佐々木「キョン、2011年度日本シリーズ第七戦が始まるよ」(338)

ID:NqJV0TgD0


 今日で日本シリーズも第七戦を迎える。この試合が引き分けとならなければ、最終戦となる日だ。

 つまり長かった2011年シーズンも今日で終わってしまう。

 未曾有の激甚災害の影響もあり、プロ野球の開催さえ危ぶまれた時期もあったが、こうしてシーズンの終焉を目の当たりにできるのは、何と言うか感慨深いものがある。

 様々な意見もあると思うのだが、試合を通じてひとりでも多くの人を勇気付けることができたのであれば、開催した意義もあるのではなかろうか。

 まあ、我ながらどの口が言ってんだって感じだけどよ。



 今日も今日とて、我が家のリビングにはSOS団+αが詰め掛けている。ぐるりと首を巡らせてみても、そこには顔なじみとなった面々が映るだけだ。

 そんなだらけた空気にありながらも、やはり試合開始前というものは妙な緊張感が漂うものだな。やはりこれからの試合展開が気になるのだろうか。

「さて、どっちが勝つんだろうな」

 緊張感に誘い出されるようにして口をついた言葉を、耳聡く拾い上げた奴がいた。ハルヒだ。

「何よキョン、そんなの決まってるじゃない」

 ハルヒ、えらく自信ありげじゃないか。そこまで言い切るなら、お前の予想とやらを聞かせてもらおうか。

「強いほうが勝つのよ!」

「おい」

 ツッコミ役としては失格の烙印を押されそうな短句であったが、ハルヒの勢い十分なボケに対応できた語彙はそれだけだった。

規制されたのか


 ハルヒのボケは流しておくとしてだ。この場に居合わせている人間がどんな予想をしてるか訊いてみるのも面白そうだ。

 そう思い立った俺は、こういったトピックに対して的確な回答を示してくれるであろう人物に水を向けることにした。

「なあ、長門はどっちが勝つと思うんだ?」

「これまでの六試合において、福岡ソフトバンクホークスは得点、打率、安打数、盗塁数、守備率、防御率で中日ドラゴンズを上回っている。これらの数値からこの試合は福岡ソフトバンクホークスが勝利を収める確率が中日ドラゴンズより高いと推察される」

 まったくもって長門らしい回答だな。こいつがヤクルトを応援している一因には、ノムさんの時代から連綿と受け継がれているID野球が関係しているんじゃないかと思ってしまうぞ。

「ふぅん、有希の言うことも一理あるわね。――じゃあさ、みくるちゃんはどっちが勝つと思う?」

「え、えっとぉ……、わたし、カープ以外のチームってよくわからないのであまり大したことは言えないんですが……。九回終わったときに得点の多かったチームが勝つんじゃないですか?」

 ああ、麗しの朝比奈さん、貴女の予想であればどんなものでも無条件に賛成するつもりでした。ですが、これだけは言わせて下さい。 

 それは試合の予想じゃなくて、野球のルールを述べただけですよね……。

「じゃあ妹ちゃんは?」

「んー、中日」

 ほぅ、やけにきっぱりと言い切ったな。何か理由でもあるのか?

「だって去年の日本シリーズでたたかったチームだもん。一回たたかった敵は、そのあと味方になるんだよ。だから中日をおうえんするの!」

 どこぞの週刊少年誌のような論理じゃないか。まあこいつらしいと言えばこいつらしいのかも知れん。

 その理論でいけば、より多くの試合を戦っているソフトバンクを応援するべきじゃないかとツッコミたくもなるのだが、妹の健やかな成長のためにも心の中に留めておくとしよう。


「それじゃ、佐々木さんはどんな予想をしてるの?」

 さて、次はどいつに訊こうかと思案していたところで、ハルヒのやつが佐々木に予想を尋ねてしまった。

 いつの間にか仲良くなっちまって。その役目は俺だと思っていたんだがな。 

「うーん、そうだね。わからないっていうのが正直なところかな」

 優等生たる佐々木から零れ出た意外な言葉に、俺は思わずツッコミを入れてしまった。

「なんだ。お前でも予想がつかないのか」

「これまでの結果を傍証するならば、この試合のシミュレーションを展開することはできるだろう。でもねキョン、やはりこういった試合はやってみなくてはわからないものなのだよ」

