ケン「ガイル……いったい誰を待っているんだ?」(111)

公園──

ケン「ガイル、なんでこんなところでしゃがんでるんだ?」

ガイル「人を……待っている」

ケン「そうか……」

ケン「じゃあ、またな。義姉さんにもよろしく」

ガイル「ああ……」

翌日──

ケン「まだいたのか!?」

ガイル「ああ……」

ケン「家族が心配してるんじゃないか!?」

ガイル「家族にはしばらく帰れない、と伝えてある……」

ケン「軍は?」

ガイル「休暇を取ってある……」

ケン「そうか……」

ケン「じゃあ、またな」

ガイル「ああ……」

一週間後──

ケン「まだやってたのか!?」

ガイル「ああ……」

ケン「ずいぶん頬がこけてるが、ちゃんと食べてるのか?」

ガイル「いや……なにも食べてない」

ケン「ちょっと待ってろ、なんか買ってきてやる」

ガイル「すまん……」

ケン「買ってきたぞ」

ガイル「ありがとう……」

ケン「ちょっと入手に苦労したけど、案外売ってるもんだな」

ケン「たくさん買ってきたぜ」

ケン「ほら、納豆だ」

ガイル「!?」

ガイル「逆だ……」

ケン「え?」

ガイル「俺は納豆が大嫌いなんだ……」

ケン「わ、悪い! 勘違いしてた!」

ケン「ほ、ほら、ハンカチ。これで涙を拭いてくれ」

ガイル「拭いてくれ……」

ケン「え?」

ガイル「この体勢を崩したくない。拭いてくれ……」

ケン「ったく、しょうがねえなぁ……」フキフキ

ガイル「ありがとう……」

ケン「じゃあ、パンとコーヒーでも買ってくるぜ」

ケン「買ってきたぜ」

ケン「ここに置いとくから、食べてくれよ」

ガイル「食べさせてくれ……」

ケン「は?」

ガイル「この体勢を崩したくない。食べさせてくれ……」

ケン「おいおい、いい加減にしろよ」

ケン「お前は大事な友であり義兄だけど、そこまでしてやるつもりはないぜ」

ケン「病気や怪我じゃないんだから、メシくらい自分で食べろよ」

ガイル「頼む……」

ケン「おい、そんな真剣な眼差しで見つめないでくれよ」

ガイル「頼む……」

ケン「だ、だから自分で──」

ガイル「頼む……」

ケン「いや、でもさ……」

ガイル「頼む……」

ケン「分かった、分かったよ!」

ケン「ほら、口を開けてくれ」

ガイル「あーん」

ケン「パンを入れるぞ」

ガイル「一口サイズにちぎってから入れてくれ」

ケン「わ、分かった。ほら」

ガイル「モグモグ」

ケン「どうだ?」

ガイル「美味い……!」

ケン「なにも泣くことはないだろ!」

ケン「次はコーヒーだな」

ケン「少しずつ入れるから、むせないように飲んでくれよ」

ガイル「熱い」

ケン「え?」

ガイル「熱いから、フーフーしてくれ」

ケン「しょうがねえなぁ……フーフー」

ケン「ほら、飲みな」

ガイル「美味い……!」

ケン「だから泣くなって! ハンカチで拭かなきゃいけなくなるだろーが!」

ケン「ったくもう……」フキフキ

ガイル「すまないな」

ケン「さっきから、周囲の視線がすごい気になるぜ。クスクス笑われてるし」

ガイル「気にするな」

ケン「いや、気にするよ。これでも俺、けっこう有名人なんだぜ?」

ガイル「だが、俺たちは──」

ガイル「ストリートファイターだ」

ガイル「今までも散々人前で飛んだり跳ねたりしてきただろう」

ケン(た、たしかに……!)

