番長「……影時間?」(123)

~電車内~

番長(夏休みを利用して、稲羽市に遊びに行くことにした)

番長(……あいつら、元気にしてるかな?)

番長(……まだ到着まで大分時間があるな)

番長(一眠り……しようかな?)

番長(最近……よく眠れなかったしな……)

番長(寝よう)

番長(そっとしておいてくれ……)

番長「…………」

番長「スー……スー……」

ガタンゴトン……ガタンゴトン……

番長「…………」

番長「……!?」ハッ

番長(酷く悪い夢を見た気がする……)

番長(まるで……世界が終わるような……)

番長「…………」

番長(何か視線を感じる)

少年「…………」ジー

番長「!?」

番長(い、何時の間に隣の席に!?)

少年「…………」ジー

番長(何か……暗そうなヤツだな)

番長(前髪なんて片目を隠してて……)

番長(ゲゲゲの鬼太郎みたいだ)

番長(よし、こいつを仮にキタローと呼ぶことにしよう)

キタロー「…………君か」

番長「え?」

キタロー「君が……例の……」

キタロー「……ふむ」

キタロー「なるほどなー」

番長「あ、あの?」

番長(何か……暗そうなヤツだな)

番長(前髪なんてヅラで隠してて……)

番長(ナニワのモーツァルトみたいだ)

番長(よし、こいつを仮にキダ・タローと呼ぶことにしよう)

キタロー「あぁ、ごめんね?」

キタロー「隣、いいかな?」

番長「あ、あぁ。構わない」

キタロー「……君も稲羽市に?」

番長「そ、そうだ」

番長「友人に会いに……ちょっと」

キタロー「……そうか、友人にね」

キタロー「……僕も……少し野暮用があって稲羽市に行くんだけどね」

番長「……観光か?」

キタロー「……観光……みたいなものか」

キタロー「どうしても行かなきゃいけない場所があってね」

番長「稲羽市だったら、案内できるけど」

番長「案内しようか?」

キタロー「……気持ちだけ受け取っておくよ」

番長「そ、そうか」

キタロー「…………」

番長「…………」

番長(き、気不味い!)

キタロー「……話は変わるんだけど」

キタロー「一日って何時間だった?」

番長「……24時間だ」

キタロー「そうだね」

キタロー「……実は25時間だった!っていったら、君は信じるかい?」

番長「……は?」

キタロー「……そんな露骨に『何言ってんだ、こいつ』って顔をしないでよ」

キタロー「一日には、実は隠された時間があって」

キタロー「……そうだな、一部でそれは影時間って呼ばれてるんだけど」

キタロー「……影時間って知ってた?」

番長「……影時間?」

キタロー「うん、影時間」

番長「……知らないな」

キタロー「……そりゃそうか」

キタロー「急に変なことを言い出して、ごめんね」

キタロー「……そろそろ稲羽市に着くみたいだね」

キタロー「……お邪魔したね」

キタロー「……またね」

スッ……スタスタ……

番長(……何だったんだ?)

菜々子「お兄ちゃんだ!」

堂島「久し振りだな、悠」

番長「またお世話になります」

堂島「……そんな他人行儀な挨拶はなし、だ」

堂島「よく来てくれたな」

堂島「相変わらず何もない街だか、ゆっくりしていってくれ」

菜々子「お父さん!今日はみんなでお寿司食べよ!」

堂島「ははっ、そうだな!」

Prrrrrrr!Prrrrrrr!

堂島「やれやれ、こんな時に電話か」ピッ

堂島「……堂島だ」

堂島「……そうか、また出たか」

堂島「今からそっちに向かう」

堂島「……というわけだ、すまない」

堂島「悠、菜々子を頼む」

菜々子「お父さん!頑張って!」

堂島「おう!今晩は遅くなるかもしれないから、戸締りしっかりしろよ」


菜々子「……帰ろっか、お兄ちゃん」

番長「ああ、帰ろう」」

~堂島宅~

菜々子「お父さんねー、最近また忙しいみたいなの」

番長「また何か大きな事件が?」

菜々子「事件……っていうのかな~?」

菜々子「最近、カゲニンゲン?っていうのが増えてるんだって」

菜々子「菜々子にはよくわからないんだけど」

番長(……カゲニンゲン?)