 確かにそうだとは思うが、長門のような予想が飛び出すと思っていただけに、肩透かしを食らったような気分だぞ。

「ふふ、それに関しては申し訳ない気持ちにもなってしまうというものだ。ならば、キミにはこう釈明するとしよう――長門さんもデータを基にした予想を立てていたけれど、本来の実力をもってすればより深く突っ込んだ考察を展開するはずだ。しかし、彼女はそれをしなかった」

 言われてみればそうかもしれん。長門ならば、日本プロ野球だけでなく全世界で行われた公式野球の記録を洗い出してもおかしくはないだろうからな。

「このことは長門さんが正確な予想をせず、ただ純粋に試合を愉しみたいという意思の表れではないかと推察したのだ。そして僕はその意見に賛同したい。だから僕はこう予想した――わからない、とね」

 なんだかうまくはぐらかされてしまった気がしないでもないが、くつくつと笑みを浮かべる佐々木の姿を前にしては、これ以上の追求は興醒めであるように思われてしまった。


「古泉、お前はどうなんだ?」

「もちろん、ドラゴンズの勝利を確信していますよ」

 まあそうだろうな。

「戦況は厳しいと言わざるを得ないでしょう。しかしこの試合は、八年間という長期にわたってドラゴンズを指揮した落合監督のラストゲームでもあるのです。『勝つことが最大のファンサービス』という言葉に代表される、オレ流の集大成を是非見せて頂きたいものですね」

 この日本シリーズはビジターチームだけが勝利してるという、今までにない流れがあるからな。そういった状況もあるいは味方するかも知れん。

「橘はどうだ?」

「当然、ホークスが日本一になります!」

 当然と来たか。まあ、レギュラーシーズンの成績を考えれば、ソフトバンクが日本一になるって思えてくるよな。

「中日さんは確かに強いです。試合巧者って感じで星勘定を五分にされちゃいましたけど。でも、ホークスの方が強いのです! 交流戦も含めたら十一球団に勝ち越した実力で、日本一になるのです!」

 ソフトバンクの実力は本物だと思う。それはナゴヤドームでの試合で十分に思い知らされた。

 しかし、ポストシーズン特有の硬さってものが、未だにソフトバンクを苦しめているのかも知れん。それさえ払拭できれば優位に試合を運べるかもしれないな。

谷川流って阪神ファンなんだね


「それでキョン、キミはどう予想しているのだい?」

 偽悪的な笑みを浮かべながら、佐々木が俺に水を向けてきやがった。

 なんだよ、俺も何か言わにゃならんのか?

「あったりまえじゃない! あんただけが偉そうに聞き役になってるなんて、このあたしが許さないんだからね!」

 やれやれ、ハルヒからも責められては逃げ場なしだな。ったく、最後だからって妙な期待をするんじゃねえぞ。

「そうだな。俺の予想は――」

「予想は?」

「わからん」

「ちょっと何よそれ! 微妙に引っ張っといて、結局は佐々木さんのパクリじゃない!」

 プロ野球の解説者だって予想を外しまくってるんだぞ。俺なんかがそれらしいことを言ったところで赤っ恥をかくだけだろ。

 俺はただ、このシリーズの決着を見届けたいだけなのだ。

 この予想のつかないシリーズの結果を知りたいから――だからこの試合を見る。

 そして俺の願うことはただひとつ、この試合もいい勝負であってくれということだ。

 ありふれた一介の野球ファンである俺が願うことなんぞ、その程度が分相応ってもんだろ?

※このスッドレは『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズに登場したキャラクターが、SOS団一日団長を賭けて担当チームを応援するスレです。
※原作『涼宮ハルヒの驚愕』までのネタバレがあるかもしれません。アニメだけしか観ていない方はご注意下さい。
※話の流れは実際の試合展開に順じます。
 → TBS系列の地上波、BS「NHK-BS1」で視聴できます。

