娘「冗談ですよ。私は噛んで血を吸うのは嫌なんです」
男「お前それで本当に吸血鬼なのか?」
娘「そうですよ、噛まれましたから。太陽光浴びたら死んでしまいますし」
男「で、腹の虫はどうやって抑えるんだ」
娘「生肉加工工場から動物の血をくすねましたので、しばらくはそれで」
男「便利なんだか不便なんだか分からないよな、吸血鬼って・・・」
娘「あー、なってみれば分かりますけど、ヘルシングみたいにカッコいいものではないです」
男「ああそう・・・」
娘「でもいいのですか」
男「何が」
娘「私吸血鬼ですよ」
男「ああ、そうらしいってのはもう分かってる」
娘「化け物と一緒で怖くないんですか」
男「まぁ・・・怖くなくはない」
娘「・・・」
男「でも、大丈夫な気がするから」
娘「酔狂ですよ、あなたは」
男「噛まない吸血鬼には言われたくない」
なんでコテつけてんだ?誰もお前の事なんか気にかけてないのに自意識過剰すぎw
娘「そもそも、吸血鬼っていうのは、家に入るときは招かれないといけないのですよ」
男「ふうん?」
娘「今ならまだ引き返せますよ。私を家に入れる前なら」
男「いや、でもお前その格好じゃ職質されて終わるぞ」
娘「それは困ります。私戸籍上は随分前に死んでますから」
男「じゃあ仕方ないだろ」
娘「やはりあなたはおかしいですよ」
男「そうか?」
娘「ええ、すごくおかしな人間です」
男「すごくおかしな吸血鬼にはいわれたくないな」
娘「いいですか、私は吸血鬼なんですよ」
男「端から聞いたらすごく痛い発言だけど」
娘「あなたはそんな女を匿おうとしています」
男「そうだね」
娘「普通はしませんよ、そんなことは」
男「そうかもしれないな。でもお前も困ってるんだろ」
娘「・・・」
男「助けてもらった礼がてら、てことで」
娘「いかれてます」
男「ガキは大人しく大人の言うこと聞くものだ」
娘「こう見えてもうすぐ百歳です」
男「吸血鬼って便利だな」
男「で、ここが俺の家なんだが」
娘「アパートですか。随分古いですね」
男「一人暮らしの若者なんてのはそんなものだ」
娘「で、私を招き入れるつもりですか」
男「まぁ。風呂くらい入らないと、お前泥まみれだし」
娘「あなたロリコンですか」
男「中身百歳のババアなんだろ、お前」
娘「いえ、見た目の話です」
男「見た目がいいとこ中学生の女の子が、泥まみれで夜中に歩いていたら捕まるぞ」
娘「・・・」
男「はい、あっさり招き入れました」
娘「招かれました」
男「拒否してもよかったんだぞ」
娘「私に拒否する理由がありませんよ」
男「ああそうか・・・。とりあえずシャワー浴びてきてくれ。着替えは・・・まぁ何とかする」
娘「今のうちに言っておきますが、私は吸血鬼ですので。襲ってきても返り討ちにしますよ」
男「そんな気は毛頭ないと断言する。襲うならにんにくと聖水を用意してからにするし」
娘「おのれ卑怯な」
男「だから襲わないっての」
娘「水浴びする前に今一度聞きますが、なぜ私を招き入れたのですか」
男「お礼」
娘「・・・。はっきりいいますが、あの程度は命を救ったことにもなりませんよ。私はたまたまそこにいただけですし」
男「いや、トラックに轢かれかけたってのは十分だと思う」
娘「たまたま、トラックが突っ込んで来たので、あなたを抱えてジャンプしただけですよ」
男「庇ってもらったじゃん」
娘「それはそうかもしれませんが、ついでですし」
男「結果的に、救われたし」
娘「明らかに人外の力でしたが」
男「ああうん、それは分かってる。数十メートルもジャンプされたら気がつきます、はい」
娘「で、面倒だから言ったじゃないですか。『ああ、吸血鬼なんですいません。お腹すいたので失礼します』て」
男「言ったね」
娘「そしたらあなた、『せめて泥落とせよ』って。突っ込む所はそこですか」
男「まぁ。吸血鬼とかそんなの無視して、それが一番気になった」
娘「変な人ですよあなたは」
娘「とりあえずシャワーをお借りします。覗いたら殺しますよ」
男「へいへい」
男(・・・。吸血鬼、ねぇ・・・。女の子も中二病こじらせるとああなるのかね)
男(とはいえ、あの細身の身体でなんであんなに怪力なんだか・・・)
男「さてとりあえず・・・。予備のジャージ出すか。下着は、ドンキホーテ行けばあるだろうし」
ドンキホーテ PM11:30
男「とはいえ、女の子ものの下着買うのは恥ずかしいな・・・」
友「んぁ、男じゃんか」
男「ん?何だお前、こんな時間に何してんの」
友「ああ、明日の朝飯買うの忘れててさ。・・・おいお前、その手に持っている物はなんだ」
男「え?あ、ああ」
友「・・・。お前、それどういうことだ」
男「あー・・・。実は親戚の子が泊まりに着てるんだが、下着を忘れたらしく・・・」
男(わ、我ながらこの言い訳は苦しい・・・)
友「・・・ま、お前がどんな趣味持ってようが気にならないけどさ、警察の厄介にはなるなよ?」
男「すげぇ勘違いされてるような気がするけど、むしろ警察の厄介にならないためにやっているというか」
友「は?」
男「とにかく、俺は急ぐから、またな!」
友「・・・。アイツ変態だったのか・・・?」
男 自宅 11:48
男「ただいま・・・っと。おい吸血鬼幼女、上がったか?」
娘「・・・言いたいことは色々ありますが、そろそろ上がります」
男「そうか、脱衣所に下着置いておくから使ってくれ。あとジャージも」
娘「下・・・。あなたには恥じらいというものがないのですか?バカなのですか?」
男「ふん、お前は俺がこの下着を買うのに大切なものを犠牲にしたことを知るまい・・・」
娘「・・・?」
男「ともかく、下着は置いておくから」
娘「し、下着下着と連呼するのはどうなのですか?セクハラですよセクハラ」
男「いいから早くしろ吸血鬼」
娘「・・・上がりました」
男「おう、タオルは洗濯機に入れといてくれ」
娘「・・・一つ、聞いてもいいですか」
男「なんだ」
娘「その、確かに下着はありましたけど、足りないというか、あの、どうして片方だけなのか、と・・・」
男「は?」
娘「いえ、確かにサイズは分からないかもしれませんけれど、これはどうなのかと・・・」
男「意味はまったくわかんないけど、とりあえずそこ座れ。色々聞きたいことがある」
男「で、お前いま何歳なんだ」
娘「おおよそでよければ、大体96~98の間くらいかと」
男「・・・。家はどこだ」
娘「ありませんよ。とうの昔に焼け落ちました」
男「はぁ・・・。面倒な設定だな」
娘「は?」
男「いやいい。で、こんな夜中に何をしていた?」
娘「何というか、吸血鬼は夜行性ですから。ただ行動していただけですが」
男「・・・両親は」
娘「・・・。死にました」
男(うわぁ、マジで面倒な設定じゃねぇか・・・)
男「家があったのはどこら辺だ?」
娘「さぁ・・・。数十年もあちこち歩きましたから、どこがどこだか」
男「学校は」
娘「行けるわけないではありませんか、あのような高価なところ」
男「・・・?まぁいいや、で自称吸血鬼は何かスポーツはやってるのか?」
娘「すぽーつ?」
男「体操とか、バレーとか。俺抱えてあれだけジャンプするのは、普通は無理だぞ」
娘「・・・もしかして、私が吸血鬼だって信じてないのですか?」
男「いやいやまさか」
娘「信じるも信じないもあなたの自由ではありますが」
男「じゃあ、吸血鬼ってさ、眠るときは棺じゃないといけないのか?」
娘「映画の見すぎです。そもそも日本でそんな事やってたら一発で迫害されますよ」
男「シビアだな・・・」
娘「そりゃ、棺で眠る方々もいないことはないですが」
男「へぇ、他にも吸血鬼が?」
娘「いますよ、あちこちに。細々とですが、日本にも」
男(サークルか何かかな。何にせよ、手がかり発見だ)
男「じゃあそいつらに連絡は取れるか?」
娘「無理ですよ。吸血鬼なめてるんですか」
男「・・・」
娘「そもそも、吸血鬼ってそんなに便利じゃないんですよ」
男「ほぉ」
娘「テレパシーが使えるのは極わずか。歳は取らないけれど成長もしない。お腹は減るけれど満たされない」
男「・・・」
娘「変身なんて出来ませんし、心臓潰されたら普通に死にます。そのくせ、太陽浴びたら即死です」
男「大変だな」
娘「なれましたけどね」
娘「それで、私を招き入れたのはなぜですか」
男「?そりゃお礼だって・・・」
娘「嘘ですね。こうも赤裸々に自分の正体を語ったのに、無警戒なんてありえませんよ」
男「いやそれは・・・」
娘「となれば、私を殺そうとしているんですか、という結論に達します」
男「ない。それはない」
娘「騙されませんよ」ぐぅぅぅ・・・
男「・・・。今腹の音が」
娘「気のせいです。まさか現代日本に吸血鬼ハンターがいたなんて」ぐぅぅぅぅ・・・
男「あの、ごまかしきれてないですよ」
娘「て、敵に何を言われようとも・・・!!」ぐううううう
男「・・・」
娘「・・・っ///」
男「何か食べたら・・・?」
娘「ふ・・・。私の力が衰えていることに気がつくとは、さすがハンター・・・」
男「いやあの、腹の虫です」
娘「・・・。お腹すいた・・・」
男「・・・。例の動物の血、飲んだらどうよ」
娘「敵に塩を送るつもりですか・・・」
男「いや全然」
男「で、その動物の血はどこにあるんだ」
娘「ふ、教えるわけないではないですか・・・。敵に弱点など・・・」
男「いや、すでに前のめりに倒れてる幼女倒しても」
娘「ここまでだというのならそれも定めです・・・。さぁ殺しなさい・・・」
男「空腹で倒れる吸血鬼ねぇ・・・」
娘「・・・ZZZ・・・」
男「寝やがった・・・。まったく幼女が無理するから・・・」
・・・
娘「はっ!?」
男「ん?何だ目が覚めたか?」
娘「ここは・・・、そうだ、あなたはハンターでっ・・・!!」バッ!
