魔剣「我の力で何を成す」
勇者「世界に平穏を」
魔剣「フン」
勇者「・・・」
魔剣「我を制御できるものならな、握ってみろ、幻惑を勝負させてやろう」
勇者「分かった、勝負だな」
魔剣「・・・」
勇者「俺は、魔剣には負けん!なんつってな、ガハハ!」
魔剣「ガハハ!」
勇者「よし、握るぜ」
魔剣「フン」
勇者「・・・」ギュ
魔剣「・・・」
勇者「・・・なんも起こらんぞ」
魔剣「だろうな、我はゴブリンも斬れんただの喋るなまくら刀だ」
勇者「・・・俺は伝説の魔剣だと聞いたんだがな」
魔剣「昔の話だ、我は斬った命を次に斬る力に換える、放置されれば次第に力を失う」
勇者「今はまったくのナマクラってことか」
魔剣「分かったら失せろ、いずれにせよこのまま朽ちるつもりだった」
勇者「そうか」
魔剣「ああ、そうだ・・・さっきのジョークはなかなか良かったぞ、ククッ」
みたいな厨二妄想は楽しいけど黒歴史
――半年後
女騎士「騎士団の誇りを見せろ!」
騎士団「オオオオオオオオオオ!」
オーク達「グアアアアアアア!」
女騎士「ここで敗れれば、王国は魔王の手に落ちる、刺し違えても殲滅しろ!」
騎士団「ワァァァァ!」
―――
――
―
騎士「団長!魔物の勢いが止まりません!団長だけでも逃げてください!」
女騎士「馬鹿者!ここから引けば王都は目と鼻の先だぞ!」
騎士「しかし――」
オーク「グアァァァァ!」
女騎士「しまっ――」
「チッ」
女騎士(ここまでか・・・!国王陛下・・・!)
ザシュ
女騎士「・・・ッ!」
女騎士「・・・」
女騎士「あ、あれ・・・?」
???「ふぅ、つい手が出ちまった」
剣『なかなか上質な命だ』
女騎士「な・・・なんだお前は・・・それにその剣・・・」
男「・・・俺は旅の者だ、この剣は・・・ま、ちっと理由があって喋る」
剣『フン』
女騎士「な・・・なん・・・」パクパク
男「それより、兵を引かせたほうがいいぞ、この峠じゃ騎士様は働きにくいだろう」
女騎士「・・・」
男「王都前の荒野で戦ったほうがいい」
恥ずかしくなってきた
峠出口
女騎士「急げお前達!けが人は王都で治療を受けろ、動けるものは王都前で陣を組め!」
騎士団「了解」
女騎士「・・・」
女騎士(王都の精鋭騎士団を半分失ったか・・・守れきれたとしても失脚は免れんな)
男「流石白光の騎士団長様直下の騎士団だ、引き際も要領がいいな」
女騎士「・・・」
男「俺が殿を務める、あんたもさっさと下がったほうがいいぞ」
女騎士「・・・助けてもらったことには感謝する、だが誰とも知らん男に殿を任せるわけには・・・」
男「いいから任せろ」
女騎士「・・・後で話を聞かせてもらうぞ」
男「ああ」
―――パカパカパカッ
男「行ったか・・・さてと・・・」
男「――かかってこいよ、雑魚共」チキッ
荒野
女騎士「急げ!休憩は王都前についてからにしろ!」
騎士団「・・・」ザッザッ
女騎士(無傷の者はおらんか・・・しかし――)
女騎士「・・・本当に、魔物の進撃が止まっている・・・」
