憂「桜高軽音部不眠耐久選手権!」(451)
憂「さあ、待ちに待った桜高軽音部、麗しい5人の選手による不眠選手権、実況は私、平沢憂、解説は生徒会長真鍋和でお送りします」
和「どうも。解説の真鍋和です」
憂「さあ、いかがでしょうか和ちゃん。
いったい人間は何時間眠らずに耐えられるのでしょうか?」
和「えーっとですね、2007年にイギリスの男性が264時間の不眠記録を達成しています。
ですが、ギネスブックは、不眠による健康被害を考慮してこれ以上挑戦者が現れないよう、記録の掲載を中止してるわね。
普通の人間の不眠限界は、72時間と言われていますね。一般に72時間を超えると、吐き気や悪寒がひどくなり、食べ物が喉を通らなくなりますね、その後に幻覚が見え始める方もいるそうよ。
一体彼女たちが何時間眠らずに過ごせるか、全国のファンが期待をふくらませて画面を見ています。
」
憂「さー、お姉ちゃんたちは世界記録を更新することができるのでしょうか?
それではルールを説明させていただきたいと思います。」
憂「これから、桜高軽音部の5人の方に、一片25mの立方体の閉鎖実験棟に入ってもらいます。
部屋内部の状況は、24時間リアルタイムで放送しますが、不正を防止するために、頭に自力では外せないヘッドギアをつけてもらいます。
このヘッドギアで、脳波を取り、別室の医師団が起きたふりをしていないかどうかのチェックを行います。」
和「睡眠期に入ると、覚醒期に見られたα波が減衰し、低振幅の脳波が現れます。
5名の睡眠学の権威の方が別室で脳波を判定し、五人中3人が睡眠と判定した状態で1分が経過すると、その人はアウトになります。
だから、例えば瞼を切り取って目を開いた状態のままでいても、起きていた事にはなりません。
こういう不正をする輩が、72時間を経過するとでてくるのよ。」
憂「寝てしまったら、その時点でアウトですよ~皆さん、頑張ってください!お姉ちゃん、頑張ってね~」
憂「あ、部屋の状態が画面に映し出されます。
何もない、白くて広い部屋で、みなさん手を振っています、元気そうですね、先ほどまで眠っていたのでしょう。
時計が動き始めるのは、5分後です。
さあ、次のルールの説明に移ります。」
憂「このような閉鎖実験室で、何もせずに起き続けるのは、彼女たちも辛いだろうという事で、ルールを追加しました。
まず、スタート時点で、物を持ち込むことができます。あ、リストが着ました。
えっと、律さんはジョジョの奇妙な冒険1部から7部まで全巻。これで退屈を紛らわす気ですね~
澪さんはN女子大学の赤本!えらい!勉強するつもりのようです。
紬さんは、ティーセット一式を持ち込んでいます。お茶をするつもりでしょうか?
梓ちゃんは、愛用のむったんを持って来ました。
アンプの持ち込みは、不許可なのですが、練習をして時間をつぶすつもりのようです。
そして、お姉ちゃん、平沢唯はポテチにコーラ!何を考えているんだ、お姉ちゃん!
各人の持ち物を見て、どうでしょうか、和ちゃん。」
和「うーん、この時点で一番いい物を持ち込んだのは、律ね。
最初の6時間は、いかに脳をリラックスさせるかの勝負になる。その点で、ムギや唯も悪い選択じゃないわ。
リラックスさせつつ、退屈しない、漫画はうってつけのアイテムよ。
私も漫画喫茶にいれば、寝るのがもったいなくて漫画を読み続けて夜をふかすことも多々あるもの。
一方で、一番失敗しているのは澪。勉強を6時間も続ければ、退屈するし、頭を使って眠くなるから。」
憂「さあ、澪さんは失敗したようですが、巻き返しなるか!?
そして、6時間おきに、外部に物を注文する事が出来ます。
水や食べ物も、この6時間のタイミングで要求してください!
物についての審査は、別室の実行委員会で精査され、不適切な物以外は許可され、速やかに彼女たちの手にわたります。
憂「例えば、「マトリックス」の映画が見たい、とあれば、DVDだけを渡すなど融通のきかない事はせず、しっかりDVDプレーヤーとモニターをお渡しします。
しかし、梓ちゃんのアンプのように、他の人に多大な影響を与えるものならば、不許可になる場合もあります。
食べ物も、カレーを食べたいなどの献立の要求は基本的にOKです。一食分のご飯と、500mlの水が支給されます。
ただ、ふぐ刺しなど、調理と調達が難しい食材の場合は、用意できない旨を伝え、改めて要求する機会が与えられます。
一方水だけを飲みたい場合は、2Lペットボトルのミネラルウォーターが支給されます。
また、お姉ちゃんのように、コーラやコーヒーなどの要求も基本的にOKです。コーヒーはカフェインが含まれるため重要ですよ~
量は6時間分に足りると判断できる分量を支給します。大体コーラなら2L、コーヒなら350ml缶6缶ですか。
ポテチとコーラは、一セットとみなし、許可されました。セットで頼んでも、許容内なら柔軟な判定が下ります。
憂「ただし、参加者は、他の参加者の要求に異議を唱える権利を有します!
異議は別途、今選手権の最高評議会で審議され、妥当と見なされれば要求は通りません。
参加者同士のものの貸し借りは原則OKです。ただ、貸す側は絶対的な拒否権を有します。
ヘッドギアにはマイクがついており、参加者は主催者側に要求をすることができます。また、ライブカメラから、各人の視点で楽しむ事が出来ます。
トイレは簡易トイレを5つ用意しました。トイレの中だけはカメラが切られます。」
和「トイレの処置に、視聴者からの苦情がきそうね。」
憂「さあ、あと30秒で時計が動き出します。みなさんの健闘を祈っています!お姉ちゃん、頑張れ!」
和「ステージⅠ、ってところかしら。」
……
憂「さあ、開始から3時間が経過しました。さすがにまだ脱落者はいません。各人の様子はいかがでしょうか、和ちゃん。」
和「ふあぁあ……眠いわ……唯がポテチとコーラを消費しきって、ムギと一緒にお茶をしながら談笑しているわね。
途中から梓も参加したみたい。
こういうリラックスできる談笑が必要なのよ。
最初の72時間はね。不眠世界記録のイギリスの男性は、一人でビリヤードをしたりしながら216時間、11日を一人で過ごしたらしいわ。
それに比べたら大分緩い初期条件なのよ。
律は、ジョジョを読みながらニヤニヤしてるわね。今は三部のンドゥール戦よ。花京院の両目が得体のしれないスタンドに切り裂かれたページだわ。
たぶん、律は飽きたらムギのお茶会に参加すると思うけど。
澪は必死に過去問を解いている。でも残念ながら、そういう姿勢は往々にして無駄になるの。」
憂「たしかに。もし澪さんが優勝すれば、日本国の国力で現実可能な範囲であらゆる願いを1つ達成できる権利が与えられますからね、
そうです、この勇気ある挑戦の優勝者は、超法規的措置であらゆる願いが叶えられるのです」
和「世界征服とかは無理よ。自衛隊じゃアメリカや中国に勝てないから。でも、世界一の大金持ちになりたいとかなら可能よ。
日本国政府には、優勝者のため、国民の財産を接収する用意があるから。
だから、澪もN女子大合格とはいわず、東大入学だって可能なのよ。
政府は東大に圧力をかけるほうが無理難題な要求に比べたら朝飯前だから。」
憂「それでも勉強する澪さんは、真面目ですね~
でもそうなると、優勝者が誰かも気になりますが、どのような要求を行うかも注目ですね」
和「ムギなら、温泉に行きたいとかささやかな要求をしそうだからいいけど。律が優勝したら、王にしろ、とか要求しそうだわ。
そうなると憲法改正の必要があるから面倒よ。」
憂「さあ、どうなるお姉ちゃん!」
……
憂「さあ、6時間が経過しようとしています。
只今の状況ですが、澪さんが勉強を放棄して、お茶会に加わっています。律さんも、ジョジョの4部のレッチリ戦の途中で放棄してお茶会に参加しています。
まるでいつもの放課後ティータイムだァーッ!」
和「ムギのティーセットは、予想以上の効果をもたらしたようね。
全員がリラックスして6時間を迎えられる。いつものようにだらだらおしゃべりしながら。
でも一体あの5人の中に、このゲームの本質を分っている人はいるのかしら?」
憂「少しだけ、和ちゃんはいらだたしげです。それもそのはず、視聴率は現在1.5%の低水準で推移しています。
お姉ちゃん達の日常を見たい、変態しかみていないのかー!
