【モバマス】「うづりんで100のお題!」 (18)


 アイドルマスターシンデレラガールズの二次創作です。
 毎日ひとつふたつのお題を消化、とのんびりなペースでやっていきます。

 カップリング要素がありますので
 苦手な方は避けてもらえたらと思います。
 百合目当ての方には、すこし物足りなく感じられるかもしれませんがご容赦ください。

 お題は、

 字書きさんに100のお題
 http://www.minc.ne.jp/~kaworu/100.htm
 桜カヲル 様

 よりお借りさせていただきました。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1382191096


1、暁 【あかつき】

 卯月は朝焼けの中でひっそりとたたずんでいた。

 ホテルの一室、みっつあるベッドの真ん中で、凛はシーツで鼻まで覆って、眩しさに眉
を顰めながら、しぱしぱ瞬いて、薄目を開けて、窓際の人影をこっそりと見つめていた。
背後では未央が、起きている時の姿からは想像のつかない、小さな寝息を立てている。

 おはよう、と声をかけようか凛は迷っている。窓の外を静かに眺める卯月は、いつもの
愛らしさを潜め、どこか近づきがたい、冷ややかな美しさを放っていた。冬が近づいてき
て、朝はすこしだけ寒い。凛がシーツと掛布団とを一緒くたにつかみ、それで体を強く抱
こうとしたら、ささやかな衣擦れ音が鳴った。卯月は、振り返らなかった。

 ベッドに横たわったままの凛には、卯月の表情を窺うことができず、低い視線からは窓
の外に空ばかりが広がっていて、彼女に見えている景色も知れないままだ。天上のあたり
にはまだ濃い青色が残っている。星が弱く明滅し、浮かんでいる雲と飛んでいる鳥とが茜
色に染まっている。見慣れぬ世界は夢の中みたいで、まるで霧が濃くなるみたいに、ふわ
ふわとした眠気が頭の奥から湧いてきた。

 卯月が着ているピンク色のパジャマは、もうこの季節にはちょっとだけ生地が薄いよう
に思えた。なにか羽織らせてあげるべきかという思考を、眠気が邪魔して、考えるのが面
倒くさくて、凛は枕元に畳んであった黒のパーカーをぐしゃぐしゃ丸めて、それでも一瞬
だけ躊躇して、氷像みたいな後ろ姿に、思い切り投げつけた。


2、椅子 【いす】

 凛が椅子に座って、卯月が正面に立つ。

「あ。こう見上げると卯月、ちょっとおねえさんっぽいかも」

 と冗談を言うと、ひとつ年上の彼女はむぅっとふくれて、

「凛ちゃんは、わたしのことをなんだと思ってるの」

 って。
 電車の中で、小声で論争をする。
 席を譲ってくれる卯月はお姉さんしたがりで、さっきまで一緒に走ってきた凛の髪や服
装を慣れた手つきで整えてくれる。一方で、揺れる車内で吊革を強く握りしめる様や、さ
さいな冗談を真に受けて、言い合いになると自論を譲らないあたり、どこか子供じみてもいる。

「いい、凛ちゃん。わたしのほうが、ひとつ上なんだからね」

 目線が上になった卯月は、ちょっとだけ強気で強情だった。

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