長門「涼宮ハルヒが男たちにさらわれた」 (121)

キョン「ハルヒが?」

長門「そう」

キョン「どこにいったかわかるか?」

長門「わかる、こっちに来て欲しい」

キョン「よし」




長門「この倉庫の中」

キョン「誰もいないぞ…」

長門「…涼宮ハルヒがさらわれたというのは嘘」

キョン「何?」

長門「あなたと二人っきりになりたかった」

キョン「長門…お前どうして裸になってるんだよ!」

国木田はいない

長門「涼宮ハルヒが男たちにさわられた」

キョン「痴漢か?」

長門「そう」

長門「これは情報統合思念体からの命令。」

長門「この惑星の有機生命体との性的交渉により、このインターフェイスに生命が宿るかの」

長門「ー実験。」

キョン「長門…お前…一体どうしちまったんだ?」

長門は無機質な眼で俺を見つめている。この瞳を俺は知っている。かつて、俺の日常がひっくり返ったあの春、彼女の正体を告げられたあの時と同じ。

この一年間でお前は、少しづつだったけれど、人間の女の子のように変わっていけたじゃないか。それがどうして、どうしてそんな眼をしているんだ…

長門「貴方は既に生殖可能となっていると判断する。」

そんな俺の思考を他所に長門は俺のズボンへと手をかける。情けない話だが長門の一糸纏わぬ姿を見て俺の愚息は勃起していた。

キョン「ま、まて。まてまてまて!」

俺は長門の手を突き放す。

キョン「いきなりなんだ、冗談きついぜ?」

キョン「どうせハルヒの悪ふざけだろ?いい加減出て来いよ!」

そうなのだ、きっと。こんな状況はありえない。だとすればこれは我らが団長様の新しいお巫山戯か何かだろう。

俺の叫びは倉庫へと反響したが、すぐに静寂が戻った。
くそっ、なんでこんなことになってるんだよ?

長門「私では…不満?」

そんな訳はない。俺の愚息はズボンを突き破ろうとするくらい張り切っているし、彼女の裸体から眼を離せない。

キョン「とっ、とりあえず服をきてくれ!」

キョン「健康な高校生男児には刺激が強すぎるっ。」

長門「その方が効率的。生殖するにあたって衣服は、不要。」

ーはっ?今なんて言った?こいつ。

キョン「長門、今のセリフを、もう一度行ってみろ…」

長門「? 生殖するにあたって衣服は不要。」

キョン「バッカやろおおぉぉぉ!」

長門「!?」

長門「ただし私が生殖行為をするとは言っていない」

国木田「キョン、優しくしてね…」

キョン「お前は何もわかっちゃいない!」

キョン「世間には服を着ていた方がいいって人間がいるんだよっ!」

キョン「シチュエーションもわかっていないお前がなぁ、効率を語るじゃぁない!」

そんな俺の魂の叫びが伝わったのか、長門は怪訝な顔をしながらも服を着てくれた。

ふぅ、とりあえず色んな意味で危機を脱することができた気がする。

しかしあれだな、女子が脱ぐのもいいが、服を着る過程も中々にくるものがあるな。

長門「では生殖を開始する」
再び長門は俺のズボンに手をかける。

キョン「アイエエエエ!?危機去ってなかったぁ!?」

そう、何も状況は変わっちゃいないのだ。いや長門の格好が俺の趣味方向にシフトしたわけで、事態は悪化している気もする。

長門「動かないで…うまくベルトが外せない」

キョン「待て、待てって長門!」

俺のズボンを脱がそうと奮起する長門、脱がせまいと抵抗する俺。必然的に長門の手が俺の愚息をズボン越しに刺激する。

長門「暴れないで、暴れないで…」カチャカチャ

キョン「ヤバイって、長門、ダメ…ンアッァァァァ!」ブバッシャァァァァァ

当然である。長門の手による刺激は童貞の俺には強すぎるのである。大量の白い欲望が俺の下着へと放出された。

長門「奇妙…男性器の収縮が認められる。これでは…生殖行為は不可能」

ふぅ…やれやれだ。とりあえずこれで一時の欲望に身を任してしまうということはないだろう。俺は乱れた服装を正しながら長門へと言った。

キョン「長門、まずは詳しく話を聞かせてくれ。それからでも遅くはないだろう?」

-部室-
どうやら本日ハルヒはSOS団のスポンサーを手に入れるべく町内を回ってから直帰するそうだ。部室の黒板に殴り書いてあった。ふむ、とりあえず話の腰が折られることもないだろう。