ケン「お前、待ち人が来るまでずっと体勢変えちゃダメなんだろ?」

ガイル「そうだ」

ケン「俺も毎日来てやりたいけど、これでも忙しくてなぁ……」

ケン「そうだ。義姉さんたちを呼んでやろうか?」

ガイル「ダメだ!」

ケン「な、なんでだよ」

ガイル「家族に“メシを食べさせて”なんて情けないこと頼めるか!」

ケン(もう十分情けないと思うけどな……)

ケン「分かった。家族に知らせるのはやめとこう」

ケン「だが、お前に餓死されても困るからな。応援を呼んでくるよ」

次の日──

リュウ「ガイル!?」

ガイル「リュウ、か……」

リュウ「ケンにいわれて半信半疑で来たんだが……ホントだったのか」

ガイル「ああ……人を待っている」

リュウ「そうか……」

リュウ「とりあえず、メシ食うか?」

ガイル「すまん」

リュウ「納豆だ」ネバー

ガイル「いらん!」

リュウ「じゃあ俺が食べる!」モグモグ

ガイル「………」

リュウ「ごちそうさま!」

ガイル「………」

リュウ「そろそろ帰るよ。また試合しよう」スタスタ

ガイル「ああ……」

ガイル(腹減った……)

>>33
戦友だよ
ナッシュはベガに殺された

次の日──

ダルシム「ナマステ」

ガイル「ダルシム、か……」

ダルシム「しゃがんだまま動かないと聞いたが、ついに悟りを開いたのか?」

ガイル「いや……人を待っているだけだ」

ダルシム「そうか……」

ダルシム「ナンとカレーを持ってきた」

ガイル「すまん……」

>>35
ガイル「ベガに殺された気がしたが行方不明だった」
ナッシュ「ベガに殺された気がしたが生きていた」
最近はこうだから困る

ダルシム「では、ナンとカレーをヨガテレポートさせて直接お前の胃の中に送り込むぞ」

ガイル「えっ」

ダルシム「ヨガッ!」

ガイル「おうっ!?」

ダルシム「ヨガッ!」

ガイル「ぐおっ!?」

ダルシム「ヨ──」

ガイル「やめろっ! すごく胃に悪い……気がする」

ダルシム「ヨガの究極奥義、思い知ったか!」

ガイル「国に帰ってくれ……。お前には家族がいただろう」

次の日──

ブランカ「ウオッ! ウオッ!」

ガイル「ブランカ、か……」

ブランカ「ジャングルからクイモノ、いっぱいもってきた!」

ガイル「ありがとう……」

ブランカ「デンキでテレビもみられるぞ!」バリバリ

ガイル「それはいい」

今んとこまともに食わせてくれたのケンだけか

ガイル「なにを持ってきたんだ?」

ブランカ「トラのニクだ」ドサッ

ガイル「えっ、生……?」

ブランカ「虎さえ俺の前では猫になる。さしずめお前はネズミといったところか!」

ガイル「ミッ○ーマウス?」

ブランカ「そのナマエ、キケン! ミッ○ーの前では俺さえ猫になる」

ガイル「そうか……すまなかった」

ブランカ「じゃあ、ジャングルかえる! またな!」

ガイル「ついでに虎の死骸も持って帰ってくれ。動物愛護団体とかがうるさいんでな」

虎ですら俺の前では猫になるさしずめお前は鼠といった所か
とか言ってたのにな

>>46
wwっっwwwww

次の日──

春麗「ガイル……!?」

ガイル「春麗、か……」

春麗「ケンにいわれて来たのだけど、まさか本当にしゃがんでるとはね」

ガイル「ちょっと人を待っていてな……」

春麗「まぁいいけど……とにかく食事を取りたいのよね?」

ガイル「ああ、すまんが、食べさせてくれ……」

春麗「はい、あーんして」

ガイル「あーん」

春麗「中華料理が口に合うかしら」

ガイル「美味い……(久々にまともな食事ができた……)」

春麗「ちょっと泣かないでよ!」

ガイル「すまん……」

春麗「なんか色々大変だったみたいね……」

ガイル「まぁな」

次の日──

本田「久しぶりでごわす!」

ガイル「エドモンド・本田、か……」

本田「ちゃんこを食わせてやるでごわす!」

ガイル「すまん……」

本田「どうじゃい!?」

ガイル「美味い……(よかった、正直一番不安だったが、マトモだった)」モグモグ

本田「ガッハッハッハッ!」

本田「お互い満腹になったところで、そろそろ日本に帰るかのう!」

ガイル「すまんな、わざわざアメリカまで来てもらって」

本田「なに、困った時はお互い様じゃい!」ドスドス

ガイル「おい、空港はあっちだぞ?」

本田「大丈夫、スーパー頭突きで太平洋を渡るでごわす」

ガイル「やっぱりマトモじゃなかった」

本田「腕から衝撃波を出す男にいわれたくないでごわす」

ガイル(た、たしかに……!)