男「だーから、ハンターじゃねぇっての。もしハンターだったら、丸一日寝てたお前を殺してる」
娘「一日・・・?私は一日眠っていたのですか?」
男「ああ。夜更かししすぎだ」
娘(・・・)
男「ほら、何か食べろよ。血はさすがにないけど、肉なら買ってきたぞ」
娘「・・・。やはり血がいいのですが・・・。くれるというのなら食べます」
男「毒の心配とかはしないんだな」
娘「吸血鬼が毒なんかで死ぬわけないじゃないですか」
男「なるほど」
娘「安い肉ですね」
男「やかましい」
娘「・・・あなたがどうやらハンターじゃないというのは認めますが」
男「そりゃ光栄だ」
娘「ですが、そうすると益々疑問です。なぜ私を匿うのですか」
男「あと五年年取ってたら、『お前に惚れた』でいけるんだがな」
娘「実年齢はもうすぐ百です」
男「だったな」
娘「・・・血が足りません。やはり一度、血を取りに戻らないと」
男「家にか?」
娘「違いますよ、この街の外れにある潰れたコンビニの中に、少し隠してあるんです」
男「へぇ・・・。そこに行くのか」
娘「はい。力が出ませんので」
男「車で近くまで送ろうか」
娘「・・・いつもなら拒否しますが、今は力が出ませんので、お言葉に甘えます」
男(なんだかんだ、ちゃんと家に戻る気はあるのか・・・。一件落着だな)
男「・・・本当にこっちか?住宅街は逆方向だぞ」
娘「?住宅街になど用はありませんよ。この方向であってます」
男「でもお前、こっちは廃れた団地跡があるだけで・・・」
娘「だからこそ隠したんです。住宅地の真ん中から動物のものとはいえ血が出たら問題じゃないですか」
男「いや、確かにそうだけどよ」
娘「ああ、見えてきました。あの建物です」
男「あの、って・・・。廃墟じゃないか」
娘「だからそうだと言っているじゃないですか」
男(凝った設定、だな・・・?)
娘「すいませんが、ここで待っていたください」
男「それは構わないけど、どうやって中に入るつもりだ?閉鎖されてるんじゃないのか」
娘「裏口の鍵を壊しましたので、そこから入れます。では」
・・・
男「・・・帰るためのカモフラージュにしては・・・回りに家がまったくない」
男「となると、本当にこの中に・・・?」
男「・・・行ってみるか」
男(裏口の鍵が壊れているんだったな・・・?)
キィ・・・
男「!開いた・・・」
男「この中にあの子が・・・?」
・・・
・・・ジュル・・・
男「?」
ジュル・・・ジュパ・・・ハァァ・・・
男(何かをすする音・・・?)
ジュル・・・ズズズ・・・
男(音は、この中から・・・?)
娘「・・・」ジュルジュル・・・
男(あの子・・・?)
娘「・・・ぷ、はぁ・・・」
男(暗くてよく見えないが・・・何かを飲んで・・・?)
娘「・・・盗み見とは、感心しませんよ」
男「!?」
娘「吸血鬼は本来、聴覚嗅覚、すべてが人間を超越した化け物です。動物のものとはいえ、それを飲めばこれくらいは分かります」
男「・・・」
娘「これで、信じましたか?それとも、明かりがないから見えませんか?なら、電気を付けるといいですよ。電源はまだ生きてますから」
男「・・・スイッチは、これか」
娘「・・・」
パチッ
男「!!」
娘「驚いた顔をしてますね。ああ、すいませんね服を汚してしまって」
男「これは・・・」
娘「ああ、床もまみれてしまいましたね。そんなつもりは無かったのですが、やってしまいました」
男「・・・っ」
娘「しかし、獣臭いですね。こんなものでは満足には程遠いんです。ああ、顔にも付いてましたね」ぺロッ
男「お前、本気で・・・」
娘「ええ、まだ死ねませんから。獣の血を舐めてでも、生き延びますよ」
男「」
娘「でも、・・・足りないんですよ」
男「!?」
娘「こんな動物のものじゃないんです。これじゃないんですよ」
娘「やっぱり、いけませんよね、これじゃ」
男「お前・・・」
娘「大丈夫ですよ、まだあなたを噛むほど追い詰められちゃいませんから。でも、分かったでしょう?」
男「何がだ」
娘「私は化け物です。招き入れるような存在ではないんですよ」
男「・・・そうかもしれないな」
娘「でしょう?分かったらさっさと・・・」
男「しかしだ、お前の今着ている服は俺のだ」
娘「・・・は?」
男「ついでに言えば、下着も俺が買ったものだ」
娘「そ、それが何だというのですか」
男「汚した以上、綺麗にして返してくれないとな」
娘「え?何を・・・?」
・・・
娘「どうしてこうなるのですか」
男「何が?」
娘「なんでもう一度化け物を連れて帰っているのですか、と」
男「言っただろ、せめて着ている服から血の臭いがなくなるまでは洗ってもらうぞ、と」
娘「た、確かに汚したのは悪いですけれど」
男「そのジャージな、割とお気に入りだったんだ」
娘「うぐ」
男「それにな、お前が元々来ていた服類も置きっぱなしじゃ困るんだよ。彼女が来たときに面倒なことになる」
娘「!?」
男「なんだよ」
娘「あなたのような変わり者にも、彼女がいるのか、と」
男「いやいないんだけどね」
男「しかし問題が出来たな」
娘「問題?」
男「ああ、今着ているその血まみれジャージを洗うには、それを脱がないといけない」
娘「殺しますよ」
男「そうじゃない。脱いだら、着るものがないな。元々着てたやつは今はクリーニングだし」
娘「は、裸でいろと?」
男「そんな事強要したら殺されるんだろうから却下。となると、またジャージとTシャツが必要だ」
娘「む・・・?」
男「つまりお前用のジャージが二着必要だ」
娘「・・・それが何か?」
男「我が家にはジャージは二着しかない。一着はお前の血まみれ、もう片方は俺の部屋着だ。となると買うしかない」
娘「?吸血鬼なんですから、盗むことくらいたやすいですが」
男「犯罪は禁止」
娘「な、何の権限があって」
男「ジャージ」
娘「・・・この服、そんなに高価だったのですか・・・」
男(・・・案の定、ジャージの価値を知らないみたいだな・・・)
男「買う以上、金が要る。だがお前金持ってるのか?」
娘「あるわけないじゃないですか。必要ありません」
男「そうすると、さらに俺にジャージ一着分の貸しが出来る。血まみれと合わせて二着分だ」
娘「う」
男「それを返してもらわないとならんな」
娘「ま、まさか身体で払うとかじゃないでしょうね」
男「ばか。馬鹿だろだろお前。平ら胸」
娘「ぶっ!?」
男「まぁ現金ってのは生々しいからな、働いてもらおう」
娘「働く・・・?」
男「ああ、うちで家事手伝いってことでどうだろうか?」
娘「・・・。正気ですか?」
男「何が」
娘「私は化け物なんですよ、あなたを噛むかもしれない」
男「おお、そのリスクもあるな」
娘「そんなやつと一つ屋根の下なんて、気がおかしいです」
男「まぁいいじゃないか、しばらくの間はさ」
娘「いかれてますよ」
男「しかし本当に吸血鬼だったんだな、お前」
娘「最初から言ってましたが」
男「そういえば、お前がもし俺を噛んだら、俺吸血鬼になるのか?」
娘「どうでしょうね、あなたの経験値にもよりますよ。でも噛むつもりはありませんから」
男「経験値?」
娘「き、気にしても仕方ないことです。もしもの話など意味はありません」
男「?まぁいいけどさ。で、やっぱり血は定期的に飲むのか」
娘「まぁ、数日ならもちますが、飲むに越したことはありません。力が出ませんので」
男「ふうん・・・」
娘(・・・)
・・・
男「さて、ただいまっと」
娘「・・・」
男「とりあえずシャワーだな」
娘「はぁ・・・。まぁ、この高価な服を汚してしまったのは事実ですからね・・・」
男(しまむらだけどな)
娘「覗いたら殺します」
男「そこまでチャレンジャーじゃないです」
男(今のうちにネットで情報集めておくか・・・)
