櫻子「もし私が死んだらどうする?」(68)

櫻子「ねえ向日葵」

向日葵「なんですか?」

櫻子「もし・・・もしもの話だよ?」

向日葵「はい」

櫻子「私が死んだらどうする?」

向日葵「・・・はい?」

櫻子「だから、もし私が死んだらどうするって聞いてるの!」

向日葵「どうするもなにも・・・あなた死ぬ予定でもあるんですの?」

櫻子「あーもう!向日葵に聞いた私がバカだった!」

向日葵「な、何ですか!急にそんなこと言われても困るだけですわ!」

櫻子「もういい!他の人に聞く!」

スタスタ

向日葵「行ってしまいましたわ」

向日葵「・・・一体何だったのでしょうか」

向日葵「櫻子が死んだらどうするか、ですか・・・」

向日葵「そんなこと、考えたこともありませんわ」

向日葵「・・・まさか!櫻子が何らかの病気に!?」

向日葵「いや、昨日はいたって普通でしたし、その前の日だって特におかしな所は無かったし・・・」

向日葵「・・・はぁ、考えても分かりませんわね」

キーンコーンカーンコーン

向日葵「さぁ、生徒会室で仕事仕事っと」

スタスタ

ガラッ

向日葵「失礼します」

綾乃「こんにちわ・・・あら、今日は一人?」

向日葵「え?あ、はい」

向日葵(そういえば櫻子がいないことに気づきませんでしたわ)

向日葵(てっきりすでに生徒会室に向かったと思っていたのに)

綾乃「今日はちょっと量が多いからね、みんなでやらないと間に合わないと思うの」

向日葵「そうですか、櫻子に関しては私が後で言っておきますね」

向日葵「でわ、まずここの書類から片付けますわ」

綾乃「ありがとう、古谷さんはいつも真面目ね、ふふっ」クスッ

向日葵「・・・あの、そこは笑うとこなのでしょうか?」

綾乃「あ、ごめんなさい、そういうつもりじゃないのよ?」

綾乃「ただ、少しは頭を柔らかくしてもいいんじゃないかなーって思っただけなの」

向日葵「はぁ・・・」

綾乃「こうして手伝ってもらっておいて言うことじゃないんだけどね」

綾乃「たまには、休んでもらっても構わないのよ?・・・もちろん無断じゃ困るけど」

向日葵「私は、忙しいほうが好きですから」

綾乃「あー・・・うん、まぁ・・・」

向日葵「?」

綾乃「ごめんなさい、つまらない話しちゃって」

綾乃「さあ、作業に戻るわよ!2人なら、今日はこの書類を半分まで仕分けるわ」

向日葵「あの、池田先輩は・・・?」

綾乃「千歳なら今日は風邪で学校を休んでるわ」

向日葵「そう・・・なのですか」

綾乃「2,3日前からちょっと具合悪かったのに、無理して学校きてたから悪化したのね・・・」

向日葵「お見舞いには行かないんですか?」

綾乃「あぁ、言ってなかったっけ?」

綾乃「私達、風邪の場合はお見舞いに行かないって決めてあるの」

向日葵「どうしてですか?」

綾乃「だって、お見舞いに行くと長く喋っちゃって相手に負担がかかるでしょう?」

綾乃「それに、風邪をうつしちゃう可能性もあるわけで・・・」

綾乃「そういうわけで、千歳のお見舞いには行かないことにしてるの」

向日葵「そんなの・・・」

綾乃「ん?」

向日葵「そんなの、お見舞いに来てほしいに決まってますわ!」

綾乃「ふ、古谷さん?」

向日葵「風邪で辛いとか、移しちゃうとか、例えそうでも・・・」

向日葵「心細い時、誰かが来てくれたら、それはとっても嬉しいことだと思います!」

綾乃「古谷さん」

向日葵「すみません、生意気なこと言ってしまって・・・」

綾乃「ううん、いいの」

綾乃「確かに古谷さんの言うとおりなんだけどね」

綾乃「でもやっぱりお見舞いには行けないわ」

向日葵「どうして・・・」

綾乃「だって、行ったら・・・『綾乃ちゃんどうして来たん?』って、千歳に怒られちゃうんだもん」

向日葵「・・・」

綾乃「私達のことなら大丈夫よ、古谷さん、心配してくれてありがとうね」

向日葵「いえ・・・」

向日葵(先輩たちは、こんなにもお互いのことを信頼しあっていたんですね)