この放送はEテレビジョン、NHKBSで終日放送されています。放送終了予定は、優勝者が現れるまで、となっています。」
和「視聴率が上がり始めるのは、やはり72時間たってからね。それまでは茶番だけど、本人たちにとっては重要な時間よ。」
……
憂「さあ、6時間が経過して、5人の要求が出揃いました。おっと、その前に、解説の交代です。解説は和ちゃんに変わりまして、鈴木純ちゃんです!」
純「よろすく~」
憂「和ちゃんは6時間の休憩後、私と交代して実況に移ります。
支給される品は……おっと、全員が食べ物ですね。さすがにお腹が空いたようです。
律さんはカレー、澪さんもカレー……全員がカレーです。これは調理係は楽だぞー!」
純「せっかくだから、もっとリッチな物を注文すればいいのに。」
憂「それもそうですね。でも、カレーなんて、女子高生らしくていい!」
憂「カレーが届きました。美味しそうに頬張るお姉ちゃん可愛い!」
純「解説させて頂きます。
カレーは、東京一旨いと評判の××堂のビーフカレー、ご飯は北海道産のコシヒカリを使った、絶品のライスカレーになります。
××堂はどっちの料理ショー……モガモガ…」
憂「ダメ!純ちゃん、民放の番組を宣伝しちゃ!」
純「……失礼しました……」
……
憂「10時間が経過しました。お茶会もさすがにお開きですね。律さんはジョジョの奇妙な世界に戻っています。
澪さんは、N女子大の過去問を解きながら、眠そうにしています。
紬さんは、相変わらずニコニコしている。強いぞー!
梓ちゃんは、目をこすりながらギターの練習を、そしてお姉ちゃんはアイスを要求しながらゴロゴロ転がっています。
お姉ちゃんにアイスを渡しに行きたい!そして抱きしめたい!」
純「うーい、私も眠いよー」
憂「純ちゃん、しっかり仕事して!」
純「ねむねむ」
憂「さあ、参加者よりも解説の純ちゃんが寝そうです。どうなる、この不眠耐久選手権!」
純「ねむねむ」
憂「コラ、純ちゃんのせいで、視聴率が1%を切ったよ。最初から見ていた変態さんも、眠くなってきたみたい。」
純「こりゃ大変だ。むにゃむにゃ。」
……
和「実況変わりまして真鍋和です。」
純「おはようございます、解説、鈴木純です」
和「私達って会話したことあったかしら?」
純「記憶にないですね。」
和「そう。」
純「……よろしくおねがいします。」
和「……12時間が経過して、参加者の物品の要求がスタジオに届きました。
律、コーヒー。澪、コーヒー。ムギ、タクアン……だと……?梓、コーヒー、唯アイス。
うーん、ムギと唯が異色のコンビですね。そろそろ眠気の第一波が来る頃、律と澪と梓は順当にカフェイン飲料を頼み、
一方でムギと唯は自分の好物を頼んだ。
コーヒーの3人には、350ml缶のコーヒー、律はブラック無糖、澪と梓には微糖入りコーヒーが要求通り6缶ずつ支給されます。
ムギにはタクアン一本。これはなかなか多いが、ムギの一日のタクアン消費量を委員会の方で審議してタクアン1本分、おおおよそ500gに決定しました。
ムギは本当に一日500gもタクアンを食べるのか?
唯はアイス。それも、銘柄を指定してきました。10種類以上のアイスが指定されていますが、唯選手の健康を考慮し、6種類1つずつ支給されます。
アイスは溶けるおそれがあるので、小型冷凍庫がセットで支給されました。
ふぅ、いかがですか、眠そうにしている解説の鈴木さん。」
純「これは意外と、ムギ先輩と唯先輩に軍配が上がりそうですね。」
和「それはどうして?」
純「と、いうよりも、まだカフェインを要求しなくても起きてられるという自信からくる選択でしょう。
それならば、これからの長期戦、まだまだ持つという証。一方で、コーヒーを要求した3選手は、マラソンで言えばまだ1km地点なのに、ペースをあげている状態です。
マイペースに進んだ方が、有利に決まってますよ。このマラソンは42kmで終わるわけじゃないんだから……」
和「初めて解説らしい仕事をした、鈴木さんの一言でした。おっと、唯選手、いきなりお気に入りのアイスにしゃぶりついている。
たしかにそうしてゴロゴロする姿には、日常の一こまを感じさせますね。
ムギはタクアンを切って、眉毛に貼り付ける遊びをしている。こちらもまだ余裕を感じさせる。
コーヒーを飲んだ3人は、目を血走らせていますねまだ12時間でこれは良くない。緊張しているのかー!」
純「……意外と仕事熱心ですね」
和「……」
……
憂「解説、純ちゃんと変わりまして平沢憂です。またお会いしましたね。」
和「よく眠れたかしら?」
憂「ええ、そりゃもうぐっすりと。
え?先程から6時間、実況と解説が無言だった?NHK本社に苦情の電話が鳴りっぱなしのようです。」
和「私も必死に盛り上げようとしたんだけどね。やっぱりウマが合わないわ。」
憂「3回に一回このようにつまらない実況と解説になりますが、視聴者の皆様、ご容赦ください。これから面白くなりますから。」
和「さて、18時間が経過し、少し面白い動きがありました。」
憂「と、いいますと?」
和「律が主催して、円を囲み、眠そうになったら隣の人をつねる、という体制を敷いているの。
やっぱり誰も本質を理解していないわね」
憂「でも、それは想定内の出来事じゃないでしょうか?」
憂「でも、それは想定内の出来事じゃないでしょうか?」
和「それもそうかしら。その共同戦線もいつまで持つか……
そして、交代交代に面白い話をする、ということもやっているわ。
律や唯の話は面白くて、視聴率が高いんだけど、梓の話がつまらないくて視聴率が下がるわ。残念よ。
お偉方から怒られるのは私達なのに。」
憂「おーっと、思わぬ娯楽を提供してくれていますね、参加者の皆さんは。」
和「それに、もっと下ネタを話せという苦情がスタジオにも届いているわ。何かいいアイディアないかしら?」
憂「うーん、普段のティータイムからなぜか下ネタは言いませんからね。律さんに期待、というところでしょうか。」
和「さて、3回目の支給品。
律は、コーヒー3缶にカロリーメイト3箱。澪は水2Lにカロリーメイト1箱。ムギも水2Lにカロリーメイト1箱。
梓ちゃんは、眠眠打破6本。出ました、眠眠打破です。受験勉強の秘密兵器がここで出たァー!
唯は、水1Lにポテチ3袋。ポテチが大好きですね
いかかですか、解説の平沢さん」
憂「お姉ちゃんはポテチ1袋毎晩食べても太んないんだ~
っと、それはおいておいて、そろそろ軽食を取りたくなったのか、梓ちゃん以外の4選手はカロリーメイトにポテチに水ですね。
梓ちゃんは食欲が無いのか、究極のカフェイン飲料を投入だー!
食欲がわかないのでしょうか?でも18時間不眠なら、受験生には当たり前。情けないぞ、梓ちゃん!」
……
和「22時間経過しました、ここで視聴者からのお便りです。
東京都のペンネーム、かずにゃん2号さんからのお便りです。何々、
「ずっと同じ部屋にいて、皆さんはエッチしたくてムラムラしたりしないのですか?