男「吸血鬼、か・・・。有名どころでにんにくや聖水、十字架が苦手。杭や銀の弾丸で死ぬ・・・」
男「まぁ伝説の生き物だ、大まかには大体どこもこんなところか」
男「しかし、ホンモノの吸血鬼って、いるんだな・・・」
娘『しかし、獣臭いですね。こんなものでは満足には程遠いんです。ああ、顔にも付いてましたね』
男「・・・飲んでたもんなぁ・・・」
娘「何をですか?」
男「うわお!?ビビらせんなよな」
娘「ふむ、インターネットとかいうやつですか。それで私のことを調べていた、と」
男「どちらかといえば『伝説上の』吸血鬼についての記述が多いけどな」
娘「でしょうね。最近じゃ吸血鬼は絶滅危惧種らしいですし」
男「そうなのか?」
娘「前にそう聞いたんですよ」
男「仲間がいるっていってたな」
娘「ええ。会ったことがあるのは数人ですけど」
男「みんな吸血鬼か」
娘「当たり前ですよ。普段は世界中のあちこちで細々と暮らしているらしいです」
男「そうなのか」
娘「確かに噛めば仲間は増えますが、その分ハンターも増えてしまいます。基本吸血鬼ハンターなんて、憎しみで動く連中ですし」
男「?」
娘「例えば、親友を殺された男とか、熱心なキリスト教信者とか、―――家族を殺された生き残り、とかです」
男「なるほど・・・」
娘「ま、オカルトなんてもう忘れ去られてますからね。前に北の方で大雪が降ったのを知りませんか?」
男「ああ、なんかそんなニュースがあったような」
娘「あれは雪女の仕業ですし」
男「雪・・・。意外と多いんだな、そういう妖怪、的なやつら」
娘「そうでもないですよ。減る一方ですから」
男「で、お前はなんでこの町にきたんだ?」
娘「まぁたまたまですかね。とうの昔に根無し草ですから、なんとなくとしか」
男「へぇ・・・。しかし・・・吸血鬼か・・・」
娘「珍しいですか?」
男「そりゃ、そんなにお目にかかれるようなもんでもないし」
娘「確かに感覚は鋭くなりますし、力も人間の数倍出ますが、不便ですよ」
男「ああ、前も言ってたな」
娘「特に空腹感はもう・・・。どうにかならないんでしょうかね、これ」
男「いや俺に訊かれても」
娘「ともかく、昼間は寝ていますので起こさないでくださいね。あと直射日光は絶対ダメです」
男「ああ、カーテンはいつも閉めてるから問題ないけど・・・。押入れに寝るか?」
娘「猫型ロボットじゃないんですよ」
男「ああ、それは知っているのね」
娘「でも、そのほうが都合がいいかもしれませんね」
男「ああ、うっかりカーテン開けちゃったりしたら大惨事だし」
娘「そこはお任せします。少なくとも、この高価な着物を返すまでは・・・」
男(今お前が着ているのはユニクロだけどね)
娘「・・・でも、襲ってきたら殺しますよ」
男「分かってるから。マジで負けるもん」
男「ふぁぁ・・・。さて、もうそろそろ俺は寝るぞ。もう三時半だし」
娘「ああ、そうですよね。この身体になってから、どうもそういう感覚が逆転してしまったので」
男「夜行性恐るべし・・・。寝るわおやすみ」
娘「はい、おやすみなさい」
・・・
娘「・・・本当に寝るのですね。得体の知れない化け物がいるというのに」
男「ZZZ」
娘「・・・。『おやすみないさい』、ですか・・・。馬鹿な人間ですよ」
男「ZZZ」
娘「・・・無防備すぎるよ・・・。太い脈が丸見えでぇ・・・っ」・・・ペロッ・・・
男「むにゃ・・・」
娘「っ!?」バッ!!
娘「私は・・・、今・・・っ」
男「んぁ・・・。朝か」
娘「ZZZ」
男「吸血鬼は爆睡中で、今日は日曜日・・・。二度寝しようかな・・・」
男「ああいかんいかん、テレビでもつけよう・・・」
ピッ
リポーター「・・・被害者の身元確認を急ぐと共に、遺体を司法解剖して・・・」
男「飯何かあったかな・・・」
アナウンサー「県警では、夜の外出の自粛を求めると共に、今朝から検問を敷いて調査に当たっています・・・」
男「まずは・・・トイレだな・・・」バタン
アナウンサー「繰り返しお伝えします。昨夜、体液の98%が消失した遺体が発見された事件で・・・」
『ウンメイノー・・・』
娘「・・・。夕方、ですか」
男「おお、起きたか。ちょうど四時半てところだ」
娘「・・・。何を見ていたんですか?」
男「ああ、テレビ何もやってないから、DVDをね」
娘「・・・赤いのはカブトムシ、ですか?」
男「正解。何か食べるか?」
娘「いえ、水をください。そしたら、あの高価な着物を洗い始めますから」
男「あー、それより、晩飯作ってほしいかも」
娘「・・・。自分でやったらいいじゃないですか」
男「頼むよ、家事手伝い」
娘「ぐぬぬ・・・」
娘「人間のために料理する吸血鬼には、一応前例がありまして」
男「そうなのか」
娘「もっとも、その後血をいただく為の過程なのですが」
男「じゃあ、俺も吸われるのか?」
娘「そんな予定はありませんよ。問題は、ただ純粋に料理を振舞うためだけに調理をした吸血鬼の前例があるのか、少し気になったのです」
男「気にしても仕方ないさ。あ、それ終わったらこれといでくれ」
娘「・・・人間のために米を研いだ吸血鬼なんてほかに・・・」
男「そういえば、吸血鬼って流水は苦手なんじゃないのか?」
娘「まぁ得意ではありませんが、そんなにでもないです。川くらいなら平気ですよ」
男「じゃあ料理にも問題はないな」
娘「・・・揚げ足を・・・」
男「しかし、お前料理それなりにうまいじゃんか」
娘「これぐらいは、人間だった頃に教わりましたから」
男「へぇぇ・・・。でも、台座がないと手が届かないのは問題だな」
娘「成長しないのですから仕方のないことです。・・・馬鹿にしてますか?」
男「イイエマッタク」
娘「殺しますよ?粉みじんにして食べちゃいますよ」
男「それは食人鬼だろ」
娘「いえ、そういう吸血鬼も中にはいるんですよ。確かに死体は隠滅できますが、骨はどうしようもないですね」
男「そういう連中は骨はどうしてるんだ」
娘「さぁ。粉々に砕いて海にでも捨てれば、存外気が付かれないものですし。吸血鬼ならそれくらいの力はありますし」
男「・・・聞かなきゃよかったよ」
「いただきます」
男「普通のものも食べるんだな、吸血鬼って」
娘「味覚は残っていますからね。本当は血も欲しいのですが・・・」
男「ああ、それだ。それどうするよ」
娘「といいますと?」
男「ストックしてた動物の血はもうないんだろ?でもまた飲まないといけないんじゃないのか」
娘「・・・そうですね。それも考えないといけません。お腹はまた空きますし」
男「赤ワインじゃ、やっぱりダメ?」
娘「なめてますよね、確実に」
男「トマトジュース・・・」
娘「せめて赤ワインにしてください!中身は大人です!」
男「というよりババアだよな」
娘「っ!!っ!!」
男「いたた・・・。何も殴らなくてもいいだろうに」
娘「手加減したんですから、ありがたいと思ってください!」
男「はぁ・・・。さて七時だしニュースでも見るか・・・」
『・・・S市郊外で発見された遺体は、体液の98%が喪失した、ミイラのような姿で発見され、身元の確認は難航しています・・・』
男「S市って・・・ここじゃん」
娘「・・・」
『首元には噛まれたような傷があり、吸血鬼に似せた愉快犯の可能性もあるとのことです・・・』
男「これって・・・」
娘「私じゃありませんが、その可能性は高いかもしれませんね」
飯食ってくる
しえん感謝
男「別な吸血鬼?」
娘「かもしれませんし、ただの愉快犯かも」
男「愉快犯って」
娘「猟奇殺人犯には、吸血鬼の異名を持つ犯人もいますから。そういう類の可能性もありますよ」
男「・・・」
男「なぁ、吸血鬼って、確か絶滅危惧種だって言ったよな」
娘「?ええ、全盛期の三分の一以下でしょうね」
男(絶対数が少ない吸血鬼がこの町に二人もいる・・・?偶然か?)