番長(影人間、か?)

番長(影人間って何だろう?)

菜々子「あ、そうそう!お兄ちゃん!」

菜々子「菜々子ね、学校で~」

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ーーーー
ーー

番長(また稲羽市にで事件が起きているのか?)

番長(影人間?どういうことなんだ?)

番長(明日になったら花村にでも聞いてみるか……)

番長(そろそろ12時か……いい加減、寝ようかな)

チッチッチッチッ……

フッ

番長(部屋の電球が消えた……停電……か?)

番長(それに何だか嫌な感じがする)

番長(初めてマヨナカテレビの中に入ったときみたいな)

番長(…………)ブルッ

番長(……寝よう)

花村「久し振りだな!相棒!」

里中「鳴上君、元気だった!?」

雪子「……鳴上君、お久し振り」

番長「久し振りだな」

番長「また会えて嬉しいよ」

花村「よせよ、照れるじゃねーか!」

里中「鳴上君、ご飯食べた?」

番長「いや、まだだけど」

雪子「それじゃあ……」

花村「いつもの場所、にでも行きますか!」

~ジュネス・フードコート~

花村「影人間?」

里中「あー!それって最近増えてるって噂のアレじゃない?」

番長「知ってるのか?」

雪子「……うん、最近ニュースになってるんだけど」

雪子「前触れもなく、急に死んだように無気力になる人が増えてて」

里中「……場合によっては、失踪した数日後に影人間になった状態で発見されることもあるんだってさ」

花村「何かおっかねぇよな……失踪って聞くとマヨナカテレビを思い出しちまうしよ」

花村「噂をすれば」

花村「あそこにボーっと突っ立てるヤツいるだろ?」

花村「……アレが影人間ってヤツだ」


男「あ……ああ……うぅ……」


番長「……あれが影人間?」

里中「本当、最近見掛けるようになったよね」

雪子「……怖い」

番長(話題を変えよう)

番長「昨日の夜、停電なかった?」

里中「あー、あったあった!」

雪子「最近毎日あるよね」

花村「でも、何かおかしいんだよな」

花村「周りのヤツに聞いても、停電なんかなかったって口を揃えていうし」

花村「それに……この前よ」

花村「停電中だったけど、喉が乾いたから台所に行ったら……」

花村「棺桶っつーの?何故か台所に棺桶が立っててさ」

花村「俺、ビビってジュースも取らずに部屋に帰って、布団に潜り込んじまったよ……」

里中「……マジ?」

花村「それよりよ、悠?」

花村「今晩暇か?」

番長「暇だけど?」

里中「じゃあさ、今晩鳴上君の家でパーティしない?」

雪子「企画したのは菜々子ちゃんなんだけどね」

花村「祝!鳴上悠稲羽上陸パーティっつーの?」

花村「ま、そんな感じで完二とかりせちーとか白鐘とか呼んでさ!」

クマ「クマも行くクマよ?」

里中「い、何時の間に!?」

花村「……勿論お前もな」

クマ「クマー!」

~堂島宅~

花村「せーの!」

一同「おかえりなさい!」

番長「ただいま」

完二「マジ久し振りっすね!」

りせ「先輩!元気してた!?」

直斗「お久しぶりです、先輩」

花村「積もる話はあると思うけど」

花村「とりあえず、飯にしようぜ!」

里中「肉!肉!」

番長(何で自分の歓迎会の料理を自分で作ってんだろう……俺)