キョン「で、だ。とりあえずなんであんなことをしたんだ?」

長門「それは先程説明した。人間とインターフェイスの間に子供ができるかの実験」

キョン「だから、それがなんでだよ?」

長門「意図は不明。私は統合思念体の意思に従っているだけ」

拳に力が入る。一番最初に気になったことだ。長門は、今の彼女は昨日までとは明らかに違う。姿形は変わらない。しかし、一年間共に過ごした故の違和感。

そして俺はもう一つの質問を投げかける

キョン「長門、昨日からさっきまでの間に、何があった?」

俺の質問に彼女は、

長門「本日の朝、統合思念体により、この個体の記憶はリセットされた。その後、新しい私へと先程の命令が下った」
と、淡々に、当たり前のように答えた。

不意打ち…だった。まるで強烈なボディーブローを食らったかのような感覚。上手く息ができない、視界がチカチカと点滅する。えっ?いや、えっ?記憶が消えた?長門の、俺達との?ナンデ?キオクナンデ!?ワカラナイワカラナイワカラナイワカラ…

これはいつの日だったか…

俺と長門は連れ立っていつもの図書館にきていた。デートと呼べるものではない。ただお互いが本を読み、夕方になったらファミレスで読んだ本の感想を言いあうといった他愛もないものだ。だけれどあの時間はかけがえのないものだったと感じるんだ。
けれど、その長門は…消えてしまった。

キョン君!キョン君!

俺の名前を呼ぶ声がする。どうやら気を失っていたらしい。眼を開けると朝日奈さんの泣き顔が飛び込んできた。

朝日奈「ふぇぇぇ、よかったよぅ。キョン君が死んじゃったかと思いましたぁ。」

すいません、朝日奈さん。心配かけてしまって。

古泉「んっふ、一体何があったんですか?部室にきたら倒れた貴方と泣いてる朝日奈さん。どんな修羅場が展開されたのかと…」

倒れてる人間を見て修羅場とは、何なのだ、古泉。

ん?古泉の奴、倒れた俺と朝日奈さんと言ったな?ということは…

キョン「長門を見てないか?」

朝日奈「長門さん、ですかぁ?来た時にはキョン君だけでしたよ?」

古泉「僕も見ていませんね。文化棟に来る廊下でも会いませんでしたし。」

時計を見ると部室についてから一時間ほど経過していた。どうやら長門は倒れた俺を放ってどこかへ行ってしまったようだ。

まずここは二人に相談したほうがいいだろう。俺一人で悩んでいても始まらない。なんとか長門の記憶を取り戻せないだろうか?

俺は事の顛末を二人に話した。

朝日奈さんは「そんなぁ長門しゃんの記憶がぁ…」とベソをかいていたが、古泉は難しい顔している。

キョン「どうだ?何か打開策は浮かんだりするか?」

古泉「いえ、申し訳ないのですが今のところ僕から出せる打開策はありません。しかし、どうしても解せないことがあるんですよ」

キョン「解せないこと?」

古泉「はい。何故、統合思念体が長門さんの記憶を消した上に生殖用のモデルとしたかです。」

古泉「考えてもみてください。彼女はこの一年間、僕達と過ごし人間の感情を学んでいったのだと思います」

古泉「これは統合思念体にとって有益な情報であったはずです」

古泉「また涼宮さんの観察を行っている統合思念体は現在、穏健派が主流です。長門さんの記憶を消すことで涼宮さんの周囲をかき乱すようなことはかえってデメリットにしかならないでしょう」