娘「・・・」
男「ん?ちょっと待てよ?」
娘「なんですか」
男「確か、吸血鬼に噛まれたら吸血鬼になるんだよな」
娘「・・・まぁ、時と場合によりますが」
男「でも、今回は体液の98%がない状態で発見、だ。もし吸血鬼に噛まれたのなら、吸血鬼にならないとおかしいだろ」
娘「・・・。基本的に噛まれた人間は吸血鬼か中途半端な奴隷、眷属になります。ですが、体液を残さず吸い切れば相手はただ死にます。そういうものなんです」
男「吸血鬼になるとは限らない・・・?」
娘「むしろ吸血鬼になる方が稀かもしれませんね・・・」
男「?」
娘「ともかく、犯人は猟奇的な殺人犯か、限度を知らずに吸いまくった愚か者かのどちらかですね」
男「愚か者?」
娘「自分の欲のために他人を殺す。愚かでなくてなんだというのですか」
男「・・・」
娘「ま、しばらくは夜に出歩かないことですよ。吸血鬼は昔と違って、基本的に同じ町には留まりませんから」
男「そうなのか?」
娘「そうですよ。例えばこの町でも、こんな事件が発覚しちゃったら、二人目以降が狙いにくいではないですか」
男「ああ、警戒されるからな・・・」
娘「ハンターも数人はこの町に入ったと見て間違いないでしょう。復讐の権化達ですから、血眼になって犯人を捜すでしょうし」
男「そう、なのか。じゃあ、お前も危ないんじゃ・・・」
娘「そうですね。うかつに外を出歩くことは難しいかもしれません。ここに転がり込んだのはある意味幸運でしたね」
男「でもそんなに気が付かれないだろ?」
娘「いいえ、気が付かれます。血の臭いを敏感に感じ取る連中ですし、瞳の色は隠しようがありません」
男「瞳?」
娘「・・・こちらの話です。ともかく、私はしばらく引き篭もらざるを得なくなりました」
男「・・・」
娘「あるいは、今すぐここを脱出すればいいのかもしれませんが、それではこの高価な服をお返しできませんし」
男「あ、いやそれは・・・」
娘「念のためにあなたも外出を控えた方がいいかもしれません。危険ですから」
男「俺が?」
娘「形はどうあれ、私と関わってしまった以上は」
男「・・・」
娘「血の心配は後でしましょう。まずは騒ぎが収まるのを待つしかないです」
男「・・・ああ、わかった」
・・・
男「収まらなかったな」
娘「の、ようですね」
『昨夜、S市中心部にある雑貨ビルで体液の96%が喪失した遺体が発見され、警察は連続殺人に捜査を入れ替え・・・』
男「二日間で二人、一日一人のペースか」
娘「よほど腹がへった吸血鬼か、よほどいかれた殺人犯ですね」
男「わけがわからん・・・」
娘「そんなものです。私にだって、ワケが分かりませんよ」
男「やっぱり吸血鬼の仕業か?」
娘「可能性は高いでしょうね。人間の血液って、早々隠しきれるような量でもないですし」
男「一気に危ない町になっちまったもんだな・・・」
娘(・・・)
ピンポーン
男「・・・?客?」
娘「!」バッ
男「・・・ハンター?」
娘「分かりませんが・・・警戒しておくに越したことは」
男「・・・出ないほうがいい?」
娘「・・・いえ、自然な対応をしてください」
男「おk」
男「・・・はい」
?「あ、すいません、隣の部屋の者ですが・・・、実はちょっと困ったことになってまして・・・。水道が出ないんですよ」
男「水道が?」
?「ええ、それで、どうしようかと思って・・・」
男「・・・」
娘「・・・」コク
男「分かりました、今あけますね」
女「ああ、すいません、お手数かけて」
男「いえ、それほどでも・・・」
女「水道、見せてもらってもいいですか?」
男「え?俺が行くわけじゃなくて、ですか」
女「そこまで迷惑をかけるわけにはいきませんから・・・」
男「・・・ええ、でも、水道周りだけにしてくださいね」
女「すいません、お邪魔しても構いませんか・・・?」
男「ええ、どうぞ上がってください」
女「すいません、お言葉に甘えます」
男「それで、どこが調子悪いんですか?」
女「・・・」
男「・・・すいません?」
女「いえ、ごめんなさいね・・・。同じような手で、上がれちゃうものなんだなぁ、って思ったの・・・」
男「は?」
女「警戒されてないのも笑っちゃうけど、明らかに警戒されているって言うのも面白いものね」
男「・・・」
女「意味が分からないかしら?吸血鬼は招かれないと上がれないのよ、坊や?」
男「っ!?」
女「ふふ、かわいいのね、初心な感じ嫌いじゃないわ・・・。でも、この家少し血の臭いがするわねぇ」
男「まさか、あんたは・・・」
女「だから気がついたんだけれどね・・・。あの子は元気かしら?」
男「!?」
女「お姉さんに見惚れるのもいいけど、押入れの中に隠れた吸血鬼は元気かしら、て訊いたのよ?」
男「まさか、例の事件の・・・っ!?」
女「ふふ、がっつくのね。でもお姉さんはリードする方が好きだから、ちょっと外れよ?」
男「なにを、」
女「あなたを蹴散らしてもいいのだけれど、危害を加える気はないからね?」
娘「・・・あなただったんですか」
男「おま!?」
女「あら、久しぶりね・・・。少しやつれたかしら?」
娘「・・・」
女「・・・獣くさいわ。あなた、相変わらずなのかしら」
娘「あなたまでここに現れたということは、けっこうな非常事態、ですか?」
女「そう思う?」
娘「事件ことを知らないわけではないでしょう」
男「おい、あいつは・・・?」
娘「古い吸血鬼です。私の友人で」
男「友人?」
娘「犯人を追ってきたのですか?」
女「ふふ、私は追わせる方が好きよ?」
娘「否定ですか」
女「あんなのは放っておけば勝手に刈られるわよ。それより問題はあなた」
娘「・・・」
女「あなたの探している相手が見つかったのよ・・・」
娘「・・・そうですか」
女「あら、あまり感動しないのね」
娘「いえ、薄々気がついていましたから」
女「あら、それは知らなかったわ?」
娘「今回の事件と、あの時の手口が、似ていますから・・・」
男「・・・?」
女「でも、私はそれを止めに来たのよ?」
娘「それも知っています。あなたなら、きっと止めに来ますよね」
男「何の話だ・・・?」
女「ふふ、気になる?なら、お姉さんが手取り足取り・・・教えてあげてもいいわよ・・・?」
男「いや何を教えてくれる気だよ・・・」
娘「・・・」
女「吸血鬼になるっていうことはね、ある日突然、何の前触れも無く起きるの。突然後ろから噛まれる、とかかしら」
男「・・・」
女「でも、あなたの横にいる小さな吸血鬼は、自分から進んで噛まれたのよ、この私にね・・・」
男「は・・・?」
女「家族の仇を殺すために、だったわね・・・。大人の愉しみも知らない少女は、吸血鬼になった、悲劇の物語ね」
娘「・・・」
女「けど、相手が悪すぎるわね。ヤツは相当強力な吸血鬼で有名だから・・・。返り討ちは必至よ」
娘「しかし、それでも・・・」
男「なんだ、それ・・・」
男「お前、そんなことが・・・」
娘「・・・ええ、そうですよ。家族が全員、殺されました。両親は体液を吸い取られ、姉は、・・・犯された後に、奴隷にされた」
男「!」
娘「たまたま家にいなかった私は助かりましたが・・・。助かっただけです。ただそれだけ」
女「お姉さんが駆けつけたときには、呆然としたその子と息絶えた両親の遺体が二つ。姉はその後、散々使いまわされた後捨てられたわ」
男「・・・」