―――峠出口
男「ふぅ、これで何匹だ?」
剣『知らんな、力の総量を視るからに1割といたっところか』
男「全く、酷い軍勢だねぇ」
オークの群「グウウ・・・」
ガーゴイルの群「キィ・・・」
ゴブリンの群「・・・」
男「ご馳走か」
剣『ああ』
――王都前 夜
女騎士「どうだ?」
斥候「魔物の動き、ありません」
女騎士「・・・」
女騎士(まさかあの男一人で・・・いや、そんな莫迦な)
女騎士「分かった、引き続き広くかがり火を焚いて警戒を怠るな」
斥候「ハッ」
タッタッタッ
女騎士「・・・旅人よ、もし死んでいたら、丁重に葬ってやる」
女騎士「・・・」
野営キャンプ
スクール『校長』「白光の騎士殿」
女騎士「やめてください、敗戦続きの私には過ぎた二つ名です」
校長「そうですか」
女騎士「まず初めてに謝らなくてはなりません」
校長「うん?」
女騎士「魔導師スクールの学生達までも動員していただくことになったことを」
校長「いいえ、かまいませんよ、どの道、この戦敗れれば我々は皆殺しでしょう」
女騎士「力及ばず・・・」
校長「それより、これからの作戦を立てましょう」
女騎士「はい、王都より許可が出ました、これからは――」
翌朝 荒野
剣『籠城?』
男「ああ、ずいぶん削ったが、まだ圧倒的不利は変わらんからな」
剣『フン・・・悪あがきにも思えるが』
男「恐らくは、城壁を騎士団、それに魔術師で固めて、横合いから精鋭の騎馬隊で叩く、そういった流れになるだろうな」
剣『小賢しいな』
男「その小賢しさでここまで繁栄してきたんだ」
剣『・・・』
男「ん、魔物のほうに動きがあったな、そろそろか」
剣『貴様はどうする』
男「さぁ、『魔剣』の力で傷を治してくれればいけるぜ」
剣『力はやるが、治す術は知らん』
男「だろうな、お前は魔剣だもんな」
王都
騎士団「弓隊!撃て!」
ヒュヒュヒュ
ガーゴイル「ギャギャギャ!」
騎士団「クッ、ちょこまかと・・・」
「切り裂く風よ――」
ヒュオッ
ガーゴイル「ギャ?!」
グシャ
女魔法使い「やった!当たった!」ピョン
騎士団(ス、スクールの子供か・・・凄まじい威力だな・・・)
女魔法使い「あのう」
騎士団「なんだ」
女魔法使い「敵、登ってきてますけど・・・」
騎士団「なっ、お、おい!石と槍で応戦するぞ!」
荒野の外れ
女騎士(よし、とりあえずは持ちこたえてkるえているな・・・)
女騎士「すぅ・・・」
女騎士「魔物を群を2つに裂き、そのまま翻弄する!速さを重視しろ!捕まるなよ!」
騎馬隊「オォォォォ!」
女騎士「出撃!」
―――
――
男「始まったな」
剣『・・・』
男「どう見る?」
剣『あの群、疾いな』
男「白光の騎士の突撃ってやつだな、あの統率力と突破力、それだけで、若くして騎士団長にまで上り詰めたって話だ」
剣『・・・』
―――ゴォォォォ
騎馬隊「・・・」ザシュッザシュ
女騎士「てやぁ!」ブンッ
オーク「グァァァァ!?」ズシャ
女騎士(いける・・・峠での戦いが嘘のようだ・・・!)
