コナン「光彦が焼き殺されただと!?」 (264)

元太「ああ……公園の木に縛りつけた光彦を的にして、ダーツで遊んでたんだけどよ」

歩美「元太君が投げたダーツが公園の草むらの中に飛んじゃって……」

元太「草むらでダーツ探してたら、何かが変な臭いがしてきて……」

歩美「振り返ったら、ダーツで遊んでた辺りから煙が上がってたの!」

元太「それで慌てて様子を見に行ったら、公園の木が光彦ごと燃やされてたんだ……」

コナン「そうか……ダーツはちゃんと見つかったのか?」

元太「ああ! 警察と消防を呼んだ後、光彦の火を消さずに探してたら見つかったぜ!」

コナン「そりゃあよかった」

灰原「いやいやいやいや」

コナン「それにしても犯人め……公園の木を光彦ごと燃やすとはなんて奴だ! 公園の木に何の恨みがあるんだ!?」

灰原「そっちじゃなくて」

歩美「そういえば、燃えてた木の近くに>>5が落ちてたから、燃えないうちに拾っておいたよ」

ビニ本

コナン「ペロッ……これはビニ本!」

歩美「多分、近所の本屋さんのアダルトコーナーで売ってる奴だと思うよ!」

コナン「つまり、犯人は書店でビニ本を購入、そして犯行に及んだってことか!?」

元太「でも何でビニ本を買ってから木を燃やしたんだ?」

コナン「わからない……だが、書店に行けばきっと犯人の手掛かりが見つかるはずだ!」

 書店 アダルトコーナー

コナン「ここだ! 現場に落ちていたものと同じビニ本が売っている!」

歩美「でもこの辺りに証拠品は落ちてないね……」

コナン「何か落ちていても店員が掃除しちまうだろうしな……」

店員「コラコラ、ここは子供が来るコーナーじゃないぞ?」

コナン「そうだ店員さん! 今日、このビニ本を買った人、覚えてる!?」

店員「え? ああ……今日はお客さんも少なかったし、今日来た客ぐらいなら覚えてるよ……」

店員「そのビニ本を買った人なら……確か、>>16っていう特徴があったな……」

隻眼

店員「隻眼っていう特徴があったな……」

コナン(隻眼!? というと……まさか長野県警の大和警部か!?)

店員「おっと、もう仕事に戻らなくちゃ……君たちも早くここから離れなさい」

コナン「は、はーい!」



コナン「なんてこった……まさか大和警部が事件に関与している可能性が出てくるなんて……」

灰原「物騒な言葉を好む警部だったけど……流石に実際殺しはしないと思うわよ?」

コナン「いや、事件はあらゆる可能性を探して調査しなくちゃならない……殺すわけがないと考えるのはマズい……」

コナン「もちろん、間違いなく大和警部が犯人だと断言するわけじゃないがな……」

元太「でもどうすんだ? アダルトコーナーからは追い出されちまったしよ……」

コナン「元太と歩美ちゃんが公園で遊んでた時、公園には他に誰かいなかったか?」

歩美「うーん、そういえば>>25さんがいたような……」

光彦

灰原「……いや、光彦君以外で」

歩美「だから光彦さん」

灰原「……?」

コナン「落ち着け灰原、いいか?」

コナン「犯人が木を燃やした際についでに燃やされたのが“光彦君”」

コナン「そして歩美ちゃんが言っているのが、“光彦さん”だ」

コナン「わかったか?」

灰原(……どうしよう、言いたいことはわかったけど意味がわからない)