とくにあずにゃんが欲求不満になってないか気になるにゃん。ブヒブヒ。
」
ひどいお便りが届きましたね、どうですか、解説の平沢さん。」
憂「……無様だね。
でも、睡眠不足は性欲を減退させるのは、皆さんも経験がおありかと思います。
私もお姉ちゃんの高校を受験する直前は、1週間の睡眠時間の合計が10時間を切り、お姉ちゃんを見ても少ししかムラムラしませんでした。」
和「なるほど。実体験を交えた、いい解説でした。さて、現場に山仲さわ子リポーターが近づいています。先生?」
さわ子「はい、現場の山仲さわ子です。
この、大きな金属の扉の向こうで、教え子達の死闘が繰り広げられているとなると、緊張してきます。
中には入ることが出来ません。支給品は、別の人が通れない小窓を通じて人の手を介さず、支給されるので、はい。
何人たりともこの選手権の妨害を企てる事は出来ません。
ここの場所も、極秘です。知っているのは、ごく一握りの関係者と、スタッフのみとなっています。
私もまた、誘拐されるおそれがあるので、この施設をもう離れる事が出来ません。
以上、現場から、彼氏絶賛募集中の山仲さわ子がお送りしました。」
和「はい、ありがとうございます。ここで、スイスのジュネーブから続報です。
本日未明より緊急招集された、国連人権理事会の臨時会合で、今選手権の主催に加担した日本国政府に対する非難声明を賛成多数で可決しました。
また、同刻、人権理事会の理事国である日本国を理事資格停止の処分とする旨の決議を2/3以上の賛成をもって議決しました。
本非難声明議決に先立ち、ニューヨークで開かれる臨時国連総会でも日本国政府に対する人道上の罪に対する勧告、並びに安全保障理事会において日本国政府に対する制裁と勧告が審議されており、
本非難声明は日本国に対する重大な制裁を、安保理が決定する可能性を示唆しています。
日本国政府はただちに、国際社会に対して、重大な内政干渉とする非難声明を、内閣総理大臣名で発表しました。
以上、東京のスタジオからでした。」
憂「いやー、大変な事になってきましたね。気をとり直して、放送を続けます。」
……
純「実況、変わりまして鈴木純です。
じっけ……失礼、選手権のスタートからちょうど24時間、1日が経過しました。
まだ脱落者はでていません、どうでしょうか、憂さん?」
憂「そろそろ、ですかね。人間的な欲望に、動物的な欲望が打ち勝つ頃合いは。
24時間不眠、それくらいは誰もが経験していますが、そこには目的があります。
受験勉強であれ、徹夜麻雀、であれ、飲み会であれ、残業であれ。また、軍人は作戦行動中に3日不眠で行動するプログラムもあります。
でも、彼女たちは女子高生です。鉄の意思を持って推し進める目的もなく、ただ漠然とした現実感のない願いの為に戦っています。
その目的を忘れ、動物的な欲望に身を任せた時が、ステージⅠ、ふわふわ時間の終りの時ですね。」
純「さあ、憂選手、いつにもまして怖い!
さて、24時間経過時点での支給品です。
律先輩はミントガム3箱に、目薬、眠眠打破1本。他にもたくさん要求していましたが、委員会で許可されたのはこの3品です。
澪先輩は、眠眠打破2本に……おっと、映画だ。ここで映画をチョイスしたぞ、澪さん。題名は、『リング』。不朽の名作、ホラー映画だ!」
憂「怖がりの澪さんは、ホラー映画を見ると眠れなくなるらしいです。その習性を逆手にとったナイスな一手ですね。」
純「ムギ先輩は、そろそろ眠くなってきたのか、ここでようやくカフェイン入の飲料を頼みました。眠眠打破3本。それに……マッチ針です。何をする気だ、紬先輩!」
憂「もしかしたら、一番本質を理解しているのは紬さんかもしれません。
タクアンという保存食は、まだ2/3以上残っています、そして2Lの水もまだ半分残っている。そしてここでマッチ針。これから起きる惨劇を予想しての、先見の明のある一手です。
痛みで気絶するまいとするのでしょうね、指の腹にマッチ針を刺せば、痛みで起きている事が出来ます。」
純「でも、ナチスのレポートでは、24時間経過はまだその段階ではない、とありますが、いかがですか?」
憂「……恐ろしいことですが、紬さんは120時間経過後のステージⅢを予想しているのかもしれません。
ステージⅢでは、6時間ごとに、あるアイテムが必要になりますから、この余裕のある段階で、水や食料や道具をためておくのは必須ですよ。
そして、その段階に突入するとまともな思考ができなくなるから、あらかじめ『指針』を立てておく必要があります。そうしなければ対応できません。」
純「さあ、これは紬さんの有利か?
そして、梓は、おーっと、何を思ったのか、お風呂を要求してきました。これは委員会で審議されています。
梓は、もうつついたら眠りこけそうだ。ここで気分転換!といきたいところでしょう。
しかし、女子高生の入浴シーンは、公序良俗に反する恐れがあるぞぉー!」
憂「どうなるのでしょうか」
純「そして、唯先輩は、水1Lとカロリーメイト2箱。彼女は眠気を知らないのかぁー!先程からカフェインを一切とってません。しかし、眠そうです。」
憂「そういえば、お姉ちゃん、コーヒー飲むと眠れなくなるから嫌いなんだ……」
純「しかし、しかぁし!今回の選手権の趣旨を取り違いしているぞ!コーヒーを飲むんだ、唯先輩!」
純「おっと、委員会から梓への返答が着ました。お風呂は不許可です。やはり、公序良俗上、放送できない上、お湯を入れたまま、扉を開けずにバスタブを閉鎖実験棟内に移すのは大変ですから。」
憂「NHKの本社に苦情が殺到する様が目に浮かびますね。」
純「梓、ここで代わりにお茶2Lと唐辛子をチョイスだ。辛いもので紛らわす作戦か!」
憂「お茶にもカフェインが含まれているから有効ですよ、この作戦は。」
純「そして、先程から、部屋内で女子トークが一切ありません。みな俯いて眠気をこらえています。
時折、眠りそうになる梓を唯先輩と律先輩がつねっていますね。」
……
和「30時間が経過しました。解説平沢憂に代わりまして、真鍋和です。」
純「実況鈴木純です。」
和「……」
純「……」
和「支給品は、律が……ビール?おっと、ここでちょっと法律に抵触する問題です。
酒を飲んで大脳を軽く麻痺させ覚醒状態に移る。女子高生らしからぬ発想です。
しかし、少量の酒は一時的な覚醒に有効だ!飲み回せば、楽しくなるぞぉー!飲み会の4次会、5次会的発想だ。」
純「……法律はどうしますかね?」
和「今委員会で検討中です。」
和「澪はさらにホラー映画追加、『十三日の金曜日』『エクソシスト』『呪怨』です。なかなかのチョイスだ。」
純「これでちょうど6時間持つ計算になりますね。」
和「ムギは、おっと、今度はお茶2Lとカロリーメイト1箱。やはりリスのように、貯めこむ、ムギ。」
純「これからが楽しみですね。」
和「梓は……お茶1Lに、新品の制服と下着、そして洗濯バサミ?何を考えている、梓!」
純「ギャグマンガであるでしょ。洗濯バサミを挟んで、痛みを堪える。
そして制服は汗で気持ち悪いから着替えようとしているんです。」
和「放送法に違反するので、トイレで着替えてくださいね。
唯は、またアイスだ!アイスで乗り切る気か、平沢唯!」
純「24時間経過後、徐々に体力が低下していきますから、お腹を冷やすアイスは好ましくないですね。下痢になる恐れがあります」
和「おっと、官邸からです。臨時の閣議決定がくだされたそうです。
未成年飲酒禁止法の特例措置として、参加者5名に特例として実験期間中の飲酒ならびに、関係者による種類の供与を認める。
同刻、最高裁判所長官から、超法規的措置に基づき本法令を限定的行使に限り許可する、旨の伝達が着ました。
翌日の臨時国会で、賛成多数で時限立法の特別法として可決されるようです。
また、未成年者喫煙禁止法、麻薬及び向精神薬取締法の特例の追加措置も同時に認められます。
それに基づき、関係する国連条約を日本国政府は破棄しました。」
純「仮に法律違反だったからといって何がいけないんですかねぇ?」
和「古館さんのまね、似てないよ、鈴木さん。でもこれでビールが律に支給されたわ。律のやつ、普段から飲んでるんじゃないかしら?」
……
和「36時間が経過しました。まだ1日半ですね。これくらいなら、体力のある男の人なら平然と出来るのでしょうけど、
女子高生で、この退屈な環境に、無機質な部屋。徐々に精神が蝕まれてもおかしくありません。」
憂「解説は鈴木純に代わりまして、平沢憂です。梓ちゃんの様子がおかしいです。顔に洗濯バサミを貼りつけているのですが、先程から一言も発していない。」
和「律は、ビールを一缶だけ飲みました。さすがに酔いすぎると、後々大変だと分かっているんですね。唯もちょびっと飲んで、すごい饒舌です。」
憂「お姉ちゃんが梓ちゃんに抱きついても、梓ちゃん、いつものように喜んで反応しません。むしろ、無反応です。」
和「澪はホラー映画見てもあまり怖がらなくなりましたね。慣れとは恐ろしいものがあります。」
憂「ホラー映画の登場人物がホラー映画を見て怖がり続ける作品なんてあるんでしょうか?澪先輩の滑稽度はそれくらいのものですね。」
和「良い解説ですね、憂さん。澪も気がついたのか、水と食料を注文しました。
折角一流シェフがいるのに、皆軽食ばかり注文します。それも、あまり食べられず、残ってしまっている。
律はトランプを注文しました。これで時間をつぶす気か、大富豪を梓以外の4人で楽しんでいます。時折、唯が梓をつねって叩く以外、梓はうなだれています。」
憂「そろそろこの選手権の本質に気がついたのかな?」
和「ステージⅠも終盤に近づいて参りました。全国から梓への応援メッセージが届いています。
京都府の、あずにゃん大好きっ子さんからのお便りです。
『あずにゃん頑張れ!ボクが付いてるぞ!あずにゃんぺろぺろ』
この手のメッセージが山ほどNHKに届いており、梓人気をうかがわせますね。」
憂「これからの梓ちゃんの活躍に期待です!」
……
和「40時間が経過しました、ここで緊急事態です!
