妹「喫茶店はじめました」(123)

からんころーん

妹「いらっしゃいませ……なんだ兄さんですか」

兄「よぉ、頑張ってるか」

妹「ぼちぼちです」

兄「仕事休みだから遊びにきたぞ」

妹「いい気なもんですね」

兄「おい、店に親父の遺影を飾るのはよせよ」

妹「前の店主なんだからいいじゃないですか」

兄「お客さんが何かと思うだろ」

妹「いいから、何か注文してください」

妹「注文をどうぞ」

兄「えーと、コーヒーで」

妹「コーヒーだけですか?」

兄「うむ」

妹「何か食べたらどうでしょう」

兄「あんま腹へってないから」

妹「ナポリタンがおすすめですけど」

兄「話聞けよ」

妹「コーヒーとナポリタン、スープとサラダそれぞれ単品ですね、かしこまりました」

兄「いつからぼったくりバーになったんだよここは」

妹「むっ失礼ですね」

兄「しかし随分ガラガラだなぁ」

妹「う……じ、時間が悪いんですっ」

兄「ちょうどお昼時なわけだが」

妹「むむむ」

兄「もしかして流行ってないとか」

妹「そ、そんなわけないじゃないですかっ」

兄「本当に?」

妹「本当です」

兄「ならいいけど」

妹「ご注文繰り返します。ナポリタンとスープと海鮮ピザ、ベーコンサラダ。コーヒーは食後でいいですか?」

兄「あぁもういいよそれで」

妹「毎度ありです」

兄「給料でた後で助かったわ……」

妹「コックさんのお仕事、頑張ってますか?」

兄「コックなんて大層なもんじゃないけど……まぁ何とか」

妹「たまには家に帰ってきてください。母さんが寂しがってます」

兄「あぁ、わかってる」

兄「……」

兄「……」

兄「……妹はどこ行ったんだ?」

兄「注文取ってから姿が見えないけど……」

妹「うぅっ……焦げちゃいました……」

兄「ん?」

妹「まぁ兄さんだし別にいいです」

兄「なんか調理場から声が……まさかな」

兄「接客と調理ひとりなんてそんな馬鹿な話があるわけないし」

兄「……」

兄「まさかなぁ……」

~一時間後~

妹「お、おまたせしました兄さん」

兄「あのな」

妹「ナポリタンと海鮮ピザ、スープにサラダです、ご注文以上でよかったですか?」

兄「コーヒーがないぞ、それよりお前な」

妹「な、何ですか?」

兄「俺だからいいけど、普通の客なら怒って帰ってるぞ」

妹「うぅ……ごめんなさい」

兄「どこの世界に注文して一時間も待たされる食い物屋があるんだよ」

妹「すみません……」

妹「と、とりあえず冷めないうちにどうぞ」

兄「なぁ、もしかして……厨房もお前がやってる?」

妹「」ギク

兄「なんて、それこそまさかだよな……親父の友達のコックさん、まだ働いてるんだろ?」

妹「ととと当然ですっ」

兄「ならいいんだけどさ」

妹「今ちょっと熱と吐き気と下痢で休んでます」

兄「おい、食中毒くさいじゃないかそれ!」

兄「店で食中毒出たら営業停止だぞ、気をつけろよな」

妹「充分注意します」

兄「ま、俺があんま干渉してもしかたないけど」

妹「……」

兄「とりあえず食うか、一時間も待たされたから腹が減った」

妹「兄さんが沢山注文するからいけないんです」

兄「あのなお前……まぁいいや」

からんころーん

妹「いらっしゃいませー」

兄「お、ちゃんとお客さん来るじゃないか」

妹「当たり前ですっ!」

妹「……ご注文繰り返します。フライドポテトのLと納豆巻き、コーラですね」

兄「しかし何でもあるなぁこの店は」モグモグ

兄「うぐっ……ま、まずいなこのピザ……」モグモグ

兄「海鮮を謳ってるのに、具がイカしか乗ってないし」

兄「ナポリタンはどうかな……」サクサク

兄「うん、これはサクサクして……サクサク?」

兄「かたやきそばかよ、おーいちょっと妹!」

妹「……ひぃい……」ジュージュー

兄「い、忙しそうでクレームもつけられない……」

兄「なんだかんだ言って平らげちゃったわけだが」ゲプ

兄「うぉ、腹が重い……」

妹「お、おまたせしました!納豆巻きとフライドポテトのLですっ!」

客「ちょっと、遅いよー。何分待たせるの?」

妹「申し訳ございません……」