コナン「よーし、とりあえず光彦さんの家に行って話を聞こう!」

 光彦さんの家

元太「あれ、インターホン鳴らしても出ねえな……」

歩美「光彦さん、留守なのかな?」

灰原「仕方がないわね……話を聞くのはまた今度に……」

コナン「……」カチャカチャ

灰原「ん?」

コナン「よし……とりあえずドアの鍵をピッキングで開けた。中に入って部屋を調べてみよう」

灰原「」



コナン「ここが光彦さんの自室みたいだな……」

元太「ん? 何だこりゃ?」

コナン「元太! 何か見つけたのか!?」

元太「ああ、机の上に>>38が置いてあるんだ」

コナン「机の上に机だと!? どういうことだ!?」

歩美「光彦さん、あんなに座高高くなかったはずだけど……」

灰原「いや、座高が高くても机の上に机を乗せはしないわ、普通」

コナン「意味はわからないがとにかく気になる机であることは間違いないな……」

コナン「引出の中に何か無いか片っ端から調べてみよう」ガラガラ

コナン「……ん?」

コナン「引出の中から……>>46が出て来たぞ?」

引き出し

コナン「引出の中から引出が出て来たぞ!? マジでどういうことだ!?」

灰原「いや本当にどういうことなのよそれ!?」

コナン「さらにその引出の中から引出が! その引出からまた引出が! 次の引出の中から引出が! うおおおおお!」ガラガラガラガラ

灰原「何そのマトリョーシカ」

コナン「こんな特殊構築の引出初めて見たぞ……もう開けるの嫌になったからやめるわ……」

灰原「お疲れ様」

歩美「二段重ねの机に多重の引出……何なんだろう、これ」

元太「でも公園の木が燃やされた事件と関係あんのか?」

コナン「ぶっちゃけ関係無さそうだが、意外とこれがとんでもない証拠になっちまうのがミステリーって奴だ。ちゃんと覚えておこう……」

歩美「あ、ねえコナン君!」

コナン「どうした?」

歩美「机の下に>>59があるよ! これって証拠になるかなぁ?」

元太の右足

コナン「こ、これは……元太の右足!?」

灰原「えっ」

歩美「えっ」



元太「えっ」



元太「うぎゃああああああああああ!」

コナン「げ、元太――ッ!?」

コナン「しっかしろ元太! 傷は深いぞ!」

灰原「傷が深い所の騒ぎじゃないわよ! っていうか何の気休めにもならないわよその一言!」

元太「あ、あ、脚がああああああああああああああ!」

コナン「くっ……ダメだ! 出血が酷すぎる!」

歩美「で、でもどうして元太君は自分の右足が切断されてることにすぐ気づかなかったの!?」

コナン「バイク事故で脚を切断した際、痛みが強すぎてわからず2キロ足り続けたケースがある! おそらくそれと同じだ!」

コナン「俺たちが部屋に入った後に元太は足を切断され」

コナン「それが机の下に転がり」

コナン「傷を確認した元太が痛みに気付いて今苦しんでいるんだ!」

元太「ああああああああああああああああああ!」

コナン「と、とにかく救急車を呼ぶんだ!」

歩美「う、うん!」

灰原「でも痛みの苦しみと出血に小嶋君の精神と体は耐えられるの!?」

コナン「それでも呼ばないよりマシだ! そして応急処置を施す!」

コナン「しかしこの出血の酷さはいくら止血しようとしても簡単には止まらない……」

元太「うぐああああああああああああああああああああああああああ!」

コナン「痛みで半分狂いかけてやがる……精神的にもマズいな……」

灰原「何か……何かいい方法は無いの!?」

コナン「そうだ! >>76をしてみよう!」

コナンの右足

コナン「うおおおおおおおおおおおおおお!」ブチィ

灰原「なっ!? 自分の右足を切断した!?」

コナン「てぇぇぇぇぇぇい!」ガシィーン!