【主な登場人物】
 ・古泉一樹:中日ドラゴンズファン
 ・橘京子:福岡ソフトバンクホークスファン

 ・キョン:読売ジャイアンツファン
 ・佐々木さん:北海道日本ハムファイターズファン

>>1
代行して頂きまして、本当にありがとうございました。

>>5
●を使っても立てられない時があるのですね……

>>9
住んでいる場所からいっても、やはり阪神ファンの多い地域ですので、そうなのだと思います。

一回表 鷹0-0竜 チェンジ P:杉内
荒木 三ゴ
井端 みのさん
森野 投ゴ

「杉内は完璧な立ち上がりだったな」

「ポストシーズンではなかなか結果の出ない杉内さんなのですけど、今日もいいピッチングしてますね。さすがです!」

 昨日は、幸先よく初回に得点した中日だったが、今日は三者凡退か。

 まぁ杉内の出来を見る限り、簡単には打ち崩せそうになさそうだが。

一回裏 鷹0-0竜 一死一塁 P:山井
川崎 二ゴ
本多 中安

「本多がランナーに出たな」

「川崎選手は抑えましたが、やっかいなランナーを出してしまいましたね。強打者の内川選手と相対しながらも、本多選手の盗塁をも警戒しなければならないとは」

 盗塁を決められちまえば、初回から大きなピンチを迎えることになる。

 山井は踏ん張りどころだろう。

一回裏 鷹0-0竜 チェンジ P:山井
内川 みのさん(本多盗塁失敗)

「ええー! 本多さんが盗塁失敗ですか!?」

 パリーグで60もの盗塁を記録した本多だったが、ここではあえなく刺殺されてしまったようだ。

 ギリギリのタイミングだったが、谷繁の投げたコースも良かったな。少しでも逸れていれば、本多もセーフだっただろう。

「序盤の展開を左右するほどに大きなプレイとなったのではないでしょうか。山井投手もこれで内川選手に集中できますので」

 その言葉通り、山井は内川を見逃しの三振に切って取った。

 ソフトバンクもよく攻めたが、中日が凌いだって場面になったか。

今日で終わりか
がんがれ

二回表 鷹0-0竜 一死一塁 P:杉内
ブランコ よんたま
和田 二飛

 初回こそ完璧に抑えた杉内だったが、この回は先頭のブランコにフォアボールを与えてしまった。それに――

「投球バランスが悪いのか? なんだかよろけてたぞ」

 ブランコへの三球目だったろうか、投げ終わったあとにふらふらとバランスを崩していた。

「うーん、スライダーが抜けちゃってて、それを修正しようとしてるのかも。それにしても、コントロールが定まってないですね……」

 和田と双璧をなすソフトバンクのエースだけに、杉内の状態は気になるところだろうな。

二回表 鷹0-0竜 チェンジ P:杉内
平田 からさん
藤井 中飛

「杉内もさすがだな」

 一時は崩れるかに思えた杉内だったが、制球を取り戻し、その後の打者を抑えてみせた。

「さすがですね。杉内さんといえば、スライダーとチェンジアップなのですが、そのチェンジアップが平田さんに効果的だった感じです」

 強打の平田を三振にとった球がチェンジアップだったか。けどよ、スローで見たときに妙な握りをしてなかったか?

「杉内さんのチェンジアップは特徴的なのです。中指を立てて、四本の指で握る感じですね。そして、人差し指と薬指の間から抜くので、フォークみたいな落ち方するらしいですよ」

 ここまでは、ストレートとスライダーが主体のようだが、このチェンジアップも混ぜられると中日打線はなかなか打てないかもしれないな。

二回裏 鷹0-0竜 チェンジ P:山井
小久保 一ゴ
松中 遊ゴ
松田 みのさん

「山井もいいピッチングしてるな」

 初回こそ本多にヒットを打たれちまったが、この回は四五六と三人で抑えてしまった。

「今日の山井投手は制球力がいいように感じられますね。特に松田選手を三球三振に切ったラストボールなどは、強打者でも手が出ないコースでしょう」

 山井は、四年前の日本シリーズで八回をパーフェクトに抑えたんだったか。

 この調子を維持できれば、それに近い結果を残せるんじゃないか?

2ベースキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

三回表 鷹0-0竜 チェンジ P:杉内
谷繁 からさん
大島 遊ゴ
荒木 一邪飛

「谷繁はまだノーヒットか」

「そのようです。これで日本シリーズだけでも22打席連続で凡退していますね。CSを含めれば41打席ですか。打撃に関しては心配ですね」

 心配と言っちゃいるが、その口調だとあまり気にしてないようにも感じられるんだが、俺の気のせいか?