古泉「また生殖モデルには他のインターフェイスをつかってもいいわけですし、わざわざ長門さんに白羽の矢を立てるのもおかしな話です」

キョン「んーむ、つまり統合思念体にとって長門を生殖モデルにするってのは合理的ではないってことか」

古泉「ええ、今までの彼らの傾向とは些か食い違うと思います。」

キョン「ってことは何かしらの外部からの攻撃による可能性が出てくるわけか」

古泉「はい。ここ最近は涼宮さんの閉鎖空間も落ち着いていますし、機関に長門さんの異常について捜査するように進言します。」

朝日奈「わ、私も未来と禁則事項していろいろ調べてみます!」

キョン「朝日奈さん、古泉…その、なんだありがとな」

古泉「んっふ、何言ってるんですか」

朝日奈「そうですよ。私達、」

古泉・朝日奈「友達じゃないすか」

ひぇっ、最後間違えた。

古泉・朝日奈「友達じゃないすか」

古泉・朝日奈「友達じゃないですか」

朝日奈さん、古泉と別れ俺は動き出した。
今俺にできることは長門に話を聞くことだ。

キョン「出てくれるといいが…」

携帯から長門へと電話をかける。数コールの後、意外にも電話はつながった。

キョン「もしもし?その、なんだ、さっきは気絶してしまってすまんな」

我ながら馬鹿のような滑り出しだ。

長門「・・・」

声は聞こえずとも長門の息づかいが感じられた俺は続ける。

キョン「今どこにいるんだ?できればもう一度話をしたいんだが。」

長門「自宅」

キョン「そ、そうか。なら今からそっちへ向かう」

そう言って電話を切り自転車を走らせる。俺は今、長門へどんな言葉をかけられるのだろうか?答えは出ないまま長門のマンションへと近づいていく。
とにかく、少しでも長門から情報を引き出すんだ。何か糸口が掴めるかもしれない。

-長門宅-
キョン「よ、よお。さっきはすまなかったか」

長門に案内され彼女の家へと入る。長門の部屋には何度か入ったことはあるが、ここまで緊張するのは春以来だな。

キョン「いろいろ聞きたいことがあるんだが、いいか?」

長門「構わない」

先程の電話の後に用意したのだろうか、座ると同時にお茶が出された。

長門「アイスティーしかなかった」

キョン「ん、すまん。少し急いだから喉が渇いていてな。ありがたく頂くよ」

喉を潤し、俺は早速質問を始めた。

キョン「なぁ長門。記憶を消したのは本当に統合思念体なのか?」

長門「質問の意味がわからない。」

キョン「いやな、古泉が言っていたんだがー」
そう言って先程話した内容を長門へ説明する。

長門「確かに。外部からの干渉によりインターフェイスに変化が起きることはある」

キョン「じゃあやっぱ…」

長門「しかしこの個体の場合、その可能性は低い。涼宮ハルヒへの影響を考え、いくつもプロテクトがかけられていたはず。」

外部からの干渉の可能性はありえないと彼女は言う。しかし今の言葉は矛盾を孕んでいる。

キョン「ハルヒの周囲に影響を及ぼさないのであれば今の状況こそがおかしいだろう」

あいつのことだ。長門の記憶がなくなったとなれば平静ではいないだろう。躍起になって記憶を戻そうとするはずだ。
統合思念体の穏健派がそれを是とするわけがない。

何かがおかしいのだ。

なんだか意識が朦朧とする。

矛盾だらけではっきりとしない。

なんだか意識が朦朧とする。

何か見落としてるこ…と…が…

次に目を覚ますと見知った天井だった。と言うか長門の家の天井だった。

手足に力は入らず下半身に甘い痺れを感じた。

キョン「なんで…俺、また?」

そう言いながらなんとか上半身を起こすと俺の愚息をしゃぶる長門の姿があった。

キョン「な、長門!?何して…うっ…」

自分のおかれた状況を認識したのがトリガーとなったのか長門の口へと大量の白濁液を吐き出す。彼女はソレを一滴もこぼさぬように、コクン、コクン、と飲み干した。
一度出したにも関わらず愚息は更なる刺激を求めるかのように硬度を増していた。

長門「睡眠薬入りの媚薬…お茶にいれておいた」

ああ、眠くなったのはそのせいだったのかとのぼせた頭で考える。
長門は愚息を自分の陰唇へと当てる。既に濡れているのか性器が触れた時にクチュリとイヤラシイ音が響いた。