里中「結構遅くなっちゃったね」

花村「もうそろそろ日付変わっちまうな」

雪子「……今日も停電、するかな?」

完二「最近、多いッスからね」

りせ「毎日毎日嫌になっちゃうよね」

白鐘「……記録には残ってないんですよね、あの停電」

クマ「日付が変わるクマよ!」

チッチッチッチッ……

フッ

花村「今日も停電すんのかよ……」

里中「うーん、いいタイミングだし……帰ろっか!」

雪子「そうだね、あまり遅なっちゃってもいけないしね」

番長「……送ってくよ」

里中「か、棺桶が!」

花村「俺が見たのこれだよ!やっぱり夢じゃなかった!」

雪子「何だか……不気味な夜空だよね」

完二「せ、先輩!」

完二「あそこの暗がり……何かいますよね?」

番長「……何かがいるな」

里中「何か闇が蠢いてるような……?」

暗がりの中「……シュー……シュー」

りせ「ね、猫かなんかじゃないかな?」

クマ「こ、この感じ……」

バッ!

花村「な、何か飛び出してきたぞ!」

?「シャァァァァァァァッ」

完二「マ、マジかよ!?」

里中「こ、これって……?」

りせ「シャ、シャドウだよ!」

クマ「あわわわわわわわ」

シャドウ「グオオオオオオッ!」

番長「に、逃げよう!」

花村「りょ、了解!」

タタタタタタタタッ!

タタタタタタタッ……

雪子「な、何でシャドウが!?」

里中「わ、わからないよ!そんなの!」

花村「テ、テレビの中ならペルソナで倒せるのに!」

シャドウ「シュバァァァァァァァッ」

直斗「あ、新手のシャドウが!」

完二「あ、あっちに逃げっぞ!」

りせ「もう、イヤーッ!」

タタタタタタッ……

里中「い、行き止まり!?」

花村「ははっ……マジかよ?」

シャドウ「シュー……シュー……」

クマ「ピ、ピンチクマー!」

番長(……ど、どうする!?)

番長(逃げ場は……ない!)

シャドウ「ウバァァァァァッ!」バッ

雪子「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

番長(…………もう、駄目だ)

番長「…………」

番長(襲って……こない?)

