ほむら「楽園──パーフェクト・ワールド──」 (48)

まどマギの短編SSで、すぐ終わります。

叛逆の物語のネタバレ注意。
なんかあの映画がずっと頭から離れないし、涙が出てしょうがないのでぼんやりと書きました。

ハッピーエンドではないですよ。
そもそも改変物でもありません。

大半が自己解釈です。

これらが駄目な方はバックをお願いします。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1382963317

いつまで。

いつまで戦い続ければ良いのだろう。

魔獣を前に、私は思う。

一度は覚悟を決めたはずだった。

この新しい世界で、どこまでも……力尽きるまで、この世界を守って戦い続けると。

いや、戦い抜くと。

でも、苦しい。

寂しい。

苦しい、寂しい。

終わりの見えない、無限に続くかのような苦しみに、私の魂は悲鳴を上げ始めていた。


──まどか……──

──まどか、まどか……──


助けを求める相手は、いつしか彼女一人だけになっていた。

初めは、そういう訳ではなかった。

この世界のみんなにとってはまだそれほど長い付き合いではないけれど、
私にとっては、顔馴染みのみんなに対してすがりつきたくなる時もあった。

巴マミ、佐倉杏子、今はもう居なくなってしまった美樹さやか……この三人だ。

でも、駄目。

誰も事情を知らないんだもの。そんな人達に助けを求める事なんて出来ない。

また、まどかが自分という存在を引き換えにしてまで作り変えたこの世界で、
私個人の為に昔の事をほじくり返して何になるのか。

それは、彼女への冒涜になると思ったから。

かつて、私はもう弱音なんか吐かない、絶対に負けない、誰にも頼らない──そんな決意だってしたのだから。

それに、せっかく今私たちの関係は上手くいってるのに、
余計な話をする事で、それが壊れる可能性だってあるのではないか?

……でもそういえば、唯一キュゥべえに対してのみは、再編される前の世界の話をした。

あいつとは(もう険悪な関係ではないにせよ)、ドライな関係だから逆に話し易かったというのもあるし、
だからこそなにも期待しなくてすむから。

……他にも、その時はこの世界に来てまだ間も無く、ここで地に足をつけて頑張るという覚悟を強固にする前で……

そんな中キュゥべえは私の前によく現れる存在であり、
この世界に限定すれば、誰よりも長い時間側に居た存在だからつい話をこぼしてしまった──というのもあったか。

なんにせよ、今のあいつにはそれを知った所でなにも出来ないのだから、どうでも良い事だ。


ドシュッ!


魔獣を一匹、倒した。

負けるものか。

負けたくない。

負けたくない……のに。

──自身が受け持った魔獣達を全滅させたのであろう巴マミが隣にやって来て、笑いかけてくれた。


「こっちは片付いたわ。あなたは大丈夫?」


優しいほほえみと言葉に、胸が熱くなる。

……だが、私は彼女が苦手だ。

虚勢を張って、頑張って。実際なんだかんだで頑張れてしまう悲しい強さを持っていて。

そのクセ、誰よりも繊細な心の持ち主で。

彼女の事は大好きだし、尊敬もしているけれど、そんな巴マミの事が私は苦手だった。

こんな人に真実を話してしまえば、どう転んでも良い結果にはならないだろう。

それが嫌だから、自分の苦しみを巴マミには話せない。

これは、私がいろんな時間軸をさまよっていた時からそうだ。

……彼女って、私と似ているのよね。

似ているどころか、心の奥深い所では似すぎているとすら思う。

それも、私が彼女が苦手な理由の一つなのだろう。

もっとも、私は自分が強いとは思わないが……


ドシュッ!

ドンッ!