「いえ、本音を言えばあまり気にしていないのです。谷繁捕手の仕事は、リードが第一ですからね。八番という打順も、守備に専念して欲しいというベンチの意図が感じられます」

 ヒットが出ていないとはいえ、リードを考えれば谷繁は外せないよな。

 強力なソフトバンク打線を抑えているだけに打撃の不調も責められないだろう。

三回裏 鷹0-0竜 無死満塁 P:山井
多村 二安
長谷川 中二
山崎 よんたま

「長谷川か、昨日はバント失敗してたな」

「ノーアウトのランナーですから、慎重に送って欲しいのです――キャーすごい! ツーベースですか!?」

 中日のセンター大島も、長谷川の大飛球を一度はグラブに納めかけたのだが、結局落球しツーベースとなった。

 しかも続く山崎にはストレートのフォアボールで、ノーアウト満塁の大ピンチとなってしまった。

「山井投手は急に崩れてしまいましたね。これまでの投球が良かっただけに非常に残念ですよ」

 負ければ終わりというだけに、落合もここでカードを切ってきたようだな。

 山井に代えて、小林正人。対左のスペシャリストだ。第四戦の森福のように、この窮地からチームを救い出すことができるだろうか。

三回裏 鷹1-0竜 無死満塁 P:山井 → 小林正人
川崎 よんたま(打点1)

「やりました! ムネリンよく見ましたよ!」

「押し出しか」

「非常に厳しい結果ですね。小林正人投手も緊張しているのでしょうか。フルカウントにこそなりましたが、一球もストライクゾーンに入っていませんでしたね……。さかんに手に息を吹きかける仕草も彼の不調を言外のうちに物語っているようです」

 失点したことも痛いが、ノーアウト満塁という状況に変化がないことも中日にとっては痛いところだろう。

三回裏 鷹1-0竜 一死満塁 P:小林正人
本多 捕邪飛

「うーん、本多さんはファウルフライですか……」

「制球に苦しんだ小林正人投手でしたが、本多選手は抑えてくれたようですね。次の打者からは右バッターが続きますので、彼もここでお役御免でしょう」

 まぁ次に出てくるのは右ピッチャーだよな。さて誰が出てくるのか――ってネルソンかよ。

「まだ三回途中という場面ですので、長いイニングを投げられるピッチャーを登板させたのでしょうね。それにネルソン投手は去年の日本シリーズでもリリーフとして好投しています。期待したいですね」

 しかし、内川に小久保と続く場面だ。満塁とはいえ、慎重に攻めなければならない場面だろうな。

浅尾キュンでもおかしくない場面だった

三回裏 鷹1-0竜 チェンジ P:小林正人 → ネルソン
内川 右飛
小久保 中飛

「ギャー! あぶない!」

 橘が悲鳴を上げている。まぁ、ネルソンのストレートが内川の顔面近くに抜けていったからな。叫びたくもなるだろう。

「あー、しかも浅い外野フライですか……。うーん、なんか攻め切れないですね。……って、小久保さんも凡退なんて……」

 制球の定まらないネルソンだったが、その荒れ球がクリーンナップに狙いを絞らせなかったのかもしれない。

「ノーアウト満塁の大ピンチでしたが、最小失点で切り抜けることができましたか……。欲を言えば無失点と言いたくもあるのですが、この緊張する場面でよく抑えてくれたと賞賛すべきなのでしょうね」

 ソフトバンクとすれば一点で終わってしまったことが悔やまれるだろう。まぁ、この場面は痛み分けといった感じかもしれん。

お前らだけにいい格好させるかよ!
ここにもいるぜ!

四回表 鷹1-0竜 チェンジ P:杉内
井端 遊ゴ
森野 からさん
ブランコ 左安
和田 右飛

 井端森野と、完璧に抑えていた杉内だったが、ブランコにはヒットを打たれてしまったか。

「ブランコさんには前の打席でも粘られてましたから、あまり相性が良くないのかもですね」

 とはいえ杉内もさすがである。続く和田はいい角度の打球を上げたのだが、球威に押されたようで、平凡なライトフライとなってしまった。

「ポストシーズンじゃ勝ち星に恵まれてない杉内さんなのですけど、今日は白星をあげられるかもしれないですね!」

 橘が妙なフラグを立てようとしている気がするのは、俺の勘違いだろうか……。

四回裏 鷹1-0竜 二死一二塁 P:ネルソン
松中 よんたま
松田 投犠打
多村 中飛
長谷川 敬遠

「松中さんよく選びましたね! さすがですよ!」

「ネルソン投手の制球が良くないですね。特にラストボールなどは明らかなボール球でした」

 三回に続き、これでノーアウトのランナーが出たか。ソフトバンクはこのランナーを活かしたいところだろう。

 ランナーが松中でバッターが松田なのだから、ここは送らずにヒッティングだろう――って、おい。

「松田に送らせたのかよ」

「ホークスはここまで中日さんに二点までしか取られていませんので、二点目が早く欲しいのかもしれないです。確かにもったいないバントに見えるかもですけど、一点を確実に取りにいくっていう意思表示みたいなものじゃないですかね」

 そういや中日は、この日本シリーズで三点以上とったことがないんだったか。

 秋山がなりふりかまわず二点目をとりにくるってのもわかる気がするぞ。

2流打者キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

四回裏 鷹2-0竜 二死一三塁 P:ネルソン
山崎 右タイムリー!

