雪歩がまた泣いた。
「よかった、よかったね。美希……」
真が雪歩の肩を抱く。
「…っ…申し訳ありません。わたくし、厠へ行ってまいります」
貴音がおもむろに立ち上がり、黒服に伝えた後に、部屋から出ていった。
トイレは部屋にあるわよ。
なによこの茶番。結局ミキの勘違いが全てで、961に騙されて、アメリカまで行った揚句
死ぬ思いして、このあっけないオチ?
──ふざけるんじゃ……
「ふざけるんじゃないわよッッ!!!」
いつもの私だったらあー仕方ないわねー全くもーくらいで許したかも知れない。
だけど、こんなギャグにすらならない笑い話で、今こんな状況に立たされていることに我慢が出来なかった。
納得できないわ……できるわけないッ!
美希が小さく縮こまって、不安そうな声を漏らす。
「お、お凸ちゃん……?」
「アンタのせいで私たちは死にかけたのよッ!」
「えっ、どういう、こと……?」
みんながしまったという顔を浮かべる。
「待って、伊織!美希はもう何も覚えて無いんさー!」
「だから余計腹が立つのよ!」
美希が、あんたたちが何も知らないから……!
ずっと抑え込んでた感情が爆発して、もうどうしようもなかった。
「ま、待って、ミキね。お凸ちゃんがどうして怒ってるかわからないの……」
「ッ……!!」
「きゃあ!」
手に持ってたうさちゃんを思い切り美希に投げつける。
それでも足りずに、近くにあったものを拾って、手当たり次第美希にぶつけた。
「や、やめなさい!伊織!」
「なによ!律子まで美希の味方しちゃって!」
律子に背中からはがいじめにされても、暴れて抵抗する。
気付くと、美希が頭を抱えて蹲っていた。
「うぅ……」
「あ……」
真っ白な絨毯に赤い血が数滴落ちた。
近くには、木製の目覚まし時計が転がっていた。
「大丈夫かい、美希」
「う、うん……」
真が大急ぎで洗面所からタオルを持ってきて、あてがう。
そして、私の方をキッと睨んだ。
「何するんだよ、伊織!美希に謝れ!」
「そうだぞ!いくらなんでもこれはやりすぎさー!」
「……!」
──1週間後、俺の前で非礼を詫びてみろ
お兄様の言葉が重なった。
な、なによ。なんなのよ……。
やっぱり私が、全部悪いっていうの……
「……うっ」
泣きそうになるのを、歯を食いしばって堪えた。
絶対に、泣くもんですか。
「一体何なんだよ、伊織!ボクたちを困らせて!」
「……!」
一人で抱え込むには限界だった。
全部、言って楽になりたかった。
──もう日本には無事に帰れない。
そう言えば、きっとみんなは最初はビックリするでしょうけど、最後には「仕方ない」って言ってくれる。
私たちはよくがんばった。後は春香と千早に夢を託そうって。
そのくらい私たちは強くなったわ。
だけど、そんなの耐えられるわけ無いじゃないッ……!
その日の夜は、なんだかみんな気まずくて、特に会話も無く寝た。
深夜にどうしようも無く眠れなくて、起きると、美希と貴音のベッドだけもぬけの殻だった。
お兄様が来るまで、残り4日。
この日は、朝起きるとお腹に抉れるような痛みが走った。
「うぅ……!」
低いうめき声を漏らして、丸まってお腹を押さえる。
ライブの前でもたまにやった。
多分、ストレス性の急性胃炎ってトコね……。
大したことは無いでしょうけど、それにしても、この痛み。堪んないわ……。
暫くベッドで悶えていると、貴音がノックもせずに入ってきた。
「何やら昨日、騒ぎがあったようですが……」
そう言いかけて、血相を変えて飛び込んでくる。
「伊織、如何したのです?!」
「何でも、無いわよ……」
「早く、病院へと行きましょう」
病院……水瀬財閥の……。
「イ、イヤよ」
「なっ何故です」
冷や汗が止まらなかった。目を強く瞑る。
貴音の背中をさする手の感触と刺すような痛みが混ざり合う。
「寝れば治るわ」
「……やはり、何かあったのですね。水瀬財閥側と」
「……」
その勘の鋭さ。たまに厄介よね。
貴音の、普段より低めの声が暗闇に響いた。
「わたくし達には、話していただけないのでしょうか?」
「……だから、何でも無いって言ってる、じゃないの」
あんたたちに関わる事だから、言えないのよ。
「……数奇なものですね」
「えっ……」
「いえ、何でもありません」
そう言って、貴音はお見舞いの言葉をいくつか言って、部屋から出て行った。
またドアがゆっくり開く音がして、目を向けると、薬と水が床に置いてあった。
ホテルに備え付けのバスローブを、乱さず着こなす貴音の横に並ぶ。
「まだ、白状してくれる気は無いのですか?」
「……」
いきなりの直球な質問に、顔を背ける。
……順序ってもんがあんでしょうが。
こうして、待っててもどうしようもない事はわかってる。
ふと、
貴音の目が、一瞬だけ真剣味を帯びて、それから一度強く瞑って、微かに微笑んだ。
「わかりました」
「……」
「名を名乗るなら、まず自分から、ですね」
「は?」
「わたくしの秘密をお教えしましょう」
秘密って大体事情は全部、貴音から聞いたけど……
まだなんかあるっていうの?