二人で、もう数匹の魔獣を倒す。

そこへ、さらに佐倉杏子がやって来た。

彼女も、自分が引き受けた魔獣達を倒したのだ。


「あとはこいつらだけか。一気にやっちまおうぜ!」


頼もしい言葉。

私は彼女の事も大好きだし、佐倉杏子は誰よりもリアリストであり冷静だから、話が通じるかもしれない。

でも、だからこそ彼女に話すのは怖かった。

リアリスト特有の意見に、傷付けられるかもしれなくて。

彼女は優しさも持ち合わせているから、ただ現実的で、冷酷なだけの意見は言わないとは思う。

だから、これは結局私が臆病なだけなのだろう。

佐倉杏子も、あるいは巴マミも、助けを求めれば優しく手を差し伸べてくれるかもしれない。

しかし、それを求めるだけの度胸が私には無かったのだ。

万が一また彼女達と対立するような事態になると、もはや今の私には耐えられそうになかったから。

そんなの、もう無理だ。


──情けない話ね──


小さくつぶやきながら、ふと、私は自嘲の笑みを浮かべていた。

と、そこへ……


「暁美さん!」

「危ねえッ!」


いつの間にか私に向かって放たれていた魔獣の攻撃を、巴マミがリボンで弾き、
佐倉杏子がその魔獣を槍で貫いて倒してくれた。

これで、周囲の魔獣は全滅だ。


「よかった……」

「バカっ、なにボヤっとしてんだ!」


ごめんなさい、助かったわ。二人ともありがとう──私は笑顔で二人に言った。

しかし、上手く笑えていなかったのだろうか。二人の表情が軽く歪む。


「暁美さん……どうしたの?」

「……体調でも悪いか?
まあ、ここ最近は魔獣がよく現れやがるからな」

「少し、休みを取った方が良いかもしれないわね」

「ああ。
ほむらの調子が戻るまでは、あたしとマミでどうとでもするからさ」


だが、私は首を横に振った。

調子が悪いのはその通りだけど、ここで休んでしまったら、その方が立ち直れなくなりそうだから。

動いている方が、自分の弱さに呑み込まれなくてすみそうだから。

きっと、一度でも動き続ける事をやめてしまったら、それが『私』の最期なのだ。

そんな風に、私は思う。


『それならそれで良いじゃないの』


!?

挿絵。
http://myup.jp/z0cVjacE

間近から聞こえた声に、私は慌てて周囲を見渡した。


「暁美さん?」

「おいおい、どうしたよ?」


いや……これは間近と言うより、私の中から聞こえた感じだった。

震えが止まらない。


『こんなに苦しい世界なんか、いっそ全部壊せたら良いのに。
そんな力があれば良いのに』


……これは、私の心の奥底にある『闇』だ。


『いいえ。
いっその事、自分の思う理想の世界を作れたら良いのに』


普通の人は表に出さないだけで、心の闇なんか誰にでもある。

それ自体は別に驚く事ではないし、むしろ当たり前だ。


『力が欲しい』


……駄目だ、駄目だ。

こんなものにとらわれたら、私は終わってしまう。

……待てよ。

終わる?