キタロー「やぁ、本当にまた会えたね」

シャドウ「キュゥゥゥ……」シュー

オルフェウス「…………」

フッ

花村「……今のは」

りせ「ペ、ペルソナ?」

里中「あ、あなたは誰?」

キタロー「……どうでもいい」

里中「えっ?」

キタロー「僕のことはどうでもいい」

キタロー「また襲われないうちに早く帰るんだ」

キタロー「詳しいことは明日話すから」

~ジュネス・フードコート~

花村「……ってわけで集まってみたものの」

花村「あいつ!どこで会うかとか言ってねーじゃん!?」

番長「落ち着け」

花村「お、おう」

里中「どうしようね?」

雪子「……私達から彼を探す?」

直斗「彼の手掛かりなんて何もないんです、見つかりませんよ」

一同「…………」

キタロー「ごめん、待たせたね」

一同「!?」

キタロー「いや、君らならここにいるだろうと思っただけなんだけど……」

キタロー「……早速だけど話すよ」

キタロー「この街に今何が起こっているかを」

花村「影時間……か」

里中「あれって停電じゃなかったんだ?」

雪子「そんなことが起こってたなんて……」

番長「影時間は何故再び始まったんだ?」

キタロー「詳しいことはP3をプレイして欲しいんだけど」

キタロー「僕は自分の魂を使ってニュクスという死の神を封印してたんだ」

キタロー「毎日拷問のような責め苦に耐えていた……けど、ある日」

キタロー「とある女性……エリザベスっていうんだけど、彼女が僕を助けてくれたんだ」

キタロー「それ以来、僕はベルベットルームっていうところの住人なんだけど」

キタロー「まぁ、それは置いといて」

キタロー「僕を救出するときに、エリザベスのちょっとした手違いで、ニュクスの一部がどこかにいってしまった」

キタロー「……そして、その一部はこの稲羽市にある」

キタロー「一部っていっても、物凄く小さな破片みたいなものなんだけどね」

キタロー「破片といっても、やはり死の神だから」

キタロー「影時間を作り、シャドウを街中に出現させるのには十分なんだ」

キタロー「……以前のように大きな破局を迎えることはないと思う」

キタロー「でも、少なくともこの街は、死ぬ」

キタロー「……そこで派遣されたのが僕なわけだけど」

キタロー「……タダ飯喰らいはいらないってさ……酷いよね」

キタロー「……信じられないかもしれないけど、これがこの街に起こっていることだよ」

番長「そうか」

花村「お、お前今の説明でわかったの!?」

花村「ニュクス、とかいうのは置いといてさ!」

花村「ベルベットルームって何!?」

花村「……っていうか、こいつ死んでるんだろ!?」

花村「あー!もう意味わかんねぇ!!」

番長「落ち着け」

花村「……便利だな、それ」

直斗「とにかく、そのニュクスの破片を見つけないと大変なことになるわけですね?」

キタロー「うん、そういうこと」

キタロー「一応、街中探してみたんだけど見つからないんだよね」

直斗「……この街にあるのは確かなんですね?」

キタロー「うん、それは間違いないよ」

里中「じゃあさ、私達もそのニュクスの破片とかいうの探してみようよ」

里中「一人だから、意外と見落としあったのかもよ?」

花村「そうだな……この街のことは俺たちの方が詳しいし」

直斗「破片はどういった形をしているんですか?」

キタロー「テニスボール位の大きさで、金平糖のように尖っているよ」

キタロー「色は吸い込まれそうな漆黒で禍々しいオーラが出てる」

直斗「わかりました」

キタロー「あ、見つけても絶対に触らないでね?」

キタロー「一瞬で死んじゃうから」

完二「おいおい……物騒な代物じゃねぇか……」

キタロー「え~っと、支給品の中に……あった、あった」

キタロー「見つけたら、この携帯電話に連絡を貰えるかな?」

キタロー「すぐに現場に駆けつけるからさ」

キタロー「他に質問は?」

雪子「はい!」

キタロー「どうぞ」

雪子「君の名前をまだ聞いてないよ?」

キタロー「あ、そういえばそうだね」

キタロー「僕の名前は有里湊だよ」

雪子「有里湊、ね」

キタロー「他に質問はある?」

クマ「はいクマ!」

キタロー「どうぞ」

クマ「あそこから物凄い顔でこっちを睨んでる二人組は有里氏の友人クマ?」

キタロー「……え?」

キタロー「……あばばばばばばば」

花村「おいおい!すげー可愛い二人組じゃねぇか!……顔怖いけど」

花村「有里、紹介しろよ!」

キタロー「ぼ、僕は有里なんかじゃないよ?」

キタロー「け、決して悪いキタローでもない!」

花村「……は?」

キタロー「ぼ、僕はこの辺で失礼するよ!」

キタロー「け、健闘を祈るッ!!」

?「アイギス、確保!」

?「了解しました」シュイーーーン



キタロー「た、助けてぇぇぇぇッ!」

?「やれやれ、影人間がこの街に多く現れていると聞いて調査をしにきたら」

?「……とんでもない人を見つけてしまいましたね」

キタロー「あはははは……」

?「……どこで……何をしてたんだ……この……馬鹿者ッ!」

パチーンッ

一同「!?」

キタロー「すみませんでした……」

?「話はあとでゆっくり聞かせて貰うからな」

花村「あ、あの……お二人はどちら様で?」

?「あぁ、そういえばそうだな」

美鶴「私は桐条美鶴というものだ」

アイギス「私はアイギス、です」

里中「き、桐条さんは……」

美鶴「美鶴、でいい」

里中「……美鶴さんは影時間をご存知なんですか?」

美鶴「私とアイギスはそこの馬鹿と一緒に影時間を消す為に戦ったことがある」

美鶴「……それに私の問題でもあるからな……影時間は」

里中「あ、さっきの彼の話にあった怖い女の人って美鶴さんのことだったんですね!」

美鶴「有里……お前……」ギロッ

キタロー「……あははっ、悪気はなかったんです……許して下さい」

美鶴「……あとで処刑するからな」

雪子(処刑……?)