「『密会』についてです」
「……なっ!」
貴音は、961の嫌がらせのことも、会社のことも、961に入ってからのことも全部話した。
だけど、水瀬が調査した時に聞いた噂。『密会』だけは誰にも決して話さなかった。
「ですがその前に……」
チラリと黒服を横目で一瞥する。
私の耳元へ、口先を持っていく。
「あの者たちを、どうにかしていただけませんか」
「……」
私は、英語で黒服に視線を外してくれと頼んだ。
軽くボディチェックをされて、テラスなら逃げ場が無いと判断したのか、背を向けた。
「いずれ、皆にも明かさねばならないことでした」
「な、何だっていうのよ……」
そうして貴音は、私に背を向けた。
「……」
バスローブの帯を解いて、そして……
肩からはだけさせた。貴音の白く、きめ細かい背中が露出していく。
「ひっ……!」
「そう、961プロデューサーが言う通り、わたくしは元より使い捨てだったのです」
思わず、悲鳴が漏れて、口元を手でおさえてしまった。
貴音の背中には、いくつもの赤い火傷の跡や、ムチで叩かれた痕跡が生々しく残っていた。
「今まで、ずっと隠してきたことです」
……そういえば、これまで貴音は決して一緒にお風呂に入ったり、背中の空いた服を着てることが無かった。
「な、何よこれ……」
背を向けた貴音の声が段々と震えてくる。
「わたくしと近しい富豪殿は言っておられました。「お前みたいなヤツは単純に汚すよりも、こちらの方が興が注がれると」」
「ひ、ひどい……」
「わたくしの苦痛に歪む顔を見て、大層、喜んでおられました」
……。
「わたくしの961でのきゃらくたーでは、水着など露出のある仕事などは不要でした。ですがいずれ暴かれることでしたでしょう」
じゃあ、貴音は知ってたってこと?
961でトップアイドルに、仮になれたとしてもその先は無いって。
それで、765プロに戻ったとしても……もうアイドルとしては……。
「あんた……ほんと自分勝手よ……!」
もう春香と千早が待つ日本に帰るにはここで稼ぐしかないな。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm15177395
http://www.nicovideo.jp/watch/sm9667481
「わたくしは、構いませんでした。目指した先にたとえなにもなくても」
貴音はまた空を見上げた。
「あなた様の夢が、一瞬でも叶えられれば」
貴音は、バスローブを着直して、帯をキツくしめる。
振り返ると、またいつもの微笑を浮かべていた。
私は逆に、俯いてただ唇をかみしめていた。
すぐ隣の貴音、届くか届かないかの声で言った。
「何で、あの時言わなかったのよ……」
「……」
「千早の時に一緒に治してもらえば良かったでしょ!水瀬の医療技術なら出来る!」
「……」
貴音は髪をかきあげて、言った。
「それは、わたくしはわたくしだからです」
「えっ……」
相変わらず、もったいぶった言い方だった。
「ですから伊織は、伊織のままでよろしいのですよ」
私は私のまま、ね……。
「あ、あんたに言われなくてもわかってるわよ」
「……ふふっ、そうですか」
でも、一応礼を言っておくわ。ありがと、貴音。
私が絶対、なんとかしてあげるから。
貴音ェ…
しかしドSな貴音さんも良いが、ドMな貴音さんも…。
お前らちょっと貴音が汚いおっさんに鞭で叩かれるの想像してみろよ
>>117
すごく興奮します。
とはいっても……
「どーすればいいのよ……」
長く長く続く廊下をひたすら歩く。黒服がピッタリと背後から5メートルを尾行してくる。
「いちいちついてくるじゃないわよ!ゲラウトッ!」
しっしっと手を払っても、相変わらず無表情で尾行してくる。
う~ん……
また真に黒服をのしてもらって脱走……しても後が無いわね。
いっそ人質に……余計アイドル復帰が遠のくわ
この事件をバラすと脅す……ダメね、いざとなったら向こうも何をしてくるかわかったもんじゃない
こっちでお金を稼ぐ……現実的じゃないしパスポートが取得できない、か。
「あ~!も~!」
頭をかきむしっていると、部屋の前についた。
もう、今日は遅いし寝ましょう。
ドアを開けると、一つの部屋に灯りが灯っていた。
……まだ誰か起きてるのね。あずさのベッドを確認すると、シーツに被さってアホ毛が揺れていた。
となると、美希ね。毎夜毎夜、抜け出してるみたいだけど一体何してるのよ……。
そういえば、私、美希と今ギスギスしてるのよね。
……。
ここは、大人の対応ってヤツかしら。
部屋に近づいて、ゆっくりと開けると、美希が蹲っている。
肩を抱きかかえるようにして、小刻みに震えていた。
「う……うぁ……」
いつもの、怠けた声じゃない呻き声が聞こえた。
「ちょ、ちょっと……美希……」
「お、おデコちゃん、ミ、ミキ、なんかダメなの、よ、夜になると震えが止まらない」
私を見上げるように顔を向けると、ウサギか死人っていうくらいに顔が、青ざめて目が真っ赤に充血していた。
「な、何だろこれ……す、すっごく怖い気分なの……」
「……あんた、まさか!」
「ハ、ハニー……助けて……」
忘れてた……!
