「え、ええ……///」ムグムグ

綾(……恥ずかしさで味が全く分からない///)シュー

ー廊下ー

綾「はぁ……」

カレン「あれ? ため息なんかついてどうしたデス? アヤヤ?」

カレン「陽子の好物を弁当に入れて交換してもらう作戦、成功したじゃないデスか!」

綾「そ、それはカレンが勝手に言ってただけじゃない」

カレン「でもしっかり実行してるじゃないデスか。唐揚げ自作までして」ムフフ

綾「今日はお弁当自分で用意しないといけなかったから……偶然よ!偶然!」

綾「別に陽子のことなんて全然意識してないから!」

カレン「はいはい、分かったデスよ」フフッ

カレン「それで、ため息なんかついてどうしマシタ? 何か悩み事でもあるデス?」

綾「いや、まぁ、ちょっと……」

綾「私って、友達相手にでも緊張してばっかりじゃない」

カレン「え、ああ、ハイ」

カレン(友達というか、その中の約一名相手のときだけデスけどね)

綾「それで、最近思うんだけど……」

綾「友達相手でもこんなにぎこちない素振りになっちゃうのに、」

綾「まして好きな人なんかできちゃったら、私どうなっちゃうんだろう……って」

綾「絶対素直に振るまえる気がしないわ。私こんなのでいいのかしら……」

カレン「……」





カレン(……アヤヤの言うことはたまに冗談と本気の区別がつかないデス)

カレン「Hm……よく分かりませんが、ヨーコと付き合ったときに素直に振るまえるようになりたい、ということデスね?」

綾「そ、そんな、私陽子のことなんて一言も言ってないじゃない! なんでそうなるのよ! ///」カァッ

カレン「そういうことなら、私にいい案がありマス!」

綾「大体カレンは私のこと見ていつも陽子陽子言ってるけど」

綾「私、別に陽子のことなんてそんなに……って」

綾「えっ?」



カレン「アヤヤ、私と付き合うデス!」

綾「」

綾「えっ、えっ、えっ???」

綾「そんな、付き合ってって、私……」

綾「急にそんなこと言われても……///」オロオロ

カレン「OKデスね?」

カレン「じゃあ今度の日曜日、〇〇駅前に来てクダサイ!」

綾「……えっ?」

カレン「楽しみに待ってマスよ!」タタッ

綾「ちょ、ちょっとカレン!」

ー〇〇ランドー

綾「……って」

カレン「ワォ! 私ここ一度来てみたかったデスよー!」アハハ

綾「ここ遊園地じゃない!」

カレン「そうデスよ?」

カレン「そうじゃなければアヤヤは一体何だと思ってたデス?」

綾「付き合って、って言うから私てっきり……///」

綾「い、いや、そんなことより!」

綾「あの流れからどうして遊園地なのよ!」

カレン「恋人どうしで来る場所と言えば遊園地じゃないデスか!」

カレン「アヤヤにいずれ恋人ができたとき、自然に振るまえるよう今から練習しておこうというわけデス」

綾「いや、それカレンが遊園地来たかっただけじゃないの……」

カレン「まぁまぁ、細かいことはいいじゃないデスか!」

カレン「せっかく来たんだから沢山遊ばないと損デスよ!」

カレン「私と恋人の練習でもしながら、せいいっぱい楽しみマショー!」タタッ

綾「こ、恋人だなんてそんな……///」



カレン「Heyタイショー! 子供二枚!」

綾「……カレン、高校生は大人料金よ?」

カレン「What!?」ガーン

綾「……もう、カレンったら」

綾「なんだか、恋人というより子供と来てるみたいね」クスッ

ワイワイガヤガヤ

カレン「まずはどこから行きマスか?」ワクワク

綾「うーん、一応恋人と行く場所を考えるんでしょ?」

綾「そもそも遊園地で恋人らしいことって、何をすればいいのかしら」

カレン「アヤヤならよくそういうこと想像してるんじゃないデスか?」

綾「カレンの中の私はどんなキャラなのよ。あんまり考えたことなかったわ」

綾「うーん、恋人と遊園地かぁ……」

カレン「何か思いつくデス?」

綾「そうね……遊園地と言えば普通わいわい騒ぐ所だけど、そこは逆にカップル二人だけの時間が流れてるのがロマンチックだと思うわ」

綾「メリーゴーランドやコーヒーカップで周りの喧騒をよそにゆったりと過ごす二人……。甘い音楽の下で静かに動き続ける乗り物の腰掛けながら、これからの幸せな日々に想いを馳せるの。
言葉なくとも、ただ好きな人がそばにいるだけで感じられる確かな幸せ。それこそが二人の心に通う真のアトラクション……なんて」ペラペーラ