花村(有里の話通りの怖い人じゃねーか!)

花村「お、俺たちは手分けして破片を探してくるからさ!」

花村「有里は積もる話もあるんだろ?」

花村「ここでゆっくり話してけよ?」

番長「そうだな、みんな……行こう」スッ

里中「あ、夕方くらいにここにもどってくるからさ~?」アセアセッ

雪子「ごゆっくり」スッ

スタスタスタスタスタ……

有里「え?……お、置いていかないでぇぇぇぇ!」

美鶴「さて……話を聞かせてもらおうか」

アイギス「場合によっては、また死にますよ?」

花村「相棒、どこから探す?」

番長「……そうだな」

番長「……商店街方面と学校方面で手分けして探そう」

里中「見つけたら連絡は忘れずにね」

直斗「絶対に触ってはいけませんよ?」

完二「お、おう!勿論だ!」

雪子「聞き込み……とかもした方がいいかもね」

りせ「何だか懐かしいね、この感じ!」

花村「じゃあ……」

番長「解散!」

~夕方 ジュネス・フードコート~

キタロー「遅かったじゃないか……」

キタロー「君らが遅いから……」

キタロー「僕は……」

アイギス「自業自得」

美鶴「……破片は見つかったのか?」

花村「……成果、なし」

里中「路地裏とかかなり狭いところも探したんだけどね」

番長「……有里、まさか山の中に落ちてるとかは……」

キタロー「それはないと思う」

キタロー「ニュクスの気配みたいなものを市街地からしか感じないんだ」

キタロー「人里離れたところには、絶対にないよ」

直斗「有里さん。もし茂みの中に落ちていたらどうなります?」

キタロー「……不自然に茂みが枯れているか、もしくは一帯が禿げ上がってるかな」

キタロー「破片に触れたものは例外なく死に絶えるから」

直斗「……なるほど」

美鶴「話は変わるが……君たちはペルソナ使いなんだな?」

美鶴「さっき有里からそんなことを聞いてな」

番長「はい、俺達はペルソナ使いです」

りせ(あれ?そのことは喋ってないはずはんだけど……)

キタロー「あ、僕はベルベットルームの
住人だから、見れば分かるんだ」

キタロー「最も君達はかなり特殊なペルソナ使いみたいだけどね」

キタロー「どこで身につけたの?」

番長「……マヨナカテレビっていうのが」

~説明中~

バッチリ伝わった!