あれからすでに数日もたってる。多分今が一番キツい時……。
「手、手が痺れるの……」
美希の手が小刻みに震えている。
「へ、変な気分になるの……」
美希の息が、荒く、胸がそれに合わせて上下している。
……961のヤツ。これを狙って美希にわざわざ吸わせたのね。
「なんだかさ、寒いの……」
「ね、ねぇ。どうすれば治るのかな……?」
「……っ!」
見てられなかった。美希は、クスリの事を知らなかった。
アイツじゃなくても、一本だけ、吸わせてあげたい気分に駆られた。
アニマスやってんじゃんwww忘れてたwww
お前らもこんなSS見てないでアニメ見ろよ!馬鹿野郎!
というわけで、ちょっと休憩します
アニマスが面白すぎて……
もう今日はすぐ終わると思いますが再開します
「はぁ……はぁ……!」
美希の、茶髪がぐしゃぐしゃに掻きあげられた。
「あぁ!あぁ!」
壁に、何度も頭をぶつける。
美希の、額に貼ってある絆創膏が剥がれて、乾ききってない生傷が剥き出た。
「す、すっごくか、悲しい気分になるのに、おかしいよ。涙も出ないの……」
顔を両手で覆って、悶え出した。
「も、もう、心が、壊れそうだよおぉぉ!」
あんたも、ずっと黙ってた。握った手に力が入る。
「なによ……」
やっぱりムカつく、ムカつくわよ……!
仲間だったら、ちゃんと言えばいいじゃない……。
「ねぇ、おデコちゃん……どうすればいいのかな……」
美希が、震えた手で私の裾を掴んでくる。
「……」
「ふざけんじゃないわよ……」
「えっ……」
美希の肩を思いっきり掴む。思い切り揺らす。
「アンタ!私たちの、あのプロデューサーが選んだ相手なんでしょ!」
「お、お凸ちゃ……」
美希の冷や汗でべっとりと湿った顔に、驚きの色が浮かぶ。
「だったら、そんなのなんかに負けないで頑張んなさいよ!あんた天才なんでしょ!」
お兄様の顔が、ほんの一瞬だけ浮かんだ。
「765プロの後期はアンタの活躍だけで持った!」
美希の『Relations』のヒットで……。
「今度は、あんただけに背負わせないわよ」
「……」
「この水瀬伊織ちゃんがアンタに負けないくらいのスーパーアイドルになってやるんだから!」
それで、次の日、美希はまた元通りに「あふぅ」って言いながら、起きてきた。
私と、美希の様子が明らかに変わったのを見て皆が不思議そうな顔と、安心した顔を浮かべた。
そしてお兄様がやって来る前日になった。
朝、部屋にみんなを集める。
「急にどうしたんだよ」
真がハブラシを口に咥えながら、言った。
「帰国の日程がようやく決まったの?」
律子が、やれやれと言った具合に髪をヘアバンドで止めている。
「伊織ちゃん!めんす終わったのぉー?」
やよいが、飛び上がる。
あずさと貴音は、後ろの壁に凭れかかって、微笑みを浮かべていた。
「いやーやっぱり沖縄料理が一番さー!」
響が、パジャマのままキッチンへ向かった。
「んっふっふ→ののワさん人形買っちゃった」「お尻押すとヴぁい!って言うよ!」
亜美と真美が人形で遊んでいる。……よく取り上げられなかったわね。
「おデコちゃん……」
美希が、不安そうな顔で見つめている。
私は、悩んだ末に選んだ。決めた。
ひとつ深呼吸して、口を開く。
「……みんな、ちょっと話があるの」
今日はここまで!夕方以降再開します。
明日で終わります多分
なんか補完用のおまけなのに長くなってしまった
みんなでラスベガスに繰り出すんですね。わかります。
ス
一方その頃
怯える富豪と"自宅"警備員として雇われたおまえら
富豪「す、凄腕のスナイパー達が向かってきている!
おまえら、何があっても奴等からこの家を守れよ!!」
おまえら「リョーカイしゃーっしたー」ジャコッ
富豪「な、なんで銃を向けr
おまえらA「いやいや、仕事でござるよwwwwww」
おまえらB「何するか分かったもんじゃない奴等もいるみたいですしおすし」
おまえらC「家・・・・・・守んなくちゃいけないんで」
富豪「」
ターン
P:「ナオさんはうちのアイドルの菊地真に似ているなあ…」
ナオ:「えーよく言われますけど、そんなに似ているんですか?」
P:「似ているも何も、『真!?何でこんなピュアな所にいるんだ?』と思った…?」
玲香:「あんた…ウィー今、うちのこと『アイドルの如月千早に似てる』と抜かしたやろ…ヒック」
P:「えー言ってませんよ…」
玲香:「嘘つくなや!胸はパッドかなんかやろとか思うとるやろ…」
P:(駄目だ完全に酔っぱらってる…)
玲香:「揉んでみい!」
P:「!?」
玲香:「72かどうか揉んでみい!」
P:「ちょっと全然ピュアなじゃないし…」
まっこりん
>>222
はい
>>16
素直じゃないけど頭は悪くないし時に冷静でもある印象。
何があったかはわからんけど癇癪起こして人に怪我負わせるような子ではないかなー。
>>224
多分、美希の記憶喪失を直すためのフラグかと…
しかし美希は都合のいい記憶回路してんな…
もう帰国するにはラスベガス言って一発当てるしかないな…
http://www.nicovideo.jp/watch/sm9667481
http://www.nicovideo.jp/watch/sm15177395
伊織のたぷたぷおっぱい
伊織、はよ兄ちゃんに、ごめんなさいしろよ。
ただ……いま……遅れてすいません
保守してくれてありがとうございます
再開します
>>304
待ってたぜ!
