苗木「風邪引いた」 (38)

苗木「寒い、体が震える」

苗木「もう朝なのに、みんなで朝食を食べる時間なのに、起きられない」

苗木「でも、行かなきゃ……うわっ」

ドサッ

苗木「いたた……」

コンコン

苗木「誰かきた、誰が……」

ガチャッ

舞園「苗木くーん、朝ですよー?」

苗木「あ、舞園さん……」

舞園「え、どうしたんですか苗木君! 大丈夫ですか!?」

苗木「だ、大丈夫……あっ」フラッ

舞園「苗木君!」

ぎゅっ

苗木「はぁっ、はぁっ……」

舞園「体も熱い……熱出てるじゃないですか」

苗木「大丈夫、大丈夫だから……」

舞園「大丈夫じゃありません! 苗木君は寝てて下さい!」

苗木「でも、朝食はみんなで……」

舞園「寝てて下さい」

苗木「……はい」

苗木「頭がボーッとする……」

苗木「きっと舞園さんが説明してくれただろうから、行かなくても大丈夫なのかな……」

苗木「はぁ、はぁ……」

苗木「とりあえず、寝よう」

苗木「……」





ガチャッ

ゴソゴソ

苗木(あれ)

ゴシゴシ

苗木(なんだろう、なんだか気持ちいいような……)

ゴシゴシ

苗木(これは、誰なんだろう)

ゴソゴソ

苗木(君は、一体……)