キョン「なぁ、長門。なんで俺だったんだ?」

そんな、当たり前の疑問を俺は聞いた。別に人間と子を作れるかの実験であるならば俺じゃなくてもいいのである。谷口あたりに頼めば涎を垂らして腰をふるだろう。

長門「…私の記憶がフォーマットされ、生殖の命令を受けた時に真っ先に貴方のことが思い浮かんだ。記憶は初期化されているはずなのに。私はこの気持ちが何なのかはわからない。ただ…この気持ちを残した前の個体が貴方を望んでいるような気がして。」

ああ、そうか。そうだったのか。全部、俺が原因だったんだな。長門…
そうして長門は騎乗位となる形で愚息を挿入しようと腰を落とした。

古泉「むう、参りましたね。」

機関で外部から介入があったかを調査しているのだが全く痕跡がない。古泉は商店街中心を調査しているのだが何も掴めていなかった。なにより最近は閉鎖空間の発生もなく、珍しく平和といっても良かったのだ。そう悩みつつも辺りを見回していると背中を叩かれた。

ハルヒ「ヤッホー古泉君!なーにしてんの?」

古泉「これはこれは涼宮さん、ははっ、夕飯をどこの惣菜にしようか迷っていましてね。いやぁこの商店街だと目移りしてしまいますね」

と、当たり障りのない返答をする。そうだ、自分達の視点ではなく神である涼宮ハルヒの視点であれば何か変化が産まれているのではないか?古泉はそんな望みをたよりにハルヒへと話しはじめた。

古泉「しかし涼宮さん、最近、すこぶる機嫌がよろしいですね。何かあったんですか?」

ハルヒ「あ、わかっちゃう?えへへーどうしよっかなぁ。皆にはまだ秘密にしとこうと思ったんだけど。」

意外だった。涼宮ハルヒがここまで機嫌がよくなることあるとは。機関では彼女がここまで、機嫌が良くなるような事象を捉えていない。

いや、今、彼女が「秘密」と言ったことを考えると神の力により観測できなくなってる可能性が高いだろう。

ハルヒ「いやー有希にはばれちゃってるんだけどね、なんと私!」

ハルヒ「キョンから告白されて付き合うことになりました!」ドヤッ

瞬間、古泉は理解してしまった。長門の記憶を消した人物、そしてなぜ生殖モデルとなったのかも。

俺は長門が腰を落としきる前になんとか彼女から逃れていた。

長門「…何故?」

キョン「すまん長門…」

長門「何故っ!!」

キョン「俺はハルヒが好きで、ハルヒの彼氏なんだ。だから…お前は抱けない」

二日前、俺がハルヒに告白した日、一つの恋が実って、一つの恋が散ったんだろう。

キョン「お前は俺のことが好きだったんだな。」

長門は自分で記憶を消したのだ。その失恋の重みから逃れるためか、それとも。

キョン「なぁ長門。俺はこのままだと下半身丸出しの自意識過剰男になってしまうわけだが、」

キョン「記憶喪失とか生殖モデルなんて小手先で逃げていないで!お前の気持ちを伝えてくれよ!」

長門は、泣いていた。
その瞳はいつもの彼女の瞳で、

「貴方のことが好きです」

そうして一つの恋は終着を迎えた。

後日談

古泉「なるほど。事の顛末は理解しました。部室、休日の探索、いつもの風景に何か一つ足りないと感じていたのはそれですか。」

あの告白の後、長門は消えてしまった。彼女についての記憶も部室にあった私物もまた、周囲から跡形もなく消えていた。ハルヒの監視として黄緑さんはまだ残っているようだが、あれからは話していない。

古泉「しかし貴方だけが記憶を保っているとは」

キョン「そりゃぁな。自分の娘の一世一代の告白を忘れられちゃぁ奴さんも嫌なんだろ」

古泉「娘、ですか。相変わらず面白い方ですね、貴方は」

ハルヒ「おーい、キョーン、古泉くーん。部活始めるわよー」

古泉「おやおや、姫がお呼びですよ。行きましょうか」

キョン「へいへい」

こうして俺はまた日常を回し始める。
俺を好きになってくれたあの子の思い出を胸に。

おしり

おわらねえ!