「キャー山崎さんすごいです! 松中さんもよく走りましたよー!」

 ライト藤井の送球も素早かったんだが、三塁側に逸れちまったな。

 それにしても山崎はこの重要な場面でよくタイムリーを打ったもんだ。

「さらに一三塁でムネリンですね! 三点目も取っちゃってください!」

 今日の杉内の出来を考えれば、二点でも厳しいところだろう。三点目が入れば勝負を決定付けるような一点になるかもしれん。

両チームともレフトがファインプレイ続出だな

四回裏 鷹2-0竜 チェンジ P:ネルソン
川崎 左飛(平田好捕!)

「ムネリンも続きまし――うぅ、ちょっと伸びすぎちゃいましたか」

 打った瞬間はレフト前に落ちるかという当たりだったが、レフト平田が出足よくスライディングキャッチをしたようだ。

「平田選手の好捕がなければ危なかったですね……。しかし、これで二点のビハインドですか、非常に厳しいと言わざるを得ませんね」

 中日はここまでの三勝を全て2-1というスコアで勝っていただけに、二点目の失点は痛いだろう。

 しかし、このシリーズは何が起こるかわからないからな。中日も巻き返しもあるかもしれない。

五回表 鷹2-0竜 二死 P:杉内
平田 投安
藤井 三ゴ(平田盗塁死)

「さすが杉内さん、この回も先頭を打ち取りましたね……って、あれ?」

 先頭の平田が放った打球は、不規則な回転が掛かったようで、内野安打となった。

「これでノーアウトのランナーがでましたね。ここは大切に……ふむ、平田選手が挟殺されましたか」

 藤井に対する第二球、一塁ランナーの平田が走ったのだが、一二塁間に挿まれタッチアウトとなった。

「なんだったんだありゃ。サインミスか?」

「恐らくはエンドランのサインか、平田選手がサインの読み違えをしたのでしょう。何にせよ、悔やまれるプレイとなりましたね……」

 追い上げたい中日としては、こういったミスは痛いだろう。左の杉内に対して、右の小池を出せないこともまた影響しているのかもしれない。

五回表 鷹2-0竜 チェンジ P:杉内
谷繁 からさん

「谷繁はちょっとひどいな」

「二打席連続で三球三振ですか……。打撃不振は深刻ですね」

 不動のキャッチャーであるだけに、こいつに当たりが出れば中日もチャンスが広がるのだろうが、状況はなかなか厳しいようだ。

五回裏 鷹2-0竜 チェンジ P:ネルソン
本多 からさん
内川 投ゴ
小久保 からさん

「ネルソンはいきなり良くなったな」

「これまで制球の定まらなかったフォークやスライダーが低めに決まるようになりましたね。ネルソン投手は先発に転向してからというもの、立ち上がりに不安があるのですが、今日もその傾向が出てしまったようです」