カレン「あっ、アヤヤこれなんかどうデス?」

カレン「もぐらたたきー!」ジャン

綾「カレン、私の話聞いてた?」

ピコピコピコ

カレン「I did it! 3位デスよ3位!」

綾「遊園地に来てまずゲームコーナーに来るカップルがどこにいるのよ……」

カレン「ほら、アヤヤもやってみるデス」ヒョイ

綾「え!? 私!? いいわよ別に見てるだけで……」

カレン「ノンノン、何事もチャレンジデスよ!」

カレン「今ここで練習しておけば、陽子とデートに来たときいいとこ見せられるかもしれマセンよ?」

綾「べ、別に陽子にいいカッコなんて……///」

カレン「……もぐらたたきに挑むアヤヤを見てヨーコはこう言うデス」

カレン『アヤってハンマー使えるんだね!スゴーい!』

カレン『これなら二人で同棲して万一新居にもぐらが出ても安心だな!』 

綾「そ、そんな陽子……気が早いわ同棲だなんて……」キュン

綾「それに二人の新居って……キャー!! ///」バンバンバン

パンパカパーン

カレン「あ、ハイスコアデス」

カレン「アヤヤ、あれは一体何デス?」

綾「コーヒーカップね。中に入ってぐるぐるカップを回して遊ぶのよ」

カレン「ワォ、何だか面白そうデス!」

カレン「やってみマショウ!」

綾「コーヒーカップっていいわよね……とっても幻想的で」

綾「あんなところで恋人どうしゆったり過ごせたら素敵だわ……」ウットリ

グルグルグルグル

カレン「ワォー! どんどん速くなって楽しー!」アハハハハ

綾「ちょっとカレン、回しすぎよ!」ゴー

綾「目が回るし、飛び出しそうで危ないわ!」

カレン「……」

カレン『なに、アヤ、怖いのかい?』ヨーコモード

カレン『だったら私の手を握りな……恐怖なんてかき消してあげるよ……』キリッ

綾「手を差し出す前にカップを回す手を止めてぇっ!」ゴー

綾「うう……気持ち悪い」ゲッソリ

綾「恋人との幻想どころか悪い幻覚が見えてきそうだわ……」

カレン「大丈夫デスか? アヤヤ」

綾「何でカレンは平気なのよっ!」

カレン「ついはしゃぎすぎたのは悪かったデス」

カレン「ちょっとそこのベンチで休みマショウ」

綾「そうさせてもらうわ……」フラフラ

綾「ちょっと休んだらだいぶ落ち着いてきたわ」

カレン「それは良かったデス」

カレン「悪い思いをさせたお詫びにそこのアイスクリームおごりマスよ」

綾「そう? 悪いわね」

カレン「いいってことよ。デス!」タッタッタ

カレン「Heyタイショー、アイスクリーム二つ!」

「お味はどうなさいますか?」

カレン「私は……レモン味で!」

カレン「……アヤヤはどうしマス?」クルッ

綾「カレンと同じでいいわよ」

カレン「じゃあチョコミントで!」

綾「何で聞いたのよ」

アリガトーゴザイマシター

カレン「はいドーゾ」

綾「私ミント味あんまり好きじゃないんだけど……」

カレン「ふっふっふ、甘いですねアヤヤ」

カレン「二人別の味にしたのはちゃんと理由がありマス」

綾「はぁ」

カレン「別々の味なら、恋人同士食べさせあいっこできるからデス!」

綾「えっ……」

カレン「同じ味を食べさせあってもしょうがないデショウ?」

カレン「というわけで、アヤヤに私のレモン味食べさせてあげマス」

カレン「はい、あーん♪」ヒョイ

綾「ちょ、ちょっと///」

カレン「どうしたデスか?」

綾「こんな公衆の面前で……///」

カレン「何を言いマスか!」

カレン「食べさせあいっこは恋人の愛情表現の基本デス!」

綾「そ、そうかもしれないけど……///」

カレン「これをどれだけ恥ずかしがらずにできるかが、カップルのステータスを表すのデス」

カレン「熟練のカップルになると食べさせあいっこだけで相手の料理を完食できると聞きマス」

綾「それ最初から相手の料理食べてるのと同じじゃない?」

カレン「とにかく、これをなさないことには何も始まりマセン!