>>72
見てくれてありがとな。心強かったで。

お題もらってもいいかい?

そう俺は長門を忘れない。

-こんな女の子がいた

あるデートの日、俺はハルヒに長門のことを伝えた。
それを聞いたハルヒはあろうことか俺に渾身の右ストレートをお見舞いしてきやがった。
まるで格ゲーのように吹っ飛ぶ俺。
悶絶する俺に向かってハルヒは叫ぶ。

「バッカじゃないの!!!?????」

ハルヒ「あんたねぇ!自分のこと好きだった女の子が消えちゃったんでしょ!?」

ハルヒ「私の男だったら、その娘を迎えにいくくらいの甲斐性は見せないよ!!」

キョン「で、でもな、ハルヒ、俺はお前を選んd」

ハルヒ「でも、じゃなーい!!その娘はあんたの事が好きで!私達の仲間なんでしょ!?」

ハルヒ「ならやることはひとつじゃない!!」

キョン「は、ははははは、なぁハルヒ。」

俺は顔の汚れを拭いながら立ち上がる。

ハルヒ「なによ、なんか文句あんの?」

キョン「んや、やっぱいい女だよ、お前。好きになって良かった。」

ハルヒ「馬鹿!さっさと行きなさい!!」

その声を背に俺は走り出した。

目的はあの場所。彼女がいる長門のマンション。

今や統合思念体との接点は彼女だけだ。

うまくいくかいかないか。そんなことは考えるに値しない。

なんたってこっちには、神様の加護がついている!

キョン「喜緑さん!喜緑さん!いますか?いますよね!?」

キョン「俺です、キョンです。お話があってきました!」

不審者よろしく彼女の部屋の呼び鈴を鳴らす。

いつぞやの管理のおじさんが不振な顔で俺を見るが知ったこっちゃねーや。

喜緑「ちょ、キョン君落ち着いてください。今出ます、今出ますから」

あわてた彼女の声が聞こえ、俺は彼女の部屋へと押しかけることになった。

喜緑「びっくりしました。いきなりたずねてくるなんて」

そう言って彼女は俺にアイスティーを出した。

キョン「ありがとうございます。走ってきたから喉渇いちゃって」

いつぞやの焼き直しのようにも感じたが変な味はしなかった。多分。

キョン「喜緑さんにお願いがありまs」

喜緑「お断りします」

キョン「えーとまだ何も言っていないのですが・・・」

喜緑「言わなくてもわかります。あの娘のことでしょう」

喜緑は困った顔して続ける。

喜緑「いつか来ると思っていました。予想よりも遅かったですが」

俺には何も言うことはできない。

喜緑「あの娘は自分の気持ちを伝え、その返答もらい、満足しながら消えていきました」

喜緑「私達インターフェイスに死という概念はありませんが、有希は」

恋に殉じたのでしょう・・・と彼女は目を伏せつつ言った。

喜緑「それに知られている片思いというのは残酷なものです。貴方にも、有希にも」

喜緑「統合思念体は有希に関する記憶を貴方に残したそうですが私は反対でした」

喜緑「統合思念体に逆らうことになってしまいますが、ここで貴方の記憶を消させていただきます」

そう言って彼女は俺の頭へと手を伸ばす。

キョン「ちょ・・・冗談・・・じゃねぇ!!」

急いで身を翻そうとする・・・が。

喜緑「ああ。アイスティーに弱い効果ですが筋弛緩作用のある薬を入れておきました」

俺のバカァアアアアアアアアアアア!!