梓選手の脳波について、先程から医師団の鑑定が始まりました。梓選手は、洗濯バサミでまぶたを釣り上げていますが、微動だにしません!
おっと、医師団の1人が睡眠段階に突入したとの判定を下しています。
他の医師も、脳波の動きに注目しています。
全国から梓への応援メッセージが届き続けております!」
憂「いやぁー、眠っていると思いますよ。」
和「ちょっと寝息も聞こえてきます。しかし、睡眠の判定は慎重に行われます。
あ、医師団の残り4人も、睡眠の判定を同時に下しました。
これにて、梓は脱落です!」
憂「テレビをご覧の皆様、3、2、1、ぼん!はい、梓ちゃんの頭が吹き飛びました。
そうです、被験者の5人には伝えていませんが、眠れば火薬を内蔵したヘッドギアが起爆します。
4人はトランプをやめ、呆気に取られています。
このメッセージは伝わったか?悲鳴をあげているのは、澪先輩にお姉ちゃん!
律先輩は怒号をあげています。
梓ちゃんの首から上がなくなりました。
肉片が飛び散っております!近くにいた、お姉ちゃんに、梓ちゃんの焦げ付いた肉片が飛び散って悲惨な様相を呈しています!
和「それにしても早すぎる!40時間弱での脱落!視聴率は急上昇しています。裏番組のバラエティーにはたまったものじゃない!」
憂「和ちゃんですら、興奮しています!現場のさわ子先生、どうですかー?」
さわ子「はい、施設内のスタッフの間でも、ざわめきが聞こえます。思ったより早かった一人の脱落。
眠っても殺されはしないとたかを括っていたのでしょうか?
この大きな金庫のような扉の向こうから声は聞こえてきませんが、緊迫した状況がありありと伝わってくる気がします。
頑張れ、みんな!」
和「ありがとうございます。さあ、40時間経ってようやくステージⅡ。4人とも、眠気は一気に吹き飛んだみたいね」
憂「震えているお姉ちゃんも可愛い。失礼。確かに、脳波に大きな乱れが見られますね。」
和「この緊張状態でさらに何時間持続するかしら?」
憂「ナチスの実験では、大体60時間程度は緊張が持続するとレポートでは評価があります。
また、731部隊の実験で、他者への危害を容認する条件下では、24時間弱で殺し合いを始める、とのデータがありますね。
今回は、暴力について条件を定めていませんが、仲良し4人なのでそんな事態には陥らないでしょう。
なので、60時間後、つまり実験開始からおおよそ100時間経過後に次の犠牲者が現れそうですね。」
和「具体的に、誰になりそうなの?」
憂「まだわかりません。しかし、精神力の弱い人から、徐々に緊張が解けていき、眠りに落ちる、とのデータもあります。
また、過度に闘争本能の強い人も体力を消耗し、緊張が持続しないとレポートでは報告されています。
グアンタナモ基地での、ゲリラ兵を用いた同実験では、ナチスや731部隊での一般人実験よりも、全てのスコアが高いが、より闘争的な兵士ほど、消耗が早いという記録がありました。
強靭な精神力ではほかに類を見ないゲリラ戦士の中でも、まるで爬虫類のようにじっと部屋の中で身を潜め、決して精神を高ぶらせず、かといって眠らず。ステージⅡ終了まで250時間持つものもいました。
しかし、そこから先は……」
和「おや。律が叫び続けているわ。何々、私達を解放しろ?甘ったれた事言うんじゃないわよ。
まるで国連人権理事会ね。
澪は泣き続けているし。まあ、梓と澪は仲がいいからしかたないのかしら。唯は案外すぐ泣き止んだみたい。そして、これから起こることに気がついたのかしら?」
憂「お姉ちゃん、時々鋭いですから。
まぁ、2週間、不眠で生き延びれば、国連の介入で全員助かるかもしれません。これは伝えた方がいいのかな?」
和「伝えるべきじゃないわ、憂。あくまで閉鎖実験なのよ。彼女たちは、これが全国で放送されているなんて知らない。」
憂「全国放送……そういえばグアンタナモ基地の実験は、トップシークレット……あ、放送中だって忘れてた。ごめんなさい。」
和「米国には謹んでお詫び申し上げます。」
純「42時間が経過しました。実況は和さんに代わりまして、鈴木純です。
さて、42時間が経過して、梓の死体はガスでお腹が膨らみ始めています。完全閉鎖環境なので、虫は湧きません。」
憂「まるでパスツールのフラスコだね」
純「梓選手の突然のリタイアに驚きの冷めぬまま、各選手の要求が出揃いました。
律先輩は、眠眠打破6本。梓爆殺の直後は、興奮していた律先輩ですが、少し落ち着いたみたいです。
唯先輩は、コーヒーです。ついに唯先輩もカフェインへ。なりふり構っていられませんねぇ。
澪先輩は……おっと、精神安定剤?これはどうなるのでしょうか、解説の憂さん?」
憂「要求があれば、認められると思います。澪さんは薬の種類を指定しなかったので、最初は一般的な精神安定剤が支給されるでしょう。
澪さんも気が付きましたね。これはいかに心を落ち着かせて耐える戦いであるかを。」
純「どうやら、委員会は準備をしていたようです。要求通り、精神安定剤が支給されます。
抗不安薬ですね、具体的にはマイナートランキライザーのデパスが支給されます。さあ、解説の憂さん、どうでしょうか?」
憂「デパスは正式名称をエチゾラムといい、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬、とういか精神安定剤ですが、これは諸刃の剣ですね。
そもそも抗不安薬の多くが、不眠症の治療に使われていることから分かる通り、要するに精神を落ち着けて眠くするんですよ。副作用は、倦怠感や頭痛、吐き気など一般的な症状。
に加え、精神系の薬を飲んだ後は、自動車の運転をしないよう推奨されている通り、眠気が襲ってくるんですね。
澪先輩に誰も忠告しないのが、悲しい!無知ゆえか、知っていても、脱落させようと、あえて何も言わないのかー!?
お姉ちゃんはそんな事何も知らないので、無実です!」
純「さあ、ステージⅡ開始早々に、地雷を踏んでしまった澪先輩。運命やいかに?
