花陽「言えないよ...」 (89)
海未「ワン!ツー!スリー!フォー!ファイブ!シックス!セブン!エイト!」
海未の掛け声が響く。
彼女たちμ'sは自分たちの学校を存続させるためにアイドル活動をしていた。
その中で彼女たちはラブライブ出場に向け、日々厳しい練習を繰り返していた。
海未「はい!今日の練習はここまでです!」
海未の指示によって練習が終わる。
凛「はぁ...今日もきつかったニャ~」
絵里「そうね...でもラブライブも近いんだし、
出場するならもっと頑張らないといけないわね」
希「せやね。せっかくここまで来たんやし、
頑張ってラブライブ出場しようや」
ことり「来月にもライブがあるから、そこでランクを上げないとね」
彼女たちが目指すラブライブとは、
全国のスクールアイドルが集まるアイドルの祭典である。
アイドルランキング上位20組だけが出場できるため、
どこのスクールアイドルもライブなどを繰り返してランクを上げ、
ラブライブ出場を目指している。
穂乃果「よーし!じゃあ皆!明日も頑張ろー!」
9人「おー!」
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練習も終わり、帰り道――――
花陽「今日は疲れたね~」
凛「最近練習も厳しいし、ちょっと疲れてきたかもしれないニャ~」
花陽「そうだね。でも凛ちゃん、無理はしちゃだめだよ。
来月はライブだし、体には気をつけないとね」
凛「心配ないにゃー。ラブライブももうすぐなんだし、
このくらいで参ってたらラブライブに出場なんてできないよ!」
花陽「そ、そうだよね!はぁ...ラブライブ...!
花陽たちが出場できるなんて夢見たい...!」
凛「かよちんまたスイッチ入ってるニャ~。
それに、まだ出場が決まったわけじゃないよ」
花陽「はっ!うん...そうだね...ごめん凛ちゃん」
凛「もう、かよちん変わりすぎ」
花陽「あははは...」
次の日
花陽「もしもし、凛ちゃん?どうしたの」
凛『ごめんかよちん...凛なんだか熱があるみたいだから今日は学校いけないニャ...」
花陽「えっ!?大丈夫!?」
凛『うん、微熱だから2,3日休めば大丈夫だよ』
花陽「そっか、よかった...じゃあ早くよくなって、学校来てね」ピッ
花陽「いってきまーす!」
花陽(遅刻しちゃいけないと思って早く起きたけど、
ちょっと早すぎたみたい...)
そんな事を思いながらμ'sの朝練へと向かう。
しかしその途中、一人歩く男の姿があった。
花陽(あれ?あの人誰だろう...)
花陽はその制服に見覚えがあった。
花陽たちが通う音ノ木坂学院。
その近くに男子校の音ノ木坂高校があるのだ。
だが、音ノ木坂学院のように廃校の危機には陥っていない。
それは、ライバル校のなさにある。
この辺りの女の子はUTXのような人気校を選ぶため、
音ノ木坂学院のように入校希望者が少なくなる。
だが、音ノ木坂高校にはそのような男子校が近くにないため、
自然と生徒が集まってくるのだ。
花陽(こんな時間に登校するなんて...毎朝なにかやってるのかな?)
ぼんやり考えていたが、その時。
男のポケットからハンカチが落ちた。
花陽(気づいてないのかな?早く届けないとあの人困るだろうし...行かなきゃ)タッタッタッ
花陽「あの!ハンカチ落としましたよ」
男「えっ?あ、本当だ!ありがとうございます」
鞄や名札を見るに、音ノ木坂高校の生徒で間違いないようだ。
男「あれ?あなた音ノ木坂学院の人ですか?」
花陽「は...はい」
男「そうでしたか。いやぁ、助かりました。
この時間ってあんまり人通らなくて...あなたが拾ってくれなかったら
多分気づきませんでしたよ。ありがとうございました」
男は深々と頭を下げた。
花陽「い、いえ...私も、今日はいつもより少し早く起きて、偶然通りがかったんです」
男「そうですか。でも、いつもより少し早く起きたって、それでも結構朝早いですよね。
毎朝なにかやってるんですか?」
花陽「はい、私...スクールアイドルをやってて...朝練で」
男「へぇ...あれ?音ノ木坂のスクールアイドルってことは、
もしかしてμ'sの人ですか?」
花陽「はい...一応...」
男「本当ですか!いや、うちの妹がμ'sの大ファンなんです。
ライブにも何度か行くくらい好きなんですよ!」
花陽「そ、そうなんですか?嬉しいな...」
男「もしよかったら名前を教えていただけませんか?
妹に自慢してやりたいんです」
花陽「...小泉花陽、です...」
男「小泉、花陽さん。いい名前ですね。
えっと、俺は佐藤って言います」
花陽「佐藤さん...」
男「用事があるんでもう行きますね。
ハンカチ、本当にありがとうございました」
男はすぐに去ってしまった。
花陽(行っちゃった...ってもうこんな時間!急がないと)
――朝練――
海未「凛が熱を?」
花陽「うん、でも微熱だから2,3日休めば治るって」
海未は少し困ったような顔をした。
海未「そうですか...少し最近の練習が厳しすぎたかもしれません...」
にこ「来月はライブだっていうのに自己管理ができてないわ。
そんなんじゃアイドルなんてできないわよ」
穂乃果「にこちゃん、それは言い過ぎだよ...」
にこ「穂乃果が言えた事じゃないでしょ。この前μ'sが解散しかけたのだって、
穂乃果が風邪をひいたからでしょ」
穂乃果「うっ...」
そう、先日穂乃果が体調管理を怠り、無理な練習をしすぎたため、
本番で倒れてしまい、
その影響でラブライブに出場できなくなるところだったのだ。
絵里「過ぎた事を行ってもしょうがないわよ。でも、凛がいない間しばらくは
個人で練習するしかないわね」
海未「そうですね。最近無理をさせすぎてしまったのかもしれません。
ついこの前失敗したばかりなのに。
しばらくは練習もできませんし、皆さんこの間にしっかり疲れをとってください」
こうしてその日の朝練は終わった。
――1年生教室――
花陽「はぁ...」
花陽(今日は凛ちゃんお休みかぁ...)
国語教師「次、小泉。108ページのあたまから読んで」
花陽「え?あっ、はっはい!」ガタッ
周り「クスクス」
花陽「///」
真姫「......」
~~~~~~~
キーンコーンカーンコーン
花陽(はぁ...さっきは恥かいちゃったなぁ...)
真姫「どうしたの花陽?今日はなんだかずっとボーっとしてるわよ」
花陽「真紀ちゃん...うん、今日は凛ちゃんがいないから変な感じがして...」
真姫「もう、しっかりしなさい。そんなに凛ばっかりに頼ってたら
駄目な大人になっちゃうわよ?」
花陽「うん、わかってるけど...どうすれば自分を変えられるのかな...」
真姫「え...それは、花陽の問題なんだから、自分でなんとかしなさい」
花陽「うん...そうだよね...」
花陽(でも...どうしたらいいんだろう...)
真姫「......」
真姫「ま、まぁ...アドバイスくらいならしてあげられないこともないわよ」
花陽「本当!?」
真姫「そうね...恋でもしてみたらいいんじゃない?恋は女を変えるのよ」
花陽「恋?」
真姫「そう、好きな人ができたらその人に振り向いてもらえるように
努力するじゃない?ま、別に恋じゃなくちゃいけないわけじゃないけど...
と、とにかく、なにか行動しないとなにも始まらないわよ」
花陽「そう...そうだよね、まずは行動しないと!」
――放課後――
花陽「恋...か...」
花陽は小さい頃から凛にべったりだったため、
クラスの男子と触れ合う事も少なかった。
しかも内気な性格のせいで自分から話しかけようとしなかったため
余計に男子との距離は広がっていた。
花陽(恋をすれば自分を変えられる、か...私には無理だよ...)
そんなことを考えていると、後ろから声が聞こえた。
佐藤「こんにちは。また会いましたね」
振り向くと今朝会った男だった。
花陽「あ...どうも。佐藤さん、ですよね...」
佐藤「名前、憶えててくれたんですね」
花陽「いえ...」
佐藤「あの、これから帰るんだったら、一緒に帰りませんか?」
花陽「...いいですよ」
花陽はしばらく佐藤と歩いていたが、なかなか話す事ができない。
花陽(今朝は学校の話をしたから...その辺りの話をすれば...)
花陽「あの...毎朝なにかやってるんですか...?
今日もあんな早い時間に...」
佐藤「ええ。陸上部に入ってて、朝練があるので。
いつも一番に練習したくて、あの時間に登校してるんです」
花陽「そうなんですか...すごいですね」
佐藤「いえいえ、そんな事ないですよ。陸上なんかよりアイドルのほうが
よっぽどすごいですよ」
花陽「そうですか...?」
佐藤「だって、あんなに激しく踊って歌ってるのに辛い顔ひとつせずに
楽しそうにやってるじゃないですか。
あれ、すごく大変だと思います。本当にすごいですよ!」
花陽「いえ...そんな///」
花陽(男の人に褒められるって、ほとんど初めてかも...