キタロー「へぇ、そんなのもあるのか!」

美鶴「……では、君達はテレビの中意外ではペルソナを召喚できないわけだな?」

花村「そ、そのお陰でこの前は酷い目にあったぜ!」

美鶴「……そうか」

美鶴「ならば、影時間は絶対に表に出ないで欲しい」

美鶴「影時間は私達がパトロールする」

アイギス「犠牲者を出さない為にも……私達が頑張りますので」

キタロー「今日はもう解散しようか」

キタロー「遅くなっちゃうし」

~夜 堂島宅~

堂島「悠、ちょっといいか?」

堂島「お前……また事件に首を突っ込んでるだろ?」

番長「……はい」

堂島「影人間の件、何かわかりそうなのか?」

番長「……もう少ししたら分かると思う」

堂島「……そうか」

堂島「またよくわからんことが起きてるんだろ?」

堂島「……悠、お前らにしか解決できない事件だとしても……」

堂島「……無理はするな」

番長「……ありがとう」

~朝 ジュネス・フードコート~

番長「……今日は雨か」

里中「一日降り続くみたいだね」

花村「相棒、今日はどこを探すんだ?」

番長「探していないのはジュネス近辺と川原の辺りか」

有里「今日は僕らも探すの手伝うよ」

アイギス「頑張るであります!」

美鶴「では昼頃にまたここで」

番長「よし……」

番長「解散!」



花村「見つからねー!」

完二「ほ、本当に街中にあるんスか!?」

クマ「カバンの中も机の中も探したけれど見つからないクマ!」

キタロー「……おかしいなぁ……これだけ探しても見つからないなんて」

りせ「気配、とかいってたよね?」

りせ「どんな感じなの?」

キタロー「この街全体に霧がかかってるような?そんな感じだよ」

美鶴「有里……風花を呼ぶか?」

キタロー「……それだけは勘弁して欲しい」

美鶴「冗談でいっているわけじゃないぞ?」

キタロー「死人に出会うなんて世界の歪みをこれ以上増やすのはよくないと思うんだ」

アイギス「なるほどなー、それっぽい理由だなー」

キタロー「……いや、本当に」

~夜・堂島宅~

番長(結局……見つからなかった)

番長(……どこにあるんだろう?)

番長(霧のような気配、か……)

番長(そういえば……今晩は雨のせいで霧が出てるな……)

番長(マヨナカテレビ……)

番長(……!?)

番長(テレビの中は探してない!?)

番長(……まさか、な?)

チッチッチッチッ……

フッ

番長(影時間……か)

ザザザザザザ……

番長(影時間なのに……テレビが!?)

番長(こ、これは?)