女「その筋には有名な吸血鬼なのよ。でも神出鬼没で力も強い。お姉さんも勝てるか怪しいわ」
男「そんな」
娘「私は、あいつを殺します。そのために生きているんですから」
女「あら、行かせないわよ。みすみす命を捨てるような真似は好きじゃないのよ」
娘「しかし・・・!」
女「冷静になりなさい。まともに人間の血を吸っていない様な弱ったあなたじゃ、勝ち目はないわ」
男「人間の血を・・・?」
女「ええ、この子は昔から吸わないのよ。噛むのは嫌いだ、とかいってね。死に掛けたこともあるくらいよ」
娘「私は、動物の血があれば・・・」
女「嘘ね。全力の半分も力が出ないくせに」
娘「っ・・・」
男「ちょっとまて、そうなのかよ?」
娘「わ、私は人の血は吸わないんだ」
男「・・・」
女「そういうことよ。そんな半端な吸血鬼は、逆に殺されるわ」
娘「でも、私は・・・!」
女「ヒトの血を吸う覚悟もないくせに、殺す殺される覚悟はあるの?」
娘「!」
男「お、おい、何もそんな言い方、」
女「坊やは黙っていなさい、これは人間ではなく化け物の会話なのだから」
男「っ・・・」
女「・・・まぁ、見たところもって後数日ってところね。もう限界なんじゃないかしら?」
娘「!!」
男「限界?なんだよそれ」
女「確かに、吸血鬼は長い間ヒトの血をすわなくても生きていける。けど、限界もあるのよ。限界が来たら、どうなるかしらね・・・?」
娘「く・・・」
男「まさか、死・・・」
女「いいえ、そうならないためのシステムがあるのよ」
娘「!」
女「理性では止まらない、吸血衝動よ。手当たり次第に吸い尽くすわ。アイツと同じようにね」
娘「・・・」
男「吸血・・・!?」
娘「私は・・・っ」
女「そうならないためにも、さっさと血を吸うことね。一人を犠牲にするか、複数の生贄を必要にするか・・・。答えはいうまでもないわね」
娘「ぐっ」
男「・・・」
女「ゆっくり考えなさいな。どうしてもヤツを殺すというのなら、選択するしかないわよ」
娘「私は・・・っ・・・」
・・・
男「知らなかった」
娘「・・・どれを、ですか」
男「全部」
娘「・・・」
男「お前が吸血鬼になった訳も、ヒトの血を吸わないとどうなるのかも」
娘「ええ、話していませんから」
男「・・・逆に言えば、人の血を吸って万全な状態なら、その仇を倒せる・・・?」
女「他ならないお姉さんの眷族だから、元々の実力は相当なの。けど明らかに力が足りない」
娘「私がヒトを噛んだら、アイツと同じになってしまいます・・・。また別な不幸が生まれ・・・。くそっ・・・」
男「・・・おい。なら話は早い。俺の血を吸え」
娘「!?」
男「俺も望んで吸血鬼になる。そうすれば、お前は仇と同じにはならないだろ」
娘「・・・ダメ、ですよ、そういうことじゃないんです」
男「お前・・・」
娘「私は仇を討つために吸血鬼になった。敵討ちもこの身体も、自分の責任です。でも、あなたには何も関係ない・・・」
男「けどお前、どうする気だよ・・・」
娘「方法はあるはずです。ヒトを不幸にしない、それでいて力をつける方法・・・」
男「そうだ、それがあれば・・・」
おんな「・・・」
男「人間の血・・・。献血されたものを盗む、とかはどうだ?」
娘「それです、それが出来れば・・・!」
女「・・・」
・・・
男「なんですか、急に外に連れ出して」
女「あなた、あの子がそんなに大事なの?」
男「・・・どういう意味ですか」
女「気になっただけよ・・・。お姉さんが噛んだ以上、あの子はあたしの妹も同然なのよ。そんな子が死のうとしている・・・。止めたいと思うのがふつうでしょう?」
男「妹・・・。ええ、俺にとってもそうですよ」
女「え?」
男「似てるんですよ、俺の死んだ妹にね」
女「・・・」
男「顔が、とかじゃないけど、感じが。だから放っておけない」
女「・・・そう。なら、あの子を止めなさい」
男「え?」
女「献血されたものを盗む程度でどうにかなるのなら、お姉さんがとっくに何とかしているわ」
男「どういう・・・?」
女「人間から吸うのは血だけではない、ということかしらね。その辺の細かいことはお姉さんにもよく分からないのよ」
男「そんな」
女「一時の時間稼ぎにはなるかもしれないけれど、結末は変わらないわ。だから、あなたが止めなさい」
男「そんなバカな・・・!それじゃどうすればいい!?」
女「さぁ・・・。でも、このままじゃあの子は間違いなく死ぬわよ」
男「!」
女「アイツに殺されるか、殺戮を犯してしまうか。どちらにせよ、あの子には死に等しい」
男「・・・」
女「後はあなたたちの選択しだいよ。後悔の無いようになさいな」
男「そんな・・・、!?」
―――
男「いない、消え、た・・・」
娘「それで、この辺の献血コーナーはどこですか」
男「あ、ああ。近場だと、駅前のここが一番大きい。問題は夜になると立ち入れない上に、高層ビルだ」
娘「それくらいは吸血鬼には問題ないです。うん、では今から少し偵察してきます」
男「い、今から?」
娘「はい。マスターがこの町にいる以上、より気配の大きい彼女の方にハンターの目が向くはずです。だから、行動するなら今夜がチャンスです」
男「でも危険だぞ」
娘「見てくるだけです。すぐ戻りますよ」
男「・・・すぐもどれよ」
娘「ええ。あまり力を使いすぎると、暴走してしまいますから。無理はしません。・・・では」
男「・・・。せめて窓じゃなくて玄関から出てけよな・・・」
?「化け物を討つために自ら化け物になった少女、か」
男「!?」
?「しかし暴走する危険があるのなら、あまり傍観もしていられない」
男「誰だ、どこから・・・!?」
?「気にしても仕方ないことだ。だがこれだけはいっておくぞ。もしあの子が暴走したら、あの子を殺す」
男「ハンター・・・?」
?「まぁそう思ってもらっても差し支えはない。だがキミたちの動向如何でこの先の展開が大きく変わる」
男「・・・」
?「暴走したら、彼女を殺す。だが暴走しなくとも、彼女はヤツにはかなわない」
男「っ」
?「それだけは、覚えておくんだな」
娘「よ、っと」
男「あ、ああ。帰ったのか」
娘「はい。予想通りでした、あのくらいなら何とかなります」
男「そう、か。で、いつ忍び込むんだ」
娘「明日の夜です。とりあえず今日は体力温存のためにもう横になりますね」
男「ああ、わかった。夕方、日が落ちたら起こす」
娘「お願いします」
男「・・・さて、俺ももう寝ておくかな・・・」
深夜
男「ZZZ」
?「・・・」
男「ZZZ」
?「・・・ふ、ふふ・・・」
男「・・・?」
男(暗・・・。赤い明かりが、二つ・・・?)
?「ふふ、ふふふ・・・」
男「誰、って、お前かよ・・・。何してんだ、お前」
娘「・・・くす、ふふふ・・・」
男(・・・あれ、こいつの目、赤かったっけ・・・?)
男「・・・どうした?」
娘「ずぅーっと、我慢してたんだぁ・・・」
男「え?」
娘「お腹空いてるのにね、目の前にご馳走がいっぱいあるのにね、ずーっと獣の血を啜って」
男(様子が・・・?)
娘「噛み付いちゃダメ、噛み付いちゃダメって、ずーっとだよ?」
男「お前・・・?」
娘「でもさぁ、もういいよねー。この数日、こんな至近距離にいたんだよ?もう我慢できないよね」
男「おい、しっか・・・!?」
男(か、らだ、動かねっ・・・!?)