それ以前に、こんなに男の人と話したこと今までないし...」
そんなことを考えていたせいだろうか。
花陽は横から突っ込んできたトラックに
気がつく事ができなかった。
花陽(え...?)
キキィィィィィィ!!!!!!!
佐藤「危ない!!」
いち早く気づいていた佐藤は、次の瞬間花陽を押し倒し、
間一髪のところでトラックを回避した。
佐藤「なんだあのトラックは!赤信号だっただろうが!」
佐藤「大丈夫ですか?あ...膝を擦りむいてる...すいません!押し倒したときに」
花陽「いいですよこのくらい...それより、ありがとうございました」
佐藤「当然ですよ。でも膝の手当てをしないといけないな...
そうだ、僕の家まで行って手当てしますから一緒に来てください」
花陽「いえ...そこまでしてもらったら...こっちが悪いっていうかなんていうか...
それに...このくらいは自分でできますから」
佐藤「でも、怪我をさせたのは俺ですから
せめてものお詫びに」
花陽「...じゃあ」
――佐藤宅――
佐藤の手当ては素早く、手馴れた様子だった。
妹がいるといっていたが、きっといつも怪我をしたら彼が
手当てをしていたのだろう。
佐藤「これでよし...と」
花陽「あの...ありがとうございました」
佐藤「いいですよ。ハンカチのお礼と、怪我をさせてしまったお詫び
だと思っていただければ」
???「お兄ちゃーん。誰か来てるの?」
2階から声とともに女の子が降りてきた。
見た目は中学生くらいだろうか。
お兄ちゃんと呼んでいたところからすると
佐藤の妹で間違いないようだ。
花陽「あ...どうも、お邪魔させてもらってます...小泉花陽、です...」
佐藤妹「......」
花陽「あの...?」
佐藤妹「ももももしかしてμ'sの小泉花陽さんですか!?」
花陽「はい...」
佐藤妹「わぁ!本物だぁ!私、μ'sの大ファンなんです!
特に花陽さんの大ファンで!ああ...幸せ...」
佐藤妹はその場でへたれこんでしまった。
花陽「あの...大丈夫ですか...?」
佐藤妹「はい!全然!全く!気にしないでください!」
彼女は起き上がると同時に、兄の佐藤に向かっていった。
佐藤妹「ちょっとお兄ちゃん!どうして花陽さんと一緒にいるの?
もしかして付き合ってるの?」
佐藤「ばっ、そんなわけないだろ!ただ、突っ込んできたトラックから
庇った時に怪我させちゃったから手当てしに連れてきただけだ!」ヒソヒソ
佐藤妹「いや、それだけならわざわざ連れてくる必要はないはず!
やっぱり付き合ってるんでしょ!」
花陽「そ、そんなことないですよ...今日出会ったばっかりですし...」
佐藤「そうだぞ妹。今朝会ったばっかりの人とそんな関係なわけないだろ」
佐藤妹「なんだ...変なこと言っちゃってごめんなさい。花陽さん!」
花陽「いいですよ...気にしてないですし...」
気にしてないというのは嘘だった。
今日出会ったとはいえ、トラックから庇い怪我の手当てまでしてもらった
佐藤のことを花陽は少し気になっていた。
花陽(佐藤さんは花陽のこと、どう思ってるのかな...)
佐藤妹「でもお兄ちゃん、付き合おうとは思わないの?
今まで彼女いなかったじゃん」ヒソヒソ
佐藤「失礼な。だいたい、言ったろ。今日出会ったばっかなんだぞ」ヒソヒソ
佐藤妹「初めて会ったにしては、家まで連れてきてるじゃん。
私が手を貸してあげるから頑張って」ヒソヒソ
佐藤「何する気だ...」
花陽(何話してるんだろう...)
佐藤妹「花陽さん!もしよかったらうちで晩御飯食べていきませんか?」
花陽「ええ!?...怪我の手当てまでしてもらったのに悪いですよ...」
佐藤妹「いえいえ、私が食べていってもらいたいんです。
私、μ'sの話を聞きたいんです...駄目ですか?」
花陽「いえ...そういうことなら...いいですよ」
佐藤妹「やったー!ありがとうございます」
結局妹の説得に押し負けてしまった花陽は夕食を食べていくことにした。
花陽(お母さんに連絡しないと...でも男の人の家でご飯なんて絶対反対されるし...
友達と外食して行くことにしよう)ピッピッピッ
花陽「もしもしお母さん?今日は...」
佐藤妹「いい?ここまでチャンスあげたんだから、
しっかりやってよね?」ヒソヒソ
佐藤「いや俺頼んでないしね!?ていうかお前が小泉さんと仲良くなりたいだけだろ!」ヒソヒソ
佐藤妹「まあね。でもお兄ちゃんも花陽さんのこと気になってるんでしょ?」ヒソヒソ
佐藤「な、何言ってんだよ!そんなわけないだろ!」ヒソヒソ
佐藤妹「あんまり妹をなめないほうがいいよ。
...お兄ちゃんの反応わかりやす過ぎだし」ヒソヒソ
妹の言うとおり、佐藤は気にしてないつもりだが
端から見れば佐藤が花陽に恋心を抱いているのは丸わかりだった。
花陽「...うん、わかった。じゃあね」ピッ
佐藤「親さんですか?」
花陽「はい、許可はもらったんで大丈夫です」
佐藤「そうですか。なら安心だ」
花陽「あの...本当にいいんですか?佐藤さんの親は?
帰ってきたら私、迷惑なんじゃ...」
佐藤「大丈夫ですよ。母は夜勤で今いないし、父も夜遅いんで」
花陽「それならいいんですけど...」
――夕食――
花陽「おいしい!すごくおいしいですよ!」
佐藤妹「ありがとうございます。うちの親夜だいたいいないんで、
晩御飯だけ私が作るようになったんです」
佐藤「はじめのうちは酷かったけどな。ご飯炊いたら水が多すぎておかゆみたいだったり。
フライパンに油ひかないからくっつき放題だったり」
佐藤妹「今はおいしいからいいでしょ!」
花陽「はい、すごいですね」
佐藤妹「えへへ...それにしても花陽さんがお米大好きなんて知りませんでした。
もっと炊いとけばよかったかな...」
花陽「いいですよ。その分佐藤妹さんの料理がたくさん食べられますから」
佐藤妹「ありがとうございます!うちの兄貴ったらいつもそんなこと言わないんですよ!?
自分がちょっと器用だからって私の料理に駄目出ししてくるし...」
佐藤「駄目出しじゃない、アドバイスというんだ」
佐藤妹「何を!あの罵倒の言葉がアドバイスと!?」
花陽「ふふっ」
佐藤妹「ごめんなさい花陽さん。こっちだけで盛り上がっちゃって」
花陽「いえ、充分楽しいですよ。それにしても、仲いいんですね」
佐藤・佐藤妹「「いやいや、そんなこと絶対ないですよ」」
花陽「あははは」
花陽(いい兄妹だな...羨ましい...)
楽しい時間は早く過ぎるもので、花陽はもう帰る時間となった。
花陽「ありがとうございました。今日は楽しかったです」
佐藤「はい、楽しかったですね」
佐藤妹「また、遊びに来てくださいね!」
花陽「はい...また機会があったら」
花陽「それじゃあ、さようなら」
佐藤妹(ピーン)
佐藤妹「ああー外も暗くなっちゃいましたねー。
こんな中一人で帰るなんて危険すぎる!
だからお兄ちゃんついてってあげて」
佐藤「えぇ!?」
花陽「そこまでしてもらわなくても...」
佐藤妹「いえ、夜なんてどんな輩が潜んでいるかわかりませんよ。
備えあれば憂いなし、です。ささっお兄ちゃんも早く」
佐藤「まぁ、一人じゃ危ないしな...」
佐藤妹(よし!)
半ば強引に佐藤がついて行くことになった。
だが、いくらお供とはいえ、夜に男女二人という状況はどうなのだろうか。
佐藤「えっと...すいません...あんな妹で...」
花陽「いえ...可愛い妹さんでしたよ...料理も上手だったし...」
佐藤「それならいいんですけど...」
夜という状況が悪いのか、お互い意識しているからなのか、
二人はほとんど会話をせずに花陽の家に着いた。
花陽「今日は...本当にありがとうございました。
色々お世話になっちゃって...」
佐藤「気にしないでください。ハンカチのお礼と怪我をさせてしまったお詫びですから」
佐藤「それではこれで...また...明日...?かな...」
花陽「はい...また...明日...」
ぎこちない挨拶を交わすと佐藤は帰っていった。
花陽は昼、真姫に言われた事を思い出していた。
『恋でもしてみたらいいんじゃない?』
花陽(...これが恋なのかな...?)