女騎士「陣形を崩すなよ!このまま敵を食い散らかすぞ!」
騎馬隊「オオォォォォ!!」
―――魔物の群の奥
???「・・・」
???(不味いです・・・このままでは負けてしまいます・・・)
???(仕方ないです・・・友軍も犠牲になっちまいますが)
???「△□●○?」
ガーゴイル「ギィ」コクリ
r;ェ、
___ ∧,,,∧ コポコポ !! _(_'フ__
l__ o _ヽ (,,´・ω・)_。_ ∬ |l三三三||¬|
|: ・ :l _ _ lつc(__アミ _ |l三旦三|| |
|:_・_:l //\  ̄ ̄  ̄旦 \ 「 目 「:_]
 ̄ // ※ \__旦~__\  ̄ ̄ ̄  ̄
\\ ※ ※ ※ ※ ヽ
. \ヽニニニニニニニニニニフ
荒野の外れ
男「おーおー、すげーもんだ」
男「つーか、籠城しなくてもあの騎士様だけでいけたんじゃねえか・・・?」
剣『・・・おい』
男「ん、なんだ?」
剣『口と鼻を覆え』
男「・・・毒か」
剣「『峠の上、毒粉が撒かれた』
男「・・・まずいな」
荒野 中央
馬「ブルルルッ!?」
女騎士「どうっ!どうっ!」
女騎士「どうしたのだ!?」
騎馬隊「あああっ、馬が苦しんで・・・!」
女騎士「どうしたというのだ・・・この大事な時に・・・」
ゴブリン「グゥゥゥァ!?」
女騎士「・・・ゴブリンも・・・まさか」
女騎士「お前達!退却だ!退却しろ!」
騎馬隊「了解!・・・頼むぞ、帰ったらしっかり休ませてやるからな」ポンポン
馬「ブルル・・・」
峠の上
男「はぁ・・・はぁ・・・あー、怪我人に山登りはきちーな」
男(っと、いやがった・・・)
剣『・・・』
男「敵の力は?」
剣『少数、今のお前でも楽に勝てる・・・が』
男「なんだ?」
剣『別にでかいのがくるぞ』
男「・・・」
???「こんにちは」
男「・・・子供がいていい場所じゃねえぞ」
魔族「フフ、こう見えて300年は生きてるんですよ、ボーヤ」
男「・・・」
剣『強いぞ』
魔族「ありがとうございます――死んじまってもらえますか?」
魔族「昨日峠で大立ち回りした人がいるって聞いたんです」
男「・・・」
魔族「あっちの鎧の女の人かと思いましたけど――」
男「よく喋るな・・・!」シッ
魔族「ッ!」バッ
――ドゴォ!
男「チッ、外したか」
魔族「・・・なんて、馬鹿力」
男「そうだ、避けろよ、当たったら一発であの世行きだ」
剣『おい、我で岩を叩くな』
魔族「・・・・このっ!!」バサッ
荒野の外れ
女騎士「・・・馬はどうだ?」
騎馬隊「・・・ダメです、ここまではなんとか必死に走ってくれましたが」
女騎士「そうか・・・」
騎馬隊「・・・」
女騎士「仕方がない、馬はここに離す」
騎馬隊「し、しかしそんなことをすれば動けないこいつらは魔物に・・・」
女騎士「・・・騎馬隊にとって馬は命の次に大事だったな」
騎馬隊「ええ、ですから・・・!」
女騎士「序列を間違えるな、命を取れ」
騎馬隊「・・・」
女騎士(魔物の群が倒れ付している今こそが千載一遇のチャンスだ・・・城に戻り・・・動ける者を集めて・・・)
女騎士「クッ・・・」フラッ
魔族「ち・・・くしょう・・・」
男「・・・」
魔族「こんなところで・・・こんな餓鬼に・・・」
男「・・・おい、魔剣」
剣『なんだ』
男「こいつと『契約』できるのか?」
剣『これだけ弱っていれば、問題ない』
魔族「お、おい・・・なにをしてやがるんですか・・・」
男「貴様の核を貰う」
魔族「・・・よせ!?」
男「魔剣よ・・・従魔の力を示せ・・・」
剣『承知した』
魔族「アァァァァァアアアアア!?」
――キィン
――少し後 王都側峠入り口
女騎士「はぁ・・・はぁ・・・すぅ」
女騎士「こいつらは、心臓を突いてもしばらくは死なない!首を跳ねていけ!」
騎士団「はい!」ザシュッ
オーク「グゥ・・・アァ!」
女魔法使い「魔を討ち祓う業火――」
ゴォォッ!