娘「新鮮でさ」
娘「若くてさ」
娘「いい匂いがするんだよ、キミ」
娘「だから、もういいよね?」
男「まさか、お前・・・!」
娘「選んでいいよ?私の仲間になるか、死ぬか、気持ちよくなってから奴隷になるか?」
男(間違いない、この野郎正気じゃねぇ・・・!)
娘「でも、キミ童貞でしょ?一回でも女の子の味知っちゃったら奴隷か死ぬしかないんだけど。どうする?」
娘「男の子だもんね、したいでしょ?」シュル・・・
男「ばっ、バカヤロウ!しっかりしろ!!脱ぎだしてる場合じゃねぇぞ!!」
娘「暗くてよく見えない?あたし、肌は綺麗だと思うんだ。白くて、すべすべしてる」
男(まずい、これはすごくまずい・・・!!)
娘「ねえ、したいの?それとも、先に噛まれたい?」
男(噛まれるのは確定かちくしょう!!)
娘「どうかな、下着だけになってみたけど」
男(生きるか死ぬかって時には案外息子も反応しないもんだな、あとで友に教えてやろうっ!!)
男「どうもこうもない、しっかりしろバカ吸血鬼!!服着て平ら胸しまえ!!」
娘「むね・・・?胸がすきなんだ?」
男「違わないけど違う!!そうじゃないっての!!」
娘「ねぇ、そんな気分・・・?動けないで、こんな女の子に主導権握られるっているのは・・・」むにっ
男「!!」
娘「へぇ、脚好きなの?軽く踏んでみただけなのに、ずいぶん反応するんだね・・・」
男(いやとりあえず踏まれたら反応するだろ、男ならっ・・・!)
娘「したいってことでいいのかな・・・?そのあとはあたしの奴隷で、ふふっ」
男「いい加減にしろバカ!暴走してる場合か!?家族の仇を討つんだろうが!!」
娘「キミの血があればいいんだよ?どーてー捨てるのが先か、噛まれるのが先かの違いだし」
男「くそ、聞く耳もたねぇのかよ」
娘「とりあえず、・・・ほら。ブラジャー外してみるね」
男「やめろ!!そんなことしてる場合か!!」
娘「それとも・・・先に下?あたしも初めてだけど・・・緩める気はないよ・・・?」
男「く・・・っ!!」
娘「でもぉ、そうだよね、先にヤッておけば、キミは永遠にあたしのものだもんね」
男「!?」
娘「ふふっ、じゃ、始めるよ・・・?」
娘「・・・!?」
男「!目の色が、元に・・・!」
娘「わ、私は何を・・・?なんで服着ていないんですか!?こ、殺しますよ!?」
男「違う濡れ衣だ!!あ、身体動く!!いいか、迫ってきたのはお前だし、そもそも俺は無抵抗で踏まれただけだ!!」
娘「な、何を意味のわからないことを!!どういうつもりですか!?」
男「騒ぐな!!そうやって体力使うとまた恍惚状態になるだろうが!!」
娘「不潔ですよ!!一発殴っ・・・」
男「・・・?」
娘「ほおら、ね・・・。もう限界なんだよ、この身体もさぁ」
男「い、言わんこっちゃない・・・!!」
娘「けどね、残念時間ギレだよ・・・?」
男「時間・・・?」
娘「もう日が昇るから・・・。残念だね、あたしでどーてー脱出できたのに」
男「・・・あいにく、そんな状態のお前とヤッても俺は満たされないんでね」
娘「ふうん・・・?」
男「俺は攻める方が好みなんだよ」
娘「くすっ・・・。でも、いつかキミを必ず噛むからね。犯した上でねっ・・・」
男「ふん・・・」
男「・・・少しだけ、惜しいことしたかもなっ!」
男「おい起きろバカ吸血鬼」
娘「むにゅ・・・?」
男「夕方だ、起きろ」
娘「ああ・・・。そうでしたね・・・。何だかひどい夢を見ていたような気がします」
男「夢?」
娘「ええ・・・。思い出すのも恥ずかしい、というかおぞましいというか・・・」
男「・・・。早く用意しろ。血を盗むんだろ」
娘「はい・・・。あれ・・・?あたし昨日はブラ付けて寝たような・・・?」
男「い、いいから早くしろ」
男「で、俺はどうしてればいいんだ」
娘「どうもしなくていいです。ここにいてください」
男「え?」
娘「というか、現地に行ったところであなたには何も出来ないでしょう?高層ビルに忍び込むのは私一人だけですし」
男「それはそうかもしれないが・・・」
娘「平気ですよ、入って輸血パックを持ってくるだけ。鼻唄混じりにこなしてみせます」
男「・・・分かった。早めに帰れよ」
娘「はい。では」
男「だから玄関から・・・、っていっても、もう遅いか」
女「・・・昨日はお楽しみだったかしら?」
男「・・・であんたは玄関からか」
男「確かアイツをかんだのはあんただったな」
女「ええ」
男「なるほど、何となく納得した。けど、お楽しみはなかった」
女「・・・そう。そろそろだと思ったのだけれど。ああ、もしかして焦らされて終わったのかしら」
男「・・・そうとも言うかもしれない」
女「ふふ、お姉さんでよければ、相手になるわよ?あの子と違って、胸大きいし?」
男「後が怖いから遠慮しておく。それより、昨日の話だけど」
女「昨日の話?」
男「吸血鬼が血以外に吸い取るもの、だ」
女「ああ・・・。でも言ったでしょう?お姉さんにもそれが何だかは分からないって」
男「人間の生きる力、精力じゃないか?」
女「性的な意味でかしら」
男「このエロ吸血鬼。そうじゃなくて、純粋に生きる力だ。それを補給するから、永遠に生きられるんじゃないかと思うんだ」
女「・・・そうかもしれないわね。魂、とでも表現するのかしら」
男「それが在るか無いかが、輸血パックとの違いじゃないか?」
女「可能性はあるわね。確かめようがないけれど。・・・キミの精力は力強そうだけど・・・?」
男「あんた実はただの淫魔だろ」
遅いな(´・_・`)
女「まぁいいわ。私はそろそろ退散するから。あの子の時間は、もう少ないわよ」
男「・・・ああ、分かってる」
女「それと、もし吸血鬼、眷族、死の三択を迫られたら・・・あなたが自分で選ぶといいわ」
男「それも取らない。俺は俺だからな」
女「ふふっ・・・。いつか抱かれてあげてもいいわよ?」
男「ふん・・・。楽しみにしてる」
女「じゃあ、ね」
男(なんとなく、彼女に会うのはこれが最後のような気が、した)
娘「よっ・・・と」
男「戻ったか」
フラグきたな
娘「これだけあれば、問題ないはずです」
男「各血液型をそろえたわけだ」
娘「久しぶりだから、どれがおいしいのか忘れてしまいましたし」
男「頼むからこぼすなよ。・・・あ、そうだ。ほら、ストロー使え」
娘「なるほど、これならこぼしませんね・・・」
ゴクッ・・・ゴクッ・・・。
男「・・・どうだ?」
娘「はぁぁぁっ・・・。これぇ・・・。これ美味しいですぅ・・・」
男「あ、ああそう。よかった、な?」
wktk
娘「・・・はい、これで、準備万端です」
男「全部飲んだのかよ・・・」
娘「あとは・・・。仇を見つけて、殺します。今なら、戦えます」
男「・・・で、手がかりは」
娘「吸血鬼同士なら、お互いの匂いと気配が分かるものです。今は互いに隠し合っていますが、私が開放すれば、すぐに気が付くはずです」
男「・・・。勝ち目は」
娘「私はこのときのために生きてきました・・・。負けるはずがないんですよ」
男(・・・)
同日 郊外の空き地
娘「なぜあなたがいるのですか?」
男「そりゃ、ここまで来て蚊帳の外はひどいだろ」
娘「死にますよ」
男「俺は死なない」
娘「酔狂な男ですね、どこまでも」
男「まーな」
娘「・・・私にもしものことが起きたら、逃げてください、全力で」
男「起きないんだろ」
娘「もしもの話です」
男「可能性の話には意味がないんじゃなかったか?」
娘「ぐぬぬ・・・」
精力は任せろードピュピュ
娘「・・・改めて聞いてもいいですか」
男「なんだ」
娘「どうして、あの日私を招き入れたんですか」
男「・・・」
娘「まだ、ちゃんと聞いてませんでした」
男「それは・・・」
?「お楽しみ中、もぉしわけないなぁ若者諸君?」
娘「!!」
男「今の声は・・・!?」
男「る、ルパンだとぉ!?」
ルパン「やーだ、とっつぁん、またあっちった」
娘「、、、」
?「間抜けに気配を放っているものがおるから見ぃに来ぃてみればぁ・・・。とぉんだ茶番だ、子供が二ぁ人・・・。何かの冗談か・・・?」
娘「お前が、史上最悪の吸血鬼か・・・!!」
?「いかにも・・・。そして最凶の吸血鬼・・・。凶、とでも、呼んでもらおうか・・・」
男「凶・・・」
凶「名前などどーでもいいのだが・・・、その方が都合がよかろう・・・」
娘「家族の仇・・・、討たせてもらうぞ」
凶「家族・・・。そのような理由で、私に立ちィ向かおうというのか、小娘・・・」
娘「いくぞ!」
凶「は、はやい、だが、、、私にわきかん!!」
凶「や、やったか?」
娘「それわ残像だ」
凶「なん、、、だと?」
娘「いくぞ!」
凶「おう!」
私たちの闘いは、まだ始まったばかり!