兄「……まぁ、普通怒るよなぁ……」

客「もういいよ……頼むよ、忙しいのに」モグモグ

妹「……はい……申し訳ありませんでした」

兄「……ふぅ」

妹「えっと、兄さん……食後のコーヒーです」

兄「ん、ありがとう」

兄「さて、と……そろそろ帰るか」

からんころーん

兄「お、またお客さんか」

妹「いらっしゃいませー」

兄「忙しいみたいだし、金置いてくか」

妹「あ、兄さん」

兄「おつりはいいから、ここ置いとくぞ」

妹「す、すみません。また来てください」

兄「あぁ、そのうち家にもよるから」

客「ちょっと、注文ー」

妹「はーい!」パタパタパタ

~数日後~

兄「妹は元気でやってるかな……」

兄「こないだはコックさんがいなかったけど、今日は大丈夫だろ」

からんころーん

妹「いらっしゃいませー……て何だ、兄さんですか」

兄「兄さんだろうと大事なお客さんだろ」

妹「くすくす、そういうことにしてあげます」

妹「さ、注文は何にしますか?」

兄「コーヒーで」

妹「コーヒーと何ですか?」

兄「いや、メシ食ってきたし」

妹「男なんだから食べられるはずです。えびピラフなんかどうですか?」

兄「また一時間も待たせられたらたまらん」

妹「きょ、今日はちゃんとコックさんがいますから」

兄「心配は杞憂に終わったか」

妹「えびピラフとコーヒー、食後にジェラートですね」

兄「増えてる増えてる」

兄「……」

兄「……」

兄「なんでオーダーとるといなくなるんだよ……」

兄「今日はコックさんいるとか言ってたけど」

\チーン/

兄「なにやら電子レンジの音が、気のせいか……」

妹「兄さん、おまたせしました。えびピラフです」

兄「今日はやけに速いじゃないか」

妹「当然です」

兄「今日、家に帰るけどお前は?」

妹「私は店を閉めてからだから遅くなりますけど」

兄「そっか、まぁゆっくり待ってるよ」

妹「ふふ、兄さんが家にくるなんて久しぶりですね」

兄「だっけ」

からんころーん

妹「い、いらっしゃいませー!」

兄「繁盛してる……のかな?まぁいいや、食おう」

兄「……」モグモグ

兄「……198円の冷凍ピラフの味だな、これ」モグモグ

妹「ご注文繰り返します。鯖の味噌煮定食と鳥竜田あげですね」

兄「とても喫茶店のメニューとは思えん」モグモグ

妹「オーダー入りまーす、鯖味噌煮と竜田あげでーす」

兄「……」モグモグ

\チーン/

兄「ま、また!?」

妹「おまたせしましたー!」

兄「はえぇな、一体どうなってるんだ」

兄「さ、帰るか……」

妹「それじゃあ、また夜に会いましょう」

兄「うんうん」

客「ちょっとー!」

妹「は、はーい!」

兄「……」

客「これさぁ、めちゃくちゃ冷凍の味がすんだけどどういうこと?」

妹「え、えーと……申し訳ございません……」

客「冷凍自体が悪いとはいわないけどさぁ」

兄「……」

客「前のマスターは絶対にこんなもん出さなかったのに」

妹「……はい、申し訳ありません」

客「コックさん変わった?」

妹「はい……調理するものが、変わり、まして」

兄「……」

客「だよねぇ……あーあ、前はここ、美味しかったのになぁ」

妹「申し訳ありません……」

客「だいたいさぁ儲けばっか考えてるからこういう料理出してくるんでしょ、これじゃ」

兄(さき、帰るからお金置いとくぞ)パクパク

妹(はい……すみません兄さん)パクパク

客「ちょっと、きいてんの」

妹「は、はいっ」

~実家~

兄「ただいまー」ガララ

母「あら、お兄ちゃんお帰り」

兄「久しぶりに帰ってくると、よその家の匂いがするな」クンクン

母「もう、馬鹿なこといってないで上がりなさい」

兄「うん」

母「晩御飯は食べた?」

兄「昼に二食ぶん食った」

母「?」

母「仕事は頑張ってるの?」

兄「まぁ駆け出しだから頑張るしか無いよ」

母「そっかそっか、謙虚でよろしい」

兄「最初はあんまり向いてないかと思ったけど、料理はなかなか面白い」

母「凝り性だもんね、お兄ちゃんは」

兄「給料安いけどな……」

母「本当に晩御飯いらないの?」

兄「あぁ、妹のとこで食わされた」