喜緑さんが俺の頭に触れる。

喜緑「完全に消すには時間がかかるので暴れないでくださいね」

「フンモッフゥ!!」
彼女の指が俺の頭に触れた瞬間、窓から謎の掛け声と共に何かが投げ込まれた。

喜緑「これは・・・煙幕!?」

喜緑が演算により煙を排した後に、キョンの姿はなかった。

喜緑「逃がしてしまいましたね・・・でもまぁ・・・」
わずかだが接触はできた。今日の日没までには彼の記憶から有希は取り除かれるだろう。

-ヘリコプター内-
古泉「いやぁ宇宙人は強敵でしたね」

キョン「古泉、なんで・・・」

古泉「はは、まぁお姫様から愛しの王子様を助けてくれないかと頼まれましてね」

むぅ、相変わらずキザったらしい言い回しだが助けてもらったのは事実だ。

キョン「ありがとな、古泉」

古泉「い、いえ。別に涼宮さんに頼まれたからなだけですし/// ///」

キョン「えっなんでそこで赤くなるんだ・・・・」

学校の校庭でヘリコプターから降ろしてもらう。
古泉達はこの後、喜緑さんが再び俺に接触しないように見張るらしい。

キョン「しかしこれからどうすりゃいいのかね」

頼みの綱の喜緑さんがああでは俺にはどうすることもできない。
いっそ周防にコンタクトを、いや、やめておこう。
このままでは彼女を取り返すことは・・・
ん?彼女・・・彼女・・・って誰だっけ?

一瞬、ガツンっと頭を殴られたような衝撃が走る。実際に何かがぶつかったわけではない。
しかしその痛みは

キョン「アグァウウウウウウウウウウ痛ッテァアアァアアアアアアアア」

まるで頭を内部から破壊するかのように暴れまわる。

彼女の、彼女の思い出が消えていく。
春の出会い、夏のループ、秋の騒動、冬の遭難、そしてあの日の告はk
ブチン
と何かが切れる音がした。

「なぁアンタ大丈夫かい?」

キョン「え?え?あ、はい大丈夫です」

「ああ、そいつは良かった。真っ青な顔してたからね。まぁ何にもないならいいんだ。じゃあな」

んん、なんだか意識が飛んでたみたいだ。最近、多い気がするなぁ。
1回病院にでもいっとくかね。というか何で学校にいるんだっけ?
まぁ・・・いいか。

せっかく学校に来ていたので文芸部室というかSOS団の部室に入る。
相変わらず、雑多なところだよなぁ。
棚にはハルヒの私物やら俺と古泉がやるボードゲーム、朝比奈さんのお茶の葉が並べれらている。

キョン「あれ?なんでここだけスペースが空いてるんだ?」

ポッカリと、今まで収まっていたようなものがなくなったかのような。
まぁそのうち、誰かしらの荷物で埋まるだろう。

本棚に目を移す
いろんな本が分野ごと、背の丈順に並んでいる。

キョン「んーさすが元文芸部。本にはことかかないな・・・と?」
1冊だけ逆さまに本棚へ押し込まれた真新しい本がある。

こんなのあったっけ?タイトルは、

キョン「けりたい背中・・・か」

たしか芥川賞とったんだよなぁと本を眺めていると、その裏表紙には
「中央図書館」
と印字されていた。しかも返却日は今日までときた。
見てしまったものは仕方ない。SOS団に難癖つけられるのも嫌だし、返しに行くとしよう。

図書館への道を歩く。ったく、いったい誰が借りたんだか。
まさかまた図書館に行くことになるとはなぁ。

キョン「あれ?なんで俺、図書館にいったんだっけ」

一人で俺が行くわけはないから誰かと行ったんだよな。
我らが団長、涼宮ハルヒは図書館で静かにできるタイプじゃないから除外。
俺のマイスウィートエンジェル朝比奈さんと行くなら可愛い小物屋にいくだろうし。
古泉?あいつにはサウナだったり、屋上で焼きましょうよ~とか誘われるけど断ってるし。

あれ?



あれ?