ゴブリン「グァァァァ!」バタッバタ
ゴブリン「アァァァ・・・ァ・・・」プスプス
女騎士「良し・・・これで・・・ほぼ滅したか・・・」
峠の上
男「ほー、手際いいな」
剣『落ちるぞ』
魔族「・・・落ちちまってください」ボソッ
男「おいおい、何ぶーたれてんだよ」
魔族「・・・はぁ」
男「せっかく可愛い顔で造られてんのにもったいないぜ、ガハハ」
魔族「・・・チッ、核をとられてなかったら・・・この場でぶっころしてやります」
男「だってよ」
剣『我は知らん』
男「つれねぇパーティだねぇ」
「おい!」
男「げ、この声は・・・」
女騎士「おい!貴様!そこの上にいるお前だ!」
王都 騎士団本部 来賓室
女騎士「祝賀パーティ?そうか、ああ、分かった、ああ、今夜だな」
従者「はい、団長様に是非参加をと」
男「良かったな、お前が魔物だってバレてないぞ」ヒソヒソ
魔族「当然です、羽と尻尾を隠せばバレるわけがないでしょ」ヒソヒソ
剣『その布面積の少ない格好は恐ろしく目立つが』
魔族「うるさいです、無機物の分際で」ヒソヒソ
従者「団長様、ところであの方たちは・・・?」
女騎士「今回の戦の功労者と・・・その連れだ」
従者「余計な詮索をいたしました、失礼いたします」
女騎士「ああ」
――バタン
女騎士「すまない、お待たせした」ペコリ
男「悪いな、こんな埃っぽい格好で」
魔族「・・・」ジト目
女騎士「フッ、それはお互い様だ」
男「・・・」
女騎士「まず、礼を言いたい、お前がいなければこの戦負けていたかもしれん」
男「大袈裟だな、あんたの騎馬術があれば勝てたんじゃないか」
女騎士「いや・・・まぁ、とにかく礼を言わせてくれ、ありがとう」ペコ
男「・・・」
女騎士「あと、今夜の祝賀パーティ、貴殿にも出てもらいたい」
男「へっ?」
女騎士「我が国にとって素晴らしい働きをしてくれたのだ、国王陛下から褒美をいただけると思う」
男「い、いや俺は・・・」
魔族「ちょっと、どうしやがるつもりなんですか?」ヒソヒソ
騎士団 大浴場 脱衣所
剣『押しに弱い男だな』
魔族「全くです、褒美だけ寄越せって言いやがれば良かったのに・・・」
男「・・・」
――パーティには言って貰う、その髭は鬱陶しいから剃ってきてくれ
――いや、俺は・・・
――服はこちらで用意しよう、鎧は繕わせる
――おい、話を・・・
――メイド!この方たちを大浴場に案内してやってくれ
男「髭は・・・マズいんだよな」
魔族「ん?なんか言いやがりました?」バサッバサ
男「いいや、なんでも・・・っていうかお前女かよ!なんで普通に脱いでんだ!」
魔族「チッうるせーですね、どっちでもなれますよ・・・なんですかその目は、あぁ、男のほうが良いなら・・・」
男「おい、誤解を招くような事を言うな」
大浴場
ザバァ
魔族「はぁ・・・ちょっとぬるいですけど、なかなかいいお湯ですね」プシュー
男「おぉ・・・いいな・・・」
魔族「・・・刃物を水につけていいんですか?」
剣『問題ない』ブクブク
男「最初に見つけた時も、湖の真ん中の石にぶっささって、水浸しだったもんな」
剣『・・・』
魔族「ふぅん、変な魔剣」
男「ふぅ・・・旅の疲れが抜けていくな」
魔族「・・・そのまま魂消ちまってください」
――ガラッ
メイド「失礼致します、お背中を流しに参りました」
男「おー、気が利くな、流石王都」
魔族「・・・」
――カポーン
メイド「お湯をおかけしますね」
男「ああ」
ザバァ
メイド「次はおヒゲをあたらせていただきます」