母「そういうことか」

母「……妹ちゃん、頑張ってたでしょ?」

兄「頑張ってたというか、大変そうだったというか」

母「料理してくれる人がやめちゃったからねぇ」

兄「……やっぱりかぁ」

母「何か知ってるの?」

兄「こないだ行った時、注文してから一時間待たされた」

母「あらあら、あははは」

兄「結構笑いごとじゃないぞ」

母「うんうん、そうね」

兄「で、今日行ったらそれは改善されてたけど」

母「ふーん」

兄「そのかわり奥から電子レンジの音が連発してた」

母「ぷっ……あはははは」

兄「笑いごとじゃないってば、客に説教されてたよ」

母「ごめんごめん」

兄「あんなんで続けていけるのかねぇ」

母「うーん……」

母「お父さんが遺したお店だから頑張りますって張り切ってたんだけど……」

兄「……」

母「最近、くたくたになって帰ってくるあの子を見てるのが辛くてね」

兄「求人はしてないのか?コックの」

母「出してるみたいだけど、なかなか来ないみたいよ」

兄「あぁいうとこは給料あんまり出せないしな……」

母「それで、苦肉の策で電子レンジってわけね」

兄「うーん……」

母「これがちなみに求人ね」

兄「ふむふむ、喫茶店厨房スタッフ募集、時給……安っ!!」

母「これじゃ誰も来ないわよね」

兄「もうちょい出せないのかな、これじゃ絶対来ないって」

母「うーん……経営も楽じゃないみたいだしね」

兄「まぁあのガラガラの店を見ればな……火の車だろう」

母「支払いが全部すんでるのが幸いね」

母「妹ちゃん、そろそろ帰ってくるかもね」

兄「あ、もうそんな時間か」

母「妹ちゃんと、こういうお店の話した?」

兄「いや、あいつ何か都合の悪いことは隠そうとしてるフシがあるなぁ」

母「……きっとね、お兄ちゃんに迷惑かけたくないんでしょ」

兄「というと?」

母「それは……」

妹「ただいま帰りました……」

母「今の話、内緒ね」

兄「う、うん」

兄「お、おかえりー」

妹「あ、兄さん……いらっしゃい」ズタボロ

兄「おいおい、大丈夫か?疲れてるな」

妹「大丈夫です……でもちょっと疲れました……」

母「おかえりなさい」

妹「ただいま、母さん」

母「ばんご飯は?」

妹「お店の余り物食べたから平気です……」

兄「(余り物って、冷凍もんか……)」

妹「ちょっと横になってきます……」

兄「お、おう」

母「ちょっと、大丈夫?」

妹「若いですから。明日にはピンピンです」

兄「……」

妹「ごめんなさい兄さん、せっかく来てくれたのに」

兄「……気にすんなよ。ゆっくり休みな」

妹「はい」

母「大丈夫かしら……」

兄「ちょっとキッチン借りるぞ」

母「え、えぇいいけど」

兄「えーと……」ゴソゴソ

母「何か作るの?」

兄「うんまぁ……豚肉があるな、あとは……ニンニクもニラもある」

母「もしかしたらスタミナ料理とか」

兄「せーかい」

母「食べてきたって言ってたわよ」

兄「ありゃ嘘だな。疲れて食欲ないって顔だったよ」

母「食欲ないのに、スタミナ料理なんて食べられるかしら……」

兄「……」トントン

母「レバニラならぬ豚ニラ?」

兄「油っこいときついだろうな」ジュージュー

母「でしょうねぇ」

兄「となると、スープ仕立てにしたほうがいいな」グツグツ

母「なるほど、さすがね」

兄「おっけ、あいつ好みの味だと思うけど」

母「いい匂いねー」

~妹の部屋~

妹「うぅ……足がパンパンです」

妹「腰も痛い……はぁ」バキバキ

妹「……何か、いい匂いがします」クンクン

兄「おーい、もう寝た?」

妹「え……兄さん?」

兄「入ってもいい?」

妹「はい……どうぞ」

兄「疲れて横になってたのか」

妹「は、はい……でももう平気です」

兄「無理すんなって、ほら」

妹「くんくん……いい匂い」

兄「軽い味付けにしてるけど、スパイスをきかせてるから」

妹「もしかして作ってくれたんですか?」

兄「駄目だぞ、疲れててもメシはちゃんと食え」

妹「は、はい……すみません」

兄「よそってやるよ、おかわりもあるからな」

妹「美味しいっ!」モグモグ