一方佐藤は、花陽に思いを寄せられている事など、
全く気がついていなかった。
佐藤「ただいま」
佐藤妹「おかえり~。花陽さんとはどうだった?」
佐藤「いや、きまずくて何も話せてない」
佐藤妹「え~、もっと頑張ってよ~。本当に何も話してないの?」
佐藤「ああ...しゃべった事といえば、また明日、くらい」
佐藤妹「な~んだ、つまんないの。お兄ちゃん、だから彼女できないんじゃない?」
佐藤「うるせー」
ピリリリリリリリリ♪
佐藤「電話か...友だな」ピッ
佐藤友『あ~佐藤?明日さ~、またメイドカフェ行かね?』
佐藤「また?この前付き合ってやったばっかじゃん。
それに俺、この前メイドの子に迷惑かけちゃったしさ。
行きにくいんだけど」
佐藤友『いいじゃん。頼むよ、一生のお願い!』
佐藤「それ何回目だよ...」
佐藤友『じゃあ明日の放課後な』
佐藤「...しゃーねーな...」
こうして、一日が終わった。
――次の日――
凛の熱はまだ下がらなかった。
花陽はまた早起きをし、練習に向かった。
今日の目当ては朝練ではなかった。
花陽「おはよう...ございます...」
佐藤「ああ、小泉さん。おはようございます」
花陽「昨日は...本当にありがとうございました」
佐藤「いいですよ。それより怪我、大丈夫ですか?」
花陽「え?...はい...おかげさまで」
花陽(よく...気が利く人なんだなぁ...)
それは、花陽が佐藤を好きになった理由の一つでもあるが、
同時に、花陽に一つの不安を作り出していた。
礼儀正しく、周りがよく見え、初対面でも愛想良く話しかける
その姿は消極的な花陽にはないものだった。
花陽(花陽なんかじゃ、佐藤さんと釣り合ってないよね...)
佐藤「もう学校ですので...それじゃあ」
花陽「はい...さよなら」
佐藤(はぁ...今日はなんか、よく話せなかったな。
妹のせいか...なんか意識しちゃうんだよな...)
――朝練――
花陽が朝練に行くと先客がいた。
花陽「おはよう、ことりちゃん」
ことり「あっ、花陽ちゃん。おはよう」
花陽「ことりちゃん早いんだね」
ことり「うん。今日はバイトもあるし、朝たくさん
練習しとかないとね」
ことりは秋葉原で伝説のメイド、ミナリンスキーとして
有名になっている。
男女から人気が高いため、かなり忙しいようだ。
希「おはよう。二人とも早いやん。やる気充分やな」
ことり「もちろんだよ。来月はライブだし」
希「まぁ、やる気があるのはええことやけど、無理はせんといてね。
本番前に体調崩して出られない、ってのは一番避けたいからね」
ことり「うん...でも、やっぱり私、μ'sのみんなでラブライブに出たい。
せっかくここまで来たんだから」
花陽「私も...確かに無理はいけないけど、みんなでラブライブに出たい」
希「ふふ...その意気や。大丈夫。必ず成功する。
カードもそう告げてるからね」
希「それと、花陽ちゃん。恋愛するのも悪くないけど、
もっと積極的にならんと。正直見てられんかったよ」ヒソヒソ
花陽「な、なな...なぜそれを...!」
希「うちに隠し事をするのは不可能やで。
なんならうちのスピリチュアルパワーでお手伝いしよか?」
花陽「...遠慮しておきます...」
こうしてその日の朝練は終わった。
――放課後――
佐藤友「佐藤~メイドカフェ行くぞ~」
佐藤「あー...あれ本気だったのか」
佐藤友「当たり前だろ。ほれ、さっさとバス停行くぞ」
佐藤友2「お、二人ともどっか行くのか」
佐藤「ああ、こいつがメイドカフェ行くとか言うからさ」
佐藤友「よかったら三人で行かね?」
佐藤友2「いいのか?じゃあ早くいこうぜ」
佐藤(面倒なのが増えたな...)
そんなことを毒づきながら佐藤たちはメイドカフェへ向かった。
佐藤友2「ここか?」
佐藤友「おう。ここには伝説のメイド、ミナリンスキーさんがいるからな」
佐藤友2「お前そういうの詳しいのな」
佐藤友「いやこの前佐藤と冗談半分で行ったら
ミナリンスキーさんが可愛くてな。もう一回行きたくなったんだ」
佐藤友2「なるほどな、にしても結構並んでるな」
佐藤「...」
佐藤友「どうした?まだ前の事気にしてんのか?
佐藤友2「なんかあったのか?」
佐藤「いや、俺がミナリンスキーさんに迷惑かけちまったんだ」
佐藤友2「迷惑?」
佐藤「実は...」
――――――
――――
――
数日前
佐藤「ノリで入っちまったけど、俺メイドカフェとか初めてなんだよ」
佐藤友「安心しろ。俺も初めてだ」
佐藤「それは大丈夫とは言わねえ」
ミナリンスキー「ご注文はどうされますか?ご主人様」
佐藤「え..えとですね...あ、じゃあコーヒーにしようかな」
佐藤友「俺も同じやつで」
ミナリンスキー「かしこまりました」
佐藤友「なに緊張してんだよ」
佐藤「うるせー」
ミナリンスキー「お待たせいたしました。ご主人s...」
次の瞬間、ミナリンスキーが足を踏み外してしまった。
テーブルに叩きつけられたカップは佐藤のほうに倒れた。
頭からかぶるような大惨事にならなかっただけましだが、
こぼれたコーヒーは佐藤の制服に盛大にかかった。
ミナリンスキー「も、もうしわけありません!今すぐ拭くものを!」
佐藤「ああ、大丈夫です。ハンカチ持ってるので」
ミナリンスキー「で、でも、制服汚れちゃいましたし...
コーヒーだからシミになっちゃいますよ!」
佐藤「いいですよ。制服が一つしかないわけじゃないですから。
それにこの制服ボロボロで...そろそろ替えようと思ってたんで
ちょうどいいですよ」
ミナリンスキー「でも...!お詫びに何かもってきます!」
かなりあわてた様子でミナリンスキーは戻っていった。
あんなに慌てていたらまた転びそうなものだが。
しばらくすると佐藤友が口を開いた。
佐藤友「お前なにやってんだよ。チャンスだろ?
お詫びにアドレス教えてもらうとか、制服代もらうとか
いろいろできただろ?」
佐藤「あんなに動揺してたのにそんなこと言えるわけないだろ」
佐藤友「ていうか、お前の制服全然汚れてなかっただろ。
嘘までつく必要はないだろ。もっと攻めてけよ」
佐藤「そんな弱みに付け込む感じで仲良くなっても意味ないだろ」
佐藤友「何だそのフェアプレイ精神は!そんなんだから
いつまでたっても彼女ができないんだよ」
佐藤「なんだと?」
話し合いがエスカレートしてきたところに
ミナリンスキーが戻ってきた。
ミナリンスキー「あの、お詫びに私が作ったクッキーがあるんですけど、
よかったらもらってください」
佐藤「すいません。ありがとうございます」
ミナリンスキー「いえいえ、もともと私が悪いんですし...それでは」
――
――――
――――――
佐藤友2「そうか。そんなことが...」
佐藤「だから気をつかわせないようにあんまり来たくなかったんだけど...」
佐藤友「おい、もうすぐ順番だぞ。行こうぜ」
佐藤たちが店に入ると、一人のメイドが出迎えてくれた。
ミナリンスキー「おかえりなさいませ。ご主人様...あっ!」
佐藤「あ、どうも」
ミナリンスキー「あのときの、この前は本当にすみませんでした!」
佐藤「全然気にしてないからいいですよ」
佐藤友「じゃあコーヒーで」
佐藤友2「俺も」
佐藤「コーヒー3つでお願いします」
ミナリンスキー「かしこまりました」タッタッタッ
佐藤友2「めっちゃ可愛いじゃん!あのメイドさん」
佐藤友「だから言ったろ?」
佐藤「なんでお前が得意気なんだよ」
ミナリンスキー(またあの人だ...この日のために手紙書いてきたんだけど...
嫌われてないかな?もし断られたら...)
ミナリンスキー(でも、言わずに後悔するより勇気出して言ったほうがいいよね!)