……。
ついに運命の日がやってきた。
「後悔なんかしてないわ……」
一週間前と同じ、周りにあるのは机、カーテン、テレビ、ニュースペーパー、電気スタンドだけ。
BGMのない静かな病室で一人、お兄様を待つ。うさちゃんは置いてきたわ。
やがて、カツカツと規則的な足音がこっちに近づいてきた。
予定時刻ピッタリにドアが開かれる。
そして、無機質な声が響いた。
「伊織、一週間ぶりだな」
「お兄様……」
相変わらずの、ガラス玉みたいな目でこっちを見てくる。
昔は、いくらお金にしか興味が無いお兄様とはいってもここまでじゃなかったのに。
変わったのは、私とお兄様一体どっちなんでしょうね。
ドアをゆっくりと、閉める。
パタンと一つ小さな音が鳴って、それから物音ひとつ無くなった。
部屋には、私とお兄様ふたりきり。
「……」
お兄様は黙っている時が一番怖い。
思わず、ひるんで一歩後ろへ下がりそうになるのを、グッと足に力を入れて堪える。
負けてたまるもんですか……。
「さて、日本には勘当という法律は無いからな」
そう言って、手にもっていた書類を手の甲で数回叩く。
「せめて、後々面倒にならないように直筆の誓約書くらいはしたためてもらおうか」
真っすぐ、私の前へ書類を突き出してくる。
「……」
「どうした?」
負けないわ……。
「いいえ、その必要は無いわ、お兄様」
「そうか」
わかってたと言わんばかりの語気で、手を引き戻す。
「では、謝罪してくれるんだな」
腕時計を一度確認して、私の方へ顔を向ける。
「時間が無いんだ。早くしてくれ」
「……」
……これ言っちゃったら、後戻りはできないのよね。
喉がカラカラに乾いてる。あぁ、オレンジジュースが飲みたいわ……。
──伊織は、伊織のままでよろしいのですよ
貴音の言葉を思い出す。
私は、もう一度口を開いた。
「……その必要も無いわ」
「……」
お兄様の肩が、一瞬だけピクリと揺れた。
「どういうことだ?」
>>319
さすがアイドル界の安田一平
顔を上げて、お兄様を見つめる。
「お兄様、今日の時間は?」
「30分だな」
「……十分よ。ついてきてほしい場所があるの」
そして、私とお兄様はすぐ近くの無人の倉庫へとついた。
「せっかく兄妹で会えたんだから、二人っきりでもいいでしょ」
「……」
お兄様が合図をすると、何十人もの黒服が立ち止まる。
扉を閉めると、灯りが無い部屋は真っ暗になって、何も見えなくなった。
お兄様の声が暗闇から響く。
「こんなところに連れだして何をするつもりだ」
自分でも呆れちゃうくらい強引な作戦だけど、これしか方法が無いわよね……。
そして倉庫の中から…
http://www.nicovideo.jp/watch/sm9667481
みんな、私の提案に賛成してくれた。文句の一つも出なかったわ。
あんたたち、ちょっとはやるじゃない。
「にひひっ」
思わず、これから起こることを想うと、笑い声が漏れちゃうわ。
ビックリさせてあげるんだから。
「ふぅ……」
深呼吸をひとつすると、ホコリを吸い込んで煙たかった。
昨日までの生き方を、否定するだけじゃなくて
これから進む道が、見えてきたわ。
どこまでいっても、水瀬は水瀬で、そして、私はアイドルなんだから。
ひとつ、パチンと指を鳴らす。
暗闇でスタンバイしていた律子が、スイッチを入れる。「カチッ」という音が小さく鳴った。
「これは……」
一気に、暗闇が晴れた。スポットライトが倉庫の奥を照らす。
ステージ衣装も無い、観客も一人。照明も一つ。765pro allstarsも安くなったものね……。
水瀬の基本理念『欲しいものは、勝ちとれ』
私は、みんなが待っている舞台へと片足をかけて、振り返ってお兄様を指さした。
「勝負よ、お兄様。私たちの特別コンサート、10人分の飛行機のチケットで買ってもらうわ」
「……ほう」
その時、お兄様が、微かに笑った。
お兄様が、静かに用意していたパイプ椅子に、足を組んで座った。
私たちは円陣を組む。ライブの前には必ずやることだった。
765プロが倒産して、こうしてコンサートするのは2年半ぶり、か。
春香、千早一足先にやらせてもらうわよ。
みんなの緊張した笑顔が、隣に見える。
チャンスは一度きり、ミスは許されない。完璧にやりきること。
深呼吸をひとつして、一斉に大声で叫んだ。
「春香と、千早の分まで!」
「歌って!」
「踊って!」
「最後まで!」
「力いっぱい!」
「がんばるのぉ~」
リーダーは私。
「いくわよ!元765プロ、ファイト!」
9人分の声が一つに合わさった。
「おー!」
曲は……選択肢は一つしか無かった。
まさにギリギリの状況ってことね。燃えるじゃない。
その頃律子は内職をしていた。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm7419842
何もかも、決まったのはつい昨日のこと。
……。
「……みんな、ちょっと話があるの」
……。