男「あ、いや・・・髭は・・・」
魔族「剃ってもらったほうがいいですよ、そのままじゃ浮浪者ですから、ぷっ」
メイド「騎士団長様のご命令です」
男「まいったな・・・せめて、口ひげだけでも残してもらうか・・・」
メイド「畏まりました」
脱衣所
メイド「体をお拭きいたしますね」
ゴシゴシ
男(至れり尽くせりだな・・・)
メイド「お召し物はこちらに・・・」
男「ああ、着替えくらいは自分でする」
メイド「ですが・・・」
男「いかがわしい店じゃねーんだ、自分でさせてくれ」
メイド「・・・畏まりました」
魔族「へぇ、髭をそったら意外と・・・」
男「ん?」
魔族「いいえ、なんでもねーです、それよりはやくその汚いのしまっちまってください」
男「・・・」
パーティ会場
女騎士「よく似合っているぞ」
男「そうか」
女騎士「欲を言えばその髭は全部剃ってもらいたかった」
女騎士(歳は四十絡みといったところか・・・大柄で、なるほど戦う体をしている)
男「髭がトレードマークでな」
女騎士「なに莫迦な・・・ところで貴殿の顔、どこかで見たことがあるような・・・」
男「き、気のせいだ」
女騎士「確か・・・幼い頃・・・」
男「め、飯でもいただいてくるか、えっとあいつは・・・」
剣『向かって左奥』
男「ん・・・」
魔族「う、うま・・・うまうま!うめーです!」ガツガツ
男「なんか寄りたくねーな・・・」
剣『・・・』
男「おお、うめぇ、この七面鳥スパイシーだ・・・がぶ」ガツガツ
魔族「ほんほれふか?ちょっとこっひに!」ガツガツ
男「お、おい!お前口の中のもん飲み込んでからにしろ!」
魔族「んん・・・んんんん!?」
男「そら詰まらせた、欠食児童かよ・・・ほら、葡萄酒で流しこめ」
魔族「んん!・・・んぐっ・・・んぐっ・・・ぷは」
男「ったく、ちっと寄越せ、んぐ・・・んぐ・・・ぷは・・・ああ、さすが王都」
魔族「いや、王都は関係ねーでしょう」
剣『・・・』
上座のほう
大臣「騎士団長、よくやってくれたな」
女騎士「身に余るお言葉です」
大臣「しかし、被害も甚大だった、査問会が開かれるかもしれん」
女騎士「覚悟の上です」
スクール『校長』「おや、勝利の立役者にそんなことを言ってはいけませんな」
大臣「校長殿か」
女騎士「この度は誠に・・・」
校長「いやいや・・さて、今回の戦、騎士団長殿の働きあってこその勝利でしょう」
大臣「ふーむ、しかし規律が・・・」
女騎士「校長殿・・・私は別に・・・」
校長「まぁまぁ、ここは素直に勝利を喜び――」
男「もめてんな」
魔族「人間のやることはまどろっこしーですね」
男「魔物の間じゃどうなんだ?」
魔族「そうですね、まぁ戦に勝てば御褒美、負けたら・・・」
男「・・・」
魔族「・・・」ブルッ
男「ククッ、もう戻れないな」
魔族「はぁ、どっちにしろ魔核を捕られた時点で戻れやしねーです」
男「あー、そうだな」
魔族「何他人ごとみたいな口ぶりしやがってるんですか・・・」
男「お、式典が始まるらしいぞ」
魔族「・・・はぁ、せめてご飯でも食べないとやってらんねーですよ」モグモグ
国王「――よって勲章を送り――」
女騎士「・・・」
剣『人間のすることはいつも変わらんな』
男「褒めて伸ばす、いいことじゃないの」
魔族「ぷっ、なんかおっさんくさ」
男「・・・」
パチパチパチ
男(なーんかこの瞬間って白けるんだよな)
大臣「次に、此度の戦の功労者に――」
女騎士「大臣殿」
大臣「ん?式典の途中だ後にできんか?」
女騎士「今回、もっとも大きな働きをしてくれた男がおります」