そうだ。

今の世界で魔法少女が終わる時は、魔女にならずに『あの子』に導かれるのだ。

たとえば、美樹さやかのように。

そうしたら、『あの子』に会える。

ならば……


──私も、円環の理に導かれたい──


小さな衝撃とともに、『コツン』と自分の頭が鳴った。

佐倉杏子が、槍の柄で私の頭を軽く叩いたのだ。

視線の先には、悲しそうな顔をした佐倉杏子と巴マミ。


「バーカ。つまんねー事言ってんじゃねーよ。
……バカ」

「暁美さん、冗談でもそんな事言わないで。
美樹さんが居なくなって、さらにあなたまで居なくなるなんて……私、想像するだけで嫌よ……」


ごめんなさい、と、私は謝った。

そうだ。美樹さやかを失った悲しみの傷は、全員がまだ癒えきった訳ではないのに……

私はなにを言っているのだろう。

最低だ。


「やっぱあんた、疲れてんだよ。
……よし、アレだ。これから一緒にマミん家で美味いケーキでも食おうぜ!」

「ええ、そうしましょうよ。
もし辛い事とか悩みがあったら聞くわ。
一人で思い詰めたり、溜め込んじゃダメよ?」


二人とも、心配してくれている。

嬉しい。

けれど、やはり私は素直にその優しさに甘えられなかった。

『こんな話、誰が信じてくれるのよ』

『でも、彼女達なら……』

『私は誰にも頼らないと決めたはずよ』

……わかってるわ。こんな葛藤があるのは、先にも述べたように結局私自身が臆病なだけ。


まどか……


その三文字を、声には出さず、唇を動かすだけで紡ぐ。

強くなりたい。力が欲しい。

自分に負けずに、この世界を守って戦い続けられるだけの力が。

なにも、自分の『闇』が囁くようなものじゃなくて良いのだ。

巴マミのような、自分の弱さに苛まれつつも、負けずに頑張り続けられる強さが。

佐倉杏子のような、きちんと現実を見、受け入れて生き続けられる強さが。

美樹さやかのような、ボロボロになって荒れ果てても、結局最後には人を思いやれるような強さが。

欲しい。

彼女達が、自身の『闇』に呑まれて負ける姿も幾度となく見てはきたし、
それに対して私は何度も苛立ちもしてきたけれど……

こうして再編された世界を生きていくにつれ、次第にみんなの持つそれぞれの強さを深く実感し、
いつしか私は羨ましく思い始めていた。

私には──たとえ表向きのものだったとしても──彼女達のような堅固な心も、
内に秘めた優しさも持ち合わせてはいないから。


「おうマミ、あたしはリンゴのケーキな!」

「オーケー。私はチーズ。
暁美さんは?」


「かぼちゃが良いわ」、と、私は言った。

─────────────────────



でも。



まどかみたいな力があれば。



なんでも叶うわよね。



……………………

………………

…………

……

─────────────────────

私は一人、魔獣が居るであろう場所に向かって歩いていた。

周りには誰も居ない。

私一人の時に、魔獣の気配を察知したからだ。

まどか。

しばらく待てば巴マミや佐倉杏子も駆けつけるかもしれないが、いちいちそれを待つつもりは無い。

……いや、厳密には一人ではなかった。


「大丈夫かい? 最近まともに寝ていないんだろう?」


隣に、キュゥべえが歩いている。


──問題無いわ──


キュゥべえに返したこの言葉は嘘だ。

休みをほとんど取らずに酷使してきた肉体もそうだが、
特に精神面は、自分でもはっきりとわかるくらいまずい状態だ。

つまり、ソウルジェムの状態も悪い。

浄化はしているが、ここ最近は実感出来るほどの『回復』を感じた事はなかった。

本当は、もう限界に近いのだろう。

まどか。

だけど、立ち止まらない。立ち止まれない。

頑張らなければ頑張らなければ頑張らなければ。


「……まあいいや。
ところでちょっと気になる事があるんだ。こっちに来て貰えるかい?」


と、奴が促す方は、私が感じた魔獣の気配のある方向とは真逆。


「こっちにも嫌な気配を感じるんだ。
君が向かおうとしていた場所よりも近い」


……こんな状態だから、気配を察知し損なっていたのだろうか。

わかったわ、とつぶやき、私は頷いた。

……後になって思えば、ここが私、『暁美ほむら』の最大の分岐点だったのかもしれない。

けどね、キュゥべえ。

私は感謝しているのよ。

だって……

─────────────────────

ほむら「おかげで、こんなに素晴らしい世界が手に入ったんですもの!」

夜の外で、一人の時間を楽しんでいる時に現れたキュゥべえを壊しながら、私は喜びの声を上げる。

ほむら「ありがとうねぇ、キュゥべえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

かつては散々煮え湯を飲まされたこいつも、もはや私のただの下僕。惨めで哀れな奴隷。

そんな立場であり、不死身と言っても良いこいつには何をしても良いのだ。

ほむら「ふふふふふっ、ふふふふ!!!」

いつものようにキュゥべえをボロ雑巾みたいにすると、私は優雅に踊り出した。

最高だ。最高の気分だ。

この世界にはなんといってもまどかが居るし、他のみんなとも衝突する事がない。

唯一、美樹さやかだけはまだ完璧ではないが、それも今だけ。

時期に余計な記憶も失ってくれるだろう。

いや、そんなもの、やろうと思えばいつだって消せる。


──まどか──


何もかもが、ソウルジェムの中で作った不完全な幻の『楽園』とは訳が違うのだ!

ほむら「ふふふふふふふふ! あはははっ!!!」

私は、踊りながら崖の前まで来た。


──まどか──


あなたすら私の側に居てくれる、もう誰も悲しまなくて良い、優しい……完璧な『楽園』。

そして、それを作り・維持出来る力。

私はすべてを手に入れたのだ!


──まどか──


ほむら「ははははは!!!」

ほらっ、全部私の物だ。全部全部全部全部ッッッ!

まどかも巴マミも佐倉杏子も美樹さやかも!

世界だって私の物!!

ほら見てみなさい! 世界の方から私に飛び込んでくるじゃないの !!!

ほむら「あ ー は は は は は は は は は ! ! ! ! ! ! ! !」

私は笑顔のまま、崖から身を投げた。



──まどか……──





完。

以上です。
お付き合い頂いてありがとうございました。

以下簡単なものですが、叛逆の物語の感想注意。

私が一番好きなのはまどかですし、すべての面で一番共感しているのはマミさんですが、
叛逆の物語のほむらはもの凄く胸に来ました。
チャップマン選手のストレートも目じゃないくらいの直球を喰らいました。

私には、悪魔となって新しい世界で生きるほむらは、すべてのシーンで泣いているように見えました。

あの映画は完全に続編ありきな感じですね。
ただ、当然未来なんてわからないので、続編は無い可能性だってあります。

でも先がどうであれ、ほむらも、他のみんなも本当の意味で救われて欲しいなと思います。

もちろんこれはただの私個人の感想なので、
『ほむらも他のみんなも、あれで完璧救われていると思う』って意見もありだと思います。
あれですね、異論は認めるってやつです。

それでは、またご縁がありましたらよろしくお願いします。

もしかして>>1
ほむら「それはもう一つの結末」の作者、文体が何か似てる気がする

もしかして>>1
ほむら「それはもう一つの結末」の作者かな?文体が何か似てる気がする

>>37
あ、そうです~。前作ですね。
やっぱり文体とかでわかってしまうものなのですね。

もしかして前作もお付き合い頂いたのでしょうか?
だとしたら重ねて感謝致します。

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