?「もしもし、私ニュクスさん……」

?「誰も私を見つけてくれないの……」

?「寂しいな……」

?「……私を見つけてくれないなら……」

?「みんな死んじゃえ!」

『稲羽市の都市伝説!ニュクスさんがきた!』デデーン

?「早く……見つけて、ね?」

プツン……

番長「決定、だな」

花村「まさか……だったよな」

完二「久し振りにマヨナカテレビなんて見ましたよ」

クマ「そういえば最近テレビの中が騒がしかった様な?」

花村「もっと早くいえよ!?」

クマ「クマだってまさかテレビの中だとは思ってもいなかったクマよ!?」

里中「ま、いーじゃん」

雪子「鳴上君、早く行こう」

番長「あぁ」

キタロー「勿論僕らも行くよ」

美鶴「テレビの中……か。どんな世界なんだろうな?」

アイギス「正直少し楽しみですね」

りせ「……そんなにいいものじゃあ……」

直斗「とにかく行きましょう!」

~テレビの中~

クマ「ほい、三人はこれをつけるクマよ?」

美鶴「こ、これを!?」

花村「テレビの中は霧だらけなんで」

里中「でも眼鏡をかければ視界が晴れますよ?」

雪子「ささっ、早く早く」

キタロー「……確かに、霧が嘘のように晴れて見える」

アイギス「すごい、これすごい!」

美鶴「何で……私のだけ少しデザインが違うんだ?」

クマ「いいからいいから!」

美鶴「…………」スッ

キタロー「……ぷっ……くくくく……」

アイギス「……これは……くくっ」

雪子「あははははっ!何それ!」

クマ「……美人が台無しクマ……ぷぷぷっ」

美鶴「……ふざけるな!」バシンッ

雪子「あぁ!ヒゲメガネが!」

クマ「ク、クマの力作が!」

美鶴「お前ら!しょ、処刑してやる!そこになおれ!」

番長「落ち着いて」

美鶴「……ぐぬぬ」

美鶴「お、覚えてろよ……」

クマ「……ちなみに美鶴氏のメガネはこれクマよ?」スッ

美鶴「は、初めから出せッ!」

花村「……さて、お約束も終わったことだし」

番長「行くぞ!」

番長「ここに……稲羽市の都市伝説!ニュクスさんが?」

花村「これ…….登るのかよ?」

里中「……頂上みえないよ?」

雪子「登るしかないよ」

直斗「……そうですね」

クマ「クマ……足がもげるかも」

キタロー「タルタロスか……懐かしいね」

美鶴「またこれに挑むことになるとはな」

アイギス「……気合だー!」

完二「行くぜ!オラァ!」

花村「や……やっと頂上だ!」

里中「ニュ、ニュクスさんは!?」

キタロー「……あった、アレだ」

?「やっと見つけてくれたんだね!」

?「私、嬉しい!」

?「さぁ、早くお持ち帰りしちゃって!」

キタロー「……綾時だな?ふざけるのもいい加減にしろ」

?「……なんだよ、ノリが悪いなぁ」

?「せっかくアリスっぽい外見にしたのにさ」

綾時「……もしかして、この姿の方が有里君は好きかな?」

キタロー「……どうでもいい」

綾時「本当に釣れないな、君は」

綾時「まぁ、いいや」

綾時「破片の回収ご苦労様」

キタロー「……破片はどこにある?」

綾時「……僕の、ここ」トントン

キタロー「……心臓?」

綾時「うん、今の僕のコアだよ」

綾時「……抉り出さないともって帰れないよね」

綾時「……絶対痛いよね?」

綾時「痛いのは……嫌だなぁ」

綾時「協力はしたいんだけど……」

綾時「……うん、こうしよう」

綾時「戦いの中で心臓が抉り出されちゃったら、それは事故だよね?有里君?」

綾時「ニュクスの破片が欲しいのなら……」

綾時「事故を起こせ!」

綾時「さぁ、かかってきなよ?」

綾時「一度に全員でかかってきてもいいんだよ?」

ゴゴゴゴゴゴ……

番長(もの凄い殺気を感じる……)

完二(う、動いたら……ヤられちまう!)

キタロー 「メ、メサイアッ!」カッ

メサイア「…………」コォォォォ

キタロー「綾時を消し飛ばせッ!」

メサイア「…………」カッ

シュゴォォォォォォォッ!

里中「す、凄い!」

雪子「これが有里君の本気なの!?」

キタロー(や、やったか!?)

綾時「いや?全然やってないけど?」

キタロー「!?」

綾時「抉り出せって言ってるのに……消し飛ばそうとするなんて酷いじゃないか」

綾時「……素直にタナトス辺りで抉り出しにきたら、諦めたのにさ」

綾時「ボーナスタイム終了ね」

綾時「……僕の番だ」

綾時「テレビの中で面白そうな技を見つけてさ?」

綾時「……え~と、何だっけ?」

綾時「幾千の呪言ッ!」

綾時「だったかな!?」

ゾワァァァァァァァッ!

番長「!?」

番長「幾万の真言ッ!」カッ

シュワァァァァァァァァッ!