カレン「さ、早く!」

綾「わ、分かったわよ……」

カレン「はい、あーん♪」

綾「あ、あーん……///」パクッ

カレン「えへへ♪」

カレン「次、アヤヤの番デス」

綾「分かってるわよ……」

綾「はい、あーん……」

カレン「あーん♪」パクッ

ミテミテー アノコタチ タベサセアッテルー

綾(何この羞恥プレイ……///)





カレン「ミントまずっ」

カレン「さぁアヤヤ、元気になったならめいいっぱい遊びマショー!」

カレン「まだ乗ってないアトラクションは沢山ありマスよ!」

綾「ええ」

ージェットコースターー

綾「私、こういう絶叫系苦手なんだけど……」

カレン「大丈夫デス」

カレン「私がずっと手を握っておいてあげマスよ」

綾「えっ……」ドキッ

ゴォーッ

カレン「ワーオゥ!! たーのしー!!」\バンザーイ/

綾「キャーーーッ!!!」

―――――

綾「手握ってくれるんじゃなかったの……」ゲッソリ

カレン「Oops! 興奮しすぎてつい忘れてマシタ!」

カレン「ソーリーソーリー」アハハ

綾「Oh……」



カレン「さ、気を取り直して次行きマショー!」

―――――

カレン「あー楽しかったデス」

綾「これで大抵のアトラクションは行ったわね」

綾「もうそろそろ観覧車とか落ち着いたやつでもいいんじゃないかしら」

カレン「でもでも、まだメインで行ってない所がありマスよ!」

綾「えっ、どこ?」

カレン「あれデス!」

ーお化け屋敷ー

綾「」

ギュッ

綾「手離さないでね」

カレン「ハイ」

綾「さっきみたいに急に離すのなしだからね」ギュッ

カレン「分かってマスよ」

綾「絶対だからね!?」ギュギュッ

カレン「痛いデス」



ヒュードロドロドロ

綾「キャーーーッ!!」ババッ

カレン「アヤヤー?」

綾「うう……もうヤダ……」ブルブル

カレン「アヤヤはホントに怖がりデスねー」

綾「怖がりでも何でもいいから早く出ましょうよー……」ガクガク

カレン「……」

ダキッ

カレン『アヤ、怖いのなら私の中にいな』

カレン『ここにいる間は、私が守ってあげるから』

綾「えっ……」ドキッ



カレン「……ヨーコの真似デス」

綾「……」

綾「馬鹿ね……陽子はそんなキザなこと言わないわよ」

綾「陽子なら、黙ってこう……」ダキッ

カレン「えへへ、ナルホドー」ギュッ



綾「……」ギュッ

カレン「……」ギュッ



「……」

綾(カレンって思ったよりちっちゃくて抱き心地いいわね……)

ドキ……ドキ……

綾(あれ、カレン、意外とドキドキしてる?)

綾(なんだ、カレンもホントは怖かったんじゃない)クスッ

綾(何だか、私一人だけおびえてて馬鹿みたい)

バッ

綾「さ、落ち着いたらさっさと次行きましょう」テクテク

カレン「あっ……」



カレン「一人で先行っちゃうと……」

ヒュードロドロドロ

綾「キャーーーッ!!」

カレン「ほら言わんこっちゃないデス」

綾「もうお化け屋敷はこりごりよ……」ゲッソリ

カレン「それじゃあ、アヤヤお待ちかねの観覧車に行きマショウか」

カレン「時間もそろそろいい頃デス」

綾「……?」

ー観覧車ー

綾「わぁ……夕日がとっても綺麗……」

カレン「ここの観覧車は、夕暮れ時には太陽の光で輝く海が見えて、とっても眺めがいいと聞きマシタ」

カレン「噂どおりの美しさデスね」

キラキラ

綾「素敵……」ウットリ


「……」

 