灰原「小嶋君の右足と結合!?」

コナン「どうだ元太!?」

元太「あ……ああ……少し……痛みが治まった気が……」

コナン「だろうな! 自分の右足がくっついているという事実が、精神的に元太を助け――うぎゃああああああああああああ!」

灰原「バカでしょ江戸川君」

 病院

コナン「歩美ちゃんが呼んだ救急車がすぐに来てくれて助かったぜ……」

灰原「でもその体じゃあなたと小嶋君が事件の捜査を続けるのは無理ね……」

コナン「ああ……続きは灰原と歩美ちゃんでやってくれ……」

灰原「証拠があつまったら連絡するわ……」

コナン「頼んだぞ灰原……」



灰原「あの後警察も読んで光彦さん家は警察が捜査中……私たちが入れそうにもないわね」

歩美「そういえば、どうして元太君は急に右足を切断したんだろう?」

灰原「確かにそうね……何か右足を切断するトラップでも仕掛けられてたのかしら……?」

歩美「そういえば、あの部屋に入ったとき、何だか違和感がしたんだよね……」

灰原「妙な感じ?」

歩美「うん……>>95っていう違和感が……」

なにかの視線を感じる

灰原「何かの視線……?」

歩美「うん……あの部屋に入った瞬間から……」

灰原「誰かがあの部屋のどこかに隠れていたってこと……?」

歩美「そうなのかな……? だとしたら、その人が元太君の右足を……?」

灰原「まだわからないけれど……もしそうだとしたら、可能性は高いわね……」

歩美「うう……何だか今更のように怖くなってきちゃった……」

灰原「警察の調査で部屋の中から出てくればいいけど……私たちは江戸川君たちと一緒に救急車に乗って病院に行ったから、警察が来るまで部屋は無人」

灰原「その視線の主は、もう出て行ったって考える方が自然ね……」

灰原「まあ、その視線の主の正体も所在もわからない以上……これ以上の詮索は無駄……」

灰原「もっと別の証拠や情報を集めるとしましょう」

歩美「あ、じゃあ>>109に行こうよ!」

博士の家

灰原「着いたわ……博士の家……ある意味私の家だけど……」

灰原「どうして博士の家に?」

歩美「困ったときは博士に頼れば都合のいい発明品を出してくれそうな気がしない?」

灰原「いやドラえもんじゃないんだから」

歩美「おっじゃまっしまーす!」

阿笠「おお歩美君に哀君。どうしたんじゃ?」

灰原「実はかくかくしかじかで……」

阿笠「なんと! それは大変だったのう……」

歩美「コナン君の右足を切断した犯人を見つけ出して、同じ目に会わせてやりたいの! 博士、いい発明無い?」

灰原「いや江戸川君の足は自ら招いたケアレスミスだからね? 問題なのは円谷君と小嶋君ね? あとさりげなく怖いこと言うのね」

阿笠「うーむ、ではこれを持って行ってみてはどうじゃ?」

歩美「何コレ? 粗大ゴミ?」

阿笠「それは>>120という機械じゃ」

殺気感知機

阿笠「これは殺気感知機と言ってのう」

阿笠「文字通り近くに存在する殺気を感知し、その殺気が放たれる方向や殺気との距離がわかる」

阿笠「これを使えば歩美君や哀君が襲われそうになったとき、殺気を放つ人物を迅速に特定でき……」

歩美「そいつを迅速に殺せるってことだね!」

阿笠「そうじゃ」

灰原「いやいやいやいや」

歩美「それじゃ町中に出て……スイッチオン!」

 カチッ

歩美「……モニターには何も表示されないね……」

灰原「いいじゃない。安全ってことなんだから」

歩美「じゃあ犯人は現場に戻ってくるって言うし、この機械を作動させたまま公園に戻ってみよっか!」

灰原「あくまで捕まえるためにね?」



灰原「と、まあ公園に戻って来たけど……やっぱり何も表示され――」

 ピッピッピッ

歩美「殺気感知! 公園の入り口の辺りだよ!」

灰原「!?」

歩美「公園の入り口にいるのは……>>133!?」

博士

阿笠「む、気付かれた!?」

灰原「博士!? どうして博士が……」

歩美「やっぱり博士が犯人っていうよくあるパターンだったのね!?」ヒュッ

灰原「ちょっ、パターンって何の話……っていうか歩美ちゃん動き速っ!?」

歩美「覇ァァァァァ!」キィィィィン

阿笠「ま、待つんじゃ歩美君!」

阿笠「ワシは機械がちゃんと作動するかどうか確認しようと近くで殺気を放ってみただけ……ぐあああああああああああああ!」

灰原「博士――ッ!?」

歩美「なーんだ、そうだったんだ」