俺は歩を進める

-彼女は俺の隣を歩いて-

俺は走り出す

-顔を紅潮させ-

顔の汗と涙も拭わず

-俺の制服をキュッと掴んでいた-

思い出の場所へとたどり着いた。

ああ、そうだ。彼女と過ごしたあの時間は・・・
とてもかけがえのないものだったじゃないか。

喜緑「あーあ思い出しちゃったんですね」

図書館の前には喜緑さんが待ち構えていた。

喜緑「せっかくつらい思いをしないように記憶をけしてあげたっていうのに」

喜緑「でもここまで思われるあの子が少しうらやましいです」

キョン「喜緑さん、お願いです。長門に・・・有希に会わせてください」

喜緑「改めて聞きますけど、会ってどうするんですか?」

喜緑「貴方は涼宮さんを選んだ。有希を選ばなかった」

喜緑「それとも有希にのりかえるんですか?ハーレムルートはありえませんよ?」

キョン「ええ、これは俺のワガママです」

キョン「また一緒に図書館に行きたい!」

キョン「あいつにもっと俺達の世界を知ってもらいたい!!」

キョン「あいつともっと一緒にいたいんです!!!」

キョン「有希!俺達のところに戻ってきてくれ!!!!!」

喜緑「あは。自分勝手ですね。選ばなかった癖にもっと一緒にいたいとか」

喜緑「でもギリギリ及第点かな」

喜緑「では、あとは当人同士のお話ということで」

そういって喜緑さんは去っていった。

一陣の風が吹く。コツンと小さな靴音が背後に響いた。

キョン「有希・・・」

振り返ると彼女がいた。

キョン「ひさしぶりだな」

彼女はしばらく逡巡した後、

長門「ひさしぶり」

とつぶやいた。

言葉が胸につかえる。
伝えたい言葉がいっぱいあった。

キョン「あのさ、何ていえばいいかな。ははは。」

情けなくて涙が出る。さっきはあんなに喜緑さんに啖呵を切ったのにな。

俺の目を見つめながら有希は話す。

長門「私は・・・貴方の傍にいても構わないの?」

なんだ。かける言葉は最初から一つで良かったんだ。

キョン「おかえり、有希」

長門「ただいま、キョン」

後日談の後日談
こうして本当の日常がもどってきたわけだ。
有希がいなかった間の記憶は補正されたようで俺達は相変わらずの日々を送っている。

キョン「そーだハルヒ、お前、部室に図書館の本、おきっぱだったぞ。かわりに返しといたからな」

ハルヒ「あ、そうだった。ごめん、ごめん。」

キョン「しかし、お前が図書館で本借りるとか珍しいこともあるもんだな」

ハルヒ「いやーなんか題名に共感しちゃってね。」

キョン「ほっとけ!」

ハルヒ「それにさ、なーんか借りるべきだと思ったのよねぇって何神妙な顔つきしてんのよ?」

キョン「いや、やっぱお前はいい女だとおもってなぁ」

ハルヒ「な、な、な、馬鹿キョン、さっさと行っちゃえ!」本ポイー

キョン「へいへい」

教室から出て階段を降りていると朝比奈さんと出会った。

朝比奈「あ、キョン君。こんにちは~」

キョン「こんにちは、朝比奈さん」

うーん相変わらず可愛いなこの人は。

朝比奈「文化棟改築ってびっくりですよね~」

キョン「あはは、そうですね。前、ハルヒが
『この棟、古いのよね~。改築しないのかしら』
とか言ってたのでその影響かもしれません」

朝比奈「しばらく部活はお休みですねぇ」

キョン「まぁ1週間程度で集中してやるそうですし、すぐにできますよ」
なによりそれ以上かかったら外で部活を開始しそうである。

朝比奈「あ、私はこれから鶴屋さんとチーズ展に行くので失礼しますね」

キョン「はい、朝比奈さん、また明日」

朝比奈「ばいばい~」

玄関で靴を履き替えていると古泉にエンカウントした。

古泉「おやおやこれは手厳しい表現ですね」

キョン「いやいや、お前から何かしらの意思を感じるからな。適切だよ」

古泉「こまったものです」

しかしながら、なんだかんだでこいつに世話になってるのも事実なのである。

キョン「なぁ古泉、今度さ、どっか遊びいこーぜ。男だけでさ」

飯くらいおごっても罰は当たるまい。

古泉「・・・」プルプル

キョン「古泉?」

古泉「はい。喜んで!!」

古泉と別れ、校門で彼女と落ち合う。

キョン「おまたせ。さ、行こうぜ」

長門「うん」

俺達は図書館へと向かう。いつもどうりの道、いつもどうりの他愛のない会話。
でもこれでいいのだ。この一つ一つが大切な思い出となるのだから。

おしり

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