カレン「……アヤヤは、今日来てよかったと思いマスか?」

綾「……えっ、それは勿論だけど……」

綾「どうしたの急に。まだ今日は終わってないわよ?」クスッ

カレン「いえ……ふと思っただけデス」

カレン「今日はほとんど何も告げずに連れてきちゃったし」

カレン「そもそもアヤヤが私と二人だけで遊ぶことなんて滅多にないから、本当に楽しんでくれたかどうか、不安になって……」

綾「なによ。らしくないわね」

カレン「楽しい日の夕暮れ時はセンチな気分になるのデス」

綾「……そんなに心配しなくても、私は十分楽しかったわよ?」

綾「カレンと一緒に色んなアトラクションに回って、私一人じゃできないような経験も沢山できたし」

綾「恋人の練習も、遊園地でやるのはどうかとも思うけど、カレンと一緒で楽しかったわ」

綾「実際にカレンの恋人になる人は、退屈しなさそうでいいわよね」クスッ

カレン「……」



カレン「……そうデスか。それなら良かったデス」

綾「あーあ、私にも恋人ができたら、したいこと沢山あるのになぁ」

カレン「恋人なんて、アヤヤが望めばすぐできマスよ」

綾「そうかしら? 私自身にも色々問題があると思うのよねぇ」

カレン「大丈夫デスよ」

カレン「アヤヤはかわいいデスから、素直になりさえすれば相手はイチコロデス」

綾「か、かわいいって……おだてても何も出ないわよ」テレ

カレン「本当デスよ」クスッ

綾「またまた……例えば?」

カレン「えっ? うーんと……」

カレン「……?」

綾「ほら、出てこないじゃない」

カレン「……ヨーコに一途だけど、なかなか素直になれないところとか?」

綾「ちょっと! それどういう意味よ! ///」ガタッ

カレン「ごめんなさいよく分からないデス!」アハハ

綾「もー! 適当なこと言ってるんじゃないわよー!」ぷんすか

カレン「あははっ」

綾「もうすっかり日も落ちたわね」

カレン「ほんと、楽しいときは一瞬デス」

綾「まだ何かやり残したことはないかしら?」

カレン「うーん……」

ジャジャーン ヒュードンドンドン

綾「えっ!? なになに? 何の音!?」

カレン「夜のパレードデスよ」

綾「へぇ……」

カレン「!」

カレン「そうだ、アヤヤ、こっち来てクダサイ!」ガシッ

綾「えっ!? ちょっとカレン、パレード見ないの!?」

カレン「いいデスからいいデスから!」タッタッタ

ー高台ー

テンテレテンテンテンテレテレテレ♪

カレン「ここなら、パレードが一望できるデス」

綾「わぁ……凄い……」

綾「こんなところ、よく知ってたわね」

カレン「……実は、この遊園地に来る前にアヤヤの好きそうなイベントについては色々調べてたデス」

カレン「観覧車のことも、パレードのことも」

綾「そうだったの」

カレン「こんな素敵な話もありマスよ」

カレン「パレードが佳境に入る8時ちょうどに、お城の鐘が鳴るそうデスが」

カレン「その鐘がなってるときにキスしたカップルは末永く結ばれるらしいデス」

綾「なにそれ……とってもロマンチックじゃない……」ウットリ

綾「素敵ね……私もいつか好きな人と一緒にそんな経験できたらなぁ……」ポー

テレテレレレレテテレテレレレレ♪

綾「……」ウットリ

カレン「……」



綾「……カレン」

カレン「ハイ?」

綾「今日はありがとうね」

カレン「……」

綾「最初遊園地に連れてこられたときは、ただカレンがここで遊びたかっただけかと思ってたけど」

綾「カレンはカレンなりに私のこと考えてくれてたのね」

綾「おかげで楽しいこと沢山できて、素敵なものも沢山見れて、とっても良かった」



綾「カレン」

綾「今日は本当にありがとう」ニコッ



カレン(……!)ドキッ

ドンドン ワーワー

カレン(……)

カレン(……ああ、やっと分かりマシタ)

カレン(アヤヤのかわいいところは、こういう根は素直で、とっても礼儀正しいトコロ)

カレン(そして、この素直になったときの優しい笑顔デス)

カレン(私が今までアヤヤのために尽くしてきたのは、きっとこの笑顔が見たかったから……)

カレン(アヤヤ……)

カレン(アヤヤ)

カレン(アヤヤ!)

綾「……もうすぐ8時ね」


カレン「―――――」フラッ


綾「えっ? 今なんて?」

クイッ

綾「?」



ちゅっ



綾(えっ……)

  ゴーン
      ゴーン
 

綾(えっ? なに? なに?)

綾(何が起こったの?)