ミナリンスキーこと南ことり。
彼女も佐藤に恋心を抱いていた。
ミナリンスキー「お待たせいたしました。コーヒー三つになります」
佐藤「ありがとうございます」
ミナリンスキー「あと...これ、受け取ってください!」タッタッタッ
ミナリンスキーは手紙を渡すと同時に走って行ってしまった。
佐藤友「...お前それラブレターじゃねーの?」
佐藤「いやそんなことないって」
佐藤友2「なあ、見せてくれよ」
佐藤「駄目だ。お前らに見せる手紙はねぇ!」
佐藤友「なんだおもしろくねーな」
その日の夜
――佐藤宅――
佐藤「ただいま」
佐藤妹「おかえり。今日は花陽さん来てないの?」
佐藤「いや、二日連続だと向こうも気ぃつかっちゃうだろ」
佐藤妹「そうだね」
佐藤「自分の部屋行ってくるわ」
佐藤はまだ手紙を開けていなかった。
ミナリンスキーは有名なメイドだ。
取り出したときに何かの拍子で他の人に見られたら大変なことになる。
佐藤はそう考えたのだ。
佐藤「さて...なんだろ」ガサガサ
佐藤「...コーヒーの謝罪ばっかだな。
ま、べつに期待してたわけじゃないけど
ていうか、ミナリンスキーさんって南ことりっていうのか」
佐藤が包みに手紙をしまおうとすると、もう一枚の紙に気づいた。
佐藤「あれ?なんだ」
『急な話で申し訳ないんですけど、
もしよかったら私とお付き合いしていただけませんか?
下のメールアドレスからお返事ください。
南ことり 』
佐藤「まじかよ...恋文とか初めてもらったんだけど」
――花陽宅――
花陽「今日の放課後は佐藤さんに会えなかったな~
今度こそ積極的にお話したかったのに...」
ピリリリリリ♪
花陽「あっ!凛ちゃんだ」
凛『もしもしかよちん?凛、熱下がったから明日から学校行けるニャ~』
花陽「本当!?よかったね凛ちゃん!」
凛『うん!じゃあまた明日』ピッ
花陽(凛ちゃん風邪治ってよかった...でも、それだと
もう佐藤さんとは朝会えなくなっちゃうな...)
花陽はまだ、ことりが佐藤に告白した事を知る由もなかった
――次の日――
凛「久し振りの学校、楽しみだニャ~!」
花陽「風邪、すぐ治ってよかったね。心配したんだよ?」
凛「もう、ただの微熱だって。かよちんは心配やさんだニャ」
花陽「でも、拗らせちゃうと大変な事になっちゃうし」
凛「大丈夫!凛はいつでも元気だよ!」
朝練
絵里「凛。風邪治ったの?」
凛「うん!バッチリ!」
絵里「よかった。これで今日から本格的に練習できるわね」
海未「数日休んだ分、しっかり練習してもらいますからね」
凛「ええ~海未ちゃん厳しいにゃー...」
~~~~
にこ「ふぅ...朝からにしてはなかなかハードだったわね」
真姫「あら?どうしたのにこちゃん。この数日で体なまったんじゃない?」
にこ「そうかしら?真姫ちゃんこそだいぶバテてるように見えるけど?」
真姫「そ、そんなわけないでしょ!このくらい楽勝よ楽勝!」
海未「そうですか。それなら明日から真姫の練習メニュー、増やしておきますね」
真姫「え?ち、ちょっと待って今の冗談!冗談だってば!」
――朝練後――
ことり(昨日の手紙、返信まだかな...)
『メール 一件』
ことり(あっ!来てる)ピッ
『手紙ありがとうございました。
コーヒーのことはもう気にしないでください。
あと、お返事ですが僕のほうがお願いしたいくらいです。
よろしくお願いします』
ことり(これって、OKだよね...やったー!)
『もしよかったら今度の日曜日にでも
遊びに行きませんか?
時間と場所は後々連絡します』
ことり(デートにも誘われちゃった...やっぱり告白してよかった)
穂乃果「ことりちゃーん!授業遅れちゃうよー!」
ことり「あ、待って!すぐ行くから」
ことりに届いた佐藤からのメール。
このメールが災いの始まりだった。
――――――
――――
――
μ's朝練中
佐藤「昨日の手紙どうしようかな...」
佐藤友「よっ、モテ男。昨日の手紙どうだった?」
佐藤「昨日の手紙?ああ、コーヒーのこと謝ってた」
佐藤友「なんだ、つまんね」
本当は告白されたということは佐藤としては知られたくなかった。
特に佐藤友には。
佐藤(告白されたのって...初めてだな...断る理由もないし...
早くOKの返事を...)ピッピッ
佐藤友「ん?誰にメール送ってんだ?」
佐藤「えっ!?...妹だよ妹!」
佐藤友「なにお前シスコンかよ!何書いてんだ?」ヒョイ
佐藤友が佐藤の携帯を取り上げる。
佐藤「ちょっ、なにすんだよ」
佐藤友「なになに...は?」
はじめはニヤニヤしながら携帯をながめていた佐藤友だったが
メールの内容を確認するとともに表情が消えた。
佐藤友「誰だよ南ことりって!お前いつの間にこんな出会いを!
しかもなんだこちらこそって!告白されたのか!?」
佐藤「まぁ...そうですね...昨日告白されてですね...」
佐藤友がミナリンスキーの本名を知らなくてよかった、と佐藤は安堵した。
ミナリンスキーから告白されたと知ったらどんなことになるかわからない。
佐藤友「お前告白の返事の文面どうなってんだよ!
初めて恋した中2の夏みたいだぞ!」
佐藤「ほっとけ!こういうのは初めてなんだよ!」
佐藤友「だったら俺が書いてやるよ!」
佐藤「大丈夫か...」
佐藤友「俺にまかせとけぇ!」
――
――――
――――――
――放課後――
海未「ワン!ツー!スリー!フォー!ファイブ!シックス!セブン!エイト!」
凛の風邪が治ったため、放課後の練習も再開された。
穂乃果「だぁ~疲れた~!」
海未「でも久しぶりにしてはみなさんよくできていましたね」
絵里「そうね。だいぶ基礎が固まってきたってとこかしら」
希「これだけ仕上がってれば、次のライブも大丈夫そうやね」
海未「そうですね。数日休みをとりましたが、
ここまで動けるとは思ってませんでした」
にこ「当然だよ~。このスーパーアイドルにこn
穂乃果「じゃあ今日はみんなお疲れ様!」
海未「みなさん、体調には気をつけてくださいね
雨も降ってきそうですし、今日は早めに帰ったほうがいいですね」
他「はーい」
にこ「ちょっと!何で無視すんのよ!」
――帰り道――
花陽「どうしようかな...予報は夜からしか雨降らないって言ってたから
今日傘もって来てないよ~」
凛「凛もだニャ~。でもこういう時って意外と雨降らないから大丈夫だよ!」
花陽「そ、そうだね...」ポツポツ
凛「って!もう降ってきたニャ!」
花陽「凛ちゃん、雨がひどくなる前に帰ったほうがいいよ!
凛ちゃんの足なら間に合うよ」
凛「うん!でもかよちんどうするの!?」
花陽「花陽の足だと余計に濡れちゃうから...
でも大丈夫、また明日ね」
凛「...うん、かよちん風邪ひいちゃだめだよ。じゃあ」タッタッタッ
花陽(凛ちゃんが言うと妙に説得力が...)
凛が走っていってしばらく経つと雨も本降りになってきた。
ザアアアアアアアアアアアアア
花陽(わ、わ、急に降ってきた!どこか近くの屋根に...)
夜しか降らないとタカをくくっていたのが仇になった。
花陽(傘もないし...家までは遠いし...はぁ...誰か助けて)
花陽が雨宿りしていると、雨の中人影が見えた。
佐藤「うわぁ、ひどい雨だな...屋根屋根...と」
どうして彼はいつも完璧なタイミングで現れるのだろうか。
佐藤「えっ!?小泉さん!奇遇ですね...」
花陽「また、会っちゃいましたね...」
佐藤「...」
花陽「...」
屋根の下で二人きりという状況に二人はきまずさを隠せなかった。
花陽(どうしよう...顔赤くなってないかな...顔見せられない...)
佐藤(こんなところで小泉さんと会うなんて...顔、赤くなってないよな...)
しばらくきまずいまま時間は過ぎていったが、雨は一向にやむ気配はない。
佐藤(このまま両方帰れないのもまずいしな...
今手元にあるのは妹がよこした折り畳み傘だけ...よしっ)
佐藤「あの...どうします?小泉さん家まで結構距離ありますよね?」
花陽「はい」
佐藤「今僕一応折り畳み傘持ってるんですけど、
よかったらそれ持ってってください」
花陽「でも、それだと佐藤さんが」
佐藤「僕はダッシュして行きます。前にも言いましたけど、
僕陸上部なんで」
花陽「やっぱり、悪いですよ...そうだ!二人で持っていけば...」
ここで花陽は気づいた。
相合傘なんて恥ずかしい。
それに佐藤も相合傘を避けている。
花陽(どうしよう...やっぱり嫌われてたのかな...)
佐藤「えっと...小泉さんがいいなら僕は全然いいんですけど...
やっぱり相合傘なんて抵抗があるかなと...」
花陽「全然そんなことないですよ!