「うん、わかった。いいよ。けれど……」
真が顎に手を当てる。
「わ、私たち、アイドルやめて2年半もたってる……」
雪歩のおどおどした声が聞こえる。……ほんっと頼れるんだか頼れないんだか。
「さすがに、ダンスも歌も忘れちゃったね」
「急にセッションなんてムチャだよ」
亜美と真美が不安そうに顔を見合わせる。
知ってるわよ。だからこそ、一曲だけある。
春香のために、皆で集まった時に歌うために作った曲、振り付けも全員で一生懸命考えた……
「……『READY!!』があるでしょ」
「あ……」
皆が目を見開く。
「そ、そうか!それならいけるよ!」
皆の顔がパァッと明るくなる。
お兄様に勝つには、唯一これしかない。
「ねぇ、『READY!!』って、なに……?」
一斉に、振り返った。声の主は美希だった。
あ……。
そうだ。そうだった。
この曲は、半年間の間に、美希を探してる間に作った曲だったわ……。
美希が知ってるハズが無い……。
さっきのお祭りムードが、一瞬にしてお通夜になる。
……事情を説明すると、美希はひとつ「ふ~ん」とだけ唸った。
そして、いつもでは考えられないくらいの、真剣な顔つきで言った。
「ねぇ、ミキにその曲聴かせて?」
音楽プレーヤーを渡して、私たちの生録音の『READY!!』を聴かせた。
目を瞑って、リズムに合わせて頭が揺れる。
「とっても、いい曲だね」
ミキは真剣な顔のまま続けた。
「じゃ、次はダンスを教えて欲しいの」
真が、振り付けを一通り行う。ミキはそれを、瞬きもせず見ていた。
そして、
「おっけー、ミキもう覚えたよ」
親指と人差し指をたてて、ウィンクしながら、その指を頬の横で振った。
……ハァ?!ウ、ウソでしょ?!
そういえばモバゲーにアイドルマスターが来るらしいね。
バンナム必死だね。
そして、位置についた。左には真顔の真美、右には春香のポジションがぽっかりと空いていた。
遠くから律子の緊張した声が聞こえる。
「いくわよ……みんな……」
──ARE YOU READY!? I'M LADY!!
律子が、ボタンを一つ押すと、ついに曲が始まった。
ゆっくりと、片手を顔の前へ上げる。もう片方もあげて、強く握る。
そして、腰へと手を当てる。手の平にじっとりと汗をかいている。
多分、皆も同じ気持ち。
大丈夫、大丈夫よ。何百回も練習した。
振り付けは体で覚えてる。
私たちの、運命がかかった一曲。
失敗すれば、アイドルの道は無くなる。
お兄様は無表情で私たちの方をじっと見つめている。
楽しんでるんだか、退屈してるんだかまるでわからない。
絶対に認めさせてあげるんだから……!
私たちは捨てるには惜しいんだってくらいの、とびきりのアイドルだってことを。
──STARDOM光り光るSPOTLIGHT
──眩しい輝き まっすぐDEBUT
美希の方を見ると、完璧だった。
私たちの動きに合わせて、遅れずにピッタリとついてくる。
この舞台を用意するために思考錯誤したから練習する暇なんて無かったのに。
……やっぱりあんたやるじゃない。
段々と、ノってきたわ……。
昔のキラキラのステージを思い出して、緊張した顔が解れてくる。
いける……!いけるわ……!
──夢は叶うモノ 私信じてる
──さあ位置についてLET'S GO!!
そろそろサビに入る。心の底から楽しんでいた。
振り向くと、みんな、汗を飛ばしながら笑顔で踊っていた。
殺風景な倉庫が、不思議と光輝いて見えた。
──いおりんのダンスマジ最高!
お兄様しかいないハズの場所に、そんな歓声が聞こえた。
これなら、どんな会場でも満員にしてみせる!できる!
──ARE YOU READY!! I'M LADY!! 歌をうたおう
今まででベストと言えるくらいにバッチリ、サビに入った!
最高!最高の気分よ!
ねぇ、あんたたちやっぱり私たちはスーパーアイドルなんだわ!
日本中のオーディエンスを、コーフンさせてあげちゃうんだから!
「う……うぅ……」
えっ……
曲に混じって、背中から低い呻き声がかすかに聞こえた……
後ろにいるから姿は見えないけど、この声は……
響……よね……?
……こういう極限状態にいると、普段生活してる時とはまるで感覚が違うものね。
最高潮のテンションに、ヒビがひとつ入った感じが私たち全体に伝わる。
だけど、ダンスを止める事は出来ない。そのまま続ける。
「ひ、響ちゃ……」
今度は雪歩の声……。
な、なによ……一体何が起こってるの……?
後ろを振り向きたい衝動に駆られるけど、まだ曲は終わっていない。
中断は許されない。
──ひとつひとつ 笑顔と涙が……
あとワンフレーズで、終わる。あとちょっと、あとちょっと。
次は、この曲の最も盛り上がるトコロなんだから。
全員で、一斉に飛び上がるフレーズ。
ここは、絶対に決めなくちゃ……。
──夢になる……
もうちょっとで、もうちょっとで終わる。
お願いだから何も起こらないで。
ここまで来て……
──ENTERTAINMENT!