ムギ先輩ですが、面白い物を要求してきました。『この選手権の企画書』です。通るはずがないのに、注文してきた意図はなんでしょうか?」
憂「頭が切れるのは紬さんですね。こちらが、情報をどこまで開示するか、その姿勢を探ろうとしてきているのでしょう。いったい、委員会はどこまで情報を開示するのでしょうか?
黒塗りでほとんど埋まった企画書が渡される公算の方が高いですよ、しかし、紬さんは情報の大切さを知っている!確かに、情報は早々に得ておく必要がありますね。
企画書には、今回のヘッドギアの設計図も乗っているので、そのまま渡すと解体されるおそれがあるので、さすがに全てを開示する事はないと思いますが……
律さんは、ヘッドギアを壊そうとして、紬さんにとめられる、滑稽なシーンが先ほどテレビで映し出されましたね。
冷静に考えれば、壊そうとすれば爆発するのはわかるよねー」
純「そうそう。バカなんだから。あはは」
実況解説陣どれだけの金を受け取りやがった
純「おっと、委員会と最高評議会の解答が着ました。これは面白い。企画書の代わりに、参考書を渡すそうです。
ナチスドイツの1943年のアウシュビッツ強制収容所での不眠実験のデータとレポート、日本軍731部隊での同様の実験―民間人に対するデータ―のレポート、
グアンタナモ基地でのゲリラ兵士に対する不眠試験のデータとレポート、ソビエト連邦ノヴォシビルスク16での抑留日本兵収容所での不眠実験のデータとレポート。
この4大実験の日本語訳つきの資料が渡される事に決定しました。
これには、たくさんのヒントが山盛りだぞー!」
憂「自分たちの寿命がわかるなんて、幸せだね!」
……
純「実験開始から48時間が経過しました。視聴者の皆様も、ここまでなら経験がおありの方もいらっしゃるのではないでしょうか?しかし、彼女たちのストレスは、想像を絶するものがあります。
眠れば、即、爆殺です。
この恐怖の中、仮眠も出来ずに、起き続ける。死の恐怖は、一番の動物的な欲望です。それは睡眠欲を凌駕すると言ってもいいでしょう。
ならば、彼女たちは起き続けるしかないのです。実況は私鈴木純と
和「解説はおなじみ真鍋和です。」
純「先程の支給で一番の目玉、実験データとレポートですが、どうやらムギ先輩しか読んでません。
澪先輩は、耳を抑えて怖がり、教えようとするムギ先輩から逃げ、律先輩も悪趣味だと言って、耳を傾けません。
ムギ先輩の隣で、唯先輩だけが概要を聞いています。」
和「私もしばらく前に全てに目を通したけど、これほど参考になる資料はないわよ。
確かに、ゲリラ兵のデータは参考にならないけど、彼らがとった眠気覚ましの方法が、逐一観察されて羅列されている。その、発狂の過程と一緒にね。
さらに、今実験が準拠するナチスの同様の実験で、被験者が求めた道具もなかなか参考になるわ。
ムギと唯が一歩アドバンテージを得た形ね。
ただし、絶望は死に至る病だという事を忘れていなければね、……」
純「解説者らしい言葉が飛び出しました。
支給品は、律先輩が『ポケットモンスター赤』。ゲームボーイ付きです。
澪先輩が、”ねむけざまし”とだけ要求してきたので、用意してきた無水カフェイン錠を1日分支給です。おそらく6時間でなくなるでしょう。
唯先輩が、”ももてつ”と要求してきたので『桃太郎電鉄DX』が支給されます。これにはスーパーファミコンが支給されます。ソニーのみなさん、ごめんなさい。
ムギ先輩は、おっと、カフェイン錠と指定してきました。これには無水カフェイン錠を澪先輩と同量支給されます。」
和「どうやら律はゲームをして退屈を一人で紛らわす作戦みたい。これは72時間までは十分有効な方法よ。一方唯とムギは共同戦線。
ゲリラ兵が、山手線ゲームのような事をして100時間まで過ごした作戦を踏襲するようね。これも有効よ。おそらく無水カフェイン錠も二人で分けるみたい。
一方で深刻なのは澪。しかし、ゲリラ兵の中で300時間耐えた男は、澪のように社交性がなくて内向的な人間だったから大丈夫、まだまだチャンスはあるわ。
168時間……つまり一週間を不眠で超えると、そこから先は策が全く通用しない、茨の道よ。そこまで澪が耐えれば、後は惰性で勝ち抜く可能性がある。
こういうひたむきさが往々にして功を奏してしまうの。
ムギや唯は小賢しいわね。」
映画のキューブ思い出した
>>176
律「あいつを黙らせろ!!」
唯「んーwwwwwんーwwwwwwwwwwww」
憂「72時間が経過しました。実況は私、平沢憂」
和「ある時は桜高生徒会長、ある時は唯を心配する幼馴染、またある時は正義の実験の最高責任者、そして今は国営放送の解説、真鍋和です。」
憂「さあ、ついに72時間の大台を乗り越えました。3日間不眠です。彼女たちの健康面に心配はないのですか?」
和「せっかく最高のシェフを東京から何人もよんだのに、最初のカレー以外注文しないじゃない!
48時間以降は、ウィダーインゼリーばかり。いったい、いくら金がかかってると思ってるのよ!」
憂「どうやら、健康面にも悪影響がみられるみたいですね。女子高生の命であるお肌は、かさかさになり、髪のキューティクルは失われ、目もとに濃いクマをつくっています。」
和「そう。支給品は?」
憂「今回は、全員無水カフェイン錠ですね。これでしばらく乗り切るつもりでしょうけど、薬物は長続きしませんよ。」
和「視聴率は50%前半で安定してきましたね。国民の皆様の鬱憤も、これで晴れるというところでしょうか。
梓が死んだ時の瞬間視聴率、驚いたわよ。72%よ。国民的アイドルの誕生かしら。」
憂「さて、次はニューヨークから続報です。
安全保障理事会の本邦政府に対する制裁決議1986号が賛成14(常任理事国5カ国含む)、反対1(本邦政府)で可決された事を受け、
国連総会においても、本邦政府に対する非難声明を賛成多数で可決しました。
また、決議に基づき、米州政府は国内の日本人資産の凍結並びに航空・海上封鎖に踏み切り、
中華人民共和国と台湾協定を結び日本問題解決までの台湾への不可侵を改めて確認しました。
また、安保理決議は48時間以内に被験者の解放を求めており、それが認められない場合は、
国連軍を編成し、さらに48時間以内の空爆開始を定める決議を行う用意があると本邦政府に強く圧力をかけました。
同時に米州政府から通達された日米安保条約の破棄を受け、本邦政府は国内米軍基地の接収を開始、沖縄県を除く全国の米軍基地をすみやかに接収したと発表しました。
また、接収完了に伴う内閣総理大臣談話にて、日本国政府は非核三原則の放棄、IAEA原子力国際機関の脱退、
並びにCTBT包括的核実験禁止条約等の関連条約の破棄を宣言、ただ今開催されている臨時国会で承認される模様です。
憲法9条についての最高裁判所の判定は、あくまで自衛行為の範疇にとどまるとの解釈で一致しており、法的問題はないとの見方を示しました。
さらにCTBTの破棄に基づき、24時間以内の沖ノ鳥島での本邦初の成層圏内水爆実験を行う旨を自衛隊統合幕僚長が発表、
核弾頭3000発の保有並びに即時発射用意を宣言し……」
憂「120時間が経過しました。実に5日間、不眠で乗り切っています。想像以上に強靭な精神力だ!