大臣「ほぉ、一体――」
男「・・・」
大臣「なるほど、それだけの働きをしたか」
女騎士「はい」
男(チッ、目立つと顔が・・・)
大臣「国王陛下」
国王「うむ、そうだな、褒美をとらせよう」
大臣「承知いたしました――おい、お前名前は」
男「・・・男」
大臣「ネーミングセンスを疑う・・・っとゴホン!ええ、褒美を取らせる、何が良いか?」
男「金がいい」
大臣(所詮は下賎な傭兵崩れか)
大臣「分かった――おい」
従者「はい、用意してございます」
男「ああ、肩凝った」
魔族「見せて見せて」
男「あぁ、いいけどくすねるなよ」
魔族「ふふ、どうでしょうねぇ」
男「はぁ」
――次に騎馬隊の――
男(はぁ、貰うもんもらったし、抜け出すか・・・)
魔族「おおっ・・・すげーです、この袋いっぱい金貨が・・・」
男「お前くらい強かったらこのくらい――」
「少し、宜しいですかな?」
男「ん?」
魔族「・・・」ジロ
校長「はは、どこの席も一杯でして」
男「・・・」
男「・・・」
魔族「・・・」チラ チラ
剣『・・・』
校長「此度の戦では七面六臂の大活躍をなさったとか」
男「大袈裟だ、話ってのは尾びれと背びれが付くもんだからな」
校長「はは、そうですかな」
男「ああ、飲むか?」
校長「おや、これはどうも」
トクトクトク
男「・・・」
校長「うん、良い香りですな」
男「悪いが、そろそろお暇するつもりなんだ」
校長「まぁ待ちなされ――」
――勇者殿
騎士団 来賓室
校長「ああ、うん、構わないよ、彼等と3人だけで話しがしたいんだ、うん、すまないね」
メイド「畏まりました」
バタン
校長「はぁ、どうも老骨にはああいった華々しい場は合いませんで」
男「・・・」
校長「しかし驚きましたな、お強い方がいると聞いてそちら見れば、あの日消えた勇者殿がいらしたのですから」
男「・・・俺を責めるためにここに連れてきたのか」
校長「いえいえ、滅相もない、ただね、魔剣と従魔を連れた勇者殿に興味があっただけでして」
男「迷惑だ」
校長「ふむ・・・つれませんな」
※名前を 男 → 勇者 剣 → 魔剣 に変更
校長「あれからもう20年になりますか・・・この城から英雄――勇者が旅立ってから」
勇者「・・・」
魔族(このおっさんが勇者ですか・・・?)
校長「次々と村を開放していくその姿に誰もが希望を見出したものです」
勇者「・・・ただ、斬っていただけだ、邪魔になるもの全て」
校長「圧倒的強さ、そのせいか、誰も貴方と旅をできなかった」
勇者「・・・」
校長「2年3年と経つうちに、段々とそのペースが落ち、遅遅として魔王を討つことのできない勇者殿に民の不満は溜まっていった」
勇者「・・・壁にあたった、所詮1人、点は崩せても、面は崩せなくなっていた」
校長「そして突如、希望の勇者は姿を消した」
勇者「・・・」
城下町 宿屋
――また名乗り出ていただければ、勇者として再出発、その手助けをさせていただきますよ
勇者「チッ・・・何が再出発だ・・・」
魔族「くぅ・・・くぅ・・・」
勇者「俺がいなくなって、いくつの村が攻め滅ぼされたか・・・」
魔剣『・・・』
勇者「・・・もう、遅いだろ」
魔剣『寝たらどうだ』
勇者「ん?心配してくれるのか?」
魔剣『我が主、それが体調を崩していては精彩を欠く』
勇者「・・・そうだな、寝るか、金もあるしな、休みたいだけ休める」
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