これ以上佐藤さんに気をつかわせたくありませんし」
佐藤「じゃあ、行きますか...」
しばらく歩いていたが、きまずさのせいか会話ははずまなかった。
花陽(どうしよう...結局話せてない...でもやっぱり佐藤さん優しいな...
私...佐藤さんのことが好きなんだ...)
凛の風邪が治った今、朝出会う時間はなくなる。
放課後もいつ会えるかわからない。
花陽(やっぱり...二人きりの今しかない...よし!)
花陽「あ、あのっ!私...」
佐藤「え?」
花陽「...もしよかったら私と...」
次の言葉が出てこない。
もともと人と話すのが苦手な花陽には告白など到底できなかった。
花陽「...私と...今度の日曜日、お茶にでも...行きませんか...?」
佐藤「えっ!?」
佐藤(小泉さんが...お茶?...小泉さんが誘ってくるなんて思ってなかった...
しかも今度の日曜日って...)
佐藤「本当にすみません!僕、その日用事があってどうしても行けないんです」
花陽「そう...だったんですか...すみません、変なこと言っちゃって」
佐藤「いえ...お気持ちだけ受け取っておきます」
花陽にとってはデートの誘いだけでもかなりの苦労が必要だが
それでも佐藤に断られてしまった。
家が近くなってきた。
二人は気まずい雰囲気のまま別れた。
佐藤「えっと...今日は暖かくして寝てくださいね。
体...冷えてるだろうし...」
花陽「はい...じゃあまた...本当に...すみませんでした」
佐藤「いいですって」
佐藤(...はぁ、せっかく小泉さんのほうから誘ってくれたのに...
もうちょっと気が利いた返事とかなかったのか...
今度俺のほうから誘おう)
花陽(用事ってなんだろう...誰かと遊びに行くのかな...
もしかして...彼女とか...もし...そうだったら...)
――佐藤宅――
佐藤妹「あ、おかえりお兄ちゃん」
佐藤「はぁ...でもなんで小泉さんから...てっきり気になってたのは
俺だけかと思ってたのに...でもあれは多分あの空気を
和ませるために気を利かせてくれたんだろうな...」ブツブツ
佐藤妹「お兄ちゃんなにブツブツ言ってるの...?
気持ち悪いよ...?」
佐藤「...」ブツブツ
佐藤妹「...どうしたんだろう」
ピロリン♪
佐藤「メールだ...南さんからだ...」
『日曜日は現地集合でいいですか?
お互い家も知らないので、待ち合わせしにくいですよね』
佐藤「了解です...と」
花陽が気になってことりへの返信が無愛想になってしまっているが
佐藤は気がついていない。
佐藤(とりあえず遅刻だけはしちゃいけないな...)
そう思いながら佐藤は眠りについた。
――日曜日――
凛『もしもしかよちん?今日ひま?』
花陽「うん、今日はなにもないよ~」
凛『じゃあどこか遊びに行こうよ』
花陽「うん!」
~~~~~~
佐藤「約束の時間よりも30分も早く来ちゃったな...
近くコンビニで時間つぶすか...」
一方ことりは...
ことり「どうしよう~なに着ていったらいいんだろう!
デートなんて初めてだし...」
ことり「とめる?はずす?どうしよう...」
ことり「って、もうこんな時間!?早くしないと!」
ことり「や~ん!遅れそうだよ~!
初めてのデートなのに...」
佐藤「もう時間だけど...南さんどこかな...」
すると人ごみの中からこちらに向かってくる人影が見えた。
ことり「ごめんなさ~い!遅れちゃって!
なに着ていけばいいのかわからなくて...」
佐藤「いいですよ全然!それにしても可愛いですねその服。
僕メイド姿しか知らなかったんでびっくりしちゃいました」
ことり「そうですか...?ありがとうございます///」
佐藤「それじゃあ...行きますか」
佐藤とことりがデートをしている頃、凛と花陽は...
花陽「今日はどこ行く?」
凛「凛ね~ことりちゃんのメイドカフェに行きたいニャ~」
花陽「いいね!花陽も行きたい!」
凛「ええ~!今日はことりちゃ...ミナリンスキーさんいないんですか?」
メイド「ええ、今日は珍しくバイトキャンセルしてきましたので。
申し訳ありません」
花陽「そうですか...」
花陽(でも、バイトをキャンセルなんてよっぽどの用事があるのかな...?
メイドさんも珍しいって言ってるし)
凛「残念だったね~かよちん。
これからどうする?」
花陽「え?じゃあ...アイドルショップをまわって歩きたいな!」
凛「やっぱりかよちんはかよちんだニャ~」
本当はことりのことが気になっていたが
バイトをキャンセルなんてよくある事だろうと気にしないことにした。
――――
凛「ずっと歩いてたら疲れてきちゃったニャ~。
あっ、近くに喫茶店があるからちょっと休んで行こうよ」
花陽「そうだね、花陽も疲れちゃった」
カランカラン
従業員「いらっしゃいませ」
凛「あそこの席にしよっ!」
花陽「あっ、待って凛ちゃん!」
従業員「ご注文はどうされますか?」
凛「えっと...じゃあミルクティーで」
花陽「花陽もそれがいいな...」
従業員「ミルクティー二つですね。ではお待ちください」
凛「トイレってどこかニャ」
花陽「え?えっと...あ、多分あれじゃない?」
凛「本当だ!ありがとうかよちん」
花陽は凛がトイレに行くところを見ていた。
すると近くにある人を見かけた。
花陽(あれって...もしかして、佐藤さん?)
――――
佐藤「え!?南さんってμ'sの人だったんですか!?」
ことり「はい。衣装とかは、私が作ってるんですよ」
佐藤「へぇ~すごいな~」
佐藤「あっμ'sってことは小泉さんとも知り合いなんですよね」
ことり「花陽ちゃんのこと知ってるんですか?」
佐藤「はい。この前初めて会ったんですけど、そのときトラックに...」
花陽の席からでは佐藤が誰と話しているかは見えない。
花陽(楽しそうに話してるなぁ...花陽と話すときはあんなに楽しそうじゃないのに...
相手は誰だろう...)
佐藤が花陽と話すときは照れてしまうだけなのだが、
花陽は気づいていない。
凛「たっだいま~!あれ?かよちんどうかした?」
花陽「ううん!なんでもないよ」
花陽(気になるけど...また今度聞いてみよう...)
――夕方――
凛「はぁ~今日は楽しかったニャ~」
花陽「また来ようね」
凛「そうだね。明日から学校だし、また来週だね」
凛「...あっ、そうだ!かよちん、明日の朝すっごく早起きしてさ、
みんなを驚かそうよ!」
花陽「いいけど...凛ちゃん起きられる?」
凛「大丈夫だニャ~!目覚ましセットしておくから」
~~~~~~
ことり「今日は楽しかったです」
佐藤「そうですか。よかった。
僕デートとか初めてで何すればいいかよくわからなかったんです」
ことり「私も初めてですよ?」
佐藤「えっ?そうなんですか?南さんあんなに人気なのに...」
ことり「いくら人気でも、恋人とかってあんまりできないんですよ」
佐藤「へぇ...そういうもんなのか...」
ことり「...そうだ!もしよかったら明日の放課後も遊びに行きませんか?」
佐藤「いいですよ。じゃあ音ノ木坂学院前のバス停で待ってますね」
ことり「はい」
――次の日――
凛『ごめんかよちん!寝坊しちゃった!後から追いつくから先に行ってて!』
凛は結局起きられなかったようだ。
花陽(...でも、この時間って...佐藤さんに会えるかも...
この前は失敗しちゃったから今日こそ告白しないと...)
花陽「いってきまーす」ガララ
花陽が外に出ると雲ひとつない青空が広がっていた。
絶好の告白日和だ。
花陽が行くといつものように佐藤が歩いていた。
花陽「おはようございます!」
佐藤「あっ、おはようございます。朝会うなんて久しぶりですね」
花陽「そうですね...」
花陽は佐藤を目の前に少し黙り込んでしまった。
花陽(でも...きっと今日しか言えるチャンスはないよね)
佐藤「小泉さん?」
花陽「佐藤さん!私、佐藤さんのことが...s
凛「かよち~ん!遅れてごめ~ん!」
最悪のタイミングで凛がやってきた。
佐藤「...友達?」
花陽「...はい」
佐藤「...邪魔しちゃ悪いし、僕はこれで...」
佐藤は行ってしまった。
せっかく勇気を出して話せたのに...