歩美「もっと早く言ってよ! 歩美のターボはそう簡単には止められないんだから!」

阿笠「」

灰原「なんとか生きてるわね……救急車呼んでおくわ……」




灰原「じゃあ……せっかく現場の公園に来たわけだし、現場を再調査してみましょう」

歩美「うん!」

灰原「と言っても……警察が調べた後だし、木は燃え尽きちゃってるわけだし……」

灰原「特にもう何の証拠も……ん?」

灰原「灰の中に埋もれてよく見えないけど……これはもしかして……>>148?」

光彦ちゃん

灰原「円谷君!?」

歩美「違うよ、それは光彦ちゃんだよ!」

灰原「……えーと……光彦さんとも違う人よね?」

歩美「うん」

灰原「……まあいいわ。深くは追及しないことにするから」

光彦ちゃん「あ、あのう……何か御用ですか?」

灰原「いや……そもそも何で灰の中に埋もれてたのよ……」

光彦ちゃん「それは……>>158

光彦に埋められた

光彦ちゃん「光彦に埋められたんです」

灰原「!?」

光彦ちゃん「そもそも私は灰の中にいたんじゃなくて地面の中にいて」

光彦ちゃん「昨日光彦に埋められた後、少しずつ地上に這い上がってきて、今やっと地上に出てきたところだったんです」

歩美「大変だったね……」

灰原「ま、待ちなさい! ということは、ずっと現場のそばにいたのよね!?」

光彦ちゃん「え、ええ……っていうか、現場……?」

灰原「今日、何か聞いてない!? 誰かの声とか……」

光彦ちゃん「地面の中にいたので……あ、でも大分地上に近かったから、誰かがダーツ遊びしている声とか聞こえましたが……」

灰原「その後!」

光彦ちゃん「その後ですか? ええと……そういえば、>>171っていう言葉が聞こえたような……」

せやかて工藤

灰原「せやかて工藤!?」

光彦「確かにそう聞こえましたよ?」

灰原(せやかて工藤なんて言葉を言えるのは……あの大阪の少年だけ……)

灰原(そして工藤という単語があったということは……まさか工藤君も近くにいた!?)

歩美「どうしたの哀ちゃん、怖い顔して……」

灰原「……すぐに病院に戻りましょう」

歩美「え?」

灰原「くど……江戸川君に話をしに行くのよ!」







灰原「え?」

歩美「コナン君が……病室から消えた?」

看護婦「そうなのよ……足を切断した状態でどこに行ったのかって騒ぎになってるわ……」

灰原(工藤君が病室から逃げ出したということは……やはり事件に工藤君が関係しているの……!?)

灰原(正直何の意味があるのかわからない証拠品を集めていたのは……捜査を攪乱するため……!?)

歩美「あ、哀ちゃん……?」

灰原「! そうよ小嶋君! 同じ病室にいた小嶋君は何か知らないの!?」

看護婦「あの太った子なら、治療を終えてからずっと寝てたみたいだけど……」

元太「灰原か……その声……」

灰原「! 小嶋君!? 目が覚めてたのね!?」

元太「あ、ああ……ちょっと前から、ぼんやりとな……目もちゃんと開けられねえ……」

灰原「あなたの隣のベッドで寝ていた江戸川君が消えたんだけれど、何か知らない?」

元太「そういえば……視界の端っこに……>>184が見えたような……」

ハットリ

元太「あの……大阪の兄ちゃんが見えたような……」

灰原「!!」

灰原(やはり……二人は事件に関係して……」

歩美「あれ?」

灰原「どうしたの? 何か見つけた?」

歩美「うん……コナン君のベッドの枕の下に……何かメモみたいなのが……」

灰原「メモ……?」

歩美「ほら、これ」

 メモの内容 >>196

ミツヒコもやす

灰原「ミツヒコもやす……?」

歩美「これって……どういうこと……?」

歩美「まさか……コナン君が光彦君の殺人に関わってるの?」

灰原「……」


 ―― 光彦 ――                                   ―― 机 ――
                        ―― 光彦さん ――
       ―― ビニ本 ――
                                ―― 引出 ――
   ―― 足切断 ――                                ―― ミツヒコもやす ――
                  ―― 部屋の中からの視線 ――
                              