綾(急に顔をつかまれたと思ったら、カレンの顔が近くなって)

綾(くちびるに何か柔らかい物が触れて……)



綾(うそ……私)

綾(キス……されてる……)



綾(えっ、どうして?)

綾(カレンが私にキスを?)

綾(そんな)

綾(ありえない)

ゴーン ゴーン

(カレン『その鐘が鳴ってるときにキスしたカップルは末永く結ばれるらしいデス』)

綾(そう言ってたじゃない、カレン)

綾(なのに、どうして……?)

綾(また何かの冗談なのよね……?)

カレン「……」ギュッ

綾(い、痛っ!)



レロッ……



綾(え、うそ)

チュル……ヌチュッ……

綾(これって)

綾(し……)

ハッ

綾「い、いやっ!!」


ドンッ





カレン「……!」トトッ

ゴーン……

ヒューヒュー ワーワーワー


綾「はぁ……はぁ……」

カレン「……」




綾「」ダッ

カレン「あっ……」

ダッ ダッ ダッ

綾(なんで? なんでなの?)

綾(今さっきまで、お互い楽しんでたじゃない)

綾(なのに、どうして最後の最後にこんなことするの……?)

綾(分からない……)

綾(カレンが何を考えてるのか分からないわ!)

タッタッタ……





カレン「……」



カレン「アヤヤ……」ポツリ

ー遊園地出口ー

……タッタッタッタ

綾「はぁっ、はぁ……」

係員「お帰りですか?」

綾「……」コクッ



ー電車ー

ガタンゴトン ガタンゴトン

綾「……」

ー綾の部屋ー

ガチャ

バタン

綾「……」

ハァー

フゥー

「……」

綾(……これから、どうしよう……)

―――――――――

綾(その日は結局、夜にあった出来事のことで頭が一杯になって、ほとんど眠れなかった)

綾(けれど、朝はいつも通りやって来て……翌日、月曜日)

綾(カレンのした行動の意味が分からないまま、私は重い足取りでいつもの待ち合わせ場所に向かった)

綾(だけど、そこにカレンの姿はなくて……)

綾(代わりに、陽子の携帯に一通のメールがあった)

綾(どうやらカレンは後で学校に来るらしい)

綾(私はカレンに会ったときの言い分を考えながら、学校に向かった)

綾(……けれども、結局その日一日カレンの姿を目にすることはなかった)

綾(一応学校には来ていたようだけど、向こうもどうやら顔を合わせる気はないようだ)

綾(いつも休み時間は欠かさずB組に来ていたのに、それもパタリと来なくなった)



後(一方、私の頭の中も相変わらず混乱したままで)

綾(カレンと会わずにすむことにちょっと安心もしたけれど)

綾(向こうもそのことを意識してるんだと思うと、いつもじゃ想像できない状況に戸惑いを隠せなかった)



綾(そんな日がしばらく続いて……)

ー1-B教室ー

ワイワイ

アリス「お昼休みだよー」

忍「お弁当食べましょうか、アリス」



陽子「綾、机こっち寄せて」

綾「ええ」ズズ

パクパク

モグモグ

「……」



 

陽子「……最近カレン来ないよなぁ」

アリス「そうだねー。たまに見かけても何だか元気なさそう……」

忍「どうしたんでしょうか……いつも元気なカレンらしくないですよね」

アリス「さぁ……」

陽子「先週までは普通だったよな」

忍「今週からですよね。なんだか素っ気なくなったのは」

陽子「うーん……」

綾(カレン……)

綾(やっぱり、日曜のこと気にしてるの?)

綾(いつものあなたじゃ、大抵のことは気にもしなさそうなのに)

綾(やっぱり、“あれ”はカレンにとって大事な意味があったの?)

綾(もしかして、それを私がついはねのけたのがいけなかった?)