私はつま先に力を込めて飛び上がった。
「うぎゃあああ!」
響の叫び声が聞こえた
全員が一斉に振り返ると、苦しそうに足を抑えて倒れた響がそこにいた。
──ARE YOU REA……
曲が止まった。
ここまで来て……これで終わりだっていうの……。
全員がうずくまる響に駆け寄る。
なんでよ……響は、765プロで一番ダンスが得意なハズ……。
ミスなんか絶対にするハズない……。
「響ちゃん!やっぱり足……!」
雪歩が真っ先に駆け寄った。倒れる響の肩を掴む。
「う……うぐ……ご……ごめん……ごめん……」
響が顔をぐしゃぐしゃをして泣きだす。
「ごめん……自分のせいで……」
たくさんの涙と鼻水とヨダレが舞台の床に染みを作った。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
顔を覆って、丸まって、響はひたすら謝り続けた。
「ウソ……でしょ……」
私は、膝を落として、ただ愕然とするしかなかった。
「……ダメだな」
お兄様が、パイプ椅子からおもむろに立ち上がった。
そのまま背を向けて、出口へと歩き出した。
「響さぁぁぁぁん!!」
やよいの泣き叫ぶ声が聞こえた。
──待って。
「……ま」
声が出ない。
このまま、お兄様が帰ったら、私たちは今度こそ終わり
不法入国者として、全員犯罪者になる。
「……待って……お兄様……」
「もう20分だ」
振り返りもせずに、真っすぐ進む。
「待って……待ってください……お兄様……うぐ……」
「落ちこぼれは所詮落ちこぼれか」
……!
「お願いします!あと5分だけ!5分だけ時間をください!」
倉庫に、ゴンという鈍い音が響いた。
私のオデコがじんわりと熱くなった。
後ろから、みんなの声が驚く聞こえた。
「い、伊織?!」
お兄様が音に振り返る。
「……ほう」
私は今、全員分の夢を背負ってる。土下座でもなんでもしてやるわよ……!
あ、ごめん30分と間違えたわ……修正
水瀬兄:(響は)ダメだな
「……う……うぐぅ……」
倉庫には響の嗚咽だけがこだましていた。
コンコンと、指先で時計を叩く音が聞こえた。
「……5分」
「えっ」
「重要な会議に遅刻することになる。これで数万ドルの損失だ」
そう言って、またパイプ椅子に足を組んで腰掛けた。
……。
「い、伊織……ごめんよ……」
響は、私のほうを見上げた。よくわからない液体で顔中べとべとになってた。
はぁ……。
「大丈夫、あとはこの伊織ちゃんに任せなさいよ」
私は皆を舞台から下ろして、一人きりになった。
「重要な会議に遅刻することになる。これで数万ドルの損失だ」
どんな会議ですか?水瀬兄さん
皆が、舞台の下で私を心配そうに見つめる。
心を落ち着かせる。
「すぅ……」
ダンスも無い、BGMも無い。
一度失敗した後の、この逆境……。
この5分間に、私の、水瀬伊織の全てをかけるわ。
「……いつものように空をかーけてた」
「あ……これ……」
やよいが、声をあげた。
倒産後も家で、これだけは練習してた曲。
あのバカプロデューサーがいっちょまえに、私のために作った曲。
──いつものように空を翔けてた。ずっとずっとどこまでも続く世界。
……。
「お兄様!お兄様!今日は収録があったのよ!ジャンバルジャンも一緒に映ったわ!」
珍しく家にいた、新聞を広げているお兄様に走り寄る。
「そうか。よかったな伊織」
お兄様は、こちらを振り向いて、また新聞に目を戻す。
「えぇ、だから~お兄様~」
そのまま肩にすり寄る。
「今度アメリカに出張に行くんでしょ?そこでの限定バッグがあるのよ。お願い!お兄様」
お兄様は、新聞をたたむ。表情も、声色も変えないけど、どこか楽しそうなのは解った。
「お前のわがままに付き合うのは何度目だろうな」
それを聞いた私は、目を輝かせた。
「ありがと!お兄様だーいすき!にひひっ」
──いろんなことが起きてる街は、スピードについて行くだけでもう精一杯
……。
「うあああああ!!!」
何でよ!何で私の許可無しに勝手に死ぬのよ!あのバカ!バカ!バカ!
うさちゃんを抱き締めて、ひたすら私は泣きじゃくる。
後ろからお兄様の声が聞こえる。
「伊織、いつまでそうしてるつもりだ」
「うぅ……うあああ……」
「水瀬財閥の力なら、他の大手プロダクションにも入れる」
「……うぅ……」
「765プロはもうダメだ」
「……!」
それを聞いた私は、お兄様に向かって、叫ぶ。
「お兄様に私の気持ちなんか一生わからないわ!」
「……」
屈辱だわ……!
他のプロダクションに入るなんて……絶対に……イヤよ……!
──そんな時見つけた。ボロボロになったキミ
……。
「……うぅ……」
「伊織、いい加減にしろ」
ある日、お兄様の声に、かすかに怒気が篭った。
「お前はいつまで甘ったれでいるつもりだ」
「お兄様は……お金が恋人だものね……」
「……」
「大事なヒトを亡くした気持ちなんて!わからないでしょ!」
お兄様は何も言わず部屋から出てった。
私に慰めの言葉もひとつもかけない。家に帰って来ても数十分しかいない。
……今日は、私の誕生日なのに……。
新堂が数十段のケーキを持ってきてくれたけど、一口も食べなかった。
ふと、テーブルに置いてあった各国の新聞の中に、ある記事が目に飛び込んだ。
──四条貴音、961プロに移籍
な、なによこれ……
──なぜそんなに悲しいほどココロに傷負ってるの?夢や希望打ち砕かれて諦めたんだね。
……。
そして
貴音が突然、私の家へやってきた。
「……水瀬伊織には、たいそう世話になりました」
そう言ってお父様へ深々と頭を下げる。今思うとどこか、貴音の顔は暗かった。
お父様は、そんな貴音に対して頭を下げる。
「……!」
プロデューサーが死んだら、さっさと別のプロダクションに移籍ってわけ……?