凛「かよちん、今の人は?」
花陽「たまに会うの。音ノ木坂高校の人だよ」
凛「ふ~ん。じゃあ早く朝練行こっ!」
――朝練――
穂乃果「え~!?ことりちゃん彼氏できたの!?」
ことり「うん、昨日が初デートで...」
穂乃果「そういうことは親友の私に教えてよ~」
海未「穂乃果。そういうプライベートなことは、
ことりもあまり言いたくないものでしょう」
穂乃果「そっか~...でも、おめでとうことりちゃん!末永くお幸せに!」
ことり「それじゃ結婚するみたいだよ...」
にこ「なんだかことりちゃんに先越されちゃったなぁ...」
真姫「しかたないわよ。にこちゃんは彼女っていうより
妹ってかんじだもの」
にこ「むっ...そういう真姫ちゃんだって彼氏いないじゃない」
真姫「な...!私は、作らないだけよ!私のレベルに合う男なんて
なかなかいないっていうだけ!作ろうと思えばいつでも...」
絵里「はいはい。夫婦喧嘩もほどほどにして、早速朝練始めるわよ」
――放課後――
凛「かよちん帰ろ~?」
花陽「うん、そうだね」
花陽(ことりちゃんの彼氏ってどんな人なんだろう...)
凛「どうしたのかよちん?授業中も上の空って感じだったよ?」
花陽「大丈夫。なんでもないよ」
こうして二人で帰っている途中
凛が何かに気がついた。
凛「あれ~?あの人って今朝の人じゃないかニャ?」
花陽「今朝の人?」
凛「ほら、バス停の前の」
花陽「あ......」
それは間違いない。
佐藤だった。
凛「あっ、ごめん。凛忘れ物しちゃったから取りに戻るね」タッタッタッ
放課後のバス停の前。
佐藤は人待ち顔で立っていた。
花陽(相手は誰なんだろう...)
すると一人の少女が佐藤のもとへ走ってきた。
ことり「ごめんなさ~い!待たせちゃって」
佐藤「いいですよ。今来たところですから」
花陽「......え?」
花陽(ことりちゃんの恋人って佐藤さんだったの?
じゃあ、この前喫茶店で話してたのもことりちゃん?)
花陽に衝撃が走る。
花陽(そっか...そうだったんだ...花陽の誘いなんて...断るはずだよ...
ことりちゃんはしっかりしてるし、可愛いし、花陽と違ってしっかり話せるし...
ことりちゃんと比べたら花陽なんて全然...)
花 陽 な ん て . . .
凛「かよちん遅れてごめん!...ってあれ?かよちん?
もう帰っちゃったのかな...」
ここで分岐します。
コンマ49以下でバッドエンド
50以上でハッピーエンド
次のレスで
じゃあハッピーエンド先に書きます
佐藤(あれ、今の小泉さんだよな...南さんが来たらとたんにどこかへ走ってっちゃったけど)
ことり「どうかしましたか?」
佐藤(もしかして...二人って仲悪いのか?)
ことり「佐藤さん?」
佐藤「ああっ、ごめんなさい。今なんか小泉さんがいたような気がして...」
ことり(また花陽ちゃん...この前の喫茶店のときもそうだったけど
佐藤さん花陽ちゃんの話するとき、すごく楽しそう...)
――喫茶店――
佐藤(小泉さん...なんか様子が変だったな...)
ことり「佐藤さん?」
佐藤(明日聞いてみるかな...)
ことり「佐藤さん!」
佐藤「えっ?あ、すいません。考え事してて...」
ことり「...花陽ちゃんのことですか?」
佐藤「いや、そんなこと...」
ことり「前からずっと言いたかったんですけど...佐藤さん、
花陽ちゃんのこと、どう思ってるんですか?」
佐藤「え...?」
ことり「佐藤さん、花陽ちゃんの話をするとき
いつも以上に楽しそうだし...
今日も花陽ちゃんを見かけてからなんだか上の空で...」
佐藤「そんな風に見えてました?...俺」
ことり「はい。私と一緒にいるときは...いつも何か考えてるみたいで...
花陽ちゃんの話をするときはあんなに楽しそうなのに...」
佐藤「そんなことないですよ。俺、南さんの事を...」
ことり「佐藤さんは優しすぎるから、いつも気を遣ってばかりで...
少しくらい...聞かせてさい...」
佐藤(俺...俺は...小泉さんのこと...)
佐藤の脳裏には花陽との思い出が映し出されていた。
佐藤「南さん、俺、やっぱり...小泉さんが、好きみたいだ」
ことり「そうですか...花陽ちゃん、いい子だから泣かせたりしちゃ駄目ですよ?」
佐藤「うん...わかってる」
ピリリリリリリリリ
ことり「...あ、電話...凛ちゃん」
凛『ことりちゃん!?大変!かよちんがいなくなっちゃったの!』
ことり「え!?どういうこと!?」
凛『かよちんのお母さんから電話があって、まだかよちん帰ってないの!』
――――――
――――
――
凛「はいもしもし?」
花陽母『凛ちゃん?花陽ちゃんまだ帰ってないんだけど...今一緒にいる?』
凛「え?かよちんならだいぶ前に帰っちゃいましたよ?」
花陽母『そう...いつもだったらこの時間まで遊びに行かないんだけど...
電話しても電源が入ってないみたいなの。
どこか危ないところに行ってないといいんだけど...
一応警察にも連絡しておかないと』
凛「あの!凛、かよちん探してみます!もしかしたら近くにいるかもしれないし!」
花陽母『でも辺りも暗くなってるのに凛ちゃん一人じゃ...』
凛「任せてください!」
――
――――
――――――
凛『だからことりちゃんもかよちん探すの手伝って欲しいの!』
ことり「うんわかった!すぐ行くね!」ピッ
佐藤「何があったんですか?」
ことり「花陽ちゃんが行方不明になっちゃったの!」
佐藤「そんな!...俺、探しに行ってきます!」
ことり「じゃあ手分けして探しましょう!」
~~~~~
花陽(どうして早く気がつかなかったんだろう...佐藤さんみたいにいい人が
彼女いないわけないよね...それに、相手はことりちゃんで...
喫茶店で見たときもすごく楽しそうだったし、すごく仲いいんだろうな...)
花陽(もっと早く気持ちを伝えられたら...でも...そんなこと...)
花陽「言えないよ...」
キキィィィィィ!!
花陽(...え?)
花陽は気がつかなかったが、
いつの間にかトラックが花陽のもとへ突っ込んできていた。
花陽(そんな...私...誰か...佐藤さん...)
しかしそこにはもう花陽を助けてくれる人はいなかった。
ドガッ
佐藤「どこだ!小泉さん!どこに...」
キキィィィィィ!!
佐藤「...今、なんだか小泉さんの声が聞こえたような...まさか!」
佐藤は音がした方向に駆け出した。
佐藤「嘘だろ...?」
そこにはトラックに撥ねられ倒れている花陽の姿があった。
佐藤「小泉...さん...」
佐藤「小泉さぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
ピーポーピーポーピーポー
――病院――
希「はぁ、はぁ...みんないるみたいやね...」
絵里「えぇ、ことりから連絡を受けてね...」
希「花陽ちゃん、どうなったの?」
絵里「トラックに轢かれたの...でも運転手の急ブレーキのおかげで
最悪の事態はまぬがれたわ。
大事には至らなかったみたい。
でも頭をうって、今意識を失ってる...
花陽、信号を見てなかったみたいなの。
運転手のブレーキがもうちょっと遅かったら、大変な事に...」
希「そっか...」
凛「かよちん...大丈夫かな...」
海未「今は花陽を信じるしかありませんね...」
~~~~
あれ、花陽...どうなっちゃったんだろう...
...そうだ、トラックに轢かれちゃったんだ...
なんだか体がふわふわする...このまま...死んじゃうのかな...
ん...かよ...かよち...
なんだろう...声が...聞こえる...
凛「かよちん!」
花陽はゆっくりと目を開けた。
凛「かよちん!かよちんが生き返ったニャ!」
目を覚ますと涙で顔がぐしゃぐしゃになっている凛が見えた。
真姫「泣きすぎよ。ただ意識を失ってただけなんだから」
希「真姫ちゃんだって泣いてるやん。素直やないな~」
真姫「だ、誰が...」
花陽「...みんな...ありがとう...」
凛「かよちん、一人で抱え込んじゃ駄目だよ。
最近元気なかったし...何かあったら言ってよ、凛たちがいるんだから」
花陽「凛ちゃん...」
凛「...だからしゅんとしないで、ねえ...話、聞くよ?」
花陽「うん...実は...」
海未「...そんなことがあったんですか...」
穂乃果「ごめんね、気づいてあげられなくて...」
花陽「いいの...もう、あきらめたから...」
ことり「待って、花陽ちゃん...私からも言わなくちゃいけないことがあるの...」
花陽「...え?」
ことり「もう、入ってきてもいいですよ。佐藤さん」
花陽「佐藤さん...?どうして...」
絵里「じゃあ私たちはこれで...」
佐藤「小泉さん...大丈夫ですか...?」
花陽「どうして佐藤さんが...花陽なんかのために...」
佐藤「小泉さんがいなくなったって話を聞いて、探してたんです。
そしたら小泉さんが撥ねられたところを見て...」
花陽「そう...だったんですか...ごめんなさい、また迷惑をかけてしまって...」
佐藤「いいんですよ」
花陽「私...だめだめですよね...こんなところでドジして...みんなに...佐藤さんに迷惑かけて」
佐藤「そんなことないですよ!...俺、小泉さんに伝えたいことがあるんです」
花陽「...なんですか?」
佐藤「...俺...小泉さんのことが...好きです!」
花陽「え...でも...ことりちゃんは...?」
佐藤「南さんに気づかされたんです。俺の本当の気持ちを...」
佐藤「俺...初めて会ったあの日から...ずっと、小泉さんの事が...」
花陽は気がつくと泣きだしていた。
佐藤「大丈夫ですか!?すいません変なこといって...でも」
花陽「違うんです。嬉しくて...私...」
花陽「私も...佐藤さんのことが好きです!初めて出会ったときから...