 古泉とすれば、もう少し早く立ち直ってくれればって思いもあるのだろう。

 しかし、これで中日も、ある程度投球の目処というものがついたのではなかろうか。

本当に中日打線は打てないな
のむのむ

六回表 鷹2-0竜 チェンジ P:杉内
大島 からさん
荒木 左飛
井端 三ゴ

「杉内は本当にすごいな……」

 この回はアウトコースを中心に、ストライクを先行させたピッチングで

「怪我で離脱してた時期もあったので勝ち星は多くないのですが、それでも防御率一点台のピッチャーですからね! 本気を出せばこんなものなのですよ!」

 橘の小物じみた台詞はスルーしておくが、杉内のピッチングは本当にスケールが大きいな。

 今期限りでソフトバンクを退団するという噂もあるが、どのチームに行ったとしても、ソフトバンクに残留するとしても、いいピッチングを続けることだろう。

ホームランの打ち損ないだったな

六回裏 鷹2-0竜 チェンジ P:ネルソン
松中 みのさん
松田 遊安
多村 一ゴ(松田盗塁成功!・進塁打)
長谷川 三飛

「松中も三振か。ネルソンは本当に良くなったな――って、松田には打たれちまったか」

「荒木選手も目一杯のプレイをしたのですが、松田選手の脚を考えれば仕方のない結果でしたね」

 その松田は、際どいタイミングながらもニ盗を決め、これでワンナウト二塁というチャンスを演出した。

「ネルソンさんもいいピッチングをしていますが、ホークスも負けてないのです! 多村さんは倒れちゃいましたけど、長谷川さんがきっとタイムリーを打ってくれます!」

 先ほどの回は敬遠された長谷川だったが、この場面では勝負するようだ。

 この選択が吉と出るか凶と出るか、結果が楽しみ――って、あっさり打ち上げちまったか。

 中日ベンチは戦況をよく見極めてるな。このコーチ陣が来年いなくなっちまうなんて、何だかもったいない気もするぞ。

七回表 鷹2-0竜 一死一塁 P:杉内
森野 投ゴ(杉内好捕!)
ブランコ 中安

「あれを捕ったのか……」

 森野の打球は、鋭くセンター前に抜けようかという当たりだったのだが、杉内が反応よく打球をもぎ取ってしまった。

「杉内さんは本当にすごいですね。抜けてればノーアウトのランナーが出てたわけですし、次はタイミングが合ってるブランコさんですし、大きなプレイになりましたね」

 続くブランコは、橘の心配が的中したわけでもないのだろうが、センター前へとしぶとく抜けるヒットを放った。

「森野選手の打球が抜けていればと思ってしまう場面ですね。しかし、和田選手も勝負強いバッティングをしてくれる方です。ここは彼に期待しましょう」

 昨日は先制点を叩き出した和田だからな。中日とすれば、こいつのバットに賭けたいところだな。

七回表 鷹2-0竜 二死一二塁 P:杉内
和田 からさん
平田 よんたま

「和田選手が空振り三進とは……」

 ラストボールのスライダーがすごかったな。あれは打てないだろ。

「ファイターズの右バッターも、あの内角に食い込むスライダーに手を焼いていたね。見極めようにも、ストレートと見分けがつきにくため、どうしてもバットが止まらないのだよ」

 佐々木が複雑な表情で、杉内の投球に対する感想を述べていた。

 まぁ、パリーグの右バッターは相当苦しめられただろうな。杉内が右を苦手としていない理由もこのあたりにあるのだろう。

杉内△

七回表 鷹2-0竜 チェンジ P:杉内
藤井 からさん

「やりました! 杉内さんかっこいいです!」

 スライダーの次は、チェンジアップで三振か。変幻自在だな。

「CSも、日本シリーズ第二戦も、あと少しってところで一点取られちゃってましたけど、今日は本当にすごいです! あとはホークスのリリーフが〆れば日本一になっちゃいますね!」

 杉内もここまで113球か。橘の言う通り、確かに代え時だろう。

 あとは森福、ファルケンボーグとつなぐのだろうか。昨日は金澤も良かっただけに、中日はますます苦境を強いられるかもしれないな。

七回裏 鷹3-0竜 チェンジ P:浅尾
山崎 → カブレラ からさん
川崎 よんたま
本多 投犠打(浅尾好捕!)
内川 中タイムリー!(代走:城所)
小久保 三ゴ

 送りバントを試みた本多の打球は大きくバウンドし、打球処理に出た浅尾を頭を越えようとしていたのだが――

「浅尾はすごいな……。ジャンプで捕ったのもすごいが、そのあとに無理な姿勢から本多をアウトにしたぞ……」

「足首を気にする浅尾投手の仕草は気になるところですが、ここはアウトカウントを増やせたことを喜ぶべきでしょうか。本当に影響がなければいいのですが――ああっ!」

「内川さんやりました! これで三点目なのですっ!」

 ツーアウト二塁という場面で、内川がセンターに抜けるタイムリーを放った。

 浅尾もいい投球をしていたのだが、内川のバッティングが上回ったという感じだったな。

 しかし、これで三点差か。中日はいよいよ追い詰められちまったか。

八回表 鷹3-0竜 一死 P:ファルケンボーグ
谷繁 からさん

※カブレラ → 細川(捕)

  城所(中)
  長谷川(中) → (左)

「もうファルケンボーグが出てくるのか」

「レギュラーシーズンなら、普通なのですけど……。回またぎってことはないと思うので、九回はやっぱり馬原さんになるんじゃないですかね?」

 橘の予想がどうなるかはわからんが、本当に馬原が出てくるようなことになれば面白くなりそうだな。

八回表 鷹3-0竜 チェンジ P:ファルケンボーグ
大島 → 野本 からさん
荒木 からさん

「三者連続三振かよ……」

「荒木選手などは、ストレートに苦笑いさえ浮かべていましたね……。それほどの球ということなのでしょう」

 ここに来て、中日打線を寄せ付けないピッチングとは。

 ソフトバンクのリリーフは磐石だな。

八回裏 鷹3-0竜 一死 P:岩瀬
松中 からさん

※野本 → 英智(中)