ご愛読ありがとうございました
>>153 言われてみればそう見えるwww
娘「・・・」
男「どこだ、どこにいる・・・?」
凶「お前は人間か・・・。後に眷族にしてやろう、まさか未経験ということもあるまい・・・?」
男「後ろ・・・!?」
娘「そこ!」
凶「止まって見えるぞォ、小娘・・・。ずいぶんと弱っているようだが・・・?」
娘「!!」
おもしろいな
wktk
男「やっぱり輸血パックじゃ・・・!!」
凶「輸血・・・。そォか、小娘、貴様人の血を吸えない性質か・・・!ふははははは!!そんな身でこの私に挑ォむなど、笑ォォ止!!」
娘「ぐっ・・・」
凶「思ォい出すがいい、我が同胞よ・・・。あの香り、温度、舌ァ触り・・・。どれも一級品のワイン以上・・・!!」
娘「違う、お前のしていることは、ただの虐殺だ・・・!!両親を殺し、姉さんを蹂躙した・・・!!」
凶「蹂躙・・・。そうか、貴様あの物の妹か・・・」
娘「何・・・!?」
凶「ヤツがよく、よがりながら呟いていたものよォ・・・。妹の、名をなぁぁぁっ!!」
ゴッ!!
娘「ぐ、はぁっ!!?」
男「早・・・見えない・・・!?」
凶「レベルが違う・・・。ただの一撃で、こうも簡単に済んでしまうなどォ、愉しむ間もないか・・・」
男「おい、しっかりしろ!!」ダッ!!
凶「動くなァ、人間ッ・・・!」
男「が・・・!?また、身体が動かない・・・!!」
凶「哀ァれなものよォ・・・。何も出来ず、女も救えず、ただ私の眷族になァる・・・。己の運命を呪うがいい・・・」
男「く、そ・・・」
凶「さぁ、人生最後の神に祈る間をやろう・・・。その後は、神を恐れる存在にィなるのだから・・・!!」
男「・・・っ!!」
?「そんな装備で大丈夫か?」
男「大丈夫だ、問題ない」
男「ぐは」
?「神は言っている。まだ死んではいけないと」
、
、
、
?「そんな装備で大丈夫か?」
男「一番いいのを頼む」
男「こいや凶」
凶「おらぁ」
凶「こいつ、できる!」
ジャリッ・・・
凶「・・・むぅぅ・・・?」
男「!」
娘「・・・」
凶「その状態でまだ立つかァ・・・。どうやらお前を侮っていたようだ・・・」
娘「・・・」
男「・・・!!」
男(目が、赤く・・・!!)
凶「ほォ・・・。理性を捨てたか、同胞よ・・・。純粋に殺戮を愉しむだけの状態に至るとはァ・・・。だが、それでは私の何の変わりもあるまい・・・」
男「!」
凶「なぁぁんの違いがあるっ!!同じではないかそれで敵討ちだとォ!?片腹痛いわぁっ!!」
ゴッ!!
凶「ほぉ・・・かァわしたか・・・」
娘「ふ・・・はははは・・・」
男「やっぱり、暴走してる・・・!!」
娘「殺すよ・・・。殺して殺して、ぐちゃぐちゃにして食らってやる、この私が!!」
凶「勢いだけェよくとも・・・、実力が伴わねば意味がないぞ小娘ぇぇぇぇ!!」
ドグォ!!
娘「がっ・・・!!」
凶「他人の血を貪る決意がないのならァ!!」
ドボォッ!!
娘「う・・・!!」
凶「なァぜ吸血鬼として生ィィィィィきている!!」
娘「」
凶「そォォんな生に、なァんの価値があるというのだ小ォ娘ェェェ!!!」
凶「この小娘がぁぁぁぁあああああ」
凶「このやろぉぉぉおおおお、お、ぉ、おえぇぇぇぇぇぇぇええええ」
凶「げほ、げほっ、おえぇぇ」
凶「ぉおえええええええぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ」
男「・・・おい、嘘だろ、ピクリとも・・・っ!!」
凶「せめて、家族の下に行くがよい・・・。もっともぉ、姉は死ぬ直前まで、天国の絶頂にいたがなぁぁっ!!」
男「て、めぇ・・・」
凶「そう・・・。私にも人であったことがあった・・・。だが人というのは、愚かで儚く、弱きィ生き物だ。私はそれに嫌気がさした・・・」
凶「だァから!!私は人間をォ、やァめたのだっ!!」
男「人間を、やめても・・・強くはならなかったみてぇだな・・・」
凶「何・・・?」
男「そんなチートにすがって逃げただけで、お前は戦いすら放棄したんだな・・・!!」
凶「人間がァ、負け犬ほどよく吼える・・・。だが、いい度胸だ・・・。我奴隷にィふさわしい・・・」
男「・・・ふざけんな、そんなもんごめんだっての!!」
凶「奴隷ってェ言ってもォ、「性」奴隷なんだよォ」
凶「俺はぁ、ノンケでも構わず食ってしまうぜぇ」
男「うほっ、いい男」
凶「や・ら・な・い・か」
凶「ほォ・・・。永遠の命をくれてやろうというのに、拒絶するかァ・・・?」
男「お前に噛まれるくらいなら、俺は戦ってくたばるね」
凶「ふん、おォもしろい!!ならば試してみるがいい人間・・・。そして知れィ!!我が力の絶大さをォ!!」
男「!身体が、動く・・・!」
凶「これは決闘だ人間・・・。いやァ、処刑といった方が的確かね!?」
男「く・・・」
凶「さぁ・・・。逃げてもいいんだぞォ人間・・・。それとも、男らしく立ち向かって散るかね・・・!?」
男「・・・!」
凶「ふはは、逃げないかそれがこの国の美徳かァ!?神風といったか、侍といったか!?潔い死は美ではない愚かだぞ人間!!」
男「・・・どっちでもないね」
凶「何・・・?」
男「俺には何かの主人公みたいな力はないし、吸血鬼でもない。ただの人間だ。出来ることといえば、こうしていることだけだ。このままだと俺は確実に殺される」
男「けどな、俺は悪党については一つありがたいと思うことがあるんだ、何だか分かるか?」
凶「・・・」
男「自分より格下の相手には、余計なことをベラベラと喋る事だ。さっさと殺せばいいのにだ」
男「そういうことしてるから殺せる相手も殺せないんだ」チラッ
凶「む・・・!?」
男「今だ、後ろから突けっ!!」
凶「おのれいつの間にっ!!」バッ!!
男「っ!!」ダッ!!
凶「む!?何もいない!?・・・小癪な、ブラフかァッ!!」
男「おい、まだ生きてるな!?」
娘「」
男「力技だが、これでっ!!」ガッ!!
ドボッ!