それにしても、教育に良くない場面が目につきますね、いかかですか、解説の純ちゃん」
純「ええ。排泄物は垂れ流し、床は嘔吐で生じた吐瀉物まみれ。あんなにたくさんカフェイン剤を摂取したら、副作用がひどいに決まってますよ。
気絶しそうになりながら、4人は芋虫のようにはいずり回っている。きっと、眠れないんでしょうね、ここまで来ると。もう寝たくても眠れない。そういう時間がこれからしばらく続く。
もう早く眠っちゃったほうが楽だと思うけどなぁ。
あと、梓の腐敗した死体、どうにかならない?虫はわかないけど、かなり臭いと思うよ。」
憂「支給品は、律さんが、『点滴』、澪さんが無水カフェイン剤、お姉ちゃんが『点滴』、紬さんは要求なしです。
一番深刻なのは先程から、呼吸が浅いですよ。」
憂「あ、点滴は標準的なぶどう糖果糖液が1食に相当する分、支給されます。点滴の打ちかたマニュアルもつけたので、たぶん大丈夫。
お姉ちゃん、感染症には気をつけて!」
純「見てて楽しいものじゃないね、和さんがいないから言うけど。けど、こういう事が必要だたんて、人間はなんて汚いんだろう。」
憂「紬さんは、指先全てに針を差して、眠気をさまそうとしていますね。
おっと、ここで速報です。医師団が脳波と頸動脈の脈拍を測っているのですが……紬さんの脈拍が急激に低下しているそうです。脳波はまだ以上ありません。
律選手は、本選手権のドクターストップを訴えています。律選手が駆け寄り、水をかけています、必死に叩いています。でも紬さんの眼は見開いたままだ、脳波も乱れているが、まだ睡眠脳波ではない。
どうなる、どうなる!?」
純「不慮の事故で死亡した場合も、ヘッドギアは爆発するようにプログラムされています。
近くにいる人を巻き込まないよう、警告音が出ていますね。律先輩は、まだ側にいるぅー」
憂「さあ、紬さんの脱落は秒読みだ、どうなる、どうなる!?」
純「あ、今医師団が紬さんの心臓停止を宣言しました。プログラムに基づき、5分以内に蘇生しない場合、脳が不可逆的な損傷を受けたものとみなし、ヘッドギアが爆発します。」
憂「驚愕の表情のお姉ちゃん!澪さんは震えている!現場の混乱は、想像を絶するものがあるぞー!」
純「5分間、恐怖に震えるのは、周りの3人ですね」
憂「……あと一分!紬さんの脳波は平坦になっています!今、必死に律さんが心肺蘇生法を施しているが、どうなるどうなるー!」
純「澪先輩と唯先輩は固まっています。」
憂「あと10秒、お茶の間でもこの緊迫感が伝わっていると思います!
憂「5、4、あ、律さんが離れた、1、ぼーん!」
純「頭が、頭がぁー!」
憂「梓ちゃんに続いて、紬さんもリタイア!120時間と42分でのリタイアです!これで残るは3人!デッドヒートが繰り広げられそうですね。」
純「ここからが本当の地獄ですよ。」
憂「そろそろ誰か、この戦いの勝敗を分けるあのアイテムに気がついた頃だと思います」
純「気がついてからが、和さんのおっしゃる、ステージⅢですよ。」
憂「でもなぜ、情報を手に入れ、有効に活用してきた紬さんが早急にリタイアしたのでしょうか?」
純「おそらく、知りすぎた、ということに原因がありますね。
決して助からない実験、これから先の被験者の過程を見てしまったら、自分がそうなって苦しみ続けなければいけないという絶望は、想像以上に早くムギ先輩の精神を蝕んだそうです。
一方、隣で話を聞いていただけの唯先輩はそこまで現実感がわかなかったのでしょう。」
憂「さあ、生き残りたいという願いが人を人間でなくするまであと少しです!」
しかし面白いな
……
憂「150時間が経過しました、もう6日がが経過しています。紬さんの死から、2日。当初は興奮状態で、眠気が吹き飛んだと思われた3人も、衰弱しきった様子で、座り込んでいます。
ただ、首を吹き飛ばされるという凄惨な死に様をみせつけられ、眠るのを本能が拒んでいるのでしょうか。
律さんも騒ぐのはやめて、必死に、起きています。」
和「支給品のリストは?」
憂「はい……えっと、おっ、ここでお姉ちゃんが気が付きました!ついにあのアイテムが!
お姉ちゃん、『かくせいざい』を要求してきました!」
和「やっと来たわ。この閉塞した泥沼的状況を打開するアイテムが。もっとも唯の事だから、それがもたらす深刻な副作用にも気がついていないんでしょうけど。」
憂「覚せい剤、ダメ、ゼッタイ!だけれども、この実験棟では、麻薬及び向精神薬取締法の特例が認められるので、覚醒剤の使用は法的に問題ありません。良い子の皆さんはゼッタイに真似しないでね。
もっとも、これからお姉ちゃんを襲う地獄を見たら、決して真似したいと思わないだろうけど。」
和「他の人は?」
憂「律さんが、無水カフェイン錠、澪さんが、スタンガン?ああ、電撃で自分を起こし続ける気ですね。2つとも許可がおりました。」
憂「ちなみに、お姉ちゃんに渡される覚醒剤は、疲労がポン!がキャッチコピーのヒロポンです!
ヒロポンは、先の大戦で日本軍のゼロ・ファイターも使用していました!長距離飛行で疲労と眠気に襲われるパイロットにうってつけですねー
現在は、悪名高い覚醒剤の代表です。でも、この選手権のキー・アイテムと言っても過言ではないでしょう!」
和「解説するわ。ヒロポン、まあ、巷ではシャブとかスピードなんてイケてる名前で呼ばれているオクスリよ。
ヒロポンはなんだか戦後すぐの闇市の匂いが漂っているけど、シャブやスピードというちょっと若者受けする名前で爆発的に流行したのよね、一昔前。
今は、脱法ドラッグなんてのが流行っているけど。
どれもみな同じで、メタンフェタミン系の向精神薬よ。
眠気を吹き飛ばし、精神を高揚させる。これほど強力に中枢神経系に作用する薬物はそんなにないわ。」
憂「何か、悪い働きはあるんでしょうか?」
和「憂、顔がニヤついているわよ。
和「当然、お茶の間の皆さんも御存知の通り、これらには重篤な副作用があります。
それは、ズバリ依存性!として薬物耐性の形成。
1回に支給されるヒロポンは、3回分の注射。それでも、無水カフェイン錠や眠眠打破なんて比べものにならないくらい効果を示すはずよ。
一週間も寝ていないけど、全く眠くならなくて活動的になるわ。そして、この絶望的な気分から解放される。
2時間で落ち着き始めるから、3回打てば大丈夫!最初は依存が形成されていないから、多少打たなくてもいいわ。
ヒロポンを打ち始めて24時間。それまで溜まった疲労が一気に唯を押しつぶす。そうなると、ヒロポン抜きじゃ、これまでの苦しみが屁のような苦しみが唯を襲う。
吐き気、倦怠感、不安、頭痛、動悸、口の渇き。眼は充血し、髪をかきむしり始める。
それからもう唯は6時間おきにヒロポンを要求し続ける。」
憂「さあ、ステージⅢが始まりました!おっと、ここで選手から異議が唱えられます、律さんからです。」
和「何々……覚醒剤の支給についての異議です。最高評議会で審査されるので、唯に対する支給が少し遅れます。」
憂「律さん、大声を上げて、カメラに訴えていますね。」
和「覚せい剤の怖さを知っているのね、彼女。でも、危険を知っているからこそ、この戦いでの強さも知っている。」
憂「おっと、最高評議会での判定が下りました。律さんの異議は却下!お姉ちゃんに覚せい剤と注射器が支給されます!」
和「当然よ。」
……
憂「155時間が経過しました。お姉ちゃんが元気を取り戻しています!スタンガンで痣を作ってしまった澪さん、カフェイン剤の飲み過ぎで、床に吐瀉してしまった律さんを尻目に漫画を読んでいる!」
和「このままいけば唯の優勝かしら。でも、他の2人も覚せい剤を頼めばまだ分からないわよ。私は澪が落ちそうな気がする。
なんかメンヘラ臭を感じるもの。」
憂「和ちゃんは澪さんと友達なんじゃないの?」
和「友達だったけど、仲良くすると律がうるさいから……」
憂「けいおん部の内部事情でした。女子高なんてこんなものだよね」
憂「160時間が経過しました。156時間での6時間チェックポイントでの支給品のおさらいをしましょう。解説の鈴木さん?」
純「はい。唯先輩は、ギー太を要求してきました。その時点ではヒロポンで元気いっぱい、練習をしていたのですが、薬がきれて今はぐったりしています。
それに、イライラしているのか、ギー太を壁にたたきつけてしまいました。意外と攻撃的な面が見えますね。
ギー太のネックが折れて、制服以外は見る影もない梓と、まだ新しいため、お腹がガスで膨れているムギ先輩の首無死体を連想させます。
澪先輩は、スタンガンの電池が6時間できれる設定だったので、新たに電池を要求しました。乾電池電池が6時間分が支給されます。意外とマゾですね。
律先輩は、諦めたのか、何も要求なしです。でも、眼は見開いて、ぴくぴく動いていますね。」
憂「お姉ちゃん、かわいそう!でもあと2時間頑張れば、幸せになれるよ。」
憂うれしそうだなww
和「168時間、1週間が経過しました。実況はもうこのメガネにも慣れた頃、真鍋和です。」
憂「解説はお姉ちゃんラブの平沢憂です。お姉ちゃんは先程からヒロポンを打ちっぱなし!アヘ顔のお姉ちゃんもかわいいよ!