苗木「いくさば、さん?」

江ノ島「あれー? 起きちゃったの苗木ー?」

苗木「あれ、えっと、君は……」

江ノ島「やだなー、江ノ島盾子様の名前を忘れるなんて有り得ないしー」

苗木「江ノ島さん?」

江ノ島「舞園から苗木が風邪引いたって聞いたからさー、あたしがこうやって適切な処置してあげたわけ、感謝しなさいよー?」

苗木「うん、ありがとう江ノ島さん」

江ノ島「きっともうすぐ舞園がくるだろうから、それまで大人しく寝てな」

苗木「うん……」

江ノ島「それじゃああたしはこれで、じゃねー」

苗木「あのさ、江ノ島さん?」

江ノ島「んー?」

苗木「君は江ノ島さん、なんだよね?」

江ノ島「……」

江ノ島「そうに決まってんじゃん、苗木ってば意味不明なんだけどー?」

苗木「うん、ごめん、ありがとね」

江ノ島「それじゃあね……苗木くん」

ガチャッ、ばたん

ガチャッ

舞園「苗木くーん、入りますねー」

苗木「あ、舞園さん……」

舞園「きっとお腹空いてますよね、お粥を作って来ました」

苗木「ありがとう舞園さん」

舞園「それじゃあ、ふーっふーっ」

苗木「え?」

舞園「はい、あーん」

苗木「じ、自分で食べるよ」

舞園「あーん」

苗木「あ、あーん……」

舞園「ふふっ、美味しいですか?」

苗木「……うん」

舞園「それじゃあ次も、ふーっふーっ」

苗木「じ、自分で食べられるよ!」

苗木「うぅ、恥ずかしかった……」

舞園「ご飯も食べましたし、後はまたスポーツドリンクでも飲んで寝ましょうか」

苗木「うん、ごめんね手間かけちゃって」

舞園「良いんですよ苗木君」

なでなで

舞園「困ったときにはお互い様ですしね」

苗木「舞園さん……ありがとう」

舞園「もし私が風邪引いた時には、苗木君が看病してくださいね?」

苗木「うん、必ずするよ」

舞園「それじゃあ苗木君、ゆっくり寝てくださいね」

苗木「うん」

舞園「お休みなさい、苗木君」

なでなで

苗木「うぅん……」

苗木「あれ、舞園さんは……?」

苗木「……あはは、いつまでもついていてくれるわけないか」

苗木「みんな、どうしてるんだろう」

苗木「コロシアイ」

苗木「……こんな状況で風邪なんて、引いてられないのにな」

苗木「いや、そんなこと、みんながするわけない」

苗木「だから、大丈夫……」

ガチャッ

苗木「ん、誰?」

舞園「苗木君……」

苗木「舞園さん? どうしたの?」

舞園「……」

苗木「なんだか顔色悪いし、ボクの風邪移っちゃったのかな、ごめんね舞園さん」

舞園「……苗木、君」

ピトッ

苗木「えっと、首はすごく汗かいてるから触らないほうが……」

舞園「……」

苗木「舞園さん? すごく震えてるよ、大丈夫?」

舞園「……」

パッ

舞園「だ、大丈夫、です……」

苗木「舞園さんが具合悪いなら、看病してあげなきゃね」

舞園「な、苗木君、私は大丈夫ですから……」

苗木「でも、顔色が……わわっ」フラッ

舞園「あっ」

ぎゅっ

苗木「あはは……ごめん、二回目だね……」

舞園「そう、ですね」

苗木「えっと」

ピトッ

舞園「……?」

苗木「ボクよりは低いし、大丈夫……なのかな?」

舞園「……はい、熱はありませんから」

苗木「ねえ、舞園さん」

舞園「……なんですか?」

苗木「なにか、あったの?」

舞園「……」

苗木「なんだか様子がおかしいからさ、どうしたの?」

舞園「……苗木君が寝ている間にモノクマさんから、動機を渡されたんです」

苗木「動機?」

舞園「ここから出たくなるような、コロシアイをさせるための動機です……」

苗木「ッ! そ、それって、一体なんなの?」

舞園「……見ないほうが良いです、見たら、きっと……」

苗木「舞園さん……」

苗木「舞園さんはここからどうしても出たくなった……んだよね?」

舞園「……はい」

苗木「でも、コロシアイなんて……」

舞園「……」

苗木「人を殺してでも、出なくちゃいけないの?」

舞園「……」

苗木「……舞園さん」

ぎゅっ

舞園「な、苗木君?」

苗木「ボクが絶対に舞園さんをここから出すよ、絶対に助けて見せるよ」

舞園「苗木君……」

苗木「だから、だからさ、舞園さんはボクを信じていてくれないかな」

舞園「苗木君を、信じる……」

苗木「コロシアイなんて、しちゃいけない、みんなで脱出してみせるんだ」

舞園「……はい!」

苗木「ところで、みんなはどんな様子だったのかな」

舞園「みんなショックだったようには見えましたが、詳しくはわかりません」

苗木「うーん……念のため戸締まりをするくらいしか出来ないかな」

舞園「そうですね、苗木君も鍵くらいかけないとですね」

苗木「うん、でも鍵はしなくて正解だったかな」

舞園「どうしてですか?」

苗木「鍵をかけてたら、きっと舞園さんに看病して貰えなかっただろうしね」

舞園「ふふっ、そうですね」

苗木「あはは、アイドルに看病されるなんて夢みたいだよ」

舞園「これは高くつきますよー、ファンの方に怨まれちゃいますね」

苗木「怖いなぁ、でもそれでここまで乗り込んでくれたら外に出られるし、それも良いかもね」

舞園「ふふっ、そうですね」

苗木「うぅ……」

舞園「まだ寒気はするんですね、ベッドに入りましょうか」

苗木「うん、そうするよ……よいしょ」

もぞもぞ

舞園「……」

もぞもぞ、ぎゅっ

苗木「……ま、舞園さん?」

舞園「苗木君、私、怖いんです」

苗木「怖い?」

舞園「本当は、誰かを殺して外に出ようと本気で考えました、さっきも、苗木君を殺そうかとも考えました」

苗木「……うん」

舞園「こんなこと考えてしまう自分が、怖いんです」

苗木「……大丈夫だよ」

舞園「え?」

苗木「こんなことを話してくれる舞園さんなら、大丈夫」

舞園「そう、ですか?」

苗木「うん、人を殺そうと思ったなんて話してくれたのは、ボクを信じてくれた証拠だよね」

苗木「ボクを信じてくれたなら、ボクは舞園さんを守ってみせるからさ」

苗木「殺されることからも、殺すことからも」

苗木「だから、舞園さんは大丈夫」

舞園「苗木君……」

苗木「舞園さん、ボクを信じてくれて、ありがとう」

舞園「ありがとうございます、苗木君……」

苗木「ところでさ」

舞園「なんですか?」

苗木「いつまでも抱きしめられると、その、恥ずかしいよ」

舞園「……このまま寝ましょうか」

苗木「ええっ!?」

舞園「このまま部屋を出たら殺されちゃうかも知れませんよ、殺しちゃうかも知れませんよ?」

苗木「で、でも……」

舞園「ですから、一緒にいさせてください、今だけでも」

ぎゅうう

苗木「……わかったよ、舞園さん」

苗木「舞園さん、暖かいね」

舞園「苗木君は結構熱くて、湯たんぽみたいです」

苗木「湯たんぽって……まあ良いか」

舞園「それじゃあ苗木君、お休みなさい」

ぎゅうう

苗木「お休み舞園さん」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年12月28日 (水) 23:46:30   ID: hFpymwaf

おもしろい!!!!

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