お兄様と同じよ……!
「そこにいるのは、水瀬伊織ですか?」
貴音が遠くにいる私に気付く。
「……裏切り者」
「えっ。なんと言ったのです、水瀬伊織?」
私は背を向けて水瀬の敷地から飛び出した。
もうこんな家、イヤよ……!出てってやるわ……!
──ボクがチカラになってあげるよ キミの全てはここで終わりじゃない。以前の自分はリライトしよう。嬉しいことで。楽しいことで。
……。
「どうか、お願いします。如月千早を助けてください」
「……!」
私の足元に、貴音の後頭部が月明かりに照らされていた。
この時、悔しいけど助かったって思った。家出があまりにも辛くて。
水瀬家のフカフカのベッドと、高級ジュースが飲みたかった。
家へ帰って、言った。
「帰ってあげる代わりに、私の友人の手術を、しなさいよ」
ほんっとお子様ね……。
──いつまでもこのままでいたいね。ずっとずっと一緒にいられたらいいね。
……。
真と、雪歩が病院の椅子であらびきポークフランクを食べている。
「あ、あんたね。そんな事情があるなら……」
「人には、誰にでも秘密があるものです」
「あ、謝らないわよ」
「ふふっ」
そういえば、私まだ貴音にちゃんと謝ってないわ。
──元気が戻ってきて良かった。フタリでがんばってきたよね。でもそれも終わり。
……。
突然、病院にみんなが集まった。偶然にも程があった。
「運命というものでしょう」
貴音が目を伏せて言った。
2年ぶりに会う皆は、まるで変わってなかったわ。
律子が言った。
「私にちょっと考えがあるの。ビデオ撮影をしましょう」
「えっ」
それからの半年間は、とにかく楽しかった。
だけど、春香と美希がいないことを、口には出さないけれど皆気にしていた。
──そろそろ来るんだね。最後の週末が。
……。
やった!やったわ!765プロの最後のメンバー!美希が見つかった!
これで、765プロはなんとかなるかも知れない!お兄様も認めてくれるわ。
お兄様の携帯電話にかけた。
「手続きやらなんやらは、全部すっ飛ばして……」
『伊織、お前は落ちこぼれだ』
えっ……。
──もしもボクが空に帰る刻が来たらどうするの?すごく泣いて 手を掴んではなれないのかな。
……。
「うわああ!!伊織!」
みんなの泣き顔が、ぼんやりと見えた。
嬉しかった。私が、もし死んじゃっても泣いてくれる人がこんなにいるのね……。
「お兄さま……やっぱり……私は……間違っていなかった……わ」
──何も言わずにサヨナラするよ キミと出会えてすごく嬉しかったな。つらくなるから全て還すよ。笑ったことも、kissしたことも。
……。
私は、ただお兄様とお父様とプロデューサーに……
──いつまでも忘れないでいるよ ずっとずっと空で見守っているよ。
……。
……で
「あー!もー!ムカつくわ~~!」
ホテルの一室で、私は愚痴をもらす。
「一体いつ来るのよ!お兄様は!」
「まぁまぁ……」
真がなだめるように言う。
「あれから数週間もたってるのよ!私たちの生活は相変わらずホテルに缶詰!」
地団太を踏むと、ミシミシと床が鳴った。
ほんっとーにアレで良かったんでしょうね……。お兄様は相変わらずよくわかんないわよ……。
もう千早も退院してる事でしょうし……日本はどうなってるのよ。まったく。
気付くと、律子が部屋の隅で手招きをしている。
いったいな、何の用よ……。
律子が神妙な顔つきで、私の目の前に立っている。
口元がニヤリと歪んで、メガネが光っている。
「伊織、この前の一件で、あなたに言いたいことがあるの、秘密よ」
「な、なによ」
律子は笑いを堪えるように続けた。
「もし、私の小鳥さんに任せた極秘プロジェクトが成功したらね……」
極秘プロジェクト?何の事よ……。
「春香が、元気になって765プロがまた再スタートをきれたらね……」
早く、用件を言いなさいよ。
「私が、ずっと夢見てた計画があるの」
律子の瞳が珍しく潤ってた。
「プロデューサーが亡くなってお倉入りになってたんだけど……」
「……」
律子は、私の目を見て言った。
「新アイドルユニット『竜宮小町』」
「りゅう……ぐう……?」
ふぅんなかなかセンスのある名前じゃない
「あなたを、リーダーにしようと思うわ」
「へっ?」
「伊織、何だよ。今度は途端にニヤけちゃって」
「何でも無いわよ」
やっぱり、伊織ちゃんはサスガよね。
ご機嫌に、うさちゃんを撫ででいるとまた革靴の鳴る音が近づいて、ドアが空いた。
「待たせた」
お兄様が、時計を確認して入ってくる。時間は正午ピッタリ。
「本当に待ったわよ!」
お兄様に大声をあげる、そんな私を無視するかのように続ける。
「良い知らせと、悪い知らせがある」
「えっ」
「どっちから聞きたい」
一斉に私の方へと、視線が向く。わ、私が決めるの?