もう此処から先は全て覚せい剤の支給しか考えられませんね。これがクスリ漬けの廃人の末路です。
よだれを垂れ流し、糞を垂れ流し、瞳孔は開き、髪の毛をむしり、歯ぎしりして、どこか宙を見つめている。
この廃人を見たら、良い子の皆さんもお薬には手を出さないね!ようやくNHK教育らしい放送になりました。
お腹が減ったら、まだ紬さんが残したタクアンも、カロリーメイトもあるので大丈夫ですよ。水もたくさんある。」
和「良い子の皆さんは真似しないでください。
さて、律の支給品に変化が現れています。はい、律の支給品はなんとなんと!ヘロインです!」
憂「いやぁー、予想外ですね。せいぜい覚せい剤で止めるかと思いましたが。」
和「桜高は薬物教育をしっかり施していますからね、律の以外と真面目な側面が垣間見えました。
薬物の王、ヘロインの登場です。御存知の通りヘロインはケシから合成されるモルヒネ系の薬物で、その薬物作用はモルヒネの100倍とも1000倍とも言われています。
ヘロインの末端価格は1グラム5万円程度、となり非常に高価ですが、今回特別にベネズエラの国営農園で栽培されたケシを用いた最高品質のヘロインを用意させて頂きました。」
憂「ヘロインまで頼む人はなかなかいませんね、律さんは理解しているのかな?
ヘロインやモルヒネ系の薬物の副作用……そもそもモルヒネが麻酔に使われているように……オピエイト受容体に……下降疼痛系……大脳皮質興奮抑制……まあ、いいですね!
眠れば死ぬのはわかっていての選択です。」
和「そうよ。全部自業自得なのよ。」
憂「律先輩、ハイになっている!うなだれる澪先輩に絡んでいる!
お姉ちゃんも一緒にハイになっている!
数日前に支給され、余ったビールを二人で飲んでいるぞー!
澪先輩は10分に一回、自分の首にスタンガンの微弱電流をあて、気絶しない程度に調節して、起きているのに!
それを尻目に宴会だー!」
和「これはこれは。
……」
憂「おや、律先輩に急変だ!顔を真赤にして、空になったビール缶をカメラに向かって投げつけてくる。
カメラは強化ガラスの向こうにあるので、問題ありません。視聴者の皆様、ご安心ください。
カメラは決して割れません。ライフルで撃たれても大丈夫なつくりになっております。」
和「はぁ。律は相変わらずバカね。」
純「215時間が経過しました。あと1時間で216時間、9日目突入です。」
和「律が苦しんでいるわ。退薬症状がひどいのも、ヘロインの特徴よ。
さっきも、ヘロインにあわせて、殺虫スプレーを注文してきた。それをところかまわず振り回して、唯や澪に迷惑を欠けているの。
」
純「閉鎖環境だから、虫なんていないんですけどねぇ。
いったい律先輩にはどんな光景が見えているんでしょうか!そして、まるで狂人とかした律先輩を止めようと、澪先輩が涙を流して抱きついています。
ボロボロの律先輩の制服にしがみつき、懇願しています。律先輩は止まりません!
唯先輩は、先程から薬が切れたのか、うーうー唸ってうなだれています。徐々に薬物耐性が形成されています。」
和「救えないわね。」
憂「216時間が経過しました、実況は純ちゃんにかわって平沢憂です。
大きな変化がありました、支給されたヘロインを、律さんが一気に全て注射しました。
お姉ちゃんや澪先輩は止めようとしたけれども、律先輩は暴れて止まりません。」
和「大変よ。あんなに一気にいれちゃ。」
憂「どうなるのでしょうか」
和「下手したら、昏睡状態に陥るわ。
呼吸が停止して、死に至る。でもその前に、昏睡するわけだから、失格になってしまうわよ。」
憂「さー、律さんは正念場を迎えました。
ここで医師団が反応しました。痙攣しています、汗がだらだらとたれて、口を大きく開けよだれを垂らしているさまがカメラからもわかります。
脳波も大きく乱れています。」
和「これは薬物中毒者特有の脳波よ。なかなか見れる機会はないから、良く見ておきなさい。
大きな振幅と小さな振れ幅が、ランダムに襲ってくる。そして、紡錘波が現れ出す。てんかん様脳波との類似性があるわ。」
憂「さすが、インテリ和ちゃんです!
さて、律さん、がっくり頭をたれた。おっと、ここで医師団にさらに大きな動きが!
一人が昏睡と判定しました。ただ、昏睡の場合は様子が見られます、5分間昏睡状態を維持しなければなりません。
脳波は大きく乱れています。ああ、医師団全員が昏睡状態を認めました。
ヘッドギアから警告音が鳴り響き、お姉ちゃんは律さんから離れます。でも澪さんはしがみついている!」
和「これはあっさり決まるかもしれません。爆発は限定的ですが、頬ずりしている今の状況では、澪のダメージも深刻なものになるわ。」
憂「どうなる、どうなるーっ!頑張れ、お姉ちゃん!」
和「つまらないわ。」
憂「さて、爆発まで30秒を切りました。警告音が一層大きくなっている。おや、お姉ちゃんが二人に近づいたァー!」
和「まさか、心中する気!?」
憂「お姉ちゃん、澪さんの制服を引っ張り、律さんから引っペがした!あ、3、2、1、律さんリタイアー!頭が失われた首から、濃い血液が流れだすー!、」
和「澪の目付きがすごいことになっているわ。悲しみと、怒りと、疲労が、4:4:2でブレンドされている。最上級の人間精神よ。」
憂「この段階で、人間の感情が疲労を凌駕するという記録は、データにはありませんね。さすがは思春期の女子高生といったところかしら。」
和「唯の表情は、なんだかやるせないものがあるわ。だって、彼女が覚せい剤に手を染めたから、律も手を出して、死んだという側面があるもの。
だから、きっと唯は澪を助けたのよ。
自分のせいで澪まで死なれたら、罪悪感がより強くなる。そういうエゴイズムで、唯は澪を助けた……」
憂「やめてよ、和ちゃん!!
お姉ちゃんはそんな事で人を助けないわ。」
和「憂、笑っているわよ。」
憂「あはは。」
和「ここでお知らせです。
本日午前2時頃、接収した横須賀の空軍基地から、自衛隊の戦闘機5機がスクランブル発進しました。
先の安全保障理事会決議1987号に基づき米軍を主力とした国連軍の日本空爆宣言が発令されており、沖ノ鳥島のはるか東で待機する空母艦隊から長距離爆撃機が発進されたものと思われます。
また、ロシア、中国も進攻準備を進めており、情勢は予断を許しません。
また本邦政府はジュネーブ条約の破棄を検討しており、破棄された場合、いわゆる非人道的兵器の使用に法的問題がなくなります」
憂「ここは大丈夫なの?」
和「ええ。東京のスタジオ、って言ったけど、それはダミー。国連の皆様、必死に東京を爆撃してください。
私たちは極めて安全な場所にいます。
ご安心ください。本選手権はいかなる状況においても放送され続けます」
憂「222時間が経過しました。残りるはお姉ちゃんこと平沢唯、ファンクラブまで作られているスーパーアイドルこと秋山澪の二人です。
二人のデッドヒートが始まりましたねー」
純「ところで、先程澪先輩が要求した、サバイバルナイフとタコ糸とライターが気になるね。」
憂「まさか、お姉ちゃんを殺すきじゃないでしょうか?それは許せません」
純「唯先輩は、異議を唱えない!そして唯先輩の支給品は……覚せい剤をやめた、今更無水カフェイン錠だぁー!」
憂「お姉ちゃんのバカ!そんなのもう無意味に決まっている!