       ―― せやかて工藤 ――                ―― 消えたコナン ――
 

灰原「……そういうことだったのね……」

歩美「哀……ちゃん……?」

灰原「さあ……行きましょう」


灰原「事件の真相を暴きに」

 推理タイム入ります
 安価ないよ

灰原「失礼するわ」

灰原「? 何の用かって?」

灰原「決まってるじゃない。事件の真相を暴きに来たのよ」

灰原「それでどうしてここに来たのかって?」

灰原「当然……目の前に真犯人がいるからよ」



灰原「そうでしょう? 阿笠博士?」

阿笠「な、何を言っておるんじゃ哀君! 年寄りに心臓に悪い冗談はやめてくれんか」

阿笠「今は歩美君の一撃を喰らって病院にいるわけじゃし、もっと年寄りをいたわってくれい」

灰原「冗談じゃないわ……博士が犯人。これはすべての証拠品が集まったことで導き出された真実よ」

阿笠「何じゃ、哀君も新一に影響されて探偵ゴッコを始めたのか?」

灰原「探偵ゴッコかどうか……私の話を聞いてみればわかるわ」

阿笠「良いじゃろう、哀君の推理とやらを聞いてみるかのう」

灰原「まず博士は公園に行き、光彦君を的にしたダーツで遊んでいる小嶋君たちを見張る」

灰原「そして小嶋君がダーツを草むらに飛ばしてしまい、木から離れたところで……」

阿笠「火をつけたというのか? それじゃったらワシじゃなくてもできるがのう」

灰原「そう……この時点では博士じゃなくてもできる」

灰原「むしろ現場で『せやかて工藤』という言葉を聞かれた、あの大阪の少年の方が怪しい……」

阿笠「そんな証言があるのか? じゃったら服部君が怪しいじゃないか」

阿笠「さらに、そのセリフからすると近くに新一もいたかもしれんのう」

灰原「ええ……この証言は偶然地中に埋められた第三者が聞いたこと……偽装のしようがない真実に間違いない……」

灰原「だから……その通りなのよ」

阿笠「何?」

灰原「事件の犯人は博士だけど……」



灰原「実際に木に火をつけたのはあの大阪の少年よ」

阿笠「な、何じゃ!? ワシと服部君、および新一が共犯だとでも言いたいのか?」

灰原「違うわ……服部君は博士に上手いこと利用されただけ……」

灰原「そして……工藤君はまったくの無関係」

阿笠「バカ言っちゃいかん。証言があるんじゃろう?」

阿笠「『せやかて工藤』という単語を聞いたという証言が」

阿笠「これはつまり、服部君の近くには間違いなく新一がおり、二人で会話していたということで……」

灰原「その場にいなくてもそんな会話ぐらいできるわ」




灰原「電話っていう会話手段ならね」

灰原「そして電話を使った場合……相手の顔は見えない」

灰原「工藤君の携帯を盗んで使えば……簡単に工藤君になりすませる」

阿笠「バ、バカな。声が全然違う……」



灰原「蝶ネクタイ型変声機なんてもの作れる博士なら声の問題なんて簡単にクリアできるじゃない」

灰原「そう……博士は工藤君になりきり、あの大阪の少年に電話をかけ……ある依頼をしたのよ」

阿笠「依頼? ははは、光彦君を焼き殺せ、と?」

阿笠「そんな依頼受けられるわけ……」

灰原「木を燃やすってだけなら……簡単じゃない?」

阿笠「何を言っておる。あの木には光彦君が縛り付けられていたそうじゃないか」

阿笠「木にロープが巻き付いていれば不審に思うし、木の周りを見て光彦君を見つけるぐらいすぐに……」

灰原「ロープよりも気を取られるものが近くにあったら?」

阿笠「え?」



灰原「ビニ本よ」