次の日──

ケンが車に乗ってやってきた。

ケン「誘ったら、みんな快くOKしてくれたぜ。どうだった?」

ガイル「感謝している」

ケン「みんな、お前が心配なんだよ。同じファイターとしてな」

ケン「なにか食べたいものや見たいものがあったら調達してくっから」

ケン「遠慮なくいってくれよ」

ガイル「……が見たい」

ケン「え?」

ガイル「ボーナスステージが見たい」

ケン「ボーナスステージ?」

ガイル「いい車じゃないか」

ケン「ま、まさか……」

ガイル「頼む……」

ケン「いくらガイル、いや義兄さんの頼みでもそれはちょっと……」

ガイル「頼む……」

ケン「うぅ……」

ケン「わ、分かったよ! やるよ! やればいいんだろ!」

ガイル「ありがとう」

ケンは泣く泣く自分の車を攻撃し始めた。

グワシャッ! ガシャンッ! ドゴォンッ!

ケン「昇竜拳ッ!」

ドガシャーンッ!

ガイル「うむ……さすがだ」

30秒と経たないうちに、ケンの車はスクラップになった。

どこからともなく「パーフェクト」という声がした。

ケン(さよなら、俺の愛車……)

ガイル「いいものが見れた。ありがとう」

すると──

通行人「この辺、灰皿ないな……。いいや、ポイ捨てしちゃえ!」ポイッ

ガイル「むっ!」

ガイル「いかん!」

ガイル「捨てられたタバコが、ケンが壊した車から流れ出たガソリンに引火してしまう!」

ケン「なにっ!?」

ガイル「逃げろぉー!」

ケン「しかし、お前を置いて逃げるわけには……」

ガイル「俺はここから動かん! 逃げてくれっ!」

ケン「すまないっ!」

ズガァァァン!

大爆発が起こった。

ケンは通行人を助けつつ、避難したので無事だった。

一方のガイルは──

ガイル「ぷはっ……」

ケン「生きていたのか!」

ガイル「どうにかな……」

ガイル(まだお前のところに行く時期ではないということか……ナッシュ)

ケン「しかし、大火傷じゃないか!」

ケン「すぐ病院に連れていくぜ!」

ガイル「いや、ダメだ」

ケン「なぜ!?」

ガイル「俺は待ち続けなければならないからだ」

ケン「分かったよ……」

ケン「じゃあ、せめて包帯とかは巻かせてくれ」

ガイル「すまん……」

その後もケン、リュウ、ダルシム、ブランカ、春麗、本田が
一日交代でガイルの世話をした。

そのうち、ガイルの怪我も完治した。

ガイルはもはや公園の名物となっていた。

子供「ママー、あのおじちゃんなんでしゃがんでるの!?」

ママ「シッ、見ちゃいけません!」

ガイル「………」

ガイルが公園にしゃがんでから、一年経った。

今日はケンがガイルの食事当番だった。

ケン「あったかいスープを持ってきたぞ」

ケン「フーフーしてから飲ませるからな」

ガイル「すまん……」

ケン「しかし、ずっと疑問に思っていたんだが……」

ケン「ガイル……いったい誰を待っているんだ?」

ガイル「それは……」

ガイル「!」ピクッ

ガイルの気配が変わった。

ガイル「来るっ!」

ケン「なんだと!?」

ガイル「あいつが……もうすぐ来る!」

ケン「いったい誰が来るっていうんだ!?」

ガイル「全てを巻き込み粉砕する、アイツが……」

ケン「ま、まさか……お前が待ってるのって……」

ガイル「そう、アイツの名は──」

ガイル「ザンギエフ!」

ガイルって体力ゲージがコンマ1でもリードしたらアネッフーンしながら後ろに下がってくからなぁ
弱パンチ一発が致命傷

ザッ

公園に大男が現れた。

ザンギエフ「………」

子供「ママー、なんであの人赤いパンツ一丁なの?」

ママ「シッ、見ちゃいけません!」

ケン「お前が待っていたのは、ザンギエフだったのか……」

ザンギエフ「待たせたな」

ガイル「待ったぞ」

ザンギエフ「いくぞっ! ハラショーッ!」ドドドッ

ケン「うわ、突っ込んできた!」

ケン「ガイル、あれを撃て!」

ケン「セガのハリネズミが流行した、みたいなやつを撃つんだ!」

ガイル「………」

ケン「なぜ撃たないっ!?」

ザンギエフ「とあーっ!」バッ

ケン「ザンギエフが跳んだ!?」

ケン「あ、あれはフライングボディアタック!」

ザンギエフ「うおおおおっ!」

ケン「ガイル、危ないっ!」

ガイル(見せてやろう……一年間タメ続けた、サマーソルトキックを!)