男「・・・あ?」
なんかすまない(´・_・`)
やめるお
凶「この私に一杯食わせたのは認めるぞォ、人間」
男「か・・・!!」ガクガク・・・
凶「だが、それだけだな・・・。その隙に何をしたのかは分からんがァ・・・。これで終わりだ・・・」
男「・・・」
凶「惨めな最後だなァ・・・。腹をパンチでぶち抜かれて震えているとは・・・」
男「う・・・あ・・・」
凶「震えも止ォまったか・・・。儚い生き物だな、人間・・・」
「・・・そうは、思いませんよ」
凶「何・・・?」
娘「その人が、最後に・・・何をしたのか・・・。見ていなかったんですね」
凶「貴ィ様、まだ生きて・・・。!?」
凶「なぜだ、なぜそうもピンピンしている・・・?」
娘「あなたが腹をぶち抜く寸前、自分の腕を無理やり私の歯に当てて、噛ませたんです」
凶「噛ませただと・・・?」
娘「その瞬間にあなたが彼を打ち抜いたとすれば・・・。彼の魂の大半がどこに流れたか、分かるでしょう?」
凶「そォか・・・。自らを噛ませて、小娘に生をォ与えたか・・・」
男「ガボッ・・・」
凶「だが、こいつは死ぬぞ・・・。吸血鬼化するには、吸われた量が少なすぎる」
娘「だから、あなたを倒して彼も救います」
凶「大ォきく出たな小ォ娘・・・。だがさっきもいった・・・。実力が伴わなければ、意味はないぞ・・・」
娘「・・・一撃で十分です:
凶「ほォざけェェェェ!!小娘がァァァァ!!」
ズン!!
凶「な・・・」
娘「心臓を一撃で打ち抜く。これがマスターの得意技ですから」ブチブチッ!
凶「バカな、この技は・・・」
娘「塵芥と成り果てろ。そして、姉さんに許しを請うがいい」
凶「ぬぅぅぅぅ・・・」ドシァッ
娘「・・・」
男「ヒュー・・・ヒュー・・・」
娘「・・・ごめんなさい。あなたを救うには、もうこれしか・・・」
男「・・・」
娘「・・・ごめんなさい」
・・・カブッ・・・
EX
女「ギリギリだったけど、こういうのもありなんじゃないかしら」
?「どうだろうな。彼女が暴走する可能性も十分にあった。やはり危険だ」
女「いいじゃない。彼女らにとっては、意外とハッピーエバーアフターかもよ?」
?「それは本人たちにしか聞けないだろう」
女「それで、次はどうするつもり?」
?「吸血鬼がこれで大人しくなるのなら・・・。あとは残る妖怪だろうな」
女「ふふ・・・探偵さんはいそがしいわね」
?「慣れてきたよ、いい加減に、な・・・」
Tさんか?
娘「赤ワインですよ」
男「いいや、トマトジュースだね」
娘「なんでトマトジュースなんですか。赤ワインこそ至高ですよ」
男「この世にトマトに勝るものはないってお婆ちゃんが言ってた」
娘「そのフレーズは仮面ライダーでしょう」
男「ところでさっきからガバガバ飲んでるけど、吸血鬼って酔っ払わないのか?」
娘「吸血鬼なめてるんですか」
男「あーいや、今は俺も吸血鬼なんで」
娘「あ・・・」
男「・・・俺にもワインくれ。で、飲み明かそうか、今夜は」
娘「・・・いいんですか?」
男「何が?」
娘「吸血鬼になっちゃったんですよ」
男「らしいね。あんだけでかい穴腹に開いたのに、俺生きてるし」
娘「もう日向の道は歩けないんですよ」
男「どうせ俺なんか・・・」
娘「アニキ!!・・・じゃなくて!!」
男「いーんだよ。生きてるだけで儲けもんだ。それに、これはこれで楽しいと思う」
娘「・・・」
男「ま、なっちまったんだから仕方ないだろ。な?」
娘「・・・」
男「?どうした?」
娘「ふふ・・・。なら、もうあたしを拒否する理由もないんだぁ・・・」
男「え?暴走・・・じゃないな・・・。もしかしてお前、単に酔うとこうなるだけだったのか・・・?」
娘「ねぇ、攻める方がすきなんでしょ・・・?早く来てよ・・・」
男「はぁ・・・。なんでこうなるかなぁ・・・」
EX
?「ふふ・・・。ずいぶんと手ひどく、やられたものだ・・・」
?「だがァ・・・。まだ終わりではないぞ・・・。力をつけて、私は再びィ・・・」
?「吸血鬼は、死なんのだからァ・・・」
男「・・・で、実際さ」
女「ハァ、ハァ・・・にゃに・・・?」
男「お前ドMだろ」
女「しょんなこと・・・」
男「へぇ」ジュプジュプッ
女「あ、いやぁっ!!急にそんなのっ!!」
男「・・・」
女「これは違うのぉ・・・」
男「ふーん。じゃあやめよう」
女「え?」
女「うー・・・」
男「何だよ」
女「その、二人とも初めてなんだから、イケるところまで、ね・・・」
男「お前さ、もう『娘』っつー顔してないよな」
女「え・・・?」
男「なんつーか、女の顔になった。・・・あの吸血鬼に似てるよ」
女「へへ・・・」
男「いや褒めてはいないけどね」
女「だから、ねぇ・・・。来て、ください・・・!!」
・・・
男「すげぇ疲れた」
女「私もです」
男「もうすぐ朝だし」
女「吸血鬼って子供できるんですかね・・・」
男「いや、それよりさ。吸血鬼って傷の治り早いじゃん?」
女「?はい」
男「膜も戻っちゃうんじゃない?」
女「あ。・・・それは、あるかも、です」
男「・・・マジかよ。冗談で言ったのに」
・・・
男「腹減ったな・・・」
女「そうですね・・・。あの」
男「あん?」
娘「お腹がすいたので、噛ませてください」
男「赤ワインでも飲んでろ」 終わり
若本節疲れた・・・
それと俺にエロは無理だってことが分かった
以上ですお付き合いありがとうございました
おつ
また今回みたいに別な形で続くの?
>>199
?=Tさん
正解w
今回の彼女分かりにくくてスマン
>>199
?=Tさん
正解w
今回の彼女分かりにくくてスマン
二重登記すまん
>>219
正直迷ってる
続くとしても多分次が最後
けどSS書くのはやめないつもり
>>224
肝試し→雪女→吸血鬼
だっけか
次あってもなくても楽しみにしてるわ
>>225
占い→肝試し(唯一未完orz)→雪女→吸血鬼だね
思えば遠くまで来たもんだ・・・
次はまた妖怪にするか、原点に戻ってみるか・・・うーむ
多分また時間空いちゃうわスマン
とりあえず>>1が書いたSS教えろください
覚えてる範囲でいいので
もっとエロ書いてくれ
めっちゃ興奮してきた
>>228
女「ねぇ、天秤座今日何位?」男「十二位」
男「そろそろ冬だな」雪女「そろそろ本気出すね」
男「切符落としましたよ」女「えっ」
姉「最近妹分が足りない」の>>3
あといくつかあったけどすまん忘れた
あと↑のタイトルも細かいところ間違えてるかも
>>230
サンクス全部読んでくる
>>229
すまんエロはダメだw
まったく書ける気がしないんだよマジで
>>231
あとゆるゆりのSSも書いたわ
タイトル忘れたけどあかりが復讐してく話だったはず
>>234
未完のきもだめしSSのタイトルってなに?
教えてください
>>236
それがどうしても思い出せないんだ
使うつもりだった暗号とかは覚えてるんだけどなw
EX(実験)
男「んでさ」
娘「ふぁ・・・?」
男「処女膜復活した?」
娘「復活しゅる前に・・・んあ、突かれちゃってるからぁ・・・」
男「ああそうか。吸血鬼も不便だな」
娘「とか言いながら、んっ!?腰止まんにゃいしぃ・・・」
男「まぁ疲れないからな。吸血鬼便利」
娘「どっちにゃのぉっあ!?っぐ・・・!!」
男「あー、イキましたな」
すまん俺にはやっぱり無理だっ!!恥ずかしくて死ねるw
EX(>>1のライフはもうゼロよ!!)
女「ひぐっ・・・動いちゃダメ・・・。まだ・・・」
男「うむ、中がとんでもなく痙攣してるからな」
女「分かってるなりゃ、にゃ、にゃんで突き続けるのぉぉ!?」
男「えー、俺まだ果ててないし?」
女「無理ぃ!!ダメムリこれ以上は死んひゃうから!!」
男「吸血鬼なのに?」
女「らめ、おかひくにゃる!!おかひくにゃるっ!!」
男「うーん、まだ足りないかも」
女「もうらめぇ!!またイッちゃうのぉぉ!!」
男「あー、じゃあ俺もそろそろ。中でいい・・・よな」
女「いや、イク、またらめぇ!!」
男「うっ・・・!」
女「う・・・いっぱい・・・もぉ、お腹いっぱいだかりゃ・・・」
うん・・・。
何だろう、今なら空も飛べるはず
あかり「京子ちゃん、私もミラクるんの同人誌買ったよ!」の>>4も私だ
すいませんでした
えっエロは?
>>244
お前は俺を殺す気か!?
これ以上何をどう書けとw
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