覚せい剤は退薬症状が、ヘロインほどひどくないから、6時間間隔で支給されたら、死ぬまで生きていられるのに!」
純「憂、混乱しているよ。正確には、脳が疲労で出血を起こしてしまうまでね。そこまで眠らずに行くには、どのみち薬物が必要だから、打ち続ければ唯先輩は生き残れるのに。
きっと、自分のせいで律先輩を殺したって責めているんだろうね。」
憂「お姉ちゃん……」
純「224時間が経過しました。先程から、地獄のような光景が続いております。
まず澪先輩が、自分の足の指を1時間に一本ずつ支給されたサバイバルナイフで切り落としていきます。
痛みと、興奮で、澪先輩は眠りに落ちるのを防ぐつもりでしょう。
いやあ、攻撃用じゃなくてよかったですね。」
憂「澪先輩は自分で自分の首をしめていますね。まあ、タコ糸で縛って、ライターで断面を焼き潰して出血を抑えているのは、すごい精神力だけど。
それよりお姉ちゃん!」
純「唯先輩は、退薬症状で大変な事になっていますよ。今更無水カフェイン錠じゃ焼け石に水なのに。
純「澪先輩も最終段階で、唯先輩も最終段階に移行したね。
これを受け、これまで実況・解説を担当した真鍋和先輩は、実験施設のある現地入りを目指し、スタジオを先ほど出発しました。
また、ロシア国境警備隊との交戦状態を経て、自衛隊はウラジオストクとユジノサハリンスクを爆撃、ロシア軍極東戦力の一部を無力化したと発表しました。
しかし、アメリカ軍の東京空爆を受け、自衛隊の青年将校がクーデターを敢行、民放6社とNHK本社、並びに総理官邸、国会議事堂、最高裁判所を占拠、国連軍との和平を模索しております。
皇族の一部も、この動きを支持しており、各地で反政府運動が拡大しております。
三権の長、政府高官、軍高官は東京を脱出、用意していた長野県の松本市に首都機能を移管すると発表しました。
まあ、頑張ってください。」
純「ところで先程から、澪先輩は、私達を舐めるな、私達を舐めるな、けいおん部を舐めるな、と繰り返し発現しております。」
憂「お姉ちゃんは、床を赤ちゃんのように這って、どこかへ向かっています。何をする気だ、お姉ちゃん!」
純「もうすぐ……終りですねぇ。」
憂「……純ちゃん、ごめん。」
純「いいよ、憂。行ってきな。」
憂「あとよろしくね。」
純「平沢憂はスタジオを脱出したので、私、鈴木純が一人で実況と解説を担当させていただきます。
え?役不足?力不足?どっちでもいいでしょ。
まあ、最初はモブだった私が、このポジションまでのし上がるにはいろいろな苦労があったわけで……
ああ、テレビをご覧の皆様。銃声が時折聞こえてきます。スタジオが連合軍にばれました。
実験開始から、247時間、実に10日と7時間。民間人世界にあと7時間とせまる大健闘です。真に残念ながら、あと少しで放送は終了させていただきます。
なごり惜しいですが、長きに渡るご視聴、ありがとうございました。野球中継じゃないんだから延長はないよ!
実験施設も、所在がバレて、爆撃されていますが、あと10時間は防衛できます。それまで2人が生きていれば、まさかの大逆転!
提供は、日本国政府、アメリカ合衆国政府、並びにご覧のスポンサーの提供でお送りしました。え、言っちゃいけなかった?え、ちょっと今のなしなし!!
やっほー。今スタジオに突入してきたのは国連軍の兵士……」
パンパン
キャスター
「臨時速報です。今世紀最大の非人道的実験の唯一の生存者、
平沢唯さんが無事、熊本県の山中で発見・保護されてから3日たった今日、医師を通じて唯さんの容態が発表されました。
経過は極めて良好で、現在栄養剤の点滴を受けているとのことです。
ショックで曖昧だった記憶も徐々に回復してきているようで、しきりに涙を流し、犠牲になった友人たちの名前を呟いています。
また、インターネット動画サイト『You Tube』を通じて元気な姿を見せた平沢唯さんは、近く記者会見を開き、実験の経過を説明すると共に、国連機関の取り調べを受けるそうです。
現在でも国連軍による実験施設の捜索が行われています。3ヶ所のダミー施設を発見しましたが、いずれも同様の実験が行われた形跡がなく、
逮捕された山中さわこ容疑者も、自身はここで実験が行われていると信じて疑っていなかったと供述しております。
また、事件の首謀者、真鍋和容疑者と平沢憂容疑者にも懸賞金がかけられており……鈴木純容疑者が暴露した、今実験への合衆国の関与について、
大統領は未明、一部の米兵に下りていた首謀者3名への即時射殺命令を認めました。
大統領への追求が必死になることは明白で、連邦捜査局は背任罪で追求する構えを見せています
では次のニュースです。」
和「おめでとう、あなたが生き残ったのね。
私が到着するまで、250時間と26分。よく耐えたわ、おめでとう。
残念ながら、現在私が掌握している政府機能じゃ、到底当初ほどの願いは叶えられないけど
何を望むの?」
「……律ちゃんを……あずにゃんを……ムギちゃんを生き返らせて!澪ちゃんを返して!みんなを返して!」
和「ごめんなさい。それは無理。私はシェンロンじゃないもん。」
「約束を破るなんて最低の人間がやることだよ」
和「ええ。……ところで死体が一個足りないんだけど?えっと、首がないから誰がいないんだかわからないわ。」
「……死んで罪を償って!」
和「まさか私が?いやよ。もっと別のお願いにしなさい。」
「……ならもう望むものは何も無いよ。」
和「え……それは、澪が指を切り落としたサバイバルナイフ……」
「死んで償え」
パァン
「…あ…けん銃……撃った…私のお腹……血が…」
和「そりゃ悪手だよ、澪。私が死んだら、世界はどうなるのさ?」
パンパン
「私はお前を許さないよ、和ちゃん……」
和「無様ね、唯。さて、とっととこの国から……」
澪「動いたら殺す」
和「なんか臭いと思ったら、澪。」
澪「最低だ。約束を守らないなんて。みんな必死に耐えた。唯は一番苦しんだ。
謝れ!唯に謝れ!土下座しろ!腹を切れ!律に謝れ!梓に謝れ!ムギに謝れ!」ハァハァ
和「それであなたの気が済むならそうするわ。」ビリ
和「あ……それはスタンガン……そうか……私をここに閉じ込めるために……」がくん
和(暗い……電源が落とされたのね。腐った肉の匂いがする。ここは、まだ実験棟の中。
携帯電話、携帯電話っと。おっ。首無死体が3つ。それに私が撃ち殺した唯の死体が目の前にある。
唯の血が流れてきて暖かい。
何も怖いことはない。これからゆっくり、私も死のう。
憂、あなたは唯になれたかしら?澪。あなたもこれから死ぬのよ)
澪「なんだ、ここ……」
施設の中には誰もいませんでした。大きな実験棟の隣に、小さな部屋がありました。そこにはテレビ局のスタジオと思われる機材がぞんざいに置かれていただけです。
その隣に倉庫。外国の薬品や、食料が置かれています。レトルトカレーもありました。
施設の外に澪は飛び出しました。
巨大な滑走路の他には、何も無い、ここはアメリカの砂漠でした。
澪の涙が、砂漠の砂にこぼれても、どれだけ涙で砂を濡らしても、砂漠が潤うことはありませんでした。
おわり
読み返すと、あずにゃんの死がピーク(つーかそれが限界)
オチはミスった
純の死で放送終了と同時に打ち切ればよかったその予定だった。というか俺のSSがこんなに伸びるなんて事ないから調子乗った
セックスがしたいね、和ちゃんと
そんな感じの作品でした
読んでくれてありがとう!
面白かった
けどなぜ日本は国連を敵に回してまでこの実験を敢行したのか
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