ビキッ!

しかし、一年間しゃがみっぱなしだったガイルの足は、筋肉が完全に固まっていた。

ガイル(い、いかん!)

ケン「ガイルーッ!」

ガイルの頭上にザンギエフの胸板が落ちてくる。

ザンギエフ(どうした、なぜサマソしない!?)

ガイル(あ、足が動かない……!)

ケン(ガイルのやつ、足が動かないのか!?)

ザンギエフとガイルの距離は、残り一メートルになっていた。

ガイル(足よ……)

ガイル(足よ、動けぇぇぇっ!)

ケン(も、もうダメか……!)

すると、ガイルの家族が駆けつけてきた。

ユリア「あなたっ! しっかりしてっ!」

クリス「パパっ! 頑張ってっ!」

ケン「えっ!?」

さらにストリートファイターたちもやってきた。

リュウ「負けたら納豆だ!」

春麗「負けたら跪かせるわよ!」

本田「負けたらフンドシ担ぎになってもらう!」

ブランカ「負けたら、さしずめお前はネズミといったところか!」

ダルシム「負けたらお前の腕を伸ばす」

ケン「お前ら、いつの間に!?」

ガイル(みんな、すまん……!)

ガイル(ゆくぞ、ザンギエフ!)

ザンギエフ(来いっ!)

ガイル「うおおおおおおおおおおっ!」


 ド ガ ァ ッ !


一年間タメ続けたサメーソルトキックが、ザンギエフを迎撃した。

ザンギエフ「ハ、ハラショー……」

ドズゥン……

どこからともなく「YOU WIN」という声が聞こえていた。

ガイル「国へ帰るんだな、お前にも家族がいるだろう……」

ザンギエフ「ああ、帰るよ。楽しかった」

ガイル「また待つよ」

ザンギエフ「俺もまた待たせるよ」

ガシィッ!

握手するガイルとザンギエフ。

こうしてザンギエフは帰っていった。

リュウ「じゃあ俺たちも帰るか」

春麗「そうね」

ストリートファイターも帰っていった。

ユリア「私たちも先に家に戻ってるわね」

家族も帰っていった。

ガイル「………」

ガイル「ケン、ありがとう。お前がいなければ、俺は餓死していただろう」

ケン「よせよ、照れ臭い。でもよかったな、待ってた甲斐があったじゃないか」

ケン「さすが、俺の兄貴だぜ」

ガイル「これからもよろしくな……弟よ」

しかし、物陰から二人を見つめる四人がいた。

????「ヘッヘッヘ……」

????「フッフッフ……」

????「クックック……」

??「ハッハッハ……」

????「」

????「アイグーwww」

????「ヒョーwww」

??「」


あとの二人なんかあったっけ・・・?

密かに観戦していた四人は、感動のあまり号泣していた。

バイソン「俺、今日からマジメにボクシングするよ……」

バルログ「美しい戦いだった……。私の負けだ……!」

サガット「二人の戦いで感動したら、胸の傷と右目が治ってしまった」

ベガ「シャドルー……解散!」



こうして一年に及ぶ死闘の末、世界は平和を取り戻したのであった。

<おわり>

>>98
????「オアー」
??「」

                   f ヽ.

         ______   .Y ',、
            `ヽ.  ,L.,r'"´   .月 .}_,>
      _,ノ´ ̄` R´  j __ , -‐へ /
    ,r '"´r ⌒Y  lヽ`' ┘/.   `Y゙
    `ヽ, }>-く__,ノ ,、 '"´    /
     \ 勿、 '´  > ,  '"´
       「 \,>.'´ /
.       \__   '´ |
        ':,     |
    __,.ィ T "⌒'    |
   レ'゙ 入    _ .ノ
    {'''''''|    ̄
.   `¨´

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