灰原「まずは大阪の少年に工藤君の声で『公園の木を一本燃やしてほしい』と依頼する」

灰原「理由は何でもいいわ。町内会で決まったことだけど毛利探偵が急用で行けなくになったとか、事件の推理のために実験したいことがある、とか……」

灰原「そして公園の木に×印なり何なりでマークし、それを目印にさせる」

灰原「もちろんマークは公園の裏口から見える位置にし、そこからなら目印がよく見えるからと裏口から入らせる」

灰原「正面口からなら見える光彦君の姿も、裏からでは縛り付けてある木の幹で隠れて見えない」

灰原「そしてロープに気付きつつも、大阪の少年は見つけてしまったのよ」

灰原「あからさまに置いてあるビニ本を」

灰原「思春期真っ盛りな彼はついついそちらが気になってしまい、ロープが巻き付いているなど気にならなくなる」

灰原「マークと同じように、燃やす木を示すための目印だと思ったかもしれないし」

灰原「その後、大阪の少年がビニ本を拾ってくれれば証拠隠滅になったものの……それは汚いと思ったのか、大阪の少年は拾わなかったようね」

阿笠「む……」

阿笠「し、しかし、ワシはビニ本など買ってはおらんぞ!」

阿笠「近くの本屋にでも聞き込みに行くがよい! まあ、本屋の客と買った本をいちいち覚えてる店などあまりないがのう!」

灰原「そう……でも可能性はゼロじゃない」

灰原「博士はそれが怖かった……だからある変装で自分が買ったのではないと証明しようとした」

阿笠「な、何じゃと?」




灰原「特殊メイクによって隻眼のふりをしたのよ」

灰原「人間は人の顔を見た時、目立つ何かがあるとそれに注目してしまう」

灰原「大きなホクロや、人と比べ形の違う鼻や目……そして、傷……」

灰原「隻眼の特殊メイクによって、顔全体ではなく隻眼という印象を店員に与え……」

灰原「さらに実際は隻眼ではない自分をビニ本購入者ではないと言い張ろうとした……違う?」

阿笠「そ、そうとも限らんじゃろう! 本当に隻眼の奴が買ったのかもしれん!」

阿笠「それに……光彦さんが現場におったんじゃろう!?」

阿笠「服部君が電話をしながら木を燃やしたかどうか……彼に聞いてみたらどうじゃ?」

灰原「聞けないわよ」



灰原「光彦さんはもう死んでるもの」

阿笠「し、死んでいる!? どうしてそう断言できる!?」

灰原「ここまで博士の犯行として考えると……彼が死んでいると考えるのが自然じゃない」

灰原「光彦さんは現場の公園にいた目撃者……彼を殺さなければ、服部君が電話をしながら木を燃やしたとバレてしまう」

灰原「すると、服部君から色々と情報が洩れ……工藤君の携帯が盗まれていることがバレ……さらに声を変える機械を作る技術を持った人物が怪しいとなり……」

灰原「博士に疑いがかかってしまう」

灰原「だから光彦さんを殺し、目撃証言を潰そうとしたのよ」

阿笠「じゃが、その光彦さんの死体はどこにあると言うんじゃ?」

灰原「ここで気になるのが……光彦さんの家に鍵がかかっていたということ」

灰原「つまり部屋は密室だった……どうして密室だったのか?」

阿笠「そりゃ……光彦さんが外出してたのか……」

灰原「違うわ」




灰原「あのとき、博士は家の中にいて、光彦さんの死体を隠している最中だったのよ」

灰原「だから家の鍵を閉めていたのよ……誰かに入って来られたらマズいから」

灰原「まあ、工藤君のピッキングで私たちが入っちゃったけど」

阿笠「バ、バカな!? そんなことをしていたのなら、君たちと会っているはずじゃろう!」

灰原「そうでもないわ……光彦さんの部屋には特殊な家具が二つもあった」