「じゃあ良い方……」
「日本で765プロダクションのドームコンサートが約半年後に開催される」
「えっ」
みんなが一斉に驚いた声をあげる。
律子が、不意に笑って拳を顔の前で握った。
……。
「じゃ、悪い方は……」
「水瀬の空港機関で事故、不祥事が起きた」
「えっ」
「出発が遅れるな」
緊急事態ってまさかこれのことだったの……?
「あの事件の完全な揉み消し、更にお前らが空港で暴れたせいで、ただでさえ警戒されていたんだ」
「じゃあいつになるのよ」
「そうだな。それも半年はかかるな」
「えっ」
「それまで依然こちらで監視は続ける。また厄介事を起こされると困るからな。家族には、水瀬側から報告しておこう」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
「何だ」
「コンサートには間に合うの?!」
「約束は出来ないな」
……。
「すまないな。そのかわり」
えっ……
お兄様は、響の方へと真っすぐ進んでいく。
「……」
「うわっなにするさー!」
そして前髪をすくい上げた。
「この娘の足と額の負傷」
貴音の方へ振り返る
「四条貴音の痕跡。スキャンダル」
「なっ……」
美希の方へ腰を落とし、目をじっと見つめた。
「そして、薬物依存患者が一名」
そして、ドアの方へ向き直って時計を確認した。
「半年の間に全て、こっちで治療してから帰れ」
「お、お兄様……」
「勘違いするな、別にお前たちのためじゃない」
「水瀬財閥の令嬢が、落ちこぼれだと困るからな」
「待って!お兄様!」
足がピタリと止まる。
「私たちは、満員のドームで踊るくらいのアイドルなのよ!」
「……」
「それをお兄様一人のために開催してあげたんだから!間に合わせないと許さないんだから!」
「……」
お兄様は無言のままドアノブに手をかける。
「ま、待ってください!」
今度は律子の声が響いた。
「あの、家族以外に連絡を取りたい場合は……」
「ダメだな」
「……」
律子は、目を瞑って、顎に手をあてて考えた。
そして、ティン!と閃いた顔を見せた。
メモに走り書きをする。
「では、この駅の、このお店に出前を頼んでください。メッセージは一切いりませんから」
律子は、微笑んで続けた。
「如月千早の自宅に、牛丼並盛を11人前、お願いします。そのくらいならいいですよね」
そして半年後……
「ギリギリだわ!」
久々に日本に帰って来たっていうのに、慌ただしすぎよ!
「真が突然、変なタイミングでトイレに行くからいけないのよ!」
「何だよ!伊織だってぬいぐるみをあんなとこに置き忘れるから!」
「あ、あの伊織ちゃん、真ちゃん喧嘩は……」
「全力でぶっとばすさぁぁあ!」
「今思えば、伊織の兄上はもしや全て……」
「美希もう眠いの~」
「こら!これから公演があるのよ!走りなさい!」
「んっふっふ→ドキドキすんね」「ね」
「私は、千早ちゃんに連絡してみるわ~」
「うっうー!特に言うことなしです~!」
まぁ、そんなこんなで私たちにはこういうドタバタな、コメディみたいな展開のほうがお似合いよね。
も~ロストアルテミスの世界も救いたくないし、アメリカにも暫く行きたくないし、あんなことは二度とごめんよ……
……にひひっ。プロデューサー、あんたちゃんと見てるんでしょうね。
私たちの……
──きらめく舞台はさらなる高みへ
伊織・貴音・真・雪歩・あずさ・亜美真美・千早・響・律子・やよい・美希ついでに小鳥パート (TRUE)
765プロが倒産してもう~シリーズ
今度こそ、おわり
これで倒産シリーズはおわり アフターもアナザーももう書きません
……我ながら駆け足ご都合主義ぱねぇwwww
これ最終回の前に入れると、間抜けた感じになっちゃうのでまぁこの順番で良かったかなーなんて
ウソです全部後付けですむしろ最初の春香編以降このSS全部後付けです
やよいw特に言うことないんかw
作者さん乙でしたー超面白かった!
水瀬財閥最強だな
そういえば、美希を追いかけてるとき
やよいはあずささんを無事に助けられたんだろうか?
あと貴音の視力といおりんの吐血だけはマジでやっちまった……
おかしいトコロは各自で脳内補完しよう!
あとなんかモヤモヤする部分あったっけ
BADは飛行機事故で全員死亡って文をひとつ加えると途端にBADになるよ!
>>557
あずささんの「キャァ!」は水瀬側に捕獲されたってオチでした
あ、閉店です
今まで、読んでくれた方、支援してくれた方本当にありがとうございました
乙
笑ってはいけないの続き待ってる
あと他に書いたの教えて
>>573
あと書いたのは覚えてるので
ハム蔵がエビ蔵
千早が765プロでなめこ栽培する話
アイドルのみんなに腹パン
笑ってはいけない
レッスン終わったし一人で帰るぞ
ぐらい。ちょくちょく書いては飽きてdat落ちしてる
貴音の視力って何の事だっけ?
>>588
貴音は目が悪い設定だったのにまったく逆にしちゃった
ビルであずささんをイーグルアイするシーン
あと最後にこのSSでは扱いイマイチだったいおりんを書けて満足いおりんかわいいよ
なめこ栽培のスレタイplz
>>596
千早「事務所でなめこを栽培するわ」
数レスで飽きた
オヤスミー(^o^)ノ
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