「この回に岩瀬か。前の回の浅尾といい、落合野球の大黒柱が出てくるな」

「落合監督もこれがラストゲームということを意識しての継投なのかもしれません。うまく表現ができず、もどかしくもあるのですが、何とも感慨深い光景ですよ……」

 浅尾を見出してからは、岩瀬とのコンビで白星を重ねてきた印象があるからな。

 落合がこのリレーをするのも最後だと思うと、何とも寂しい気持ちになっちまうよ。

「ピッチャー、馬原に代わりまして・・・斉藤和巳」
湧き上がる歓声、揺れるヤフードーム。マウンドには背番号66・かつてのエース、斉藤和巳が送られた。
全カード勝ち越し、交流戦優勝と、ここまで完璧なシーズンを送ってきたソフトバンクホークスが、最後の最後に送り込んできたのはこの男だった。
秋山「カズミ、やれるか?」 斉藤「やれる、という確信がなきゃ、ここに居ませんよw」
小久保「無茶はしなくていいぞ」 川崎「後ろには俺たちが付いてますから!」 斉藤「みんな・・・」
馬原「最後は・・・頼みます。」 馬原からボールを受け取る斉藤の目には、既に熱いものが込み上げていた。
投球練習を終え、一呼吸置いてから、胸に手を当て、バックスリーンを見上げる。 
失われた5年。あまりにも長かった。斉藤に今できること、それは、福岡のファンに自分の“今”を見てもらうことだけだ。
「・・・さぁ、行くか。」 大きく振りかぶる。斉藤の心に、もう迷いは無かった。


次の日、中日優勝で色めき立つ新聞の片隅で、斉藤和巳の引退が静かに報じられた。

八回裏 鷹3-0竜 二死一二塁 P:岩瀬
松田 三ゴ
多村 中安
長谷川 中安

 松中松田と抑え、ツーアウトを取った岩瀬だったが、今度は連続安打を浴びて得点圏までランナーを進められてしまった。

「岩瀬も失点しそうだな。継投とか考えないのか?」

「浅尾投手も岩瀬投手も、落合監督がずっと信頼して使い続けてきたピッチャーですからね。例え失点しかねない窮地になろうとも、継投はしないのではないでしょうか」

 そういや岩瀬が調子の悪い時も、ずっとクローザーとして使い続けていたな。

 オレ流という言葉通り、最後まで落合の信念を貫き通すってことなのか。

ズバッ

谷繁、逆転満塁ホームラン初ヒット


可能性あるでぇ…!!

魔原じゃないならもうムリポ

八回裏 鷹3-0竜 チェンジ P:岩瀬
細川 みのさん

「さすが岩瀬投手ですね。危うい場面でしたが、しっかりと無失点に抑えましたよ」

 これで、3-0のまま最終回に突入することになったか。

 さてソフトバンクはどんな継投を――

「おいおい、ふぁるけんぼーぐが続投するのかよ……」

「そうみたいですね。もちろん、ファルケンボーグさんが今一番信頼できるピッチャーだと思うのですが……。日本シリーズで好投していたので、胴上げ投手にしたいってことなんですかね?」

 まぁ今日のファルケンボーグを見る限りじゃ、得点はおろかヒットさえなかなか打てないだろう。

 中日は苦しいだろうが、最後の粘りというものを見せなければ試合が終わっちまうな。

魔物さん仕事しすぎwwwwww
魔原クル━━━━(゚∀゚)━━━━!!

九回表 鷹3-0竜 無死一塁 P:ファルケンボーグ
井端 投安(投手直撃、ファルケンボーグ治療)

「えっ!? ちょっ、ちょっとマジですか!?」

「ファルケンボーグに直撃したな……」

 井端が捉えた打球は、ファルケンボーグの右腕付近に当たり、内野安打となってしまった。

「うぅ、なんでこんなことになるんでしょうか……」

 ソフトバンクはいきなり暗雲が立ち込めちまったな……。

なんJのサーバーぶっ壊した井端の一打www

森福は打てないだろうな……

九回表 鷹3-0竜 無死一塁 P:ファルケンボーグ → 森福
森野

「結局ファルケンボーグは交代か」

「ピッチャーはまだたくさん残ってますし、無理をさせないってことなのだと思いますけど……。やっぱり心配ですね」

 しかし、馬原じゃなくて森福か。左の森野だからなのだろうか。

「森野さんに森福さんを当てて、馬原さんが肩を作る時間を稼ぐのかもですね。ただ、森福さんもすごくいいピッチングしてますから、ワンポイントじゃなくて最後まで投げちゃうかもしれないです」