綾時「そうそう、それで打ち消さないと全滅だよね?」

綾時「僕はこれから幾千の呪言を出しっ放しにして戦うからさ?」

綾時「せいぜい、必死に打ち消してる彼を守りながら戦いなよ、君達は」

綾時「……そうそう、彼をそんな感じで囲むといいね」

綾時「……無駄なことに一生懸命になる、命の儚さが垣間見れて、凄くいいね」

綾時「愛でたくなっちゃうよ」

綾時「手荒にね」

カッ

番長「ハァ……ハァ……」

キタロー「だ、大丈夫!?」

綾時「大丈夫も何も、全滅にリーチがかかってる状況じゃないか?」

綾時「もう立ってるのは君ら二人だけだよ?」

綾時「安心してよ、その辺に転がってる君の仲間は全員息があるからさ」

綾時「死ぬとしたら、そっちの彼が諦めた時だ」

綾時「……有里君?本当は気づいてるんだろ?」

綾時「ペルソナでどんな暴力を働いても、今の僕を殺すことなんて出来無いことを」

綾時「だったら迷うなよ」

綾時「君がいつまでも迷ってるから……」

綾時「苦しむ人が増えているんだよ?」

キタロー「…………」

キタロー「……鳴上君」

キタロー「ごめんね、迷っちゃって」

キタロー「……怖くてさ、またあの永遠に続く苦しみに戻ったら、と思うと」

キタロー「昔は躊躇なくできたんだけどなぁ……」

キタロー「……綾時、覚悟はいいね?」

綾時「やっと決断したかい?」

キタロー「……僕は……また」

キタロー「自分の命を投げ出して……」

キタロー「ニュクスを封印する!」

カッ

綾時「……ありがとう……有里……君……」



カランッ

キタロー「……ってなわけでニュクスの破片は回収完了!」

番長「……何でけろっとしてるんだよ」

キタロー「僕にもよくわからないよ」

キタロー「封印したのが、ニュクスのわずか一欠片だったからなのかもしれないし」

キタロー「……そもそも僕は死んでるからなのかもしれないし」

キタロー「あとで急に倒れるかもしれないけどね」

花村「マイペースなヤツだな……お前は……」

アイギス「有里さんはこの後どうするんですか?」

美鶴「……また消えるのか?」

キタロー「消えるよ。僕は世界の歪みだから」

キタロー「この欠片も早く持って帰らなきゃいけないし」

キタロー「……また何かシャドウ関連のトラブルがあれば会えると思う」

キタロー「……トラブルなんて起きない方がいいんだけど」

キタロー「みんな……」


キタロー「またね」

花村(相棒も帰っちまったし、また退屈な日常に逆戻りか)

花村(……退屈な方がいいんだよな)

花村(だけどよ!)

花村(こう毎日ジュネスで働いてるってのも堪えるぜ!?)

花村(俺の夏休みは!?)

花村(はぁ…………)

?「エビデーヤングラーイフジュネス♪」

花村(浮かれながらお買い物しやがって……)

花村「……っておい!お前!」

キタロー「ん?」

花村「あんな別れ方したのに、こんなところで何してんだよ!?」

キタロー「ははっ……パシリさせられてるんだ、今度は」

キタロー「インスタントのうどん探してんだけどさ、お揚げ入ったヤツ」

キタロー「どこ?」

花村「……あちらでございます」

花村「……ってなわけで、毎日買い物に来てるんだよ、アイツ」

里中「はぁ!?何それ!!」

雪子「何が世界の歪み、よ。懲らしめてやりたい」

花村「確かに!」

花村「……でも、どうやって?」

里中「……雪子、あれしかないよね」

雪子「そうだね、千枝。あの人を呼ぼう」

花村「……あの人?」

キタロー「花村ー!」

花村「いらっしゃいませ、今日は何をお探しで?」

キタロー「えーと、今日は……レトルトカレーの辛いヤツ。それも食べられないくらい辛いヤツ」

花村「かしこまいりました」

花村「あちらに……」

キタロー「ん?今日は案内してくれるの?」

キタロー「いいヤツだね、花村って」

花村「持ったいないお言葉、ありがとうございます」ペコリ

キタロー「……外に連れてくるなんて、話が違うじゃないか」

キタロー「しかも何が悪いって」

美鶴「…………」プルプル

キタロー「見て分かるくらい怒りに身を震わせてるじゃないか、この人」

美鶴「こ、今度こそ、きっちり処刑してやる!」ガシッ

キタロー「や、やめて!引っ張らないで!」

キタロー「は、花村……助け……おい!何だよ、その満面の笑みは!?」

美鶴「……私の車まであと少しだ、喚くな」

キタロー「……僕……どうなっちゃうの?」

バタン

美鶴「出してくれ」

ブロロロロロ……

花村「ごめんな……つい」



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