灰原「二度あることは三度ある……あの部屋に特殊な家具がもっとある可能性は高い」

灰原「例えば……人が隠れられる、見た目は小さな家具とか……」

灰原「実際、歩美ちゃんは部屋に入った瞬間に視線を感じたそうだし」

阿笠「しかし、光彦さんの死体を、家の中のどこに隠したというんじゃ!?」

灰原「私たちが家の中に入ったとき、丁度光彦さんの死体を隠し終えた頃だったみたいね……」



灰原「そう……あの大量の引出の奥の奥に、細切れにした光彦さんを、ね」

灰原「工藤君が開けたのは引出一つだけだけど……おそらくすべての引出があの多重構造だった」

灰原「その一番奥に収納すれば……死体はそう簡単には出てこない」

阿笠「そんな引出……ワシだって簡単に引っ張り出しは……」

灰原「できるわよ。机を傾ければ重力で全部の引出が一気に出てくるもの」

灰原「でもそれができるのは……机が一つ、床にある場合のみ」

灰原「机を二つ重ねてしまえば……下段の机は上の机の重みで傾けることができず、上の机はバランスを崩して落ちるのを恐れ誰も傾けようとしない」

灰原「だから机を重ねたんでしょう?」

阿笠「う……ぐ……」

灰原「でも引出を開けられるのは博士にとって非常に怖いことだった……」

灰原「だから工藤君が引出を漁っているとき……こっそり隠れていた場所から出て、小嶋君の右足を素早く切断した」

灰原「足が切断されれば、救急車を呼び、小嶋君を病院に運ばざるを得なくなる」

灰原「それで私たちを部屋から出そうとしたのよ」

灰原「小嶋君の足を切断するような鋭利な凶器も……博士なら簡単に作れるんじゃない?」

阿笠「し、知らん……ワシは知らんぞ……!」

阿笠「そうじゃ……ワシは新一の携帯を盗み、声を変えて服部君に指示を出したと言ったな!?」

阿笠「じゃあ今すぐ新一を呼んで携帯を確認してみればよかろう!」

灰原「それが、工藤君は病室から消えててね……」

阿笠「ほう! それは奇妙じゃのう。何故新一が病室から消えねばならん?」

阿笠「ははあ、わかったぞ、哀君! やはり犯人は新一だったんじゃ!」

阿笠「真実が明らかになるのが怖くなった新一は、病院を飛び出し、遠くに逃げてしまったんじゃよ!」

灰原「……なるほど……」




灰原「そう思わせるために、博士が工藤君を連れ去ったのね」

灰原「病院から人を外へ連れだすのは難しい……」

灰原「でも、外ではなく、自分の病室に運び込むのなら、隙を見ればできないわけじゃない」

灰原「だから博士は、殺気感知機を歩美ちゃんに渡し、歩美ちゃんの近くで殺気を放ち、わざと攻撃を喰らった」

灰原「そうして病院に自分も入院するようにし……工藤君を自分の病室に連れ込んだのよ」

阿笠「な、何をバカなことを! あの部屋には小嶋君もおったんじゃぞ!」

阿笠「もしワシが新一を連れ去るところを目撃されたら……」

灰原「だから……軽い変装を施したのよ」



灰原「肌を少し黒く塗り、大阪の少年と同じ帽子を被るという変装をね」

灰原「隻眼の例と同じよ」

灰原「あの特徴的な帽子と肌の色……そして朦朧とした意識下にあった小嶋君」

灰原「その条件下なら……肌の色と帽子から、あの大阪の少年が病室に来たと誤認させることができる」

灰原「仮に大阪の少年に見せることに失敗しても、肌の色から博士には見えなかったでしょうね」

灰原「帽子を深く被れば顔は見えにくくなるし」

灰原「この場合、目的は大阪の少年に罪を着せることじゃなかった……とにかく自分じゃないと思わせることが重要だった……」