兄「明日になればもっと美味しくなるぞ」

妹「どうしてですか?」モグモグ

兄「大抵のものは煮たときより冷めてから味が染みるんだよ……てか常識だろ」

妹「初めて知りました、さすが兄さんです」

兄「料理のイロハのイだよ」

妹「おかわりください」

兄「ん、はいはい」

妹「ごちそうさまでした」

兄「あいよ」

妹「身体がポカポカします」

兄「ちょっと身体が暖まるスパイスも入れたから」

妹「まさか媚薬じゃないでしょうね、兄さん」

兄「なんでそんなもんがここにあるんだよっ!」

妹「あはは、そうですね」

兄「身体が暖まると循環が良くなって疲労回復にいいからな。あとはゆっくり休め」

妹「科学的なんですね」

妹「兄さんのおかげで、明日も頑張れそうです」

兄「休みとかないのか?」

妹「えっと、お父さんの時と同じですよ」

兄「週に一回だけしかないのか……」

妹「大丈夫です、体力だけはありますから」

兄「なぁ……」

妹「何ですか?」

兄「ほんとはあの店、お前ひとりしかいないんだろ?」

妹「な、なぜそれを」ギク

兄「あんだけチンする音が響いてたらわかるって」

妹「明日から消音モードにします」

兄「そういう問題か?」

妹「そういう問題です」

兄「あのさ……ちゃんとした料理人が来るまで、店閉めたほうがいいんじゃないか?」

妹「えっ……」

兄「今日だって文句言われてたし」

妹「あ、あれは……はい……」

兄「ああいう風なの、言ってくれるだけいいほうだぞ」

妹「……」

兄「ほんとに怖いのは、何も言わないで二度と来ないってお客さんだから」

妹「はい、でもこれじゃないとお店が回らないんです……」

兄「鯖味噌も冷凍なのか?」

妹「ですよ」

兄「すごい時代だなぁ」

妹「お話はわかりました」

兄「うんうん」

妹「でももう少しだけ、頑張って見てもいいですか?冷凍は減らしますから」

兄「それはまぁ……お前次第だけど」

妹「ありがとうございます」

兄「何でそんなあの店にこだわるんだよ」

妹「あそこにいると、お父さんが居るみたいで落ち着くんです」

兄「居るみたいでってか遺影があるからな……」

妹「よく友達と放課後、あそこでお茶してたんですよ」

兄「知ってる知ってる」

兄「まぁ、父さんみたいに無理だけはしないでくれよな」

妹「わかってます」

兄「俺がいいたいのはそれだけ、じゃあ」

妹「……」

兄「ちょくちょく様子見に行くからさ、頑張れ」

妹「あの、兄さん……」

兄「ん?」

妹「もし良かったら、でいいんですけど」

兄「何でも言ってみろ」

妹「……」

妹「あの……兄さんが良かったら」

兄「うん」

妹「私のお店で……は、働き」

兄「……」

妹「……は、働きアリの駆除をお願いします」

兄「は?」

妹「さ、最近アリがわくので困ってます」

兄「業者に頼めよ」

妹「わかりました」

~数日後~

兄「よし、じゃ今日も様子を見に行ってみるか……」

兄「……俺もなんだかんだ言って妹に甘いなぁ」

兄「……ふぅ」

兄「っと、着いた」

からんころーん

兄「お、ひとりだけど客がいるな……」

兄「妹は厨房か……」

兄「冷凍やめたから結局、手がまわらなくなったんだろうな」

兄「……ま、勝手に入っても問題ないだろう」

妹「お、おまたせしました。天丼になります」

兄「喫茶店らしいメニューがいっこうに出てこないな」

客「ったく、遅いよ!何分待たせるわけ」

妹「も、申し訳ありません」

兄「……」

兄「よっ」

妹「あ……兄さん」

兄「また手作りにしたのか」

妹「は、はい……少しでも美味しいものをって思って」

兄「いい心がけだなぁ」

妹「兄さんのスープを食べてから、少し勉強してるんです」

兄「はは、何か照れるな」

妹「えっと、注文はなんにしますか兄さん」

兄「えーとな、今日は……」

客「ちょっとそこの君っ!」

妹「は、はいっ!」

妹「どうされましたか?」

客「どうされましたかじゃないよ。なんなのこの天丼は」

妹「え……」

客「衣がガチガチ、熱の通りすぎで具は縮んじゃってるし食べれたもんじゃないよ。タレも甘すぎ」