私は...声も小さくて...人見知りだし...
好きな人に自分の想いも伝えられないくらい...消極的で...
でも...佐藤さんのことは誰よりも好きです!
こんな私でよかったら...付き合ってください!」
佐藤「...こちらこそ、よろしくお願いします!」
ガララ!
病室のドアが開いた。
8人「おめでとー!」
絵里「ずっと聞いてたわ。花陽、よかったわね」
花陽「ええ!?恥ずかしいよ...でも、ありがとう...」
穂乃果「じゃあ、花陽ちゃんの彼氏さん!」
佐藤「は、はい...」
穂乃果「今度、μ'sでライブをするんです!もしよかったら
来ていただけませんか?」
佐藤「...ええ、もちろん!」
数日後――
佐藤妹「お兄ちゃん早く!ライブ始まっちゃうよ!?」
佐藤「ちょっと待て!何を着ていこうか...」
佐藤妹「そんなのなんでもいいよ!早く!」
佐藤「わかった今行く!」
~~~
穂乃果「みなさん、今日はμ'sのライブに来ていただき、ありがとうございます!」
穂乃果「私たちはこのアイドルという活動のなかで、楽しいことも、辛いことも
たくさん経験してきました!仲間の気持ちに気がつく事ができなかったり、
自分の気持ちを伝える事ができなかったり...でも私たちはその苦しみを超えて
また頑張っていきます!この9人で、この仲間とともに!」
穂乃果「じゃあみんな、いくよ!」
「μ'sミュージック、スタート!!」
END
以上、ハッピーエンドでした
佐藤くんの由来は前の人も言ってるけどニコ生からです
時間もあるのでこれからバッドエンド書いていきます
>>46から
佐藤(あれ、今の小泉さんだよな...南さんが来たらとたんにどこかへ走ってっちゃったけど)
ことり「どうかしましたか?」
佐藤(もしかして...二人って仲悪いのか?)
ことり「佐藤さん?」
佐藤「ああっ、ごめんなさい。今なんか小泉さんがいたような気がして...」
ことり(また花陽ちゃん...この前の喫茶店のときもそうだったけど
佐藤さん花陽ちゃんの話するとき、すごく楽しそう...)
~~~~~
花陽宅
家に帰った花陽は自分の部屋に入り、泣いた。
花陽(どうして早く気がつかなかったんだろう...佐藤さんみたいにいい人が
彼女いないわけないよね...それに、相手はことりちゃんで...
喫茶店で見たときもすごく楽しそうだったし、すごく仲いいんだろうな...)
何を舞い上がっていたんだろう。
花陽(でも...花陽にはまだμ'sのみんなが...凛ちゃんがいるんだから...
忘れよう...この数日間のことは)
>>46から
佐藤(あれ、今の小泉さんだよな...南さんが来たらとたんにどこかへ走ってっちゃったけど)
ことり「どうかしましたか?」
佐藤(もしかして...二人って仲悪いのか?)
ことり「佐藤さん?」
佐藤「ああっ、ごめんなさい。今なんか小泉さんがいたような気がして...」
ことり(また花陽ちゃん...この前の喫茶店のときもそうだったけど
佐藤さん花陽ちゃんの話するとき、すごく楽しそう...)
~~~~~
花陽宅
家に帰った花陽は自分の部屋に入り、泣いた。
花陽(どうして早く気がつかなかったんだろう...佐藤さんみたいにいい人が
彼女いないわけないよね...それに、相手はことりちゃんで...
喫茶店で見たときもすごく楽しそうだったし、すごく仲いいんだろうな...)
何を舞い上がっていたんだろう。
花陽(でも...花陽にはまだμ'sのみんなが...凛ちゃんがいるんだから...
忘れよう...この数日間のことは)
その日の夜
――佐藤宅――
佐藤(小泉さん...様子...明らかに変だった...なんでだ?
ていうか俺...小泉さんの事しか考えてないな...
こんな状態で南さんと付き合ってても...)
ピリリリリリリリ
佐藤(南さんだ...)ピッ
ことり『夜遅くにすいません。話がしたくて...』
佐藤「いいですよ」
ことり『前からずっと言いたかったんですけど...佐藤さん、
花陽ちゃんのこと、どう思ってるんですか?』
佐藤「え...?」
ことり『佐藤さん、花陽ちゃんの話をするとき
いつも以上に楽しそうだし...
今日の放課後も、花陽ちゃんのことずっと見てて、
あの後もなんだか上の空だったし...』
佐藤「そんな風に見えてました?...俺」
ことり『はい。私と一緒にいるときは...いつも何か考えてるみたいで...
花陽ちゃんの話をするときはあんなに楽しそうなのに...』
佐藤「そんなことないですよ。俺、南さんの事を...」
ことり『佐藤さんは優しすぎるから、いつも気を遣ってばかりで...
少しくらい...聞かせてさい...』
佐藤(俺...俺は...小泉さんのこと...)
佐藤の脳裏には花陽との思い出が映し出されていた。
佐藤「南さん、俺、やっぱり...小泉さんが、好きみたいだ」
ことり『そうですか...花陽ちゃん、いい子だから泣かせたりしちゃ駄目ですよ?』
佐藤「うん...わかってる」
ことり『じゃあ...さようなら。今までありがとうございました』
ことり『あと...最後に...』
ことり『好きです』
佐藤「え?南さん、今なんて...」ツーツーツーツー
佐藤「南さん...」
佐藤(伝えなきゃな...自分の気持ち)
次の日――
花陽(今日は遅めに家を出よう...もう佐藤さんと会わないように...)
凛『もしもしかよちん?寝坊したの!?じゃあ先に行ってるね』
花陽「うん、お願い」ピッ
そして花陽は家を出た。
花陽(これでもう佐藤さんと会うことはなくなる...)
花陽は佐藤と会うのを避けるために朝練が始まるギリギリに家を出た。
だが、彼は幸か不幸かまた絶妙のタイミングで花陽の前に現れた。
佐藤「ふぁぁ...」
佐藤(眠い...寝坊しちまったな...小泉さんに会おうと思ってたのに)
花陽(嘘...なんでこの時間に佐藤さんが...)
花陽(なんだか...いつもより眠たげなんだね...)
見つからないように距離をとろうと思ったが、
先に佐藤が気づいた。
佐藤「小泉さん!珍しいですねこの遅い時間に」
花陽「あ...佐藤さんこそ...寝坊ですか...?」
佐藤「ええ、昨日遅くまで友達と電話してて...」
花陽(嘘だ...本当はことりちゃんと話してたに決まってるのに...)
佐藤「大丈夫ですか?うつむいて...今日は寝坊したみたいだし...
どこか具合悪いとかないですか?」
花陽(どうして、彼女がいるのに花陽のことを気遣ってくれるの?
だから花陽は...勘違いしちゃったのに...)
佐藤「小泉さん?」
花陽「...ないで...」
佐藤「え?」
花陽「もう優しくしないで!優しくされるだけで...もっと...」
佐藤は大声を出されたせいか少し動揺していたが、
普通ではない花陽の様子に気にならずにはいられなかった。
佐藤「あの...小泉さん」
花陽「さよなら」タッタッタッ
佐藤「待ってください!小泉さん!俺、小泉さんに言いたい事が!」
佐藤の制止もむなしく、花陽は走っていってしまった。
佐藤は花陽を追いかけようとしたが花陽の言葉が頭から離れなかった。
『もう優しくしないで!』
佐藤(気づくのが...遅すぎた...)
佐藤「なにやってんだろ...俺...」
――教室――
花陽(佐藤さん...)
気がつくと一筋の涙が頬を伝っていた。
花陽(私...)
凛「かよちん!?どうしたの!?泣いてるよ!?」
花陽「凛ちゃん...ううん、あくびだよ...昨日あんまり寝てないから...」
花陽はあくびのふりをして誤魔化した。
真姫「花陽、そんな見え透いた嘘、凛は騙せても私は騙せないわよ」
花陽「真姫ちゃん...」
真姫「何かあったんでしょ?なら私たちに言いなさいよ。友達でしょ?」
凛「そうだよかよちん。困ったことがあるなら、一度全部言っちゃったほうがすっきりするよ?」
花陽「...」
凛「ほら、かよちん」
優しいはずの凛たちの言葉は今の花陽にとっては辛いだけだった。
花陽「なにも...っ!花陽のこと、何も知らないくせに!