向日葵(私、全然知りませんでしたわ)

綾乃「あら、もうこんな時間ね」

向日葵「え?・・・あ、もう下校時間ですか!?」

綾乃「ずいぶん喋っちゃったからね、帰ろっか?」

向日葵「すみません、目標の半分もいかなくて・・・」

綾乃「いいのいいの、久しぶりに古谷さんとおしゃべりできて楽しかったから!」

向日葵(杉浦先輩って・・・なんだかすごく頼もしいですわ)

綾乃「じゃあ・・・私こっちだから」

向日葵「あ、はい」

綾乃「気をつけて帰ってね」

向日葵「はい!」

綾乃「じゃあまた明日ねー」

スタスタ

向日葵(はぁーーーー)

向日葵(今日は色々と勉強になった一日でしたわ)

向日葵(杉浦先輩はとっても優しいことと・・・)

向日葵(あとは櫻子のことですわね)

向日葵(えーと、確か、『もし私が死んだらどうする?』でしたわね)

向日葵(そんなの、嫌に決まってますわ!)

向日葵(櫻子はどうしてあんなことを言ったのでしょう)

向日葵(まあ、考えても分からないんですけれど)

向日葵(・・・家に帰ったらお風呂に入ろう)

・・・

翌日

向日葵「風邪で櫻子が欠席!?」

ちなつ「向日葵ちゃん知らなかったの?」

あかり「昨日から具合悪そうだったよね」

向日葵(え?何ですの?昨日の私が死んだらうんぬんは、そういうことでしたの?)

向日葵(だとしたら・・・私、昨日何て言いましたっけ・・・?)

向日葵(あれ?あれれ?思い出せない・・・どうして?)

ちなつ「向日葵ちゃん・・・大丈夫?」

あかり「なんか顔が青白いよ」

向日葵「あ・・・そうですわね、ちょっと外の空気を吸ってきますわ」

ちなつ「え?でも、もうすぐ授業が始まるよ?」

向日葵「・・・保健室に行ったと伝えておいてください」

ちなつ「どうしたのかな?」

あかり「わかんない・・・」

向日葵(はぁ~、どうして昨日言った言葉が思い出せないんですの・・・)

向日葵(しかも、昨日私が言った後櫻子は怒って行ってしまったことは確かなのに・・・)

向日葵(ちゃんと言っておけばよかったですわ)

向日葵(・・・でも、あの時なんて言えばよかったんですの?)

向日葵(死んだら困る?やだっ死なないで?)

向日葵(あーもう、答えが分かりませんわ!)ガリガリ


・・・屋上・・・


向日葵(・・・はー)

向日葵(授業をサボって青空を眺める)

向日葵(なんかいいですわね)

向日葵(ちょっと不良になった気分ですわ)

向日葵(たまにはこんなのも悪くない・・・かも・・・)

向日葵(・・・みんなは今頃授業ですね)

向日葵(なんだか時間がゆっくりに感じますわ)

向日葵(・・・・・・)

向日葵(今、私がするべきことは何なのでしょうか)

向日葵(杉浦先輩はああ言ってたけれど)

向日葵(私達はどうなのでしょうか)

向日葵(櫻子が風邪をひいているのにお見舞いにも行かない私は・・・?)

向日葵(ありえませんわね!)

向日葵(決めましたわ、今から櫻子の家に行って看病しましょう)

向日葵(おせっかいだ、風邪をうつすから帰れと言われても絶対に帰りませんわ)

向日葵(これが、私の決めた道ですから)

向日葵(待っててね、櫻子)

向日葵(あなたを、独りになんかさせませんわ)

・・・


櫻子「あー・・・熱はだいぶ下がったかな?」

櫻子「身体はダルいままなんだけどね」

櫻子「もうお昼か・・・食欲もないし、食べなくてもいいや」

櫻子「ゲホッゴホッ・・・しばらく動かないでおこう、気分悪いし」



櫻子「でも向日葵に悪いことしたなあ」

櫻子「せめて風邪で学校休むってこと伝えてから寝ればよかった」

櫻子「今更遅いか、寝よ寝よ」


・・・

向日葵「お邪魔しまーす」

向日葵(静かに静かに)