綾(どうしよう……もしかして私のせいなのかしら……)ムム

陽子「……」

陽子「綾はなにか心当たりある?」

綾「え、えっ?」

綾「な、なんの話だったかしら」

陽子「だから、最近カレンが元気なさそうだってこと」

陽子「なんでか分かる?」

綾「なんでって……」

綾(日曜のことは三人には言ってない)

綾(私自身もよく状況を分かってないし、あんまり適当なことは言わない方がいいかしら)

綾(もしかしたら、日曜のことは関係ないかもしれないし)

綾「私には……分からないわ」

陽子「……そう」

忍「どうしたもんですかね……」

アリス「心配だね……」

「……」

綾(カレン……)

綾(やっぱりあなたがいないとみんな暗くなっちゃうわ)

綾(いつもカレンの行動力にみんな元気を分けてもらってたのね)

綾(私も例外じゃないわ)

綾(前に陽子と喧嘩したときは、カレンに背中を押してもらって、陽子と仲直りできたし)

綾(日曜だって、カレンは私に恋人ができたときのことを考えて、遊園地に連れて行ってくれたんだから)

綾(カレンはいつも友達のこと思って行動してくれてる)

綾(でもあのときは……)

綾(私に……キスしたときは、カレンは何を考えてたのかしら)

綾(どうしてあんなこと……)

綾(分からない……分からないわ)



綾「はぁ……」カチャ

陽子「あれ? 綾、弁当もう食べないの?」

綾「……ええ。最近食が細くて」

陽子「ダメだよー。前も言ったけど綾はちょっと痩せすぎだよー? もっと食べなきゃ」

綾「……ええ」

陽子「ほら、せめてこれ食べな。私の肉団子」

陽子「はい、あーん」

綾「……ええ」パクッ

綾「……」モッサモッサ



綾(ああ、カレン……)モッサモッサ

綾(あなたは今何を考えてるの……?)モッサモッサ

陽子「そんな牛みたいに鈍重な食べ方しなくても……」

ー帰り道ー

忍「それじゃあ、さようなら」

アリス「ばいばーい」

陽子「またなー」

綾「……」フリフリ

――――――

コツ コツ コツ

綾(カレン……)ボーッ

陽子「……」



陽子「……綾はさぁ」

綾「えっ!?」ビクッ

陽子「綾は、カレンが急に顔を見せなくなって、どう思った?」

綾「な、なによ急に……」

陽子「いや、カレンが何を考えてるのかよく分かんないからさ」

陽子「逆に、それで私達がどう思ったかってとこから考えてみようと思って」

綾「……なによそれ。ずいぶん遠回りな気がするけど」

陽子「でも現状じゃそれくらいしか分かることないじゃん?」

綾「それもそうだけど………」



綾「うーん……」

綾「カレンと会えなくなってどう思った、かぁ……」

陽子「どう?」

綾「……やっぱり、寂しい」

陽子「だよねー」

綾「私達普段はカレンのやんちゃな行動に振り回されてばっかりだったけど」

綾「それと同時に勇気や元気も沢山もらってたと思うから」

綾「それがなくなると思うだけで、とっても心細い……」



綾「……そうだわ」

綾「私、またカレンに会いたい」

綾「カレンに会って、また一緒に沢山遊んだり、おいしいもの食べたり、素敵なもの見たりしたい」

陽子「……」

綾「……」



陽子「……そう」

綾「……私、何かおかしなこと言ってたかしら」

陽子「いや、別に。私もそう思うよ」

陽子「……またカレンと一緒に遊びたいよなぁ」

綾「そうよね」

陽子「じゃーなー」

綾「また明日」

―――――

コツ コツ

綾(よく分からない相手のことよりも、先に自分のことから考えるべき、か……)

綾(陽子の言うことも一理あるかもしれないわね)

綾(……そうよ。私は今までずっとカレンの気持ちがどうなのか考えてたけど)

綾(カレンの気持ちなんて、本人に聞かないと分かるわけないわ)

綾(無理に他人の気持ちを推し量るより、まず私自身の気持ちを考えよう)



綾(私の気持ち……)

綾(私の気持ちって、何だろう)

綾(カレンに……キスされて、どう思ったか?)

綾(キスされて、凄く驚いたけど)

綾(よく考えたら、不思議と嫌な感じはしなかったような……)

綾「……」

そっ

綾(カレンのくちびる、柔らかかったなぁ……)

綾(……)





綾(……舌入れるのはさすがにどうかと思うけど)

綾(初キスの想像は度々してたけど、まさかカレンがその相手になるなんて思わなかったわね)

綾(でもなんだか……今となっては、そう悪い気はしないかも)

綾(そういや、そもそも初キスの想像って、どんなこと考えてたっけ……?)