知ったようなこと言わないでよ!!」
それは、花陽の人生の中で一番の大声だったかもしれない。
凛は今ままで聞いたことのない花陽の声に怯んだが、すぐに口を開いた。
凛「...何か言ってくれないと、わかるわけないでしょ!」
花陽は今まで凛に怒られたことはなかった。
あの凛が怒るなんて思ってもみなかった。
凛「何も言わずに自分だけふてくされて!そんなことわかんないよ!」
花陽「そんなことじゃない!花陽にとっては...そんなことじゃ...」
凛「だったら言ってよ!どうしてかよちんだけで抱え込むの!?」
真姫「いい加減にしなさい二人とも!ほら、花陽も落ち着いて...」
真姫が仲介に入るが二人の耳には入っていない。
花陽「いいよ!もういい!帰る!」
凛「勝手にしたらいいよ!どうせ凛たちのこと友達って思ってないんでしょ!?」
真姫「やめなさい、凛!」
花陽「もう凛ちゃんなんて嫌い!」
凛「凛もそんなかよちんなんか大ッ嫌い!」
花陽「...っ!」
花陽は教室を飛び出した。
真姫「追いかけないの!?」
凛「いいよ、練習行こっ真姫ちゃん」
花陽(凛ちゃんと...喧嘩しちゃった...今までこんな事なかったのに...)
花陽(初めて好きになった人は、友達の恋人で...
小さいときからの親友からは、大嫌いって...
花陽、独りになっちゃった...)
花陽(もう、生きてたって...仕方ないよ...)
花陽(...でも、花陽...天国でも、独りになっちゃうのかな...)
花陽「言えないよ...」
その日の夜
――佐藤宅――
佐藤妹「ねぇねぇ、お兄ちゃん。最近花陽さんどうしたの?
私があんなに手伝ってあげたのに」
佐藤「ああ...小泉さんか...」
佐藤(あんなこと言われちゃ、もう近づけないよな...)
佐藤妹「どうかした?ここのところずっと元気ないよ?」
佐藤「ああ...妹...ごめんな」
佐藤妹(こりゃ、振られちゃったかな...あんまり触れないでおこう)
数日後――
ことり「花陽ちゃん、学校来てないの?」
真姫「ええ。学校にも連絡してないみたいだから、風邪をひいた
とかじゃないと思うけど」
凛「やっぱり、凛があんなこと言ったから...」
海未「あんなこととは?」
真姫「凛と花陽、喧嘩しちゃったのよ。かなりの大喧嘩だったし、
花陽が落ち込んじゃうのも無理ないんじゃない?」
凛「......」
ことり「そうなんだ...」
――1年生教室――
凛「真姫ちゃんどうしよう。凛のせいでかよちんが学校来なくなっちゃった...」
凛「凛の言い方が悪かったのかな...ただかよちんに頼ってもらいたかった
だけなのに...かよちん」
真姫「もう、そんなに気になってるなら自分から会いに行けばいいじゃない」
凛「でも、この前かよちんに嫌われちゃったし...凛が行っても...」
真姫「いい加減にしなさい!凛まで元気なくしてどうするの?
あなたたち二人は一回の喧嘩程度で壊れちゃうほど脆い関係だったの!?」
凛「...そんなわけない。そんなわけないよ!凛は、凛はかよちんが大好きなんだから!
ありがとう、真姫ちゃん。凛、かよちんと仲直りしてくる!」タッタッタッ
凛は教室を飛び出していった。
真姫「...全く、鈍すぎるのよ...天才的だわ、本当」
佐藤友「どうしたよ。最近元気ねぇな。もしかして例の彼女に振られたか?」
佐藤「ああ...」
佐藤友「なぁ、気晴らしにどっか遊びに行こうぜ」
佐藤「ああ...」
佐藤友「そういえば最近新しいゲーセンできたんだよな」
佐藤「ああ...」
佐藤友「...1+1は」
佐藤「ああ...」
佐藤友「駄目だこりゃ...俺先帰るからな」
佐藤は一人になった。
佐藤「はぁ...」
佐藤(あれ以来、小泉さんに会えてない...まぁ、会えたところで、
俺嫌われちゃったしな...でもあのときの様子は絶対普通じゃなかった...)
ピリリリリリリリリ
佐藤「...南さん?」
ことり『佐藤さん...ごめんなさい、さよならしたのに...』
佐藤「どうかしたんですか?」
ことり『はい、最近花陽ちゃんが学校に来てなくて...
家に引き篭もってるみたいなんです』
佐藤「え?」
ことり『だから佐藤さんが行って、励ましてあげて欲しいんです』
佐藤「俺じゃ...俺なんかじゃ無理だ...
この前小泉さんに...」
ことり『...そうだったんですか。でも、今花陽ちゃんきっとは苦しんで...』
佐藤「ならなおさら、俺が行っても...」
ことり『佐藤さんがそういうなら止めませんけど...後悔、しないでくださいね?』
佐藤「後悔なんてする必要ないですよ。ありがとうございました。それじゃあ」ピッ
佐藤「今さら何やったって...もう...」
~~~~
凛「はぁ、はぁ...」
凛は花陽のもとへ向かって走っていた。
凛「そうだ、かよちんに電話...」
『ただいま電話に出ることができません。発信音のあとに...』
凛「留守番電話...でも、留守番電話になるってことは、電源が入ってないわけじゃないから
聞こえてるはずだよね...」
『ピ―――』
凛(よし...)
凛「もしもしかよちん!?聞こえてるんでしょ!?
聞こえたらお返事ちょうだい!」
凛「聞こえない振りしても無駄だよ!凛がずっとかけ続けるからね!」
――花陽宅――
凛「よし、着いた!」
凛「かよちんの部屋は...あった!」
凛「かよちん!」
凛は花陽の部屋の扉を勢いよく開けた。
しかしそこには、凛の知る花陽の姿はなかった。
凛「かよ...ちん...?」
凛が見たのは
窓も開いていない完全に密室となっている部屋と
まるで屍のように床に倒れた花陽だった。
凛「...かよちん...寝てるの...?ほら、凛が...遊びに来たよ?」
凛「ねぇ...かよちん」
凛は横たわっている花陽に触れた。
凛「...冷たい」
凛「いつも...あんなに、あったかくて、やわらかいのに...」
凛「 」
しばらくして、花陽の家に警察が到着した。
死因は練炭による一酸化炭素中毒。
自殺だった。
花陽は遺書としてμ'sに向けての手紙を残していた。
凛「かよちん...独りなんて...そんなこと...ッ...ないよッ!...
だって...だって...凛が...みんながいたのにッ...」
真姫「私たち...誰も、花陽の気持ち、気づいてあげられなかったのね...」
穂乃果「花陽ちゃん...」
8人は花陽の死をただただ悲しんでいた。
ことり(花陽ちゃん...あれ...手紙の裏にもう一枚手紙が...)
『佐藤さんへ』
ことり(これって...)
次の日――
佐藤「また、どうかしたんですか?」
ことり「花陽ちゃんのことなんですけど...」
佐藤「小泉さん?もういいって言ったじゃないですか。それにもう南さんには...」
ことり「いいから聞いて!花陽ちゃんね...自殺してたの...」
佐藤が凍りついた。
佐藤「...えっ?」
佐藤(...自殺?...どうして...あの小泉さんが...?)
ことり「明日にはお葬式が開かれるんです...来てくれますよね?」
佐藤「葬式...?友達でもないのに...行けるわけないよ。俺、嫌われてたのに...」
ことり「そんなことありません...花陽ちゃんね?遺書を書いてたんです。
それで佐藤さんへの手紙を見つけて...だから渡そうと思って来たんです」
ことりは佐藤に手紙を渡した。
佐藤(...こんなことって...)
佐藤は手紙に残された最後の文に言葉を失った。
佐藤「結局...お互い、相手の気持ちに気がつけなかったのか...」
ことり「...お葬式...来てくださいね。花陽ちゃんも待ってますから」
ことりは去っていった。
佐藤「......」
佐藤は溢れる涙を止められなかった。
~~~~~~~
葬式当日
凛「かよちん...」
誰もが涙を流し、花陽の死を悲しんだ。
凛「かよちん...見える?」
凛「かよちんの為にこんなにたくさんの人が悲しんでくれてるんだよ?」
凛「独りなんかじゃなかったんだよ...?」
BADEND
これで本当に終わります
ちょいちょいラブライブの小ネタはさんでるので
よかったら見つけてみてください
このSSまとめへのコメント
ことりとの絡みのとこが「キケン」と似ていたなんて言えない
あの羨ましい佐藤じゃないか・・・ くそう・・・