向日葵(物音がしない・・・ということは櫻子は寝てますのね)

向日葵「櫻子、入りますわよ」ソー

櫻子「Zzz」

向日葵(・・・よかった、気持ちよさそうに寝ていますわ)

向日葵(台所を見たところ、何も食べた跡が無かったから、きっとお昼ご飯は食べていないんでしょうね)

向日葵(今の私に出来ることといえば)

櫻子(あれ?いい匂い・・・)

櫻子(姉ちゃんかな?ちょうどいいや、お腹すいてきたんだよね)

ガバッ

向日葵「あら、起きましたのね」

櫻子「え?向日葵?」

向日葵「具合はどうですか?どこか痛いところはありませんか?」

櫻子「えぇーっと、お腹すいた!」

向日葵「そういうと思いましたわ、おかゆを作ってありますから冷めないうちにどうぞ」

櫻子「あ、ありがと・・・」

向日葵「~~♪」

櫻子「ねえ向日葵?」

向日葵「どうしました?」

櫻子「えと、今日って学校じゃなかったの?」

向日葵「そんなの、早退してきたに決まってますわ」

櫻子「へー、あの真面目な向日葵がねえ、珍しい」

向日葵「別に珍しくなんかありませんわ、普通のことをしたまでです」

櫻子「普通のこと?」

向日葵「えぇ、普通のことです」

櫻子「はぁ・・・」

向日葵「ほら、食べ終わった食器はこっちにおいてください」

櫻子「何か、色々と悪いな」

向日葵「お礼を言うほどのことではありませんわ」

向日葵「こんな時くらい甘えてもいいんですのよ」

櫻子「向日葵・・・」

向日葵「ん・・・だいぶ良くなってきたようですわね」

櫻子「あぁ、そういえばそんな気がするような」

向日葵「まだ食べられるようなら、果物を持ってきますけど?」

櫻子「いる!食べる!」

向日葵「では、ちょっと待っててくださいね」

スタスタ

櫻子「なんか今日の向日葵すっげえ優しい」

・・・

向日葵「昨日はごめんなさい、生徒会を無断で欠席してしまって」

綾乃「いいのよ、生徒会の仕事よりも、大切なことがあったんでしょう?」

向日葵「はい!」

綾乃「うん、それなら許すわ」

向日葵「池田先輩は、今日も欠席なんですね」

綾乃「そうね、でも昨日会ってみたらほとんど治っていたわ」

綾乃「今日は大事をとって休み、ということだから大丈夫よ」

向日葵(なんだかんだ言って、杉浦先輩も池田先輩のお見舞いに行ったんですね)

向日葵「そっかー、そうですかー」クスッ

綾乃「あれ?私何か変なこと言ったかしら?」

向日葵「いいえ、なんでもありませんわ」

綾乃「あー、古谷さんまた笑ってるー!」

向日葵「うふふ」

向日葵(何か、以前とは違った新しい自分がいるようですわ)

向日葵(なぜでしょう・・・心に少し余裕ができたからですわね)

向日葵(視野を広げてみるとこんなにも世界が違って見えるなんて)

向日葵(これに気づかせてくれたのは櫻子、そして杉浦先輩)

向日葵(私も、少しは大人になれたでしょうか?)

綾乃「あれ?そういえば大室さんは?」

向日葵「あぁ、櫻子でしたら・・・」

櫻子「遅れてごめんなさーい!昨日休んだ分の宿題が終わりませんでしたー!」

綾乃「あらあら、大室さんは今日も元気一杯ね」

向日葵「まったく、元気が良すぎて困ってしまうほどですわ」

櫻子「なんだとー向日葵ー!」

綾乃「あらあら、大室さんと古谷さんは仲が良いわね」

向日葵(そう、ずっとこのまま)

向日葵(楽しい時は笑い合えればいい)

向日葵(辛い時には支えてあげればいい)

向日葵(だって、これが私と櫻子の関係なのですから)


終わり

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