綾(……)

綾(陽……)

ハッ

綾(ち、違う! 違うわよ! 陽子で妄想なんてしてないから! ///)

綾(ただ、なんとなく理想の相手を思い浮かべると、うっすら陽子が重なって……)

綾(……はぁ。私って軽い女なのかしら)

綾(今まで深く考えずにいたけれど、私が陽子のこと、ちょっと気になってるのはどうも確かみたい……)

綾(カレンも、そのことを見抜いて今まで私を応援してくれてたんだから)



綾(……でも今は)



綾(カレンのことも確かに気になってる自分がいる……)

綾(私の気持ちって、一体なんなの?)

綾「……」ウーン



綾(……分からないや)

綾(この迷いにもいずれ決着をつけなきゃいけないときが来るのかしら……)

タッ タッ タッ……

ー綾の部屋ー

綾(……)モンモン

綾(……分からないことをいちいち悩んでてもしょうがないわね)

綾(よし! 決めた!)

綾(この分からない状態も含めて、明日きっちりカレンに会って話そう!)

綾(カレンの気持ちを聞いて見えてくることもあるでしょう)

綾(その結果どうなるかは分からないけど)

綾(とりあえずはカレンが元気を取り戻してくれたら)

綾(またみんなで楽しく過ごせる、いつもの日常が戻ってくる)

綾(とりあえずはそれで、十分じゃない)

綾(そしたら、あの遊園地に今度はみんなで遊びに行くのもいいかも……)

綾(みんなで行くとしたら……どんなコースがいいかしら……)ウツラウツラ

綾(ジェットコースターやお化け屋敷は避けたいけど……動物ショーや観覧車なら……)ウトウト



綾(……)スヤァ……

ー1-B教室ー

綾「えっ……」

綾「カレン、休み……?」



陽子「そうだって。A組の担任が言ってた」

アリス「今まで一応学校には来てたはずなのに……」

忍「大丈夫なんでしょうか、カレン……」



綾「……」ポカーン

綾(カレン、どうしちゃったのかしら)

綾(日曜のこと、気にしすぎて学校も来れなくなった……?)

綾(でも、いつものカレンじゃそんな様子想像できないわ)

綾(じゃあ、カレンの身に何か……?)

先生「えー、次の問題を……」

綾(……嫌だわ。そんなこと、考えたくもない……)

先生「小路さん」

綾「えっ、あっ、はい」

綾「……」

先生「どうしたの?」

綾「すみません、聞いてませんでした……」

先生「あら、仕方ないわね……」

先生「今度はちゃんと聞いててね?」

綾「……はい、すみません」

先生「じゃあ、次の人―――」



綾「……」ハァ

陽子「……」

ー帰り道ー

陽子「じゃあ綾、またね」

綾「ええ」

――――――

綾(結局、今日一日全く集中できなかった……)ハァ

綾(ダメだわ、こんなのじゃ)

綾(カレンのことが気になって仕方がない)

綾(学校で直接会うつもりだったけど、それができないならもうしょうがない)

綾(カレンに直接電話しよう)

綾(このままじゃ私の方がダメになる)

綾(それに何より私……)



綾(カレンの声が聞きたい!)

ー綾の部屋ー

「……電波の届かないところにいるか、電源が……」プチッ

綾(……ダメね。携帯は繋がらない)

綾(……しかたないわ。カレンの家のほうに電話しましょう)

プルルルルル…… プルルルルル……

綾(……)ドキドキ

ガチャ

「もしもし九条デス」

綾「!!」

綾「ももももしもし!? カレン!?」

綾「あああああやややややだけど!?」

「あら、カレンのお友達?」

綾(カレンじゃなかったーーー!)ガーン

綾「……」シュン

「……もしもし?」

綾「あ、はい。私カレンさんの同級生の小路綾と申します」

「あ、ハイどうも」

綾(……このカレンに似た英国訛りの日本語)

綾(そして、カレンよりもちょっぴり大人びて、どこか艶のある声……)

綾(……もしかしてカレンの……)

綾「お姉ちゃんですか!?」

カレン母「母です」

カレン母「……カレンに何かご用事?」

綾「あ、はい」

綾「カレンさん、今日は学校を休んでいたのでちょっと心配になって……」

カレン母「そうなの。わざわざありがとうね」

カレン母「でもごめんね。今日はカレン、昼にふらっと外に出て行ったっきり、まだ帰ってなくて……」

綾「えっ……」



カレン母「カレン、今日は朝体調が悪いって言って学校休んだのよ」

カレン母「昼にはちょっと回復したみたいで、そのとき散歩に行ってくるって言って出掛けて、そのまま……」

綾「……」チラッ

<5時>

綾「……」

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