灰原「その後トイレかどこかで肌の色を戻し、帽子は切り刻んでトイレにでも流せば証拠はなくなるわ」

阿笠「ハ、ハハ、君の言うとおりなら証拠は既に消えておるようじゃのう」

阿笠「それに、ワシがさっき言った新一と服部君が犯人説でもそれは通るんじゃないか?」

阿笠「難しいことを考えず、服部君が来て、新一と一緒に逃げたと考える方が自然……」

灰原「そう思わせるために……博士はこれを残したのね」




灰原「ミツヒコもやすと書かれたメモを」

灰原「このメモがあれば、どう考えても工藤君が事件に関係しているように見える」

灰原「何てったって『ミツヒコもやす』だもの」

阿笠「それをワシが書いたと言うのか?」

阿笠「筆跡鑑定をすれば一体誰が書いたものなのかは簡単にわかる」

灰原「そりゃ工藤君の筆跡でしょうね。博士はこれを工藤君に書かせたのよ」

阿笠「なるほど、言いたいことはわかるぞ。ワシが新一を脅迫して無理やり書かせたと言いたいんじゃろう?」

阿笠「知っておるか哀君。脅されて書かれた文章は手が震えて実際の筆跡とは違う形に……」

灰原「脅す必要なんか無いわ」

阿笠「しかし、『ミツヒコもやす』などとどう考えても不自然な文、新一が素直に書くはずが……」




灰原「これが……別の七つ言葉の頭文字をくっつけたものだったとしたら?」

阿笠「!?」

灰原「例えば……」

.ミツヒコもやす
カバマ| やかる
.ンメワヒしんめ
.   リ |

灰原「こんな風に……今書いたのは適当な物だけど、何かの言葉を繋げ、下を切り取って頭だけ残せば別の文になる」

灰原「工藤君は足を切断していた……買い物とかも簡単にはできない……」

灰原「博士は何か買って来てやるからメモしてくれといい……工藤君にメモとペンを手渡す」

灰原「そして別の人にも買い物を頼まれていたのを思い出したとでも言って、もう忘れないようにメモをついでに書いてくれと頼む」

灰原「自分で書けと言われたら……眼鏡を忘れたとか、歩美ちゃんの一撃を喰らって指がうまく動かないとでも言えばいい」

灰原「そうやって……メモを工藤君に書かせ、事件に関係があるようにしたのよ」

阿笠「し、新一が普通に書いたと何故考えん!?」

灰原「だって……」



灰原「『光彦』が漢字ではなくカタカナなのは……明らかに不自然だもの」

灰原「おそらく、『彦』から始まる丁度いい言葉が思いつかなかったための苦肉の策か……」

灰原「横に呼んだ時『光彦燃やす』と読まれないように工夫したか……そのどちらか」

阿笠「ち、違う……ワシは……」

灰原「もう面倒だわ。この病室を調べればわかることよ」

灰原「どこかに工藤君が隠されているはず……」

阿笠「さ、させんぞ! 実は……ある場所にエロ本を隠していて……」

灰原「私一人なら……そうやって適当な言い訳をして病室の調査を妨害できるでしょうね」

灰原「でも……」



歩美「灰原さん! 警察の人呼んできたよ!」

灰原「私が説明している間に歩美ちゃんが呼んできた、この数の警察が相手なら……どう?」

阿笠「!!」

 その後博士の病室からコナンが発見され、博士はすべてを自供し、事件は幕を下ろした。

 さらに博士は刑務所に送るため護送車に乗る直前、

 目に見えないほどのスピードで接近した何者かによって右足を切断された。



 ―― 犯人を見つけ出して、同じ目に会わせてやりたいの ――



 おわり

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