 緊急登板の影響をどれだけ少なくできるか、森福のピッチングに注目だな。

摂津かよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

九回表 鷹3-0竜 二死一塁 P:森福
森野 遊ゴ(二塁封殺)
ブランコ 右飛

 森野の打球は力なくショートの前に転がってしまった。ゲッツーにこそならなかったが、これでワンナウト一塁か。しかし――

「森福は続投するみたいだな」

「ブランコさんは一発が怖いですけど、例え打たれても二点しか入りませんからね。このままいけるとこまでって感じみたいですね――おおー! ブランコさんも抑えました!」

 そして、ツーアウトを取ったところで秋山が出てきた。森福に代えて、馬原でも出すのか?

「ええー! 攝津さんですか!?」

 ソフトバンクファンでもない俺も驚いたぞ。なぜ馬原じゃないんだ……。

あと一球!

おめでとう

タカ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

九回表 鷹3-0竜 試合終了 P:森福 → 攝津
和田 からさん

「やったーっ! やりました! ホークスが日本一なのです!」

 これまで散々ポストシーズンで苦しんできたソフトバンクだったが、苦闘の末に日本一の栄冠に輝いた。

 中日もよく健闘したと思う。ソフトバンク優位という前評判を物ともせず、互角の勝負を繰り広げてきたのだ。勝利者と同等の扱いをされても不思議ではないだろう。

 しかし、ソフトバンクは強かった。投手力、打力、機動力、全てにおいて最高のパフォーマンスを発揮していたように思う。

 これで2011年シーズンも終わっちまったか。来年こそは、俺の応援するチームに優勝してもらいたいものだな。

 大の大人がこれだけ喜んでいる姿を見ちまうと、そんな風にも考えたくなっちまうよ。

「佐々木さん、これであたしがSOS団一日団長になりました。楽しみにしててくださいね!」

 まぁ興奮冷めやらぬ橘の言葉は、気に掛かるところだが……。

sssp://img.2ch.net/ico/mac.gif
お疲れ様でした!

昨日までの六戦全て、ビジターチームが勝利するという今までにない展開だったのですが、
第七戦はソフトバンクが勝利を収め、日本一の栄冠に輝きました。おめでとうございます。

中日も本当によく戦っていたと思います。勝利した三試合全てが、一点差という試合巧者ぶりが非常に印象的でした。
この戦いを指揮した落合監督が、今シーズンをもって勇退されるということが残念でなりません。

本日もお付き合い頂きましてありがとうございました。
今シーズンもこうして最後まで続けることができたのも、皆様もご支援の賜物です。本当にありがとうございました。

来シーズンの予定はまったくの未定ではございますが、また見かけました際にはお付き合い頂けますようお願い致します。
最後になりますが多大なるご支援ありがとうございました。またお逢いできる日を楽しみにしております。

>>303
おつ
来年はオリックスファンとして応援できる立場で会おう

>>303
乙っしったっ

おまけSSについてご報告がございます。

正直に告白致しますと、2011シーズンの〆SSが書き終わっておりません。
このため、おまけSSに関しましては別途SS速報にスレッドを立て、そこに投下する予定です。

本日より一週間後を目処に、おまけSSを書き終える予定でございますので、興味のあります方は是非ご一読下さい。
※当該スレッドにつきましては、『佐々木』または『日本シリーズ』をキーワードに検索して頂ければと思っております。

楽しみにしておられました方を裏切るようなことをしてしまい、我が身を情けなく思っております。
このような対応となり、本当に申し訳ございません。

334なら来年阪神優勝

今からSS速報に立てて誘導した方がいいんじゃね?

>>332
SS速報のローカルルールというものをよく理解していないのですが、
投下準備段階にある状態でスレッドを立ててしまってもよいのでしょうか。

もし問題がないようであれば、すぐにでもスレッドを立ててしまおうかと思います。

>>334
1ヶ月間書き込みがないスレ、2ヶ月間作者の書込みがないスレは落ちる
それにちゃんと書くということを書いとけば今立てても問題無いと思う

>>335
ご回答ありがとうございます。

すぐに対応しますね。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom