川嶋亜美「ひとつだけ気付いたこと信じたいから」 (23)

『この世界の誰一人、見たことがないものがある』

『それは優しくてとても甘い』

『多分、見ることができたなら、誰もがそれを欲しがるはずだ』

『だからこそ、誰もそれを見たことがない』

『そう簡単には手に入れないように、世界はそれを隠したのだ』

『だけどいつかは、誰かが見つける』

『手に入れるべきたった一人が、ちゃんとそれを見つけられる』

『そういうふうにできている』

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亜美「ばっかじゃない!」バチンッ

竜児「いっ……てぇ!」

北村「おい!亜美、落ちつけ」

亜美「なんなのその腑抜けっぷり!大河が帰って来ない大河が居ないってさ!信じて待つんじゃないの?だったらしっかり待ってなよ!」

竜児「……だけどよ」

亜美「あーあ!最低のヘタレだわ!大河に同情するよッ!!高須くんがここまでだとは思わなかった」タッタッタッ

北村「亜美ッ!!」

櫛枝「正直、あーみんの言う通りだと思う。これじゃ大河が帰って来ても高須くんには任せられないよ」

竜児「……」

腹が立つし悲しいし虚しいしで、私はいっぱいになった。

何故だか涙が溢れてくる。殴った手もジンジン痛い。

私は前に進んでるのに、涙を堪えて手を伸ばしたのに、これじゃ意味がない。

亜美「ほんっと……馬鹿みたいじゃん……」ポロポロ

道端でも構わず泣いていた。

「擦らない方が良いぞ。赤くなるから」

亜美「……え?」ポロポロ

「……ハンカチ」

亜美「ありがと」

涙で滲んで良く見えなかったけど、うちの制服じゃなかった。

「じゃあな」

少し暖かい風が吹きはじめていた。

—— 翌日

竜児「……川嶋」

亜美「……」

北村「亜美、高須の言う事を訊いてやってくれ」

亜美「祐作、最近高須くんに過保護じゃない?」

北村「そんな事はないぞ?まぁ、同性として肩は持ってるがな」

竜児「……川嶋、確かに俺ちょっと腑抜けてたよ」

亜美「なに?謝るつもり?それは違うと思うんだけど」

竜児「……あぁ、そうだな」

亜美「だったらさっさとその辛気くさい顔やめなよ!心配して下さい……慰めて下さい……って言ってる様なもんなんだよ!」スタスタ

北村「まったく……亜美のヤツ」

竜児「正論過ぎて言葉もねぇわ……」

亜美「……ちょっと言い過ぎたかな」

亜美「一応、反省してるみたいだったし……」パサッ

亜美「あ、昨日のハンカチ……」

亜美「返さなきゃな……うちの制服じゃなかったし誰なんだろ」

亜美「刺繍?えっと……"Touya Kinomoto"」

亜美「"木之本桃矢"?」

櫛枝「あーみん!孤高のダイエット戦士!みのりんだぜ」シュパッ

亜美「名乗らなくてもわかるわ」

櫛枝「昨日はありがとう」

亜美「……なにが?」

櫛枝「あーみんがさ……大河の事も高須くんの事も怒ってくれて凄く嬉しかった」

亜美「別に……高須くんのうじうじした態度が気にいらなかっただけ……」

櫛枝「でも、あーみんが怒ってくれなかったら私が大噴火!だったよ」

亜美「……だったら、今度なんかおごりなさいよ」

櫛枝「任せといてよ!久しぶりに盛るぜぇ〜超盛るぜぇ〜」

亜美「そんなことばっかりやってるとクビになるよ?」

櫛枝「ちっちっち!そんなんじゃ世界で一番かも知れねぇが日本じゃ二番目だぜ?」

亜美「本当、実乃梨ちゃんって馬鹿だよね?」

櫛枝「な!?あ、あーみんそれはどういう意味かね?ズゴゴゴゴ」

亜美「まぁ、嫌いじゃないけどさ」スタスタ

竜児「川嶋……」

亜美「……高須くん」トンッ

竜児「川嶋?」

亜美「しっかりやらないと亜美ちゃんのよりキツイ一発もらっちゃうよ?」

竜児「え!?お、おう」

亜美「あ、そうだ……ここら辺でブレザーの学校ってどこがあったっけ」

竜児「ブレザーの学校?そんなん訊いてどうすんだ?」

亜美「亜美ちゃんにふさわしくて高須くんより良い男の子が待ってるんだよ♪」

竜児「あ……えっと……」

亜美「なに?どもっちゃって……もしかして妬いた?」

竜児「ち、ちげぇよ!星條高校!あそこがブレザーだよ」

亜美「さんきゅー」スタスタ

高須くんは、大丈夫な感じを装ってたけど、きっとまだまだ助けがいると思う。

だけど、私はもう彼に手を貸さない。私だって前に進んでいかないといけない。

それに、彼の傍にいると自分の思いがぶれてしまう様な気がした。

亜美「……亜美ちゃんだって余裕でいられないよ」

奈々子「亜美ちゃーん!」

亜美「どうしたの?」

奈々子「今から駅前の喫茶店行かない?そこのケーキがすっごく美味しいんだって!」

亜美「まぁ、別に良いけど」

奈々子「麻耶もあとから来るってさ」

木原「ごめん!遅れた」

亜美「別にいいよ?あたし達もいま来たところだし」

奈々子「早く頼もうよ〜シフォンケーキがすごーく美味しいんだって!」

木原「わかったわかった!すいませーん」

店員「はーい、少々お待ちください」

「あ、俺が行きます」スタスタ

桃矢「お待たせいたしました」

奈々子「シフォンケーキと紅茶のセット!」

木原「私はシフォンケーキとコーヒーかな」

亜美「じゃあ、あたしもシフォンケーキと紅茶……で」

桃矢「かしこまりました。少々お待ちください」

亜美「あ、あの!」

桃矢「何か?」

亜美「いや、なんでも……」

奈々子「あの店員さんすごーくカッコイイね!」

木原「ホント!びっくりしたよ!背も高いしあんな人いるんだね〜」

奈々子「そういえば、亜美ちゃん話しかけてたけど知り合い?」

亜美「あ、いや……知り合いに似てたと言うかなんと言うか」

亜美(ハンカチを貸してくれた"木之本桃矢"くんなのかな?雰囲気は似てたけど……)

奈々子「亜美ちゃんのモデル仲間かと思ったよ〜何歳かな?」

木原「って言うか……さっきまでケーキケーキ言ってたのに……」

亜美「そういうとこ現金だよねぇ」

奈々子「ち、違うよ〜!」

とりあえず今日はここまで。キャラの口調はうろ覚えなのでおかしかったらすいません。

奈々子「美味しかったねぇ〜また来ようよ!」

木原「あの店員さん目当て?」

奈々子「違うよ!」

亜美(ハンカチ返しそびれたな……って言うか亜美ちゃんに気付いてなかった?)

奈々子「亜美ちゃんどうしたの?」

木原「まさか亜美ちゃんもあの店員さんの考えてたの?」

亜美「あ、いや……そういうわけじゃないけどさ(やっぱりちゃんと返しとこうかな)」

亜美「ちょっと忘れ物したから先に帰っていいよ?」

奈々子「忘れ物?私たちも着いていく?」

亜美「ううん、大丈夫だから」タッタッタッ

店員「いらっしゃいませー」

亜美「あの……木之本桃矢って言う店員さんがいると思うんですけど」

店員「木之本くんなら休憩に入ってますよ?多分、休憩室にいると思うけど呼びましょうか?」

亜美「お願いします」

—— 休憩室

店員「木之本くん!」

桃矢「なんすか?」

店員「君、川嶋亜美ちゃんと知り合いなの!?」

桃矢「は?誰ですか?」

店員「現役高校生モデルの川嶋亜美ちゃんだよ!俺すっげぇファンなんだけどさ!君を尋ねて来てるんだよ!?」

桃矢「……そんなモデルに知り合いはいないすけど」

店員「と、とにかく早く行きな!」

亜美「……よっ」

桃矢「あー…なるほど」

店員「……」チラッチラッ

桃矢「ちょっと外行くか」ガチャ

亜美「え?あ、うん」

—— 外・自販機横のベンチ

亜美「ねぇ……亜美ちゃんのこと覚えてる?」

桃矢「……道端で泣いてたヤツだろ?」

亜美「あ、あれはちょっといろいろあって……たまたまだよ!?」

桃矢「んで、何か用か?」

亜美「たまたまこの店に入ったら君が居たからハンカチ返そうと思って……」ガサゴソ

桃矢「別にいいのに」

亜美「刺繍入ってたし"Touya Kinomoto"って……」ガサゴソ

桃矢「あー…あのハンカチか」

亜美「……あれ、おかしいな」ガサゴソ

桃矢「ないなら別にいいよ」

亜美「……ごめん、ちゃんとカバンに入れたはずなんだけど」

亜美「後でちゃんと返す!本当にごめん」

桃矢「別にいいって……それよりなんか飲む?」

亜美「遠慮しとく……ハンカチ返しに来ただけだもん」

桃矢「あっそ」ガコンッ

亜美「あのさ、なんでハンカチを?まさか亜美ちゃんに近づきたくて?」

桃矢「泣いてたから」

亜美「え?」

桃矢「道端で人が泣いてたから」

亜美「それだけ?」

桃矢「それ意外に何が?」

亜美「あ、いや……」

桃矢「アンタ自意識過剰だな」

亜美「う、うるさいな!普通こんなカワイイ娘が泣いてたら声かけるでしょ!?」

桃矢「誰が泣いてても声かけたよ」

亜美「嘘ッ……じゃあ、亜美ちゃんだから声かけたんじゃないの!?」

桃矢「やっぱり自意識過剰じゃねぇか……つーかアンタがモデルやってるなんて知らなかったし」

亜美「マジで?アンタどんだけ?亜美ちゃん知らないとかどんだけ遅れてんのよ!」

桃矢「いや、別にモデルとか興味ないから……つーか、来た時とテンションも態度も変わったな」

桃矢「休憩時間終わるから戻っても良いか?」

亜美「え、あ……うん」

桃矢「飲んでないからこれやるわ」

亜美「あ、ありがと」

桃矢「じゃあな」スタスタ

亜美「……なんっていうか……無愛想なヤツ」

亜美「まぁ、いっか……帰ろう」

—— 喫茶店内

店員「き、木之本くん!亜美ちゃんとはどういう関係なの!?」

桃矢「偶然知り合っただけっすけど」

店員「か、彼女とかじゃないんだね!?違うんだね!」

桃矢「違いますよ」

店員「良かった……あのさメアドとか知らないの?知ってたら聞けないかな?」

桃矢「客来ましたよ」

—— 翌日

亜美「あ、ハンカチあった……机に入ってたんだ」

竜児「よっす」

亜美「よっす」

竜児「……あのさ、春休みなんか用事あるか?」

亜美「なに?亜美ちゃんとデートでもしたいのー?」

竜児「ち、ちげぇよ!4月から受験やら進路関係で忙しくなっから最後にみんなで思いっきり遊ぼうって事になってよ」

亜美「ふーん……まぁ、大丈夫だと思うけど」

竜児「じゃあ、櫛枝に川嶋も参加するって伝えとくわ」

亜美「……あのさ高須くん」

竜児「なんだ?」

亜美「亜美ちゃんもう高須くんの面倒みてあげないから」

竜児「お、おう」

亜美「……馬鹿、本当にわかってんのかよ」

—— 放課後・駅前喫茶店

亜美「よっ!」

桃矢「いらっしゃいませ」

亜美「今日はお客さんじゃないよ?ほい」

桃矢「律義に返しに来たのか」

亜美「だって人の名前が入ったハンカチ持っとくとかなんか気持ち悪くない?それに亜美ちゃんの趣味じゃないしー」

桃矢「そうか」

亜美「って言うか……無愛想過ぎなんだけど?ははーん、もしかして亜美ちゃんの美少女っぷりに緊張してるとかー?」

桃矢「別に……というか用事が済んだんなら帰れよ」

亜美「……つまんないの」

桃矢「別にアンタの暇潰しのためにここで働いてねぇよ」

?「あれ?お兄ちゃん!?」

桃矢「……さくらか」

さくら「お兄ちゃんここでバイトしてたの!?」

知世「偶然ですわねー」

桃矢「馬鹿デカイ声を出すな」

さくら「馬鹿デカイ声出してないもん!」

亜美「……ねぇねぇ」ボソッ

桃矢「なんだよ」

亜美「……アンタの妹?」

桃矢「そうだ」

さくら「ん?お兄ちゃんのお友達ですか?」

亜美「え?……まぁ、そんな感じかな」

さくら「はじめまして!木之本桜です!お兄ちゃんがお世話になってます」

桃矢「だから怪獣がデカイ声を出したら店に迷惑だろ」

さくら「さくら怪獣じゃないもん!」

亜美「へぇ、アンタにこんなカワイイ妹さんがいたんだー…」ナデナデ

さくら「か、可愛くなんか……///」

知世「いいえ!さくらちゃんはカワイイですわよ」ジー

桃矢「あのな……用がないなら帰る。客として来たならさっさとどっかの席に行け」

さくら「あ、そうだ!お兄ちゃんケーキセットお願いします」

知世「私もさくらちゃんと同じ物を」

桃矢「はいよ……で、アンタはどうすんだ?ここでずっとニヤニヤしとくのか」

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