妹「す、すみません……すみません」

兄「あらら……」

客「ったく、これなら冷凍食品食べたほうがマシだよ」

妹「……っ……すみません」

客「作り直してよ」

妹「はい……はい……」

兄「……」

~厨房~

妹「……」

兄「……よっ」

妹「に、兄さんっ……どうしてこんなところに」ゴシゴシ

兄「泣いてるのか?」

妹「ち、違いますっ……煙が目に入って」

兄「別に俺に隠すことないだろ」

妹「ぐすっ……に、兄さんは向こうで座ってて下さい。後で注文とりにいきますから」

兄「まぁ待てって」

妹「今忙しいですから……後にしてください。ちゃんと注文とりに……」

兄「注文じゃなくて面接頼む」

妹「……え?」

兄「この店で働きたいんだけど、駄目かな?」

妹「に、兄さんが……ですか?」

兄「調理師免許もあるし、まぁ現場経験は1年ちょいしかないけど」

妹「うそ……だって兄さんは、他にちゃんとお仕事が」

兄「あぁ、そっちは無理いってやめてきた」

妹「……っ!な、なんでそんな」

兄「こっちのほうが家から近いしなぁ。立派な志望動機だろ」

妹「…兄さんっ……!」

兄「断られたら、無職なんだけど」

妹「うっ……うっうっ……ぐす……」

兄「泣いてないで合否を」

妹「し、仕方ないから……雇ってあげますっ」

兄「超上から目線」

妹「身内がニートになったら困りますからっ……うぅ……ぐす」

兄「はいはい、じゃあ天丼作らないとな」

妹「……お願いします、天丼」

兄「おうよ」

妹「天ぷら、作ったことあるんですか?」

兄「うーん、あんまり自信ないけど」

妹「だ、大丈夫ですか?」

兄「まぁお前よりはうまく作れるぞ」

妹「むっ!何ですかその言いぐさは」ギュウ

兄「事実だろっ!足踏むな」

妹「事実かどうか作ってみないとわかんないですっ」

兄「うーん……何でダメ出しされたっけ」

妹「……ほぼ全部です」

兄「まずは衣か……」

妹「ここに混ぜたのがありますよ」

兄「あーあ、こりゃダメだな」

妹「ど、どうしてですか!?」

兄「トロトロにかき混ぜすぎ。これじゃ空気が中に入って衣が膨らんじゃうだろ」

妹「なるほど……」

兄「ケーキのスポンジはこういう風にするけど……天ぷらの衣はサクサクにしないと」

妹「はい……」

兄「よーし、これで衣はよし」

兄「よーし、揚がったぞー」ジューパチパチ

妹「は、早いですけどちゃんと火が通ってますか?」

兄「お前は油の温度が低すぎたんだよ。低いとカラッと揚がらないぞ」

妹「むむむ……奥が深いです」

兄「あとはタレかぁ……さっきは何を使ったんだ?」

妹「これです」ドン

兄「おまっ!これ焼き肉のタレだろ」

妹「こっちのほうが味が濃くて美味しいと思うんですが」

兄「いいから素直に天つゆ使おうな」

妹「次から気をつけます」

兄「よし、フタして蒸らして完成だな」

妹「兄さん、すごいです……」

兄「俺なんかまだまだだよ……ほんとなら修行中の身なんだから」

妹「うぅん……すごいです、本当にカッコいいです」

兄「い、いいからほら、はやく持っていって」

妹「はいっ!」

妹「おまたせしました、天丼です」

客「ったく、今度は大丈夫だろうね……ハフハフ」モグモグ

妹「……」

兄「……」

客「ムム」ピク

妹「お、お客様……?」

兄「ダメか……?」

客「う・ま・い・ぞーーー」ドグワァッ

妹「ひぃっ!味王!?

兄「しゃっ!」グッ

客「ハフハフッハフゥッ!メシウマッ!」

兄「待たされて腹減ってたんだろうな……」

~厨房~

兄「満足して帰ってもらえて良かったな」

妹「兄さんの天丼、私も食べたいです」

兄「ん、材料があるしまかないにするか」

妹「はいっ」

からんころーん

兄「とと、客だ」

妹「注文とってきますね、兄さん」

兄「おう」

妹「……兄さん兄さん」

兄「どした」

妹「……ふつつかな店長ですけど、末長くよろしくお願いします」ペコリ

兄「こちらこそよろしく」

疲れた

読んでくだすってありがとう!

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